JP2004204863A - ピストン構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】所定のシール機能を発揮するのはもちろんのこと、油圧緩衝器におけるシリンダ内でのピストン部の円滑な摺動を可能にして、たとえば、車両における乗り心地を悪化させることがないようにする。
【解決手段】油圧緩衝器SAを構成するシリンダ3内に出没可能に挿通のロッド4に連設されるピストン体2と、このピストン体2の外周に定着されてシリンダ3の内周に摺接するピストンシール1とを有してなるピストン構造において、ピストン体2の外周部に上下に分断されながらピストン体2の周方向に適宜の間隔で多数の縦溝2c,2dが形成されてなると共に、ピストンシール1の内周部が上記の縦溝2c,2dに充填されてなる。
【選択図】 図1
【解決手段】油圧緩衝器SAを構成するシリンダ3内に出没可能に挿通のロッド4に連設されるピストン体2と、このピストン体2の外周に定着されてシリンダ3の内周に摺接するピストンシール1とを有してなるピストン構造において、ピストン体2の外周部に上下に分断されながらピストン体2の周方向に適宜の間隔で多数の縦溝2c,2dが形成されてなると共に、ピストンシール1の内周部が上記の縦溝2c,2dに充填されてなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、油圧緩衝器類におけるピストン部を形成するピストン構造の改良に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
油圧緩衝器やガススプリングさらにはシートダンパなどにおけるピストン部を形成するピストン構造については、従来から種々の提案がある(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、この図4に示すピストン構造にあって、ピストンシール1は、金型の利用下に加熱されてピストン体2の外周に定着されてなるもので、このとき、ピストン体2の外周部には周方向に環状となるいわゆる横溝2aが複数形成されてなるとしている。
【0004】
ちなみに、ピストンシール1は、加熱下にあるときに内周部が上記の複数の横溝2aに充填されるとしており、この状態下での固化でピストン体2の外周に定着されるとしている。
【0005】
それゆえ、このピストンシール1を外周に定着させたピストン体2がシリンダ3内に摺動可能に収装のピストン部Pを形成する場合には、ピストンシール1におけるリップ部1aがシリンダ3の内周に密着するようになって、シリンダ3の内周とピストンシール1との間、すなわち、ピストン部Pでシリンダ3内に画成される上方の油室R1と下方の油室R2との間における油漏れを阻止し得ることになる。
【0006】
しかしながら、上記のピストンシール1におけるリップ部1aは、外周側に突出する性状に形成されており、したがって、ピストン部Pがシリンダ3内を下降する際には、シリンダ3の内周を齧らないが、ピストン部Pがシリンダ3内を上昇する際には、シリンダ3の内周を齧ることになる危惧がある。
【0007】
すなわち、たとえば、シリンダ3が油圧緩衝器SAを構成する場合に、この油圧緩衝器SAの伸長作動時には、上方の油室R1が高圧側になるから、この上方油室R1における言わば高圧がピストンシール1におけるリップ部1aの内周とこれが隣接するピストン体2における上端部2bの外周との間に作用することになる。
【0008】
その結果、図5に示すように、ピストンシール1におけるリップ部1aが一層外周側に膨出して、シリンダ3の内周に圧接される状況になり、このことから、このリップ部1aがシリンダ3の内周を齧ることになる齧り現象が発現される。
【0009】
そして、この齧り現象は、油圧緩衝器SAの円滑な伸長作動を妨げることになり、その結果、この油圧緩衝器SAを装備する、たとえば、車両における乗り心地を損なうことになる不具合がある。
【0010】
【非特許文献1】
図4,図5
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、所定のシール機能を発揮するのはもちろんのこと、シリンダ内でのピストン部の円滑な摺動を可能にして、たとえば、油圧緩衝器に具現化されて車両に搭載される場合に、車両における乗り心地を悪化させることがなく、その汎用性の向上を期待するのに最適となるピストン構造を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、この発明によるピストン構造の構成を、基本的には、シリンダ内に出没可能に挿通のロッドに連設されるピストン体と、このピストン体の外周に定着されてシリンダの内周に摺接するピストンシールとを有してなるピストン構造において、ピストン体の外周部に上下に分断されながらピストン体の周方向に適宜の間隔で多数の縦溝が形成されてなると共に、射出成形されるピストンシールの内周部が上記の縦溝に充填されてなるとする。
【0012】
それゆえ、ピストンシールの内周部が上記の縦溝に充填されるから、その状態のままこのピストンシールが固化されることによってピストン体の外周に定着されることになる。
【0013】
このとき、上記の縦溝が上下間で異相してなることから、この縦溝が上下間で同相する、すなわち、一直線上に並ぶ場合に比較して、ピストンシールの上端あるいは下端に作用する外力でこのピストンシールがピストン体の外周側から剥れる可能性を大幅に低くし得ることになる。
【0014】
ちなみに、ピストンシールが射出成形でピストン体の外周に定着されるから、ピストンシールが金型の利用下に加熱されてピストン体の外周に定着されることに比較して、材料の歩留まりを良くし、また、ワッシャ状に形成されたピストンシールを一旦溶かしてピストン体の外周に巻き付けることに比較して、ピストンシールにおける形状の精度を維持し易くなる。
【0015】
そして、上記した構成において、より具体的には、上記の多数の縦溝にあって、上方あるいは下方のいずれか一方となる縦溝の幅が他方のとなる縦溝の幅より広くなるとする。
【0016】
それゆえ、このピストンシールにおいて、上記の縦溝に充填される上下端部にあっては、これが固化するときに他の部分に比較して大きい比率で収縮するようになり、断面で看ると、ピストン体の上下端部の外周側に陥没するようになる。
【0017】
その結果、ピストンシールにあっては、リップ部を有しないことになり、したがって、このピストンシールを有するピストン部がシリンダ内を上昇する伸長作動時にシリンダの内周を齧る危惧がないことになる。
【0018】
ちなみに、上記した幅が異なることに代えて、上方あるいは下方のいずれか一方となる縦溝の深さが他方のとなる縦溝の深さより深くなるとしても良く、さらには、幅と深さの両方が異なるとしても良い。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるピストン構造にあっては、図1に示すように、ピストン体2が油圧緩衝器SAにおけるピストン部Pを形成するとしている。
【0020】
すなわち、ピストン体2は、油圧緩衝器SAを構成するシリンダ3内に同じく油圧緩衝器SAを構成して出没可能に挿通のロッド4に連設され、外周に定着されたピストンシール1をシリンダ3の内周に摺接させる状態でシリンダ3内に摺動可能に収装されてなるとしている。
【0021】
ちなみに、シリンダ3内にピストン部Pを収装することで、このピストン部Pを挟んで上下となる油室、すなわち、上方の油室R1と下方の油室R2が画成されるのは前記した従来の場合と同様である。
【0022】
ところで、上記のピストン体2は、展開図たる図2に示すように、外周部に上下に分断されながら周方向に適宜の間隔で多数の縦溝2c,2dが形成されてなるとする一方で、図3に示すように、このピストン体2の外周に射出成形で定着されるピストンシール1の内周部が上記の縦溝2c,2dに充填されてなるとしている。
【0023】
このとき、この発明におけるピストンシール1は、たとえば、フッ化水素,グラスファイバー,二硫化モリブデンなどを混合したものを加熱してペースト状にし、図示しないが、いわゆる型の配在下にピストン体2の外周に射出成形されて定着されるとしている。
【0024】
それゆえ、このピストンシール1にあっては、ピストン体2の外周に射出成形で定着されるとするから、前記した図4に示す従来のピストンシール1が金型の利用下に加熱されてピストン体2の外周に定着されることに比較して、材料の歩留まりを良くする。
【0025】
のみならず、従来のピストンシール1が金型の利用下に加熱されてピストン体2の外周に定着されるについては、ワッシャ状に形成されたピストンシール1が一旦溶かされてピストン体2の外周に巻き付けられるとしているから、形状精度が低下され易くなることに比較して、この発明の射出成形では形状の精度を維持し易い。
【0026】
そして、このピストンシール1にあっても、内周部が上記の縦溝2c,2dに充填されるとしているから、その状態のまま固化されることによってピストン体2の外周に定着されることになる。
【0027】
このとき、上記の縦溝2c,2dは、図示するところでは、上下間で異相してなるとするから、この縦溝2c,2dが上下間で同相する、すなわち、一直線上に並ぶ場合に比較して、ピストンシール1の上端あるいは下端に作用する外力でこのピストンシール1がピストン体2の外周側から剥れる可能性を大幅に低くし得ることになる。
【0028】
のみならず、このピストンシール1において、上記の縦溝2c,2dに充填される上下端部にあっては、これが固化するときに他の部分に比較して大きい比率で収縮するようになり、図1,図3に示すように、断面で看ると、ピストン体2の上下端部の外周側に陥没するようになるとしている。
【0029】
それゆえ、この発明によるピストンシール1にあっては、前記した従来のピストンシール1のようにリップ部1aを有しないことになり、したがって、このピストンシール1を有するピストン部Pがシリンダ3内を下降する圧縮作動時にシリンダ3の内周を齧る危惧がないのはもちろんのこと、上記のピストン部Pがシリンダ3内を上昇する伸長作動時にもシリンダ3の内周を齧る危惧がないことになる。
【0030】
ところで、ピストンシール1の上下端部が収縮する比率は、このピストンシール1の内周部が充填されることになる上記した縦溝2c,2dの設定如何によることになる。
【0031】
すなわち、図2に示すところでは、図中で上方の油室R1側となる上方の縦溝2cにおける幅W1に対して、図中で下方の油室R2側となる下方の縦溝2dにおける幅W2の方が小さくなるとしている。
【0032】
ちなみに、両方の縦溝2c,2dの上下方向となる長さについては、図示するところでは、同一になるとされており、ピストン体2の外周部から看れば、上下方向のほぼ1/3の長さになるとしている。
【0033】
それゆえ、ピストンシール1の内周部にあって、大きい幅の溝2cに充填される部分における方が小さい幅の溝2dに充填される部分におけるよりも大きい収縮率になり、したがって、図示するところでは、従来のピストンシール1であれば、リップ部1aが形成されている部位が大きくいわゆる後退することになってシリンダ3の内周に接触する危惧すら生じないことになる。
【0034】
このことからすれば、収縮率が大きくなる限りには、上記した幅が異なるとすることに代えて、上下の溝2c,2dにおける深さを変えることにしても良いと言い得ることになる。
【0035】
のみならず、収縮率を大きくする限りには、上記した幅と深さの両方を異なるようにするとしても良いことになる。
【0036】
前記したところでは、ピストン体2の構成については言及していないが、上記したピストン構造を具現化できる限りには、ピストン体2が焼結形成されたり、ダイカスト成形されたり、さらには、樹脂材で射出成形されるなど、自由な構成が採用されてよいことはもちろんである。
【0037】
また、前記したところでは、この発明のピストン構造が油圧緩衝器SAに具現化される場合を例にして説明したが、この発明のピストン構造にあっては、これがガススプリングやシートダンパなどの凡そシリンダ3内でピストン部Pが摺動する態様である限りには、その具現化が可能となるのはもちろんであり、その場合に、前記したところと同様の作用効果が得られるのももちろんである。
【0038】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明にあっては、射出成形されるピストンシールの内周部がピストン体の外周部に上下に分断されながらピストン体の周方向に適宜の間隔で配在される多数の縦溝に充填されてなるとするから、ピストンシールの内周部が上記の多数の縦溝に充填された状態のまま固化することによってピストン体の外周に定着されることになる。
【0039】
このとき、請求項3の発明のように、上記の縦溝が上下間で異相してなる場合には、この縦溝が上下間で同相する、すなわち、一直線上に並ぶ場合に比較して、ピストンシールの上端あるいは下端に作用する外力でこのピストンシールがピストン体の外周側から剥れる可能性を大幅に低くし得ることになる。
【0040】
ちなみに、ピストンシールが射出成形でピストン体の外周に定着されるから、ピストンシールが金型の利用下に加熱されてピストン体の外周に定着されることに比較して、材料の歩留まりを良くし、また、ワッシャ状に形成されたピストンシールを一旦溶かしてピストン体の外周に巻き付けることに比較して、ピストンシールにおける形状の精度を維持し易くなる。
【0041】
そして、請求項2の発明にあっては、上記の多数の縦溝にあって、上方あるいは下方のいずれか一方となる縦溝の幅が他方のとなる縦溝の幅より広くなるとするから、ピストンシールにおいて、上記の縦溝に充填される上下端部にあっては、これが固化するときに他の部分に比較して大きい比率で収縮するようになり、断面で看ると、ピストン体の上下端部の外周側に陥没するようになる。
【0042】
その結果、ピストンシールにあっては、リップ部を有しないことになり、したがって、このピストンシールを有するピストン部がシリンダ内を上昇する伸長作動時にシリンダの内周を齧る危惧がないことになる。
【0043】
その結果、この発明によれば、所定のシール機能を発揮するのはもちろんのこと、油圧緩衝器におけるシリンダ内でのピストン部の円滑な摺動を可能にして、たとえば、車両における乗り心地を悪化させることがなく、その汎用性の向上を期待するのに最適となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるピストン構造を具現化した油圧緩衝器を一部破断して示す部分正面図である。
【図2】ピストン体の外周部に上下に分断された縦溝が形成されている状態を示す展開図である。
【図3】ピストン体の外周にピストンシールが定着されている状態をシリンダがない状態で示す部分縦断面図である。
【図4】従来のピストン構造を具現化した油圧緩衝器を図1と同様に示す図である。
【図5】図4におけるピストン体の外周にピストンシールが定着されている状態を図3と同様に示す図である。
【符号の説明】
1 ピストンシール
2 ピストン体
2b,2c 縦溝
3 シリンダ
4 ロッド
P ピストン部
SA 油圧緩衝器
R1,R2 油室
W1,W2 幅
【発明の属する技術分野】
この発明は、油圧緩衝器類におけるピストン部を形成するピストン構造の改良に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
油圧緩衝器やガススプリングさらにはシートダンパなどにおけるピストン部を形成するピストン構造については、従来から種々の提案がある(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、この図4に示すピストン構造にあって、ピストンシール1は、金型の利用下に加熱されてピストン体2の外周に定着されてなるもので、このとき、ピストン体2の外周部には周方向に環状となるいわゆる横溝2aが複数形成されてなるとしている。
【0004】
ちなみに、ピストンシール1は、加熱下にあるときに内周部が上記の複数の横溝2aに充填されるとしており、この状態下での固化でピストン体2の外周に定着されるとしている。
【0005】
それゆえ、このピストンシール1を外周に定着させたピストン体2がシリンダ3内に摺動可能に収装のピストン部Pを形成する場合には、ピストンシール1におけるリップ部1aがシリンダ3の内周に密着するようになって、シリンダ3の内周とピストンシール1との間、すなわち、ピストン部Pでシリンダ3内に画成される上方の油室R1と下方の油室R2との間における油漏れを阻止し得ることになる。
【0006】
しかしながら、上記のピストンシール1におけるリップ部1aは、外周側に突出する性状に形成されており、したがって、ピストン部Pがシリンダ3内を下降する際には、シリンダ3の内周を齧らないが、ピストン部Pがシリンダ3内を上昇する際には、シリンダ3の内周を齧ることになる危惧がある。
【0007】
すなわち、たとえば、シリンダ3が油圧緩衝器SAを構成する場合に、この油圧緩衝器SAの伸長作動時には、上方の油室R1が高圧側になるから、この上方油室R1における言わば高圧がピストンシール1におけるリップ部1aの内周とこれが隣接するピストン体2における上端部2bの外周との間に作用することになる。
【0008】
その結果、図5に示すように、ピストンシール1におけるリップ部1aが一層外周側に膨出して、シリンダ3の内周に圧接される状況になり、このことから、このリップ部1aがシリンダ3の内周を齧ることになる齧り現象が発現される。
【0009】
そして、この齧り現象は、油圧緩衝器SAの円滑な伸長作動を妨げることになり、その結果、この油圧緩衝器SAを装備する、たとえば、車両における乗り心地を損なうことになる不具合がある。
【0010】
【非特許文献1】
図4,図5
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、所定のシール機能を発揮するのはもちろんのこと、シリンダ内でのピストン部の円滑な摺動を可能にして、たとえば、油圧緩衝器に具現化されて車両に搭載される場合に、車両における乗り心地を悪化させることがなく、その汎用性の向上を期待するのに最適となるピストン構造を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、この発明によるピストン構造の構成を、基本的には、シリンダ内に出没可能に挿通のロッドに連設されるピストン体と、このピストン体の外周に定着されてシリンダの内周に摺接するピストンシールとを有してなるピストン構造において、ピストン体の外周部に上下に分断されながらピストン体の周方向に適宜の間隔で多数の縦溝が形成されてなると共に、射出成形されるピストンシールの内周部が上記の縦溝に充填されてなるとする。
【0012】
それゆえ、ピストンシールの内周部が上記の縦溝に充填されるから、その状態のままこのピストンシールが固化されることによってピストン体の外周に定着されることになる。
【0013】
このとき、上記の縦溝が上下間で異相してなることから、この縦溝が上下間で同相する、すなわち、一直線上に並ぶ場合に比較して、ピストンシールの上端あるいは下端に作用する外力でこのピストンシールがピストン体の外周側から剥れる可能性を大幅に低くし得ることになる。
【0014】
ちなみに、ピストンシールが射出成形でピストン体の外周に定着されるから、ピストンシールが金型の利用下に加熱されてピストン体の外周に定着されることに比較して、材料の歩留まりを良くし、また、ワッシャ状に形成されたピストンシールを一旦溶かしてピストン体の外周に巻き付けることに比較して、ピストンシールにおける形状の精度を維持し易くなる。
【0015】
そして、上記した構成において、より具体的には、上記の多数の縦溝にあって、上方あるいは下方のいずれか一方となる縦溝の幅が他方のとなる縦溝の幅より広くなるとする。
【0016】
それゆえ、このピストンシールにおいて、上記の縦溝に充填される上下端部にあっては、これが固化するときに他の部分に比較して大きい比率で収縮するようになり、断面で看ると、ピストン体の上下端部の外周側に陥没するようになる。
【0017】
その結果、ピストンシールにあっては、リップ部を有しないことになり、したがって、このピストンシールを有するピストン部がシリンダ内を上昇する伸長作動時にシリンダの内周を齧る危惧がないことになる。
【0018】
ちなみに、上記した幅が異なることに代えて、上方あるいは下方のいずれか一方となる縦溝の深さが他方のとなる縦溝の深さより深くなるとしても良く、さらには、幅と深さの両方が異なるとしても良い。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるピストン構造にあっては、図1に示すように、ピストン体2が油圧緩衝器SAにおけるピストン部Pを形成するとしている。
【0020】
すなわち、ピストン体2は、油圧緩衝器SAを構成するシリンダ3内に同じく油圧緩衝器SAを構成して出没可能に挿通のロッド4に連設され、外周に定着されたピストンシール1をシリンダ3の内周に摺接させる状態でシリンダ3内に摺動可能に収装されてなるとしている。
【0021】
ちなみに、シリンダ3内にピストン部Pを収装することで、このピストン部Pを挟んで上下となる油室、すなわち、上方の油室R1と下方の油室R2が画成されるのは前記した従来の場合と同様である。
【0022】
ところで、上記のピストン体2は、展開図たる図2に示すように、外周部に上下に分断されながら周方向に適宜の間隔で多数の縦溝2c,2dが形成されてなるとする一方で、図3に示すように、このピストン体2の外周に射出成形で定着されるピストンシール1の内周部が上記の縦溝2c,2dに充填されてなるとしている。
【0023】
このとき、この発明におけるピストンシール1は、たとえば、フッ化水素,グラスファイバー,二硫化モリブデンなどを混合したものを加熱してペースト状にし、図示しないが、いわゆる型の配在下にピストン体2の外周に射出成形されて定着されるとしている。
【0024】
それゆえ、このピストンシール1にあっては、ピストン体2の外周に射出成形で定着されるとするから、前記した図4に示す従来のピストンシール1が金型の利用下に加熱されてピストン体2の外周に定着されることに比較して、材料の歩留まりを良くする。
【0025】
のみならず、従来のピストンシール1が金型の利用下に加熱されてピストン体2の外周に定着されるについては、ワッシャ状に形成されたピストンシール1が一旦溶かされてピストン体2の外周に巻き付けられるとしているから、形状精度が低下され易くなることに比較して、この発明の射出成形では形状の精度を維持し易い。
【0026】
そして、このピストンシール1にあっても、内周部が上記の縦溝2c,2dに充填されるとしているから、その状態のまま固化されることによってピストン体2の外周に定着されることになる。
【0027】
このとき、上記の縦溝2c,2dは、図示するところでは、上下間で異相してなるとするから、この縦溝2c,2dが上下間で同相する、すなわち、一直線上に並ぶ場合に比較して、ピストンシール1の上端あるいは下端に作用する外力でこのピストンシール1がピストン体2の外周側から剥れる可能性を大幅に低くし得ることになる。
【0028】
のみならず、このピストンシール1において、上記の縦溝2c,2dに充填される上下端部にあっては、これが固化するときに他の部分に比較して大きい比率で収縮するようになり、図1,図3に示すように、断面で看ると、ピストン体2の上下端部の外周側に陥没するようになるとしている。
【0029】
それゆえ、この発明によるピストンシール1にあっては、前記した従来のピストンシール1のようにリップ部1aを有しないことになり、したがって、このピストンシール1を有するピストン部Pがシリンダ3内を下降する圧縮作動時にシリンダ3の内周を齧る危惧がないのはもちろんのこと、上記のピストン部Pがシリンダ3内を上昇する伸長作動時にもシリンダ3の内周を齧る危惧がないことになる。
【0030】
ところで、ピストンシール1の上下端部が収縮する比率は、このピストンシール1の内周部が充填されることになる上記した縦溝2c,2dの設定如何によることになる。
【0031】
すなわち、図2に示すところでは、図中で上方の油室R1側となる上方の縦溝2cにおける幅W1に対して、図中で下方の油室R2側となる下方の縦溝2dにおける幅W2の方が小さくなるとしている。
【0032】
ちなみに、両方の縦溝2c,2dの上下方向となる長さについては、図示するところでは、同一になるとされており、ピストン体2の外周部から看れば、上下方向のほぼ1/3の長さになるとしている。
【0033】
それゆえ、ピストンシール1の内周部にあって、大きい幅の溝2cに充填される部分における方が小さい幅の溝2dに充填される部分におけるよりも大きい収縮率になり、したがって、図示するところでは、従来のピストンシール1であれば、リップ部1aが形成されている部位が大きくいわゆる後退することになってシリンダ3の内周に接触する危惧すら生じないことになる。
【0034】
このことからすれば、収縮率が大きくなる限りには、上記した幅が異なるとすることに代えて、上下の溝2c,2dにおける深さを変えることにしても良いと言い得ることになる。
【0035】
のみならず、収縮率を大きくする限りには、上記した幅と深さの両方を異なるようにするとしても良いことになる。
【0036】
前記したところでは、ピストン体2の構成については言及していないが、上記したピストン構造を具現化できる限りには、ピストン体2が焼結形成されたり、ダイカスト成形されたり、さらには、樹脂材で射出成形されるなど、自由な構成が採用されてよいことはもちろんである。
【0037】
また、前記したところでは、この発明のピストン構造が油圧緩衝器SAに具現化される場合を例にして説明したが、この発明のピストン構造にあっては、これがガススプリングやシートダンパなどの凡そシリンダ3内でピストン部Pが摺動する態様である限りには、その具現化が可能となるのはもちろんであり、その場合に、前記したところと同様の作用効果が得られるのももちろんである。
【0038】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明にあっては、射出成形されるピストンシールの内周部がピストン体の外周部に上下に分断されながらピストン体の周方向に適宜の間隔で配在される多数の縦溝に充填されてなるとするから、ピストンシールの内周部が上記の多数の縦溝に充填された状態のまま固化することによってピストン体の外周に定着されることになる。
【0039】
このとき、請求項3の発明のように、上記の縦溝が上下間で異相してなる場合には、この縦溝が上下間で同相する、すなわち、一直線上に並ぶ場合に比較して、ピストンシールの上端あるいは下端に作用する外力でこのピストンシールがピストン体の外周側から剥れる可能性を大幅に低くし得ることになる。
【0040】
ちなみに、ピストンシールが射出成形でピストン体の外周に定着されるから、ピストンシールが金型の利用下に加熱されてピストン体の外周に定着されることに比較して、材料の歩留まりを良くし、また、ワッシャ状に形成されたピストンシールを一旦溶かしてピストン体の外周に巻き付けることに比較して、ピストンシールにおける形状の精度を維持し易くなる。
【0041】
そして、請求項2の発明にあっては、上記の多数の縦溝にあって、上方あるいは下方のいずれか一方となる縦溝の幅が他方のとなる縦溝の幅より広くなるとするから、ピストンシールにおいて、上記の縦溝に充填される上下端部にあっては、これが固化するときに他の部分に比較して大きい比率で収縮するようになり、断面で看ると、ピストン体の上下端部の外周側に陥没するようになる。
【0042】
その結果、ピストンシールにあっては、リップ部を有しないことになり、したがって、このピストンシールを有するピストン部がシリンダ内を上昇する伸長作動時にシリンダの内周を齧る危惧がないことになる。
【0043】
その結果、この発明によれば、所定のシール機能を発揮するのはもちろんのこと、油圧緩衝器におけるシリンダ内でのピストン部の円滑な摺動を可能にして、たとえば、車両における乗り心地を悪化させることがなく、その汎用性の向上を期待するのに最適となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるピストン構造を具現化した油圧緩衝器を一部破断して示す部分正面図である。
【図2】ピストン体の外周部に上下に分断された縦溝が形成されている状態を示す展開図である。
【図3】ピストン体の外周にピストンシールが定着されている状態をシリンダがない状態で示す部分縦断面図である。
【図4】従来のピストン構造を具現化した油圧緩衝器を図1と同様に示す図である。
【図5】図4におけるピストン体の外周にピストンシールが定着されている状態を図3と同様に示す図である。
【符号の説明】
1 ピストンシール
2 ピストン体
2b,2c 縦溝
3 シリンダ
4 ロッド
P ピストン部
SA 油圧緩衝器
R1,R2 油室
W1,W2 幅
Claims (3)
- シリンダ内に出没可能に挿通のロッドに連設されるピストン体と、このピストン体の外周に定着されてシリンダの内周に摺接するピストンシールとを有してなるピストン構造において、ピストン体の外周部に上下に分断されながらピストン体の周方向に適宜の間隔で多数の縦溝が形成されてなると共に、射出成形されるピストンシールの内周部が上記の縦溝に充填されてなることを特徴とするピストン構造
- ピストン体の外周部に上下に分断されながらピストン体の周方向に適宜の間隔で形成される多数の縦溝にあって、上方あるいは下方のいずれか一方となる縦溝の幅が他方のとなる縦溝の幅より広くなる請求項1に記載のピストン構造
- ピストン体の外周部に上下に分断されながらピストン体の周方向に適宜の間隔で形成される多数の縦溝が上下間で異相してなる請求項1に記載のピストン構造
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2002371178A JP2004204863A (ja) | 2002-12-24 | 2002-12-24 | ピストン構造 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104763771A (zh) * | 2015-04-16 | 2015-07-08 | 安徽全信精工装备有限公司 | 交叉减震器 |
US9879777B2 (en) | 2012-11-16 | 2018-01-30 | Kyb Corporation | Shock absorber and piston |
-
2002
- 2002-12-24 JP JP2002371178A patent/JP2004204863A/ja active Pending
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