JP2004208930A - 繊維強化樹脂製の管状体 - Google Patents
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Abstract
【課題】繊維強化樹脂製管状体のねじり強度を順ねじりもしくは逆ねじりのいずれか一方のみを大きくすると共に、順ねじりの弾性率と逆ねじりの弾性率を同等に保つ。
【解決手段】強化繊維をマトリクス樹脂に含浸させたプリプレグより成形している繊維強化樹脂製の管状体であって、強化繊維の配向角度が上記管状体の軸方向に対して20°〜90°の第1アングル層と、−20°〜−90°である第2アングル層を有し、第1アングル層の配向角度|θ1|と第2アングル層の配向角度|θ2|とを異ならせると共に、上記|θ1|と|θ2|のうち45゜に近接する側の配向角度の一方のアングル層の強化繊維の弾性率を他方のアングル層の強化繊維の弾性率よりも小さく設定している。
【選択図】 図2
【解決手段】強化繊維をマトリクス樹脂に含浸させたプリプレグより成形している繊維強化樹脂製の管状体であって、強化繊維の配向角度が上記管状体の軸方向に対して20°〜90°の第1アングル層と、−20°〜−90°である第2アングル層を有し、第1アングル層の配向角度|θ1|と第2アングル層の配向角度|θ2|とを異ならせると共に、上記|θ1|と|θ2|のうち45゜に近接する側の配向角度の一方のアングル層の強化繊維の弾性率を他方のアングル層の強化繊維の弾性率よりも小さく設定している。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、繊維強化樹脂製の管状体に関し、詳しくは、ゴルフシャフトとして好適に用いられ、該シャフトのねじり方向による弾性率は同じに保ちながら、ねじり強度は一定方向に大きくするものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフクラブにおいて、ウッド、アイアンについては、クラブヘッドの重心がシャフト軸上にないので、スイング中にシャフトには大きなトルクがかかる。また、ボールのインパクト時にはヘッドが開く方向、即ち、右利きの場合は反時計回転方向、左利きの場合は時計回転方向にトルクを受けるので、曲げ強度と同様、十分なねじり強度をシャフトにもたせることが必要である。
【0003】
そこで、ゴルフクラブシャフトを繊維強化樹脂製の管状体により構成する場合、強化繊維の配向角度が管状体の軸方向に対して角度をもったアングル層を設けることにより、ねじり強度を向上させている。
上記アングル層は、一般的に、強化繊維の配向角度を管状体の軸方向に対して傾斜方向は互いに逆で、同じ角度で傾斜させて、かつ、同じ厚みになるように積層している。
この管状体の弾性率を上げるには、強化繊維の配向角度を管状体の軸方向に対して45度に近づける程にねじり弾性率が高くなる一方、ねじり強度を上げるには、強化繊維の配向角度を管状体の軸方向に対して90度に近づける程にねじり強度が高くなることが、一般的に認められている。
【0004】
上記管状体をゴルフシャフトに使用する場合、公式競技用ゴルフシャフトのルールである「JGAゴルフ規則」の「付属規則II クラブのデザイン」の「2.シャフト」の「b.曲げ特性とねじれ特性」の「(ii)両方向に同程度ねじれること」に対応するため、弾性率はねじり方向に差がないことが求められている。そのためには、弾性率は一定に保たなければならないが、ねじり強度については使用されるねしり方向が決まっており、一方向の強度が大きく、他方向の強度は小さくてもよい。
【0005】
上記した観点より、特開2002−177425号(特許文献1)で提案されている管状体は、実際の使用状態に応じて、順ねじりまたは順ねじりと反対方向である逆ねじりのいずれか一方のねじり強度を高めている。具体的には、強化繊維とマトリクス樹脂からなる層を積層してなる繊維強化樹脂製の管状体において、強化繊維を管状体の軸方向に対して角度θ1(35°≦θ≦50°)で配列したA層と、強化繊維を管状体の軸方向に対して角度θ2(−70°≦θ≦−40°)で配列したB層を有し、かつ、θ2の絶対値がθ1の絶対値より大としている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−177425号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1では段落番号0027〜0031に記載されているように、実施例1〜3の配向角度を異ならせているA層とB層として同一材料のプリプレグBを用いているため、弾性率および厚さは同一とされている。
よって、A層の繊維の配向角度θ1を35°≦θ≦50°、B層の配向角度θ2をー70°≦θ≦−40°とし、且つθ2>θ1として、配向角度を相違させた場合、ねじり弾性率は方向によっては差異が生じる可能性が高い。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、繊維強化樹脂製管状体のねじり強度を順ねじり方向もしくは逆ねじり方向のいずれか一方向のみを大きくして、必要な方向のねじり強度を高めると共に、順ねじり方向での弾性率と逆ねじり方向での弾性率を同等に保つことを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、強化繊維をマトリクス樹脂に含浸させたプリプレグより成形している繊維強化樹脂製の管状体であって、
上記強化繊維の配向角度が上記管状体の軸方向に対して20°〜90°の第1アングル層と、−20°〜−90°である第2アングル層を有し、
第1アングル層の配向角度|θ1|と第2アングル層の配向角度|θ2|とを異ならせると共に、上記|θ1|と|θ2|のうち45゜に近接する側の配向角度の一方のアングル層の強化繊維の弾性率を他方のアングル層の強化繊維の弾性率よりも小さく設定していることを特徴とする繊維強化樹脂製の管状体を提供している。
【0010】
詳細には、上記第1アングル層の配向角度|θ1|および強化繊維の弾性率X1と、第2アングル層の配向角度|θ2|および強化繊維の弾性率X2とを下記の関係に設定している。
||θ1|−45°|<||θ2|−45°|
X1<X2
3t/mm2≦X1≦40t/mm2、10t/mm2≦X2≦100t/mm2
【0011】
上記構成とすると、第1アングル層の強化繊維の管状体軸方向に対する配向角度θ1の絶対値と第2アングル層の強化繊維の配向角度θ2の絶対値を異ならるため、ねじり強度を一方のねじり方向のみ大きくすることができる。
一方、ねじり弾性率については、強化繊維の配向角度を45゜より90゜に近づけてねじり弾性率が低くなる層(第2アングル層)では、強化繊維を弾性率(X2)を高くする一方、配向角度を45゜に近づけてりねじり弾性率が高くなる層(第1アングル層)では強化繊維の弾性率(X1)を低くして、第1アングル層と第2アングル層のねじり弾性率の均等化をはかり、ねじり弾性率に方向性を持たせていない。
【0012】
また、第1アングル層の強化繊維の弾性率X1を3t/mm2≦X1≦40t/mm2とし、第2アングル層の弾性率X2を10t/mm2≦X2≦100t/mm2としているのは、上記範囲外であると、管状体の強度を適切なものとすることができないためであり、また、順ねじり弾性率と逆ねじり弾性率を同等にすることができないためである。
【0013】
上記第1アングル層の強化繊維の配向角度|θ1|と、第2アングル層の強化繊維の配向角度|θ2|の角度差が5゜〜40゜、第1アングル層の強化繊維の弾性率X1と第2アングル層の強化繊維の弾性率X2との差が5〜60t/mm2としていることが好ましい。
上記のように、角度差を5゜〜40゜の範囲で持たせると、ねじり強度に差を持たせて、必要とする方向のねじり強度を高めることができ、角度差はより好ましくは5°〜30°、さらに好ましくは10°〜25°、特に10°〜15°が好ましい。また、このような角度差を持たせた場合には、弾性率の差を上記5〜60t/mm2とすることにより、即ち、45゜より離れてジャフト軸線方向に近い角度側のアングル層の弾性率を上記範囲で他方のアングル層よりも大きくすることで、第1アングル層と第2アングル層の弾性率を均等とすることができ、弾性率の差はより好ましくは5〜40t/mm2、さらに好ましくは5〜30t/mm2、特に10〜15t/mm2が好ましい。
【0014】
第1アングル層の強化繊維の弾性率X1は、好ましくは20t/mm2≦X1≦40t/mm2、さらに好ましくは20t/mm2≦X1≦30t/mm2である。
一方、第2アングル層の強化繊維の弾性率X2は、好ましくは35t/mm2≦X2≦80t/mm2、さらに好ましくは35t/mm2≦X2≦50t/mm2である。
【0015】
また、第1アングル層の強化繊維の配向角度θ1が40°≦θ1≦50°、第2アングル層の強化繊維の配向角度θ2が、−60°≦θ2≦−50または−40゜≦θ2≦−30°とすることが好ましい。
上記のように、第1アングル層の強化繊維の配向角度θ1を40°≦θ1≦50°としているのは、上記範囲外であると、管状体のねじり剛性が低下するためである。
また、第2アングル層の強化繊維の配向角度はー70°≦θ1≦ー20°とし、上記のように−60°≦θ2≦−50°もしくは−40°≦θ2≦−30°としていることが好ましい。−50°<θ2<−40°を除外しているのは、θ2の絶対値がθ1に近くなりすぎて、順ねじり強度と逆ねじり強度に十分な差をつけにくいためである。
【0016】
上記繊維強化樹脂製の管状体は上記強化繊維の配向角度が上記管状体の軸方向に対して±10°未満であるストレート層を備えていることが好ましい。
上記構成とすると、管状体のねじり強度だけでなく、曲げ強度も向上させることができる。
【0017】
上記繊維強化樹脂の強化繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維等が好適に用いられ、マトリクス樹脂として、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が好適に用いられる。また、繊維強化樹脂の樹脂含有率は20〜50重量%、該強化繊維を一方向に引き揃えて、マトリクス樹脂で含浸させたプリプレグの厚みは、0.02〜0.15mmとしている。
【0018】
上記した構成からなる繊維強化樹脂製の管状体はねじり強度に差を持たせて、所要方向のねじり強度を高めているため、ゴルフシャフトとして好適に用いられ、かつ、ねじり弾性率には方向性を持たせていたいため、ゴルフクラブに要求されるルールに適合したものとなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
実施形態は管状体をゴルフクラブシャフトとしている。
図1及び図2は第1実施形態を示し、シャフト1は直線状に拡径したテーパ形状としており、小径端側にヘッド2が取り付けられ、大径側にグリップ3が取り付けられている。
【0020】
上記シャフト1において、順ねじりとはシャフトを反時計回転方向にねじる方向をいい、逆ねじりとは、シャフトを時計回転方向にねじる方向をいう。
本実施形態のゴルフクラブシャフトは、右利き用のゴルフクラブシャフトであり、シャフトの順ねじり方向のねじり強度を高める構成とし、強化繊維のシャフト1の軸方向に対する配向角度の正方向を時計回転方向としている。
【0021】
シャフト1は、炭素繊維を強化繊維とし、該強化繊維を一方向に引き揃え、熱硬化樹脂からなるマトリクス樹脂を含浸させた複数の繊維強化樹脂(以下、「プリプレグ」という)を用い、該プリプレグを積層して金型で加熱硬化して管状体として成形したものである。
【0022】
詳しくは、図2に示すプリプレグ11、12、13を芯金(マンドレル)に、順次内周側から巻き付けて積層している。プリプレグ11は強化繊維F11を軸線方向に対して角度θ1で傾斜させた第1アングル層とし、プリプレグ12はθ2で傾斜させた第2アングル層とし、プリプレグ13は軸線方向に対して±10゜未満の略平行としたストレート層としている。
【0023】
第1アングル層のプリプレグ11、第2アングル層のプリプレグ12はマンドレルの全長に亙って巻き付け、プリプレグ11、12共にそれぞれ4回巻きとしている。
ストレート層のプリプレグ13もマンドレルの全長に巻き付けている。
【0024】
上記アングル層を形成するプリプレグ11、12の強化繊維11、12の軸線に対する配向角度θ1、θ2は±20゜〜±90゜の範囲内で、第1アングル層を構成するプリプレグ11の強化繊維F11の配向角度は40°≦θ1≦50°の範囲とし、第2アングル層を構成するプリプレグ12の強化繊維F12は−60°≦θ2≦−50または−40゜≦θ2≦−30°の範囲とし、θ1とθ2の差を5〜25゜の範囲としている。
なお、本実施形態ではθ1を45゜、θ2を−35゜とし、その配向角度の絶対値の差を10゜としている。プリプレグ11、12はマンドレルにそれぞれ4回巻きとしている。
【0025】
また、上記アングル層を形成するプリプレグ11の強化繊維11のねじり弾性率X1は3t/mm2≦X1≦40t/mm2の範囲と、10t/mm2≦X2≦100t/mm2とし、X1とX2との差を10〜15t/mm2としている。
なお、本実施形態ではX1を30t/mm2とし、X2を40t/mm2とし、その差を10t/mm2としている。
【0026】
このように、内側に第1、第2アングル層を配置し、外側にストレート層を配置して積層した後、ポリプロピレン(PP)あるいはポリエステル等のテープでラッピングしてオーブン中で加熱加圧して樹脂を硬化させて一体的に成形し、その後、芯金を引き抜いて、シャフト1を形成している。
【0027】
本実施形態のシャフト1は、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を使用し、プリプレグ11〜13中の樹脂含有率20〜50重量%、厚み1.02〜0.15mmとし、成形するシャフト1の長さを30〜48inch、重量を30〜150g、肉厚を0.5〜2.5mmとしている。
【0028】
上記構成とすると、第2アングル層を構成するプリプレグ12の強化繊維F12のシャフト軸方向に対する配向角度θ2の絶対値を35°と第1アングル層を構成するプリプレグ11の強化繊維F11の配向角度θ1の絶対値を45°として異ならせているため、順ねじり即ち反時計回転方向のねじり強度のみ大きくすることができる。
かつ、第1アングル層では、弾性率が30t/mm2と低い強化繊維F11の配向角度θ1を45°として弾性率を高めている一方、第2アングル層では強化繊維F12の配向角度θ2を−35°として弾性率が低くなっている分、強化繊維F12の弾性率を40t/mm2と高くしているため、第1アングル層と第2アングル層の弾性率の均等化が図られ、順ねじり方向と逆ねじり方向の弾性率が同等となり、ねじり弾性率に方向性を持たせないようにすることができる。
さらに、ストレート層を設けていることにより曲げ強度も高めることができる。
【0029】
図3は第2実施形態を示し、第1実施形態と積層順序を変えており、マンドレルの内側から、ストレート層を構成するプリプレグ13、第1アングル層を構成するプリプレグ11、第2アングル層を構成するプリプレグ12を順次巻き付けている。即ち、第1実施形態ではストレート層を第1、第2アングル層の外周側に配置しているが、第2実施形態ではストレート層を第1、第2アングル層の内周側に配置している。
【0030】
図4は第3実施形態を示し、第1、第2実施形態と積層順序を変えており、マンドレルの内側から、ストレート層を構成するプリプレグ13、第1アングル層を構成するプリプレグ11、第2アングル層を構成するプリプレグ12、ストレート層を構成するプリプレグ13’を順次マンドレルの内側から順次巻き付けている。即ち、第3実施形態では内周側と外周側に配置するストレート層の間に第1、第2アングル層を配置している。
なお、第1〜第3実施形態とも、上記プリプレグ11、12、13以外にマンドレル全長に亙るプリプレグおよびヘッド取付側等に巻き付ける補強用プリプレグを積層してもよい。
【0031】
以下、本発明の繊維強化樹脂製のシャフトの実施例、比較例について詳述する。 実施例及び比較例の繊維強化樹脂製のシャフトはウッド用とし、長さ45インチ、重量52gとし、シャフトの内径、外径、肉厚は同等とした。
【0032】
【表1】
【0033】
(実施例1)
前記図2に示す第1実施形態のシャフト1と同様の構成とし、プリプレグ11〜13を用いて作製した。
第1アングル層の強化繊維の配向角度は45゜で弾性率は30t/mm2、第2アングル層の強化繊維の配向角度は−35゜で弾性率は40t/mm2とした。ストレート層の強化繊維の配向角度は0゜とし、弾性率は30t/mm2とした。
(実施例2)
第1実施例との相違点は、第2アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F12の弾性率を45t/mm2、シャフト軸方向に対する配向角度を−30°とた点である。他の構成は実施例1と同様とした。
(実施例3)
第1実施例との相違点は、第2アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F12の弾性率を45t/mm2、シャフト軸方向に対する配向角度を−60°とした点である。他の構成は実施例1と同様とした。
(実施例4)
第1実施例との相違点は、第1アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F11の弾性率を25t/mm2とし、第2アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F12のシャフト軸方向に対する配向角度を−70°とした点である。他の構成は実施例1と同様とした。
【0034】
(比較例1)
第1実施例との相違点は、第2アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F12の弾性率を30t/mm2とし、第1アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F11の弾性率と同一とした点である。他の構成は実施例1と同様とした。
(比較例2)
第1実施例ての相違点は、第1アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F11の弾性率を60t/mm2、シャフト軸方向に対する配向角度を35°とした。また、第2アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F12の弾性率を80t/mm2、シャフト軸方向に対する配向角度を−20°とした。他の構成は実施例1と同様とした。
【0035】
上記実施例及び比較例のシャフトについて、後述する方法によりトルク値、トルク破壊値、曲げ剛性を測定した。測定結果を上記表1に示す。
【0036】
(トルク値の測定方法)
シャフトの先端及び後端を固定し、後端側(手元側)に13.9kg/cmのトルクを順ねじり方向、逆ねじり方向それぞれについて負荷し、そのときのねじり角度の値をトルク値(ねじり弾性率)とした。
【0037】
(トルク破壊値の測定方法)
シャフトの先端及び後端を固定し、片方の端にトルクを加えていき、破壊したときのトルク値をトルク破壊値(ねじり強度)とした。順ねじり方向、逆ねじり方向それぞれについて行った。
【0038】
(曲げ剛性値の測定方法)
図5に示すように、万能材料試験機60を用い、3点曲げにより、シャフト1を撓ませて測定を行った。シャフト1のヘッド側端1bから130mmの点から、100mmピッチで測定点を決めた。上記測定点が万能試験機60の圧子61の下にくるようにシャフト1を治具62A、62Bの上に配置した。治具62A,62Bの間隔は200mmとした。圧子61の先端の曲率は75R、治具62A、62Bの先端の曲率は2Rとした。圧子61をテストスピード5mm/minで降下させ、シャフト1を撓ませた。負荷荷重が20kgfに達した時点で圧子61の移動が終了し、その時のシャフト1の撓み量を測定した。曲げ剛性値の算出は下記の式より行った。
曲げ剛性値(kgf/mm2)=(負荷荷重×(支点間距離)3)/(48×撓み量)
【0039】
表1に示すように、実施例1〜4のゴルフクラブシャフトは、順ねじり方向のみのトルク破壊値(ねじり強度)が上がると共に、順ねじり方向のトルク値(弾性率)と逆ねじり方向のトルク値(弾性率)を同一にすることができた。これに対し、比較例1、2のゴルフクラブシャフトは、順ねじり方向のみのトルク破壊値(ねじり強度)を上げることはできたが、順ねじり方向のトルク値(弾性率)と逆ねじり方向のトルク値(弾性率)を同一にすることができなかった。比較例2のゴルフクラブシャフトは、順ねじり方向のトルク値(弾性率)と逆ねじり方向のトルク値(弾性率)を近付けることができたが、トルク破壊値(ねじり強度)を高めることができず、また、曲げ剛性値も大きくなった。
【0040】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、プリプレグの強化繊維の配向角度を管状体の軸方向に対して傾斜させた第1アングル層と第2アングル層とを設け、該第1アングル層と第2アングル層の配向角度を異ならせることにより、一方のねじり強度のみを高めると共に、第1アングル層と第2アングル層の強化繊維の弾性率を調節して、管状体の順ねじり方向と逆ねじり方向の弾性率を同等にすることができる。
具体的には、強化繊維の配向角度が45°もしくは−45°により近い第1アングル層に弾性率の低い強化繊維を用い、強化繊維の配向角度が45°もしくは−45°からより離れている第2アングル層に弾性率の高い強化繊維を用いることにより管状体の順ねじり方向と逆ねじり方向の弾性率を同等にしている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の繊維強化樹脂製管状体からなるゴルフクラブシャフトを用いたゴルフクラブの概略図である。
【図2】第1実施形態のゴルフクラブシャフトに用いるプリプレグの積層構成を示す図面である。
【図3】第2実施形態のゴルフクラブシャフトに用いるプリプレグの積層構成を示す図面である。
【図4】第3実施形態のゴルフクラブシャフトに用いるプリプレグの積層構成を示す図面である。
【図5】曲げ剛性値の測定方法を示す図面である。
【符号の説明】
1 シャフト
2 ヘッド
3 グリップ
11 第1アングル層のプリプレグ
12 第2アングル層のプリプレグ
13 ストレート層のプリプレグ
F11〜F14 強化繊維
【発明が属する技術分野】
本発明は、繊維強化樹脂製の管状体に関し、詳しくは、ゴルフシャフトとして好適に用いられ、該シャフトのねじり方向による弾性率は同じに保ちながら、ねじり強度は一定方向に大きくするものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフクラブにおいて、ウッド、アイアンについては、クラブヘッドの重心がシャフト軸上にないので、スイング中にシャフトには大きなトルクがかかる。また、ボールのインパクト時にはヘッドが開く方向、即ち、右利きの場合は反時計回転方向、左利きの場合は時計回転方向にトルクを受けるので、曲げ強度と同様、十分なねじり強度をシャフトにもたせることが必要である。
【0003】
そこで、ゴルフクラブシャフトを繊維強化樹脂製の管状体により構成する場合、強化繊維の配向角度が管状体の軸方向に対して角度をもったアングル層を設けることにより、ねじり強度を向上させている。
上記アングル層は、一般的に、強化繊維の配向角度を管状体の軸方向に対して傾斜方向は互いに逆で、同じ角度で傾斜させて、かつ、同じ厚みになるように積層している。
この管状体の弾性率を上げるには、強化繊維の配向角度を管状体の軸方向に対して45度に近づける程にねじり弾性率が高くなる一方、ねじり強度を上げるには、強化繊維の配向角度を管状体の軸方向に対して90度に近づける程にねじり強度が高くなることが、一般的に認められている。
【0004】
上記管状体をゴルフシャフトに使用する場合、公式競技用ゴルフシャフトのルールである「JGAゴルフ規則」の「付属規則II クラブのデザイン」の「2.シャフト」の「b.曲げ特性とねじれ特性」の「(ii)両方向に同程度ねじれること」に対応するため、弾性率はねじり方向に差がないことが求められている。そのためには、弾性率は一定に保たなければならないが、ねじり強度については使用されるねしり方向が決まっており、一方向の強度が大きく、他方向の強度は小さくてもよい。
【0005】
上記した観点より、特開2002−177425号(特許文献1)で提案されている管状体は、実際の使用状態に応じて、順ねじりまたは順ねじりと反対方向である逆ねじりのいずれか一方のねじり強度を高めている。具体的には、強化繊維とマトリクス樹脂からなる層を積層してなる繊維強化樹脂製の管状体において、強化繊維を管状体の軸方向に対して角度θ1(35°≦θ≦50°)で配列したA層と、強化繊維を管状体の軸方向に対して角度θ2(−70°≦θ≦−40°)で配列したB層を有し、かつ、θ2の絶対値がθ1の絶対値より大としている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−177425号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1では段落番号0027〜0031に記載されているように、実施例1〜3の配向角度を異ならせているA層とB層として同一材料のプリプレグBを用いているため、弾性率および厚さは同一とされている。
よって、A層の繊維の配向角度θ1を35°≦θ≦50°、B層の配向角度θ2をー70°≦θ≦−40°とし、且つθ2>θ1として、配向角度を相違させた場合、ねじり弾性率は方向によっては差異が生じる可能性が高い。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、繊維強化樹脂製管状体のねじり強度を順ねじり方向もしくは逆ねじり方向のいずれか一方向のみを大きくして、必要な方向のねじり強度を高めると共に、順ねじり方向での弾性率と逆ねじり方向での弾性率を同等に保つことを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、強化繊維をマトリクス樹脂に含浸させたプリプレグより成形している繊維強化樹脂製の管状体であって、
上記強化繊維の配向角度が上記管状体の軸方向に対して20°〜90°の第1アングル層と、−20°〜−90°である第2アングル層を有し、
第1アングル層の配向角度|θ1|と第2アングル層の配向角度|θ2|とを異ならせると共に、上記|θ1|と|θ2|のうち45゜に近接する側の配向角度の一方のアングル層の強化繊維の弾性率を他方のアングル層の強化繊維の弾性率よりも小さく設定していることを特徴とする繊維強化樹脂製の管状体を提供している。
【0010】
詳細には、上記第1アングル層の配向角度|θ1|および強化繊維の弾性率X1と、第2アングル層の配向角度|θ2|および強化繊維の弾性率X2とを下記の関係に設定している。
||θ1|−45°|<||θ2|−45°|
X1<X2
3t/mm2≦X1≦40t/mm2、10t/mm2≦X2≦100t/mm2
【0011】
上記構成とすると、第1アングル層の強化繊維の管状体軸方向に対する配向角度θ1の絶対値と第2アングル層の強化繊維の配向角度θ2の絶対値を異ならるため、ねじり強度を一方のねじり方向のみ大きくすることができる。
一方、ねじり弾性率については、強化繊維の配向角度を45゜より90゜に近づけてねじり弾性率が低くなる層(第2アングル層)では、強化繊維を弾性率(X2)を高くする一方、配向角度を45゜に近づけてりねじり弾性率が高くなる層(第1アングル層)では強化繊維の弾性率(X1)を低くして、第1アングル層と第2アングル層のねじり弾性率の均等化をはかり、ねじり弾性率に方向性を持たせていない。
【0012】
また、第1アングル層の強化繊維の弾性率X1を3t/mm2≦X1≦40t/mm2とし、第2アングル層の弾性率X2を10t/mm2≦X2≦100t/mm2としているのは、上記範囲外であると、管状体の強度を適切なものとすることができないためであり、また、順ねじり弾性率と逆ねじり弾性率を同等にすることができないためである。
【0013】
上記第1アングル層の強化繊維の配向角度|θ1|と、第2アングル層の強化繊維の配向角度|θ2|の角度差が5゜〜40゜、第1アングル層の強化繊維の弾性率X1と第2アングル層の強化繊維の弾性率X2との差が5〜60t/mm2としていることが好ましい。
上記のように、角度差を5゜〜40゜の範囲で持たせると、ねじり強度に差を持たせて、必要とする方向のねじり強度を高めることができ、角度差はより好ましくは5°〜30°、さらに好ましくは10°〜25°、特に10°〜15°が好ましい。また、このような角度差を持たせた場合には、弾性率の差を上記5〜60t/mm2とすることにより、即ち、45゜より離れてジャフト軸線方向に近い角度側のアングル層の弾性率を上記範囲で他方のアングル層よりも大きくすることで、第1アングル層と第2アングル層の弾性率を均等とすることができ、弾性率の差はより好ましくは5〜40t/mm2、さらに好ましくは5〜30t/mm2、特に10〜15t/mm2が好ましい。
【0014】
第1アングル層の強化繊維の弾性率X1は、好ましくは20t/mm2≦X1≦40t/mm2、さらに好ましくは20t/mm2≦X1≦30t/mm2である。
一方、第2アングル層の強化繊維の弾性率X2は、好ましくは35t/mm2≦X2≦80t/mm2、さらに好ましくは35t/mm2≦X2≦50t/mm2である。
【0015】
また、第1アングル層の強化繊維の配向角度θ1が40°≦θ1≦50°、第2アングル層の強化繊維の配向角度θ2が、−60°≦θ2≦−50または−40゜≦θ2≦−30°とすることが好ましい。
上記のように、第1アングル層の強化繊維の配向角度θ1を40°≦θ1≦50°としているのは、上記範囲外であると、管状体のねじり剛性が低下するためである。
また、第2アングル層の強化繊維の配向角度はー70°≦θ1≦ー20°とし、上記のように−60°≦θ2≦−50°もしくは−40°≦θ2≦−30°としていることが好ましい。−50°<θ2<−40°を除外しているのは、θ2の絶対値がθ1に近くなりすぎて、順ねじり強度と逆ねじり強度に十分な差をつけにくいためである。
【0016】
上記繊維強化樹脂製の管状体は上記強化繊維の配向角度が上記管状体の軸方向に対して±10°未満であるストレート層を備えていることが好ましい。
上記構成とすると、管状体のねじり強度だけでなく、曲げ強度も向上させることができる。
【0017】
上記繊維強化樹脂の強化繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維等が好適に用いられ、マトリクス樹脂として、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が好適に用いられる。また、繊維強化樹脂の樹脂含有率は20〜50重量%、該強化繊維を一方向に引き揃えて、マトリクス樹脂で含浸させたプリプレグの厚みは、0.02〜0.15mmとしている。
【0018】
上記した構成からなる繊維強化樹脂製の管状体はねじり強度に差を持たせて、所要方向のねじり強度を高めているため、ゴルフシャフトとして好適に用いられ、かつ、ねじり弾性率には方向性を持たせていたいため、ゴルフクラブに要求されるルールに適合したものとなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
実施形態は管状体をゴルフクラブシャフトとしている。
図1及び図2は第1実施形態を示し、シャフト1は直線状に拡径したテーパ形状としており、小径端側にヘッド2が取り付けられ、大径側にグリップ3が取り付けられている。
【0020】
上記シャフト1において、順ねじりとはシャフトを反時計回転方向にねじる方向をいい、逆ねじりとは、シャフトを時計回転方向にねじる方向をいう。
本実施形態のゴルフクラブシャフトは、右利き用のゴルフクラブシャフトであり、シャフトの順ねじり方向のねじり強度を高める構成とし、強化繊維のシャフト1の軸方向に対する配向角度の正方向を時計回転方向としている。
【0021】
シャフト1は、炭素繊維を強化繊維とし、該強化繊維を一方向に引き揃え、熱硬化樹脂からなるマトリクス樹脂を含浸させた複数の繊維強化樹脂(以下、「プリプレグ」という)を用い、該プリプレグを積層して金型で加熱硬化して管状体として成形したものである。
【0022】
詳しくは、図2に示すプリプレグ11、12、13を芯金(マンドレル)に、順次内周側から巻き付けて積層している。プリプレグ11は強化繊維F11を軸線方向に対して角度θ1で傾斜させた第1アングル層とし、プリプレグ12はθ2で傾斜させた第2アングル層とし、プリプレグ13は軸線方向に対して±10゜未満の略平行としたストレート層としている。
【0023】
第1アングル層のプリプレグ11、第2アングル層のプリプレグ12はマンドレルの全長に亙って巻き付け、プリプレグ11、12共にそれぞれ4回巻きとしている。
ストレート層のプリプレグ13もマンドレルの全長に巻き付けている。
【0024】
上記アングル層を形成するプリプレグ11、12の強化繊維11、12の軸線に対する配向角度θ1、θ2は±20゜〜±90゜の範囲内で、第1アングル層を構成するプリプレグ11の強化繊維F11の配向角度は40°≦θ1≦50°の範囲とし、第2アングル層を構成するプリプレグ12の強化繊維F12は−60°≦θ2≦−50または−40゜≦θ2≦−30°の範囲とし、θ1とθ2の差を5〜25゜の範囲としている。
なお、本実施形態ではθ1を45゜、θ2を−35゜とし、その配向角度の絶対値の差を10゜としている。プリプレグ11、12はマンドレルにそれぞれ4回巻きとしている。
【0025】
また、上記アングル層を形成するプリプレグ11の強化繊維11のねじり弾性率X1は3t/mm2≦X1≦40t/mm2の範囲と、10t/mm2≦X2≦100t/mm2とし、X1とX2との差を10〜15t/mm2としている。
なお、本実施形態ではX1を30t/mm2とし、X2を40t/mm2とし、その差を10t/mm2としている。
【0026】
このように、内側に第1、第2アングル層を配置し、外側にストレート層を配置して積層した後、ポリプロピレン(PP)あるいはポリエステル等のテープでラッピングしてオーブン中で加熱加圧して樹脂を硬化させて一体的に成形し、その後、芯金を引き抜いて、シャフト1を形成している。
【0027】
本実施形態のシャフト1は、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を使用し、プリプレグ11〜13中の樹脂含有率20〜50重量%、厚み1.02〜0.15mmとし、成形するシャフト1の長さを30〜48inch、重量を30〜150g、肉厚を0.5〜2.5mmとしている。
【0028】
上記構成とすると、第2アングル層を構成するプリプレグ12の強化繊維F12のシャフト軸方向に対する配向角度θ2の絶対値を35°と第1アングル層を構成するプリプレグ11の強化繊維F11の配向角度θ1の絶対値を45°として異ならせているため、順ねじり即ち反時計回転方向のねじり強度のみ大きくすることができる。
かつ、第1アングル層では、弾性率が30t/mm2と低い強化繊維F11の配向角度θ1を45°として弾性率を高めている一方、第2アングル層では強化繊維F12の配向角度θ2を−35°として弾性率が低くなっている分、強化繊維F12の弾性率を40t/mm2と高くしているため、第1アングル層と第2アングル層の弾性率の均等化が図られ、順ねじり方向と逆ねじり方向の弾性率が同等となり、ねじり弾性率に方向性を持たせないようにすることができる。
さらに、ストレート層を設けていることにより曲げ強度も高めることができる。
【0029】
図3は第2実施形態を示し、第1実施形態と積層順序を変えており、マンドレルの内側から、ストレート層を構成するプリプレグ13、第1アングル層を構成するプリプレグ11、第2アングル層を構成するプリプレグ12を順次巻き付けている。即ち、第1実施形態ではストレート層を第1、第2アングル層の外周側に配置しているが、第2実施形態ではストレート層を第1、第2アングル層の内周側に配置している。
【0030】
図4は第3実施形態を示し、第1、第2実施形態と積層順序を変えており、マンドレルの内側から、ストレート層を構成するプリプレグ13、第1アングル層を構成するプリプレグ11、第2アングル層を構成するプリプレグ12、ストレート層を構成するプリプレグ13’を順次マンドレルの内側から順次巻き付けている。即ち、第3実施形態では内周側と外周側に配置するストレート層の間に第1、第2アングル層を配置している。
なお、第1〜第3実施形態とも、上記プリプレグ11、12、13以外にマンドレル全長に亙るプリプレグおよびヘッド取付側等に巻き付ける補強用プリプレグを積層してもよい。
【0031】
以下、本発明の繊維強化樹脂製のシャフトの実施例、比較例について詳述する。 実施例及び比較例の繊維強化樹脂製のシャフトはウッド用とし、長さ45インチ、重量52gとし、シャフトの内径、外径、肉厚は同等とした。
【0032】
【表1】
【0033】
(実施例1)
前記図2に示す第1実施形態のシャフト1と同様の構成とし、プリプレグ11〜13を用いて作製した。
第1アングル層の強化繊維の配向角度は45゜で弾性率は30t/mm2、第2アングル層の強化繊維の配向角度は−35゜で弾性率は40t/mm2とした。ストレート層の強化繊維の配向角度は0゜とし、弾性率は30t/mm2とした。
(実施例2)
第1実施例との相違点は、第2アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F12の弾性率を45t/mm2、シャフト軸方向に対する配向角度を−30°とた点である。他の構成は実施例1と同様とした。
(実施例3)
第1実施例との相違点は、第2アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F12の弾性率を45t/mm2、シャフト軸方向に対する配向角度を−60°とした点である。他の構成は実施例1と同様とした。
(実施例4)
第1実施例との相違点は、第1アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F11の弾性率を25t/mm2とし、第2アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F12のシャフト軸方向に対する配向角度を−70°とした点である。他の構成は実施例1と同様とした。
【0034】
(比較例1)
第1実施例との相違点は、第2アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F12の弾性率を30t/mm2とし、第1アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F11の弾性率と同一とした点である。他の構成は実施例1と同様とした。
(比較例2)
第1実施例ての相違点は、第1アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F11の弾性率を60t/mm2、シャフト軸方向に対する配向角度を35°とした。また、第2アングル層を構成するプリプレグの強化繊維F12の弾性率を80t/mm2、シャフト軸方向に対する配向角度を−20°とした。他の構成は実施例1と同様とした。
【0035】
上記実施例及び比較例のシャフトについて、後述する方法によりトルク値、トルク破壊値、曲げ剛性を測定した。測定結果を上記表1に示す。
【0036】
(トルク値の測定方法)
シャフトの先端及び後端を固定し、後端側(手元側)に13.9kg/cmのトルクを順ねじり方向、逆ねじり方向それぞれについて負荷し、そのときのねじり角度の値をトルク値(ねじり弾性率)とした。
【0037】
(トルク破壊値の測定方法)
シャフトの先端及び後端を固定し、片方の端にトルクを加えていき、破壊したときのトルク値をトルク破壊値(ねじり強度)とした。順ねじり方向、逆ねじり方向それぞれについて行った。
【0038】
(曲げ剛性値の測定方法)
図5に示すように、万能材料試験機60を用い、3点曲げにより、シャフト1を撓ませて測定を行った。シャフト1のヘッド側端1bから130mmの点から、100mmピッチで測定点を決めた。上記測定点が万能試験機60の圧子61の下にくるようにシャフト1を治具62A、62Bの上に配置した。治具62A,62Bの間隔は200mmとした。圧子61の先端の曲率は75R、治具62A、62Bの先端の曲率は2Rとした。圧子61をテストスピード5mm/minで降下させ、シャフト1を撓ませた。負荷荷重が20kgfに達した時点で圧子61の移動が終了し、その時のシャフト1の撓み量を測定した。曲げ剛性値の算出は下記の式より行った。
曲げ剛性値(kgf/mm2)=(負荷荷重×(支点間距離)3)/(48×撓み量)
【0039】
表1に示すように、実施例1〜4のゴルフクラブシャフトは、順ねじり方向のみのトルク破壊値(ねじり強度)が上がると共に、順ねじり方向のトルク値(弾性率)と逆ねじり方向のトルク値(弾性率)を同一にすることができた。これに対し、比較例1、2のゴルフクラブシャフトは、順ねじり方向のみのトルク破壊値(ねじり強度)を上げることはできたが、順ねじり方向のトルク値(弾性率)と逆ねじり方向のトルク値(弾性率)を同一にすることができなかった。比較例2のゴルフクラブシャフトは、順ねじり方向のトルク値(弾性率)と逆ねじり方向のトルク値(弾性率)を近付けることができたが、トルク破壊値(ねじり強度)を高めることができず、また、曲げ剛性値も大きくなった。
【0040】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、プリプレグの強化繊維の配向角度を管状体の軸方向に対して傾斜させた第1アングル層と第2アングル層とを設け、該第1アングル層と第2アングル層の配向角度を異ならせることにより、一方のねじり強度のみを高めると共に、第1アングル層と第2アングル層の強化繊維の弾性率を調節して、管状体の順ねじり方向と逆ねじり方向の弾性率を同等にすることができる。
具体的には、強化繊維の配向角度が45°もしくは−45°により近い第1アングル層に弾性率の低い強化繊維を用い、強化繊維の配向角度が45°もしくは−45°からより離れている第2アングル層に弾性率の高い強化繊維を用いることにより管状体の順ねじり方向と逆ねじり方向の弾性率を同等にしている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の繊維強化樹脂製管状体からなるゴルフクラブシャフトを用いたゴルフクラブの概略図である。
【図2】第1実施形態のゴルフクラブシャフトに用いるプリプレグの積層構成を示す図面である。
【図3】第2実施形態のゴルフクラブシャフトに用いるプリプレグの積層構成を示す図面である。
【図4】第3実施形態のゴルフクラブシャフトに用いるプリプレグの積層構成を示す図面である。
【図5】曲げ剛性値の測定方法を示す図面である。
【符号の説明】
1 シャフト
2 ヘッド
3 グリップ
11 第1アングル層のプリプレグ
12 第2アングル層のプリプレグ
13 ストレート層のプリプレグ
F11〜F14 強化繊維
Claims (6)
- 強化繊維をマトリクス樹脂に含浸させたプリプレグより成形している繊維強化樹脂製の管状体であって、
上記強化繊維の配向角度が上記管状体の軸方向に対して20°〜90°の第1アングル層と、−20°〜−90°である第2アングル層を有し、
第1アングル層の配向角度|θ1|と第2アングル層の配向角度|θ2|とを異ならせると共に、上記|θ1|と|θ2|のうち45゜に近接する側の配向角度の一方のアングル層の強化繊維の弾性率を他方のアングル層の強化繊維の弾性率よりも小さく設定していることを特徴とする繊維強化樹脂製の管状体。 - 上記第1アングル層の配向角度|θ1|および強化繊維の弾性率X1と、第2アングル層の配向角度|θ2|および強化繊維の弾性率X2とを下記の関係に設定している請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体。
||θ1|−45°|<||θ2|−45°|
X1<X2
3t/mm2≦X1≦40t/mm2、10t/mm2≦X2≦100t/mm2 - 上記第1アングル層の強化繊維の配向角度|θ1|と、第2アングル層の強化繊維の配向角度|θ2|の角度差が5゜〜40゜、第1アングル層の強化繊維の弾性率X1と第2アングル層の強化繊維の弾性率X2との差が5〜60t/mm2である請求項1または請求項2に記載の繊維強化樹脂製の管状体。
- 上記第1アングル層の強化繊維の配向角度θ1が40°≦θ1≦50°、第2アングル層の強化繊維の配向角度θ2が、−60°≦θ2≦−50または−40゜≦θ2≦−30°であり、
上記第1アングル層の強化繊維の弾性率X1と第2アングル層の強化繊維の弾性率X2が、20t/mm2≦X1≦30t/mm2、35t/mm2≦X2≦50t/mm2である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂製の管状体。 - 上記強化繊維の配向角度が上記管状体の軸方向に対して±10°未満であるストレート層を有する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に載の繊維強化樹脂製の管状体。
- ゴルフシャフトとして用いている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂製の管状体。
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JP2019042103A (ja) * | 2017-09-01 | 2019-03-22 | マミヤ・オーピー株式会社 | ゴルフクラブ用シャフト |
JP2021027855A (ja) * | 2019-08-09 | 2021-02-25 | 住友ゴム工業株式会社 | ゴルフクラブシャフト及びその製造方法 |
-
2002
- 2002-12-27 JP JP2002381751A patent/JP2004208930A/ja not_active Withdrawn
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