JP2004218457A - ポンプの軸封構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転軸を長大化させず、ポンプが輸送する被送流体によって作動不良や損傷が発生することを防止可能なポンプの軸封構造を提供すること。
【解決手段】ポンプのインペラ24の背面にシールディスク26を形成し、回転軸22の径方向にグランドパッキン36を複数段装着し、グランド押し42によってシールディスク26の円盤面28に押圧付勢し摺接させる。この押圧付勢をコイルスプリング64の反発力により行う。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体を輸送するポンプの軸封構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、流体を輸送するポンプの軸封構造は被送流体の種類に応じて選択され、グランドパッキンを使用する軸封構造(例えば、特許文献1を参照)、メカニカルシールを使用する軸封構造(例えば、特許文献2又は特許文献3を参照)等がある。
【0003】
グランドパッキンを使用するポンプの軸封構造においては、図7に示すように、回転軸22の外周に円筒状のシャフトスリーブ56が取り付けられている。スタッフィングボックス30内にはシャフトスリーブ56の周りに複数のグランドパッキン36を軸方向に多段に配置してあり、シャフトスリーブ56の外周面とグランドパッキン36とが摺接している。グランドパッキン36はインペラ24と反対側からグランド押し42により押圧付勢されており、ケーシング14に植設されたボルト58と螺合したナット60が、グランド押し42をインペラ24の方向へ押圧している。
【0004】
かかる構成のポンプの軸封構造では、グランドパッキン36とシャフトスリーブ56との間の摺接面によって、ポンプ10の被送流体がケーシング14外へ漏れ出すことを防止している。
メカニカルシールを使用するポンプの軸封構造として、図8に示すようなインサイド形式のワンコイルスプリング型メカニカルシールを使用したものがある。円筒状のシャフトスリーブ56が回転軸22の外周に取り付けられており、このシャフトスリーブ56の外周面をスタッフィングボックス30及びシールカバー34が取り囲んでいる。シャフトスリーブ56の外周面とスタッフィングボックス30及びシールカバー34の各内周面との間には空間32が形成されている。
【0005】
シールカバー34の内周面には固定環38が固定されており、固定環38の内周面とシャフトスリーブ56の外周面との間には隙間があけられている。シャフトスリーブ56の外周には回転環40が取り付けられており、固定環38と回転環40とは、互いに対向する面同士が摺接している。
スタッフィングボックス30の空間32内において、回転軸22の外周にワンコイルスプリング54が取り付けられており、このワンコイルスプリング54が回転環40を固定環38の方向へ押圧付勢している。
かかる構成のポンプの軸封構造では、固定環38と回転環40との間の摺接面によって、ポンプの被送流体がケーシング14外へ漏れ出すことを防止している。
【0006】
【特許文献1】
特開2002―221189号公報(第2頁、第4図)
【特許文献2】
実公平2―29316号公報(第2図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図7に示す従来あるグランドパッキンを使用するポンプの軸封構造にあっては、複数のグランドパッキン36を回転軸22の軸方向に多段に並べて配置してあるので、グランドパッキン36の数に応じて回転軸22の軸方向長さが長くなり、インペラ24を回転させるという回転軸22本来の機能とは関係なく回転軸22が長大化し、ポンプ10も大型化してしまうという不具合があった。
【0008】
また、グランド押し42側に位置するグランドパッキン36は大きな力で押圧付勢されるが、グランド押し42から位置が離れるにしたがってグランドパッキン36を押圧付勢する力の大きさは小さくなりシール性能も低下してしまい、各グランドパッキン36のシール性能はそれぞれの位置により均一になならないという不具合もあった。
【0009】
さらに、図8に示す従来のメカニカルシールを使用するポンプの軸封構造にあっては、装着されているワンコイルスプリング54の長さだけ回転軸22の長さが長くなり、ポンプ10も大型化してしまうという不具合があった。
また、軸封構造の形式に関わらずスタッフィングボックス30には同じ形式のものが使用されており、軸封構造の形式によってはシャフトスリーブ56の外周面とスタッフィングボックス30及びシールカバー34の各内周面との間の空間32が狭くなってしまう。ポンプの被送流体がスラリー液である場合には、スタッフィングボックス30内へ進入したスラリー液の成分がこの狭い空間32内でワンコイルスプリング54に固着して作動不良を発生させるという不具合があった。
【0010】
本発明は、上記した従来の技術の問題点を除くためになされたものであり、その目的とするところは、回転軸が長大化してポンプが大型化することがなく、ポンプの被送流体がスラリー液等であっても作動不良や損傷が発生することを防止可能なポンプの軸封構造を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明は、ポンプのインペラ背面に形成されたシールディスクと、前記シールディスクの面上に摺接する摺動材と、前記摺動材を前記シールディスクの向きに押圧付勢するグランド押しとからなるポンプの軸封構造である。
【0012】
請求項1の発明によると、シールディスクの面に摺動材を押圧付勢して摺接させているだけなので、摺動材をシールディスクの面に沿って配置すればよい。したがって、摺動材を回転軸の軸方向に並べて配置する必要はなく、軸封構造がポンプの回転軸方向に長大化することはなく、回転軸も長くならない。
請求項2の発明は、請求項1に記載のポンプの軸封構造であって、前記摺動材は前記回転軸の径方向に複数段並ぶグランドパッキンにより構成されているポンプの軸封構造である。
【0013】
請求項2の発明によると、複数段のグランドパッキンを回転軸の径方向に並べているので、グランドパッキンの数にかかわらず回転軸の長さは短くてすむ。
請求項3の発明は、請求項2に記載のポンプの軸封構造であって、前記グランド押しを前記シールディスクの向きに押圧する弾性材と、前記ポンプのケーシングと前記グランド押しとの間の嵌め合い部分をシールするシール材とを有するポンプの軸封構造である。
【0014】
請求項3の発明によると、弾性材がグランド押しを押圧しているので、グランド押しによって摺動材はシールディスクの面に常に押圧付勢されている。また、ポンプのケーシングとグランド押しとの間の嵌め合い部分をシール材によってシールしているので、嵌め合い部分から被送流体が漏れることはない。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1ないし図3を参照して本実施の形態の構成を説明する。図1及び図2に示すように、渦巻ポンプであるポンプ10はインペラ24、回転軸22、ケーシング14、軸受部20、グランドパッキン36及びグランド押し42とから構成されている。回転軸22は軸受部20に支承されており、回転軸22の一端が図示しないモータと連なっており、回転軸22の他端はインペラ24の背面側に開口する回転軸用開口16からケーシング14内に入り、ケーシング14内でインペラ24にナットで固定されている。
【0016】
ポンプ10の軸封構造はシールディスク26、グランドパッキン36、グランド押し42、コイルスプリング64及びOリング62により構成されている。
インペラ24の背面には円盤状をなす金属製のシールディスク26が一体に形成されており、シールディスク26の端面がシール面28をなしており、シールディスク26の外径は回転軸用開口16の内径とほぼ同じ寸法を有する。
【0017】
回転軸用開口16内に、円筒状のグランド押し42が嵌挿されており、このグランド押し42の円筒内側を回転軸22が貫通している。グランド押し42の外径は回転軸用開口16の口径に対応した寸法を有し、内径は回転軸22の直径に対応した寸法を有する。インペラ24側にあるグランド押し42の端面44には、環状のグランドパッキン溝51が形成されている(図3を参照)。
【0018】
グランドパッキン溝51に、グランドパッキン36が回転軸22の径方向に複数段にわたって装着してある。グランドパッキン溝51に装着されたグランドパッキン36は、端面44よりも突出している。回転軸用開口16内にグランド押し42とともに嵌挿されたグランドパッキン36は、その端面44よりも突出する部分をシールディスク26のシール面28と接触させている。なお、グランドパッキン36は従来あるものと同様品を使用することができる。
【0019】
グランド押し42は、インペラ24と反対側の縁にフランジ46を有しており、フランジ46にはボルトが挿通するボルト挿通穴48が形成されている。回転軸用開口16の縁周りにはボルト挿通穴48と対応するボルト穴18が形成されている。
ボルト穴18にボルト58が螺合して植設されており、このボルト58がボルト挿通穴48に挿通され、ボルト58の頂部と螺合したナット60がグランド押し42のフランジ46を回転軸用開口16の上に締着している。このナット60とフランジ46の間には、弾性材であるコイルスプリング64を介在させてあり、コイルスプリング64がグランド押し42をインペラ24の方向へ押圧している。このコイルスプリング64の押圧によって、グランドパッキン36はシール面28へ押し付けられ、グランドパッキン36とシール面28は摺接している。
【0020】
グランド押し42の円筒外周上にはOリング溝50が形成されており、Oリング溝50にシール材としてのOリング62が嵌められている。このOリング62により、グランド押し42の円筒外周と回転軸用開口16との間はシールされている。
本実施の形態は上記のように構成されており、次にその作用について説明する。
【0021】
前記モータが回転して、軸受部20に支承された回転軸22が回転し、ケーシング14内でインペラ24が回転する。インペラ24が回転して被送流体はポンプ10から送り出される。また、被送流体はケーシング14内でインペラ24の背面側にも流れ込み、シールディスク26とグランドパッキン36の摺接部分周辺も被送流体で満たされる。
【0022】
シール面28と摺接しているグランドパッキン36は、グランド押し42を介してコイルスプリング64によってインペラ24の方向へ押圧付勢されている。この押圧付勢によりグランドパッキン36はシール面28と密着し、シール面28とグランドパッキン36の間のシール性は確保される。したがって、被送流体がシールディスク26とグランドパッキン36の間を通り抜けて回転軸22沿いにケーシング14外へ漏れ出すことは防止されている。
【0023】
グランド押し42の円筒外周と回転軸用開口16との間はOリング62によりシールされているので、グランド押し42と回転軸用開口16との間から被送流体がケーシング14外へ漏れ出すことも防止されている。
グランドパッキン36の段数は増減可能であり、段数を増加させてシール性を更に高めることができる。グランドパッキン36の段数を増加させる場合でも、グランドパッキン36は回転軸22の径方向に重ねて配置されるので、回転軸22を長大化させる必要はない。
【0024】
グランドパッキン36をシール面28に押圧付勢して密着させる力はコイルスプリング64によって付与されており、シール面28と摺接するグランドパッキン36に摩耗を生じると、この摩耗量に追従してコイルスプリング64が伸び、常にグランド押し42がグランドパッキン36を押圧付勢し続ける。したがって、グランドパッキン36の摩耗にかかわらずシール性が確保されている。
【0025】
なお、本実施の形態において、シールディスク26を金属製としたが、シールディスク26の材質が金属に限定されるものではないことは勿論である。
次に、本発明の第2の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図4ないし図6を参照して本実施の形態の構成を説明する。なお、第1の実施の形態における構成と同様のものにつては同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0026】
図4及び図5に示すように、渦巻ポンプであるポンプ10がインペラ24、回転軸22、ケーシング14、軸受部20、グランド押し42及び固定環39とから構成されている。インペラ24、回転軸22、ケーシング14、軸受部20、前記モータは、第1の実施の形態におけるものと同様である。
ポンプ10の軸封構造はシールディスク26、固定環39、グランド押し42、コイルスプリング64及びOリング62とから構成されている。
【0027】
回転軸用開口16内に円筒状のグランド押し42が嵌挿されている。インペラ24側にあるグランド押し42の端面44に固定環溝52が形成されている(図6を参照)。固定環溝52に金属製の固定環39が装着されている。固定環39の厚さは固定環溝52の溝深さよりも大きな寸法を有し、端面44よりも固定環39は突出している。グランド押し42の他の構成は第1の実施の形態と同様であり、その円筒外周上にあるOリング溝50にOリング62が嵌められており、インペラ24と反対側の縁にはボルト挿通穴48を有するフランジ46が形成されている。グランド押し42とともに回転軸用開口16内に嵌挿された固定環39は、その端面44よりも突出する部分をシール面28と接触させている。
【0028】
そして、第1の実施の形態と同様に、回転軸用開口16の縁周りのボルト穴18に螺合して植設されたボルト58がボルト挿通穴48を貫通し、このボルト58の頂部と螺合したナット60によってグランド押し42のフランジ46は回転軸用開口16の上に締着されている。ナット60とフランジ46の間には、コイルスプリング64を介在させてあり、コイルスプリング64がグランド押し42をインペラ24の方向へ押圧し、コイルスプリング64の押圧により固定環39はシール面28へ押し付けられ、固定環39とシール面28は摺接している。
【0029】
本実施の形態は上記のように構成されており、次にその作用について説明する。
第1の実施の形態と同様に、前記モータにより回転軸22が回転し、ケーシング14内でインペラ24が回転し、被送流体がポンプ10から送り出される。また、被送流体はケーシング14内でインペラ24の背面側にも流れ込み、シールディスク26と固定環39の摺接部分周辺も被送流体で満たされる。
【0030】
シール面28と摺接している固定環39は、グランド押し42を介してコイルスプリング64によってインペラ24の方向へ押圧付勢されており、固定環39はシール面28上に押しつけられて密着し、シール面28と固定環39の間のシール性は確保され、被送流体がシールディスク26と固定環39の間を通り抜けて回転軸22沿いにケーシング14外へ漏れ出すことは防止されている。
【0031】
グランド押し42の円筒外周と回転軸用開口16との間はOリング62によりシールされており、グランド押し42と回転軸用開口16との間から被送流体がケーシング14外へ漏れ出すことも防止されている。
固定環39をシール面28に押圧付勢して密着させる力はコイルスプリング64によって付与されており、シール面28と摺接する固定環39に摩耗を生じても、この摩耗量に追従してコイルスプリング64が伸び、常にグランド押し42が固定環39を押圧付勢し続ける。したがって、固定環39の摩耗にかかわらずシール性が確保されている。
【0032】
なお、本実施の形態において、一つの固定環39をシールディスク26の円盤面28と摺接させることとしたが、複数の固定環39を回転軸22の径方向に同心状に配置し、シール性をより確実なものとすることができることは勿論である。この場合、固定環39の数が多くなっても回転軸22を長大化させる必要はない。
また、本実施の形態において、シールディスク26及び固定環39を金属製としたが、シールディスク26及び固定環39の材質が金属に限定されるものではないことは勿論である。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、上記のようなポンプの軸封構造であるので、回転軸が長大化してポンプが大型化することがなく、ポンプの被送流体がスラリー液等であっても作動不良や損傷が発生することを防止可能なポンプの軸封構造を提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る軸封構造を備えたポンプの断面図である。
【図2】図1のA部分の拡大図である。
【図3】第1の実施の形態に係るグランド押しの斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る軸封構造を備えたポンプの断面図である。
【図5】図4のB部分の拡大図である。
【図6】第2の実施の形態に係るグランド押しの斜視図である。
【図7】従来のグランドパッキンを使用した軸封構造を備えるポンプの断面図である。
【図8】従来のインサイド形式のワンコイルスプリング型メカニカルシールの構成図である。
【符号の説明】
10 ポンプ
14 ケーシング
16 回転軸用開口
18 ボルト穴
20 軸受部
22 回転軸
24 インペラ
26 シールディスク
28 シールディスクのシール面
36 グランドパッキン
39 固定環
42 グランド押し
44 グランド押しの端面
46 フランジ
48 ボルト挿通穴
50 Oリング溝
51 グランドパッキン溝
52 固定環溝
58 ボルト
60 ナット
62 Oリング
64 コイルスプリング

Claims (3)

  1. ポンプのインペラ背面に形成されたシールディスクと、前記シールディスクの面上に摺接する摺動材と、前記摺動材を前記シールディスクの向きに押圧付勢するグランド押しとからなることを特徴とするポンプの軸封構造。
  2. 請求項1に記載のポンプの軸封構造であって、前記摺動材は前記回転軸の径方向に複数段並ぶグランドパッキンにより構成されていることを特徴とするポンプの軸封構造。
  3. 請求項2に記載のポンプの軸封構造であって、前記グランド押しを前記シールディスクの向きに押圧する弾性材と、前記ポンプのケーシングと前記グランド押しとの間の嵌め合い部分をシールするシール材とを有することを特徴とするポンプの軸封構造。
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