JP2004213835A - データ記録装置、データ記録方法及びプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】光ピックアップ等からの漏れ磁界及びディスクの隣接トラックからの浮遊磁界等による記録信号の非対称性を高精度且つ高効率で補正することができるデータ記録装置及びデータ記録方法を提供する。
【解決手段】記録データにより変調した変調磁界を記録磁界として光磁気ディスクに対して印加すると共に、光磁気ディスクの記録面に対して記録パルスを照射することによりデータ記録を行う。この際、装置又は光磁気ディスク自体から生じる外部からの漏洩磁界による記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、記録パルスのパルス幅を可変設定する。例えば、本来の記録磁界D1がオフセット磁界Cにより記録磁界D2となってしまう場合、記録パルスP1の幅を狭く設定した記録パルスP2を印加することで、盤面温度をT1からT2に下げてオフセット量をキャンセルする。
【選択図】 図4
【解決手段】記録データにより変調した変調磁界を記録磁界として光磁気ディスクに対して印加すると共に、光磁気ディスクの記録面に対して記録パルスを照射することによりデータ記録を行う。この際、装置又は光磁気ディスク自体から生じる外部からの漏洩磁界による記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、記録パルスのパルス幅を可変設定する。例えば、本来の記録磁界D1がオフセット磁界Cにより記録磁界D2となってしまう場合、記録パルスP1の幅を狭く設定した記録パルスP2を印加することで、盤面温度をT1からT2に下げてオフセット量をキャンセルする。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁界変調パルス記録の光磁気ディスクにデータを記録するデータ記録装置、データ記録方法及びプログラムに関し、特に、データ記録時の記録光磁気ディスク自身又は装置から発生する磁界による影響の低減を図ったデータ記録装置、データ記録方法及びプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
可搬性メディアとしての光ディスク、光磁気ディスクなどのディスク状記録媒体が普及している。特にデータ書換可能な光磁気ディスク(MOディスク)などはコンピュータユースのメディアとしても好適とされている。
【0003】
上記のような光磁気ディスクに対応する記録/再生装置としては、そのデータ記録方式として磁界変調方式を採るものが知られている。磁界変調方式では、記録データにより変調した磁界を、磁気ヘッドからディスクの記録面に印加すると共に、レーザ光を一定の光量継続照射(単純磁界変調方式)、又は記録データに同期してパルス発光させる(レーザストローブ磁界変調方式)ようにしている。これにより、記録データに応じたN又はS極の磁界がディスクの記録面に印加されて、磁界情報としてのデータが記録されることになる。このような、磁界変調方式では原理的に記録ピット(記録信号)のアシンメトリ(非対称性)が少ないことが知られており、これにより読み出しデータのレベルもシビアなものが得られるために、例えば、パーシャルレスポンス方式等の多値検出方式を採用する場合にも有効とされている。
【0004】
ところが、上記のような磁界変調方式でも、光学ピックアップにおいてレンズを変位させるためのコイル等にて発生する磁界が外部に漏洩して、この漏洩磁界が、磁気ヘッドからディスクに印加される変調磁界に影響を与え、これが要因となってディスクに記録される記録ピットにアシンメトリが発生する場合がある。そして、アシンメトリが発生した記録ピットについてデータ読出しを行った場合、例えば、再生RF信号にはアシンメトリの程度に対応したレベルのオフセットが与えられることになる。このように再生信号にオフセットがかかった場合、正確なレベル検出が行われなくなる可能性があり、それだけ再生データの信頼性が損なわれることになる。
【0005】
即ち、磁界変調パルス記録の光磁気ディスクドライブの場合、光ピックアップのアクチュエータからの漏れ磁界やディスクの隣接トラックからの浮遊磁界により、記録時に記録磁界がオフセットし、記録ピットにアシンメトリが生じてしまう。
【0006】
以下、光学ピックアップ等からの漏洩磁界の影響によりアシンメトリが発生する過程について図21を参照して説明する。ここでは、レーザストローブ磁界変調方式により記録が行われる場合について説明する。
【0007】
図21(b)はレーザダイオードを発光させるためにレーザダイオードドライバから出力される記録パルスの出力タイミングであり、期間t1〜t2、期間t2〜t3、期間t3〜t4において、それぞれ図に示すようなタイミングで所定の一定レベルにより記録パルスが出力される。ここでは、各期間t1〜t2、期間t2〜t3、期間t3〜t4に対応して磁気ヘッドから出力される変調磁界の極性は、図21(a)に示すようにそれぞれN、S、Nであるとする。そして、上記図21(a)及び(b)に示す動作が行われることで、実際にディスクに記録されることになる磁界波形は、結果的に図21(c)に示すようなものとなる。ここで、特に外来磁界等の影響が何もなければ、図21(c)に示す磁界波形は、磁気ヘッドから出力される変調磁界そのものの特性とほぼ一致することになる。従って、一点鎖線Fで示す位置が0レベルとされてN極側とS極側の磁界強度のバランスが良好に得られる状態となる。これに対して、例えば光学ピックアップにおいて光学レンズの2軸機構にて発生した磁界が外部に漏洩する等して、磁気ヘッドから出力される変調磁界等に対して何らかの外来磁界が影響する場合は、上記外来磁界の成分が磁気ヘッドから出力される変調磁界に影響することによって、例えば、図21(c)に示す磁界波形に対してオフセットがかかる状態となって、N極側とS極側の磁界強度のバランスが崩れて何れか一方に偏ることになる。ここでは具体例として、破線Gが0レベルとされてN極側の磁界強度が適正状態よりも弱くなり、これに対してS極側の磁界強度が適正状態より強くなった状態が示されている。
【0008】
図21(d)は、このようにして、オフセットが与えられた磁界によりディスクの記録が行われた場合の記録ピットの記録状態を示す図である。図21(d)は、ディスクに印加される磁界強度としてN極が弱くなるのに対してS極が強くなったことにより、N極となる記録ピットの径は適正状態よりも小さくなり、S極となる記録ピットの径は適正状態よりも大きくなった状態が示されている。つまり、このようにして記録ピットのアシンメトリが発生する。
【0009】
この図21(d)に示すような記録ピットを再生した場合には、例えば再生信号としては図21(e)に示す波形が得られる。ここで記録ピットのアシンメトリがなお適正状態であれば一点鎖線Hで示す位置が0レベルとなるが、記録ピットとしてアシンメトリが発生したことにより、破線Iで示す位置が0レベルとなって再生信号にもオフセットがかかることになる。このようにして発生するアシンメトリの程度は、例えば光学ピックアップ等からの漏洩磁界強度によって決定されるため、記録/再生装置を構成する光磁気ディスクドライバ毎に固有のものとなる。
【0010】
このような外来磁界等の影響による記録ピットのアシンメトリの発生を防止して、正確なデータ再生が行われるようにすることを目的としたデータ記録装置が下記特許文献1に記載されている。
【0011】
この特許文献1に記載のデータ記録装置においては、記録媒体に対して所定の検出用データを記録する検出用データ記録制御手段と、記録媒体に記録された検出用データを読出して得られる再生信号のオフセットレベルに基づいて、上記記録磁界のオフセット量を判別する判別手段と、この判別手段により判別された記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記レーザ光の出力パワーを可変設定することのできるレーザ光出力制御手段とを備えることにより、記録媒体に印加される記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、レーザ光の出力パワーが可変設定され、この出力パワーが可変設定されたレーザ光が記録時に照射されることによって、実際に記録媒体に印加される記録磁界としてはオフセットがキャンセルされた適正ものとすることができる。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−188382号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アシンメトリが生じてしまう現象は、記録ピットが小さくなるにつれ、影響が大きくなり、大容量化の障害となっており、上記特許文献1に記載の技術のように、オフセット量をキャンセルするため、出力パルスのパワーを変化させると、高精細なマークを記録するような場合、記録ピットの品位が低下する場合がある。また、オフセット量をキャンセルするために出力パルスのピークパワーを増減させるとエネルギーロスが大きいという問題点がある。
【0014】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、光ピックアップ等からの漏れ磁界及びディスクの隣接トラックからの浮遊磁界等による記録信号の非対称性を高精度且つ高効率で補正することができるデータ記録装置及びデータ記録方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するために、本発明に係るデータ記録装置は、記録データにより変調した変調磁界を記録磁界として記録媒体に対して印加すると共に、該記録媒体の記録面に対して記録パルスを照射することにより該記録媒体へのデータ記録を行うデータ記録装置において、上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定するレーザ光出力制御手段を有することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、記録装置の光ピックアップ等から発生する漏洩磁界又は光磁気ディスク自体からの漏洩磁界により生じる記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、記録パルスのパルス幅を可変に設定することで、所望の位置で磁界を反転させるため、オフセットによる記録ピット(記録マーク)のアシンメトリを補正する。
【0017】
また、上記記録磁界のオフセット量を検出するオフセット量検出手段を有し、上記レーザ光出力制御手段は、上記オフセット量検出手段により検出された上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定することができ、例えば上記記録媒体に対して所定の検出用データを記録する検出用データ記録手段と、上記記録媒体に記録された検出用データを読出して得られる再生信号のオフセットレベルに基づいて、上記記録磁界のオフセット量を判別する判別手段とからなるオフセット量検出手段を設ける等することができる。
【0018】
更に、上記記録パルスは、クロック毎に印加されることができ、高精細なマークを記録することができる。
【0019】
本発明に係るデータ記録方法は、記録データにより変調した変調磁界を記録磁界として記録媒体に対して印加すると共に、該記録媒体の記録面に対して記録パルスを照射することにより該記録媒体へのデータ記録を行うデータ記録方法において、上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定するレーザ光出力制御工程を有することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態は、本発明を磁界変調パルス記録の光磁気ディスク等にデータを記録するデータ記録装置に適用したものである。
【0021】
図1(a)及び(b)は、夫々光磁気ディスクに磁界変調パルス記録を行う様子を示す模式図及び磁界変調パルス記録時に印加される記録磁界及び記録パルスを示す図である。ここで、図1(a)においては、矢印Aで示すスポットの進行方向光に、磁気ヘッド101及び光学ピックアップ102を移動してマークを記録する様子を示す。なお、データ記録再生装置の詳細については後述する。
【0022】
磁界変調パルス記録では、光磁気ディスク100に対して、図1(b)に示すように、記録ビーム(記録パルス)Pをクロック毎にパルスとして印加し、この記録パルスPに同期して、記録磁界Dを加えることにより図1(a)に示すように、記録ピット103を記録する。
【0023】
図2は、縦軸に保持力をとり、横軸に温度をとって、光磁気ディスク材料の保持力の温度依存性を示すグラフ図である。図2に示すように、光磁気ディスク材料は、温度が高くなるほど保持力は小さくなる。従って、このような光磁気ディスク材料の保持力の温度依存性から、磁界強度と盤面上との温度の関係を変えることにより、マークのエッジの位置を変えることができる。
【0024】
即ち、図1(a)に示すように、光磁気ディスク100のレーザビーム(記録パルス)が照射された部位が昇温し、自発磁化が消失する臨界温度であるキュリー(Curie)点以上又は近傍温度まで到達すると自発磁化が消滅するか、又は極めて小さくなる。このため、外部から適当な強度の磁界を印加することにより、上記部位の自発磁化を一定方向に揃えることができる。また、本実施の形態のように、記録パルスをクロック毎のパルスとして印加することにより、ピットのエッジが鮮明になり、高密度な記録ピットを形成することができる。
【0025】
本実施の形態においては、このような記録方式において、記録装置が発生する漏洩磁界及び光磁気ディスク自身の漏洩磁界によるオフセットをキャンセルして記録ピットのアシンメトリを補正するものである。記録装置が発生する漏洩磁界としては、光学ピックアップ102のアクチュエータからの漏れ磁界、シーク動作を行うためのモータが発生する磁界、光磁気ディスクを光磁気記録装置内に固定するためのクランプ磁界が発生する磁界、及びその他光磁気ディスクのローディング等種々の動作を行うために光磁気記録装置内に設けられたモータが発生する磁界等があり、ディスク自体からの自己漏洩磁界としては、ディスクの隣接トラックからの浮遊磁界、即ち、光磁気記録層に光ピックアップからの記録用の光ビームが照射されたとき、磁化を失った光ビームの中心付近に周囲の磁化を失っていない部分から印加される磁界がある。そして、このような漏洩磁界が存在すると、記録磁界Dの強度がオフセットしてしまい、その結果、記録ピットが極性によって、本来の記録ピットの大きさより大きく、又は小さくなり、記録ピットの非対称性(アシンメトリ)が生じてしまう。
【0026】
図3は、オフセット磁界とアシンメトリとの関係を示す図であって、図3(a)は矢印B方向にディスクが回転する際の光磁気ディスクの記録ピットを示す模式図、図3(b)は記録磁界を示す図、図3(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び図3(d)は記録パルスを示す図である。
【0027】
図3(d)に示す記録パルスにより、図3(c)に示すように、盤面上の温度分布が生じる。即ち、記録パルスP1が印加されると若干遅れて盤面上の温度が最高値に達し、徐々に温度が下がっていく。この際、上述のような漏洩磁界が存在することで、図3(b)に示すように、矢印Cで示すオフセット磁界が生じ、記録磁界D1がオフセットされた記録磁界D2となってしまう。すると、記録ピットは、図3(a)に示すように、本来位置E1にて上向きの磁界から下向きの磁界へと反転されるはずが、オフセットされた記録磁界D2により、位置E1から外れた位置E2にて反転されてしまう。図2(a)においては、時刻t1において、盤面温度がT1であるとき、保持力が本来は記録磁界D1の保持力h3であるはずが、オフセットCにより記録磁界D2の保持力h1となっており、保持力が大きいいため磁界が反転しない。その後、時刻t2において、盤面温度がT2に下がり、記録磁界D2の保持力h2と小さくなった時刻t2の時点で磁界が反転する。即ち、記録磁界D1がオフセットされているため、本来の位置E1より遅い位置E2にて磁界の向きが反転してしまう。これがオフセット磁界によるアシンメトリとなる。
【0028】
そこで、本願発明者等が鋭意実験研究した結果、盤面の温度分布を変え、オフセットをキャンセルする方法として、記録パルスのパルス幅を狭くすることを見出した。以下、記録パルスのパルス幅を狭くすることにより、オフセットをキャンセルしてアシンメトリを補正する原理について説明する。
【0029】
図4は、本実施の形態におけるアシンメトリ補正方法を示す図であって、図4(a)は矢印B方向にディスクが回転している場合の記録ピットを示す模式図、図4(b)は記録磁界を示す図、図4(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び図4(d)は記録パルスを示す図である。記録パルス幅を記録するマークの極性に応じ、例えば、下向きのマークを書く時はパルス幅を狭く、上向きのマークを書く時はパルス幅を広くする等して、変化させることにより、オフセット磁界によるアシンメトリを補正することができる。
【0030】
例えば図4(d)に示すように、上述の図3(d)に示す記録パルスP1より、そのパルス幅が狭いP2を印加すると、図4(c)に示すように、盤面上の温度は、図3(c)の場合と同様の位置で最高値に達するが、パルス幅が狭いため、図3(c)の場合に比して温度の減少が急峻になる。従って、本来の記録磁界D1にオフセットCがかかった記録磁界D2により反転されるマークの位置が図3(a)に示す位置E2よりも早い位置E1にずれる。
【0031】
即ち、時刻t1において、オフセットがかかった記録磁界D2における保持力はh1であるが、そのときの盤面温度は、パルス幅を狭くしたため、図3(c)に示す温度T1より低い温度T3に下がっており、これにより、本来マークを反転させたい位置E1にてマークを反転させることができる。このように、パルス幅を狭くすることにより、盤面上の温度分布を変化させて、記録ピットの位置を制御することができる。また、逆向きのオフセット磁界が生じているときは、例えば記録パルスの幅を広くして温度が下がる速度を緩和するようにすればよい。
【0032】
なお、上述の特許文献1のように、パルス幅と共に記録パルスのピークパワーをマークの極性に応じて変化させることで、盤面に、更に急峻な温度分布を作って大きなオフセット磁界が印加された場合にもキャンセルするように記録パルスを印加してもよい。図5は、アシンメトリ補正方法を示す図であって、図5(a)は矢印B方向にディスクが回転している場合の記録ピットを示す模式図、図5(b)は記録磁界を示す図、図5(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び図5(d)は記録パルスを示す図である。図5(d)に示すように、記録パルスのピークパワー強度を下げた記録パルスP3により、図5(c)に示すように、盤面の温度上昇を抑えることができ、これにより、オフセットCがかかった記録磁界D2においても、所定の位置E1(時刻t1)にて磁界を反転させることができる。なお、図5に示す場合と逆向きのオフセット磁界が生じているときは、記録パルスのピークパワー強度を上げて、盤面の温度上昇を急峻にすればよい。
【0033】
本実施の形態においては、このようなオフセット磁界によるアシンメトリを記録パルスの幅の増減により補正するものである。このようなオフセット磁界として、上述したように、光ピックアップのアクチュエータからの漏れ磁界は、ドライブ毎に、また、ディスクの隣接トラックからの浮遊磁界はバルク・イレースの方向でディスク毎に決まる。そこで、上述の如く、記録パルスの幅を制御することで、盤面温度を調節してオフセットをキャンセルするアシンメトリ補正をドライブ出荷時に行うことにより、ドライブ(記録装置)毎のバラツキが吸収でき、またディスク挿入時に行えば、ディスク毎のバラツキを吸収することができ、記録・再生特性を向上させることができる。また、記録パルスのピークパワーを調節してアシンメトリ補正を行う場合に比してエネルギーロスが少なく、クロック毎のパルスとして記録パルスを印加することにより、エッジが鮮明で高精細なピットを記録することができる。
【0034】
次に、本実施の形態のようなアシンメトリ補正を行うことが可能な記録再生装置の一例について説明する。図6は、記録再生装置を示すブロック図である。図6に示すように、記録再生装置は、光磁気ディスク1を所定の回転数で回転駆動するスピンドルモータ2と、スピンドルモータ2の回転速度をサーボ制御するスピンドル制御部3と、回転されている光ディスク1に対してレーザ光を照射する光学ピックアップ4と、光学ピックアップ4のレーザ出力のオン/オフ及び出力レベルを制御するレーザ制御部5とを有する。更に、インターフェイス部19に接続されたホストコンピュータ90と、ホストコンピュータ90から記録要求、再生要求を受け取り、データの記録/再生動作を実行するコントローラ6とを有している。更にまた、記録データをエンコードするエンコーダ25と、記録データに応じてN又はSの磁界を印加する磁気ヘッド27と、磁気ヘッド27を制御する磁気ヘッドドライバ26とを有している。
【0035】
光磁気ディスク1は、スピンドルモータ2によって所定の回転数で回転駆動される。スピンドルモータ2の回転速度サーボ制御はスピンドル制御部3によって行なわれる。例えばスピンドル制御部3はスピンドルモータ2からのFGパルス(回転速度に同期した周波数信号)などによりスピンドルモータ2の回転速度を検出するとともに、コントローラ6から基準速度情報SKが供給され、基準速度情報SKとスピンドルモータ2の回転速度を比較して、その誤差情報に基づいてスピンドルモータ2の加減速を行なうことで所要の回転速度でのディスク回転動作を実現させる。
【0036】
回転されている光ディスク1に対しては、光学ピックアップ4からのレーザ光が照射される。光学ピックアップ4には、例えばレーザダイオードやレーザカプラなどによるレーザ光源4c、各種レンズやビームスプリッタなどによる光学系4e、レーザ光の出力端となる対物レンズ4a、ディスクからの反射光を検出するディテクタ4d、対物レンズ4aをトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持する2軸機構4b等が設けられる。光学ピックアップ4においてレーザ光源4cからのレーザ出力のオン/オフ及び出力レベルはレーザ制御部5によって制御される。
【0037】
この記録再生装置は、そのインターフェイス部19によりホストコンピュータ90と接続されるが、データの記録/再生動作はコントローラ6がホストコンピュータ90からの記録要求、再生要求を受け取ることにより実行されることになる。記録時にはホストコンピュータ90から、記録要求とともに記録すべきデータが供給される。記録データDRECはインターフェイス部19からエンコーダ25に供給され、所要のエンコード処理が行なわれる。
【0038】
本実施の形態の記録再生装置は、記録方式としてレーザストローブ磁界変調方式が採用されるものとするが、この記録方式では、エンコーダ25でエンコードされた記録データを磁気ヘッドドライバ26に供給し、磁気ヘッドドライバ26は、記録データに応じて磁気ヘッド27からN又はSの磁界を印加するようにしている。そして、レーザ制御部5において、磁気ヘッド27により磁界として印加される記録データのタイミングに同期するようにして、レーザ光源4cにおけるレーザダイオードを駆動するための記録パルスを出力する。これによりレーザ光源4cからのレーザ出力はデータ記録に適合するタイミングでパルス発光されることになる。
【0039】
この記録パルスは、上述したように、アシンメトリ補正を行うために、例えば信号S2として得られるテストパターンデータの再生信号のオフセットレベルに基づいて、そのパルス幅を可変設定した記録パルスを出力可能なように構成される。
【0040】
光学ピックアップ4によるデータ読取位置は半径方向に移動可能とされている。具体的には図示していないが、光学ピックアップ4の全体をディスク半径方向に移動可能とするスレッド機構が設けられ、これによって読取位置の大きい移動が行なわれるとともに、対物レンズ4aが2軸機構4bにディスク半径方向に移動される、即ちトラッキングサーボ動作により読取位置の小さい移動が行なわれる。
【0041】
なお、光学ピックアップ4を移動させるスレッド機構に代えて、スピンドルモータ2と共にディスク1をスライド移動させる機構を設けてもよい。また、対物レンズ4aが2軸機構4bにディスク1に対して接離する方向に移動されることで、レーザスポットLSPのフォーカス制御が行なわれる。
【0042】
光学ピックアップ4のディテクタ4dとしては例えば4分割の受光領域を有する4分割ディテクタ、又は磁界データを磁気カー効果による偏光成分ごとの検出を行ない、光磁気データとしてのRF信号を得るディテクタ等が設けられる。
【0043】
このディテクタ4dの各受光領域からは、それぞれ受光光量に応じた電流信号S1が出力されるが、これらはI/V変換マトリクスアンプ7に供給される。I/V変換マトリクスアンプ7では、受光光量信号S1について電流−電圧変換を行なうとともに、各受光領域からの信号の演算処理でRF信号、プッシュプル信号、フォーカスエラー信号FE等の必要な信号を生成する。
【0044】
フォーカス状態の誤差情報となるフォーカスエラー信号FEはサーボコントローラ8に供給される。サーボコントローラ8にはフォーカス系の処理部としてフォーカス位相補償回路やフォーカスドライバなどが搭載されており、フォーカスエラー信号FEに基づいたフォーカスドライブ信号を発生させて2軸機構4bのフォーカスコイルに印加する。これによって対物レンズ4aをジャストフォーカスポイントに収束させるフォーカスサーボ系が構成される。
【0045】
I/V変換マトリクスアンプ7からは、サーボクロックSCKやデータクロックDCKの生成のために用いるRF信号が信号S2として出力される。ここで、信号S2は、コントローラ6にも分岐して供給されて、後述するアシンメトリ補正処理におけるオフセットレベル検出のために用いられる。上記信号S2はクランプ回路9でRF信号の低周波数変動が除去され、A/D変換器10でデジタル化された信号S3となる。この信号S3はコントローラ6、PLL回路11、及びトラッキングエラー生成部16に供給される。
【0046】
PLL回路11では信号S3と発振出力の位相誤差に基づいて内部発振器の発振周波数を制御すること、及び所定の分周処理を行なうことで、RF信号に同期したサーボクロックSCKを発生させる。このサーボクロックSCKはA/D変換器10でのサンプリングクロックとして用いられるとともに、タイミングコントローラ17に供給される。またPLL回路11ではサーボクロックSCKを分周してデータクロックDCKが生成され、タイミングコントローラ17、レーザ制御部5に供給される。またA/D変換器13でのサンプリングクロックとして用いられる。
【0047】
タイミングコントローラ17はサーボクロックSCK、データクロックDCKに基づいて、各部に対して必要なタイミング信号を発生させる。例えば3相トラッキング動作のためのサーボピットを抽出するサンプリングタイミングPs、データ検出部14でのデコード動作のための同期タイミングDSY等を発生させる。
【0048】
PLL回路11、タイミングコントローラ17、トラッキングエラー生成部16により、いわゆる3相トラッキング制御によるトラッキングエラー信号TEが生成され、サーボコントローラ8に供給する。
【0049】
I/V変換マトリクスアンプ7からは、データ抽出のために用いるRF信号やプッシュプル信号が信号S4として出力される。この信号S4はクランプ回路12でRF信号の低周波数変動が除去され、A/D変換器13でデジタル化された信号S5となる。
【0050】
この信号S5はデータ検出部(即ちデコーダ)14に供給される。データ検出部14ではタイミングコントローラ17がデータクロックDCKに基づいて発生させる同期タイミングDSYに基づいてデータデコード処理を行ない、再生データDPBを得る。例えば波形等化処理、記録フォーマットとして採用されている変調処理に対する復調処理、エラー訂正処理等が行なわれ再生データDPBとしてエコードされる。この再生データDPBはインターフェイス部19を介してホストコンピュータ90に供給されることになる。
【0051】
図7は、図6に示される本実施の形態のレーザ制御部5の内部構成を概略的に示すブロック図である。レーザ制御部5は、レーザダイオードドライバ5a、記録パルス幅設定回路5b、及び記録パルス発生回路5cを備えて構成される。
【0052】
このレーザ制御部5の基本的な動作としては、記録パルス発生回路5cに入力されるデータクロックDCKに基づいたタイミングで記録パルスが生成されてレーザダイオードドライバ5aに供給される。レーザダイオードドライバ5aでは、例えば記録パルスについて、レーザダイオードを適正パワーで駆動するための増幅等を行なって所要のレベルとしたうえで、レーザ発光源4cのレーザダイオードに出力する。レーザダイオードドライバ5aにおけるレーザ(記録パルス)のパルス幅は記録パルス幅設定回路5bにより制御される。記録パルス幅設定回路5bは、コントローラ6から送信されるパルス幅設定制御信号SCに基づいて、例えば記録時と再生時とにそれぞれ適合する記録パルスのパルス幅を設定するようにされる。
【0053】
また、本実施の形態においては、上述のアシンメトリ補正のために、コントローラ6から記録パルスのパルス幅を補正する補正情報信号(後述する記録パルス幅補正値ΔP)が、記録パルス幅設定回路5bに対して入力されるようになっている。これにより記録パルス幅設定回路5bにおいては、上記補正情報信号に基づいて可変設定した記録パルスのパルス幅の情報をレーザダイオードドライバ5aに与える。この際、アシンメトリ補正のための記録パルスのパルス幅の設定は、データがN極の場合とS極の場合とで互いに異なるようにされることから、記録パルス幅設定回路5bに対してはエンコーダ25から記録データが入力されるようになっている。そして、記録パルス幅設定回路5bは、入力された記録データに対応する磁界極性を判断して、この磁界極性に対応した適正タイミングで記録パルスのパルス幅の設定を実行するように構成される。
【0054】
次に、上述した図21にて説明したようにして発生するオフセット量を検出して、パルス幅を可変設定する方法の一例について説明する。このような処理は、記録/再生装置を構成する光磁気ディスクドライバの出荷時に行われてもよいし、製品化の後にディスクをローディングした後における記録/再生動作の適正な実行動作をチェックするためのテスト書き込み/読出し時に行われるようにしてもよい。
【0055】
本実施の形態のアシンメトリ補正動作処理、即ちオフセット量の検出及びパルス幅の設定は、例えばコントローラ6により行うことができる。先ず、コントローラ6は、ディスク上の所定領域に対してテストパターンを記録するための動作が行われるように所要の機能回路部に対する各種制御処理を実行する。ここでは、記録されるテストパターンを、記録/再生系のデータ伝送方式として、パーシャルレスポンス(PR)伝送方式において、2進の入力信号に対して3値の受信レベルを検出するようにされたPR(1,1)伝送方式又はPR(1,0,−1)伝送方式を採る場合について説明する。なお、本実施の形態としてのアシンメトリ補正は、上記PR(1,1)伝送方式又はPR(1,0,−1)伝送方式以外のPR伝送方式やPR伝送方式以外の方式についても適用が可能であり、この場合には各伝送方式に対応するテストパターンが設定される。
【0056】
PR(1,1)伝送方式又はPR(1,0,−1)伝送方式に対応する場合、テストパターンとしては例えば[0000000000]のように論理値として[0]が所定数連続して形成されるデータ領域RHと、[0101010101]のようにして[0]と[1]が交互に繰り返されるパターンが所定数連続して形成されるデータ領域RMと、[1111111111]のように論理値として[1]が所定数連続して形成されるデータ領域RLとが連続するように形成される。先ず、このようなデータ配列によるテストパターンを、予め規定されたN極とS極の極性に対応させて記録するように処理を実行する。
【0057】
ここで、最初に記録されるテストパターンは、初期値のパルス幅を有する記録パルスにより記録されるものであることから、仮に光学ピックアップ4等から漏洩した外来磁界等の影響が存在するとすれば、上記図21による説明から分かるように、記録ピットにはアシンメトリが発生していることになる。
【0058】
そこで、テストパターンの記録動作が終了すると、コントローラ6はディスクに記録されたテストパターンの再生を実行する。テストパターンを再生した場合、データ領域RHを再生して得られるRF信号はレベルLHを有し、データ領域RMを再生して得られるRF信号はレベルLMを有し、データ領域RLを再生して得られるRF信号はレベルLLを有することとする。PR(1,1)伝送方式又はPR(1,0,−1)伝送方式において得られる3値の受信レベルのうち、レベルLHは最も高い受信レベルに対応し、レベルLMは中間の受信レベルに対応し、レベルLLは最も低い受信レベルに対応する。
【0059】
次に、コントローラ6はテストパターンの再生RF信号を入力して、上記レベルLH、LM、LLの値を検出する。そして、実際に得られたレベルLH、LM、LLの値に基づいて、再生RF信号のオフセットレベルΔL(図21(e)参照)を算出する。このオフセットレベルΔLは、図21(c)にて説明したディスクに実際に印加される変調磁界のオフセット量に対応して現れるものである。つまり本実施の形態では、再生RF信号のオフセットレベルΔLにより、変調磁界のオフセット量を検出するようにしていることになる。そして、オフセットレベルΔLは、例えば、ΔL=LM−(LH+LL)/2により算出することができる。
【0060】
算出されたオフセットレベルΔLについて、予め設定された閾値Thと比較してΔL<Thとされているか否かについて判別を行う。ここで、ΔL<Thであり、オフセットレベルΔLが閾値Thより小さいと判別された場合は処理を終了するが、オフセットレベルΔLが閾値Thより大きい場合は、算出されたオフセットレベルΔLを利用して、ΔP=ΔL×αにより、記録パルス幅補正値ΔPを求める。なお、係数αは、再生RF信号のオフセットレベルΔLを、記録パルス幅補正値ΔPとなるように変換するために予め設定される定数である。コントローラ6は、記録パルス幅補正値ΔPの情報を記録パルス幅設定回路5bに伝送する。そして、記録パルス幅設定回路5bは、入力された記録パルス幅補正値ΔPの情報信号に基づいて、レーザダイオードの駆動を行うように動作する。
【0061】
つまり外来磁界等の影響による磁界強度のオフセットがキャンセルされた適正状態で、ディスクに対する磁界の印加が行われることになる。これに応じて、実際にディスクに記録される記録ピットには、アシンメトリが発生せず、オフセットがキャンセルされた適正なレベルの再生信号が得られることになる。
【0062】
記録パルス幅設定回路5bでは、磁気ヘッド27により印加される磁界の極性に対応して、初期値の記録パルス幅に対して記録パルス幅補正値ΔPを加算又は減算した記録パルス幅に対応する補正後のパルス幅を有する記録パルスが適宜出力されるように制御される。これにより、記録動作としては、常に外来磁界がキャンセルされてアシンメトリがない記録ピットを形成することが可能となる。なお、最終的に算出されたオフセットレベルΔLが所定の閾値Th未満となるまで、記録パルス幅補正値ΔPの値を絞り込んでいくようにしてもよい。
【0063】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。例えば、オフセット量の検出は、上述したようにテストパターンを記録して検出することもできるが、例えば、磁界センサ等を装着して検出したオフセット磁界の大きさに基づいて、記録パルス幅を設定してもよい。
【0064】
次に、このようなアシンメトリ補正を行なう記録再生装置(ディスクドライブ装置)の具体例について説明する。本具体例に示すディスクドライブ装置は、従来の光磁気記録方式を採用したディスク状記録媒体に対して、このディスク状記録媒体の記録再生方式として通常用いられ記録フォーマットとは異なる信号方式を適用することによって、従来の光磁気記録媒体の記録容量を増加することを実現するものである。更に、高密度記録技術及び新規ファイルシステムを適用することによって、従来の光磁気記録媒体と筐体外形及び記録再生光学系に互換性を有しつつ、記録容量を飛躍的に増加することを可能にした記録形式を提供するものである。
【0065】
ここでは、先ず、ディスク状の光磁気記録媒体として、ミニディスク(登録商標)方式の記録媒体に適用した場合に関して説明する。ここでは、特に、通常用いられる記録形式とは異なる形式を適用することによって、従来の光磁気記録媒体を用いて、その記録容量を増加することを実現したディスクを「次世代MD1」とし、高密度記録可能な新規記録媒体に対して新規記録形式を適用することにより、記録容量の増加を実現したディスクを「次世代MD2」として説明する。
【0066】
以下では、次世代ディスクMD1及び次世代ディスクMD2の仕様例を説明するとともに、本発明に係るアドレス変換方法を適用してこれら両ディスクに対する記録データを生成する処理について説明する。
【0067】
1.ディスク仕様及びエリア構造
まず、従来のミニディスク、次世代MD1及び次世代MD2の仕様について図8を用いて説明する。ミニディスク(及びMD−DATA)の物理フォーマットは、以下のように定められている。トラックピッチは、1.6μm、ビット長は、0.59μm/bitとなる。また、レーザ波長λは、λ=780nmであり、光学ヘッドの開口率は、NA=0.45としている。記録方式としては、グルーブ(ディスク盤面上の溝)をトラックとして記録再生に用いるグルーブ記録方式を採用している。また、アドレス方式としては、ディスク盤面上にシングルスパイラルのグルーブを形成し、このグルーブの両側に対して所定の周波数(22.05KHz)で蛇行したウォブル(Wobble)を形成し、絶対アドレスを上記周波数を基準にFM変調してウォブルドグルーブトラックに記録する方式を採っている。なお、本明細書では、ウォブルとして記録される絶対アドレスをADIP(Address in Pregroove)ともいう。
【0068】
従来のMDでは、メインデータ部である32セクタにリンクセクタである4セクタを付加して合計36セクタを1クラスタ単位として記録を行っている。上記ADIP信号はクラスタアドレス、セクタアドレスから構成される。上記クラスタアドレスは、8ビットのクラスタHと8ビットのクラスタLとから構成され、セクタアドレスは、4ビットのセクタから構成される。
【0069】
また、従来のミニディスクでは、記録データの変調方式としてEFM(8−14変換)変調方式が採用されている。また、誤り訂正方式としては、ACIRC(Advanced Cross Interleave Reed−Solomon Code)を用いている。データインターリーブには、畳み込み型を採用している。これにより、データの冗長度は、46.3%となっている。
【0070】
また、従来のミニディスクにおけるデータの検出方式は、ビットバイビット方式であって、ディスク駆動方式としては、CLV(Constant Linear Velocity)が採用されている。CLVの線速度は、1.2m/sである。
【0071】
記録再生時の標準のデータレートは、133kB/s、記録容量は、164MB(MD−DATAでは、140MB)である。また、データの最小書換単位(単位クラスタ)は、上述のように32個のメインセクタと4個のリンクセクタによる36セクタで構成されている。
【0072】
続いて、本具体例として示す次世代MD1に関して説明する。次世代MD1は、上述した従来のミニディスクと記録媒体の物理的仕様は、同一である。そのため、トラックピッチは、1.6μm、レーザ波長λは、λ=780nmであり、光学ヘッドの開口率は、NA=0.45である。記録方式としては、グルーブ記録方式を採用している。また、アドレス方式は、ADIPを利用する。このように、ディスクドライブ装置における光学系の構成やADIPアドレス読出方式、サーボ処理は、従来のミニディスクと同様であるため、従来ディスクとの互換性が達成されている。
【0073】
次世代MD1は、記録データの変調方式として、高密度記録に適合したRLL(1−7)PP変調方式(RLL;Run Length Limited、PP:Parity preserve/Prohibit rmtr(repeated minimum transition runlength))を採用している。また、誤り訂正方式としては、より訂正能力の高いBIS(Burst Indicator Subcode)付きのRS−LDC(Reed Solomon−Long Distance Code)方式を用いている。
【0074】
具体的には、ホストアプリケーション等から供給されるユーザデータの2048バイトに4バイトのEDC(Error Detection Code)を付加した2052バイトを1セクタ(データセクタ、後述するディスク上の物理セクタとは異なる)とし、図9に示すように、Sector0〜Sector31の32セクタを304列×216行のブロックにまとめる。ここで、各セクタの2052バイトに対しては、所定の疑似乱数との排他的論理和(Ex−OR)をとるようなスクランブル処理が施される。このスクランブル処理されたブロックの各列に対して32バイトのパリティを付加して、304列×248行のLDC(Long Distance Code)ブロックを構成する。このLDCブロックにインターリーブ処理を施して、152列×496行のブロック(Interleaved LDC Block)とし、これを図10に示すように38列ずつ1列の上記BISを介して配列することで155列×496行の構造とし、さらに先頭位置に2.5バイト分のフレーム同期コード(Frame Sync)を付加して、1行を1フレームに対応させ、157.5バイト×496フレームの構造とする。この図10の各行が、後述する図16に示す1レコーディングブロック(クラスタ)内のデータ領域のFrame10〜Frame505の496フレームに相当する。
【0075】
以上のデータ構造において、データインターリーブは、ブロック完結型とする。これによりデータの冗長度は、20.50%になる。また、データの検出方式として、PR(1,2,1)MLによるビタビ復号方式を用いる。
【0076】
ディスク駆動方式には、CLV方式を用い、その線速度は、2.4m/sとする。記録再生時の標準データレートは、4.4MB/sである。この方式を採用することにより、総記録容量を300MBにすることができる。変調方式をEFMからRLL(1−7)PP変調方式とすることによって、ウインドウマージンが0.5から0.666となるため、1.33倍の高密度化が実現できる。また、データの最小書換単位であるクラスタは、16セクタ、64kBで構成される。このように記録変調方式をCIRC方式からBIS付きのRS−LDC方式及びセクタ構造の差異とビタビ復号を用いる方式にすることで、データ効率が53.7%から79.5%となるため、1.48倍の高密度化が実現できる。
【0077】
これらを総合すると、次世代MD1は、記録容量を従来ミニディスクの約2倍である300MBにすることができる。
【0078】
一方、次世代MD2は、例えば、磁壁移動検出方式(DWDD:Domain Wall Displacement Detection)等の高密度化記録技術を適用した記録媒体であって、上述した従来ミニディスク及び次世代MD1とは、物理フォーマットが異なっている。次世代MD2は、トラックピッチが1.25μm、ビット長が0.16μm/bitであり、線方向に高密度化されている。
【0079】
また、従来ミニディスク及び次世代MD1との互換を採るため、光学系、読出方式、サーボ処理等は、従来の規格に準じて、レーザ波長λは、λ=780nm、光学ヘッドの開口率は、NA=0.45とする。記録方式は、グルーブ記録方式、アドレス方式は、ADIPを利用した方式とする。また、筐体外形も従来ミニディスク及び次世代MD1と同一規格とする。
【0080】
但し、従来ミニディスク及び次世代MD1と同等の光学系を用いて、上述のように従来より狭いトラックピッチ及び線密度(ビット長)を読み取る際には、デトラックマージン、ランド及びグルーブからのクロストーク、ウォブルのクロストーク、フォーカス漏れ、CT信号等における制約条件を解消する必要がある。そのため、次世代MD2では、グルーブの溝深さ、傾斜、幅等を変更した点が特徴的である。具体的には、グルーブの溝深さを160nm〜180nm、傾斜を60°〜70°、幅を600nm〜800nmの範囲と定める。
【0081】
また、次世代MD2は、記録データの変調方式として、高密度記録に適合したRLL(1−7)PP変調方式(RLL;Run Length Limited、PP:Parity preserve/Prohibit rmtr(repeated minimum transition runlength))を採用している。また、誤り訂正方式としては、より訂正能力の高いBIS(Burst Indicator Subcode)付きのRS−LDC(Reed Solomon−Long Distance Code)方式を用いている。
【0082】
データインターリーブは、ブロック完結型とする。これによりデータの冗長度は、20.50%になる。またデータの検出方式は、PR(1,−1)MLによるビタビ復号方式を用いる。また、データの最小書換単位であるクラスタは、16セクタ、64kBで構成されている。
【0083】
ディスク駆動方式には、ZCAV(Zone Constant Angular Velocity)方式を用い、その線速度は、2.0m/sとする。記録再生時の標準データレートは、9.8MB/sである。したがって、次世代MD2では、DWDD方式及びこの駆動方式を採用することにより、総記録容量を1GBにできる。
【0084】
本具体例に示す次世代MD1の盤面上のエリア構造例を図11、図12に模式的に示す。次世代MD1は、従来ミニディスクと同じ媒体であって、ディスクの最内周側は、プリマスタードエリアとして、PTOC(Premasterd Table Of Contents)が設けられている。ここには、ディスク管理情報が物理的な構造変形によるエンボスピットとして記録されている。
【0085】
プリマスタードエリアより外周は、光磁気記録可能なレコーダブルエリアとされ、記録トラックの案内溝としてのグルーブが形成された記録再生可能領域である。このレコーダブルエリアの最内周側は、UTOC(User Table Of Contents)領域であって、このUTOC領域には、UTOC情報が記述されるとともに、プリマスタードエリアとの緩衝エリアや、レーザ光の出力パワー調整等のために用いられるパワーキャリブレーションエリアが設けられている。
【0086】
次世代MD2は、図12に示すように、高密度化を図るためにプリピットを用いない。したがって、次世代MD2には、PTOC領域がない。次世代MD2には、レコーダブルエリアのさらに内周領域に、著作権保護のための情報、データ改竄チェックのための情報、他の非公開情報等を記録するユニークIDエリア(Unique ID;UID)が設けられている。このUIDエリアは、次世代MD2に適用されるDWDD方式とは異なる記録方式で記録されている。
【0087】
なお、ここでは、次世代MD1及び次世代MD2に音楽データ用のオーディオトラックとデータトラックとをディスク上に混在記録することもできる。この場合、例えば、図13に示すように、データエリアに少なくとも1つのオーディオトラックが記録されたオーディオ記録領域AAと、少なくとも1つのデータトラックが記録されたPC用データ記録領域DAとがそれぞれ任意の位置に形成されることになる。
【0088】
一連のオーディオトラックやデータトラックは、ディスク上で必ずしも物理的に連続して記録される必要はなく、図13に示すように複数のパーツに分割して記録されていてもよい。パーツとは、物理的に連続して記録される区間を示す。すなわち、図13のように物理的に離れた2つのPCデータ記録領域が存在する場合でも、データトラックの数としては、1つの場合もあり、複数の場合もある。但し、図13は、次世代MD1の物理的仕様に関して示したものであるが、次世代MD2に関しても同様に、オーディオ記録領域AAとPC用データ記録領域DAとを混在して記録することができる。
【0089】
上述した物理的仕様を有する次世代MD1と次世代MD2との互換性を有した記録再生装置の具体例に関しては、後段で詳細に説明する。
【0090】
2.ディスクの管理構造
図14及び図15に基づいて、本具体例のディスクの管理構造を説明する。図14は、次世代MD1のデータ管理構造を示したものであり、図15は、次世代MD2のデータ管理構造を示したものである。
【0091】
次世代MD1では、上述したように、従来のミニディスクと同一の媒体であるため、次世代MD1では、従来ミニディスクで採用されているように書換不可能なエンボスピットによりPTOCが記録されている。このPTOCには、ディスクの総容量、UTOC領域におけるUTOC位置、パワーキャリブレーションエリアの位置、データエリアの開始位置、データエリアの終了位置(リードアウト位置)等が管理情報として記録されている。
【0092】
次世代MD1では、ADIPアドレス0000〜0002には、レーザの書込出力を調整するためのパワーキャリブレーションエリア(Rec Power Calibration Area)が設けられている。続く0003〜0005には、UTOCが記録される。UTOCには、トラック(オーディオトラック/データトラック)の記録・消去等に応じて書き換えられる管理情報が含まれ、各トラック及びトラックを構成するパーツの開始位置、終了位置等を管理している。また、データエリアにおいて未だトラックが記録されていないフリーエリア、すなわち書込可能領域のパーツも管理している。UTOC上では、PC用データ全体をMDオーディオデータによらない1つのトラックとして管理している。そのため、仮にオーディオトラックとデータトラックとを混在記録したとしても、複数のパーツに分割されたPC用データの記録位置を管理できる。
【0093】
また、UTOCデータは、このUTOC領域における特定のADIPクラスタに記録され、UTOCデータは、このADIPクラスタ内のセクタ毎に、その内容が定義されている。具体的には、UTOCセクタ0(このADIPクラスタ内の先頭のADIPセクタ)は、トラックやフリーエリアにあたるパーツを管理しており、UTOCセクタ1及びセクタ4は、トラックに対応した文字情報を管理している。また、UTOCセクタ2には、トラックに対応した記録日時を管理する情報が書き込まれる。
【0094】
UTOCセクタ0は、記録されたデータや記録可能な未記録領域、さらにデータの管理情報等が記録されているデータ領域である。例えば、ディスクにデータを記録する際、ディスクドライブ装置は、UTOCセクタ0からディスク上の未記録領域を探し出し、ここにデータを記録する。また、再生時には、再生すべきデータトラックが記録されているエリアをUTOCセクタ0から判別し、そのエリアにアクセスして再生動作を行う。
【0095】
なお、次世代MD1では、PTOC及びUTOCは、従来のミニディスクシステムに準拠する方式、ここではEFM変調方式により変調されたデータとして記録されている。したがって、次世代MD1は、EFM変調方式により変調されたデータとして記録された領域と、RS−LDC及びRLL(1−7)PP変調方式で変調された高密度データとして記録された領域とを有することになる。
【0096】
また、ADIPアドレス0032に記述されるアラートトラックには、従来ミニディスクのディスクドライバ装置に次世代MD1を挿入したとしても、この媒体が従来ミニディスクのディスクドライバ装置に対応していないことを知らせるための情報が格納されている。この情報は、「このディスクは、この再生装置に対応していないフォーマットです。」等の音声データ、或いは警告音データとしてもよい。また、表示部を備えるディスクドライバ装置であれば、この旨を表示するためのデータであってもよい。このアラートトラックは、従来ミニディスクに対応したディスクドライバ装置でも読取可能なように、EFM変調方式によって記録されている。
【0097】
ADIPアドレス0034には、次世代MD1のディスク情報を表したディスクディスクリプションテーブル(Disc Description Table;DDT)が記録される。DDTには、フォーマット形式、ディスク内論理クラスタの総数、媒体固有のID、このDDTの更新情報、不良クラスタ情報等が記述される。
【0098】
DDT領域からは、RS−LDC及びRLL(1−7)PP変調方式で変調された高密度データとして記録されるため、アラートトラックとDDTとの間には、ガードバンド領域が設けられている。
【0099】
また、RLL(1−7)PP変調方式で変調された高密度データが記録される最も若いADIPアドレス、すなわち、DDTの先頭アドレスには、ここを0000とする論理クラスタ番号(Logical Cluster Number;LCN)が付される。1論理クラスタは、65,536バイトであり、この論理クラスタが読み書き最小単位となる。なお、ADIPアドレス0006〜0031は、リザーブされている。
【0100】
続くADIPアドレス0036〜0038には、認証によって公開可能となるセキュアエリア(Secure Area)が設けられている。このセキュアエリアによって、データを構成する各クラスタの公開可・不可等の属性を管理している。特に、このセキュアエリアでは、著作権保護のための情報、データ改竄チェックのための情報等を記録する。また、このほかの各種の非公開情報を記録することができる。この公開不可領域は、特別に許可された特定外部機器のみが限定的にアクセスできるようになっており、このアクセス可能な外部機器を認証する情報も含まれる。
【0101】
ADIPアドレス0038からは、書込及び読取自由なユーザエリア(User Area)(任意データ長)とスペアエリア(Spare Area)(データ長8)とが記述される。ユーザエリアに記録されたデータは、LCNの昇順に並べたとき、先頭から2,048バイトを1単位としたユーザセクタ(User Sector)に区切られており、PC等の外部機器からは、先頭のユーザセクタを0000とするユーザセクタ番号(User Sector Number;USN)を付してFATファイルシステムにより管理されている。
【0102】
続いて、次世代MD2のデータ管理構造について図15を用いて説明する。次世代MD2は、PTOCエリアを持たない。そのため、ディスクの総容量、パワーキャリブレーションエリアの位置、データエリアの開始位置、データエリアの終了位置(リードアウト位置)等のディスク管理情報は、PDPT(PreFormat Disc Parameter Table)として全てADIP情報に含まれて記録されている。データは、BIS付きのRS−LDC及びRLL(1−7)PP変調方式で変調され、DWDD方式で記録されている。
【0103】
また、リードインエリア及びリードアウトエリアには、レーザパワーキャリブレーションエリア(Power Calibration Area;PCA)が設けられる。次世代MD2では、PCAに続くADIPアドレスを0000としてLCNを付ける。
【0104】
また、次世代MD2では、次世代MD1におけるUTOC領域に相当するコントロール領域が用意されている。図15には、著作権保護のための情報、データ改竄チェックのための情報、他の非公開情報等を記録するユニークIDエリア(Unique ID;UID)が示されているが、実際には、このUIDエリアは、リードイン領域のさらに内周位置に、通常のDWDD方式とは異なる記録方式で記録されている。
【0105】
次世代MD1及び次世代MD2のファイルは、ともにFATファイルシステムに基づいて管理される。例えば、各データトラックは、それぞれ独自にFATファイルシステムを持つ。或いは、複数のデータトラックにわたって1つのFATファイルシステムを記録するようにもできる。
【0106】
3.ADIPセクタ/クラスタ構造とデータブロック
続いて、本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2のADIPセクタ構造とデータブロックとの関係について図16を用いて説明する。従来のミニディスク(MD)システムでは、ADIPとして記録された物理アドレスに対応したクラスタ/セクタ構造が用いられている。本具体例では、説明の便宜上、ADIPアドレスに基づいたクラスタを「ADIPクラスタ」と記す。また、次世代MD1及び次世代MD2におけるアドレスに基づくクラスタを「レコーディングブロック(Recording Block)」あるいは「次世代MDクラスタ」と記す。
【0107】
次世代MD1及び次世代MD2では、データトラックは、図16に示すようにアドレスの最小単位であるクラスタの連続によって記録されたデータストリームとして扱われている。
【0108】
図16に示すように次世代MD1では、従来の1クラスタ(36セクタ)を2分割して、1レコーディングブロックを18セクタで構成し、次世代MD2では16セクタで構成する。
【0109】
図16に示す1レコーディングブロック(1次世代MDクラスタ)のデータ構造としては、10フレームのプリアンブルと、6フレームのポストアンブルと、496フレームのデータ部とからなる512フレームから構成されている。さらにこのレコーディングブロック内の1フレームは、同期信号領域と、データ、BIS、DSVとからなる。
【0110】
また、1レコーディングブロックの512フレームのうち、メインデータが記録される496フレームを16等分した各々をアドレスユニット(Address Unit)とよぶ。各アドレスユニットは、31フレームから成る。また、このアドレスユニットの番号をアドレスユニットナンバ(Address Unit Number;AUN)とよぶ。このAUNは、全てのアドレスユニットに付される番号であって、記録信号のアドレス管理に使用される。
【0111】
次世代MD1のように、ADIPに記述された物理的なクラスタ/セクタ構造を有する従来ミニディスクに対して、1−7PP変調方式で変調された高密度データを記録する場合、ディスクに元々記録されたADIPアドレスと、実際に記録するデータブロックのアドレスとが一致しなくなるという問題が生じる。ランダムアクセスは、ADIPアドレスを基準として行われるが、ランダムアクセスでは、データを読み出す際、所望のデータが記録された位置近傍にアクセスしても、記録されたデータを読み出せるが、データを書き込む際には、既に記録されているデータを上書き消去しないように正確な位置にアクセスする必要がある。そのため、ADIPアドレスに対応付けした次世代MDクラスタ/次世代MDセクタからアクセス位置を正確に把握することが重要となる。
【0112】
そこで、次世代MD1の場合、媒体表面上にウォブルとして記録されたADIPアドレスを所定規則で変換して得られるデータ単位によって高密度データクラスタを把握する。この場合、ADIPセクタの整数倍が高密度データクラスタになるようにする。この考え方に基づいて、従来ミニディスクに記録された1ADIPクラスタに対して次世代MDクラスタを記述する際には、各次世代MDクラスタを1/2ADIPクラスタ(18セクタ)区間に対応させる。
【0113】
したがって、次世代MD1では、従来のMDクラスタの1/2クラスタが最小記録単位(レコーディングブロック(Recording Block))として対応付けされている。
【0114】
一方、次世代MD2では、1クラスタが1レコーディングブロックとして扱われるようになっている。
【0115】
なお、本具体例では、前述したように、ホストアプリケーションから供給される2048バイト単位のデータブロックを1論理データセクタ(Logical Data Sector;LDS)とし、このとき同一レコーディングブロック中に記録される32個の論理データセクタの集合を論理データクラスタ(Logical Data Cluster;LDC)としている。
【0116】
以上説明したようなデータ構造とすることにより、次世代MDデータを任意位置へ記録する際、媒体に対してタイミングよく記録できる。また、ADIPアドレス単位であるADIPクラスタ内に整数個の次世代MDクラスタが含まれるようにすることによって、ADIPクラスタアドレスから次世代MDデータクラスタアドレスへのアドレス変換規則が単純化され、換算のための回路又はソフトウェア構成が簡略化できる。
【0117】
なお、図16では、1つのADIPクラスタに2つの次世代MDクラスタを対応付ける例を示したが、1つのADIPクラスタに3以上の次世代MDクラスタを配することもできる。このとき、1つの次世代MDクラスタは、16ADIPセクタから構成される点に限定されず、EFM変調方式とRLL(1−7)PP変調方式におけるデータ記録密度の差や次世代MDクラスタを構成するセクタ数、また1セクタのサイズ等に応じて設定することができる。
【0118】
図16においては、記録媒体上に記録するデータ構造を示したが、次に記録媒体上のグルーブウオ―ブルトラックに記録されているADIP信号を、後述する図20のADIP復調器38で復調した際のデータ構造に関してデータ構造に関して説明する。
【0119】
図17(a)には、次世代MD2のADIPのデータ構造が示され、図17(b)には、次世代MD1のADIPのデータ構造が示されている。
【0120】
次世代MD1では、同期信号と、ディスクにおけるクラスタ番号等を示すクラスタH(Cluster H)情報及びクラスタL(Cluster L)情報と、クラスタ内におけるセクタ番号等を含むセクタ情報(Sector)とが記述されている。同期信号は、4ビットで記述され、クラスタHは、アドレス情報の上位8ビットで記述され、クラスタLは、アドレス情報の下位8ビットで記述され、セクタ情報は、4ビットで記述される。また、後半の14ビットには、CRCが付加されている。以上、42ビットのADIP信号が各ADIPセクタに記録されている。
【0121】
また、次世代MD2では、4ビットの同期信号データと、4ビットのクラスタH(Cluster H)情報、8ビットのクラスタM(Cluster M)情報及び4ビットのクラスタL(Cluster L)情報と、4ビットのセクタ情報とが記述される。後半の18ビットには、BCHのパリティが付加される。次世代MD2でも同様に42ビットのADIP信号が各ADIPセクタに記録されている。
【0122】
ADIPのデータ構造では、上述したクラスタH(Cluster H)情報、クラスタM(Cluster M)及びクラスタL(Cluster L)情報の構成は、任意に決定できる。また、ここに他の付加情報を記述することもできる。例えば、図18に示すように、次世代MD2のADIP信号において、クラスタ情報を上位8ビットのクラスタH(Cluster H)と下位8ビットのクラスタL(Cluster L)とで表すようにし、下位8ビットで表されるクラスタLに替えて、ディスクコントロール情報を記述することもできる。ディスクコントロール情報としては、サーボ信号補正値、再生レーザパワー上限値、再生レーザパワー線速補正係数、記録レーザパワー上限値、記録レーザパワー線速補正係数、記録磁気感度、磁気−レーザパルス位相差、パリティ等があげられる。
【0123】
4.ディスクドライブ装置
図19及び図20を用いて、次世代MD1及び次世代MD2の記録再生に対応したディスクドライブ装置210の具体例について説明する。ここでは、ディスクドライブ装置210は、パーソナルコンピュータ(以下、PCと記す。)200と接続でき、次世代MD1及び次世代MD2をオーディオデータのほか、PC等の外部ストレージとして使用できる。
【0124】
ディスクドライブ装置210は、メディアドライブ部211と、メモリ転送コントローラ212と、クラスタバッファメモリ213と、補助メモリ214と、USBインターフェイス215,216と、USBハブ217と、システムコントローラ218と、オーディオ処理部219とを備える。
【0125】
メディアドライブ部211は、装填された従来ミニディスク、次世代MD1、及び次世代MD2等の個々のディスク290に対する記録/再生を行う。メディアドライブ部211の内部構成は、図20で後述する。
【0126】
メモリ転送コントローラ212は、メディアドライブ部211からの再生データやメディアドライブ部211に供給する記録データの送受制御を行う。クラスタバッファメモリ213は、メディアドライブ部211によってディスク290のデータトラックから高密度データクラスタ単位で読み出されたデータをメモリ転送コントローラ212の制御に基づいてバッファリングする。補助メモリ214は、メディアドライブ部211によってディスク290から読み出されたUTOCデータ、CATデータ、ユニークID、ハッシュ値等の各種管理情報や特殊情報をメモリ転送コントローラ212の制御に基づいて記憶する。
【0127】
システムコントローラ218は、USBインターフェイス216、USBハブ217を介して接続されたPC200との間で通信可能とされ、このPC200との間の通信制御を行って、書込要求、読出要求等のコマンドの受信やステイタス情報、その他の必要情報の送信等を行うとともに、ディスクドライブ装置210全体を統括制御している。
【0128】
システムコントローラ218は、例えば、ディスク290がメディアドライブ部211に装填された際に、ディスク290からの管理情報等の読出をメディアドライブ部211に指示し、メモリ転送コントローラ212によって読み出されたPTOC、UTOC等の管理情報等を補助メモリ214に格納させる。
【0129】
システムコントローラ218は、これらの管理情報を読み込むことによって、ディスク290のトラック記録状態を把握できる。また、CATを読み込ませることにより、データトラック内の高密度データクラスタ構造を把握でき、PC200からのデータトラックに対するアクセス要求に対応できる状態となる。
【0130】
また、ユニークIDやハッシュ値により、ディスク認証処理及びその他の処理を実行したり、これらの値をPC200に送信し、PC200上でディスク認証処理及びその他の処理を実行させる。
【0131】
システムコントローラ218は、PC200から、あるFATセクタの読出要求があった場合、メディアドライブ部211に対して、このFATセクタを含む高密度データクラスタの読出を実行する旨の信号を与える。読み出された高密度データクラスタは、メモリ転送コントローラ212によってクラスタバッファメモリ213に書き込まれる。但し、既にFATセクタのデータがクラスタバッファメモリ213に格納されていた場合、メディアドライブ部211による読出は必要ない。
【0132】
このとき、システムコントローラ218は、クラスタバッファメモリ213に書き込まれている高密度データクラスタのデータから、要求されたFATセクタのデータを読み出す信号を与え、USBインターフェイス215,USBハブ217を介して、PC200に送信するための制御を行う。
【0133】
また、システムコントローラ218は、PC200から、あるFATセクタの書込要求があった場合、メディアドライブ部211に対して、このFATセクタを含む高密度データクラスタの読出を実行させる。読み出された高密度データクラスタは、メモリ転送コントローラ212によってクラスタバッファメモリ13に書き込まれる。但し、既にこのFATセクタのデータがクラスタバッファメモリ213に格納されていた場合は、メディアドライブ部211による読出は必要ない。
【0134】
また、システムコントローラ218は、PC200から送信されたFATセクタのデータ(記録データ)をUSBインターフェイス215を介してメモリ転送コントローラ212に供給し、クラスタバッファメモリ213上で該当するFATセクタのデータの書き換えを実行させる。
【0135】
また、システムコントローラ218は、メモリ転送コントローラ212に指示して、必要なFATセクタが書き換えられた状態でクラスタバッファメモリ213に記憶されている高密度データクラスタのデータを記録データとしてメディアドライブ部211に転送させる。このとき、メディアドライブ部211は、装着されている媒体が従来ミニディスクであればEFM変調方式で、次世代MD1又は次世代MD2であればRLL(1−7)PP変調方式で高密度データクラスタの記録データを変調して書き込む。
【0136】
なお、本具体例として示すディスクドライブ装置210において、上述した記録再生制御は、データトラックを記録再生する際の制御であり、MDオーディオデータ(オーディオトラック)を記録再生する際のデータ転送は、オーディオ処理部219を介して行われる。
【0137】
オーディオ処理部219は、入力系として、例えば、ライン入力回路/マイクロフォン入力回路等のアナログ音声信号入力部、A/D変換器、及びデジタルオーディオデータ入力部を備える。また、オーディオ処理部219は、ATRAC圧縮エンコーダ/デコーダ、圧縮データのバッファメモリを備える。さらに、オーディオ処理部219は、出力系として、デジタルオーディオデータ出力部、D/A変換器及びライン出力回路/ヘッドホン出力回路等のアナログ音声信号出力部を備えている。
【0138】
ディスク290に対してオーディオトラックが記録されるのは、オーディオ処理部219にデジタルオーディオデータ(又は、アナログ音声信号)が入力される場合である。入力されたリニアPCMデジタルオーディオデータ、或いはアナログ音声信号で入力された後、A/D変換器で変換されて得られたリニアPCMオーディオデータは、ATRAC圧縮エンコードされ、バッファメモリに蓄積される。その後、所定タイミング(ADIPクラスタ相当のデータ単位)でバッファメモリから読み出され、メディアドライブ部211に転送される。
【0139】
メディアドライブ部211では、転送された圧縮データをEFM変調方式又はRLL(1−7)PP変調方式で変調してディスク290にオーディオトラックとして書き込む。
【0140】
メディアドライブ部211は、ディスク290からオーディオトラックを再生する場合、再生データをATRAC圧縮データ状態に復調してオーディオ処理部219に転送する。オーディオ処理部219は、ATRAC圧縮デコードを行ってリニアPCMオーディオデータとし、デジタルオーディオデータ出力部から出力する。或いは、D/A変換器によりアナログ音声信号としてライン出力/ヘッドホン出力を行う。
【0141】
なお、この図19に示す構成は、一例であって、例えば、ディスクドライブ装置210をPC200に接続してデータトラックのみ記録再生する外部ストレージ機器として使用する場合は、オーディオ処理部219は、不要である。一方、オーディオ信号を記録再生することを主たる目的とする場合、オーディオ処理部219を備え、さらにユーザインターフェイスとして操作部や表示部を備えることが好適である。また、PC200との接続は、USBに限らず、例えば、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers,Inc.:アメリカ電気・電子技術者協会)の定める規格に準拠した、いわゆるIEEE1394インターフェイスのほか、汎用の接続インターフェイスが適用できる。
【0142】
続いて、従来ミニディスク、次世代MD1及び次世代MD2を記録再生するためのメディアドライブ部211の構成を図20を用いて、さらに詳細に説明する。
【0143】
メディアドライブ部211は、従来ミニディスク、次世代MD1及び次世代MD2を記録再生するために、特に、記録処理系として、従来ミニディスクの記録のためのEFM変調・ACIRCエンコードを実行する構成と、次世代MD1及び次世代MD2の記録のためのRLL(1−7)PP変調・RS−LDCエンコードを実行する構成とを備える点が特徴的である。また、再生処理系として、従来ミニディスクの再生のためのEFM復調・ACIRCデコードを実行する構成と、次世代MD1及び次世代MD2の再生にPR(1,2,1)ML及びビタビ復号を用いたデータ検出に基づくRLL(1−7)復調・RS−LDCデコードを実行する構成を備えている点が特徴的である。
【0144】
メディアドライブ部211は、装填されたディスク290をスピンドルモータ221によってCLV方式又はZCAV方式にて回転駆動する。記録再生時には、このディスク290に対して、光学ヘッド222からレーザ光が照射される。
【0145】
光学ヘッド222は、記録時に記録トラックをキュリー温度まで加熱するための高レベルのレーザ(記録パルス)出力を行い、また再生時には、磁気カー効果により反射光からデータを検出するための比較的低レベルのレーザ出力を行う。このため、光学ヘッド222は、レーザ出力手段としてのレーザダイオード、偏光ビームスプリッタや対物レンズ等からなる光学系及び反射光を検出するためのディテクタが搭載されている。光学ヘッド222に備えられる対物レンズとしては、例えば2軸機構によってディスク半径方向及びディスクに接離する方向に変位可能に保持されている。
【0146】
ここで、上述した如く、光ピックアップ等からの漏れ磁界及びディスクの隣接トラックからの浮遊磁界等による記録信号のアシンメトリを補正するため、本実施の形態においては、この光学ヘッド222から出力される記録パルスのパルス幅が可変設定される。即ち、後述するドライブコントローラ241により、アシンメトリを補正するための記録パルスのパルス幅補正値が算出され、これがパルス幅補正情報として、例えばドライブコントロール241内に設けられえた図示せぬ記録パルス幅設定回路に供給される。そして、記録パルス設定回路において、記録パルスのパルス幅が設定され、後述するレーザドライバ249へ供給され、こうして、光学ヘッド222から出力される記録パルスのパルス幅が設定される。なお、このようなパルス幅の設定は、後述するレーザドライバ/APC249にて行ってもよい。
【0147】
また、本具体例では、媒体表面の物理的仕様が異なる従来ミニディスク及び次世代MD1と、次世代MD2とに対して最大限の再生特性を得るために、両ディスクに対してデータ読取り時のビットエラーレートを最適化できる位相補償板を、光学ヘッド222の読取光光路中に設ける。
【0148】
ディスク290を挟んで光学ヘッド222と対向する位置には、磁気ヘッド223が配置されている。磁気ヘッド223は、記録データによって変調された磁界をディスク290に印加する。また、図示しないが光学ヘッド222全体及び磁気ヘッド223をディスク半径方向に移動させためのスレッドモータ及びスレッド機構が備えられている。
【0149】
このメディアドライブ部211では、光学ヘッド222、磁気ヘッド223による記録再生ヘッド系、スピンドルモータ221によるディスク回転駆動系のほかに、記録処理系、再生処理系、サーボ系等が設けられる。記録処理系としては、従来ミニディスクに対する記録時にEFM変調、ACIRCエンコードを行う部位と、次世代MD1及び次世代MD2に対する記録時にRLL(1−7)PP変調、RS−LDCエンコードを行う部位とが設けられる。
【0150】
また、再生処理系としては、従来ミニディスクの再生時にEFM変調に対応する復調及びACIRCデコードを行う部位と、次世代MD1及び次世代MD2の再生時にRLL(1−7)PP変調に対応する復調(PR(1,2,1)ML及びビタビ復号を用いたデータ検出に基づくRLL(1−7)復調)、RS−LDCデコードを行う部位とが設けられる。
【0151】
光学ヘッド222のディスク290に対するレーザ照射によりその反射光として検出された情報(フォトディテクタによりレーザ反射光を検出して得られる光電流)は、RFアンプ224に供給される。RFアンプ224では、入力された検出情報に対して電流−電圧変換、増幅、マトリクス演算等を行い、再生情報としての再生RF信号、トラッキングエラー信号TE、フォーカスエラー信号FE、グルーブ情報(ディスク290にトラックのウォブリングにより記録されているADIP情報)等を抽出する。
【0152】
従来ミニディスクの再生時には、RFアンプで得られた再生RF信号は、コンパレータ225、PLL回路226を介して、EFM復調部227及びACIRCデコーダ228で処理される。再生RF信号は、EFM復調部227で2値化されてEFM信号列とされた後、EFM復調され、さらにACIRCデコーダ228で誤り訂正及びデインターリーブ処理される。オーディオデータであれば、この時点でATRAC圧縮データの状態となる。このとき、セレクタ229は、従来ミニディスク信号側が選択されており、復調されたATRAC圧縮データがディスク290からの再生データとしてデータバッファ230に出力される。この合、図19のオーディオ処理部219に圧縮データが供給される。
【0153】
一方、次世代MD1又は次世代MD2の再生時には、RFアンプで得られた再生RF信号は、A/D変換回路231、イコライザ232、PLL回路233、PRML回路234を介して、RLL(1−7)PP復調部235及びRS−LDCデコーダ236で信号処理される。再生RF信号は、RLL(1−7)PP復調部235において、PR(1,2,1)ML及びビタビ復号を用いたデータ検出によりRLL(1−7)符号列としての再生データを得て、このRLL(1−7)符号列に対してRLL(1−7)復調処理が行われる。さらに、RS−LDCデコーダ236にて誤り訂正及びデインターリーブ処理される。
【0154】
この場合、セレクタ2229は、次世代MD1・次世代MD2側が選択され、復調されたデータがディスク290からの再生データとしてデータバッファ230に出力される。このとき、図19のメモリ転送コントローラ212に対して復調データが供給される。
【0155】
RFアンプ224から出力されるトラッキングエラー信号TE、フォーカスエラー信号FEは、サーボ回路237に供給され、グルーブ情報は、ADIPデコータ238に供給される。
【0156】
ADIPデコータ238は、グルーブ情報に対してバンドパスフィルタにより帯域制限してウォブル成分を抽出した後、FM復調、バイフェーズ復調を行ってADIPアドレスを抽出する。抽出された、ディスク上の絶対アドレス情報であるADIPアドレスは、従来ミニディスク及び次世代MD1の場合であれば、MDアドレスデコーダ239を介し、次世代MD2の場合であれば、次世代MD2アドレスデコーダ240を介してドライブコントローラ241に供給される。
【0157】
ドライブコントローラ241では、各ADIPアドレスに基づいて、所定の制御処理を実行する。またグルーブ情報は、スピンドルサーボ制御のためにサーボ回路237に戻される。
【0158】
サーボ回路237は、例えばグルーブ情報に対して再生クロック(デコード時のPLL系クロック)との位相誤差を積分して得られる誤差信号に基づき、CLVサーボ制御及びZCAVサーボ制御のためのスピンドルエラー信号を生成する。
【0159】
またサーボ回路237は、スピンドルエラー信号や、上記のようにRFアンプ24から供給されたトラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号、或いはドライブコントローラ241からのトラックジャンプ指令、アクセス指令等に基づいて各種サーボ制御信号(トラッキング制御信号、フォーカス制御信号、スレッド制御信号、スピンドル制御信号等)を生成し、モータドライバ242に対して出力する。すなわち、上記サーボエラー信号や指令に対して位相補償処理、ゲイン処理、目標値設定処理等の必要処理を行って各種サーボ制御信号を生成する。
【0160】
モータドライバ242では、サーボ回路237から供給されたサーボ制御信号に基づいて所定のサーボドライブ信号を生成する。ここでのサーボドライブ信号としては、2軸機構を駆動する2軸ドライブ信号(フォーカス方向、トラッキング方向の2種)、スレッド機構を駆動するスレッドモータ駆動信号、スピンドルモータ221を駆動するスピンドルモータ駆動信号となる。このようなサーボドライブ信号により、ディスク290に対するフォーカス制御、トラッキング制御、及びスピンドルモータ221に対するCLV制御又はZCAV制御が行われる。
【0161】
ディスク290に対して記録動作が実行される際には、図19に示したメモリ転送コントローラ212から高密度データ、或いはオーディオ処理部219からの通常のATRAC圧縮データが供給される。
【0162】
従来ミニディスクに対する記録時には、セレクタ243が従来ミニディスク側に接続され、ACIRCエンコーダ244及びEFM変調部245が機能する。この場合、オーディオ信号であれば、オーディオ処理部219からの圧縮データは、ACIRCエンコーダ244でインターリーブ及びエラー訂正コード付加が行われた後、EFM変調部245においてEFM変調される。EFM変調データがセレクタ243を介して磁気ヘッドドライバ246に供給され、磁気ヘッド223がディスク290に対してEFM変調データに基づいた磁界印加を行うことで変調されたデータが記録される。
【0163】
次世代MD1及び次世代MD2に対する記録時には、セレクタ243が次世代MD1・次世代MD2側に接続され、RS−LCDエンコーダ247及びRLL(1−7)PP変調部248が機能する。この場合、メモリ転送コントローラ212から送られた高密度データは、RS−LCDエンコーダ247でインターリーブ及びRS−LDC方式のエラー訂正コード付加が行われた後、RLL(1−7)PP変調部248にてRLL(1−7)変調される。
【0164】
RLL(1−7)符号列に変調された記録データは、セレクタ243を介して磁気ヘッドドライバ246に供給され、磁気ヘッド223がディスク290に対して変調データに基づいた磁界印加を行うことでデータが記録される。
【0165】
レーザドライバ/APC249は、上記のような再生時及び記録時においてレーザダイオードにレーザ発光動作を実行させるが、いわゆるAPC(Automatic Laser Power Control)動作も行う。具体的には、図示しないが、光学ヘッド222内には、レーザパワーモニタ用のディテクタが設けられており、このモニタ信号がレーザドライバ/APC249にフィードバックされるようになっている。レーザドライバ/APC249は、モニタ信号として得られた現在のレーザパワーを予め設定されているレーザパワーと比較して、その誤差分をレーザ駆動信号に反映させることによって、レーザダイオードから出力されるレーザパワーが設定値で安定化されるように制御している。ここで、レーザパワーは、ドライブコントローラ241によって、再生レーザパワー及び記録レーザパワーとしての値がレーザドライバ/APC249内部のレジスタにセットされる。
【0166】
ドライブコントローラ241は、システムコントローラ218からの指示に基づいて、以上の各動作(アクセス、各種サーボ、データ書込、データ読出の各動作)が実行されるように各構成を制御する。なお、図20において一点鎖線で囲った各部は、1チップの回路として構成することもできる。
【0167】
ところで、ディスク290が図13のように、予めデータトラック記録領域とオーディオトラック記録領域とが分割して領域設定されている場合、システムコントローラ218は、記録再生するデータがオーディオトラックかデータトラックかに応じて、設定された記録領域に基づいたアクセスをメディアドライブ部211のドライブコントローラ241に指示することになる。
【0168】
また、装着されたディスク290に対して、PC用のデータ又はオーディオデータの何れか一方のみを記録許可し、これ以外のデータの記録を禁止する制御を行うようにもできる。すなわち、PC用のデータとオーディオデータとを混在しないように制御することもできる。
【0169】
従って、本具体例として示すディスクドライブ装置210は、上述した構成を備えることにより、従来ミニディスク、次世代MD1及び次世代MD2の間の互換性を実現できると共に、光ピックアップ等からの漏れ磁界及びディスクの隣接トラックからの浮遊磁界等による記録信号の非対称性を高精度且つ高効率で補正することができる。
【0170】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明に係るデータ記録装置は、記録データにより変調した変調磁界を記録磁界として記録媒体に対して印加すると共に、該記録媒体の記録面に対して記録パルスを照射することにより該記録媒体へのデータ記録を行うデータ記録装置において、上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定するレーザ光出力制御手段を有するので、オフセットにより生じる記録ピットのアシンメトリを補正して、記録・再生特性を向上させ、また記録装置及び光磁気ディスクによるバラツキを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)及び(b)は、夫々光磁気ディスクに磁界変調パルス記録を行う様子を示す模式図及び磁界変調パルス記録時に印加される記録磁界及び記録パルスを示す図である。
【図2】縦軸に保持力をとり、横軸に温度をとって、光磁気ディスク材料の保持力の温度依存性を示すグラフ図である。
【図3】オフセット磁界とアシンメトリとの関係を示す図であって、(a)は矢印B方向にディスクが回転する際の光磁気ディスクの記録ピットを示す模式図、(b)は記録磁界を示す図、(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び(d)は記録パルスを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるアシンメトリ補正方法を示す図であって、(a)は矢印B方向にディスクが回転している場合の記録ピットを示す模式図、(b)は記録磁界を示す図、(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び(d)は記録パルスを示す図である。
【図5】アシンメトリ補正方法の他の例を示す図であって、(a)は矢印B方向にディスクが回転している場合の記録ピットを示す模式図、(b)は記録磁界を示す図、(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び(d)は記録パルスを示す図である。
【図6】本実施の形態における記録再生装置を示すブロック図である。
【図7】レーザ制御部の内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2、並びに従来のミニディスクの仕様を説明する図である。
【図9】本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2における誤り訂正方式のBIS付きRS−LDCブロックを説明する図である。
【図10】本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2の1レコーディングブロック内のBIS配置を説明する図である。
【図11】本発明の具体例として示す次世代MD1のディスク盤面上のエリア構成を説明する模式図である。
【図12】本発明の具体例として示す次世代MD2のディスク盤面上のエリア構成を説明する模式図である。
【図13】本発明の具体例として示す次世代MD1のディスクにオーディオデータとPC用データとを混在記録した場合の盤面上のエリア構成を説明する模式図である。
【図14】本発明の具体例として示す次世代MD1のデータ管理構造を説明する模式図である。
【図15】本発明の具体例として示す次世代MD2のデータ管理構造を説明する模式図である。
【図16】本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2のADIPセクタ構造とデータブロックとの関係を説明する模式図である。
【図17】(a)は、次世代MD2のADIPデータ構造を示す模式図であり、(b)は、次世代MD1のADIPデータ構造を示す模式図である。
【図18】本発明の具体例として示す次世代MD2のデータ管理構造の変形例を説明する模式図である。
【図19】本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2に対して互換性を有して記録再生を行うディスクドライブ装置を説明するブロック図である。
【図20】上記ディスクドライブ装置のメディアドライブ部を説明するブロック図である。
【図21】(a)は、変調磁界の極性を示す図、(b)はレーザダイオードを発光させるためにレーザダイオードドライバ5aから出力される記録パルスの出力タイミングを示す図、(c)は磁気ヘッドから出力される磁界波形、及び(d)はオフセットが与えられた磁界によりディスクの記録が行われた場合の記録ピットの記録状態を示す図である。
【符号の説明】
1 ディスク、2 スピンドルモータ、3 スピンドル制御部、4 光学ピックアップ、4a 対物レンズ、4b 2軸機構、4c レーザ光源、4d ディテクタ、4e 光学系、5 レーザ制御部、5a レーザダイオードドライバ、5b 記録パルス幅設定回路、5c 記録パルス発生回路、6 コントローラ、7 I/V変換マトリクスアンプ、8 サーボコントローラ、8a 位相補償回路、8b 2軸ドライバ、9,12 クランプ回路、10,13 A/D変換器、11 PLL回路、14 データ検出部、16 トラッキングエラー生成部、16a サンプルホールド回路、16b エラー信号生成回路、17 タイミングコントローラ、19 インターフェイス部、25 エンコーダ、26 磁気ヘッドドライバ、27 磁気ヘッド、90 ホストコンピュータ、100 光磁気ディスク、101 磁気ヘッド、102 光学ピックアップ、P1,P2,P3記録パルス、D1,D2 記録磁界、T1,T2,T3 盤面温度、d1,d2,d3 保持力
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁界変調パルス記録の光磁気ディスクにデータを記録するデータ記録装置、データ記録方法及びプログラムに関し、特に、データ記録時の記録光磁気ディスク自身又は装置から発生する磁界による影響の低減を図ったデータ記録装置、データ記録方法及びプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
可搬性メディアとしての光ディスク、光磁気ディスクなどのディスク状記録媒体が普及している。特にデータ書換可能な光磁気ディスク(MOディスク)などはコンピュータユースのメディアとしても好適とされている。
【0003】
上記のような光磁気ディスクに対応する記録/再生装置としては、そのデータ記録方式として磁界変調方式を採るものが知られている。磁界変調方式では、記録データにより変調した磁界を、磁気ヘッドからディスクの記録面に印加すると共に、レーザ光を一定の光量継続照射(単純磁界変調方式)、又は記録データに同期してパルス発光させる(レーザストローブ磁界変調方式)ようにしている。これにより、記録データに応じたN又はS極の磁界がディスクの記録面に印加されて、磁界情報としてのデータが記録されることになる。このような、磁界変調方式では原理的に記録ピット(記録信号)のアシンメトリ(非対称性)が少ないことが知られており、これにより読み出しデータのレベルもシビアなものが得られるために、例えば、パーシャルレスポンス方式等の多値検出方式を採用する場合にも有効とされている。
【0004】
ところが、上記のような磁界変調方式でも、光学ピックアップにおいてレンズを変位させるためのコイル等にて発生する磁界が外部に漏洩して、この漏洩磁界が、磁気ヘッドからディスクに印加される変調磁界に影響を与え、これが要因となってディスクに記録される記録ピットにアシンメトリが発生する場合がある。そして、アシンメトリが発生した記録ピットについてデータ読出しを行った場合、例えば、再生RF信号にはアシンメトリの程度に対応したレベルのオフセットが与えられることになる。このように再生信号にオフセットがかかった場合、正確なレベル検出が行われなくなる可能性があり、それだけ再生データの信頼性が損なわれることになる。
【0005】
即ち、磁界変調パルス記録の光磁気ディスクドライブの場合、光ピックアップのアクチュエータからの漏れ磁界やディスクの隣接トラックからの浮遊磁界により、記録時に記録磁界がオフセットし、記録ピットにアシンメトリが生じてしまう。
【0006】
以下、光学ピックアップ等からの漏洩磁界の影響によりアシンメトリが発生する過程について図21を参照して説明する。ここでは、レーザストローブ磁界変調方式により記録が行われる場合について説明する。
【0007】
図21(b)はレーザダイオードを発光させるためにレーザダイオードドライバから出力される記録パルスの出力タイミングであり、期間t1〜t2、期間t2〜t3、期間t3〜t4において、それぞれ図に示すようなタイミングで所定の一定レベルにより記録パルスが出力される。ここでは、各期間t1〜t2、期間t2〜t3、期間t3〜t4に対応して磁気ヘッドから出力される変調磁界の極性は、図21(a)に示すようにそれぞれN、S、Nであるとする。そして、上記図21(a)及び(b)に示す動作が行われることで、実際にディスクに記録されることになる磁界波形は、結果的に図21(c)に示すようなものとなる。ここで、特に外来磁界等の影響が何もなければ、図21(c)に示す磁界波形は、磁気ヘッドから出力される変調磁界そのものの特性とほぼ一致することになる。従って、一点鎖線Fで示す位置が0レベルとされてN極側とS極側の磁界強度のバランスが良好に得られる状態となる。これに対して、例えば光学ピックアップにおいて光学レンズの2軸機構にて発生した磁界が外部に漏洩する等して、磁気ヘッドから出力される変調磁界等に対して何らかの外来磁界が影響する場合は、上記外来磁界の成分が磁気ヘッドから出力される変調磁界に影響することによって、例えば、図21(c)に示す磁界波形に対してオフセットがかかる状態となって、N極側とS極側の磁界強度のバランスが崩れて何れか一方に偏ることになる。ここでは具体例として、破線Gが0レベルとされてN極側の磁界強度が適正状態よりも弱くなり、これに対してS極側の磁界強度が適正状態より強くなった状態が示されている。
【0008】
図21(d)は、このようにして、オフセットが与えられた磁界によりディスクの記録が行われた場合の記録ピットの記録状態を示す図である。図21(d)は、ディスクに印加される磁界強度としてN極が弱くなるのに対してS極が強くなったことにより、N極となる記録ピットの径は適正状態よりも小さくなり、S極となる記録ピットの径は適正状態よりも大きくなった状態が示されている。つまり、このようにして記録ピットのアシンメトリが発生する。
【0009】
この図21(d)に示すような記録ピットを再生した場合には、例えば再生信号としては図21(e)に示す波形が得られる。ここで記録ピットのアシンメトリがなお適正状態であれば一点鎖線Hで示す位置が0レベルとなるが、記録ピットとしてアシンメトリが発生したことにより、破線Iで示す位置が0レベルとなって再生信号にもオフセットがかかることになる。このようにして発生するアシンメトリの程度は、例えば光学ピックアップ等からの漏洩磁界強度によって決定されるため、記録/再生装置を構成する光磁気ディスクドライバ毎に固有のものとなる。
【0010】
このような外来磁界等の影響による記録ピットのアシンメトリの発生を防止して、正確なデータ再生が行われるようにすることを目的としたデータ記録装置が下記特許文献1に記載されている。
【0011】
この特許文献1に記載のデータ記録装置においては、記録媒体に対して所定の検出用データを記録する検出用データ記録制御手段と、記録媒体に記録された検出用データを読出して得られる再生信号のオフセットレベルに基づいて、上記記録磁界のオフセット量を判別する判別手段と、この判別手段により判別された記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記レーザ光の出力パワーを可変設定することのできるレーザ光出力制御手段とを備えることにより、記録媒体に印加される記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、レーザ光の出力パワーが可変設定され、この出力パワーが可変設定されたレーザ光が記録時に照射されることによって、実際に記録媒体に印加される記録磁界としてはオフセットがキャンセルされた適正ものとすることができる。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−188382号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アシンメトリが生じてしまう現象は、記録ピットが小さくなるにつれ、影響が大きくなり、大容量化の障害となっており、上記特許文献1に記載の技術のように、オフセット量をキャンセルするため、出力パルスのパワーを変化させると、高精細なマークを記録するような場合、記録ピットの品位が低下する場合がある。また、オフセット量をキャンセルするために出力パルスのピークパワーを増減させるとエネルギーロスが大きいという問題点がある。
【0014】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、光ピックアップ等からの漏れ磁界及びディスクの隣接トラックからの浮遊磁界等による記録信号の非対称性を高精度且つ高効率で補正することができるデータ記録装置及びデータ記録方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するために、本発明に係るデータ記録装置は、記録データにより変調した変調磁界を記録磁界として記録媒体に対して印加すると共に、該記録媒体の記録面に対して記録パルスを照射することにより該記録媒体へのデータ記録を行うデータ記録装置において、上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定するレーザ光出力制御手段を有することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、記録装置の光ピックアップ等から発生する漏洩磁界又は光磁気ディスク自体からの漏洩磁界により生じる記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、記録パルスのパルス幅を可変に設定することで、所望の位置で磁界を反転させるため、オフセットによる記録ピット(記録マーク)のアシンメトリを補正する。
【0017】
また、上記記録磁界のオフセット量を検出するオフセット量検出手段を有し、上記レーザ光出力制御手段は、上記オフセット量検出手段により検出された上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定することができ、例えば上記記録媒体に対して所定の検出用データを記録する検出用データ記録手段と、上記記録媒体に記録された検出用データを読出して得られる再生信号のオフセットレベルに基づいて、上記記録磁界のオフセット量を判別する判別手段とからなるオフセット量検出手段を設ける等することができる。
【0018】
更に、上記記録パルスは、クロック毎に印加されることができ、高精細なマークを記録することができる。
【0019】
本発明に係るデータ記録方法は、記録データにより変調した変調磁界を記録磁界として記録媒体に対して印加すると共に、該記録媒体の記録面に対して記録パルスを照射することにより該記録媒体へのデータ記録を行うデータ記録方法において、上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定するレーザ光出力制御工程を有することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態は、本発明を磁界変調パルス記録の光磁気ディスク等にデータを記録するデータ記録装置に適用したものである。
【0021】
図1(a)及び(b)は、夫々光磁気ディスクに磁界変調パルス記録を行う様子を示す模式図及び磁界変調パルス記録時に印加される記録磁界及び記録パルスを示す図である。ここで、図1(a)においては、矢印Aで示すスポットの進行方向光に、磁気ヘッド101及び光学ピックアップ102を移動してマークを記録する様子を示す。なお、データ記録再生装置の詳細については後述する。
【0022】
磁界変調パルス記録では、光磁気ディスク100に対して、図1(b)に示すように、記録ビーム(記録パルス)Pをクロック毎にパルスとして印加し、この記録パルスPに同期して、記録磁界Dを加えることにより図1(a)に示すように、記録ピット103を記録する。
【0023】
図2は、縦軸に保持力をとり、横軸に温度をとって、光磁気ディスク材料の保持力の温度依存性を示すグラフ図である。図2に示すように、光磁気ディスク材料は、温度が高くなるほど保持力は小さくなる。従って、このような光磁気ディスク材料の保持力の温度依存性から、磁界強度と盤面上との温度の関係を変えることにより、マークのエッジの位置を変えることができる。
【0024】
即ち、図1(a)に示すように、光磁気ディスク100のレーザビーム(記録パルス)が照射された部位が昇温し、自発磁化が消失する臨界温度であるキュリー(Curie)点以上又は近傍温度まで到達すると自発磁化が消滅するか、又は極めて小さくなる。このため、外部から適当な強度の磁界を印加することにより、上記部位の自発磁化を一定方向に揃えることができる。また、本実施の形態のように、記録パルスをクロック毎のパルスとして印加することにより、ピットのエッジが鮮明になり、高密度な記録ピットを形成することができる。
【0025】
本実施の形態においては、このような記録方式において、記録装置が発生する漏洩磁界及び光磁気ディスク自身の漏洩磁界によるオフセットをキャンセルして記録ピットのアシンメトリを補正するものである。記録装置が発生する漏洩磁界としては、光学ピックアップ102のアクチュエータからの漏れ磁界、シーク動作を行うためのモータが発生する磁界、光磁気ディスクを光磁気記録装置内に固定するためのクランプ磁界が発生する磁界、及びその他光磁気ディスクのローディング等種々の動作を行うために光磁気記録装置内に設けられたモータが発生する磁界等があり、ディスク自体からの自己漏洩磁界としては、ディスクの隣接トラックからの浮遊磁界、即ち、光磁気記録層に光ピックアップからの記録用の光ビームが照射されたとき、磁化を失った光ビームの中心付近に周囲の磁化を失っていない部分から印加される磁界がある。そして、このような漏洩磁界が存在すると、記録磁界Dの強度がオフセットしてしまい、その結果、記録ピットが極性によって、本来の記録ピットの大きさより大きく、又は小さくなり、記録ピットの非対称性(アシンメトリ)が生じてしまう。
【0026】
図3は、オフセット磁界とアシンメトリとの関係を示す図であって、図3(a)は矢印B方向にディスクが回転する際の光磁気ディスクの記録ピットを示す模式図、図3(b)は記録磁界を示す図、図3(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び図3(d)は記録パルスを示す図である。
【0027】
図3(d)に示す記録パルスにより、図3(c)に示すように、盤面上の温度分布が生じる。即ち、記録パルスP1が印加されると若干遅れて盤面上の温度が最高値に達し、徐々に温度が下がっていく。この際、上述のような漏洩磁界が存在することで、図3(b)に示すように、矢印Cで示すオフセット磁界が生じ、記録磁界D1がオフセットされた記録磁界D2となってしまう。すると、記録ピットは、図3(a)に示すように、本来位置E1にて上向きの磁界から下向きの磁界へと反転されるはずが、オフセットされた記録磁界D2により、位置E1から外れた位置E2にて反転されてしまう。図2(a)においては、時刻t1において、盤面温度がT1であるとき、保持力が本来は記録磁界D1の保持力h3であるはずが、オフセットCにより記録磁界D2の保持力h1となっており、保持力が大きいいため磁界が反転しない。その後、時刻t2において、盤面温度がT2に下がり、記録磁界D2の保持力h2と小さくなった時刻t2の時点で磁界が反転する。即ち、記録磁界D1がオフセットされているため、本来の位置E1より遅い位置E2にて磁界の向きが反転してしまう。これがオフセット磁界によるアシンメトリとなる。
【0028】
そこで、本願発明者等が鋭意実験研究した結果、盤面の温度分布を変え、オフセットをキャンセルする方法として、記録パルスのパルス幅を狭くすることを見出した。以下、記録パルスのパルス幅を狭くすることにより、オフセットをキャンセルしてアシンメトリを補正する原理について説明する。
【0029】
図4は、本実施の形態におけるアシンメトリ補正方法を示す図であって、図4(a)は矢印B方向にディスクが回転している場合の記録ピットを示す模式図、図4(b)は記録磁界を示す図、図4(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び図4(d)は記録パルスを示す図である。記録パルス幅を記録するマークの極性に応じ、例えば、下向きのマークを書く時はパルス幅を狭く、上向きのマークを書く時はパルス幅を広くする等して、変化させることにより、オフセット磁界によるアシンメトリを補正することができる。
【0030】
例えば図4(d)に示すように、上述の図3(d)に示す記録パルスP1より、そのパルス幅が狭いP2を印加すると、図4(c)に示すように、盤面上の温度は、図3(c)の場合と同様の位置で最高値に達するが、パルス幅が狭いため、図3(c)の場合に比して温度の減少が急峻になる。従って、本来の記録磁界D1にオフセットCがかかった記録磁界D2により反転されるマークの位置が図3(a)に示す位置E2よりも早い位置E1にずれる。
【0031】
即ち、時刻t1において、オフセットがかかった記録磁界D2における保持力はh1であるが、そのときの盤面温度は、パルス幅を狭くしたため、図3(c)に示す温度T1より低い温度T3に下がっており、これにより、本来マークを反転させたい位置E1にてマークを反転させることができる。このように、パルス幅を狭くすることにより、盤面上の温度分布を変化させて、記録ピットの位置を制御することができる。また、逆向きのオフセット磁界が生じているときは、例えば記録パルスの幅を広くして温度が下がる速度を緩和するようにすればよい。
【0032】
なお、上述の特許文献1のように、パルス幅と共に記録パルスのピークパワーをマークの極性に応じて変化させることで、盤面に、更に急峻な温度分布を作って大きなオフセット磁界が印加された場合にもキャンセルするように記録パルスを印加してもよい。図5は、アシンメトリ補正方法を示す図であって、図5(a)は矢印B方向にディスクが回転している場合の記録ピットを示す模式図、図5(b)は記録磁界を示す図、図5(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び図5(d)は記録パルスを示す図である。図5(d)に示すように、記録パルスのピークパワー強度を下げた記録パルスP3により、図5(c)に示すように、盤面の温度上昇を抑えることができ、これにより、オフセットCがかかった記録磁界D2においても、所定の位置E1(時刻t1)にて磁界を反転させることができる。なお、図5に示す場合と逆向きのオフセット磁界が生じているときは、記録パルスのピークパワー強度を上げて、盤面の温度上昇を急峻にすればよい。
【0033】
本実施の形態においては、このようなオフセット磁界によるアシンメトリを記録パルスの幅の増減により補正するものである。このようなオフセット磁界として、上述したように、光ピックアップのアクチュエータからの漏れ磁界は、ドライブ毎に、また、ディスクの隣接トラックからの浮遊磁界はバルク・イレースの方向でディスク毎に決まる。そこで、上述の如く、記録パルスの幅を制御することで、盤面温度を調節してオフセットをキャンセルするアシンメトリ補正をドライブ出荷時に行うことにより、ドライブ(記録装置)毎のバラツキが吸収でき、またディスク挿入時に行えば、ディスク毎のバラツキを吸収することができ、記録・再生特性を向上させることができる。また、記録パルスのピークパワーを調節してアシンメトリ補正を行う場合に比してエネルギーロスが少なく、クロック毎のパルスとして記録パルスを印加することにより、エッジが鮮明で高精細なピットを記録することができる。
【0034】
次に、本実施の形態のようなアシンメトリ補正を行うことが可能な記録再生装置の一例について説明する。図6は、記録再生装置を示すブロック図である。図6に示すように、記録再生装置は、光磁気ディスク1を所定の回転数で回転駆動するスピンドルモータ2と、スピンドルモータ2の回転速度をサーボ制御するスピンドル制御部3と、回転されている光ディスク1に対してレーザ光を照射する光学ピックアップ4と、光学ピックアップ4のレーザ出力のオン/オフ及び出力レベルを制御するレーザ制御部5とを有する。更に、インターフェイス部19に接続されたホストコンピュータ90と、ホストコンピュータ90から記録要求、再生要求を受け取り、データの記録/再生動作を実行するコントローラ6とを有している。更にまた、記録データをエンコードするエンコーダ25と、記録データに応じてN又はSの磁界を印加する磁気ヘッド27と、磁気ヘッド27を制御する磁気ヘッドドライバ26とを有している。
【0035】
光磁気ディスク1は、スピンドルモータ2によって所定の回転数で回転駆動される。スピンドルモータ2の回転速度サーボ制御はスピンドル制御部3によって行なわれる。例えばスピンドル制御部3はスピンドルモータ2からのFGパルス(回転速度に同期した周波数信号)などによりスピンドルモータ2の回転速度を検出するとともに、コントローラ6から基準速度情報SKが供給され、基準速度情報SKとスピンドルモータ2の回転速度を比較して、その誤差情報に基づいてスピンドルモータ2の加減速を行なうことで所要の回転速度でのディスク回転動作を実現させる。
【0036】
回転されている光ディスク1に対しては、光学ピックアップ4からのレーザ光が照射される。光学ピックアップ4には、例えばレーザダイオードやレーザカプラなどによるレーザ光源4c、各種レンズやビームスプリッタなどによる光学系4e、レーザ光の出力端となる対物レンズ4a、ディスクからの反射光を検出するディテクタ4d、対物レンズ4aをトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持する2軸機構4b等が設けられる。光学ピックアップ4においてレーザ光源4cからのレーザ出力のオン/オフ及び出力レベルはレーザ制御部5によって制御される。
【0037】
この記録再生装置は、そのインターフェイス部19によりホストコンピュータ90と接続されるが、データの記録/再生動作はコントローラ6がホストコンピュータ90からの記録要求、再生要求を受け取ることにより実行されることになる。記録時にはホストコンピュータ90から、記録要求とともに記録すべきデータが供給される。記録データDRECはインターフェイス部19からエンコーダ25に供給され、所要のエンコード処理が行なわれる。
【0038】
本実施の形態の記録再生装置は、記録方式としてレーザストローブ磁界変調方式が採用されるものとするが、この記録方式では、エンコーダ25でエンコードされた記録データを磁気ヘッドドライバ26に供給し、磁気ヘッドドライバ26は、記録データに応じて磁気ヘッド27からN又はSの磁界を印加するようにしている。そして、レーザ制御部5において、磁気ヘッド27により磁界として印加される記録データのタイミングに同期するようにして、レーザ光源4cにおけるレーザダイオードを駆動するための記録パルスを出力する。これによりレーザ光源4cからのレーザ出力はデータ記録に適合するタイミングでパルス発光されることになる。
【0039】
この記録パルスは、上述したように、アシンメトリ補正を行うために、例えば信号S2として得られるテストパターンデータの再生信号のオフセットレベルに基づいて、そのパルス幅を可変設定した記録パルスを出力可能なように構成される。
【0040】
光学ピックアップ4によるデータ読取位置は半径方向に移動可能とされている。具体的には図示していないが、光学ピックアップ4の全体をディスク半径方向に移動可能とするスレッド機構が設けられ、これによって読取位置の大きい移動が行なわれるとともに、対物レンズ4aが2軸機構4bにディスク半径方向に移動される、即ちトラッキングサーボ動作により読取位置の小さい移動が行なわれる。
【0041】
なお、光学ピックアップ4を移動させるスレッド機構に代えて、スピンドルモータ2と共にディスク1をスライド移動させる機構を設けてもよい。また、対物レンズ4aが2軸機構4bにディスク1に対して接離する方向に移動されることで、レーザスポットLSPのフォーカス制御が行なわれる。
【0042】
光学ピックアップ4のディテクタ4dとしては例えば4分割の受光領域を有する4分割ディテクタ、又は磁界データを磁気カー効果による偏光成分ごとの検出を行ない、光磁気データとしてのRF信号を得るディテクタ等が設けられる。
【0043】
このディテクタ4dの各受光領域からは、それぞれ受光光量に応じた電流信号S1が出力されるが、これらはI/V変換マトリクスアンプ7に供給される。I/V変換マトリクスアンプ7では、受光光量信号S1について電流−電圧変換を行なうとともに、各受光領域からの信号の演算処理でRF信号、プッシュプル信号、フォーカスエラー信号FE等の必要な信号を生成する。
【0044】
フォーカス状態の誤差情報となるフォーカスエラー信号FEはサーボコントローラ8に供給される。サーボコントローラ8にはフォーカス系の処理部としてフォーカス位相補償回路やフォーカスドライバなどが搭載されており、フォーカスエラー信号FEに基づいたフォーカスドライブ信号を発生させて2軸機構4bのフォーカスコイルに印加する。これによって対物レンズ4aをジャストフォーカスポイントに収束させるフォーカスサーボ系が構成される。
【0045】
I/V変換マトリクスアンプ7からは、サーボクロックSCKやデータクロックDCKの生成のために用いるRF信号が信号S2として出力される。ここで、信号S2は、コントローラ6にも分岐して供給されて、後述するアシンメトリ補正処理におけるオフセットレベル検出のために用いられる。上記信号S2はクランプ回路9でRF信号の低周波数変動が除去され、A/D変換器10でデジタル化された信号S3となる。この信号S3はコントローラ6、PLL回路11、及びトラッキングエラー生成部16に供給される。
【0046】
PLL回路11では信号S3と発振出力の位相誤差に基づいて内部発振器の発振周波数を制御すること、及び所定の分周処理を行なうことで、RF信号に同期したサーボクロックSCKを発生させる。このサーボクロックSCKはA/D変換器10でのサンプリングクロックとして用いられるとともに、タイミングコントローラ17に供給される。またPLL回路11ではサーボクロックSCKを分周してデータクロックDCKが生成され、タイミングコントローラ17、レーザ制御部5に供給される。またA/D変換器13でのサンプリングクロックとして用いられる。
【0047】
タイミングコントローラ17はサーボクロックSCK、データクロックDCKに基づいて、各部に対して必要なタイミング信号を発生させる。例えば3相トラッキング動作のためのサーボピットを抽出するサンプリングタイミングPs、データ検出部14でのデコード動作のための同期タイミングDSY等を発生させる。
【0048】
PLL回路11、タイミングコントローラ17、トラッキングエラー生成部16により、いわゆる3相トラッキング制御によるトラッキングエラー信号TEが生成され、サーボコントローラ8に供給する。
【0049】
I/V変換マトリクスアンプ7からは、データ抽出のために用いるRF信号やプッシュプル信号が信号S4として出力される。この信号S4はクランプ回路12でRF信号の低周波数変動が除去され、A/D変換器13でデジタル化された信号S5となる。
【0050】
この信号S5はデータ検出部(即ちデコーダ)14に供給される。データ検出部14ではタイミングコントローラ17がデータクロックDCKに基づいて発生させる同期タイミングDSYに基づいてデータデコード処理を行ない、再生データDPBを得る。例えば波形等化処理、記録フォーマットとして採用されている変調処理に対する復調処理、エラー訂正処理等が行なわれ再生データDPBとしてエコードされる。この再生データDPBはインターフェイス部19を介してホストコンピュータ90に供給されることになる。
【0051】
図7は、図6に示される本実施の形態のレーザ制御部5の内部構成を概略的に示すブロック図である。レーザ制御部5は、レーザダイオードドライバ5a、記録パルス幅設定回路5b、及び記録パルス発生回路5cを備えて構成される。
【0052】
このレーザ制御部5の基本的な動作としては、記録パルス発生回路5cに入力されるデータクロックDCKに基づいたタイミングで記録パルスが生成されてレーザダイオードドライバ5aに供給される。レーザダイオードドライバ5aでは、例えば記録パルスについて、レーザダイオードを適正パワーで駆動するための増幅等を行なって所要のレベルとしたうえで、レーザ発光源4cのレーザダイオードに出力する。レーザダイオードドライバ5aにおけるレーザ(記録パルス)のパルス幅は記録パルス幅設定回路5bにより制御される。記録パルス幅設定回路5bは、コントローラ6から送信されるパルス幅設定制御信号SCに基づいて、例えば記録時と再生時とにそれぞれ適合する記録パルスのパルス幅を設定するようにされる。
【0053】
また、本実施の形態においては、上述のアシンメトリ補正のために、コントローラ6から記録パルスのパルス幅を補正する補正情報信号(後述する記録パルス幅補正値ΔP)が、記録パルス幅設定回路5bに対して入力されるようになっている。これにより記録パルス幅設定回路5bにおいては、上記補正情報信号に基づいて可変設定した記録パルスのパルス幅の情報をレーザダイオードドライバ5aに与える。この際、アシンメトリ補正のための記録パルスのパルス幅の設定は、データがN極の場合とS極の場合とで互いに異なるようにされることから、記録パルス幅設定回路5bに対してはエンコーダ25から記録データが入力されるようになっている。そして、記録パルス幅設定回路5bは、入力された記録データに対応する磁界極性を判断して、この磁界極性に対応した適正タイミングで記録パルスのパルス幅の設定を実行するように構成される。
【0054】
次に、上述した図21にて説明したようにして発生するオフセット量を検出して、パルス幅を可変設定する方法の一例について説明する。このような処理は、記録/再生装置を構成する光磁気ディスクドライバの出荷時に行われてもよいし、製品化の後にディスクをローディングした後における記録/再生動作の適正な実行動作をチェックするためのテスト書き込み/読出し時に行われるようにしてもよい。
【0055】
本実施の形態のアシンメトリ補正動作処理、即ちオフセット量の検出及びパルス幅の設定は、例えばコントローラ6により行うことができる。先ず、コントローラ6は、ディスク上の所定領域に対してテストパターンを記録するための動作が行われるように所要の機能回路部に対する各種制御処理を実行する。ここでは、記録されるテストパターンを、記録/再生系のデータ伝送方式として、パーシャルレスポンス(PR)伝送方式において、2進の入力信号に対して3値の受信レベルを検出するようにされたPR(1,1)伝送方式又はPR(1,0,−1)伝送方式を採る場合について説明する。なお、本実施の形態としてのアシンメトリ補正は、上記PR(1,1)伝送方式又はPR(1,0,−1)伝送方式以外のPR伝送方式やPR伝送方式以外の方式についても適用が可能であり、この場合には各伝送方式に対応するテストパターンが設定される。
【0056】
PR(1,1)伝送方式又はPR(1,0,−1)伝送方式に対応する場合、テストパターンとしては例えば[0000000000]のように論理値として[0]が所定数連続して形成されるデータ領域RHと、[0101010101]のようにして[0]と[1]が交互に繰り返されるパターンが所定数連続して形成されるデータ領域RMと、[1111111111]のように論理値として[1]が所定数連続して形成されるデータ領域RLとが連続するように形成される。先ず、このようなデータ配列によるテストパターンを、予め規定されたN極とS極の極性に対応させて記録するように処理を実行する。
【0057】
ここで、最初に記録されるテストパターンは、初期値のパルス幅を有する記録パルスにより記録されるものであることから、仮に光学ピックアップ4等から漏洩した外来磁界等の影響が存在するとすれば、上記図21による説明から分かるように、記録ピットにはアシンメトリが発生していることになる。
【0058】
そこで、テストパターンの記録動作が終了すると、コントローラ6はディスクに記録されたテストパターンの再生を実行する。テストパターンを再生した場合、データ領域RHを再生して得られるRF信号はレベルLHを有し、データ領域RMを再生して得られるRF信号はレベルLMを有し、データ領域RLを再生して得られるRF信号はレベルLLを有することとする。PR(1,1)伝送方式又はPR(1,0,−1)伝送方式において得られる3値の受信レベルのうち、レベルLHは最も高い受信レベルに対応し、レベルLMは中間の受信レベルに対応し、レベルLLは最も低い受信レベルに対応する。
【0059】
次に、コントローラ6はテストパターンの再生RF信号を入力して、上記レベルLH、LM、LLの値を検出する。そして、実際に得られたレベルLH、LM、LLの値に基づいて、再生RF信号のオフセットレベルΔL(図21(e)参照)を算出する。このオフセットレベルΔLは、図21(c)にて説明したディスクに実際に印加される変調磁界のオフセット量に対応して現れるものである。つまり本実施の形態では、再生RF信号のオフセットレベルΔLにより、変調磁界のオフセット量を検出するようにしていることになる。そして、オフセットレベルΔLは、例えば、ΔL=LM−(LH+LL)/2により算出することができる。
【0060】
算出されたオフセットレベルΔLについて、予め設定された閾値Thと比較してΔL<Thとされているか否かについて判別を行う。ここで、ΔL<Thであり、オフセットレベルΔLが閾値Thより小さいと判別された場合は処理を終了するが、オフセットレベルΔLが閾値Thより大きい場合は、算出されたオフセットレベルΔLを利用して、ΔP=ΔL×αにより、記録パルス幅補正値ΔPを求める。なお、係数αは、再生RF信号のオフセットレベルΔLを、記録パルス幅補正値ΔPとなるように変換するために予め設定される定数である。コントローラ6は、記録パルス幅補正値ΔPの情報を記録パルス幅設定回路5bに伝送する。そして、記録パルス幅設定回路5bは、入力された記録パルス幅補正値ΔPの情報信号に基づいて、レーザダイオードの駆動を行うように動作する。
【0061】
つまり外来磁界等の影響による磁界強度のオフセットがキャンセルされた適正状態で、ディスクに対する磁界の印加が行われることになる。これに応じて、実際にディスクに記録される記録ピットには、アシンメトリが発生せず、オフセットがキャンセルされた適正なレベルの再生信号が得られることになる。
【0062】
記録パルス幅設定回路5bでは、磁気ヘッド27により印加される磁界の極性に対応して、初期値の記録パルス幅に対して記録パルス幅補正値ΔPを加算又は減算した記録パルス幅に対応する補正後のパルス幅を有する記録パルスが適宜出力されるように制御される。これにより、記録動作としては、常に外来磁界がキャンセルされてアシンメトリがない記録ピットを形成することが可能となる。なお、最終的に算出されたオフセットレベルΔLが所定の閾値Th未満となるまで、記録パルス幅補正値ΔPの値を絞り込んでいくようにしてもよい。
【0063】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。例えば、オフセット量の検出は、上述したようにテストパターンを記録して検出することもできるが、例えば、磁界センサ等を装着して検出したオフセット磁界の大きさに基づいて、記録パルス幅を設定してもよい。
【0064】
次に、このようなアシンメトリ補正を行なう記録再生装置(ディスクドライブ装置)の具体例について説明する。本具体例に示すディスクドライブ装置は、従来の光磁気記録方式を採用したディスク状記録媒体に対して、このディスク状記録媒体の記録再生方式として通常用いられ記録フォーマットとは異なる信号方式を適用することによって、従来の光磁気記録媒体の記録容量を増加することを実現するものである。更に、高密度記録技術及び新規ファイルシステムを適用することによって、従来の光磁気記録媒体と筐体外形及び記録再生光学系に互換性を有しつつ、記録容量を飛躍的に増加することを可能にした記録形式を提供するものである。
【0065】
ここでは、先ず、ディスク状の光磁気記録媒体として、ミニディスク(登録商標)方式の記録媒体に適用した場合に関して説明する。ここでは、特に、通常用いられる記録形式とは異なる形式を適用することによって、従来の光磁気記録媒体を用いて、その記録容量を増加することを実現したディスクを「次世代MD1」とし、高密度記録可能な新規記録媒体に対して新規記録形式を適用することにより、記録容量の増加を実現したディスクを「次世代MD2」として説明する。
【0066】
以下では、次世代ディスクMD1及び次世代ディスクMD2の仕様例を説明するとともに、本発明に係るアドレス変換方法を適用してこれら両ディスクに対する記録データを生成する処理について説明する。
【0067】
1.ディスク仕様及びエリア構造
まず、従来のミニディスク、次世代MD1及び次世代MD2の仕様について図8を用いて説明する。ミニディスク(及びMD−DATA)の物理フォーマットは、以下のように定められている。トラックピッチは、1.6μm、ビット長は、0.59μm/bitとなる。また、レーザ波長λは、λ=780nmであり、光学ヘッドの開口率は、NA=0.45としている。記録方式としては、グルーブ(ディスク盤面上の溝)をトラックとして記録再生に用いるグルーブ記録方式を採用している。また、アドレス方式としては、ディスク盤面上にシングルスパイラルのグルーブを形成し、このグルーブの両側に対して所定の周波数(22.05KHz)で蛇行したウォブル(Wobble)を形成し、絶対アドレスを上記周波数を基準にFM変調してウォブルドグルーブトラックに記録する方式を採っている。なお、本明細書では、ウォブルとして記録される絶対アドレスをADIP(Address in Pregroove)ともいう。
【0068】
従来のMDでは、メインデータ部である32セクタにリンクセクタである4セクタを付加して合計36セクタを1クラスタ単位として記録を行っている。上記ADIP信号はクラスタアドレス、セクタアドレスから構成される。上記クラスタアドレスは、8ビットのクラスタHと8ビットのクラスタLとから構成され、セクタアドレスは、4ビットのセクタから構成される。
【0069】
また、従来のミニディスクでは、記録データの変調方式としてEFM(8−14変換)変調方式が採用されている。また、誤り訂正方式としては、ACIRC(Advanced Cross Interleave Reed−Solomon Code)を用いている。データインターリーブには、畳み込み型を採用している。これにより、データの冗長度は、46.3%となっている。
【0070】
また、従来のミニディスクにおけるデータの検出方式は、ビットバイビット方式であって、ディスク駆動方式としては、CLV(Constant Linear Velocity)が採用されている。CLVの線速度は、1.2m/sである。
【0071】
記録再生時の標準のデータレートは、133kB/s、記録容量は、164MB(MD−DATAでは、140MB)である。また、データの最小書換単位(単位クラスタ)は、上述のように32個のメインセクタと4個のリンクセクタによる36セクタで構成されている。
【0072】
続いて、本具体例として示す次世代MD1に関して説明する。次世代MD1は、上述した従来のミニディスクと記録媒体の物理的仕様は、同一である。そのため、トラックピッチは、1.6μm、レーザ波長λは、λ=780nmであり、光学ヘッドの開口率は、NA=0.45である。記録方式としては、グルーブ記録方式を採用している。また、アドレス方式は、ADIPを利用する。このように、ディスクドライブ装置における光学系の構成やADIPアドレス読出方式、サーボ処理は、従来のミニディスクと同様であるため、従来ディスクとの互換性が達成されている。
【0073】
次世代MD1は、記録データの変調方式として、高密度記録に適合したRLL(1−7)PP変調方式(RLL;Run Length Limited、PP:Parity preserve/Prohibit rmtr(repeated minimum transition runlength))を採用している。また、誤り訂正方式としては、より訂正能力の高いBIS(Burst Indicator Subcode)付きのRS−LDC(Reed Solomon−Long Distance Code)方式を用いている。
【0074】
具体的には、ホストアプリケーション等から供給されるユーザデータの2048バイトに4バイトのEDC(Error Detection Code)を付加した2052バイトを1セクタ(データセクタ、後述するディスク上の物理セクタとは異なる)とし、図9に示すように、Sector0〜Sector31の32セクタを304列×216行のブロックにまとめる。ここで、各セクタの2052バイトに対しては、所定の疑似乱数との排他的論理和(Ex−OR)をとるようなスクランブル処理が施される。このスクランブル処理されたブロックの各列に対して32バイトのパリティを付加して、304列×248行のLDC(Long Distance Code)ブロックを構成する。このLDCブロックにインターリーブ処理を施して、152列×496行のブロック(Interleaved LDC Block)とし、これを図10に示すように38列ずつ1列の上記BISを介して配列することで155列×496行の構造とし、さらに先頭位置に2.5バイト分のフレーム同期コード(Frame Sync)を付加して、1行を1フレームに対応させ、157.5バイト×496フレームの構造とする。この図10の各行が、後述する図16に示す1レコーディングブロック(クラスタ)内のデータ領域のFrame10〜Frame505の496フレームに相当する。
【0075】
以上のデータ構造において、データインターリーブは、ブロック完結型とする。これによりデータの冗長度は、20.50%になる。また、データの検出方式として、PR(1,2,1)MLによるビタビ復号方式を用いる。
【0076】
ディスク駆動方式には、CLV方式を用い、その線速度は、2.4m/sとする。記録再生時の標準データレートは、4.4MB/sである。この方式を採用することにより、総記録容量を300MBにすることができる。変調方式をEFMからRLL(1−7)PP変調方式とすることによって、ウインドウマージンが0.5から0.666となるため、1.33倍の高密度化が実現できる。また、データの最小書換単位であるクラスタは、16セクタ、64kBで構成される。このように記録変調方式をCIRC方式からBIS付きのRS−LDC方式及びセクタ構造の差異とビタビ復号を用いる方式にすることで、データ効率が53.7%から79.5%となるため、1.48倍の高密度化が実現できる。
【0077】
これらを総合すると、次世代MD1は、記録容量を従来ミニディスクの約2倍である300MBにすることができる。
【0078】
一方、次世代MD2は、例えば、磁壁移動検出方式(DWDD:Domain Wall Displacement Detection)等の高密度化記録技術を適用した記録媒体であって、上述した従来ミニディスク及び次世代MD1とは、物理フォーマットが異なっている。次世代MD2は、トラックピッチが1.25μm、ビット長が0.16μm/bitであり、線方向に高密度化されている。
【0079】
また、従来ミニディスク及び次世代MD1との互換を採るため、光学系、読出方式、サーボ処理等は、従来の規格に準じて、レーザ波長λは、λ=780nm、光学ヘッドの開口率は、NA=0.45とする。記録方式は、グルーブ記録方式、アドレス方式は、ADIPを利用した方式とする。また、筐体外形も従来ミニディスク及び次世代MD1と同一規格とする。
【0080】
但し、従来ミニディスク及び次世代MD1と同等の光学系を用いて、上述のように従来より狭いトラックピッチ及び線密度(ビット長)を読み取る際には、デトラックマージン、ランド及びグルーブからのクロストーク、ウォブルのクロストーク、フォーカス漏れ、CT信号等における制約条件を解消する必要がある。そのため、次世代MD2では、グルーブの溝深さ、傾斜、幅等を変更した点が特徴的である。具体的には、グルーブの溝深さを160nm〜180nm、傾斜を60°〜70°、幅を600nm〜800nmの範囲と定める。
【0081】
また、次世代MD2は、記録データの変調方式として、高密度記録に適合したRLL(1−7)PP変調方式(RLL;Run Length Limited、PP:Parity preserve/Prohibit rmtr(repeated minimum transition runlength))を採用している。また、誤り訂正方式としては、より訂正能力の高いBIS(Burst Indicator Subcode)付きのRS−LDC(Reed Solomon−Long Distance Code)方式を用いている。
【0082】
データインターリーブは、ブロック完結型とする。これによりデータの冗長度は、20.50%になる。またデータの検出方式は、PR(1,−1)MLによるビタビ復号方式を用いる。また、データの最小書換単位であるクラスタは、16セクタ、64kBで構成されている。
【0083】
ディスク駆動方式には、ZCAV(Zone Constant Angular Velocity)方式を用い、その線速度は、2.0m/sとする。記録再生時の標準データレートは、9.8MB/sである。したがって、次世代MD2では、DWDD方式及びこの駆動方式を採用することにより、総記録容量を1GBにできる。
【0084】
本具体例に示す次世代MD1の盤面上のエリア構造例を図11、図12に模式的に示す。次世代MD1は、従来ミニディスクと同じ媒体であって、ディスクの最内周側は、プリマスタードエリアとして、PTOC(Premasterd Table Of Contents)が設けられている。ここには、ディスク管理情報が物理的な構造変形によるエンボスピットとして記録されている。
【0085】
プリマスタードエリアより外周は、光磁気記録可能なレコーダブルエリアとされ、記録トラックの案内溝としてのグルーブが形成された記録再生可能領域である。このレコーダブルエリアの最内周側は、UTOC(User Table Of Contents)領域であって、このUTOC領域には、UTOC情報が記述されるとともに、プリマスタードエリアとの緩衝エリアや、レーザ光の出力パワー調整等のために用いられるパワーキャリブレーションエリアが設けられている。
【0086】
次世代MD2は、図12に示すように、高密度化を図るためにプリピットを用いない。したがって、次世代MD2には、PTOC領域がない。次世代MD2には、レコーダブルエリアのさらに内周領域に、著作権保護のための情報、データ改竄チェックのための情報、他の非公開情報等を記録するユニークIDエリア(Unique ID;UID)が設けられている。このUIDエリアは、次世代MD2に適用されるDWDD方式とは異なる記録方式で記録されている。
【0087】
なお、ここでは、次世代MD1及び次世代MD2に音楽データ用のオーディオトラックとデータトラックとをディスク上に混在記録することもできる。この場合、例えば、図13に示すように、データエリアに少なくとも1つのオーディオトラックが記録されたオーディオ記録領域AAと、少なくとも1つのデータトラックが記録されたPC用データ記録領域DAとがそれぞれ任意の位置に形成されることになる。
【0088】
一連のオーディオトラックやデータトラックは、ディスク上で必ずしも物理的に連続して記録される必要はなく、図13に示すように複数のパーツに分割して記録されていてもよい。パーツとは、物理的に連続して記録される区間を示す。すなわち、図13のように物理的に離れた2つのPCデータ記録領域が存在する場合でも、データトラックの数としては、1つの場合もあり、複数の場合もある。但し、図13は、次世代MD1の物理的仕様に関して示したものであるが、次世代MD2に関しても同様に、オーディオ記録領域AAとPC用データ記録領域DAとを混在して記録することができる。
【0089】
上述した物理的仕様を有する次世代MD1と次世代MD2との互換性を有した記録再生装置の具体例に関しては、後段で詳細に説明する。
【0090】
2.ディスクの管理構造
図14及び図15に基づいて、本具体例のディスクの管理構造を説明する。図14は、次世代MD1のデータ管理構造を示したものであり、図15は、次世代MD2のデータ管理構造を示したものである。
【0091】
次世代MD1では、上述したように、従来のミニディスクと同一の媒体であるため、次世代MD1では、従来ミニディスクで採用されているように書換不可能なエンボスピットによりPTOCが記録されている。このPTOCには、ディスクの総容量、UTOC領域におけるUTOC位置、パワーキャリブレーションエリアの位置、データエリアの開始位置、データエリアの終了位置(リードアウト位置)等が管理情報として記録されている。
【0092】
次世代MD1では、ADIPアドレス0000〜0002には、レーザの書込出力を調整するためのパワーキャリブレーションエリア(Rec Power Calibration Area)が設けられている。続く0003〜0005には、UTOCが記録される。UTOCには、トラック(オーディオトラック/データトラック)の記録・消去等に応じて書き換えられる管理情報が含まれ、各トラック及びトラックを構成するパーツの開始位置、終了位置等を管理している。また、データエリアにおいて未だトラックが記録されていないフリーエリア、すなわち書込可能領域のパーツも管理している。UTOC上では、PC用データ全体をMDオーディオデータによらない1つのトラックとして管理している。そのため、仮にオーディオトラックとデータトラックとを混在記録したとしても、複数のパーツに分割されたPC用データの記録位置を管理できる。
【0093】
また、UTOCデータは、このUTOC領域における特定のADIPクラスタに記録され、UTOCデータは、このADIPクラスタ内のセクタ毎に、その内容が定義されている。具体的には、UTOCセクタ0(このADIPクラスタ内の先頭のADIPセクタ)は、トラックやフリーエリアにあたるパーツを管理しており、UTOCセクタ1及びセクタ4は、トラックに対応した文字情報を管理している。また、UTOCセクタ2には、トラックに対応した記録日時を管理する情報が書き込まれる。
【0094】
UTOCセクタ0は、記録されたデータや記録可能な未記録領域、さらにデータの管理情報等が記録されているデータ領域である。例えば、ディスクにデータを記録する際、ディスクドライブ装置は、UTOCセクタ0からディスク上の未記録領域を探し出し、ここにデータを記録する。また、再生時には、再生すべきデータトラックが記録されているエリアをUTOCセクタ0から判別し、そのエリアにアクセスして再生動作を行う。
【0095】
なお、次世代MD1では、PTOC及びUTOCは、従来のミニディスクシステムに準拠する方式、ここではEFM変調方式により変調されたデータとして記録されている。したがって、次世代MD1は、EFM変調方式により変調されたデータとして記録された領域と、RS−LDC及びRLL(1−7)PP変調方式で変調された高密度データとして記録された領域とを有することになる。
【0096】
また、ADIPアドレス0032に記述されるアラートトラックには、従来ミニディスクのディスクドライバ装置に次世代MD1を挿入したとしても、この媒体が従来ミニディスクのディスクドライバ装置に対応していないことを知らせるための情報が格納されている。この情報は、「このディスクは、この再生装置に対応していないフォーマットです。」等の音声データ、或いは警告音データとしてもよい。また、表示部を備えるディスクドライバ装置であれば、この旨を表示するためのデータであってもよい。このアラートトラックは、従来ミニディスクに対応したディスクドライバ装置でも読取可能なように、EFM変調方式によって記録されている。
【0097】
ADIPアドレス0034には、次世代MD1のディスク情報を表したディスクディスクリプションテーブル(Disc Description Table;DDT)が記録される。DDTには、フォーマット形式、ディスク内論理クラスタの総数、媒体固有のID、このDDTの更新情報、不良クラスタ情報等が記述される。
【0098】
DDT領域からは、RS−LDC及びRLL(1−7)PP変調方式で変調された高密度データとして記録されるため、アラートトラックとDDTとの間には、ガードバンド領域が設けられている。
【0099】
また、RLL(1−7)PP変調方式で変調された高密度データが記録される最も若いADIPアドレス、すなわち、DDTの先頭アドレスには、ここを0000とする論理クラスタ番号(Logical Cluster Number;LCN)が付される。1論理クラスタは、65,536バイトであり、この論理クラスタが読み書き最小単位となる。なお、ADIPアドレス0006〜0031は、リザーブされている。
【0100】
続くADIPアドレス0036〜0038には、認証によって公開可能となるセキュアエリア(Secure Area)が設けられている。このセキュアエリアによって、データを構成する各クラスタの公開可・不可等の属性を管理している。特に、このセキュアエリアでは、著作権保護のための情報、データ改竄チェックのための情報等を記録する。また、このほかの各種の非公開情報を記録することができる。この公開不可領域は、特別に許可された特定外部機器のみが限定的にアクセスできるようになっており、このアクセス可能な外部機器を認証する情報も含まれる。
【0101】
ADIPアドレス0038からは、書込及び読取自由なユーザエリア(User Area)(任意データ長)とスペアエリア(Spare Area)(データ長8)とが記述される。ユーザエリアに記録されたデータは、LCNの昇順に並べたとき、先頭から2,048バイトを1単位としたユーザセクタ(User Sector)に区切られており、PC等の外部機器からは、先頭のユーザセクタを0000とするユーザセクタ番号(User Sector Number;USN)を付してFATファイルシステムにより管理されている。
【0102】
続いて、次世代MD2のデータ管理構造について図15を用いて説明する。次世代MD2は、PTOCエリアを持たない。そのため、ディスクの総容量、パワーキャリブレーションエリアの位置、データエリアの開始位置、データエリアの終了位置(リードアウト位置)等のディスク管理情報は、PDPT(PreFormat Disc Parameter Table)として全てADIP情報に含まれて記録されている。データは、BIS付きのRS−LDC及びRLL(1−7)PP変調方式で変調され、DWDD方式で記録されている。
【0103】
また、リードインエリア及びリードアウトエリアには、レーザパワーキャリブレーションエリア(Power Calibration Area;PCA)が設けられる。次世代MD2では、PCAに続くADIPアドレスを0000としてLCNを付ける。
【0104】
また、次世代MD2では、次世代MD1におけるUTOC領域に相当するコントロール領域が用意されている。図15には、著作権保護のための情報、データ改竄チェックのための情報、他の非公開情報等を記録するユニークIDエリア(Unique ID;UID)が示されているが、実際には、このUIDエリアは、リードイン領域のさらに内周位置に、通常のDWDD方式とは異なる記録方式で記録されている。
【0105】
次世代MD1及び次世代MD2のファイルは、ともにFATファイルシステムに基づいて管理される。例えば、各データトラックは、それぞれ独自にFATファイルシステムを持つ。或いは、複数のデータトラックにわたって1つのFATファイルシステムを記録するようにもできる。
【0106】
3.ADIPセクタ/クラスタ構造とデータブロック
続いて、本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2のADIPセクタ構造とデータブロックとの関係について図16を用いて説明する。従来のミニディスク(MD)システムでは、ADIPとして記録された物理アドレスに対応したクラスタ/セクタ構造が用いられている。本具体例では、説明の便宜上、ADIPアドレスに基づいたクラスタを「ADIPクラスタ」と記す。また、次世代MD1及び次世代MD2におけるアドレスに基づくクラスタを「レコーディングブロック(Recording Block)」あるいは「次世代MDクラスタ」と記す。
【0107】
次世代MD1及び次世代MD2では、データトラックは、図16に示すようにアドレスの最小単位であるクラスタの連続によって記録されたデータストリームとして扱われている。
【0108】
図16に示すように次世代MD1では、従来の1クラスタ(36セクタ)を2分割して、1レコーディングブロックを18セクタで構成し、次世代MD2では16セクタで構成する。
【0109】
図16に示す1レコーディングブロック(1次世代MDクラスタ)のデータ構造としては、10フレームのプリアンブルと、6フレームのポストアンブルと、496フレームのデータ部とからなる512フレームから構成されている。さらにこのレコーディングブロック内の1フレームは、同期信号領域と、データ、BIS、DSVとからなる。
【0110】
また、1レコーディングブロックの512フレームのうち、メインデータが記録される496フレームを16等分した各々をアドレスユニット(Address Unit)とよぶ。各アドレスユニットは、31フレームから成る。また、このアドレスユニットの番号をアドレスユニットナンバ(Address Unit Number;AUN)とよぶ。このAUNは、全てのアドレスユニットに付される番号であって、記録信号のアドレス管理に使用される。
【0111】
次世代MD1のように、ADIPに記述された物理的なクラスタ/セクタ構造を有する従来ミニディスクに対して、1−7PP変調方式で変調された高密度データを記録する場合、ディスクに元々記録されたADIPアドレスと、実際に記録するデータブロックのアドレスとが一致しなくなるという問題が生じる。ランダムアクセスは、ADIPアドレスを基準として行われるが、ランダムアクセスでは、データを読み出す際、所望のデータが記録された位置近傍にアクセスしても、記録されたデータを読み出せるが、データを書き込む際には、既に記録されているデータを上書き消去しないように正確な位置にアクセスする必要がある。そのため、ADIPアドレスに対応付けした次世代MDクラスタ/次世代MDセクタからアクセス位置を正確に把握することが重要となる。
【0112】
そこで、次世代MD1の場合、媒体表面上にウォブルとして記録されたADIPアドレスを所定規則で変換して得られるデータ単位によって高密度データクラスタを把握する。この場合、ADIPセクタの整数倍が高密度データクラスタになるようにする。この考え方に基づいて、従来ミニディスクに記録された1ADIPクラスタに対して次世代MDクラスタを記述する際には、各次世代MDクラスタを1/2ADIPクラスタ(18セクタ)区間に対応させる。
【0113】
したがって、次世代MD1では、従来のMDクラスタの1/2クラスタが最小記録単位(レコーディングブロック(Recording Block))として対応付けされている。
【0114】
一方、次世代MD2では、1クラスタが1レコーディングブロックとして扱われるようになっている。
【0115】
なお、本具体例では、前述したように、ホストアプリケーションから供給される2048バイト単位のデータブロックを1論理データセクタ(Logical Data Sector;LDS)とし、このとき同一レコーディングブロック中に記録される32個の論理データセクタの集合を論理データクラスタ(Logical Data Cluster;LDC)としている。
【0116】
以上説明したようなデータ構造とすることにより、次世代MDデータを任意位置へ記録する際、媒体に対してタイミングよく記録できる。また、ADIPアドレス単位であるADIPクラスタ内に整数個の次世代MDクラスタが含まれるようにすることによって、ADIPクラスタアドレスから次世代MDデータクラスタアドレスへのアドレス変換規則が単純化され、換算のための回路又はソフトウェア構成が簡略化できる。
【0117】
なお、図16では、1つのADIPクラスタに2つの次世代MDクラスタを対応付ける例を示したが、1つのADIPクラスタに3以上の次世代MDクラスタを配することもできる。このとき、1つの次世代MDクラスタは、16ADIPセクタから構成される点に限定されず、EFM変調方式とRLL(1−7)PP変調方式におけるデータ記録密度の差や次世代MDクラスタを構成するセクタ数、また1セクタのサイズ等に応じて設定することができる。
【0118】
図16においては、記録媒体上に記録するデータ構造を示したが、次に記録媒体上のグルーブウオ―ブルトラックに記録されているADIP信号を、後述する図20のADIP復調器38で復調した際のデータ構造に関してデータ構造に関して説明する。
【0119】
図17(a)には、次世代MD2のADIPのデータ構造が示され、図17(b)には、次世代MD1のADIPのデータ構造が示されている。
【0120】
次世代MD1では、同期信号と、ディスクにおけるクラスタ番号等を示すクラスタH(Cluster H)情報及びクラスタL(Cluster L)情報と、クラスタ内におけるセクタ番号等を含むセクタ情報(Sector)とが記述されている。同期信号は、4ビットで記述され、クラスタHは、アドレス情報の上位8ビットで記述され、クラスタLは、アドレス情報の下位8ビットで記述され、セクタ情報は、4ビットで記述される。また、後半の14ビットには、CRCが付加されている。以上、42ビットのADIP信号が各ADIPセクタに記録されている。
【0121】
また、次世代MD2では、4ビットの同期信号データと、4ビットのクラスタH(Cluster H)情報、8ビットのクラスタM(Cluster M)情報及び4ビットのクラスタL(Cluster L)情報と、4ビットのセクタ情報とが記述される。後半の18ビットには、BCHのパリティが付加される。次世代MD2でも同様に42ビットのADIP信号が各ADIPセクタに記録されている。
【0122】
ADIPのデータ構造では、上述したクラスタH(Cluster H)情報、クラスタM(Cluster M)及びクラスタL(Cluster L)情報の構成は、任意に決定できる。また、ここに他の付加情報を記述することもできる。例えば、図18に示すように、次世代MD2のADIP信号において、クラスタ情報を上位8ビットのクラスタH(Cluster H)と下位8ビットのクラスタL(Cluster L)とで表すようにし、下位8ビットで表されるクラスタLに替えて、ディスクコントロール情報を記述することもできる。ディスクコントロール情報としては、サーボ信号補正値、再生レーザパワー上限値、再生レーザパワー線速補正係数、記録レーザパワー上限値、記録レーザパワー線速補正係数、記録磁気感度、磁気−レーザパルス位相差、パリティ等があげられる。
【0123】
4.ディスクドライブ装置
図19及び図20を用いて、次世代MD1及び次世代MD2の記録再生に対応したディスクドライブ装置210の具体例について説明する。ここでは、ディスクドライブ装置210は、パーソナルコンピュータ(以下、PCと記す。)200と接続でき、次世代MD1及び次世代MD2をオーディオデータのほか、PC等の外部ストレージとして使用できる。
【0124】
ディスクドライブ装置210は、メディアドライブ部211と、メモリ転送コントローラ212と、クラスタバッファメモリ213と、補助メモリ214と、USBインターフェイス215,216と、USBハブ217と、システムコントローラ218と、オーディオ処理部219とを備える。
【0125】
メディアドライブ部211は、装填された従来ミニディスク、次世代MD1、及び次世代MD2等の個々のディスク290に対する記録/再生を行う。メディアドライブ部211の内部構成は、図20で後述する。
【0126】
メモリ転送コントローラ212は、メディアドライブ部211からの再生データやメディアドライブ部211に供給する記録データの送受制御を行う。クラスタバッファメモリ213は、メディアドライブ部211によってディスク290のデータトラックから高密度データクラスタ単位で読み出されたデータをメモリ転送コントローラ212の制御に基づいてバッファリングする。補助メモリ214は、メディアドライブ部211によってディスク290から読み出されたUTOCデータ、CATデータ、ユニークID、ハッシュ値等の各種管理情報や特殊情報をメモリ転送コントローラ212の制御に基づいて記憶する。
【0127】
システムコントローラ218は、USBインターフェイス216、USBハブ217を介して接続されたPC200との間で通信可能とされ、このPC200との間の通信制御を行って、書込要求、読出要求等のコマンドの受信やステイタス情報、その他の必要情報の送信等を行うとともに、ディスクドライブ装置210全体を統括制御している。
【0128】
システムコントローラ218は、例えば、ディスク290がメディアドライブ部211に装填された際に、ディスク290からの管理情報等の読出をメディアドライブ部211に指示し、メモリ転送コントローラ212によって読み出されたPTOC、UTOC等の管理情報等を補助メモリ214に格納させる。
【0129】
システムコントローラ218は、これらの管理情報を読み込むことによって、ディスク290のトラック記録状態を把握できる。また、CATを読み込ませることにより、データトラック内の高密度データクラスタ構造を把握でき、PC200からのデータトラックに対するアクセス要求に対応できる状態となる。
【0130】
また、ユニークIDやハッシュ値により、ディスク認証処理及びその他の処理を実行したり、これらの値をPC200に送信し、PC200上でディスク認証処理及びその他の処理を実行させる。
【0131】
システムコントローラ218は、PC200から、あるFATセクタの読出要求があった場合、メディアドライブ部211に対して、このFATセクタを含む高密度データクラスタの読出を実行する旨の信号を与える。読み出された高密度データクラスタは、メモリ転送コントローラ212によってクラスタバッファメモリ213に書き込まれる。但し、既にFATセクタのデータがクラスタバッファメモリ213に格納されていた場合、メディアドライブ部211による読出は必要ない。
【0132】
このとき、システムコントローラ218は、クラスタバッファメモリ213に書き込まれている高密度データクラスタのデータから、要求されたFATセクタのデータを読み出す信号を与え、USBインターフェイス215,USBハブ217を介して、PC200に送信するための制御を行う。
【0133】
また、システムコントローラ218は、PC200から、あるFATセクタの書込要求があった場合、メディアドライブ部211に対して、このFATセクタを含む高密度データクラスタの読出を実行させる。読み出された高密度データクラスタは、メモリ転送コントローラ212によってクラスタバッファメモリ13に書き込まれる。但し、既にこのFATセクタのデータがクラスタバッファメモリ213に格納されていた場合は、メディアドライブ部211による読出は必要ない。
【0134】
また、システムコントローラ218は、PC200から送信されたFATセクタのデータ(記録データ)をUSBインターフェイス215を介してメモリ転送コントローラ212に供給し、クラスタバッファメモリ213上で該当するFATセクタのデータの書き換えを実行させる。
【0135】
また、システムコントローラ218は、メモリ転送コントローラ212に指示して、必要なFATセクタが書き換えられた状態でクラスタバッファメモリ213に記憶されている高密度データクラスタのデータを記録データとしてメディアドライブ部211に転送させる。このとき、メディアドライブ部211は、装着されている媒体が従来ミニディスクであればEFM変調方式で、次世代MD1又は次世代MD2であればRLL(1−7)PP変調方式で高密度データクラスタの記録データを変調して書き込む。
【0136】
なお、本具体例として示すディスクドライブ装置210において、上述した記録再生制御は、データトラックを記録再生する際の制御であり、MDオーディオデータ(オーディオトラック)を記録再生する際のデータ転送は、オーディオ処理部219を介して行われる。
【0137】
オーディオ処理部219は、入力系として、例えば、ライン入力回路/マイクロフォン入力回路等のアナログ音声信号入力部、A/D変換器、及びデジタルオーディオデータ入力部を備える。また、オーディオ処理部219は、ATRAC圧縮エンコーダ/デコーダ、圧縮データのバッファメモリを備える。さらに、オーディオ処理部219は、出力系として、デジタルオーディオデータ出力部、D/A変換器及びライン出力回路/ヘッドホン出力回路等のアナログ音声信号出力部を備えている。
【0138】
ディスク290に対してオーディオトラックが記録されるのは、オーディオ処理部219にデジタルオーディオデータ(又は、アナログ音声信号)が入力される場合である。入力されたリニアPCMデジタルオーディオデータ、或いはアナログ音声信号で入力された後、A/D変換器で変換されて得られたリニアPCMオーディオデータは、ATRAC圧縮エンコードされ、バッファメモリに蓄積される。その後、所定タイミング(ADIPクラスタ相当のデータ単位)でバッファメモリから読み出され、メディアドライブ部211に転送される。
【0139】
メディアドライブ部211では、転送された圧縮データをEFM変調方式又はRLL(1−7)PP変調方式で変調してディスク290にオーディオトラックとして書き込む。
【0140】
メディアドライブ部211は、ディスク290からオーディオトラックを再生する場合、再生データをATRAC圧縮データ状態に復調してオーディオ処理部219に転送する。オーディオ処理部219は、ATRAC圧縮デコードを行ってリニアPCMオーディオデータとし、デジタルオーディオデータ出力部から出力する。或いは、D/A変換器によりアナログ音声信号としてライン出力/ヘッドホン出力を行う。
【0141】
なお、この図19に示す構成は、一例であって、例えば、ディスクドライブ装置210をPC200に接続してデータトラックのみ記録再生する外部ストレージ機器として使用する場合は、オーディオ処理部219は、不要である。一方、オーディオ信号を記録再生することを主たる目的とする場合、オーディオ処理部219を備え、さらにユーザインターフェイスとして操作部や表示部を備えることが好適である。また、PC200との接続は、USBに限らず、例えば、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers,Inc.:アメリカ電気・電子技術者協会)の定める規格に準拠した、いわゆるIEEE1394インターフェイスのほか、汎用の接続インターフェイスが適用できる。
【0142】
続いて、従来ミニディスク、次世代MD1及び次世代MD2を記録再生するためのメディアドライブ部211の構成を図20を用いて、さらに詳細に説明する。
【0143】
メディアドライブ部211は、従来ミニディスク、次世代MD1及び次世代MD2を記録再生するために、特に、記録処理系として、従来ミニディスクの記録のためのEFM変調・ACIRCエンコードを実行する構成と、次世代MD1及び次世代MD2の記録のためのRLL(1−7)PP変調・RS−LDCエンコードを実行する構成とを備える点が特徴的である。また、再生処理系として、従来ミニディスクの再生のためのEFM復調・ACIRCデコードを実行する構成と、次世代MD1及び次世代MD2の再生にPR(1,2,1)ML及びビタビ復号を用いたデータ検出に基づくRLL(1−7)復調・RS−LDCデコードを実行する構成を備えている点が特徴的である。
【0144】
メディアドライブ部211は、装填されたディスク290をスピンドルモータ221によってCLV方式又はZCAV方式にて回転駆動する。記録再生時には、このディスク290に対して、光学ヘッド222からレーザ光が照射される。
【0145】
光学ヘッド222は、記録時に記録トラックをキュリー温度まで加熱するための高レベルのレーザ(記録パルス)出力を行い、また再生時には、磁気カー効果により反射光からデータを検出するための比較的低レベルのレーザ出力を行う。このため、光学ヘッド222は、レーザ出力手段としてのレーザダイオード、偏光ビームスプリッタや対物レンズ等からなる光学系及び反射光を検出するためのディテクタが搭載されている。光学ヘッド222に備えられる対物レンズとしては、例えば2軸機構によってディスク半径方向及びディスクに接離する方向に変位可能に保持されている。
【0146】
ここで、上述した如く、光ピックアップ等からの漏れ磁界及びディスクの隣接トラックからの浮遊磁界等による記録信号のアシンメトリを補正するため、本実施の形態においては、この光学ヘッド222から出力される記録パルスのパルス幅が可変設定される。即ち、後述するドライブコントローラ241により、アシンメトリを補正するための記録パルスのパルス幅補正値が算出され、これがパルス幅補正情報として、例えばドライブコントロール241内に設けられえた図示せぬ記録パルス幅設定回路に供給される。そして、記録パルス設定回路において、記録パルスのパルス幅が設定され、後述するレーザドライバ249へ供給され、こうして、光学ヘッド222から出力される記録パルスのパルス幅が設定される。なお、このようなパルス幅の設定は、後述するレーザドライバ/APC249にて行ってもよい。
【0147】
また、本具体例では、媒体表面の物理的仕様が異なる従来ミニディスク及び次世代MD1と、次世代MD2とに対して最大限の再生特性を得るために、両ディスクに対してデータ読取り時のビットエラーレートを最適化できる位相補償板を、光学ヘッド222の読取光光路中に設ける。
【0148】
ディスク290を挟んで光学ヘッド222と対向する位置には、磁気ヘッド223が配置されている。磁気ヘッド223は、記録データによって変調された磁界をディスク290に印加する。また、図示しないが光学ヘッド222全体及び磁気ヘッド223をディスク半径方向に移動させためのスレッドモータ及びスレッド機構が備えられている。
【0149】
このメディアドライブ部211では、光学ヘッド222、磁気ヘッド223による記録再生ヘッド系、スピンドルモータ221によるディスク回転駆動系のほかに、記録処理系、再生処理系、サーボ系等が設けられる。記録処理系としては、従来ミニディスクに対する記録時にEFM変調、ACIRCエンコードを行う部位と、次世代MD1及び次世代MD2に対する記録時にRLL(1−7)PP変調、RS−LDCエンコードを行う部位とが設けられる。
【0150】
また、再生処理系としては、従来ミニディスクの再生時にEFM変調に対応する復調及びACIRCデコードを行う部位と、次世代MD1及び次世代MD2の再生時にRLL(1−7)PP変調に対応する復調(PR(1,2,1)ML及びビタビ復号を用いたデータ検出に基づくRLL(1−7)復調)、RS−LDCデコードを行う部位とが設けられる。
【0151】
光学ヘッド222のディスク290に対するレーザ照射によりその反射光として検出された情報(フォトディテクタによりレーザ反射光を検出して得られる光電流)は、RFアンプ224に供給される。RFアンプ224では、入力された検出情報に対して電流−電圧変換、増幅、マトリクス演算等を行い、再生情報としての再生RF信号、トラッキングエラー信号TE、フォーカスエラー信号FE、グルーブ情報(ディスク290にトラックのウォブリングにより記録されているADIP情報)等を抽出する。
【0152】
従来ミニディスクの再生時には、RFアンプで得られた再生RF信号は、コンパレータ225、PLL回路226を介して、EFM復調部227及びACIRCデコーダ228で処理される。再生RF信号は、EFM復調部227で2値化されてEFM信号列とされた後、EFM復調され、さらにACIRCデコーダ228で誤り訂正及びデインターリーブ処理される。オーディオデータであれば、この時点でATRAC圧縮データの状態となる。このとき、セレクタ229は、従来ミニディスク信号側が選択されており、復調されたATRAC圧縮データがディスク290からの再生データとしてデータバッファ230に出力される。この合、図19のオーディオ処理部219に圧縮データが供給される。
【0153】
一方、次世代MD1又は次世代MD2の再生時には、RFアンプで得られた再生RF信号は、A/D変換回路231、イコライザ232、PLL回路233、PRML回路234を介して、RLL(1−7)PP復調部235及びRS−LDCデコーダ236で信号処理される。再生RF信号は、RLL(1−7)PP復調部235において、PR(1,2,1)ML及びビタビ復号を用いたデータ検出によりRLL(1−7)符号列としての再生データを得て、このRLL(1−7)符号列に対してRLL(1−7)復調処理が行われる。さらに、RS−LDCデコーダ236にて誤り訂正及びデインターリーブ処理される。
【0154】
この場合、セレクタ2229は、次世代MD1・次世代MD2側が選択され、復調されたデータがディスク290からの再生データとしてデータバッファ230に出力される。このとき、図19のメモリ転送コントローラ212に対して復調データが供給される。
【0155】
RFアンプ224から出力されるトラッキングエラー信号TE、フォーカスエラー信号FEは、サーボ回路237に供給され、グルーブ情報は、ADIPデコータ238に供給される。
【0156】
ADIPデコータ238は、グルーブ情報に対してバンドパスフィルタにより帯域制限してウォブル成分を抽出した後、FM復調、バイフェーズ復調を行ってADIPアドレスを抽出する。抽出された、ディスク上の絶対アドレス情報であるADIPアドレスは、従来ミニディスク及び次世代MD1の場合であれば、MDアドレスデコーダ239を介し、次世代MD2の場合であれば、次世代MD2アドレスデコーダ240を介してドライブコントローラ241に供給される。
【0157】
ドライブコントローラ241では、各ADIPアドレスに基づいて、所定の制御処理を実行する。またグルーブ情報は、スピンドルサーボ制御のためにサーボ回路237に戻される。
【0158】
サーボ回路237は、例えばグルーブ情報に対して再生クロック(デコード時のPLL系クロック)との位相誤差を積分して得られる誤差信号に基づき、CLVサーボ制御及びZCAVサーボ制御のためのスピンドルエラー信号を生成する。
【0159】
またサーボ回路237は、スピンドルエラー信号や、上記のようにRFアンプ24から供給されたトラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号、或いはドライブコントローラ241からのトラックジャンプ指令、アクセス指令等に基づいて各種サーボ制御信号(トラッキング制御信号、フォーカス制御信号、スレッド制御信号、スピンドル制御信号等)を生成し、モータドライバ242に対して出力する。すなわち、上記サーボエラー信号や指令に対して位相補償処理、ゲイン処理、目標値設定処理等の必要処理を行って各種サーボ制御信号を生成する。
【0160】
モータドライバ242では、サーボ回路237から供給されたサーボ制御信号に基づいて所定のサーボドライブ信号を生成する。ここでのサーボドライブ信号としては、2軸機構を駆動する2軸ドライブ信号(フォーカス方向、トラッキング方向の2種)、スレッド機構を駆動するスレッドモータ駆動信号、スピンドルモータ221を駆動するスピンドルモータ駆動信号となる。このようなサーボドライブ信号により、ディスク290に対するフォーカス制御、トラッキング制御、及びスピンドルモータ221に対するCLV制御又はZCAV制御が行われる。
【0161】
ディスク290に対して記録動作が実行される際には、図19に示したメモリ転送コントローラ212から高密度データ、或いはオーディオ処理部219からの通常のATRAC圧縮データが供給される。
【0162】
従来ミニディスクに対する記録時には、セレクタ243が従来ミニディスク側に接続され、ACIRCエンコーダ244及びEFM変調部245が機能する。この場合、オーディオ信号であれば、オーディオ処理部219からの圧縮データは、ACIRCエンコーダ244でインターリーブ及びエラー訂正コード付加が行われた後、EFM変調部245においてEFM変調される。EFM変調データがセレクタ243を介して磁気ヘッドドライバ246に供給され、磁気ヘッド223がディスク290に対してEFM変調データに基づいた磁界印加を行うことで変調されたデータが記録される。
【0163】
次世代MD1及び次世代MD2に対する記録時には、セレクタ243が次世代MD1・次世代MD2側に接続され、RS−LCDエンコーダ247及びRLL(1−7)PP変調部248が機能する。この場合、メモリ転送コントローラ212から送られた高密度データは、RS−LCDエンコーダ247でインターリーブ及びRS−LDC方式のエラー訂正コード付加が行われた後、RLL(1−7)PP変調部248にてRLL(1−7)変調される。
【0164】
RLL(1−7)符号列に変調された記録データは、セレクタ243を介して磁気ヘッドドライバ246に供給され、磁気ヘッド223がディスク290に対して変調データに基づいた磁界印加を行うことでデータが記録される。
【0165】
レーザドライバ/APC249は、上記のような再生時及び記録時においてレーザダイオードにレーザ発光動作を実行させるが、いわゆるAPC(Automatic Laser Power Control)動作も行う。具体的には、図示しないが、光学ヘッド222内には、レーザパワーモニタ用のディテクタが設けられており、このモニタ信号がレーザドライバ/APC249にフィードバックされるようになっている。レーザドライバ/APC249は、モニタ信号として得られた現在のレーザパワーを予め設定されているレーザパワーと比較して、その誤差分をレーザ駆動信号に反映させることによって、レーザダイオードから出力されるレーザパワーが設定値で安定化されるように制御している。ここで、レーザパワーは、ドライブコントローラ241によって、再生レーザパワー及び記録レーザパワーとしての値がレーザドライバ/APC249内部のレジスタにセットされる。
【0166】
ドライブコントローラ241は、システムコントローラ218からの指示に基づいて、以上の各動作(アクセス、各種サーボ、データ書込、データ読出の各動作)が実行されるように各構成を制御する。なお、図20において一点鎖線で囲った各部は、1チップの回路として構成することもできる。
【0167】
ところで、ディスク290が図13のように、予めデータトラック記録領域とオーディオトラック記録領域とが分割して領域設定されている場合、システムコントローラ218は、記録再生するデータがオーディオトラックかデータトラックかに応じて、設定された記録領域に基づいたアクセスをメディアドライブ部211のドライブコントローラ241に指示することになる。
【0168】
また、装着されたディスク290に対して、PC用のデータ又はオーディオデータの何れか一方のみを記録許可し、これ以外のデータの記録を禁止する制御を行うようにもできる。すなわち、PC用のデータとオーディオデータとを混在しないように制御することもできる。
【0169】
従って、本具体例として示すディスクドライブ装置210は、上述した構成を備えることにより、従来ミニディスク、次世代MD1及び次世代MD2の間の互換性を実現できると共に、光ピックアップ等からの漏れ磁界及びディスクの隣接トラックからの浮遊磁界等による記録信号の非対称性を高精度且つ高効率で補正することができる。
【0170】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明に係るデータ記録装置は、記録データにより変調した変調磁界を記録磁界として記録媒体に対して印加すると共に、該記録媒体の記録面に対して記録パルスを照射することにより該記録媒体へのデータ記録を行うデータ記録装置において、上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定するレーザ光出力制御手段を有するので、オフセットにより生じる記録ピットのアシンメトリを補正して、記録・再生特性を向上させ、また記録装置及び光磁気ディスクによるバラツキを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)及び(b)は、夫々光磁気ディスクに磁界変調パルス記録を行う様子を示す模式図及び磁界変調パルス記録時に印加される記録磁界及び記録パルスを示す図である。
【図2】縦軸に保持力をとり、横軸に温度をとって、光磁気ディスク材料の保持力の温度依存性を示すグラフ図である。
【図3】オフセット磁界とアシンメトリとの関係を示す図であって、(a)は矢印B方向にディスクが回転する際の光磁気ディスクの記録ピットを示す模式図、(b)は記録磁界を示す図、(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び(d)は記録パルスを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるアシンメトリ補正方法を示す図であって、(a)は矢印B方向にディスクが回転している場合の記録ピットを示す模式図、(b)は記録磁界を示す図、(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び(d)は記録パルスを示す図である。
【図5】アシンメトリ補正方法の他の例を示す図であって、(a)は矢印B方向にディスクが回転している場合の記録ピットを示す模式図、(b)は記録磁界を示す図、(c)は盤面上の温度分布を模式的に示すグラフ図、及び(d)は記録パルスを示す図である。
【図6】本実施の形態における記録再生装置を示すブロック図である。
【図7】レーザ制御部の内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2、並びに従来のミニディスクの仕様を説明する図である。
【図9】本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2における誤り訂正方式のBIS付きRS−LDCブロックを説明する図である。
【図10】本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2の1レコーディングブロック内のBIS配置を説明する図である。
【図11】本発明の具体例として示す次世代MD1のディスク盤面上のエリア構成を説明する模式図である。
【図12】本発明の具体例として示す次世代MD2のディスク盤面上のエリア構成を説明する模式図である。
【図13】本発明の具体例として示す次世代MD1のディスクにオーディオデータとPC用データとを混在記録した場合の盤面上のエリア構成を説明する模式図である。
【図14】本発明の具体例として示す次世代MD1のデータ管理構造を説明する模式図である。
【図15】本発明の具体例として示す次世代MD2のデータ管理構造を説明する模式図である。
【図16】本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2のADIPセクタ構造とデータブロックとの関係を説明する模式図である。
【図17】(a)は、次世代MD2のADIPデータ構造を示す模式図であり、(b)は、次世代MD1のADIPデータ構造を示す模式図である。
【図18】本発明の具体例として示す次世代MD2のデータ管理構造の変形例を説明する模式図である。
【図19】本発明の具体例として示す次世代MD1及び次世代MD2に対して互換性を有して記録再生を行うディスクドライブ装置を説明するブロック図である。
【図20】上記ディスクドライブ装置のメディアドライブ部を説明するブロック図である。
【図21】(a)は、変調磁界の極性を示す図、(b)はレーザダイオードを発光させるためにレーザダイオードドライバ5aから出力される記録パルスの出力タイミングを示す図、(c)は磁気ヘッドから出力される磁界波形、及び(d)はオフセットが与えられた磁界によりディスクの記録が行われた場合の記録ピットの記録状態を示す図である。
【符号の説明】
1 ディスク、2 スピンドルモータ、3 スピンドル制御部、4 光学ピックアップ、4a 対物レンズ、4b 2軸機構、4c レーザ光源、4d ディテクタ、4e 光学系、5 レーザ制御部、5a レーザダイオードドライバ、5b 記録パルス幅設定回路、5c 記録パルス発生回路、6 コントローラ、7 I/V変換マトリクスアンプ、8 サーボコントローラ、8a 位相補償回路、8b 2軸ドライバ、9,12 クランプ回路、10,13 A/D変換器、11 PLL回路、14 データ検出部、16 トラッキングエラー生成部、16a サンプルホールド回路、16b エラー信号生成回路、17 タイミングコントローラ、19 インターフェイス部、25 エンコーダ、26 磁気ヘッドドライバ、27 磁気ヘッド、90 ホストコンピュータ、100 光磁気ディスク、101 磁気ヘッド、102 光学ピックアップ、P1,P2,P3記録パルス、D1,D2 記録磁界、T1,T2,T3 盤面温度、d1,d2,d3 保持力
Claims (9)
- 記録データにより変調した変調磁界を記録磁界として記録媒体に対して印加すると共に、該記録媒体の記録面に対して記録パルスを照射することにより該記録媒体へのデータ記録を行うデータ記録装置において、
上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定するレーザ光出力制御手段を有する
ことを特徴とするデータ記録装置。 - 上記記録磁界のオフセット量を検出するオフセット量検出手段を有し、
上記レーザ光出力制御手段は、上記オフセット量検出手段により検出された上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定する
ことを特徴とする請求項1記載のデータ記録装置。 - 上記オフセット量検出手段は、上記記録媒体に対して所定の検出用データを記録する検出用データ記録手段と、上記記録媒体に記録された検出用データを読出して得られる再生信号のオフセットレベルに基づいて、上記記録磁界のオフセット量を判別する判別手段とを有する
ことを特徴とする請求項2記載のデータ記録装置。 - 上記記録パルスは、クロック毎に印加されることを特徴とする請求項1記載のデータ記録装置。
- 記録データにより変調した変調磁界を記録磁界として記録媒体に対して印加すると共に、該記録媒体の記録面に対して記録パルスを照射することにより該記録媒体へのデータ記録を行うデータ記録方法において、
上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定するレーザ光出力制御工程を有する
ことを特徴とするデータ記録方法。 - 上記記録磁界のオフセット量を検出するオフセット量検出工程を有し、
上記レーザ光出力制御工程では、上記オフセット量検出工程にて検出された上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅が可変設定される
ことを特徴とする請求項5記載のデータ記録方法。 - 上記オフセット量検出工程は、上記記録媒体に対して所定の検出用データを記録する検出用データ記録工程と、上記記録媒体に記録された検出用データを読出して得られる再生信号のオフセットレベルに基づいて、上記記録磁界のオフセット量を判別する判別工程とを有する
ことを特徴とする請求項6記載のデータ記録方法。 - 上記記録パルスは、クロック毎に印加されることを特徴とする請求項5記載のデータ記録方法。
- 記録データにより変調した変調磁界を記録磁界として記録媒体に対して印加すると共に、該記録媒体の記録面に対して記録パルスを照射することにより該記録媒体へのデータ記録を行う動作をコンピュータに実行させるためのプログラムにおいて、
上記記録磁界のオフセット量をキャンセルするように、上記記録パルスのパルス幅を可変設定するレーザ光出力制御工程を有する
ことを特徴とするプログラム。
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