JP2004205298A - フィルターを用いたピロリン酸の比色検出法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ピロリン酸の簡便な比色検出方法を提供し、更にそれを利用して核酸増幅反応を簡便に比色検出する。
【解決手段】以下の工程を含む、フィルターを用いたピロリン酸の比色検出方法。;工程(イ)ピロリン酸を含む溶液にピロリン酸検出のための試薬を加えて不溶性色素を生成させる工程;工程(ロ)該溶液を多孔質体からなるフィルターで濾過して不溶性色素をフィルターに捕捉する工程;工程(ハ)該フィルターに捕捉された不溶性色素を比色検出する工程。(ロ)と(ハ)との間にフィルターを洗浄して発色を止める工程を加えてもよい。
ピロリン酸を含む溶液として核酸増幅反応後の反応溶液を用い、核酸増幅反応の検出法として使用することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】以下の工程を含む、フィルターを用いたピロリン酸の比色検出方法。;工程(イ)ピロリン酸を含む溶液にピロリン酸検出のための試薬を加えて不溶性色素を生成させる工程;工程(ロ)該溶液を多孔質体からなるフィルターで濾過して不溶性色素をフィルターに捕捉する工程;工程(ハ)該フィルターに捕捉された不溶性色素を比色検出する工程。(ロ)と(ハ)との間にフィルターを洗浄して発色を止める工程を加えてもよい。
ピロリン酸を含む溶液として核酸増幅反応後の反応溶液を用い、核酸増幅反応の検出法として使用することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピロリン酸の簡便な比色検出方法、及びそれを利用した核酸増幅反応の簡便な比色検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCR法やLAMP法などの核酸増幅反応を簡便に検出する方法としては、大別して増幅産物である二本鎖DNAを検出する方法と副産物としてのピロリン酸(二リン酸)を検出する方法の2つがある。二本鎖DNAを検出する方法としては、Ethidium BromideやSYBR Greenなどの蛍光インターカレーターを用いて検出する、あるいは増幅反応の際に標識ヌクレオチドを取り込ませて蛍光や抗体で検出する方法が知られている。ピロリン酸を検出する方法としては、ピロリン酸をATPに変換してルシフェリン−ルシフェラーゼの系で発光させて検出する、あるいはピロリン酸がMg2+と結合して沈殿を形成する性質を利用して白濁で検出する方法などが報告されている。白濁で検出する方法は簡便ではあるが、目視で判定しにくいという欠点があった。
【0003】
ピロリン酸を発色させれば、より目視に適した検出法になる。1つの方法は、ピロリン酸をリン酸に分解してから発色させる方法である。リン酸の測定法としては、モリブデン酸による化学法がよく知られている。無機リン溶液を硫酸などで酸性にし、これにモリブデン酸を加えると6価のリンモリブデン酸錯体を形成する。この錯体を340nmでの比濁法として直接測定する術式が提唱されている。しかし、一般には6価のリンモリブデン酸錯体に何らかの還元剤を加え、3価のリンモリブデン酸錯塩に還元させると、モリブデンブルーと言われる青色を呈し、これを測定する方法が取られている。この際、遊離のモリブデン酸は還元剤の作用を受けないので、青色調はリンと結合しているモリブデン酸に比例して発色する。これにより、無機リンが測定可能となる。用いる還元剤によっていくつかの術式が報告されているが、Fiske-Subbarow法に代表される1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸を用いることが主流となっている(非特許文献1)。
【0004】
また、リンモリブデン酸アンモニウム錯体をアスコルビン酸および亜砒酸ナトリウム−クエン酸ナトリウムで還元して青色のモリブデート錯体を得る方法もある。このような目的に使用できる有用な水溶性モリブデン酸塩としては、モリブデン酸アンモニウムの他にモリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カドミウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ビスマス、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸亜鉛およびモリブデン酸アルキルアンモニウム(アルキル基は1〜6個の炭素原子を有する)がある。また、リンモリブデン酸アンモニウム錯体を還元する代表的な還元剤としては、1‐アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸の他に硫酸p-メチルアミノフェノール、塩化第一錫、フェニルヒドラジン、ヒドロキノン、硫酸第一鉄、アスコルビン酸、アミノナフトールスルホン酸、2,4-ジアミノフェノール、N-フェニル-p-フェニレンジアミン並びにハロゲン化銀現像主薬として写真技術分野で既知である別の既知フェノール系およびフェニレンジアミン化合物、そして特にアミン含有現像主薬の酸付加塩がある(特許文献1)。
【0005】
直接、ピロリン酸をモリブデン酸による化学法で測定する方法も報告されている。Gu-Gang Changらは、アミノアシル−tRNA合成酵素(EC6.1.1.0)の簡便な測定法として、試料にメルカプトエタノールとモリブデン酸アンモニウムの硫酸溶液を加えて室温で20分放置し、発色した溶液の580nmの吸光度を測定してピロリン酸を定量する、という方法を開発した(非特許文献2)。ピロリン酸の定量範囲は5-150mMである。ピロリン酸の580nmでの吸光係数が2.42x104M-1cm-1で、リン酸の吸光係数が6.01x103M-1cm-1であるので、この方法はピロリン酸により選択的な測定方法である。該方法は簡便で優れた方法であるが、▲1▼発色は10分間だけ安定である、▲2▼メルカプトエタノールとモリブデン酸アンモニウムを混合しただけのブランクが発色する、という欠点があった。また、該論文には該方法を核酸増幅の検出法として使用する記述はなく、フィルター上で検出するという記述もない。
【0006】
【特許文献1】
特開平7-59600
【非特許文献1】
臨床検査技術学 10 臨床化学 第2版p58
【非特許文献2】
Analytical Biochemistry 130, 171-176(1983)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ピロリン酸の簡便な比色検出方法を提供し、更にそれを利用して核酸増幅反応を簡便に比色検出することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、モリブデンブルーと呼ばれる青色の不溶性色素が不織布などの多孔質体からなるフィルターで捕捉でき、更にフィルター上で洗浄するとその呈色反応が停止してピロリン酸を簡便かつ明瞭に比色検出できること、更にこの方法を利用して核酸増幅反応を簡便に比色検出できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(27)の発明を包含する。
(1) 以下の工程を含む、フィルターを用いたピロリン酸の比色検出方法。
工程(イ)ピロリン酸を含む溶液にピロリン酸検出のための試薬を加えて該不溶性色素を生成させる工程;
工程(ロ)該溶液を多孔質体からなるフィルターで濾過して該不溶性色素をフィルターに捕捉する工程;
工程(ハ)該フィルターに捕捉された不溶性色素を比色検出する工程
(2) (1)で工程(ロ)と(ハ)の間に、該フィルターを洗浄液で洗って発色反応を止める工程が追加される(1)に記載の方法。
(3) 洗浄液が硫酸である(2)に記載の方法。
(4) ピロリン酸を含む溶液が核酸増幅反応後の反応溶液であり、比色検出したピロリン酸を指標として核酸増幅反応を検出する(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 核酸増幅反応の鋳型が不織布に吸着された核酸である(4)に記載の方法。
(6) 核酸増幅反応の方法がLAMP法である(4)または(5)に記載の方法。
(7) ピロリン酸検出のための試薬がモリブデン酸塩と還元剤を含む(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)モリブデン酸塩がモリブデン酸アンモニウムである(7)に記載の方法。
(9)還元剤がメルカプト基(-SH)を持つ化合物である(7)または(8)に記載の方法。
(10) 還元剤が2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロールまたはDL-ジチオトレイトールである(9)に記載の方法。
【0010】
(11) 以下の工程を含む、フィルターを用いたピロリン酸の比色検出方法。
工程(イ)溶液中のピロリン酸をリン酸に分解する工程;
工程(ロ)該溶液にリン酸検出のための試薬を加えて不溶性色素を生成させる工程;
工程(ハ)該溶液を多孔質体からなるフィルターで濾過して不溶性色素をフィルターに捕捉する工程
工程(ニ)該フィルターに捕捉された不溶性色素を比色検出する工程
(12) 工程(ハ)と(ニ)の間に、該フィルターを洗浄液で洗って発色反応を止める工程が追加される(11)に記載の方法。
(13) 洗浄液が硫酸である(12)に記載の方法。
(14) ピロリン酸を含む溶液が核酸増幅反応後の反応溶液であり、比色検出したピロリン酸を指標として核酸増幅反応を検出する(11)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15) 核酸増幅反応の鋳型が不織布に吸着された核酸である(14)に記載の方法。
(16) 核酸増幅反応の方法がLAMP法である(14)または(15)に記載の方法。
(17) 無機ピロホスファターゼでピロリン酸をリン酸に分解する(11)〜(16)のいずれかに記載の方法。
(18) リン酸検出のための試薬がモリブデン酸塩と還元剤を含む(11)〜(17)のいずれかに記載の方法。
(19) モリブデン酸塩がモリブデン酸アンモニウムである(18)に記載の方法。
(20) 還元剤が1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸である(18)または(19)に記載の方法。
【0011】
(21) 多孔質体からなるフィルターの材質が親水性または疎水性である(1)〜(20)のいずれかに記載の方法。
(22) 多孔質体からなるフィルターの孔径が0.1〜150μmである(1)〜(21)のいずれかに記載の方法。
(23) 多孔質体からなるフィルターが不織布である(1)〜(21)のいずれかに記載の方法。
(24) 核酸増幅反応の鋳型が不織布に吸着された核酸であり、多孔質体からなるフィルターが核酸を吸着した該不織布である(4)、(6)、(14)、(16)のいずれかに記載の方法。
(25) 不織布の孔径が2〜150μmである(23)〜(24)のいずれかに記載の方法。
(26) 不織布の素材がポリエステル、ポリプロピレンまたはナイロンである(23)〜(25)のいずれかに記載の方法。
(27) 不織布の素材がポリエチレンテレフタレートである(23)〜(25)のいずれかに記載の方法。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においてピロリン酸検出のための試薬とは、ピロリン酸イオン(P2O7 4-)と反応して不溶性色素を生成させるものであれば如何なるものでも使用可能である。不溶性色素は白色以外が好ましいが、色素の捕捉に用いるフィルターが有色であれば白色色素でもよい。このようなピロリン酸検出のための試薬としては、次のようなものが知られている。例えば、Ba(NO3)2またはBaCl2をピロリン酸溶液に加えると白色無定形のピロリン酸バリウムを沈殿する(新訂 定性分析化学中巻 イオン反応編 p311 (南江堂))。AgNO3は白色凝乳状のピロリン酸銀を沈殿する。MgSO4は、冷時白色のピロリン酸マグネシウムMg2P2O7を沈殿する。CuSO4は酢酸酸性溶液から青白色のCu塩を沈殿する。Cd(NO3)2は酢酸酸性溶液から白色のCd2P2O7を沈殿する。(NH4)2MoO4をピロリン酸溶液に加えてHNO3酸性下で加温すると、ピロリン酸が正リン酸に変わるので黄色のリン・モリブデン酸アンモニウムを沈殿する。
【0013】
本発明において、リン酸検出のための試薬とは、リン酸イオン(PO4 3-)と反応して不溶性色素を生成させるものであれば如何なるものでも使用可能である。不溶性色素は白色以外が好ましいが、色素の捕捉に用いるフィルターが有色であれば白色色素でもよい。このようなリン酸検出のための試薬としては、次のようなものが知られている。Ba(NO3)2またはBaCl2をリン酸第二塩溶液に加えると白色の沈殿を生ずる(新訂 定性分析化学 中巻 イオン反応編 p305 (南江堂))。Sr(NO3)2またはCa(NO3)2はBa2+の場合と同様にSr塩またはCa塩を沈殿する。Pb(CH3COO)2は白色の第三リン酸鉛を沈殿する。AgNO3は黄色の第三リン酸銀を沈殿する。Bi(NO3)3は白色結晶性の第三リン酸ビスマスを沈殿する。FeCl3は中性または酢酸酸性溶液から黄白色の第三リン酸鉄を沈殿する。Al塩は、FeCl3と同様の反応によって白色の第三リン酸アルミニウムを沈殿する。酢酸ウラニルUO2(CH3COO)2は酢酸酸性溶液から淡黄色のリン酸水素ウラニルを沈殿する。酸化塩化ジルコニウムZrOCl2は、0.3N HClぐらいの酸性溶液で白色のゲル状のリン酸ジルコニウムを完全に沈殿する。マグネシウム混液(Mg塩、NH4塩およびNH3水の混液)は白色結晶性のリン酸アンモニウム・マグネシウムMgNH4PO4・6H2Oを沈殿する。(NH4)2MoO4の過量はHNO3酸性溶液から冷時徐々に、温時速やかに黄色結晶性のリン・モリブデン酸アンモニウムを沈殿する。(NH4)2MoO4およびbenzidineの酢酸溶液は充分量のCH3COONaの共存で青色を呈する。(NH4)2MoO4および硫酸ストリキニーネは酸性溶液で白色無定形沈殿を生ずる。メタスズ酸の過量はHNO3酸性溶液でリン酸を定量的に沈殿させる。
【0014】
本発明においてピロリン酸検出のための試薬がモリブデン酸塩と還元剤を含む場合、モリブデン酸塩としてはピロリン酸と錯体をつくるものであれば如何なるものでも使用可能である。このようなモリブデン酸塩の例としてはモリブデン酸アンモニウムがある。また還元剤としては、ピロリン酸とモリブデン酸アンモニウムが反応してできる錯体を還元して青緑色の化合物を生成させるものであれば如何なるものでも使用可能である。このような還元剤の例としては、2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロール、DL-ジチオトレイトール(DTT)などのSH基を有する還元剤がある。
【0015】
本発明において、リン酸検出のための試薬がモリブデン酸塩と還元剤を含む場合、モリブデン酸塩としてはリン酸と錯体をつくるものであれば如何なるものでも使用可能である。このようなモリブデン酸塩の例としてはモリブデン酸アンモニウムがあり、その他にモリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カドミウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ビスマス、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸亜鉛およびモリブデン酸アルキルアンモニウム(アルキル基は1〜6個の炭素原子を有する)がある。また還元剤としては、リン酸とモリブデン酸アンモニウムが反応してできる錯体を還元して青色の化合物を生成させるものであれば何でも使用することができる。このような還元剤の例としては、2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロール、DTTなどのSH基を有する還元剤があり、その他に硫酸p-メチルアミノフェノール、塩化第一錫、フェニルヒドラジン、ヒドロキノン、硫酸第一鉄、アスコルビン酸、アミノナフトールスルホン酸、2,4-ジアミノフェノール、N-フェニル-p-フェニレンジアミン並びにハロゲン化銀現像主薬として写真技術分野で既知である別の既知フェノール系およびフェニレンジアミン化合物、そして特にアミン含有現像主薬の酸付加塩が挙げられる。
【0016】
本発明において多孔質体からなるフィルターとは、一方の面から他方の面に連通する多数の微細な孔を有し、不溶性色素を捕捉できる平均孔径を有する通気性のフィルターを意味する。平均孔径は0.1〜150mmであれば使用可能であるが、0.1〜20mmがより好ましい。多孔質体からなるフィルターの孔の形状やその連通状態、フィルターの厚さ、材質、形状、寸法等は特に問わず、多孔質体からなるフィルターはフィルム、シート、膜、板塊状、繊維状、粒状等の任意の形態であることができる。材質は親水性でも疎水性でも使用可能であるが、疎水性がより好ましい。多孔質体からなるフィルターは有機材料および無機材料のいずれからなっていてもよく、また天然材料、合成材料または半合成材料からなっていてもよい。多孔質体からなるフィルターの例としては天然、合成、半合成、再生の有機または無機繊維からなる多孔質体; 有機または無機発泡体(例えばスポンジ、フォームなど); 孔成分の溶出、焼結、延伸、穿孔などにより孔形成された有機、無機多孔質体; 有機または無機の微粒子や細片を充填または結合した多孔質体; 濾紙などを挙げることができる。例えば、繊維からなる多孔質体フィルターの場合は、繊維は有機または無機の短繊維、スライバー、長繊維のいずれからなっていてもよく、しかもフィルターの形態は、単なる繊維の塊でもよく、また不織布または織布よりなる繊維布層の1層または複数層でもよい。しかし織布および不織布の方が、一般に単位重量あたりの表面積が大きく、更に液の流れる方向におけるフィルターの厚みを薄くすることができる。このため圧力損失が小さく、大きな溶液処理速度を出せるようになるので、織布および不織布の方が好ましい。更に、製造の容易さの点から不織布が最も好ましく用いられる。織布とは、縦糸と横糸とが交錯してできた布地を意味する。
【0017】
本発明において不織布とは、短繊維またはフィラメントを機械的、熱的、化学的な手段を用いて接着または交絡させて作るシート状またはウェブ構造のものである(第2版 繊維便覧 繊維学会編 丸善)。不織布はさまざまな方法で生産されるが、基本的な工程はウェブ(繊維の方向がある程度揃った繊維塊のシート状のもの)の形成工程と、ウェブの接着工程、それに仕上げ工程である。不織布には天然繊維から化学繊維まで種々の繊維が用いられているが、一般的に用いられているのは綿、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンで、その他アクリル、ビニロン、ガラス繊維、パルプ、炭素繊維なども使用される。ウェブを形成する方式は、湿式、乾式および直接式に大別される。直説法は紡糸直結式ともいわれる方法で、溶融高分子溶液から紡糸された繊維を集めて直接ウェブとする工程である。これに含まれる方法は、スパンレース法、スパンボンド法、メルトブロー法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法などであるが、本発明にはメルトブロー法でつくられた超極細繊維不織布が最も適している。
【0018】
不織布の孔径は2〜150mmのものが適しているが、2〜20mmのものがより好ましい。ここで、不織布の平均孔径とは水銀ポロシメーターによって測定した測定値(メディアン値)をいう。平均孔径は、フィルター要素を構成する繊維の絡み具合や空隙の大きさに関連している指標である。本発明に適した不織布の例としては、旭化成のポリエチレンテレフタレート製不織布A040C01が挙げられる。不織布A040C01の平均孔径は10mmである。また、本発明で用いられる不織布は表面がコーティングされたものであっても良い。A040C01とA040C01/HM‐3コートの比較で明らかなように、親水性が増したA040C01/HM-3コートも使用可能であるが、疎水性の強いA040C01がより好ましい。両者は同じ不織布の未コート品(A040C01)とHM‐3コート品(A040C01/HM‐3コート)であり、未コート品の表面は負に、HM‐3コート品の表面は正に荷電していることがわかっている。ここでA040C01/HM‐3コートとは、HM-3(2‐ヒドロキシエチルメタアクリレートとN,N-ジメチルエチルメタアクリレートからなる共重合体、HEMA:DM=97:3)をエタノールに溶解した溶液でA040C01をコーティングしたものである。
【0019】
本発明において用いられる洗浄液は、フィルターに捕捉された色素を可溶化することなく、ピロリン酸またはリン酸検出のための試薬やピロリン酸、リン酸、またはこれらを発生させる化合物を洗浄できる溶液であればよい。例えば、モリブデン酸アンモニウムの硫酸溶液、2‐メルカプトエタノールとピロリン酸で生成した青色色素の洗浄には硫酸が使用できる。
【0020】
本発明において、核酸を増幅する工程とはPCRに代表される特定の標的核酸配列を増幅させる方法であり、PCR以外にLigase Chain Reaction(LCR), Transcription-Mediated Amplification(TMA), Branched DNA (bDNA) Assay Nucleic AcidSequence Based Amplification (NASBA), Strand Displacement Amplification(SDA), Cycling Probe Technology (CPT), Q-Beta Replicase Amplification Technology, Rolling Circle Amplification Technology (RCAT), Loop-Mediated Isothermal Amplification (LAMP), Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids (ICAN)などの方法を含むが、これらに限定されるものではない。Q-Beta Replicase, RCAT, NASBA, SDA、TMA, LAMP, ICANなどはIsothermal (一定温度)で増幅反応を行い、その他のPCR, LCRなどは Thermal Cycling (温度サイクリング)で増幅反応を行う。核酸を増幅する方法としては、溶液状態の精製核酸を反応系に加えて核酸増幅を行う一般の方法以外に、例えば国際特許出願PCT/JP02/06939号で開示されている不織布に吸着された核酸を鋳型として核酸増幅を行う方法も含まれる。
【0021】
本発明において、比色検出とは色の対比で陰性と陽性を判別するということで、前述のように白色の不溶性色素を有色フィルター上で検出することも含む。検出は、目視であっても装置による測定であっても良い。
【0022】
本発明において、ピロリン酸をリン酸に分解する工程としては、加熱や無機ピロホスファターゼの使用が考えられる。本発明において無機ピロホスファターゼとは、ピロリン酸を加水分解して2分子の正リン酸を生じる反応を触媒するEC3.6.1.1.の酵素である。核酸増幅の比色検出には、dNTPsを分解してリン酸を遊離するホスファターゼ活性を含まない無機ピロホスファターゼを使用しなければならない。
本発明で記載した方法は、(1)多孔質体からなるフィルターを組み込んだ装置と(2)ピロリン酸またはリン酸の検出試薬、を含むキットを用いれば簡単に実施することができる。(1)の装置は、例えばウェルの底にフィルターを組み込んで濾過できるようにした96穴プレートと濾液を吸収するための吸水パットから成る装置である。(2)の検出試薬は、例えばモリブデン酸アンモニウムの硫酸溶液、還元剤、洗浄液からなる。ピロリン酸またはリン酸を含む溶液にモリブデン酸アンモニウムの硫酸溶液と還元剤を加えて発色させ、この溶液を上記の96穴プレートに入れてフィルターに不溶性青色色素を捕捉する。その後、洗浄液で洗浄して、結果をCCDカメラに撮って保存すれば、本発明で記載した方法を簡便に実施することができる。
【0023】
本発明の利点について説明する。
本発明は、核酸増幅を簡便、迅速に検出する方法を提供するものである。例えば、LAMP法による核酸増幅を簡便に目視で検出する従来法としては、白濁による検出法と蛍光による検出法があった。しかし、白濁法には目視判定が困難である、という欠点があり、また蛍光法には増幅が起こらなくても蛍光が出て擬陽性になる場合があった。また、Gu-Gang Changらによって開発されたピロリン酸定量法(Analytical Biochemistry 130, 171-176 (1983))を適用した場合、LAMP法による核酸増幅が起こった陽性サンプルの発色が安定しない、LAMP法による核酸増幅が起こっていない陰性サンプルでも徐々に発色する、測定に時間がかかる、といった欠点があった。このような従来法と比較した場合、本発明は(1)白濁法と比較すると目視判定が容易である、(2)発色反応を途中で停止させ保存することができるので、最適な検出ポイント(例えばブランクが発色してくる前)で反応を停止して目視判定し、後でその結果を確認することも可能である、(3)フィルター上に色素を濃縮できるので溶液状態での検出より感度が高い、(4)迅速である、といった利点がある。
【0024】
本発明は、国際特許出願PCT/JP02/06939号で開示されている方法と組み合わせると更に有用である。国際特許出願PCT/JP02/06939号では不織布を用いて核酸を精製し増幅する方法が開示されており、該方法は以下の工程を含む。(1)細胞を破壊して細胞抽出液を調製する工程;(2)細胞抽出液を不織布に接触させて、細胞抽出液中の核酸を不織布に吸着させる工程;(3)該不織布に核酸を増幅するための溶液を加えて、該不織布に吸着された核酸を鋳型として核酸を増幅する工程。該出願で開示されている核酸精製に使用される不織布は、本発明の不溶性色素を捕捉するフィルターとしても使用可能である。例えば、旭化成の不織布A040C01は国際特許出願PCT/JP02/06939号の発明にも使用できるし本発明にも使用できる。すなわち、本発明と該出願で開示されている発明によれば、1つの不織布上で核酸の精製と増幅を行い、更にその不織布上で増幅の有無を比色で検出することが可能となる。もちろん、精製・増幅と検出を別のフィルター上で行っても良い。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
【実施例1】
ピロリン酸とリン酸の比色検出
25mlの2mM ピロリン酸ナトリウムを含む溶液A(20mM Tris(pH8.8)/10mM KCl/8mM MgSO4/10mM (NH4)2SO4/0.1% Tween20/0.8M Betaine/1.4mM dNTPs)を準備し、これに2.5mlの1M 2-メルカプトエタノールと10mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加えて室温で1〜3分放置した。溶液にピロリン酸が含まれると、溶液は青く発色した。この溶液37.5mlを不織布A040C01(旭化成)に通して生成した不溶性青色色素を不織布にトラップし、100mlの2N 硫酸で洗浄した。反応直後の結果を図1Aに、2時間後の結果を図1Bに示す。発色は安定であり、ブランクが発色することはなかった。更に、2mM ピロリン酸ナトリウムを含む溶液Aと2mM リン酸ナトリウムを含む溶液Aを準備し、同様の実験を行った。結果を図2に示す。リン酸でも発色したが、発色の程度はピロリン酸より弱かった。
【0026】
洗浄の効果
洗浄の効果を確認するために、最後の2N 硫酸の洗浄を省略した実験を行った。すなわち、70mlの2mM ピロリン酸ナトリウムを含む溶液A(20mM Tris(pH8.8)/10mM KCl/8mM MgSO4/10mM (NH4)2SO4/0.1% Tween20/0.8M Betaine/1.4mM dNTPs)を準備し、これに7mlの1M 2-メルカプトエタノールと28mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加えて室温で1〜3分放置した。この溶液37.5mlを不織布A040C01(旭化成)に通して生成した不溶性青色色素を不織布にトラップした。図3は実験終了2時間後に撮影した結果である。
実施例1と異なり、ブランクも青く発色して洗浄の効果が確認された。しかし、洗浄工程を省略しても、ブランクとピロリン酸を含む溶液の発色強度には差があり、比色は可能であった。
【0027】
【実施例2】
LAMP 法の増幅検出
大腸菌のgyrB(DNA gyrase subunitB、typeII topoisomerase、ATPase activity)の配列から、LAMP法の増幅プライマーをデザインした。配列表配列番号1のF3プライマー、配列番号2のFIPプライマー、配列番号3のLoopFプライマー、配列番号4のB3プライマー、配列番号5のBIPプライマー、配列番号6のLoopBプライマーをデザインして、日本バイオサービス社に依頼して化学的に合成した。
【0028】
増幅反応は20mlの反応液中で行った。反応液には、大腸菌精製ゲノム 10pg、F3 primerとB3 primerをそれぞれ0.2mM、FIP primerとBIP primerをそれぞれ1.6mM、LoopF primerとLoopB primerをそれぞれ0.8mM、1.4mM dNTPs、0.8M Betaine、20mM Tris-HCl(pH8.8)、10mM KCl、10mM (NH4)2SO4、0.1% TritonX-100、6.4 unitsのBst DNA Polymerase large fragment (New England Biolabs)を含み、MgSO4濃度が、2mM、4.5mM、7mM、9.5mM、12mMになるようにそれぞれ加えた。
反応液は混和後速やかに63℃または65℃のヒートブロック上で40分間インキュベートした。反応終了後、80℃で2分間処理して酵素を失活させた後、4℃に冷却した。
【0029】
反応産物の一部をアガロースゲル電気泳動にかけて増幅の有無を確認した。電気泳動は2%アガロースゲルを用い、100V 30分間泳動した後、エチジウムブロマイドによって染色し、UV照射下での発光を観察した。結果を図4に示す。次にアガロースゲル電気泳動で増幅が確認されたサンプルをポジコン、増幅していないことが確認されたサンプルをネガコンとして発色反応を行った。すなわち、ネガコンとポジコンのLAMP反応液をそれぞれ15mlとり、これに1.5mlの1M 2-メルカプトエタノールと6mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加えて室温で1〜3分放置した。この溶液22.5mlを不織布A040C01(旭化成)に通して生成した不溶性青色色素を不織布にトラップし、100mlの2N 硫酸で洗浄した。結果を図5に示す。電気泳動の結果と一致した発色が見られ、しかも反応時間は1分で十分であった。
【0030】
【実施例3】
LAMP 法の増幅検出―ピロリン酸をリン酸に分解してから発色する方法
実施例2のようなLAMP法で核酸が増幅された反応液(ポジコン)と核酸増幅が起こらなかった反応液(ネガコン)を準備する。これらの反応液に無機ピロホスファターゼ(Sigma I1891)を加えて37℃で充分反応させ、ピロリン酸をリン酸に分解する。このリン酸をFiske-Subbarow法で発色させる。すなわち、反応液に0.2容の2.5% モリブデン酸アンモニウム/3N 硫酸と0.2容の還元剤を添加する。ここで還元剤としては、亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 58.5g、無水亜硫酸ナトリウムNa2SO31.0gおよび1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸 1.0gを細砕混和して褐色瓶中に保存し、この7.5gを精製水50mlに溶かし濾過したものを用いる。
室温で数分反応させてから、不織布A040C01(旭化成)に通して生成してくる不溶性青色色素を不織布にトラップして2N 硫酸で洗浄する。ポジコンを通した不織布は青く染まり、ネガコンの不織布は無色のままである。また、不織布にトラップした後の硫酸洗浄は省略しても良い。この場合、ネガコン不織布は反応直後は無色のままであるが、時間の経過と共に青く着色してくる。
【0031】
【実施例4】
フィルターの孔径
実施例1と同様な実験を、フィルターの種類を替えて行った。すなわち、25mlの2mM ピロリン酸ナトリウムを含む溶液A(20mM Tris(pH8.8)/10mM KCl/8mM MgSO4/10mM (NH4)2SO4/0.1% Tween20/0.8M Betaine/1.4mM dNTPs)を準備し、これに2.5mlの1M 2-メルカプトエタノールと10mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加えて室温で2分放置した。溶液にピロリン酸が含まれると、溶液は青く発色した。この溶液37.5mlを、あらかじめ水1mlを流して前処理したフィルター1枚に通して、更に100mlの2N 硫酸で洗浄した。フィルターは、表1に示したものを用いた。表1でA040C01とはポリエチレンテレフタレート(PET)製の不織布で疎水性であり、このHM-3コート品であるA040C01/HM-3(HM-3(2-ヒドロキシエチルメタアクリレートとN,N-ジメチルエチルメタアクリレートからなる共重合体、HEMA:DM=97:3)をエタノールに溶解した溶液でA040C01をコーティングしたもの)は親水性である。また、セルロース製のTS100は親水性であるが、他の不織布A066A、N05070、E01030、P03015、P03050は疎水性である。結果を図6に示す。トラップされる色素の量に差はあるが、不織布A040C01、A040C01/HM−3コート、A066A、TS100、N05070、E01030、P03015、P03050、及びフィルターAcrodisc、MILLEX-HA、Syringe Filterが使用可能であった。平均孔径0.1μmのSyringe Filter及び平均孔径130μmのE01030が使用可能であったことから、フィルターの孔径としては0.1〜130mmのものが使用できる。トラップされる色素量が多いことから、0.1〜13mmのものがより好ましかった。更に材質としては、不織布A040C01と不織布A040C01/HM-3の結果を比較すると、親水性のA040C01/HM−3ではトラップされた色素がフィルター全体に滲んで見にくくなっているが、疎水性のA040C01では色素が1点(液を濾過した点)に集中しており見やすいことがわかる。同じく親水性のTS100も色素が滲んでしまうことから、親水性より疎水性のフィルターがより好ましいと言える。
【0032】
【表1】
【0033】
【実施例5】
還元剤の検討
まず、実施例1と同様な系で還元剤の検討を行った。すなわち、25mlの2mM ピロリン酸ナトリウムを含む溶液Aを準備し、これに2.5mlの1M 2-メルカプトエタノール、1.3M 1-Thioglycerol、0.35M DL-Dithiothreitol(DTT)、または1M アスコルビン酸を加えて、更に10mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加え、室温で3分放置した。ピロリン酸ナトリウムを含まない溶液Aで同様な実験を行い、ブランクとした。この溶液37.5mlを不織布A040C01(旭化成)に通して生成した青色色素を不織布にトラップし、100mlの2N 硫酸で洗浄した。結果を図7に示す。1-ThioglycerolとDTTは2-メルカプトエタノールと同様に使用できたが、アスコルビン酸ではピロリン酸を検出できなかった。
【0034】
次に、LAMP反応の増幅検出に1-ThioglycerolとDTTが使用できるかを検討した。まず実施例2と同様なLAMP増幅反応を行った。すなわち、MgSO4を5mM、6mM、7mM、または8mM含み、他の溶液組成、プライマー、テンプレートは実施例2と同じであるLAMP反応液を準備し、65℃で40分反応した。反応終了後、80℃で2分間処理して酵素を失活させた後、4℃に冷却した。反応産物の一部をアガロースゲル電気泳動にかけて増幅の有無を確認した。電気泳動は2%アガロースゲルを用い、100V 30分間泳動した後、エチジウムブロマイドによって染色し、UV照射下での発光を観察した。結果を図8に示す。次にアガロースゲル電気泳動で増幅が確認されたサンプルをポジコン、増幅していないことが確認されたサンプルをネガコンとして発色反応を行った。すなわち、ネガコンとポジコンのLAMP反応液をそれぞれ15mlとり、これに1.5mlの1M 2-メルカプトエタノール、1.3M 1-Thioglycerol、または0.35M DTTを加えて、更に6mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加え、室温で3分放置した。この溶液22.5mlを不織布A040C01(旭化成)に通して生成した青色色素を不織布にトラップし、100mlの2N 硫酸で洗浄した。結果を図9に示す。電気泳動の結果と一致した発色が見られ、2-メルカプトエタノールと同様に、1-ThioglycerolまたはDTTが使用できることが確認された。
【0035】
【実施例6】
不織布に吸着された核酸を鋳型とした LMAP 法の増幅検出
不織布A040C01(旭化成)を直径12mmの円盤状に切断して、その1枚をフィルターホルダー(SWINNEX、MILLIPORE)にセットし、フィルターホルダーの上流には10mlの注射筒を接続した。最初に3 mlのDigestion Buffer (10 mM Tris pH8;100mM NaCl;25mM EDTA; 0.5% SDS)でフィルターを洗浄した。
【0036】
次に、4.54×108個の大腸菌DH5をエッペンドルフチューブにとり、遠心して沈殿させた。上清を除去し、ここに454μlのDigestion BufferとProteinase K(PCR-Grade、Roche)を0.05μg加えて、室温で5分間放置した。この全量を上記の10mlの注射筒に入れて、ゆっくりとプランジャーで押し出して不織布に通した。次に、9mlのDigestion Bufferを流してフィルター洗浄した。更に、3mlの1M NaClを含むPBS/1mM EDTA、最後に5mlのTE Buffer(10mM Tris pH8;1mM EDTA)を流してフィルターを洗浄した。それから、フィルターをホルダーから取り外して3mm四方に切断して、この断片を実施例2に記載したLAMP反応に供した。すなわち、F3 primerとB3 primerをそれぞれ0.2μM、FIP primerとBIP primerをそれぞれ1.6μM、LoopF primer とLoopB primer をそれぞれ0.8μM、1.4mM dNTPs、0.8M Betaine、20mM Tris-HCL (pH8.8)、10mM KCl、10mM (NH4)2 SO4、0.1% TritonX-100、6.4 unitsのBst DNA polymerase large fragment (New England Biolabs)、8mM MgSO4を含むLAMP反応液20μlにフィルター断片を加えて65℃ 40分反応した。反応終了後、80℃で2分間処理して酵素を失活させた後、4℃に冷却した。
【0037】
反応産物の一部をアガロースゲル電気泳動にかけて増幅の有無を確認した。電気泳動は2%アガロースゲルを用い、100V 30分間泳動した後、エチジウムブロマイドによって染色し、UV照射下での発光を観察した。結果を図10に示す。次に、このLAMP増幅後の反応液を用いて、実施例1と同様にモリブデン酸アンモニウムを用いた発色反応を行った。結果を図11に示す。電気泳動の結果と一致した発色が見られ、この発色による検出系が不織布に吸着された核酸を鋳型としたLAMP法の増幅検出に使用できることが確認された。
【0038】
【発明の効果】
本発明の方法によればピロリン酸を簡便に比色検出でき、更にそれを利用して核酸増幅を簡便、迅速に検出することができる。
【0039】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のピロリン酸の発色を示す。
【符合の説明】
A: 実験直後
B: 2時間後
1,3,5:ブランク溶液
2,4,6:2mMピロリン酸を含む溶液
1,2:室温で1分放置
3,4:室温で2分放置
5,6:室温で3分放置
【図2】実施例1のピロリン酸とリン酸の発色比較を示す。
【符合の説明】
1:ブランク溶液
2:2mM ピロリン酸を含む溶液
3:2mM リン酸を含む溶液
【図3】比較例1の洗浄の効果を示す。
【符合の説明】
1,3,5:ブランク溶液
2,4,6:ピロリン酸を含む溶液
1,2:1分放置
3,4:2分放置
5,6:3分放置
【図4】実施例3のLAMP増幅のアガロースゲル電気泳動解析を示す。
【符合の説明】
M: marker、
1-5: 63℃
6-10: 65℃
1,6: 2mM MgSO4
2,7: 4.5mM MgSO4
3,8: 7mM MgSO4
4,9: 9.5mM MgSO4
5,10: 12mM MgSO4
【図5】実施例3のLAMP増幅の比色検出を示す。
図4のアガロースゲル電気泳動解析で増幅していること、あるいは増幅していないことが確認されたサンプルを取り、比色検出を行った結果を示す。
【符合の説明】
1:図4のlane7
2:図4のlane9
3:図4のlane6
4:図4のlane8
5:図4のlane2
6:図4のlane3
【図6】実施例4のフィルターの孔径と発色との関係を示す。
【符合の説明】
A:不織布
1:ピロリン酸を含まないブランク溶液
2〜9:ピロリン酸を含む溶液
1:A040C01(ブランク)
2:A040C01
3:A040C01/HM-3コート
4:A066A
5:TS100
6:N05070
7:E01030
8:P03015
9:P03050
B:フィルター
上段:ピロリン酸を含まないブランク溶液
下段:ピロリン酸を含む溶液
1:Acrodisc(孔径5μm)
2:MILLEX-HA(孔径0.45μm)
3:Syringe Filter(孔径0.1μm)
【図7】実施例5の還元剤の検討結果を示す。
【符合の説明】
1,3,5,7:ピロリン酸を含まないブランク溶液
2,4,6,8:ピロリン酸を含む溶液
1,2:還元剤として2‐メルカプトエタノール使用
3,4:還元剤として1‐チオグリセロール使用
5,6:還元剤としてDTT使用
7,8:還元剤としてアスコルビン酸使用
【図8】実施例5のLAMP増幅のアガロースゲル電気泳動解析を示す。
【符合の説明】
M: Marker
1,2,3,4:テンプレートとして大腸菌精製ゲノムDNA 10pgを添加
5,6,7,8:テンプレートとして大腸菌精製ゲノムを添加しない
1,5:MgSO4 5mMの存在下でLAMP法増幅反応
2,6:MgSO46mMの存在下でLAMP法による増幅反応
3,7:MgSO47mMの存在下でLAMP法による増幅反応
4,8:MgSO48mMの存在下でLAMP法による増幅反応
【図9】実施例5のLAMP増幅の比色検出結果を示す。
【符合の説明】
1,2:2‐メルカプトエタノール使用
3,4:1‐Thioglycerol使用
5,6:DTT使用
1:図8のlane6
2:図8のlane2
3:図8のlane7
4:図8のlane3
5:図8のlane8
6:図8のlane4
【図10】実施例6のLAMP増幅のアガローズゲル電気泳動解析を示す。
【符合の説明】
M:Marker
1:テンプレートとして大腸菌ゲノムDNAを吸着した不織布A040C01を添加
2:テンプレートとして大腸菌ゲノムDNAを吸着していない不織布A040C01を添加
【図11】実施例6のLAMP増幅の比色検出結果を示す。
【符合の説明】
M:Marker
1:図10のlane1
2:図10のlane2
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピロリン酸の簡便な比色検出方法、及びそれを利用した核酸増幅反応の簡便な比色検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCR法やLAMP法などの核酸増幅反応を簡便に検出する方法としては、大別して増幅産物である二本鎖DNAを検出する方法と副産物としてのピロリン酸(二リン酸)を検出する方法の2つがある。二本鎖DNAを検出する方法としては、Ethidium BromideやSYBR Greenなどの蛍光インターカレーターを用いて検出する、あるいは増幅反応の際に標識ヌクレオチドを取り込ませて蛍光や抗体で検出する方法が知られている。ピロリン酸を検出する方法としては、ピロリン酸をATPに変換してルシフェリン−ルシフェラーゼの系で発光させて検出する、あるいはピロリン酸がMg2+と結合して沈殿を形成する性質を利用して白濁で検出する方法などが報告されている。白濁で検出する方法は簡便ではあるが、目視で判定しにくいという欠点があった。
【0003】
ピロリン酸を発色させれば、より目視に適した検出法になる。1つの方法は、ピロリン酸をリン酸に分解してから発色させる方法である。リン酸の測定法としては、モリブデン酸による化学法がよく知られている。無機リン溶液を硫酸などで酸性にし、これにモリブデン酸を加えると6価のリンモリブデン酸錯体を形成する。この錯体を340nmでの比濁法として直接測定する術式が提唱されている。しかし、一般には6価のリンモリブデン酸錯体に何らかの還元剤を加え、3価のリンモリブデン酸錯塩に還元させると、モリブデンブルーと言われる青色を呈し、これを測定する方法が取られている。この際、遊離のモリブデン酸は還元剤の作用を受けないので、青色調はリンと結合しているモリブデン酸に比例して発色する。これにより、無機リンが測定可能となる。用いる還元剤によっていくつかの術式が報告されているが、Fiske-Subbarow法に代表される1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸を用いることが主流となっている(非特許文献1)。
【0004】
また、リンモリブデン酸アンモニウム錯体をアスコルビン酸および亜砒酸ナトリウム−クエン酸ナトリウムで還元して青色のモリブデート錯体を得る方法もある。このような目的に使用できる有用な水溶性モリブデン酸塩としては、モリブデン酸アンモニウムの他にモリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カドミウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ビスマス、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸亜鉛およびモリブデン酸アルキルアンモニウム(アルキル基は1〜6個の炭素原子を有する)がある。また、リンモリブデン酸アンモニウム錯体を還元する代表的な還元剤としては、1‐アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸の他に硫酸p-メチルアミノフェノール、塩化第一錫、フェニルヒドラジン、ヒドロキノン、硫酸第一鉄、アスコルビン酸、アミノナフトールスルホン酸、2,4-ジアミノフェノール、N-フェニル-p-フェニレンジアミン並びにハロゲン化銀現像主薬として写真技術分野で既知である別の既知フェノール系およびフェニレンジアミン化合物、そして特にアミン含有現像主薬の酸付加塩がある(特許文献1)。
【0005】
直接、ピロリン酸をモリブデン酸による化学法で測定する方法も報告されている。Gu-Gang Changらは、アミノアシル−tRNA合成酵素(EC6.1.1.0)の簡便な測定法として、試料にメルカプトエタノールとモリブデン酸アンモニウムの硫酸溶液を加えて室温で20分放置し、発色した溶液の580nmの吸光度を測定してピロリン酸を定量する、という方法を開発した(非特許文献2)。ピロリン酸の定量範囲は5-150mMである。ピロリン酸の580nmでの吸光係数が2.42x104M-1cm-1で、リン酸の吸光係数が6.01x103M-1cm-1であるので、この方法はピロリン酸により選択的な測定方法である。該方法は簡便で優れた方法であるが、▲1▼発色は10分間だけ安定である、▲2▼メルカプトエタノールとモリブデン酸アンモニウムを混合しただけのブランクが発色する、という欠点があった。また、該論文には該方法を核酸増幅の検出法として使用する記述はなく、フィルター上で検出するという記述もない。
【0006】
【特許文献1】
特開平7-59600
【非特許文献1】
臨床検査技術学 10 臨床化学 第2版p58
【非特許文献2】
Analytical Biochemistry 130, 171-176(1983)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ピロリン酸の簡便な比色検出方法を提供し、更にそれを利用して核酸増幅反応を簡便に比色検出することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、モリブデンブルーと呼ばれる青色の不溶性色素が不織布などの多孔質体からなるフィルターで捕捉でき、更にフィルター上で洗浄するとその呈色反応が停止してピロリン酸を簡便かつ明瞭に比色検出できること、更にこの方法を利用して核酸増幅反応を簡便に比色検出できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(27)の発明を包含する。
(1) 以下の工程を含む、フィルターを用いたピロリン酸の比色検出方法。
工程(イ)ピロリン酸を含む溶液にピロリン酸検出のための試薬を加えて該不溶性色素を生成させる工程;
工程(ロ)該溶液を多孔質体からなるフィルターで濾過して該不溶性色素をフィルターに捕捉する工程;
工程(ハ)該フィルターに捕捉された不溶性色素を比色検出する工程
(2) (1)で工程(ロ)と(ハ)の間に、該フィルターを洗浄液で洗って発色反応を止める工程が追加される(1)に記載の方法。
(3) 洗浄液が硫酸である(2)に記載の方法。
(4) ピロリン酸を含む溶液が核酸増幅反応後の反応溶液であり、比色検出したピロリン酸を指標として核酸増幅反応を検出する(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 核酸増幅反応の鋳型が不織布に吸着された核酸である(4)に記載の方法。
(6) 核酸増幅反応の方法がLAMP法である(4)または(5)に記載の方法。
(7) ピロリン酸検出のための試薬がモリブデン酸塩と還元剤を含む(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)モリブデン酸塩がモリブデン酸アンモニウムである(7)に記載の方法。
(9)還元剤がメルカプト基(-SH)を持つ化合物である(7)または(8)に記載の方法。
(10) 還元剤が2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロールまたはDL-ジチオトレイトールである(9)に記載の方法。
【0010】
(11) 以下の工程を含む、フィルターを用いたピロリン酸の比色検出方法。
工程(イ)溶液中のピロリン酸をリン酸に分解する工程;
工程(ロ)該溶液にリン酸検出のための試薬を加えて不溶性色素を生成させる工程;
工程(ハ)該溶液を多孔質体からなるフィルターで濾過して不溶性色素をフィルターに捕捉する工程
工程(ニ)該フィルターに捕捉された不溶性色素を比色検出する工程
(12) 工程(ハ)と(ニ)の間に、該フィルターを洗浄液で洗って発色反応を止める工程が追加される(11)に記載の方法。
(13) 洗浄液が硫酸である(12)に記載の方法。
(14) ピロリン酸を含む溶液が核酸増幅反応後の反応溶液であり、比色検出したピロリン酸を指標として核酸増幅反応を検出する(11)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15) 核酸増幅反応の鋳型が不織布に吸着された核酸である(14)に記載の方法。
(16) 核酸増幅反応の方法がLAMP法である(14)または(15)に記載の方法。
(17) 無機ピロホスファターゼでピロリン酸をリン酸に分解する(11)〜(16)のいずれかに記載の方法。
(18) リン酸検出のための試薬がモリブデン酸塩と還元剤を含む(11)〜(17)のいずれかに記載の方法。
(19) モリブデン酸塩がモリブデン酸アンモニウムである(18)に記載の方法。
(20) 還元剤が1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸である(18)または(19)に記載の方法。
【0011】
(21) 多孔質体からなるフィルターの材質が親水性または疎水性である(1)〜(20)のいずれかに記載の方法。
(22) 多孔質体からなるフィルターの孔径が0.1〜150μmである(1)〜(21)のいずれかに記載の方法。
(23) 多孔質体からなるフィルターが不織布である(1)〜(21)のいずれかに記載の方法。
(24) 核酸増幅反応の鋳型が不織布に吸着された核酸であり、多孔質体からなるフィルターが核酸を吸着した該不織布である(4)、(6)、(14)、(16)のいずれかに記載の方法。
(25) 不織布の孔径が2〜150μmである(23)〜(24)のいずれかに記載の方法。
(26) 不織布の素材がポリエステル、ポリプロピレンまたはナイロンである(23)〜(25)のいずれかに記載の方法。
(27) 不織布の素材がポリエチレンテレフタレートである(23)〜(25)のいずれかに記載の方法。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においてピロリン酸検出のための試薬とは、ピロリン酸イオン(P2O7 4-)と反応して不溶性色素を生成させるものであれば如何なるものでも使用可能である。不溶性色素は白色以外が好ましいが、色素の捕捉に用いるフィルターが有色であれば白色色素でもよい。このようなピロリン酸検出のための試薬としては、次のようなものが知られている。例えば、Ba(NO3)2またはBaCl2をピロリン酸溶液に加えると白色無定形のピロリン酸バリウムを沈殿する(新訂 定性分析化学中巻 イオン反応編 p311 (南江堂))。AgNO3は白色凝乳状のピロリン酸銀を沈殿する。MgSO4は、冷時白色のピロリン酸マグネシウムMg2P2O7を沈殿する。CuSO4は酢酸酸性溶液から青白色のCu塩を沈殿する。Cd(NO3)2は酢酸酸性溶液から白色のCd2P2O7を沈殿する。(NH4)2MoO4をピロリン酸溶液に加えてHNO3酸性下で加温すると、ピロリン酸が正リン酸に変わるので黄色のリン・モリブデン酸アンモニウムを沈殿する。
【0013】
本発明において、リン酸検出のための試薬とは、リン酸イオン(PO4 3-)と反応して不溶性色素を生成させるものであれば如何なるものでも使用可能である。不溶性色素は白色以外が好ましいが、色素の捕捉に用いるフィルターが有色であれば白色色素でもよい。このようなリン酸検出のための試薬としては、次のようなものが知られている。Ba(NO3)2またはBaCl2をリン酸第二塩溶液に加えると白色の沈殿を生ずる(新訂 定性分析化学 中巻 イオン反応編 p305 (南江堂))。Sr(NO3)2またはCa(NO3)2はBa2+の場合と同様にSr塩またはCa塩を沈殿する。Pb(CH3COO)2は白色の第三リン酸鉛を沈殿する。AgNO3は黄色の第三リン酸銀を沈殿する。Bi(NO3)3は白色結晶性の第三リン酸ビスマスを沈殿する。FeCl3は中性または酢酸酸性溶液から黄白色の第三リン酸鉄を沈殿する。Al塩は、FeCl3と同様の反応によって白色の第三リン酸アルミニウムを沈殿する。酢酸ウラニルUO2(CH3COO)2は酢酸酸性溶液から淡黄色のリン酸水素ウラニルを沈殿する。酸化塩化ジルコニウムZrOCl2は、0.3N HClぐらいの酸性溶液で白色のゲル状のリン酸ジルコニウムを完全に沈殿する。マグネシウム混液(Mg塩、NH4塩およびNH3水の混液)は白色結晶性のリン酸アンモニウム・マグネシウムMgNH4PO4・6H2Oを沈殿する。(NH4)2MoO4の過量はHNO3酸性溶液から冷時徐々に、温時速やかに黄色結晶性のリン・モリブデン酸アンモニウムを沈殿する。(NH4)2MoO4およびbenzidineの酢酸溶液は充分量のCH3COONaの共存で青色を呈する。(NH4)2MoO4および硫酸ストリキニーネは酸性溶液で白色無定形沈殿を生ずる。メタスズ酸の過量はHNO3酸性溶液でリン酸を定量的に沈殿させる。
【0014】
本発明においてピロリン酸検出のための試薬がモリブデン酸塩と還元剤を含む場合、モリブデン酸塩としてはピロリン酸と錯体をつくるものであれば如何なるものでも使用可能である。このようなモリブデン酸塩の例としてはモリブデン酸アンモニウムがある。また還元剤としては、ピロリン酸とモリブデン酸アンモニウムが反応してできる錯体を還元して青緑色の化合物を生成させるものであれば如何なるものでも使用可能である。このような還元剤の例としては、2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロール、DL-ジチオトレイトール(DTT)などのSH基を有する還元剤がある。
【0015】
本発明において、リン酸検出のための試薬がモリブデン酸塩と還元剤を含む場合、モリブデン酸塩としてはリン酸と錯体をつくるものであれば如何なるものでも使用可能である。このようなモリブデン酸塩の例としてはモリブデン酸アンモニウムがあり、その他にモリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カドミウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ビスマス、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸亜鉛およびモリブデン酸アルキルアンモニウム(アルキル基は1〜6個の炭素原子を有する)がある。また還元剤としては、リン酸とモリブデン酸アンモニウムが反応してできる錯体を還元して青色の化合物を生成させるものであれば何でも使用することができる。このような還元剤の例としては、2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロール、DTTなどのSH基を有する還元剤があり、その他に硫酸p-メチルアミノフェノール、塩化第一錫、フェニルヒドラジン、ヒドロキノン、硫酸第一鉄、アスコルビン酸、アミノナフトールスルホン酸、2,4-ジアミノフェノール、N-フェニル-p-フェニレンジアミン並びにハロゲン化銀現像主薬として写真技術分野で既知である別の既知フェノール系およびフェニレンジアミン化合物、そして特にアミン含有現像主薬の酸付加塩が挙げられる。
【0016】
本発明において多孔質体からなるフィルターとは、一方の面から他方の面に連通する多数の微細な孔を有し、不溶性色素を捕捉できる平均孔径を有する通気性のフィルターを意味する。平均孔径は0.1〜150mmであれば使用可能であるが、0.1〜20mmがより好ましい。多孔質体からなるフィルターの孔の形状やその連通状態、フィルターの厚さ、材質、形状、寸法等は特に問わず、多孔質体からなるフィルターはフィルム、シート、膜、板塊状、繊維状、粒状等の任意の形態であることができる。材質は親水性でも疎水性でも使用可能であるが、疎水性がより好ましい。多孔質体からなるフィルターは有機材料および無機材料のいずれからなっていてもよく、また天然材料、合成材料または半合成材料からなっていてもよい。多孔質体からなるフィルターの例としては天然、合成、半合成、再生の有機または無機繊維からなる多孔質体; 有機または無機発泡体(例えばスポンジ、フォームなど); 孔成分の溶出、焼結、延伸、穿孔などにより孔形成された有機、無機多孔質体; 有機または無機の微粒子や細片を充填または結合した多孔質体; 濾紙などを挙げることができる。例えば、繊維からなる多孔質体フィルターの場合は、繊維は有機または無機の短繊維、スライバー、長繊維のいずれからなっていてもよく、しかもフィルターの形態は、単なる繊維の塊でもよく、また不織布または織布よりなる繊維布層の1層または複数層でもよい。しかし織布および不織布の方が、一般に単位重量あたりの表面積が大きく、更に液の流れる方向におけるフィルターの厚みを薄くすることができる。このため圧力損失が小さく、大きな溶液処理速度を出せるようになるので、織布および不織布の方が好ましい。更に、製造の容易さの点から不織布が最も好ましく用いられる。織布とは、縦糸と横糸とが交錯してできた布地を意味する。
【0017】
本発明において不織布とは、短繊維またはフィラメントを機械的、熱的、化学的な手段を用いて接着または交絡させて作るシート状またはウェブ構造のものである(第2版 繊維便覧 繊維学会編 丸善)。不織布はさまざまな方法で生産されるが、基本的な工程はウェブ(繊維の方向がある程度揃った繊維塊のシート状のもの)の形成工程と、ウェブの接着工程、それに仕上げ工程である。不織布には天然繊維から化学繊維まで種々の繊維が用いられているが、一般的に用いられているのは綿、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンで、その他アクリル、ビニロン、ガラス繊維、パルプ、炭素繊維なども使用される。ウェブを形成する方式は、湿式、乾式および直接式に大別される。直説法は紡糸直結式ともいわれる方法で、溶融高分子溶液から紡糸された繊維を集めて直接ウェブとする工程である。これに含まれる方法は、スパンレース法、スパンボンド法、メルトブロー法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法などであるが、本発明にはメルトブロー法でつくられた超極細繊維不織布が最も適している。
【0018】
不織布の孔径は2〜150mmのものが適しているが、2〜20mmのものがより好ましい。ここで、不織布の平均孔径とは水銀ポロシメーターによって測定した測定値(メディアン値)をいう。平均孔径は、フィルター要素を構成する繊維の絡み具合や空隙の大きさに関連している指標である。本発明に適した不織布の例としては、旭化成のポリエチレンテレフタレート製不織布A040C01が挙げられる。不織布A040C01の平均孔径は10mmである。また、本発明で用いられる不織布は表面がコーティングされたものであっても良い。A040C01とA040C01/HM‐3コートの比較で明らかなように、親水性が増したA040C01/HM-3コートも使用可能であるが、疎水性の強いA040C01がより好ましい。両者は同じ不織布の未コート品(A040C01)とHM‐3コート品(A040C01/HM‐3コート)であり、未コート品の表面は負に、HM‐3コート品の表面は正に荷電していることがわかっている。ここでA040C01/HM‐3コートとは、HM-3(2‐ヒドロキシエチルメタアクリレートとN,N-ジメチルエチルメタアクリレートからなる共重合体、HEMA:DM=97:3)をエタノールに溶解した溶液でA040C01をコーティングしたものである。
【0019】
本発明において用いられる洗浄液は、フィルターに捕捉された色素を可溶化することなく、ピロリン酸またはリン酸検出のための試薬やピロリン酸、リン酸、またはこれらを発生させる化合物を洗浄できる溶液であればよい。例えば、モリブデン酸アンモニウムの硫酸溶液、2‐メルカプトエタノールとピロリン酸で生成した青色色素の洗浄には硫酸が使用できる。
【0020】
本発明において、核酸を増幅する工程とはPCRに代表される特定の標的核酸配列を増幅させる方法であり、PCR以外にLigase Chain Reaction(LCR), Transcription-Mediated Amplification(TMA), Branched DNA (bDNA) Assay Nucleic AcidSequence Based Amplification (NASBA), Strand Displacement Amplification(SDA), Cycling Probe Technology (CPT), Q-Beta Replicase Amplification Technology, Rolling Circle Amplification Technology (RCAT), Loop-Mediated Isothermal Amplification (LAMP), Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids (ICAN)などの方法を含むが、これらに限定されるものではない。Q-Beta Replicase, RCAT, NASBA, SDA、TMA, LAMP, ICANなどはIsothermal (一定温度)で増幅反応を行い、その他のPCR, LCRなどは Thermal Cycling (温度サイクリング)で増幅反応を行う。核酸を増幅する方法としては、溶液状態の精製核酸を反応系に加えて核酸増幅を行う一般の方法以外に、例えば国際特許出願PCT/JP02/06939号で開示されている不織布に吸着された核酸を鋳型として核酸増幅を行う方法も含まれる。
【0021】
本発明において、比色検出とは色の対比で陰性と陽性を判別するということで、前述のように白色の不溶性色素を有色フィルター上で検出することも含む。検出は、目視であっても装置による測定であっても良い。
【0022】
本発明において、ピロリン酸をリン酸に分解する工程としては、加熱や無機ピロホスファターゼの使用が考えられる。本発明において無機ピロホスファターゼとは、ピロリン酸を加水分解して2分子の正リン酸を生じる反応を触媒するEC3.6.1.1.の酵素である。核酸増幅の比色検出には、dNTPsを分解してリン酸を遊離するホスファターゼ活性を含まない無機ピロホスファターゼを使用しなければならない。
本発明で記載した方法は、(1)多孔質体からなるフィルターを組み込んだ装置と(2)ピロリン酸またはリン酸の検出試薬、を含むキットを用いれば簡単に実施することができる。(1)の装置は、例えばウェルの底にフィルターを組み込んで濾過できるようにした96穴プレートと濾液を吸収するための吸水パットから成る装置である。(2)の検出試薬は、例えばモリブデン酸アンモニウムの硫酸溶液、還元剤、洗浄液からなる。ピロリン酸またはリン酸を含む溶液にモリブデン酸アンモニウムの硫酸溶液と還元剤を加えて発色させ、この溶液を上記の96穴プレートに入れてフィルターに不溶性青色色素を捕捉する。その後、洗浄液で洗浄して、結果をCCDカメラに撮って保存すれば、本発明で記載した方法を簡便に実施することができる。
【0023】
本発明の利点について説明する。
本発明は、核酸増幅を簡便、迅速に検出する方法を提供するものである。例えば、LAMP法による核酸増幅を簡便に目視で検出する従来法としては、白濁による検出法と蛍光による検出法があった。しかし、白濁法には目視判定が困難である、という欠点があり、また蛍光法には増幅が起こらなくても蛍光が出て擬陽性になる場合があった。また、Gu-Gang Changらによって開発されたピロリン酸定量法(Analytical Biochemistry 130, 171-176 (1983))を適用した場合、LAMP法による核酸増幅が起こった陽性サンプルの発色が安定しない、LAMP法による核酸増幅が起こっていない陰性サンプルでも徐々に発色する、測定に時間がかかる、といった欠点があった。このような従来法と比較した場合、本発明は(1)白濁法と比較すると目視判定が容易である、(2)発色反応を途中で停止させ保存することができるので、最適な検出ポイント(例えばブランクが発色してくる前)で反応を停止して目視判定し、後でその結果を確認することも可能である、(3)フィルター上に色素を濃縮できるので溶液状態での検出より感度が高い、(4)迅速である、といった利点がある。
【0024】
本発明は、国際特許出願PCT/JP02/06939号で開示されている方法と組み合わせると更に有用である。国際特許出願PCT/JP02/06939号では不織布を用いて核酸を精製し増幅する方法が開示されており、該方法は以下の工程を含む。(1)細胞を破壊して細胞抽出液を調製する工程;(2)細胞抽出液を不織布に接触させて、細胞抽出液中の核酸を不織布に吸着させる工程;(3)該不織布に核酸を増幅するための溶液を加えて、該不織布に吸着された核酸を鋳型として核酸を増幅する工程。該出願で開示されている核酸精製に使用される不織布は、本発明の不溶性色素を捕捉するフィルターとしても使用可能である。例えば、旭化成の不織布A040C01は国際特許出願PCT/JP02/06939号の発明にも使用できるし本発明にも使用できる。すなわち、本発明と該出願で開示されている発明によれば、1つの不織布上で核酸の精製と増幅を行い、更にその不織布上で増幅の有無を比色で検出することが可能となる。もちろん、精製・増幅と検出を別のフィルター上で行っても良い。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
【実施例1】
ピロリン酸とリン酸の比色検出
25mlの2mM ピロリン酸ナトリウムを含む溶液A(20mM Tris(pH8.8)/10mM KCl/8mM MgSO4/10mM (NH4)2SO4/0.1% Tween20/0.8M Betaine/1.4mM dNTPs)を準備し、これに2.5mlの1M 2-メルカプトエタノールと10mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加えて室温で1〜3分放置した。溶液にピロリン酸が含まれると、溶液は青く発色した。この溶液37.5mlを不織布A040C01(旭化成)に通して生成した不溶性青色色素を不織布にトラップし、100mlの2N 硫酸で洗浄した。反応直後の結果を図1Aに、2時間後の結果を図1Bに示す。発色は安定であり、ブランクが発色することはなかった。更に、2mM ピロリン酸ナトリウムを含む溶液Aと2mM リン酸ナトリウムを含む溶液Aを準備し、同様の実験を行った。結果を図2に示す。リン酸でも発色したが、発色の程度はピロリン酸より弱かった。
【0026】
洗浄の効果
洗浄の効果を確認するために、最後の2N 硫酸の洗浄を省略した実験を行った。すなわち、70mlの2mM ピロリン酸ナトリウムを含む溶液A(20mM Tris(pH8.8)/10mM KCl/8mM MgSO4/10mM (NH4)2SO4/0.1% Tween20/0.8M Betaine/1.4mM dNTPs)を準備し、これに7mlの1M 2-メルカプトエタノールと28mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加えて室温で1〜3分放置した。この溶液37.5mlを不織布A040C01(旭化成)に通して生成した不溶性青色色素を不織布にトラップした。図3は実験終了2時間後に撮影した結果である。
実施例1と異なり、ブランクも青く発色して洗浄の効果が確認された。しかし、洗浄工程を省略しても、ブランクとピロリン酸を含む溶液の発色強度には差があり、比色は可能であった。
【0027】
【実施例2】
LAMP 法の増幅検出
大腸菌のgyrB(DNA gyrase subunitB、typeII topoisomerase、ATPase activity)の配列から、LAMP法の増幅プライマーをデザインした。配列表配列番号1のF3プライマー、配列番号2のFIPプライマー、配列番号3のLoopFプライマー、配列番号4のB3プライマー、配列番号5のBIPプライマー、配列番号6のLoopBプライマーをデザインして、日本バイオサービス社に依頼して化学的に合成した。
【0028】
増幅反応は20mlの反応液中で行った。反応液には、大腸菌精製ゲノム 10pg、F3 primerとB3 primerをそれぞれ0.2mM、FIP primerとBIP primerをそれぞれ1.6mM、LoopF primerとLoopB primerをそれぞれ0.8mM、1.4mM dNTPs、0.8M Betaine、20mM Tris-HCl(pH8.8)、10mM KCl、10mM (NH4)2SO4、0.1% TritonX-100、6.4 unitsのBst DNA Polymerase large fragment (New England Biolabs)を含み、MgSO4濃度が、2mM、4.5mM、7mM、9.5mM、12mMになるようにそれぞれ加えた。
反応液は混和後速やかに63℃または65℃のヒートブロック上で40分間インキュベートした。反応終了後、80℃で2分間処理して酵素を失活させた後、4℃に冷却した。
【0029】
反応産物の一部をアガロースゲル電気泳動にかけて増幅の有無を確認した。電気泳動は2%アガロースゲルを用い、100V 30分間泳動した後、エチジウムブロマイドによって染色し、UV照射下での発光を観察した。結果を図4に示す。次にアガロースゲル電気泳動で増幅が確認されたサンプルをポジコン、増幅していないことが確認されたサンプルをネガコンとして発色反応を行った。すなわち、ネガコンとポジコンのLAMP反応液をそれぞれ15mlとり、これに1.5mlの1M 2-メルカプトエタノールと6mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加えて室温で1〜3分放置した。この溶液22.5mlを不織布A040C01(旭化成)に通して生成した不溶性青色色素を不織布にトラップし、100mlの2N 硫酸で洗浄した。結果を図5に示す。電気泳動の結果と一致した発色が見られ、しかも反応時間は1分で十分であった。
【0030】
【実施例3】
LAMP 法の増幅検出―ピロリン酸をリン酸に分解してから発色する方法
実施例2のようなLAMP法で核酸が増幅された反応液(ポジコン)と核酸増幅が起こらなかった反応液(ネガコン)を準備する。これらの反応液に無機ピロホスファターゼ(Sigma I1891)を加えて37℃で充分反応させ、ピロリン酸をリン酸に分解する。このリン酸をFiske-Subbarow法で発色させる。すなわち、反応液に0.2容の2.5% モリブデン酸アンモニウム/3N 硫酸と0.2容の還元剤を添加する。ここで還元剤としては、亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 58.5g、無水亜硫酸ナトリウムNa2SO31.0gおよび1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸 1.0gを細砕混和して褐色瓶中に保存し、この7.5gを精製水50mlに溶かし濾過したものを用いる。
室温で数分反応させてから、不織布A040C01(旭化成)に通して生成してくる不溶性青色色素を不織布にトラップして2N 硫酸で洗浄する。ポジコンを通した不織布は青く染まり、ネガコンの不織布は無色のままである。また、不織布にトラップした後の硫酸洗浄は省略しても良い。この場合、ネガコン不織布は反応直後は無色のままであるが、時間の経過と共に青く着色してくる。
【0031】
【実施例4】
フィルターの孔径
実施例1と同様な実験を、フィルターの種類を替えて行った。すなわち、25mlの2mM ピロリン酸ナトリウムを含む溶液A(20mM Tris(pH8.8)/10mM KCl/8mM MgSO4/10mM (NH4)2SO4/0.1% Tween20/0.8M Betaine/1.4mM dNTPs)を準備し、これに2.5mlの1M 2-メルカプトエタノールと10mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加えて室温で2分放置した。溶液にピロリン酸が含まれると、溶液は青く発色した。この溶液37.5mlを、あらかじめ水1mlを流して前処理したフィルター1枚に通して、更に100mlの2N 硫酸で洗浄した。フィルターは、表1に示したものを用いた。表1でA040C01とはポリエチレンテレフタレート(PET)製の不織布で疎水性であり、このHM-3コート品であるA040C01/HM-3(HM-3(2-ヒドロキシエチルメタアクリレートとN,N-ジメチルエチルメタアクリレートからなる共重合体、HEMA:DM=97:3)をエタノールに溶解した溶液でA040C01をコーティングしたもの)は親水性である。また、セルロース製のTS100は親水性であるが、他の不織布A066A、N05070、E01030、P03015、P03050は疎水性である。結果を図6に示す。トラップされる色素の量に差はあるが、不織布A040C01、A040C01/HM−3コート、A066A、TS100、N05070、E01030、P03015、P03050、及びフィルターAcrodisc、MILLEX-HA、Syringe Filterが使用可能であった。平均孔径0.1μmのSyringe Filter及び平均孔径130μmのE01030が使用可能であったことから、フィルターの孔径としては0.1〜130mmのものが使用できる。トラップされる色素量が多いことから、0.1〜13mmのものがより好ましかった。更に材質としては、不織布A040C01と不織布A040C01/HM-3の結果を比較すると、親水性のA040C01/HM−3ではトラップされた色素がフィルター全体に滲んで見にくくなっているが、疎水性のA040C01では色素が1点(液を濾過した点)に集中しており見やすいことがわかる。同じく親水性のTS100も色素が滲んでしまうことから、親水性より疎水性のフィルターがより好ましいと言える。
【0032】
【表1】
【0033】
【実施例5】
還元剤の検討
まず、実施例1と同様な系で還元剤の検討を行った。すなわち、25mlの2mM ピロリン酸ナトリウムを含む溶液Aを準備し、これに2.5mlの1M 2-メルカプトエタノール、1.3M 1-Thioglycerol、0.35M DL-Dithiothreitol(DTT)、または1M アスコルビン酸を加えて、更に10mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加え、室温で3分放置した。ピロリン酸ナトリウムを含まない溶液Aで同様な実験を行い、ブランクとした。この溶液37.5mlを不織布A040C01(旭化成)に通して生成した青色色素を不織布にトラップし、100mlの2N 硫酸で洗浄した。結果を図7に示す。1-ThioglycerolとDTTは2-メルカプトエタノールと同様に使用できたが、アスコルビン酸ではピロリン酸を検出できなかった。
【0034】
次に、LAMP反応の増幅検出に1-ThioglycerolとDTTが使用できるかを検討した。まず実施例2と同様なLAMP増幅反応を行った。すなわち、MgSO4を5mM、6mM、7mM、または8mM含み、他の溶液組成、プライマー、テンプレートは実施例2と同じであるLAMP反応液を準備し、65℃で40分反応した。反応終了後、80℃で2分間処理して酵素を失活させた後、4℃に冷却した。反応産物の一部をアガロースゲル電気泳動にかけて増幅の有無を確認した。電気泳動は2%アガロースゲルを用い、100V 30分間泳動した後、エチジウムブロマイドによって染色し、UV照射下での発光を観察した。結果を図8に示す。次にアガロースゲル電気泳動で増幅が確認されたサンプルをポジコン、増幅していないことが確認されたサンプルをネガコンとして発色反応を行った。すなわち、ネガコンとポジコンのLAMP反応液をそれぞれ15mlとり、これに1.5mlの1M 2-メルカプトエタノール、1.3M 1-Thioglycerol、または0.35M DTTを加えて、更に6mlの2.5% モリブデン酸アンモニウム/5N 硫酸を加え、室温で3分放置した。この溶液22.5mlを不織布A040C01(旭化成)に通して生成した青色色素を不織布にトラップし、100mlの2N 硫酸で洗浄した。結果を図9に示す。電気泳動の結果と一致した発色が見られ、2-メルカプトエタノールと同様に、1-ThioglycerolまたはDTTが使用できることが確認された。
【0035】
【実施例6】
不織布に吸着された核酸を鋳型とした LMAP 法の増幅検出
不織布A040C01(旭化成)を直径12mmの円盤状に切断して、その1枚をフィルターホルダー(SWINNEX、MILLIPORE)にセットし、フィルターホルダーの上流には10mlの注射筒を接続した。最初に3 mlのDigestion Buffer (10 mM Tris pH8;100mM NaCl;25mM EDTA; 0.5% SDS)でフィルターを洗浄した。
【0036】
次に、4.54×108個の大腸菌DH5をエッペンドルフチューブにとり、遠心して沈殿させた。上清を除去し、ここに454μlのDigestion BufferとProteinase K(PCR-Grade、Roche)を0.05μg加えて、室温で5分間放置した。この全量を上記の10mlの注射筒に入れて、ゆっくりとプランジャーで押し出して不織布に通した。次に、9mlのDigestion Bufferを流してフィルター洗浄した。更に、3mlの1M NaClを含むPBS/1mM EDTA、最後に5mlのTE Buffer(10mM Tris pH8;1mM EDTA)を流してフィルターを洗浄した。それから、フィルターをホルダーから取り外して3mm四方に切断して、この断片を実施例2に記載したLAMP反応に供した。すなわち、F3 primerとB3 primerをそれぞれ0.2μM、FIP primerとBIP primerをそれぞれ1.6μM、LoopF primer とLoopB primer をそれぞれ0.8μM、1.4mM dNTPs、0.8M Betaine、20mM Tris-HCL (pH8.8)、10mM KCl、10mM (NH4)2 SO4、0.1% TritonX-100、6.4 unitsのBst DNA polymerase large fragment (New England Biolabs)、8mM MgSO4を含むLAMP反応液20μlにフィルター断片を加えて65℃ 40分反応した。反応終了後、80℃で2分間処理して酵素を失活させた後、4℃に冷却した。
【0037】
反応産物の一部をアガロースゲル電気泳動にかけて増幅の有無を確認した。電気泳動は2%アガロースゲルを用い、100V 30分間泳動した後、エチジウムブロマイドによって染色し、UV照射下での発光を観察した。結果を図10に示す。次に、このLAMP増幅後の反応液を用いて、実施例1と同様にモリブデン酸アンモニウムを用いた発色反応を行った。結果を図11に示す。電気泳動の結果と一致した発色が見られ、この発色による検出系が不織布に吸着された核酸を鋳型としたLAMP法の増幅検出に使用できることが確認された。
【0038】
【発明の効果】
本発明の方法によればピロリン酸を簡便に比色検出でき、更にそれを利用して核酸増幅を簡便、迅速に検出することができる。
【0039】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のピロリン酸の発色を示す。
【符合の説明】
A: 実験直後
B: 2時間後
1,3,5:ブランク溶液
2,4,6:2mMピロリン酸を含む溶液
1,2:室温で1分放置
3,4:室温で2分放置
5,6:室温で3分放置
【図2】実施例1のピロリン酸とリン酸の発色比較を示す。
【符合の説明】
1:ブランク溶液
2:2mM ピロリン酸を含む溶液
3:2mM リン酸を含む溶液
【図3】比較例1の洗浄の効果を示す。
【符合の説明】
1,3,5:ブランク溶液
2,4,6:ピロリン酸を含む溶液
1,2:1分放置
3,4:2分放置
5,6:3分放置
【図4】実施例3のLAMP増幅のアガロースゲル電気泳動解析を示す。
【符合の説明】
M: marker、
1-5: 63℃
6-10: 65℃
1,6: 2mM MgSO4
2,7: 4.5mM MgSO4
3,8: 7mM MgSO4
4,9: 9.5mM MgSO4
5,10: 12mM MgSO4
【図5】実施例3のLAMP増幅の比色検出を示す。
図4のアガロースゲル電気泳動解析で増幅していること、あるいは増幅していないことが確認されたサンプルを取り、比色検出を行った結果を示す。
【符合の説明】
1:図4のlane7
2:図4のlane9
3:図4のlane6
4:図4のlane8
5:図4のlane2
6:図4のlane3
【図6】実施例4のフィルターの孔径と発色との関係を示す。
【符合の説明】
A:不織布
1:ピロリン酸を含まないブランク溶液
2〜9:ピロリン酸を含む溶液
1:A040C01(ブランク)
2:A040C01
3:A040C01/HM-3コート
4:A066A
5:TS100
6:N05070
7:E01030
8:P03015
9:P03050
B:フィルター
上段:ピロリン酸を含まないブランク溶液
下段:ピロリン酸を含む溶液
1:Acrodisc(孔径5μm)
2:MILLEX-HA(孔径0.45μm)
3:Syringe Filter(孔径0.1μm)
【図7】実施例5の還元剤の検討結果を示す。
【符合の説明】
1,3,5,7:ピロリン酸を含まないブランク溶液
2,4,6,8:ピロリン酸を含む溶液
1,2:還元剤として2‐メルカプトエタノール使用
3,4:還元剤として1‐チオグリセロール使用
5,6:還元剤としてDTT使用
7,8:還元剤としてアスコルビン酸使用
【図8】実施例5のLAMP増幅のアガロースゲル電気泳動解析を示す。
【符合の説明】
M: Marker
1,2,3,4:テンプレートとして大腸菌精製ゲノムDNA 10pgを添加
5,6,7,8:テンプレートとして大腸菌精製ゲノムを添加しない
1,5:MgSO4 5mMの存在下でLAMP法増幅反応
2,6:MgSO46mMの存在下でLAMP法による増幅反応
3,7:MgSO47mMの存在下でLAMP法による増幅反応
4,8:MgSO48mMの存在下でLAMP法による増幅反応
【図9】実施例5のLAMP増幅の比色検出結果を示す。
【符合の説明】
1,2:2‐メルカプトエタノール使用
3,4:1‐Thioglycerol使用
5,6:DTT使用
1:図8のlane6
2:図8のlane2
3:図8のlane7
4:図8のlane3
5:図8のlane8
6:図8のlane4
【図10】実施例6のLAMP増幅のアガローズゲル電気泳動解析を示す。
【符合の説明】
M:Marker
1:テンプレートとして大腸菌ゲノムDNAを吸着した不織布A040C01を添加
2:テンプレートとして大腸菌ゲノムDNAを吸着していない不織布A040C01を添加
【図11】実施例6のLAMP増幅の比色検出結果を示す。
【符合の説明】
M:Marker
1:図10のlane1
2:図10のlane2
Claims (27)
- 以下の工程を含む、フィルターを用いたピロリン酸の比色検出方法。
工程(1) ピロリン酸を含む溶液にピロリン酸検出のための試薬を加えて不溶性色素を生成させる工程;
工程(2) 該溶液を多孔質体からなるフィルターで濾過して該不溶性色素をフィルターに捕捉する工程;
工程(3) 該フィルターに捕捉された不溶性色素を比色検出する工程 - 工程(2)と(3)の間に、該フィルターを洗浄液で洗って発色反応を止める工程が追加される請求項1に記載の方法。
- 洗浄液が硫酸である請求項2に記載の方法。
- ピロリン酸を含む溶液が核酸増幅反応後の反応溶液であり、比色検出したピロリン酸を指標として核酸増幅反応を検出する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 核酸増幅反応の鋳型が不織布に吸着された核酸である請求項4に記載の方法。
- 核酸増幅反応の方法がLoop-Mediated Isothermal Amplification法(LAMP法)である請求項4または5に記載の方法。
- ピロリン酸検出のための試薬がモリブデン酸塩と還元剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- モリブデン酸塩がモリブデン酸アンモニウムである請求項7に記載の方法。
- 還元剤がメルカプト基(-SH)を持つ化合物である請求項7または8に記載の方法。
- 還元剤が2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロールまたはDL-ジチオトレイトールである請求項9に記載の方法。
- 以下の工程を含む、フィルターを用いたピロリン酸の比色検出方法。
工程(1) 溶液中のピロリン酸をリン酸に分解する工程;
工程(2) 該溶液にリン酸検出のための試薬を加えて不溶性色素を生成させる工程;
工程(3) 該溶液を多孔質体からなるフィルターで濾過して該不溶性色素をフィルターに捕捉する工程;
工程(4) 該フィルターに捕捉された該不溶性色素を比色検出する工程 - 工程(3)と(4)の間に、該フィルターを洗浄液で洗って発色反応を止める工程が追加される請求項11に記載の方法。
- 洗浄液が硫酸である請求項12に記載の方法。
- ピロリン酸を含む溶液が核酸増幅反応後の反応溶液であり、比色検出したピロリン酸を指標として核酸増幅反応を検出する請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
- 核酸増幅反応の鋳型が不織布に吸着された核酸である請求項14に記載の方法。
- 核酸増幅反応の方法がLAMP法である請求項14または15に記載の方法。
- 無機ピロホスファターゼでピロリン酸をリン酸に分解する請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
- リン酸検出のための試薬がモリブデン酸塩と還元剤を含む請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
- モリブデン酸塩がモリブデン酸アンモニウムである請求項18に記載の方法。
- 還元剤が1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸である請求項18または19に記載の方法。
- 多孔質体からなるフィルターの材質が親水性または疎水性の材質である請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
- 多孔質体からなるフィルターの孔径が0.1〜150μmである請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
- 多孔質体からなるフィルターが不織布である請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
- 核酸増幅反応の鋳型が不織布に吸着された核酸であり、多孔質体からなるフィルターが核酸を吸着した該不織布である請求項4、6、14または16のいずれかに記載の方法。
- 不織布の孔径が2〜150μmである請求項23〜24のいずれかに記載の方法。
- 不織布の素材がポリエステル、ポリプロピレンまたはナイロンである請求項23〜25のいずれかに記載の方法。
- 不織布の素材がポリエチレンテレフタレートである請求項23〜25のいずれかに記載の方法。
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JP2002373076A JP2004205298A (ja) | 2002-12-24 | 2002-12-24 | フィルターを用いたピロリン酸の比色検出法 |
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-
2002
- 2002-12-24 JP JP2002373076A patent/JP2004205298A/ja not_active Withdrawn
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