JP2004216254A - 洗浄方法および洗浄装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】洗浄槽全体を有効に使用できるとともに、気泡が均一化された洗浄液を用いて、被洗浄物を効率的に洗浄することが可能な超音波振動を利用した洗浄方法および洗浄装置を提供する。
【解決手段】超音波洗浄するための第1の超音波振動子を備えた洗浄槽と、循環路と、送液ポンプと、を利用した洗浄方法および洗浄装置において、送液ポンプを用いて洗浄液を循環させ、当該洗浄液に含まれる気泡量を、循環路に設けた垂直部または第2の超音波振動子によって調整し、洗浄槽における洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とした状態で、被洗浄物を超音波洗浄する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波振動を利用した洗浄方法および洗浄装置に関し、特に、洗浄液の種類にかかわらず、洗浄槽全体を有効に使用できるとともに、被洗浄物を効率的に洗浄可能な超音波振動を利用した洗浄方法および洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体分野等において、超音波振動を利用した洗浄方法および洗浄装置が実施されている。
例えば、超音波洗浄中に、洗浄槽内の洗浄液面を上下に変動させる超音波洗浄方法が実施されている(例えば、特許文献1参照)。
また、被洗浄物を浸漬させた洗浄液の液面と、超音波放射面との距離を変化させ、被洗浄物を音圧の強力な箇所に移動させて洗浄を行うことを特徴とする超音波洗浄方法が実施されている(例えば、特許文献2参照)。
また、半導体ウェハを収容するウェハ収納容器と、当該ウェハ収納容器が浸漬される液層と、液槽に設けられた超音波発生器と、を備えた半導体ウェハの洗浄装置において、液槽の液面から半導体ウェハまでの深さを可変とするウェハ上液深可変手段を有することを特徴とする超音波洗浄方法が実施されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
また、被洗浄物を洗浄槽の液面から超音波の波長の1/4以上の深さに浸漬するとともに、洗浄槽の液面から超音波の波長の1/2以上の幅で上下動させることを特徴とする超音波洗浄方法が実施されている(例えば、特許文献4参照)。そして、好ましい態様として、洗浄槽から導管により洗浄液を導入して脱気するための貯液槽を設けている。
また、洗浄槽内に超音波強度測定センサを配設し、当該超音波強度測定センサを上下に駆動させて、超音波強度が最大になる地点を直接的に求め、そこに被洗浄物を収容した洗浄カゴを配置することを特徴とする超音波洗浄方法が実施されている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
一方、超音波洗浄方法等に使用される洗浄液(処理液)を脱気する方法が実施されている(例えば、特許文献6参照)。より具体的には、図13に示すように、洗浄槽202と、循環ポンプ212と、アスピレータ213と、が直列配置された循環路(第1の循環路)211と、アスピレータ213の作用によって、洗浄槽202の側方に位置する密閉容器203の中腹部から洗浄液を吸引するための第2の循環路207と、を備えた脱気装置を使用する脱気方法が開示されている。
また、超音波洗浄方法等に使用される洗浄液(処理液)を脱気する方法が実施されている(例えば、特許文献7参照)。より具体的には、図14に示すように、洗浄槽107と、絞りバルブ104と、循環ポンプ105と、気液分離槽106と、が直列配置された循環路110と、を備えた脱気装置を使用する脱気方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭48−41553号公報 (第4−5頁、図1)
【特許文献2】
特開昭60−187380号公報 (第4−5頁、図1)
【特許文献3】
特開平2−109334号公報 (第4−5頁、図1)
【特許文献4】
特開平6−71239号公報 (第4−5頁、図1)
【特許文献5】
特開平6−91239号公報 (第4−5頁、図1)
【特許文献6】
特許第3223340号公報 (第4−5頁、図1)
【特許文献7】
特開平7−328316号公報 (第4−5頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1〜5にそれぞれ開示されたいずれの超音波洗浄方法も、洗浄槽内の超音波強度が場所によって大きく値が異なることを前提としており、かかる超音波強度が最大になる箇所において、被洗浄物を効率的に洗浄しようとするものであり、洗浄槽全体を有効利用することが困難であった。
また、特許文献6や特許文献7にそれぞれ開示された脱気方法によって得られる洗浄液は、いまだ多量の気泡を含んでおり、被洗浄物を安定して洗浄することが困難であった。そのため、いずれも洗浄槽内の超音波強度が場所によって大きく値が異なり、洗浄槽全体を有効に使用することが困難であった。
さらに、いずれの超音波洗浄方法あるいは脱気方法においても、洗浄液の種類を変えた場合に、洗浄効果が安定しないという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明の発明者は、従来の問題を鋭意検討した結果、洗浄液の種類にかかわらず、洗浄液において測定される音圧と、洗浄効果との間に、所定の関係があることを見出し、それを利用して、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、洗浄液における音圧を所定内の値にすることにより、あるいは、循環路において洗浄槽とは別の超音波振動子を設けることにより、洗浄槽全体の超音波強度が均一化され、洗浄槽全体を有効に使用できるとともに、気泡量が均一化された洗浄液を用いて、被洗浄物を効率的に洗浄することが可能な超音波振動を利用した洗浄方法および洗浄装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、第1の洗浄方法として、超音波洗浄するための第1の超音波振動子を備えた洗浄槽と、循環路と、送液ポンプと、を利用した洗浄方法において、以下の工程(A)および(B)を含むことを特徴とした洗浄方法が提供され、上述した問題を解決することができる。
(A)洗浄液に含まれる気泡量を調整する工程
(B)洗浄槽における洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とした状態で被洗浄物を洗浄する工程
すなわち、工程(A)において洗浄液に含まれる気泡量(溶存空気を含む。以下、同様である。)を調整するとともに、工程(B)において、音圧を所定値内の値に制御した洗浄液によって、被洗浄物を洗浄することができる。したがって、工程(B)において、気泡量が均一化された洗浄液によって被洗浄物を洗浄することができるため、第1の超音波振動子から洗浄槽全体に伝播する超音波強度の値が均一化され、洗浄槽全体を有効に使用することができる。また、洗浄液の気泡量が均一化されているため、被洗浄物を効率的に洗浄することができる。
【0009】
また、本発明の別の態様によれば、第2の洗浄方法として、超音波洗浄するための第1の超音波振動子を備えた洗浄槽と、循環路と、送液ポンプと、を利用した洗浄方法において、以下の工程(A′)および(B′)を含むことを特徴とした洗浄方法が提供され、上述した問題を解決することができる。
(A′)循環路の途中に設けた気泡量を調整するための第2の超音波振動子により、洗浄液に含まれる気泡量を調整する工程
(B′)洗浄槽において被洗浄物を洗浄する工程
すなわち、工程(A′)において、洗浄槽とは別の超音波振動子(第2の超音波振動子)を用いて、洗浄液に含まれる気泡量を調整することにより、工程(B)において、気泡量が減少し、均一化された洗浄液によって、被洗浄物を洗浄することができる。したがって、第1の超音波振動子から洗浄槽全体に伝播する超音波強度の値が均一化され、洗浄槽全体を有効に使用することができる。また、洗浄液の気泡量が減少し、均一化されているため、被洗浄物を効率的に洗浄することができる。
【0010】
また、本発明の第1および第2の洗浄方法を実施するにあたり、工程(B)または(B′)において、洗浄液の音圧の平均値を0.1〜1.5Vの範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、第1の超音波振動子から洗浄槽全体に伝播する超音波強度の値がより均一化され、洗浄槽全体を有効に使用できるとともに、気泡量が減少および均一化された洗浄液を用いて、被洗浄物をさらに効率的に洗浄することができる。
【0011】
また、本発明の第1および第2の洗浄方法を実施するにあたり、工程(B)または(B′)において、洗浄槽に設けた音圧測定装置により、洗浄液の音圧を連続的または断続的に測定しながら洗浄することが好ましい。
このように実施することにより、洗浄槽全体の超音波強度を確実に均一化することができ、洗浄槽全体を有効に使用できるとともに、気泡量が減少および均一化された洗浄液を用いて、被洗浄物をさらに効率的に洗浄することができる。
【0012】
また、本発明の別の態様によれば、第1の洗浄装置として、超音波洗浄するための第1の超音波振動子を備えた洗浄槽と、循環路と、洗浄液を循環させるための送液ポンプと、を備えた洗浄装置であって、洗浄液に含まれる気泡量を調整するための気泡調整部が循環路に設けてあるとともに、洗浄槽中の洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とすることを特徴とした洗浄装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、循環路に気泡調整部を設けることにより、洗浄液中の気泡量を容易に均一化させることができる。したがって、第1の超音波振動子から洗浄槽全体に伝播する超音波強度の値が均一化され、洗浄槽全体を有効に使用できるとともに、気泡量が均一化された洗浄液を用いて、被洗浄物を効率的に洗浄することができる。
【0013】
また、本発明の別の態様によれば、第2の洗浄装置として、超音波洗浄するための第1の超音波振動子を備えた洗浄槽と、循環路と、送液ポンプと、を備えた洗浄装置であって、循環路の途中に気泡量を調整するための第2の超音波振動子がさらに設けてあることを特徴とした洗浄装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、洗浄槽とは別の超音波振動子(第2の超音波振動子)を循環路に設けることにより、洗浄液中の気泡量を著しく減少させることができ、洗浄槽における洗浄液の音圧の最大値が平均値の400%を超えた場合であっても気泡が均一化される。
したがって、第1の超音波振動子から洗浄槽全体に伝播する超音波強度の値が均一化され、洗浄槽全体を有効に使用できるとともに、気泡量が均一化された洗浄液を用いて、被洗浄物を効率的に洗浄することができる。
【0014】
また、本発明の第1および第2の洗浄装置を構成するにあたり、音圧測定装置をさらに備えることが好ましい。
このように構成することにより、第1の超音波振動子から洗浄槽全体に伝播する超音波強度の値がより均一化され、洗浄槽全体を有効に使用できるとともに、気泡量が均一化された洗浄液を用いて、被洗浄物をさらに効率的に洗浄することができる。
【0015】
また、本発明の第1および第2の洗浄装置を構成するにあたり、循環路が水平部と垂直部とからなり、当該垂直部を利用して洗浄液に含まれる気泡量を調整することが好ましい。
このように構成することにより、洗浄装置を簡易かつ小型化できるとともに、洗浄液中の気泡量を効率的に減少および均一化させることができる。
【0016】
また、本発明の第1および第2の洗浄装置を構成するにあたり、循環路の水平部に、送液ポンプが設けてあり、送液ポンプ出口の垂直部に、第2の超音波振動子が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、洗浄装置を簡易かつ小型化できるとともに、洗浄液中の気泡量を効率的に減少および均一化させることができる。
【0017】
また、本発明の第1および第2の洗浄装置を構成するにあたり、送液ポンプの出口に、垂直部が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、洗浄装置をさらに簡易かつ小型化することができるとともに、洗浄液中の気泡量を効率的に減少、均一化させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の第1および第2の洗浄方法、ならびに第1および第2の洗浄装置についての実施形態につき、それぞれ適宜図面を参照しながら具体的に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1に示すように、第1の洗浄方法として、超音波洗浄するための第1の超音波振動子14を備えた洗浄槽12と、循環路20と、送液ポンプ26と、を利用した洗浄方法であって、以下の工程(A)および(B)を含むことを特徴とした洗浄方法である。
(A)洗浄液に含まれる気泡量を調整する工程(以下、単に調整工程と称する場合がある。)
(B)洗浄槽における洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とした状態で被洗浄物を洗浄する工程(以下、単に洗浄工程と称する場合がある。)
【0020】
1.調整工程
洗浄液の音圧は、洗浄液に含まれる気泡量に影響されることが判明しており、本発明における洗浄方法および洗浄装置は、気泡調整部により、洗浄液に含まれる気泡量を調整することを特徴とする。
例えば、気泡調整部として、第3の実施形態で詳述するように、循環路に垂直部や邪魔板、あるいはオリフィスを設け、洗浄液が上昇したり、衝突したり、通過したりする間に、小さい気泡が集合して大気泡となって脱気することにより、洗浄液に含まれる気泡量、ひいては、洗浄液の音圧を調整することが好ましい。
なお、調整工程において、気泡量が確実に調整されていることを確認するために、超音波振動子と組み合わせて、音圧測定装置により洗浄液の音圧を測定したり、超音波強度測定装置により超音波強度を測定したり、あるいは、直接的に洗浄液の気泡量を測定したりすることも好ましい。
【0021】
2.洗浄工程
(1)洗浄液
▲1▼種類
洗浄工程で使用する洗浄液の種類は特に制限されるものではないが、例えば、グリコール化合物や、当該グリコール化合物のエーテル化物、あるいは水溶性アミド化合物を主成分としたものであることが好ましい。
この理由は、グリコール化合物や水溶性アミド化合物等を使用することにより、取り扱いが容易となるばかりか、優れた洗浄効果を効果的かつ経済的に得ることができるためである。
また、エチレングリコールと、プロピレングリコールの両方が付加した形のグリコールエーテル化合物や、メトキシブタノールおよびメチルメトキシブタノール、さらには分子内に含まれるアルコール基がエステル化された化合物、例えば酢酸エステル化された化合物等も挙げられる。
【0022】
▲2▼添加物
また、使用する洗浄液がフラックス用洗浄剤組成物の場合には、当該フラックス用洗浄剤組成物中に、アミン化合物およびアルキルアンモニウムヒドロキシド化合物、あるいはいずれか一方の化合物を、さらに添加することが好ましい。
この理由は、このような添加剤を含有することにより、フラックス残渣等の化学的除去がさらに促進され、当該フラックス残渣を、より効率的に除去することができるためである。
また、アミン化合物を添加する場合、その添加量を、フラックス用洗浄剤組成物の主成分100重量部に対して、0.1〜50重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるアミン化合物の添加量が、0.1重量部未満となると、添加効果が発現しない場合があるためであり、一方、50重量部を超えると、フラックスの除去効率が逆に低下する場合があるためである。
したがって、アミン化合物の添加量を、フラックス用洗浄剤組成物の主成分100重量部に対して、1〜30重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜20重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0023】
▲3▼特性
また、洗浄液の特性として、以下の条件を満足することが好ましい。
1)赤外線吸収スペクトルにおいて、カルボン酸化合物の顕著な含有が認められない。
2)ガスクロマトグラフィにおいて、低分子量物の顕著な含有が認められない。
3)酸価が20mgKOH/g以下の値である。
4)導電率(EC)が15μS/cm以下の値である。
5)JIS2型くし型電極付き基板を用いて測定される誘電損失(tanδ)を0.020以下の値とする。
【0024】
(2)被洗浄物
洗浄工程で洗浄する被洗浄物の種類は、半田付け箇所を有する部品や製品はもちろんのこと、半田付け箇所がなくとも、フラックス残渣の影響がある部品等にも好適に使用することができる。
したがって、被洗浄物の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、プリント樹脂配線基板、セラミック配線基板、バンプ付き半導体素子、バンプ無し半導体素子、バンプ付きTABテープ、バンプ無しTABテープ、半導体素子搭載TABテープ、リードフレーム、等が具体的に挙げられる。
【0025】
(3)超音波振動
洗浄槽において被洗浄物を洗浄するに際して、第1の超音波振動子を備えて、洗浄中に超音波振動を付与することを特徴とする。
この理由は、所定の超音波振動を付与することにより、被洗浄物の形状が複雑な場合であっても、洗浄液が効率的に接触して、フラックス残渣等を容易に洗浄除去することができるためである。
また、超音波振動を付与するに当たり、超音波振動の周波数を20KHz〜2MHzの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる超音波振動の周波数が20KHz未満となると、被洗浄物に対するダメージが大きくなる場合があるためである。一方、かかる超音波振動の周波数が2MHzを超えると、被洗浄物に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。
したがって、洗浄液付与する超音波振動の周波数を20KHz〜1,000KHzの範囲内の値とすることがより好ましく、20KHz〜200KHzの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0026】
また、被洗浄物に対する超音波振動の付与時間を1〜3,600秒の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる超音波振動の付与時間が1秒未満となると、被洗浄物に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。一方、かかる超音波振動の付与時間が3,600秒を超えると、被洗浄物に対するダメージが大きくなる場合があるためである。
したがって、超音波振動の付与時間を10〜600秒の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜300秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0027】
(4)音圧条件
▲1▼数値範囲
洗浄槽における洗浄液の音圧を測定し、その数値の最大値を平均値の400%以下とすることを特徴とする。
この理由は、洗浄液の種類を変えたような場合において、かかる洗浄液の音圧の値がばらつき、最大値が平均値の400%を超えると、超音波振動が均一に伝播されずに、洗浄槽の全体において、被洗浄物を効率的に洗浄することが困難になるためである。
したがって、洗浄液の種類にかかわらず、被洗浄物をより効率的に洗浄するためには、洗浄槽における洗浄液の音圧の最大値をその平均値の300%以下とすることがより好ましく、平均値の200%以下とすることがさらに好ましい。
【0028】
ここで、図2(a)および(b)を参照して、音圧と、洗浄効果と、の関係を説明する。図2(a)の横軸には、測定される洗浄液(マイクロクリンRS−12M(化研テック(株)製))の音圧の平均値(V)を採って示してあり、縦軸には、周波数100Hzにおける誘電損失(tanδ97%RH)を採って示してある。なお、誘電損失の値が低い程、洗浄効果について高い評価が得られるものとすることができる。
また、図2(b)の横軸には、測定される洗浄液の音圧の平均値(V)を採って示してあり、縦軸には、洗浄液による被洗浄物に対する洗浄効果の評価点(相対値)を採って示してある。洗浄効果の評価点については、以下の基準に沿って評価し、評価◎を5点、評価○を4点、評価△を3点、評価×を1点とした。
◎・・・洗浄物にフラックス等が全く残っていない。
○・・・洗浄物にフラックス等がほとんど残っていない。
△・・・洗浄物にフラックス等が少々残っている。
×・・・洗浄物にフラックス等がかなり残っている。
この図2(a)および(b)に示すように、かかる音圧の平均値が所定の範囲内であれば、周波数100Hzにおける誘電損失は0.02程度より低い値であって、洗浄効果の評価点は、3点以上の許容できる評価点が得られている。しかしながら、かかる音圧の平均値が0.1V未満となると、誘電損失は0.02を超える値となって、洗浄効果の評価点が3点未満に低下している。
また、実施例3で異なる洗浄液(n−メチルピロリドン)で同様の試験を実施した結果、音圧の平均値が1.0Vに達した。したがって、被洗浄物をより効率的に洗浄するためには、洗浄液の音圧の平均値を0.1〜1.5Vの範囲内とすることが有効であることが理解される。
さらに、以上の結果から、例えば、洗浄液を変えたような場合であっても、洗浄液の種類にかかわらず、洗浄効果を安定させるためには、音圧の平均値を所定の範囲内に制御すればよいことが理解される。
【0029】
また、図3に、送液ポンプの圧力と、洗浄液の平均音圧との関係について示す。すなわち、図3の横軸には、送液ポンプの圧力(MPa)を採って示してあり、縦軸に、測定される洗浄液(マイクロクリンRS−12M(化研テック(株)製))の音圧(V)を採って示してある。また、図3中、ラインaは、循環路の垂直部に気泡調整部を設けた場合の測定結果を示しており、ラインbは、循環路に、垂直部の気泡調整部だけでなく、さらに超音波振動子を設けた場合の測定結果を示している。
この図3に示すように、送液ポンプの圧力を−0.035MPa以下の値とすることにより、循環路の垂直部に気泡調整部のみを設けた場合であっても、また、さらに超音波振動子を設けた場合であっても、かかる洗浄液の音圧を0.1V以上の値とすることができる。
したがって、洗浄液の平均音圧(V)は、送液ポンプの圧力(MPa)を−0.035MPa以下の値とすることにより、容易に所望の範囲内に制御できることが理解される。
【0030】
▲2▼測定方法
また、洗浄槽における洗浄液の音圧の測定方法については特に制限されるものでは無いが、例えば、図4に示すように、容量が1、000〜50、000cm程度の洗浄槽10であれば、平面方向の縦方向および横方向に、均等に3×3分割し、さらに高さ方向にも均等に3分割して、合計27分割して定めた測定場所において、それぞれ音圧を測定することが好ましい。すなわち、洗浄槽を高さ方向に3分割したa、b、cそれぞれにおいて、平面方向の縦方向および横方向に均等に3×3分割して、A〜Iの測定場所を定め、音圧を測定することが好ましい。
また、27分割した測定場所において音圧を測定するに際して、例えば、図5に示すような、先端に圧電素子72を備えた音圧測定プローブ70を用い、1回の音圧の測定時間を0.1〜10秒の範囲内の値とし、測定温度を20〜100℃の範囲内の値とすることが好ましい。
ただし、洗浄槽の容量が比較的小さい場合には、洗浄槽における測定箇所を27箇所より少なくすることも好ましいし、逆に、洗浄槽の容量が比較的大きい場合には、測定箇所を27箇所より多くすることも好ましい。
【0031】
▲3▼洗浄槽の容積との関係
また、洗浄槽における洗浄液の音圧の制御に関して、洗浄槽の容積との関係を考慮することが好ましい。すなわち、洗浄槽の容積100%の全てにおいて、洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とすることは必ずしも必要でなく、例えば、洗浄槽の容積の60%以上において、洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とすることが好ましい。
この理由は、洗浄槽の容積の60%以上において、音圧が均一な箇所があれば、洗浄槽を十分に効用でき、比較的大きな被洗浄物であっても効率的に洗浄することができるためであり、また、洗浄槽の音圧(洗浄液に含まれる気泡量)の管理も容易になるためである。特に、洗浄槽の周辺部分における洗浄液の音圧がばらつく傾向があるが、洗浄槽の中央部に音圧が均一な箇所が全体の60%以上あれば、被洗浄物を効率的に洗浄することができるためである。
したがって、被洗浄物の洗浄性と、洗浄槽の音圧の管理とのバランスがより良好になることから、洗浄槽の容積の70%以上において、洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とすることがより好ましく、洗浄槽の容積の80%以上において、洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とすることがさらに好ましい。
【0032】
▲4▼平均値
また、洗浄槽における洗浄液の音圧の平均値を0.1〜1.5Vの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる洗浄液の音圧の平均値が0.1V未満となると、洗浄槽全体において、被洗浄物を効率的に洗浄することが困難になるためである。一方、かかる洗浄液の音圧の平均値が1.5Vを超えると、洗浄液の気泡調整の限界点になるためである。
したがって、被洗浄物をより効率的に洗浄するためには、洗浄液の音圧の平均値を0.15〜1.0Vの範囲内の値とすることがより好ましく、0.20〜0.50Vの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0033】
(5)温度条件
また、洗浄槽における洗浄液の温度(液温)は、被洗浄物に対する洗浄効果や、洗浄液の酸化劣化の程度等を考慮して定めることが好ましいが、具体的に、20〜90℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる洗浄液の温度が20℃未満となると、被洗浄物に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。一方、かかる温度が90℃を越えると、洗浄液の酸化劣化が著しくなったり、余分なフラックス等のみならず、半田についてもプリント基板等の所定場所から剥離したりする場合があるためである。
したがって、洗浄液の温度を20〜80℃の範囲内の値とすることがより好ましく、20〜70℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図6に示すように、第2の洗浄方法として、超音波洗浄するための第1の超音波振動子14を備えた洗浄液の貯蔵部16と、循環路20と、送液ポンプ26と、を利用した洗浄方法において、以下の工程(A′)および(B′)を含むことを特徴とした洗浄方法である。
(A′)循環路の途中に設けた気泡量を調整するための第2の超音波振動子により、洗浄液に含まれる気泡量を調整する工程(以下、単に、調整工程と称する場合がある。)
(B′)洗浄槽において被洗浄物を洗浄する工程(以下、単に、洗浄工程と称する場合がある。)
【0035】
1.調整工程
第1の実施形態で説明したのと実質的に同様の調整工程とすることができるが、図6に示すように、当該循環路20の途中に、気泡量を調整するための第2の超音波振動子52を設けている点で異なっている。
したがって、第2の超音波振動子52による超音波振動の付与条件等を中心に説明するものとし、第1の実施形態と同様の内容については、適宜説明を省略する。
【0036】
(1)超音波振動条件
洗浄槽において洗浄液によって被洗浄物を洗浄するに先立ち、洗浄槽における第1の超音波振動子とは別に、循環路の途中に気泡量を調整するための第2の超音波振動子を設けて、循環路を流れる洗浄液に対し超音波振動を付与することを特徴とする。
このように超音波振動を付与することにより、洗浄液に含まれる気泡量を減少させることができるとともに、均一化することができるためである。特に、循環路という比較的狭い断面積を有する箇所において、超音波振動を付与することにより、洗浄液に含まれる気泡量を極めて効率的に減少させることができる。
したがって、洗浄槽で使用する洗浄液における音圧を均一化することができ、第1の超音波振動子から洗浄槽全体に伝播する超音波強度の値が均一化され、洗浄槽全体を有効に使用することができる。また、気泡量が減少し、均一化されているため、被洗浄物を効率的に洗浄することもできる。
【0037】
また、第2の超音波振動子により、循環路中の洗浄液に対して超音波振動を付与するに当たり、当該超音波振動の周波数を20KHz〜200KHzの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる超音波振動の周波数が200KHzを超えると、洗浄液に含まれる気泡量の減少および均一化が不十分となる場合があるためである。一方、かかる超音波振動の周波数が20kHz未満になると、循環路に対するダメージが大きくなるためである。
したがって、循環路中の洗浄液に付与する超音波振動の周波数を20KHz〜100KHzの範囲内の値とすることがより好ましく、20KHz〜50KHzの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0038】
(2)付与時間
また、第2の超音波振動子により洗浄液に対して超音波振動を付与するに当たり、当該超音波振動を連続的に付与することが好ましい。
この理由は、超音波振動を連続的に付与することにより、洗浄液に含まれる気泡量を連続的に減少させることができるとともに、均一化することができるためである。
【0039】
2.洗浄工程
第1の実施形態で説明したのと同様の内容とすることができる。したがって、ここでの説明は省略する。
【0040】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第1の洗浄装置として、超音波洗浄するための第1の超音波振動子を備えた洗浄槽と、循環路と、洗浄液を循環させるための送液ポンプと、を備えた洗浄装置であって、洗浄液に含まれる気泡量を調整するための気泡調整部が循環路に設けてあるとともに、洗浄槽中の洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とすることを特徴とした洗浄装置である。
以下、構成要件ごとに具体的に説明する。
【0041】
1.洗浄槽
洗浄槽としては、図1(a)および(b)に示すように、被洗浄物の収容部(洗浄液)16と、第1の超音波振動子14(超音波振動板)と、音圧測定装置(図示せず)と、被洗浄物の取り出し口17と、洗浄液の攪拌装置(図示せず)と、サーモスタット付きのヒーター(図示せず)と、洗浄液の出口18と、洗浄液の入口30と、から主として構成してあることが好ましい。なお、図1(a)は、洗浄槽を横方向から見た図であり、また図1(b)は、図1(a)中のAで示す方向から見た図である。
ここで、第1の超音波振動子を含む超音波振動板の配置としては、図1に示すように、縦置きであっても良く、あるいは図7(a)に示すように、横置きであっても良く、さらには、図7(b)に示すように、併用することも好ましい。
また、被洗浄物の収容部の形態は、概ね矩形とすることが好ましいが、被洗浄物の形状に合わせて円柱形等とすることも好ましい。なお、被洗浄物の収容部の形態を円柱形とした場合には、図8に示すように、円形の壁面に沿って変形させた超音波振動板44を配置することが好ましい。
そして、このように洗浄槽を構成することにより、被洗浄物の収容部の一部に設けた超音波振動板により、攪拌および循環している洗浄液に対して超音波振動を付与し、被洗浄物を洗浄することができる。
なお、音圧測定装置により、洗浄液の音圧を適宜測定し、洗浄液における気泡量が均一化されていることを確認しながら洗浄することが好ましい。また、かかる音圧測定装置は、洗浄槽に対して常時備えてあることも好ましいが、洗浄槽の全体としての有効利用が図れることから、音圧測定装置を脱着可能に構成し、音圧の測定時のみ、洗浄槽に備えることも好ましい。
【0042】
2.循環路
第1の実施形態で説明したのと実質的に同様の循環路とすることができるが、当該循環路の途中に、気泡調整部が設けてある点で異なっている。
したがって、循環路の構成および気泡調整部について中心に説明するものとし、第1の実施形態と同様の点については、適宜説明を省略する。
【0043】
(1)構成
図1(a)および(b)に示すように、洗浄液(被洗浄物の収容部)16を含む洗浄槽の出口18と、入口30との間を連結し、送液ポンプ26を用いて洗浄液を循環させるための流路である循環路20に、気泡調整部を設けることを特徴とする。
そして、かかる循環路20に設けられた気泡調整部は、水平部24と、垂直部28を含むことが好ましい。
この理由は、かかる水平部24を利用して、洗浄槽の出口30および入口18に対して、循環路20を適当な位置に引き回すことができるとともに、送液ポンプ26を適当な位置に設けることができるためである。また、かかる垂直部28を設けることにより、洗浄液が上昇する途中で、洗浄液に含まれる小さな気泡が大きな気泡となって、自然と脱気しやすくなるためである。
したがって、このように水平部24と、垂直部28とを含むことにより、洗浄装置10を簡易かつ小型化できるとともに、洗浄液中の気泡量を効率的に減少および均一化させることができる。
【0044】
また、循環路に洗浄液を循環させるに際して、例えば、被洗浄物の収容部(洗浄液の貯蔵部)16の液量が50Lの場合、当該洗浄液の循環速度を5L/分〜200L/分の範囲内とすることが好ましい。
この理由は、被洗浄物の収容部16の液量50Lに対してかかる循環速度が5L/分未満となると、洗浄液中の気泡量を効率的に減少、均一化できない場合があるためである。一方、被洗浄物の収容部16の液量50Lに対してかかる循環速度が200L/分を超えると、空気を巻き込み易くなり、超音波による洗浄効果がばらついたり、洗浄液の酸化劣化が促進されたりする場合があるためである。
したがって、例えば、被洗浄物の収容部(洗浄液の貯蔵部)16の液量が50Lの場合、洗浄液の循環速度を10L/分〜100L/分の範囲内とすることが好ましく、15L/分〜50L/分の範囲内とすることがさらに好ましい。
【0045】
(2)気泡調整部
▲1▼垂直部
機械的な気泡調整部として、図1(a)に示すような垂直部28を設け、洗浄液が上昇する間に、小さい気泡が集合して大気泡となって小部屋34に貯まり、そこから脱気することにより、洗浄液に含まれる気泡量、ひいては、洗浄液の音圧を調整することが好ましい。
したがって、垂直部の長さを、脱気効率を考慮して比較的長くすることが好ましいが、例えば、50〜1、000mmの範囲内の値とすることが好ましい。
また、送液ポンプの出口に、かかる垂直部が設けてあることが好ましい。この理由は、このように構成することにより、洗浄装置をさらに簡易かつ小型化することができるとともに、洗浄液中の気泡量を効率的に減少、均一化させることができるためである。
【0046】
▲2▼邪魔板
また、図9に示すような邪魔板99を設けることが好ましい。この理由は、このように構成することにより、洗浄液が衝突する間に、小さい気泡が集合して大気泡となって脱気することができ、洗浄液に含まれる気泡量、ひいては、洗浄液の音圧を適当な範囲に調整することができるためである。したがって、洗浄装置をさらに簡易化することができるとともに、洗浄液中の気泡量を効率的に減少、均一化させることができる。
【0047】
▲3▼第1の超音波振動子の併用
また、図10に示すように、洗浄槽12に設けた超音波振動子15の振動を、循環路28にも伝播させるように構成し、一つの超音波振動子15を併用して、洗浄液の音圧を調整することが好ましい。この理由は、このように構成することにより、洗浄装置をさらに簡易かつ小型化することができるとともに、洗浄液中の気泡量を効率的に減少、均一化させることができるためである。
【0048】
3.送液ポンプ
また、循環路により洗浄液を循環させるに際して使用する送液ポンプの種類は特に制限されるものでなく、例えば、ギヤポンプ、渦流ポンプ、渦流タービンポンプ等が挙げられる。また、洗浄液中の気泡量を効率的に減少させ、均一化するための駆動力に用いる必要性から、高自吸性および低NPSHのポンプを使用することが好ましい。
【0049】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、図6で示すように、第2の洗浄装置として、超音波洗浄するための第1の超音波振動子14を備えた洗浄槽12と、循環路20と、送液ポンプ26と、を備えた洗浄装置50であって、循環路20の途中に気泡量を調整するための第2の超音波振動子52がさらに設けてあることを特徴とした洗浄装置である。
以下、構成要件ごとに具体的に説明する。
【0050】
1.洗浄槽
第1の実施形態で説明したのと同様の洗浄槽とすることができる。したがって、ここでの説明は省略する。
【0051】
2.循環路
第1の実施形態で説明したのと実質的に同様の循環路とすることができるが、当該循環路の途中に気泡量を調整するための第2の超音波振動子を設けている点で異なっている。
したがって、第2の超音波振動子について中心に説明するものとし、第1の実施形態と同様の点については、適宜説明を省略する。
【0052】
(1)構成
第2の超音波振動子の周波数特性や付与時間については、第2の実施形態において説明したのと同様の内容とすることができる。すなわち、第2の超音波振動子における発振周波数を20KHz〜200KHzの範囲内の値とすることが好ましい。また、第2の超音波振動子により洗浄液に超音波振動を付与するに当たり、当該超音波振動を連続的に付与することが好ましい。
また、第2の超音波振動子の数は特に制限されるものではないが、例えば、送液ポンプによる洗浄液の循環速度が50L/分の場合、第2の超音波振動子の数を1〜4個の範囲内の値とすることが好ましい。
【0053】
また、第2の超音波振動子の配置に関しては、例えば、図11(a)に示すように循環路54の片側に設けることも好ましく、図11(b)に示すように気泡調整垂直部54と組み合わせて下側に設けることも好ましい。あるいは、図12(a)に示すように循環路54の両側に設けることも好ましく、さらに図12(b)に示すように循環路54の周囲に設けることも好ましい。この理由は、このように配置することにより、第2の超音波振動子が循環路に接する面積を効率的に制御することができ、ひいては洗浄液の気泡量を効率的に減少、均一化することができるためである。
【0054】
3.送液ポンプ
第3の実施形態で説明したのと同様の送液ポンプとすることができる。したがって、ここでの説明は省略する。
【0055】
【実施例】
[実施例1]
1.洗浄工程
図1に示すような半田フラックス洗浄装置を構成した。すなわち、容量が50Lの矩形のステンレス容器からなる被洗浄物の収容部16と、第1の超音波振動子14(第1の超音波振動板)と、音圧測定装置(図示せず)と、被洗浄物の取り出し口12と、サーモスタット付きのヒーター(図示せず)と、洗浄液の出口18と、洗浄液の入口30と、から構成した。
また、洗浄液の出口18と、洗浄液の入口30との間に、送液ポンプ26と、水平部24および垂直部28からなる流路とを配置した。
次いで、被洗浄物の収容部内に、半田フラックスとしてのソルダーライドA−226(タムラ化研(株)製)を3重量%の濃度で含むグリコール系洗浄液のマイクロクリンRS−12M(化研テック(株)製)50Lを収容した後、グリコール系洗浄液(酸価3mgKOH/g、導電率:6μS/cm)の温度を70℃まで上昇させ、洗浄装置をスタンバイさせた。次いで、超音波(600W/28KHz)を30秒間照射して被洗浄物としてのくし型電極を洗浄した。
【0056】
2.洗浄評価
(1)誘電損失の測定
フラックス処理して洗浄工程で洗浄したJIS2型くし型電極基板を以下の条件で、リンスおよび乾燥処理を実施した後、100Hz〜1MHzの周波数における誘電損失(tanδ97%RH)を測定した。一例として、測定周波数100Hzにおける測定結果を表1に示す。
【0057】
▲1▼リンスおよび乾燥処理条件
リンス1回目(20℃、1分)
リンス2回目(20℃、1分)
乾燥(80℃、10分)
【0058】
▲2▼誘電損失の測定
測定器:LCR Meter HP4284A(横河ヒューレットパッカード社製)
測定温度:25℃
測定電位:1V
測定周波数:100Hz〜1MHz
測定環境条件:97%RH
加湿時間:1時間
【0059】
(2)音圧
洗浄工程で使用した洗浄装置をスタンバイした状態で、27分割した測定箇所において、超音波測定装置(UTK−32:日本特殊陶業株式会社製)を用い、第1の超音波振動子を照射しながら、1回の音圧の測定時間を0.1〜10秒の範囲内の値とし、測定温度を70℃の値として測定した。測定結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 2004216254
【0061】
表1に示す結果から、第1の超音波振動子によって洗浄液の気泡量を効率的に減少させることができたために、洗浄槽全体の洗浄液の音圧が均一になっており、ひいてはくし型電極付き基板の誘電損失(tanδ)の値が低くなっていることを確認した。
【0062】
[実施例2]
図6に示すように、循環路20の垂直部56に、小部屋54から構成される気泡調整室を設けて、その側壁に第2の超音波振動子52を1個配置し、超音波振動を付与した以外は、実施例1と同様にくし型電極の洗浄および洗浄液の評価等を実施した。
その結果、第2の超音波振動子によって、洗浄液の気泡量をさらに効率的に減少させることができたために、洗浄槽全体の音圧がさらに均一化されるとともに、くし型電極の誘電損失の値がさらに低くなっていることを確認した。
【0063】
[実施例3]
実施例3においては、洗浄液としてn−メチルピロリドンを使用したほかは、実施例1と同様にくし型電極の洗浄および洗浄液の評価等を実施した。
その結果、音圧の平均値がやや高くはなったが、洗浄槽全体の音圧がさらに均一化されるとともに、くし型電極の誘電損失の値がさらに低くなっていることを確認した。
【0064】
[比較例1]
比較例1においては、実施例1における洗浄装置の送液ポンプを停止して気泡量を調整しなかったほかは、実施例1と同様にくし型電極の洗浄および洗浄液の評価等を実施した。
その結果、循環路の流れを停止したために、洗浄液の気泡量を減少、均一化することができず、洗浄槽全体の音圧にばらつきが見られ、ひいてはくし型電極の誘電損失の値が高くなっていることを確認した。
【0065】
【発明の効果】
本発明の洗浄方法および洗浄装置によれば、循環路に設けた垂直部または第2の超音波振動子等の気泡調整手段によって、洗浄液に含まれる気泡量を調整し、洗浄槽における洗浄液の音圧を所定範囲内の値とすることができるため、洗浄槽全体を有効に使用できるとともに、気泡量が均一化された洗浄液を用いて、被洗浄物を効率的に洗浄することが可能になった。
また、本発明の洗浄方法および洗浄装置によれば、比較的低温で、マイルドな洗浄条件であっても優れた洗浄効果が得られるため、洗浄液の寿命を長期化させながら、被洗浄物に対して、優れた洗浄効果を発揮できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、第1の実施形態の洗浄方法に使用する洗浄装置を説明するために供する図である。
【図2】図2(a)は、洗浄液の平均音圧と洗浄後のtanδとの関係を示す図であり、(b)は、洗浄液の平均音圧と洗浄効果との関係を示す図である。
【図3】図3は、送液ポンプ圧力と平均音圧との関係を示す図である。
【図4】図4は、音圧の測定方法を説明するために供する図である。
【図5】図5は、音圧の測定装置を示す図である。
【図6】図6は、第2の実施形態の洗浄方法に使用する洗浄装置を説明するために供する図である。
【図7】図7(a)および(b)は、超音波振動板の配置を説明するために供する図である。
【図8】図8は、円柱形の収容部を使用した場合の超音波振動板の配置を説明するために供する図である。
【図9】図9は、邪魔板を説明するために供する図である。
【図10】図10は、気泡の採取方法を説明するために供する図である。
【図11】図11(a)および(b)は、第2の超音波振動子の配置を説明するために供する図である(その1)。
【図12】図12(a)および(b)は、第2の超音波振動子の配置を説明するために供する図である(その2)。
【図13】図13は、従来の洗浄方法を示す図である(その1)。
【図14】図14は、従来の洗浄方法を示す図である(その2)。
【符号の説明】
10:洗浄装置
12:洗浄槽
14:第1の超音波振動子
16:洗浄液(洗浄液の貯蔵部または被洗浄物の収容部)
20:循環路
26:送液ポンプ
28:垂直部
52:第2の超音波振動子

Claims (10)

  1. 超音波洗浄するための第1の超音波振動子を備えた洗浄槽と、循環路と、送液ポンプと、を利用した洗浄方法において、以下の工程(A)および(B)を含むことを特徴とする洗浄方法。
    (A)前記洗浄液に含まれる気泡量を調整する工程
    (B)前記洗浄槽における洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とした状態で被洗浄物を洗浄する工程
  2. 超音波洗浄するための第1の超音波振動子を備えた洗浄槽と、循環路と、送液ポンプと、を利用した洗浄方法において、以下の工程(A′)および(B′)を含むことを特徴とする洗浄方法。
    (A′)前記循環路の途中に設けた気泡量を調整するための第2の超音波振動子により、前記洗浄液に含まれる気泡量を調整する工程
    (B′)前記洗浄槽において被洗浄物を洗浄する工程
  3. 前記工程(B)または(B′)において、洗浄液の音圧の平均値を0.1〜1.5Vの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄方法。
  4. 前記工程(B)または(B′)において、洗浄槽に設けた音圧測定装置により、前記洗浄液の音圧を連続的または断続的に測定しながら洗浄することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の洗浄方法。
  5. 超音波洗浄するための第1の超音波振動子を備えた洗浄槽と、循環路と、洗浄液を循環させるための送液ポンプと、を備えた洗浄装置において、
    前記洗浄液に含まれる気泡量を調整するための気泡調整部が循環路に設けてあるとともに、前記洗浄槽中の洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とすることを特徴とする洗浄装置。
  6. 超音波洗浄するための第1の超音波振動子を備えた洗浄槽と、循環路と、送液ポンプと、を備えた洗浄装置において、
    前記循環路の途中に気泡量を調整するための第2の超音波振動子がさらに設けてあることを特徴とする洗浄装置。
  7. 音圧測定装置をさらに備えたことを特徴とする請求項5または6に記載の洗浄装置。
  8. 前記循環路が水平部と垂直部とからなり、当該垂直部を利用して洗浄液に含まれる気泡量を調整することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の洗浄装置。
  9. 前記循環路の水平部に、前記送液ポンプが設けてあり、当該送液ポンプの出口に、前記第2の超音波振動子が設けてあることを特徴とする請求項8に記載の洗浄装置。
  10. 前記送液ポンプの出口に、前記垂直部が設けてあることを特徴とする請求項8または9に記載の洗浄装置。
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