JP2004222539A - 新規な癌遺伝子、該癌遺伝子由来の組換えタンパク質、およびそれらの用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】子宮頸癌の進展に関与する、ヒト由来の新規な癌遺伝子であって、特定のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含んでなる癌遺伝子ポリヌクレオチド。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒトの子宮頸癌の進展に関与する、ヒト由来の新規な癌遺伝子、該癌遺伝子由来の組換えタンパク質、およびそれらの医学分野での用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
癌の発生には、染色体不安定性が関与するとの報告が数多くある。加えて、近年、細胞周期のG2/M期の間でのチェック・ポイントを制御する分子の異常が、染色体不安定性を引き起こすことが示された。しかし、多くの癌細胞においては、それらのチェック・ポイントを制御する分子の遺伝子異常の頻度は低く、その癌発生に深く関与する、染色体不安定性を誘導するメカニズムは不明な点が多く残されている。
【0003】
一方、子宮頸癌の発生には、ヒト・パピローマウイルス(HPV:humanpapilloma virus)、例えば、16型や18型のHPVの感染が関与することがよく知られている。子宮頸癌の組織中には、90%異常の頻度でHPVの感染が認められる。HPV感染により誘起される子宮頸癌の発症機構では、そのウイルス遺伝子産物であるE6とE7が重要な役割を果す。すなわち、E6は、p53腫瘍サプレッサー蛋白質の分解過程を促進し、また、E7は、Rb遺伝子産物のpRB(retinoblastoma)腫瘍サプレッサー蛋白質の癌化抑制機能を阻害することにより、腫瘍化を引き起こすことが知られている。しかしながら、HPV感染に伴い、活性化を受ける癌蛋白質自体は、未だに特定されていない。特に、HPVのウイルス遺伝子産物であるE6とE7は、染色体不安定性を誘導し、さらには、細胞を癌化させるが、その直接的な機構の詳細には、不明な点が多く残されている。このことから、子宮頸癌の治療を考える上で、HPVの標的となる癌蛋白質、それをコードする癌遺伝子の同定は、非常に重要なことである。また、子宮頸癌では、dysplasia(子宮頸部扁平上皮の上皮性形成異常)という前癌状態を経て、浸潤癌へと進展していく。症例によっては、dysplasiaのまま、癌に進展せずに、dysplasiaの状態に留まる場合もある。また、一方では、dysplasiaの状態から、急速に進行癌に発展していく症例も存在する。これらのことをも考慮すると、子宮頸癌の進展に直接的に関与する分子の同定が、より正確な癌診断にも重要なことと考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述するように、子宮頸部上皮細胞へのHPVの感染が起因となり、dysplasiaという前癌状態を経て、浸潤癌へと進展する過程では、p53腫瘍サプレッサー蛋白質やpRB腫瘍サプレッサー蛋白質によって、その発現の抑制がなされていた何らかの癌遺伝子が、その発現抑制機能が損なわれた結果、高発現状態となることが、その直接の要因となっていると考えられる。従って、先ず、この癌遺伝子の全塩基配列、さらに、それがコードする癌蛋白質を特定することによって、該癌蛋白質の生化学的な機能を阻害する手段、引いては、該癌蛋白質によって進展がなされる癌化機構を阻害する手段の開発への道が開かれる。
【0005】
一方、癌遺伝子の全塩基配列、ならびに、それがコードする癌蛋白質のアミノ酸配列が判明すると、癌遺伝子から転写されるmRNAの発現を検出するための核酸プローブ、あるいは、組換え生産癌蛋白質を利用して、該癌蛋白質に対する特異的抗体の創製も可能となる。つまり、子宮頸部でのHPV感染に起因する、dysplasiaという前癌状態を経て、浸潤癌へと進展する段階の診断に有用な、核酸プローブや特異的抗体を利用する診断手段の開発も可能となる。
【0006】
本発明は前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、子宮頸部上皮細胞へのHPVの感染が起因となる子宮頸癌などにおける、癌化機構に直接関与する、新規なヒト由来の癌遺伝子の全塩基配列、ならびに、それがコードする癌蛋白質のアミノ酸配列を解明し、該癌蛋白質の組換え生産に利用可能な、新規な癌遺伝子に由来する該癌蛋白質のペプチド鎖をコードする完全長のポリヌクレオチド、ならびに、組換え生産された該癌蛋白質のペプチド鎖を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、環境ホルモンを添加した時に、子宮頸癌細胞において発現が上昇する遺伝子を見出し、クローニングすることに成功した。本発明者らは、
(1)この遺伝子が、癌細胞で高発現していること、
(2)子宮頸癌はHPV感染により生じるが、細胞にHPV由来のE6とE7遺伝子を導入し、E6とE7蛋白質を発現させると、発現が高まること、
(3)p53蛋白質がこの遺伝子のプロモーター領域の活性を抑制すること、
(4)p53蛋白質の欠損や変異が子宮頸癌の進展に関与すること、
(5)本遺伝子の発現を干渉性短鎖RNA(siRNA)二重鎖によって発現を抑制すると癌の増殖が停止することから、この遺伝子が癌遺伝子と考え、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかる癌遺伝子ポリヌクレオチドは、
子宮頸癌の進展に関与する、ヒト由来の新規な癌遺伝子であって、
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含んでなることを特徴とする癌遺伝子ポリヌクレオチドである。特には、前記配列番号:1で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列が、配列番号:2で表わされる塩基配列であることを特徴とするポリヌクレオチドである。
【0009】
また、本発明は、上記の本発明にかかる癌遺伝子ポリヌクレオチドに基づき、組換え生産されるペプチドまたはその塩の発明をも提供し、すなわち、本発明にかかる組換え生産ペプチドは、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列または該アミノ酸配列の部分アミノ酸配列を含んでなることを特徴とする組換え生産ペプチドまたはその塩である。特には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする組換え生産型癌蛋白質である。さらには、前記組換え生産されるペプチドの調製に利用される、該組換え生産ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなることを特徴とする組換えベクターが併せて提供される。例えば、かかる組換えベクターは、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなる本発明の組換え生産型癌蛋白質を対象とする際には、上記の配列番号:1で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含んでなる癌遺伝子ポリヌクレオチド、特には、その配列番号:1で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列が、配列番号:2で表わされる塩基配列であるポリヌクレオチドを含んでなることを特徴とする組換えベクターとなる。
【0010】
さらに、本発明は、宿主細胞を、前記の組換えベクターを用いて形質転換してなることを特徴とする形質転換体細胞、例えば、宿主細胞を、前記本発明の組換え生産型癌蛋白質を対象とする組換えベクターを用いて形質転換してなることを特徴とする形質転換体細胞も提供する。従って、本発明の組換え生産ペプチドまたはその塩の製造方法は、
本発明にかかる癌遺伝子由来の組換え生産ペプチドまたはその塩を生産する方法であって、
上記の形質転換体細胞を培養し、該形質転換体細胞に本発明にかかる組換え生産ペプチドを産生させ、
培養物より、産生される該組換え生産ペプチドを回収することを特徴とする組換え生産ペプチドまたはその塩の製造方法となる。特には、本発明にかかる組換え生産型癌蛋白質を生産する方法であって、
完全長の遺伝子DNAを組み換えてある、上記の形質転換体細胞を培養し、該形質転換体細胞に本発明にかかる組換え生産型癌蛋白質を産生させ、
培養物より、産生される該組換え生産型癌蛋白質を回収することを特徴とする組換え生産型癌蛋白質の製造方法となる。
【0011】
上記の本発明にかかる組換え生産ペプチドの利用によって、この組換え生産ペプチドを免疫原として、創製される特異的抗体であることを特徴とする抗体の発明がもたらされる。例えば、本発明にかかる抗体は、前記配列番号:1で表わされるアミノ酸配列中、第623番〜第1185番目の部分アミノ酸配列部と反応性を示すことを特徴とする抗体とすることができる。
【0012】
加えて、本発明は、かかる特異的抗体を含んでなり、
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有する癌蛋白質、または該癌蛋白質由来のペプチド断片の検出に利用可能であることを特徴とする抗原・抗体反応用抗体試薬キットをも提供する。あるいは、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有する癌蛋白質、または該癌蛋白質由来のペプチド断片の抗原・抗体反応による検出に利用される診断キットであって、本発明にかかる特異的抗体を含んでなることを特徴とする診断キットを提供する。
【0013】
また、本発明は、配列番号:2で表わされる塩基配列中の部分塩基配列と相補的な塩基配列を含んでなるポリヌクレオチドであり、
少なくとも、15塩基長〜300塩基長の範囲に選択されるDNA断片であることを特徴とするアンチセンス・ポリヌクレオチドをも提供する。同時に、本発明にかかるプローブ・ハイブリダイゼーションキットとして、配列番号:2で表わされる塩基配列または、その部分塩基配列を含んでなるmRNA、または該mRNAより調製されるcDNAの検出に利用可能であるプローブ・ハイブリダイゼーションキットであって、
該DNAプローブとして、前記のアンチセンス・ポリヌクレオチドを含むことを特徴とするプローブ・ハイブリダイゼーションキットを提供する。あるいは、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有する癌蛋白質へと翻訳される、配列番号:2で表わされる塩基配列を含んでなるmRNA発現のプローブ・ハイブリダイゼーション法による検出に利用される診断キットであって、
ハイブリダイゼーション・プローブとして、前記のアンチセンス・ポリヌクレオチドを含むことを特徴とする診断キットを提供する。
【0014】
一方、本発明は、配列番号:2で表わされる塩基配列を含んでなるcDNAのPCR増幅用のプライマー対であって、
塩基配列:5’−TTGGATCCATGACATCCAGATTTGGGAAAACATACAGTAGG−3’;
塩基配列:5’−TTGAATTCCTAGCAATGTTCCAAATATTCAATCACTCTAGA−3’
の対プライマーからなることを特徴とするPCR増幅用プライマー対をも提供しており、さらには、配列番号:2で表わされる塩基配列を含んでなるcDNA中の部分鎖PCR増幅用のプライマー対であって、
5’−GAATTCATAGGCACAGCGCTGAACTGTGTG−3’;
5’−TTGAATTCCTAGCAATGTTCCAAATATTCA−3’の対プライマーからなることを特徴とするPCR増幅用プライマー対をも提供する。
【0015】
本発明は、その他にも、干渉性短鎖RNA二重鎖の発明として、子宮頸癌細胞において、配列番号:2で表わされる塩基配列を含んでなるmRNAの発現を抑制可能な干渉性短鎖RNA二重鎖であって、
該干渉性短鎖RNA二重鎖は、
下記塩基配列:CGGACTACCCTTAGCACAA
を有することを特徴とする干渉性短鎖RNA二重鎖を提供する。同時に、子宮頸癌細胞において、配列番号:2で表わされる塩基配列を含んでなるmRNAの発現を抑制することによって、癌細胞の増殖を停止させる医薬組成物であって、
上記本発明にかかる干渉性短鎖RNA二重鎖を含むことを特徴とする医薬組成物へと利用することもできる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本発明者らは、子宮頸癌細胞においても、その癌化機構には、染色体不安定性が深く関与すると想定し、染色体不安定性を誘起する要因となるヒト由来の蛋白質を探索した。特には、染色体不安定性の中でも、異数性や同位体遺伝子形成などを誘起する可能性の高い蛋白質を探索した。
【0018】
動物中において、最もそのゲノム遺伝子の研究が進んでいる、ショウジョウバエである、Drosophila melanogasterに由来する各種の蛋白質のうち、減数分裂過程において、その分裂間期における異質染色質構造を制御する蛋白質として、dWAPL蛋白質が報告されていることに、本発明者らは着目した。すなわち、本発明者らは、通常の細胞の有糸分裂過程において、かかる異質染色質構造を制御する蛋白質の示す機能が発揮されると、場合によっては、異数性や同位体遺伝子形成などを誘起する可能性があることに気付いた。実際に、ヒトのゲノム遺伝子上にも、かかるdWAPLに相当する蛋白質がコーデングされているか否かを、先ず検討した。報告されているdWAPL遺伝子(GenBank accession No.U40214)の塩基配列に基づき、ヒト由来の遺伝子断片として、GenBank中に登録されているcDNA断片について、有意な類似性を示すものの検索を行ったところ、KIAA0261断片が、該dWAPL遺伝子と類似性を示す塩基配列を有するものとして選択された。
【0019】
本発明者らは、該KIAA0261断片を含む、完全長のcDNAを特定するため、かかるKIAA0261断片の5’側上流部の塩基配列と想定される、非翻訳部を含む断片の可能性を有する、ヒト由来の発現タグ部塩基配列を、ESTデータ・ベース中で検索したところ、BE410177,BF79516、BE257022の各ESTクローンが選別された。
【0020】
本発明者らは、5’−RACE法を利用して、前記ESTクローンを参照しつつ、KIAA0261断片の5’側上流部の塩基配列を決定した。さらには、dWAPLと類似する機能を発揮する蛋白質は、減数分裂過程を有する細胞では、実際に発現されている可能性が高くので、本発明者らは、市販のcDNAライブラリーである、ヒト精巣cDNAキット(Marathon−Ready TMcDNA Kit; Clontech 社)を鋳型として、該KIAA0261断片の塩基配列を内在し、また、決定された5’側上流部の塩基配列をも有する完全長のcDNAをクローニングした。
【0021】
実際に、配列決定を行ったところ、クローニングされた完全長のcDNA中のコード領域は、3570塩基対であり、対応する1190アミノ酸からなるアミノ酸配列が推定された。dWAPL蛋白質と類似する、ヒト由来の蛋白質として、さらには、dWAPL蛋白質と、human WAPL(hWAPL)と命名し、対応する遺伝子をhWAPL遺伝子と称する。なお、該hWAPL遺伝子のORFに相当する完全長の塩基配列は、配列番号:2に、hWAPL蛋白質のアミノ酸配列は、配列番号:1に示す。また、本発明にかかる該hWAPL遺伝子のORFにコードされるアミノ酸配列、すなわち、hWAPL蛋白質のアミノ酸配列と、dWAPL蛋白質のアミノ酸配列との対比を行ったところ、図1に示されるように、C末側の623番目〜1185番目の部分アミノ酸配列において、35%の同一性、53%の類似性が見出される。かかる同一性と、類似性を示すアミノ酸を、図2に示す。
【0022】
加えて、本発明者らは、ヒト以外の哺乳動物も、対応する蛋白質を有すると予想して、マウス由来のホモログ、mouse WAPL蛋白質をコードするcDNAをクローニングした。その塩基配列を行って、コードされるアミノ酸配列の対比を行った。実際に、human WAPL蛋白質と、mouse WAPL蛋白質とは、極めて高い相同性を示すことが確認された。図3に、その対比結果を示す。なお、human WAPL遺伝子の完全長コード領域の塩基配列は、発明者によって、DDBJ/EMBL/GenBankに、accessionNo.AB065003として、登録される。
【0023】
以下の実施例6に説明する、該human WAPL蛋白質のペプチド鎖に特異的な抗体、抗hWAPL−N抗体と抗hWAPL−C抗体を利用して、Saos−2細胞とNIH3T3細胞の抽出物について、ウエスタン・ブロット解析を行ったところ、図4に示すように、140kDa付近に、前記抗体と反応する蛋白質のバンドが見出された。従って、実際に、該human WAPL蛋白質は、ヒト由来細胞中にある程度の量で存在することを確認した。
【0024】
加えて、以下に示す各種の検証を行った上で、
(実施例2) ヒトの癌組織におけるhWAPL遺伝子の発現
(実施例3) HPV 16型由来のE6及びE7による、hWAPL遺伝子発現の誘発
(実施例4) p53サプレッサー蛋白質による、hWAPL遺伝子のプロモーター活性の抑制
(実施例7) hWAPL蛋白質による染色体不安定性誘導
(実施例8) hWAPL蛋白質によるNIH 3T3線維芽細胞の癌化誘導このhWAPL遺伝子は、少なくとも、子宮頸癌の発症機構に関与する癌遺伝子であることが結論される。
【0025】
なお、後述の実施例1で取得された、該hWAPL遺伝子の完全長cDNAを保持する形質転換体、Escherichia coli DH5 pGEMhWAPL 菌株の作製に用いられた該hWAPL遺伝子の完全長cDNAを保持するプラスミドpGEMhWAPLは、2003年 1月 7日付けの原寄託日で、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(生命工学工業技術研究所)に、ブタペスト条約に基ずく該国際寄託機関における、寄託番号FERM BP−8269として、寄託されている。
【0026】
加えて、本発明者らは、hWAPL遺伝子産物であるhWAPL蛋白質の発現は、干渉性短鎖RNA(siRNA)二重鎖を利用することで抑制されることも確認した。具体的には、かかる発現抑制作用を示す干渉性短鎖RNA(siRNA)二重鎖は、下記する塩基配列:CGGACTACCCTTAGCACAA
を有するものを挙げることができる。その際、癌細胞の更なる増殖も抑制を受けるため、癌の進展を停止することも可能である。
本発明の配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有する蛋白質(以下、本発明の蛋白質と略記する場合がある)は、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
【0027】
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドなどが好ましい。
【0028】
実質的に同質の活性としては、例えば、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質が有する活性、例えば、癌を誘発する作用、酵素活性、転写活性、結合タンパク質との結合活性などが挙げられる。
【0029】
実質的に同質とは、それらの活性が性質的に(例、生理化学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。
【0030】
配列番号:1で表わされるアミノ酸酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列の具体例としては、
(i)配列番号:1で表わされるアミノ酸酸配列
(ii)配列番号:1で表わされるアミノ酸酸配列中の1〜30個(好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(iii)配列番号:1で表わされるアミノ酸酸配列に1〜30個(好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
(iv) 配列番号:1で表わされるアミノ酸酸配列に1〜30個(好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、
(v) 配列番号:1で表わされるアミノ酸酸配列中の1〜30個(好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
(vi)上記(ii)〜(v)を組み合わせたアミノ酸配列などがあげられる。
【0031】
本発明の蛋白質の具体例としては、例えば、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質などが挙げられる。
【0032】
本発明の部分ペプチドとしては、前記した本発明の蛋白質の部分ペプチドであれば何れのものであってもよいが、通常、アミノ酸が5個以上、好ましくは10個以上からなるペプチドが好ましく、さらには、本発明の蛋白質と同様の活性を有するものが好ましい。
【0033】
本発明の蛋白質またはその部分ペプチド(以下、本発明の蛋白質と略記する場合がある)は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。
【0034】
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質をはじめとする、本発明の蛋白質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
【0035】
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
【0036】
本発明の蛋白質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の蛋白質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
【0037】
さらに、本発明の蛋白質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
【0038】
本発明の蛋白質の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。以下、塩も含めて、本発明の蛋白質と称する。
【0039】
本発明の蛋白質またはその塩は、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から自体公知の蛋白質の精製方法によって製造することもできるし、後述する蛋白質をコードするDNAで形質転換された形質転換体を培養することによっても製造することができる。
【0040】
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0041】
本発明の癌蛋白質をコードするポリヌクレオチドとしては、上記した本発明の癌蛋白質をコードする塩基配列(DNAまたはRNA、好ましくはDNA)を含有するものであればいかなるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、本発明の癌蛋白質をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。
【0042】
本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチドを用いて、例えば、公知の実験医学増刊「新PCRとその応用」15(7)、1997記載の方法またはそれに準じた方法により、本発明の蛋白質のmRNAを定量することができる。
【0043】
本発明の蛋白質をコードするDNAとしては、前述した本発明の蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
【0044】
ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0045】
本発明のプローブDNAに利用可能な塩基配列としては、例えば配列番号:2で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAの塩基配列などであれば何れのものでもよい。
【0046】
配列番号:2で表わされる塩基配列とハイ・ストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる塩基配列としては、例えば、配列番号:2で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが用いられる。
【0047】
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
【0048】
ハイ・ストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
【0049】
より具体的には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号:2で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0050】
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、前述した本発明の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
【0051】
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2で表わされる塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または、配列番号:2で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
【0052】
配列番号:2で表わされる塩基配列とハイブリダイズできる塩基配列は、前記と同意義を示す。
【0053】
ハイブリダイゼーションの方法およびハイ・ストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
【0054】
本発明の蛋白質またはその部分ペプチド(以下、本発明の蛋白質と略記する場合がある)をコードするDNAの塩基配列の一部、または該DNAと相補的な塩基配列の一部を含有してなるポリヌクレオチドとは、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを包含するだけではなく、RNAをも包含する意味で用いられる。
【0055】
本発明に従えば、本発明の蛋白質遺伝子の複製または発現を阻害することのできるアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化した、あるいは決定された本発明の蛋白質をコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたポリヌクレオチド(核酸)は、本発明の蛋白質遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成または機能を阻害することができるか、あるいは本発明の蛋白質関連RNAとの相互作用を介して本発明の蛋白質遺伝子の発現を調節・制御することができる。本発明の蛋白質関連RNAの選択された配列に相補的なポリヌクレオチド、および本発明の蛋白質関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、生体内および生体外で本発明の蛋白質遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ヌクレオチド、塩基配列または核酸とペプチド(蛋白質)との間で「対応する」とは、ヌクレオチド(核酸)の配列またはその相補体から誘導される指令にある蛋白質(ペプチド)のアミノ酸を通常指している。本発明の蛋白質遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、蛋白質翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、および3’端ヘアピンループは好ましい対象領域として選択しうるが、本発明の蛋白質遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
【0056】
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドとの関係は、対象物とハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドとの関係は、「アンチセンス」であるということができる。アンチセンス・ポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販の蛋白質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0057】
本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。
【0058】
こうして修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al., Pharm Tech Japan, Vol. 8,pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992;S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
【0059】
本発明のアンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった粗水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0060】
アンチセンス核酸の阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいは本発明の蛋白質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸それ自体公知の各種の方法で細胞に適用できる。
【0061】
本発明の蛋白質をコードするDNAは、自体公知の方法で標識化されていてもよく、具体的にはアイソトープラベル化されたもの、蛍光標識されたもの(例えば、フルオレセインなどによる蛍光標識)、ビオチン化されたものまたは酵素標識されたものなどがあげられる。
【0062】
本発明の蛋白質を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明の蛋白質の部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いて自体公知のPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明の蛋白質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0063】
DNAの塩基配列の変換は、公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))等を用いて、ODA−LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
【0064】
クローン化されたペプチドをコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
【0065】
本発明の蛋白質の発現ベクターは、例えば、(イ)本発明の蛋白質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0066】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニア・ウイルス,バキュロ・ウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
【0067】
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、HIV・LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどがあげられる。
【0068】
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0069】
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子の導入をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
【0070】
選択マーカー遺伝子としては、レポーター遺伝子や薬剤耐性遺伝子が用いられる(新生化学実験講座2、核酸III、3.6動物細胞発現ベクター、p84−103)。
【0071】
薬剤耐性遺伝子と薬剤の組み合わせとしては、
(1)ピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子とピューロマイシンとの組み合わせ、
(2)アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(APH)とG418との組み合わせ、
(3)ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子(HPH)とハイグロマイシンBとの組み合わせ、
(4)キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)とマイコフェノール酸との組み合わせ、などを用いることができる。
【0072】
また、親株の細胞株がヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)またはチミジンキナーゼ(TK)欠損株である場合、これらの遺伝子とHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)との組み合わせを用いることができる。
【0073】
さらに、選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸還元酵素やアンピシリン耐性遺伝子などを用いることもできる。
【0074】
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明の蛋白質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
【0075】
このようにして構築された本発明の蛋白質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0076】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
【0077】
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology),120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
【0078】
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
【0079】
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
【0080】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213−217,(1977))などが用いられる。
【0081】
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
【0082】
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7(COS7),Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr−)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
【0083】
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0084】
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0085】
酵母を形質転換するには、例えば、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0086】
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology), 6, 47−55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0087】
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
【0088】
このようにして、本発明の蛋白質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
【0089】
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0090】
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor LaboHumanory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
【0091】
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
【0092】
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
【0093】
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0094】
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0095】
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceedingof the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0096】
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外などに本発明の蛋白質を生成せしめることができる。
【0097】
上記培養物から本発明の蛋白質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
【0098】
本発明の蛋白質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により本発明の蛋白質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にペプチドが分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
【0099】
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる本発明の蛋白質の精製は、自体公知の分離・精製法を適宜組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0100】
かくして得られる本発明の蛋白質が遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
【0101】
なお、組換え体が産生する本発明の蛋白質を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
【0102】
本発明の蛋白質に対する抗体(以下、単に本発明の抗体と称する場合がある)は、本発明の蛋白質に対する抗体を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
【0103】
本発明の蛋白質に対する抗体は、本発明の蛋白質を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0104】
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明の蛋白質は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリがあげられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
【0105】
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化ペプチドと抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどがあげられるが、好ましくはPEGが用いられる。
【0106】
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄腫細胞があげられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
【0107】
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、ペプチド(蛋白質)抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したペプチドを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などがあげられる。
【0108】
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0109】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
【0110】
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(ペプチド抗原)自体、あるいはそれとキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明の蛋白質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。
【0111】
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
【0112】
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
【0113】
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
【0114】
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
【0115】
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0116】
本発明の蛋白質をコードするDNA(以下、これらのDNAを本発明のDNAと略記する場合がある)に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列を有するアンチセンスDNA(以下、これらのDNAをアンチセンスDNAと略記する場合がある)としては、本発明のDNAに相補的な、または実質的に相補的な塩基配列を有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスDNAであってもよい。
【0117】
本発明のDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明のDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本発明のDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などがあげられる。特に、本発明のDNAの相補鎖の全塩基配列うち、本発明の蛋白質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスDNAが好適である。これらのアンチセンスDNAは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
【0118】
以下に、本発明にかかる癌蛋白質(部分ペプチド、塩も含む)、本発明のDNA、本発明の抗体、およびアンチセンスDNAの用途を説明する。
【0119】
(2)本発明にかかる癌蛋白質の発現を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法
本発明の癌蛋白質、本発明のオリゴヌクレオチド、本発明の形質変換体または本発明の抗体は、本発明の蛋白質の発現を促進または阻害する化合物のスクリーニング法に使用することができる。
【0120】
すなわち、本発明では、
(i)本発明にかかる癌蛋白質を発現し得る細胞または組織を、試験化合物の存在下および非存在下で培養した場合における、それぞれの本発明にかかる癌蛋白質の発現量または本発明の癌蛋白質をコードするmRNA量を測定し、比較することを特徴とする本発明の癌蛋白質の発現を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0121】
本発明にかかる癌蛋白質を発現し得る細胞または組織としては、ヒト由来の細胞や温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サル等)の細胞(例えば、神経細胞、内分泌細胞、神経内分泌細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、肝細胞、脾細胞、メサンギウム細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、樹状細胞)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞等、もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、唾液腺、末梢血、前立腺、睾丸(精巣)、卵巣、胎盤、子宮、骨、軟骨、関節、骨格筋等を用いても良い。その際、株化細胞、初代培養系を用いてもよい。特には、前記した本発明の形質転換された形質変換体細胞を使用することが望ましい。
【0122】
本発明にかかる蛋白質を発現し得る細胞の培養方法は、前記した本発明の形質変換体の培養法と同様である。
【0123】
試験化合物としては、前記の試験化合物の他、DNAライブラリーなどを用いることができる。
【0124】
本発明にかかる癌蛋白質の発現量は、抗体などを用いて免疫化学的方法などの公知の方法により測定することもできるし、本発明にかかる癌蛋白質をコードするmRNAを、ノーザン・ハイブリダイゼーション法、RT−PCRやTaqMan PCR法を用いて、公知の方法により測定することもできる。
【0125】
mRNAの発現量の比較をハイブリダイゼーション法によって行う場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook etal., Cold Spring Harbor Lab. Press,1989)に記載の方法等に従って行なうことができる。
【0126】
具体的には、本発明にかかる癌蛋白質をコードするmRNAの量の測定は、公知の方法に従って細胞から抽出したRNAと、本発明のポリヌクレオチドもしくはその一部または本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドとを接触させ、本発明のポリヌクレオチドもしくはその一部または本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチド結合したmRNAの量を測定することによって行われる。本発明のポリヌクレオチドもしくはその一部または本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドを、例えば、放射性同位元素、色素などで標識することによって、本発明のポリヌクレオチドもしくはその一部または本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドに結合したmRNAの量が容易に測定できる。放射性同位元素としては、例えば32P、3Hなどが用いられ、色素としては、例えばfluorescein、FAM(PE Biosystems社製)、JOE(PE Biosystems社製)、TAMRA(PE Biosystems社製)、ROX(PE Biosystems社製)、Cy5(Amersham社製)、Cy3(Amersham社製)などの蛍光色素が用いられる。
【0127】
また、mRNAの量は、細胞から抽出したRNAを逆転写酵素によってcDNAに変換した後、本発明のポリヌクレオチドもしくはその一部または本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドをプライマーとして用いるPCRによって、増幅されるcDNAの量を測定することによって行うことができる。
【0128】
このように、本発明の癌蛋白質をコードするmRNAの量を増加させる試験化合物を、本発明の癌蛋白質の発現を促進する活性を有する化合物として選択することができ、また本発明の癌蛋白質をコードするmRNAの量を減少させる試験化合物を、本発明の癌蛋白質の発現を阻害する活性を有する化合物として選択することができる。
【0129】
さらに、本発明では、
(ii)本発明の癌蛋白質をコードする遺伝子のプロモーター領域またはエンハンサー領域の下流にレポーター遺伝子を連結した組換えDNAで形質転換した形質転換体を試験化合物の存在下および非存在下で培養した場合における、それぞれのレポーター活性を測定し、比較することを特徴とする当該プロモーター活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0130】
レポーター遺伝子としては、例えば、lacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、成長因子、β−グルクロニダーゼ、アルカリ・ホスファターゼ、Green fluorescent protein (GFP)、β−ラクタマーゼなどが用いられる。
【0131】
レポーター遺伝子産物(例、mRNA、タンパク質)の量を公知の方法を用いて測定することによって、レポーター遺伝子産物の量を増加させる試験化合物を本発明の蛋白質のプロモーターもしくはエンハンサーの活性を制御(特に促進)する作用を有する化合物、すなわち本発明の蛋白質の発現を促進する活性を有する化合物として選択できる。逆に、レポーター遺伝子産物の量を減少させる試験化合物を本発明の蛋白質のプロモーターもしくはエンハンサーの活性を制御(特に阻害)する作用を有する化合物、すなわち、本発明の癌蛋白質の発現を阻害する活性を有する化合物として選択することができる。
【0132】
試験化合物としては、前記と同様のものが使用される。
【0133】
レポーター遺伝子を含むベクター構築やアッセイ法は公知の技術に従うことができる(例えば、Molecular Biotechnology 13, 29−43, 1999)。
【0134】
なお、本発明の癌蛋白質の発現を阻害する活性を有する化合物は、本発明の癌蛋白質が有する生理活性を抑制することができるので、本発明の癌蛋白質の生理活性を抑制するための安全で低毒性な医薬として有用である。具体的には、肺癌、腎臓癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌などの癌、特に子宮頸部癌の予防・治療剤として有用である。
【0135】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物である。該化合物の塩としては、前記した本発明にかかる癌蛋白質由来のペプチドの塩と同様のものが用いられる。
【0136】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物を上述の治療・予防剤として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、前記した本発明の蛋白質を含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
【0137】
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、癌治療の目的で本発明の蛋白質の発現を阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kg当たり)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、癌治療木亭で本発明の蛋白質の発現を阻害する化合物を注射剤の形で通常成人(60kg当たり)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0138】
(3)本発明にかかる癌蛋白質の定量
本発明の抗体は、本発明の癌蛋白質を特異的に認識することができるので、被検液中の本発明にかかる癌蛋白質の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。
【0139】
すなわち、本発明では、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発明の蛋白質とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された本発明の蛋白質の割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明にかかる癌蛋白質の定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明にかかる癌蛋白質の定量法を提供する。
【0140】
上記(ii)の定量法においては、一方の抗体は、本発明の癌蛋白質のN端部を認識する抗体で、他方の抗体は、本発明の癌蛋白質のC端部に反応する抗体であることが望ましい。
【0141】
また、本発明の癌蛋白質に対するモノクローナル抗体を用いて、本発明の癌蛋白質の定量を行うことができるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab’)2、Fab’、あるいはFab画分を用いてもよい。
【0142】
本発明の抗体を用いる、本発明にかかる癌蛋白質の定量法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、ペプチド量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
【0143】
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリ・ホスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
【0144】
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常ペプチドあるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
【0145】
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明の蛋白質量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
【0146】
本発明のサンドイッチ法による本発明にかかる癌蛋白質の測定法においては、一次反応と二次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、本発明の癌蛋白質の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、一次反応および二次反応に用いられる抗体は、例えば、二次反応で用いられる抗体が、本発明の癌蛋白質のC端部を認識する場合、一次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
【0147】
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
【0148】
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第二抗体などを用いる液相法、および、第一抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第一抗体は可溶性のものを用い第二抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
【0149】
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
【0150】
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0151】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明の蛋白質の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
【0152】
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(PartC))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodiesand General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
【0153】
さらには、本発明の抗体を用いて、本発明の癌蛋白質の濃度を定量することによって、本発明にかかる癌蛋白質の濃度の減少が検出された場合、例えば、本発明の癌蛋白質の機能不全に関連する疾患である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
【0154】
また、本発明にかかる癌蛋白質の濃度の増加が検出された場合には、例えば、本発明の癌蛋白質の過剰発現に起因する疾患、例えば、肺癌、腎臓癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌などの癌(特に、子宮頸部癌)である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
【0155】
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明の癌蛋白質を検出するために使用することができる。また、本発明の癌蛋白質を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明の蛋白質の検出、被検細胞内における本発明の蛋白質の挙動の分析などのために使用することができる。
【0156】
(4)遺伝子診断剤
本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドは、例えば、核酸プローブとして使用することにより、主に、ヒトにおける、本発明の癌蛋白質をコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出する上でも利用することができる。例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該mRNAの発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
【0157】
本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザン・ハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedingsof the National Academy of Sciencesof the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
【0158】
例えば、ノーザン・ハイブリダイゼーションにより、mRNAの発現低下が検出された場合は、例えば、本発明の癌蛋白質の機能不全に関連する疾患である可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
【0159】
また、ノーザン・ハイブリダイゼーションにより、mRNAの発現過多が検出された場合は、例えば、本発明の癌蛋白質の過剰発現に起因する疾患(例えば、肺癌、腎臓癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌などの癌、特に子宮頸部癌)である可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
【0160】
(5)アンチセンス・ポリヌクレオチドを含有する医薬
本発明のポリヌクレオチド(例、DNA)に相補的に結合し、該ポリヌクレオチド(例、DNA)の発現を抑制することができる本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドは低毒性であり、生体内における本発明の蛋白質または本発明のポリヌクレオチド(例、DNA)の機能を抑制することができるので、例えば、本発明の蛋白質の過剰発現に起因する疾患、例えば、肺癌、腎臓癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌などの癌の予防・治療剤として有用である。
【0161】
上記アンチセンス・ポリヌクレオチドを上記の治療・予防剤として使用する場合は、該アンチセンス・ポリヌクレオチドを、上記した本発明のポリヌクレオチドの場合と同様にして製剤化することができる。
【0162】
このようにして得られる製剤は低毒性であり、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。
【0163】
なお、該アンチセンス・ポリヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進用の補助剤などの生理学的に認められる担体とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することもできる。
【0164】
該アンチセンス・ポリヌクレオチドの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより異なるが、例えば、癌治療の目的で本発明のアンチセンス・ヌクレオチドを臓器(例、肝臓、肺、心臓、腎臓など)に局所投与する場合、成人(体重60kg)に対して、一日当たり約0.1〜100mgである。
【0165】
さらに、該アンチセンス・ポリヌクレオチドは、組織や細胞における本発明の癌遺伝子DNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチド・プローブとして使用することもできる。
【0166】
本発明は、さらに
(i) 本発明の蛋白質をコードするRNAの一部とそれに相補的なRNAとを含有する二重鎖RNA、
(ii) 前記二重鎖RNAを含有してなる医薬、
場合によっては、
(iii) 本発明の蛋白質をコードするRNAの一部を含有するリボザイム、
(iv) 前記リボザイムを含有してなる医薬
を提供する。
【0167】
これらの二重鎖RNA(RNAi;RNA interference法)、リボザイムなどは、上記アンチセンス・ポリヌクレオチドと同様に、本発明のポリヌクレオチド(例、DNA)の発現を抑制することができ、生体内における本発明の癌蛋白質または本発明のポリヌクレオチド(例、DNA)の機能を抑制することができるので、例えば、本発明の癌蛋白質の過剰発現に起因する疾患(例えば、肺癌、腎臓癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌などの癌、特に子宮頸部癌)の予防・治療剤として有用である。
【0168】
二重鎖RNAは、公知の方法(例、Nature, 411巻, 494頁,2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。
【0169】
リボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine, 7巻, 221頁, 2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、本発明の蛋白質をコードするRNAの一部に公知のリボザイムを連結することによって製造することができる。本発明の蛋白質をコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得る本発明のRNA上の切断部位に近接した部分(RNA断片)が挙げられる。
【0170】
上記の二重鎖RNAまたはリボザイムを上記予防・治療剤として使用する場合、アンチセンス・ポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
【0171】
(6)本発明の抗体を含有する医薬
本発明の癌蛋白質の癌化誘導活性を中和する作用を有する本発明の抗体は、例えば、本発明の癌蛋白質の過剰発現に起因する疾患、例えば、肺癌、腎臓癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌などの癌、特に子宮頸部癌の予防・治療薬などの医薬として使用することができる。
【0172】
本発明の抗体を含有する上記疾患の治療・予防剤は、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して、経口的または非経口的に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、癌治療目的で成人に使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
【0173】
本発明の抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
【0174】
すなわち、例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
【0175】
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記抗体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
【0176】
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記抗体が含有されていることが好ましい。
【0177】
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
【0178】
(7)DNA転移動物
本発明は、ヒト由来の本発明にかかる癌蛋白質をコードするDNA(以下、本発明の癌遺伝子DNAと略記する)またはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、例えば、「ノック・イン」動物を提供する。
【0179】
すなわち、本発明は、
(1)本発明のヒト由来の癌遺伝子DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(「ノック・イン」動物)、
(2)非ヒト哺乳動物として、ゲッ歯動物を利用する該「ノック・イン」動物、
(3)ゲッ歯動物のうちでも、マウスまたはラットを利用する、該「ノック・イン」マウスまたはラット、ならびに
(4)本発明のヒト由来の癌遺伝子DNAまたはその変異DNAを含有し、該非ヒト哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
【0180】
本発明のヒト由来の癌遺伝子DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA転移動物を作出することもできる。
【0181】
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
【0182】
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
【0183】
本発明のヒト由来の癌遺伝子に対する変異DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明の癌遺伝子ホモログ体のDNAではなく、人為的な変異がなされているものをいう。
【0184】
本発明の変異DNAとしては、本発明のヒト由来の癌遺伝子DNAが有する本来の塩基配列に、変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
【0185】
該異常DNAとしては、正常な本発明の癌蛋白質とは、類似するものの、その機能が異なる蛋白質を発現させるDNAを意味し、例えば、正常な本発明の癌蛋白質の有する機能が、抑制されているペプチドを発現させるDNAなどが用いられる。
【0186】
本発明の癌遺伝子DNAを対象の非ヒト動物に転移させるにあたっては、該DNAを該非ヒト動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒト由来DNAを転移させる場合、これと相同性が高い非ヒト哺乳動物各種(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒト由来の癌遺伝子DNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象非ヒト哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって、本発明の癌遺伝子DNAを高発現するDNA転移非ヒト哺乳動物を作出することができる。
【0187】
本発明の癌蛋白質の発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウイルス、ワクシニア・ウィルスまたはバキュロ・ウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
【0188】
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、
(i) ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、
(ii) 各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキン II、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチン K1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存タンパク質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリ・ホスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプター・チロシンキナーゼ(一般に、Tie2と略される)、ナトリウム・カリウム・アデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネイン IおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、β−アクチン、α−およびβ−ミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋α−アクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルス・プロモーター、ヒトペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβ−アクチン・プロモーターなどが好適である。
【0189】
上記ベクターは、DNA転移非ヒト哺乳動物において、目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
【0190】
その他、目的とする癌遺伝子DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流 に連結することも目的により可能である。
【0191】
正常な本発明の癌蛋白質の翻訳領域は、ヒト由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、変異で誘導される異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なペプチドの翻訳領域を、点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
【0192】
該翻訳領域はDNA転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
【0193】
受精卵細胞段階における、本発明にかかるヒト由来の癌遺伝子DNAの転移は、対象の非ヒト哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の癌遺伝子DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の癌遺伝子DNAを保持することを意味する。本発明の癌遺伝子DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の癌遺伝子DNAを有する。
【0194】
本発明のヒト由来癌遺伝子DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配によりヒト由来癌遺伝子DNAを安定に保持することを確認して、該癌遺伝子DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
【0195】
受精卵細胞段階における本発明のヒト由来癌遺伝子DNAの転移は、対象非ヒト哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明のヒト由来癌遺伝子DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明のヒト由来癌遺伝子DNAを継続的に有することを意味する。本発明のヒト由来の癌遺伝子DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明のヒト由来癌遺伝子DNAを継続的に有する。
【0196】
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを継続的に有するように繁殖継代することができる。
【0197】
本発明のヒト由来癌遺伝子DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的に本発明の蛋白質の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、本発明の癌蛋白質の機能亢進症や、本発明の癌蛋白質が関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
【0198】
また、本発明のヒト由来癌遺伝子DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、遊離した本発明の蛋白質の増加症状を有することから、本発明の癌蛋白質が関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
【0199】
一方、本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により導入されたDNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする異常DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の異常DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
【0200】
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的に本発明の蛋白質の機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、本発明にかかる癌蛋白質の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
【0201】
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、本発明の蛋白質の機能不活性型不応症における本発明の異常ペプチドによる正常ペプチドの機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
【0202】
また、本発明の異常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、遊離した本発明の癌蛋白質の増加症状を有することから、本発明の癌蛋白質またはその機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
【0203】
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明の癌蛋白質の機能不活性型不応症などを含む、本発明の癌蛋白質に関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、本発明の癌蛋白質に関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
【0204】
また、本発明のDNA転移動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどのタンパク質分解酵素により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、本発明の癌蛋白質産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、本発明の癌蛋白質およびその作用解明のための有効な研究材料となる。
【0205】
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明の癌蛋白質の機能不活性型不応症を含む、本発明の癌蛋白質に関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。
【0206】
本発明の癌遺伝子にホモログな遺伝子DNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明の癌遺伝子DNA発現不全の非ヒト哺乳動物モデルを作出する上で、非常に有用である。また、本発明の癌遺伝子にホモログな遺伝子DNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明の癌蛋白質により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明にかかる癌蛋白質の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0207】
(8a)本発明の癌遺伝子DNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
【0208】
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0209】
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
【0210】
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0211】
(8b)本発明の癌遺伝子DNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0212】
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
【0213】
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0214】
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリ・ホスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
【0215】
本発明の癌遺伝子DNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
【0216】
例えば、本発明にかかる癌蛋白質をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発明にかかる癌蛋白質の発現する組織で、本発明にかかる癌蛋白質の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に本発明にかかる癌蛋白質の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、本発明にかかる癌蛋白質のホモログ蛋白質を欠損するマウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
【0217】
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明の癌遺伝子DNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物である。
【0218】
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0219】
本発明の癌遺伝子DNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、本発明の癌蛋白質の発現を促進し、該ペプチドの機能を促進することができるので、例えば、本発明の癌蛋白質の機能不全に関連する疾患などの予防・治療剤などの医薬として有用である。
【0220】
一方、本発明にかかる癌蛋白質をコードするDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明にかかる癌蛋白質の癌化誘発活性を抑制する安全で低毒性な医薬、例えば、肺癌、腎臓癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌などの癌の予防・治療剤などとして有用である。
【0221】
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0222】
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記の各種癌に対する既知の抗癌剤を含有する医薬と同様にして、対象となる癌組織への投与に適する剤型の製剤として製造することができる。
【0223】
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、主な対象である、ヒト、また、同様の薬理的効果が発揮できる哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
【0224】
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、癌治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に成人患者(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、癌治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を注射剤の形で通常成人患者(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0225】
このように、本発明の癌遺伝子DNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明の癌遺伝子DNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明の癌遺伝子DNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
【0226】
また、本発明にかかる癌蛋白質のプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々の蛋白質をコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、生体内における特異的に癌遺伝子の発現を引き起こす機構を、癌化を回避しつつ検討することも可能となる。また、上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような形質転換細胞株を樹立すれば、本発明の癌蛋白質そのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物のin vitroの探索系として使用できる。
【0227】
なお、本発明にかかる癌蛋白質の機能を調節する化合物またはその塩を、癌の予防・治療用いる場合、例えば、イホスファミド(Ifosfamide)、UTF、アドリアマイシン(Adriamycin)、ペプロマイシン(Peplomycin)、シスプラチン(Cisplatin)、シクロフォスファミド(Cyclophosphamide)、5−FU、UFT、メトレキセート(Methotrexate)、マイトマイシンC(Mitomycin C)、マイトキサントロン(Mitoxantrone)などの他の抗癌剤と併用してもよい。
【0228】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。これら実施例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例であるものの、本発明は、かかる実施例の形態に限定されるものではない。
【0229】
(実施例1) ヒト由来のhWAPLをコードするcDNAのクローニングとその塩基配列の決定
市販のcDNAライブラリーである、ヒト精巣cDNAキット(Marathon−Ready TM cDNA Kit; Clontech 社)を鋳型として、二個のプライマー、
プライマー1 (配列:TTGGATCCATGACATCCAGATTTGGGAAAACATACAGTAGG)及び
プライマー2 (配列:TTGAATTCCTAGCAATGTTCCAAATATTCAATCACTCTAGA)
を用いて、PCRを行なった。このPCR反応には、Advantage 2 polymerase mix(Clontech 社)キットを用いて、該キットの指示書に基づき、増幅時の温度サイクルは、
▲1▼94℃・1分間、
▲2▼94℃・10秒間、72℃・2分間のサイクルを5回、
▲3▼96℃・10秒間、70℃・2分間のサイクルを25回の後、
72℃・5分の伸長反応を行なった。反応後、得られたPCR増幅産物を、pGEM−T easy (PROMEGA 社)の処方にしたがって、プラスミドベクター pGEM−T easy (PROMEGA 社)にクローニングした。これを、大腸菌DH5 α (Invitrogen 社)に導入して、プラスミドベクター pGEM−T easy中のアンピシリン耐性遺伝子を利用して、該プラスミドを持つクローンを、アンピシリンを含むLB寒天培地中で選択した。
【0230】
選択された個々のクローンの保持するプラスミドの塩基配列を解析した結果、クローニングされている、新規なcDNAの塩基配列(配列番号:2)を得た。このcDNAの塩基配列中の、ORFより導き出されるアミノ酸配列(配列番号:1)を含む新規な蛋白質を、human WAPL(hWAPL)と命名した。また、該プラスミド中にクローニングされた、該hWAPLの完全長cDNAを保持する形質転換体を、大腸菌(Escherichia coli)DH5pGEMhWAPL と命名した。
【0231】
(実施例2) ヒトの癌組織におけるhWAPL遺伝子の発現
東京医科大学病院において、癌組織の外科的切除手術を受けられた患者の同意を受けて、外科的切除された癌組織サンプルの提供を受けた。この外科的切除された癌組織サンプルについて、ノーザン・ブッロト法及びリアルタイムPCR法にて、hWAPL遺伝子の発現の有無、発現量を検討した。
【0232】
ノーザン・ブッロト法においては、調製された全RNAから、hWAPL遺伝子から発現されるmRNAの特定には、配列番号:2に示すhWAPLの完全長塩基配列中、核酸番号:2511 から 2813の部分に相補的な塩基配列を有するDNAを、検出プローブとして使用した。一方、リアルタイムPCR法では、hWAPLのcDNAの増幅には、増幅キットSYBR Green I (TaKaRa 社)を用い、PCRプライマーとして、
5’−GAATTCATAGGCACAGCGCTGAACTGTGTG−3’
5’−TTGAATTCCTAGCAATGTTCCAAATATTCA−3’
の対プライマーを用いた。また、内部標準として、ヒト β−actinを使用した。ヒト β−actin cDNAの増幅用PCRプライマーとして、
5’−GGGAAATCGTGCGTGACATTAAG−3’
5’−TGTGTTGGCGTACAGGTCTTTG−3’
の市販の対プライマー(Clontech 社)を用いた。
【0233】
なお、リアルタイムPCR法における、PCR増幅の温度サイクル条件は、
▲1▼95°C・30秒間
▲2▼95°C・ 3秒間、その後68°C・30秒間のサイクルを40回
▲3▼87°C・ 6秒間 に選択した。前記PCR反応の熱サイクルには、Smart Cycler System(TaKaRa 社)を用いた。また、増幅産物量の検出は、蛍光標識を利用して、二本鎖cDNA量の検出を行なった。
【0234】
上記の癌組織サンプルについて、各組織の正常細胞と、癌細胞とから、公知の手法(Oikawa et al., Cancer Res., 61, 5707−5709 (2001))に従って、全RNA試料を調製した。ここで検討した、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、胃癌、腎癌、肺癌、大腸癌、乳癌の各癌細胞のうち、子宮頸癌の癌細胞サンプルのうち、約40%で有意なhWAPL遺伝子の発現が見出された(図5)。
【0235】
なお、前記子宮頸癌の癌細胞サンプルにおいて、HPVの感染に有無も確認した。具体的には、公知の手法(Nakagawa et al., J. Med. Virol., 62, 251−258 (2000))に従って、HPV由来のE6/E7遺伝子のmRNA部分を、対応するプライマーを利用して、RT−PCR法によって検出し、該子宮頸癌の浸潤癌細胞サンプル全てにおいて、HPVの感染ならびに、該E6/E7遺伝子の発現を確認した。また、胃癌の一部にも、例外的に、hWAPL遺伝子の高発現が認められた。
【0236】
(実施例3) HPV 16型由来のE6及びE7による、hWAPL遺伝子発現の誘発
HPV 16型由来のE6遺伝子は、
16E6attB1,
5’−AAAAAGCAGGCTCCACCATGTTTCAGGACCCACAGGAGCGACCC−3’,
16E6attB2,
5’−AGAAAGCTGGGTTACAGCTGGGTTTCTCTACGTG−3’
のプライマー対によって、同じく、HPV 16型由来のE7遺伝子は、
16E7attB1,
5’−AAAAAGCAGGCTCCACCATGCATGGAGATACACCTACAT−3’
16E7attB2,
5’−AGAAAGCTGGGTTATGGTTTCTGAGAACAGATGGGG−3’
のプライマー対によって、PCR法にて、増幅、単離した。
【0237】
その後、各遺伝子は、Naviaux らの方法(Naviaux et al., J. Virol., 70, 5701−5705 (1996))に従って、レトロウイルス・ベクター pCLXSNにクローニングして、それぞれ、E6及びE7の組換え産生用のレトロウイルス LXSN−16E6,LXSN−16E7を作製した。また、E6とE7を同時に組換え産生用のレトロウイルス LXSN−16E6E7を作製した。
【0238】
一方、HPV由来のE2遺伝子産物は、前記E6及びE7遺伝子のプロモーター領域に結合し、その転写を抑制する機能を有することが判明しており、また、ウシのパピローマウイルス(BPV;bovine papilloma virus)由来のE2遺伝子産物も、同様な転写を抑制する機能を有する。該BPV1 E2 遺伝子断片を、pBPV−MIIを鋳型として、ネステドPCR法により取得した。該ネステドPCR法では、内側のプライマー対として、
5’−AAAAAGCAGGCTCCACCATGGAGACAGCATGCGAAC−3’
5’−AGAAAGCTGGGTCAGAAGTCCAAGCTGGCTGTAAAG−3’;
外側のプライマー対として、
5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCT−3’
CCACCATGGAGACAGCATGCGAAC−3’
5’−GGGGACAAGTTTGTACAAGAAAGCTGGGT−3’;
をそれぞれ利用した。調製された該BPV1 E2 遺伝子断片は、汎用のウイルス・ベクターpCMSCV(Clontech 社)を基礎とする、レトロウイルス・ベクター pCMSVpuro中にクローニングして、BPV由来E2の組換え産生用のレトロウイルス MSCV−puroBPV1E2を作製した。なお、レトロウイルス・ベクター pCMSVpuroは、選択マーカーとして、プロマイシン耐性遺伝子を備えている。
【0239】
HPV 16型由来のE6及びE7の組換え産生用のレトロウイルス LXSN−16E6,LXSN−16E7、LXSN−16E6E7を、ヒト表皮細胞HDK1 (BioWhittaker 社)にそれぞれ感染させた。また、陰性対照として、ヒト表皮細胞HDK1に、レトロウイルス・ベクター pCLXSNを感染したものを利用した。なお、該レトロウイルス・ベクターの感染が確立した細胞株の選択は、G418 50μg/mL添加した培地上で、3日間培養することで行った。感染後、HPV 16型由来のE6及びE7組換え生産蛋白質によって誘起される、hWAPL遺伝子の発現を、癌蛋白質hWAPLの部分アミノ酸配列50−66部(アミノ酸配列:CNFKPDIQEIPKKPKVEE)を認識する特異的抗体を用いて、ウエスタン・ブロット法により確認した(図6)。
【0240】
同時に、p53サプレッサー蛋白質の発現量も、ウエスタン・ブロット法により確認し、E6は、p53腫瘍サプレッサー蛋白質の分解過程を促進し、その結果として、癌蛋白質hWAPLの発現が引き起こされていることも再確認された。
【0241】
加えて、子宮頸癌の癌細胞株、CaSki,SiHa,C33Aに対して、MSCV−puroBPV1E2を感染させたところ、HPV 16型由来のE6及びE7を産生するCaSki,SiHa細胞株では、BPV由来のE2によって、E6及びE7遺伝子の転写抑制の結果、p53腫瘍サプレッサー蛋白質の残存量が増している。それに付随して、癌蛋白質hWAPLの発現が抑制を受けている(図6)。一方、そもそもHPVの感染に起因する癌化ではなく、別の機構で癌化をおこしているC33A細胞株では、p53腫瘍サプレッサー蛋白質の残存量の変化もなく、また、癌蛋白質hWAPLの発現量も変化を受けていない。この結果は、癌蛋白質hWAPLの高い発現量は、癌化と密接に関連しているものの、HPV由来のE6及びE7に起因する、癌蛋白質hWAPLの高発現化機構とは別に、癌蛋白質hWAPLの高発現化を引き起こす独立した機構も存在することを示唆している。
【0242】
(実施例4) p53サプレッサー蛋白質による、hWAPL遺伝子のプロモーター活性の抑制
p53サプレッサー蛋白質は、hWAPL遺伝子のプロモーターからの転写を抑制する機能を有することを、以下のように検証した。
【0243】
hWAPL遺伝子のプロモーターは、DLD−1 細胞のgenomic DNAを鋳型にして、
プライマー1
(配列:GTGCATCCCACCCACAGTGGAAGACATGG)、
プライマー2
(配列:CCGCTTCCGCCGGTGAATGGTCAGTGCTGG)
のプライマー対を用いて、PCR増幅し、単離した。
【0244】
このPCR産物のDNA断片を、一旦、PGEMT−easy(PROMEGA 社)にクローニングし、さらに、制限酵素EcoRI にて消化した断片をpBluescript(Stratagene)にクローニングした。また、このプラスミド中に挿入されたhWAPL遺伝子のプロモーター部分を含む領域を、SalI/XhoIで切断し、pGL3−Basic vector(PROMEGA 社)にクローニングした。
【0245】
このベクターを、Qiagen Plasmid Maxi Kit(Qiagen 社)で精製後、p53発現ベクター、コントロールとしてpHM6(Roche 社)、またルシフェラーゼ・アッセイの標準化のためのpGR3−tK ベクターとともに、HeLa 細胞中にLipofectAmine2000(Invitrogen 社)を用いてトランスフェクションした。hWAPL遺伝子のプロモーターによって、転写、翻訳されるレポーター遺伝子産物である標識蛋白質ルシフェラーゼの量を測定する、ルシフェラーゼ・アッセイには、Promega 社のDual Luciferase Kit を用いた。
【0246】
その結果、p53発現ベクターを導入した場合、p53サプレッサー蛋白質の発現量の増加に伴い、コントロールに比べ、hWAPL遺伝子のプロモーターによって、転写、翻訳される標識蛋白質ルシフェラーゼの量は30%低下することが確認された。すなわち、p53サプレッサー蛋白質は、hWAPL遺伝子のプロモーター活性の低下を引き起こす機能を有することが確認された。
【0247】
(実施例5) hWAPL蛋白質の組換え生産用発現ベクターの構築
配列番号:2に示す塩基配列を有するcDNAに対して、その塩基番号1−3570の両端に、HindIII切断部位とEcoRI切断部位とを、PCR法により、対応する部位特異的変異導入によって導入する。得られたPCR産物を、該HindIII/EcoRI消化した後、対応するDNA断片を、HAタグ付き動物発現ベクター、pHM6(Roche Diagnostics 社)中に挿入し、HAタグ付きhWAPL蛋白質の組換え生産用発現ベクター、pHM6−hWAPLを構築した。また、hrGFP融合パートナーとの融合型蛋白質発現用の動物発現ベクター、phrGFP−N1(Stratagene 社)中に挿入し、GFP融合型hWAPL蛋白質の組換え生産用発現ベクター、phrGFP−hWAPLを構築した。
【0248】
宿主動物細胞への該組換え生産用発現ベクターのトランスフェクションは、LipofectAmine2000(Invitrogen 社)を用いて行った。トランスフェクション後、2日間培養した後、例えば、hrGFPタグの発現の有無に基づき、EPICS ALYRA HyperSort (Bechman Coulter)を利用して、選別を行う。さらに、培養し、再度、選別を実施することで、目的のhWAPL蛋白質の組換え生産用発現ベクターを保持する形質転換宿主細胞株を取得する。
【0249】
(実施例6) hWAPL蛋白質に対して、特異的な抗体の創製
癌蛋白質hWAPLに対する、特異的な抗体を創製するため、免疫原ペプチドとして、癌蛋白質hWAPL中、N末側の部分的なアミノ酸配列50−66部:CNFKPDIQEIPKKPKVEEを有するペプチド鎖(hWAPL50−66)を化学合成法で調製した。また、癌蛋白質hWAPL中、C末側の部分的なアミノ酸配列814−1037部を含む、6×Hのヒスタグ付き融合型ポリペプチドを、組換え生産した。
【0250】
常法に従って、前記二種の免疫原ペプチドを用いて、それぞれウサギを免疫して、各抗原ペプチドに特異的なポリクローナル抗体、抗hWAPL−N抗体と抗hWAPL−C抗体を創製した。なお、上記の実施例3などにおけるウエスタン・ブロット法においては、前記hWAPL50−66抗原に特異的な抗hWAPL−N抗体を利用して、癌蛋白質hWAPLの検出がなされている。
【0251】
(実施例7) hWAPL蛋白質による染色体不安定性誘導
hrGFP融合型hWAPL蛋白質の組換え生産用発現ベクター、phrGFP−hWAPLを、HeLa細胞に感染させ、上述の実施例5に記載の手法に従って、GFP−hWAPL融合型蛋白質の産生を行っているGFP−hWAPL陽性細胞株と、GFP−hWAPL融合型蛋白質の産生を行っていないGFP−hWAPL陰性細胞株とに選別する。選別後、5代継代培養した後、Buseらの手法(J. Biol. Chem., 274、7253−7263 (1999))に従って、Laser Scanning Cytomerty法によって、染色体遺伝子DNAの含有量を評価する。
【0252】
GFP−hWAPL陰性細胞株は、宿主細胞のHeLa細胞と同様の染色体遺伝子含有量を示し、正常な二倍体が半数以上であり、四倍体の比率は、二倍体の約1/2であるが、GFP−hWAPL陽性細胞株では、正常な二倍体は少なくなっており、多くは倍数性を示しており、四倍体の比率は、二倍体の比率を若干上回り、さらには、八倍体も10.1%の比率で存在している。すなわち、hWAPL蛋白質の過剰発現が、染色体不安定性を誘起していると判断される(図7)。
【0253】
対応して、核異型、具体的には、多核形成も、hWAPL蛋白質の過剰発現に起因して、誘起されている。3代継代培養した時点において、GFP−hWAPL陰性細胞株と、phrGFP−N1ベクターを感染させたHeLa細胞(対照)では、多核形成の観測される比率は、それぞれ、5%、4%でしかないが、GFP−hWAPL陽性細胞株では、15.6%と、3倍以上となっている(図8)。
【0254】
さらには、染色体遺伝子の有糸分裂による分離過程における、動原体分裂異常に起因する異型化などの染色体異常に付随して、小核形成が、hWAPL蛋白質の過剰発現に起因して、誘起されている。GFP−hWAPL陽性細胞株における小核形成発生の頻度は、GFP−hWAPL陰性細胞株における頻度の約2倍に上昇している(図7)。
【0255】
(実施例8) hWAPL蛋白質によるNIH 3T3線維芽細胞の癌化誘導NIH 3T3線維芽細胞に対して、HAタグ付きhWAPL蛋白質の組換え生産用発現ベクター、pHM6−hWAPLを感染させ、HAタグ付加hWAPL蛋白質を過剰発現する組換え細胞株、HA−hWAPL 3T3細胞株を作製する。また、陰性対照として、pHM6ベクターを感染させた、HA−3T3細胞株を作製する。プレート上で培養した際、このHA−3T3細胞株は、宿主細胞のNIH 3T3線維芽細胞と同様に、均一な融合体様単細胞膜を構成するが、HA−hWAPL 3T3細胞株は、フォーカス構造を構成する。
【0256】
ヌード・マウスに、HA−hWAPL 3T3細胞株と、HA−3T3細胞株を皮膚下に注入し、その後の経過を観察すると、10日以内に、HA−hWAPL 3T3細胞株の注入部位全てで、腫瘍の形成が引き起こされ、一方、HA−3T3細胞株の注入部位では、腫瘍の形成は起こっていない。癌化した細胞において、実際に、HAタグ付加hWAPL蛋白質の過剰発現がなされていることを、抗HA抗体と抗hWAPL−C抗体とを用いて、ウエスタン・ブロット法で確認した。この癌化した細胞では、異型有糸分裂が見出され、例えば、三極分裂も見出されている。
【0257】
(実施例9) hWAPL遺伝子に対するsiRNAによる癌細胞増殖の抑制hWAPL遺伝子に対するsiRNAを利用し、hWAPL蛋白質の発現を抑制すると、癌細胞の増殖が抑制されることを検証した。
(1) in vitroにおけるsiRNAによる癌細胞増殖の抑制
hWAPL遺伝子内の下記の遺伝子配列(hWAPL AsiRNA)およびコントロール(negative control)に対して、AmbionのSilencer siRNA Construction Kitを用いて、siRNAを調製した。
hWAPL AsiRNA:CGGACTACCCTTAGCACAA
negative control:ACTACAACTGGTCGCAACC
具体的には、hWAPL AsiRNA用には、
AACGGACTACCCTTAGCACAAcctgtctc
AATTGTGCTAAGGGTAGTCCGcctgtctc
また、negative control用には、
AAACTACAACTGGTCGCAACCcctgtctc
AAGGTTGCGACCAGTTGTAGTcctgtctc
の2本ずつの合成オリゴマーを作製する。次いで、各合成オリゴマーについて、T7 promoter primerをcctgtctcのところでハイブリダイズさせ、その後、Klenow DNA polymeraseで、完全に2本鎖DNAにする。その後、T7 RNA polymeraseで転写を行ない、生成されるAntisense鎖とsense鎖のRNA同士を、ハイブリダイズさせた後、Rnaseを用いて、両端突出部の消化を行なって、二本鎖siRNAに調製した。
【0258】
hWAPLを高発現している子宮頸癌由来のSiHa細胞に対して、hWAPL AsiRNA とnegative control siRNAを、それぞれ1nMの濃度で導入し、細胞増殖に対する影響を検討した。
【0259】
hWAPLの高発現が観察されるHPV16陽性の子宮頸癌由来のSiHa細胞に、siRNAをトランスフェクションした。図10に、横軸のsiRNAを導入してからの時間経過(単位 時間)に対して、縦軸に、生存細胞数(単位 ×103)をプロットした結果を示す。siRNAは、DIF−2を標的にしたsiRNAを、contは、コントロールsiRNAを、また、TSAは、siRNAをトランスフェクション後、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるトリコスタチンAを培養液中に添加した際の結果をそれぞれ示す。
【0260】
hWAPL AsiRNAをトランスフェクションした後、20時間経過するまでは、腫瘍生細胞数の増加が見出される。なお、その間も、コントールと対比すると、腫瘍の増殖抑制現象が確認される。その後、hWAPL AsiRNAを導入した細胞では、生存細胞数の減少が進み、100時間経過した時点では、生存細胞数は僅かになっている。一方、トリコスタチンAを添加し、ヒストンのアセチル化リシンから、脱アセチル化の進行を抑制すると、hWAPL AsiRNAによる細胞増殖抑制作用は減ぜられている。
【0261】
上記の結果は、hWAPLの抑制による細胞死が、アセチル化などのヒストン修飾の抑制によって引き起こされることが示され、また、hWAPL自身がヒストンコードの制御に関与する可能性が示唆された。
(2)in vivoの腫瘍増殖抑制効果
6週令のBALB3T3/nudeマウスに、SiHa細胞を2×106個移植した。移植後、10日経過した時点から、移植され腫瘍細胞に対して、hWAPL AsiRNA及びnegative control siRNAを2日おきに計5回注入を行った。
【0262】
hWAPL AsiRNA注入実験群6匹、negative control siRNA注入群6匹、無処理群5匹に対して、移植され腫瘍のサイズ変化を検討をおこなった。その結果、無処理群を基準として、hWAPL AsiRNA注入実験群では、平均で33%の腫瘍サイズの縮小が観察された。
【0263】
なお、本発明者らが、クローニングした、hWAPLのcDNAの塩基配列は、ヒト・ゲノム上、10q23.31−q23.32に位置することが判明した。さらに、解明されたhWAPL遺伝子の5’側の非翻訳領域、プロモーター領域の塩基配列、上述のmouse WAPLのcDNAの塩基配列も併せて、以下に、その塩基配列を示す。なお、各cDNAにおけるORFは、開始コドンATG,終止コドンTAGまでを、大文字で表記し、一方、プロモーター領域では、ESTとの比較に基づき、推定される転写開始点以降の部分を、大文字で表記する。
【0264】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL−体を示すものとする。
【0265】
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
I :イノシン
R :アデニン(A)またはグアニン(G)
Y :チミン(T)またはシトシン(C)
M :アデニン(A)またはシトシン(C)
K :グアニン(G)またはチミン(T)
S :グアニン(G)またはシトシン(C)
W :アデニン(A)またはチミン(T)
B :グアニン(G)、グアニン(G)またはチミン(T)
D :アデニン(A)、グアニン(G)またはチミン(T)
V :アデニン(A)、グアニン(G)またはシトシン(C)
N :アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)もしくはチミン(T)または不明もしくは他の塩基
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
BHA :ベンズヒドリルアミン
pMBHA :p−メチルベンズヒドリルアミン
Tos :p−トルエンスルフォニル
Bzl :ベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
DCM :ジクロロメタン
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
TFA :トリフルオロ酢酸
DIEA :ジイソプロピルエチルアミン
Gly又はG :グリシン
Ala又はA :アラニン
Val又はV :バリン
Leu又はL :ロイシン
Ile又はI :イソロイシン
Ser又はS :セリン
Thr又はT :トレオニン
Cys又はC :システイン
Met又はM :メチオニン
Glu又はE :グルタミン酸
Asp又はD :アスパラギン酸
Lys又はK :リシン
Arg又はR :アルギニン
His又はH :ヒスチジン
Phe又はF :フェニルアラニン
Tyr又はY :チロシン
Trp又はW :トリプトファン
Pro又はP :プロリン
Asn又はN :アスパラギン
Gln又はQ :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Tyr(I) :3−ヨードチロシン
DMF :N,N−ジメチルホルムアミド
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
Trt :トリチル
Pbf :2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル
Clt :2−クロロトリチル
But :t−ブチル
Met(O) :メチオニンスルフォキシド
【0266】
【発明の効果】
本発明にかかるhWAPL癌遺伝子の完全長塩基配列は、該hWAPL癌遺伝子によりコードされるhWAPL癌蛋白質の組換え生産を可能とし、各種上皮細胞由来の細胞株において、該hWAPL癌蛋白質の過剰発現により誘発される癌化機構の研究を可能とする。加えて、本発明において、特定された該hWAPL癌遺伝子のプロモーター領域は、該hWAPL癌遺伝子の転写を抑制することで、過剰発現により誘発される癌化機構を抑制する機序に基づく、癌予防、癌治療方法の研究における、新たな標的を与える。さらには、本発明にかかるhWAPL癌遺伝子の完全長塩基配列、hWAPL癌蛋白質の組換え生産は、かかるhWAPL癌遺伝子の転写によるmRNA発現検出用の核酸プローブ、PCRプライマー、あるいは、翻訳されたhWAPL癌蛋白質ペプチドの検出用の特異的抗体の調製を可能とし、癌発症に直結する、かかるhWAPL癌遺伝子の過剰発現を検出することによる診断用の各種キットを利用可能とする。
【0267】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】公知のDrosophiaのdWAPLと本発明にかかるhWAPLとの、アミノ酸配列の比較を示す図である。
【図2】本発明にかかるhWAPLのC末側の623番目〜1185番目の部分アミノ酸配列において、dWAPLとの間で同一性と、類似性を示すアミノ酸に関して、配列のアラインを示す図である。
【図3】human WAPL蛋白質と、mouse WAPL蛋白質とのアミノ酸配列における、極めて高い相同性を示す図である。
【図4】抗hWAPL−N抗体と抗hWAPL−C抗体を利用して、Saos−2細胞(レーン2、3)とNIH3T3細胞(レーン1)の抽出物について、ウエスタン・ブロット解析を行った結果を示す図である。
【図5】A:卵巣癌、肺癌、大腸癌、子宮体癌、子宮頸癌の癌細胞(T)と対応する正常細胞(N)におけるhWAPL蛋白質の発現量を評価するウエスタン・ブロット、B:子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、腎癌、大腸癌の癌細胞(T)と対応する正常細胞(N)におけるhWAPL遺伝子発現を検証するリアルタイムPCRの結果、C:該癌細胞(T)における、HPV由来のE6/E7遺伝子のmRNA発現のRT−PCR法による検出結果を示す図である。
【図6】A:HDK1細胞における、HPV 16型由来のE6及びE7組換え蛋白質によって誘起される、hWAPL蛋白質の発現、p53サプレッサー蛋白質の分解を検証するウエスタン・ブロット、B:BPV由来のE2によって、E6及びE7遺伝子の転写抑制、p53サプレッサー蛋白質量の増加、hWAPL蛋白質の発現に抑制を検証するウエスタン・ブロットを示す図である。
【図7】A:HeLa細胞における、GFP−hWAPL融合型蛋白質の過剰発現で誘起される染色体不安定性、多倍数体の増加、B:小核形成の頻度上昇を示す図である。
【図8】HeLa細胞における、GFP−hWAPL融合型蛋白質の過剰発現で誘起される染色体不安定性、多核化の発生比率の上昇を示す図である。
【図9】hWAPL蛋白質によるNIH 3T3線維芽細胞の癌化誘導、A:HA−hWAPL 3T3細胞株培養における、フォーカス構造の形成、B:ヌード・マウスにおける、HA−hWAPL 3T3細胞株注入部位での腫瘍の形成、C:腫瘍の形成域でのHAタグ付加hWAPL蛋白質の過剰発現、D:癌化した細胞における、異型有糸分裂を示す図である。
【図10】HPV16陽性の子宮頸癌由来のSiHa細胞における、hWAPL siRNAによる細胞増殖抑制効果の評価結果を示し、横軸:siRNAを導入してからの時間(単位hour)に対して、縦軸:細胞数(単位x103)をプロットした結果を示す図である。
Claims (21)
- 子宮頸癌の進展に関与する、ヒト由来の新規な癌遺伝子であって、
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含んでなることを特徴とする癌遺伝子ポリヌクレオチド。 - 前記配列番号:1で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列が、配列番号:2で表わされる塩基配列であることを特徴とする請求項1に記載のポリヌクレオチド。
- 配列番号:1で表わされるアミノ酸配列または該アミノ酸配列の部分アミノ酸配列を含んでなることを特徴とする組換え生産ペプチドまたはその塩。
- 配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする組換え生産型癌蛋白質。
- 請求項3に記載の組換え生産ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなることを特徴とする組換えベクター。
- 請求項1または2に記載のポリヌクレオチドを含んでなることを特徴とする組換えベクター。
- 宿主細胞を、請求項5に記載の組換えベクターを用いて形質転換してなることを特徴とする形質転換体細胞。
- 宿主細胞を、請求項6に記載の組換えベクターを用いて形質転換してなることを特徴とする形質転換体細胞。
- 請求項3に記載する組換え生産ペプチドまたはその塩を生産する方法であって、
請求項7に記載の形質転換体細胞を培養し、該形質転換体細胞に請求項3に記載する組換え生産ペプチドを産生させ、
培養物より、産生される該組換え生産ペプチドを回収することを特徴とする組換え生産ペプチドまたはその塩の製造方法。 - 請求項4に記載する組換え生産型癌蛋白質を生産する方法であって、
請求項8に記載の形質転換体細胞を培養し、該形質転換体細胞に請求項4に記載する組換え生産型癌蛋白質を産生させ、
培養物より、産生される該組換え生産型癌蛋白質を回収することを特徴とする組換え生産型癌蛋白質の製造方法。 - 請求項3に記載の組換え生産ペプチドを免疫原として、創製される特異的抗体であることを特徴とする抗体。
- 前記配列番号:1で表わされるアミノ酸配列中、第623番〜第1185番目の部分アミノ酸配列部と反応性を示すことを特徴とする請求項11に記載の抗体。
- 請求項11に記載の抗体を含んでなり、
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有する癌蛋白質、または該癌蛋白質由来のペプチド断片の検出に利用可能であることを特徴とする抗原・抗体反応用抗体試薬キット。 - 配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有する癌蛋白質、または該癌蛋白質由来のペプチド断片の抗原・抗体反応による検出に利用される診断キットであって、
請求項11に記載の抗体を含んでなることを特徴とする診断キット。 - 配列番号:2で表わされる塩基配列中の部分塩基配列と相補的な塩基配列を含んでなるポリヌクレオチドであり、
少なくとも、15塩基長〜300塩基長の範囲に選択されるDNA断片であることを特徴とするアンチセンス・ポリヌクレオチド。 - 配列番号:2で表わされる塩基配列または、その部分塩基配列を含んでなるmRNA、または該mRNAより調製されるcDNAの検出に利用可能であるプローブ・ハイブリダイゼーションキットであって、
該DNAプローブとして、請求項15に記載のアンチセンス・ポリヌクレオチドを含むことを特徴とするプローブ・ハイブリダイゼーションキット。 - 配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有する癌蛋白質へと翻訳される、配列番号:2で表わされる塩基配列を含んでなるmRNA発現のプローブ・ハイブリダイゼーション法による検出に利用される診断キットであって、
ハイブリダイゼーション・プローブとして、請求項15に記載のアンチセンス・ポリヌクレオチドを含むことを特徴とする診断キット。 - 配列番号:2で表わされる塩基配列を含んでなるcDNAのPCR増幅用のプライマー対であって、
塩基配列:5’−TTGGATCCATGACATCCAGATTTGGGAAAACATACAGTAGG−3’;
塩基配列:5’−TTGAATTCCTAGCAATGTTCCAAATATTCAATCACTCTAGA−3’
の対プライマーからなることを特徴とするPCR増幅用プライマー対。 - 配列番号:2で表わされる塩基配列を含んでなるcDNA中の部分鎖PCR増幅用のプライマー対であって、
5’−GAATTCATAGGCACAGCGCTGAACTGTGTG−3’;
5’−TTGAATTCCTAGCAATGTTCCAAATATTCA−3’の対プライマーからなることを特徴とするPCR増幅用プライマー対。 - 子宮頸癌細胞において、配列番号:2で表わされる塩基配列を含んでなるmRNAの発現を抑制可能な干渉性短鎖RNA二重鎖であって、該干渉性短鎖RNA二重鎖は、
下記塩基配列:CGGACTACCCTTAGCACAA
を有することを特徴とする干渉性短鎖RNA二重鎖。 - 子宮頸癌細胞において、配列番号:2で表わされる塩基配列を含んでなるmRNAの発現を抑制することによって、癌細胞の増殖を停止させる医薬組成物であって、
前記請求項20に記載の干渉性短鎖RNA二重鎖を含むことを特徴とする医薬組成物。
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