JP2004219132A - 旋回軸の幾何学的な誤差の測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】旋回軸と直進軸とを有する工作機械において、旋回軸の幾何学的な誤差を短時間に精度よく測定する。
【解決手段】ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を旋回軸に対して軸方向に保つような条件と半径方向とに保つような条件とで測定した測定データの偏心量から、旋回軸の幾何学的な誤差を求める。
【選択図】図3
【解決手段】ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を旋回軸に対して軸方向に保つような条件と半径方向とに保つような条件とで測定した測定データの偏心量から、旋回軸の幾何学的な誤差を求める。
【選択図】図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、旋回軸と直進軸とを有する工作機械において、旋回軸の幾何学的な誤差の測定方法に属する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
工作機械の運動精度を測定するための装置としてボールバーが広く用いられている。ボールバーは精度が十分に補償された2つの球を両端に取付けた伸縮機構をもつバーとその2つの球を支持する磁石を内蔵したソケットから構成されている。工作機械の主軸とテーブルとにソケットを取付け、運動中の2球間の距離をバーに内蔵された変位計によって測定することができる。したがって、バーの伸縮方向である軸方向がボールバーの感度方向となる。
【0003】
5軸制御マシニングセンタに代表される旋回軸と直進軸とを有する工作機械の運動精度を左右する最も基本的な要因は旋回軸と直進軸との幾何学的な誤差である。すでに、直進軸間の幾何学的な誤差については、ボールバーを用いた測定方法が確立されている。(非特許文献1)
【0004】
工作機械の誤差要因については、同定すべき誤差要因の各々に対して個別の正弦関数と余弦関数による2つの独立変数を与えて、R−q法の測定データを用いて、回帰分析により、測定データに含まれる誤差要因を定量的に解析する誤差解析方法が提案されている。(特許文献1)
【0005】
旋回軸の幾何学的な誤差については、ボールバーに自転しながら公転させる運動を2つの旋回軸と2つの直進軸とによる同時4軸制御によって、ボールバーの2球間の距離を一定に保つように行わせて、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、その測定データとボールバーの2球の運動を表した数式とから最小2乗法を用いて、2つの旋回軸の幾何学的な誤差を算出する誤差測定方法が提案されている。(非特許文献2)
【0006】
ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動を1つの旋回軸と2つの直進軸とによる同時3軸制御によって、ボールバーの感度方向を3つの直進軸に対して平行に保つような条件でそれぞれ行い、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、それぞれの測定データとボールバーの2球の運動を表した数式とから回帰分析を用いて、2つの旋回軸の幾何学的な誤差を算出する誤差測定方法が提案されている。(非特許文献3)
【0007】
【特許文献1】
特開平8−285574
【非特許文献1】
井原之敏:DBB法を用いたNC工作機械の運動精度の測定と改善に関する研究、リアライズ社、 (1992)、 p47−49。
【非特許文献2】
齋藤明徳、宮川元成、堤正臣:同時4軸制御による5軸制御マシニングセンタの位置偏差および幾何偏差推定方法、精密工学会誌、(2001)、p 306−310。
【非特許文献3】
坂本重彦、稲崎一郎:5軸マシニングセンタにおける組立誤差同定方法、日本機械学会論文集(C編)、(1994)、 p2475−2483。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上に述べた従来の工作機械の旋回軸の幾何学的な誤差の測定方法は、測定データとボールバーの2球の運動を表した数式とを用いて回帰分析もしくは最小2乗法によって誤差を算出しなくてはならないため、短時間で誤差が求められない。さらに、前述の測定方法によって算出した旋回軸の幾何学的な誤差が、十分な精度を有しているのかは検証されておらず、その実用性は確立されていない。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、旋回軸の幾何学的な誤差を短時間に精度よく測定するためのものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するため、本発明に係る工作機械の旋回軸の幾何学的な誤差の測定方法は、次のような手段を採用する。
【0011】
即ち、1つの旋回軸と2つの直進軸とを有する工作機械において、ボールバーの一方の球を主軸側に取付け、もう一方の球をテーブル側に取付けて、主軸部とテーブル部とをボールバーで連結し、1つの旋回軸と2つの直進軸とによる同時3軸制御によって、ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を旋回軸の軸方向に保つような条件と半径方向に保つような条件とで行い、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、前記軸方向の測定データから求めた偏心量と前記半径方向の測定データから求めた偏心量から1つの旋回軸の幾何学的な誤差を求めることを特徴とする。
【0012】
また、請求項1の誤差測定方法において、偏心量から1つの旋回軸の幾何学的な誤差として2つの角度誤差と2つの位置誤差を求めることを特徴とする。
【0013】
さらに、第1の旋回軸上に第2の旋回軸が配置され、3つの直進軸を有する工作機械において、ボールバーの一方の球を主軸側に取付け、もう一方の球をテーブル側に取付けて、主軸部とテーブル部とをボールバーで連結し、第1の旋回軸と2つの直進軸とによる同時3軸制御によって、ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を第1の旋回軸の軸方向に保つような条件と半径方向に保つような条件とで行い、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、前記第1の旋回軸の軸方向の測定データから求めた偏心量と前記第1の旋回軸の半径方向の測定データから求めた偏心量から第1の旋回軸の幾何学的な誤差を求め、同様に第2の旋回軸と2つの直進軸とによる同時3軸制御によって、ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を第2の旋回軸の軸方向に保つような条件と半径方向に保つような条件とで行い、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、前記第1の旋回軸の幾何学的な誤差と前記第2の旋回軸の軸方向の測定データから求めた偏心量と前記第2の旋回軸の半径方向の測定データから求めた偏心量から第2の旋回軸の幾何学的な誤差を求めることを特徴とする。
【0014】
請求項3の誤差測定方法において、偏心量から2つの旋回軸の幾何学的な誤差として4つの角度誤差と4つの位置誤差を求めることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る工作機械の旋回軸の幾何学的な誤差の測定方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すようなA軸、C軸の2つの旋回軸とX軸、Y軸、Z軸の3つの直進軸とを有する工作機械において、旋回軸のA軸の幾何学的な誤差を測定する場合について説明する。この図1に示した工作機械において、旋回軸であるA軸の幾何学的な誤差は、図2に示すように、A軸の中心線4の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線4の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、基準座標系原点OとA軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとのY方向の位置誤差p1、基準座標系原点OとA軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとのZ方向の位置誤差p2となる。このA軸の幾何学的な誤差a1、a2、p1、p2を測定する。
【0017】
図3、4は図1のテーブル2部だけを抜き出したものである。図3に示すように、ボールバー3の一方の球は主軸1側に取付け、もう一方はテーブル2上のA軸の中心線4からZTCだけ離れた基準座標系のZ軸上に設置する。測定では、テーブル2側に取付けた球をA軸によって回転運動させ、その回転角度と同期するように図1に示したY、Z軸によって主軸1側の球を円運動させる。その間、ボールバー3の軸方向を図3に示したA軸の半径方向に保った状態で測定を行う。さらに、ボールバー3の軸方向を図4に示したA軸の軸方向に保った状態で測定を行う。
【0018】
図4に示したA軸の軸方向の測定では、Y、Z軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量とA軸の幾何学的な誤差との関係は、Y方向の偏心量e1y、Z方向の偏心量e1z、A軸の中心線4の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線4の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、A軸の中心線4からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTCとすると、近似的につぎのようになる。
【式1】
【式2】
【0019】
図3に示したA軸の半径方向の測定では、Y、Z軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量とA軸の幾何学的な誤差との関係は、Y方向の偏心量e2y、Z方向の偏心量e2z、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのY方向の位置誤差p1、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのZ方向の位置誤差p2とすると、つぎのようになる。
【式3】
【式4】
【0020】
これらの式1から式4に、測定データの偏心量e1y、e1z、e2y、e2zとA軸の中心線からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTCとを代入することで、A軸の幾何学的な誤差a1、a2、p1、p2を求めることができる。
【0021】
図1に示すようなA軸、C軸の2つの旋回軸とX軸、Y軸、Z軸の3つの直進軸とを有する工作機械において、旋回軸のA軸の幾何学的な誤差とC軸の幾何学的な誤差を測定する場合について説明する。この図1に示した工作機械において、旋回軸であるA軸の幾何学的な誤差は、図5に示すように、A軸の中心線4の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線4の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、基準座標系原点OとA軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとのY方向の位置誤差p1、基準座標系原点OとA軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとのZ方向の位置誤差p2となる。C軸の幾何学的な誤差は、C軸の中心線5の基準座標系のX軸周りの角度誤差a3、C軸の中心線5の基準座標系のY軸周りの角度誤差a4、A軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとC軸の中心線5がA軸の中心線4に最も近づくC軸の中心線5上の点iCとのX方向の位置誤差p3、A軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとC軸の中心線5がA軸の中心線4に最も近づくC軸の中心線5上の点iCとのY方向の位置誤差p4となる。ここで、まず、A軸の幾何学的な誤差a1、a2、p1、p2を求める。
【0022】
図3、4は図1のテーブル2部だけを抜き出したものである。図3に示すように、ボールバー3の一方の球は主軸1側に取付け、もう一方はテーブル2上のA軸の中心線4からZTCだけ離れた基準座標系のZ軸上に設置する。測定では、テーブル2側に取付けた球をA軸によって回転運動させ、その回転角度と同期するように図1に示したY、Z軸によって主軸1側の球を円運動させる。その間、ボールバー3の軸方向を図3に示したA軸の半径方向に保った状態で測定を行う。さらに、ボールバー3の軸方向を図4に示したA軸の軸方向に保った状態で測定を行う。
【0023】
図4に示したA軸の軸方向の測定では、Y、Z軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量とA軸の幾何学的な誤差との関係は、Y方向の偏心量e1y、Z方向の偏心量e1z、A軸の中心線4の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線4の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、A軸の中心線4からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTCとすると、近似的につぎのようになる。
【式1】
【式2】
【0024】
図3に示したA軸の半径方向の測定では、Y、Z軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量とA軸の幾何学的な誤差との関係は、Y方向の偏心量e2y、Z方向の偏心量e2z、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのY方向の位置誤差p1、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのZ方向の位置誤差p2とすると、つぎのようになる。
【式3】
【式4】
【0025】
これらの式1から式4に、測定データの偏心量e1y、e1z、e2y、e2zとA軸の中心線からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTCとを代入することで、A軸の幾何学的な誤差a1、a2、p1、p2を求めることができる。
【0026】
さらに、C軸の幾何学的な誤差a3、a4、p3、p4を求める。
【0027】
図6、7は図1のテーブル2部だけを抜き出したものである。図6に示すように、ボールバー3の一方の球は主軸1側に取付け、もう一方はテーブル2上のA軸の中心線4からZTCだけ離れ、基準座標系のZ軸からX軸方向にRBだけ離れた位置に設置する。測定では、テーブル2側に取付けた球をC軸によって回転運動させ、その回転角度と同期するように図1に示したX、Y軸によって主軸1側の球を円運動させる。その間、ボールバーの感度方向を図6に示したC軸の半径方向に保った状態で測定を行う。さらに、ボールバーの感度方向を図7に示したC軸の軸方向に保った状態で測定を行う。
【0028】
図7に示したC軸の軸方向の測定では、X、Y軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量と旋回軸の幾何学的な誤差との関係は、X方向の偏心量e3xとY方向の偏心量e3y、A軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、C軸の中心線の基準座標系のX軸周りの角度誤差a3、C軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a4、基準座標系のZ軸からボールバーのテーブル側の球までの距離RBとすると、近似的につぎのようになる。
【式5】
【式6】
【0029】
これらの式5と式6に、測定データの偏心量e3x、e3y、基準座標系のZ軸からボールバーのテーブル側の球までの距離RB、先の測定で既知のA軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1とを代入することで、C軸の幾何学的な誤差a3、a4を求めることができる。
【0030】
図6に示したC軸の半径方向の測定では、X、Y軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量とC軸の幾何学的な誤差との関係は、X方向の偏心量e4xとY方向の偏心量e4y、A軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、C軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a4、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのY方向の位置誤差p1、A軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とC軸の中心線がA軸の中心線に最も近づくC軸の中心線上の点とのX方向の位置誤差p3、A軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とC軸の中心線がA軸の中心線に最も近づくC軸の中心線上の点とのY方向の位置誤差p4、A軸の中心線からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTCとすると、近似的につぎのようになる。
【式7】
【式8】
【0031】
これらの式7と式8に、測定データの偏心量e4x、e4y、A軸の中心線からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTC、先の測定で既知のA軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのY方向の位置誤差p1、C軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a4とを代入することで、C軸の幾何学的な誤差p3、p4を求めることができる。
【0032】
【実施例】
図8は、図1に示した工作機械において、図4に示したボールバーの感度方向をA軸の軸方向に保った運動を測定した結果である。測定結果は、ボールバーの長さを一定に保った値(100mm)からの誤差を拡大して、A軸の回転角度に応じて極座標で表示している。この表示では基準円弧の半径方向の1目盛が10mmとなっている。測定結果は、A軸の幾何学的な誤差の影響によって、60°〜90°では基準円弧よりも外側に広がり、0°〜60°では内側に入り込んでいる。そのため、基準円弧からの半径方向の誤差は−7mmから12mmまで変化している。
【0033】
図9は、図8の測定データから本発明を適用し、A軸の幾何学的な偏差であるA軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1とA軸の中心線の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2を求め、求めた角度誤差が存在した場合の測定結果への影響を考慮して補正を行い、再度、ボールバーを軸方向に保った運動を測定した結果である。補正後の測定結果は基準円弧とよく一致しており、測定結果の基準円弧からの半径方向の誤差は±2mmの範囲に入るまでに改善されている。
【0034】
図10は、図1に示した工作機械において、従来から提案されている2つの旋回軸の幾何学的な誤差a1、a2、a3、a4、p1、p2、p3、p4の影響がすべて測定結果に現れるA、C、Y、Z軸による同時4軸制御運動を測定した結果である。測定結果は、ボールバーの長さを一定に保った値(100mm)からの誤差を拡大して、A軸の回転角度に応じて極座標で表示している。この表示では基準円弧の半径方向の1目盛が20mmとなっている。測定結果は、2つの旋回軸の幾何学的な誤差によって、20°〜90°では基準円弧よりも外側に広がり、また、0°〜20°、90°〜0°では内側に入り込んでいる。そのため、基準円弧からの半径方向の誤差は−27mmから50mmまで変化している。
【0035】
図11は、図10の測定データから本発明を適用し、2つの旋回軸の幾何学的な誤差a1、a2、a3、a4、p1、p2、p3、p4を求め、求めた8個の誤差が存在した場合の測定結果への影響を考慮して運動の補正を行い、再度、同時4軸制御運動を測定した結果である。補正後の測定結果は基準円弧に近くなっており、旋回軸の基準円弧からの半径方向の誤差は−17mmから+18mmの範囲に入るまでに改善されている。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る旋回軸の幾何学的な誤差の測定方法は、旋回軸と直進軸とを有する工作機械において、ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を旋回軸に対して軸方向に保つような条件と半径方向とに保つような条件とで測定した測定データの偏心量から、旋回軸の幾何学的な誤差を短時間に精度よく求められるため、求めた誤差を補正することによって、高精度な運動を実現することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】測定対象とする工作機械の旋回軸と直進軸の配置を示した図である。
【図2】1つの旋回軸の例として、A軸の幾何学的な誤差を表した模式図である。
【図3】A軸の幾何学的な誤差を測定するためのボールバーの感度方向をA軸の半径方向に保つ運動を表した図である。
【図4】A軸の幾何学的な誤差を測定するためのボールバーの感度方向をA軸の軸方向に保つ運動を表した図である。
【図5】2つの旋回軸の例として、A軸の幾何学的な誤差とC軸の幾何学的な誤差とを表した模式図である。
【図6】C軸の幾何学的な誤差を測定するためのボールバーの感度方向をC軸の半径方向に保つ運動を表した図である。
【図7】C軸の幾何学的な誤差を測定するためのボールバーの感度方向をC軸の軸方向に保つ運動を表した図である。
【図8】図1に示した工作機械において、ボールバーの感度方向をA軸の軸方向に保つ運動を測定した結果である。
【図9】図8の測定データから本発明を適用してA軸の幾何学的な誤差a1、a2を求め、運動を補正して、ボールバーをA軸の軸方向に保つ運動を測定した結果である。
【図10】図1に示した工作機械において、同時4軸制御運動を測定した結果である。
【図11】図10の測定データから本発明を適用してA軸の幾何学的な誤差a1、a2、a3、a4、p1、p2、p3、p4を求め、運動を補正して、同時4軸制御運動を測定した結果である。
【符号の説明】
1 主軸
2 テーブル
3 ボールバー
4 A軸の中心線
5 C軸の中心線
a1 A軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差
a2 A軸の中心線の基準座標系のZ軸周りの角度誤差
a3 C軸の中心線の基準座標系のX軸周りの角度誤差
a4 C軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差
p1 基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのY方向の位置誤差
p2 基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのZ方向の位置誤差
p3 A軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とC軸の中心線がA軸の中心線に最も近づくC軸の中心線上の点とのX方向の位置誤差
p4 A軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とC軸の中心線がA軸の中心線に最も近づくC軸の中心線上の点とのY方向の位置誤差
ZTC A軸の中心線からボールバーのテーブル側の球までの距離
RB 基準座標系のZ軸からボールバーのテーブル側の球までの距離
【発明の属する技術分野】
本発明は、旋回軸と直進軸とを有する工作機械において、旋回軸の幾何学的な誤差の測定方法に属する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
工作機械の運動精度を測定するための装置としてボールバーが広く用いられている。ボールバーは精度が十分に補償された2つの球を両端に取付けた伸縮機構をもつバーとその2つの球を支持する磁石を内蔵したソケットから構成されている。工作機械の主軸とテーブルとにソケットを取付け、運動中の2球間の距離をバーに内蔵された変位計によって測定することができる。したがって、バーの伸縮方向である軸方向がボールバーの感度方向となる。
【0003】
5軸制御マシニングセンタに代表される旋回軸と直進軸とを有する工作機械の運動精度を左右する最も基本的な要因は旋回軸と直進軸との幾何学的な誤差である。すでに、直進軸間の幾何学的な誤差については、ボールバーを用いた測定方法が確立されている。(非特許文献1)
【0004】
工作機械の誤差要因については、同定すべき誤差要因の各々に対して個別の正弦関数と余弦関数による2つの独立変数を与えて、R−q法の測定データを用いて、回帰分析により、測定データに含まれる誤差要因を定量的に解析する誤差解析方法が提案されている。(特許文献1)
【0005】
旋回軸の幾何学的な誤差については、ボールバーに自転しながら公転させる運動を2つの旋回軸と2つの直進軸とによる同時4軸制御によって、ボールバーの2球間の距離を一定に保つように行わせて、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、その測定データとボールバーの2球の運動を表した数式とから最小2乗法を用いて、2つの旋回軸の幾何学的な誤差を算出する誤差測定方法が提案されている。(非特許文献2)
【0006】
ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動を1つの旋回軸と2つの直進軸とによる同時3軸制御によって、ボールバーの感度方向を3つの直進軸に対して平行に保つような条件でそれぞれ行い、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、それぞれの測定データとボールバーの2球の運動を表した数式とから回帰分析を用いて、2つの旋回軸の幾何学的な誤差を算出する誤差測定方法が提案されている。(非特許文献3)
【0007】
【特許文献1】
特開平8−285574
【非特許文献1】
井原之敏:DBB法を用いたNC工作機械の運動精度の測定と改善に関する研究、リアライズ社、 (1992)、 p47−49。
【非特許文献2】
齋藤明徳、宮川元成、堤正臣:同時4軸制御による5軸制御マシニングセンタの位置偏差および幾何偏差推定方法、精密工学会誌、(2001)、p 306−310。
【非特許文献3】
坂本重彦、稲崎一郎:5軸マシニングセンタにおける組立誤差同定方法、日本機械学会論文集(C編)、(1994)、 p2475−2483。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上に述べた従来の工作機械の旋回軸の幾何学的な誤差の測定方法は、測定データとボールバーの2球の運動を表した数式とを用いて回帰分析もしくは最小2乗法によって誤差を算出しなくてはならないため、短時間で誤差が求められない。さらに、前述の測定方法によって算出した旋回軸の幾何学的な誤差が、十分な精度を有しているのかは検証されておらず、その実用性は確立されていない。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、旋回軸の幾何学的な誤差を短時間に精度よく測定するためのものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するため、本発明に係る工作機械の旋回軸の幾何学的な誤差の測定方法は、次のような手段を採用する。
【0011】
即ち、1つの旋回軸と2つの直進軸とを有する工作機械において、ボールバーの一方の球を主軸側に取付け、もう一方の球をテーブル側に取付けて、主軸部とテーブル部とをボールバーで連結し、1つの旋回軸と2つの直進軸とによる同時3軸制御によって、ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を旋回軸の軸方向に保つような条件と半径方向に保つような条件とで行い、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、前記軸方向の測定データから求めた偏心量と前記半径方向の測定データから求めた偏心量から1つの旋回軸の幾何学的な誤差を求めることを特徴とする。
【0012】
また、請求項1の誤差測定方法において、偏心量から1つの旋回軸の幾何学的な誤差として2つの角度誤差と2つの位置誤差を求めることを特徴とする。
【0013】
さらに、第1の旋回軸上に第2の旋回軸が配置され、3つの直進軸を有する工作機械において、ボールバーの一方の球を主軸側に取付け、もう一方の球をテーブル側に取付けて、主軸部とテーブル部とをボールバーで連結し、第1の旋回軸と2つの直進軸とによる同時3軸制御によって、ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を第1の旋回軸の軸方向に保つような条件と半径方向に保つような条件とで行い、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、前記第1の旋回軸の軸方向の測定データから求めた偏心量と前記第1の旋回軸の半径方向の測定データから求めた偏心量から第1の旋回軸の幾何学的な誤差を求め、同様に第2の旋回軸と2つの直進軸とによる同時3軸制御によって、ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を第2の旋回軸の軸方向に保つような条件と半径方向に保つような条件とで行い、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、前記第1の旋回軸の幾何学的な誤差と前記第2の旋回軸の軸方向の測定データから求めた偏心量と前記第2の旋回軸の半径方向の測定データから求めた偏心量から第2の旋回軸の幾何学的な誤差を求めることを特徴とする。
【0014】
請求項3の誤差測定方法において、偏心量から2つの旋回軸の幾何学的な誤差として4つの角度誤差と4つの位置誤差を求めることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る工作機械の旋回軸の幾何学的な誤差の測定方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すようなA軸、C軸の2つの旋回軸とX軸、Y軸、Z軸の3つの直進軸とを有する工作機械において、旋回軸のA軸の幾何学的な誤差を測定する場合について説明する。この図1に示した工作機械において、旋回軸であるA軸の幾何学的な誤差は、図2に示すように、A軸の中心線4の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線4の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、基準座標系原点OとA軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとのY方向の位置誤差p1、基準座標系原点OとA軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとのZ方向の位置誤差p2となる。このA軸の幾何学的な誤差a1、a2、p1、p2を測定する。
【0017】
図3、4は図1のテーブル2部だけを抜き出したものである。図3に示すように、ボールバー3の一方の球は主軸1側に取付け、もう一方はテーブル2上のA軸の中心線4からZTCだけ離れた基準座標系のZ軸上に設置する。測定では、テーブル2側に取付けた球をA軸によって回転運動させ、その回転角度と同期するように図1に示したY、Z軸によって主軸1側の球を円運動させる。その間、ボールバー3の軸方向を図3に示したA軸の半径方向に保った状態で測定を行う。さらに、ボールバー3の軸方向を図4に示したA軸の軸方向に保った状態で測定を行う。
【0018】
図4に示したA軸の軸方向の測定では、Y、Z軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量とA軸の幾何学的な誤差との関係は、Y方向の偏心量e1y、Z方向の偏心量e1z、A軸の中心線4の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線4の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、A軸の中心線4からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTCとすると、近似的につぎのようになる。
【式1】
【式2】
【0019】
図3に示したA軸の半径方向の測定では、Y、Z軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量とA軸の幾何学的な誤差との関係は、Y方向の偏心量e2y、Z方向の偏心量e2z、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのY方向の位置誤差p1、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのZ方向の位置誤差p2とすると、つぎのようになる。
【式3】
【式4】
【0020】
これらの式1から式4に、測定データの偏心量e1y、e1z、e2y、e2zとA軸の中心線からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTCとを代入することで、A軸の幾何学的な誤差a1、a2、p1、p2を求めることができる。
【0021】
図1に示すようなA軸、C軸の2つの旋回軸とX軸、Y軸、Z軸の3つの直進軸とを有する工作機械において、旋回軸のA軸の幾何学的な誤差とC軸の幾何学的な誤差を測定する場合について説明する。この図1に示した工作機械において、旋回軸であるA軸の幾何学的な誤差は、図5に示すように、A軸の中心線4の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線4の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、基準座標系原点OとA軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとのY方向の位置誤差p1、基準座標系原点OとA軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとのZ方向の位置誤差p2となる。C軸の幾何学的な誤差は、C軸の中心線5の基準座標系のX軸周りの角度誤差a3、C軸の中心線5の基準座標系のY軸周りの角度誤差a4、A軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとC軸の中心線5がA軸の中心線4に最も近づくC軸の中心線5上の点iCとのX方向の位置誤差p3、A軸の中心線4が基準座標系のYZ平面に交わる点iAとC軸の中心線5がA軸の中心線4に最も近づくC軸の中心線5上の点iCとのY方向の位置誤差p4となる。ここで、まず、A軸の幾何学的な誤差a1、a2、p1、p2を求める。
【0022】
図3、4は図1のテーブル2部だけを抜き出したものである。図3に示すように、ボールバー3の一方の球は主軸1側に取付け、もう一方はテーブル2上のA軸の中心線4からZTCだけ離れた基準座標系のZ軸上に設置する。測定では、テーブル2側に取付けた球をA軸によって回転運動させ、その回転角度と同期するように図1に示したY、Z軸によって主軸1側の球を円運動させる。その間、ボールバー3の軸方向を図3に示したA軸の半径方向に保った状態で測定を行う。さらに、ボールバー3の軸方向を図4に示したA軸の軸方向に保った状態で測定を行う。
【0023】
図4に示したA軸の軸方向の測定では、Y、Z軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量とA軸の幾何学的な誤差との関係は、Y方向の偏心量e1y、Z方向の偏心量e1z、A軸の中心線4の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線4の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、A軸の中心線4からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTCとすると、近似的につぎのようになる。
【式1】
【式2】
【0024】
図3に示したA軸の半径方向の測定では、Y、Z軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量とA軸の幾何学的な誤差との関係は、Y方向の偏心量e2y、Z方向の偏心量e2z、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのY方向の位置誤差p1、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのZ方向の位置誤差p2とすると、つぎのようになる。
【式3】
【式4】
【0025】
これらの式1から式4に、測定データの偏心量e1y、e1z、e2y、e2zとA軸の中心線からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTCとを代入することで、A軸の幾何学的な誤差a1、a2、p1、p2を求めることができる。
【0026】
さらに、C軸の幾何学的な誤差a3、a4、p3、p4を求める。
【0027】
図6、7は図1のテーブル2部だけを抜き出したものである。図6に示すように、ボールバー3の一方の球は主軸1側に取付け、もう一方はテーブル2上のA軸の中心線4からZTCだけ離れ、基準座標系のZ軸からX軸方向にRBだけ離れた位置に設置する。測定では、テーブル2側に取付けた球をC軸によって回転運動させ、その回転角度と同期するように図1に示したX、Y軸によって主軸1側の球を円運動させる。その間、ボールバーの感度方向を図6に示したC軸の半径方向に保った状態で測定を行う。さらに、ボールバーの感度方向を図7に示したC軸の軸方向に保った状態で測定を行う。
【0028】
図7に示したC軸の軸方向の測定では、X、Y軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量と旋回軸の幾何学的な誤差との関係は、X方向の偏心量e3xとY方向の偏心量e3y、A軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、C軸の中心線の基準座標系のX軸周りの角度誤差a3、C軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a4、基準座標系のZ軸からボールバーのテーブル側の球までの距離RBとすると、近似的につぎのようになる。
【式5】
【式6】
【0029】
これらの式5と式6に、測定データの偏心量e3x、e3y、基準座標系のZ軸からボールバーのテーブル側の球までの距離RB、先の測定で既知のA軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1とを代入することで、C軸の幾何学的な誤差a3、a4を求めることができる。
【0030】
図6に示したC軸の半径方向の測定では、X、Y軸による円運動として測定データを扱い、その測定データから求めた偏心量とC軸の幾何学的な誤差との関係は、X方向の偏心量e4xとY方向の偏心量e4y、A軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、C軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a4、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのY方向の位置誤差p1、A軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とC軸の中心線がA軸の中心線に最も近づくC軸の中心線上の点とのX方向の位置誤差p3、A軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とC軸の中心線がA軸の中心線に最も近づくC軸の中心線上の点とのY方向の位置誤差p4、A軸の中心線からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTCとすると、近似的につぎのようになる。
【式7】
【式8】
【0031】
これらの式7と式8に、測定データの偏心量e4x、e4y、A軸の中心線からボールバーのテーブル側の球までの距離ZTC、先の測定で既知のA軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1、A軸の中心線の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2、基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのY方向の位置誤差p1、C軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a4とを代入することで、C軸の幾何学的な誤差p3、p4を求めることができる。
【0032】
【実施例】
図8は、図1に示した工作機械において、図4に示したボールバーの感度方向をA軸の軸方向に保った運動を測定した結果である。測定結果は、ボールバーの長さを一定に保った値(100mm)からの誤差を拡大して、A軸の回転角度に応じて極座標で表示している。この表示では基準円弧の半径方向の1目盛が10mmとなっている。測定結果は、A軸の幾何学的な誤差の影響によって、60°〜90°では基準円弧よりも外側に広がり、0°〜60°では内側に入り込んでいる。そのため、基準円弧からの半径方向の誤差は−7mmから12mmまで変化している。
【0033】
図9は、図8の測定データから本発明を適用し、A軸の幾何学的な偏差であるA軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差a1とA軸の中心線の基準座標系のZ軸周りの角度誤差a2を求め、求めた角度誤差が存在した場合の測定結果への影響を考慮して補正を行い、再度、ボールバーを軸方向に保った運動を測定した結果である。補正後の測定結果は基準円弧とよく一致しており、測定結果の基準円弧からの半径方向の誤差は±2mmの範囲に入るまでに改善されている。
【0034】
図10は、図1に示した工作機械において、従来から提案されている2つの旋回軸の幾何学的な誤差a1、a2、a3、a4、p1、p2、p3、p4の影響がすべて測定結果に現れるA、C、Y、Z軸による同時4軸制御運動を測定した結果である。測定結果は、ボールバーの長さを一定に保った値(100mm)からの誤差を拡大して、A軸の回転角度に応じて極座標で表示している。この表示では基準円弧の半径方向の1目盛が20mmとなっている。測定結果は、2つの旋回軸の幾何学的な誤差によって、20°〜90°では基準円弧よりも外側に広がり、また、0°〜20°、90°〜0°では内側に入り込んでいる。そのため、基準円弧からの半径方向の誤差は−27mmから50mmまで変化している。
【0035】
図11は、図10の測定データから本発明を適用し、2つの旋回軸の幾何学的な誤差a1、a2、a3、a4、p1、p2、p3、p4を求め、求めた8個の誤差が存在した場合の測定結果への影響を考慮して運動の補正を行い、再度、同時4軸制御運動を測定した結果である。補正後の測定結果は基準円弧に近くなっており、旋回軸の基準円弧からの半径方向の誤差は−17mmから+18mmの範囲に入るまでに改善されている。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る旋回軸の幾何学的な誤差の測定方法は、旋回軸と直進軸とを有する工作機械において、ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を旋回軸に対して軸方向に保つような条件と半径方向とに保つような条件とで測定した測定データの偏心量から、旋回軸の幾何学的な誤差を短時間に精度よく求められるため、求めた誤差を補正することによって、高精度な運動を実現することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】測定対象とする工作機械の旋回軸と直進軸の配置を示した図である。
【図2】1つの旋回軸の例として、A軸の幾何学的な誤差を表した模式図である。
【図3】A軸の幾何学的な誤差を測定するためのボールバーの感度方向をA軸の半径方向に保つ運動を表した図である。
【図4】A軸の幾何学的な誤差を測定するためのボールバーの感度方向をA軸の軸方向に保つ運動を表した図である。
【図5】2つの旋回軸の例として、A軸の幾何学的な誤差とC軸の幾何学的な誤差とを表した模式図である。
【図6】C軸の幾何学的な誤差を測定するためのボールバーの感度方向をC軸の半径方向に保つ運動を表した図である。
【図7】C軸の幾何学的な誤差を測定するためのボールバーの感度方向をC軸の軸方向に保つ運動を表した図である。
【図8】図1に示した工作機械において、ボールバーの感度方向をA軸の軸方向に保つ運動を測定した結果である。
【図9】図8の測定データから本発明を適用してA軸の幾何学的な誤差a1、a2を求め、運動を補正して、ボールバーをA軸の軸方向に保つ運動を測定した結果である。
【図10】図1に示した工作機械において、同時4軸制御運動を測定した結果である。
【図11】図10の測定データから本発明を適用してA軸の幾何学的な誤差a1、a2、a3、a4、p1、p2、p3、p4を求め、運動を補正して、同時4軸制御運動を測定した結果である。
【符号の説明】
1 主軸
2 テーブル
3 ボールバー
4 A軸の中心線
5 C軸の中心線
a1 A軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差
a2 A軸の中心線の基準座標系のZ軸周りの角度誤差
a3 C軸の中心線の基準座標系のX軸周りの角度誤差
a4 C軸の中心線の基準座標系のY軸周りの角度誤差
p1 基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのY方向の位置誤差
p2 基準座標系原点とA軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とのZ方向の位置誤差
p3 A軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とC軸の中心線がA軸の中心線に最も近づくC軸の中心線上の点とのX方向の位置誤差
p4 A軸の中心線が基準座標系のYZ平面に交わる点とC軸の中心線がA軸の中心線に最も近づくC軸の中心線上の点とのY方向の位置誤差
ZTC A軸の中心線からボールバーのテーブル側の球までの距離
RB 基準座標系のZ軸からボールバーのテーブル側の球までの距離
Claims (4)
- 1つの旋回軸と2つの直進軸とを有する工作機械において、ボールバーの一方の球を主軸側に取付け、もう一方の球をテーブル側に取付けて、主軸部とテーブル部とをボールバーで連結し、1つの旋回軸と2つの直進軸とによる同時3軸制御によって、ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を旋回軸の軸方向に保つような条件と半径方向に保つような条件とで行い、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、前記軸方向の測定データから求めた偏心量と前記半径方向の測定データから求めた偏心量から1つの旋回軸の幾何学的な誤差を求めることを特徴とする誤差測定方法。
- 請求項1の誤差測定方法において、偏心量から1つの旋回軸の幾何学的な誤差として2つの角度誤差と2つの位置誤差を求めることを特徴とする誤差測定方法。
- 第1の旋回軸上に第2の旋回軸が配置され、3つの直進軸を有する工作機械において、ボールバーの一方の球を主軸側に取付け、もう一方の球をテーブル側に取付けて、主軸部とテーブル部とをボールバーで連結し、第1の旋回軸と2つの直進軸とによる同時3軸制御によって、ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を第1の旋回軸の軸方向に保つような条件と半径方向に保つような条件とで行い、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、前記第1の旋回軸の軸方向の測定データから求めた偏心量と前記第1の旋回軸の半径方向の測定データから求めた偏心量から第1の旋回軸の幾何学的な誤差を求め、同様に第2の旋回軸と2つの直進軸とによる同時3軸制御によって、ボールバーの2球間の距離を一定に保ちながら、ボールバーが旋回軸の中心線周りに回転する運動をボールバーの感度方向を第2の旋回軸の軸方向に保つような条件と半径方向に保つような条件とで行い、運動中のボールバーの2球間の距離を測定し、前記第1の旋回軸の幾何学的な誤差と前記第2の旋回軸の軸方向の測定データから求めた偏心量と前記第2の旋回軸の半径方向の測定データから求めた偏心量から第2の旋回軸の幾何学的な誤差を求めることを特徴とする誤差測定方法。
- 請求項3の誤差測定方法において、偏心量から2つの旋回軸の幾何学的な誤差として4つの角度誤差と4つの位置誤差を求めることを特徴とする誤差測定方法。
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