JP2004204322A - 高炉原料装入方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、旋回シュートを有するベルレス高炉における高炉原料装入方法に関する。
【解決手段】鉱石装入開始時は、該鉱石が炉壁部に到達するより先に炉中心部に到達する位置に旋回シュートの傾動角を調整し、前記鉱石が炉中心部に到達した後に旋回シュートの先端が炉壁側に向けて移動するように傾動角を変更する。
【選択図】 図1
【解決手段】鉱石装入開始時は、該鉱石が炉壁部に到達するより先に炉中心部に到達する位置に旋回シュートの傾動角を調整し、前記鉱石が炉中心部に到達した後に旋回シュートの先端が炉壁側に向けて移動するように傾動角を変更する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
旋回シュートに代表されるベルレス装入装置を有するベルレス高炉における高炉原料装入方法に関し、特に炉壁部における炉内ガス流を制御するのに好適な装入物分布を形成する高炉原料装入方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、図1に基づき、ベルレス高炉1の旋回シュート2について説明する。
図1に示すように、旋回シュート2は、ベルレス高炉1の炉頂に配置され、装入される原料(ここでは図示せず。)が炉内で所定の形状の層となるように積層するための設備である。旋回シュートは、炉中心軸を回転軸として旋回すると共に、シュートの傾動角αを変更することができ、シュート上を流れる原料を炉頂の円周方向、半径方向の任意の場所へ装入することができる。すなわち、旋回シュートを一定の傾動角で旋回させながら一回転旋回することで炉頂へ原料をリング状に装入することができ、各旋回毎に傾動角を決めてやることによりリング状の原料を多重に装入することができるので、炉頂部で原料の堆積状況を制御することができるのである。
【0003】
旋回シュートは、その傾動角αに応じてポジションが定義されており、ポジション1の傾動角を最大として定義する。表1にその一例を示す。
【0004】
【表1】
【0005】
なお、以下の説明では、この表1を用いて旋回シュートの傾動角を説明するものとする。
ベルレス高炉を含め、高炉操業は、コークス炉の寿命問題、炭材使用量を低減することによるCO2 排出抑制等の見地から、低燃料比操業が指向されており、今後、益々その傾向は強まると考えられる。
【0006】
一般に、低燃料比操業時には炉内を通過するガス量が減少し、炉頂温度が低下する。一方、炉頂温度が低下すると、亜鉛が炉外へ排出され難くなり、炉外へ排出されない亜鉛が炉壁部に付着して炉壁付着物を形成することが経験的に知られている。
この炉壁付着物の量が過大になると、炉壁プロフィルの乱れや有効断面積減少に伴うガス流速の上昇によって安定操業が阻害される。さらに、炉壁付着物が剥離して落下し、炉下部に達すると炉熱が低下して冷え込み等の重大トラブルを引き起こす場合がある。
【0007】
そのため、低燃料比操業時には特に、亜鉛の炉壁部への付着を抑止し、炉外への排出を促進するために炉壁部近傍のガス流を増加させて炉壁の温度低下を防止することが重要となる。
一般に、高炉内での鉱石層厚/コークス層厚の比(以下、鉱石層厚比ともいう。)が小さい個所の通気抵抗は小さく、ガスが流れやすい傾向にある。従って、炉壁部近傍にコークスを重点的に堆積させることで、同個所のガス流量を増大できることになる。
【0008】
しかし、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させようとして、炉内へのコークス装入位置を炉壁近傍に集中するように調整すると、炉壁部近傍のみならず炉壁周辺部全体の鉱石層厚比まで低下してしまう。
また、ベルレス高炉の装入装置である旋回シュートは、炉の周辺部に傾斜の少ない平坦部(テラスとよぶ。)を形成できることが特徴であるが、コークステラス上で鉱石層厚比分布をつけようとした場合、図2に模式的に示すように鉱石の物性値に影響を与える鉱石層堆積角θを、炉壁部近傍のみで大きくなるように堆積させることは困難であり、炉壁部近傍のごく狭い領域のみの鉱石層厚比を低下させることは難しい。
【0009】
図8は、ベルレス高炉における旋回シュート式の装入装置の1/10縮小模型を用い、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させるように旋回シュートを調整してコークス(coke、あるいは、単にCとも表記する。以下、同じ。)と鉱石(Ore 、あるいは、単にOとも表記する。以下、同じ。)を交互に装入した際に形成される堆積形状(a)とその鉱石層厚比分布(b)を示すグラフである。
本グラフにおいて、横軸は、高炉の炉口半径を1とした無次元半径である(以下、堆積形状とその鉱石層厚比分布を示すグラフにおいて同じ。)
ここで、図8から、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させようとした結果、無次元半径が約 0.8〜1.0 の広い領域の鉱石層厚比まで低位となっていることがわかる。これは、高炉の全断面積の約1/3を占める範囲に相当する。
【0010】
鉱石層厚比が低い領域では、その領域の還元ガス/原料中被還元酸素の比が増大し、還元に寄与せずに炉頂へ排出されるCOガスが増加することになるが、特にそれが炉壁近傍の周辺部である場合、占有面積が大きいことから炉全体のガス利用率の低下を招く。
ところで、炉壁近傍のガス流量の確保と、炉内全体のガス利用率の維持を両立させるためには、炉壁近傍のごく狭い領域のみのガス流量を増加させるように鉱石層厚比を調整することが望ましいことは明らかである。
【0011】
しかしながら、原料とコークスの堆積角を利用した従来の層厚分布制御方式では、最炉壁部のみの鉱石層厚比を選択的に低下させることは困難である。とりわけ、低燃料比操業時は、溶解レベルが低下しており、亜鉛排出を重視するあまりに周辺流を強化する傾向にあり、相対的に全体のガス利用率が低下し、それに伴う直接還元量の増加が炉熱低下を引き起こす可能性が高い。
【0012】
ところで、非特許文献1には、コークス層上に鉱石を装入する際、装入した鉱石が周辺から中心に向かってコークス層上を流れ込む過程において、中心部の鉱石で覆われない領域が徐々に縮小し、同部位のガス流速が増大してコークスが流動化し、その結果、中心の鉱石層厚比が低下する現象が開示されている。
【0013】
【非特許文献1】
西尾 他、「装入物分布に及ぼすガス流れの影響」、鉄と鋼、63(1977)、S440
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、旋回シュートを有するベルレス高炉において、炉壁近傍のごく狭い領域のみのガス流量を増加させる技術を提供し、全体のガス利用率を低下させることなく炉壁近傍の狭い領域のみのガス量を増大させ、特に低燃料比時の安定操業を継続することを可能とすることを目的とする。さらに、亜鉛排出を良好にして、炉壁への亜鉛析出を防止するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炉壁部近傍の原料層の層厚を、装入物の堆積角を利用した装入制御に加えて、原料装入過程における鉱石の堆積状態の変化に起因する炉半径方向ガス流量分配の変化に着目し、当該変化を利用して原料装入を制御するようにしたものである。
本発明者らは、原料装入中に旋回シュートをある特定の条件で駆動させると、上述の非特許文献1に記載と同様の現象を炉壁部近傍においても実現できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、旋回シュートを有するベルレス高炉における高炉原料装入方法であって、鉱石装入開始時は、該鉱石が炉壁部に到達するより先に炉中心部に到達する位置に旋回シュートの傾動角を調整し、前記鉱石が炉中心部に到達した後に旋回シュートの先端が炉壁側に向けて移動するように傾動角を変更することを特徴とする高炉原料装入方法によって上記課題を解決した。
【0017】
また、本発明は、旋回シュートを有するベルレス高炉における高炉原料装入方法であって、1チャージ分の鉱石を2バッチ以上に分割して装入するにあたり、初回のバッチでは中心部に鉱石が到達し、かつ炉壁部には鉱石が到達しないような堆積形状が形成されるように旋回シュートの傾動角を調整し、次回以降のバッチでは、旋回シュートの先端が、初回の装入における位置より炉壁側の位置からスタートし、装入中に炉壁側に移動するように傾動角を変更することを特徴とする高炉原料装入方法によって上記課題を解決した。
【0018】
【発明の実施の形態】
ベルレス高炉における通常の装入方法では、1回の装入中に旋回シュートを炉壁から中心方向へ傾動させながら装入を行う。図8の従来の装入方法でも旋回シュートを炉壁から中心方向へ傾動させながら鉱石の装入を行っている。
これに対し、旋回シュートを逆に中心側から炉壁方向へ傾動させ、炉周辺部でコークスが鉱石に覆われていない領域を設けてその領域を炉壁方向に経時的に狭めていけば、炉壁部近傍でのガス流速が増大し、コークスが流動化して、通常の装入によって形成される堆積角よりも大きい傾斜を有する堆積角を形成することができ、最終的に鉱石層厚比を低下させる効果が期待できる。
【0019】
この考えに基づいて、ベルレス高炉の1/10 模型を用いた実験を試みた。模型は、実高炉の1/10 の縮尺であり、また、ベルレス装入装置である旋回シュートを備え、かつ下方からエアを吹き込むことで炉口部でのガス流れを再現することができる。なお、旋回シュートポジションは、前出の表1に従う。
まず、コークス層上に鉱石をベルレスパターン「9-9-8-6-5-4-3-3-2-2 (数字は旋回シュートポジションを示し、その数値が大きいほど装入物の落下位置が炉中心側となる。)」に基づいて装入した。当該実験における堆積形状および鉱石層厚比(これは、実験後に樹脂で固めたものを断面観察した結果である。)を図5に示す。図5において、特に炉壁部でコークスが流動化した痕跡は認められず、本発明者らが予想した結果は得られなかった。
【0020】
この原因としては、装入初期の原料の落下位置がコークス層の頂点よりも外側だったために、図6(a)に示すように堆積層の形成過程において炉中心方向にもガスが廻り、炉壁部のガス流速が上昇しないまま堆積がすすみ、図6(b)に示すように炉中心方向へのガス流が強まる結果になったと推定される。なお、図6において、矢印はガス流を示しており、その流速が大きいほど矢印を太くしている(以下の図で同じ)。
【0021】
次に、コークス上に鉱石をベルレスパターン「12-11-9-7-5-4-4-3-3-2 」で装入した。結果を図3に示す。図3では、装人後期に炉壁部近傍のコークスが流動化し、無次元半径約0.95〜1.0 の狭い領域で鉱石層厚比を低下させることができた。
これは、図4に示すように、鉱石の装入初期にその落下位置から中心部にかけて鉱石で覆われる(図4(a))ことから、装入後期に周辺側にガスが流れ、最終的に炉壁部でガス流速が大きく上昇してコークスの流動化(図3(c))が実現し、通常の装入によって形成される堆積角より大きい傾斜を有した結果である。
【0022】
上記は、鉱石装入の1ダンプにおいて炉壁部近傍のみのコークスを流動化させ、コークス層厚を低下させる装入方法であるが、2ダンプ以上で鉱石の装人を行う場合は、初回のダンプで形成させる鉱石堆積形状を、鉱石が炉壁部に到達しないように旋回シュートの旋回パターンを調整し、次回のダンプで装入中に旋回シュートを徐々に炉壁側に移動させれば同様の効果を得ることができる。
【0023】
図7は、模型実験において、コークス層上に鉱石を2バッチに分割して装入した結果を示す。1バッチ目の鉱石装入( Ore1)により周辺部を除く領域に鉱石を堆積させ、次に、2バッチ目の鉱石装入( Ore2)で炉中心から炉壁方向に旋回シュートを傾動させながら鉱石を装入することにより、徐々にコークスが露出している領域を炉壁側へと狭めていく。こうすることで、炉壁部近傍のガス流速が増加し、コークスが流動化することにより炉壁部の狭い領域(無次元半径約0.95〜1.0 の狭い領域)のみの鉱石層厚比が低下する。
【0024】
すなわち、鉱石の装入初期には装入された鉱石が炉壁部に到達しないように旋回シュートポジションを調整しておき、中心まで鉱石が堆積した後に積極的に鉱石の落下位置を炉壁側に変化させながら装入し、炉壁部近傍にガス流を集中させて炉壁部近傍のコークスを流動化させるようにする。このようにすることが、炉壁部近傍のみの鉱石層厚比を低下させる本発明の重要な技術上のポイントである。
【0025】
【実施例】
本発明の装入方法を、内容積5000m3 のベルレス高炉に適用し、本発明の効果の検証を実施した。以下、その実施例を説明する。
まず、従来の装入を実施した。装入シーケンスは、C↓O↓(コークスと鉱石を1チャージ毎に交互に装入)であり、コークス比: 350kg/t、微粉炭比: 120kg/t、出銑比 2.2、ガス利用率約51.5%の操業をベースとした。装入方法は、炉壁側から中心方向へ旋回シュートを傾動させる従来の操業であり、旋回シュートの傾動パターンは、「1-2-2-3-3-4-4-5-6-7-8-9 」とした。
【0026】
ところが、亜鉛の排出量が低下したために炉壁流促進を図る傾動パターンに変更した。すなわち、傾動パターンを「3-3-4-4-5-5-6-6-7-8-9 」とした。その結果、炉壁亜鉛排出量は増加したが、シャフトゾンデで測定したガス利用率は炉壁部のみならず周辺部全体で低下し、全体のガス利用率も低下して、スリップ発生や炉熱変動が多発して操業が不安定になった。
【0027】
次に、本発明の装入方法を適用し、旋回シュートの傾動パターンを「12-11-9-7-5-4-4-3-3-2 」に変更したところ、ガス利用率は従来の操業よりも若干低下したものの亜鉛排出は良好となり、操業も安定した。この間の操業の推移を図9に示す。また、シャフトゾンデ測定に基づく炉内半径方向のガス利用率の分布を図10に示す。本発明適用によって炉壁部近傍のみのガス利用率を低下させたガス分布が得られ、本発明適用の効果は明らかである。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、炉内全体のガス利用率を低下させることなく炉壁近傍の狭い領域のみのガス量を増大させることが可能となり、特に低燃料比時の高炉の安定操業継続が可能となった。また、亜鉛排出が良好になり、炉壁への亜鉛析出を防止できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベルレス高炉に具備する旋回シュートの模式図である。
【図2】ベルレス高炉の炉内の原料積層を示す模式断面図である。
【図3】模型実験による本発明適用時の装入物の堆積形状と鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図4】本発明適用時の炉壁部近傍におけるコークス層厚の増加機構を説明するグラフである。
【図5】模型実験による本発明に対する従来の装入物の堆積形状と鉱石層厚比分布の対比結果を示すグラフである。
【図6】本発明の未適用時に、炉壁部近傍のコークス層厚が増加しない理由を説明するグラフである。
【図7】模型実験による本発明適用時の装入物堆積形状および鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図8】模型実験による従来の分布制御における装入物堆積形状および鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図9】本発明適用前後のガス利用率とダスト中の亜鉛濃度の推移を示すグラフである。
【図10】本発明適用前後の炉半径方向ガス利用率分布の変化を対比するグラフである。
【符号の説明】
1 ベルレス高炉
2 旋回シュート
3 炉壁
11 コークス層(coke)
12 鉱石層(Ore )
【発明の属する技術分野】
旋回シュートに代表されるベルレス装入装置を有するベルレス高炉における高炉原料装入方法に関し、特に炉壁部における炉内ガス流を制御するのに好適な装入物分布を形成する高炉原料装入方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、図1に基づき、ベルレス高炉1の旋回シュート2について説明する。
図1に示すように、旋回シュート2は、ベルレス高炉1の炉頂に配置され、装入される原料(ここでは図示せず。)が炉内で所定の形状の層となるように積層するための設備である。旋回シュートは、炉中心軸を回転軸として旋回すると共に、シュートの傾動角αを変更することができ、シュート上を流れる原料を炉頂の円周方向、半径方向の任意の場所へ装入することができる。すなわち、旋回シュートを一定の傾動角で旋回させながら一回転旋回することで炉頂へ原料をリング状に装入することができ、各旋回毎に傾動角を決めてやることによりリング状の原料を多重に装入することができるので、炉頂部で原料の堆積状況を制御することができるのである。
【0003】
旋回シュートは、その傾動角αに応じてポジションが定義されており、ポジション1の傾動角を最大として定義する。表1にその一例を示す。
【0004】
【表1】
【0005】
なお、以下の説明では、この表1を用いて旋回シュートの傾動角を説明するものとする。
ベルレス高炉を含め、高炉操業は、コークス炉の寿命問題、炭材使用量を低減することによるCO2 排出抑制等の見地から、低燃料比操業が指向されており、今後、益々その傾向は強まると考えられる。
【0006】
一般に、低燃料比操業時には炉内を通過するガス量が減少し、炉頂温度が低下する。一方、炉頂温度が低下すると、亜鉛が炉外へ排出され難くなり、炉外へ排出されない亜鉛が炉壁部に付着して炉壁付着物を形成することが経験的に知られている。
この炉壁付着物の量が過大になると、炉壁プロフィルの乱れや有効断面積減少に伴うガス流速の上昇によって安定操業が阻害される。さらに、炉壁付着物が剥離して落下し、炉下部に達すると炉熱が低下して冷え込み等の重大トラブルを引き起こす場合がある。
【0007】
そのため、低燃料比操業時には特に、亜鉛の炉壁部への付着を抑止し、炉外への排出を促進するために炉壁部近傍のガス流を増加させて炉壁の温度低下を防止することが重要となる。
一般に、高炉内での鉱石層厚/コークス層厚の比(以下、鉱石層厚比ともいう。)が小さい個所の通気抵抗は小さく、ガスが流れやすい傾向にある。従って、炉壁部近傍にコークスを重点的に堆積させることで、同個所のガス流量を増大できることになる。
【0008】
しかし、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させようとして、炉内へのコークス装入位置を炉壁近傍に集中するように調整すると、炉壁部近傍のみならず炉壁周辺部全体の鉱石層厚比まで低下してしまう。
また、ベルレス高炉の装入装置である旋回シュートは、炉の周辺部に傾斜の少ない平坦部(テラスとよぶ。)を形成できることが特徴であるが、コークステラス上で鉱石層厚比分布をつけようとした場合、図2に模式的に示すように鉱石の物性値に影響を与える鉱石層堆積角θを、炉壁部近傍のみで大きくなるように堆積させることは困難であり、炉壁部近傍のごく狭い領域のみの鉱石層厚比を低下させることは難しい。
【0009】
図8は、ベルレス高炉における旋回シュート式の装入装置の1/10縮小模型を用い、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させるように旋回シュートを調整してコークス(coke、あるいは、単にCとも表記する。以下、同じ。)と鉱石(Ore 、あるいは、単にOとも表記する。以下、同じ。)を交互に装入した際に形成される堆積形状(a)とその鉱石層厚比分布(b)を示すグラフである。
本グラフにおいて、横軸は、高炉の炉口半径を1とした無次元半径である(以下、堆積形状とその鉱石層厚比分布を示すグラフにおいて同じ。)
ここで、図8から、炉壁部近傍の鉱石層厚比を低下させようとした結果、無次元半径が約 0.8〜1.0 の広い領域の鉱石層厚比まで低位となっていることがわかる。これは、高炉の全断面積の約1/3を占める範囲に相当する。
【0010】
鉱石層厚比が低い領域では、その領域の還元ガス/原料中被還元酸素の比が増大し、還元に寄与せずに炉頂へ排出されるCOガスが増加することになるが、特にそれが炉壁近傍の周辺部である場合、占有面積が大きいことから炉全体のガス利用率の低下を招く。
ところで、炉壁近傍のガス流量の確保と、炉内全体のガス利用率の維持を両立させるためには、炉壁近傍のごく狭い領域のみのガス流量を増加させるように鉱石層厚比を調整することが望ましいことは明らかである。
【0011】
しかしながら、原料とコークスの堆積角を利用した従来の層厚分布制御方式では、最炉壁部のみの鉱石層厚比を選択的に低下させることは困難である。とりわけ、低燃料比操業時は、溶解レベルが低下しており、亜鉛排出を重視するあまりに周辺流を強化する傾向にあり、相対的に全体のガス利用率が低下し、それに伴う直接還元量の増加が炉熱低下を引き起こす可能性が高い。
【0012】
ところで、非特許文献1には、コークス層上に鉱石を装入する際、装入した鉱石が周辺から中心に向かってコークス層上を流れ込む過程において、中心部の鉱石で覆われない領域が徐々に縮小し、同部位のガス流速が増大してコークスが流動化し、その結果、中心の鉱石層厚比が低下する現象が開示されている。
【0013】
【非特許文献1】
西尾 他、「装入物分布に及ぼすガス流れの影響」、鉄と鋼、63(1977)、S440
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、旋回シュートを有するベルレス高炉において、炉壁近傍のごく狭い領域のみのガス流量を増加させる技術を提供し、全体のガス利用率を低下させることなく炉壁近傍の狭い領域のみのガス量を増大させ、特に低燃料比時の安定操業を継続することを可能とすることを目的とする。さらに、亜鉛排出を良好にして、炉壁への亜鉛析出を防止するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炉壁部近傍の原料層の層厚を、装入物の堆積角を利用した装入制御に加えて、原料装入過程における鉱石の堆積状態の変化に起因する炉半径方向ガス流量分配の変化に着目し、当該変化を利用して原料装入を制御するようにしたものである。
本発明者らは、原料装入中に旋回シュートをある特定の条件で駆動させると、上述の非特許文献1に記載と同様の現象を炉壁部近傍においても実現できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、旋回シュートを有するベルレス高炉における高炉原料装入方法であって、鉱石装入開始時は、該鉱石が炉壁部に到達するより先に炉中心部に到達する位置に旋回シュートの傾動角を調整し、前記鉱石が炉中心部に到達した後に旋回シュートの先端が炉壁側に向けて移動するように傾動角を変更することを特徴とする高炉原料装入方法によって上記課題を解決した。
【0017】
また、本発明は、旋回シュートを有するベルレス高炉における高炉原料装入方法であって、1チャージ分の鉱石を2バッチ以上に分割して装入するにあたり、初回のバッチでは中心部に鉱石が到達し、かつ炉壁部には鉱石が到達しないような堆積形状が形成されるように旋回シュートの傾動角を調整し、次回以降のバッチでは、旋回シュートの先端が、初回の装入における位置より炉壁側の位置からスタートし、装入中に炉壁側に移動するように傾動角を変更することを特徴とする高炉原料装入方法によって上記課題を解決した。
【0018】
【発明の実施の形態】
ベルレス高炉における通常の装入方法では、1回の装入中に旋回シュートを炉壁から中心方向へ傾動させながら装入を行う。図8の従来の装入方法でも旋回シュートを炉壁から中心方向へ傾動させながら鉱石の装入を行っている。
これに対し、旋回シュートを逆に中心側から炉壁方向へ傾動させ、炉周辺部でコークスが鉱石に覆われていない領域を設けてその領域を炉壁方向に経時的に狭めていけば、炉壁部近傍でのガス流速が増大し、コークスが流動化して、通常の装入によって形成される堆積角よりも大きい傾斜を有する堆積角を形成することができ、最終的に鉱石層厚比を低下させる効果が期待できる。
【0019】
この考えに基づいて、ベルレス高炉の1/10 模型を用いた実験を試みた。模型は、実高炉の1/10 の縮尺であり、また、ベルレス装入装置である旋回シュートを備え、かつ下方からエアを吹き込むことで炉口部でのガス流れを再現することができる。なお、旋回シュートポジションは、前出の表1に従う。
まず、コークス層上に鉱石をベルレスパターン「9-9-8-6-5-4-3-3-2-2 (数字は旋回シュートポジションを示し、その数値が大きいほど装入物の落下位置が炉中心側となる。)」に基づいて装入した。当該実験における堆積形状および鉱石層厚比(これは、実験後に樹脂で固めたものを断面観察した結果である。)を図5に示す。図5において、特に炉壁部でコークスが流動化した痕跡は認められず、本発明者らが予想した結果は得られなかった。
【0020】
この原因としては、装入初期の原料の落下位置がコークス層の頂点よりも外側だったために、図6(a)に示すように堆積層の形成過程において炉中心方向にもガスが廻り、炉壁部のガス流速が上昇しないまま堆積がすすみ、図6(b)に示すように炉中心方向へのガス流が強まる結果になったと推定される。なお、図6において、矢印はガス流を示しており、その流速が大きいほど矢印を太くしている(以下の図で同じ)。
【0021】
次に、コークス上に鉱石をベルレスパターン「12-11-9-7-5-4-4-3-3-2 」で装入した。結果を図3に示す。図3では、装人後期に炉壁部近傍のコークスが流動化し、無次元半径約0.95〜1.0 の狭い領域で鉱石層厚比を低下させることができた。
これは、図4に示すように、鉱石の装入初期にその落下位置から中心部にかけて鉱石で覆われる(図4(a))ことから、装入後期に周辺側にガスが流れ、最終的に炉壁部でガス流速が大きく上昇してコークスの流動化(図3(c))が実現し、通常の装入によって形成される堆積角より大きい傾斜を有した結果である。
【0022】
上記は、鉱石装入の1ダンプにおいて炉壁部近傍のみのコークスを流動化させ、コークス層厚を低下させる装入方法であるが、2ダンプ以上で鉱石の装人を行う場合は、初回のダンプで形成させる鉱石堆積形状を、鉱石が炉壁部に到達しないように旋回シュートの旋回パターンを調整し、次回のダンプで装入中に旋回シュートを徐々に炉壁側に移動させれば同様の効果を得ることができる。
【0023】
図7は、模型実験において、コークス層上に鉱石を2バッチに分割して装入した結果を示す。1バッチ目の鉱石装入( Ore1)により周辺部を除く領域に鉱石を堆積させ、次に、2バッチ目の鉱石装入( Ore2)で炉中心から炉壁方向に旋回シュートを傾動させながら鉱石を装入することにより、徐々にコークスが露出している領域を炉壁側へと狭めていく。こうすることで、炉壁部近傍のガス流速が増加し、コークスが流動化することにより炉壁部の狭い領域(無次元半径約0.95〜1.0 の狭い領域)のみの鉱石層厚比が低下する。
【0024】
すなわち、鉱石の装入初期には装入された鉱石が炉壁部に到達しないように旋回シュートポジションを調整しておき、中心まで鉱石が堆積した後に積極的に鉱石の落下位置を炉壁側に変化させながら装入し、炉壁部近傍にガス流を集中させて炉壁部近傍のコークスを流動化させるようにする。このようにすることが、炉壁部近傍のみの鉱石層厚比を低下させる本発明の重要な技術上のポイントである。
【0025】
【実施例】
本発明の装入方法を、内容積5000m3 のベルレス高炉に適用し、本発明の効果の検証を実施した。以下、その実施例を説明する。
まず、従来の装入を実施した。装入シーケンスは、C↓O↓(コークスと鉱石を1チャージ毎に交互に装入)であり、コークス比: 350kg/t、微粉炭比: 120kg/t、出銑比 2.2、ガス利用率約51.5%の操業をベースとした。装入方法は、炉壁側から中心方向へ旋回シュートを傾動させる従来の操業であり、旋回シュートの傾動パターンは、「1-2-2-3-3-4-4-5-6-7-8-9 」とした。
【0026】
ところが、亜鉛の排出量が低下したために炉壁流促進を図る傾動パターンに変更した。すなわち、傾動パターンを「3-3-4-4-5-5-6-6-7-8-9 」とした。その結果、炉壁亜鉛排出量は増加したが、シャフトゾンデで測定したガス利用率は炉壁部のみならず周辺部全体で低下し、全体のガス利用率も低下して、スリップ発生や炉熱変動が多発して操業が不安定になった。
【0027】
次に、本発明の装入方法を適用し、旋回シュートの傾動パターンを「12-11-9-7-5-4-4-3-3-2 」に変更したところ、ガス利用率は従来の操業よりも若干低下したものの亜鉛排出は良好となり、操業も安定した。この間の操業の推移を図9に示す。また、シャフトゾンデ測定に基づく炉内半径方向のガス利用率の分布を図10に示す。本発明適用によって炉壁部近傍のみのガス利用率を低下させたガス分布が得られ、本発明適用の効果は明らかである。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、炉内全体のガス利用率を低下させることなく炉壁近傍の狭い領域のみのガス量を増大させることが可能となり、特に低燃料比時の高炉の安定操業継続が可能となった。また、亜鉛排出が良好になり、炉壁への亜鉛析出を防止できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベルレス高炉に具備する旋回シュートの模式図である。
【図2】ベルレス高炉の炉内の原料積層を示す模式断面図である。
【図3】模型実験による本発明適用時の装入物の堆積形状と鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図4】本発明適用時の炉壁部近傍におけるコークス層厚の増加機構を説明するグラフである。
【図5】模型実験による本発明に対する従来の装入物の堆積形状と鉱石層厚比分布の対比結果を示すグラフである。
【図6】本発明の未適用時に、炉壁部近傍のコークス層厚が増加しない理由を説明するグラフである。
【図7】模型実験による本発明適用時の装入物堆積形状および鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図8】模型実験による従来の分布制御における装入物堆積形状および鉱石層厚比分布を示すグラフである。
【図9】本発明適用前後のガス利用率とダスト中の亜鉛濃度の推移を示すグラフである。
【図10】本発明適用前後の炉半径方向ガス利用率分布の変化を対比するグラフである。
【符号の説明】
1 ベルレス高炉
2 旋回シュート
3 炉壁
11 コークス層(coke)
12 鉱石層(Ore )
Claims (2)
- 旋回シュートを有するベルレス高炉における高炉原料装入方法であって、
鉱石装入開始時は、該鉱石が炉壁部に到達するより先に炉中心部に到達する位置に旋回シュートの傾動角を調整し、前記鉱石が炉中心部に到達した後に旋回シュートの先端が炉壁側に向けて移動するように傾動角を変更することを特徴とする高炉原料装入方法。 - 旋回シュートを有するベルレス高炉における高炉原料装入方法であって、
1チャージ分の鉱石を2バッチ以上に分割して装入するにあたり、初回のバッチでは中心部に鉱石が到達し、かつ炉壁部には鉱石が到達しないような堆積形状が形成されるように旋回シュートの傾動角を調整し、次回以降のバッチでは、旋回シュートの先端が、初回の装入における位置より炉壁側の位置からスタートし、装入中に炉壁側に移動するように傾動角を変更することを特徴とする高炉原料装入方法。
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JP2006291292A (ja) * | 2005-04-11 | 2006-10-26 | Sumitomo Metal Ind Ltd | ベルレス高炉への高結晶水含有鉱石の装入方法 |
JP2008111176A (ja) * | 2006-10-31 | 2008-05-15 | Jfe Steel Kk | フェロコークス使用時の高炉操業方法 |
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- 2002-12-26 JP JP2002376728A patent/JP2004204322A/ja active Pending
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