JP2004222346A - 電動機の回転子 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転子の軽量化を図る目的で、回転子軸と積層鉄心等を樹脂にて成形固定する際に問題となる、磁石の位置ずれを防止する。
【解決手段】本発明に係る電動機の回転子は、磁性鋼板を軸方向に積層して形成される積層鉄心1を有している。この積層鉄心1は、その周方向に複数の開口部1aを有している。この開口部1aは、磁石2を埋め込むためのものであり、積層鉄心1の軸方向に貫通している。この複数の開口部1aには、その周方向両側にC型クリップ8が配されている。このC型クリップ8は、その端部によって、積層鉄心1を軸方向の両側から挟み込む役割を担っている。また、C型クリップ8は、その胴部によって、挿入される磁石2を開口部1aの中央に保持することができる。このように組み合わされた積層鉄心1とC型クリップ8と磁石2とは、樹脂7によって回転子軸5と一体にモールド成形固定されることとなる。
【選択図】 図3
【解決手段】本発明に係る電動機の回転子は、磁性鋼板を軸方向に積層して形成される積層鉄心1を有している。この積層鉄心1は、その周方向に複数の開口部1aを有している。この開口部1aは、磁石2を埋め込むためのものであり、積層鉄心1の軸方向に貫通している。この複数の開口部1aには、その周方向両側にC型クリップ8が配されている。このC型クリップ8は、その端部によって、積層鉄心1を軸方向の両側から挟み込む役割を担っている。また、C型クリップ8は、その胴部によって、挿入される磁石2を開口部1aの中央に保持することができる。このように組み合わされた積層鉄心1とC型クリップ8と磁石2とは、樹脂7によって回転子軸5と一体にモールド成形固定されることとなる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機の回転子、特に、回転子鉄心の内部に埋め込む磁石の位置決めを容易に行うことができる電動機の回転子に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動機の回転子、特に回転子鉄心の内部に磁石を埋め込んで構成するいわゆる埋め込み磁石構造の回転子は、例えば、図1、2に示すような構造を有している。図1において、(a)は横(A−A)断面図を、(b)は左側面図を示している。また、図2において、(a)は磁石部横(B−B)断面図を、(b)は左側面図を示している。
【0003】
図1、2で例示する、いわゆる埋め込み磁石構造の回転子は、磁性鋼板を軸方向に積層して形成される積層鉄心1を有している。この積層鉄心1は、その周方向に複数の開口部1aを有している。この開口部1aは、磁石2を埋め込むためのものであり、極数の整数倍の個数設けられ、積層鉄心1の軸方向に貫通して開口している。この開口部1aに挿入される磁石2は、例えば図2(a)磁石部横(B−B)断面図で示すように、両端に樹脂モールド2a等の弾性体を備えている。積層鉄心1の開口部1aに挿入される磁石2は、樹脂モールド2a等の弾性体が有する弾性力の効果により、開口部1aの中央に固定されることになる。このようにして形成された積層鉄心1は、マグネットエンドプレート3とロータエンドプレート4によって、軸方向の両側から挟み込まれて、一体に固定されている。これは、積層鉄心1に埋め込まれている磁石2が、電動機の回転中、あるいは電動機の輸送中等に積層鉄心1の開口部1aから飛び出さないようにするためのものである。これら磁石2を埋め込まれた積層鉄心1とエンドプレート3,4は、回転子軸5に固定され、回転子を形成している。この際の固定方法としては、図1で示すとおり、回転子軸5にかしめ加工6を施すことによって行われている。
【0004】
ここで、図1、2に示される従来の回転子を製造するための工程を整理すると、次のようになる。すなわち、(1)回転子軸5にマグネットエンドプレート3を挿入する、(2)マグネットエンドプレート3上に磁性鋼板を積み重ね、積層鉄心1を形成する、(3)積層鉄心1の開口部1aに磁石2を挿入する、(4)積層鉄心1上にロータエンドプレート4を挿入する、(5)回転子軸5にかしめ加工を施して、回転子を一体に成形固定する、という5つの工程を経ることとなる。なお、回転子軸5には、かしめ加工という、回転子軸5自体に塑性変形を及ぼす加工が施されるため、回転子を分解する際には、回転子軸5のかしめ加工部6を破壊しなければならない。つまり、図1、2に示す従来の回転子のような構造では、回転子軸5を再利用することはできなくなる。
【0005】
ところで、近年のコスト改善や電動機効率の向上から、回転子の軽量化が要請されている。この要請に応えるため、従来金属部品で構成されていたマグネットエンドプレート3やロータエンドプレート4を樹脂に置き換えることによって、軽量化を図ることが行われている。例えば、下記特許文献1には、機械的強度が特に要求される部分のみを金属とし、この他のロータコアを合成樹脂にて成形被覆することにより、このロータコアの軽量化と保護を十分に図りながら、回転子全体として製造コスト、製品コストを低減し、軽量化をも実現する回転子に関する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
一方、下記特許文献2には、磁石埋め込み型モータにおいて、ロータコアに埋め込む磁石を、位置ずれすることなく固定する技術が開示されている。この特許文献2に係る発明は、ロータコアに磁石を埋め込む際に、磁石挿入溝と磁石との間に存在する隙間によって磁石の固定位置がずれてしまい、回転子のアンバランス等が発生することに鑑みて成されたものである。このような課題を解決するために、特許文献2に開示されている発明は、磁石挿入溝の下面両側の角部に弾性材挿入用溝をそれぞれ設け、弾性材をそれぞれ挿入し、磁石を斜め上方に付勢することによって磁石の位置ずれを防止することを特徴としたものである(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−201153号公報 (第2−3頁、第1図)
【特許文献2】
特開2000−341920号公報 (第2−3頁、第1図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在、さらなるコスト改善の実施が求められており、回転子の軽量化に加えて、今以上の製造工程、部品点数の削減が必要となっている。従来の技術で例示したような回転子では、磁石の位置決めのため、あらかじめ磁石の両端に樹脂モールドを成形固着しておく必要がある。そこで、磁石への樹脂成形を省略し、積層鉄心と磁石を組み立てた後、樹脂によって一体モールド成形すれば、磁石への樹脂モールド固着成形工程の削減によるコスト改善、エンドプレートの樹脂化による軽量化を図ることができる。しかし、この際問題となるのが、磁石の位置決めである。図1、2や前記特許文献1で示した従来の技術の回転子では、積層鉄心と磁石を樹脂によって一体モールド成形する場合に、磁石が位置ずれを起こしてしまい、回転子のアンバランスが発生してしまう。さらに、回転子全体を樹脂にてモールド固定する際に、積層鋼板が開く場合があり、このような積層鋼板の開きを規制する必要もある。
【0009】
一方、上記のような問題点を解決するための手段として、前記特許文献2に開示される発明を適用することも可能である。しかし、特許文献2に開示される発明では、積層鋼板の構造を変更しなければならない。また、この発明は、バネ等の弾性材の部品点数増加や、弾性材挿入のための作業工程を増加しなければならないものでもある。これらは、製造ライン及び組立ラインの変更や部品調達の増加を招き、コスト改善の要請に逆行するものである。
【0010】
本発明の目的は、上記のような問題点を解消するためになされたものである。本発明によれば、電動機の回転子を樹脂成形する際に、積層鋼板の開きを抑制しつつ、磁石の位置決めを行うことができる。また、製造工程や部品点数の増加を最小限に抑え、かつ簡易に製造することができるので、回転子の製品品質を維持しつつ、軽量化、コスト低減を実現することができる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題を解決するために、本発明に係る電動機の回転子は、回転子軸と、磁性鋼板を軸方向に積層して形成される積層鉄心と、積層鉄心の周方向に所定の間隔を介して配置されるとともに、軸方向に開口して形成される複数の開口部と、複数の開口部の周方向両側に配され、積層鉄心を軸方向に両側から挟持するC型のクリップと、複数の開口部に嵌挿され、開口部両側のC型クリップ対の胴部で周方向両側から押圧される磁石と、を含む。前記積層鉄心とC型クリップと磁石は、樹脂によって回転子軸と一体に成形固定される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による電動機の回転子について、図3、4、5を用いて説明する。図3において、(a)は横(C−C)断面図を、(b)は左側面図を示している。また、図4において、(a)は磁石部横(D−D)断面図を、(b)は左側面図を示している。さらに、図5は、本発明に係るC型クリップの機能を説明する図である。
【0013】
図3、4で示す、本発明に係る電動機の回転子は、従来の技術で例示した電動機の回転子と同様に、磁性鋼板を軸方向に積層して形成される積層鉄心1を有している。この積層鉄心1は、その周方向に複数の開口部1aを有している。この開口部1aは、磁石2を埋め込むためのものであり、積層鉄心1の軸方向に貫通して開口している。
【0014】
ここで、本発明に係る電動機の回転子が、図1で示した従来の回転子と異なるのは、C型のクリップ8をその開口部1aに有していることである。図4(a)磁石部横(D−D)断面図において、C型クリップ8の設置状態を詳細に示す。また、図5において、本発明に係るC型クリップの機能を説明する。このC型クリップ8は、積層鉄心1が有する複数の開口部1aの周方向両側に配されている。
【0015】
まず、複数の開口部1aに磁石2が挿入される前の段階において、このC型クリップ8は、積層鉄心1が有する複数の開口部1aの周方向両側において、積層鉄心1を軸方向の両側から挟み込むように設置される。つまり、このC型クリップ8は、その端部によってXで示される力を及ぼし、積層鉄心1を軸方向の両側から挟み込み、磁性鋼板の軸方向の動きを規制する役割を担っている。
【0016】
次に、磁石2を挿入する場合について説明する。磁石2の挿入は、複数の開口部1aの周方向両側にC型クリップ8が配されている状態で行われる。磁石2を開口部1aに押し込む場合、磁石2は、C型クリップ8からYで示される力を受けることになる。開口部1aの周方向両側に配される2つのC型クリップ8は、それぞれほぼ同等の弾性力を有しているため、磁石2は、開口部1aの中央に保持されることになる。なお、本発明に係るC型クリップ8を用いた場合には、従来の発明で実施されているような樹脂モールド2a付き磁石2に対して、部品コスト削減等の効果を有しており、非常に有益なものである。
【0017】
上記のように組み合わされた積層鉄心1とC型クリップ8と磁石2とは、樹脂7によって回転子軸5と一体にモールド成形固定されることとなる。図3(a)の横(C−C)断面図、および図4(a)の磁石部横(D−D)断面図で示すとおり、回転子軸5に挿入された積層鉄心1とC型クリップ8と磁石2とは、積層鉄心1の両側を全周にわたって樹脂7でモールド固定されることにより、一体にモールド成形される。この際、積層鉄心1の開口部1aと磁石2との間に存在している隙間にも樹脂7が入り込むことになる。これによって、C型クリップ8のみで固定されていた磁石2が、積層鉄心1と完全に一体となる。よって、積層鉄心1に埋め込まれている磁石2が、電動機の回転中、あるいは電動機の輸送中等に積層鉄心1から飛び出すことはない。また、C型クリップ対8の有するほぼ均等な弾性力の効果によって、磁石2は、開口部の中央に位置したままモールド固定されることになる。さらに、回転子軸5は、樹脂7との接触部に凹部7aを有している。この凹部7a構造によって、回転子軸5と樹脂7はモールド固定されることとなり、回転子軸5に対して、積層鉄心1と樹脂7が軸方向及び周方向へ移動することを規制することができる。なお、本発明に係る電動機の回転子は、図1で示した従来の回転子と異なり、回転子軸5にかしめ加工等の塑性変形を加えることがないので、回転子の製造前後でそのままの形状を維持することとなる。つまり、樹脂7を除去すれば回転子軸5は再生利用可能となる。本発明によれば、再生利用によるコスト削減効果を発揮することができる。
【0018】
ここで、図3、4、5に例示される、本発明に係る回転子を製造するための工程を整理すると、次のようになる。すなわち、(1)回転子軸5に磁性鋼板を積み重ね、積層鉄心1を形成する、(2)積層鉄心1の開口部1aにC型クリップ8を挿入する、(3)積層鉄心1の開口部1aに磁石2を挿入する、(4)樹脂7によって積層鉄心1と回転子軸5を一体にモールド成形固定する、という4つの工程を経ることとなる。このように、本発明によれば、前述した従来の回転子の製造工程に比べて工程数を削減することができる。さらに、費用のかかる樹脂モールド2a付き磁石2を、C型クリップ8と磁石2に変更することができる。これは、部品単価の低減につながるため、コスト改善の効果が得られる。
【0019】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、回転子の軽量化を図る目的で、回転子軸と積層鉄心等を樹脂にて一体にモールド成形固定する際に問題となる、磁石の位置ずれを防止するためになされたものである。この対策として、本発明ではC型クリップを用いた。このC型クリップは、回転子の樹脂成形の際に、積層鋼板の開きを防止するとともに、磁石の位置ずれを簡易に防止することができる。
【0020】
また、C型クリップが有する、積層鋼板の開き防止および磁石の位置ずれ防止という機能によって、樹脂部分と磁性鋼板、回転子軸などのインサート部品との間に界面剥離が発生した場合でも、回転子は、剛性を保つことが可能である。
【0021】
さらに、本発明によれば、回転子軸に対して、かしめ加工等の塑性変形を及ぼす加工を施さないので、回転子軸を再利用することが可能となる。
【0022】
さらにまた、回転子軸のかしめ加工が不要となるため、例えば、鋳鉄などの脆性材料に代表される低コストの金属材質を、回転子軸に選択することが可能となる。
【0023】
その結果、作業工程削減、部品点数削減等によるコスト改善を実施しつつ、製品品質を維持した回転子の軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の電動機の回転子のうち、いわゆる埋め込み磁石構造の回転子の横断面を例示する図である。
【図2】従来の電動機の回転子のうち、いわゆる埋め込み磁石構造の回転子の磁石部横断面を例示する図である。
【図3】本発明に係る電動機の回転子の横断面を例示する図である。
【図4】本発明に係る電動機の回転子の磁石部横断面を例示する図である。
【図5】本発明に係る電動機の回転子のうち、C型クリップの機能を説明する図である。
【符号の説明】
1 積層鉄心、1a 開口部、2 磁石、2a 樹脂モールド(磁石挿入用)、3 マグネットエンドプレート、4 ロータエンドプレート、5 回転子軸、6 かしめ加工部、7 樹脂(一体モールド成形用)、7a 凹部、8 C型クリップ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機の回転子、特に、回転子鉄心の内部に埋め込む磁石の位置決めを容易に行うことができる電動機の回転子に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動機の回転子、特に回転子鉄心の内部に磁石を埋め込んで構成するいわゆる埋め込み磁石構造の回転子は、例えば、図1、2に示すような構造を有している。図1において、(a)は横(A−A)断面図を、(b)は左側面図を示している。また、図2において、(a)は磁石部横(B−B)断面図を、(b)は左側面図を示している。
【0003】
図1、2で例示する、いわゆる埋め込み磁石構造の回転子は、磁性鋼板を軸方向に積層して形成される積層鉄心1を有している。この積層鉄心1は、その周方向に複数の開口部1aを有している。この開口部1aは、磁石2を埋め込むためのものであり、極数の整数倍の個数設けられ、積層鉄心1の軸方向に貫通して開口している。この開口部1aに挿入される磁石2は、例えば図2(a)磁石部横(B−B)断面図で示すように、両端に樹脂モールド2a等の弾性体を備えている。積層鉄心1の開口部1aに挿入される磁石2は、樹脂モールド2a等の弾性体が有する弾性力の効果により、開口部1aの中央に固定されることになる。このようにして形成された積層鉄心1は、マグネットエンドプレート3とロータエンドプレート4によって、軸方向の両側から挟み込まれて、一体に固定されている。これは、積層鉄心1に埋め込まれている磁石2が、電動機の回転中、あるいは電動機の輸送中等に積層鉄心1の開口部1aから飛び出さないようにするためのものである。これら磁石2を埋め込まれた積層鉄心1とエンドプレート3,4は、回転子軸5に固定され、回転子を形成している。この際の固定方法としては、図1で示すとおり、回転子軸5にかしめ加工6を施すことによって行われている。
【0004】
ここで、図1、2に示される従来の回転子を製造するための工程を整理すると、次のようになる。すなわち、(1)回転子軸5にマグネットエンドプレート3を挿入する、(2)マグネットエンドプレート3上に磁性鋼板を積み重ね、積層鉄心1を形成する、(3)積層鉄心1の開口部1aに磁石2を挿入する、(4)積層鉄心1上にロータエンドプレート4を挿入する、(5)回転子軸5にかしめ加工を施して、回転子を一体に成形固定する、という5つの工程を経ることとなる。なお、回転子軸5には、かしめ加工という、回転子軸5自体に塑性変形を及ぼす加工が施されるため、回転子を分解する際には、回転子軸5のかしめ加工部6を破壊しなければならない。つまり、図1、2に示す従来の回転子のような構造では、回転子軸5を再利用することはできなくなる。
【0005】
ところで、近年のコスト改善や電動機効率の向上から、回転子の軽量化が要請されている。この要請に応えるため、従来金属部品で構成されていたマグネットエンドプレート3やロータエンドプレート4を樹脂に置き換えることによって、軽量化を図ることが行われている。例えば、下記特許文献1には、機械的強度が特に要求される部分のみを金属とし、この他のロータコアを合成樹脂にて成形被覆することにより、このロータコアの軽量化と保護を十分に図りながら、回転子全体として製造コスト、製品コストを低減し、軽量化をも実現する回転子に関する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
一方、下記特許文献2には、磁石埋め込み型モータにおいて、ロータコアに埋め込む磁石を、位置ずれすることなく固定する技術が開示されている。この特許文献2に係る発明は、ロータコアに磁石を埋め込む際に、磁石挿入溝と磁石との間に存在する隙間によって磁石の固定位置がずれてしまい、回転子のアンバランス等が発生することに鑑みて成されたものである。このような課題を解決するために、特許文献2に開示されている発明は、磁石挿入溝の下面両側の角部に弾性材挿入用溝をそれぞれ設け、弾性材をそれぞれ挿入し、磁石を斜め上方に付勢することによって磁石の位置ずれを防止することを特徴としたものである(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−201153号公報 (第2−3頁、第1図)
【特許文献2】
特開2000−341920号公報 (第2−3頁、第1図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在、さらなるコスト改善の実施が求められており、回転子の軽量化に加えて、今以上の製造工程、部品点数の削減が必要となっている。従来の技術で例示したような回転子では、磁石の位置決めのため、あらかじめ磁石の両端に樹脂モールドを成形固着しておく必要がある。そこで、磁石への樹脂成形を省略し、積層鉄心と磁石を組み立てた後、樹脂によって一体モールド成形すれば、磁石への樹脂モールド固着成形工程の削減によるコスト改善、エンドプレートの樹脂化による軽量化を図ることができる。しかし、この際問題となるのが、磁石の位置決めである。図1、2や前記特許文献1で示した従来の技術の回転子では、積層鉄心と磁石を樹脂によって一体モールド成形する場合に、磁石が位置ずれを起こしてしまい、回転子のアンバランスが発生してしまう。さらに、回転子全体を樹脂にてモールド固定する際に、積層鋼板が開く場合があり、このような積層鋼板の開きを規制する必要もある。
【0009】
一方、上記のような問題点を解決するための手段として、前記特許文献2に開示される発明を適用することも可能である。しかし、特許文献2に開示される発明では、積層鋼板の構造を変更しなければならない。また、この発明は、バネ等の弾性材の部品点数増加や、弾性材挿入のための作業工程を増加しなければならないものでもある。これらは、製造ライン及び組立ラインの変更や部品調達の増加を招き、コスト改善の要請に逆行するものである。
【0010】
本発明の目的は、上記のような問題点を解消するためになされたものである。本発明によれば、電動機の回転子を樹脂成形する際に、積層鋼板の開きを抑制しつつ、磁石の位置決めを行うことができる。また、製造工程や部品点数の増加を最小限に抑え、かつ簡易に製造することができるので、回転子の製品品質を維持しつつ、軽量化、コスト低減を実現することができる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題を解決するために、本発明に係る電動機の回転子は、回転子軸と、磁性鋼板を軸方向に積層して形成される積層鉄心と、積層鉄心の周方向に所定の間隔を介して配置されるとともに、軸方向に開口して形成される複数の開口部と、複数の開口部の周方向両側に配され、積層鉄心を軸方向に両側から挟持するC型のクリップと、複数の開口部に嵌挿され、開口部両側のC型クリップ対の胴部で周方向両側から押圧される磁石と、を含む。前記積層鉄心とC型クリップと磁石は、樹脂によって回転子軸と一体に成形固定される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による電動機の回転子について、図3、4、5を用いて説明する。図3において、(a)は横(C−C)断面図を、(b)は左側面図を示している。また、図4において、(a)は磁石部横(D−D)断面図を、(b)は左側面図を示している。さらに、図5は、本発明に係るC型クリップの機能を説明する図である。
【0013】
図3、4で示す、本発明に係る電動機の回転子は、従来の技術で例示した電動機の回転子と同様に、磁性鋼板を軸方向に積層して形成される積層鉄心1を有している。この積層鉄心1は、その周方向に複数の開口部1aを有している。この開口部1aは、磁石2を埋め込むためのものであり、積層鉄心1の軸方向に貫通して開口している。
【0014】
ここで、本発明に係る電動機の回転子が、図1で示した従来の回転子と異なるのは、C型のクリップ8をその開口部1aに有していることである。図4(a)磁石部横(D−D)断面図において、C型クリップ8の設置状態を詳細に示す。また、図5において、本発明に係るC型クリップの機能を説明する。このC型クリップ8は、積層鉄心1が有する複数の開口部1aの周方向両側に配されている。
【0015】
まず、複数の開口部1aに磁石2が挿入される前の段階において、このC型クリップ8は、積層鉄心1が有する複数の開口部1aの周方向両側において、積層鉄心1を軸方向の両側から挟み込むように設置される。つまり、このC型クリップ8は、その端部によってXで示される力を及ぼし、積層鉄心1を軸方向の両側から挟み込み、磁性鋼板の軸方向の動きを規制する役割を担っている。
【0016】
次に、磁石2を挿入する場合について説明する。磁石2の挿入は、複数の開口部1aの周方向両側にC型クリップ8が配されている状態で行われる。磁石2を開口部1aに押し込む場合、磁石2は、C型クリップ8からYで示される力を受けることになる。開口部1aの周方向両側に配される2つのC型クリップ8は、それぞれほぼ同等の弾性力を有しているため、磁石2は、開口部1aの中央に保持されることになる。なお、本発明に係るC型クリップ8を用いた場合には、従来の発明で実施されているような樹脂モールド2a付き磁石2に対して、部品コスト削減等の効果を有しており、非常に有益なものである。
【0017】
上記のように組み合わされた積層鉄心1とC型クリップ8と磁石2とは、樹脂7によって回転子軸5と一体にモールド成形固定されることとなる。図3(a)の横(C−C)断面図、および図4(a)の磁石部横(D−D)断面図で示すとおり、回転子軸5に挿入された積層鉄心1とC型クリップ8と磁石2とは、積層鉄心1の両側を全周にわたって樹脂7でモールド固定されることにより、一体にモールド成形される。この際、積層鉄心1の開口部1aと磁石2との間に存在している隙間にも樹脂7が入り込むことになる。これによって、C型クリップ8のみで固定されていた磁石2が、積層鉄心1と完全に一体となる。よって、積層鉄心1に埋め込まれている磁石2が、電動機の回転中、あるいは電動機の輸送中等に積層鉄心1から飛び出すことはない。また、C型クリップ対8の有するほぼ均等な弾性力の効果によって、磁石2は、開口部の中央に位置したままモールド固定されることになる。さらに、回転子軸5は、樹脂7との接触部に凹部7aを有している。この凹部7a構造によって、回転子軸5と樹脂7はモールド固定されることとなり、回転子軸5に対して、積層鉄心1と樹脂7が軸方向及び周方向へ移動することを規制することができる。なお、本発明に係る電動機の回転子は、図1で示した従来の回転子と異なり、回転子軸5にかしめ加工等の塑性変形を加えることがないので、回転子の製造前後でそのままの形状を維持することとなる。つまり、樹脂7を除去すれば回転子軸5は再生利用可能となる。本発明によれば、再生利用によるコスト削減効果を発揮することができる。
【0018】
ここで、図3、4、5に例示される、本発明に係る回転子を製造するための工程を整理すると、次のようになる。すなわち、(1)回転子軸5に磁性鋼板を積み重ね、積層鉄心1を形成する、(2)積層鉄心1の開口部1aにC型クリップ8を挿入する、(3)積層鉄心1の開口部1aに磁石2を挿入する、(4)樹脂7によって積層鉄心1と回転子軸5を一体にモールド成形固定する、という4つの工程を経ることとなる。このように、本発明によれば、前述した従来の回転子の製造工程に比べて工程数を削減することができる。さらに、費用のかかる樹脂モールド2a付き磁石2を、C型クリップ8と磁石2に変更することができる。これは、部品単価の低減につながるため、コスト改善の効果が得られる。
【0019】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、回転子の軽量化を図る目的で、回転子軸と積層鉄心等を樹脂にて一体にモールド成形固定する際に問題となる、磁石の位置ずれを防止するためになされたものである。この対策として、本発明ではC型クリップを用いた。このC型クリップは、回転子の樹脂成形の際に、積層鋼板の開きを防止するとともに、磁石の位置ずれを簡易に防止することができる。
【0020】
また、C型クリップが有する、積層鋼板の開き防止および磁石の位置ずれ防止という機能によって、樹脂部分と磁性鋼板、回転子軸などのインサート部品との間に界面剥離が発生した場合でも、回転子は、剛性を保つことが可能である。
【0021】
さらに、本発明によれば、回転子軸に対して、かしめ加工等の塑性変形を及ぼす加工を施さないので、回転子軸を再利用することが可能となる。
【0022】
さらにまた、回転子軸のかしめ加工が不要となるため、例えば、鋳鉄などの脆性材料に代表される低コストの金属材質を、回転子軸に選択することが可能となる。
【0023】
その結果、作業工程削減、部品点数削減等によるコスト改善を実施しつつ、製品品質を維持した回転子の軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の電動機の回転子のうち、いわゆる埋め込み磁石構造の回転子の横断面を例示する図である。
【図2】従来の電動機の回転子のうち、いわゆる埋め込み磁石構造の回転子の磁石部横断面を例示する図である。
【図3】本発明に係る電動機の回転子の横断面を例示する図である。
【図4】本発明に係る電動機の回転子の磁石部横断面を例示する図である。
【図5】本発明に係る電動機の回転子のうち、C型クリップの機能を説明する図である。
【符号の説明】
1 積層鉄心、1a 開口部、2 磁石、2a 樹脂モールド(磁石挿入用)、3 マグネットエンドプレート、4 ロータエンドプレート、5 回転子軸、6 かしめ加工部、7 樹脂(一体モールド成形用)、7a 凹部、8 C型クリップ。
Claims (1)
- 回転子軸と、
磁性鋼板を軸方向に積層して形成される積層鉄心と、
積層鉄心の周方向に所定の間隔を介して配置されるとともに、軸方向に開口して形成される複数の開口部と、
複数の開口部の周方向両側に配され、積層鉄心を軸方向に両側から挟持するC型のクリップと、
複数の開口部に嵌挿され、開口部両側のC型クリップ対の胴部で周方向両側から押圧される磁石と、
を含み、
前記積層鉄心とC型クリップと磁石は、樹脂によって回転子軸と一体に成形固定されることを特徴とする電動機の回転子。
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---|---|---|---|
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2003
- 2003-01-09 JP JP2003003297A patent/JP2004222346A/ja active Pending
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