JP2004224155A - 踏切制御システム及びプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】規定された必要警報時間(特にしゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでの時間)を常に確保することができる踏切制御システムを提供する。
【解決手段】列車TRa上の運転制御装置及び無線装置と、地上の拠点装置40及び無線装置30とを有する踏切制御システムであって、運転制御装置71が、しゃ断又は警報完了情報を受信した場合(S8)に、列車TRbの現在位置、現在速度から走行制御パターンPTに従って最大加速で走行したときの踏切までの到達時間T1を算出し(S9)、時間T1が規定の時間を満足するか否かを判定し、満足しているときには即座に踏切制御パターンPTLの消去を行い、満足していないときには不足する時間に応じた時素を確保した後に踏切制御パターンPTLの消去を行う(S10)。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道の踏切制御のための踏切制御システム及び踏切制御プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動列車制御システムには、車上の運転制御装置と地上の制御装置との間で制御情報を無線で伝送するようにしたものがあり、現在、研究が進められている(例えば、特許文献1参照)。このようなシステムでは、車上の運転制御装置で列車の速度や位置が検知され、その情報が地上の制御装置に送信される。地上の制御装置では、複数の列車から送られてきた速度や位置の情報と、進路の設定状態等の地上の制御情報とに基づいて各列車の停止目標位置等を示す情報が算出され、各列車に送信される。各列車では、車上で検知した速度や位置の情報と、地上の制御装置から送られてきた情報とに基づいて、走行制御パターン等が算出され、列車の制御が行われる。
【0003】
上述したような無線を用いる自動列車制御システムには、さらに、車上の運転制御装置と、地上の連動装置との間で双方向のデータ伝送を行うようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。連動装置は、駅構内の列車の在線状況を判断したり、転てつ機の制御を行ったりする装置である。このシステムによれば、車上の運転制御装置と連動装置との間で情報交換を行うことで、駅構内の進路制御の効率向上が図られ、特に高密度線区における運転間隔の短縮が実現可能となっている。
【0004】
また、上述したような無線を用いる自動列車制御システムには、車上の運転制御装置から地上の踏切制御装置へ制御信号を送信することで踏切のしゃ断制御を行うようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。この従来のシステムは、車上の運転制御装置および車上の無線装置と、地上の踏切制御装置および地上の無線装置とから構成されている。車上の運転制御装置は、列車の走行位置と速度とを検知して、列車の走行制御パターンを発生し、その走行制御パターンに従って列車を走行制御する。車上の運転制御装置は、また、所定の記憶手段に踏切の位置を記憶している。そして、列車が踏切に接近したときには、検知した列車の走行位置と、記憶している踏切位置とに基づいて、踏切の直前に列車を停止させる踏切制御パターンを発生するとともに、車上の運転制御装置から無線装置を介して、その踏切をしゃ断させたり、警報作動を開始させたりするための踏切制御指令を送信する。無線装置を介して踏切制御指令を受信した踏切制御装置は、踏切を制御し、しゃ断や警報作動を開始させる。そして、しゃ断作動完了時または警報作動開始時には、車上の運転制御装置に向けて、しゃ断または警報完了信号を送信する。車上の運転制御装置は、しゃ断または警報完了信号を受信した場合、即座に踏切制御パターンの消去を行い、その後、列車の走行制御パターンに従って運転制御を行う。一方、踏切制御装置は、列車の走行位置が踏切の位置を通過した場合に、踏切のしゃ断または警報作動を終了させる。
【0005】
【特許文献1】
特公平7−29606号公報(第3−4頁、第4図)
【特許文献2】
特公平7−41840号公報(第3−4頁、第1図)
【特許文献3】
特公平7−10667号公報(第2−3頁、第2図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、無線を利用しない、軌道回路等を利用した従来の自動列車制御システムでは、踏切制御において、踏切のしゃ断または警報作動に必要となる規定の必要警報時間が確保できるように、警報開始点が設定されている。警報開始点は、列車を検知して踏切の制御を開始する制御子(軌道回路)によって決まり、踏切の手前の所定の箇所(固定点)に設けられている。この必要警報時間(規定値)は、しゃ断時間(しゃ断機降下時間)(規定値)と、しゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでの時間(規定値)との合計時間で与えられる。しゃ断時間は、実際にしゃ断かんの降下に必要となる時間に、しゃ断かん降下予告時間を加えた所要時間に応じて設定される時間である。しゃ断かん降下後列車前頭が踏切に到達するまでの時間は、しゃ断かんが降りてから(しゃ断機が無い踏切では警報作動が開始してから)、実際に列車が踏切を通過し始めるまでの間に確保する必要がある規定の時間である。
【0007】
上述した特許文献3に記載された踏切制御システムでは、運転制御装置が、適当な地点で、踏切制御パターンと、現在の列車の走行位置および速度ならびに踏切の位置とから踏切到達までの所要時間T1’が求められる。そして、時間T1’から踏切の警報時間の均一化目標値Twを減算した値T2’(=T1’−Tw)(上記の必要警報時間に対応)が、踏切制御指令として無線装置を介して踏切制御装置に送信される。踏切制御装置は、時間T2’後にしゃ断かんの降下または警報作動を開始させる(第3頁、第3図)。このようにして、特許文献3に記載された踏切制御システムでは、踏切制御パターンに従って走行した場合に、規定された必要警報時間が確保できるように、踏切の制御が行われる。
【0008】
なお、特許文献3に記載された踏切制御システムでは、運転制御装置が、上記の制御の途中で前方の信号条件のクリアなどで走行制御パターンを変更する必要が生じた場合であっても、その走行制御パターンに従って走行したとしても警報時間が踏切の警報時間の均一化目標値Twよりも小さくならないときのみに限り、走行制御パターンの変更を認めるようにしている(第3頁、第3図)。
【0009】
なお、特許文献3の図1〜図4に示す踏切制御システムにあっては、車上の運転制御装置がしゃ断または警報完了信号を受信したときに、踏切制御パターンが即座に消去されるようになっている。この踏切制御システムでは、また、踏切制御パターンに従って走行することを前提として、規定された必要警報時間が確保されるようになっている。そのため、踏切制御パターンが消去された後は、規定された必要警報時間(そのうち、特に、しゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでの時間に対応する分)が必ずしも確保されないことになる。通常は、しゃ断かんの降下または警報作動を開始させる時間を、踏切制御パターンが消去される時間を考慮した上で余裕を持って設定することで、このような状態の発生を回避させることができる。しかしながら、例えば、駅と踏切位置とが非常に近接しているよう場合で回送列車が駅から発車するとき等において、しゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでの時間が若干不足する場合が発生することがあった。
【0010】
回送列車の場合、駅で乗客の乗り降りが発生しない。よって、走行の開始が指示されてから列車が実際に走行を開始するまでの時間は、扉を閉めるための時間等が不要となるので、乗客を載せている列車に比べ若干短くなる。そのため、最適化を図るため、実際の操作時間等を考慮して、最小の余裕時間を乗客を載せている列車に合わせて設定した場合、回送列車のときには、しゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでの時間が若干不足するときが生じるのである。
【0011】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、規定された必要警報時間(特にしゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでの時間)を常に確保することができる踏切制御システム及び方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、車上の運転制御装置及び無線装置と、地上の踏切制御装置及び無線装置とを有する踏切制御システムであって、運転制御装置は、列車の走行位置と速度とを検知し、列車の走行制御パターンを発生し、その走行制御パターンに従って列車を走行制御し、かつ踏切の位置を記憶し、列車が踏切に接近したときには、列車の走行位置と記憶している該踏切位置から該踏切の直前に列車を停止する踏切制御パターンを発生させ、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を送信し、踏切制御装置からの踏切制御指令に対するしゃ断又は警報完了信号を受信して踏切制御パターンの消去を行い、踏切制御装置は、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を受信して踏切を制御し、しゃ断又は警報完了時にはしゃ断又は警報完了信号とを送信する踏切制御システムにおいて、運転制御装置が、しゃ断又は警報完了信号を受信した場合に、列車の現在位置、現在速度から走行制御パターンに従って最大加速で走行したときの踏切までの到達時間が規定の時間を満足するか否かを判定し、満足しているときには即座に踏切制御パターンの消去を行い、満足していないときには不足する時間に応じた時素を確保した後に踏切制御パターンの消去を行うことを特徴とする。請求項2記載の発明は、前記規定の時間が、しゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでに確保すべきあらかじめ決められた時間であることを特徴とする。請求項3記載の発明は、前記踏切制御指令が送信される条件が、列車の現在位置、現在速度から最大加速で走行した場合の当該踏切までの到達時間が規定の必要警報時間以下のとき、又は、現在位置、現在速度から最大加速で走行した場合の踏切制御パターンまでの到達時間がしゃ断機降下時間以下のときであることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、車上の運転制御装置及び無線装置と、地上の踏切制御装置及び無線装置とを用いた踏切制御方法であって、運転制御装置は、列車の走行位置と速度とを検知し、列車の走行制御パターンを発生し、その走行制御パターンに従って列車を走行制御し、かつ踏切の位置を記憶し、列車が踏切に接近したときには、列車の走行位置と記憶している該踏切位置から該踏切の直前に列車を停止する踏切制御パターンを発生させ、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を送信し、踏切制御装置からの踏切制御指令に対するしゃ断又は警報完了信号を受信して踏切制御パターンの消去を行い、踏切制御装置は、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を受信して踏切を制御し、しゃ断又は警報完了時にはしゃ断又は警報完了信号とを送信する踏切制御方法において、運転制御装置が、しゃ断又は警報完了信号を受信した場合に、列車の現在位置、現在速度から走行制御パターンに従って最大加速で走行したときの踏切までの到達時間が規定の時間を満足するか否かを判定し、満足しているときには即座に踏切制御パターンの消去を行い、満足していないときには不足する時間に応じた時素を確保した後に踏切制御パターンの消去を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、車上の運転制御装置及び無線装置と、地上の踏切制御装置及び無線装置とを用いて踏切制御を行うためのプログラムであって、運転制御装置は、列車の走行位置と速度とを検知し、列車の走行制御パターンを発生し、その走行制御パターンに従って列車を走行制御し、かつ踏切の位置を記憶し、列車が踏切に接近したときには、列車の走行位置と記憶している該踏切位置から該踏切の直前に列車を停止する踏切制御パターンを発生させ、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を送信し、踏切制御装置からの踏切制御指令に対するしゃ断又は警報完了信号を受信して踏切制御パターンの消去を行い、踏切制御装置は、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を受信して踏切を制御し、しゃ断又は警報完了時にはしゃ断又は警報完了信号とを送信するための各過程を複数のコンピュータを用いて実行するプログラムにおいて、運転制御装置が、しゃ断又は警報完了信号を受信した場合に、列車の現在位置、現在速度から走行制御パターンに従って最大加速で走行したときの踏切までの到達時間が規定の時間を満足するか否かを判定し、満足しているときには即座に踏切制御パターンの消去を行い、満足していないときには不足する時間に応じた時素を確保した後に踏切制御パターンの消去を行う過程を実行するための記述を含むことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の踏切制御システムの一実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の踏切制御システムを含む無線を利用した自動列車制御システムの基本構成を示すシステム図である。図1では、線路10に沿って、踏切11と、駅20とが設けられている。線路10には、駅20の構内において分岐線101と分岐線102とが設けられている。線路10と分岐線101との分岐点には転てつ機201が、分岐線101と分岐線102の分岐点には転てつ機202が設けられている。踏切11は、警報機111、しゃ断かんとその駆動装置とからなるしゃ断機112、および、各部を制御したり、制御信号の送受信を行ったりする制御装置を備えて構成されている。踏切11の制御装置は通信回線503に接続されている。この通信回線503は、通信回線群50の一構成要素である。
【0016】
上記の場合、線路10の軌道上には1台の列車TRa(またはTRb)が走行(あるいは停車)している。列車TRaはA地点に位置する状態を示していて、列車TRbは同一の列車TRaが移動してB地点に位置する状態を示すものである。列車TRaは、運転制御装置71、無線装置72等の制御系装置と、制御系装置によって制御されるブレーキ等の制御装置とを搭載している。
【0017】
運転制御装置71は、コンピュータとその周辺装置とから構成され、そのコンピュータ上で運転制御プログラムを実行することで、操作者(運転者)からの指示の入力や操作者に対する各種情報の表示と、各部の制御とを行う。運転制御装置71は、ROM等の記憶手段を備え、記憶手段内に線路10やその分岐についての情報、複数の踏切11の位置を示す情報等がデーターベース化され、車上データーベースとして記憶・管理されている。運転制御装置71は、また、列車の走行位置および走行速度を検知する機能を有している。運転制御装置71は、さらに、無線装置72を介して、地上の無線装置30との間で双方向の無線通信を行う機能を有している。
【0018】
無線装置30は、線路10の近傍に設けられているアンテナ301を備え、線路10に沿って複数、設けられている。無線装置30は、通信回線502に接続されていて、地上の各装置から通信回線502を介して受信したデータを列車TRaへ無線送信したり、列車TRaから無線受信したデータを地上の各装置へ通信回線502を介して送信したりする。この通信回線502は、通信回線群50の一構成要素である。
【0019】
拠点装置40は、線路10に沿って複数設けられていて、コンピュータとその周辺装置とから構成され、そのコンピュータ上で拠点装置用の制御プログラムを実行することで作動する。拠点装置40は、他の拠点装置40、40、…やシステム管理装置60との間で相互に情報交換を行ったり、無線装置30を介して列車TRaとの間で制御情報を交換したり、踏切11の制御を行ったりする。駅20近傍に設けられている拠点装置40は、駅20の構内に設けられている転てつ機201、202等の制御を行う。拠点装置40は、回線501を介して他の装置と接続されている。この通信回線501は、通信回線群50の一構成要素である。
【0020】
システム管理装置60は、コンピュータと、コンピュータとその周辺装置とから構成され、そのコンピュータ上でシステム管理装置用の制御プログラムを実行することで作動する。システム管理装置60は、通信回線504を介して、複数の拠点装置40、40、…、複数の無線装置30、30、30、…、複数の踏切11、11、…と相互に通信可能であり、また複数の無線装置30、30、30、…を介して、複数の列車TRa、…と情報の送受信が行えるようになっている。システム管理装置60は、各列車や各装置の状態を検知して画面上に表示したり、操作者の操作に基づいて各装置に対して所定の制御信号を送信することで、線路10上に在線する複数の列車TRa、…と各装置の管理を行うための機能を実現する。
【0021】
なお、図1に示す実施の形態において、列車間隔に応じた速度制御の方法や駅構内における連動制御の方法については、上述した特許文献1や特許文献2に記載されているようにして行うことができる。
【0022】
また、本発明の踏切制御装置は、少なくとも各1つの、列車TRa上の運転制御装置71および無線装置72と、踏切11、無線装置30、および拠点装置40とから構成されているものとする。ただし、システム管理装置60を含むものとしたり、無線装置30と拠点装置40とを一体にして構成したりするものも、本発明の踏切制御装置としてとらえることができる。
【0023】
次に、図2を参照して、図1に示す実施の形態における踏切の制御の流れについて説明する。通常の走行状態において、列車TRa上の運転制御装置71は、繰り返し、列車TRaの走行位置と速度とを検知し、列車TRaの走行制御パターンPT(破線)を発生し、その走行制御パターンPTに従って、そのパターン内に速度が維持されるように列車を走行制御している。
【0024】
運転制御装置71は、踏切11への接近に伴い、しゃ断(あるいは警報)が完了していない踏切11に対し、車上データーベースを参照し、列車TRaの走行位置に基づいて、当該踏切11の直前に列車TRaを停止させるための、踏切制御パターンPTL(実線)を生成するとともに、後述するステップS3において踏切11に対して行う制御の時期を算出する(S1)。踏切制御パターンPTLは、踏切11毎に設定される値であって、線路10上の各位置での速度制限値を表す曲線として作成される。
【0025】
なお、図2では、各曲線を区別しやすくするため、走行制御パターンPT、踏切制御パターンPTL、および後述する踏切制御算出用走行パターンPTPの同一の最大値を上下にずらして示している。
【0026】
次に、運転制御装置71は、図3に示すように、現在の列車位置Pa、速度Vaから、最大加速によって走行制御パターンPTで決まる許容最高速度で走行した場合の走行パターン(踏切制御算出用走行パターンPTP)を予測し、踏切11までの到達時間(T1)と、踏切制御パターンPTLまでの到達時間(T2)を所定の周期で繰り返し算出する(図2のステップS2)。
【0027】
次に、列車TRaが踏切11にさらに接近して行き、時間T1、T2が、以下の条件アまたは条件イのいずれかを満たした時点で、運転制御装置71は、拠点装置40に対して、図1に示す無線装置72、30を介して、警報開始制御を要求する踏切のID情報(識別符号情報)を踏切制御指令として送信する(S3)。ここで、上述した規定の必要警報時間の一般的な値を示すと、しゃ断機降下時間としては、実施形態の場合、15秒程度、しゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に達するまでの時間は例えば20秒程度なので、規定の必要警報時間としては35秒程度となるが、踏切により必要な時間に設定される。
【0028】
条件ア:「現在位置、現在速度から最大加速で走行した場合の当該踏切までの到達時間(T1)」≦「規定の必要警報時間」の場合(現在位置、現在速度から最大加速で走行した場合の規定の必要警報時間後の列車位置が、当該踏切位置以上となる場合)。
【0029】
条件イ:「現在位置、現在速度から最大加速で走行した場合の踏切制御パターンPTLまでの到達時間(T2)」≦「しゃ断機降下時間」の場合(現在位置、現在速度から最大加速で走行した場合に踏切制御パターンによる速度制限が開始される位置に列車が到達したときに、しゃ断機の降下が完了していない場合)。
【0030】
なお、運転制御装置71から拠点装置40に対する警報開始制御を要求する踏切のID情報の送信は、複数の踏切11、11、…の配置によっては、連続して、あるいは拠点装置40からの警報完了を示す返信を待たずに、随時行われる。
【0031】
次に、拠点装置40は、運転制御装置71からの警報開始制御を要求する踏切制御指令を受信すると、その指令に基づき、当該踏切11の警報開始制御を行う(S4)。拠点装置40は、警報開始制御信号を踏切11に送信する(S5)。踏切11は、警報開始制御信号を受信すると、しゃ断機の降下制御を開始する(S6)。または、しゃ断機が無い、警報機のみの踏切では、警報開始制御信号を受信して、警報作動のみを開始する(S6)。ここで、しゃ断機が無い、警報機のみの踏切では、警報開始制御信号を受信して、警報を開始した時点で、必要な警報作動が完了したことになる。踏切11は、しゃ断機の降下(あるいは警報)が完了すると、しゃ断完了信号(あるいは警報完了信号)を送信する(S7)。
【0032】
拠点装置40は、当該踏切11のしゃ断(警報)完了を確認したら、運転制御装置71にしゃ断完了情報(警報完了情報)として、しゃ断(警報)完了踏切のIDを送信する(S8)。ここで、しゃ断完了踏切が複数ある場合、当該列車TRbの現在位置と停止限界内(進行方向に位置する他の列車に衝突等しないための停止限界位置内)で連続してしゃ断が完了している踏切の最遠端の踏切IDが運転制御装置71に送信される。ここで、列車TRbは、列車TRaが進行方向に走行した場合の異なる走行位置に位置する状態を示している。
【0033】
運転制御装置71は、拠点装置40からのしゃ断(警報)完了済み踏切IDの情報を受信すると、このとき警報制御要求踏切までの現在位置からの到達時間T1を再度算出する(S9)。そして、算出結果に基づいて以下の条件ウ、エによって、当該踏切11に設定していた踏切制御パターンを解除する(S10)。
【0034】
条件ウ:「現在位置、現在速度から最大加速で走行した場合の当該踏切までの到達時間(T1)」<「しゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでの規定時間(例えば20秒(標準))」の場合は、(「しゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでの規定時間(例えば20秒(標準))」から「現在位置、速度から最大加速で走行した場合の当該踏切までの到達時間(T1)」を減じた値)の時素を刻んで(時間遅延後に)路切制御パターンPTLを解除する。
【0035】
条件エ:「現在位置、現在速度から最大加速で走行した場合の当該踏切までの到達時間(T1)」≧「しゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでの時間(例えば20秒(標準))」の場合は、即座に路切制御パターンPTLを解除する。
【0036】
当該踏切11に対する路切制御パターンPTLを解除した後は、他の踏切11に対して設定された他の路切制御パターンPTLによって速度制限が行われたり、あるいは走行制御パターンPTによって速度制限が行われたりする。
【0037】
列車TRbがさらに進行し、列車TRcの地点、すなわち、踏切11を通過した地点に位置したとき、運転制御装置71は、列車位置情報として、列車TRcの位置を示す情報を送信する(S11)。拠点装置40は、列車位置情報を常時受信し、列車TRcの列車位置と、踏切11の位置とを比較する(S12)。そして、比較結果に基づいて、列車TRcの列車位置が踏切11の位置を越えたと判定された場合には、踏切11に対する警報停止制御が行われ、警報停止制御信号が送信される(S13)。踏切11は、警報停止制御信号を受信すると、しゃ断機を上昇させるとともに、警報作動を終了させる(S14)。
【0038】
以上の処理によって本実施の形態では、車上の運転制御装置71において、踏切11のしゃ断が完了した時点で即座に踏切制御パターンPTLが解除(消去)されないようにしている。つまり、踏切11のしゃ断完了情報を受信した場合には、その時点の列車位置と速度とに基づいて最大加速および許容最大速度で走行したときの踏切までの到達時間を算出する。その算出した踏切までの到達時間が、しゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでの規定時間を満たしていない場合には、その規定時間を満足するのに十分な時素を確保した上で踏切制御パターンPTLを解除を行うようにしている。これによって、踏切制御において、必要警報時間(既定値)が常に確保されるようになった。
【0039】
次に、図4〜図6を参照して、図1および図2を参照して説明した実施の形態の具体的な動作例について説明する。図4〜図6において図1および図2と同一の構成には同一の参照符号を付けている。図4は列車TR1が駅20の構内に停止している場合、図5は列車TR1に対して新たに駅20を越える進路が設定された場合、そして、図6は列車TR1が走行を開始し、踏切11に接近した場合を示している。図4〜図6に示す例において、踏切11は駅20に近接している。この場合、駅20に停止している列車TR1に対して進路設定がなされた場合には、直ちに上記条件アが満たされるもの、すなわち、停止位置から最大加速で走行した場合の規定の必要警報時間(例えば35秒)後の列車位置が、踏切11の位置を越えるものであるとする。
【0040】
図4において、停止目標位置RSは駅20の構内にあり、列車TR1は駅20の線路103上に停止している。この場合、列車TR1は、停止目標位置RSを越える進路についての経路情報をまだ受信していない。したがって、停止目標位置RSより先に位置する踏切11等の検索はまだ行われていない。
【0041】
その後、転てつ機201の設定完了等の条件が整うと、拠点装置40から無線装置30を介して列車TR1に対して踏切11等を含む線路10を進路とする経路情報が送信される(図5)。ここで、進路設定がなされるので、後経路内の踏切検索が行われる。この場合、列車TR1の運転制御装置は、踏切11に対し、最大加速によって走行制御パターンPTで決まる許容最高速度で走行した場合の踏切制御算出用走行パターンPTPを予測し、踏切11までの到達時間(T1)と、踏切制御パターンPTLまでの到達時間(T2)を算出する。この例では、算出した時間T1が上記の条件アを満たすとしているので、列車TR1の運転制御装置は、拠点装置40に対し、無線装置30を介して、警報開始制御を要求する踏切11のID情報を踏切制御指令として送信する。そして、拠点装置40は、踏切11の警報制御を開始する。
【0042】
なお、本システムが適用される無線を利用した自動列車制御システムでは、信号と踏切が分離して制御されるので、進路設定後は直ちに列車の出発が可能である。すなわち、信号機を現示するための時素は設定されない。
【0043】
図6に示すように、走行を開始すると、列車TR1は、図5の踏切制御算出用走行パターンPTPに示すような走行曲線(実線で示した実際の走行曲線)で走行して行く。踏切11のしゃ断機の降下が完了し、しゃ断完了が確認されると、拠点装置40は、しゃ断完了情報を、列車TR1に対して送信する。列車TR1の運転制御装置は、踏切しゃ断完了情報受信後、再度現在位置からの踏切11までの到達時間T1を算出する。再度計算した到達時間T1が、規定されたしゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に達するまでの時間(例えば20秒)に対し不足する場合、不足する時間分踏切制御パターンPTLの消去を遅らせる。そして、不足時間を確保した後、踏切制御パターンPTLが消去される。
【0044】
一方、図7に示す従来の技術のように、列車TR10が、拠点装置400からしゃ断完了情報を受信後に、直ちに踏切制御パターンPTLを消去したとすると、踏切しゃ断完了後、列車TR10が踏切11に到達するまでに確保しなければならない時間が確保できない場合が発生する。
【0045】
以上のように、本実施の形態によれば、不足する時間に応じた時素を確保した後に踏切制御パターンの消去が行われるので、規定された必要警報時間を常に確保することができる。
【0046】
なお、本発明の実施の形態は上記のものに限定されることなく、例えば、運転制御装置の処理内容の一部を拠点装置で行うようにしたり、あるいは、システム管理装置においてそれらの処理内容を単独でもしくは重複して行ったりする等の変更が適宜可能である。また、運転制御装置、拠点装置、およびシステム管理装置のコンピュータで実行されるプログラムの全部または一部はコンピュータ読み取り可能な記録媒体あるいは通信回線を介して頒布することが可能である。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、運転制御装置が、しゃ断又は警報完了信号を受信した場合に、列車の現在位置、現在速度から走行制御パターンに従って最大加速で走行したときの踏切までの到達時間が規定の時間を満足するか否かを判定し、満足しているときには即座に踏切制御パターンの消去を行い、満足していないときには不足する時間に応じた時素を確保した後に踏切制御パターンの消去を行うようにしたので、規定された必要警報時間を常に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による踏切制御システムの一実施の形態の基本構成を示す構成図である。
【図2】図1に示す実施の形態における制御の流れを示すシステム図である。
【図3】図1および図2に示す実施の形態における処理過程を説明するための説明図である。
【図4】図1および図2に示す実施の形態の動作例(駅構内に列車が停止している場合)を説明するための説明図である。
【図5】図1および図2に示す実施の形態の動作例(列車が走行可能な状態となった場合)を説明するための説明図である。
【図6】図1および図2に示す実施の形態の動作例(走行開始後に遮断完了情報を受信した場合)を説明するための説明図である。
【図7】従来のシステムにおける動作例(走行開始後に遮断完了情報を受信した場合)を説明するための説明図である。
【符号の説明】
TRa〜TRc、TR1:列車
10:線路
11:踏切
20:駅
30、72:無線装置
40:拠点装置
60:システム管理装置
71:運転制御装置
PT:走行制御パターン
PTL:踏切制御パターン
PTP:踏切制御算出用走行パターン

Claims (5)

  1. 車上の運転制御装置及び無線装置と、地上の踏切制御装置及び無線装置とを有する踏切制御システムであって、
    運転制御装置は、列車の走行位置と速度とを検知し、列車の走行制御パターンを発生し、その走行制御パターンに従って列車を走行制御し、かつ踏切の位置を記憶し、列車が踏切に接近したときには、列車の走行位置と記憶している該踏切位置から該踏切の直前に列車を停止する踏切制御パターンを発生させ、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を送信し、踏切制御装置からの踏切制御指令に対するしゃ断又は警報完了信号を受信して踏切制御パターンの消去を行い、踏切制御装置は、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を受信して踏切を制御し、しゃ断又は警報完了時にはしゃ断又は警報完了信号とを送信する踏切制御システムにおいて、
    運転制御装置が、しゃ断又は警報完了信号を受信した場合に、列車の現在位置、現在速度から走行制御パターンに従って最大加速で走行したときの踏切までの到達時間が規定の時間を満足するか否かを判定し、満足しているときには即座に踏切制御パターンの消去を行い、満足していないときには不足する時間に応じた時素を確保した後に踏切制御パターンの消去を行う
    ことを特徴とする踏切制御システム。
  2. 前記規定の時間が、しゃ断かん降下後に列車前頭が踏切に到達するまでに確保すべきあらかじめ決められた時間であることを特徴とする請求項1記載の踏切制御システム。
  3. 前記踏切制御指令が送信される条件が、列車の現在位置、現在速度から最大加速で走行した場合の当該踏切までの到達時間が規定の必要警報時間以下のとき、又は、現在位置、現在速度から最大加速で走行した場合の踏切制御パターンまでの到達時間がしゃ断機降下時間以下のときであることを特徴とする請求項1又は2記載の踏切制御システム。
  4. 車上の運転制御装置及び無線装置と、地上の踏切制御装置及び無線装置とを用いた踏切制御方法であって、
    運転制御装置は、列車の走行位置と速度とを検知し、列車の走行制御パターンを発生し、その走行制御パターンに従って列車を走行制御し、かつ踏切の位置を記憶し、列車が踏切に接近したときには、列車の走行位置と記憶している該踏切位置から該踏切の直前に列車を停止する踏切制御パターンを発生させ、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を送信し、踏切制御装置からの踏切制御指令に対するしゃ断又は警報完了信号を受信して踏切制御パターンの消去を行い、踏切制御装置は、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を受信して踏切を制御し、しゃ断又は警報完了時にはしゃ断又は警報完了信号とを送信する踏切制御方法において、
    運転制御装置が、しゃ断又は警報完了信号を受信した場合に、列車の現在位置、現在速度から走行制御パターンに従って最大加速で走行したときの踏切までの到達時間が規定の時間を満足するか否かを判定し、満足しているときには即座に踏切制御パターンの消去を行い、満足していないときには不足する時間に応じた時素を確保した後に踏切制御パターンの消去を行う
    ことを特徴とする踏切制御システム。
  5. 車上の運転制御装置及び無線装置と、地上の踏切制御装置及び無線装置とを用いて踏切制御を行うためのプログラムであって、
    運転制御装置は、列車の走行位置と速度とを検知し、列車の走行制御パターンを発生し、その走行制御パターンに従って列車を走行制御し、かつ踏切の位置を記憶し、列車が踏切に接近したときには、列車の走行位置と記憶している該踏切位置から該踏切の直前に列車を停止する踏切制御パターンを発生させ、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を送信し、踏切制御装置からの踏切制御指令に対するしゃ断又は警報完了信号を受信して踏切制御パターンの消去を行い、踏切制御装置は、車上及び地上の無線装置を介して踏切制御指令を受信して踏切を制御し、しゃ断又は警報完了時にはしゃ断又は警報完了信号とを送信するための各過程を複数のコンピュータを用いて実行するプログラムにおいて、
    運転制御装置が、しゃ断又は警報完了信号を受信した場合に、列車の現在位置、現在速度から走行制御パターンに従って最大加速で走行したときの踏切までの到達時間が規定の時間を満足するか否かを判定し、満足しているときには即座に踏切制御パターンの消去を行い、満足していないときには不足する時間に応じた時素を確保した後に踏切制御パターンの消去を行う過程を実行するための記述を含む
    ことを特徴とする踏切制御プログラム。
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