JP2004207124A - 電子放出素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電子放出効率が高く、リーク電流の少ない電子放出素子の製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に、間隙5を有する導電性部材4,4を配置する工程と、炭素化合物の雰囲気中にて、導電性部材4,4へ所定の電圧パルスを印加する活性化工程を有する電子放出素子の製造方法であって、前記活性化工程において、パルス間隔時間T(秒)が前記炭素化合物の分圧P(Pa)に対し、T<10-5/Pの関係を満たす電圧パルスを印加することを特徴とする。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子放出素子及びそれを電子源として用いた表示装置等の画像形成装置に関わり、特に表面伝導型電子放出素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子としては熱電子源と冷陰極電子源の2種類が知られている。冷陰極電子源には電界放出型素子(FE型素子)、金属/絶縁層/金属型素子(MIM素子)、表面伝導型電子放出素子等がある。
【0003】
表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用するものである。
【0004】
これらの表面伝導型素子放出素子の典型的な構成を図23に示す。図23において201は絶縁性基板である。204は導電性膜で、H型形状のパターンに、スパッタで形成された金属酸化物薄膜等からなり、後述のフォーミングと呼ばれる通電処理により導電性膜に間隙203が形成される。尚、図中の素子電極202の間隔Lは0.5〜1mm、Wは0.1mmで設定されている。
【0005】
従来、これらの表面伝導型電子放出素子においては、電子放出を行う前に導電性膜を予めフォーミングと呼ばれる通電処理によって間隙を形成するのが一般的であった。即ち、フォーミングとは前記導電性膜の両端に直流電圧あるいは非常にゆっくりとした昇電圧例えば1V/分程度に印加通電し、導電性膜204を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態にした間隙203を形成することである。尚、フォーミング処理をした表面伝導型電子放出素子は、導電性膜204に電圧を印加し、素子に電流を流すことにより、間隙203より電子を放出せしめるものである。
【0006】
一方、たとえば特許文献1乃至2等に開示されているように、フォーミングを終えた素子に対して活性化処理と呼ばれる処理を施す場合がある。
【0007】
活性化工程は、炭素化合物を含有する雰囲気下で、フォーミング処理同様、素子に電圧を印加することで行うことができる。この処理により、雰囲気中に存在する炭素化合物からカーボン膜が間隙内および間隙近傍に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化し、より良好な電子放出特性を得ることができる。ここで素子電流Ifとは、表面伝導型電子放出素子の一対の対向する素子電極202の間に電圧を印加したとき、電極間に流れる電流であり、放出電流Ieとは、真空中に放出される電流である。
【0008】
以上のような電子放出素子を複数個形成した電子源基板を用い、蛍光体等からなる画像形成部材と組み合わせることで画像形成装置を構成できる。
【0009】
【特許文献1】
特開平07−235255号公報
【特許文献2】
特開平08−031310号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
近年の情報の高度化に伴うマルチメディア化の急激な進展により、ディスプレイ等の画像形成装置に対して、更に高い性能が求められてきている。すなわち、表示装置の大画面化、省電力化、高精細化、高画質化、省スペース化等である。
【0011】
前述の電子放出素子においては、電子放出素子を適用した画像形成装置がこれらの高い性能を達成するために、電子放出特性のより一層の向上が望まれている。例えば、電子放出効率の向上およびリーク電流の低減は画像形成装置の省電力化を実現する上で重要な課題である。
【0012】
ここで表面伝導型電子放出素子における電子放出効率とは、素子電流Ifに対する放出電流Ieの電流比をさす。つまり、素子電流Ifはできるだけ小さく、放出電流Ieはできるだけ大きいことが望ましい。
【0013】
またリーク電流とは、表面伝導型電子放出素子の一対の対向する素子電極間に前述したVth以下の電圧を印加したとき、電極間に流れる電流をさす。つまり、リーク電流はできるだけ小さいことが望ましい。
【0014】
高効率で、リーク電流の少ない電子放出特性を提供することができれば、画像形成装置においては、低消費電力の明るい高品位な画像形成装置、例えばフラットテレビが実現できる。
【0015】
本発明は、以上の点に鑑み成された発明であって、主として、電子放出効率が高く、リーク電流の少ない電子放出素子の製造方法、及びそれを用いた電子源と画像形成装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子放出素子の製造方法は、
基板上に、間隙を有する導電性部材を配置する工程と、炭素化合物の雰囲気中にて、前記導電性部材へ所定の電圧パルスを印加する活性化工程を有する電子放出素子の製造方法であって、
前記活性化工程において、パルス間隔時間T(秒)が前記炭素化合物の分圧P(Pa)に対し、T<10-5/Pの関係を満たす電圧パルスを印加することを特徴とするものである。
また、前記間隙を有する導電性部材は、一対の電極間を接続し、その一部に前記間隙を有する導電性膜であることを特徴とするものである。
【0017】
また本発明の画像形成装置の製造方法は、複数の電子放出素子を有する電子源と、画像形成部材とを有する画像形成装置の製造方法であって、前記電子放出素子が本発明の電子放出素子の製造方法により製造されることを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、前述した活性化処理により、電子放出素子の電子放出効率及び電子放出量の向上を図ることができると共に、その活性化処理条件、電圧パルス印加条件を制御することにより、一層のリーク電流の低減を図ることができるとの知見に基づく発明である。
【0019】
図16に、活性化工程で用いられる電圧印加の一例を示した。印加する最大電圧値は、10〜20Vの範囲で適宜選択される。図16中、T1は電圧波形の正と負のパルス幅、T2はパルス間隔時間であり、電圧値は正負の絶対値が等しく設定されている。
【0020】
図2に、活性化処理に際し、上記パルス間隔時間T2を種々変化させた場合の電子放出効率およびリーク電流の実験結果を示す。尚、この際の印加電圧パルスは、波高値18Vの矩形波(ON電圧が18V、OFF電圧が0V)を用い、そのパルス幅T1は1m秒である。また、炭素化合物はp−トリニトリルを用い、該炭素化合物の分圧は、1×10-4Paを維持した。
【0021】
図2から分かるように、上記パルス間隔時間T2が短い方がリーク電流が少なく、ある時間以下(図2ではほぼ数百m秒以下)でリーク電流が最小の一定値が得られる。また、効率に関しては、ほぼ一定値である。
【0022】
以上の通り、本発明者は、活性化処理における、パルス間隔時間T(秒)の変化に伴う素子特性の変化に関しての種々の実験データを基に、パルス間隔時間T(秒)は、炭素化合物の分圧P(Pa)の逆数のある倍数よりも小さい時に、活性化処理により、電子放出素子のリーク電流の低減を図ることができることを見出し、炭素化合物を用いた活性化処理において、T<10-5/Pの条件を満たす電圧パルスを印加することで、電子放出素子のリーク電流の低減を図ることができるとの知見を得た。
【0023】
図1は、本発明の活性化処理における、パルス間隔時間T(秒)と炭素化合物の分圧P(Pa)の関係をグラフ化したものであり、斜線部分がT<10-5/Pの関係を満足する領域である。図1からも分かるように、活性化処理の際の炭素化合物の分圧Pが大きければ、リーク電流の小さい電子源特性を得るためにはパルス間隔時間Tを小さくする必要がある。
【0024】
以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0025】
本発明に係る電子放出素子は、基板上に、間隙を有する導電性部材に電圧を印加することにより電子を放出する電子放出素子であり、例えば、先述した表面伝導型電子放出素子、FEと称される電界放出型電子放出素子を包含するものである。ここで、FEの場合、上記間隙を有する導電性部材はエミッタとゲート電極に相当し、炭素あるいは炭素化合物はエミッタに堆積される。また、表面伝導型電子放出素子の場合、上記間隙を有する導電性部材は、以下で詳述される一対の導電性膜に相当し、炭素あるいは炭素化合物は、該一対の導電性膜の一方あるいは両方に堆積される。以下、電子放出素子として表面伝導型電子放出素子を例に挙げ、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0026】
図3は、表面伝導型電子放出素子の構成を示す図であり、図3(a)および図3(b)はそれぞれ平面図と断面図である。図3において、1は基板、2と3は素子電極、4は、第1の間隙5を隔て、素子電極2,3の各々に接続されている一対の導電性膜、4aは、導電性膜4上及び第1の間隙内に配置され、第1の間隙5よりも狭い第2の間隙5aを形成している、炭素あるいは炭素化合物を主成分とするカーボン膜である。
【0027】
基板1としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法等によりSiO2を積層したガラス基板及びアルミナ等のセラミックス及びSi基板等を用いることができる。
【0028】
対向する素子電極2,3の材料としては、一般的な導体材料を用いることができる。素子電極間隔L、素子電極長さW、導電性膜4の形状等は、応用される形態等を考慮して、設計される。尚、図3に示した構成だけでなく、基板1上に、導電性膜4、対向する素子電極2,3の順に積層した構成とすることもできる。
【0029】
導電性膜4には、良好な電子放出特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いるのが好ましい。ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子が集合した膜であり、その微細構造は、微粒子が個々に分散配置した状態あるいは微粒子が互いに隣接、あるいは重なり合った状態(いくつかの微粒子が集合し、全体として島状構造を形成している場合も含む)をとっている。微粒子の粒径は、0.1nmの数倍から数百nmの範囲、好ましくは、1nmから20nmの範囲である。
【0030】
導電性膜4の膜厚は、素子電極2,3へのステップカバレージ、素子電極2,3間の抵抗値及び後述するフォーミング条件等を考慮して適宜設定されるが、通常は、0.1nmの数倍から数百nmの範囲とするのが好ましく、より好ましくは1nmより50nmの範囲とするのが良い。その抵抗値は、Rsが102から107Ω/□の値である。なおRsは、幅がwで長さがlの薄膜の抵抗Rを、R=Rs(l/w)とおいたときに現れる量である。
【0031】
導電性膜4を構成する材料は、Pd,Pt,Ru,Ag,Au,Ti,In,Cu,Cr,Fe,Zn,Sn,Ta,W等の金属、PdO,SnO2,In23,PbO,Sb23等の酸化物の中から適宜選択される。
【0032】
第1の間隙5は、導電性膜4の一部に形成された亀裂などにより構成され、導電性膜4の膜厚、膜質、材料及び後述する通電フォーミング等の手法等に依存したものとなる。第1の間隙5内及びその近傍の導電性膜4上には、炭素あるいは炭素化合物から形成されたカーボン膜4aを有する。
【0033】
以下、図3乃至図6を参照しながら電子放出素子の製造方法の一例について説明する。図4において、図3に示した部位と同じ部位には同一の符号を付している。
【0034】
1)基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により、素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に素子電極2、3を形成する(図4(a))。
【0035】
2)素子電極2、3を設けた基板1に、有機金属溶液を塗布して、有機金属薄膜を形成する。有機金属溶液には、前述の導電性膜4の材料の金属を主元素とする有機金属化合物の溶液を用いることができる。有機金属薄膜を加熱焼成処理し、リフトオフ、エッチング等によりパターニングし、導電性膜4を形成する(図4(b))。ここでは有機金属溶液の塗布法を挙げて説明したが、導電性膜4の形成法はこれに限られるものでなく、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆積法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等を用いることもできる。
【0036】
3)つづいて、フォーミング処理を施す。フォーミング処理について、ここでは通電処理を例に挙げて説明するが、フォーミング処理はこれに限られるものではなく、膜に亀裂等の間隙を生じさせて高抵抗状態を形成する処理を包含するものである。素子電極2、3間に、不図示の電源を用いて、通電を行うと、導電性膜4に亀裂が形成され第1の間隙5が形成される(図4(c))。尚、該第1の間隙5が形成されることにより導電性膜4に電子放出部が形成され、素子電極2,3間に電圧を印加するとかかる第1の間隙5の近傍から電子が放出される。
【0037】
通電フォーミングの電圧波形の例を図5に示す。電圧波形は、パルス波形が好ましい。これにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加する図5(a)に示した手法と、パルス波高値を増加させながら電圧パルスを印加する図5(b)に示した手法がある。
【0038】
4)フォーミングを終えた素子には活性化工程と呼ばれる処理を施す。活性化工程とは、この工程により、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化する工程である。活性化工程は、例えば、有機物質ガスなどの炭素化合物を含有する雰囲気下で、通電フォーミングと同様に、パルスの印加を繰り返すことで行うことができる。
【0039】
この処理により、雰囲気中に存在する炭素化合物から、炭素あるいは炭素化合物のカーボン膜4aが、導電性膜4上及び第1の間隙5内に堆積し、第1の間隙5よりも狭い第2の間隙5aを第1の間隙5内に、かかる第1の間隙5に沿って形成する(図4(d))。
【0040】
ここで、炭素あるいは炭素化合物のカーボン膜とは、例えばグラファイト(いわいるHOPG,PG,GCを包含する。HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す。)であり、その膜厚は、50nm以下の範囲とするのが好ましく、30nm以下の範囲とすることがより好ましい。
【0041】
本発明で用いることができる、有機物質ガスなどの炭素化合物としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等を挙げることが出来、具体的には、メタン、エタン、プロパンなどCn2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレン、アセチレンなどCn2nやCn2n-2等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が使用できる。
【0042】
活性化工程における電圧印加の手法は、電圧値の時間変化、電圧印加の方向、波形等の条件が考えられる。電圧値の時間変化は、電圧値を時間とともに上昇させていく手法や、固定電圧で行う手法で行うことができる。また、図6で示すように、電圧印加の方向は、素子駆動時の電圧印加方向と同様の方向(順方向)のみに印加(図6(a))しても良いし、順方向、逆方向を交互に変化させて印加(図6(b))しても良い。交互に電圧を印加する場合、第1の間隙5に対して対称にカーボン膜4aが形成されるものと思われるので、好ましい。また、波形については、図6では、矩形波の例を用いたが、正弦波、三角波、鋸波、等任意の波形を用いることができる。
【0043】
図6中、T1は電圧波形のパルス幅、T2はパルス間隔時間である。パルス間隔時間T2(秒)が前記有機物質ガスなどの炭素化合物の分圧P(Pa)に対して、T2<10-5/Pの関係を満たすことで、電子放出素子の電子放出特性の向上(特に、前述したリーク電流の低減)を図ることができる。
【0044】
5)このような工程を経て得られた電子放出素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工程は、真空容器内の有機物質ガスなどの炭素化合物を排気する工程である。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることが出来る。真空容器内の有機物質ガスなどの炭素化合物の分圧は、上記の炭素あるいは炭素化合物が新たにカーボン膜に堆積しない分圧で1×10-6Pa以下が好ましく、さらには1×10-8Pa以下が特に好ましい。
【0045】
さらに、真空容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着した有機物質ガスなどの炭素化合物分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件は、80〜250℃、好ましくは150℃以上で、できるだけ長時間処理するのが望ましいが、特にこの条件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子放出素子の構成、などの諸条件により適宜選ばれる条件により行う。
【0046】
真空容器内の圧力は極力低くすることが必要で、1×10-5Pa以下が好ましく、さらに1.3×10-7Pa以下が特に好ましい。
【0047】
安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質ガスなどの炭素化合物が十分除去されていれば、圧力自体が多少上昇しても十分安定な特性を維持することが出来る。このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物がカーボン膜に堆積するのを抑制でき、また真空容器や基板などに吸着したH2O、O2なども除去でき、結果として素子電流Ifおよび放出電流Ieが安定する。
【0048】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
【0049】
[実施例1]
電子源基板として図11に示す、マトリクス状に電子放出素子を有する基板を作成した。図11において、21は電子源の基板、22、23は素子電極、24はY方向配線(下配線)、25は層間絶縁層、26はX方向配線(上配線)、27は導電性膜(素子膜)である。
【0050】
以下、この電子源基板の作成方法を、図7乃至図11等を用いて説明する。
【0051】
(工程−a)
基板21として、アルカリ成分が少ないPD−200(旭硝子(株)社製)の2.8mm厚ガラスを用い、更にこの上にナトリウムブロック層としてSiO2膜100nmを塗付焼成したものを用いた。素子電極22,23は、この基板21上に、スパッタ法によってまず下引き層としてチタニウム(Ti)5nm、その上に白金(Pt)40nmを成膜した後、ホトレジストを塗布し、露光、現像、エッチングという一連のフォトリソグラフィー法によってパターニングして形成した(図7参照)。本実施例では素子電極の間隔L=10μm、対向する長さW=100μmとした。
【0052】
(工程−b)
共通配線としてのY方向配線(下配線)24は、素子電極の一方(素子電極23)に接して、かつそれらを連結するようにライン状のパターンで形成した。材料には銀(Ag)フォトぺーストインキを用い、スクリーン印刷した後、乾燥させてから、所定のパターンに露光し現像した。この後480℃前後の温度で焼成して配線を形成した(図8参照)。このY方向配線(下配線)24の厚さは約10μm、線幅は約50μmである。なお終端部は図示していないが、配線取り出し電極として使うために、線幅をより大きくした。
【0053】
(工程−c)
上下配線を絶縁するために、図9に示すように、層間絶縁層25を配置する。
この層間絶縁層25は、後述のX方向配線(上配線)下に、先に形成したY方向配線(下配線)との交差部を覆うように、かつX方向配線(上配線)と素子電極の他方(素子電極22)との電気的接続が可能なように、接続部にコンタクトホール28を開けて形成した。具体的には、PbOを主成分とする感光性のガラスペーストをスクリーン印刷した後、露光−現像した。これを4回繰り返し、最後に480℃前後の温度で焼成した。この層間絶縁層25の厚みは、全体で約30μmであり、幅は約150μmである。
【0054】
(工程−d)
先に形成した層間絶縁層25の上に、Agぺーストインキをスクリーン印刷した後乾燥させ、この上に再度同様なことを行い2度塗りしてから、480℃前後の温度で焼成して、X方向配線(上配線)26を形成した(図10参照)。X方向配線(上配線)26は、層間絶縁層25を挟んでY方向配線(下配線)24と交差しており、層間絶縁層25のコンタクトホール部分で素子電極22と接続されている。このX方向配線26の厚さは、約15μmである。図示していないが、外部駆動回路との引出し配線もこれと同様の方法で形成した。
【0055】
このようにしてXYマトリクス配線を有する基板が形成された。
【0056】
(工程−e)
上記基板を十分に洗浄した後、撥水剤を含む溶液で表面を処理し、表面が疎水性になるようにした。これはこの後塗布する素子膜形成用の水溶液が、素子電極上に適度な広がりをもって配置されるようにすることが目的である。用いた撥水剤は、シランカップリング剤をスプレー法にて基板上に散布し、120℃にて温風乾燥した。
【0057】
その後、素子電極間にインクジェット塗布方法により、素子膜を形成した。本工程の模式図を図12に示す。実際の工程では、基板上における個々の素子電極の平面的ばらつきを補償するために、基板上の数箇所に於いてパターンの配置ずれを観測し、観測点間のポイントのずれ量は直線近似して位置補完し、塗付することによって、全画素の位置ずれをなくして、対応した位置に的確に塗付するようにした。
【0058】
本実施例では、素子膜としてパラジウム膜を得る目的で、先ず水85:イソプロピルアルコール(IPA)15からなる水溶液に、パラジウム−プロリン錯体0.15重量%を溶解し、有機パラジウム含有溶液を得た。この他若干の添加剤を加えた。
【0059】
この溶液の液滴を、液滴付与手段29として、ピエゾ素子を用いたインクジェット噴射装置を用い、ドット径が60μmとなるように調整して電極間に付与した(図12(a))。
【0060】
その後この基板を空気中にて、350℃で10分間の加熱焼成処理をして酸化パラジウム(PdO)とした(図11、図12(b))。ドットの直径は約60μm、厚みは最大で10nmの素子膜27が得られた。
【0061】
本実施例では、(工程−a)から(工程−e)において、X方向の素子数は50個、Y方向の素子数は20個で形成した。
【0062】
ここで、以下の工程で用いた真空排気装置について説明する。
図13は真空排気装置の概略図である。真空排気装置51は、真空ポンプ52にて排気される。また、後述する水素および有機化合物を導入するためのスローリークバルブ54が設置されている。真空排気装置内には、所望の温度で加熱可能なステージ55が設置されている。また、真空排気装置も所望の温度で加熱が可能である。
【0063】
ステージ55上には前述した電子源の基板21が、アノード電極56と対向して配置される。アノード電極と基板間の距離Hは2mmに設定した。アノード電極56は、配線により真空排気装置の外部(大気側)で電流計57、高圧電源58と接続されている。高圧電源を用いてアノード電極に高電圧を印加し、電子源基板の電子放出部より放出される放出電流Ieを捕捉できる。この放出電流Ieは電流計57により測定することが可能である。
【0064】
基板21のX方向配線およびY方向配線も各々不図示の配線により真空排気装置の外部に接続されている。
【0065】
図14は基板の配線を説明するための模式図である。X方向配線26はスイッチ41により、任意のラインを選択可能であり、それぞれ電源43と接続できる。またY方向配線24は共通に配線され、電流計42に接続した。
【0066】
(工程−f)
フォーミングと呼ばれる本工程に於いて、上記素子膜(酸化パラジウム(PdO)膜)を通電処理して間隙を生じさせ、電子放出部を形成する。
【0067】
具体的には、上記基板を真空排気装置51に設置し、該装置内を真空ポンプにて排気して1Paの真空度にした後、電源43を用いてXY両方向配線間に電圧を印加し、素子電極間に通電した。各々のX方向配線に電圧を印加した際にY方向配線に流れる電流値を電流計42で測定した後、スローリークバルブ54を開けて水素供給源53aより若干の水素ガスを導入した。水素によって還元が促進され酸化パラジウム(PdO)膜がパラジウム(Pd)膜に変化する。この時、素子膜が局所的に破壊、変形もしくは変質され、間隙が形成される。
【0068】
フォーミング処理に用いた電圧波形について簡単に紹介する。図15にこの説明図を示す。印加した電圧はパルス波形を用い、パルス波高値が定電圧のパルスを印加した。T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、T1を1m秒、T2を100m秒とし、三角波の波高値は10Vとした。
【0069】
フォーミング処理中の電流値がフォーミング初期の1000分の1を示した時点で、フォーミングを終了した。
【0070】
(工程−g)
上記フォーミング処理に続いて同一装置内において本発明による活性化処理を行った。この処理は炭素化合物が存在する適当な真空度のもとで、外部からXY両方向配線を通じてパルス電圧を素子電極間に繰り返し印加することによって、前記間隙近傍にカーボン膜を堆積させる工程である。
【0071】
真空排気装置51内を真空ポンプ52にて排気して1×10-7Paの真空度にした後、本工程では炭素化合物としてp−トルニトリルを用い、スローリークバルブ54を開けて炭素化合物供給源53bを通して真空空間内に導入し、p−トルニトリルの分圧を1×10-4Paに維持した。
【0072】
そして電源43を用いてX方向配線に電圧の印加を行った。図16に、活性化工程でXY両方向配線間に印加した電圧波形を示した。図16中、T1は、電圧波形の正と負のパルス幅、T2はパルス間隔である。矩形波の電圧は、その正負の絶対値を等しく18Vに設定し、T1は1m秒とした。
【0073】
比較のためX方向配線20本のうち4ラインづつ、5ブロックに分けて活性化条件を変更した。本実施例においては、各々のブロックで、パルス間隔時間T2を2m秒、10m秒、100m秒、200m秒、1秒の5条件で行った。
【0074】
尚、本活性化処理は、素子電流Ifと放出電流Ieを検出しながら行った。すなわち、真空排気装置において、アノード電極56の電位を1kVとし、上記X方向配線に上記パルス電圧を印加し、その時に流れる素子電流Ifおよび、上記アノード電極に捕捉される放出電流Ieを測定しながら行った。
【0075】
図17に活性処理時の素子電流Ifと放出電流Ieの時間変化を示す。図17から分かるように、活性化初期において、素子電流If及びIeが急激に増加し、その後もその増加傾向は鈍りながらも増加するのが観測された。いずれのラインも1素子あたりの放出電流Ieが2μAに達した時点で通電を停止した。全ラインの活性化処理を終了した後、スローリークバルブを閉め、活性化工程を終了した。
【0076】
活性化処理終了時の効率(Ie/If×100)を表1に示す。表1に示したように、パルス間隔時間を変化させたいずれの条件においても、ほぼ同等の効率が得られた。
【0077】
【表1】
Figure 2004207124
【0078】
以上の工程で、電子放出素子を有する基板を作成する事ができた。
上述のような素子構成と製造方法によって作成された本実施例における電子放出素子の基本特性について説明する。
【0079】
放出電流Ieおよび素子電流Ifと素子電圧Vfの関係を図18に示す。なお、放出電流Ieと素子電流Ifは大きさが著しく異なるが、図18ではIf、Ieの変化の定性的な比較検討のために、リニアスケールで縦軸を任意単位で表記した。
【0080】
本電子放出素子は放出電流Ieに対する三つの特徴を有する。
まず第一に、図18からも明らかなように、本素子はある電圧(しきい値電圧と呼ぶ、図18中のVth)以上の素子電圧を印加すると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧Vth以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。すなわち、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vthを持った非線形素子としての特性を示しているのが判る。
第二に、放出電流Ieが素子電圧Vfに依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制御できる。
第三に、アノード電極に捕捉される放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。すなわち、アノード電極に捕捉される電荷量は、素子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0081】
本実施例で作成した、それぞれの条件で活性化処理された電子放出素子の、しきい電圧Vth近傍の、素子電流Ifと素子電圧Vfの測定結果を図19に示す。ここで、素子電流Ifはログスケールで表記した。前述したように、しきい値電圧Vth以下で放出電流Ieはほとんど検出されないが、素子電流Ifは微少であるが電流(リーク電流)が観測された。この電流は、微少であるが本電子放出素子を多数配置した電子源基板においてはより少ない方が好ましい。特に活性化工程における、パルス間隔時間T2(秒)が200m秒以上の時、このリーク電流が増大している。
【0082】
以上のことより、本実施例の活性化工程におけるp−トルニトリルの分圧P(1×10-4Pa)においては、パルス間隔時間T2(秒)が100m秒以下であればリーク電流を低く抑えることができる。すなわち、本発明による活性化条件、T2<10-5/Pを採ることによって、リーク電流の少ない電子放出素子を作成することが出来たことがわかる。
【0083】
[実施例2]
本実施例においても、実施例1と同様に電子源基板として図11に示す、マトリクス状に電子放出素子を有する基板を作成した。実施例1における(工程−a)から(工程−f)と同様の方法で、X方向の素子数は50個、Y方向の素子数は20個の電子源基板を作成した。
【0084】
(工程−g)
フォーミング処理した上記素子に本発明による活性化処理を行った。本実施例においては、活性化処理中の炭素化合物の分圧条件を種々変更して活性化処理を行った。
【0085】
すなわち、真空排気装置内を真空ポンプにて排気して1×10-7Paの真空度にした後、本工程では炭素化合物としてp−トルニトリルを用い、スローリークバルブを通して真空空間内に導入し、p−トルニトリルの分圧を所望の分圧に維持した。
【0086】
本活性化工程で用いた電圧波形は矩形波で電圧値は正負の絶対値を等しく18Vに設定し、パルス幅T1は1m秒、パルス間隔T2は50m秒とした。
【0087】
比較のためX方向配線20本のうち4ラインづつ、5ブロックに分けて活性化条件を変更した。本実施例においては、各々のブロックで、p−トルニトリルの分圧を1×10-6Pa、1×10-5Pa、1×10-4Pa、1×10-3Pa、1×10-2Paの5条件で行った。
【0088】
活性化の終了は、いずれのラインも1素子あたりの放出電流Ieが2μAに達した時点で通電を停止した。全ラインの活性化処理を終了した後、スローリークバルブを閉め、活性化工程を終了した。
【0089】
活性化処理終了時の効率(Ie/If×100)を表2に示す。表2に示したように、炭素化合物の分圧を変化させたいずれの条件においても、ほぼ同等の効率が得られた。
【0090】
また本実施例で作成した、それぞれの条件で活性化処理された電子放出素子の、素子電圧Vfが5Vにおける1素子あたりの素子電流Ifの測定結果を表2中(If_leakと記載)に示した。ここで、素子電圧Vfが5Vとは、しきい値電圧Vth以下であった。特に活性化工程における、p−トルニトリルの分圧が1×10-3Pa以上の時、このリーク電流が増大している。
【0091】
【表2】
Figure 2004207124
【0092】
以上のことより、本実施例の活性化工程におけるパルス間隔時間T2(秒)が50m秒においては、p−トルニトリルの分圧Pが1×10-4Pa以下であればリーク電流を低く抑えることができる。すなわち、本発明による活性化条件、T2<10-5/Pを採ることによって、リーク電流の少ない電子放出素子を作成することが出来たことがわかる。
【0093】
[実施例3]
本実施例においても、実施例1と同様に電子源基板として図11に示す、マトリクス状に電子放出素子を有する基板を作成した。実施例1における(工程−a)から(工程−f)と同様の方法で、X方向の素子数は50個、Y方向の素子数は20個の電子源基板を作成した。
【0094】
(工程−g)
フォーミング処理した上記素子に本発明による活性化処理を行った。本実施例においては、活性化処理中のパルス間隔と炭素化合物の分圧条件を種々変更して活性化処理を行った。
【0095】
すなわち、真空排気装置内を真空ポンプにて排気して1×10-7Paの真空度にした後、本工程では炭素化合物としてアセトンを用い、スローリークバルブを通して真空空間内に導入し、アセトンの分圧を所望の分圧に維持した。
【0096】
本活性化工程で用いた電圧波形は矩形波で電圧値は正負の絶対値を等しく16Vに設定し、パルス幅T1は100μ秒とした。
【0097】
比較のためX方向配線20本のうち4ラインづつ、5ブロックに分けて活性化条件を変更した。本実施例においては、各々のブロックで、アセトンの分圧Pとパルス間隔T2を表3に示す5条件で行った。
【0098】
活性化の終了は、いずれのラインも1素子あたりの放出電流Ieが2μAに達した時点で通電を停止した。全ラインの活性化処理を終了した後、スローリークバルブを閉め、活性化工程を終了した。
【0099】
活性化処理終了時の効率(Ie/If×100)を表3に示す。表3に示したように、いずれの条件においても、ほぼ同等の効率が得られた。
【0100】
また本実施例で作成した、それぞれの条件で活性化処理された電子放出素子の、素子電圧Vfが5Vにおける1素子あたりの素子電流Ifの測定結果を表3中(If_leakと記載)に示した。ここで、素子電圧Vfが5Vとは、しきい値電圧Vth以下であった。特に活性化工程における、アセトンの分圧P×パルス間隔T2が1×10-5[Pa秒]以上の条件で、このリーク電流が増大している。
【0101】
【表3】
Figure 2004207124
【0102】
以上のことより、本発明による活性化条件、T2<10-5/Pを採ることによって、リーク電流の少ない電子放出素子を作成することが出来たことがわかる。
【0103】
[実施例4]
本実施例においても、実施例1と同様に電子源基板として図11に示す、マトリクス状に電子放出素子を有する基板を作成した。実施例1における(工程−a)から(工程−e)と同様の方法で、X方向の素子数は4000個、Y方向の素子数は800個の電子源基板を作成した。
【0104】
(工程−f)
作成した電子源基板が大きいため、上記基板の周囲の取り出し電極部を残して、基板全体を覆うようにフード状の蓋をかぶせて基板との間で内部に真空空間を作り、外部電源より電極端子部からXY配線間に電圧を印加し、素子電極間に通電する方法でフォーミング工程を行った。その他は、実施例1と同様の方法でフォーミング処理を行った。
【0105】
(工程−g)
フォーミング処理した素子に本発明による活性化処理を行った。本工程も前記のフォーミングと同様にフード状の蓋をかぶせて基板との間で内部に真空空間を作り、外部からXY配線を通じてパルス電圧を素子電極間に繰り返し印加することによって行った。
【0106】
本工程では炭素化合物としてp−トルニトリルを用い、スローリークバルブを通して真空空間内に導入し、p−トルニトリルの分圧を1×10-4Paに維持した。
【0107】
活性化工程で用いた電圧波形は実施例1と同様の矩形波を用いた。パルス幅T1を1m秒、パルス間隔T2を80m秒とし、電圧値は正負の絶対値を等しく18Vに設定した。
【0108】
1素子あたりの放出電流Ieが2μAに達した時点で通電を停止し、スローリークバルブを閉め、活性化処理を終了した。
【0109】
以上の工程で、単純マトリクス配置の電子源基板を作成する事ができた。
【0110】
(工程−h)
本実施例では、さらに本電子源基板を用いて、図20に示すような画像形成装置(表示パネル)を製造した。尚、図20では、パネル内部を表現するために部分的に部材を切り欠いて示している。
【0111】
図20において、81は電子放出素子が多数配置された電子源基板を指し、リアプレートと呼ぶ。87は表面伝導型電子放出素子に相当する。88、89は、表面伝導型電子放出素子の一対の素子電極と接続されたX方向配線及びY方向配線である。82はガラス基板83の内面に蛍光膜84とメタルバック85等が形成されたフェースプレートである。86は支持枠であり、リアプレート81、支持枠86及びフェースプレート82をフリットガラスによって接着し、400〜500℃で、10分以上焼成することで、封着して、外囲器90を構成する。この一連の工程は全て真空チャンバー中で行なった。
【0112】
なお、フェースプレート82、リアプレート81間に、スペーサーと呼ばれる不図示の支持体を設置することにより、大面積パネルの場合にも大気圧に対して十分な強度を持つ外囲器90を構成することができる。
【0113】
図21はフェースプレート上に設ける蛍光膜の説明図である。蛍光膜84は、ブラックマトリクスと呼ばれる黒色導電材91と蛍光体92とで構成される。ブラックマトリクスが設けられる目的は、カラー表示の場合必要となる三原色蛍光体の、各蛍光体92間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜84における外光反射によるコントラストの低下を抑制することである。
【0114】
また、蛍光膜84の内面側にはメタルバック85を設けた。メタルバックの目的は、蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレート82側へ鏡面反射することにより輝度を向上すること、電子ビーム加速電圧を印加するためのアノード電極として作用すること等である。メタルバックは、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通常フィルミングと呼ばれる)を行い、その後A1を真空蒸着等で堆積することで作製した。
【0115】
前述の封着を行う際、各色蛍光体と電子放出素子とを対応させなくてはいけないため、上下基板の突き当て法などで十分な位置合わせを行った。
【0116】
封着時の真空度は10-7Pa程度の真空度で行った。また外囲器90の封止後の真空度を維持するために、ゲッター処理を行った。これは、外囲器90の封止後に、抵抗加熱あるいは高周波加熱等の加熱法により、外囲器内の所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加熱し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターはBaが主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、10-9Paの真空度を維持するものである。
【0117】
前述した本発明にかかわる表面伝導型電子放出素子の基本的特性によれば、電子放出部からの放出電子は、しきい値電圧Vth以上では対向する素子電極間に印加するパルス状電圧の波高値と巾によって制御され、その中間値によっても電流量が制御され、もって中間調表示が可能になる。
【0118】
また多数の電子放出素子を配置した場合においては、各ラインの走査線信号によって選択ラインを決め、各情報信号ラインを通じて個々の素子に上記パルス状電圧を適宜印加すれば、任意の素子に適宜電圧を印加する事が可能となり、各素子をONすることができる。
【0119】
また中間調を有する入力信号に応じて電子放出素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調方式が挙げられる。
【0120】
本実施例で用いた、具体的な駆動装置について図22を用いて概要を述べる。
本実施例では、NTSC方式のテレビ信号に基づいたテレビジョン表示用の画像表示装置を構成した。図22において、101は図20に示したような画像表示パネル、102は走査回路、103は制御回路、104はシフトレジスタ、105はラインメモリ、106は同期信号分離回路、107は情報信号発生器、Vaは直流電圧源である。
【0121】
電子放出素子を用いた画像表示パネル101のX方向配線には、走査線信号を印加するXドライバーの走査回路102が、Y方向配線には情報信号が印加されるYドライバーの情報信号発生器107が接続されている。
【0122】
本実施例においては、パルス幅変調方式を採用し、情報信号発生器107としては、一定の波高値の電圧パルスを発生するが入力されるデータに応じて、適宜電圧パルスの幅を変調するような回路を用いた。
【0123】
制御回路103は、同期信号分離回路106より送られる同期信号Tsyncに基づいて、各部に対してTscan,Tsft及びTmryの各制御信号を発生する。
【0124】
同期信号分離回路106は、外部から入力されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分と輝度信号成分とを分離するための回路である。この輝度信号成分は、同期信号に同期してシフトレジスタ104に入力される。
【0125】
シフトレジスタ104は、時系列的にシリアルに入力される前記輝度信号を、画像の1ライン毎にシリアル/パラレル変換して、制御回路103より送られるシフトクロックTsftに基づいて動作する。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分のデータ(電子放出素子n素子分の駆動データに相当)は、n個の並列信号として前記シフトレジスタ104より出力される。
【0126】
ラインメモリ105は、画像1ライン分のデータを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であり、記憶された内容は、情報信号発生器107に入力される。
【0127】
情報信号発生器107は、各々の輝度信号に応じて、電子放出素子の各々を適切に駆動する為の信号源であり、その出力信号はY方向配線を通じて表示パネル101内に入り、走査回路102によって選択中のX方向配線との交点にある各々の電子放出素子に印加される。
【0128】
X方向配線を順次走査する事によって、パネル全面の電子放出素子を駆動することが可能になる。
【0129】
以上のように本発明による画像表示装置において、各電子放出素子にパネル内のX方向配線88及びY方向配線89を通じ、電圧を印加することにより電子放出させ、高圧電源Vaに接続された高圧端子Hvを通じ、アノード電極であるメタルバック85に高圧を印加し、発生した電子ビームを加速し、蛍光膜84に衝突させることによって、画像を表示することができた。
【0130】
[比較例1]
本比較例では、実施例4の工程−gにおいて、パルス間隔T2を800m秒とした以外は、実施例4と同様の方法によって、画像形成装置を作成した。
【0131】
本発明による実施例4と、比較例1とによって作成された画像形成装置の違いについて述べる。
【0132】
実施例4においては、工程−gにおいて炭素化合物の分圧P(Pa)とパルス間隔T2(秒)が本発明による、T2<10-5/Pの関係を満たしている。一方、比較例1においては、上記関係を逸脱した。この結果、しきい値電圧Vth以下における素子電流Ifが比較例1において実施例4よりも増大した。すなわち、上記画像形成装置において、情報信号発生器107のみに信号を印加した時(走査ラインには電圧を印加していない状態)にY方向配線に流れる電流(情報信号発生器107に要求される電流容量)が、実施例4では0.2mA程度であったが、比較例1では1.2mAに達した。その結果、比較例1においては、情報信号発生器の電流容量を増加する必要が生じ、結果画像形成装置の消費電力を増大させ、その製造コストも増加した。
【0133】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法に従い電子放出素子を作製するならば、リーク電流の少ない電子源の作成が可能となり、さらに消費電力の少ない画像形成装置を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電子放出素子の活性化処理における、電圧パルス印加条件と炭素化合物の分圧との関係を示す図である。
【図2】本発明による電子放出素子の活性化処理における、電圧パルス印加条件と特性変化との関係を示す図である。
【図3】本発明による電子放出素子の一例を示す構成図である。
【図4】本発明による電子放出素子の製造方法の一例を示す断面図である。
【図5】本発明による電子放出素子のフォーミング処理における電圧波形の例を示す図である。
【図6】本発明による電子放出素子の活性化処理における電圧波形の例を示す図である。
【図7】実施例による電子源の製造方法を説明する平面図である。
【図8】実施例による電子源の製造方法を説明する平面図である。
【図9】実施例による電子源の製造方法を説明する平面図である。
【図10】実施例による電子源の製造方法を説明する平面図である。
【図11】実施例による電子源の製造方法を説明する平面図である。
【図12】実施例による導電性膜の製造方法を説明する図である。
【図13】実施例による真空排気装置の概略図である。
【図14】実施例による電子源基板の配線を説明するための模式図である。
【図15】実施例による電子放出素子のフォーミング処理における電圧波形を示す図である。
【図16】実施例による電子放出素子の活性化処理における電圧波形を示す図である。
【図17】実施例による活性化処理における素子電流、放出電流の活性化処理時間依存を示す図である。
【図18】本発明による電子放出素子の基本的な特性を示す図である。
【図19】実施例1によるしきい値電圧付近の素子電流の特性を示す図である。
【図20】実施例4における画像形成装置の表示パネルの概略構成図である。
【図21】実施例4における表示パネルに用いた蛍光膜を示す図である。
【図22】実施例4における画像形成装置の駆動回路の概略構成図である。
【図23】従来の電子放出素子を示す平面図である。
【符号の説明】
1 基板
2,3 素子電極
4 導電性膜
4a カーボン膜
5 第1の間隙
5a 第2の間隙
21 電子源基板
22,23素子電極
24 Y方向配線
25 層間絶縁層
26 X方向配線
27 素子膜(導電性膜)
28 コンタクトホール
29 液滴付与手段
41 スイッチ
42 電流計
43 電源
51 真空排気装置
52 真空ポンプ
53a 水素供給源
53b 炭素化合物供給源
54 スローリークバルブ
55 ステージ
56 アノード電極
57 電流計
58 高圧電源
81 電子放出素子が多数配置された電子源基板(リアプレート)
82 フェースプレート
83 ガラス基板
84 蛍光膜
85 メタルバック
86 支持枠
87 電子放出素子
88 X方向配線
89 Y方向配線
90 外囲器
91 ブラックマトリクスと呼ばれる黒色導電材
92 蛍光体
101 画像表示パネル
102 走査回路
103 制御回路
104 シフトレジスタ
105 ラインメモリ
106 同期信号分離回路
107 情報信号発生器
201 絶縁性基板
202 素子電極
203 間隙
204 導電性膜

Claims (1)

  1. 基板上に、間隙を有する導電性部材を配置する工程と、炭素化合物の雰囲気中にて、前記導電性部材へ所定の電圧パルスを印加する活性化工程を有する電子放出素子の製造方法であって、
    前記活性化工程において、パルス間隔時間T(秒)が前記炭素化合物の分圧P(Pa)に対し、T<10-5/Pの関係を満たす電圧パルスを印加することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
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