JP2004215581A - 新規な肥満細胞株およびその使用方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アレルギー疾患における肥満細胞の役割を解析するツールを得るために、腫瘍化していない、正常細胞由来の新規な肥満細胞株を提供する。
【解決手段】本発明により、高親和性免役グロブリンE受容体をその細胞表面に発現し、c−KITの構成的な自己リン酸化を認めないにもかかわらず、特定の増殖因子を必要とせずに簡便に培養することが可能であることを特徴とする、FERMP−19183として寄託されたマウス肥満細胞株NCL−2が与えられた。本発明の細胞株は、正常細胞由来であり、アレルギー疾患の治療薬又は診断薬をスクリーニングするためのツール等として有用である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高親和性免役グロブリンE受容体をその細胞表面に発現し、c−KITの構成的な自己リン酸化を認めないにもかかわらず、特定の増殖因子を必要とせずに簡便に培養することが可能であることを特徴とする、マウス肥満細胞株NCL−2およびその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
肥満細胞は高親和性免疫グロブリンE (IgE)受容体を有し、I型アレルギー反応におけるエフェクター細胞としてその中心的役割を担っている事は周知の事実である。しかしながら近年、肥満細胞の各種サイトカインの産生能が明らかになり、好酸球の集積やB細胞に対するIgE抗体産生の指令にも関与しうる事が証明され、アレルギー性炎症反応の形成に重要な役割を担っている事が判明してきている。一方、肥満細胞の増殖因子としては、サイトカンの一種であるインターロイキン−3 (IL−3), c−KITのリガンドである幹細胞刺激因子 (stem cell factor : SCF) 等が知られている。特にSCFは単独でヒト造血幹細胞であるCD (cluster of differentiation) 34細胞から肥満細胞を誘導しうる唯一の増殖因子であり、かつ組織での肥満細胞の分化、維持増殖に必須の因子として極めて重要である。
【0003】
一方、現在まで腫瘍化した肥満細胞より多くの細胞株が確立されているが、特定の増殖因子の添加を必要とせず増殖し、かつ、その代表的機能であるIgE受容体を介してのヒスタミン遊離能を有するのは、ラット好塩基球性白血病細胞であるRBL−2H3細胞株のみである。しかしながらRBL−2H3細胞株は他の大部分の肥満細胞株がそうであるように、突然変異によりc−KITの自己リン酸化が生じ、常時活性化状態にあることにより自律的増殖能を獲得している。したがって、これを使ってSCF−KIT系を介する肥満細胞の活性化と細胞内情報伝達系の詳細な解析を行うことは困難であった。なおRBL−2H3細胞についての報告の一例として、ヒトIgE受容体をRBL−2H3細胞に導入したことがGilfillanらによって報告されている(非特許文献1)。また、HiraらによりNC/NgaマウスのBMMCから分離された細胞株の報告もあるが、この細胞は正常なマスト細胞の機能を殆ど有していない(非特許文献2)。
【0004】
また、その様な解析において、継代培養した細胞ではなく初代培養の肥満細胞を用いることが考えられるが、初代培養の肥満細胞は寿命が短く、その維持にはやはり上記[0002]で述べたサイトカインを必要とするという欠点があった。
【0005】
【非特許文献1】
エー・エム・ギルフィランら(A.M. Gilfillan et al), ザ・ジャーナル・オブ・イムイノロジー(The Journal of Immunology), 1992年,149巻,p2445−2451
【非特許文献2】
ヒラら(Hira et al.), インターナショナル・アチーブス・オブ・アレルギー・アンド・イムノロジー(International Achieves of Allergy and Immunology), 2001年,127巻,p67−70
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そのために、正常な肥満細胞の機能を維持し、かつc−KITの自己リン酸化を伴わない細胞株を確立することが求められていた。その様な特性を有する細胞株を提供することが本発明の課題である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく本発明者らは鋭意検討を行った結果、新規なマウス肥満細胞株であるNCL−2を確立した。なお、本細胞株はFERM P−19183として寄託されている。NCL−2細胞株はc−KITの自己リン酸化を伴わない、不死化した肥満細胞株であり、アレルギー疾患の治療薬や診断薬を開発するためのツール等として有用である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の細胞株であるNCL−2細胞株は、近年確立されたアトピー性皮膚炎モデルマウスであるNCマウスの骨髄より分離純化された。その特筆すべき特徴としては(1)増殖に特定の増殖因子を要しないこと、(2)高親和性IgE受容体を発現し、抗原刺激により各種生理活性物質を遊離すること、(3)腫瘍細胞由来ではないためにc−KITの自己リン酸化を認めず、そのリガンドであるSCF(stem cell factor)により増殖が誘導されること等が上げられる。その様な特性のために、NCL−2細胞株はKIT下流のシグナル伝達の解析に適する。またNCL−2細胞株は不死化しているために、培養にあたって特定の増殖因子を必要としないために、培養が簡便であるという利点を有する。
【0009】
本発明のNCL−2細胞株は高親和性の免役グロブリンE(IgE)受容体を発現しており、そのために抗原が作用することによってヒスタミン等の生理活性物質を放出するという、肥満細胞としての性質を有している。一般的に、肥満細胞の細胞表面には高親和性IgE受容体が発現しており、IgE抗体と前記IgE受容体がFc部分で結合することによって細胞が感作される。感作された細胞の受容体に結合したIgE抗体分子のFab部分に抗原が結合し、IgE抗体分子間に架橋が形成され、それが引き金となって各種の生理活性物質が放出され、種々のアレルギー反応が引き起こされる。また、IgE抗体を介さない経路で、NCL−2細胞株を刺激することもまた可能である。すなわち、抗原以外の種々の生理的刺激によっても、NCL−2細胞株は生理活性物質を放出する。
【0010】
NCL−2細胞株を刺激して反応を引き起こす物質の例としては、下記の実施例で使用しているDNP−HSA(dinitrophenol−human serum albumin)に代表される抗原物質、抗IgE抗体、抗IgE受容体抗体、C3a,C5aなどの補体成分、サブスタンスPやCGRPなどの神経ペプチド、イオノマイシン、ATPなどを挙げることができる。しかし、肥満細胞を活性化する物質はそれらに限定されるものではなく、NCL−2細胞株は種々の生理的刺激に対して応答する能力を有する。
【0011】
また、NCL−2細胞株を抗原で刺激することにより放出されるケミカルメディエーターの例としては、ヒスタミン、ベータヘキソサミニダナーゼやトリプターゼなどの細胞顆粒内蛋白質、IL−6、TNFαやロイコトリエンBなどの刺激応答により生合成される生理活性物質を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
【0012】
上記の肥満細胞としての性質を有しているために、NCL−2細胞株は、アレルギー疾患の治療薬をスクリーニングするためのツールとして、更には抗アレルギー薬の作用点を調べるためのツールとして有用である。RBL−2H3細胞株等の従来使用されていた細胞株はいずれも腫瘍性の肥満細胞であるために、薬剤刺激に対して正常肥満細胞とは異なった反応を示す可能性があったが、本発明のNCL−2細胞株にはそのような懸念がなく、NCL−2細胞株を用いることにより正常細胞により近い知見を得ることができる。
【0013】
また、in vivoの解析としては、本発明のNCL−2細胞株を動物に移植して、生体内における肥満細胞の解析を行うことができる。より具体的には、例えば、NCL−2細胞株を標識した後にマウスの皮下に注入し、in vivoにおける薬物効果などを調べることができる。このような実験においては拒絶反応を避けるため、宿主動物として免疫力を持たないヌードマウスを用いることが一般的である。RBL−2H3など従来用いられている細胞株をヌードマウス移植すると、その様な細胞株は癌細胞由来であるために腫瘍が増殖して宿主であるマウスが死亡してしまうという問題がある。しかし、正常細胞由来のNCL−2細胞株には、そのような不利益がない。
【0014】
また本発明のNCL−2細胞株は不死化しているが、該細胞における不死化の機序を解析することにより、肥満細胞の新たな増殖メカニズムが発見される可能性がある。そのような知見は、肥満細胞の増殖を制御するための新たな手段に結びつく可能性があり、肥満細胞が関与するアレルギー疾患やケロイドなどの疾患を治療するための新たな方法を開発するのに資すると思われる。
【0015】
また、本発明のNCL−2細胞株にヒトIgE受容体遺伝子を導入して発現させることにより、ヒトIgE抗体に対する結合能を該細胞株に付与し、ヒトIgEの機能の研究に資することができる。上記のRBL−2H3細胞株は癌化しているために情報伝達系などにおいて正常細胞と差異がある可能性があり、正常細胞の機能の研究には適さなかったが、ヒトIgE を発現させたNCL−2細胞株はそのような不利益がなく、ヒト細胞における反応を解析するための非常に好適なモデルとなりうる。
【0016】
すなわち、このように改変されたNCL−2細胞株は、ヒトIgEに対する抗原や各種の生理的刺激に反応してヒスタミン等を遊離するために、ヒトにおけるアレルギー反応を解析するためのツールとして特に適している。より具体的には、幹細胞刺激因子(stem cell factor)や種々のサイトカインにおけるシグナル伝達の解析や、抗原・神経ペプチドなどによって誘導される肥満細胞の脱顆粒機序の解析に有用であると思われる。本発明者らはラット肥満細胞においてヒト由来のIgE受容体遺伝子を導入することに成功しており(日本皮膚科学会雑誌109(3):475(抄録),1999;アレルギー48(2.3),351(抄録)1999)、同様の技術を用いてNCL−2細胞株を改変することが可能であると考えられる。IgE受容体遺伝子を導入して形質転換した細胞を得ることは本技術分野における通常の手法によって可能であり、その様な手段として、例えばエレクトロポレーション法を挙げることができる。
【0017】
さらに、NCL−2細胞は上記[0013]で述べたヌードマウス以外にNCマウスへの移植が可能であり、ヒトIgE受容体遺伝子を導入したNCL−2細胞をNCマウスへ移植することによりアトピー性皮膚炎の病態生理に近似したvivoの実験動物系において、ヒトでのI型アレルギー反応をさらに精緻に解析できる可能性を有する。具体的には、新たな抗アレルギー薬の開発やアレルギー疾患患者ごとの最適な抗アレルギー薬のスクリーニング等に活用しうる可能性を有する。
【0018】
上記において述べたように、本発明の細胞株であるNCL−2は、アレルギー疾患において中心的役割を果す肥満細胞の増殖分化および機能の詳細な解析や、腫瘍性疾患である肥満細胞腫の病態解明、さらにはこれらの疾患に対する新たな治療薬開発に寄与する可能性を有する。
以下の実施例において本発明の好適な態様を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0019】
【実施例】
実験動物としては、6週齢の雄のNC/Kuj マウス(金沢大学医学部より寄贈)を用いた。
【0020】
(細胞)
上記マウスの骨髄を採取し10%牛胎児血清加αMEM培地 (50 mM 2−メルカプトエタノール、2 mM グルタミン、100 IU/ml ペニシリン G, 100 mg /ml ストレプトマイシン, 5 ng/ml インターロイキン−3 (IL−3), および 2 ng/ml インターロイキン−4 (IL−4)含有)に10cell/mlとなるよう播種した。1週間に1度半量の培地を新しく交換し、4週間後には99%以上の細胞がアルシャンブルー陽性の肥満細胞で占められるようになった(マウス骨髄由来培養肥満細胞(BMMC))。さらに、このBMMCをIL−3, IL−4の存在下で50倍希釈による継代培養を約100回行った後、IL−3とIL−4を添加しない培地で自律的に増殖する細胞群が生じた。この細胞群をさらに100倍希釈による継代培養を80回行った後、限界希釈を行ってクローンを単離した。
【0021】
(増殖曲線)
3×10 cell/mlと成るよう希釈した細胞浮遊培地を含むシャーレを14枚作成し24時間ごとに2枚づつ細胞数を測定した。
【0022】
(ヒスタミン、LTBの遊離)
DNP−HSA特異的 IgEにより受動感作した細胞を種々の濃度のDNP−HSA、サブスタンスP、イオノマイシン、ATPで37℃、20min間刺激し、遊離したヒスタミンとロイコトリエンB (LTB)の量を測定した。
【0023】
(ヒスタミンの測定)
試料を遠心分離により細胞と上清に分離後、過塩素酸で処理してヒスタミンを抽出し、高速液体クロマトグラフィーにて測定した。ヒスタミン遊離率は全ヒスタミン量に対する遊離ヒスタミン量をパーセンテージで表した。
【0024】
(LTBの測定)
LTBをELISAキット(Amersham International, Buckinghamshire, U.K.)にて測定した。
【0025】
(ウェスタンブロットハイブリダイゼーション)
3によりJak2のチロシンリン酸化が惹起されるか否かを検討するため、細胞を100ng/mlのIL−3で37℃、5min間刺激後、緩衝液中で速やかに破砕遠沈した。さらに蛋白成分を加熱(95℃、5min)処理後遠沈し、ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動を行った後PVDF膜に転写した。これを、一次抗体として抗リン酸化Jak2ウサギIgG抗体で処理し洗浄後、二次抗体としてHRP結合抗ウサギIgG抗体で処理し洗浄した。発色液と反応させJak2のチロシンリン酸化の程度を確認した。同様の方法で、SCFによりc−KITのチロシンリン酸化が惹起されるか否かを検討した。
【0026】
(フローサイトメトリー)
細胞膜上のFcεRI(高親和性IgE受容体)の発現を同定するため、まずマウスIgEをFITC(fluorescein isothiocyanate)で標識した。作成したIgE−FITCを10μg/ml含有する反応液中でNCL−2細胞とRBL−2H3細胞を各々37℃で1 時間培養した。細胞を5回洗浄した後FACSによる解析を行った。
【0027】
(移植)
NCL−2細胞とP815細胞を各々10個ずつBALB/c ヌードマウスの皮下に注入し、生じた腫瘍の大きさを測定した。以下に、実験の結果を示す。
【0028】
(染色性、ヒスタミン含量)
NCL−2細胞はアルシャンブルー染色陽性、サフラニン染色陰性で、細胞当たり0.7pgのヒスタミンを含有していた。
【0029】
(増殖曲線と倍加時間)
NCL−2細胞の増殖曲線を図1に示す。これより算出した倍加時間は17.8 時間であった。
【0030】
(ヒスタミン遊離)
DNP−HSA(1から100ng/ml)の濃度に依存したヒスタミンの遊離が認められた(図2)。同様にイオノマイシン(0.31から5.0 μM)の濃度に依存したヒスタミンの遊離が認められた(図4)。図5に示すがごとく、ATPの刺激に対しては、1mMのATPをピークとする釣り鐘状のヒスタミンの遊離が認められた。しかし、最高濃度のサブスタンスP(100μM)による刺激でもヒスタミンの遊離は認められなかった。
【0031】
(LTB遊離)
DNP−HSA(1から100ng/ml)の濃度依存性にLTBの遊離が認められた(図3)。
【0032】
(Jak2のチロシンリン酸化)
NCL−2細胞においてはJak2の自己リン酸化は認められなかった。また、IL−3による刺激でJak2の著明なリン酸化が生じた(図6)。さらに、IL−3で刺激すると細胞の増殖が加速される事から、IL−3に対する反応性を保持している事が示唆された.
【0033】
(c−KITのチロシンリン酸化)
NCL−2細胞においてはc−KITの自己リン酸化は認められなかった。そのリガンドであるSCFの刺激で、著明なリン酸化が認められた(図7)。さらに、SCFで刺激すると細胞の増殖が加速される事から、NCL−2細胞はSCFに対する反応性を保持している事が示唆された。
【0034】
(FcεRIの発現)
FACSによる解析でNCL−2細胞膜上にFcεRIが発現している事が確認された(図8)。
【0035】
(移植細胞の増殖)
NCL−2細胞はBALB/c ヌードマウスの皮下で増殖し腫瘤を形成した。しかしその増殖は、比較対照としたP815細胞の増殖に比較して極めて緩慢であった(図9)。
【0036】
NCマウスは微生物学的統御のなされた環境下では皮膚病変を発症しないものの、自然環境下で飼育すると6−7週齢以降にヒトのアトピー性皮膚炎に類似した皮膚疾患を発症し、著明な血中IgEの増加が認められる。遺伝的素因を持ちながら環境因子によって皮膚炎を発症することから、ヒトのアトピー性皮膚炎のモデルマウスとして有用性が認められている。また、NCマウスの皮疹部では著明なCD4 Tリンパ球、マクロファージ、好酸球の浸潤に加え、肥満細胞の著しい増加が認められる。
【0037】
一方、肥満細胞には種特異性や臓器特異性があることが知られており、マウス、ラットなどのゲッ歯類においては、主として粘膜に存在する粘膜型肥満細胞(MMC)と腹腔、皮膚に存在する結合組織型肥満細胞(CTMC)に大別される。骨髄由来培養肥満細胞(BMMC)はMMCの特性を有する細胞として知られており、実験結果より、NCL−2はNCマウス由来のBMMCの特性をほぼ維持していることが示され、MMCの特性を有する細胞株であると考えられた。
【0038】
つまり、MMCの特性として(1)アルシャンブルー陽性、サフラニン陰性であり(2)細胞あたりのヒスタミン含有量がCTMCに比較して少なく(3)サブスタンスPに対する反応性を持たないことが確認された。さらにMMCとCTMCとの共通の機能的特性として(5)ヒスタミンを含有し、抗原刺激により高親和性IgE受容体を介して脱顆粒が誘導され、これを遊離する(6)イオノマイシンに代表される非特異的刺激剤でも脱顆粒が誘導されヒスタミンを遊離する(7)ATP刺激により釣り鐘状の遊離曲線が認められることが確認された。
【0039】
肥満細胞の増殖因子としてはIL−3とSCFが一般に広く知られている。このうち、NCL−2ではIL−3 受容体の活性化において最初にリン酸化されるキナーゼであるJak2の自己リン酸化は認めず、IL−3の刺激によりJak2の著明なリン酸化が確認できた。また、SCFの受容体であるc−KITの自己リン酸化も認めず、SCF刺激にて著明なKITのリン酸化が生じた。以上よりNCL−2における自己増殖能獲得における責任変異因子としては受容体より下流の細胞内情報伝達系に存在することが示唆された。
【0040】
現在までに報告されている肥満細胞の細胞株は、ほぼそのすべてがc−KITの自己リン酸化またはIL−3 受容体の自動的活性化が認められ、より下流の伝達系の詳細な解析を行うために用いることは困難であった。さらに、従来の細胞株では非特異的刺激剤であるイオノマイシン等により各種サイトカインを産生するものを散見するが、高親和性IgE受容体を介して脱顆粒が誘導され、ヒスタミンを遊離する能力を維持している細胞株はRBL−2H3細胞にほぼ限定される。
【0041】
NCL−2はその優れた自立的増殖能による取り扱いの簡便さに加えて、正常肥満細胞の持つ特性を比較的よく維持し、かつKITのリン酸化とそれに引き続く細胞内情報伝達系の活性化を詳細に解析できる可能性を有する細胞株である。それゆえに、NCL−2は肥満細胞がその病態に関与するアレルギー疾患および腫瘍性疾患の病因解析と治療法解析のツールとして広く用いることが可能であるとして、その有用性が期待される。
【0042】
【発明の効果】
本発明により、高親和性免役グロブリンE受容体をその細胞表面に発現し、c−KITの構成的な自己リン酸化を認めないにも関わらず、不死化しているために特定の増殖因子を必要とせずに簡便に培養することが可能であることを特徴とする、マウス肥満細胞株NCL−2が与えられた。本発明の細胞株は、正常細胞由来であり、アレルギー疾患の治療薬又は診断薬をスクリーニングするためのツール等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】NCL−2細胞株の生育曲線を示すグラフである。
【図2】NCL−2細胞株をDNP−HSAで刺激した際のヒスタミンの遊離を示すグラフである。
【図3】NCL−2細胞株をDNP−HSAで刺激した際のロイコトリエンBの遊離を示すグラフである。
【図4】NCL−2細胞株をイオノマイシンで刺激した際のヒスタミンの遊離を示すグラフである。
【図5】NCL−2細胞株をATPで刺激した際のヒスタミンの遊離を示すグラフである。
【図6】NCL−2細胞株におけるJak2のリン酸化を示すブロッティングの写真である。
【図7】NCL−2細胞株におけるc−kitのリン酸化を示すブロッティングの写真である。
【図8】フローサイトメトリーによってNCL−2の細胞膜上でのFcεRI受容体の発現を示す図である。
【図9】NCL−2細胞とP815細胞をヌードマウスに移植した際に生じた腫瘍の大きさの変化を示すグラフである。

Claims (6)

  1. NCマウスの骨髄より分離された肥満細胞株NCL−2であって、FERM P−19183として寄託された、新規な肥満細胞株。
  2. 高親和性免疫グロブリンE受容体を発現し、そのために前記受容体に免疫グロブリンE抗体が結合することを特徴とする、請求項1記載の肥満細胞株。
  3. 前記高親和性免疫グロブリンE受容体の刺激物質を作用させることにより、生理活性物質を遊離することを特徴とする、請求項1記載の肥満細胞株。
  4. 前記生理活性物質が、ヒスタミン、ベータヘキソサミニダナーゼ、トリプターゼ、IL−6、TNFαおよびロイコトリエンBから成る群より選択されたことを特徴とする、請求項3記載の肥満細胞株。
  5. c−KITの自己リン酸化を起こさない非腫瘍細胞であることを特徴とする、請求項1記載の肥満細胞株。
  6. アレルギー疾患の治療薬又は診断薬をスクリーニングするために使用することを特徴とする、請求項1記載の肥満細胞株の使用方法。
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