本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の適用対象となる生体磁気計測装置の実施例を示す概略構成図である。
本実施例の生体磁気計測装置は、一例として、心臓の磁場分布を計測する心臓磁気計測装置(心磁計)を例示しており、環境磁気雑音の影響を除去するために、生体磁気計測装置は磁気シールドルーム1内に設置される。生体からなる被検体(被検者)2は、通常はベッド3に仰向け状態でその心磁計測が行われるが、うつ伏せなどの状態で計測が行われる場合もある。
被検者の生体面(胸部の場合は一般に胸壁に平行な面)はベッド3の面とほぼ平行であるとみなし、そしてこの面は直交座標系(x,y,z)のx−y平面と平行であるものとみなす。実際には、被検者の胸部は曲面であると共に傾いているが、説明を簡単にするためにほぼ平行とする。
被検者2の胸部の上方には、冷媒である液体Heで満たされたデュワ4が配置され、デュワ4はSQUID(超伝導量子干渉素子)とそのSQUIDに接続された検出コイルとを含む複数個の磁気センサを収容している。液体Heは磁気シールドルーム1の外部にある自動補給装置5から連続的に補給される。
磁気センサの出力は、被検者2から発生して検出コイルにより検出される生体磁場の強度(磁束密度と考えることもできる)と特定の関係をもつ電圧を出力し、その出力がFLL(Flux Locked loop)回路6に入力される。このFLL回路6は、SQUIDの出力を一定に保つように、SQUIDに入力された生体磁場(生体磁気)の変化を帰還コイルを介してキャンセルする(これを磁場ロックと呼ぶ)。その帰還コイルに流した電流を電圧に変換することにより、生体磁場信号の変化と特定の関係にある電圧出力を得ることができる。このように帰還コイルを介して検出する方式を取っているので、微弱の磁場を高感度に検出できる。
上記出力電圧は増幅器・フイルタ・増幅器(AFA)7に入力され、その出力はサンプリングされて、A/D変換器7−2によりA/D変換され、計算機8に取り込まれる。
計算機8はパーソナルコンピュータからなり、8−1はそのデイスプレイ部、8−2はキーボード、そして8−3はマウスを示す。
マウス8−3は画面上でカーソルを移動させて処理対象を選択するのに用いられる。この操作はキーボードを操作することによっても行うことができる。計算機にはプリンタ9が接続されており、ディスプレイ部8−1で表示された内容を出力用紙に配置して出力することができる。プリンタはカラー印刷でも白黒印刷でもよいが、本実施例ではカラー印刷可能なプリンタが接続されている。
AFA7の入力ゲイン及び出力ゲインは調整可能であり、また、AFA7は第1の基準周波数以下の周波数信号を通過させるローパスフイルタ、第1の基準周波数よりも低い第2の基準周波数以上の周波数信号を通過させるハイパスフイルタ及び商用電源周波数をカットするノッチフィルタを含む。
計算機8は各種の処理を行うことができ、その処理結果はディスプレイ部8−1に表示される。
なお、図1で示す計算機8は一実施例を示したものであり、これに限定されるものではない。例えば、タッチパネルを備えたディスプレイを備えたものや、マウスに変えて他の座標指示装置、例えばトラックボールやジョスティック等のポインティングデバイスを使用したものでもよい。また場合によっては公衆電話回線を介して接続される計算機でもよい。
SQUIDとしては、例えば一例として直流SQUIDが用いられる。SQUIDに外部磁場が与えられたときに、それに対応する電圧(V)が発生するようにSQUIDには直流バイアス電流(Ibias)が流される。その外部磁場を磁束Φで表すと、VのΦに対する特性曲線すなわちΦ−V特性曲線は周期関数で与えられる。計測に当っては、それに先立って、FLL回路6のオフセット電圧(VOFF)を調整してΦ−V特性曲線の直流電圧をゼロレベルにする操作が行われる。
図2は磁気センサの配置構成を示す。磁気センサの検出コイルには生体磁場の接線成分(生体面すなわちx−y平面にほぼ平行な成分)を検出するコイルと生体磁場の法線成分(生体面すなわちx−y平面に直交する成分)を検出するコイルがある。生体磁場の接線成分を検出するコイルとしては、コイル面がx方向及びy方向をそれぞれ向いた2つのコイルが用いられ、また、生体磁場の法線成分を検出するコイルとしてはコイル面がz方向を向いたコイルが用いられる。
複数個の磁気センサ20−1〜20−8、21−1〜21−8、22−1〜22−8、23−1〜23−8、24−1〜24−8、25−1〜25−8、26−1〜26−8及び27−1〜27−8は、図2に示されるように、生体面すなわちx−y平面とほぼ平行な面上にマトリックス状に配置される。磁気センサの数は任意であってよいが、図2では、磁気センサのマトリックスは8行8列からなっているから、磁気センサの数は8×8=64である。
各磁気センサは、図2に示されるように、その長手方向が生体面すなわちx−y平面に対して垂直な方向(z方向)と一致するように配置される。なお、この一実施例ではベッド面とセンサのX−Y面とを平行にしているが、測定精度を高めるには体に接近させる方が良く、傾けるようにすることができる。但し、被検者である人体は常に動いているので、人体に密着させるとこの動きが検出部を動かし、かえって高精度の検出が困難となる。
図3は磁気センサの各々の、生体磁場の法線成分Bzを検出するセンサの構成を示す。同図において、超伝導線(Ni−Ti線)で作られたコイルはそのコイル面がz方向を向くように配置される。このコイルは互いに逆向きの2つのコイル10及び11の組み合わせからなり、被検者2に近い方のコイル10は検出コイルとされ、遠い方のコイル11は外部磁場雑音を検出する参照コイルとされる。
外部磁場雑音は被検者よりも遠い信号源から生じており、したがって、その雑音信号は検出コイル10及び参照コイル11の両方によって検出される。一方、被検者からの磁場信号は微弱であり、したがって、その生体磁場信号は検出コイル10によって検出されるが、参照コイル11はその生体磁場信号にほとんど感応しない。このため、検出コイル10は生体磁場信号と外部磁場雑音信号を検出し、参照コイル11は外部磁場雑音信号を検出するから、両コイルで検出された信号の差をとることによりS/N比の高い生体磁場の計測が可能となる。これらのコイルはSQUID12を実装した実装基板の超伝導線を介してSQUIDの入力コイルに接続され、これによって、検出された生体磁場信号の法線方向の成分BzがSQUIDに伝達される。
図4は磁気センサの各々の、生体磁場の接線成分Bx及びByを検出するセンサの構成を示す。同図において、接線方向の生体磁場成分検出用のセンサでは平面コイルが用いられる。すなわち、検出コイル10´及び10″並びに参照コイル11´及び11″は平面コイルからなり、これらは互いにz方向において間隔づけられている第1及び第2の平面にそれぞれ配置される。これらのコイルは法線成分用と同様にSQUID12´及び12″の実装基板の入力コイルに接続される。4角柱の互いに直交する2面に、これらのBx成分検出用のセンサ13及びBy成分検出用のセンサ14が貼付けられ、これによってBx成分及びBy成分を検出し得るセンサが形成される。
接線成分Bx、Byについては、これを図4に示される磁気センサを用いて検出する以外に、図3の磁気センサで得られた法線成分Bzをx、yについて偏微分して求めてもよい。この場合は一つの磁気センサで接線成分Bx、Byと法線成分Bzとの両方を検出し、測定することができる。
図5は図2で示した磁気センサと被検者2の被計測部である胸部30との位置関係を示す。示されている点は図2に示されるマトリックス上の行と列との交点すなわち被検者2の計測点すなわち計測位置を表す。これらの各計測位置をチャンネルとも呼ぶ。
図からわかるように、この実施例では、被検者2の頭部から脚部を結ぶ体軸方向をy方向とし、被検者2の横方向をx方向としている。各磁気センサは1から64までの連続番号および格子上の位置によって識別している。1から64までの連続番号は左上隅にある磁気センサを1(チャンネル)とし、以下右に向かって2、3、4、…となり、右上隅の磁気センサが8となる。続いて2段目左隅の磁気センサから9、10、…となり、2段目右隅の磁気センサが16となる。以下同様にして番号が付与され、右下隅の磁気センサが64となる。また格子上位置で磁気センサを識別する場合にはn行m列と表現する。磁気センサ1ならば1行1列、磁気センサが64チャンネルならば8行8列となる。
図6は図5のセンサ配置における右上部センサで検出される一心拍分の心磁信号の波形パターンの例を示す。心磁信号の基本的な波形パターンは心電図の波形パターンと対応しており、P波、QRS波、T波を確認することができる。P波は洞結節から発射された刺激波によって心房筋が興奮する過程を、QRS波は左右両心室の興奮過程を、T波は心室の興奮からの回復過程を表している。U波の電気生理学的な意味はまだ十分には解明されておらず、また振幅が小さくて確認できないことが多い。
本実施例では、1心拍分の信号として切り出した波形において、信号の先頭の時刻からP波、T波、U波の開始時刻をそれぞれtP、tT、tUとして定義してもよい。またQRS波の時刻をそれぞれtQ、tR、tSとしている。
生体からの磁場の計測位置(センサ位置)における信号を演算処理して物理量として表す場合、ある時刻の磁束密度、時間区間内の磁束密度を時間で積分した時間積分値、および心臓磁気計測の場合には基準時刻からQRS波のピーク位置時点までの時間である伝播時間などがある。
心磁波形値つまり磁束密度が等しい点を結んで作られたマップを等磁線図と呼ぶ。各チャンネルは粗く設定されているので、予め等磁線の間隔つまり磁場強度差を設定して各チャンネル間を直線補間して等磁線を描くことにより、より診断に適した図を作ることができる。
心磁波形データは予め定められた時間範囲に亘って積分されてもよい。その時間積分値が等しい点(チャンネル)を結んで作られたマップを時間積分図と呼ぶ。
各センサで検出された信号データの時間特性において、所定の基準時刻からQRS波のピーク位置時点(極大点)tRまでの時間を伝播時間と呼び、その伝播時間が等しい点を結んで作られたマップを伝播時間図と呼ぶ。基準時刻は更に、QRS波のピーク位置時点に至るまでの最小値(極小点)を検出し、この時点を基準時刻として決定してもよい。
以下、本発明を実施する装置についての説明を行う。生体磁気信号の計測およびデータ解析はすべて計算機8によって実行され、ディスプレイ部8−1、キーボード部8−2、マウス8−3によって操作される。
図7はこの実施例における操作画面の基本的なレイアウトを示す。
操作画面は常にその最上部に本システムの名称が表示されるタイトルバー部801と、このシステムの基本的な操作を行うメニューバー部802、及び前記メニューバー部802における使用頻度の高い操作が可能なツールバー部803が配置されている。操作画面の中央部は、その中央にはこの操作画面の主体をなす解析データ部805を大きく設けることで見易さを向上する。
さらに、その右側にこの操作画面に特有の操作領域部806を設けることで、右手操作における操作画面と操作部の配置と同様な配置としている。したがって、この操作画面をタッチパネル付きの操作画面に採用しても、操作領域部806を操作する右手が解析データ部805を邪魔することがない。
また、同様に、解析データ部805の左側に確認機能しかない被検者情報部804を設けている。被検者情報部804には計測中の被検者の情報あるいはデータ解析中のデータの情報と被検者の情報が表示されるので、常に計測中の被検者あるいはデータ解析中の信号データを確認しながら操作を行うことができる。しかも、この左側の位置は、右手操作における最も遠い位置となるのでタッチパネル付きの操作画面に採用しても表示の見易さに影響をきたすことがない。807−1はメッセージバー部、807−2は日時表示部である。
タイトルバー部801にはフレームの名称、具体的には、「Multichannel MCG System」という名称が表示される。ここで、MCGとは、Magnet cadiogramの略である。操作領域部にはボタンやテキストボックスのような操作要素が配置されている。
メニューバー部802は操作メニューを選択する部分で、「ファイル(F)」、「被検者リスト(L)」、「データ計測(Q)」及び「設定(S)」からなり、操作の順序にしたがって配置されている。
図8は操作画面中のメニュー部におけるそれぞれの操作メニューの内容を示し、これらのメニューの内容はそれぞれ対応するメニューボタンをクリックすることによってプルダウンメニューとして表示される。
「ファイル(F)」のプルダウンメニューは、Multichannel MCG Systemを終了させる「心磁システムの終了(X)」と、等磁線図などを用いて解析している内容を印刷出力する「印刷(P)」および印刷イメージをディスプレイ上8−1に表示する「プレビュー(V)」という項目を含む。
「被検者リスト(L)」のプルダウンメニューは、「被検者リスト(L)」、「被検者登録(R)」、「被検者削除(P)」、「データ削除(D)」という項目を含む。
プルダウンメニューの「被検者リスト(L)」(図8)がクリックされると、被検者リスト画面(図15)が表示される。プルダウンメニューの「被検者登録(P)」が選択されると、表示中の被検者リスト145の最後の被検者情報の次の行にカーソルが移動し、その行から新しい被検者の情報を受け付けることができる。
また、プルダウンメニューの「被検者削除(P)」は被検者リスト画面上の被検者リスト145中のカーソルが置かれた被検者を削除するためのもので、それがクリックされると、削除してよいかどうかの確認を行う確認ダイアログボックス(図示せず)が開かれる。削除が必要な場合は、そのダイアログボックス中の「OK」というボタンがクリックされ、削除をキャンセルしたいときは「キャンセル」というボタンがクリックされる。被検者が削除されると、その被検者に関するデータリスト中のすべてのデータも削除される。
図8の「データ削除(D)」は、図15における被検者リスト画面上の被検者リスト145中のカーソルが置かれた被検者に関するデータのうち、画面の下段に表示されている該被検者のデータ146を削除するためのもので、それがクリックされると、削除してよいかどうかの確認を行う確認ダイアログボックス(図示せず)が開かれ、削除が必要な場合は、そのダイアログボックス中の「OK」というボタンがクリックされ、削除をキャンセルしたいときは「キャンセル」というボタンがクリックされる。
図8の「データ計測(Q)」のプルダウンメニューは、「データ計測(Q)」という項目を含む。この「データ計測(Q)」という項目がクリックされると、グリッドマップを含むデータ計測画面(図16)が表示され、ただちに磁場データのモニタリングを開始する。
図8の「設定(S)」のプルダウンメニューは、「データ計測メニュー(Q)」、「アベレージング条件(A)」、「データ解析メニュー(B)」という項目を含む。
「データ計測メニュー(Q)」が選択されると、図9のデータ計測メニュー編集ダイアログが表示されて、データ計測の条件を登録したメニューが編集される。データ計測メニューとは、データ計測を行なう際に設定すべきパラメータ(計測条件)の値に対してつけた名前(つまりデータ計測プロトコールの名称)のリストメニューのことである。ダイアログの左側にはデータ計測条件パラメータを指定するテキストボックス80、中央にはデータ計測後に表示すべきデータ解析メニュー81−1、および右側にはデータ計測メニュー82−1に登録されたデータ計測条件のリストが表示されている。
データ計測条件パラメータ80−1〜80−7には、サンプリング間隔、サンプリング時間、AFA6の動作パラメータである入力ゲイン、出力ゲイン、ハイパスフィルタ、ノッチフィルタ、ローパスフィルタなどの設定値があり、これらの値は新たに設定するほかに追加,削除,修正が可能である。
このうちサンプリング間隔テキストボックス80−1には、キーボードからミリ秒単位でサンプリング間隔が入力されるが、入力を容易化するために入力可能な値のリストが用意されており、テキストボックスの左端の下向き三角形のボタンをおすことによってそのリストが表示されてマウスから選択することも可能である。他のパラメータについても同様に入力可能値が用意されていて三角形ボタンを押してリストを開くことによって選択可能となる。
中央の計測後表示は、あらかじめ登録されているデータ解析メニュー81−1の中からデータ計測直後に表示すべきデータ解析方法を指定するものである。データ解析メニュー81−1には等磁線図や伝播時間図といったデータ解析手法とそれらの再構成に必要となるパラメータが指定されたデータ解析条件(データ解析パラメータ)に対して、操作者が設定した名称(識別情報)のリストが表示される。この名称は、操作者が自由に設定することができるが、通常はデータ解析の目的や表示内容を表す名称が使われるものとする。
たとえば図9の例では、時間波形をセンサ位置に対応させて表示する「グリッドマップ」、心室の興奮によって現れるQRS波における等磁線図を表示させる「QRS等磁線図」、同じくT波に関する等磁線図を表示する「T等磁線図」、磁気信号の伝達時間を等高線で表した「伝播時間図」、各センサ位置における磁束密度の時間積分値を等高線で表した「時間積分図」などのデータ解析メニューが登録されており、そのうち「QRS等磁線図」が選択され、選択されたものが表示部81に表示されている。
計測後表示の指定はデータ解析メニュー81−1の中から所望するデータ解析方法をマウスで指定することによって選択される。これらのデータ解析メニューの各リストの名称(識別情報)は、上記に代わって診断方法の名前を付けることもできる。たとえばQRS波の等高線図が心肥大の診断に有効と考えられる場合には「心肥大診断」という名称(識別情報)でQRS波の等磁線図の表示条件を登録すれば良い。同様にQRS波とT波における時間積分の差が心筋虚血の診断に有効と考えられる場合には「心筋虚血診断」という名称でQRS波とT波における時間積分とそれらの差の等高線図を登録すれば良い。すなわち、このような識別情報を指定することで、図11のダイアログで予め設定したデータ解析手法(例えばグリッド解析,QRS等磁解析,T等磁解析,伝播時間解析等)やデータ解析条件パラメータを組として読み出して、データ計測後に所望のデータ解析
処理がなされる(前記第5の発明の態様例)。
右端のデータ計測条件は、計測後表示が関係付けられるデータ計測条件名を指定する。追加ボタン83−1が押されるとデータ計測条件名テキストボックス82が空白となり、新しく追加するデータ計測条件名の入力を受け付ける。削除ボタン83−2が押されるとデータ計測条件リスト82−1上においてカーソルのある項目を削除する。修正ボタン83−3が押されると、データ計測条件リスト82−1上においてカーソルのある項目がテキストボックス82に表示され、その内容をデータ計測条件テキストボックス80−1〜80−7および計測後表示指定部81の内容を考慮して変更することができる。
データ計測条件名の名称(識別情報)は、操作者が自由に命名しても良いが、通常は計測の目的、対象、方法を表示した名称を設定することによって、誤った条件での計測を防止することができる。
図9の例では「成人・正面」、「成人・背面」、「小児・正面」、「小児・背面」、「胎児」のように登録しており、テキストボックス82には「成人・正面」という名称が選択されている。これは「成人・正面」という識別情報を指定することで、サンプリング間隔0.5ミリ秒、サンプリング時間10秒、入力ゲイン10、出力ゲイン50、ローパスフィルタ、帯域除去フィルタ、ハイパスフィルタのカットオフ周波数の設定がそれぞれ1kHz、50Hz、0.01Hzの計測条件(パラメータ)が読み出され、そのパラメータにしたがったデータ計測が実行される(前記第4の発明の態様例)。また、計測が終わった直後に「QRS等磁線図」という名称で登録されているデータ解析方法が予め定めたデータ解析パラメータにしたがって実行されて、結果が表示されることを示す。
通常、計測される磁気信号の大きさは成人と小児、胎児で異なり、また正面からの計測かあるいは背面からの計測かによっても異なる。また成人と小児におけるデータ解析手法は等磁線図が中心となるが、胎児の場合には計測時の方向や姿勢が分らないことが多いため時間波形による解析が中心となる。「データ計測メニュー編集」ダイアログによって、装置に関する原理や構造を知らなくとも、平易な名称の識別情報を指定することで容易に操作ができる。
図8の「アベレージング条件(A)」がクリックされると、図10に示す「自動アベレージングの処理条件」ダイアログボックスが表示されて、オペレータによって指定された磁気センサの基準チャンネルの番号、開始時刻、アベレージング時間、加算回数を受け付ける。ここでアベレージング処理とはすべてのチャンネルの磁気センサからの計測信号について、各チャンネルごとに計測信号から繰り返し表れる1心拍分の信号波形を取り出し、その心拍データ(信号波形)を指定された加算回数だけ足して平均化することである。
アベレージング処理を施すことによって、データ計測時に心磁信号に重なって取り込まれる雑音を白色雑音と仮定すれば、雑音レベルを(加算回数の平方根)分の1に低減できるため、信号−ノイズ比を向上することができる。患者自身に自覚症状が現れていない心筋虚血や心肥大などの疾病でも、アベレージング処理された信号から等磁場線図を作成することによって診断できる可能性がある。
1心拍分の信号データはR波をしきい値や波形の形状認識によって検出し、その時刻から一定時間はなれた時点をアベレージングの開始時刻とする方法がとられる。
図10のダイアログの左側には、標準的な心磁のモデル波形が表示され、P波、T波、U波の始まる時刻をそれぞれTP、TT、TUという記号を付けて表示している(符号の90は心磁波形、91はゼロラインである)。また、QRS波における各波の極大点、極小点となる時刻をそれぞれTQ、TR、TSとしている。本発明では基準チャンネルの波形に対して自動的にこれらの時刻を決定する。これらの時刻の決定方法の例として、たとえば前述のR波の検出によってTRが決定され、TRを基準として直後の極小点の時刻をTS、続いて一定時刻以上0レベルの信号が続いてからT波の信号の立ち上がったところがTTとなる。同様にTP、TQ、TUを決定することができる。なお、TP、TT、TUをそれぞれP波、T波、U波の極大点あるいは極小点を与える時刻として定義してもよく、この場合にはたとえばTPを決定するために(TR−300)ミリ秒から(TR−150)ミリ秒の間で信号値が最大となる時刻をTPとし、TT、TUについても同様に決定する。
ダイアログの右側には基準チャンネル、開始時刻、アベレージング時間、加算回数を入力するためのテキストボックス92、93、94、95が設けられている。磁気センサの位置によって各チャンネルの信号波形は極性が逆転したり、TRを与える時刻がずれているため、1心拍分の時間範囲を決定するためには磁気センサ群の中から基準チャンネルを設定する必要があり、基準チャンネルテキストボックス92にて1から64までのチャンネル番号の中から一つを指定する。
成人胸部を正面から計測した場合には、通常、振幅が大きくてR波を検出しやすい1行8列目の磁気センサに対応したチャンネル8を指定する。
開始時刻テキストボックス93にはP波、T波、U波の開始時刻TP、TQ、TT、TUからの相対時刻によってアベレージング開始時刻を指定する。図10に示されている例「TR−300」は、基準チャンネルの磁場波形からR波の時刻TR(R波の極値に対応する時刻)を検出し、それから300ミリ秒さかのぼった時点をアベレージング開始時刻としている。これは健常者のP波が発生する時刻TPよりも前の時刻をしめし、またアベレージング時間800ミリ秒はP波の発生からT波が終わるまでの時間をカバーするのに十分な時間である。すなわち、図10の例は、計測された信号波形から生体活動で繰り返し表れる特徴的な波形の一点に対応する時刻TRを特定し、この時刻を基準にして定めた時間範囲にある信号波形を生体磁場解析用のデータとして抽出する(前記第3の発明の態
様例)。通常は本発明で示した装置を用いて診断を行なう場合には開始時刻をTR−250からTR−300程度、アベレージング時間が750から800ミリ秒程度に設定される。P波からQRS波までの間隔が長く、かつ確実にP波の波形をアベレージングしたい場合には同様に「TP−50」と記述されればP波の先頭からさかのぼって50ミリ秒をアベレージング開始時刻とすることができる。
アベレージング時間テキストボックス94にはアベレージングの結果として得られる1心拍分の心磁信号の長さをミリ秒単位で指定される。また加算回数テキストボックス95にはアベレージングを行う際の加算回数が指定される。
これらの指定はOKボタン96が押された時に有効となり、図9のダイアログは閉じる。キャンセルボタン97が押されるとテキストボックスに設定した情報は向こうとなってダイアログが閉じる。
図8の「データ解析メニュー(B)」が選択されると、図11に示すダイアログが開いてデータ解析メニューの編集操作を受け付ける。ダイアログの上部には標準的な心磁のモデル波形が表示され、P波、T波、U波の始まる時刻及びQRS波の極大,極小点となる時刻をそれぞれTP、TQ、TR、TS、TT、TUという記号を付けて示している。またダイアログの左下部にはデータ解析手法とそれに必要なパラメータを入力する領域があり、右下部には編集すべきデータ解析メニューが配置されている。図11の例では「グリッドマップ」、「QRS等磁線図」、「T等磁線図」、「伝播時間図」、「時間積分図」等が登録されており、「QRS等磁線図」が選択されている。「QRS等磁線図」というデータ解析方法の内容はTQ−10、TQ、TR、TS、TS+10の5つの時刻における等磁線図を表示することである。これらの時刻は図11の上部に表示されている時間波形に符号90−2に示すように破線で示されている。
追加ボタン104−1が押されると、データ解析メニュー105−1上部のテキストボックス105から入力されたデータ解析名称をメニューに追加する。削除ボタン104−2が押されるとデータ解析メニューのうちカーソルが置かれている項目を削除する。修正ボタン104−3が押されるとカーソルが置かれている項目の内容が左のデータ解析条件部に設定され、その内容を変更することができる。
このデータ解析条件部から設定できるデータ解析の種類は、グリッドマップ、等磁線図、時間積分図、伝播時間図であり、それぞれ左側のラジオボタンによって指定する。等磁線図、時間積分図、伝播時間図の右側にあるテキストボックスはそれぞれ等磁線図を構成する時刻、時間積分を行う時間、伝播時間を求めるための基準時刻が入力される。
等磁線図を再構成する時刻は「TR、TR+2、TR+4、…」のように自動検出されたR波の時刻TRをパラメータとしてそれからの時間差を加減して指定する。また複数の時刻について等磁線図を再構成する場合には所望する数だけコンマ(、)で区切って列挙すればよい。
同様に時間積分を行う時間は「TS、TQ」のようにしてS波からQ波までの時間積分を指定する。QRS波の時間積分およびT波の時間積分のように、2つの区間を積分する場合には「TS、TQ、TT、TT+100」のように積分区間の先頭と最後の時刻を順次列挙すればよい。本実施例では2つの積分区間が指定されている場合には2つの時間積分図とそれらの積分値の差のマップを表示している。伝播時間の基準時刻には1つの時刻を指定する。
以下図12に従い、システム操作のフローについて説明する。また被検者選択、データ計測、データ解析の説明には図15から図23を参照して詳細に述べる。
図12は心磁計測システム操作の概要を示すフローである。
本フローに示すように、計算機8の電源がONにされると(S−1)、オペレーティングシステムが立ち上げられ、計算機に組込まれたプログラム起動アイコンがディスプレイ部8−1に表示される(S−2)。そのアイコンの中からMultichannel MCG Systemのプログラムを選択すると(S−3)、システムの初期化が行われ操作画面が表示されて操作可能となる(S−4)。
MCGシステムが立ち上がると前記のような操作画面が表示されるが、この実施例に係るシステムにおいては、初期画面として図15に示される被検者リスト画面が表示される(S−5)。これは被検者と、該被検者の計測または解析データの関係が極めて重要であるため、このシステムでは被検者情報をキーワードとしてデータ管理していることに起因する。すなわち、計測データや解析データは被検者情報がないと管理ができないためである。このため、このシステムでは、被検者リスト画面において、先ず被検者を登録または登録されているときは被検者を特定し、次に、新規計測の場合は計測に移行し、既に計測データがある場合は目的のデータを特定する。なお、本被検者リスト画面に先立ってシステム立ち上げ時の時間待ちの操作画面を備えてもよく、更に本システムの目次的な役割をする操作画面を設けてもよい。
被検者の登録から、その登録された被検者のデ−タ計測を行って、その計測されたデータの解析を行うまでの一連の操作はデイスプレイ8−1に表示される操作画面を見ながら行われる。このため、その一連の操作の説明に先立ってまずその操作画面のレイアウトを説明する。
ここで図15に示される被検者リスト画面について説明する。
画面の左側は被検者情報部804で占められており、リスト145中の中から現在カーソルにより指定されている被験者の情報が表示される。この被験者情報部804はデータ計測やデータ解析などの画面に変わっても表示されるため、操作者は現在どの被検者のデータ計測やデータ解析を実行しているかを容易に知ることができ、誤った患者を選択することによる誤診を防ぐことができる。
画面の右側全体の上部には被検者リスト145が、下部には選択された被検者に関するデータリスト146が表示される。
このデータリスト146は、後述のようにマウスで別の被検者を選択すると、新たに選択された被検者のデータリストに自動的に切り替わるため、誤った被検者のデータを選択することはない。
被検者リスト145の項目は、ID(被検者ID番号)、氏名、登録年月日(データ登録された日)、計測回数(データ計測が行われた回数)、生年月日、年齢、身長、体重、コメント(被検者に関するコメント)等を含む。被検者リストについては、これを縦スクロールバーでスクロールすることができ、被検者リストの項目については、これを水平(横)スクロールバーでスクロールすることができる。選択された被検者の行は強調表示される。
選択された被検者に関するデータリストの項目は、ID、データの種類(「生データ」か「アベレージング」、サンプリング間隔(データ計測が行われたときの信号の、ミリ秒単位でのサンプリング間隔)、サンプリング時間(秒単位)、分類(病気の分類情報)、サンプリング日付および時刻(データ計測が行われた日及び時刻)、コメント(データに関するコメント)等を含む。データリストについては、これを縦スクロールバーでスクロールすることができ、データリストの項目については、これを水平(横)スクロールバーでスクロールすることができる。選択されたデータの行は強調表示される。
この被検者リスト画面によれば、被検者リストに各被検者の情報を1行表示する。これにより、上下に配列される各被検者の情報が明確に区分けすることができるので識別性を向上することができるから、たとえば誤って別の被検者を選択する誤操作を軽減することができる。
この被検者リスト画面によれば、被検者リストに各被検者の情報を1行表示する。これにより、上下に配列される各被検者の情報が明確に区分けすることができるので識別性を向上することができるから、たとえば誤って別の被検者を選択する誤操作を軽減することができる。
この各被検者の情報は水平(横)スクロールバーでスクロールすることができると共に、選択された被検者の情報は縦長の被検者情報部に項目毎に上下に配列されるので視認性を損なうことがない。この場合、各被検者のデータリストの項目を前後(左右)に移動可能とすることにより視認性をより向上させてもよい。
更に、各被検者の情報を1行表示すことにより、一度に沢山の被検者を見ることができるので、縦スクロールバーでスクロールする回数を少なくすることができる。
また、被検者リスト145の中から目的の被検者に関する行にカーソルを合わせてクリックするだけの簡単な操作で、下部のデータリスト146を表示することができる。しかも、被検者リスト145とデータリスト146が上下に配置されているので、目線移動が少なくできるから、その関連性を認識しやすい。
また、前記データリストは、そのエリアの上部にカーソルを移動してドラッグする簡単な操作でその大きさを自由に変えることができるので、データリストのリスト数に合わせて自由にその大きさを設定することができる。
図12のステップS−5においては、上記の被検者リスト画面上の被検者リスト145の中から所望の被検者の行が選択される。
この後のフローは、図15のメニューバー部802における「ファイル(F)」「設定(S)」「データ計測(Q)」のいずれかを選択して図8で選択するメニュー指定により3つに分岐される(S−6)。
分岐の一つによれば、「ファイル(F)」というメニューの「心磁システム終了(X)」(図8参照)という項目が選択され、この場合は操作画面を閉じる等の終了処理が行われ(S−7)、それによって、システムの立ち下げが行われる(S−8)。その後、計算機18の電源がOFFにされ(S−9)、すべてが終了する。
分岐の残りによれば、データ解析及びデータ計測が行われる。
すなわち、「設定(S)」の「データ解析メニュー(B)」(図8参照)が選択されると、既述したように、図11に示すダイアログが開き、その中の所望のデータ解析メニューを指定して閉じることで、選択されている被検者のデータリスト145上で現在カーソルが置かれているデータがローディングされ、指定されているデータ解析手法によって、その診断データ,例えば図17〜図22のいずれかに示す診断データが表示される(S−11)。
診断データが表示されると、メニューバー802にあるメニュー項目あるいは画面の操作部806に表示されるデータ解析メニュー162−1項目の指定を受け付け、被検者選択(S−5)に戻って被検者リスト画面を表示するか、診断データ表示(S−11)に戻って現在表示中の信号データを別の解析手法によって表示し直すことが可能になる。操作部806に表示されるデータ解析メニュー162−1及びそのテキストボックス162も、そのメニューの中の名称(識別情報)を指定することで所望のデータ解析手法及びデータ解析パラメータを組で指定する手段となるもので、前記第5の発明の態様例の一つである。
(S−6)において、図8のデータ計測(Q)が選択されると、図16の計測モニタ(波形モニタ)画面が表示され、信号データをモニタリングし、計測条件の設定があればそれを受け付ける(S−13)。計測モニタは操作者からの入力がなければ所定時間ごとにS−13のステップに戻り、信号の取り込みと表示の更新を繰り返す。
図16のメニューバー部802のメニューのほかに操作部806に表示されるボタン155〜157等も操作が可能であり、このボタン操作により次のような分岐(S−14)が実行される。例えば、被検者リスト表示が指定されると被検者選択(S−5)に戻る。計測開始ボタン157の「開始」が押されると実際にデータを取り込む(S−15)。データ取り込みが終了すると自動的にアベレージング処理を実行して1心拍分の信号データを生成し(S−16)、それをファイルに保存してから(S−17)、予め図9のダイアログボックスで指定されたデータ解析方法(計測後表示)で診断データとして表示を行う(S−11)。
図12のステップS−5における被検者選択のフローを図13に示す。被検者選択のフローは、選択すべき被検者の情報が既にシステムに登録されているか否かによって分岐する。
図13のフローにおいて、もし選択すべき被検者の情報が未登録の場合には(S−5−1)、マウス8−3を使って、図15の被検者リスト145上のカーソルを一番最後の行に移動する(S−5−2)。一番最後の行は常に新しい被検者情報を追加して登録するために空行として用意されている。続いて該行に対して被検者情報の各欄をキーボード8−2を用いて入力する(S−5−3)。
被検者情報の登録のための被検者リスト145の最後の空行にデータを入力するとその行の下に、次の登録のために新しく空行が自動的に追加される。もし連続して新しい被検者の情報を登録する場合にはカーソルを1行下にずらして次々に入力すれば良い。
もしすべての入力すべき被検者情報の入力が完了していなければ(S−5−4)、S−5−2に戻り、完了していれば被検者情報を選択する。
選択すべき被検者情報が既に登録されている場合(S−5−1)、および該被検者情報の入力が完了した場合(S−5−4)には、選択すべき被検者情報をマウス8−3のボタンをクリックすることによって、被検者リストの中から指定する(S−5−5)。
この実施例では、被検者の名前や住所等の文字入力を除いて、操作画面にプルダウンメニューを表示するなどして入力する複数の入力データまたは操作指示を表示し、その選択対象の中からマウスで特定の前記対象を指示することで入力操作を行うようにしている。これにより、マウス操作でほとんどの操作が可能となるのでキーボードに不慣れな作業者に快適な操作環境を提供できるとともに、入力/操作の時間短縮を図ることができる。
前記プルダウンメニューの複数の選択対象は、この装置あるいはその入力/操作状態で入力/操作可能な選択対象が事前に設定され表示されるので、誤入力/誤操作を軽減できる。また、この実施例では、入力エリアにカーソルを合わせてキーボードを介して入力することもできるので、操作者の入力の自由度を確保している。また、この実施例では、キーボードでの文字入力を想定しているが、入力時にキーボードのダイヤログを表示してこれをマウスで操作して入力してもよい。さらに手書入力ダイヤログを表示して、マウス操作で手書入力するようにしてもよい。更には、前記デイスプレイ部にタッチパネルを備えて入力/操作を画面に指先または入力ペンを介して操作してもよい。これらにより入力/操作の操作性を格段に向上することができる。
図12のステップ13ではディスプレイ装置8−1上に図16の計測モニタ画面が表示される。
波形のモニタについては、モニタボタン155の「ON」ボタンが押されると、たとえば0.5secから2secの間で、指定された時間毎に信号の取り込みと波形の更新が繰り返され、被検者の心磁信号がモニタされる。
モニタには、通常、グリッドマップと呼ばれるSQUIDセンサ位置(チャンネル)に対応させて時間波形が表示される。これはSQUIDセンサに外部から強い磁場が掛かるとSQUIDデバイスのループ内に磁場をトラップしたり、FLL回路による磁場ロックが外れてしまうことがあるが、グリッドマップによってそれらのセンサの異常を操作者が容易に識別できる。
また、グリッドマップによれば、計測の前に外部磁場ノイズの大きさを調べたり、被検者とデュワ(つまりセンサ)との位置関係が適切であることを確認するために有効である。被検者の心臓からの磁気信号をモニタすると左上から右下に掛けての対角線上に位置するセンサの時間波形の振幅が小さくなり、またそれより下に位置するセンサの時間波形は極性が逆となり、一番振幅の大きなR波のピークが下向きになる。これは対角線に沿った方向に電流ダイポールが存在していることを示唆しており、信号の弱いセンサの位置を確認することによって被検者とデュワとの位置関係を知ることができる。
また、モニタボタン155の「OFF」ボタンが押されると、波形の更新が停止する。
FLLボタン156については、「Lock」ボタンまたは「Unlock」ボタンをクリックすれば、64個のSQUIDセンサに対して磁場ロックを行ったり、そのロックを解除したりすることができる。その場合、一方のボタンが押されれば、他方が押されるまでそのままの状態が保たれる。これにより、選択されていない誤動作の状態を回避している。
データ計測のパラメータには、サンプリングの時間(計測時間)及び間隔、AFA回路における入力ゲイン、出力ゲイン、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、帯域除去フィルタの設定値がある。これらのパラメータは、図9に示すようにデータ計測の対象や目的によって決めることができるため、名前(識別情報)をつけてデータ計測メニューに登録されている。したがって、その登録名称(識別情報)をマウスでクリックして選択することによって、心磁計測システムに計測のためのパラメーが自ずと設定することができる。たとえば、図15の例では「成人・正面」、「成人・背面」、「小児・正面」、「小児・背面」、「胎児」などのデータ計測メニューが登録されており、「成人・正面」が選択されている。
図12のステップS−15でデータ計測が実行されると、図14に示すフローチャートにしたがって計測データのアベレージング処理が実行される。
この図14は、前記第1,2の発明に係る自動アベレージング及び異常データ登録を実行するフローチャートである。
図14において、最初に初期化処理S−50として、加算バッファSおよび異常バッファAを零クリアする。ステップS−51から時間変数tによって計測データの全サンプリング点を時刻0から走査するための繰返し処理(ループ)が始まる。
時刻tの時に基準チャンネルの信号値がR波(信号波形)を検出(波形認識)するためのしきい値を超えたか否かを判定し(S−51;波形認識手段)、「NO」ならばステップS−57に進んで次の時間の処理を行なう。「YES」ならばR波の時刻TRを決定し、ステップS−53によりその前後の指定された時間の信号波形と、参照波形との相違度Δを求める(S−53;波形評価手段、なお参照波形の設定については後述する)。
この相違度Δとは加算バッファに足し込もうとしている1心拍分の信号波形Xと予め登録されている参照波形Yとの差を表す量である。相違度Δの具体的な定義としては全チャンネルにおける信号波形Xと参照波形Yの対応した時間における波形の2乗誤差の総和がある。1心拍分の信号データのサンプリング点数をT、先頭からのサンプリング点数をn、チャンネル番号をmとすれば、この相違度Δは次のように表される。
また、信号波形Xと参照波形Yとの相違となる不整脈や外部磁場雑音などの影響はすべてのチャンネルにおいて共通に見られるため、基準チャンネルのみの2乗誤差を各チャンネル共通の相違度Δと定義してもよい。さらにP波、QRS波、T波、U波などの発生時刻の差や信号強度の差などから演算処理を行なって相違度Δとしてもよい。
相違度Δは、次のステップS−54で予め装置(プログラム)に組み込まれている許容値εと比較され、相違度Δの方が大きければ、1心拍分の信号データXを異常波バッファAに登録し(S−55;波形登録手段)、小さければ参照波形の類似波形として加算バッファに足し込み、加算回数を1だけインクメントする(S−56)。加算回数をインクリメントした結果、加算回数が指定された回数Naddに達していれば時間変数のループを抜け出してステップS−59に移る。加算回数Naddに達していなければステップS−57に進み、同様の処理を繰り返す。時間変数tによるループから抜け出した後は、加算バッファの信号値Naddで割って平均値を求め(S−59)、アベレージングの処理を終了する。すなわち、S−56〜S59が計算機8におけるアベレージング処理演算手段となる。
参照波形Yの設定方法の一例として、S−50の初期処理の中で計測データの中で最初の1心拍に相当する部分を参照波形Yとして参照波形登録手段に登録する方法がある(なお、最初の1心拍に限らず、任意の何番目かの心拍を選択してもよい)。この方法によれば、参照波形として正規の心拍データを登録するとは限らず、不整脈や外部磁場雑音などを含む可能性があるが、これらの波形はそれ以降の心拍データとは一致しないために、所定回数だけ加算が実行されず、アベレージング処理が異常終了するが、オペレータは計測終了後、直ちにこの異常を検知して計測を再実行することができる。また、これに代わり、参照波形を選び直して、図14のフローを再び実行してアベレージング処理してもよい。
もう一つの例として、図8の「データ計測メニュー(Q)」の中に「参照波形の登録」という項目を設け(図示せず)、図15の計測モニタ157でモニタ「OFF」ボタンが押された状態で「参照波形の登録」項目が選択されると、画面で凍結されている波形のうえで1心拍分の波形を取り出し、画面上で参照波形として適しているか否が確認したうえで登録する方法がある。確認の方法としては確認ダイアログを表示したり、確認ダイアログを表示したり、確認ボタンを画面上に設置する方法がある。
図12におけるステップS−11の診断データの表示方法を図17〜図23により説明する。
図17は磁場データの時間波形をセンサ位置に対応させて表示するグリッドマップを「グリッドマップ」というデータ解析名称で登録してあり、それが診断データとして選択された場合の表示である。データ解析部805の最下部に設置されているスクロールバー161′は、スクロールボックス161の長さによって全データ長のうちグリッドマップで表示されている部分の長さを表し、スクロールボックス161におけるスクロールバー161′の位置によってグリッドマップで表示している時間波形の先頭時刻を表している。
図18は「単一波形表示」というデータ解析手法であり、図17のグリッドマップ表示において、操作部806上部のチャンネル選択ボタン154により2列目のチャンネルをマウスで選択された結果、2列目の時間波形を表示している。
図19はR波及びその近傍の等磁線図を「QRS等磁線図」というデータ解析名称で登録してあり、それが診断データとして選択された場合の表示である。心肥大患者のQRS等磁線図は健常者と比べて肥大部分の電気的な興奮が長いとの報告があり、心肥大の診断に役立つ可能性がある。
本データ解析方法を登録するためには、図11の診断データ設定ダイアログの等磁線図ラジオボタン101−2をマウスでクリックし、表示時刻テキストボックス102−2において「100、102、…、130」のように指定すればよい。R波の位置がデータの先頭から何ミリ秒のところにあるかが分からない場合には「TR−16、TR−14、TR−12、…、TR+10、TR+12、TR+14、TR+16」のように設定してもよい。データ解析部805の最下部に設置されているスクロールバーは、スクロールボックスの長さによって全データ長のうち参照チャンネルで表示されている部分の長さを表し、スクロールボックスの位置によってグリッドマップで表示している時間波形の先頭時刻を表している。181は等磁線時刻を表すラインカーソル、182は等磁線図である。
図20は伝播時間図を「伝播時間図」というデータ解析名称で登録してあり、それが診断データとして選択された場合の表示である。本データ解析方法を登録するためには図11の診断データ設定ダイアログの伝播時間図ラジオボタン101−4をマウスでクリックし、基準時刻テキストボックス102−4において「150」と指定すればよい。191は伝播時間図の基準時刻を表すラインカーソルである。
図21はQRS波およびT波における時間積分値とその差をマッピングした等磁線図が「時間積分図」というデータ解析名称で登録してあり、それが診断データとして選択された場合の表示である。本データ解析方法を登録するためには図11の診断データ設定ダイアログの等磁線図ラジオボタン101−3をマウスでクリックし、表示時刻テキストボックス102−3において「100、140、180、240」と指定すればよい。QRS波およびT波の位置がデータの先頭から何ミリ秒のところにあるかが分からない場合には「TQ、TS、TT、TT+60」と設定してもよい。331,333は時間積分区間を表す領域である。
図22は参照波形として登録した波形Yとの相違度Δが大きいために異常波バッファに登録された信号データをグリッドマップで表示した例である。図6で示すような正規の心拍データを参照波形として登録すると、不整脈や外部磁場雑音などの不規則な信号は参照波形との相違度評価を経て、データ解析メニューに「異常波形」という名称で登録され、さらに波形の異常が複数ある場合には「異常波形1」「異常波形2」、…のように「異常波形」の後ろに識別番号を自動的に付ける。データ解析メニューからこれらの項目が指定されるとその波形がグリッドマップで表示される。
信号データのアベレージング処理が正常に行われなかった場合、「QRS等磁線図」を選択すると再構成することができないため、図23のエラーダイアログが表示される。ここでOKボタンを押すと図19の画面に遷移するが等磁線図は表示されず、参照チャンネルの時間波形領域に指定された本数だけラインカーソルが表示される。このラインカーソルをマウスで移動し、エンターキーによってその位置を確定することによって異常波形における「QRS等磁線図」を再構成する。
1…磁気シールドルーム、2…被検者、3…ベッド、4…デユワ、8…計算機(波形認識手段、参照波形登録手段、波形評価手段、演算手段、異常波形登録手段)、8−1…ディスプレイ部、82,82−1…計測条件の識別情報表示部(ダイヤログ)。