JP2004211251A - 不織布 - Google Patents

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JP2004211251A JP2003000940A JP2003000940A JP2004211251A JP 2004211251 A JP2004211251 A JP 2004211251A JP 2003000940 A JP2003000940 A JP 2003000940A JP 2003000940 A JP2003000940 A JP 2003000940A JP 2004211251 A JP2004211251 A JP 2004211251A
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健治 稲垣
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Abstract

【課題】良好な色調(b値)を有し、かつ品質バラツキが小さく均質な不織布を提供すること。
【解決手段】特定のチタン化合物及びリン化合物を含むポリエステル製造用触媒を用いて得られたポリエステル組成物を繊維化した後、該ポリエステル繊維を少なくとも用いて不織布を構成する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は不織布に関し、さらに詳しくは、良好な色調(カラーb値)を有し、紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸しても口金付着物の発生量が非常に少なく、成形性に優れているポリエステル繊維を少なくとも含んでなる不織布に関するものである。本発明の不織布によれば、良好な色調を有する詰綿が安定的に歩留まりよく生産可能である。かかる不織布は、衛生材料、各種フィルター、壁紙、障子紙、名刺、各種証書、家庭用/業務用ワイパー、印刷用原紙、電気材料基材、カーペット、土木用シート、吸音断熱材、農業/園芸用シート、アク取りといった調理補助用などの用途に好適である。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、繊維、フィルム、その他の成形物に広く利用されている。
【0003】
例えばポリエチレンテレフタレートは、通常テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させることにより、テレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体を含む反応生成物を調製し、次いでこの反応生成物を重合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることによって製造されている。また、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレートも上記と同様の方法によって製造されている。
【0004】
これらの重縮合反応段階で使用する触媒の種類によって、反応速度および得られるポリエステルの品質が大きく左右されることはよく知られている。ポリエチレンテレフタレートの重縮合触媒としては、アンチモン化合物が、優れた重縮合触媒性能を有し、かつ、色調の良好なポリエステルが得られるなどの理由から最も広く使用されている。
【0005】
しかしながら、アンチモン化合物を重縮合触媒として使用した場合、ポリエステルを長時間にわたって連続的に溶融紡糸すると、口金孔周辺に異物(以下、単に口金異物と称することがある。)が付着堆積し、溶融ポリマー流れの曲がり現象(ベンディング)が発生し、これが原因となって紡糸、延伸工程において毛羽及び/又は断糸などを発生するという成形性の問題がある。そして、かかるポリエステルからなるポリエステル繊維を用いて不織布を製造すると、引張り強度などの品質にバラツキが発生するという問題があった。
【0006】
この問題を回避するため、該アンチモン化合物以外の重縮合触媒として、チタンテトラブトキシドのようなチタン化合物を用いることも提案されているが、このようなチタン化合物を使用した場合、上記のような、口金異物堆積に起因する成形性の問題は解決できるが、得られたポリエステル自身が黄色く変色しており、また、溶融熱安定性も不良であるという新たな問題が発生する。
【0007】
上記黄色化問題を解決するために、コバルト化合物をポリエステルに添加して黄味を抑えることが一般的に行われている。確かにコバルト化合物を添加することによってポリエステルの色調(カラーb値)は改善することができるが、コバルト化合物を添加することによってポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの分解も起こりやすくなるという新たな問題が発生する。
【0008】
また、他のチタン化合物として、例えば、特許文献1には水酸化チタンを、また特許文献2にはα−チタン酸を、それぞれポリエステル製造用触媒として使用することが開示されている。しかしながら、前者の方法では水酸化チタンの粉末化が容易でなく、一方、後者の方法ではα−チタン酸が変質し易いため、その保存、取り扱いが容易でなく、したがっていずれも工業的に採用するには適当ではなく、さらに、良好な色調(カラーb値)のポリマーを得ることも困難である。
【0009】
また、特許文献3にはチタン化合物とトリメリット酸とを反応させて得られた生成物を、また特許文献4にはチタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物を、それぞれポリエステル製造用触媒として使用することが開示されている。確かに、この方法によれば、ポリエステルの溶融熱安定性はある程度向上しているものの、得られるポリマーの色調が十分なものではなく、したがってポリマー色調のさらなる改善が望まれている。
【0010】
さらに、特許文献5においては、チタン化合物とリン化合物との錯体をポリエステル製造用触媒とすることが提案されており、この方法によれば溶融熱安定性もある程度は向上するものの、得られるポリマーの色調は十分なものではない。
【0011】
なお、これらのチタン−リン系触媒は、その触媒自身がポリエステルポリマー中に異物として残留することが多く、この問題についても解決されることが望まれていた。
【0012】
【特許文献1】
特公昭48−2229号公報
【特許文献2】
特公昭47−26597号公報
【特許文献3】
特公昭59−46258号公報
【特許文献4】
特開昭58−38722号公報
【特許文献5】
特開平7−138354号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題点を解消し、良好な色調(カラーb値)を有し、品質のバラツキが小さく均質な不織布を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するためにポリエステルの製造に用いられる重縮合触媒について鋭意研究したところ、重縮合触媒として、特定のチタン化合物とリン化合物を加熱処理して得られる析出物は高い触媒活性を有し、優れた品質のポリエステルを製造できることを見いだして本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の目的は、
二官能性芳香族カルボン酸のアルキレングリコールエステル及びその重合体から選ばれた少なくとも1種からなる重合出発原料を、下記式(I)で表されるチタン化合物と下記式(II)で表されるリン化合物との反応生成物を含む触媒の存在下に重縮合して得られるポリエステルポリマーからなるポリエステル繊維を少なくとも含む不織布によって達成することができる。
【0016】
【化4】
Figure 2004211251
【0017】
[但し、式(I)中、R,R,R及びRは、それぞれ互いに独立に2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、kは1〜3の整数を表し、かつkが2又は3の場合、2個又は3個のR基及びR基は、それぞれ互いに同一であってもよく、或いは異なっていてもよい。]
【0018】
【化5】
Figure 2004211251
【0019】
[式(II)中、Rは、2〜18個の炭素原子を有するアルキル基または6〜12個の炭素原子を有するアリール基である。nは、1又は2を表す。]
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ポリエステル製造用触媒は上記式(I)で表されるチタン化合物と上記式(II)で表されるリン化合物との反応生成物を含むものである。
【0021】
該チタン化合物としては、上記式(I)で表されるチタン化合物を用い、具体的には、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシドに例示されるチタンテトラアルコキシド、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネートなどのアルキルチタネートを挙げることができるが、なかでも本発明において使用されるリン化合物成分との反応性の良好なチタンテトラアルコキシドを用いることが好ましく、特にチタンテトラブトキシドを用いることが好ましい。
【0022】
該リン化合物としては、上記式(II)で表されるリン化合物を用い、具体的には、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノトリメチルホスフェート、モノ−n−ブチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノヘプチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノオレイルホスフェート、モノテトラコシルホスフェート、モノフェニルホスフェート、モノベンジルホスフェート、モノ(4−ドデシル)フェニルホスフェート、モノ(4−メチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−エチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−プロピルフェニル)ホスフェート、モノ(4−ドデシルフェニル)ホスフェート、モノトリルホスフェート、モノキシリルホスフェート、モノビフェニルホスフェート、モノナフチルホスフェート、及びモノアントリルホスフェート等のモノアルキルホスフェート類及びモノアリールホスフェート類を包含し、これらは単独で用いられてもよく、或いは2種以上の混合物として、例えばモノアルキルホスフェートとモノアリールホスフェートとの混合物として用いられてもよい。但し、上記りん化合物を2種以上の混合物として用いる場合、モノアルキルホスフェートの比率が50%以上を占めていることが好ましく、90%以上を占めていることがより好ましく、特に100%を占めていることがさらに好ましい。
【0023】
前記触媒の製造方法は特に限定されず、例えば、上記式(I)のチタン化合物と上記式(II)のリン化合物とをグリコール中で加熱することにより製造することができ、該チタン化合物と該リン化合物とを含有するグリコール溶液を加熱すると、グリコール溶液が白濁して析出物が発生する。この析出物を本発明では、ポリエステルの製造用の触媒として用いることができる。
【0024】
ここで用いることのできるグリコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等を例示することができるが、得られた触媒を用いて製造するポリエステルを構成する成分と同じグリコールを使用することが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレートを製造しようとするときにはエチレングリコールを、ポリトリメチレンテレフタレートを製造しようとするときには1,3−プロパンジオールを、ポリテトラメチレングリコールを製造しようとするときにはテトラメチレングリコールを、それぞれ用いることが好ましい。
【0025】
なお、前記触媒は式(I)のチタン化合物、式(II)のリン化合物及びグリコールの3者を同時に混合し、加熱する方法によっても製造することができる。しかしながら、ここで加熱により、式(I)のチタン化合物と式(II)のリン化合物とが反応して、グリコールに不溶の析出物として析出するのであるが、この析出までの反応は、均一な反応であることが好ましく、効率よく反応析出物を得るためには、式(I)のチタン化合物と式(II)のリン化合物とのそれぞれについて予めグリコールの溶液を作成し、その後、この溶液を混合し加熱させる方法で製造することが好ましい。
【0026】
また、加熱時の温度は、反応温度が余りに低すぎると、反応が不十分であったり、反応に過大に時間を要したりする問題がある。そこで、均一な反応により効率よく反応析出物を得るには、50℃〜200℃の温度で反応させることが好ましく、反応時間は、1分間〜4時間が好ましい。
【0027】
例えば、グリコールとしてエチレングリコールを用いる場合50℃〜150℃が好ましく、ヘキサメチレングリコールを用いる場合100℃〜200℃が好ましい範囲であり、また、反応時間は、30分間〜2時間がより好ましい範囲となる。
【0028】
本発明においては、グリコール中で加熱する式(I)のチタン化合物と式(II)のリン化合物との配合割合が、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率として1.0〜3.0の範囲にあることが好ましく、さらに1.5〜2.5であることが好ましい。該範囲内にあるときには、リン原子を含む化合物とチタン化合物がほぼ完全に反応して未完全な反応物が存在しないので、得られるポリエステルの色相改善効果はさらに向上し、また、過剰な未反応のリン化合物もほとんど存在しないので、ポリエステル重合反応性を阻害することもなく、生産性も高いものとなる。
【0029】
上記方法で反応させることにより、チタン原子とリン原子を含む新に生成した化合物がグリコール中で析出物として現れる。
【0030】
本発明においては、チタン化合物を予め下記一般式(III)で表される多価カルボン酸及び/又はその酸無水物と反応モル比(2:1)〜(2:5)の範囲で反応させた後、リン化合物と反応させることが好ましい。
【0031】
【化6】
Figure 2004211251
【0032】
[但し、式(III)中、mは2〜4の整数を表す。]
該多価カルボン酸及びその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物を好ましく用いることができ、特にチタン化合物との反応性がよく、また得られる重縮合触媒のポリエステルとの親和性の高いトリメリット酸無水物を用いることが好ましい。
【0033】
該チタン化合物と多価カルボン酸又はその無水物との反応は、前記多価カルボン酸又はその無水物を溶媒に混合してその一部又は全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物を滴下し、0℃〜200℃の温度で少なくとも30分間、好ましくは30〜150℃の温度に40〜90分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧で充分である。なお、前記溶媒としては、多価カルボン酸又はその無水物の一部又は全部を溶解し得るものから適宜に選択することができるが、好ましくは、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、キシレン等から選ばれる。
【0034】
この反応におけるチタン化合物と式(III)の化合物又はその無水物とのモル比は適宜に選択することができるが、チタン化合物の割合が多すぎると、得られるポリエステルの色調が悪化したり、軟化点が低下したりする傾向があり、逆にチタン化合物の量が少なすぎると重縮合反応が進みにくくなる傾向があるため、チタン化合物と多価カルボン酸化合物又はその無水物との反応モル比は、(2:1)〜(2:5)とすることが好ましい。
【0035】
この反応によって得られる反応生成物は、そのまま前述のリン化合物との反応に供してもよく、あるいはこれをアセトン、メチルアルコール及び/又は酢酸エチルなどによって再結晶して精製した後、これをリン化合物と反応させてよい。
【0036】
このようにして得た析出物を含むグリコール液は、析出物とグリコールとを分離することなくそのままポリエステル製造用触媒として用いてもよく、遠心沈降処理又は濾過などの手段により析出物を分離した後、該析出物を、再結晶剤、例えばアセトン、メチルアルコール及び/又は水などにより再結晶し精製した後、この精製物を触媒として用いてもよい。なお、該触媒は、固体NMR及びXMAの金属定量分析で、その構造を確認することできる。
【0037】
本発明において、ポリエステル製造用触媒の一態様として、前記(I)(但し、kは1を表す)の少なくとも1種のチタン化合物、すなわちチタンテトラアルコキシドからなるチタン化合物成分と前記式(III)の少なくとも1種のりん化合物からなるりん化合物成分との反応生成物が触媒として用いられる。
【0038】
上記の触媒においては、式(I)(但し、k=1)の少なくとも1種のチタン化合物からなるチタン化合物成分と、式(III)の少なくとも1種のりん化合物からなるりん化合物成分との反応生成物は、下記(IV)により表される化合物を含有する。
【0039】
【化7】
Figure 2004211251
【0040】
[但し、式(IV)中のR及びR基は、それぞれ独立に、前記チタン化合物のR、R、R及びRのいずれか1つ以上に由来する、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基、又は、前記りん化合物のRに由来する、6〜12個の炭素原子を有するアルキル基である。]
式(IV)により表されるチタン/りん化合物を含む触媒は、高い触媒活性を有し、これを用いて製造されたポリエステルは、良好な色調(低いb値)を有し、実用上十分に低いアセトアルデヒド、残留金属及び芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールとのエステルの環状三量体の含有量を有し、かつ実用上十分なポリマー性能を有する。
【0041】
本発明において、ポリエステル製造用の触媒には、前記一般式(IV)のチタン/りん化合物が50質量%以上含まれていることが好ましく、70質量%以上含まれることがより好ましい。
【0042】
本発明において、ポリエステルポリマーを得るに当たっては、上記析出物は重縮合反応時に反応系内に存在していればよい。このため該析出物の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程等のいずれの工程で行ってもよい。また、触媒全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。
【0043】
また、重縮合反応では、必要に応じてトリメチルホスフェートなどのリン安定剤をポリエステル製造における任意の段階で加えてもよく、さらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、整色剤、消泡剤その他の添加剤などを配合してもよい。
【0044】
さらに、得られるポリエステルの色相の改善補助をするために、ポリエステルの製造段階において、アゾ系、トリフェニルメタン系、キノリン系、アントラキノン系、フタロシアニン系等の有機青色顔料等、無機系以外の整色剤を添加することもできる。
【0045】
次に、前記の触媒を用いて、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、脂肪族グリコールとを重縮合させてポリエステルを製造する方法について説明する。
【0046】
ポリエステルの出発原料となる二官能性芳香族カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0047】
もう一方の出発原料となる脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンメチレングリコール、ドデカメチレングリコールを用いることができる。
【0048】
また、ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸とともに、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸など又はそのエステル形成性誘導体を原料として使用することができ、ジオール成分としても脂肪族ジオールとともに、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式グリコール、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類などの芳香族ジオールなどを原料として使用することができる。
【0049】
さらに、トリメシン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能性化合物を原料として使用することができる。
【0050】
上記の二官能性芳香族カルボン酸のアルキレングリコールエステル及び/又はその低重合体は、いかなる方法によって製造されたものであってもよいが、通常、二官能性芳香族カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコール又はそのエステル形成性誘導体とを加熱反応させることによって製造される。
【0051】
例えば、ポリエチレンテレフタレートの原料であるテレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体について説明すると、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、又はテレフタル酸にエチレンオキサイドを付加反応させる方法が一般に採用される。
【0052】
なお、本発明において、ポリエステルは再生ポリエステルであってもよい。すなわち、ポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって得られた回収テレフタル酸ジメチル又はこれを加水分解して得られる回収テレフタル酸を、ポリエステルを構成する全酸成分の質量を基準として70質量%以上使用したものでもよい。この場合、前記アルキレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましく、特に回収されたPETボトル、回収された繊維製品、回収されたポリエステルフィルム製品、さらには、これら製品の製造工程において発生するポリマー屑などをポリエステル製造用原料源として用いることは、資源の有効活用の観点から好ましいことである。
【0053】
ここで、回収ポリアルキレンテレフタレートを解重合してテレフタル酸ジメチルを得る方法には特に制限はなく、従来公知の方法をいずれも採用することができる。例えば、回収ポリアルキレンテレフタレートを用いて解重合した後、解重合生成物を、低級アルコール、例えばメタノールによるエステル交換反応に供し、この反応混合物を精製してテレフタル酸の低級アルキルエステルを回収し、これをアルキレングリコールによるエステル交換反応に供し、得られたテレフタル酸/アルキレングリコールエステルを重縮合すればポリエステルを得ることができる。また、上記、回収された、テレフタル酸ジメチルからテレフタル酸を回収する方法にも特に制限はなく、従来方法をいずれを用いてもよい。例えばエステル交換反応により得られた反応混合物からテレフタル酸ジメチルを再結晶法及び/又は蒸留法により回収した後、高温高圧化で水とともに加熱して加水分解してテレフタル酸を回収することができる。この方法によって得られるテレフタル酸に含まれる不純物において、4−カルボキシベンズアルデヒド、パラトルイル酸、安息香酸及びヒドロキシテレフタル酸ジメチルの含有量が、合計で1ppm以下であることが好ましい。また、テレフタル酸モノメチルの含有量が、1〜5000ppmの範囲にあることが好ましい。上述の方法により回収されたテレフタル酸と、アルキレングリコールとを直接エステル化反応させ、得られたエステルを重縮合することによりポリエステルを製造することができる。
【0054】
次に、本発明における重縮合触媒の存在下に、上記で得られた低重合体を、減圧下で、かつポリエステルポリマーの融点以上分解点未満の温度(通常240℃〜280℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応の脂肪族グリコール及び重縮合で発生する脂肪族グリコールを反応系外に留去させながら行われることが望ましい。
【0055】
重縮合反応は、1槽で行ってもよく、複数の槽に分けて行ってもよい。例えば、重縮合反応が2段階で行われる場合には、第1槽目の重縮合反応は、反応温度が245〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力が100〜1kPa、好ましくは50〜2kPaの条件下で行われ、最終第2槽での重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜290℃、反応圧力は通常10〜1000Paで、好ましくは30〜500Paの条件下で行われる。
【0056】
このようにして、前記の触媒を用いてポリエステルを製造することができるが、この重縮合工程で得られるポリエステルは、通常、溶融状態で押し出しながら、冷却後、粒状(チップ状)のものとなす。
【0057】
得られたポリエステルの固有粘度は0.40〜0.80、好ましくは0.50〜0.70であることが望ましい。
【0058】
上記重縮合工程で得られるポリエステルは、所望によりさらに固相重縮合することができる。
【0059】
該固相重縮合工程に供給される粒状ポリエステルは、予め、固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
【0060】
このような予備結晶化工程は、粒状ポリエステルを乾燥状態で通常、120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に1分間から4時間加熱することによって行うことができるが、このような予備結晶化は、粒状ポリエステルを水蒸気雰囲気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下、あるいは水蒸気含有空気雰囲気下で、120〜200℃の温度で1分間以上加熱することによって行うこともできる。
【0061】
予備結晶化されたポリエステルは、結晶化度が20〜50%であることが望ましい。なお、この予備結晶化処理によっては、いわゆるポリエステルの固相重縮合反応は進行しないので、予備結晶化されたポリエステルの固有粘度と予備結晶化される前のポリエステルの固有粘度との差は、通常0.06以下である。
【0062】
該固相重縮合工程は、少なくとも1段階からなり、温度が190〜230℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が1kPa〜200kPa、好ましくは10kPa〜大気圧の条件下で、窒素、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。使用する不活性ガスとしては窒素ガスが望ましい。
【0063】
このような固相重縮合工程を経て得られた粒状ポリエステルには、必要に応じて水、水蒸気、水蒸気含有不活性ガス、水蒸気含有空気などと接触させる、水処理を行って、チップ中に含まれる触媒を失活させてもよい。
【0064】
このようにして得られた粒状ポリエステルの固有粘度は、0.70以上であることが望ましい。上記のようなエステル化工程と重縮合工程とを含むポリエステルの製造工程はバッチ式、半連続式、連続式のいずれでも行うことができる。
【0065】
なお、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体は、使用する芳香族ジカルボン酸成分を基準として80モル%以上、好ましくは90モル%以上を占めるような量で用いられ、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体は脂肪族グリコールを基準として80モル%以上、好ましくは90モル%以上を占める量で用いられることが好ましい。
【0066】
上記した方法で得られたポリエステルポリマーを繊維とするには、格別な方法を採用する必要はなく、従来公知のポリエステルの溶融紡糸をいずれも採用することができる。ここで紡出する繊維の横断面における形状は円形であっても異形であってもどちらでもよい。
【0067】
本発明の不織布は、比較的長い短繊維を針の付いたローラーを用いて繊維を開繊混合する乾式法(カード法)、比較的短い短繊維を水中で分散しワイヤーに抄き取る湿式法(抄造法)、比較的短い短繊維を穴明きドラムに送り空気により分散しウェブを形成するエアレイド法(エアレイ法、乾式パルプ法とも呼ばれる事がある)等により形成された後、絡合/熱処理工程により構造を固定したものである。
【0068】
不織布の製造方法により、各種最適条件が異なる為、以後個別に説明する。
<乾式法>
乾式不織布の特徴としては、低目付から高目付まで幅広く製造する事が可能である。
【0069】
本発明の不織布が乾式法を適応する場合、目付は15〜2000g/mである事が好ましく、更には20〜1200g/mである事が更に好ましい。15g/m未満では均一なウェブを連続的に生産するのが極めて困難であり、2000g/mを越える場合生産性が悪くなる為好ましくない。
【0070】
本発明の不織布中で用いるポリエステル繊維の割合としては特に限定されるものではないが、公定性の効果を発揮する観点から考えて、重量比率で50%以上である事が好ましい。なお、その他の混合素材としては、通常、乾式不織布に適応する繊維(例えば、コットンといった天然繊維、レーヨン、アセテートと言った半合成繊維、PVA繊維、ポリオレフィン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、カーボン繊維と言った合成繊維や融点の異なる複数のポリマーから構成される複合繊維等)を用いる事が出来る。
【0071】
繊維の固定方法としては、ニードルによる繊維同士の絡み合い(ニードルパンチ法)、高圧水流による繊維同士の絡み合い(スパンレース法)、バインダー繊維による接着(エアースルー法)、収縮による絡み合い、熱ロールによるプレス等を適宜用いることが出来る。
【0072】
本発明の不織布が乾式法を適応する場合、繊維長としては30〜150mm、更に好ましくは、50〜100mmである事が好ましい。30mm未満では開繊時のウェブの繋がりが弱く繊維脱落が発生が大きくなり、150mmを越えると絡みが生じやすく、ネップ等を生じやすくなる為好ましくない。
【0073】
本発明の不織布が乾式法を適応する場合、用いるポリエステル繊維の繊度は0.5dtex〜120dtexである事が好ましく、更には1dtex〜50dtexである事が更に好ましい。0.5dtex未満では開繊性が悪い為、ライン速度を下げざる終えず、生産性が極めて悪く、120dtexを超えると均一なウェブを得られにくく好ましくない。
【0074】
本発明の不織布が乾式法を適応する場合、用いるポリエステル繊維には捲縮が付与されている事が好ましい。捲縮付与の方法としては押し込み捲縮、ギア捲縮、紡糸時に異方性を用いた立体捲縮等を適宜用いる事が出来る。
<湿式法>
湿式法不織布の特徴としては、地合が極めてよく、数グラムといった低目付不織布を作る事も出来、生産性も高い事にある。
【0075】
本発明の不織布が湿式法を適応する場合、目付は5〜200g/mである事が好ましく、更には20〜100g/mである事が更に好ましい。5g/m未満では製造上極めて困難であり、100g/mを超えると不織布の生産性が悪くなる為好ましくない。
【0076】
本発明の不織布中で用いるポリエステル繊維の割合としては特に限定されるものではないが、公定性の効果を発揮する観点から考えて、重量比率で50%以上である事が好ましい。なお、その他の混合素材としては、通常、湿式不織布に適応する繊維(例えば、木材パルプ、非木材パルプ、といった天然繊維、レーヨン、アセテートと言った半合成繊維、PVA繊維、ポリオレフィン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、カーボン繊維と言った合成繊維や融点の異なる複数のポリマーから構成される複合繊維等)を用いる事が出来る。
【0077】
本発明中の不織布において、バインダーの比率は重量比率で5〜60%の範囲である事が好ましく、更には10〜30%である事が好ましい。5%未満では接着点が少なすぎる為強度不足となり、60%を超えると、強固な接着は得られるものの熱処理時の収縮や粘着といった工程性の点から好ましくない。
【0078】
本発明で用いるバインダーの状態として通常用いられるものであれば特に限定される事はなく、液体のものを内添で付与しても良いが、取扱等を考慮すると繊維状バインダーである事が好ましい。
【0079】
本発明の不織布が湿式法を適応する場合、繊維長としては0.1〜25mm、更に好ましくは、3〜20mmである事が好ましい。0.1mm未満では繊維同士の絡み合いが少なく、不織布の強度が出難く、25mmを超えると均一分散が極めて困難になる為好ましくない。
【0080】
本発明の不織布が湿式法を適応する場合、用いるポリエステル繊維の繊度は0.05dtex〜10dtexである事が好ましく、更には0.1dtex〜7dtexである事が更に好ましい。0.05dtex未満では強度が得られ難く10dtexを超えると均一分散がし難い為好ましくない。
【0081】
本発明の不織布が湿式法を適応する場合、用いるポリエステル繊維には捲縮付与に関しては特に限定される事はないが、嵩を出すには、ジグザグ状の機械捲縮やスパイラル状の立体捲縮を持っている事が好ましく、嵩が不必要な時は捲縮を有しないストレート繊維である事が好ましい。
【0082】
本発明の不織布が湿式法を適応する場合、製造方法としては、大きく分けて、▲1▼抄紙工程、▲2▼熱処理工程、からなる。抄紙工程としては、短網抄紙機、丸網抄紙機等を用いる事が出来、同方式の組み合わせ、他方式の組み合わせによる多層抄きであっても良い。熱処理工程としては、ロータリードライヤー、多筒ドライヤー、カレンダー等、その使用状況によって単独、組み合わせで用いる事が出来る。更に後加工としては各種樹脂加工や高圧水流による繊維絡合処理を実施しても良い。
<エアレイド不織布>
エアレイド法不織布の特徴としては、湿式不織布に近い地合を持ちつつ低密度(嵩高)な構造が出来る事にある。
【0083】
本発明の不織布がエアレイド法を適応する場合、目付は10〜400g/mである事が好ましく、更には20〜300g/mである事が更に好ましい。10g/m未満では製造上極めて困難であり、300g/mを超えると不織布の生産性が悪くなる為好ましくない。
【0084】
本発明の不織布中で用いるポリエステル繊維の割合としては特に限定されるものではないが、公定性の効果を発揮する観点から考えて、重量比率で50%以上である事が好ましい。なお、その他の混合素材としては、通常、エアレイド不織布に適応する繊維(例えば、木材パルプ、非木材パルプ、といった天然繊維、レーヨン、アセテートと言った半合成繊維、PVA繊維、ポリオレフィン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、カーボン繊維と言った合成繊維や融点の異なる複数のポリマーから構成される複合繊維等)を用いる事が出来る。
【0085】
本発明中の不織布において、バインダーの比率は重量比率で5〜60%の範囲である事が好ましく、更には10〜30%である事が好ましい。5%未満では接着点が少なすぎる為強度不足となり、60%を超えると、強固な接着は得られるものの熱処理時の収縮や粘着といった公定性の点から好ましくない。
【0086】
本発明で用いるバインダーの状態として通常用いられるものであれば特に限定される事はなく、液体のものを内添で付与しても良いが、取扱等を考慮すると繊維状バインダーである事が好ましい。
【0087】
本発明の不織布が湿式法を適応する場合、用いるポリエステル繊維の繊維長としては1〜15mm、更に好ましくは、3〜7mmである事が好ましい。1mm未満では繊維同士の絡み合いが少なく、不織布の強度が出難く、15mmを超えると均一分散が極めて困難になる為好ましくない。
【0088】
本発明の不織布が湿式法を適応する場合、用いるポリエステル繊維の繊度は0.3dtex〜100dtexである事が好ましく、更には1dtex〜20dtexである事が更に好ましい。0.3dtex未満では強度が得られ難く100dtexを超えると均一分散がし難い為好ましくない。
【0089】
本発明の不織布が湿式法を適応する場合、用いるポリエステル繊維には捲縮付与に関しては特に限定される事はないが、嵩を出すには、ジグザグ状の機械捲縮やスパイラル状の立体捲縮を持っている事が好ましく、嵩が不必要な時は捲縮を有しないストレート繊維である事が好ましい。
【0090】
本発明のエアレイド不織布の製造方法としては、大きく分けて、▲1▼ウェブ形成工程、▲2▼熱処理工程、からなる。ウェブ形成工程としては、二つの穴明きドラム(これをヘッドと言う)の回転による遠心力及びサクションにより形成する方法(ダンウェブ法)が有名である。なお、多数のヘッドを直列に並べる事で原綿構成の異なる層を重ね合わせた不織布をダイレクトに製造する事が出来る。熱処理工程としては、熱風サクション式処理、カレンダー、エンボス等、その使用状況によって単独、組み合わせで用いる事が出来る。更に後加工としては各種樹脂加工や高圧水流による繊維絡合処理を実施しても良い。
【0091】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。なお、実施例中の各値は以下の方法に従って求めた。
(1)固有粘度:
ポリエステル0.6gをo−クロロフェノール50cc中に加熱溶解した後、一旦冷却させ、その溶液を、オストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で常法に従って測定した溶液粘度から、算出した。
(2)色相(カラーL値/カラーb値):
粒状のポリマーサンプルを160℃×90分乾燥機中で熱処理し、結晶化させた後、カラーマシン社製CM−7500型カラーマシンで測定した。
(3)金属含有濃度分析:
反応析出触媒のチタン、リン原子濃度は、乾燥したサンプルを走査電子顕微鏡(SEM、日立計測機器サービスS570型)にセットし、それに連結したエネルギー分散型X線マイクロアナライザー(XMA、堀場EMAX−7000)にて定量分析を実施した。
【0092】
ポリエステル中の触媒金属濃度は、粒状のサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平面を有する成形体を作成し、蛍光X線装置(理学電機工業3270E型)にて、定量分析した。
(4)不織布の強伸度:
定速伸長型引っ張り試験機を用い、JIS−P8113記載の方法に準拠し測定した。
(5)品質バラツキ:
引張強度において、n=30あたりの標準偏差により品質バラツキとした。
(値が小さいほど、バラツキが小さく品質が安定している)
【0093】
[実施例1]
チタン化合物の調製:
内容物を混合撹拌できる機能を備え付けた2Lの三口フラスコを準備し、その中にエチレングリコール919gと酢酸10gを入れて混合撹拌した中に、チタンテトラブトキシド71gをゆっくり徐々に添加し、チタン化合物のエチレングリコール溶液(透明)を得た。以下、この溶液を「TB溶液」と略記する。本溶液のチタン原子濃度は1.02%であった。
リン化合物の調製:
内容物を加熱し、混合撹拌できる機能を備え付けた2Lの三口フラスコを準備し、その中にエチレングリコール656gを入れて撹拌しながら100℃まで加熱した。その温度に達した時点で、モノラウリルホスフェートを34.5g添加し、加熱混合撹拌して溶解し、透明な溶液を得た。以下、この溶液を「P1溶液」と略記する。
触媒の調製:
引き続き、100℃に加熱コントロールした上記のP1溶液(約690g)の撹拌状態の中に、先に準備したTB溶液310gをゆっくり徐々に添加し、全量を添加した後、100℃の温度で1時間撹拌保持し、チタン化合物とリン化合物との反応を完結させた。この時のTB溶液とP1溶液との配合量比は、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率が2.0に調整されたものとなっていた。この反応によって得られた生成物は、エチレングリコールに不溶であったため、白濁状態で微細な析出物として存在した。以下、この溶液を「TP1−2.0触媒」と略記する。
【0094】
得られた反応析出物を分析する為、一部の反応溶液を目開き5μのフィルターでろ過し、その析出反応物を固体として採取した後、水洗、乾燥した。得られた析出反応物をXMA分析法で、元素濃度の分析を行った結果、チタン12.0%,リン16.4%であり、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率は、2.1であった。さらに、固体NMR分析を行ったところ、次のような結果を得た。C−13 CP/MAS(周波数75.5Hz)測定法で、チタンテトラブトキシドのブトキシド由来のケミカルシフト14ppm、20ppm、36ppmピークの消失が認められ、また、P−31 DD/MAS(周波数121.5Hz)測定法で、従来モノラウリルホスフェートでは存在しない新たなケミカルシフトピーク−22ppmを確認した。これらより、本条件で得られた析出物は、明らかにチタン化合物とリン化合物とが反応して新たな化合物となっていることを示す。
【0095】
さらに、予め225部のオリゴマーが滞留する反応器内に、撹拌下、窒素雰囲気で255℃、常圧下に維持された条件下に、179部の高純度テレフタル酸と95部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを一定速度供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去ながら、エステル化反応を4時間し反応を完結させた。この時のエステル化率は、98%以上で、生成されたオリゴマーの重合度は、約5〜7であった。
【0096】
このエステル化反応で得られたオリゴマー225部を重縮合反応槽に移し、重縮合触媒として、上記で作成した「TP1−2.0触媒」を3.34部投入した。引き続き系内の反応温度を255から280℃、また、反応圧力を大気圧から60Paにそれぞれ段階的に上昇及び減圧し、反応で発生する水,エチレングリコールを系外に除去しながら重縮合反応を行った。
【0097】
重縮合反応の進行度合いを、系内の撹拌翼への負荷をモニターしなから確認し、所望の重合度に達した時点で、反応を終了した。その後、系内の反応物を吐出部からストランド状に連続的に押し出し、冷却、カッティングして、約3mm程度の粒状ペレットを得た。得られたポリエチレンテレフタレートの品質を表1に示した。
【0098】
次にこのチップを乾燥し、常法に従って紡糸〜延伸〜カットを行い、ポリエステル延伸糸(繊度:1.7dtex、繊維長:5mm、捲縮:ゼロ)、及びポリエステル未延伸糸(繊度:1.2dtex、繊維長:5mm、捲縮:ゼロ)を得た。このポリエステル延伸糸とポリエステル未延伸糸を60/40の割合で原料を調合し、通常の丸網抄紙機を用いて目付が50g/mになるように抄紙したのち、ヤンキードライヤーにより乾燥、更にカレンダー処理を施した。得られた湿式不織布の物性を表1に示す。
【0099】
[実施例2]
実施例1において、モノラウリルホスフェートから代えてモノブチルホスフェートとを用いたこと以外は同様に行った。なお、添加量及び条件についても、併せて下記の通り変更した。
【0100】
エチレングリコール537gにモノブチルホスフェート28.3gを加熱及び溶解し、(以下、これを「P2溶液」と略記する。)その中にTB溶液435gを入れて反応物を得た。この時のTB溶液とP2溶液との配合量比は、チタン原子を基準としてリン原子のモル比率として2.0に調整されたものとなっている。以下これを「TP2−2.0触媒」と略す。この時の加熱温度は、70℃で、反応時間は1時間とした。
【0101】
本反応析出物を分析する為、一部の反応溶液を5μのフィルターでろ過し、その析出反応物を固体として採取し、その後、水洗、乾燥した。得られた析出反応物の元素濃度分析を同じように行った結果、チタン17.0%,リン21.2%で、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率は、1.9であった。本触媒を用いて実施例1と同様にポリエステル繊維の製造を行った後に抄紙〜乾燥を実施し湿式不織布を得た。結果を表1に示した。
【0102】
[実施例3]
実施例1において、TP1溶液の調整量及びTB溶液添加量を変更したこと以外は、同様の操作を行った。ただし、調整量、添加量については次の通りとした。
【0103】
エチレングリコール594gにモノラウリルホスフェート31.3gを加熱及び溶解し(以下、「P3溶液」と略記する。)、その中にTB溶液375gを入れ反応物を得た。この時のTB溶液とP3溶液との配合量比は、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率が1.5に調整されたものとなっている。以下、これを「TP3−1.5触媒」と略す。本触媒を用いて実施例1と同様にポリエステル繊維の製造を行った後に抄紙〜乾燥を実施し湿式不織布を得た。結果を表1に示した。
【0104】
[実施例4]
実施例2において、TP2溶液の調整量及びTB溶液添加量を変更したこと以外は、同様の操作を行った。ただし、調整量、添加量については次の通りとした。
【0105】
エチレングリコール627gにモノブチルホスフェート33.0gを加熱及び溶解し(以下、「P4溶液」と略記する。)、その中にTB溶液340gを入れ反応物を得た。この時のTB溶液とP4溶液の配合量比は、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率が3.0に調整されたものとなっている。以下、これを「TP4−3.0触媒」と略す。本触媒を用いて実施例1と同様にポリエステル繊維の製造を行った後に抄紙〜乾燥を実施し湿式不織布を得た。結果を表1に示した。
【0106】
[実施例5]
実施例1で得られたポリエステルチップを用いて、常法に従って紡糸〜延伸〜カットを行い、ポリエステル延伸糸(繊度:1.7dtex、繊維長:51mm、捲縮:12ケ/吋)を得た。このポリエステル延伸糸を通常のローラーカード機を用いて目付が100g/mになるようにウェブを形成した後、ニードルパンチ機により繊維を絡め乾式不織布を得た。この物性を表1に示す。
【0107】
[実施例6]
実施例1で得られたポリエステルチップと同様の触媒によりイソフタル酸及び1,6−ヘキサンジオールを添加共重合させたチップを用い常法に従って紡糸〜延伸〜カットを行い、芯鞘複合型ポリエステル繊維(芯鞘比:50/50、繊度:2.2dtex、繊維長:5mm)を得た。この芯鞘複合型ポリエステル繊維と叩解した木材パルプを60/40の割合で原料を調合し、エアレイド機により50g/mになるようにウェブ形成したのち、エアースルードライヤーにより熱処理を施した。得られたエアレイド不織布の物性を表1に示す。
【0108】
[比較例1]
実施例1において、重縮合触媒を、三酸化アンチモンの1.3%濃度エチレングリコール溶液に変更し、その投入量を4.83部とし、さらに安定剤としてトリメチルホスフェートの25%エチレングリコール溶液0.121部を投入したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0109】
[比較例2]
実施例1において、重縮合触媒として、実施例1で調製したTB溶液のみを使用し、その投入量を1.03部としたこと以外は同様の操作を行った。この時の重縮合反応時間は、95分であった。結果を表1に示した。
【0110】
[比較例3]
実施例1において、重縮合触媒として、TB溶液とP1溶液とを反応させることなく、ポリエステル製造時の重縮合反応系内にTB溶液1.03部とP1溶液2.30部とをそれぞれ別々に投入したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0111】
[比較例4]
実施例2において、重縮合触媒として、TB溶液とP2溶液とを反応させることなく、ポリエステル製造時の重縮合反応系内にTB溶液1.03部とP2溶液2.3部とをそれぞれ別々に投入する以外は同様の操作を行った。結果を表1に示した。
【0112】
【表1】
Figure 2004211251
【0113】
【発明の効果】
本発明の不織布は良好な色調(カラーb値)を有し、品質バラツキが小さく均質であるという優れた性質を有するものである。

Claims (6)

  1. 二官能性芳香族カルボン酸のアルキレングリコールエステル及びその重合体から選ばれた少なくとも1種からなる重合出発原料を、下記式(I)で表されるチタン化合物と下記式(II)で表されるリン化合物との反応生成物を含む触媒の存在下に重縮合して得られるポリエステルポリマーからなるポリエステル繊維を含んでなることを特徴とする不織布。
    Figure 2004211251
    [但し、式(I)中、R,R,R及びRは、それぞれ互いに独立に2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、kは1〜3の整数を表し、かつkが2又は3の場合、2個又は3個のR基及びR基は、それぞれ互いに同一であってもよく、或いは異なっていてもよい。]
    Figure 2004211251
    [式(II)中、Rは、2〜18個の炭素原子を有するアルキル基または6〜12個の炭素原子を有するアリール基である。nは1又は2を表す。]
  2. チタン化合物とリン化合物との配合割合が、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率として1.0〜3.0の範囲にある、請求項1記載の不織布。
  3. 反応生成物が、チタン化合物を予め下記一般式(III)で表される多価カルボン酸及び/又はその酸無水物と反応モル比(2:1)〜(2:5)の範囲で反応した後、リン化合物と反応してなる、請求項1または請求項2に記載の不織布。
    Figure 2004211251
    [但し、式(III)中、mは2〜4の整数を表す。]
  4. リン化合物がモノアルキルホスフェートである、請求項1〜3のいずれかに記載の不織布。
  5. ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである、請求項1〜4のいずれかに記載の不織布。
  6. ポリエステルが再生ポリエステルである、請求項1〜5のいずれかに記載の不織布。
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