JP2004209708A - インクジェット記録ヘッド、その製造方法、およびその製造に用いるインクジェット記録ヘッド用基体 - Google Patents
インクジェット記録ヘッド、その製造方法、およびその製造に用いるインクジェット記録ヘッド用基体 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】供給口近傍の流路高さが吐出圧力発生素子近傍の流路高さより高くなっており、かつ、インクの流路へと接続する、供給口の、基板表面における開口の角部が精度良く所定の形状に形成されたインクジェット記録ヘッドを製造する。
【解決手段】基板101の表側の面に、吐出圧力発生素子102が設けられた部分よりも段をなすように低くなった窪み部103を形成し、その後、少なくとも窪み部103の表面を覆うように保護膜104を形成する。その後、基板101の裏側の面からウエットエッチングによって、窪み部103の底部まで延びる溝を形成し、保護膜104の、この溝内に露出した部分を除去して供給口110を形成する。
【選択図】 図3
【解決手段】基板101の表側の面に、吐出圧力発生素子102が設けられた部分よりも段をなすように低くなった窪み部103を形成し、その後、少なくとも窪み部103の表面を覆うように保護膜104を形成する。その後、基板101の裏側の面からウエットエッチングによって、窪み部103の底部まで延びる溝を形成し、保護膜104の、この溝内に露出した部分を除去して供給口110を形成する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクなどの液体を液滴として吐出し、それを紙などの被記録材に付着させて記録を行うインクジェット記録ヘッド、その製造方法、およびその製造に用いるインクジェット記録ヘッド用基体に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式(液体噴射記録方式)に適用されるインクジェット記録ヘッドは、一般に、微細な吐出口(オリフィス)、それに通じる液流路、および該液流路の一部に設けられた、吐出圧力発生素子を備える吐出圧力発生部を複数備えている。吐出圧力発生素子としては、例えば、電気熱変換素子が用いられ、このインクジェット記録ヘッドにおいては、電気熱変換素子に駆動信号が印加され、それによって、電気熱変換素子はインクの核沸騰を越える急激な温度上昇を生じてインク内に気泡を生じさせ、この際に生じる圧力によって、インクの液滴が吐出される。各電気熱変換素子には、記録情報に応じて駆動信号が印加され、それによってインクは各吐出口から選択に吐出される。
【0003】
このようなインクジェット記録ヘッドにおいては、高精細で高品位の画像を得られるようにすることが望まれている。このためには、吐出口から小さな液滴を吐出できるようにし、また、液滴をそれぞれの吐出口から常に同じ体積、吐出速度で吐出できるようにすることが望ましい。
【0004】
これを達成する方法として、特開平4−10940号〜特開平4−10942号公報には、電気熱変換素子によって生成された気泡を外気と連通させて液滴を吐出させる方法が開示されている。この方法によれば、吐出される液滴の大きさは、吐出口の大きさ、および電気熱変換素子とオリフィスとの距離(以下、「OH距離」と称す。)によって決まり、常にほぼ一定の大きさの小さな液滴を吐出させることができる。
【0005】
このような方法によって液滴を吐出するインクジェット記録ヘッドにおいて、より小さな液滴を吐出させて、より高精彩な画像を形成できるようにするためには、OH距離を短くすることが好ましい。また、吐出される液滴の大きさを所望の大きさにするために、OH距離を正確に、また再現性良く設定できることが必要である。
【0006】
このようにOH距離を正確に再現性良く所定の距離に設定することができる、インクジェット記録ヘッドの製造方法としては、特許第3143307号公報に開示された方法がある。この製造方法では、吐出圧力発生素子が形成された基板上に溶解可能な樹脂にて液流路の型を形成する。その後、常温にて固体状のエポキシ樹脂を含む被覆樹脂を溶媒に溶解して、これを溶解可能な樹脂層上にソルベントコートして、各液流路間を仕切る流路壁などを構成する被覆樹脂層を形成する。その後、被覆樹脂層に吐出口を開口する。最後に、溶解可能な樹脂層を溶出させて除去する。
【0007】
図9に、このようにして作られたインクジェット記録ヘッドの模式図を示す。
図9(a)は、このインクジェット記録ヘッドの、被覆樹脂層によって形成されたオリフィスプレート606を取り外した状態で示す斜視図、図9(b)は図9(a)のA−A線に沿って切断した拡大断面図である。
【0008】
このインクジェット記録ヘッドは、表側の面に複数の吐出圧力発生素子602が形成された基板601を有している。基板601には、裏面マスク層609をマスクとするエッチングによって、基板601を貫通するスルーホールとして形成された供給口610が設けられている。吐出圧力発生素子602は、供給口610の、基板1の表側の面の開口の長手方向に沿ってその両側に一列ずつ所定のピッチで並んで形成されている。このインクジェット記録ヘッドは、いわゆるサイドシュータ型の記録ヘッドであり、基板1上に形成されたオリフィスプレート606には、各吐出圧力発生素子602の表面に対向する位置に吐出口607が開口されている。
【0009】
また、このようなインクジェット記録ヘッドでは、画像の高精細化、高品位化が求められる一方で、高スループット化も望まれている。このためには、吐出周波数(駆動周波数)を高くできるようにするために、液滴吐出後に流路内にインクを再充填する、すなわちリフィルするのを速くする必要がある。リフィルを速くするには、供給口から吐出口までの間のインクの供給経路の流抵抗を小さくすることが望まれる。
【0010】
このように、インクの供給経路の流抵抗を小さくする構成として、特開平10−095119号公報および特開平10−034928号公報には、供給口近傍の流路高さが吐出圧力発生素子近傍の流路高さより高いことを特徴とするインクジェット記録ヘッドとその製造方法が提案されている。これらの公報に記載された製造方法では、基板の、供給口近傍から吐出圧力発生素子近傍までの間に相当する部分を掘り込むことによって、供給口近傍の流路高さを高くしている。これによって、インクの供給経路の断面積が大きくなり、したがって、その流抵抗が低減される。このように、これらの公報に記載された製造方法は、高スループット化を実現する上で有効な手法である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特開平10−095119号公報および特開平10−034928号公報に記載されたような記録ヘッドの製造方法としては、流路と吐出口からなるノズルを構成するオリフィスプレートを基板上に形成する前に、掘り込みやスルーホールである供給口を基板に形成する方法がある。この場合、オリフィスプレートの形成工程では、少なくとも最下層に形成する膜はドライフィルムにより形成することとしている。ドライフィルムによる成膜では、所望の膜厚のフィルムを予め作成しておかなければならない。したがって、通常、単一の製造ラインで複数種の記録ヘッドが作成されることを考えると、この製造方法では、複数種のフィルムをストックしておかなければならずコストの面で不利である。
【0012】
また、オリフィスプレートとなる樹脂をソルベントコートによって形成する場合、ドライフィルムで成膜されることになる、流路の型材はスルーホールの開口部を全て覆っている必要がある。このため、オリフィスプレートの構成に制限が生じてしまう。例えば、特開平10−146979号公報には、オリフィスプレートに、流路壁を構成し、供給口上まで延びたリブ構造を設けることによって、ヘッドの信頼性を向上させたインクジェット記録ヘッドが開示されているが、上述の製造方法では、このような構成のオリフィスプレートを作成できない。
【0013】
一方、ノズル形成後に掘り込みと、スルーホールである供給口を基板に形成する場合、これらの加工は基板の裏面から行うことになる。この場合、基板に裏面から表側の面まで穴を開けた後、窪みを形成するために、基板の表側の面に、それに平行な方向に加工を行う必要がある。しかも、基板の表側の面の、それに平行な方向のこの加工は、先に形成したオリフィスプレートにダメージを与えることなく行う必要があり、これは極めて困難である。
【0014】
以上のことから、インクジェット記録ヘッドの製造において、掘り込みとスルーホールとしての供給口を基板に形成する場合、掘り込みを形成した後、ノズルを形成し、供給口を開口する方法がより好ましい。この場合、供給口は裏面から加工することになり、形成する穴が基板の表側の面まで到達した際に、形成している穴の側面と、基板の表側の面、すなわち、基板の表側の面から形成した掘り込みの底面とによって角部が形成される。この角部から吐出圧力発生素子までがインクの供給経路の底部となるので、この角部の形状や形成位置は、インクの供給経路の流抵抗に大きな影響を与えることになる。したがって、インクの供給経路の流抵抗を所望の値に調整するには、この角部の形状や形成位置をきちんと制御する必要がある。
【0015】
しかしながら、このようにして形成される角部は、少なくとも基板の垂直方向と水平方向の複数の方向からエッチャントに曝されるため、急速にエッチングが進んでしまう。特に、結晶異方性エッチングを用いて供給口を形成した場合には供給口壁面の(111)面のエッチングレートが極めて遅いために、角部に現れる(211)面などは相対的に速くエッチングされていく。このように角部が急速にエッチングされる場合、その形状を制御することは極めて難しく、不安定にエッチングされて、形状にばらつきが生じてしまう。
【0016】
これは、エッチングによって形成する複数の穴を連結させる手法全てにおいて言えることである。すなわち、図9に示したような従来のインクジェット記録ヘッドにおいては、供給口のエッチングは、基体表面に通常形成されているパッシベイション層(SiNが多用されている)まで到達してストップするため、角部が複数の方向からエッチングされることはなかった。これに対して、基板の表側の面から掘り込みを形成した場合、この掘り込みの底部にはパッシベイション層が形成されていないため、角部が複数の方向からエッチングされてしまう。
【0017】
また、インクのリフィル速度がそれほど速くない場合には、このような角部が部分的に欠損するなど、インクの供給経路の底部の形状にばらつきが生じ、それによって流抵抗に多少のばらつきが生じても、記録動作に支障が生じることはなく、品質問題になることはなかった。これに対して、前述のように、記録速度を速くして高スループット化を達成するためには、リフィル速度を速くする必要があり、流抵抗のばらつきは品質上無視できなくなってくる。
【0018】
このように、インクジェット記録ヘッドの製造方法において、基板に表側の面から掘り込みを形成し、この掘り込みに裏面側からエッチングによって形成する供給口を接続させる場合には、掘り込みの底部と供給口の側面とによって形成される角部の形状を精度良く形成することが1つの課題となっている。
【0019】
また、インクジェット記録ヘッドにおいて、吐出用の液体としては、酸性やアルカリ性のインクなど、基板や吐出圧力発生素子およびその駆動回路の機能層に対して腐食性を持つものを用いることが望まれる場合がある。特に、基板の表側の面に掘り込みを設ける場合、従来、この掘り込みの部分に、このような腐食性のあるインクに対して耐性を持たせる方法は示されていなかった。
【0020】
そこで、本発明の目的は、インクを迅速にリフィルできるように、供給口近傍の流路高さが吐出圧力発生素子近傍の流路高さより高くなっており、かつ、インクの流路へと接続する、供給口の、基板の表側の面における開口の角部が精度良く所定の形状に形成されたインクジェット記録ヘッド、これを作成するために、この角部を安定して均一に加工することができる、インクジェット記録ヘッドの製造方法、およびその製造に用いるインクジェット記録ヘッド用基体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、このようなインクジェット記録ヘッドであって、さらに、インクによる腐食に対して強い耐性を有するインクジェット記録ヘッドを提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明のインクジェット記録ヘッド用基体は、外部から液体が供給される供給口と、液体を吐出する吐出口と、吐出口に連通し、供給口から供給された液体を前記吐出口へと導く液流路と、液流路の一部に設けられた、液体を吐出するための圧力を発生する吐出圧力発生部とを有し、供給口が、吐出圧力発生部を構成する吐出圧力発生素子が形成された基板に貫通口として形成されたインクジェット記録ヘッドの製造に用いるインクジェット記録ヘッド用基体であって、吐出圧力発生素子が複数形成されており、吐出圧力発生素子が形成された面、すなわち表側の面の、形成される供給口が開口する部分と、そこから吐出圧力発生素子の手前までの部分が掘り込まれて窪み部が形成されている基板と、基板の表側の面に、少なくとも窪み部の表面に形成された、供給口を形成するためのウエットエッチングに対して耐性を有する保護層とを有することを特徴とする。
【0022】
このインクジェット記録ヘッド用基体を用いた、インクジェット記録ヘッドの製造では、基板の裏側の面に、供給口を形成するためのウエットエッチング用のマスク層であって、ウエットエッチングによって、基板の裏側のから形成された溝が、基板の表側の面で、窪み部が形成された領域内で開口するように、所定のパターンの開口を有するマスク層を形成し、このマスク層の開口からウエットエッチングを行って、保護層にまで延びる、供給口となる溝を形成し、保護層の、この溝内に露出した部分を除去することによって供給口を形成することができる。この際、基板の裏面から形成する溝の側面と、窪み部の底面との間に角部が形成されるが、この角部はその上面を保護層によって覆われているため、この角部でエッチング速度が速くなることはなく、安定してエッチングを行うことができる。したがって、この角部の形状にばらつきが生じるのを抑え、この角部を再現性良く高精度に所望の形状にすることができる。
【0023】
また、このようにして製造されたインクジェット記録ヘッドでは、最終的に、窪み部によって、各ノズルへのインクの供給経路の底部に形成される掘り込みの上面に保護膜が形成されている。このため、この掘り込みや、供給口との間に形成される角部は、インクによる腐食に対して高い耐性を有するようにすることができる。また、この保護層には、掘り込みの側面に吐出圧力発生素子の駆動回路などに用いられる機能層の断面が露出している場合においても、それをインクによる腐食から保護するという働きをさせることもできる。
【0024】
本発明のインクジェット記録ヘッド用基体において、窪み部は、基板の、吐出圧力発生素子が形成された面と平行な底面を有する構成とすることができる。この場合、このインクジェット記録ヘッド用基体を用いて製造されるインクジェット記録ヘッドでは、掘り込みを吐出圧力発生素子が形成された部分よりも段をなすように低くなるように形成することができる。この構成では、掘り込みによって形成される段差部に、ヘッドの使用過程でヘッド内に浸入した空気などによって形成される不要な泡をトラップさせることができると考えられる。このような泡を吐出圧力発生素子から離れたこの段差部にトラップすることによって、この泡によってインクの吐出に悪影響が生じるのを防止することができる。
【0025】
また、窪み部は、基板の表側の面の、形成される供給口が開口する部分の側から、吐出圧力発生素子が形成された部分へと、吐出圧力発生素子毎に延びている部分を有する構成とすることができる。この場合、このインクジェット記録ヘッド用基体を用いて製造されるインクジェット記録ヘッドでは、各液流路の間を仕切る流路壁を、掘り込みの、吐出圧力発生素子が形成された部分へと、吐出圧力発生素子毎に延びている部分の間の領域にまで延ばすことができる。このようにすることによって、掘り込みを吐出圧力発生素子が設けられた部分の近くまで形成して、インクの供給経路の流抵抗を効果的に低減する一方で、流路壁の長さを十分に長くして、ノズル間でインク吐出時の圧力が伝播してインク吐出が不安定になるのを効果的に防止することができる。
【0026】
保護層は、吐出圧力発生素子および/または吐出圧力発生素子の駆動回路も覆うように形成してもよい。それによって、保護層に、これらがインクによって腐食されるのを防止する働きをさせることができる。
【0027】
また、保護層は、吐出圧力発生素子の駆動回路における機能層の1つまたは複数の層と共用してもよい。それによって、効率的に保護層を形成することができる。
【0028】
保護層の材料は、供給口を形成するためのウエットエッチングに対して耐性を有する種々のものを用いることが考えられるが、窒化シリコン、酸化シリコン、またはTa,Cu,Au,Ptなどの金属あるいはこれらを含む合金、ポリアミド、ポリエーテルアミドなどの有機物を用いることが考えられる。
【0029】
本発明による、インクジェット記録ヘッドの製造方法は、基板に、表側の面の、形成される供給口が開口する部分と、そこから吐出圧力発生素子が形成される部分の手前までの部分を掘り込んで窪み部を形成する工程と、基板の表側の面に、少なくとも窪み部の表面を覆うように、供給口を形成するためのウエットエッチングに対して耐性を有する保護層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0030】
この窪み部は、ケミカルドライエッチング、リアクティブイオンエッチングなどのドライエッチング、結晶異方性エッチングなどのウエットエッチング、レーザ加工などの物理的方法、または、ドリル加工、エンドミル加工などの機械加工によって形成することができる。いずれの場合でも、この窪み部には保護層を形成するので、窪み部によって最終的に形成される掘り込みには、インクによる腐食に対して高い耐性を与えることができる。また、特に、機械加工によって窪み部を形成する場合、保護層に、機械加工によって発生するゴミをその中に閉じ込める働きをさせることができると考えられる。このようにゴミを閉じ込めることによって、ゴミが、記録ヘッドの使用中にインクとともに流され、ノズルつまりなどを生じさせるのを防止することができる。
【0031】
本発明の、インクジェット記録ヘッドの製造方法において、基板の裏側の面から行うエッチングは、硝酸やその他の混酸などによる等方エッチング、あるいはKOH、TMAH水溶液などのアルカリ溶液による結晶異方性エッチング、その他化学的作用によるエッチングであってよい。
【0032】
また、本発明の、インクジェット記録ヘッドの製造方法は、基板の、吐出圧力発生素子が形成される面上に、吐出口と液流路を構成するオリフィスプレートを形成する工程をさらに有してもよい。このオリフィスプレートの形成は、感光性の樹脂をソルベントコートし、フォトリソグラフィー技術によりパターニングすること、および、液流路の形成パターンに相当するパターンで、溶出可能な樹脂から流路型材を形成し、流路型材に、オリフィスプレートとなる樹脂を被覆し、その後、流路型材を溶出させることによって形成することができる。
【0033】
本発明によるインクジェット記録ヘッドは、基板の表側の面での、供給口の開口の縁部において、基板の表面に、吐出圧力発生素子が形成された部分よりも段をなすように低くなった掘り込みが設けられており、少なくともこの掘り込みの表面に、供給口を形成するためのウエットエッチングに対して耐性を有する保護層が形成されていることを特徴とする。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図1〜3を参照して、本発明の第1の実施形態の、インクジェット記録ヘッドの製造方法について説明する。図2,3は、製造工程を時系列に示す模式図であり、図1は、図2(c)までの工程を完了して形成されたインクジェット記録ヘッド用基体の模式図である。図1(a)は、この基体の平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿って切断した断面図であり、図2,3の各図は、図1(b)と同様の切断線に沿って切断した断面図である。
【0036】
本実施形態において製造するインクジェット記録ヘッドは、図1(a)に示すように、インク(液体)を吐出させる圧力を発生する複数の吐出圧力発生素子102が形成された基板101を有している。基板101の、吐出圧力発生素子102が形成された表側の面には、供給口110(図3(d)など参照)が開口する部分と、そこから、吐出圧力発生素子102が形成された部分の手前までの部分とに亘って窪み部103が形成されている。吐出圧力発生素子102は、窪み部103の長手方向に沿ってその両側にそれぞれ一列に並んで所定のピッチで配置されており、両側の列における吐出圧力発生素子102の並びは、半ピッチだけずれている。基板101には、吐出圧力発生素子102を駆動するためのトランジスタなどを含む半導体回路や、記録ヘッドを記録装置本体側と電気的に接続するのための電極パッドが形成されているが、図面を分かりやすくするため、各図においては図示を省略している。
【0037】
窪み部103は、吐出圧力発生素子102が形成された、基板101の表面に実質的に平行な底面を有しており、図3(d)に示すように、最終的に、基板101の裏面からエッチングによって形成される供給口110が窪み部103の底面に接続され、これによって、供給口110の開口部から吐出圧力発生素子102が配置された部分の手前の位置までの間に掘り込みが形成される。この掘り込みの底面と供給口110の側面との間には、角部111が形成されている。また、基板101上には、供給口110側から吐出圧力発生素子102上へと延びる流路と、各吐出圧力発生素子102の表面に対面する位置に開口した吐出口107とからなるノズルを形成するオリフィスプレート106が形成されている。
【0038】
このように、本実施形態のインクジェット記録ヘッドにおけるインクの供給経路には、窪み部103によって、最終的に、基板1の吐出圧力発生素子102が設けられた面よりも段をなすように低くなった底面を有する掘り込みが形成されている。したがって、この構成によれば、微小な液滴を吐出できるようにOH距離を短くしても、インクの供給経路の流抵抗を小さくすることが可能であり、それによって記録速度を高くすることが可能である。基板101の表側の面には、この掘り込みの部分を含む領域に、供給口110を形成するエッチングに対して耐性を有する保護層104が形成されている。
【0039】
以下、本実施形態の製造工程について順を追って説明する。
【0040】
本実施形態では、基板1として表面の結晶方位面が(100)面である単結晶シリコンウエハを用いている。まず、この基板1の表面に、吐出圧力発生素子102としての発熱抵抗体、その駆動回路(図示しない)、および記録装置本体と信号の授受を行うための電極パッド(図示しない)を汎用の半導体工程により形成する(図2(a))。
【0041】
次に、基板101の表側の面にレジストを所定のパターンに形成する。そして、このレジストをマスクとするリアクティブイオンエッチング法によって、供給口110(図3(c)など参照)を形成する部分と、この位置から吐出圧力発生素子102の手前までの部分を掘り込み、窪み103を形成する。その後、レジストを除去する(図2(b))。
【0042】
次に、基板1の表側の面にプラズマCVD法により保護層104としてSiNを成膜し、所定の領域を覆うようにパターニングする(図2(c))。保護膜104は、供給口が形成されたときに角部111(図3(d)参照)となる部分を覆うように、窪み部103の表面全体を覆うようにパターニングしている。以上の工程によって、本実施形態の特徴的な構成を備えるインクジェット記録ヘッド用基体が完成する(図1)。
【0043】
次に、基板101の表側の面上に、後の工程で溶出させることができるUVレジストであるポリメチルイソプロペニルケトンをスピンコート法によりソルベントコートする。このレジストをUV光によって露光し、現像して流路型材105を形成する(図3(a))。
【0044】
次に、さらにこの上に、ネガレジストであるカチオン重合型エポキシ樹脂を塗布して、インクの流路の天井と各流路間を仕切る流路壁を構成するオリフィスプレート106を形成する。このネガレジストに対して、所定のパターンのフォトマスクを用いて露光、現像を行い、吐出口107と電極パットの部分のネガレジストを除去する(図3(b))。
【0045】
次に、基体の表側の面のノズル部を保護するように環化ゴムを含むノズル保護用樹脂108をコーティングする。そして、基板101の裏面にプラズマCVD法によってSiN膜を成膜する。このSiN膜の成膜は、前もって、例えば図2(c)に示す、基板1の表側の面への保護膜104の形成と共に行ってもよい。
【0046】
次に、基板1の裏面のSiN膜上にレジストを形成し、基板1の表側の面の窪み部103の中央部の反対側に相当する所定の領域に開口を有する所定のパターンにパターニングする。そして、このレジストをマスクとして、ドライエッチングにより基体1の裏面のSiN膜を除去し、その後、レジストを除去する。これによって、供給口110の形成開始位置に開口を有するようにパターニングされた裏面マスク層109が形成される。
【0047】
次に、基板1の裏面を硝酸、フッ化水素酸、酢酸の混酸に浸漬して裏面マスク層109の開口部から結晶異方性エッチングを行う。そして、結晶異方性エッチングを基板101の表側の面の窪み部103まで進行させて供給口110を形成する(図3(c))。
【0048】
次に、ケミカルドライエッチングにより、保護層104の、供給口110によって露出された部分を除去する。次に、キシレンにより基体の表側の面に形成されたノズル保護用樹脂108を除去する。その後、基体を乳酸メチルに浸漬し、超音波を付与することによって流路型材105を構成するUVレジストを溶出、除去する(図3(d))。
【0049】
図には示していないが、このような基体は、基板1を構成するシリコンウエハ上に複数同時に形成することができ、最後に、ダイシングによりウエハから切り分けて、インクジェット記録ヘッドが完成する。
【0050】
以上説明した本実施形態の、インクジェット記録ヘッドの製造方法では、基板1の裏面から異方性エッチングを行う際、基板1の表側の面の窪み部103の底面には、保護層104が形成されている。したがって、窪み部103の底面と供給口110の側面によって形成される角部111は、上方からエッチャントに曝されることはない。このため、この角部111において急速にエッチングが進行するようなことなく安定してエッチングを行うことができ、角部111を再現性良く高精度に所望の形状に加工することができる。
【0051】
このように、本実施形態にしたがって製造されるインクジェット記録ヘッドは、インクの供給経路の底面に掘り込みが設けられているため、OH距離を短くしたとしても、インクの供給経路の流抵抗を低減して、迅速なリフィルを行うことが可能である。さらに、掘り込みの底面と供給口110の側面とによって形成される角部111の形状を精度良く所望の形状にすることができるため、各ノズルへのインクの供給経路の流抵抗を均一に所定の流抵抗にでき、したがって、安定してリフィルが行われるようにすることができる。
【0052】
また、この掘り込みの表面には、保護層104が形成されているため、掘り込みの部分がインクによって腐食されるのを防止することができる。さらに、この保護層104には、掘り込みの側面に吐出圧力発生素子102の駆動回路などに用いられる機能層の断面が露出している場合においても、それをインクによる腐食から保護するという働きをさせることもできる。
【0053】
また、本実施形態によって製造されるインクジェット記録ヘッドにおいては、図3(d)などに示すように、各ノズルへのインクの供給経路に、掘り込みによって、段をなすようになった部分が形成される。インクジェット記録ヘッド内には、長期に亘る使用によって、空気が浸入するなどして、不要な泡が生じる場合があるが、本実施形態のインクジェット記録ヘッドでは、この泡を、掘り込みによって形成される段差部にトラップさせることができると考えられる。このような泡は、吐出圧力発生素子102付近に存在すると、インクを吐出させる際に、吐出圧力発生素子102によって発生する圧力を吸収してしまうなど、インクの吐出に悪影響を与える場合があるが、この泡を、吐出圧力発生素子102から離れた段差部にトラップすることによって、このような悪影響を低減することができる。
【0054】
なお、本実施形態において、保護層104としては、窒化シリコン膜を用いる例を示したが、供給口110を形成するエッチングに対して耐性を有する他の構成としてもよい。すなわち、保護層104は、例えば、酸化シリコン膜から構成してもよく、また、Ta,Cu,Au,Ptなどの金属あるいはこれらの金属を含む合金、または、ポリアミド、ポリエーテルアミドなどの有機物から構成してもよい。
【0055】
また、保護層104は、窪み部103の他、基板101上に形成した吐出圧力発生素子102やその駆動回路上をも覆う領域に形成してもよく、特に、基板101の表面全面に形成してもよい。それによって、保護層104に、吐出圧力発生素子102やその駆動回路をインクによる腐食から保護する働きをさせることができる。
【0056】
(第2の実施形態)
次に、図4を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。図4は、第1の実施形態での、図2(c)に示す段階までの工程に相当する工程を完了して形成された、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は、図4(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【0057】
本実施形態では、窪み部203を結晶異方性エッチングにより形成している。
これによって、基板201の表側の面の窪み部203は、斜めに傾斜した側面を有する形状に加工されている。本実施形態において、他の工程については、第1の実施形態と同様に実施することができる。
【0058】
したがって、本実施形態によれば、基板201の表側の面の、吐出圧力発生素子201が形成された面よりも段をなすように低くなった底面を有する掘り込みの側面が、斜めに傾斜している以外は、第1の実施形態と同様のインクジェット記録ヘッドを製造することができる。この掘り込みの表面には、保護層204が形成されており、この保護層204のために、第1の実施形態と同様に、掘り込みの底面と供給口の側面とによって形成される角部の形状を再現性良く高精度に調整することができ、また、掘り込みの部分にインクに対する高い耐性を与えることができる。
【0059】
なお、窪み部203の形成は、第1の実施形態におけるリアクティブイオンエッチング、本実施形態における結晶異方性エッチングの他、他のウエットエッチング、ケミカルドライエッチング、レーザ加工などの物理的方法、ドリル加工、エンドミル加工などの機械的加工方法を用いて実施してもよい。
【0060】
また、特に、機械加工によって窪み部を形成する場合、保護層に、機械加工によって発生するゴミをその中に閉じ込める働きをさせることができると考えられる。このようにゴミを閉じ込めることによって、ゴミが、記録ヘッドの使用中にインクとともに流され、ノズルつまりなどを生じさせるのを防止することができる。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、図5,6を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。図5は、第1の実施形態での、図2(c)に示す段階までの工程に相当する工程を完了して形成された、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は、図5(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。図6は、完成したインクジェット記録ヘッドの模式図であり、図6(a)は、水平方向に切断した断面図、図6(b)は、図6(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【0062】
本実施形態では、図5(a)に示すように、窪み部303を、中央の部分から、各吐出圧力発生素子302に向かって個別に延びている部分を有する平面形状の領域に形成している。したがって、基板301の、吐出圧力発生素子302が形成される表面と同じ高さの面は、所定のピッチで並んだ吐出圧力発生素子302の間の位置で供給口310側に向かって延びるように突出した部分を有する平面パターンになっている。このような窪み部303は、例えば、レジストをこのような平面パターンにパターニングしてリアクティブイオンエッチングを行うことによって形成できる。
【0063】
そして、図6(a)に示すように、オリフィスプレート306によって構成される流路壁311を、基板301の、吐出圧力発生素子302が形成される表面と同じ高さの面の、所定のピッチで並んだ吐出圧力発生素子302の間の位置で供給口310側に向かって延びるように突出した部分にまで延びるように形成している。
【0064】
本実施形態において、各工程は、第1の実施形態と同様に実施することができる。特に、本実施形態では、供給口310は、TMAH水溶液による結晶異方性エッチングによって形成している。
【0065】
本実施形態によれば、基板301の表側の面の掘り込みを吐出圧力発生素子302のすぐ近くにまで延ばし、それによってインクの供給経路の流抵抗を効果的に低減する一方で、同時に、流路壁311を十分に長くし、インク吐出時の圧力がノズル間で伝播することによってインク吐出が不安定になる、いわゆるクロストークが発生するのを効果的に効果的に抑えることができる。
【0066】
(第4の実施形態)
次に、図7を参照して本発明の第4の実施形態について説明する。図7は、第1の実施形態での、図2(c)に示す段階までの工程に相当する工程を完了して形成された、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は、図7(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【0067】
本実施形態では、図7(b)に示すように、保護層404を、窪み部403の表面を覆う部分のみに残している。他の工程については、第1の実施形態と同様に実施することができる。
【0068】
本実施形態の構成でも、保護層404を形成することによって、掘り込みの底面と供給口の側面とによって形成される角部の形状を再現性良く高精度に調整することができ、また、掘り込みの部分にインクに対する高い耐性を与えることができるという効果が得られる。
【0069】
(第5の実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。図8は、第1の実施形態での、図2(c)に示す段階までの工程に相当する、本実施形態における製造工程を時系列に示す断面図である。
【0070】
以下、本実施形態におけるインクジェット記録ヘッド用基体の製造工程について順を追って説明する。
【0071】
本実施形態においても、基板501としては、表面の結晶方位面が(100)面である単結晶シリコンウエハを準備する(図8(a))。そして、第1の実施形態と同様に、この基板501の表側の面に、供給口を形成する部分と、この部分から吐出圧力発生素子502を形成する位置の手前までの部分を掘り込み、窪み503を形成する(図8(b))。
【0072】
次に、基板501の表側の面に、吐出圧力発生素子502の駆動回路を形成する。この過程で、駆動回路の機能層の1つである絶縁層として、プラズマCVD法によってSiO膜を形成しパターニングする。この際、SiO膜を、窪み部503を含む領域に亘って形成し、このSiO膜を、第1〜4の実施形態における保護層と同様の働きをする保護層504として用いる(図8(c))。すなわち、この保護層504によって、後の工程で供給口を形成するために基板1の裏面側からエッチングする際、基板1の表側の面側にエッチャントが廻り込まないようにして、供給口の側面と窪み部503の底面とによって形成される角部の形成精度を高めることができ、また、窪み部503によって形成される、インクの供給経路の底面の掘り込みに、インクに対して高い耐性を持たせることができる。
【0073】
このようにして駆動回路を形成した後、吐出圧力発生素子502として発熱抵抗体を形成する(図8(d))。その後の工程については、第1の実施形態と同様に実施することができる。
【0074】
本実施形態によれば、保護層504を、基板1上に形成する駆動回路の機能層の1つまたは複数の層を形成する際に一緒に形成することができ、製造の効率化を図ることができる。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、吐出圧力発生素子が形成された基板に、供給口近傍の流路高さが吐出圧力発生素子近傍の流路高さより高くなるように掘り込みが設けられており、しかも、掘り込みの底面と供給口の側面とによって形成される角部が再現性良く高精度に所定の形状に形成されたインクジェット記録ヘッドを製造することができる。したがって、本発明によって製造したインクジェット記録ヘッドは、インクの供給経路の流抵抗を小さくしてリフィルを速くし、しかも、インクの供給経路の形状を精度良く所定の形状にし、また、各ノズルについて均一にして、安定したリフィルが行われるようにすることができる。
【0076】
また、本発明によって製造されるインクジェット記録ヘッドは、掘り込みの表面に保護層が形成されているため、インクによる腐食に対して高い耐性を有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の、インクジェット記録ヘッドの製造工程を時系列に示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の、インクジェット記録ヘッドの、図2より後の製造工程を時系列に示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態のインクジェット記録ヘッドの模式図であり、図6(a)は水平方向に切断した断面図、図6(b)は図6(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態の、インクジェット記録ヘッドの製造工程を時系列に示す模式図である。
【図9】従来例のインクジェット記録ヘッドの模式図であり、図9(a)は、オリフィスプレートを取り除いた状態で示す斜視図、図9(b)は、図9(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【符号の説明】
101,201,301,401,501,601 基板
102,202,302,402,502,602 吐出圧力発生素子
103,203,303,403,503 窪み部
104,204,304,404,504 保護層
105 流路型材
106,306,606 オリフィスプレート
107,307,607 吐出口
108 ノズル保護用樹脂
109,309,609 裏面マスク層
110,310,610 供給口
111 角部
311 流路壁
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクなどの液体を液滴として吐出し、それを紙などの被記録材に付着させて記録を行うインクジェット記録ヘッド、その製造方法、およびその製造に用いるインクジェット記録ヘッド用基体に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式(液体噴射記録方式)に適用されるインクジェット記録ヘッドは、一般に、微細な吐出口(オリフィス)、それに通じる液流路、および該液流路の一部に設けられた、吐出圧力発生素子を備える吐出圧力発生部を複数備えている。吐出圧力発生素子としては、例えば、電気熱変換素子が用いられ、このインクジェット記録ヘッドにおいては、電気熱変換素子に駆動信号が印加され、それによって、電気熱変換素子はインクの核沸騰を越える急激な温度上昇を生じてインク内に気泡を生じさせ、この際に生じる圧力によって、インクの液滴が吐出される。各電気熱変換素子には、記録情報に応じて駆動信号が印加され、それによってインクは各吐出口から選択に吐出される。
【0003】
このようなインクジェット記録ヘッドにおいては、高精細で高品位の画像を得られるようにすることが望まれている。このためには、吐出口から小さな液滴を吐出できるようにし、また、液滴をそれぞれの吐出口から常に同じ体積、吐出速度で吐出できるようにすることが望ましい。
【0004】
これを達成する方法として、特開平4−10940号〜特開平4−10942号公報には、電気熱変換素子によって生成された気泡を外気と連通させて液滴を吐出させる方法が開示されている。この方法によれば、吐出される液滴の大きさは、吐出口の大きさ、および電気熱変換素子とオリフィスとの距離(以下、「OH距離」と称す。)によって決まり、常にほぼ一定の大きさの小さな液滴を吐出させることができる。
【0005】
このような方法によって液滴を吐出するインクジェット記録ヘッドにおいて、より小さな液滴を吐出させて、より高精彩な画像を形成できるようにするためには、OH距離を短くすることが好ましい。また、吐出される液滴の大きさを所望の大きさにするために、OH距離を正確に、また再現性良く設定できることが必要である。
【0006】
このようにOH距離を正確に再現性良く所定の距離に設定することができる、インクジェット記録ヘッドの製造方法としては、特許第3143307号公報に開示された方法がある。この製造方法では、吐出圧力発生素子が形成された基板上に溶解可能な樹脂にて液流路の型を形成する。その後、常温にて固体状のエポキシ樹脂を含む被覆樹脂を溶媒に溶解して、これを溶解可能な樹脂層上にソルベントコートして、各液流路間を仕切る流路壁などを構成する被覆樹脂層を形成する。その後、被覆樹脂層に吐出口を開口する。最後に、溶解可能な樹脂層を溶出させて除去する。
【0007】
図9に、このようにして作られたインクジェット記録ヘッドの模式図を示す。
図9(a)は、このインクジェット記録ヘッドの、被覆樹脂層によって形成されたオリフィスプレート606を取り外した状態で示す斜視図、図9(b)は図9(a)のA−A線に沿って切断した拡大断面図である。
【0008】
このインクジェット記録ヘッドは、表側の面に複数の吐出圧力発生素子602が形成された基板601を有している。基板601には、裏面マスク層609をマスクとするエッチングによって、基板601を貫通するスルーホールとして形成された供給口610が設けられている。吐出圧力発生素子602は、供給口610の、基板1の表側の面の開口の長手方向に沿ってその両側に一列ずつ所定のピッチで並んで形成されている。このインクジェット記録ヘッドは、いわゆるサイドシュータ型の記録ヘッドであり、基板1上に形成されたオリフィスプレート606には、各吐出圧力発生素子602の表面に対向する位置に吐出口607が開口されている。
【0009】
また、このようなインクジェット記録ヘッドでは、画像の高精細化、高品位化が求められる一方で、高スループット化も望まれている。このためには、吐出周波数(駆動周波数)を高くできるようにするために、液滴吐出後に流路内にインクを再充填する、すなわちリフィルするのを速くする必要がある。リフィルを速くするには、供給口から吐出口までの間のインクの供給経路の流抵抗を小さくすることが望まれる。
【0010】
このように、インクの供給経路の流抵抗を小さくする構成として、特開平10−095119号公報および特開平10−034928号公報には、供給口近傍の流路高さが吐出圧力発生素子近傍の流路高さより高いことを特徴とするインクジェット記録ヘッドとその製造方法が提案されている。これらの公報に記載された製造方法では、基板の、供給口近傍から吐出圧力発生素子近傍までの間に相当する部分を掘り込むことによって、供給口近傍の流路高さを高くしている。これによって、インクの供給経路の断面積が大きくなり、したがって、その流抵抗が低減される。このように、これらの公報に記載された製造方法は、高スループット化を実現する上で有効な手法である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特開平10−095119号公報および特開平10−034928号公報に記載されたような記録ヘッドの製造方法としては、流路と吐出口からなるノズルを構成するオリフィスプレートを基板上に形成する前に、掘り込みやスルーホールである供給口を基板に形成する方法がある。この場合、オリフィスプレートの形成工程では、少なくとも最下層に形成する膜はドライフィルムにより形成することとしている。ドライフィルムによる成膜では、所望の膜厚のフィルムを予め作成しておかなければならない。したがって、通常、単一の製造ラインで複数種の記録ヘッドが作成されることを考えると、この製造方法では、複数種のフィルムをストックしておかなければならずコストの面で不利である。
【0012】
また、オリフィスプレートとなる樹脂をソルベントコートによって形成する場合、ドライフィルムで成膜されることになる、流路の型材はスルーホールの開口部を全て覆っている必要がある。このため、オリフィスプレートの構成に制限が生じてしまう。例えば、特開平10−146979号公報には、オリフィスプレートに、流路壁を構成し、供給口上まで延びたリブ構造を設けることによって、ヘッドの信頼性を向上させたインクジェット記録ヘッドが開示されているが、上述の製造方法では、このような構成のオリフィスプレートを作成できない。
【0013】
一方、ノズル形成後に掘り込みと、スルーホールである供給口を基板に形成する場合、これらの加工は基板の裏面から行うことになる。この場合、基板に裏面から表側の面まで穴を開けた後、窪みを形成するために、基板の表側の面に、それに平行な方向に加工を行う必要がある。しかも、基板の表側の面の、それに平行な方向のこの加工は、先に形成したオリフィスプレートにダメージを与えることなく行う必要があり、これは極めて困難である。
【0014】
以上のことから、インクジェット記録ヘッドの製造において、掘り込みとスルーホールとしての供給口を基板に形成する場合、掘り込みを形成した後、ノズルを形成し、供給口を開口する方法がより好ましい。この場合、供給口は裏面から加工することになり、形成する穴が基板の表側の面まで到達した際に、形成している穴の側面と、基板の表側の面、すなわち、基板の表側の面から形成した掘り込みの底面とによって角部が形成される。この角部から吐出圧力発生素子までがインクの供給経路の底部となるので、この角部の形状や形成位置は、インクの供給経路の流抵抗に大きな影響を与えることになる。したがって、インクの供給経路の流抵抗を所望の値に調整するには、この角部の形状や形成位置をきちんと制御する必要がある。
【0015】
しかしながら、このようにして形成される角部は、少なくとも基板の垂直方向と水平方向の複数の方向からエッチャントに曝されるため、急速にエッチングが進んでしまう。特に、結晶異方性エッチングを用いて供給口を形成した場合には供給口壁面の(111)面のエッチングレートが極めて遅いために、角部に現れる(211)面などは相対的に速くエッチングされていく。このように角部が急速にエッチングされる場合、その形状を制御することは極めて難しく、不安定にエッチングされて、形状にばらつきが生じてしまう。
【0016】
これは、エッチングによって形成する複数の穴を連結させる手法全てにおいて言えることである。すなわち、図9に示したような従来のインクジェット記録ヘッドにおいては、供給口のエッチングは、基体表面に通常形成されているパッシベイション層(SiNが多用されている)まで到達してストップするため、角部が複数の方向からエッチングされることはなかった。これに対して、基板の表側の面から掘り込みを形成した場合、この掘り込みの底部にはパッシベイション層が形成されていないため、角部が複数の方向からエッチングされてしまう。
【0017】
また、インクのリフィル速度がそれほど速くない場合には、このような角部が部分的に欠損するなど、インクの供給経路の底部の形状にばらつきが生じ、それによって流抵抗に多少のばらつきが生じても、記録動作に支障が生じることはなく、品質問題になることはなかった。これに対して、前述のように、記録速度を速くして高スループット化を達成するためには、リフィル速度を速くする必要があり、流抵抗のばらつきは品質上無視できなくなってくる。
【0018】
このように、インクジェット記録ヘッドの製造方法において、基板に表側の面から掘り込みを形成し、この掘り込みに裏面側からエッチングによって形成する供給口を接続させる場合には、掘り込みの底部と供給口の側面とによって形成される角部の形状を精度良く形成することが1つの課題となっている。
【0019】
また、インクジェット記録ヘッドにおいて、吐出用の液体としては、酸性やアルカリ性のインクなど、基板や吐出圧力発生素子およびその駆動回路の機能層に対して腐食性を持つものを用いることが望まれる場合がある。特に、基板の表側の面に掘り込みを設ける場合、従来、この掘り込みの部分に、このような腐食性のあるインクに対して耐性を持たせる方法は示されていなかった。
【0020】
そこで、本発明の目的は、インクを迅速にリフィルできるように、供給口近傍の流路高さが吐出圧力発生素子近傍の流路高さより高くなっており、かつ、インクの流路へと接続する、供給口の、基板の表側の面における開口の角部が精度良く所定の形状に形成されたインクジェット記録ヘッド、これを作成するために、この角部を安定して均一に加工することができる、インクジェット記録ヘッドの製造方法、およびその製造に用いるインクジェット記録ヘッド用基体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、このようなインクジェット記録ヘッドであって、さらに、インクによる腐食に対して強い耐性を有するインクジェット記録ヘッドを提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明のインクジェット記録ヘッド用基体は、外部から液体が供給される供給口と、液体を吐出する吐出口と、吐出口に連通し、供給口から供給された液体を前記吐出口へと導く液流路と、液流路の一部に設けられた、液体を吐出するための圧力を発生する吐出圧力発生部とを有し、供給口が、吐出圧力発生部を構成する吐出圧力発生素子が形成された基板に貫通口として形成されたインクジェット記録ヘッドの製造に用いるインクジェット記録ヘッド用基体であって、吐出圧力発生素子が複数形成されており、吐出圧力発生素子が形成された面、すなわち表側の面の、形成される供給口が開口する部分と、そこから吐出圧力発生素子の手前までの部分が掘り込まれて窪み部が形成されている基板と、基板の表側の面に、少なくとも窪み部の表面に形成された、供給口を形成するためのウエットエッチングに対して耐性を有する保護層とを有することを特徴とする。
【0022】
このインクジェット記録ヘッド用基体を用いた、インクジェット記録ヘッドの製造では、基板の裏側の面に、供給口を形成するためのウエットエッチング用のマスク層であって、ウエットエッチングによって、基板の裏側のから形成された溝が、基板の表側の面で、窪み部が形成された領域内で開口するように、所定のパターンの開口を有するマスク層を形成し、このマスク層の開口からウエットエッチングを行って、保護層にまで延びる、供給口となる溝を形成し、保護層の、この溝内に露出した部分を除去することによって供給口を形成することができる。この際、基板の裏面から形成する溝の側面と、窪み部の底面との間に角部が形成されるが、この角部はその上面を保護層によって覆われているため、この角部でエッチング速度が速くなることはなく、安定してエッチングを行うことができる。したがって、この角部の形状にばらつきが生じるのを抑え、この角部を再現性良く高精度に所望の形状にすることができる。
【0023】
また、このようにして製造されたインクジェット記録ヘッドでは、最終的に、窪み部によって、各ノズルへのインクの供給経路の底部に形成される掘り込みの上面に保護膜が形成されている。このため、この掘り込みや、供給口との間に形成される角部は、インクによる腐食に対して高い耐性を有するようにすることができる。また、この保護層には、掘り込みの側面に吐出圧力発生素子の駆動回路などに用いられる機能層の断面が露出している場合においても、それをインクによる腐食から保護するという働きをさせることもできる。
【0024】
本発明のインクジェット記録ヘッド用基体において、窪み部は、基板の、吐出圧力発生素子が形成された面と平行な底面を有する構成とすることができる。この場合、このインクジェット記録ヘッド用基体を用いて製造されるインクジェット記録ヘッドでは、掘り込みを吐出圧力発生素子が形成された部分よりも段をなすように低くなるように形成することができる。この構成では、掘り込みによって形成される段差部に、ヘッドの使用過程でヘッド内に浸入した空気などによって形成される不要な泡をトラップさせることができると考えられる。このような泡を吐出圧力発生素子から離れたこの段差部にトラップすることによって、この泡によってインクの吐出に悪影響が生じるのを防止することができる。
【0025】
また、窪み部は、基板の表側の面の、形成される供給口が開口する部分の側から、吐出圧力発生素子が形成された部分へと、吐出圧力発生素子毎に延びている部分を有する構成とすることができる。この場合、このインクジェット記録ヘッド用基体を用いて製造されるインクジェット記録ヘッドでは、各液流路の間を仕切る流路壁を、掘り込みの、吐出圧力発生素子が形成された部分へと、吐出圧力発生素子毎に延びている部分の間の領域にまで延ばすことができる。このようにすることによって、掘り込みを吐出圧力発生素子が設けられた部分の近くまで形成して、インクの供給経路の流抵抗を効果的に低減する一方で、流路壁の長さを十分に長くして、ノズル間でインク吐出時の圧力が伝播してインク吐出が不安定になるのを効果的に防止することができる。
【0026】
保護層は、吐出圧力発生素子および/または吐出圧力発生素子の駆動回路も覆うように形成してもよい。それによって、保護層に、これらがインクによって腐食されるのを防止する働きをさせることができる。
【0027】
また、保護層は、吐出圧力発生素子の駆動回路における機能層の1つまたは複数の層と共用してもよい。それによって、効率的に保護層を形成することができる。
【0028】
保護層の材料は、供給口を形成するためのウエットエッチングに対して耐性を有する種々のものを用いることが考えられるが、窒化シリコン、酸化シリコン、またはTa,Cu,Au,Ptなどの金属あるいはこれらを含む合金、ポリアミド、ポリエーテルアミドなどの有機物を用いることが考えられる。
【0029】
本発明による、インクジェット記録ヘッドの製造方法は、基板に、表側の面の、形成される供給口が開口する部分と、そこから吐出圧力発生素子が形成される部分の手前までの部分を掘り込んで窪み部を形成する工程と、基板の表側の面に、少なくとも窪み部の表面を覆うように、供給口を形成するためのウエットエッチングに対して耐性を有する保護層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0030】
この窪み部は、ケミカルドライエッチング、リアクティブイオンエッチングなどのドライエッチング、結晶異方性エッチングなどのウエットエッチング、レーザ加工などの物理的方法、または、ドリル加工、エンドミル加工などの機械加工によって形成することができる。いずれの場合でも、この窪み部には保護層を形成するので、窪み部によって最終的に形成される掘り込みには、インクによる腐食に対して高い耐性を与えることができる。また、特に、機械加工によって窪み部を形成する場合、保護層に、機械加工によって発生するゴミをその中に閉じ込める働きをさせることができると考えられる。このようにゴミを閉じ込めることによって、ゴミが、記録ヘッドの使用中にインクとともに流され、ノズルつまりなどを生じさせるのを防止することができる。
【0031】
本発明の、インクジェット記録ヘッドの製造方法において、基板の裏側の面から行うエッチングは、硝酸やその他の混酸などによる等方エッチング、あるいはKOH、TMAH水溶液などのアルカリ溶液による結晶異方性エッチング、その他化学的作用によるエッチングであってよい。
【0032】
また、本発明の、インクジェット記録ヘッドの製造方法は、基板の、吐出圧力発生素子が形成される面上に、吐出口と液流路を構成するオリフィスプレートを形成する工程をさらに有してもよい。このオリフィスプレートの形成は、感光性の樹脂をソルベントコートし、フォトリソグラフィー技術によりパターニングすること、および、液流路の形成パターンに相当するパターンで、溶出可能な樹脂から流路型材を形成し、流路型材に、オリフィスプレートとなる樹脂を被覆し、その後、流路型材を溶出させることによって形成することができる。
【0033】
本発明によるインクジェット記録ヘッドは、基板の表側の面での、供給口の開口の縁部において、基板の表面に、吐出圧力発生素子が形成された部分よりも段をなすように低くなった掘り込みが設けられており、少なくともこの掘り込みの表面に、供給口を形成するためのウエットエッチングに対して耐性を有する保護層が形成されていることを特徴とする。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図1〜3を参照して、本発明の第1の実施形態の、インクジェット記録ヘッドの製造方法について説明する。図2,3は、製造工程を時系列に示す模式図であり、図1は、図2(c)までの工程を完了して形成されたインクジェット記録ヘッド用基体の模式図である。図1(a)は、この基体の平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿って切断した断面図であり、図2,3の各図は、図1(b)と同様の切断線に沿って切断した断面図である。
【0036】
本実施形態において製造するインクジェット記録ヘッドは、図1(a)に示すように、インク(液体)を吐出させる圧力を発生する複数の吐出圧力発生素子102が形成された基板101を有している。基板101の、吐出圧力発生素子102が形成された表側の面には、供給口110(図3(d)など参照)が開口する部分と、そこから、吐出圧力発生素子102が形成された部分の手前までの部分とに亘って窪み部103が形成されている。吐出圧力発生素子102は、窪み部103の長手方向に沿ってその両側にそれぞれ一列に並んで所定のピッチで配置されており、両側の列における吐出圧力発生素子102の並びは、半ピッチだけずれている。基板101には、吐出圧力発生素子102を駆動するためのトランジスタなどを含む半導体回路や、記録ヘッドを記録装置本体側と電気的に接続するのための電極パッドが形成されているが、図面を分かりやすくするため、各図においては図示を省略している。
【0037】
窪み部103は、吐出圧力発生素子102が形成された、基板101の表面に実質的に平行な底面を有しており、図3(d)に示すように、最終的に、基板101の裏面からエッチングによって形成される供給口110が窪み部103の底面に接続され、これによって、供給口110の開口部から吐出圧力発生素子102が配置された部分の手前の位置までの間に掘り込みが形成される。この掘り込みの底面と供給口110の側面との間には、角部111が形成されている。また、基板101上には、供給口110側から吐出圧力発生素子102上へと延びる流路と、各吐出圧力発生素子102の表面に対面する位置に開口した吐出口107とからなるノズルを形成するオリフィスプレート106が形成されている。
【0038】
このように、本実施形態のインクジェット記録ヘッドにおけるインクの供給経路には、窪み部103によって、最終的に、基板1の吐出圧力発生素子102が設けられた面よりも段をなすように低くなった底面を有する掘り込みが形成されている。したがって、この構成によれば、微小な液滴を吐出できるようにOH距離を短くしても、インクの供給経路の流抵抗を小さくすることが可能であり、それによって記録速度を高くすることが可能である。基板101の表側の面には、この掘り込みの部分を含む領域に、供給口110を形成するエッチングに対して耐性を有する保護層104が形成されている。
【0039】
以下、本実施形態の製造工程について順を追って説明する。
【0040】
本実施形態では、基板1として表面の結晶方位面が(100)面である単結晶シリコンウエハを用いている。まず、この基板1の表面に、吐出圧力発生素子102としての発熱抵抗体、その駆動回路(図示しない)、および記録装置本体と信号の授受を行うための電極パッド(図示しない)を汎用の半導体工程により形成する(図2(a))。
【0041】
次に、基板101の表側の面にレジストを所定のパターンに形成する。そして、このレジストをマスクとするリアクティブイオンエッチング法によって、供給口110(図3(c)など参照)を形成する部分と、この位置から吐出圧力発生素子102の手前までの部分を掘り込み、窪み103を形成する。その後、レジストを除去する(図2(b))。
【0042】
次に、基板1の表側の面にプラズマCVD法により保護層104としてSiNを成膜し、所定の領域を覆うようにパターニングする(図2(c))。保護膜104は、供給口が形成されたときに角部111(図3(d)参照)となる部分を覆うように、窪み部103の表面全体を覆うようにパターニングしている。以上の工程によって、本実施形態の特徴的な構成を備えるインクジェット記録ヘッド用基体が完成する(図1)。
【0043】
次に、基板101の表側の面上に、後の工程で溶出させることができるUVレジストであるポリメチルイソプロペニルケトンをスピンコート法によりソルベントコートする。このレジストをUV光によって露光し、現像して流路型材105を形成する(図3(a))。
【0044】
次に、さらにこの上に、ネガレジストであるカチオン重合型エポキシ樹脂を塗布して、インクの流路の天井と各流路間を仕切る流路壁を構成するオリフィスプレート106を形成する。このネガレジストに対して、所定のパターンのフォトマスクを用いて露光、現像を行い、吐出口107と電極パットの部分のネガレジストを除去する(図3(b))。
【0045】
次に、基体の表側の面のノズル部を保護するように環化ゴムを含むノズル保護用樹脂108をコーティングする。そして、基板101の裏面にプラズマCVD法によってSiN膜を成膜する。このSiN膜の成膜は、前もって、例えば図2(c)に示す、基板1の表側の面への保護膜104の形成と共に行ってもよい。
【0046】
次に、基板1の裏面のSiN膜上にレジストを形成し、基板1の表側の面の窪み部103の中央部の反対側に相当する所定の領域に開口を有する所定のパターンにパターニングする。そして、このレジストをマスクとして、ドライエッチングにより基体1の裏面のSiN膜を除去し、その後、レジストを除去する。これによって、供給口110の形成開始位置に開口を有するようにパターニングされた裏面マスク層109が形成される。
【0047】
次に、基板1の裏面を硝酸、フッ化水素酸、酢酸の混酸に浸漬して裏面マスク層109の開口部から結晶異方性エッチングを行う。そして、結晶異方性エッチングを基板101の表側の面の窪み部103まで進行させて供給口110を形成する(図3(c))。
【0048】
次に、ケミカルドライエッチングにより、保護層104の、供給口110によって露出された部分を除去する。次に、キシレンにより基体の表側の面に形成されたノズル保護用樹脂108を除去する。その後、基体を乳酸メチルに浸漬し、超音波を付与することによって流路型材105を構成するUVレジストを溶出、除去する(図3(d))。
【0049】
図には示していないが、このような基体は、基板1を構成するシリコンウエハ上に複数同時に形成することができ、最後に、ダイシングによりウエハから切り分けて、インクジェット記録ヘッドが完成する。
【0050】
以上説明した本実施形態の、インクジェット記録ヘッドの製造方法では、基板1の裏面から異方性エッチングを行う際、基板1の表側の面の窪み部103の底面には、保護層104が形成されている。したがって、窪み部103の底面と供給口110の側面によって形成される角部111は、上方からエッチャントに曝されることはない。このため、この角部111において急速にエッチングが進行するようなことなく安定してエッチングを行うことができ、角部111を再現性良く高精度に所望の形状に加工することができる。
【0051】
このように、本実施形態にしたがって製造されるインクジェット記録ヘッドは、インクの供給経路の底面に掘り込みが設けられているため、OH距離を短くしたとしても、インクの供給経路の流抵抗を低減して、迅速なリフィルを行うことが可能である。さらに、掘り込みの底面と供給口110の側面とによって形成される角部111の形状を精度良く所望の形状にすることができるため、各ノズルへのインクの供給経路の流抵抗を均一に所定の流抵抗にでき、したがって、安定してリフィルが行われるようにすることができる。
【0052】
また、この掘り込みの表面には、保護層104が形成されているため、掘り込みの部分がインクによって腐食されるのを防止することができる。さらに、この保護層104には、掘り込みの側面に吐出圧力発生素子102の駆動回路などに用いられる機能層の断面が露出している場合においても、それをインクによる腐食から保護するという働きをさせることもできる。
【0053】
また、本実施形態によって製造されるインクジェット記録ヘッドにおいては、図3(d)などに示すように、各ノズルへのインクの供給経路に、掘り込みによって、段をなすようになった部分が形成される。インクジェット記録ヘッド内には、長期に亘る使用によって、空気が浸入するなどして、不要な泡が生じる場合があるが、本実施形態のインクジェット記録ヘッドでは、この泡を、掘り込みによって形成される段差部にトラップさせることができると考えられる。このような泡は、吐出圧力発生素子102付近に存在すると、インクを吐出させる際に、吐出圧力発生素子102によって発生する圧力を吸収してしまうなど、インクの吐出に悪影響を与える場合があるが、この泡を、吐出圧力発生素子102から離れた段差部にトラップすることによって、このような悪影響を低減することができる。
【0054】
なお、本実施形態において、保護層104としては、窒化シリコン膜を用いる例を示したが、供給口110を形成するエッチングに対して耐性を有する他の構成としてもよい。すなわち、保護層104は、例えば、酸化シリコン膜から構成してもよく、また、Ta,Cu,Au,Ptなどの金属あるいはこれらの金属を含む合金、または、ポリアミド、ポリエーテルアミドなどの有機物から構成してもよい。
【0055】
また、保護層104は、窪み部103の他、基板101上に形成した吐出圧力発生素子102やその駆動回路上をも覆う領域に形成してもよく、特に、基板101の表面全面に形成してもよい。それによって、保護層104に、吐出圧力発生素子102やその駆動回路をインクによる腐食から保護する働きをさせることができる。
【0056】
(第2の実施形態)
次に、図4を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。図4は、第1の実施形態での、図2(c)に示す段階までの工程に相当する工程を完了して形成された、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は、図4(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【0057】
本実施形態では、窪み部203を結晶異方性エッチングにより形成している。
これによって、基板201の表側の面の窪み部203は、斜めに傾斜した側面を有する形状に加工されている。本実施形態において、他の工程については、第1の実施形態と同様に実施することができる。
【0058】
したがって、本実施形態によれば、基板201の表側の面の、吐出圧力発生素子201が形成された面よりも段をなすように低くなった底面を有する掘り込みの側面が、斜めに傾斜している以外は、第1の実施形態と同様のインクジェット記録ヘッドを製造することができる。この掘り込みの表面には、保護層204が形成されており、この保護層204のために、第1の実施形態と同様に、掘り込みの底面と供給口の側面とによって形成される角部の形状を再現性良く高精度に調整することができ、また、掘り込みの部分にインクに対する高い耐性を与えることができる。
【0059】
なお、窪み部203の形成は、第1の実施形態におけるリアクティブイオンエッチング、本実施形態における結晶異方性エッチングの他、他のウエットエッチング、ケミカルドライエッチング、レーザ加工などの物理的方法、ドリル加工、エンドミル加工などの機械的加工方法を用いて実施してもよい。
【0060】
また、特に、機械加工によって窪み部を形成する場合、保護層に、機械加工によって発生するゴミをその中に閉じ込める働きをさせることができると考えられる。このようにゴミを閉じ込めることによって、ゴミが、記録ヘッドの使用中にインクとともに流され、ノズルつまりなどを生じさせるのを防止することができる。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、図5,6を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。図5は、第1の実施形態での、図2(c)に示す段階までの工程に相当する工程を完了して形成された、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は、図5(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。図6は、完成したインクジェット記録ヘッドの模式図であり、図6(a)は、水平方向に切断した断面図、図6(b)は、図6(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【0062】
本実施形態では、図5(a)に示すように、窪み部303を、中央の部分から、各吐出圧力発生素子302に向かって個別に延びている部分を有する平面形状の領域に形成している。したがって、基板301の、吐出圧力発生素子302が形成される表面と同じ高さの面は、所定のピッチで並んだ吐出圧力発生素子302の間の位置で供給口310側に向かって延びるように突出した部分を有する平面パターンになっている。このような窪み部303は、例えば、レジストをこのような平面パターンにパターニングしてリアクティブイオンエッチングを行うことによって形成できる。
【0063】
そして、図6(a)に示すように、オリフィスプレート306によって構成される流路壁311を、基板301の、吐出圧力発生素子302が形成される表面と同じ高さの面の、所定のピッチで並んだ吐出圧力発生素子302の間の位置で供給口310側に向かって延びるように突出した部分にまで延びるように形成している。
【0064】
本実施形態において、各工程は、第1の実施形態と同様に実施することができる。特に、本実施形態では、供給口310は、TMAH水溶液による結晶異方性エッチングによって形成している。
【0065】
本実施形態によれば、基板301の表側の面の掘り込みを吐出圧力発生素子302のすぐ近くにまで延ばし、それによってインクの供給経路の流抵抗を効果的に低減する一方で、同時に、流路壁311を十分に長くし、インク吐出時の圧力がノズル間で伝播することによってインク吐出が不安定になる、いわゆるクロストークが発生するのを効果的に効果的に抑えることができる。
【0066】
(第4の実施形態)
次に、図7を参照して本発明の第4の実施形態について説明する。図7は、第1の実施形態での、図2(c)に示す段階までの工程に相当する工程を完了して形成された、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は、図7(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【0067】
本実施形態では、図7(b)に示すように、保護層404を、窪み部403の表面を覆う部分のみに残している。他の工程については、第1の実施形態と同様に実施することができる。
【0068】
本実施形態の構成でも、保護層404を形成することによって、掘り込みの底面と供給口の側面とによって形成される角部の形状を再現性良く高精度に調整することができ、また、掘り込みの部分にインクに対する高い耐性を与えることができるという効果が得られる。
【0069】
(第5の実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。図8は、第1の実施形態での、図2(c)に示す段階までの工程に相当する、本実施形態における製造工程を時系列に示す断面図である。
【0070】
以下、本実施形態におけるインクジェット記録ヘッド用基体の製造工程について順を追って説明する。
【0071】
本実施形態においても、基板501としては、表面の結晶方位面が(100)面である単結晶シリコンウエハを準備する(図8(a))。そして、第1の実施形態と同様に、この基板501の表側の面に、供給口を形成する部分と、この部分から吐出圧力発生素子502を形成する位置の手前までの部分を掘り込み、窪み503を形成する(図8(b))。
【0072】
次に、基板501の表側の面に、吐出圧力発生素子502の駆動回路を形成する。この過程で、駆動回路の機能層の1つである絶縁層として、プラズマCVD法によってSiO膜を形成しパターニングする。この際、SiO膜を、窪み部503を含む領域に亘って形成し、このSiO膜を、第1〜4の実施形態における保護層と同様の働きをする保護層504として用いる(図8(c))。すなわち、この保護層504によって、後の工程で供給口を形成するために基板1の裏面側からエッチングする際、基板1の表側の面側にエッチャントが廻り込まないようにして、供給口の側面と窪み部503の底面とによって形成される角部の形成精度を高めることができ、また、窪み部503によって形成される、インクの供給経路の底面の掘り込みに、インクに対して高い耐性を持たせることができる。
【0073】
このようにして駆動回路を形成した後、吐出圧力発生素子502として発熱抵抗体を形成する(図8(d))。その後の工程については、第1の実施形態と同様に実施することができる。
【0074】
本実施形態によれば、保護層504を、基板1上に形成する駆動回路の機能層の1つまたは複数の層を形成する際に一緒に形成することができ、製造の効率化を図ることができる。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、吐出圧力発生素子が形成された基板に、供給口近傍の流路高さが吐出圧力発生素子近傍の流路高さより高くなるように掘り込みが設けられており、しかも、掘り込みの底面と供給口の側面とによって形成される角部が再現性良く高精度に所定の形状に形成されたインクジェット記録ヘッドを製造することができる。したがって、本発明によって製造したインクジェット記録ヘッドは、インクの供給経路の流抵抗を小さくしてリフィルを速くし、しかも、インクの供給経路の形状を精度良く所定の形状にし、また、各ノズルについて均一にして、安定したリフィルが行われるようにすることができる。
【0076】
また、本発明によって製造されるインクジェット記録ヘッドは、掘り込みの表面に保護層が形成されているため、インクによる腐食に対して高い耐性を有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の、インクジェット記録ヘッドの製造工程を時系列に示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の、インクジェット記録ヘッドの、図2より後の製造工程を時系列に示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態のインクジェット記録ヘッドの模式図であり、図6(a)は水平方向に切断した断面図、図6(b)は図6(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の模式図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態の、インクジェット記録ヘッドの製造工程を時系列に示す模式図である。
【図9】従来例のインクジェット記録ヘッドの模式図であり、図9(a)は、オリフィスプレートを取り除いた状態で示す斜視図、図9(b)は、図9(a)のA−A線に沿って切断した断面図である。
【符号の説明】
101,201,301,401,501,601 基板
102,202,302,402,502,602 吐出圧力発生素子
103,203,303,403,503 窪み部
104,204,304,404,504 保護層
105 流路型材
106,306,606 オリフィスプレート
107,307,607 吐出口
108 ノズル保護用樹脂
109,309,609 裏面マスク層
110,310,610 供給口
111 角部
311 流路壁
Claims (18)
- 外部から液体が供給される供給口と、該液体を吐出する吐出口と、該吐出口に連通し、前記供給口から供給された前記液体を前記吐出口へと導く液流路と、該液流路の一部に設けられた、前記液体を吐出するための圧力を発生する吐出圧力発生部とを有し、前記供給口が、前記吐出圧力発生部を構成する吐出圧力発生素子が形成された基板に貫通口として形成されたインクジェット記録ヘッドの製造に用いるインクジェット記録ヘッド用基体であって、
前記吐出圧力発生素子が複数形成されており、該吐出圧力発生素子が形成された面の、形成される前記供給口が開口する部分と、そこから前記吐出圧力発生素子の手前までの部分が掘り込まれて窪み部が形成されている前記基板と、
該基板の、前記吐出圧力発生素子が形成された面に、少なくとも前記窪み部の表面に形成された、前記供給口を形成するためのウエットエッチングに対して耐性を有する保護層とを有するインクジェット記録ヘッド用基体。 - 前記窪み部は、前記基板の、前記吐出圧力発生素子が形成された面と平行な底面を有している、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
- 前記窪み部は、前記基板の、前記吐出圧力発生素子が形成された面の、形成される前記供給口が開口する部分の側から、前記吐出圧力発生素子が形成された部分へと、前記吐出圧力発生素子毎に延びている部分を有している、請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
- 前記保護層は、前記吐出圧力発生素子および/または前記吐出圧力発生素子の駆動回路も覆っている、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
- 前記保護層は、前記吐出圧力発生素子の駆動回路における機能層の1つまたは複数の層と共用されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
- 前記保護層は、窒化シリコン、酸化シリコン、Ta、Cu、Au、Pt、TaまたはCuまたはAuまたはPtを含む合金、ポリアミド、ポリエーテルアミドのいずれかである、請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
- 外部から液体が供給される供給口と、該液体を吐出する吐出口と、該吐出口に連通し、前記供給口から供給された前記液体を前記吐出口へと導く液流路と、該液流路の一部に設けられた、前記液体を吐出するための圧力を発生する吐出圧力発生部とを有し、前記供給口が、前記吐出圧力発生部を構成する吐出圧力発生素子が形成された基板に貫通口として形成されたインクジェット記録ヘッドの製造方法であって、
前記基板に、前記吐出圧力発生素子が形成される面の、形成される前記供給口が開口する部分と、そこから前記吐出圧力発生素子が形成される部分の手前までの部分を掘り込んで窪み部を形成する工程と、
前記基板の、前記吐出圧力発生素子が形成された面に、少なくとも前記窪み部の表面を覆うように、前記供給口を形成するためのウエットエッチングに対して耐性を有する保護層を形成する工程とを有する、インクジェット記録ヘッドの製造方法。 - 前記窪み部をドライエッチング、ウエットエッチング、レーザ加工、機械加工のいずれかによって形成する、請求項7に記載の、インクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記窪み部をケミカルドライエッチング、リアクティブイオンエッチング、結晶異方性エッチング、ドリル加工、エンドミル加工のいずれかによって形成する、請求項8に記載の、インクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記基板の、前記吐出圧力発生素子が形成される面とは反対側の面に、前記供給口を形成するためのウエットエッチング用のマスク層であって、ウエットエッチングによって、前記基板の、前記吐出圧力発生素子が形成された面とは反対側の面から形成された溝が、前記基板の、前記吐出圧力発生素子が形成された面で、前記窪み部が形成された領域内で開口するように、所定のパターンの開口を有するマスク層を形成する工程と、
前記マスク層の前記開口からウエットエッチングを行って、前記保護層にまで延びる、前記供給口となる溝を形成する工程と、
前記保護層の、前記溝内に露出した部分を除去する工程とをさらに有する、請求項7から9のいずれか1項に記載の、インクジェット記録ヘッドの製造方法。 - 前記基板の、前記吐出圧力発生素子が形成される面とは反対側の面から行うエッチングは、硝酸または混酸による等方エッチング、アルカリ溶液による結晶異方性エッチングのいずれかによって行う、請求項10に記載の、インクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記基板の、前記吐出圧力発生素子が形成される面とは反対側の面から行うエッチングは、KOHまたはTMAH水溶液による結晶異方性エッチングによって行う、請求項11に記載の、インクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記基板の、前記吐出圧力発生素子が形成される面上に、前記吐出口と前記液流路を構成するオリフィスプレートを形成する工程をさらに有する、請求項7から12のいずれか1項に記載の、インクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記オリフィスプレートは、感光性の樹脂をソルベントコートし、フォトリソグラフィー技術によりパターニングして形成する、請求項13に記載の、インクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記オリフィスプレートは、前記液流路の形成パターンに相当するパターンで、溶出可能な樹脂から流路型材を形成し、該流路型材に、前記オリフィスプレートとなる樹脂を被覆し、その後、前記流路型材を溶出させることによって形成する、請求項13または14に記載の、インクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 外部から液体が供給される供給口と、該液体を吐出する吐出口と、該吐出口に連通し、前記供給口から供給された前記液体を前記吐出口へと導く液流路と、該液流路の一部に設けられた、前記液体を吐出するための圧力を発生する吐出圧力発生部とを有し、前記供給口が、前記吐出圧力発生部を構成する吐出圧力発生素子が形成された基板に貫通口として形成されたインクジェット記録ヘッドであって、
前記基板の、前記吐出圧力発生素子が形成された面側での、前記供給口の開口の縁部において、前記基板の表面に、前記吐出圧力発生素子が形成された部分よりも段をなすように低くなった掘り込みが設けられており、少なくとも該掘り込みの表面に、前記供給口を形成するためのウエットエッチングに対して耐性を有する保護層が形成されているインクジェット記録ヘッド。 - 前記掘り込みは、前記吐出圧力発生素子が形成された面の、前記供給口が開口する部分の側から、前記吐出圧力発生素子が形成された部分へと、前記吐出圧力発生素子毎に延びている部分を有しており、前記各液流路の間を仕切る流路壁が、前記掘り込みの、前記吐出圧力発生素子の部分へと、前記吐出圧力発生素子毎に延びている部分の間の領域にまで延びている、請求項16に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記保護層は、前記吐出圧力発生素子および/または前記吐出圧力発生素子の駆動回路も覆っている、請求項16または17に記載のインクジェット記録ヘッド。
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