JP2004204274A - 高炉原料装入方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ベル式のムーバブルアーマーを有する高炉における高炉原料装入方法に関する。
【解決手段】鉱石装入開始時は、該鉱石が炉壁部3に到達するより先に炉中心部に到達する位置にムーバブルアーマー5を調整し、前記鉱石が炉中心部に到達した後にムーバブルアーマーを炉壁側に向けて移動する。
【選択図】 図1
【解決手段】鉱石装入開始時は、該鉱石が炉壁部3に到達するより先に炉中心部に到達する位置にムーバブルアーマー5を調整し、前記鉱石が炉中心部に到達した後にムーバブルアーマーを炉壁側に向けて移動する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
ベル式でムーバブルアーマー(以下、単にアーマーともいう。)を有する高炉における高炉原料装入方法に関し、特に炉壁部における炉内ガス流を制御するのに好適な装入物分布を形成する高炉原料装入方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、図1に基づき、ベル式でムーバブルアーマー5を有する高炉1について説明する。
図1に示すように、ベル式高炉におけるムーバブルアーマー5は、高炉1の炉頂に配置したベル2から装入される原料(ここでは図示せず。)の装入方向を変える目的で配置した設備であり、その移動位置(これをアーマーポジションとよぶ。)に応じて原料装入位置を調整するものである。アーマーポジションは、炉口半径を1としたアーマー先端の炉壁からの距離に応じてナンバリングされて決められている。表1にその一例を示す。
【0003】
【表1】
【0004】
なお、以下の説明では、この表1を用いてムーバブルアーマーのアーマー位置を説明するものとする。
ベル式高炉を含め、高炉操業は、コークス炉の寿命問題、炭材使用量を低減することによるCO2 排出抑制等の見地から、低燃料比操業が指向されており、今後、益々その傾向は強まると考えられる。
【0005】
一般に、低燃料比操業時には炉内を通過するガス量が減少し、炉頂温度が低下する。一方、炉頂温度が低下すると、亜鉛が炉外へ排出され難くなり、炉外へ排出されない亜鉛が炉壁部に付着して炉壁付着物を形成することが経験的に知られている。
この炉壁付着物の量が過大になると、炉壁プロフィルの乱れや有効断面積減少に伴うガス流速の上昇によって安定操業が阻害される。さらに、炉壁付着物が剥離して落下し、炉下部に達すると炉熱が低下して冷え込み等の重大トラブルを引き起こす場合がある。
【0006】
そのため、低燃料比操業時には特に、亜鉛の炉壁部への付着を抑止し、炉外への排出を促進するために炉壁部近傍のガス流を増加させて炉壁の温度低下を防止することが重要となる。
一般に、高炉内での鉱石層厚/コークス層厚の比(以下、鉱石層厚比ともいう。)が小さい個所の通気抵抗は小さく、ガスが流れやすい傾向にある。従って、炉壁部近傍にコークスを重点的に堆積させることで、同個所のガス流量を増大できることになる。
【0007】
しかし、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させようとして、炉内へのコークス装入位置を炉壁近傍に集中するように調整すると、炉壁部近傍のみならず炉壁周辺部全体の鉱石層厚比まで低下してしまう。
図7は、ベル式高炉におけるムーバブルアーマー式の装入装置の1/10縮小模型を用い、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させるようにムーバブルアーマーを調整してコークス(coke、あるいは、単にCとも表記する。以下、同じ。)と鉱石(Ore 、あるいは、単にOとも表記する。以下、同じ。)を交互に装入した際に形成される堆積形状(a)とその鉱石層厚比分布(b)を示すグラフである。
【0008】
本グラフにおいて、横軸は、高炉の炉口半径を1とした無次元半径である(以下、堆積形状とその鉱石層厚比分布を示すグラフにおいて同じ。)
ここで、図7から、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させようとした結果、無次元半径が約 0.8〜1.0 の広い領域の鉱石層厚比まで低位となっていることがわかる。これは、高炉の全断面積の約1/3を占める範囲に相当する。
【0009】
鉱石層厚比が低い領域では、その領域の還元ガス/原料中被還元酸素の比が増大し、還元に寄与せずに炉頂へ排出されるCOガスが増加することになるが、特にそれが炉壁近傍の周辺部である場合、占有面積が大きいことから炉全体のガス利用率の低下を招く。
特許文献1には、通常行われるコークスと鉱石を大ベルから交互に装入する方法の改善方法として、大ベル上にコークスを層状に堆積させ、その上に鉱石を堆積させて同時装入を行い、炉壁側にコークスを優先的に堆積させる技術が開示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1では、基本的に鉱石とコークスの堆積角を利用した層厚分布制御であり最炉壁部の鉱石層厚を低下させようとするとそれに付随して周辺部全体の鉱石層厚比が低下し、最炉壁部のみならず周辺部全体のガス量が増大することは避けられない。
以上のことから、炉壁近傍のガス流量の確保と、炉内全体のガス利用率の維持を両立させるためには、炉壁近傍のごく狭い領域のみのガス流量を増加させるように鉱石層厚比を調整することが望ましいことは明らかである。
【0011】
ところが、原料とコークスの堆積角を利用した従来の層厚分布制御方式では、最炉壁部のみの鉱石層厚比を選択的に低下させることは困難である。とりわけ、低燃料比操業時は、溶解レベルが低下しており、亜鉛排出を重視するあまりに周辺流を強化する傾向にあり、相対的に全体のガス利用率が低下し、それに伴う直接還元量の増加が炉熱低下を引き起こす可能性が高い。
【0012】
また、非特許文献1には、コークス層上に鉱石を装入する際、装入した鉱石が周辺から中心に向かってコークス層上を流れ込む過程において、中心部の鉱石で覆われない領域が徐々に縮小し、同部位のガス流速が増大してコークスが流動化し、その結果、中心の鉱石層厚比が低下する現象が開示されている。
【0013】
【特許文献1】
特開2001-172706 号公報
【非特許文献1】
西尾 他、「装入物分布に及ぼ すガス流れの影響」、鉄と鋼、
63(1977)、S440
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ベル式でムーバブルアーマーを有する高炉において、炉壁近傍のごく狭い領域のみのガス流量を増加させる技術を提供し、全体のガス利用率を低下させることなく炉壁近傍の狭い領域のみのガス量を増大させ、特に低燃料比時の安定操業を継続することを可能とすることを目的とする。さらに、亜鉛排出を良好にして、炉壁への亜鉛析出を防止するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炉壁部近傍の原料層の層厚を、装入物の堆積角を利用した装入制御に加えて、原料装入過程における鉱石の堆積状態の変化に起因する炉半径方向ガス流量分配の変化に着目し、当該変化を利用して装入制御するようにしたものである。
【0016】
本発明者らは、原料装入中にムーバブルアーマーをある特定の条件で駆動させると、上述の非特許文献1に記載と同様の現象を炉壁部近傍においても実現できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、ベル式でムーバブルアーマーを有する高炉における高炉原料装入方法であって、鉱石装入開始時は、該鉱石が炉壁部に到達するより先に炉中心部に到達する位置にムーバブルアーマーを調整し、前記鉱石が炉中心部に到達した後にムーバブルアーマーを炉壁側に向けて移動することを特徴とする高炉原料装入方法によって上記課題を解決した。
【0017】
また、本発明は、ベル式でムーバブルアーマーを有する高炉における高炉原料装入方法であって、1チャージ分の鉱石を2バッチ以上に分割して装入するにあたり、初回のバッチでは中心部に鉱石が到達し、かつ炉壁部には鉱石が到達しないような堆積形状が形成されるようにムーバブルアーマーを調整し、次回以降のバッチでは、ムーバブルアーマーを、初回の装入における位置より炉壁側の位置からスタートし、装入中に炉壁側に移動することを特徴とする高炉原料装入方法によって上記課題を解決した。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、高炉の1/10 模型実験で得られた結果を用い、本発明の装入方法について説明する。
通常の装人方法では、1ダンプ(1回の装入)中にムーバブルアーマーは一定の位置で固定とするが、ここで、コークス上に鉱石原料を装入する際にムーバブルアーマーに大ベルから落下する鉱石原料流を衝突させながら、同ムーバブルアーマーを最初の位置から経時的に炉周辺側の方向に移動させるようにすれば、周辺部近傍において鉱石に覆われていない領域を順次狭めていくことができる。
【0019】
そして、こうすることで鉱石原料の装入後期において最炉壁部のガス流速を増大させ、同個所でコークスを流動化させることができ、堆積角以上のコークス傾斜角の形成が期待できる。
上記の考えに基づいて、模型を用いた実験を試みた。模型は、実高炉の1/10 の縮尺であり、また、ベルおよびムーバブルアーマーを備えており、かつ下方からエアを吹き込むことで炉口部でのガス流れを再現することができる。なお、ムーバブルアーマーポジションは、前出の表1に従う。
【0020】
まず、コークスをムーバブルアーマー(これは、そのアーマーポジションの数値が大きいほど装入物の落下位置が炉中心側となる。)で通常通りに装入し、次に、鉱石を装入する際に、装入中のアーマーポジションを8→4に変化させる条件で原料装入実験を行った。
当該実験における堆積形状および鉱石層厚比(これは、実験後に樹脂で固めたものを断面観察した結果である。)を図4に示す。図4においては、特に炉壁部でコークスが流動化した痕跡が認められず、本発明者らが予想した結果は得られなかった。
【0021】
この原因として、装入初期の原料の落下位置がコークス層の頂点よりも外側だったために、図5(a)に示すように堆積層の形成過程において炉中心方向にもガスが廻り、炉壁部のガス流速が上昇しないまま堆積が進み、図5(b)に示すように炉中心方向へのガス流が強まる結果になったと推定される。なお、図5において、矢印はガス流を示しており、その流速が大きいほど矢印を太くして示している(以下の図で同じ)。
【0022】
次に、コークスをアーマーポジション8で装入し、その後、アーマーポジションを12から3に変化させながら鉱石を装入する条件で原料装入実験を行った。
その結果を図2に示す。図2では、装人後期に炉壁部近傍のコークスが流動化し、無次元半径約0.95 〜1.0 の狭い領域で鉱石層厚比を低下させることができた。
【0023】
これは、図3に示すように、鉱石の装入初期にその落下位置から中心部にかけて鉱石で覆われる(図3(a)参照)ことから、装入後期に周辺側にガスが流れ(図3(b)参照)、最終的に炉壁部でガス流速が大きく上昇してコークスの流動化(図3(c)参照)が実現した結果である。
上記は、鉱石装入の1ダンプにおいて炉壁部近傍のみのコークスを流動化させ、コークス層厚を低下させる装入方法を採用した結果であるが、2ダンプ以上で鉱石の装人を行う場合は、初回のダンプで形成させる鉱石堆積形状を、鉱石が炉壁部に到達しないようにムーバブルアーマーを調整し、次回のダンプでムーバプルアーマーを装入中に徐々に炉壁側に移動させるようにすれば同様の効果を得ることができる。
【0024】
図6は、模型実験において、まずコークスをアーマーポジション8で装入し、続けて、2バッチに分割した鉱石のうち初回の装入をアーマーポジション12で、2回目をアーマーポジション6から3に変化させながら装入した結果を示すものである。図6では、1ダンプ目の鉱石装入により周辺部を除く領域に鉱石を堆積させ( Ore1に示す領域)、2ダンプ目の鉱石装入( Ore2に示す領域)で徐々にコークスが露出している領域を炉壁側へと狭めていくことにより、炉壁部のガス流速が増加してコークスが流動化するようにしている。こうすることで、無次元半径約0.95〜1.0 の狭い領域で鉱石層厚比が低下するのである。
【0025】
すなわち、鉱石の装入初期には装入された鉱石が炉壁部に到達しないようにアーマーポジションを調整しておき、中心まで鉱石が堆積した後に積極的に鉱石の落下位置を炉壁側に変化させながら装入し、炉壁部近傍にガス流を集中させて炉壁部近傍のコークスを流動化させるようにする。こうすることが、炉壁部近傍のみの鉱石層厚比を低下させる本発明の重要な技術上のポイントである。
【0026】
【実施例】
本発明の装入方法を、内容積2800m3 の高炉に適用し、本発明の効果の検証を実施した。以下、その実施例を説明する。
まず、従来の装入を実施した。装入シーケンスは、C↓O↓(コークスと鉱石を1チャージ毎に交互に装入)であり、コークス比: 360kg/t、微粉炭比: 110kg/t、出銑比 2.2、ガス利用率約51.5%の操業をベースとして実施した。
【0027】
ところが、亜鉛の排出量が低下したために鉱石装入時のアーマーポジション(表1参照)を12から14に変更して炉壁流促進を図った。その結果、亜鉛排出量は増加したが、逆にガス利用率が低下し、スリップ発生や炉熱変動が多発して操業が不安定になった。
そこで、本発明の装入方法を適用し、鉱石装入中にアーマーポジションを14から4に変更する装入方法を実施したところ、ガス利用率はベースより若干低下したものの良好であり、操業も安定させることができた。この間の操業の推移を図8に示す。また、炉内半径方向のガス分布を図9に示す。図示のとおり、本発明の効果は明らかである。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、炉内全体のガス利用率を低下させることなく炉壁近傍の狭い領域のみのガス量を増大させることが可能となり、特に低燃料比時の高炉の安定操業継続が可能となった。また、亜鉛排出が良好になり、炉壁への亜鉛析出を防止できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベル式高炉におけるムーバブルアーマーの配置を示す模式断面図である。
【図2】模型実験による本発明適用時の装入物の堆積形状と鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図3】本発明適用時の炉壁部近傍におけるコークス層厚の増加機構を説明するグラフである。
【図4】模型実験による本発明に対する従来の装入物の堆積形状と鉱石層厚比分布の対比結果を示すグラフである。
【図5】本発明の未適用時に、炉壁部近傍のコークス層厚が増加しない理由を説明するグラフである。
【図6】模型実験による本発明適用時の装入物堆積形状および鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図7】模型実験による従来の分布制御における装入物堆積形状および鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図8】本発明適用前後のガス利用率とダスト中の亜鉛濃度の推移を示すグラフである。
【図9】本発明適用前後の炉半径方向ガス利用率分布の変化を対比するグラフである。
【符号の説明】
1 高炉(ベル式高炉)
2 ベル
3 炉壁
5 ムーバブルアーマー(アーマー)
【発明の属する技術分野】
ベル式でムーバブルアーマー(以下、単にアーマーともいう。)を有する高炉における高炉原料装入方法に関し、特に炉壁部における炉内ガス流を制御するのに好適な装入物分布を形成する高炉原料装入方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、図1に基づき、ベル式でムーバブルアーマー5を有する高炉1について説明する。
図1に示すように、ベル式高炉におけるムーバブルアーマー5は、高炉1の炉頂に配置したベル2から装入される原料(ここでは図示せず。)の装入方向を変える目的で配置した設備であり、その移動位置(これをアーマーポジションとよぶ。)に応じて原料装入位置を調整するものである。アーマーポジションは、炉口半径を1としたアーマー先端の炉壁からの距離に応じてナンバリングされて決められている。表1にその一例を示す。
【0003】
【表1】
【0004】
なお、以下の説明では、この表1を用いてムーバブルアーマーのアーマー位置を説明するものとする。
ベル式高炉を含め、高炉操業は、コークス炉の寿命問題、炭材使用量を低減することによるCO2 排出抑制等の見地から、低燃料比操業が指向されており、今後、益々その傾向は強まると考えられる。
【0005】
一般に、低燃料比操業時には炉内を通過するガス量が減少し、炉頂温度が低下する。一方、炉頂温度が低下すると、亜鉛が炉外へ排出され難くなり、炉外へ排出されない亜鉛が炉壁部に付着して炉壁付着物を形成することが経験的に知られている。
この炉壁付着物の量が過大になると、炉壁プロフィルの乱れや有効断面積減少に伴うガス流速の上昇によって安定操業が阻害される。さらに、炉壁付着物が剥離して落下し、炉下部に達すると炉熱が低下して冷え込み等の重大トラブルを引き起こす場合がある。
【0006】
そのため、低燃料比操業時には特に、亜鉛の炉壁部への付着を抑止し、炉外への排出を促進するために炉壁部近傍のガス流を増加させて炉壁の温度低下を防止することが重要となる。
一般に、高炉内での鉱石層厚/コークス層厚の比(以下、鉱石層厚比ともいう。)が小さい個所の通気抵抗は小さく、ガスが流れやすい傾向にある。従って、炉壁部近傍にコークスを重点的に堆積させることで、同個所のガス流量を増大できることになる。
【0007】
しかし、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させようとして、炉内へのコークス装入位置を炉壁近傍に集中するように調整すると、炉壁部近傍のみならず炉壁周辺部全体の鉱石層厚比まで低下してしまう。
図7は、ベル式高炉におけるムーバブルアーマー式の装入装置の1/10縮小模型を用い、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させるようにムーバブルアーマーを調整してコークス(coke、あるいは、単にCとも表記する。以下、同じ。)と鉱石(Ore 、あるいは、単にOとも表記する。以下、同じ。)を交互に装入した際に形成される堆積形状(a)とその鉱石層厚比分布(b)を示すグラフである。
【0008】
本グラフにおいて、横軸は、高炉の炉口半径を1とした無次元半径である(以下、堆積形状とその鉱石層厚比分布を示すグラフにおいて同じ。)
ここで、図7から、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させようとした結果、無次元半径が約 0.8〜1.0 の広い領域の鉱石層厚比まで低位となっていることがわかる。これは、高炉の全断面積の約1/3を占める範囲に相当する。
【0009】
鉱石層厚比が低い領域では、その領域の還元ガス/原料中被還元酸素の比が増大し、還元に寄与せずに炉頂へ排出されるCOガスが増加することになるが、特にそれが炉壁近傍の周辺部である場合、占有面積が大きいことから炉全体のガス利用率の低下を招く。
特許文献1には、通常行われるコークスと鉱石を大ベルから交互に装入する方法の改善方法として、大ベル上にコークスを層状に堆積させ、その上に鉱石を堆積させて同時装入を行い、炉壁側にコークスを優先的に堆積させる技術が開示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1では、基本的に鉱石とコークスの堆積角を利用した層厚分布制御であり最炉壁部の鉱石層厚を低下させようとするとそれに付随して周辺部全体の鉱石層厚比が低下し、最炉壁部のみならず周辺部全体のガス量が増大することは避けられない。
以上のことから、炉壁近傍のガス流量の確保と、炉内全体のガス利用率の維持を両立させるためには、炉壁近傍のごく狭い領域のみのガス流量を増加させるように鉱石層厚比を調整することが望ましいことは明らかである。
【0011】
ところが、原料とコークスの堆積角を利用した従来の層厚分布制御方式では、最炉壁部のみの鉱石層厚比を選択的に低下させることは困難である。とりわけ、低燃料比操業時は、溶解レベルが低下しており、亜鉛排出を重視するあまりに周辺流を強化する傾向にあり、相対的に全体のガス利用率が低下し、それに伴う直接還元量の増加が炉熱低下を引き起こす可能性が高い。
【0012】
また、非特許文献1には、コークス層上に鉱石を装入する際、装入した鉱石が周辺から中心に向かってコークス層上を流れ込む過程において、中心部の鉱石で覆われない領域が徐々に縮小し、同部位のガス流速が増大してコークスが流動化し、その結果、中心の鉱石層厚比が低下する現象が開示されている。
【0013】
【特許文献1】
特開2001-172706 号公報
【非特許文献1】
西尾 他、「装入物分布に及ぼ すガス流れの影響」、鉄と鋼、
63(1977)、S440
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ベル式でムーバブルアーマーを有する高炉において、炉壁近傍のごく狭い領域のみのガス流量を増加させる技術を提供し、全体のガス利用率を低下させることなく炉壁近傍の狭い領域のみのガス量を増大させ、特に低燃料比時の安定操業を継続することを可能とすることを目的とする。さらに、亜鉛排出を良好にして、炉壁への亜鉛析出を防止するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炉壁部近傍の原料層の層厚を、装入物の堆積角を利用した装入制御に加えて、原料装入過程における鉱石の堆積状態の変化に起因する炉半径方向ガス流量分配の変化に着目し、当該変化を利用して装入制御するようにしたものである。
【0016】
本発明者らは、原料装入中にムーバブルアーマーをある特定の条件で駆動させると、上述の非特許文献1に記載と同様の現象を炉壁部近傍においても実現できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、ベル式でムーバブルアーマーを有する高炉における高炉原料装入方法であって、鉱石装入開始時は、該鉱石が炉壁部に到達するより先に炉中心部に到達する位置にムーバブルアーマーを調整し、前記鉱石が炉中心部に到達した後にムーバブルアーマーを炉壁側に向けて移動することを特徴とする高炉原料装入方法によって上記課題を解決した。
【0017】
また、本発明は、ベル式でムーバブルアーマーを有する高炉における高炉原料装入方法であって、1チャージ分の鉱石を2バッチ以上に分割して装入するにあたり、初回のバッチでは中心部に鉱石が到達し、かつ炉壁部には鉱石が到達しないような堆積形状が形成されるようにムーバブルアーマーを調整し、次回以降のバッチでは、ムーバブルアーマーを、初回の装入における位置より炉壁側の位置からスタートし、装入中に炉壁側に移動することを特徴とする高炉原料装入方法によって上記課題を解決した。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、高炉の1/10 模型実験で得られた結果を用い、本発明の装入方法について説明する。
通常の装人方法では、1ダンプ(1回の装入)中にムーバブルアーマーは一定の位置で固定とするが、ここで、コークス上に鉱石原料を装入する際にムーバブルアーマーに大ベルから落下する鉱石原料流を衝突させながら、同ムーバブルアーマーを最初の位置から経時的に炉周辺側の方向に移動させるようにすれば、周辺部近傍において鉱石に覆われていない領域を順次狭めていくことができる。
【0019】
そして、こうすることで鉱石原料の装入後期において最炉壁部のガス流速を増大させ、同個所でコークスを流動化させることができ、堆積角以上のコークス傾斜角の形成が期待できる。
上記の考えに基づいて、模型を用いた実験を試みた。模型は、実高炉の1/10 の縮尺であり、また、ベルおよびムーバブルアーマーを備えており、かつ下方からエアを吹き込むことで炉口部でのガス流れを再現することができる。なお、ムーバブルアーマーポジションは、前出の表1に従う。
【0020】
まず、コークスをムーバブルアーマー(これは、そのアーマーポジションの数値が大きいほど装入物の落下位置が炉中心側となる。)で通常通りに装入し、次に、鉱石を装入する際に、装入中のアーマーポジションを8→4に変化させる条件で原料装入実験を行った。
当該実験における堆積形状および鉱石層厚比(これは、実験後に樹脂で固めたものを断面観察した結果である。)を図4に示す。図4においては、特に炉壁部でコークスが流動化した痕跡が認められず、本発明者らが予想した結果は得られなかった。
【0021】
この原因として、装入初期の原料の落下位置がコークス層の頂点よりも外側だったために、図5(a)に示すように堆積層の形成過程において炉中心方向にもガスが廻り、炉壁部のガス流速が上昇しないまま堆積が進み、図5(b)に示すように炉中心方向へのガス流が強まる結果になったと推定される。なお、図5において、矢印はガス流を示しており、その流速が大きいほど矢印を太くして示している(以下の図で同じ)。
【0022】
次に、コークスをアーマーポジション8で装入し、その後、アーマーポジションを12から3に変化させながら鉱石を装入する条件で原料装入実験を行った。
その結果を図2に示す。図2では、装人後期に炉壁部近傍のコークスが流動化し、無次元半径約0.95 〜1.0 の狭い領域で鉱石層厚比を低下させることができた。
【0023】
これは、図3に示すように、鉱石の装入初期にその落下位置から中心部にかけて鉱石で覆われる(図3(a)参照)ことから、装入後期に周辺側にガスが流れ(図3(b)参照)、最終的に炉壁部でガス流速が大きく上昇してコークスの流動化(図3(c)参照)が実現した結果である。
上記は、鉱石装入の1ダンプにおいて炉壁部近傍のみのコークスを流動化させ、コークス層厚を低下させる装入方法を採用した結果であるが、2ダンプ以上で鉱石の装人を行う場合は、初回のダンプで形成させる鉱石堆積形状を、鉱石が炉壁部に到達しないようにムーバブルアーマーを調整し、次回のダンプでムーバプルアーマーを装入中に徐々に炉壁側に移動させるようにすれば同様の効果を得ることができる。
【0024】
図6は、模型実験において、まずコークスをアーマーポジション8で装入し、続けて、2バッチに分割した鉱石のうち初回の装入をアーマーポジション12で、2回目をアーマーポジション6から3に変化させながら装入した結果を示すものである。図6では、1ダンプ目の鉱石装入により周辺部を除く領域に鉱石を堆積させ( Ore1に示す領域)、2ダンプ目の鉱石装入( Ore2に示す領域)で徐々にコークスが露出している領域を炉壁側へと狭めていくことにより、炉壁部のガス流速が増加してコークスが流動化するようにしている。こうすることで、無次元半径約0.95〜1.0 の狭い領域で鉱石層厚比が低下するのである。
【0025】
すなわち、鉱石の装入初期には装入された鉱石が炉壁部に到達しないようにアーマーポジションを調整しておき、中心まで鉱石が堆積した後に積極的に鉱石の落下位置を炉壁側に変化させながら装入し、炉壁部近傍にガス流を集中させて炉壁部近傍のコークスを流動化させるようにする。こうすることが、炉壁部近傍のみの鉱石層厚比を低下させる本発明の重要な技術上のポイントである。
【0026】
【実施例】
本発明の装入方法を、内容積2800m3 の高炉に適用し、本発明の効果の検証を実施した。以下、その実施例を説明する。
まず、従来の装入を実施した。装入シーケンスは、C↓O↓(コークスと鉱石を1チャージ毎に交互に装入)であり、コークス比: 360kg/t、微粉炭比: 110kg/t、出銑比 2.2、ガス利用率約51.5%の操業をベースとして実施した。
【0027】
ところが、亜鉛の排出量が低下したために鉱石装入時のアーマーポジション(表1参照)を12から14に変更して炉壁流促進を図った。その結果、亜鉛排出量は増加したが、逆にガス利用率が低下し、スリップ発生や炉熱変動が多発して操業が不安定になった。
そこで、本発明の装入方法を適用し、鉱石装入中にアーマーポジションを14から4に変更する装入方法を実施したところ、ガス利用率はベースより若干低下したものの良好であり、操業も安定させることができた。この間の操業の推移を図8に示す。また、炉内半径方向のガス分布を図9に示す。図示のとおり、本発明の効果は明らかである。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、炉内全体のガス利用率を低下させることなく炉壁近傍の狭い領域のみのガス量を増大させることが可能となり、特に低燃料比時の高炉の安定操業継続が可能となった。また、亜鉛排出が良好になり、炉壁への亜鉛析出を防止できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベル式高炉におけるムーバブルアーマーの配置を示す模式断面図である。
【図2】模型実験による本発明適用時の装入物の堆積形状と鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図3】本発明適用時の炉壁部近傍におけるコークス層厚の増加機構を説明するグラフである。
【図4】模型実験による本発明に対する従来の装入物の堆積形状と鉱石層厚比分布の対比結果を示すグラフである。
【図5】本発明の未適用時に、炉壁部近傍のコークス層厚が増加しない理由を説明するグラフである。
【図6】模型実験による本発明適用時の装入物堆積形状および鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図7】模型実験による従来の分布制御における装入物堆積形状および鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図8】本発明適用前後のガス利用率とダスト中の亜鉛濃度の推移を示すグラフである。
【図9】本発明適用前後の炉半径方向ガス利用率分布の変化を対比するグラフである。
【符号の説明】
1 高炉(ベル式高炉)
2 ベル
3 炉壁
5 ムーバブルアーマー(アーマー)
Claims (2)
- ベル式でムーバブルアーマーを有する高炉における高炉原料装入方法であって、
鉱石装入開始時は、該鉱石が炉壁部に到達するより先に炉中心部に到達する位置にムーバブルアーマーを調整し、前記鉱石が炉中心部に到達した後にムーバブルアーマーを炉壁側に向けて移動することを特徴とする高炉原料装入方法。 - ベル式でムーバブルアーマーを有する高炉における高炉原料装入方法であって、
1チャージ分の鉱石を2バッチ以上に分割して装入するにあたり、初回のバッチでは中心部に鉱石が到達し、かつ炉壁部には鉱石が到達しないような堆積形状が形成されるようにムーバブルアーマーを調整し、次回以降のバッチでは、ムーバブルアーマーを、初回の装入における位置より炉壁側の位置からスタートし、装入中に炉壁側に移動することを特徴とする高炉原料装入方法。
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