JP2004223032A - 圧迫止血装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】脳などの出血を内視鏡を用いて確実かつ短時間で止血できるようにする。
【解決手段】圧迫止血装置1は、前方視の第2内視鏡10と、この内視鏡10に挿通されるバルーンカテーテル20と、このカテーテル20に挿入される前方視の第1内視鏡10とを備えている。カテーテル20の第1内視鏡10用の通路は、挿入部22の先端面に開口されている。この開口を覆うようにして透明なバルーン23が設けられている。上記通路を通して透明な膨張用流体が送り込まれることにより、バルーン23が挿入部22の先端面から前方へ向けて膨らまされる。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば人体の脳などで出血した部位を圧迫して止血する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
脳外手術では、頭蓋を大きく切り開くのが常であったが、内視鏡を用いることにすれば、直径1cm程度の小さな穴を開けるだけで済み、患者への負担が小さい。このため、近年、内視鏡による脳外手術の事例が増えている。一方、脳の細い血管が破れる等して出血が起きた場合、穴が小さいと、一般的な圧迫止血器具の挿入が困難である。そこで、内視鏡のワーキングチャンネルを使って生理食塩水や人口髄液を脳室に注入することにより脳の圧力を高めて止血する方法が採られている。
【0003】
なお、内視鏡装置として、特許文献1が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−112954号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記生理食塩水や人口髄液で脳の圧力を高めるやり方では、出血の程度を抑制することはできても完全に出ないようにすることはできない。そのため、出血が自然と止まるまで待っているのと大差なく、止血が完了する(圧力を元に戻しても血が出なくなる)まで、数十分〜1時間余りもかかってしまう。また、内視鏡では、出血状態の確認はできるが、視野が血で阻まれて出血部位を正確に特定するのは困難である。この出血部位の特定の問題は、脳に限らず、他の部位の内視鏡手術においても同様に起こり得る。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、本発明は、出血部位を圧迫して止血するための装置であって、観察光軸を前方へ向けた第1内視鏡と、上記第1内視鏡を挿通する内視鏡通路および流体通路の形成された挿入部、及び該挿入部の先端面に被さるようにして設けられた透明なバルーンとを有し、上記内視鏡通路が、上記挿入部の先端面に開口されるとともに、上記流体通路が、上記バルーンで覆われるようにして上記挿入部の先端部に開口されており、この流体通路を経た透明な膨張用流体によって上記バルーンが上記挿入部の先端面から前方へ向けて膨らまされるバルーンカテーテルとを備えた圧迫止血装置を特徴とする。これによって、体表面に小さな穴を開けるだけで第1内視鏡およびバルーンカテーテルの挿入部を挿入でき、患者への負担を軽減できる。そして、バルーンを膨らませて出血部位を直接圧迫でき、出血を短時間で止めることができる。また、カテーテル挿入部が極細であってもバルーンを膨らませることによって出血部位周辺の広い範囲にわたって押し当てることができるので、出血部位を特定しなくてもそのおおまかな位置さえ見当が付けられれば、確実に圧迫止血することができる。また、押し当てられた部分を第1内視鏡によってバルーン越しに観察することができ、止血が確実になされているか否かを容易に確認することができる。さらに、第1内視鏡をバルーン挿入部に対して前後に位置調節することにより、圧迫止血状態の観察を一層確実に行なうことができる。
ところで、上掲の特許文献1には、透明なバルーンを有するカテーテルが記載されているが、このカテーテルは、一般的なバルーンカテーテルと同様に、バルーンをカテーテル挿入部の径方向外側に向けてしか膨らませることができず、カテーテル挿入部の先端面から前方へ向けて膨らませることはできない。そのため、出血部位を圧迫止血するのは困難である。
【0007】
上記バルーンカテーテルの挿入部において、上記内視鏡通路と流体通路とが、上記挿入部の先端面に開口する共通の通路によって構成されていることが望ましい。これによって、構成を簡素化することができる。
【0008】
本発明の圧迫止血装置は、観察光軸を前方へ向け、上記バルーンカテーテルの挿入部を挿通可能な第2内視鏡を、更に備えていることが望ましい。これによって、予め第2内視鏡で出血部位を探り当てることができ、バルーンの出血部位への押し当て精度を確実に高めることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、例えば人体の脳で起きた出血を止めるための圧迫止血装置1を示したものである。圧迫止血装置1は、親内視鏡10(第2内視鏡)と、この親内視鏡10に挿通されるバルーンカテーテル20と、このバルーンカテーテル20に挿通される子内視鏡30(第1内視鏡)とを備えている。
【0010】
親内視鏡10は、一般的な内視鏡と同様であり、本体部11と、この本体部11から延びるフレキシブルな挿入部12とを有している。挿入部12の外径は、例えば5〜6mmφ程度である。挿入部12の先端側には、湾曲部13が設けられている。湾曲部13は、本体部11の操作ノブ11aによって遠隔操作できるようになっている。湾曲部13より先端側(挿入部12の最先端部)には、先端構成部14が設けられている。図2に示すように、先端構成部14の先端面には、ライトガイド16(照明光伝送手段)の先端出射部が臨むとともに、観察窓14aが設けられている。(親内視鏡10の観察光軸が、挿入部12の前方へ向けられている。)
【0011】
図1に示すように、本体部11の側部からライトケーブル17が延びている。ライトケーブル17は、ライトコネクタ17aを介して照明光源(図示せず)に光学的に接続されるようになっている。この照明光源からの照明光が、ライトコネクタ17aとライトケーブル17と本体部11と挿入部12とに通された上記ライトガイド16を経て、先端構成部14の先端面から前方へ出射される。これにより、観察対象を照明できるようになっている。
【0012】
図1および図2に示すように、観察対象から観察窓14aに入射した像光は、その奥の対物レンズ系14bおよび挿入部12と本体部11に通されたイメージガイド15(像伝送系)を経て、本体部11の接眼部11bへ送られる。そして、カメラヘッドユニットやカメラコントロールユニットによって電気信号さらには映像信号に変換され、テレビモニタ(何れも図示せず)に映し出されるようになっている。なお、親内視鏡10として、CCDなどの撮像素子内蔵の電子内視鏡を用いることにしてもよい。
【0013】
図1および図2に示すように、親内視鏡10には、本体部11および挿入部12にわたって延びるチャンネル18が設けられている。チャンネル18は、フレキシブルな樹脂チューブ18Aで構成され、その基端は、本体部11の鉗子口部11cに連なり、先端は、先端構成部14の先端面に開口されている。このチャンネル18に上記バルーンカテーテル20が挿通されるようになっている。
【0014】
図1に示すように、バルーンカテーテル20は、本体部21と、この本体部21から延びるチューブ22(挿入部)と、このチューブ22の先端に設けられたバルーン23とを有している。本体部21には、チューブ22の内部に連なるルーメン21aが軸線に沿って一直線に形成されている。本体部21の側部には、流体供給源40の接続ポート部24が設けられている。このポート部24の内部通路24aが、ルーメン21aの中途部に合流している。供給源40には、バルーン膨張用流体として、圧迫止血に適した粘性等を有する透明な物質、例えばデキストランが貯えられている。
【0015】
カテーテル20において、ルーメン21aとチューブ22の内部とは、特許請求の範囲の「内視鏡通路」を構成している。詳細な図示は省略するが、この「内視鏡通路」に、子内視鏡30の後記挿入部32を挿入した状態で、本体部21の基端のネジ21s付きリング21rを締め付けると、本体部21内のOリング21oが圧縮されて挿入部32の外周に圧着されるようになっている。これによって、挿入部32の軸方向位置を固定できるとともに、ポート部24より基端側のルーメン21aと挿入部32との間がシールされるようになっている。
【0016】
ポート部24の内部通路24aと、ポート部24より先端側のルーメン21aと、チューブ22の内部とにより、特許請求の範囲の「流体通路」が構成されている。したがって、ルーメン21aとチューブ22の内部は、「内視鏡通路と流体通路に共通の通路」を構成している。
【0017】
カテーテル20のチューブ22は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成されており、その外径は、例えば2mmφ程度である。チューブ22は、親内視鏡10の湾曲されたチャンネル18に挿入でき、かつ出血部位を確実に圧迫できるような適度な軟らかさ・硬さを有している。図2に示すように、チューブ22において「内視鏡通路」と「流体通路」を兼ねた内部空間の下流端は、チューブ22の先端面にのみ開口している。
【0018】
カテーテル20のバルーン23は、例えばナイロンなどの高伸縮性を有する透明な樹脂で構成されている。なお、ナイロンに代えて、ウレタンやラテックスを用いてもよい。バルーン23は、チューブ22の先端面の開口を覆っている。バルーン23の基端部は、チューブ22の先端部の外周面にリング25によって液密・気密に止着されている。これによって、図3に示すように、バルーン23は、チューブ22の先端面から前方へ向けて膨らまされるようになっている。このバルーン23は、例えば直径20mmφ程度まで膨らませることができるようになっている。
【0019】
図1に示すように、子内視鏡30は、本体部31と、この本体部31の先端部から延びるフレキシブルな挿入部32とを有している。挿入部32の外径は、例えば0.7mmφ程度であり、上記カテーテル20のルーメン21aおよびチューブ22に容易に挿入できる太さになっている。
【0020】
本体部31の基端部から2本のケーブル33,34が延びている。ライトケーブル33は、ライトコネクタ33aを介して照明光源(図示せず)に光学的に接続されるようになっている。この照明光源からの照明光が、ライトコネクタ33aとライトケーブル33と本体部31と挿入部32とに通されたライトガイド35(照明光伝送手段)を経て、挿入部32の先端面に露出されたライトガイド35の先端出射部から前方へ出射されるようになっている(図3参照)。これにより、観察対象を照明できるようになっている。
【0021】
図1および図3に示すように、子内視鏡20の挿入部32の先端面には、観察窓32aが設けられている。(子内視鏡20の観察光軸が、挿入部22の前方へ向けられている。)観察対象からの像光は、観察窓32aに入射する。そして、この観察窓32aの奥の対物レンズ系32b、および挿入部32と本体部31とイメージケーブル34に通されたイメージガイド36(像伝送手段)を経て、イメージケーブル34先端のイメージコネクタ34aに至る。さらに、このイメージコネクタ34a接続されたカメラヘッドユニットやカメラコントロールユニットによって電気信号さらには映像信号に変換され、テレビモニタ(何れも図示せず)に映し出されるようになっている。なお、子内視鏡30として、CCDなどの撮像素子内蔵の電子内視鏡を用いることにしてもよい。
【0022】
上記のように構成された圧迫止血装置1の使用例を説明する。
患者の頭蓋に直径約1cm程度の穴を開け、そこから内視鏡10の挿入部12を挿入することにより、脳Bの内視鏡手術などを行なっているものとする。
ここで、図2に示すように、脳Bの例えば細い血管が破壊されてそこから出血していたとすると、血液が、その出血部位だけでなく、周辺に延び広がっている。内視鏡10によれば頭部内を自在に探査でき、上記の出血を容易に見付けることができる。見付けたら直ちに止血処置を施す。
【0023】
すなわち、先ず親内視鏡10の挿入部12の先端を、出血で出来た血液溜まりに約10mm程度の所まで近づけ、この血液溜まりに埋もれた出血部位のおおまかな見当を付ける。その後は、親内視鏡10を動かさない。
【0024】
一方、子内視鏡30の挿入部32をバルーンカテーテル20のルーメン21aおよびチューブ22に予め挿入しておく。そして、バルーンカテーテル20のチューブ22を、上記固定した親内視鏡10のチャンネル18に挿し入れ、その先端のバルーン23をチャンネル18の先端開口から突出させる。バルーン23が突出したかどうかは、親内視鏡10によって観察、確認することができる。
【0025】
また、子内視鏡30の挿入部32をバルーンカテーテル20に対して軸線に沿って前後動させ、子内視鏡30によって脳Bの出血部位周辺を明瞭に観察できるようにする。挿入部32の位置を確定後、カテーテル20の基端リング21rを締め付ける。
【0026】
そして、デキストランからなるバルーン膨張用透明流体を供給源40からカテーテル20のポート部24に供給する。この透明流体は、ポート部24の内部通路24a、ルーメン21aの内周面と挿入部32の外周面との間、およびチューブ22の内周面と挿入部32の外周面との間を順次通り、チューブ22の先端開口から吐出される。これによって、図3に示すように、バルーン23を20mmφ程度まで膨らませることができ、この膨らんだバルーン23を脳Bの出血部位周辺に押し当てることができる。これによって、出血部位を直接圧迫でき、それ以上の出血を止めることができる。
【0027】
バルーン23は、脳Bの表面に合わせて変形し、出血部位周辺の広い範囲にわたって押し付けられた状態になる。したがって、上述したように、おおまかな位置さえ見当が付けられれば十分であり、微細な点状の出血部位を極細のカテーテル20でピンスポット的に狙い定める必要がない。また、バルーン23の押し付けによって、バルーン23と脳Bとの間の血液が排除される。したがって、子内視鏡30によって脳Bの表面を透明なバルーン23越しに観察することができる。これによって、バルーン23を押し付けた範囲内に出血部位が含まれているか否かを確認でき、ひいては止血が確実になされているか否かを確認することができる。
【0028】
子内視鏡30の挿入部32は、バルーン23のチューブ22に対して前後に位置調節できる。これにより、圧迫止血状態の観察を一層確実に行なうことができる。
【0029】
本装置1によれば、出血部位を直接圧迫して止血するので、脳の圧力を高める従来方法よりもはるかに短時間(例えば5分程度)で止血を完了することができる。
【0030】
バルーン23を離しても出血が起きないことを確認後、膨張用流体を吸い戻してバルーン23を収縮させ、バルーンカテーテル20及び子内視鏡30を親内視鏡10のチャンネル18から引き抜く。
【0031】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を採用可能である。
例えば、出血を外部から直接確認できるような場合は、第2内視鏡(親内視鏡)を使わずに、はじめからバルーンカテーテル及び第1内視鏡(子内視鏡)だけで操作を行なってもよい。
バルーンカテーテルには、子内視鏡を通す内視鏡通路とバルーン膨張用流体を通す流体通路とが別々に形成されていてもよい。この場合、内視鏡通路は、カテーテル挿入部の先端面に開口されている必要があるが、流体通路は、カテーテル挿入部の先端面ではなく周側部に開口されていてもよい。バルーンを下から出血部位に当てる場合には、バルーン膨張用流体として空気などの比較的比重の軽い物質を用いてもよい。カテーテル挿入部を透明材料で構成してもよい。
本発明の圧迫止血装置は、脳の出血に限らず、体の各所の出血を止めるのに適用できる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る圧迫止血装置によれば、体表面に小さな穴を開けるだけで挿入でき、患者への負担を軽減できる。そして、バルーンを膨らませて出血部位を直接圧迫でき、出血を短時間で止めることができる。また、カテーテル挿入部が極細であってもバルーンを膨らませることによって出血部位周辺の広い範囲にわたって押し当てることができるので、出血部位を特定しなくてもそのおおまかな位置さえ見当が付けられれば、確実に圧迫止血することができる。また、押し当てられた部分を第1内視鏡によって透明バルーン越しに観察することができ、止血が確実になされているか否かを容易に確認することができる。さらに、第1内視鏡をバルーン挿入部に対して前後に位置調節することにより、圧迫止血状態の観察を一層確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧迫止血装置を分解して示す側面図である。
【図2】上記圧迫止血装置にて脳の出血を圧迫止血する手順を、カテーテル挿入部を出血部位周辺に近付けた状態で示す拡大側面図である。
【図3】上記圧迫止血装置にて脳の出血を圧迫止血する手順を、バルーンを膨らませて出血部位周辺に押し付けた状態で示す拡大側面図である。
【符号の説明】
1 圧迫止血装置
10 親内視鏡(第2内視鏡)
20 バルーンカテーテル
21a ルーメン(内視鏡通路および流体通路)
22 チューブ(カテーテル挿入部、内視鏡通路、流体通路、共通の通路)
23 バルーン
24 バルーン膨張用流体供給源の接続ポート部
30 子内視鏡(第1内視鏡)

Claims (3)

  1. (a)観察光軸を前方へ向けた第1内視鏡と、
    (b)上記第1内視鏡を挿通する内視鏡通路および流体通路の形成された挿入部、及び該挿入部の先端面に被さるようにして設けられた透明なバルーンとを有し、上記内視鏡通路が、上記挿入部の先端面に開口されるとともに、上記流体通路が、上記バルーンで覆われるようにして上記挿入部の先端部に開口されており、この流体通路を経た透明な膨張用流体によって上記バルーンが上記挿入部の先端面から前方へ向けて膨らまされるバルーンカテーテルと
    を備えたことを特徴とする圧迫止血装置。
  2. 上記バルーンカテーテルの挿入部において、上記内視鏡通路と流体通路とが、上記挿入部の先端面に開口する共通の通路によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧迫止血装置。
  3. (c)観察光軸を前方へ向け、上記バルーンカテーテルの挿入部を挿通可能な第2内視鏡を、更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の圧迫止血装置。
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