JPWO2008059900A1 - アレルギー疾患関連分子のスクリーニング方法及びこれに用いられる細胞株 - Google Patents
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Abstract
同一の脾臓組織に由来する好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であって、アレルギー性サイトカインに対して異なる感受性を有する複数の細胞株に対する反応性に基づいて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングする。また、R細胞(受託番号FERM BP−10918)、N62.5細胞(受託番号FERM BP−10919)及びRCCM細胞(受託番号FERM BP−10920)からなる群より選択された少なくとも1つの好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株を用いて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングする。
Description
本発明は、アレルギー疾患関連分子をスクリーニングする方法及びこれに用いられる細胞株に関する。
アトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギーなどを発症する、いわゆるアレルギー疾患では、体内に入ったアレルゲンが、マスト細胞や好塩基球上のIgEに結合して、これらの細胞から分泌されるヒスタミンなどにより、局所的炎症が誘導される。IgE産生のためには、免疫グロブリンのクラススイッチに重要なIL−4やIL−13などのTh2サイトカインを産生するT細胞機能分化が重要であるために、アレルギー体質はTh2優位の状態と考えられている。また、マスト細胞や好塩基球などのエフェクター細胞の増殖や分化にもIL−3、IL−4、IL−6、IL−13などのTh2サイトカインが重要な役割を果たしている。
このようにサイトカインが種々の反応に関与していることから、これらのサイトカインに対する感受性が異なれば、その結果生じる反応性にも大きな違いが生じる。またアレルギー性炎症を起こしている局所は、エフェクター細胞のサイトカインに対する感受性が上昇していると考えられている。
このようにサイトカインが種々の反応に関与していることから、これらのサイトカインに対する感受性が異なれば、その結果生じる反応性にも大きな違いが生じる。またアレルギー性炎症を起こしている局所は、エフェクター細胞のサイトカインに対する感受性が上昇していると考えられている。
一方、特定の細胞株を用いてアレルギーに関連した現象を分子レベルで解明しようとする試みが多くなされている。このような細胞株としては、肥満細胞の機能を維持し且つc−KITの自己リン酸化を伴わない新規な肥満細胞株が知られている(特開2004−215581号公報)。この細胞株NCL−2細胞株は、腫瘍性の肥満細胞株ではないので、薬剤刺激に対して正常肥満細胞株に近い反応を示す可能性が高いと示唆されている。従って、この細胞株を用いることにより肥満細胞の増殖分化や機能の詳細な解析ができると記載されている。
しかしながら、上記細胞株は、正常肥満細胞に近い細胞株として単独で見出された細胞株であるので、サイトカインに対する感受性の程度の位置づけが不明である。このため、慢性化状態のアレルギーに関与する物質を効率よくスクリーニングするには向かない場合がある。
従って、本発明の目的は、アレルギー疾患に関連した物質を効率よくスクリーニングすることができるスクリーニング方法及びこれに用いられる細胞株を提供することである。
従って、本発明の目的は、アレルギー疾患に関連した物質を効率よくスクリーニングすることができるスクリーニング方法及びこれに用いられる細胞株を提供することである。
本発明のスクリーニング方法は、同一の脾臓組織に由来する好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であって、アレルギー性サイトカインに対して異なる感受性を有する複数の細胞株に対する反応性に基づいて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングすることを含むアレルギー疾患関連分子のスクリーニング方法である。
前記細胞株は、R細胞(受託番号FERM BP−10918)、N62.5細胞(受託番号FERM BP−10919)及びRCCM細胞(受託番号FERM BP−10920)からなる群より選択された少なくとも2つであることが好ましい。
前記細胞株は、R細胞(受託番号FERM BP−10918)、N62.5細胞(受託番号FERM BP−10919)及びRCCM細胞(受託番号FERM BP−10920)からなる群より選択された少なくとも2つであることが好ましい。
また、本発明の第二のスクリーニング方法では、特に上記R細胞、N62.5細胞及びRCCM細胞の特徴を利用すれば、これらの細胞株のうちの1つ以上を使用すればよく、即ち、本発明の第二のスクリーニング方法では、R細胞(受託番号FERM BP−10918)、N62.5細胞(受託番号FERM BP−10919)及びRCCM細胞(受託番号FERM BP−10920)からなる群より選択された少なくとも1つの好塩基球ないしマスト細胞様細胞株を用いて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングすることを含むアレルギー疾患関連分子のスクリーニング方法である。
また、本発明の上記スクリーニング方法では、前記細胞株と前記候補物質とを接触させる工程と、接触後の前記細胞株の反応に基づいて候補物質を選別する工程と、を含むものであってもよい。ここで前記選別工程は、スクリーニングに用いられた複数の細胞株間で反応が異なる候補物質を選別することを含んでもよい。
また本発明のスクリーニング方法は、競合用化合物の存在下で行われるものであってもよい。
また本発明のスクリーニング方法は、競合用化合物の存在下で行われるものであってもよい。
本発明の細胞セットは、R細胞(受託番号FERM BP−10918)、N62.5細胞(受託番号FERM BP−10919)及びRCCM細胞(受託番号FERM BP−10920)からなる群より選択された少なくとも2つで構成されたアレルギー疾患関連化合物をスクリーニングするために用いられる細胞セットである。
本発明は、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングするために、同一の脾臓組織に由来する好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であって、アレルギー性サイトカインに対して異なる感受性を有する複数の細胞株を用いるものである。このような複数の細胞株はもともと同一の組織に由来するものであるため、細胞株間の遺伝的特徴の違いは他の組織由来の細胞株と比較して少ない上に、このような少ない遺伝的特徴が、サイトカインに対する感受性の違いを生じていると考えられる。このため、これらの複数の細胞株に対して異なる反応性を示す候補物質は、アレルギー性サイトカインに対する感受性の違いに対応した細胞株の相違点を認識している可能性が高い。この結果、このような細胞株を用いることによって、アレルギー性サイトカインの感受性に関与し得る候補物質を効率よくスクリーニングできる。
本発明によれば、アレルギー疾患に関連した化合物を効率よくスクリーニングすることができるスクリーニング方法及びこれに用いられる細胞株を提供することができる。
本発明のスクリーニング方法は、同一の脾臓組織に由来する好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であって、アレルギー性サイトカインに対して異なる感受性を有する複数の細胞株に対する反応性に基づいて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングすることを含むアレルギー疾患関連分子のスクリーニング方法である。
本細胞株は、好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であるので、アレルギー疾患関連物資に対する感受性を有するものである。ここで「好塩基球様ないしマスト細胞様である」とは、光学又は電子顕微鏡観察による形態観察や、細胞表面抗原によって判断することができる。例えば、好塩基球様の形態としては、顆粒密度の低い嚢胞状構造やトルイジンブルー(TB)染色では染まらない点を挙げることができ、一方、マスト細胞様の形態としては、c−kit、FcεRIαが共に陽性という細胞表面分子の特徴を挙げることができる。
このような細胞株としては、具体的には、脾臓細胞を卵白アルブミン(OVA抗原)ペプチドで長期間にわたり培養中に出現してきた好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株、更には、DO11.10トランスジェニックマウスの脾臓細胞からOVA抗原を用いて誘導した好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株を挙げることができる。本好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株を得るため、OVA抗原ペプチドの323番目−339番目のアミノ酸残基を用いることができる。
本発明における上記細胞株としては、R細胞(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10918、2005年9月1日付で受託)、N62.5細胞(同特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10919、2006年11月16日付で受託)及びRCCM細胞(同特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10920、2006年11月16日付で受託)を挙げることができる。
これらの細胞は、上記OVA抗原存在下での長期培養中の培養脾臓細胞からT細胞を除去することで単離し、次いで、OVA特異的T細胞株の培養上清(R cell growth factor:RCGF)を様々な濃度で使用しながら、さらに長期継代することで得られた。このRCGFは、OVA特異的T細胞株を、抗T細胞受容体抗体を架橋することによって刺激して得られた培養上清である。
従ってこれらの細胞株は、サイトカインに対する細胞の持つ感受性を除いては、同一か極めて類似の性質を有する細胞である。このため、アレルギー性炎症局所で予想される異なったサイトカイン環境で、好塩基球やマスト細胞の増殖を制御する分子のスクリーニングに適していると考えられる。
従ってこれらの細胞株は、サイトカインに対する細胞の持つ感受性を除いては、同一か極めて類似の性質を有する細胞である。このため、アレルギー性炎症局所で予想される異なったサイトカイン環境で、好塩基球やマスト細胞の増殖を制御する分子のスクリーニングに適していると考えられる。
R細胞及びN62.5細胞の維持条件としては、OVA抗原ペプチド刺激T細胞との共培養を挙げることができる。
共培養に用いられるT細胞は、表面マーカーCD4+CD8−のヘルパーT細胞であればよい。このT細胞の起源としては、哺乳類、特に齧歯類を挙げることができ、好ましくはマウス、特に好ましくは、R細胞及びN62.5細胞と同一の遺伝的系統を有するマウスである。この共培養に用いられるT細胞は、上記条件のものであればいずれのものであってもよいが、R細胞及びN62.5細胞を確立するために使用した親細胞であり、DO11.10のTCRトランスジェニックマウスの脾臓細胞中のT細胞(以下、同系T細胞という)であることが特に好ましい。
共培養中でのOVA抗原ペプチドの濃度は、100nM〜1000nMとすることができ、250〜1000nMであることが好ましい。
共培養に用いられるT細胞は、表面マーカーCD4+CD8−のヘルパーT細胞であればよい。このT細胞の起源としては、哺乳類、特に齧歯類を挙げることができ、好ましくはマウス、特に好ましくは、R細胞及びN62.5細胞と同一の遺伝的系統を有するマウスである。この共培養に用いられるT細胞は、上記条件のものであればいずれのものであってもよいが、R細胞及びN62.5細胞を確立するために使用した親細胞であり、DO11.10のTCRトランスジェニックマウスの脾臓細胞中のT細胞(以下、同系T細胞という)であることが特に好ましい。
共培養中でのOVA抗原ペプチドの濃度は、100nM〜1000nMとすることができ、250〜1000nMであることが好ましい。
またR細胞及びN62.5細胞の成育は、DO11.10 T細胞株の培養上清を含む培地又はIL−3を含む培地を用いて、このような培地による刺激を受けながら培養することによって維持することができる。好ましくは、これらの細胞の特徴的な活性を良好に維持するには、これらの細胞の成育を、DO11.10細胞株の培養上清を含む培地によって維持することが好ましい。更に、T細胞レセプター(TCR)に対する刺激を付与しながらヘルパーT細胞を培養することによって得られた培養上清を含む培地を用いても、同様にR細胞及びN62.5細胞を維持及び増殖させることができる。
OVA抗原ペプチド刺激T細胞の培養上清又はTCR刺激T細胞の培養上清は、細胞用培養液中に含有してあればよく、細胞の状態に応じて適宜変更することができるが、好ましくは、0.01容量%〜10容量%、特に好ましくは、N62.5細胞の場合には10容量%とすることができ、R細胞の場合には2.5容量%とすることができる。
また、OVA抗原ペプチド刺激T細胞の培養上清の代わりにIL−3含有培地を用いる場合、培養液中に含まれるIL−3は、R細胞及びN62.5細胞の状態に応じて適宜設定可能である。
OVA抗原ペプチド刺激T細胞の培養上清又はTCR刺激T細胞の培養上清は、細胞用培養液中に含有してあればよく、細胞の状態に応じて適宜変更することができるが、好ましくは、0.01容量%〜10容量%、特に好ましくは、N62.5細胞の場合には10容量%とすることができ、R細胞の場合には2.5容量%とすることができる。
また、OVA抗原ペプチド刺激T細胞の培養上清の代わりにIL−3含有培地を用いる場合、培養液中に含まれるIL−3は、R細胞及びN62.5細胞の状態に応じて適宜設定可能である。
RCCM細胞は、上記のような培養上清や増殖因子に依存せずに培養することができるので、細胞培養に用いられる通常の培地を用いればよい。
各種細胞の通常の培地としては、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)や、RPMI1640などを挙げることができる。これらの培養液に対しては、通常、血清、各種ビタミン、各種抗生物質等、通常の細胞培養に適用可能な各種添加剤を添加してもよい。
各種細胞の通常の培地としては、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)や、RPMI1640などを挙げることができる。これらの培養液に対しては、通常、血清、各種ビタミン、各種抗生物質等、通常の細胞培養に適用可能な各種添加剤を添加してもよい。
本発明にかかる複数の細胞株は、アレルギー性サイトカインに対して異なる感受性を示す細胞株である。
ここでいうアレルギー性サイトカインには、Th2サイトカインが含まれる。Th2サイトカインとしては、IL−3、IL−4、IL−6、IL−10、IL−13などを挙げることができる。本発明にかかる細胞株は、これらのアレルギー性サイトカインの種類や、濃度に対して、異なる反応性を示すものである。
ここでいうアレルギー性サイトカインには、Th2サイトカインが含まれる。Th2サイトカインとしては、IL−3、IL−4、IL−6、IL−10、IL−13などを挙げることができる。本発明にかかる細胞株は、これらのアレルギー性サイトカインの種類や、濃度に対して、異なる反応性を示すものである。
ここでいう反応性とは、外部からの刺激に対して、細胞の持つ形質を変化させる能力を指す。このような細胞の形質の変化には、細胞の形態、増殖速度、生存率及び特定の細胞性因子の産生などの細胞形態及び細胞活性上の変化と細胞内シグナル伝達に関与する分子の生化学的変化、更には遺伝子発現や遺伝子調節のような遺伝子制御上の変化が挙げられる。これらの細胞の状態の変化のうち、少なくとも1つの変化を、反応性の指標にすることができる。
本発明にかかる細胞株のうち、RCCM細胞は、上記アレルギー性サイトカインに対して依存性が極めて低く、その存在有無に拘わらず増殖が可能であることがわかっている。RCCM細胞の細胞表面には、FCεRIα、c−kit、ClassIなどが存在していることが確認されている。
R細胞は、上記アレルギー性サイトカインに対して中程度の依存性を示す細胞株である。このため、アレルギー性サイトカイン非存在下の培養系では生存することができないが、ごくわずかな濃度でアレルギー性サイトカインが存在すれば、増殖することが確認されている。R細胞は、複数のサイトカインに対して高い感受性を有しており、中でもTh2型サイトカインを中心とするIL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−9、IL−13、IL−15などのインターロイキンに対して増殖能を示し、このうち、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−9、IL−13、特にIL−3、IL−4、IL−9に対して高い増殖能を示す。例えばIL−3の場合、約5ng/mlの濃度であればR細胞を維持することができる。ただし、IL−2、IL−7、IL−10、GM−CFSやIFN−γに対しては感受性を示さない。R細胞の細胞表面には、FCεRIα、c−kit、ClassIなどが存在していることが確認されている。
R細胞は、上記アレルギー性サイトカインに対して中程度の依存性を示す細胞株である。このため、アレルギー性サイトカイン非存在下の培養系では生存することができないが、ごくわずかな濃度でアレルギー性サイトカインが存在すれば、増殖することが確認されている。R細胞は、複数のサイトカインに対して高い感受性を有しており、中でもTh2型サイトカインを中心とするIL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−9、IL−13、IL−15などのインターロイキンに対して増殖能を示し、このうち、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−9、IL−13、特にIL−3、IL−4、IL−9に対して高い増殖能を示す。例えばIL−3の場合、約5ng/mlの濃度であればR細胞を維持することができる。ただし、IL−2、IL−7、IL−10、GM−CFSやIFN−γに対しては感受性を示さない。R細胞の細胞表面には、FCεRIα、c−kit、ClassIなどが存在していることが確認されている。
N62.5細胞は、上記アレルギー性サイトカインに対して高程度の依存性を示す細胞株である。このため、アレルギー性サイトカイン非存在下では生存できず、R細胞が増殖可能な濃度よりも多い高濃度であれば増殖することが確認されている。例えば、IL−3の場合、約20ng/mlの濃度であればN62.5細胞を維持することができる。N62.5細胞の細胞表面には、FCεRIα、c−kit、ClassIなどが存在していることが確認されている。
このように、R細胞とN62.5細胞とは、共にアレルギー性サイトカインに対して依存性を示すが、その依存の程度が異なることが確認されている。このようにこれらの3細胞間の比較において、高依存性のN62.5細胞では、アレルギー性サイトカインが高濃度にないと反応しないという正常状態のモデル系として使用することができ、一方、中依存性のR細胞は、低濃度のアレルギー性サイトカインに対しても反応性を示すことから所謂アレルギー状態のモデル系として使用することができる。これに対してアレルギー性サイトカインに極低依存性のRCCM細胞はアレルギー性サイトカインが低濃度でも増殖可能な細胞株であり、慢性アレルギーのモデル系として使用することができる。
本発明のスクリーニング方法は、上記複数の細胞株に対する反応性に基づいて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングすることを含むものである。これにより、スクリーニングに用いられた複数の細胞間での反応性の違いから、アレルギー疾患関連物質を効率よくスクリーニングすることができる。
また、本発明の第二のスクリーニング方法は、本発明にかかるR細胞、N62.5細胞及びRCCM細胞の上記特性を利用し、この中から少なくとも1つを用いて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングすることを含むものであってもよい。
また、本発明の第二のスクリーニング方法は、本発明にかかるR細胞、N62.5細胞及びRCCM細胞の上記特性を利用し、この中から少なくとも1つを用いて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングすることを含むものであってもよい。
本発明の上記スクリーニング方法では、具体的には、本発明の細胞株と候補物質とを接触させる工程と、接触後の細胞株の反応に基づいて候補物質を選別する工程とを含むことが好ましい。
候補物質は、好塩基球ないしマスト細胞様細胞を増殖させることが既知の物質又は好塩基球ないしマスト細胞様細胞を増殖させる原因因子として未同定の物質を選別するための候補物質とすることができる。
このような候補物質としては、天然及び合成の低分子化合物、高分子化合物を挙げることができ、また、既知又は未知のサイトカインなどを含み得る種々の細胞培養上清なども、候補物質としてもよい。この場合、好塩基球ないしマスト細胞様細胞を増殖させる物質を含んだ細胞培養上清をスクリーニングすることができる。これらの候補物質は、種々の濃度で培地に添加することができ、好ましくは複数の濃度段階で培地に添加することができる。
候補物質と細胞株との接触は、本発明に係る複数の細胞株を単独で培養する培養系に候補物質をそれぞれ添加すればよい。
このような候補物質としては、天然及び合成の低分子化合物、高分子化合物を挙げることができ、また、既知又は未知のサイトカインなどを含み得る種々の細胞培養上清なども、候補物質としてもよい。この場合、好塩基球ないしマスト細胞様細胞を増殖させる物質を含んだ細胞培養上清をスクリーニングすることができる。これらの候補物質は、種々の濃度で培地に添加することができ、好ましくは複数の濃度段階で培地に添加することができる。
候補物質と細胞株との接触は、本発明に係る複数の細胞株を単独で培養する培養系に候補物質をそれぞれ添加すればよい。
また上記第一及び第二のスクリーニング方法は、細胞株の培養系に競合用化合物の存在下で行うものであってもよい。競合用化合物を用いることによって、候補物質の中から、競合用化合物との接触に起因した反応を阻害する物質をスクリーニングすることができる。
競合用化合物には、候補物質と同様に、天然及び合成の低分子化合物、高分子化合物、細胞培養上清などを挙げることができる。競合用化合物の培地への添加量は、種々の任意の濃度とすることができる。
競合用化合物には、候補物質と同様に、天然及び合成の低分子化合物、高分子化合物、細胞培養上清などを挙げることができる。競合用化合物の培地への添加量は、種々の任意の濃度とすることができる。
競合用化合物は、使用される細胞株に対する反応性が既知のアレルギー疾患関連物質の化合物であり、例えば、IL−3、IL−4、IL−9などのサイトカインなどを挙げることができる。また上述したようなRCGFを競合用化合物として用いてもよい。これらのサイトカイン及びRCGFは本発明の細胞株に対する増殖活性を有することが確認されているので、これらの化合物を同一の系に存在させることにより、増殖抑制活性を有する物質をスクリーニングすることができる。
なお、スクリーニングに用いられる培地には、通常の増殖用培地を用いることできるが、候補物質の特性をより的確に判定するために、完全合成培地、血清を含まない培地などを用いてもよい。
スクリーニングに適用される培養温度及び湿度などの培養条件は、一般的なマスト細胞又は好塩基球系細胞株に対して用いられる培養条件をそのまま適用することができる。また、培養工程の前に細胞株に対して前培養を行ってもよい。
培養期間は、細胞株の種類や状態によって異なるが、一般に、2日〜7日、好ましくは3〜5日とすることができる。
培養期間は、細胞株の種類や状態によって異なるが、一般に、2日〜7日、好ましくは3〜5日とすることができる。
候補物質のスクリーニングは、上記細胞株の反応性の変化に基づいて行われる。例えば、一の細胞株が他の細胞株の成育状態と異なる状態となった場合には、培養系に含まれる候補物質が、アレルギー疾患関連物質である可能性があると判定することができる。
前記選別工程は、候補物質との接触後の細胞株の反応に基づいて行われることが好ましい。このような細胞株の反応としては、以下の述べるような細胞の反応性の指標の少なくとも1つであればよい。例えば細胞の形態、増殖速度、生存率及び特定の細胞性因子の産生などの細胞形態及び細胞活性上の変化と、細胞内シグナル伝達に関与する分子の生化学的変化、更には遺伝子発現や遺伝子調節のような遺伝子制御上の変化を挙げることができる。細胞の変化のうち細胞の形態の変化としては、顆粒の状態や大きさの変化などを挙げることができ、細胞活性上の変化としては、特定の因子の産生量の変化などを挙げることができる。生化学的変化としては、細胞内シグナル伝達に関与する分子のリン酸化や脱リン酸化、ユビキチン化等があり、また、遺伝子制御上の変化としては、特定の遺伝子の発現の有無や、特定遺伝子の発現量の変化などを挙げることができる。
例えば、細胞の増殖に基づいてスクリーニングを行うことができる。これにより、細胞を増殖させる候補物質を確実に且つ簡便にスクリーニングを行うことができるため、アッセイの利便性の観点から、好ましい。細胞株の増殖の速度は、通常、この目的のために用いられている各種の手段をそのまま適用することができ、例えば、目視又は顕微鏡による血球計算盤等を用いた細胞数の計測、放射性同位元素(例えば、3H−チミジン)の取り込み量などを挙げることができる。
また本スクリーニング方法は、好塩基球ないしマスト細胞様細胞の増殖に関与する遺伝子の発現に基づいて、候補物質をスクリーニングするものであってもよい。この場合には、本スクリーニング方法は、本発明の細胞株と候補物質とを接触させる工程と、接触により誘導された遺伝子発現を検出する工程とを更に含む。誘導された遺伝子発現の検出には、処理効率の観点から、例えばマイクロアレイなどを用いることができる。
特に、複数の細胞株を用いた場合には、スクリーニングに用いられた複数の細胞株間で反応が異なる候補物質を選別する。候補物質の存在によって、アレルギー性サイトカインに対して異なる感受性を有する複数の細胞株に対する反応に基づいてアレルギー関連物質のスクリーニングを行うので、一方の細胞株に対する反応と他方の細胞株に対する反応との違いから、アレルギー疾患関連物質を効率よくスクリーニングすることができる。
例えば、候補物質に、アレルギー性サイトカインに対して高依存性のN62.5細胞と中依存性のR細胞に対してはそれぞれの増殖速度に影響せず、アレルギー性サイトカインに低依存性のRCCM細胞に対してのみ増殖を抑制する化合物があれば、この化合物を慢性アレルギー疾患に特に関連し得る物質として選別することができる。またこの慢性アレルギー疾患に特に関連し得る物質として選別された化合物が、IL−3を競合用化合物として存在する培養系を用いた同様のスクリーニングにおいて、RCCM細胞の増殖抑制活性を示さない場合には、この化合物をIL−3分子に関連しうる物質として更に選別することができる。
細胞株の組み合わせについては、目的とする候補物質のスクリーニングに応じて適宜選択すればよい。
細胞株の組み合わせについては、目的とする候補物質のスクリーニングに応じて適宜選択すればよい。
このようにサイトカイン感受性に基づいてスクリーニングされる物質は、サイトカイン感受性を調整する機能を有する可能性がある。従って、本発明のスクリーニング方法のスクリーニング対象となる候補物質は、サイトカイン感受性調整機能を有する化合物のための候補物質であることが好ましい。
スクリーニング可能なアレルギー疾患としては、アレルゲンの生体内への侵入に惹起されたT細胞の活性化によってアレルギー性サイトカインが放出し、アレルギー反応のエフェクター細胞(マスト細胞、好塩基球など)の増殖や炎症メディエータの放出が引き起こされると考えられているものであればよく、アトピー性皮膚炎、気管支喘息等を挙げることができ、慢性化(難治化)の疾患を特に挙げることができる。
以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。
[実施例1]
細胞株の作製
10週齢のメスDO11.10トランスジェニックマウス(米国ワシントン大学、Ken Murphy教授より供与)から脾臓を摘出し、この脾臓細胞を、RPMI培地(10容量%FCS、ペニシリンGカリウム100U/ml、硫酸ストレプトマイシン100μg/ml添加:以下、単に10%血清含有培地という)にOVA抗原ペプチド(ニワトリOVA(cOVA)323−339 ペプチド:ISQAVHAAHAEINEAGR:配列番号1)を1000nM又は250mMの最終濃度となるように添加した培養条件下で培養した。
得られた培養物から、OVA抗原ペプチド反応性を示すT細胞を得た。このT細胞を抗CD3抗体によって24時間37℃で刺激しながら培養して、培養上清(R細胞増殖因子含有液:RCGF)を得た。以下、RCGFを培養に用いる際には、2日間培養して得たRCGFを25容量(v/v)%の濃度で新規培地と混合して使用した。
細胞株の作製
10週齢のメスDO11.10トランスジェニックマウス(米国ワシントン大学、Ken Murphy教授より供与)から脾臓を摘出し、この脾臓細胞を、RPMI培地(10容量%FCS、ペニシリンGカリウム100U/ml、硫酸ストレプトマイシン100μg/ml添加:以下、単に10%血清含有培地という)にOVA抗原ペプチド(ニワトリOVA(cOVA)323−339 ペプチド:ISQAVHAAHAEINEAGR:配列番号1)を1000nM又は250mMの最終濃度となるように添加した培養条件下で培養した。
得られた培養物から、OVA抗原ペプチド反応性を示すT細胞を得た。このT細胞を抗CD3抗体によって24時間37℃で刺激しながら培養して、培養上清(R細胞増殖因子含有液:RCGF)を得た。以下、RCGFを培養に用いる際には、2日間培養して得たRCGFを25容量(v/v)%の濃度で新規培地と混合して使用した。
また、得られた培養物に、抗Thy1.2抗体(Pharmingen社製)と補体(ウサギ血清、Pel-Freeze社製)をそれぞれ1μg/ml及び最終10容量%の濃度で1×107個/100μlの細胞に対して添加して、約30分間反応させ、T細胞を除去し、様々な濃度の上記RCGFを添加しながら培養を継続して、本発明にかかる細胞株を得た。
その結果、N62.5細胞は10v/v%のRCGF含有培地で、R細胞は、2.5v/v%のRCGF含有培地で維持・増殖可能であった。それに対してRCCM細胞は全くRCGFを含まない培地で維持できた。
その後、それぞれの細胞株は希釈法に従った培養を3週間にわたって行いクローン化した。R細胞は、25容量%のRCGFを含有する10容量%血清含有RPMI培地(又は5ng/mlのIL−3を含有するR細胞用培地)を用いて、37℃、5%CO2で培養し、維持した。R細胞は、培養環境からRCGF及びT細胞を除去すると、死滅した。
その結果、N62.5細胞は10v/v%のRCGF含有培地で、R細胞は、2.5v/v%のRCGF含有培地で維持・増殖可能であった。それに対してRCCM細胞は全くRCGFを含まない培地で維持できた。
その後、それぞれの細胞株は希釈法に従った培養を3週間にわたって行いクローン化した。R細胞は、25容量%のRCGFを含有する10容量%血清含有RPMI培地(又は5ng/mlのIL−3を含有するR細胞用培地)を用いて、37℃、5%CO2で培養し、維持した。R細胞は、培養環境からRCGF及びT細胞を除去すると、死滅した。
[実施例2]
細胞株の特徴解析
上記のようにして得られたR細胞(受託番号FERM BP−10918)、N62.5細胞(受託番号FERM BP−10919)、RCCM細胞(受託番号FERM BP−10920)に対して各種抗体を用いた表面抗原解析を行った。
蛍光色素(FITC)結合抗体として、抗マウスc−kit抗体(e-Bio社製)、抗マウスFcεRI抗体(e-Bio社製)、抗マウスB220抗体(e-Bio社製)、抗マウスCD3抗体(e-Bio社製)、抗マウスFcγRII/III抗体(Pharmingen社製)、抗ClassI抗体(Pharmingen社製)、抗マウスDX5抗体(e-Bio社製)、抗ClassII抗体(Pharmingen社製)を使用し、それぞれ約5〜10μgをR細胞1×106/100μl対して氷上で30分間反応させた。抗体の結合状態は、FACSを用いて解析した。
その結果を表1に示す。
細胞株の特徴解析
上記のようにして得られたR細胞(受託番号FERM BP−10918)、N62.5細胞(受託番号FERM BP−10919)、RCCM細胞(受託番号FERM BP−10920)に対して各種抗体を用いた表面抗原解析を行った。
蛍光色素(FITC)結合抗体として、抗マウスc−kit抗体(e-Bio社製)、抗マウスFcεRI抗体(e-Bio社製)、抗マウスB220抗体(e-Bio社製)、抗マウスCD3抗体(e-Bio社製)、抗マウスFcγRII/III抗体(Pharmingen社製)、抗ClassI抗体(Pharmingen社製)、抗マウスDX5抗体(e-Bio社製)、抗ClassII抗体(Pharmingen社製)を使用し、それぞれ約5〜10μgをR細胞1×106/100μl対して氷上で30分間反応させた。抗体の結合状態は、FACSを用いて解析した。
その結果を表1に示す。
また光学顕微鏡及び電子顕微鏡を用いて各種細胞株の形態観察を行った。
その結果、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)では、R細胞の細胞質はピンクに染色された。細胞質内には多数の顆粒が詰まっているが、その一部は空胞状顆粒構造を示した。一方、トルイジンブルー染色(TB染色)では、マスト細胞と異なり染色されなかった。また電子顕微鏡像では、細胞質に多数の嚢胞状構造をもち、その内部には、好塩基球と同様に粒状構造物を含んでいた。また、粒状構造物はやや大型であるが、マスト細胞に見られるような指紋状・渦巻状構造は認められなかった。細胞質内に多数の顆粒が詰まっているが、一部は空胞に抜けており(空胞状顆粒構造)、高密度の粒状構造を有するマスト細胞とは異なっていた。
これらのことから、R細胞は好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であることが示された。N62.5細胞及びRCCM細胞も同様の形態を示していた。
その結果、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)では、R細胞の細胞質はピンクに染色された。細胞質内には多数の顆粒が詰まっているが、その一部は空胞状顆粒構造を示した。一方、トルイジンブルー染色(TB染色)では、マスト細胞と異なり染色されなかった。また電子顕微鏡像では、細胞質に多数の嚢胞状構造をもち、その内部には、好塩基球と同様に粒状構造物を含んでいた。また、粒状構造物はやや大型であるが、マスト細胞に見られるような指紋状・渦巻状構造は認められなかった。細胞質内に多数の顆粒が詰まっているが、一部は空胞に抜けており(空胞状顆粒構造)、高密度の粒状構造を有するマスト細胞とは異なっていた。
これらのことから、R細胞は好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であることが示された。N62.5細胞及びRCCM細胞も同様の形態を示していた。
[実施例3]
各種細胞のRCGFに対する感受性実験
96ウェルマイクロプレートの各ウェルに1.5×104個/ウェルの播種密度で、実施例1で得られたR細胞、N62.5細胞又はRCCM細胞を配置し、RCGFの含量を変えた培地を用いてRCGFに対する感受性を確認した。
RCGFの濃度を10v/v%、0.1v/v%、0v/v%とし、10容量%血清含有RPMI1640培地を用いて、37℃、5%CO2で48時間培養した。その後、最終濃度が0.5μCi/mlとなるように3H−チミジンを培養液中に加え、更に12時間培養し、その間の3Hの取り込み量を測定した。反応後3H−チミジンの取り込み量をMicroBeta TRILUX(WALLAC社製)を用いて測定した。結果を図1に示す。図1(A)〜(C)では、黒菱形はRCCM細胞、黒四角はR細胞、黒三角はN62.5細胞をそれぞれ表す。
各種細胞のRCGFに対する感受性実験
96ウェルマイクロプレートの各ウェルに1.5×104個/ウェルの播種密度で、実施例1で得られたR細胞、N62.5細胞又はRCCM細胞を配置し、RCGFの含量を変えた培地を用いてRCGFに対する感受性を確認した。
RCGFの濃度を10v/v%、0.1v/v%、0v/v%とし、10容量%血清含有RPMI1640培地を用いて、37℃、5%CO2で48時間培養した。その後、最終濃度が0.5μCi/mlとなるように3H−チミジンを培養液中に加え、更に12時間培養し、その間の3Hの取り込み量を測定した。反応後3H−チミジンの取り込み量をMicroBeta TRILUX(WALLAC社製)を用いて測定した。結果を図1に示す。図1(A)〜(C)では、黒菱形はRCCM細胞、黒四角はR細胞、黒三角はN62.5細胞をそれぞれ表す。
図1に示されるように、R細胞(黒四角)及びN62.5細胞(黒三角)はRCGFの濃度に依存して増殖し(図1(A)及び(B)参照)、RCGFの非存在下では増殖しない(図1(C)参照)RCGF依存性の細胞であることが示された。このうちN62.5細胞は、RCGFの濃度が低くなるとこれに伴って増殖速度が低下し、この点でR細胞とは反応性が異なる細胞であることが示された(図1(B)参照)。
一方、RCCM細胞(黒菱形)は、RCGFの有無に拘わらず増殖する非依存性の細胞であることが確認された。
従って、この3つの細胞株は同一の脾臓組織由来にも拘わらずRCGFに対する反応性が異なる細胞株であることが確認された。
一方、RCCM細胞(黒菱形)は、RCGFの有無に拘わらず増殖する非依存性の細胞であることが確認された。
従って、この3つの細胞株は同一の脾臓組織由来にも拘わらずRCGFに対する反応性が異なる細胞株であることが確認された。
[実施例4]
各種細胞のサイトカイン感受性実験
96ウェルマイクロプレートの各ウェルに1.5×104個/ウェルの播種密度で、実施例1で得られたR細胞、N62.5細胞又はRCCM細胞を配置し、RCGF(図2)及び各種サイトカイン(図3:IL−3、図4:IL−4、図5:IL−3+IL−4))に対する感受性を確認した。
各種リコンビナントサイトカイン(IL−3[PeproTech社製]、IL−4[PeproTech社製])をそれぞれ含有する培地を各ウェルに添加して、37℃、5%CO2の環境下で48時間培養した。なおRCGFの濃度は、80容量%含有培地からの1/2段階的希釈とし、サイトカインの量は、単独の場合、40ng/mlからの1/2段階的希釈、IL−3及びIL−4の組み合わせの場合、それぞれ20ng/mlからの1/2段階的希釈とした。その後、最終濃度が0.5μCi/mlとなるように3H−チミジンを培養液中に加え、更に12時間培養し、その間の3Hの取り込み量を測定した。結果を図2〜図5に示す。図2〜図5において黒菱形はRCCM細胞、黒四角はR細胞、黒三角はN62.5細胞をそれぞれ表す。
各種細胞のサイトカイン感受性実験
96ウェルマイクロプレートの各ウェルに1.5×104個/ウェルの播種密度で、実施例1で得られたR細胞、N62.5細胞又はRCCM細胞を配置し、RCGF(図2)及び各種サイトカイン(図3:IL−3、図4:IL−4、図5:IL−3+IL−4))に対する感受性を確認した。
各種リコンビナントサイトカイン(IL−3[PeproTech社製]、IL−4[PeproTech社製])をそれぞれ含有する培地を各ウェルに添加して、37℃、5%CO2の環境下で48時間培養した。なおRCGFの濃度は、80容量%含有培地からの1/2段階的希釈とし、サイトカインの量は、単独の場合、40ng/mlからの1/2段階的希釈、IL−3及びIL−4の組み合わせの場合、それぞれ20ng/mlからの1/2段階的希釈とした。その後、最終濃度が0.5μCi/mlとなるように3H−チミジンを培養液中に加え、更に12時間培養し、その間の3Hの取り込み量を測定した。結果を図2〜図5に示す。図2〜図5において黒菱形はRCCM細胞、黒四角はR細胞、黒三角はN62.5細胞をそれぞれ表す。
図2〜5に示されるように、本実施例にかかる3つの細胞株は、それぞれRCGFに対する感受性と同様に、IL−3(図3参照)、IL−4(図4参照)、IL−3+IL−4(図5参照)に対する感受性がそれぞれ異なっていた。特にN62.5細胞はIL−4では感受性を示さない一方でIL−3に対しては増殖活性を示し、R細胞との反応性の違いは明白であった。一方で、RCCM細胞は、いずれの場合においても増殖能に違いはなく、常に増殖可能な状態であることが示唆された。
このように、本実施例にかかる3つの細胞株は、RCGFのみならず、IL−3やIL−4といったアレルギー性サイトカインに対しても異なる性質を示した。従って、これらの3つの細胞株を用いることによって、細胞株間の各種サイトカインに対する反応性の違いに対応した細胞内分子や遺伝子発現に関与する物質のスクリーニングに使用できることは明らかであった。
[実施例5]
実施例4と同様に、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに1.5×104個/ウェルの播種密度で、実施例1で得られたR細胞、N62.5細胞又はRCCM細胞を配置した。各ウェルには、フォルボール12−ミリステート13アセテート(PMA)を、10ng/mlからの1/2段階希釈で添加し、37℃、5%CO2の環境下で48時間培養した。その後、最終濃度が0.5μCi/mlとなるように3H−チミジンを培養液中に加え、更に12時間培養し、その間の3Hの取り込み量を測定した。結果を図6に示す。図6において黒菱形はRCCM細胞、黒四角はR細胞、黒三角はN62.5細胞をそれぞれ表す。
実施例4と同様に、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに1.5×104個/ウェルの播種密度で、実施例1で得られたR細胞、N62.5細胞又はRCCM細胞を配置した。各ウェルには、フォルボール12−ミリステート13アセテート(PMA)を、10ng/mlからの1/2段階希釈で添加し、37℃、5%CO2の環境下で48時間培養した。その後、最終濃度が0.5μCi/mlとなるように3H−チミジンを培養液中に加え、更に12時間培養し、その間の3Hの取り込み量を測定した。結果を図6に示す。図6において黒菱形はRCCM細胞、黒四角はR細胞、黒三角はN62.5細胞をそれぞれ表す。
図6に示されるように、RCCM細胞は、N62.5細胞及びR細胞と異なり、低濃度のPMAによって増殖が抑制された。このことは、PMAが、慢性アレルギー疾患関連物質としての機能を有することを示唆している。
このように、RCCM細胞、N62.5細胞及びR細胞の3つの細胞株を用いることによって、これらの細胞株の増殖能に対する反応性の違いから、アレルギー疾患関連物質、例えばPMAのように増殖抑制物質のスクリーニングにも適用することができる。
このように、RCCM細胞、N62.5細胞及びR細胞の3つの細胞株を用いることによって、これらの細胞株の増殖能に対する反応性の違いから、アレルギー疾患関連物質、例えばPMAのように増殖抑制物質のスクリーニングにも適用することができる。
[実施例6]
実施例4と同様に、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに1.5×104個/ウェルの播種密度で、実施例1で得られたR細胞、N62.5細胞、RCCM細胞と、好塩基球系細胞株であるP185細胞とをそれぞれ配置した。各ウェルには、PI3K阻害剤であるLY294002(SuperArray社 Cat No. FA-002)及びPKC阻害剤であるRottlerin(CALBIOCHEM Cat. No. 557370)を、それぞれ10ng/mlからの1/2段階希釈で添加し、37℃、5%CO2の環境下で48時間培養した。その後、最終濃度が0.5μCi/mlとなるように3H−チミジンを培養液中に加え、更に12時間培養し、その間の3Hの取り込み量を測定した。結果を図7に示す。図7及び図8において黒四角はR細胞、黒三角はN62.5細胞、黒菱形はRCCM細胞、黒丸はP185をそれぞれ示す。図7は、LY294002に対する各細胞の反応を示すグラフ、図8は、Rottlerinに対する各細胞の反応を示すグラフである。
実施例4と同様に、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに1.5×104個/ウェルの播種密度で、実施例1で得られたR細胞、N62.5細胞、RCCM細胞と、好塩基球系細胞株であるP185細胞とをそれぞれ配置した。各ウェルには、PI3K阻害剤であるLY294002(SuperArray社 Cat No. FA-002)及びPKC阻害剤であるRottlerin(CALBIOCHEM Cat. No. 557370)を、それぞれ10ng/mlからの1/2段階希釈で添加し、37℃、5%CO2の環境下で48時間培養した。その後、最終濃度が0.5μCi/mlとなるように3H−チミジンを培養液中に加え、更に12時間培養し、その間の3Hの取り込み量を測定した。結果を図7に示す。図7及び図8において黒四角はR細胞、黒三角はN62.5細胞、黒菱形はRCCM細胞、黒丸はP185をそれぞれ示す。図7は、LY294002に対する各細胞の反応を示すグラフ、図8は、Rottlerinに対する各細胞の反応を示すグラフである。
図7に示されるように、PI3K阻害剤であるLY294002に対して、RCCM細胞は、他の2株よりも低濃度で増殖が抑制され、R細胞及びN62.5細胞はほぼ同様の反応性を示した。このことは、LY294002が慢性アレルギー疾患の関連物質であることを示唆している。
これに対して、図8に示されるように、PKC阻害剤であるRottlerinに対しては、好塩基球系細胞株P815に対する増殖抑制よりも急激に、本発明にかかる3細胞株の増殖が抑制されるものの、RCCM細胞、N62.5細胞及びR細胞はいずれも、同様の反応性を示していた。
このように、増殖関連物質としての阻害剤であっても、アレルギー疾患に対する反応性に違いがあり、本発明にかかる細胞株を組み合わせて用いることによって、アレルギー関連物質を更に分類することができる。
これに対して、図8に示されるように、PKC阻害剤であるRottlerinに対しては、好塩基球系細胞株P815に対する増殖抑制よりも急激に、本発明にかかる3細胞株の増殖が抑制されるものの、RCCM細胞、N62.5細胞及びR細胞はいずれも、同様の反応性を示していた。
このように、増殖関連物質としての阻害剤であっても、アレルギー疾患に対する反応性に違いがあり、本発明にかかる細胞株を組み合わせて用いることによって、アレルギー関連物質を更に分類することができる。
本発明によれば、RCCM細胞、N62.5細胞及びR細胞の3つの細胞株を用いることによって、これらの細胞株の増殖能に対する反応性の違いから、アレルギー疾患関連物質、例えばPMAのように増殖抑制物質のスクリーニングにも適用することができる。
なお、本実施例では、3H−チミジンの取込量に基づく増殖速度に基づいてアレルギー疾患関連物質のスクリーニングを行ったが、これに限定されない。
例えば、候補物質と接触させた前後の各種細胞の遺伝子発現のパターンを、サブトラクション法などを用いて確認する。このとき、各細胞の一部又は全遺伝子をマイクロアレイなどに固定させ、蛍光検出薬等を用いて接触後の遺伝子の発現パターンを確認する。これにより、遺伝子発現の有無に基づいて候補物質をスクリーニングすることができる。
例えば、候補物質と接触させた前後の各種細胞の遺伝子発現のパターンを、サブトラクション法などを用いて確認する。このとき、各細胞の一部又は全遺伝子をマイクロアレイなどに固定させ、蛍光検出薬等を用いて接触後の遺伝子の発現パターンを確認する。これにより、遺伝子発現の有無に基づいて候補物質をスクリーニングすることができる。
本実施例で示されるように、本発明にかかるR細胞、N62.5細胞及びRCCM細胞は、アレルギー性サイトカインに対する反応性が異なるので、アレルギー疾患関連物質のスクリーニングのための効果的なパネルとして使用することができる。
従って、本発明によればアレルギー疾患関連物質のスクリーニングを効率よく行うことができる。
従って、本発明によればアレルギー疾患関連物質のスクリーニングを効率よく行うことができる。
【0004】
[図4]本発明の実施例にかかるR細胞、N62.5細胞及びRCCM細胞の各種濃度のIL−4含有培地に対する増殖反応を示すグラフである。
[図5]本発明の実施例にかかるR細胞、N62.5細胞及びRCCM細胞の各種濃度のIL−3+IL−4含有培地に対する増殖反応を示すグラフである。
[図6]本発明の実施例にかかる各細胞株のPMAに対する増殖反応を示すグラフである。
[図7]本発明の実施例にかかる各細胞株のLY294002に対する増殖反応を示すグラフである。
[図8]本発明の実施例にかかる各細胞株のRottlerinに対する増殖反応を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態
[0012]
本発明のスクリーニング方法は、同一の脾臓組織に由来する好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であって、アレルギー性サイトカインに対して異なる感受性を有する複数の細胞株に対する反応性に基づいて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングすることを含むアレルギー疾患関連分子のスクリーニング方法である。
[0013]
本細胞株は、好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であるので、アレルギー疾患関連物資に対する感受性を有するものである。ここで「好塩基球様ないしマスト細胞様である」とは、光学又は電子顕微鏡観察による形態観察や、細胞表面抗原によって判断することができる。例えば、好塩基球様の形態としては、顆粒密度の低い嚢胞状構造やトルイジンブルー(TB)染色では染まらない点を挙げることができ、一方、マスト細胞様の形態としては、c−kit、FcεRIαが共に陽性という細胞表面分子の特徴を挙げることができる。
[0014]
このような細胞株としては、具体的には、脾臓細胞を卵白アルブミン(OVA抗原)ペプチドで長期間にわたり培養中に出現してきた好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株、更には、DO11.10 T細胞レセプター(TCR)トランスジェニックマウスの脾臓細胞からOVA抗原を用いて誘導した好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株を挙げることができる。本好塩基球様ないしマスト細胞様細胞
[図4]本発明の実施例にかかるR細胞、N62.5細胞及びRCCM細胞の各種濃度のIL−4含有培地に対する増殖反応を示すグラフである。
[図5]本発明の実施例にかかるR細胞、N62.5細胞及びRCCM細胞の各種濃度のIL−3+IL−4含有培地に対する増殖反応を示すグラフである。
[図6]本発明の実施例にかかる各細胞株のPMAに対する増殖反応を示すグラフである。
[図7]本発明の実施例にかかる各細胞株のLY294002に対する増殖反応を示すグラフである。
[図8]本発明の実施例にかかる各細胞株のRottlerinに対する増殖反応を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態
[0012]
本発明のスクリーニング方法は、同一の脾臓組織に由来する好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であって、アレルギー性サイトカインに対して異なる感受性を有する複数の細胞株に対する反応性に基づいて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングすることを含むアレルギー疾患関連分子のスクリーニング方法である。
[0013]
本細胞株は、好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であるので、アレルギー疾患関連物資に対する感受性を有するものである。ここで「好塩基球様ないしマスト細胞様である」とは、光学又は電子顕微鏡観察による形態観察や、細胞表面抗原によって判断することができる。例えば、好塩基球様の形態としては、顆粒密度の低い嚢胞状構造やトルイジンブルー(TB)染色では染まらない点を挙げることができ、一方、マスト細胞様の形態としては、c−kit、FcεRIαが共に陽性という細胞表面分子の特徴を挙げることができる。
[0014]
このような細胞株としては、具体的には、脾臓細胞を卵白アルブミン(OVA抗原)ペプチドで長期間にわたり培養中に出現してきた好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株、更には、DO11.10 T細胞レセプター(TCR)トランスジェニックマウスの脾臓細胞からOVA抗原を用いて誘導した好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株を挙げることができる。本好塩基球様ないしマスト細胞様細胞
【0005】
株を得るため、OVA抗原ペプチドの323番目−339番目のアミノ酸残基を用いることができる。
[0015]
本発明における上記細胞株としては、R細胞(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10918、2005年9月1日付で受託)、N62.5細胞(同特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10919、2006年11月16日付で受託)及びRCCM細胞(同特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10920、2006年11月16日付で受託)を挙げることができる。
[0016]
これらの細胞は、上記OVA抗原存在下での長期培養中の培養脾臓細胞からT細胞を除去することで単離し、次いで、OVA特異的T細胞株の培養上清(R cell growth factor:RCGF)を様々な濃度で使用しながら、さらに長期継代することで得られた。このRCGFは、OVA特異的T細胞株を、抗T細胞受容体抗体を架橋することによって刺激して得られた培養上清である。
従ってこれらの細胞株は、サイトカインに対する細胞の持つ感受性を除いては、同一か極めて類似の性質を有する細胞である。このため、アレルギー性炎症局所で予想される異なったサイトカイン環境で、好塩基球やマスト細胞の増殖を制御する分子のスクリーニングに適していると考えられる。
[0017]
R細胞及びN62.5細胞の維持条件としては、OVA抗原ペプチド刺激T細胞との共培養を挙げることができる。
共培養に用いられるT細胞は、表面マーカーCD4+CD8−のヘルパーT細胞であればよい。このT細胞の起源としては、哺乳類、特に齧歯類を挙げることができ、好ましくはマウス、特に好ましくは、R細胞及びN62.5細胞と同一の遺伝的系統を有するマウスである。この共培養に用いられるT細胞は、上記条件のものであればいずれのものであってもよいが、R細胞及びN62.5細胞を確立するために使用した親細胞であり、DO11.10 TCRトランスジェニックマウスの脾臓細胞中のT細胞(以下、同系T細胞という)であることが特に好ましい。
共培養中でのOVA抗原ペプチドの濃度は、100nM〜1000nMとすることができ、250〜1000nMであることが好ましい。
[0018]
またR細胞及びN62.5細胞の成育は、DO11.10 T細胞株の培養上清を含む培
株を得るため、OVA抗原ペプチドの323番目−339番目のアミノ酸残基を用いることができる。
[0015]
本発明における上記細胞株としては、R細胞(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10918、2005年9月1日付で受託)、N62.5細胞(同特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10919、2006年11月16日付で受託)及びRCCM細胞(同特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10920、2006年11月16日付で受託)を挙げることができる。
[0016]
これらの細胞は、上記OVA抗原存在下での長期培養中の培養脾臓細胞からT細胞を除去することで単離し、次いで、OVA特異的T細胞株の培養上清(R cell growth factor:RCGF)を様々な濃度で使用しながら、さらに長期継代することで得られた。このRCGFは、OVA特異的T細胞株を、抗T細胞受容体抗体を架橋することによって刺激して得られた培養上清である。
従ってこれらの細胞株は、サイトカインに対する細胞の持つ感受性を除いては、同一か極めて類似の性質を有する細胞である。このため、アレルギー性炎症局所で予想される異なったサイトカイン環境で、好塩基球やマスト細胞の増殖を制御する分子のスクリーニングに適していると考えられる。
[0017]
R細胞及びN62.5細胞の維持条件としては、OVA抗原ペプチド刺激T細胞との共培養を挙げることができる。
共培養に用いられるT細胞は、表面マーカーCD4+CD8−のヘルパーT細胞であればよい。このT細胞の起源としては、哺乳類、特に齧歯類を挙げることができ、好ましくはマウス、特に好ましくは、R細胞及びN62.5細胞と同一の遺伝的系統を有するマウスである。この共培養に用いられるT細胞は、上記条件のものであればいずれのものであってもよいが、R細胞及びN62.5細胞を確立するために使用した親細胞であり、DO11.10 TCRトランスジェニックマウスの脾臓細胞中のT細胞(以下、同系T細胞という)であることが特に好ましい。
共培養中でのOVA抗原ペプチドの濃度は、100nM〜1000nMとすることができ、250〜1000nMであることが好ましい。
[0018]
またR細胞及びN62.5細胞の成育は、DO11.10 T細胞株の培養上清を含む培
【0011】
またこの慢性アレルギー疾患に特に関連し得る物質として選別された化合物が、IL−3を競合用化合物として存在する培養系を用いた同様のスクリーニングにおいて、RCCM細胞の増殖抑制活性を示さない場合には、この化合物をIL−3分子に関連しうる物質として更に選別することができる。
細胞株の組み合わせについては、目的とする候補物質のスクリーニングに応じて適宜選択すればよい。
[0038]
このようにサイトカイン感受性に基づいてスクリーニングされる物質は、サイトカイン感受性を調整する機能を有する可能性がある。従って、本発明のスクリーニング方法のスクリーニング対象となる候補物質は、サイトカイン感受性調整機能を有する化合物のための候補物質であることが好ましい。
[0039]
スクリーニング可能なアレルギー疾患としては、アレルゲンの生体内へ侵入に惹起されたT細胞の活性化によってアレルギー性サイトカインが放出し、アレルギー反応のエフェクター細胞(マスト細胞、好塩基球など)の増殖や炎症メディエータの放出が引き起こされると考えられているものであればよく、アトピー性皮膚炎、気管支喘息等を挙げることができ、慢性化(難治化)の疾患を特に挙げることができる。
実施例
[0040]
以下に本発明の実施例についで説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。
[0041]
実施例1
細胞株の作製
10週齢のメスDO11.10 TCRトランスジェニックマウス(米国ワシントン大学、Ken Murphy教授より供与)から脾臓を摘出し、この脾臓細胞を、RPMI培地(10容量%FCS、ペニシリンGカリウム100U/ml、硫酸ストレプトマイシン100μg/ml添加:以下、単に10%血清含有培地という)にOVA抗原ペプチド(ニワトリOVA(cOVA)323−339ペプチド:ISQAVHAAHAEINEAGR:配列番号1)を1000nM又は250mMの最終濃度となるように添加した培養条件下で培養した。
得られた培養物から、OVA抗原ペプチド反応性を示すT細胞を得た。このT細胞を抗CD3抗体によって24時間37℃で刺激しながら培養して、培養上清(R細胞増殖
またこの慢性アレルギー疾患に特に関連し得る物質として選別された化合物が、IL−3を競合用化合物として存在する培養系を用いた同様のスクリーニングにおいて、RCCM細胞の増殖抑制活性を示さない場合には、この化合物をIL−3分子に関連しうる物質として更に選別することができる。
細胞株の組み合わせについては、目的とする候補物質のスクリーニングに応じて適宜選択すればよい。
[0038]
このようにサイトカイン感受性に基づいてスクリーニングされる物質は、サイトカイン感受性を調整する機能を有する可能性がある。従って、本発明のスクリーニング方法のスクリーニング対象となる候補物質は、サイトカイン感受性調整機能を有する化合物のための候補物質であることが好ましい。
[0039]
スクリーニング可能なアレルギー疾患としては、アレルゲンの生体内へ侵入に惹起されたT細胞の活性化によってアレルギー性サイトカインが放出し、アレルギー反応のエフェクター細胞(マスト細胞、好塩基球など)の増殖や炎症メディエータの放出が引き起こされると考えられているものであればよく、アトピー性皮膚炎、気管支喘息等を挙げることができ、慢性化(難治化)の疾患を特に挙げることができる。
実施例
[0040]
以下に本発明の実施例についで説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。
[0041]
実施例1
細胞株の作製
10週齢のメスDO11.10 TCRトランスジェニックマウス(米国ワシントン大学、Ken Murphy教授より供与)から脾臓を摘出し、この脾臓細胞を、RPMI培地(10容量%FCS、ペニシリンGカリウム100U/ml、硫酸ストレプトマイシン100μg/ml添加:以下、単に10%血清含有培地という)にOVA抗原ペプチド(ニワトリOVA(cOVA)323−339ペプチド:ISQAVHAAHAEINEAGR:配列番号1)を1000nM又は250mMの最終濃度となるように添加した培養条件下で培養した。
得られた培養物から、OVA抗原ペプチド反応性を示すT細胞を得た。このT細胞を抗CD3抗体によって24時間37℃で刺激しながら培養して、培養上清(R細胞増殖
Claims (11)
- 同一の脾臓組織に由来する好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株であって、アレルギー性サイトカインに対して異なる感受性を有する複数の細胞株に対する反応性に基づいて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングすることを含むアレルギー疾患関連分子のスクリーニング方法。
- 前記複数の好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株が、R細胞(受託番号FERM BP−10918)、N62.5細胞(受託番号FERM BP−10919)及びRCCM細胞(受託番号FERM BP−10920)からなる群より選択された少なくとも2つである請求項1記載のスクリーニング方法。
- R細胞(受託番号FERM BP−10918)、N62.5細胞(受託番号FERM BP−10919)及びRCCM細胞(受託番号FERM BP−10920)からなる群より選択された少なくとも1つの好塩基球様ないしマスト細胞様細胞株を用いて、候補物質からアレルギー疾患関連物質をスクリーニングすることを含むアレルギー疾患関連分子のスクリーニング方法。
- 前記細胞株と前記候補物質とを接触させる工程と、
前記接触後の前記細胞株の反応に基づいて候補物質を選別する工程と、
を含む請求項1又は請求項3記載のスクリーニング方法。 - 前記選別工程が、スクリーニングに用いられた複数の細胞株間で反応が異なる候補物質を選別するものである請求項4記載のスクリーニング方法。
- 競合用化合物の存在下で行われる請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のスクリーニング方法。
- 前記候補物質が、サイトカイン感受性調整機能を有する化合物のための候補物質である請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のスクリーニング方法。
- 前記選別が、細胞形態及び細胞活性上の変化、細胞内シグナル伝達に関与する分子の生化学的変化、及び、細胞の遺伝子制御上の変化の少なくともいずれか1つに基づいて行われる請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のスクリーニング方法。
- N62.5細胞(受託番号FERM BP−10919)。
- RCCM細胞(受託番号FERM BP−10920)。
- R細胞(受託番号FERM BP−10918)、N62.5細胞(受託番号FERM BP−10919)及びRCCM細胞(受託番号FERM BP−10920)からなる群より選択された少なくとも2つで構成され、アレルギー疾患関連化合物をスクリーニングするために用いられる細胞セット。
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JP2007129941A (ja) * | 2005-11-09 | 2007-05-31 | Tokyo Univ Of Science | サイトカインの検出方法、サイトカイン感受性細胞株及びサイトカイン産生細胞のスクリーニング方法 |
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JPN6012053953; European journal of pharmacology. 1994, Vol.259, No.1, p.15-20 * |
JPN6012053954; Infection and immunity. 1994, Vol.62, No.9, p.3844-3849 * |
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