JP2004205365A - 静電容量測定方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】測定対象物において、絶縁抵抗などの静電容量以外のインピーダンス成分が大きくなった場合でも、該静電容量を正確に測定できる静電容量測定装置を提供する。
【解決手段】静電容量測定装置1は、測定対象物の静電容量を測定するために、該測定対象物を誘電体とするセンシングコンデンサCS1を形成し、電圧が周期的に変化する測定信号SG2を該センシングコンデンサCS1に入力して得られる通過電流波形を電流−電圧変換することによりセンサ応答電圧波形を生成する。他方、測定信号SG2を用いてセンサ応答電圧波形の位相基準を与える位相基準電圧波形を生成し、センサ応答電圧波形に基づく測定対象物の静電容量情報を、センサ応答電圧波形と位相基準電圧波形との位相差に基づいて補正し、当該補正後の静電容量情報を出力する。
【選択図】 図1
【解決手段】静電容量測定装置1は、測定対象物の静電容量を測定するために、該測定対象物を誘電体とするセンシングコンデンサCS1を形成し、電圧が周期的に変化する測定信号SG2を該センシングコンデンサCS1に入力して得られる通過電流波形を電流−電圧変換することによりセンサ応答電圧波形を生成する。他方、測定信号SG2を用いてセンサ応答電圧波形の位相基準を与える位相基準電圧波形を生成し、センサ応答電圧波形に基づく測定対象物の静電容量情報を、センサ応答電圧波形と位相基準電圧波形との位相差に基づいて補正し、当該補正後の静電容量情報を出力する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、静電容量測定方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特表平11−507434号公報
【特許文献2】
特開平5−264495号公報
【特許文献3】
特開昭63−168549号公報
【特許文献4】
特開昭59−102151号公報
【0003】
自動車等のエンジンを保守する場合、潤滑用のオイルをしかるべき時期に交換することは、エンジンを長持ちさせる上で非常に重要である。一般には、オイル溜めにオイルゲージを差し込んでおき、定期的にこれを抜き取ってオイル汚れ状況を目視確認することにより、オイル劣化の状態を把握するようにしている。しかし、必要に迫られて運転はするが自動車そのものには興味がないといったドライバーや、機械が苦手なドライバーなどは、気を利かせたガソリンスタンド店員にオイル確認してもらって初めて汚れに気が付く、という状況が普通であり、信じ難いことではあるが車検時等に一度しかオイル交換をしない、といったことも現実にありえる。なお、多くの自動車のコックピットパネルにはオイル警告インジケータが設けられているが、これはオイルレベルの検知結果を報知するだけのものであって、汚れ状態等を報知するものではない。
【0004】
そこで、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4には、エンジンオイルの静電容量あるいはその静電容量と関連した誘電率を測定することにより、オイル劣化状態を検知する装置が提案されている。ここで、オイル劣化の原因の一つとして全酸価の増加がある。これは、オイルの主体であるベースオイルが酸化し、有極性物質のカルボン酸やアルコールが増加することが要因と考えられている。その結果、オイルの誘電率が上昇して静電容量が増大するから、これを検知することによりオイル劣化状態を知ることができる。
【0005】
ところで、上記のようなオイルの静電容量測定を行なうためには、測定用の電気回路が必要となる。このうち、容量測定センサの機能を果たすのは、オイル内に対向配置された1対の電極であり、該電極がオイルを誘電体とするセンシングコンデンサを形成する。基本的には、このコンデンサの静電容量を交流インピーダンス測定により求めることとなる。交流インピーダンス測定では、測定交流波形をセンシングコンデンサに入力し、その通過電流波形を測定する。正弦波測定信号を用いた場合、その通過電流波形も正弦波状となるが、交流理論によれば、その通過電流波形の振幅はセンシングコンデンサを含んだ被測定系のアドミタンス(インピーダンスの逆数)を反映したものとなる。この場合、該アドミタンスが、センシングコンデンサの静電容量に由来したサセプタンス項のみを含む場合は、通過電流波形の振幅からセンシングコンデンサの静電容量を直接読み取ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エンジンオイルは、温度上昇によりコンダクタンス(導電率)が増加する。オイルの絶縁抵抗は、図20に示すように、等価回路的には静電容量に並列接続された抵抗成分として把握できるが、該並列抵抗成分が小さくなると、センシングコンデンサのアドミタンスには、サセプタンス項に対して無視できないコンダクタンス項が生じ、通過電流波形の振幅から静電容量を直読する方法を採用した場合に、測定精度が大幅に低下する不具合につながる。
【0007】
本発明の課題は、測定対象物において、絶縁抵抗などの静電容量以外のインピーダンス成分が大きくなった場合でも、該静電容量を正確に測定できる静電容量測定方法及び装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記の課題を解決するために、本発明の静電容量測定方法は、
測定対象物の静電容量を測定するために、該測定対象物を誘電体とするセンシングコンデンサを形成し、
電圧が周期的に変化する測定信号を該センシングコンデンサに入力して得られる通過電流波形を電流−電圧変換することによりセンサ応答電圧波形を生成し、
他方、測定信号を用いてセンサ応答電圧波形の位相基準を与える位相基準電圧波形を生成し、
センサ応答電圧波形に基づく測定対象物の静電容量情報を、センサ応答電圧波形と位相基準電圧波形との位相差(第一の位相差)に基づいて補正し、当該補正後の静電容量情報を出力することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の静電容量測定装置は、
測定対象物の静電容量を測定するために、該測定対象物を誘電体とする形で形成されるセンシングコンデンサと、
該センシングコンデンサに入力される、電圧が周期的に変化する測定信号を生成する測定信号生成手段と、
測定信号によるセンシングコンデンサの通過電流波形を電流−電圧変換することによりセンサ応答電圧波形として出力する電流−電圧変換回路と、
測定信号を用いてセンサ応答電圧波形の位相基準を与える位相基準電圧波形を生成する位相基準電圧波形生成手段と、
センサ応答電圧波形に基づいて測定対象物の静電容量情報を生成する静電容量情報生成手段と、
センサ応答電圧波形と位相基準電圧波形との位相差(第一の位相差)に基づいて静電容量情報を補正し、当該補正後の静電容量情報を出力する静電容量情報補正出力手段と、
を有することを特徴とする。
【0010】
上記本発明によると、測定対象物の静電容量を測定するにあたり、電圧が周期的に変化する測定信号を、測定対象物を誘電体とするセンシングコンデンサに入力し、その通過電流波形を電流−電圧変換して、センサ応答電圧波形を生成する。他方、測定信号を用いてセンサ応答電圧波形の位相基準を与える位相基準電圧波形(つまり、測定信号に対する位相進角が一定(ただし、静電容量測定の精度確保上、問題にならない程度の変動は除く)となる波形)を生成する。センシングコンデンサのインピーダンスにおいて静電容量以外の成分が無視できる場合は、センサ応答電圧波形の測定信号に対する位相差は一定(+90°)となるから、位相基準電圧波形との位相差(第一の位相差)も一定である。他方、静電容量に対して無視できない他のインピーダンス成分(以下、寄生インピーダンス成分という)をセンシングコンデンサが有している場合は、その寄生インピーダンス成分の大きさに応じて、測定信号ひいては位相基準電圧波形に対する位相差(第一の位相差)も変動する。従って、この第一の位相差は、センサ応答電圧波形から生成した静電容量情報に、上記寄生インピーダンス成分による誤差がどの程度含まれているかを反映した情報となりうる。本発明においては、該第一の位相差を積極的に測定し、その第一の位相差に基づいて静電容量情報を補正したのち出力するようにしたから、センシングコンデンサの誘電体となる測定対象物に、静電容量以外のインピーダンス成分が多く含まれている場合でも、該静電容量を正確に測定することができる。
【0011】
位相基準電圧波形生成手段は、測定信号が入力されるとともに、測定信号に対するコンダクタンスの温度係数がセンシングコンデンサよりも小さい基準素子と、
測定信号による該基準素子の通過電流波形を電流−電圧変換することにより、位相基準電圧波形をなす基準素子応答電圧波形を出力する電流−電圧変換回路とを含むものとして構成できる。上記基準素子は、コンダクタンスの温度係数がセンシングコンデンサよりも小さいものが選ばれているから、その通過電流波形は、測定環境の温度が変動した場合でもコンダクタンス変化による位相変動が小さい。従って、これを電流−電圧変換した基準素子応答電圧波形を位相基準電圧波形として、上述した補正に用いることで、最終的に、静電容量の測定を高精度に行なうことができる。
【0012】
基準素子としては、測定信号に対する通過電流波形の位相進角が一定となるものであればよく、基準コンデンサのほか、基準抵抗器(ただし、センシングコンデンサの寄生並列抵抗成分よりも抵抗値が十分小さいか、あるいは抵抗温度係数が十分に小さいもの)あるいは基準コイルを使用することもできる。しかし、基準コンデンサを使用すれば、基本となる位相進角量がセンシングコンデンサと同じ90°であり、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形(位相基準電圧波形)との位相差(第一の位相差)の略全体が、センシングコンデンサの寄生インピーダンス成分に由来した位相差として把握でき、静電容量情報の補正処理も簡略化できる利点がある。
【0013】
測定信号は、交流インピーダンス測定が可能な波形であれば原理的にはどのような波形を用いてもよく、例えば方形波や三角波あるいはのこぎり波などを用いることも可能である。しかしながら、正弦波波形を用いた場合、コンデンサを通過する際の過渡現象による波形変化が一定の位相進角と振幅変化のみであり、その振幅がおおむね静電容量に比例して変化することから、波形から静電容量を算出する処理が簡便ですむ利点がある。この場合、静電容量情報生成手段は、センサ応答電圧波形の振幅に基づいて静電容量情報を生成するものとしておく。
【0014】
特に、センシングコンデンサの寄生インピーダンス成分が主として並列抵抗成分であり、他の成分(寄生インダクタンスなど)が無視しうる程度に小さい場合は、静電容量情報補正出力手段は、センサ応答電圧波形の振幅に対し、センサ応答電圧波形と位相基準電圧波形との位相差(第一の位相差)を角度変数として含む正弦関数補正係数を乗じた値を、補正振幅として簡便に生成できる。この補正振幅から測定対象物の静電容量を直接的に読み取ることができる。
【0015】
このことは、複素交流理論により、下のように説明できる。図21は、センシングコンデンサのアドミタンスYを複素アドミタンス平面上に表示したものであり、図中(7)式に示すごとく、虚部(Im)をなすサセプタンスBと実部(Re)をなすコンダクタンスG(=1/R)とのベクトル和で表される。すでに説明した通り、センサ応答電圧波形の振幅A0は、センシングコンデンサのアドミタンスYに略比例する((8)式)。今、寄生インピーダンス成分は並列抵抗成分Rのみであると考えているので、測定信号の角周波数を2πf、センシングコンデンサの静電容量をCとして、サセプタンスBは2πfCと表すことができる。従って、アドミタンスYとサセプタンスBとの関係は、両者の偏角差分をλとして、
2πfC=Y・cosλ ‥ ▲1▼
と表される。すなわち、センシングコンデンサの静電容量Cは、アドミタンスYの虚軸上への正射投影の長さに基づいて算出できる。繰り返しになるが、アドミタンスYはセンサ応答電圧波形の振幅A0に略比例するので、
2πfC ∝ A0・cosλ ‥ ▲2▼
となり、λの値が判明すれば、該▲2▼式に基づき振幅A0を、静電容量Cのみを反映した値に補正すること、つまり静電容量情報の補正が可能となる。
【0016】
他方、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形(位相基準電圧波形)との位相差(第一の位相差)は、それぞれセンシングコンデンサと基準素子との通過電流波形を電流−電圧変換したものであることに留意すれば、複素アドミタンス平面上での両素子のアドミタンスの偏角差分にて表される。特に、基準素子として、測定信号に対するコンダクタンスがセンシングコンデンサのコンダクタンスに対して無視できる程度に小さい(例えば1/10以下)基準コンデンサを使用すると、該基準コンデンサのアドミタンスは、その静電容量に基づくサセプタンスのみとなり、結果的に基準コンデンサのアドミタンスの向きは、センシングコンデンサのサセプタンスBの向き、つまり複素アドミタンス平面の虚軸正方向と略一致することとなる。その結果、上記▲1▼式のλは、測定により得られた、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形(位相基準電圧波形)との位相差(第一の位相差(角度相当値))ν1に一致する。その結果、該第一の位相差ν1を前記▲1▼のλとして直接用いることにより、振幅A0から求められる静電容量情報を、静電容量Cのみを反映した値に補正することができる。この場合、正弦関数補正係数として前記第一の位相差ν1の余弦値cosν1を用い、これを前記振幅A0に乗じた値
A0’≡A0cosν1 ‥‥ ▲2▼’
を補正振幅として生成することとなる。
【0017】
なお、基準素子として基準抵抗を用いる場合は、アドミタンスがコンダクタンス成分のみとなり、その向きは複素アドミタンス平面の実軸正方向と一致する。従って、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形(位相基準電圧波形)との位相差(角度相当値)をν2とすると、λ=90°−ν2となり、これを▲1▼に代入すると、
2πfC ∝ A0・cos(90°−ν2) ‥ ▲3▼
となる。また、基準コイルを用いた場合は、アドミタンスがインダクタンス成分のみとなり、その向きは複素アドミタンス平面の虚軸負方向と一致する。従って、上記位相差(角度相当値)をν3とすると、λ=180°−ν3となり、これを▲1▼に代入すると、
2πfC ∝ A0・cos(180°−ν3) ‥ ▲4▼
となる。いずれも、センサ応答電圧波形の振幅A0に対し、上記位相差ν1,ν2, ν3を角度変数として含む正弦関数補正係数を乗じた値を、補正振幅として生成する処理となることは明らかである。
【0018】
センサ応答電圧波形の振幅を求めるには、アナログ処理的にはピークホールド回路を用いるのが便利であるが、ピークホールド回路を追加しなければならない分だけハードウェアが複雑化し、装置のコストアップにつながる。そこで、静電容量情報生成手段を以下のように構成すると、ソフトウェア的な振幅演算を容易に行なうことができ、ひいてはハードウェアの簡略化に寄与する。すなわち、センサ応答電圧波形を一定時間間隔にてサンプリングすることにより電圧サンプリング点の組を取得し、それら電圧サンプリング点を用いて、静電容量情報を生成するためのセンサ応答電圧波形の振幅を生成する。なお、この方式は、基準素子応答電圧波形の振幅算出にも当然に適用できる。
【0019】
基準素子を用いる場合、測定信号生成手段は、センシングコンデンサ用のものと基準素子用のものとを別々に用意してもよいが、同一仕様のものであれば、測定信号生成手段をセンシングコンデンサと基準素子との間で共用化することがより望ましい。このようにすると、部品点数が減じられて安価となるばかりでなく、個別に設ける回路間の特性ばらつきの影響もなくなり、信頼性をより高めることができる。この場合、それらの接続を、センシングコンデンサと基準素子との間で切り替える切り替え回路を設けるようにする。また、切り替え回路による接続の切り替えを、一定周期毎に繰り返し実行させる切り替え制御手段を設けておけば、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形(位相基準電圧波形)との位相差(第一の位相差)に基づいた補正処理を伴う静電容量測定を自動実行することができる。
【0020】
また、測定信号生成手段は、複数のアナログ設定電圧のうち、1のものを選択して出力する電圧出力部と、複数のアナログ設定電圧を予め定められた順序及び周期にて切り替えることにより、階段状の信号波形が出力されるよう、電圧出力部の電圧出力を制御する電圧出力制御手段とを備えるものとして構成できる。この場合、得られる波形は階段状のものとなるので、曲線状の波形を得たい場合には、信号波形を平滑化するローパスフィルタ回路を設けておけばよい。例えば、測定信号生成手段を、複数のアナログ設定電圧の切り替え順序を正弦波の軌跡をたどるように設定するものとし、該階段状の信号波形を平滑化して出力するローパスフィルタ回路を有するものとして構成することにより、正弦波波形を簡単に得ることができる。
【0021】
上記の構成では、複数のアナログ設定電圧を切り替えることで波形生成するので、アナログ波形を直接得ることができる。アナログ設定電圧の温度変化をある程度小さく抑えることができれば、発振器や増幅器を用いた信号発生器のようにその影響が増幅して現れることがないので、結果的に温度変化の影響を受けにくい、振幅の一定した測定信号波形を容易に得ることができる。
【0022】
本発明の静電容量測定装置は、劣化検知対象となるオイルを測定対象物として、該オイル中に浸漬される電極対によりセンシングコンデンサを形成し、そのセンシングコンデンサの静電容量変化に基づいて、該オイルの劣化検知を行なうオイル劣化検知装置として好適に使用可能である。これにより、測定対象となるオイルの静電容量変化に基づく劣化検知を常に正確に行なうことができる。なお、本発明の適用対象となるオイルは、主に自動車用等のエンジンオイルであるが、機械潤滑油などエンジンオイル以外のオイルにも適用可能である。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の静電容量測定装置として構成されたエンジンオイル劣化検知装置の一実施形態を示す全体ブロック図である。該エンジンオイル劣化検知装置1は、測定信号生成手段、静電容量情報生成手段、静電容量情報補正出力手段及び電圧出力制御手段として機能するマイコンIC1と、これに動作電圧を供給する周知の安定化電源回路5とを有する。オイル劣化検知装置1の基本機能は、図9A及び図9Bに示すように、劣化検知対象となるエンジンオイル中に浸漬される電極対51,52によりセンシングコンデンサCS1を形成し、そのセンシングコンデンサCS1の静電容量変化に基づいて、該エンジンオイルの劣化検知を行なうものである。図9Aの実施形態ではセンシングコンデンサCS1をなす電極対51,52は、同心的に配置される筒状形態をなし、オイル中に配置することにより両者の隙間にオイルが浸透して、該オイルを誘電体とするコンデンサが形成されることとなる。他方、図9Bに示すように、電極対51,52を平行対向板電極として構成することもできる。この実施形態では、一方の電極が結線により電気的に導通した2枚の電極板52,52にて構成されている。なお、本発明において「電極対」とは、直流電圧を印加したとき互いに異極性に帯電する電極をいい、図9Aのように、双方の電極を各々単一の電極板として構成することもできるし、図9Bに示すように、一方又は双方の電極が複数個の電極片に分割されていてもよい。センシングコンデンサCS1は静電容量値が高いほど劣化検知を高精度に行なうことができる。例えば、本実施形態では図9Bの態様を用いており、中央の電極板51が、両側の電極板52に共用される形で並列結合された2つのコンデンサが形成されており、静電容量値向上が図られている。
【0024】
マイコンIC1はCPU13と、本発明の静電容量測定装置の機能実現のための制御プログラムを格納したROM14、及びCPU13による該制御プログラムのワークメモリとなるRAM15及び入出力インターフェース11とを有する。本実施形態においてマイコンIC1は、市販品の8ビットマイコンを使用しており、その制御プログラムの処理の流れは、図10〜図15のフローチャートにより、後に詳述する。
【0025】
入出力インターフェース11からは、制御プログラムの実行に基づき、分圧回路210を経て正弦波の軌跡をたどる階段状の電圧波形SG1が出力される。この電圧波形SG1は、ローパスフィルタ回路2によりスムージング(平滑化)が施されて正弦波状の測定信号SG2となる。
【0026】
該測定信号SG2は、検知信号生成回路30に入力される。検知信号生成回路30は、センシングコンデンサCS1、基準素子をなす基準コンデンサC4、切り替え回路4及び電流−電圧変換回路3を有する。そして、センシングコンデンサCS1と基準コンデンサC4とに、測定信号SG2を、切り替え回路4を介して交互に入力し、各通過電流波形SG3を、電流−電圧変換回路3によりセンサ応答電圧波形ないし基準素子応答電圧波形(以下、位相基準電圧波形ともいう)に変換する。これらの波形はマイコンIC1に組み込まれたA/D変換部12を経て、切り替え回路4により予め定められた時間間隔で、マイコンIC1の入出力インターフェース11に交互に入力される。
【0027】
マイコンIC1は、これらのセンサ応答電圧波形及び基準素子応答電圧波形を用いて制御プログラムの実行に基づき、センシングコンデンサCS1の静電容量、つまりオイル劣化状態を表す静電容量を反映した静電容量情報Fを、後述の補正処理を行ないつつ生成する。本実施形態では、基準コンデンサC4に対するセンシングコンデンサCS1の相対的な静電容量値を、静電容量情報Fとして生成するようにしている。生成された静電容量情報Fは、マイコンIC1内に組み込まれた出力部16にレベル持続時間指示値の形で与えられる。出力部16(本実施形態ではPWM出力部)は、静電容量情報Fに対応したレベル持続時間を有する出力波形を合成し、自動車に搭載されたエンジンコントロールユニット(ECU)50に出力する。なお、安定化電源回路5はECU50を経て受電するため、自動車のイグニッションスイッチをOFFにすると、エンジンオイル劣化検知装置1への電力供給が停止する。
【0028】
図2は、エンジンオイル劣化検知装置1の詳細な構成例を示す回路図である(ただし、安定化電源回路5は省略して描いている)。マイコンIC1のクロック端子X0、X1には、CPU13(図1)の動作クロックを与えるクロック回路8が接続されている。クロック回路8はセラミック発振子110(商品名、例えばセラロック:水晶発振子でもよい)にて発振部が構成された発振回路よりなる。本実施形態では、該発振回路を、コルピッツ発振回路のインダクタをセラミック発振子110で置き換えたものとして構成している。また、リセット端子RSTには、リセット回路7が接続されている。リセット回路7は、コンデンサC8と抵抗R15よりなる遅延回路を主体とするものであり、イグニッションスイッチがONになるに伴い、安定化電源回路5からの信号電圧Vcc(+5V)を受電すると、コンデンサC8と抵抗R15との時定数により、予め定められたクロック数だけリセット端子RSTの電圧をLレベルに維持し、リセット入力を行なう。なお、ダイオードD1は、イグニッションスイッチがOFFになったときにコンデンサC8を放電させるためのものである。
【0029】
マイコンIC1は、CPU13(図1)の動作により、分圧回路210及びローパスフィルタ回路2とともに測定信号生成手段を形成する。マイコンIC1の入出力インターフェース11(図1)の複数(ここでは4つ)のポートP1〜P4と、これに接続された分圧回路210が、複数のアナログ設定電圧のうち、1のものを選択して出力する電圧出力部を形成する。そして、CPU13は、前述の制御プログラムの実行により、複数のアナログ設定電圧を予め定められた順序及び周期にて切り替えることにより階段状の信号が出力されるよう、電圧出力部の電圧出力を制御する電圧出力制御手段として機能する。
【0030】
本実施形態では、電圧出力部は、各々CPU13(図1)により第一電圧レベル(Hレベル:例えば+5V)と該第一電圧レベルよりも低い第二電圧レベル(Lレベル:例えば+0V)との間で切り替え制御可能な複数の電圧出力ポート、つまり、前述の入出力インターフェース11(図1)のポートP1〜P4を有した形となっている。それら電圧出力ポートP1〜P4には、分圧回路210をなす分圧抵抗R1,R2,R3,R4がそれぞれ接続されている。これら分圧抵抗R1,R2,R3,R4の末端は抵抗分圧点Uとして共通結線されている。
【0031】
ポートP1〜P4の出力電圧レベルを種々の組合せにて変化させると、抵抗分圧点Uの分圧電圧も種々に変化する。具体的には、抵抗分圧点Uの電圧は、第一電圧レベル(H)に設定される電圧出力ポートの分圧抵抗に基づく第一合成抵抗と、第二電圧レベル(L)に設定される電圧出力ポートの分圧抵抗に基づく第二合成抵抗との分圧比により定まる。従って、複数の電圧出力ポートP1〜P4の電圧設定状態の組合せに対応したアナログ設定電圧が、該抵抗分圧点Uから出力される。
【0032】
例えば、図5に示すように、互いに値の異なる抵抗R1’〜R4’をスイッチにより選択的に電源電圧Vccに接続し、抵抗分圧点Uに接続された共通抵抗R5’との間で、個別に分圧電圧を形成することも可能である。この構成は、設計が容易である反面、次のような欠点がある。すなわち、汎用マイコンのポート出力は、ほとんどのものがHとLのバイステートであるから、オープン状態を作るためのスイッチとしては使えない。従って、抵抗R1’〜R4’を選択するためのスイッチは、外付けスイッチ31(例えばトランジスタ)の形で別途設けなければならなくなり、コストアップが避けられなくなる(なお、ポートP1〜P4の出力は、これらスイッチ31の制御信号として使用することになる)。しかし、図2の構成によると、設定電圧の異なる電圧出力ポート間で分圧形成するようになっており、バイステートのポートを全て有効活用でき、外付けスイッチも全く不要となる。なお、本実施形態では、選択可能なアナログ設定電圧の幅をさらに広げるために、抵抗分圧点Uから接地側に分岐する形で分圧比調整抵抗R5が設けられている。
【0033】
図3は、上記の回路を用いた正弦波測定信号の具体的な合成例を示すものである。抵抗R1と抵抗R3をいずれも7.32kΩ、抵抗R2と抵抗R4をいずれも42.2kΩとし、第一電圧レベル(H)を+5V、第二電圧レベル(L)を0V(接地レベル)とする。また、ポート設定種別Nを、次の8種類(重複があるので実質的には5種類)に定める。
(N=1)
P1,P2,P3,P4の全てがL。図4の▲1▼に等価回路を示す。全ての抵抗が接地されるので、抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は0V。
(N=2)
P2とP4がH、P1とP3がL。図4の▲2▼に等価回路を示す。H側のR2,R4が第一合成抵抗を、L側のR1,R3,R5とが第二合成抵抗を形成する。抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は0.66V。
(N=3)
P1とP2がH、P3とP4がL。図4の▲3▼に等価回路を示す。H側のR1,R2が第一合成抵抗を、L側のR3,R4,R5が第二合成抵抗を形成する。抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は2.25V。
(N=4)
P1とP3がH、P2とP4がL。図4の▲4▼に等価回路を示す。H側のR1,R3が第一合成抵抗を、L側のR2,R4,R5が第二合成抵抗を形成する。抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は3.84V。
(N=5)
P1,P2,P3,P4の全てがH。図4の▲5▼に等価回路を示す。H側のR1,R2,R3,R4が第一合成抵抗を、L側のR5が第二合成抵抗を形成する。抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は4.5V。
(N=6)
N=4に同じ。
(N=7)
N=3に同じ。
(N=8)
N=2に同じ。
【0034】
上記のポート設定種別Nを、図3右上のタイミングチャートのように、この順序にて等時間間隔で切り替えると、抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は、正弦波の軌跡を描く階段波形WP1を形成する。そして、さらにこれを、ローパスフィルタ回路2を通過させることにより、正弦波の測定信号波形WP2が得られる。本実施形態では、そのポート設定の切り替え間隔が4μsec、正弦波の1周期が32μsecであり、従って、測定信号の周波数は31.25kHzである。
【0035】
測定信号の周波数は、ポート設定の切り替え間隔を変更することにより調整可能である。また、より高精度の波形を得たい場合には、信号の1周期に使用する設定電圧のレベル数をさらに増やせばよく、必要に応じてアナログ設定電圧を形成するための電圧出力ポートの数も追加確保する。
【0036】
次に、ローパスフィルタ回路2は、図2に示すように、本実施形態では波形精度向上のため、アクティブフィルタを採用している。具体的には、オペアンプIC2と抵抗器R7及びコンデンサC2,C3とにより、アクティブフィルタによる二次ステージを形成し、その前段に抵抗器R6及びコンデンサC1を用いたパッシブフィルタからなる一次ステージを追加することにより、全体として三次のバターワースフィルタを形成している。ただし、本発明に使用可能なフィルタはこれに限られるものではない。該ローパスフィルタ回路2によりスムージングされた信号波形(正弦波の信号波形)が、静電容量の測定信号SG2として使用される。
【0037】
次に、図1の検知信号生成回路30は、センシングコンデンサCS1の通過電流波形と基準コンデンサC4の通過電流波形をそれぞれ電流−電圧変換して、センサ応答電圧波形及び基準素子応答電圧波形(SG4)を作成するものである。本実施形態においては、基準コンデンサC4(基準素子)の基準素子応答電圧波形が、センサ応答電圧波形の位相基準となる位相基準電圧波形として使用される。具体的には、測定信号SG2に対するコンダクタンスがセンシングコンデンサCS1のコンダクタンスに対して無視できる程度に小さいもの、例えば1/10以下、望ましくは1/100以下)が使用される。
【0038】
また、本実施形態では、基準素子応答電圧波形は、エンジンオイルないし測定系の温度変動に由来したセンサ応答電圧波形の出力レベル変化を補償するための温度補償用信号としても使用される。この目的のため、基準コンデンサC4は、静電容量の温度変化率がセンシングコンデンサ(すなわち、劣化検知対象となるオイル)CS1よりも小さいものが採用されている。本実施形態では、基準コンデンサC4は、20℃での値を基準としたときの、−30℃〜120℃における静電容量の温度変化率が±1%以内のものが使用されている。本実施形態では、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂を誘電体として用いたプラスチックフィルムコンデンサ(商品名:ECHU(松下電器産業(株)))を使用している。このコンデンサは、直流コンダクタンスも3.5×10−10S以下と十分に小さい。
【0039】
次に、測定信号SG2のセンシングコンデンサCS1及び基準コンデンサC4への入力切替は、切り替え回路4によってなされる。切り替え回路4の要部をなすのは、アナログスイッチIC3であり、本実施形態では米国モトローラ社のアナログ・マルチプレクサ・デマルチプレクサMC54/74HC4053を使用しており、端子構成と動作表とを図6に示す。図6に示すように、該アナログスイッチIC3は、各々2つの電圧入力ポート(アナログ入出力端子)からなる3組の選択入力ポート群X0,X1/Y0,Y1/Z0,Z1と、各選択入力ポート群X0,X1/Y0,Y1/Z0,Z1に入力されるアナログ電圧のうち、各群毎に1のものを選択して出力する共通入出力ポートX/Y/Zと、外部から受ける切り替え選択信号(2ビット)の入力部(チャネル選択入力端子)A,B,Cとを有し、該切り替え選択信号に基づいて、共通入出力ポートX/Y/Zにそれぞれ出力すべきアナログ入力を切り替えるものである。
【0040】
そして、イネーブル端子とチャネル選択入力端子A,B,Cとの入力電圧レベル(閾値より高い状態をH、低い状態をLで表す)の組合せにより、図示の動作表に従い、選択入力ポート群X0,X1/Y0,Y1/Z0,Z1のそれぞれにて、いずれか1つのチャネルがオンとなり、各チャネルへのアナログ入力を共通入出力ポートX/Y/Zにそれぞれ選択的に出力する。
【0041】
図2に示すように、イネーブル端子が接地され、チャネル選択入力端子A,B,Cは、マイコンIC1の信号出力ポートSCKに共通接続されている。信号出力ポートSCKの出力は、マイコンIC1のプログラム動作により、一定時間間隔(本実施形態では1秒間隔)でL/H切り替えされる。従って、チャネル選択入力端子A,B,Cは、全てLの状態と全てHの状態とが、1秒間隔で切り替わることとなる。
【0042】
測定信号SG2は共通入出力端子ZよりアナログスイッチIC3に入力される。図6の動作表によると、チャネル選択入力端子A,B,Cが全てLのときは、選択入力ポートZ0/Y0/X0がオンチャネルとなる。これにより、図7に示すように、測定信号SG2は基準コンデンサC4に入力され、その通過電流波形SG3が共通入出力端子Xより出力される。また、チャネル選択入力端子A,B,Cが全てHのときは、選択入力ポートZ1/Y1/X1がオンチャネルとなる。これにより、図8に示すように、測定信号SG2はセンシングコンデンサCS1に入力され、その通過電流波形SG3が共通入出力端子Xより出力される。
【0043】
なお、本実施形態では、オイルレベル検知用のセンシングコンデンサCS2と、対応する基準コンデンサC5とが設けられ、それぞれ選択入力ポートY1,Y0に接続されている。これらのセンシングコンデンサCS2及び基準コンデンサC5は、オイル劣化検知用のセンシングコンデンサCS1及び基準コンデンサC4と並列接続されており、測定信号SG2が同様に交互に切り替え入力されることとなる。そして、それらの通過電流波形SG5は共通入出力端子Yより出力され、レベル検知用の静電容量情報として使用される。
【0044】
オイル劣化検知用の通過電流波形SG3と、レベル検知用の通過電流波形SG5とは、それぞれオペアンプIC4と電流検出用の帰還抵抗R10とを主体に構成された個別の電流−電圧変換回路3により電圧波形に変換される。いずれも、センシングコンデンサCS1,CS2の通過電流波形が到来した場合はセンサ応答電圧波形となり、基準コンデンサC4,C5の通過電流波形が到来した場合は基準素子応答電圧波形となる。なお、本実施形態では2.25Vを中心とする単極性電圧波形とするために、+2.25Vの基準入力を形成するための分圧抵抗R8,R9が設けられている。また、C6は発振防止用のコンデンサである。
【0045】
オイル劣化検知用及びレベル検知用の各センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形とは、対応する電流−電圧変換回路3より、アナログスイッチIC3の切り替え周期に従い一定時間間隔で交互に出力され、マイコンIC1のアナログ入力ポートAD2,AD3にそれぞれ入力される。これらの信号は、マイコンIC1内のA/D変換部12(図1)によりデジタル化され、制御プログラムによる静電容量情報の作成処理に使用される。以下、制御プログラムの処理の流れについてフローチャートを用いて説明する。
【0046】
図10は、制御プログラムの主ルーチンの流れを示す。マイコンIC1が起動すると、最初にリセット処理が行なわれ、次にRAM15(図1)のメモリ設定の初期化が行なわれる(S1)。また、オイル劣化検知とレベル検知とを交互に行なうための測定フラグKの値も0にセットされる(S2)。S3では、その測定フラグの値をリードし、K=0であればS4以降の劣化検知処理となり、K=1であればS10以降のレベル検知処理となる。いずれも、その最終ステップS9及びS15においてフラグKを更新し、劣化検知処理とレベル検知処理とを相互に切り替える。
【0047】
オイル劣化検知処理側の処理は、S4でアナログスイッチIC3をセンシングコンデンサCS1側(センサ側)に切り替え、S5にて測定の主処理を行なう。次いで、S6でアナログスイッチIC3を基準コンデンサC4側に切り替え、S7で同様の主処理を行なう。そして、S8において、センシングコンデンサCS1側及び基準コンデンサC4側の各処理結果に基づいて、センシングコンデンサCS1の静電容量情報(後述のF1)を生成し、オイル劣化検知結果として出力する。また、レベル検知処理側の処理も、S10〜S13はオイル劣化検知処理側のS4〜S7に同じであり、S14において、センシングコンデンサCS2側及び基準コンデンサC5側の各処理結果に基づいて、センシングコンデンサCS2の静電容量情報(後述のF2)を生成し、レベル検知結果として出力する。
【0048】
図11は主処理の流れを詳細に示すフローチャートである。この処理は、測定信号(階段状の波形SG1)の生成処理と、応答電圧波形(センサ側又は基準素子側)のサンプリング処理及びその結果に基づく応答電圧波形の振幅演算処理を兼ねたものである。測定信号生成処理(S101〜S108)では、入出力インターフェース11(図1参照)の複数の電圧出力ポートP1〜P4の電圧設定状態(ポート設定種別N)を切り替えることにより、抵抗分圧点Uから図3に示される階段波形WP1が出力される。
【0049】
自動車用の電装用品は低廉化の流れが最も激しい分野の一つであり、オイル劣化検知装置においても、測定信号波形の生成処理と応答電圧波形のサンプリングとを並行して行い、かつ、リアルタイムによる静電容量測定処理にも対応するという高等な処理を、汎用で廉価なマイコンを用いて実現することが要求される。
【0050】
そこで、本実施形態では、測定信号波形を生成するための階段状のアナログ設定電圧の繰返し周期が到来するたびに、応答電圧波形のサンプリング位相を、アナログ設定電圧の切り替え時間間隔に対応した値だけ進角させ、該階段状のアナログ設定電圧の繰返し周期を複数回繰り返すことにより、応答電圧波形を、1周期内の互いに異なる位相にて電圧サンプリング点を取得する方式を採用している。この方式によると、応答電圧波形のサンプリングを、測定信号の階段波形WP1の設定電圧の比較的粗い切り替え間隔に合わせて実行し、かつ、実質的なサンプリング間隔を縮小するために、総サンプリング期間を複数周期の応答電圧波形にまたがらせて、必要な数のサンプリング点を取得することになる。このように、信号波形の周期性を巧妙に利用することで、サンプリング間隔が比較的長いにもかかわらず、静電容量測定に必要な応答電圧波形の情報を十分な精度にて取得することができる。
【0051】
より具体的には、静電容量の測定に、正弦波波形1周期上において電圧サンプリング位相が互いに異なる測定信号出力パターンを複数(本実施形態では8種類:測定信号出力パターンA〜測定信号出力パターンH)を用意し、それらパターンを順次出力しつつ、各パターン固有の位相にて電圧サンプリングを行なうことにより、正弦波波形1周期分の電圧サンプリング値を集めるようにする。以下、図11及び図12のフローチャートを用いて説明する。
【0052】
まず、図11のS101にて、測定信号出力パターンAが抵抗分圧点Uから出力される。図12は測定信号出力パターンAの具体例を示すものである。まず、S1001では、抵抗分圧点Uから所定の出力電圧(2.25V)が出力されるように、ポート設定種別Nを選択するとともに、その出力電圧が所定の時間(4μsec)保持される。そして、S1002に進んでポート設定種別Nが切り替えられ、出力電圧0.66Vが4μsec出力される。このような処理が繰り返されることで、測定信号出力パターンAの階段波形WP1が出力される。
【0053】
前述の通り、出力された階段波形WP1はローパスフィルタ回路2にて正弦波の測定信号とされ、センシングコンデンサ又は基準コンデンサを通過して、さらにその通過波形が電流−電圧変換により応答電圧波形となり、マイコンIC1に戻ってくる。この波形は、ポートAD2(オイル劣化検知時)又はAD3(レベル検知時)をリードすることにより、瞬時値をサンプリングすることができる。
【0054】
図12のフローチャートでは、該サンプリング処理が、階段波形WP1の発生処理のループ内に組み込まれる形で実行される(S1016)。測定信号出力パターンAの処理が進行し、S1016に来ると、応答電圧波形の電圧波形の電圧瞬時値をA/D変換してサンプリングし、該サンプリング値をメモリ(図1:RAM15内)に記憶する。そして、処理が進行し、S1020にて電圧瞬時値がA/D変換されていると判定されると、測定信号出力パターンAの処理が終了する。
【0055】
なお、本実施形態では、過渡現象の影響を軽減するために、サンプリング処理を組み込んだ階段波形の1周期分の出力処理(S1009〜S1017)に先立って、サンプリングを特に行なわない階段波形の出力処理を1周期(2周期以上でもよいが、許容されるサイクルタイムの範囲に応じて適宜周期数を定める)行なうようにしてある。
【0056】
測定信号出力パターンA〜パターンHは、波形1周期内での電圧サンプリング位相がそれぞれ異なる。これらの各パターンは、電圧出力の切り替えステップの数(波形2周期分(もちろん3周期以上であってもよい)の16ステップ+次パターンとの波形接続用出力2ステップ+サンプリング1ステップ+A/D変換確認1ステップ=計20ステップ)が全て等しく設定されている。電圧サンプリング位相を異ならせる方法としては、パターンの初期位相を同じにしておいて、電圧サンプリングを行なうステップ順位をパターン毎に変化させる方法と、電圧サンプリングを行なうステップ順位を固定にしておいて、所期のサンプリング位相が得られるように各パターンの初期位相を変化させる方法との2通りがある。後者の方法によると、パターン毎に同じステップでサンプリングが行なわれることから、1回のサンプリングが終了してから次のサンプリングに至るまでの間に、コンデンサを通過する波形の波数を一定にすることができ、過渡現象の均一化、ひいては電圧測定の再現性と安定性向上に寄与する。
【0057】
例えば、図11のS102においては、測定信号出力パターンBの処理が行われる。この測定信号出力パターンBは、上述の測定信号出力パターンAと同様な順序で出力電圧(ポート設定種別)が切り替えられるが、初期出力電圧値が測定信号出力パターンAの第2ステップ(図12のS1002)の電圧値となっている。これにより、測定信号出力パターンBの処理において、測定信号をサンプリングするタイミングは、測定信号出力パターンAの出力波形に対して、所定の時間間隔(4μsec)に対応した値だけずれる(進角する)ことになる。測定信号出力パターンC〜測定信号出力パターンHも同様に、初期出力電圧値はそれぞれシフトしている(図12参照)。従って、応答電圧波形に対して、1周期内の互いに異なるサンプリングタイミングにて電圧サンプリング点を取得する方式となっている。測定信号出力パターンHの出力処理が終了したとき(S108)、階段波形WP1の発生とサンプリング処理を終了し、S109の振幅算出処理へ進む。
【0058】
図13は、その振幅算出処理の流れを示すものである。上記の応答電圧波形のサンプリング方式は巧妙であるが、取得される電圧サンプリング点の数は、例えば、電圧サンプリング点の最大値を波形振幅として代用するには誤差が大きく、量子化精度という点では必ずしも十分ではない。もちろんサンプリング点の数を増やせばこの問題は解消されるが、クロック周波数が通常レベルの廉価なCPUを使用する前提にたてば、測定信号発生との並列処理や、静電容量情報算出のリアルタイム処理を行なうのに難を生ずる。また、サンプリング点の数を増やさず、正弦波によるカーブフィッティングを行なう方法を用いても同様の問題を生ずる。
【0059】
そこで、図13の処理においては、電圧サンプリング点の組(ここではN=8個)の平均電圧値により、図17に示すように、センサ応答電圧波形の推定中心線Jmを決定する。そして、該推定中心線Jmを挟んで隣接する2つの電圧サンプリング点Pi及びPi+1を基準点決定用サンプリング点として用いる。応答電圧波形は正弦波であり、正弦波関数sinθは、中心線すなわちθ=0の近傍では、sinθ=θにて近似できることが数学的に知られている。そこで、基準点決定用サンプリング点Pi及びPi+1間の波形形状を直線近似することにより、推定中心線JmとPi及びPi+1を結ぶ直線との交点を波形基準点Pmとして求めることができる。そして、推定中心線Jmに関して一方の側において、該推定中心線Jmからの電圧の隔たり(電差位)が最大となる最大電圧サンプリング点Pmaxの電圧値Jpと、同じく該側に位置する基準点決定用サンプリング点Piと波形基準点Pmとの位相差(第二の位相差)θaとに基づいて、振幅A0を算出することができる。このように、正弦波関数の数学的性質を利用することにより、サンプリング点の数を増やしたり、カーブフィッティングを行なったりするなどの負担の大きい処理を行なわずとも、センサ応答電圧波形の振幅を正確に算出できる。当然、基準素子側応答電圧波形の振幅算出にも同様に適用できる。
【0060】
具体的には図13のS201で、N点のサンプリング点の電圧値を平均して、推定中心線Jmを求める。S202では、基準点決定用サンプリング点Pi及びPi+1を見出す。Jmよりも高電圧側のピーク電圧から振幅を算出する場合は、Jmに最も近く(Jmよりも高電圧側の)電圧値を有するサンプリング点をPiとし、その次のサンプリング点をPi+1とすればよい。S203では、図17の左図に示すように、PiからJmまでの距離Aiを、図中の(1)式により算出する。また、S204では、Pi及びPi+1間の電圧差をΔJ、同じく第二の位相差をΔθ(タイムスケールではサンプリング時間間隔(本実施形態では4μsec)に等しい)とすれば、Pi及びPi+1間が直線近似されているので、相似の原理から図中の(2)式が成り立つ。その結果、(2)’式によりθaを算出することができる(S205)。
【0061】
次に、S206では、最大電圧サンプリング点Pmaxを見出し、その電圧値Jpを求める。さらに、S207では、推定中心線電圧JmをJpから減じ、最大電圧サンプリング点Pmaxの推定中心線からの距離Apを算出する((4)式)。求めるべき振幅A0は、この近傍に存在する正弦波波形のピーク点Psから推定中心線までの距離である((3)式)。S208では、ピーク点Psの存在パターンを、θa/Δθが1/2より小さいか大きいかにより識別し、前者(第一パターンとする)であればS209に進んで図17に示す方法により振幅A0を算出する。また、後者(第二パターンとする)であればS210に進んで図18に示す方法により振幅A0を算出する。なお、ピーク点Psの存在パターンの識別は、θa/Δθを直接計算する形で行なってもよいし、等価な結果が得られる別の方法を用いてもよい。例えば、PiとPmaxとの間に存在するサンプリング点の数は、第一パターンが第二パターンよりも1つ多いので、これを用いて識別することができる。また、本実施形態のように、波形の1周期を8分割する方法では、PiとPmaxの間に別のサンプリング点が存在すれば第一パターン(図17)を採用し、存在しなければ第二パターン(図18)を採用する識別方法も可能である。
【0062】
そして、図17の第一パターンでは、右図に示す通り、正弦波の対称性から、ピーク点Psに関してPmaxを折り返した位置にも、距離Apが同一の等価点Pmax’が生ずる。また、全てのサンプリング点が等位相間隔で並んでいることに着目すると、PsとPmax’との位相差はθaに等しい。そこで、Pmからピーク点Psまでの位相差(タイムスケール)をθQとすれば、θQが1/4波長分、すなわち1周期を360°とすると角度差にして90°に相当することから、ApとA0との間には図中の(5)式が成り立つ。従って、これを用いて、求めるべき振幅A0は(5)’にて計算できる。
【0063】
また、図18の第二パターンでは、(1)〜(4)式までは第一パターンと同一である。そして、PiとPmaxとの間のサンプリングインターバルの数をk(本実施形態では1)とすれば、右図に示す幾何学的関係から、ApとA0との間には、すでに説明済みのパラ−メータばかりを用いた図中の(6)式が成り立つ。これを用いれば、求めるべき振幅A0は(6)’にて計算できる。これで主処理の説明を終わる。
【0064】
図10に戻り、S5の主処理ではオイル劣化検知のセンサ応答電圧波形の振幅(A0)Dが、また、S7の主処理では同じく基準素子応答電圧波形の振幅(A0’)Dがそれぞれ算出され、RAM15(図1)に記憶される。以上を用いて、S8の劣化検知出力処理は、図14の流れに従い、次のようにして行なわれる。S301及びS302では、上記の(A0)Dと(A0’)Dの各値が読み出される。次に、S303及びS304では、図19に示すように、各主処理の実行中に得られた、センサ応答電圧波形及び基準素子応答電圧波形の、各基準点決定用サンプリング点Pi及びPi’の各位相(タイムスケール)θi及びθi’を読み出す。また、基準点決定用サンプリング点Pi,Pi’と波形基準点Pm,Pm’との位相差(第二の位相差)θa,θa’も読み出す。すると、両波形の位相差(第一の位相差)φ(タイムスケール)は、図19の(10)式により算出できる(S305)。
【0065】
前述の通り、基準コンデンサC4は、コンダクタンスが十分に低く(つまり、絶縁抵抗が十分に高く)、静電容量の温度依存性も小さいものが使用されている。他方、センシングコンデンサCS1は、オイルを誘電体として用いるものであるから、オイルの温度(油温)が上昇するとともに、絶縁抵抗が低下する。これにより、図20の等価回路に示すように、並列抵抗Rの値が減少し、やがては並列抵抗RによるコンダクタンスGが、静電容量CによるサセプタンスBに対して無視できなくなる(図21参照)。従って、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形との位相差(第一の位相差)φは、並列抵抗RによるコンダクタンスGの増加が主な要因となって生ずるものである。この場合、「課題を解決するための手段及び作用・効果」の欄にて説明した通り、センサ応答電圧波形の振幅A0は静電容量Cを直接反映したものとならず、コンダクタンスGによる誤差を含んだものとなる。しかし、前記▲2▼’式によれば、位相差(第一の位相差)ν1(角度スケール)の余弦値cosν1を用い、これを振幅A0に乗じた値A0’≡A0cosν1は、図21に示すように静電容量Cのみを反映したものとなり、補正振幅としての意味を持つ。
【0066】
従って、図14のS306においては、(A0)Dを該▲2▼式に従い補正する演算を行なう。具体的には、図21の(9)式を用いる。この式では、位相差(第一の位相差)φがタイムスケールであるため、前述のθQの値を用いてこれを角度スケールに変換してある。他方、基準コンデンサC4は絶縁抵抗の低下をほとんど生じないことから、基準素子応答電圧波形の振幅(A0’)Dの補正は不要である。具体的には、S306において、補正後の(A0)Dの値を(A0’)Dの値で除した容量相対値F1(静電容量情報である)を計算する。以上のような処理を行うことで、オイルの温度変化による絶縁抵抗の影響を極めて小さくすることができ、全温度域において、静電容量情報F1の精度の良い測定が可能となる。
【0067】
次に、図10のS14のレベル検知出力処理は、図15の流れに従い行なわれる。ここでも、センサ応答電圧波形の振幅(A0)Lの補正が同様になされる。まず、S401及びS402では、レベル検知用のセンシングコンデンサCS2及び基準コンデンサC5によるセンサ応答電圧波形の振幅(A0)Lと、基準素子応答電圧波形の振幅(A0´)Lとを読み出す。次に、S403及びS404では、劣化検知出力処理と同様、センサ応答電圧波形及び基準素子応答電圧波形の、各基準点決定用サンプリング点PiL及びPiL´の各位相(タイムスケール)θiL及びθiL´を読み出すとともに、基準点決定用サンプリング点PiL、PiL´と波形基準点PmL、PmL´との位相差(第四の位相差)θaL、θaL´も読み出す。そして、センサ応答電圧波形と基準素子電圧波形との位相差(第三の位相差)φL(タイムスケール)を算出する(S405)。次に、S406において、補正後の(A0)Lの値を(A0´)Lの値で除した容量相対値F2(静電容量情報である)を計算する。
【0068】
以上の処理にて算出された静電容量情報、すなわち劣化検知用の容量相対値F1とレベル検知用の容量相対値F2は、いずれも二値信号の第一レベルもしくは第二レベルの持続時間に反映された形で出力される。具体的には、図14のS307において劣化検知用の容量相対値F1が、第一レベル持続時間の指示値として、図1のPWM出力部16に送られる。また、図15のS404においてレベル検知用の容量相対値F2が、第二レベル持続時間の指示値として、図1のPWM出力部16に送られる。これらの指示値は、図10の処理の流れからも明らかな通り、予め定められた時間間隔にてPWM出力部16に交互に送られることとなる。これにより、図22に示すように、PWM出力部16からは、第一レベル持続波形SD(持続時間に、劣化検知用の容量相対値F1が反映されている)と第二レベル持続波形SL(持続時間に、レベル検知用の容量相対値F1が反映されている)とが時間的に交替した多重化信号波形として出力される。なお、本実施形態では、第一レベル持続波形SDと第二レベル持続波形SLとに、さらにサーミスタからの温度測定情報を表す信号部分が付加されている。具体的には、第一レベル持続波形SDと第二レベル持続波形SLとは、容量相対値F1,F2に応じて、一定の時間範囲内(図面中にその時間範囲を例示してある)で持続時間が変化するように設定される一方、温度測定情報は、温度に応じてデューティ比が変化する1周期分のPWM信号単位である。
【0069】
図2において、上記出力信号はマイコンIC1のPWMポートから、スイッチング回路9と、ダイオードD2,D3を有するリミッタ回路10とを経て、ECU50(図1)に出力される。スイッチング回路9においてPWM信号はスイッチングトランジスタTr1に入力され、抵抗R13を介したコレクタフォロワにより、PWM信号をインピーダンス変換して出力する(なお、抵抗R16は、OFF時のトランジスタTr1を放電促進して、スイッチング速度を向上させるためのものである)。
【0070】
なお、本実施形態においては、センサ応答電圧波形の振幅A0と、基準素子応答電圧波形の振幅A0’との比により容量相対値を算出して、センシングコンデンサの静電容量値に対する温度補償を行なったが、測定温度(オイルの温度)を一定に固定すれば、測定値に及ぼす温度変化の影響を同様に回避することが可能である。この場合、温度検出素子によりオイル温度を監視し、オイル温度が規定の値に到達したとき、劣化検知を行なうようにすればよい。温度検出素子としては、例えば図2に示すようなサーミスタRTHを使用できる。図2においては、サーミスタRTHの抵抗変化を固定抵抗R12との分圧電圧に反映させ、ボルテージフォロワをなすオペアンプIC5を介して、マイコンIC1のアナログ入力ポートAD1に入力するようにしている。この場合、基準コンデンサ(基準素子)は位相基準用としてのみ使用されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電容量測定装置の一例を示すエンジンオイル劣化検知装置の、全体構成を示すブロック図。
【図2】図1の要部の詳細を示す回路図。
【図3】図2の回路を用いた測定信号生成方式の説明図。
【図4】図3に続く説明図。
【図5】測定信号生成回路の変形例を示す図。
【図6】図2の回路にて使用するアナログスイッチの一例を示す説明図。
【図7】その第一の作用説明図。
【図8】同じく第二の作用説明図。
【図9A】センシングコンデンサの第一構成例を示す模式図。
【図9B】センシングコンデンサの第二構成例を示す模式図。
【図10】制御プログラムの処理の流れを示す第一のフローチャート。
【図11】同じく第二のフローチャート。
【図12】同じく第三のフローチャート。
【図13】同じく第四のフローチャート。
【図14】同じく第五のフローチャート。
【図15】同じく第六のフローチャート。
【図16】測定信号の発生処理と応答電圧波形のサンプリング処理とのシーケンスを示すタイミングチャート。
【図17】応答電圧波形の振幅計算の原理を示す第一の図。
【図18】応答電圧波形の振幅計算の原理を示す第二の図。
【図19】静電容量情報に用いる補正振幅の計算方法を示す第一の図。
【図20】同じく第二の図。
【図21】同じく第三の図。
【図22】オイル劣化検知信号とレベル劣化検知信号とを多重化したPWM出力波形の模式図。
【符号の説明】
1 エンジンオイル劣化検知装置(静電容量測定装置)
CS1 センシングコンデンサ
IC1 マイコン(測定信号生成部、位相基準電圧波形生成部、静電容量情報生成手段、静電容量情報補正出力手段、電圧出力部、電圧出力制御手段)
13 CPU
3 電流−電圧変換回路
4 切り替え回路
C4 基準コンデンサ(基準素子)
【発明の属する技術分野】
この発明は、静電容量測定方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特表平11−507434号公報
【特許文献2】
特開平5−264495号公報
【特許文献3】
特開昭63−168549号公報
【特許文献4】
特開昭59−102151号公報
【0003】
自動車等のエンジンを保守する場合、潤滑用のオイルをしかるべき時期に交換することは、エンジンを長持ちさせる上で非常に重要である。一般には、オイル溜めにオイルゲージを差し込んでおき、定期的にこれを抜き取ってオイル汚れ状況を目視確認することにより、オイル劣化の状態を把握するようにしている。しかし、必要に迫られて運転はするが自動車そのものには興味がないといったドライバーや、機械が苦手なドライバーなどは、気を利かせたガソリンスタンド店員にオイル確認してもらって初めて汚れに気が付く、という状況が普通であり、信じ難いことではあるが車検時等に一度しかオイル交換をしない、といったことも現実にありえる。なお、多くの自動車のコックピットパネルにはオイル警告インジケータが設けられているが、これはオイルレベルの検知結果を報知するだけのものであって、汚れ状態等を報知するものではない。
【0004】
そこで、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4には、エンジンオイルの静電容量あるいはその静電容量と関連した誘電率を測定することにより、オイル劣化状態を検知する装置が提案されている。ここで、オイル劣化の原因の一つとして全酸価の増加がある。これは、オイルの主体であるベースオイルが酸化し、有極性物質のカルボン酸やアルコールが増加することが要因と考えられている。その結果、オイルの誘電率が上昇して静電容量が増大するから、これを検知することによりオイル劣化状態を知ることができる。
【0005】
ところで、上記のようなオイルの静電容量測定を行なうためには、測定用の電気回路が必要となる。このうち、容量測定センサの機能を果たすのは、オイル内に対向配置された1対の電極であり、該電極がオイルを誘電体とするセンシングコンデンサを形成する。基本的には、このコンデンサの静電容量を交流インピーダンス測定により求めることとなる。交流インピーダンス測定では、測定交流波形をセンシングコンデンサに入力し、その通過電流波形を測定する。正弦波測定信号を用いた場合、その通過電流波形も正弦波状となるが、交流理論によれば、その通過電流波形の振幅はセンシングコンデンサを含んだ被測定系のアドミタンス(インピーダンスの逆数)を反映したものとなる。この場合、該アドミタンスが、センシングコンデンサの静電容量に由来したサセプタンス項のみを含む場合は、通過電流波形の振幅からセンシングコンデンサの静電容量を直接読み取ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エンジンオイルは、温度上昇によりコンダクタンス(導電率)が増加する。オイルの絶縁抵抗は、図20に示すように、等価回路的には静電容量に並列接続された抵抗成分として把握できるが、該並列抵抗成分が小さくなると、センシングコンデンサのアドミタンスには、サセプタンス項に対して無視できないコンダクタンス項が生じ、通過電流波形の振幅から静電容量を直読する方法を採用した場合に、測定精度が大幅に低下する不具合につながる。
【0007】
本発明の課題は、測定対象物において、絶縁抵抗などの静電容量以外のインピーダンス成分が大きくなった場合でも、該静電容量を正確に測定できる静電容量測定方法及び装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記の課題を解決するために、本発明の静電容量測定方法は、
測定対象物の静電容量を測定するために、該測定対象物を誘電体とするセンシングコンデンサを形成し、
電圧が周期的に変化する測定信号を該センシングコンデンサに入力して得られる通過電流波形を電流−電圧変換することによりセンサ応答電圧波形を生成し、
他方、測定信号を用いてセンサ応答電圧波形の位相基準を与える位相基準電圧波形を生成し、
センサ応答電圧波形に基づく測定対象物の静電容量情報を、センサ応答電圧波形と位相基準電圧波形との位相差(第一の位相差)に基づいて補正し、当該補正後の静電容量情報を出力することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の静電容量測定装置は、
測定対象物の静電容量を測定するために、該測定対象物を誘電体とする形で形成されるセンシングコンデンサと、
該センシングコンデンサに入力される、電圧が周期的に変化する測定信号を生成する測定信号生成手段と、
測定信号によるセンシングコンデンサの通過電流波形を電流−電圧変換することによりセンサ応答電圧波形として出力する電流−電圧変換回路と、
測定信号を用いてセンサ応答電圧波形の位相基準を与える位相基準電圧波形を生成する位相基準電圧波形生成手段と、
センサ応答電圧波形に基づいて測定対象物の静電容量情報を生成する静電容量情報生成手段と、
センサ応答電圧波形と位相基準電圧波形との位相差(第一の位相差)に基づいて静電容量情報を補正し、当該補正後の静電容量情報を出力する静電容量情報補正出力手段と、
を有することを特徴とする。
【0010】
上記本発明によると、測定対象物の静電容量を測定するにあたり、電圧が周期的に変化する測定信号を、測定対象物を誘電体とするセンシングコンデンサに入力し、その通過電流波形を電流−電圧変換して、センサ応答電圧波形を生成する。他方、測定信号を用いてセンサ応答電圧波形の位相基準を与える位相基準電圧波形(つまり、測定信号に対する位相進角が一定(ただし、静電容量測定の精度確保上、問題にならない程度の変動は除く)となる波形)を生成する。センシングコンデンサのインピーダンスにおいて静電容量以外の成分が無視できる場合は、センサ応答電圧波形の測定信号に対する位相差は一定(+90°)となるから、位相基準電圧波形との位相差(第一の位相差)も一定である。他方、静電容量に対して無視できない他のインピーダンス成分(以下、寄生インピーダンス成分という)をセンシングコンデンサが有している場合は、その寄生インピーダンス成分の大きさに応じて、測定信号ひいては位相基準電圧波形に対する位相差(第一の位相差)も変動する。従って、この第一の位相差は、センサ応答電圧波形から生成した静電容量情報に、上記寄生インピーダンス成分による誤差がどの程度含まれているかを反映した情報となりうる。本発明においては、該第一の位相差を積極的に測定し、その第一の位相差に基づいて静電容量情報を補正したのち出力するようにしたから、センシングコンデンサの誘電体となる測定対象物に、静電容量以外のインピーダンス成分が多く含まれている場合でも、該静電容量を正確に測定することができる。
【0011】
位相基準電圧波形生成手段は、測定信号が入力されるとともに、測定信号に対するコンダクタンスの温度係数がセンシングコンデンサよりも小さい基準素子と、
測定信号による該基準素子の通過電流波形を電流−電圧変換することにより、位相基準電圧波形をなす基準素子応答電圧波形を出力する電流−電圧変換回路とを含むものとして構成できる。上記基準素子は、コンダクタンスの温度係数がセンシングコンデンサよりも小さいものが選ばれているから、その通過電流波形は、測定環境の温度が変動した場合でもコンダクタンス変化による位相変動が小さい。従って、これを電流−電圧変換した基準素子応答電圧波形を位相基準電圧波形として、上述した補正に用いることで、最終的に、静電容量の測定を高精度に行なうことができる。
【0012】
基準素子としては、測定信号に対する通過電流波形の位相進角が一定となるものであればよく、基準コンデンサのほか、基準抵抗器(ただし、センシングコンデンサの寄生並列抵抗成分よりも抵抗値が十分小さいか、あるいは抵抗温度係数が十分に小さいもの)あるいは基準コイルを使用することもできる。しかし、基準コンデンサを使用すれば、基本となる位相進角量がセンシングコンデンサと同じ90°であり、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形(位相基準電圧波形)との位相差(第一の位相差)の略全体が、センシングコンデンサの寄生インピーダンス成分に由来した位相差として把握でき、静電容量情報の補正処理も簡略化できる利点がある。
【0013】
測定信号は、交流インピーダンス測定が可能な波形であれば原理的にはどのような波形を用いてもよく、例えば方形波や三角波あるいはのこぎり波などを用いることも可能である。しかしながら、正弦波波形を用いた場合、コンデンサを通過する際の過渡現象による波形変化が一定の位相進角と振幅変化のみであり、その振幅がおおむね静電容量に比例して変化することから、波形から静電容量を算出する処理が簡便ですむ利点がある。この場合、静電容量情報生成手段は、センサ応答電圧波形の振幅に基づいて静電容量情報を生成するものとしておく。
【0014】
特に、センシングコンデンサの寄生インピーダンス成分が主として並列抵抗成分であり、他の成分(寄生インダクタンスなど)が無視しうる程度に小さい場合は、静電容量情報補正出力手段は、センサ応答電圧波形の振幅に対し、センサ応答電圧波形と位相基準電圧波形との位相差(第一の位相差)を角度変数として含む正弦関数補正係数を乗じた値を、補正振幅として簡便に生成できる。この補正振幅から測定対象物の静電容量を直接的に読み取ることができる。
【0015】
このことは、複素交流理論により、下のように説明できる。図21は、センシングコンデンサのアドミタンスYを複素アドミタンス平面上に表示したものであり、図中(7)式に示すごとく、虚部(Im)をなすサセプタンスBと実部(Re)をなすコンダクタンスG(=1/R)とのベクトル和で表される。すでに説明した通り、センサ応答電圧波形の振幅A0は、センシングコンデンサのアドミタンスYに略比例する((8)式)。今、寄生インピーダンス成分は並列抵抗成分Rのみであると考えているので、測定信号の角周波数を2πf、センシングコンデンサの静電容量をCとして、サセプタンスBは2πfCと表すことができる。従って、アドミタンスYとサセプタンスBとの関係は、両者の偏角差分をλとして、
2πfC=Y・cosλ ‥ ▲1▼
と表される。すなわち、センシングコンデンサの静電容量Cは、アドミタンスYの虚軸上への正射投影の長さに基づいて算出できる。繰り返しになるが、アドミタンスYはセンサ応答電圧波形の振幅A0に略比例するので、
2πfC ∝ A0・cosλ ‥ ▲2▼
となり、λの値が判明すれば、該▲2▼式に基づき振幅A0を、静電容量Cのみを反映した値に補正すること、つまり静電容量情報の補正が可能となる。
【0016】
他方、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形(位相基準電圧波形)との位相差(第一の位相差)は、それぞれセンシングコンデンサと基準素子との通過電流波形を電流−電圧変換したものであることに留意すれば、複素アドミタンス平面上での両素子のアドミタンスの偏角差分にて表される。特に、基準素子として、測定信号に対するコンダクタンスがセンシングコンデンサのコンダクタンスに対して無視できる程度に小さい(例えば1/10以下)基準コンデンサを使用すると、該基準コンデンサのアドミタンスは、その静電容量に基づくサセプタンスのみとなり、結果的に基準コンデンサのアドミタンスの向きは、センシングコンデンサのサセプタンスBの向き、つまり複素アドミタンス平面の虚軸正方向と略一致することとなる。その結果、上記▲1▼式のλは、測定により得られた、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形(位相基準電圧波形)との位相差(第一の位相差(角度相当値))ν1に一致する。その結果、該第一の位相差ν1を前記▲1▼のλとして直接用いることにより、振幅A0から求められる静電容量情報を、静電容量Cのみを反映した値に補正することができる。この場合、正弦関数補正係数として前記第一の位相差ν1の余弦値cosν1を用い、これを前記振幅A0に乗じた値
A0’≡A0cosν1 ‥‥ ▲2▼’
を補正振幅として生成することとなる。
【0017】
なお、基準素子として基準抵抗を用いる場合は、アドミタンスがコンダクタンス成分のみとなり、その向きは複素アドミタンス平面の実軸正方向と一致する。従って、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形(位相基準電圧波形)との位相差(角度相当値)をν2とすると、λ=90°−ν2となり、これを▲1▼に代入すると、
2πfC ∝ A0・cos(90°−ν2) ‥ ▲3▼
となる。また、基準コイルを用いた場合は、アドミタンスがインダクタンス成分のみとなり、その向きは複素アドミタンス平面の虚軸負方向と一致する。従って、上記位相差(角度相当値)をν3とすると、λ=180°−ν3となり、これを▲1▼に代入すると、
2πfC ∝ A0・cos(180°−ν3) ‥ ▲4▼
となる。いずれも、センサ応答電圧波形の振幅A0に対し、上記位相差ν1,ν2, ν3を角度変数として含む正弦関数補正係数を乗じた値を、補正振幅として生成する処理となることは明らかである。
【0018】
センサ応答電圧波形の振幅を求めるには、アナログ処理的にはピークホールド回路を用いるのが便利であるが、ピークホールド回路を追加しなければならない分だけハードウェアが複雑化し、装置のコストアップにつながる。そこで、静電容量情報生成手段を以下のように構成すると、ソフトウェア的な振幅演算を容易に行なうことができ、ひいてはハードウェアの簡略化に寄与する。すなわち、センサ応答電圧波形を一定時間間隔にてサンプリングすることにより電圧サンプリング点の組を取得し、それら電圧サンプリング点を用いて、静電容量情報を生成するためのセンサ応答電圧波形の振幅を生成する。なお、この方式は、基準素子応答電圧波形の振幅算出にも当然に適用できる。
【0019】
基準素子を用いる場合、測定信号生成手段は、センシングコンデンサ用のものと基準素子用のものとを別々に用意してもよいが、同一仕様のものであれば、測定信号生成手段をセンシングコンデンサと基準素子との間で共用化することがより望ましい。このようにすると、部品点数が減じられて安価となるばかりでなく、個別に設ける回路間の特性ばらつきの影響もなくなり、信頼性をより高めることができる。この場合、それらの接続を、センシングコンデンサと基準素子との間で切り替える切り替え回路を設けるようにする。また、切り替え回路による接続の切り替えを、一定周期毎に繰り返し実行させる切り替え制御手段を設けておけば、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形(位相基準電圧波形)との位相差(第一の位相差)に基づいた補正処理を伴う静電容量測定を自動実行することができる。
【0020】
また、測定信号生成手段は、複数のアナログ設定電圧のうち、1のものを選択して出力する電圧出力部と、複数のアナログ設定電圧を予め定められた順序及び周期にて切り替えることにより、階段状の信号波形が出力されるよう、電圧出力部の電圧出力を制御する電圧出力制御手段とを備えるものとして構成できる。この場合、得られる波形は階段状のものとなるので、曲線状の波形を得たい場合には、信号波形を平滑化するローパスフィルタ回路を設けておけばよい。例えば、測定信号生成手段を、複数のアナログ設定電圧の切り替え順序を正弦波の軌跡をたどるように設定するものとし、該階段状の信号波形を平滑化して出力するローパスフィルタ回路を有するものとして構成することにより、正弦波波形を簡単に得ることができる。
【0021】
上記の構成では、複数のアナログ設定電圧を切り替えることで波形生成するので、アナログ波形を直接得ることができる。アナログ設定電圧の温度変化をある程度小さく抑えることができれば、発振器や増幅器を用いた信号発生器のようにその影響が増幅して現れることがないので、結果的に温度変化の影響を受けにくい、振幅の一定した測定信号波形を容易に得ることができる。
【0022】
本発明の静電容量測定装置は、劣化検知対象となるオイルを測定対象物として、該オイル中に浸漬される電極対によりセンシングコンデンサを形成し、そのセンシングコンデンサの静電容量変化に基づいて、該オイルの劣化検知を行なうオイル劣化検知装置として好適に使用可能である。これにより、測定対象となるオイルの静電容量変化に基づく劣化検知を常に正確に行なうことができる。なお、本発明の適用対象となるオイルは、主に自動車用等のエンジンオイルであるが、機械潤滑油などエンジンオイル以外のオイルにも適用可能である。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の静電容量測定装置として構成されたエンジンオイル劣化検知装置の一実施形態を示す全体ブロック図である。該エンジンオイル劣化検知装置1は、測定信号生成手段、静電容量情報生成手段、静電容量情報補正出力手段及び電圧出力制御手段として機能するマイコンIC1と、これに動作電圧を供給する周知の安定化電源回路5とを有する。オイル劣化検知装置1の基本機能は、図9A及び図9Bに示すように、劣化検知対象となるエンジンオイル中に浸漬される電極対51,52によりセンシングコンデンサCS1を形成し、そのセンシングコンデンサCS1の静電容量変化に基づいて、該エンジンオイルの劣化検知を行なうものである。図9Aの実施形態ではセンシングコンデンサCS1をなす電極対51,52は、同心的に配置される筒状形態をなし、オイル中に配置することにより両者の隙間にオイルが浸透して、該オイルを誘電体とするコンデンサが形成されることとなる。他方、図9Bに示すように、電極対51,52を平行対向板電極として構成することもできる。この実施形態では、一方の電極が結線により電気的に導通した2枚の電極板52,52にて構成されている。なお、本発明において「電極対」とは、直流電圧を印加したとき互いに異極性に帯電する電極をいい、図9Aのように、双方の電極を各々単一の電極板として構成することもできるし、図9Bに示すように、一方又は双方の電極が複数個の電極片に分割されていてもよい。センシングコンデンサCS1は静電容量値が高いほど劣化検知を高精度に行なうことができる。例えば、本実施形態では図9Bの態様を用いており、中央の電極板51が、両側の電極板52に共用される形で並列結合された2つのコンデンサが形成されており、静電容量値向上が図られている。
【0024】
マイコンIC1はCPU13と、本発明の静電容量測定装置の機能実現のための制御プログラムを格納したROM14、及びCPU13による該制御プログラムのワークメモリとなるRAM15及び入出力インターフェース11とを有する。本実施形態においてマイコンIC1は、市販品の8ビットマイコンを使用しており、その制御プログラムの処理の流れは、図10〜図15のフローチャートにより、後に詳述する。
【0025】
入出力インターフェース11からは、制御プログラムの実行に基づき、分圧回路210を経て正弦波の軌跡をたどる階段状の電圧波形SG1が出力される。この電圧波形SG1は、ローパスフィルタ回路2によりスムージング(平滑化)が施されて正弦波状の測定信号SG2となる。
【0026】
該測定信号SG2は、検知信号生成回路30に入力される。検知信号生成回路30は、センシングコンデンサCS1、基準素子をなす基準コンデンサC4、切り替え回路4及び電流−電圧変換回路3を有する。そして、センシングコンデンサCS1と基準コンデンサC4とに、測定信号SG2を、切り替え回路4を介して交互に入力し、各通過電流波形SG3を、電流−電圧変換回路3によりセンサ応答電圧波形ないし基準素子応答電圧波形(以下、位相基準電圧波形ともいう)に変換する。これらの波形はマイコンIC1に組み込まれたA/D変換部12を経て、切り替え回路4により予め定められた時間間隔で、マイコンIC1の入出力インターフェース11に交互に入力される。
【0027】
マイコンIC1は、これらのセンサ応答電圧波形及び基準素子応答電圧波形を用いて制御プログラムの実行に基づき、センシングコンデンサCS1の静電容量、つまりオイル劣化状態を表す静電容量を反映した静電容量情報Fを、後述の補正処理を行ないつつ生成する。本実施形態では、基準コンデンサC4に対するセンシングコンデンサCS1の相対的な静電容量値を、静電容量情報Fとして生成するようにしている。生成された静電容量情報Fは、マイコンIC1内に組み込まれた出力部16にレベル持続時間指示値の形で与えられる。出力部16(本実施形態ではPWM出力部)は、静電容量情報Fに対応したレベル持続時間を有する出力波形を合成し、自動車に搭載されたエンジンコントロールユニット(ECU)50に出力する。なお、安定化電源回路5はECU50を経て受電するため、自動車のイグニッションスイッチをOFFにすると、エンジンオイル劣化検知装置1への電力供給が停止する。
【0028】
図2は、エンジンオイル劣化検知装置1の詳細な構成例を示す回路図である(ただし、安定化電源回路5は省略して描いている)。マイコンIC1のクロック端子X0、X1には、CPU13(図1)の動作クロックを与えるクロック回路8が接続されている。クロック回路8はセラミック発振子110(商品名、例えばセラロック:水晶発振子でもよい)にて発振部が構成された発振回路よりなる。本実施形態では、該発振回路を、コルピッツ発振回路のインダクタをセラミック発振子110で置き換えたものとして構成している。また、リセット端子RSTには、リセット回路7が接続されている。リセット回路7は、コンデンサC8と抵抗R15よりなる遅延回路を主体とするものであり、イグニッションスイッチがONになるに伴い、安定化電源回路5からの信号電圧Vcc(+5V)を受電すると、コンデンサC8と抵抗R15との時定数により、予め定められたクロック数だけリセット端子RSTの電圧をLレベルに維持し、リセット入力を行なう。なお、ダイオードD1は、イグニッションスイッチがOFFになったときにコンデンサC8を放電させるためのものである。
【0029】
マイコンIC1は、CPU13(図1)の動作により、分圧回路210及びローパスフィルタ回路2とともに測定信号生成手段を形成する。マイコンIC1の入出力インターフェース11(図1)の複数(ここでは4つ)のポートP1〜P4と、これに接続された分圧回路210が、複数のアナログ設定電圧のうち、1のものを選択して出力する電圧出力部を形成する。そして、CPU13は、前述の制御プログラムの実行により、複数のアナログ設定電圧を予め定められた順序及び周期にて切り替えることにより階段状の信号が出力されるよう、電圧出力部の電圧出力を制御する電圧出力制御手段として機能する。
【0030】
本実施形態では、電圧出力部は、各々CPU13(図1)により第一電圧レベル(Hレベル:例えば+5V)と該第一電圧レベルよりも低い第二電圧レベル(Lレベル:例えば+0V)との間で切り替え制御可能な複数の電圧出力ポート、つまり、前述の入出力インターフェース11(図1)のポートP1〜P4を有した形となっている。それら電圧出力ポートP1〜P4には、分圧回路210をなす分圧抵抗R1,R2,R3,R4がそれぞれ接続されている。これら分圧抵抗R1,R2,R3,R4の末端は抵抗分圧点Uとして共通結線されている。
【0031】
ポートP1〜P4の出力電圧レベルを種々の組合せにて変化させると、抵抗分圧点Uの分圧電圧も種々に変化する。具体的には、抵抗分圧点Uの電圧は、第一電圧レベル(H)に設定される電圧出力ポートの分圧抵抗に基づく第一合成抵抗と、第二電圧レベル(L)に設定される電圧出力ポートの分圧抵抗に基づく第二合成抵抗との分圧比により定まる。従って、複数の電圧出力ポートP1〜P4の電圧設定状態の組合せに対応したアナログ設定電圧が、該抵抗分圧点Uから出力される。
【0032】
例えば、図5に示すように、互いに値の異なる抵抗R1’〜R4’をスイッチにより選択的に電源電圧Vccに接続し、抵抗分圧点Uに接続された共通抵抗R5’との間で、個別に分圧電圧を形成することも可能である。この構成は、設計が容易である反面、次のような欠点がある。すなわち、汎用マイコンのポート出力は、ほとんどのものがHとLのバイステートであるから、オープン状態を作るためのスイッチとしては使えない。従って、抵抗R1’〜R4’を選択するためのスイッチは、外付けスイッチ31(例えばトランジスタ)の形で別途設けなければならなくなり、コストアップが避けられなくなる(なお、ポートP1〜P4の出力は、これらスイッチ31の制御信号として使用することになる)。しかし、図2の構成によると、設定電圧の異なる電圧出力ポート間で分圧形成するようになっており、バイステートのポートを全て有効活用でき、外付けスイッチも全く不要となる。なお、本実施形態では、選択可能なアナログ設定電圧の幅をさらに広げるために、抵抗分圧点Uから接地側に分岐する形で分圧比調整抵抗R5が設けられている。
【0033】
図3は、上記の回路を用いた正弦波測定信号の具体的な合成例を示すものである。抵抗R1と抵抗R3をいずれも7.32kΩ、抵抗R2と抵抗R4をいずれも42.2kΩとし、第一電圧レベル(H)を+5V、第二電圧レベル(L)を0V(接地レベル)とする。また、ポート設定種別Nを、次の8種類(重複があるので実質的には5種類)に定める。
(N=1)
P1,P2,P3,P4の全てがL。図4の▲1▼に等価回路を示す。全ての抵抗が接地されるので、抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は0V。
(N=2)
P2とP4がH、P1とP3がL。図4の▲2▼に等価回路を示す。H側のR2,R4が第一合成抵抗を、L側のR1,R3,R5とが第二合成抵抗を形成する。抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は0.66V。
(N=3)
P1とP2がH、P3とP4がL。図4の▲3▼に等価回路を示す。H側のR1,R2が第一合成抵抗を、L側のR3,R4,R5が第二合成抵抗を形成する。抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は2.25V。
(N=4)
P1とP3がH、P2とP4がL。図4の▲4▼に等価回路を示す。H側のR1,R3が第一合成抵抗を、L側のR2,R4,R5が第二合成抵抗を形成する。抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は3.84V。
(N=5)
P1,P2,P3,P4の全てがH。図4の▲5▼に等価回路を示す。H側のR1,R2,R3,R4が第一合成抵抗を、L側のR5が第二合成抵抗を形成する。抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は4.5V。
(N=6)
N=4に同じ。
(N=7)
N=3に同じ。
(N=8)
N=2に同じ。
【0034】
上記のポート設定種別Nを、図3右上のタイミングチャートのように、この順序にて等時間間隔で切り替えると、抵抗分圧点Uから出力される設定電圧は、正弦波の軌跡を描く階段波形WP1を形成する。そして、さらにこれを、ローパスフィルタ回路2を通過させることにより、正弦波の測定信号波形WP2が得られる。本実施形態では、そのポート設定の切り替え間隔が4μsec、正弦波の1周期が32μsecであり、従って、測定信号の周波数は31.25kHzである。
【0035】
測定信号の周波数は、ポート設定の切り替え間隔を変更することにより調整可能である。また、より高精度の波形を得たい場合には、信号の1周期に使用する設定電圧のレベル数をさらに増やせばよく、必要に応じてアナログ設定電圧を形成するための電圧出力ポートの数も追加確保する。
【0036】
次に、ローパスフィルタ回路2は、図2に示すように、本実施形態では波形精度向上のため、アクティブフィルタを採用している。具体的には、オペアンプIC2と抵抗器R7及びコンデンサC2,C3とにより、アクティブフィルタによる二次ステージを形成し、その前段に抵抗器R6及びコンデンサC1を用いたパッシブフィルタからなる一次ステージを追加することにより、全体として三次のバターワースフィルタを形成している。ただし、本発明に使用可能なフィルタはこれに限られるものではない。該ローパスフィルタ回路2によりスムージングされた信号波形(正弦波の信号波形)が、静電容量の測定信号SG2として使用される。
【0037】
次に、図1の検知信号生成回路30は、センシングコンデンサCS1の通過電流波形と基準コンデンサC4の通過電流波形をそれぞれ電流−電圧変換して、センサ応答電圧波形及び基準素子応答電圧波形(SG4)を作成するものである。本実施形態においては、基準コンデンサC4(基準素子)の基準素子応答電圧波形が、センサ応答電圧波形の位相基準となる位相基準電圧波形として使用される。具体的には、測定信号SG2に対するコンダクタンスがセンシングコンデンサCS1のコンダクタンスに対して無視できる程度に小さいもの、例えば1/10以下、望ましくは1/100以下)が使用される。
【0038】
また、本実施形態では、基準素子応答電圧波形は、エンジンオイルないし測定系の温度変動に由来したセンサ応答電圧波形の出力レベル変化を補償するための温度補償用信号としても使用される。この目的のため、基準コンデンサC4は、静電容量の温度変化率がセンシングコンデンサ(すなわち、劣化検知対象となるオイル)CS1よりも小さいものが採用されている。本実施形態では、基準コンデンサC4は、20℃での値を基準としたときの、−30℃〜120℃における静電容量の温度変化率が±1%以内のものが使用されている。本実施形態では、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂を誘電体として用いたプラスチックフィルムコンデンサ(商品名:ECHU(松下電器産業(株)))を使用している。このコンデンサは、直流コンダクタンスも3.5×10−10S以下と十分に小さい。
【0039】
次に、測定信号SG2のセンシングコンデンサCS1及び基準コンデンサC4への入力切替は、切り替え回路4によってなされる。切り替え回路4の要部をなすのは、アナログスイッチIC3であり、本実施形態では米国モトローラ社のアナログ・マルチプレクサ・デマルチプレクサMC54/74HC4053を使用しており、端子構成と動作表とを図6に示す。図6に示すように、該アナログスイッチIC3は、各々2つの電圧入力ポート(アナログ入出力端子)からなる3組の選択入力ポート群X0,X1/Y0,Y1/Z0,Z1と、各選択入力ポート群X0,X1/Y0,Y1/Z0,Z1に入力されるアナログ電圧のうち、各群毎に1のものを選択して出力する共通入出力ポートX/Y/Zと、外部から受ける切り替え選択信号(2ビット)の入力部(チャネル選択入力端子)A,B,Cとを有し、該切り替え選択信号に基づいて、共通入出力ポートX/Y/Zにそれぞれ出力すべきアナログ入力を切り替えるものである。
【0040】
そして、イネーブル端子とチャネル選択入力端子A,B,Cとの入力電圧レベル(閾値より高い状態をH、低い状態をLで表す)の組合せにより、図示の動作表に従い、選択入力ポート群X0,X1/Y0,Y1/Z0,Z1のそれぞれにて、いずれか1つのチャネルがオンとなり、各チャネルへのアナログ入力を共通入出力ポートX/Y/Zにそれぞれ選択的に出力する。
【0041】
図2に示すように、イネーブル端子が接地され、チャネル選択入力端子A,B,Cは、マイコンIC1の信号出力ポートSCKに共通接続されている。信号出力ポートSCKの出力は、マイコンIC1のプログラム動作により、一定時間間隔(本実施形態では1秒間隔)でL/H切り替えされる。従って、チャネル選択入力端子A,B,Cは、全てLの状態と全てHの状態とが、1秒間隔で切り替わることとなる。
【0042】
測定信号SG2は共通入出力端子ZよりアナログスイッチIC3に入力される。図6の動作表によると、チャネル選択入力端子A,B,Cが全てLのときは、選択入力ポートZ0/Y0/X0がオンチャネルとなる。これにより、図7に示すように、測定信号SG2は基準コンデンサC4に入力され、その通過電流波形SG3が共通入出力端子Xより出力される。また、チャネル選択入力端子A,B,Cが全てHのときは、選択入力ポートZ1/Y1/X1がオンチャネルとなる。これにより、図8に示すように、測定信号SG2はセンシングコンデンサCS1に入力され、その通過電流波形SG3が共通入出力端子Xより出力される。
【0043】
なお、本実施形態では、オイルレベル検知用のセンシングコンデンサCS2と、対応する基準コンデンサC5とが設けられ、それぞれ選択入力ポートY1,Y0に接続されている。これらのセンシングコンデンサCS2及び基準コンデンサC5は、オイル劣化検知用のセンシングコンデンサCS1及び基準コンデンサC4と並列接続されており、測定信号SG2が同様に交互に切り替え入力されることとなる。そして、それらの通過電流波形SG5は共通入出力端子Yより出力され、レベル検知用の静電容量情報として使用される。
【0044】
オイル劣化検知用の通過電流波形SG3と、レベル検知用の通過電流波形SG5とは、それぞれオペアンプIC4と電流検出用の帰還抵抗R10とを主体に構成された個別の電流−電圧変換回路3により電圧波形に変換される。いずれも、センシングコンデンサCS1,CS2の通過電流波形が到来した場合はセンサ応答電圧波形となり、基準コンデンサC4,C5の通過電流波形が到来した場合は基準素子応答電圧波形となる。なお、本実施形態では2.25Vを中心とする単極性電圧波形とするために、+2.25Vの基準入力を形成するための分圧抵抗R8,R9が設けられている。また、C6は発振防止用のコンデンサである。
【0045】
オイル劣化検知用及びレベル検知用の各センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形とは、対応する電流−電圧変換回路3より、アナログスイッチIC3の切り替え周期に従い一定時間間隔で交互に出力され、マイコンIC1のアナログ入力ポートAD2,AD3にそれぞれ入力される。これらの信号は、マイコンIC1内のA/D変換部12(図1)によりデジタル化され、制御プログラムによる静電容量情報の作成処理に使用される。以下、制御プログラムの処理の流れについてフローチャートを用いて説明する。
【0046】
図10は、制御プログラムの主ルーチンの流れを示す。マイコンIC1が起動すると、最初にリセット処理が行なわれ、次にRAM15(図1)のメモリ設定の初期化が行なわれる(S1)。また、オイル劣化検知とレベル検知とを交互に行なうための測定フラグKの値も0にセットされる(S2)。S3では、その測定フラグの値をリードし、K=0であればS4以降の劣化検知処理となり、K=1であればS10以降のレベル検知処理となる。いずれも、その最終ステップS9及びS15においてフラグKを更新し、劣化検知処理とレベル検知処理とを相互に切り替える。
【0047】
オイル劣化検知処理側の処理は、S4でアナログスイッチIC3をセンシングコンデンサCS1側(センサ側)に切り替え、S5にて測定の主処理を行なう。次いで、S6でアナログスイッチIC3を基準コンデンサC4側に切り替え、S7で同様の主処理を行なう。そして、S8において、センシングコンデンサCS1側及び基準コンデンサC4側の各処理結果に基づいて、センシングコンデンサCS1の静電容量情報(後述のF1)を生成し、オイル劣化検知結果として出力する。また、レベル検知処理側の処理も、S10〜S13はオイル劣化検知処理側のS4〜S7に同じであり、S14において、センシングコンデンサCS2側及び基準コンデンサC5側の各処理結果に基づいて、センシングコンデンサCS2の静電容量情報(後述のF2)を生成し、レベル検知結果として出力する。
【0048】
図11は主処理の流れを詳細に示すフローチャートである。この処理は、測定信号(階段状の波形SG1)の生成処理と、応答電圧波形(センサ側又は基準素子側)のサンプリング処理及びその結果に基づく応答電圧波形の振幅演算処理を兼ねたものである。測定信号生成処理(S101〜S108)では、入出力インターフェース11(図1参照)の複数の電圧出力ポートP1〜P4の電圧設定状態(ポート設定種別N)を切り替えることにより、抵抗分圧点Uから図3に示される階段波形WP1が出力される。
【0049】
自動車用の電装用品は低廉化の流れが最も激しい分野の一つであり、オイル劣化検知装置においても、測定信号波形の生成処理と応答電圧波形のサンプリングとを並行して行い、かつ、リアルタイムによる静電容量測定処理にも対応するという高等な処理を、汎用で廉価なマイコンを用いて実現することが要求される。
【0050】
そこで、本実施形態では、測定信号波形を生成するための階段状のアナログ設定電圧の繰返し周期が到来するたびに、応答電圧波形のサンプリング位相を、アナログ設定電圧の切り替え時間間隔に対応した値だけ進角させ、該階段状のアナログ設定電圧の繰返し周期を複数回繰り返すことにより、応答電圧波形を、1周期内の互いに異なる位相にて電圧サンプリング点を取得する方式を採用している。この方式によると、応答電圧波形のサンプリングを、測定信号の階段波形WP1の設定電圧の比較的粗い切り替え間隔に合わせて実行し、かつ、実質的なサンプリング間隔を縮小するために、総サンプリング期間を複数周期の応答電圧波形にまたがらせて、必要な数のサンプリング点を取得することになる。このように、信号波形の周期性を巧妙に利用することで、サンプリング間隔が比較的長いにもかかわらず、静電容量測定に必要な応答電圧波形の情報を十分な精度にて取得することができる。
【0051】
より具体的には、静電容量の測定に、正弦波波形1周期上において電圧サンプリング位相が互いに異なる測定信号出力パターンを複数(本実施形態では8種類:測定信号出力パターンA〜測定信号出力パターンH)を用意し、それらパターンを順次出力しつつ、各パターン固有の位相にて電圧サンプリングを行なうことにより、正弦波波形1周期分の電圧サンプリング値を集めるようにする。以下、図11及び図12のフローチャートを用いて説明する。
【0052】
まず、図11のS101にて、測定信号出力パターンAが抵抗分圧点Uから出力される。図12は測定信号出力パターンAの具体例を示すものである。まず、S1001では、抵抗分圧点Uから所定の出力電圧(2.25V)が出力されるように、ポート設定種別Nを選択するとともに、その出力電圧が所定の時間(4μsec)保持される。そして、S1002に進んでポート設定種別Nが切り替えられ、出力電圧0.66Vが4μsec出力される。このような処理が繰り返されることで、測定信号出力パターンAの階段波形WP1が出力される。
【0053】
前述の通り、出力された階段波形WP1はローパスフィルタ回路2にて正弦波の測定信号とされ、センシングコンデンサ又は基準コンデンサを通過して、さらにその通過波形が電流−電圧変換により応答電圧波形となり、マイコンIC1に戻ってくる。この波形は、ポートAD2(オイル劣化検知時)又はAD3(レベル検知時)をリードすることにより、瞬時値をサンプリングすることができる。
【0054】
図12のフローチャートでは、該サンプリング処理が、階段波形WP1の発生処理のループ内に組み込まれる形で実行される(S1016)。測定信号出力パターンAの処理が進行し、S1016に来ると、応答電圧波形の電圧波形の電圧瞬時値をA/D変換してサンプリングし、該サンプリング値をメモリ(図1:RAM15内)に記憶する。そして、処理が進行し、S1020にて電圧瞬時値がA/D変換されていると判定されると、測定信号出力パターンAの処理が終了する。
【0055】
なお、本実施形態では、過渡現象の影響を軽減するために、サンプリング処理を組み込んだ階段波形の1周期分の出力処理(S1009〜S1017)に先立って、サンプリングを特に行なわない階段波形の出力処理を1周期(2周期以上でもよいが、許容されるサイクルタイムの範囲に応じて適宜周期数を定める)行なうようにしてある。
【0056】
測定信号出力パターンA〜パターンHは、波形1周期内での電圧サンプリング位相がそれぞれ異なる。これらの各パターンは、電圧出力の切り替えステップの数(波形2周期分(もちろん3周期以上であってもよい)の16ステップ+次パターンとの波形接続用出力2ステップ+サンプリング1ステップ+A/D変換確認1ステップ=計20ステップ)が全て等しく設定されている。電圧サンプリング位相を異ならせる方法としては、パターンの初期位相を同じにしておいて、電圧サンプリングを行なうステップ順位をパターン毎に変化させる方法と、電圧サンプリングを行なうステップ順位を固定にしておいて、所期のサンプリング位相が得られるように各パターンの初期位相を変化させる方法との2通りがある。後者の方法によると、パターン毎に同じステップでサンプリングが行なわれることから、1回のサンプリングが終了してから次のサンプリングに至るまでの間に、コンデンサを通過する波形の波数を一定にすることができ、過渡現象の均一化、ひいては電圧測定の再現性と安定性向上に寄与する。
【0057】
例えば、図11のS102においては、測定信号出力パターンBの処理が行われる。この測定信号出力パターンBは、上述の測定信号出力パターンAと同様な順序で出力電圧(ポート設定種別)が切り替えられるが、初期出力電圧値が測定信号出力パターンAの第2ステップ(図12のS1002)の電圧値となっている。これにより、測定信号出力パターンBの処理において、測定信号をサンプリングするタイミングは、測定信号出力パターンAの出力波形に対して、所定の時間間隔(4μsec)に対応した値だけずれる(進角する)ことになる。測定信号出力パターンC〜測定信号出力パターンHも同様に、初期出力電圧値はそれぞれシフトしている(図12参照)。従って、応答電圧波形に対して、1周期内の互いに異なるサンプリングタイミングにて電圧サンプリング点を取得する方式となっている。測定信号出力パターンHの出力処理が終了したとき(S108)、階段波形WP1の発生とサンプリング処理を終了し、S109の振幅算出処理へ進む。
【0058】
図13は、その振幅算出処理の流れを示すものである。上記の応答電圧波形のサンプリング方式は巧妙であるが、取得される電圧サンプリング点の数は、例えば、電圧サンプリング点の最大値を波形振幅として代用するには誤差が大きく、量子化精度という点では必ずしも十分ではない。もちろんサンプリング点の数を増やせばこの問題は解消されるが、クロック周波数が通常レベルの廉価なCPUを使用する前提にたてば、測定信号発生との並列処理や、静電容量情報算出のリアルタイム処理を行なうのに難を生ずる。また、サンプリング点の数を増やさず、正弦波によるカーブフィッティングを行なう方法を用いても同様の問題を生ずる。
【0059】
そこで、図13の処理においては、電圧サンプリング点の組(ここではN=8個)の平均電圧値により、図17に示すように、センサ応答電圧波形の推定中心線Jmを決定する。そして、該推定中心線Jmを挟んで隣接する2つの電圧サンプリング点Pi及びPi+1を基準点決定用サンプリング点として用いる。応答電圧波形は正弦波であり、正弦波関数sinθは、中心線すなわちθ=0の近傍では、sinθ=θにて近似できることが数学的に知られている。そこで、基準点決定用サンプリング点Pi及びPi+1間の波形形状を直線近似することにより、推定中心線JmとPi及びPi+1を結ぶ直線との交点を波形基準点Pmとして求めることができる。そして、推定中心線Jmに関して一方の側において、該推定中心線Jmからの電圧の隔たり(電差位)が最大となる最大電圧サンプリング点Pmaxの電圧値Jpと、同じく該側に位置する基準点決定用サンプリング点Piと波形基準点Pmとの位相差(第二の位相差)θaとに基づいて、振幅A0を算出することができる。このように、正弦波関数の数学的性質を利用することにより、サンプリング点の数を増やしたり、カーブフィッティングを行なったりするなどの負担の大きい処理を行なわずとも、センサ応答電圧波形の振幅を正確に算出できる。当然、基準素子側応答電圧波形の振幅算出にも同様に適用できる。
【0060】
具体的には図13のS201で、N点のサンプリング点の電圧値を平均して、推定中心線Jmを求める。S202では、基準点決定用サンプリング点Pi及びPi+1を見出す。Jmよりも高電圧側のピーク電圧から振幅を算出する場合は、Jmに最も近く(Jmよりも高電圧側の)電圧値を有するサンプリング点をPiとし、その次のサンプリング点をPi+1とすればよい。S203では、図17の左図に示すように、PiからJmまでの距離Aiを、図中の(1)式により算出する。また、S204では、Pi及びPi+1間の電圧差をΔJ、同じく第二の位相差をΔθ(タイムスケールではサンプリング時間間隔(本実施形態では4μsec)に等しい)とすれば、Pi及びPi+1間が直線近似されているので、相似の原理から図中の(2)式が成り立つ。その結果、(2)’式によりθaを算出することができる(S205)。
【0061】
次に、S206では、最大電圧サンプリング点Pmaxを見出し、その電圧値Jpを求める。さらに、S207では、推定中心線電圧JmをJpから減じ、最大電圧サンプリング点Pmaxの推定中心線からの距離Apを算出する((4)式)。求めるべき振幅A0は、この近傍に存在する正弦波波形のピーク点Psから推定中心線までの距離である((3)式)。S208では、ピーク点Psの存在パターンを、θa/Δθが1/2より小さいか大きいかにより識別し、前者(第一パターンとする)であればS209に進んで図17に示す方法により振幅A0を算出する。また、後者(第二パターンとする)であればS210に進んで図18に示す方法により振幅A0を算出する。なお、ピーク点Psの存在パターンの識別は、θa/Δθを直接計算する形で行なってもよいし、等価な結果が得られる別の方法を用いてもよい。例えば、PiとPmaxとの間に存在するサンプリング点の数は、第一パターンが第二パターンよりも1つ多いので、これを用いて識別することができる。また、本実施形態のように、波形の1周期を8分割する方法では、PiとPmaxの間に別のサンプリング点が存在すれば第一パターン(図17)を採用し、存在しなければ第二パターン(図18)を採用する識別方法も可能である。
【0062】
そして、図17の第一パターンでは、右図に示す通り、正弦波の対称性から、ピーク点Psに関してPmaxを折り返した位置にも、距離Apが同一の等価点Pmax’が生ずる。また、全てのサンプリング点が等位相間隔で並んでいることに着目すると、PsとPmax’との位相差はθaに等しい。そこで、Pmからピーク点Psまでの位相差(タイムスケール)をθQとすれば、θQが1/4波長分、すなわち1周期を360°とすると角度差にして90°に相当することから、ApとA0との間には図中の(5)式が成り立つ。従って、これを用いて、求めるべき振幅A0は(5)’にて計算できる。
【0063】
また、図18の第二パターンでは、(1)〜(4)式までは第一パターンと同一である。そして、PiとPmaxとの間のサンプリングインターバルの数をk(本実施形態では1)とすれば、右図に示す幾何学的関係から、ApとA0との間には、すでに説明済みのパラ−メータばかりを用いた図中の(6)式が成り立つ。これを用いれば、求めるべき振幅A0は(6)’にて計算できる。これで主処理の説明を終わる。
【0064】
図10に戻り、S5の主処理ではオイル劣化検知のセンサ応答電圧波形の振幅(A0)Dが、また、S7の主処理では同じく基準素子応答電圧波形の振幅(A0’)Dがそれぞれ算出され、RAM15(図1)に記憶される。以上を用いて、S8の劣化検知出力処理は、図14の流れに従い、次のようにして行なわれる。S301及びS302では、上記の(A0)Dと(A0’)Dの各値が読み出される。次に、S303及びS304では、図19に示すように、各主処理の実行中に得られた、センサ応答電圧波形及び基準素子応答電圧波形の、各基準点決定用サンプリング点Pi及びPi’の各位相(タイムスケール)θi及びθi’を読み出す。また、基準点決定用サンプリング点Pi,Pi’と波形基準点Pm,Pm’との位相差(第二の位相差)θa,θa’も読み出す。すると、両波形の位相差(第一の位相差)φ(タイムスケール)は、図19の(10)式により算出できる(S305)。
【0065】
前述の通り、基準コンデンサC4は、コンダクタンスが十分に低く(つまり、絶縁抵抗が十分に高く)、静電容量の温度依存性も小さいものが使用されている。他方、センシングコンデンサCS1は、オイルを誘電体として用いるものであるから、オイルの温度(油温)が上昇するとともに、絶縁抵抗が低下する。これにより、図20の等価回路に示すように、並列抵抗Rの値が減少し、やがては並列抵抗RによるコンダクタンスGが、静電容量CによるサセプタンスBに対して無視できなくなる(図21参照)。従って、センサ応答電圧波形と基準素子応答電圧波形との位相差(第一の位相差)φは、並列抵抗RによるコンダクタンスGの増加が主な要因となって生ずるものである。この場合、「課題を解決するための手段及び作用・効果」の欄にて説明した通り、センサ応答電圧波形の振幅A0は静電容量Cを直接反映したものとならず、コンダクタンスGによる誤差を含んだものとなる。しかし、前記▲2▼’式によれば、位相差(第一の位相差)ν1(角度スケール)の余弦値cosν1を用い、これを振幅A0に乗じた値A0’≡A0cosν1は、図21に示すように静電容量Cのみを反映したものとなり、補正振幅としての意味を持つ。
【0066】
従って、図14のS306においては、(A0)Dを該▲2▼式に従い補正する演算を行なう。具体的には、図21の(9)式を用いる。この式では、位相差(第一の位相差)φがタイムスケールであるため、前述のθQの値を用いてこれを角度スケールに変換してある。他方、基準コンデンサC4は絶縁抵抗の低下をほとんど生じないことから、基準素子応答電圧波形の振幅(A0’)Dの補正は不要である。具体的には、S306において、補正後の(A0)Dの値を(A0’)Dの値で除した容量相対値F1(静電容量情報である)を計算する。以上のような処理を行うことで、オイルの温度変化による絶縁抵抗の影響を極めて小さくすることができ、全温度域において、静電容量情報F1の精度の良い測定が可能となる。
【0067】
次に、図10のS14のレベル検知出力処理は、図15の流れに従い行なわれる。ここでも、センサ応答電圧波形の振幅(A0)Lの補正が同様になされる。まず、S401及びS402では、レベル検知用のセンシングコンデンサCS2及び基準コンデンサC5によるセンサ応答電圧波形の振幅(A0)Lと、基準素子応答電圧波形の振幅(A0´)Lとを読み出す。次に、S403及びS404では、劣化検知出力処理と同様、センサ応答電圧波形及び基準素子応答電圧波形の、各基準点決定用サンプリング点PiL及びPiL´の各位相(タイムスケール)θiL及びθiL´を読み出すとともに、基準点決定用サンプリング点PiL、PiL´と波形基準点PmL、PmL´との位相差(第四の位相差)θaL、θaL´も読み出す。そして、センサ応答電圧波形と基準素子電圧波形との位相差(第三の位相差)φL(タイムスケール)を算出する(S405)。次に、S406において、補正後の(A0)Lの値を(A0´)Lの値で除した容量相対値F2(静電容量情報である)を計算する。
【0068】
以上の処理にて算出された静電容量情報、すなわち劣化検知用の容量相対値F1とレベル検知用の容量相対値F2は、いずれも二値信号の第一レベルもしくは第二レベルの持続時間に反映された形で出力される。具体的には、図14のS307において劣化検知用の容量相対値F1が、第一レベル持続時間の指示値として、図1のPWM出力部16に送られる。また、図15のS404においてレベル検知用の容量相対値F2が、第二レベル持続時間の指示値として、図1のPWM出力部16に送られる。これらの指示値は、図10の処理の流れからも明らかな通り、予め定められた時間間隔にてPWM出力部16に交互に送られることとなる。これにより、図22に示すように、PWM出力部16からは、第一レベル持続波形SD(持続時間に、劣化検知用の容量相対値F1が反映されている)と第二レベル持続波形SL(持続時間に、レベル検知用の容量相対値F1が反映されている)とが時間的に交替した多重化信号波形として出力される。なお、本実施形態では、第一レベル持続波形SDと第二レベル持続波形SLとに、さらにサーミスタからの温度測定情報を表す信号部分が付加されている。具体的には、第一レベル持続波形SDと第二レベル持続波形SLとは、容量相対値F1,F2に応じて、一定の時間範囲内(図面中にその時間範囲を例示してある)で持続時間が変化するように設定される一方、温度測定情報は、温度に応じてデューティ比が変化する1周期分のPWM信号単位である。
【0069】
図2において、上記出力信号はマイコンIC1のPWMポートから、スイッチング回路9と、ダイオードD2,D3を有するリミッタ回路10とを経て、ECU50(図1)に出力される。スイッチング回路9においてPWM信号はスイッチングトランジスタTr1に入力され、抵抗R13を介したコレクタフォロワにより、PWM信号をインピーダンス変換して出力する(なお、抵抗R16は、OFF時のトランジスタTr1を放電促進して、スイッチング速度を向上させるためのものである)。
【0070】
なお、本実施形態においては、センサ応答電圧波形の振幅A0と、基準素子応答電圧波形の振幅A0’との比により容量相対値を算出して、センシングコンデンサの静電容量値に対する温度補償を行なったが、測定温度(オイルの温度)を一定に固定すれば、測定値に及ぼす温度変化の影響を同様に回避することが可能である。この場合、温度検出素子によりオイル温度を監視し、オイル温度が規定の値に到達したとき、劣化検知を行なうようにすればよい。温度検出素子としては、例えば図2に示すようなサーミスタRTHを使用できる。図2においては、サーミスタRTHの抵抗変化を固定抵抗R12との分圧電圧に反映させ、ボルテージフォロワをなすオペアンプIC5を介して、マイコンIC1のアナログ入力ポートAD1に入力するようにしている。この場合、基準コンデンサ(基準素子)は位相基準用としてのみ使用されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電容量測定装置の一例を示すエンジンオイル劣化検知装置の、全体構成を示すブロック図。
【図2】図1の要部の詳細を示す回路図。
【図3】図2の回路を用いた測定信号生成方式の説明図。
【図4】図3に続く説明図。
【図5】測定信号生成回路の変形例を示す図。
【図6】図2の回路にて使用するアナログスイッチの一例を示す説明図。
【図7】その第一の作用説明図。
【図8】同じく第二の作用説明図。
【図9A】センシングコンデンサの第一構成例を示す模式図。
【図9B】センシングコンデンサの第二構成例を示す模式図。
【図10】制御プログラムの処理の流れを示す第一のフローチャート。
【図11】同じく第二のフローチャート。
【図12】同じく第三のフローチャート。
【図13】同じく第四のフローチャート。
【図14】同じく第五のフローチャート。
【図15】同じく第六のフローチャート。
【図16】測定信号の発生処理と応答電圧波形のサンプリング処理とのシーケンスを示すタイミングチャート。
【図17】応答電圧波形の振幅計算の原理を示す第一の図。
【図18】応答電圧波形の振幅計算の原理を示す第二の図。
【図19】静電容量情報に用いる補正振幅の計算方法を示す第一の図。
【図20】同じく第二の図。
【図21】同じく第三の図。
【図22】オイル劣化検知信号とレベル劣化検知信号とを多重化したPWM出力波形の模式図。
【符号の説明】
1 エンジンオイル劣化検知装置(静電容量測定装置)
CS1 センシングコンデンサ
IC1 マイコン(測定信号生成部、位相基準電圧波形生成部、静電容量情報生成手段、静電容量情報補正出力手段、電圧出力部、電圧出力制御手段)
13 CPU
3 電流−電圧変換回路
4 切り替え回路
C4 基準コンデンサ(基準素子)
Claims (13)
- 測定対象物の静電容量を測定するために、該測定対象物を誘電体とするセンシングコンデンサを形成し、
電圧が周期的に変化する測定信号を該センシングコンデンサに入力して得られる通過電流波形を電流−電圧変換することによりセンサ応答電圧波形を生成し、
他方、前記測定信号を用いて前記センサ応答電圧波形の位相基準を与える位相基準電圧波形を生成し、
前記センサ応答電圧波形に基づく前記測定対象物の静電容量情報を、前記センサ応答電圧波形と前記位相基準電圧波形との位相差(以下、第一の位相差という)に基づいて補正し、当該補正後の静電容量情報を出力することを特徴とする静電容量測定方法。 - 測定対象物の静電容量を測定するために、該測定対象物を誘電体とする形で形成されるセンシングコンデンサと、
該センシングコンデンサに入力される、電圧が周期的に変化する測定信号を生成する測定信号生成手段と、
前記測定信号による前記センシングコンデンサの通過電流波形を電流−電圧変換することによりセンサ応答電圧波形として出力する電流−電圧変換回路と、
前記測定信号を用いて前記センサ応答電圧波形の位相基準を与える位相基準電圧波形を生成する位相基準電圧波形生成手段と、
前記センサ応答電圧波形に基づいて前記測定対象物の静電容量情報を生成する静電容量情報生成手段と、
前記センサ応答電圧波形と前記位相基準電圧波形との位相差(以下、第一の位相差という)に基づいて前記静電容量情報を補正し、当該補正後の静電容量情報を出力する静電容量情報補正出力手段と、
を有することを特徴とする静電容量測定装置。 - 前記位相基準電圧波形生成手段は、
前記測定信号が入力されるとともに、前記測定信号に対するコンダクタンスの温度係数が前記センシングコンデンサよりも小さい基準素子と、
前記測定信号による該基準素子の通過電流波形を電流−電圧変換することにより、前記位相基準電圧波形をなす基準素子応答電圧波形を出力する電流−電圧変換回路とを含む請求項2記載の静電容量測定装置。 - 前記測定信号生成手段は、前記測定信号として正弦波信号を生成し、
前記静電容量情報生成手段は、前記センサ応答電圧波形の振幅に基づいて前記静電容量情報を算出し、
前記静電容量情報補正出力手段は、前記センサ応答電圧波形の振幅に対し、前記第一の位相差を角度変数として含む正弦関数補正係数を乗じた値を補正振幅として算出する請求項2又は3に記載の静電容量測定装置。 - 前記基準素子として、前記測定信号に対するコンダクタンスが、前記センシングコンデンサのコンダクタンスに対し無視しうる程度に小さい基準コンデンサが使用される請求項3又は4に記載の静電容量測定装置。
- 前記正弦関数補正係数として前記第一の位相差ν1の余弦値cosν1を用い、これを前記振幅A0に乗じた値A0’≡A0cosν1を前記補正振幅として算出する請求項5記載の静電容量測定装置。
- 前記静電容量情報生成手段は、前記センサ応答電圧波形を一定時間間隔にてサンプリングすることにより電圧サンプリング点の組を取得し、それら電圧サンプリング点の組を用いて、前記静電容量情報を算出するための前記センサ応答電圧波形の振幅を算出する請求項2ないし6のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
- 前記測定信号生成手段が前記センシングコンデンサと前記基準素子との間で共用化されており、それらの接続を、前記センシングコンデンサと前記基準素子との間で切り替える切り替え回路が設けられている請求項2ないし7のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
- 前記切り替え回路による接続の切り替えを一定周期毎に繰り返し実行させる切り替え制御手段を備える請求項8記載の静電容量測定装置。
- 前記測定信号生成手段は、
複数のアナログ設定電圧のうち、1のものを選択して出力する電圧出力部と、
前記複数のアナログ設定電圧を予め定められた順序及び周期にて切り替えることにより、階段状の信号波形が出力されるよう、前記電圧出力部の電圧出力を制御する電圧出力制御手段とを備える請求項2ないし9のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。 - 前記電圧出力制御手段はCPUであり、
前記電圧出力部は、各々前記CPUにより第一電圧レベルと該第一電圧レベルよりも低い第二電圧レベルとの間で切り替え制御可能な複数の電圧出力ポートを有するものであり、
それら電圧出力ポートに分圧抵抗がそれぞれ接続されるとともに、それら分圧抵抗の末端が抵抗分圧点として共通結線され、前記第一電圧レベルに設定される電圧出力ポートの分圧抵抗に基づく第一合成抵抗と、前記第二電圧レベルに設定される電圧出力ポートの分圧抵抗に基づく第二合成抵抗との分圧比により定まる前記抵抗分圧点の電圧が、前記複数の電圧出力ポートの電圧設定状態の組合せに対応したアナログ設定電圧として出力される請求項10に記載の静電容量測定装置。 - 前記測定信号生成手段は、前記複数のアナログ設定電圧の切り替え順序を正弦波の軌跡をたどるように設定するものであり、該階段状の信号波形を平滑化して出力するローパスフィルタ回路を有する請求項10又は11に記載の静電容量測定装置。
- 劣化検知対象となるオイルを前記測定対象物として、該オイル中に浸漬される電極対により前記センシングコンデンサを形成し、そのセンシングコンデンサの静電容量変化に基づいて、該オイルの劣化検知を行なうオイル劣化検知装置として構成された請求項2ないし12のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
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---|---|---|---|
JP2002375242A JP2004205365A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | 静電容量測定方法及び装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009265043A (ja) * | 2008-04-29 | 2009-11-12 | Ngk Spark Plug Co Ltd | 静電容量式センサの異常検出装置 |
WO2018215615A1 (de) * | 2017-05-24 | 2018-11-29 | Elmos Semiconductor Aktiengesellschaft | Vorrichtung und verfahren zur vermessung einer messkapazität |
JP2021503090A (ja) * | 2017-11-15 | 2021-02-04 | フォーティートゥー・センサーズ・リミテッド4T2 Sensors Ltd | 流体を監視するための装置 |
-
2002
- 2002-12-25 JP JP2002375242A patent/JP2004205365A/ja not_active Withdrawn
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