JP2004203298A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の種類にかかわらず、走行安定性能を確保できる空気入りタイヤを得ること。
【解決手段】トレッド部において、タイヤ赤道面CLを中心としてタイヤ最大幅SWの17%〜28%の中央領域CAでは、トレッドゲージAは、タイヤ赤道面CLの図面右側が図面左側よりもトレッドゲージAが0.2〜1.0mm厚く設定されている。また、トレッドゲージAは、タイヤ赤道面CLの図面左側の外側領域SAが図面右側の外側領域SAよりも0.2〜1.0mm厚く設定されている。これにより、比較的小さな荷重が作用している場合に、例えば、右向きの横力を発生し、大きな荷重が作用している場合に左向きの横力を発生させることができ、車両の種類にかかわらず、車両の特性に合わせて空気入りタイヤ10の向きを合わせることで、操縦安定性を高めることが出来る。
【選択図】 図1
【解決手段】トレッド部において、タイヤ赤道面CLを中心としてタイヤ最大幅SWの17%〜28%の中央領域CAでは、トレッドゲージAは、タイヤ赤道面CLの図面右側が図面左側よりもトレッドゲージAが0.2〜1.0mm厚く設定されている。また、トレッドゲージAは、タイヤ赤道面CLの図面左側の外側領域SAが図面右側の外側領域SAよりも0.2〜1.0mm厚く設定されている。これにより、比較的小さな荷重が作用している場合に、例えば、右向きの横力を発生し、大きな荷重が作用している場合に左向きの横力を発生させることができ、車両の種類にかかわらず、車両の特性に合わせて空気入りタイヤ10の向きを合わせることで、操縦安定性を高めることが出来る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤにかかり、特に、車両の種類によらず操縦安定性を確保することのできる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両では、操縦安定性等を確保するために車輪のアライメント調整が行われている。
【0003】
例えば車輪にキャンバー角を与え、このキャンバー角の付与による片べり摩耗を防止するためにトー角が付与されている。
【0004】
また逆に、車両のフロントタイヤ及びリアタイヤに発生する力をバランスさせ、車両の操縦安定性を確保するためにトー角を付与し、付与したトー角による片べり摩耗を防止するためにキャンバー角を付与している。
【0005】
また、トー角及びキャンバー角を組み合わせて、車両の構造寸法等の制約の下で車両の操縦安定性の確保とタイヤの片べり摩耗の最小化を両立させる調整も行われている。
【0006】
このように、車両の操縦安定性等を確保するためには、車両の各車輪のトー角やキャンバー角等のアライメントを調整することが重要になる。
【0007】
一般的に、車輪のアライメント調整は、車両の各車輪毎に角度や寸法を測定し、測定した角度や寸法が車両設計時に設定された目標値に一致するように、トー角やキャンバー角を調整している。
【0008】
なお、タイヤのコニシティー等をコントロールしせ性能を向上する技術は種々提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開平11−59118号公報
【特許文献2】
特開平9−300906号公報
【特許文献3】
特開平7−223407号公報
【特許文献4】
特開平10−35213号公報
【特許文献5】
特開平9−207842号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
一方、タイヤは、コニシティー、内部の構造及びゴム等の部材によって異なる転がり抵抗等に起因して横力を発生する。
【0011】
この横力は、タイヤに加わる荷重に依存して各々変化し、かつタイヤの種類によっても相違し、従来のタイヤでは、図7に示すように荷重が増加することによって横力が増加する性質を有してる。
【0012】
以下に、従来のタイヤの装着方法を説明する。
【0013】
図5(A)に示すように、例えば、前輪100では車両内側から車両外側に向う横力SFfが大きく、後輪102では車両内側から車両外側に向う横力SFrが前輪100よりも小さくなるように設定され、かつ前輪100にかかる荷重が後輪102にかかる荷重よりも大きな車両Aに従来のタイヤ104を装着する場合、タイヤ104の発生する横力SFtが、上記横力SFf、及び横力SFrと反対向きとなるようにタイヤ104を装着する。
【0014】
こうすると、前輪100においては、大きな横力SFf(後輪対比で)とタイヤの大きな横力SFt(大きい理由:後輪対比で荷重が大きいため)とが足され、後輪102においては、小さな横力SFr(前輪対比で)とタイヤの小さな横力SFt(小さい理由:前輪対比で荷重が小さいため)とが足され、その結果、前輪100のトータルの横力(SFf−SFt)、後輪102のトータルの横力(SFr−SFt)はそれぞれ小さくなり、かつ、前輪100のトータルの横力と後輪102のトータルの横力とのレベル差も小さくできる。
【0015】
一方、図5(B)に示すように、前輪100では車両内側から車両外側に向う横力SFfが小さく、後輪102では車両内側から車両外側に向う横力SFrが前輪100よりも大きくなるように設定され、かつ前輪100にかかる荷重が後輪102にかかる荷重よりも大きな車両Bもある。
【0016】
この車両Bに従来のタイヤ104を装着する場合、タイヤが発生する横力SFtが、上記横力SFf、及び横力SFrと反対向きとなるようにタイヤを装着すると、前輪100においては、小さな横力SFf(後輪対比で)と、これと反対向きであるタイヤの大きな横力SFt(大きい理由:後輪対比で荷重が大きいため)とが足され、後輪102においては、大きな横力SFr(前輪対比で)と、これと反対向きであるタイヤの小さな横力SFt(小さい理由:前輪対比で荷重が小さいため)とが足される。
【0017】
しかしながら、この場合には、前輪100のトータルの横力(SFf−SFt)と後輪102のトータルの横力(SFr−SFt)はそれぞれ減少するが、前輪100のトータルの横力と後輪102のトータルの横力とのレベル差は増大する問題がある。
【0018】
即ち、従来のタイヤ104では、車両によっては前後輪の横力のレベルをそれぞれ小さくすることと、前輪の横力と後輪の横力とのレベル差を小さくすることを両立することが出来なかった。
【0019】
ここで、走行時に外乱を受けた場合の車両の操縦安定性は、その外乱一つに対する前輪と後輪の横力の発生差によるところが大きい。
【0020】
例えば、小石を踏んだ際、前輪で出る横力の大ききさと後輪で出る横力の大きさとが異なると、車両に対して回転方向のヨーが発生し、車両は不安定方向となる。
【0021】
したがって、前輪及び後輪のそれぞれにおいて横力のレベルが大きい場合や、前後輪の横力のレベル差が大きい場合で、車両の不安定さが気になる場合には、車両のアライメントを修正し、操縦安定性を良化することは可能ではあるが、リプレイス市場(新車装着時では無く、一般のタイヤ販売店、カー用品店等でのタイヤ交換)においては、ユーザー側の負担(アライメント修正費用)が増える問題がある。
【0022】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、車両の種類にかかわらず、操縦安定性を確保できる空気入りタイヤを得ることが目的である。
【0023】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、タイヤ周方向に対して傾斜するコードを含む少なくとも2枚のベルトプライから構成され、隣接するベルトプライ同士では互いのコード方向がタイヤ赤道面に対して反対方向に傾斜するベルト層を備えた空気入りタイヤであって、タイヤ回転軸に沿った断面で見たときのトレッド踏面から前記ベルト層のトレッド側表面までのトレッドゲージをAとしたとき、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向一方の片側とタイヤ幅方向他方の片側とでは、トレッドゲージAが異なり、トレッド部をタイヤ赤道面付近である中央領域と、前記中央領域のタイヤ幅方向外側の外側領域とに分けたときに、前記中央領域内では、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向一方側がタイヤ幅方向他方側よりもトレッドゲージAが厚く、前記外側領域内では、タイヤ幅方向他方側の外側領域がタイヤ幅方向一方側の外側領域よりもトレッドゲージAが厚い、ことを特徴としている。
【0024】
次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0025】
空気入りタイヤのトレッドは、断面略円弧形状を呈しているため、比較的荷重が小さい場合には、トレッド中央付近の接地圧が高いためタイヤが発生する横力はトレッド中央付近の構造によって支配され、荷重が大きくなると、ショルダー側の接地圧が上昇して、ショルダー側の構造の影響が大きくなってくる。
【0026】
ここで、トレッドゲージの厚いところと、薄いところとを比較すると、トレッドゲージの厚いところではトレッドゲージの薄いところに比較してベルト層はタイヤ周方向に伸ばされる。
【0027】
ベルト層がタイヤ周方向に伸ばされると、ベルト層は幅方向(タイヤ軸方向)に収縮する(所謂パンタグラフ変形)。
【0028】
この空気入りタイヤでは、トレッドの中央領域内では、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向一方の側がタイヤ幅方向他方の側よりもトレッドゲージAが厚く、左右の外側領域を比較すると、タイヤ幅方向他方の外側領域内がタイヤ幅方向一方の外側領域内よりもトレッドゲージAが厚く設定されている。
【0029】
したがって、比較的荷重が小さい場合では、中央領域において、トレッドゲージAが厚く設定されている側のベルト層のタイヤ軸方向の収縮量が、トレッドゲージAが薄く設定されている側の収縮量に比較して大となる。
【0030】
ベルト層の上に設けられているトレッドは、ベルト層の収縮に影響を受け、中央領域内では、タイヤ赤道面を挟んでトレッドゲージAが厚く設定されている側ではトレッドのタイヤ軸方向の収縮量がトレッドゲージAが薄く設定されている側の収縮量に比較して大となるので、比較的小さな荷重が作用している空気入りタイヤには、中央領域においてトレッドゲージAが薄く設定されている側から厚く設定されている側へ向う横力(ここでは、便宜上右向きの横力とする。)を発生する。
【0031】
次に、空気入りタイヤに作用する荷重が増加して大きくなると、外側領域の接地圧が上昇する。
【0032】
外側領域においても、中央領域と同様に、トレッドゲージAが厚く設定されている側ではベルト層のタイヤ軸方向の収縮量が、トレッドゲージAが薄く設定されている側の収縮量に比較して大となる。
【0033】
左右の外側領域では、トレッドゲージAの厚さの設定が、中央領域とは逆に設定されているため、左右の外側領域の接地圧が上昇すると、前述した右向きの横力とはその向きが反対となる左向きの横力が発生する。
【0034】
従来の空気入りタイヤでは、作用する荷重の大きさによって発生する横力の向きは変らず、荷重の増加に伴って横力の大きさが大きくなったが、本発明の空気入りタイヤでは、作用する荷重が小さい場合には、例えば右向きの横力が発生し、作用する荷重が大きい場合には、左向きの横力を発生させることができ、荷重の大きさによって発生する横力の向きを変更することができる。
【0035】
次に、本発明の空気入りタイヤを車両に装着した場合の作用を説明する。
【0036】
例えば、従来技術で説明した車両Aに本発明の空気入りタイヤ101を装着する場合、図6(A)に示すように、かかる荷重が小さい場合に後輪102において車両内側から外側へ向う横力SFtが発生し、かかる荷重が大きい場合に前輪100で車両外側から内側へ向う横力SFtが発生するように空気入りタイヤ101の向きを決める。
【0037】
こうすると、前輪100においては、大きな横力SFf(後輪対比で)に、これと反対向きのタイヤの横力SFtが足され、後輪102においては、小さな横力SFr(前輪対比で)に、これと同じ向きのタイヤの横力SFtが足され、その結果、前輪100でのトータルの横力(SFf−SFt)が小さくなり、かつ、前輪100のトータルの横力(SFf−SFt)と後輪102のトータルの横力(SFr+SFt)とのレベル差も小さくなる。
【0038】
したがって、車両Aは、操縦安定性が向上する方向となる。
【0039】
一方、図6(B)に示すように、従来技術で説明した車両Bに本発明の空気入りタイヤ101を装着する場合、かかる荷重が小さい場合に後輪102で車両外側から内側へ向う横力SFtが発生し、かかる荷重が大きい場合に前輪100で車両内側から外側へ向う横力SFtが発生するように空気入りタイヤ10の向きを決める。
【0040】
こうすると、前輪100においては、小さな横力SFf(後輪対比で)に、これと同じ向きの横力SFtが足され、後輪102においては、大きな横力SFr(前輪対比で)に、これと反対向きの横力SFtが足され、その結果、後輪102でのトータルの横力(SFr−SFt)が小さくなり、かつ、前輪100のトータルの横力(SFf+SFt)と後輪102のトータルの横力(SFr−SFt)とのレベル差も小さくなる。
【0041】
したがって、車両Bは、操縦安定性が向上する方向となる。
【0042】
このように、本発明の空気入りタイヤ101は、車両A、及び車両Bのどちらに対しても、操縦安定性を向上させることができる。
【0043】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記中央領域は、タイヤ赤道面を中心としてタイヤ最大幅の17%〜28%の領域である、ことを特徴としている。
【0044】
次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0045】
中央領域を、タイヤ赤道面を中心としてタイヤ最大幅の17%〜28%の領域とすることで、かかる荷重が小さい場合に発生する横力を確実に確保することができる。
【0046】
中央領域がタイヤ赤道面を中心としてタイヤ最大幅の17%未満になると、かかる荷重が小さい場合に発生する横力を確実に確保することができなくなる。
【0047】
一方、中央領域がタイヤ赤道面を中心としてタイヤ最大幅の28%を越えると、フロント荷重に近い荷重の大きな領域での逆方向の発生力への反転が起こり難くなり、前後輪のレベル差を縮小する効果が薄れる。
【0048】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記中央領域内では、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向一方側がタイヤ幅方向他方側よりもトレッドゲージAが0.2〜1.0mm厚く、前記外側領域内では、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向他方側がタイヤ幅方向一方側よりもトレッドゲージAが0.2〜1.0mm厚い、ことを特徴としている。
【0049】
次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0050】
上記の構成のようにトレッドゲージAを0.2〜1.0mm厚くすることで、タイヤに発生させる横力を確実に確保可能となる。
【0051】
なお、トレッドゲージAを0.2mm未満で厚くしても、十分な横力を発生させることは出来なくなる。
【0052】
一方、トレッドゲージAを1.0mmよりも厚くすると、横力の発生が通常の前後横力差をうめるに必要な力より大きくなると共に、接地圧の不均一が大きくなって摩耗へのデメリットが出てくる。
【0053】
請求項4に記載の発明は、タイヤ周方向に対して傾斜するコードを含む少なくとも2枚のベルトプライから構成され、隣接するベルトプライ同士では互いのコード方向がタイヤ赤道面に対して反対方向に傾斜するベルト層を備えた空気入りタイヤであって、内側ベルトプライのタイヤ径方向外側には、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側に前記内側ベルトプライとはコード方向が交差する一方側外側ベルトプライが配置され、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側に前記内側ベルトプライとはコード方向が交差する他方側外側ベルトプライが配置されており、前記一方側外側ベルトプライはベルト端付近に配置され、前記他方側外側ベルトプライは、前記一方側外側ベルトプライに比較してベルト端よりもタイヤ赤道面側へずれた位置に配置されている、ことを特徴としている。
【0054】
次に、請求項4に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0055】
2枚のベルトプライが重なっている部位と、1枚のベルトプライのみの部位とを比較すると、接地時には、1枚のベルトプライのみの部位は、2枚のベルトプライが重なっている部位よりもタイヤ周方向に伸ばされる。
【0056】
即ち、1枚のベルトプライのみの部位は、タイヤ軸方向の収縮が2枚のベルトプライが重なっている部位より大きくなる。
【0057】
この空気入りタイヤでは、タイヤ径方向最内側の内側ベルトプライのタイヤ径方向外側に、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側に内側ベルトプライとはコード方向が交差する一方側外側ベルトプライが配置され、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側に内側ベルトプライとはコード方向が交差する他方側外側ベルトプライが配置されており、一方側外側ベルトプライはベルト端付近に配置され、他方側外側ベルトプライは、一方側外側ベルトプライに比較してベルト端よりもタイヤ赤道面側へずれた位置に配置されている。
【0058】
したがって、比較的荷重が小さい場合では、トレッドの中央側において、一方側外側ベルトプライが配置されていない側のベルト層のタイヤ軸方向の収縮量が、一方側外側ベルトプライ層が配置されている側の収縮量に比較して大となる。
【0059】
ベルト層の上に設けられているトレッドは、ベルト層の収縮に影響を受け、中央領域内では、一方側外側ベルトプライの配置されていない側ではトレッドのタイヤ軸方向の収縮量が一方側外側ベルトプライの配置されている側の収縮量に比較して大となるので、比較的小さな荷重が作用している空気入りタイヤには、中央領域において一方側外側ベルトが配置されている側から一方側外側ベルトプライが配置されていない側へ向う横力(ここでは、便宜上右向きの横力とする。)を発生する。
【0060】
次に、空気入りタイヤに作用する荷重が増加して大きくなると、左右の外側領域の接地圧が上昇する。
【0061】
左右の外側領域においては、他方側外側ベルトプライが配置されていない側の外側領域のタイヤ軸方向の収縮量が、他方側外側ベルトプライが配置されている側の外側領域の収縮量に比較して大となる。
【0062】
請求項4に記載の空気入りタイヤでは、左右の外側領域において、2枚のベルトを重ねている部位の位置(タイヤ赤道面に対して)が、中央領域とは逆に設定されているため、左右の外側領域の接地圧が上昇すると、請求項1の空気入りタイヤと同様に、前述した右向きの横力とはその向きが反対となる左向きの横力が発生する。
【0063】
即ち、請求項4に記載の空気入りタイヤにおいても、請求項1に記載の空気入りタイヤと同様に、作用する荷重が小さい場合には、例えば右向きの横力を発生させ、作用する荷重が大きい場合には、左向きの横力を発生させることができ、荷重の大きさによって発生する横力の向きを変更することができる。
【0064】
なお、車両装着時の作用は請求項1の作用と同一であるので説明は省略する。
【0065】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の空気入りタイヤにおいて、前記一方側外側ベルトプライは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の25%〜40%の範囲内に配置され、前記他方側外側ベルトプライは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の40%〜50%の範囲内に配置されている、ことを特徴としている。
【0066】
次に、請求項5に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0067】
一方側外側ベルトプライをタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の25%〜40%の範囲内に配置し、他方側外側ベルトプライをタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の40%〜50%の範囲内に配置することで、かかる荷重が小さい場合に発生する横力を確実に確保することができる。
【0068】
なお、一方側外側ベルトプライがタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の25%位置よりもタイヤ赤道面側へ位置すると、小さな荷重(リア荷重付近)での横力の増加が大きくなり過ぎ、前後差の縮小に適当な範囲を越えてしまう。
【0069】
一方、一方側外側ベルトプライがタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の40%位置よりもショルダー側へ位置すると、大きな荷重での横力の逆方向への増加が遅れるので、前後差の縮小に不利になる。
【0070】
また、他方側外側ベルトプライがタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の40%位置よりもタイヤ赤道面側へ位置すると、横力の逆方向への増加が早まり、一方側の横力増加の効果を消す方向に作用して不利になる。
【0071】
一方、他方側外側ベルトプライがタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の50%位置よりもショルダー側へ位置すると、材料の無駄となるだけである。
【0072】
請求項6に記載の発明は、タイヤ周方向に対して傾斜するコードを含む少なくとも2枚のベルトプライから構成され、隣接するベルトプライ同士では互いのコード方向がタイヤ赤道面に対して反対方向に傾斜するベルト層を備えた空気入りタイヤであって、少なくとも1枚のベルトプライは、コードのタイヤ周方向に対する角度がタイヤ幅方向で部分的に異なり、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側のショルダー付近と、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面とショルダー部との中間部分における前記コードのタイヤ赤道面に対する角度が、それ以外の範囲における前記コードのタイヤ赤道面に対する角度よりも小さく設定されている、ことを特徴としている。
【0073】
次に、請求項6に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0074】
ベルト層において、タイヤ周方向に対するコードの角度が小さい部位と大きい部位とを比較すると、接地時には、コードの角度が大きい部位は、コードの角度が小さい部位よりもタイヤ周方向に伸ばされる。
【0075】
即ち、コードの角度の大きい部位のタイヤ軸方向の収縮は、コードの角度の小さい部位より大きくなる。
【0076】
この空気入りタイヤでは、少なくとも1枚のベルトプライは、コードのタイヤ周方向に対する角度がタイヤ幅方向で部分的に異なり、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側のショルダー付近と、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面とショルダー部との中間部分におけるコードのタイヤ赤道面に対する角度が、それ以外の範囲におけるコードのタイヤ赤道面に対する角度よりも小さく設定されている。
【0077】
したがって、比較的荷重が小さい場合では、トレッドの中央付近において、コードの角度が大きく設定されている部位のベルト層のタイヤ軸方向の収縮量が、コードの角度が小さく設定されている部位の収縮量に比較して大となる。
【0078】
ベルト層の上に設けられているトレッドは、ベルト層の収縮に影響を受け、トレッドの中央付近では、コードの角度の大きく設定されている側ではトレッドのタイヤ軸方向の収縮量がコードの角度の小さく設定されている側の収縮量に比較して大となる。
【0079】
したがって、比較的小さな荷重が作用している空気入りタイヤには、トレッドの中央付近においてコードの角度が小さく設定されている側からコードの角度が大きく設定されている側へ向う横力(ここでは、便宜上右向きの横力とする。)を発生する。
【0080】
次に、空気入りタイヤに作用する荷重が増加して大きくなると、左右の外側領域の接地圧が上昇する。
【0081】
左右の外側領域においては、コードの角度が大きく設定されている外側領域ではベルト層のタイヤ軸方向の収縮量が、コードの角度が小さく設定されている外側領域の収縮量に比較して大となる。
【0082】
請求項6に記載の空気入りタイヤでは、左右の外側領域において、コードの角度が大きく設定されている部位の位置(タイヤ赤道面に対して)が、中央領域とは逆に設定されているため、外側領域の接地圧が上昇すると、請求項1の空気入りタイヤと同様に、前述した右向きの横力とはその向きが反対となる左向きの横力が発生する。
【0083】
即ち、請求項6に記載の空気入りタイヤにおいても、請求項1に記載の空気入りタイヤと同様に、作用する荷重が小さい場合には、例えば右向きの横力を発生させ、作用する荷重が大きい場合には、左向きの横力を発生させることができ、荷重の大きさによって発生する横力の向きを変更することができる。
【0084】
なお、車両装着時の作用は請求項1の作用と同一であるので説明は省略する。
【0085】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ショルダー付近とは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の25%〜40%の第1の範囲内であり、前記中間部分とは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の40%〜50%の第2の範囲内である、ことを特徴としている。
【0086】
次に、請求項7に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0087】
コードの角度を小さく設定する第1の範囲が、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の25%位置よりもタイヤ赤道面側へ位置すると、小さな荷重(リア荷重付近)での横力の増加が大きくなり過ぎ、前後差の縮小に適当な範囲を越えてしまう。
【0088】
一方、コードの角度を小さく設定する第1の範囲が、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の40%位置よりもショルダー側へ位置すると、大きな荷重での横力の逆方向への増加が遅れるので、前後差の縮小に不利になる。
【0089】
また、コードの角度を小さく設定する第2の範囲が、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の40%位置よりもタイヤ赤道面側へ位置すると、横力の逆方向への増加が早まり、一方側の横力増加の効果を消す方向に作用して不利になる。
【0090】
一方、コードの角度を小さく設定する第2の範囲が、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の50%位置よりもショルダー側へ位置すると、材料の無駄になるだけである。
【0091】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、負荷回転時に発生する横力の状態を示す目印をタイヤ表面に付与した、ことを特徴としている。
【0092】
次に、請求項8に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0093】
請求項8に記載の空気入りタイヤでは、タイヤ表面の目印を目視することで、空気入りタイヤが負荷回転した時に発生する横力の状態が分かる。
【0094】
したがって、空気入りタイヤの装着方向を簡単に判別することができる。
【0095】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る空気入りタイヤ10を図1及び図2にしたがって説明する。
【0096】
図1に示すように、空気入りタイヤ10はビード部11に埋設されたビードコア12の周りにタイヤ内側から外側に折返して係止されるカーカス14と、カーカス14の本体部14Aと巻上部14Bとの間に配置されるビードフィラー15と、カーカス14のクラウン部のタイヤ径方向外側に位置するトレッドゴム16と、カーカス14のサイド部に位置するサイドウォールゴム18と、カーカス14のクラウン部のタイヤ径方向外側でトレッドゴム16の内側に配置されたベルト20を備えている。
【0097】
本実施形態のカーカス14は、ラジアル方向に延びる繊維コードを含む1枚のカーカスプライから構成されている。
【0098】
本実施形態のベルト20はタイヤ径方向内側に配置される内側ベルトプライ20Aと、この内側ベルトプライ20Aのタイヤ径方向外側に配置される外側ベルトプライ20Bとの2枚のベルトプライから構成されている。
【0099】
内側ベルトプライ20A及び外側ベルトプライ20Bは、スチール等のコードを複数本平行に並べてゴム被覆したものであり、各プライのコードはタイヤ赤道面CLに対し傾斜しており、内側ベルトプライ20Aのコードと外側ベルトプライ20Bのコードとは、タイヤ赤道面CLを挟んで互いに逆方向に傾斜している。
【0100】
また、ベルト20のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層22が設けられている。
【0101】
ベルト補強層22は、例えば、芳香族ポリアミド等のコードを複数本平行に並べてゴム被覆したものであり、コードは、タイヤ赤道面CLに対して平行、または傾斜している。
【0102】
図2に示すように、タイヤ回転軸に沿った断面で見たときのトレッド踏面からベルト補強層22のトレッド側表面までのトレッドゲージをAとしたとき、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向一方側とタイヤ幅方向他方側とでは、トレッドゲージAが異なっている。
【0103】
トレッド部において、タイヤ赤道面CLを中心としてタイヤ最大幅SWの17%〜28%の中央領域CAでは、トレッドゲージAは、タイヤ赤道面CLの図面右側が図面左側よりもトレッドゲージAが0.2〜1.0mm厚く設定されている。
【0104】
本実施形態では、中央領域CAのタイヤ赤道面CLの図面右側において、ベルト補強層22とトレッドゴム16との間にゴムシート24(図1では図示省略)を配置することでトレッドゲージAを厚くしている。
【0105】
また、中央領域CAよりもタイヤ幅方向外側の外側領域SAでは、トレッドゲージAは、タイヤ赤道面CLの図面左側の外側領域SAが図面右側の外側領域SAよりも0.2〜1.0mm厚く設定されている。
【0106】
本実施形態では、外側領域SAのタイヤ赤道面CLの図面左側において、ベルト補強層22とトレッドゴム16との間にゴムシート26を配置することでトレッドゲージAを厚くしている。
【0107】
なお、外側領域SAのタイヤ幅方向外側端部は、接地端である。
【0108】
ここで、接地端とは、空気入りタイヤ10をJATMA YEAR BOOK(日本自動車タイヤ協会規格 2002年度版)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、最大負荷能力を負荷したときのものである。使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
(作用)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用を説明する。
【0109】
比較的かかる荷重(負荷)が小さい場合においては、中央領域CAの接地が高く、発生する横力は中央領域CAの構造に影響を受ける。
【0110】
本実施形態の空気入りタイヤ10では、中央領域CAはタイヤ赤道面CLの図面左側のトレッドゲージAが図面右側よりも厚く設定されているので、ベルト20のタイヤ軸方向の収縮量はタイヤ赤道面CLの図面右側で大となる。
【0111】
したがって、比較的小さな荷重が作用している場合、空気入りタイヤ10は図面右側へ向う横力SFRを発生する。
【0112】
次に、空気入りタイヤ10に作用する荷重が増加して大きくなると、左右の外側領域SAの接地圧が上昇する。
【0113】
左右の外側領域SAを比較すると、ベルト20は、左側の方が右側に比較してタイヤ軸方向の収縮量が大きくなるので、荷重が大きい場合には、空気入りタイヤ10は図面左側へ向う横力SFLを発生する。
【0114】
次に、この空気入りタイヤ10を車両に装着する方法を説明する。
【0115】
例えば、前輪にかかる荷重が後輪にかかる荷重よりも大きく、車両の特性として車両内側から外側へ向けて横力を発生し、かつ前輪で発生する横力が後輪で発生する横力よりも大きく設定された車両(例えば、図3に示す車両A)に装着する場合、前輪には、荷重が大きい場合に発生する空気入りタイヤ10の横力が車両外側から内側へ向うように装着し、後輪には、荷重が小さい場合に発生する空気入りタイヤ10の横力が車両内側から外側へ向くように装着すると(図3(A)参照)、車両の操縦安定性を確保することができる。
【0116】
一方、前輪にかかる荷重が後輪にかかる荷重よりも大きく、車両の特性として車両内側から外側へ向けて横力を発生し、かつ前輪で発生する横力が後輪で発生する横力よりも小さく設定された車両(例えば、図3に示す車両B)に装着する場合、前輪には、荷重が大きい場合に発生する空気入りタイヤ10の横力が車両内側から外側へ向うように装着し、後輪には、荷重が小さい場合に発生する空気入りタイヤ10の横力が車両外側から内側へ向くように装着すると(図3(B)参照)、車両の操縦安定性を確保することができる。
【0117】
なお、外観からは空気入りタイヤ10の内部構造は分からないので、例えば、図面右側のサイド部等に、負荷回転時に発生する横力の状態を示す例えば凸状(または凹状でも良い)の目印28を付与することが好ましい。
【0118】
本実施形態の目印28は、荷重が小さい場合にタイヤ赤道面CL側から目印28の付与されている側へ向う横力が発生し、荷重が大きい場合に目印28の付与されている側から付与されていない側へ向う横力が発生することを意味している。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る空気入りタイヤ50を図3にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0119】
図3に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ50では、ベルト20の構造が第1の実施形態とは異なり、外側ベルトプライ20Bが左右に分離している。
【0120】
本実施形態では、タイヤ赤道面CLの図面左側においてはベルト20の幅BWの25%〜40%の範囲内に、タイヤ赤道面CLの図面右側においてはベルト20の幅BWの40%〜50%の範囲内に外側ベルトプライ20Bが配置されている。
【0121】
次に、本実施形態の空気入りタイヤ50の作用を説明する。
【0122】
ベルト20において、内側ベルトプライ20Aと外側ベルトプライ20Bとが重なっている部位と、内側ベルトプライ20Aのみの部位とを比較すると、接地時には、内側ベルトプライ20Aのみの部位は、内側ベルトプライ20Aと外側ベルトプライ20Bとが重なっている部位よりもタイヤ周方向に伸ばされ、タイヤ軸方向の収縮が大となる。
【0123】
比較的荷重が小さい場合では、ベルト20のタイヤ軸方向の収縮は、タイヤ赤道面CLの図面右側が左側よりも大きくなるので、空気入りタイヤ50には図面右側へ向う横力SFRが発生する。
【0124】
一方、かかる荷重が増加して大きくなった場合、ベルト20のショルダー付近を見ると、ベルト20のタイヤ軸方向の収縮は、タイヤ赤道面CLの左側が右側よりも大きくなるので、空気入りタイヤ50には図面左側へ向う横力SFLが発生する。
【0125】
したがって、本実施形態の空気入りタイヤ50においても、第1の実施形態の空気入りタイヤ10と同様に、かかる荷重の大きさによって発生する横力の向きを変更することができる。
【0126】
なお、この空気入りタイヤ50を車両に装着する方法は、第1の実施形態と同様である。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る空気入りタイヤ52を図4にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0127】
図4に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ52では、タイヤ赤道面CLの図面左側でタイヤ赤道面CLからショルダー側へベルト20の幅BWの25%〜40%の第1の範囲54内と、タイヤ赤道面CLを境にして図面右側でかつタイヤ赤道面CLからショルダー側へベルト20の幅BWの40%〜50%の第2の範囲56内での、外側ベルトプライ20Bのコード20Bcのタイヤ赤道面CLに対する角度が、第1の範囲54、及び第2の範囲56以外の範囲におけるコード20Bcのタイヤ赤道面CLに対する角度よりも小さく設定されている。
【0128】
なお、内側ベルトプライ20Aのコード20Acは、タイヤ赤道面CLに対して一定角度で傾斜している。
【0129】
次に、本実施形態の空気入りタイヤ52の作用を説明する。
【0130】
ベルト20において、外側ベルトプライ20Bのコード20Bcのタイヤ赤道面CLに対する角度が小さい部位と大きい部位とを比較すると、接地時には、コード20Bcの角度が大きい部位は、コード20Bcの角度が小さい部位よりもタイヤ周方向に伸ばされる。
【0131】
即ち、ベルト20は、コード20Bcの角度の大きい部位は、コード20Bcの角度が小さい部位よりもタイヤ軸方向の収縮が大きくなる。
【0132】
したがって、比較的荷重が小さい場合では、ベルト20のタイヤ軸方向の収縮は、タイヤ赤道面CLの図面右側が左側よりも大きくなるので、空気入りタイヤ52には図面右側へ向う横力SFRが発生する。
【0133】
一方、かかる荷重が増加して大きくなった場合、ベルト20のショルダー付近を見ると、ベルト20のタイヤ軸方向の収縮は、タイヤ赤道面CLの左側が右側よりも大きくなるので、空気入りタイヤ52には図面左側へ向う横力SFLが発生する。
【0134】
したがって、本実施形態の空気入りタイヤ52においても、第1の実施形態の空気入りタイヤ10と同様に、かかる荷重の大きさによって発生する横力の向きを変更することができる。
【0135】
なお、この空気入りタイヤ52を車両に装着する方法は、第1の実施形態と同様である。
【0136】
上記第1〜3の実施形態では、特性として車両内側から車両外側へ向う横力を発生する車両に空気入りタイヤを装着する例を示したが、特性として車両外側から車両内側へ向う横力を発生する車両や、また、前輪にかかる荷重よりも後輪にかかる荷重が大きい車両等に空気入りタイヤ10、50、52を装着することもできる。
【0137】
何れの場合においても、前輪と後輪の横力のレベル差を小さくする向きに空気入りタイヤを装着することにより、高い操縦安定性を確保することができる。
(試験例)
本発明の効果を確かめるために、第1の実施形態で説明した構造を有した実施例のタイヤを試作し、操縦安定性を従来構造のタイヤと比較した。
【0138】
試験は前輪荷重及び後輪荷重の異なる2種類の車両に装着し、テストコースで車両を走行させた。評価は、テストドライバーによる官能評価である。
【0139】
実施例のタイヤ:トレッドとベルトとの間に0.3mmの厚さのゴムシートを用いた。
【0140】
従来構造のタイヤ:トレッドゲージが一定である以外は実施例のタイヤと同一構造である。
【0141】
操縦安定性の評価は、以下の表1に記載した通りである。
【0142】
【表1】
◎:やや良い
○:普通
×:やや悪い
試験の結果、本発明の適用された実施例のタイヤは、車種によらず操縦安定性を確保可能であることが分かる。
【0143】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の空気入りタイヤによれば、車両の種類にかかわらず、操縦安定性を確保することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る空気入りタイヤの断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの拡大断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る空気入りタイヤの断面図である。
【図4】第3の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドを除いたベルト部分の平面図である。
【図5】(A)は車両Aに従来構造のタイヤを装着した時に発生する横力を説明する説明図であり、(B)は車両Bに従来構造のタイヤを装着した時に発生する横力を説明する説明図である。
【図6】(A)は車両Aに本発明のタイヤを装着した時に発生する横力を説明する説明図であり、(B)は車両Bに本発明のタイヤを装着した時に発生する横力を説明する説明図である。
【図7】従来のタイヤにおける、荷重と発生する横力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
16 トレッドゴム
20 ベルト
20A 内側ベルトプライ
20B 外側ベルトプライ
28 目印
50 空気入りタイヤ
52 空気入りタイヤ
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤにかかり、特に、車両の種類によらず操縦安定性を確保することのできる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両では、操縦安定性等を確保するために車輪のアライメント調整が行われている。
【0003】
例えば車輪にキャンバー角を与え、このキャンバー角の付与による片べり摩耗を防止するためにトー角が付与されている。
【0004】
また逆に、車両のフロントタイヤ及びリアタイヤに発生する力をバランスさせ、車両の操縦安定性を確保するためにトー角を付与し、付与したトー角による片べり摩耗を防止するためにキャンバー角を付与している。
【0005】
また、トー角及びキャンバー角を組み合わせて、車両の構造寸法等の制約の下で車両の操縦安定性の確保とタイヤの片べり摩耗の最小化を両立させる調整も行われている。
【0006】
このように、車両の操縦安定性等を確保するためには、車両の各車輪のトー角やキャンバー角等のアライメントを調整することが重要になる。
【0007】
一般的に、車輪のアライメント調整は、車両の各車輪毎に角度や寸法を測定し、測定した角度や寸法が車両設計時に設定された目標値に一致するように、トー角やキャンバー角を調整している。
【0008】
なお、タイヤのコニシティー等をコントロールしせ性能を向上する技術は種々提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開平11−59118号公報
【特許文献2】
特開平9−300906号公報
【特許文献3】
特開平7−223407号公報
【特許文献4】
特開平10−35213号公報
【特許文献5】
特開平9−207842号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
一方、タイヤは、コニシティー、内部の構造及びゴム等の部材によって異なる転がり抵抗等に起因して横力を発生する。
【0011】
この横力は、タイヤに加わる荷重に依存して各々変化し、かつタイヤの種類によっても相違し、従来のタイヤでは、図7に示すように荷重が増加することによって横力が増加する性質を有してる。
【0012】
以下に、従来のタイヤの装着方法を説明する。
【0013】
図5(A)に示すように、例えば、前輪100では車両内側から車両外側に向う横力SFfが大きく、後輪102では車両内側から車両外側に向う横力SFrが前輪100よりも小さくなるように設定され、かつ前輪100にかかる荷重が後輪102にかかる荷重よりも大きな車両Aに従来のタイヤ104を装着する場合、タイヤ104の発生する横力SFtが、上記横力SFf、及び横力SFrと反対向きとなるようにタイヤ104を装着する。
【0014】
こうすると、前輪100においては、大きな横力SFf(後輪対比で)とタイヤの大きな横力SFt(大きい理由:後輪対比で荷重が大きいため)とが足され、後輪102においては、小さな横力SFr(前輪対比で)とタイヤの小さな横力SFt(小さい理由:前輪対比で荷重が小さいため)とが足され、その結果、前輪100のトータルの横力(SFf−SFt)、後輪102のトータルの横力(SFr−SFt)はそれぞれ小さくなり、かつ、前輪100のトータルの横力と後輪102のトータルの横力とのレベル差も小さくできる。
【0015】
一方、図5(B)に示すように、前輪100では車両内側から車両外側に向う横力SFfが小さく、後輪102では車両内側から車両外側に向う横力SFrが前輪100よりも大きくなるように設定され、かつ前輪100にかかる荷重が後輪102にかかる荷重よりも大きな車両Bもある。
【0016】
この車両Bに従来のタイヤ104を装着する場合、タイヤが発生する横力SFtが、上記横力SFf、及び横力SFrと反対向きとなるようにタイヤを装着すると、前輪100においては、小さな横力SFf(後輪対比で)と、これと反対向きであるタイヤの大きな横力SFt(大きい理由:後輪対比で荷重が大きいため)とが足され、後輪102においては、大きな横力SFr(前輪対比で)と、これと反対向きであるタイヤの小さな横力SFt(小さい理由:前輪対比で荷重が小さいため)とが足される。
【0017】
しかしながら、この場合には、前輪100のトータルの横力(SFf−SFt)と後輪102のトータルの横力(SFr−SFt)はそれぞれ減少するが、前輪100のトータルの横力と後輪102のトータルの横力とのレベル差は増大する問題がある。
【0018】
即ち、従来のタイヤ104では、車両によっては前後輪の横力のレベルをそれぞれ小さくすることと、前輪の横力と後輪の横力とのレベル差を小さくすることを両立することが出来なかった。
【0019】
ここで、走行時に外乱を受けた場合の車両の操縦安定性は、その外乱一つに対する前輪と後輪の横力の発生差によるところが大きい。
【0020】
例えば、小石を踏んだ際、前輪で出る横力の大ききさと後輪で出る横力の大きさとが異なると、車両に対して回転方向のヨーが発生し、車両は不安定方向となる。
【0021】
したがって、前輪及び後輪のそれぞれにおいて横力のレベルが大きい場合や、前後輪の横力のレベル差が大きい場合で、車両の不安定さが気になる場合には、車両のアライメントを修正し、操縦安定性を良化することは可能ではあるが、リプレイス市場(新車装着時では無く、一般のタイヤ販売店、カー用品店等でのタイヤ交換)においては、ユーザー側の負担(アライメント修正費用)が増える問題がある。
【0022】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、車両の種類にかかわらず、操縦安定性を確保できる空気入りタイヤを得ることが目的である。
【0023】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、タイヤ周方向に対して傾斜するコードを含む少なくとも2枚のベルトプライから構成され、隣接するベルトプライ同士では互いのコード方向がタイヤ赤道面に対して反対方向に傾斜するベルト層を備えた空気入りタイヤであって、タイヤ回転軸に沿った断面で見たときのトレッド踏面から前記ベルト層のトレッド側表面までのトレッドゲージをAとしたとき、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向一方の片側とタイヤ幅方向他方の片側とでは、トレッドゲージAが異なり、トレッド部をタイヤ赤道面付近である中央領域と、前記中央領域のタイヤ幅方向外側の外側領域とに分けたときに、前記中央領域内では、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向一方側がタイヤ幅方向他方側よりもトレッドゲージAが厚く、前記外側領域内では、タイヤ幅方向他方側の外側領域がタイヤ幅方向一方側の外側領域よりもトレッドゲージAが厚い、ことを特徴としている。
【0024】
次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0025】
空気入りタイヤのトレッドは、断面略円弧形状を呈しているため、比較的荷重が小さい場合には、トレッド中央付近の接地圧が高いためタイヤが発生する横力はトレッド中央付近の構造によって支配され、荷重が大きくなると、ショルダー側の接地圧が上昇して、ショルダー側の構造の影響が大きくなってくる。
【0026】
ここで、トレッドゲージの厚いところと、薄いところとを比較すると、トレッドゲージの厚いところではトレッドゲージの薄いところに比較してベルト層はタイヤ周方向に伸ばされる。
【0027】
ベルト層がタイヤ周方向に伸ばされると、ベルト層は幅方向(タイヤ軸方向)に収縮する(所謂パンタグラフ変形)。
【0028】
この空気入りタイヤでは、トレッドの中央領域内では、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向一方の側がタイヤ幅方向他方の側よりもトレッドゲージAが厚く、左右の外側領域を比較すると、タイヤ幅方向他方の外側領域内がタイヤ幅方向一方の外側領域内よりもトレッドゲージAが厚く設定されている。
【0029】
したがって、比較的荷重が小さい場合では、中央領域において、トレッドゲージAが厚く設定されている側のベルト層のタイヤ軸方向の収縮量が、トレッドゲージAが薄く設定されている側の収縮量に比較して大となる。
【0030】
ベルト層の上に設けられているトレッドは、ベルト層の収縮に影響を受け、中央領域内では、タイヤ赤道面を挟んでトレッドゲージAが厚く設定されている側ではトレッドのタイヤ軸方向の収縮量がトレッドゲージAが薄く設定されている側の収縮量に比較して大となるので、比較的小さな荷重が作用している空気入りタイヤには、中央領域においてトレッドゲージAが薄く設定されている側から厚く設定されている側へ向う横力(ここでは、便宜上右向きの横力とする。)を発生する。
【0031】
次に、空気入りタイヤに作用する荷重が増加して大きくなると、外側領域の接地圧が上昇する。
【0032】
外側領域においても、中央領域と同様に、トレッドゲージAが厚く設定されている側ではベルト層のタイヤ軸方向の収縮量が、トレッドゲージAが薄く設定されている側の収縮量に比較して大となる。
【0033】
左右の外側領域では、トレッドゲージAの厚さの設定が、中央領域とは逆に設定されているため、左右の外側領域の接地圧が上昇すると、前述した右向きの横力とはその向きが反対となる左向きの横力が発生する。
【0034】
従来の空気入りタイヤでは、作用する荷重の大きさによって発生する横力の向きは変らず、荷重の増加に伴って横力の大きさが大きくなったが、本発明の空気入りタイヤでは、作用する荷重が小さい場合には、例えば右向きの横力が発生し、作用する荷重が大きい場合には、左向きの横力を発生させることができ、荷重の大きさによって発生する横力の向きを変更することができる。
【0035】
次に、本発明の空気入りタイヤを車両に装着した場合の作用を説明する。
【0036】
例えば、従来技術で説明した車両Aに本発明の空気入りタイヤ101を装着する場合、図6(A)に示すように、かかる荷重が小さい場合に後輪102において車両内側から外側へ向う横力SFtが発生し、かかる荷重が大きい場合に前輪100で車両外側から内側へ向う横力SFtが発生するように空気入りタイヤ101の向きを決める。
【0037】
こうすると、前輪100においては、大きな横力SFf(後輪対比で)に、これと反対向きのタイヤの横力SFtが足され、後輪102においては、小さな横力SFr(前輪対比で)に、これと同じ向きのタイヤの横力SFtが足され、その結果、前輪100でのトータルの横力(SFf−SFt)が小さくなり、かつ、前輪100のトータルの横力(SFf−SFt)と後輪102のトータルの横力(SFr+SFt)とのレベル差も小さくなる。
【0038】
したがって、車両Aは、操縦安定性が向上する方向となる。
【0039】
一方、図6(B)に示すように、従来技術で説明した車両Bに本発明の空気入りタイヤ101を装着する場合、かかる荷重が小さい場合に後輪102で車両外側から内側へ向う横力SFtが発生し、かかる荷重が大きい場合に前輪100で車両内側から外側へ向う横力SFtが発生するように空気入りタイヤ10の向きを決める。
【0040】
こうすると、前輪100においては、小さな横力SFf(後輪対比で)に、これと同じ向きの横力SFtが足され、後輪102においては、大きな横力SFr(前輪対比で)に、これと反対向きの横力SFtが足され、その結果、後輪102でのトータルの横力(SFr−SFt)が小さくなり、かつ、前輪100のトータルの横力(SFf+SFt)と後輪102のトータルの横力(SFr−SFt)とのレベル差も小さくなる。
【0041】
したがって、車両Bは、操縦安定性が向上する方向となる。
【0042】
このように、本発明の空気入りタイヤ101は、車両A、及び車両Bのどちらに対しても、操縦安定性を向上させることができる。
【0043】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記中央領域は、タイヤ赤道面を中心としてタイヤ最大幅の17%〜28%の領域である、ことを特徴としている。
【0044】
次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0045】
中央領域を、タイヤ赤道面を中心としてタイヤ最大幅の17%〜28%の領域とすることで、かかる荷重が小さい場合に発生する横力を確実に確保することができる。
【0046】
中央領域がタイヤ赤道面を中心としてタイヤ最大幅の17%未満になると、かかる荷重が小さい場合に発生する横力を確実に確保することができなくなる。
【0047】
一方、中央領域がタイヤ赤道面を中心としてタイヤ最大幅の28%を越えると、フロント荷重に近い荷重の大きな領域での逆方向の発生力への反転が起こり難くなり、前後輪のレベル差を縮小する効果が薄れる。
【0048】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記中央領域内では、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向一方側がタイヤ幅方向他方側よりもトレッドゲージAが0.2〜1.0mm厚く、前記外側領域内では、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向他方側がタイヤ幅方向一方側よりもトレッドゲージAが0.2〜1.0mm厚い、ことを特徴としている。
【0049】
次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0050】
上記の構成のようにトレッドゲージAを0.2〜1.0mm厚くすることで、タイヤに発生させる横力を確実に確保可能となる。
【0051】
なお、トレッドゲージAを0.2mm未満で厚くしても、十分な横力を発生させることは出来なくなる。
【0052】
一方、トレッドゲージAを1.0mmよりも厚くすると、横力の発生が通常の前後横力差をうめるに必要な力より大きくなると共に、接地圧の不均一が大きくなって摩耗へのデメリットが出てくる。
【0053】
請求項4に記載の発明は、タイヤ周方向に対して傾斜するコードを含む少なくとも2枚のベルトプライから構成され、隣接するベルトプライ同士では互いのコード方向がタイヤ赤道面に対して反対方向に傾斜するベルト層を備えた空気入りタイヤであって、内側ベルトプライのタイヤ径方向外側には、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側に前記内側ベルトプライとはコード方向が交差する一方側外側ベルトプライが配置され、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側に前記内側ベルトプライとはコード方向が交差する他方側外側ベルトプライが配置されており、前記一方側外側ベルトプライはベルト端付近に配置され、前記他方側外側ベルトプライは、前記一方側外側ベルトプライに比較してベルト端よりもタイヤ赤道面側へずれた位置に配置されている、ことを特徴としている。
【0054】
次に、請求項4に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0055】
2枚のベルトプライが重なっている部位と、1枚のベルトプライのみの部位とを比較すると、接地時には、1枚のベルトプライのみの部位は、2枚のベルトプライが重なっている部位よりもタイヤ周方向に伸ばされる。
【0056】
即ち、1枚のベルトプライのみの部位は、タイヤ軸方向の収縮が2枚のベルトプライが重なっている部位より大きくなる。
【0057】
この空気入りタイヤでは、タイヤ径方向最内側の内側ベルトプライのタイヤ径方向外側に、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側に内側ベルトプライとはコード方向が交差する一方側外側ベルトプライが配置され、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側に内側ベルトプライとはコード方向が交差する他方側外側ベルトプライが配置されており、一方側外側ベルトプライはベルト端付近に配置され、他方側外側ベルトプライは、一方側外側ベルトプライに比較してベルト端よりもタイヤ赤道面側へずれた位置に配置されている。
【0058】
したがって、比較的荷重が小さい場合では、トレッドの中央側において、一方側外側ベルトプライが配置されていない側のベルト層のタイヤ軸方向の収縮量が、一方側外側ベルトプライ層が配置されている側の収縮量に比較して大となる。
【0059】
ベルト層の上に設けられているトレッドは、ベルト層の収縮に影響を受け、中央領域内では、一方側外側ベルトプライの配置されていない側ではトレッドのタイヤ軸方向の収縮量が一方側外側ベルトプライの配置されている側の収縮量に比較して大となるので、比較的小さな荷重が作用している空気入りタイヤには、中央領域において一方側外側ベルトが配置されている側から一方側外側ベルトプライが配置されていない側へ向う横力(ここでは、便宜上右向きの横力とする。)を発生する。
【0060】
次に、空気入りタイヤに作用する荷重が増加して大きくなると、左右の外側領域の接地圧が上昇する。
【0061】
左右の外側領域においては、他方側外側ベルトプライが配置されていない側の外側領域のタイヤ軸方向の収縮量が、他方側外側ベルトプライが配置されている側の外側領域の収縮量に比較して大となる。
【0062】
請求項4に記載の空気入りタイヤでは、左右の外側領域において、2枚のベルトを重ねている部位の位置(タイヤ赤道面に対して)が、中央領域とは逆に設定されているため、左右の外側領域の接地圧が上昇すると、請求項1の空気入りタイヤと同様に、前述した右向きの横力とはその向きが反対となる左向きの横力が発生する。
【0063】
即ち、請求項4に記載の空気入りタイヤにおいても、請求項1に記載の空気入りタイヤと同様に、作用する荷重が小さい場合には、例えば右向きの横力を発生させ、作用する荷重が大きい場合には、左向きの横力を発生させることができ、荷重の大きさによって発生する横力の向きを変更することができる。
【0064】
なお、車両装着時の作用は請求項1の作用と同一であるので説明は省略する。
【0065】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の空気入りタイヤにおいて、前記一方側外側ベルトプライは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の25%〜40%の範囲内に配置され、前記他方側外側ベルトプライは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の40%〜50%の範囲内に配置されている、ことを特徴としている。
【0066】
次に、請求項5に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0067】
一方側外側ベルトプライをタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の25%〜40%の範囲内に配置し、他方側外側ベルトプライをタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の40%〜50%の範囲内に配置することで、かかる荷重が小さい場合に発生する横力を確実に確保することができる。
【0068】
なお、一方側外側ベルトプライがタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の25%位置よりもタイヤ赤道面側へ位置すると、小さな荷重(リア荷重付近)での横力の増加が大きくなり過ぎ、前後差の縮小に適当な範囲を越えてしまう。
【0069】
一方、一方側外側ベルトプライがタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の40%位置よりもショルダー側へ位置すると、大きな荷重での横力の逆方向への増加が遅れるので、前後差の縮小に不利になる。
【0070】
また、他方側外側ベルトプライがタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の40%位置よりもタイヤ赤道面側へ位置すると、横力の逆方向への増加が早まり、一方側の横力増加の効果を消す方向に作用して不利になる。
【0071】
一方、他方側外側ベルトプライがタイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の50%位置よりもショルダー側へ位置すると、材料の無駄となるだけである。
【0072】
請求項6に記載の発明は、タイヤ周方向に対して傾斜するコードを含む少なくとも2枚のベルトプライから構成され、隣接するベルトプライ同士では互いのコード方向がタイヤ赤道面に対して反対方向に傾斜するベルト層を備えた空気入りタイヤであって、少なくとも1枚のベルトプライは、コードのタイヤ周方向に対する角度がタイヤ幅方向で部分的に異なり、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側のショルダー付近と、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面とショルダー部との中間部分における前記コードのタイヤ赤道面に対する角度が、それ以外の範囲における前記コードのタイヤ赤道面に対する角度よりも小さく設定されている、ことを特徴としている。
【0073】
次に、請求項6に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0074】
ベルト層において、タイヤ周方向に対するコードの角度が小さい部位と大きい部位とを比較すると、接地時には、コードの角度が大きい部位は、コードの角度が小さい部位よりもタイヤ周方向に伸ばされる。
【0075】
即ち、コードの角度の大きい部位のタイヤ軸方向の収縮は、コードの角度の小さい部位より大きくなる。
【0076】
この空気入りタイヤでは、少なくとも1枚のベルトプライは、コードのタイヤ周方向に対する角度がタイヤ幅方向で部分的に異なり、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側のショルダー付近と、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面とショルダー部との中間部分におけるコードのタイヤ赤道面に対する角度が、それ以外の範囲におけるコードのタイヤ赤道面に対する角度よりも小さく設定されている。
【0077】
したがって、比較的荷重が小さい場合では、トレッドの中央付近において、コードの角度が大きく設定されている部位のベルト層のタイヤ軸方向の収縮量が、コードの角度が小さく設定されている部位の収縮量に比較して大となる。
【0078】
ベルト層の上に設けられているトレッドは、ベルト層の収縮に影響を受け、トレッドの中央付近では、コードの角度の大きく設定されている側ではトレッドのタイヤ軸方向の収縮量がコードの角度の小さく設定されている側の収縮量に比較して大となる。
【0079】
したがって、比較的小さな荷重が作用している空気入りタイヤには、トレッドの中央付近においてコードの角度が小さく設定されている側からコードの角度が大きく設定されている側へ向う横力(ここでは、便宜上右向きの横力とする。)を発生する。
【0080】
次に、空気入りタイヤに作用する荷重が増加して大きくなると、左右の外側領域の接地圧が上昇する。
【0081】
左右の外側領域においては、コードの角度が大きく設定されている外側領域ではベルト層のタイヤ軸方向の収縮量が、コードの角度が小さく設定されている外側領域の収縮量に比較して大となる。
【0082】
請求項6に記載の空気入りタイヤでは、左右の外側領域において、コードの角度が大きく設定されている部位の位置(タイヤ赤道面に対して)が、中央領域とは逆に設定されているため、外側領域の接地圧が上昇すると、請求項1の空気入りタイヤと同様に、前述した右向きの横力とはその向きが反対となる左向きの横力が発生する。
【0083】
即ち、請求項6に記載の空気入りタイヤにおいても、請求項1に記載の空気入りタイヤと同様に、作用する荷重が小さい場合には、例えば右向きの横力を発生させ、作用する荷重が大きい場合には、左向きの横力を発生させることができ、荷重の大きさによって発生する横力の向きを変更することができる。
【0084】
なお、車両装着時の作用は請求項1の作用と同一であるので説明は省略する。
【0085】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ショルダー付近とは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の25%〜40%の第1の範囲内であり、前記中間部分とは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の40%〜50%の第2の範囲内である、ことを特徴としている。
【0086】
次に、請求項7に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0087】
コードの角度を小さく設定する第1の範囲が、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の25%位置よりもタイヤ赤道面側へ位置すると、小さな荷重(リア荷重付近)での横力の増加が大きくなり過ぎ、前後差の縮小に適当な範囲を越えてしまう。
【0088】
一方、コードの角度を小さく設定する第1の範囲が、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の40%位置よりもショルダー側へ位置すると、大きな荷重での横力の逆方向への増加が遅れるので、前後差の縮小に不利になる。
【0089】
また、コードの角度を小さく設定する第2の範囲が、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の40%位置よりもタイヤ赤道面側へ位置すると、横力の逆方向への増加が早まり、一方側の横力増加の効果を消す方向に作用して不利になる。
【0090】
一方、コードの角度を小さく設定する第2の範囲が、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へベルト層の幅の50%位置よりもショルダー側へ位置すると、材料の無駄になるだけである。
【0091】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、負荷回転時に発生する横力の状態を示す目印をタイヤ表面に付与した、ことを特徴としている。
【0092】
次に、請求項8に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0093】
請求項8に記載の空気入りタイヤでは、タイヤ表面の目印を目視することで、空気入りタイヤが負荷回転した時に発生する横力の状態が分かる。
【0094】
したがって、空気入りタイヤの装着方向を簡単に判別することができる。
【0095】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る空気入りタイヤ10を図1及び図2にしたがって説明する。
【0096】
図1に示すように、空気入りタイヤ10はビード部11に埋設されたビードコア12の周りにタイヤ内側から外側に折返して係止されるカーカス14と、カーカス14の本体部14Aと巻上部14Bとの間に配置されるビードフィラー15と、カーカス14のクラウン部のタイヤ径方向外側に位置するトレッドゴム16と、カーカス14のサイド部に位置するサイドウォールゴム18と、カーカス14のクラウン部のタイヤ径方向外側でトレッドゴム16の内側に配置されたベルト20を備えている。
【0097】
本実施形態のカーカス14は、ラジアル方向に延びる繊維コードを含む1枚のカーカスプライから構成されている。
【0098】
本実施形態のベルト20はタイヤ径方向内側に配置される内側ベルトプライ20Aと、この内側ベルトプライ20Aのタイヤ径方向外側に配置される外側ベルトプライ20Bとの2枚のベルトプライから構成されている。
【0099】
内側ベルトプライ20A及び外側ベルトプライ20Bは、スチール等のコードを複数本平行に並べてゴム被覆したものであり、各プライのコードはタイヤ赤道面CLに対し傾斜しており、内側ベルトプライ20Aのコードと外側ベルトプライ20Bのコードとは、タイヤ赤道面CLを挟んで互いに逆方向に傾斜している。
【0100】
また、ベルト20のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層22が設けられている。
【0101】
ベルト補強層22は、例えば、芳香族ポリアミド等のコードを複数本平行に並べてゴム被覆したものであり、コードは、タイヤ赤道面CLに対して平行、または傾斜している。
【0102】
図2に示すように、タイヤ回転軸に沿った断面で見たときのトレッド踏面からベルト補強層22のトレッド側表面までのトレッドゲージをAとしたとき、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向一方側とタイヤ幅方向他方側とでは、トレッドゲージAが異なっている。
【0103】
トレッド部において、タイヤ赤道面CLを中心としてタイヤ最大幅SWの17%〜28%の中央領域CAでは、トレッドゲージAは、タイヤ赤道面CLの図面右側が図面左側よりもトレッドゲージAが0.2〜1.0mm厚く設定されている。
【0104】
本実施形態では、中央領域CAのタイヤ赤道面CLの図面右側において、ベルト補強層22とトレッドゴム16との間にゴムシート24(図1では図示省略)を配置することでトレッドゲージAを厚くしている。
【0105】
また、中央領域CAよりもタイヤ幅方向外側の外側領域SAでは、トレッドゲージAは、タイヤ赤道面CLの図面左側の外側領域SAが図面右側の外側領域SAよりも0.2〜1.0mm厚く設定されている。
【0106】
本実施形態では、外側領域SAのタイヤ赤道面CLの図面左側において、ベルト補強層22とトレッドゴム16との間にゴムシート26を配置することでトレッドゲージAを厚くしている。
【0107】
なお、外側領域SAのタイヤ幅方向外側端部は、接地端である。
【0108】
ここで、接地端とは、空気入りタイヤ10をJATMA YEAR BOOK(日本自動車タイヤ協会規格 2002年度版)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、最大負荷能力を負荷したときのものである。使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
(作用)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用を説明する。
【0109】
比較的かかる荷重(負荷)が小さい場合においては、中央領域CAの接地が高く、発生する横力は中央領域CAの構造に影響を受ける。
【0110】
本実施形態の空気入りタイヤ10では、中央領域CAはタイヤ赤道面CLの図面左側のトレッドゲージAが図面右側よりも厚く設定されているので、ベルト20のタイヤ軸方向の収縮量はタイヤ赤道面CLの図面右側で大となる。
【0111】
したがって、比較的小さな荷重が作用している場合、空気入りタイヤ10は図面右側へ向う横力SFRを発生する。
【0112】
次に、空気入りタイヤ10に作用する荷重が増加して大きくなると、左右の外側領域SAの接地圧が上昇する。
【0113】
左右の外側領域SAを比較すると、ベルト20は、左側の方が右側に比較してタイヤ軸方向の収縮量が大きくなるので、荷重が大きい場合には、空気入りタイヤ10は図面左側へ向う横力SFLを発生する。
【0114】
次に、この空気入りタイヤ10を車両に装着する方法を説明する。
【0115】
例えば、前輪にかかる荷重が後輪にかかる荷重よりも大きく、車両の特性として車両内側から外側へ向けて横力を発生し、かつ前輪で発生する横力が後輪で発生する横力よりも大きく設定された車両(例えば、図3に示す車両A)に装着する場合、前輪には、荷重が大きい場合に発生する空気入りタイヤ10の横力が車両外側から内側へ向うように装着し、後輪には、荷重が小さい場合に発生する空気入りタイヤ10の横力が車両内側から外側へ向くように装着すると(図3(A)参照)、車両の操縦安定性を確保することができる。
【0116】
一方、前輪にかかる荷重が後輪にかかる荷重よりも大きく、車両の特性として車両内側から外側へ向けて横力を発生し、かつ前輪で発生する横力が後輪で発生する横力よりも小さく設定された車両(例えば、図3に示す車両B)に装着する場合、前輪には、荷重が大きい場合に発生する空気入りタイヤ10の横力が車両内側から外側へ向うように装着し、後輪には、荷重が小さい場合に発生する空気入りタイヤ10の横力が車両外側から内側へ向くように装着すると(図3(B)参照)、車両の操縦安定性を確保することができる。
【0117】
なお、外観からは空気入りタイヤ10の内部構造は分からないので、例えば、図面右側のサイド部等に、負荷回転時に発生する横力の状態を示す例えば凸状(または凹状でも良い)の目印28を付与することが好ましい。
【0118】
本実施形態の目印28は、荷重が小さい場合にタイヤ赤道面CL側から目印28の付与されている側へ向う横力が発生し、荷重が大きい場合に目印28の付与されている側から付与されていない側へ向う横力が発生することを意味している。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る空気入りタイヤ50を図3にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0119】
図3に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ50では、ベルト20の構造が第1の実施形態とは異なり、外側ベルトプライ20Bが左右に分離している。
【0120】
本実施形態では、タイヤ赤道面CLの図面左側においてはベルト20の幅BWの25%〜40%の範囲内に、タイヤ赤道面CLの図面右側においてはベルト20の幅BWの40%〜50%の範囲内に外側ベルトプライ20Bが配置されている。
【0121】
次に、本実施形態の空気入りタイヤ50の作用を説明する。
【0122】
ベルト20において、内側ベルトプライ20Aと外側ベルトプライ20Bとが重なっている部位と、内側ベルトプライ20Aのみの部位とを比較すると、接地時には、内側ベルトプライ20Aのみの部位は、内側ベルトプライ20Aと外側ベルトプライ20Bとが重なっている部位よりもタイヤ周方向に伸ばされ、タイヤ軸方向の収縮が大となる。
【0123】
比較的荷重が小さい場合では、ベルト20のタイヤ軸方向の収縮は、タイヤ赤道面CLの図面右側が左側よりも大きくなるので、空気入りタイヤ50には図面右側へ向う横力SFRが発生する。
【0124】
一方、かかる荷重が増加して大きくなった場合、ベルト20のショルダー付近を見ると、ベルト20のタイヤ軸方向の収縮は、タイヤ赤道面CLの左側が右側よりも大きくなるので、空気入りタイヤ50には図面左側へ向う横力SFLが発生する。
【0125】
したがって、本実施形態の空気入りタイヤ50においても、第1の実施形態の空気入りタイヤ10と同様に、かかる荷重の大きさによって発生する横力の向きを変更することができる。
【0126】
なお、この空気入りタイヤ50を車両に装着する方法は、第1の実施形態と同様である。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る空気入りタイヤ52を図4にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0127】
図4に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ52では、タイヤ赤道面CLの図面左側でタイヤ赤道面CLからショルダー側へベルト20の幅BWの25%〜40%の第1の範囲54内と、タイヤ赤道面CLを境にして図面右側でかつタイヤ赤道面CLからショルダー側へベルト20の幅BWの40%〜50%の第2の範囲56内での、外側ベルトプライ20Bのコード20Bcのタイヤ赤道面CLに対する角度が、第1の範囲54、及び第2の範囲56以外の範囲におけるコード20Bcのタイヤ赤道面CLに対する角度よりも小さく設定されている。
【0128】
なお、内側ベルトプライ20Aのコード20Acは、タイヤ赤道面CLに対して一定角度で傾斜している。
【0129】
次に、本実施形態の空気入りタイヤ52の作用を説明する。
【0130】
ベルト20において、外側ベルトプライ20Bのコード20Bcのタイヤ赤道面CLに対する角度が小さい部位と大きい部位とを比較すると、接地時には、コード20Bcの角度が大きい部位は、コード20Bcの角度が小さい部位よりもタイヤ周方向に伸ばされる。
【0131】
即ち、ベルト20は、コード20Bcの角度の大きい部位は、コード20Bcの角度が小さい部位よりもタイヤ軸方向の収縮が大きくなる。
【0132】
したがって、比較的荷重が小さい場合では、ベルト20のタイヤ軸方向の収縮は、タイヤ赤道面CLの図面右側が左側よりも大きくなるので、空気入りタイヤ52には図面右側へ向う横力SFRが発生する。
【0133】
一方、かかる荷重が増加して大きくなった場合、ベルト20のショルダー付近を見ると、ベルト20のタイヤ軸方向の収縮は、タイヤ赤道面CLの左側が右側よりも大きくなるので、空気入りタイヤ52には図面左側へ向う横力SFLが発生する。
【0134】
したがって、本実施形態の空気入りタイヤ52においても、第1の実施形態の空気入りタイヤ10と同様に、かかる荷重の大きさによって発生する横力の向きを変更することができる。
【0135】
なお、この空気入りタイヤ52を車両に装着する方法は、第1の実施形態と同様である。
【0136】
上記第1〜3の実施形態では、特性として車両内側から車両外側へ向う横力を発生する車両に空気入りタイヤを装着する例を示したが、特性として車両外側から車両内側へ向う横力を発生する車両や、また、前輪にかかる荷重よりも後輪にかかる荷重が大きい車両等に空気入りタイヤ10、50、52を装着することもできる。
【0137】
何れの場合においても、前輪と後輪の横力のレベル差を小さくする向きに空気入りタイヤを装着することにより、高い操縦安定性を確保することができる。
(試験例)
本発明の効果を確かめるために、第1の実施形態で説明した構造を有した実施例のタイヤを試作し、操縦安定性を従来構造のタイヤと比較した。
【0138】
試験は前輪荷重及び後輪荷重の異なる2種類の車両に装着し、テストコースで車両を走行させた。評価は、テストドライバーによる官能評価である。
【0139】
実施例のタイヤ:トレッドとベルトとの間に0.3mmの厚さのゴムシートを用いた。
【0140】
従来構造のタイヤ:トレッドゲージが一定である以外は実施例のタイヤと同一構造である。
【0141】
操縦安定性の評価は、以下の表1に記載した通りである。
【0142】
【表1】
◎:やや良い
○:普通
×:やや悪い
試験の結果、本発明の適用された実施例のタイヤは、車種によらず操縦安定性を確保可能であることが分かる。
【0143】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の空気入りタイヤによれば、車両の種類にかかわらず、操縦安定性を確保することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る空気入りタイヤの断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの拡大断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る空気入りタイヤの断面図である。
【図4】第3の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドを除いたベルト部分の平面図である。
【図5】(A)は車両Aに従来構造のタイヤを装着した時に発生する横力を説明する説明図であり、(B)は車両Bに従来構造のタイヤを装着した時に発生する横力を説明する説明図である。
【図6】(A)は車両Aに本発明のタイヤを装着した時に発生する横力を説明する説明図であり、(B)は車両Bに本発明のタイヤを装着した時に発生する横力を説明する説明図である。
【図7】従来のタイヤにおける、荷重と発生する横力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
16 トレッドゴム
20 ベルト
20A 内側ベルトプライ
20B 外側ベルトプライ
28 目印
50 空気入りタイヤ
52 空気入りタイヤ
Claims (8)
- タイヤ周方向に対して傾斜するコードを含む少なくとも2枚のベルトプライから構成され、隣接するベルトプライ同士では互いのコード方向がタイヤ赤道面に対して反対方向に傾斜するベルト層を備えた空気入りタイヤであって、
タイヤ回転軸に沿った断面で見たときのトレッド踏面から前記ベルト層のトレッド側表面までのトレッドゲージをAとしたとき、
タイヤ赤道面のタイヤ幅方向一方の片側とタイヤ幅方向他方の片側とでは、トレッドゲージAが異なり、
トレッド部をタイヤ赤道面付近である中央領域と、前記中央領域のタイヤ幅方向外側の外側領域とに分けたときに、前記中央領域内では、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向一方側がタイヤ幅方向他方側よりもトレッドゲージAが厚く、前記外側領域内では、タイヤ幅方向他方側の外側領域がタイヤ幅方向一方側の外側領域よりもトレッドゲージAが厚い、ことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記中央領域は、タイヤ赤道面を中心としてタイヤ最大幅の17%〜28%の領域である、ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記中央領域内では、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向一方側がタイヤ幅方向他方側よりもトレッドゲージAが0.2〜1.0mm厚く、前記外側領域内では、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向他方側がタイヤ幅方向一方側よりもトレッドゲージAが0.2〜1.0mm厚い、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ周方向に対して傾斜するコードを含む少なくとも2枚のベルトプライから構成され、隣接するベルトプライ同士では互いのコード方向がタイヤ赤道面に対して反対方向に傾斜するベルト層を備えた空気入りタイヤであって、
内側ベルトプライのタイヤ径方向外側には、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側に前記内側ベルトプライとはコード方向が交差する一方側外側ベルトプライが配置され、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側に前記内側ベルトプライとはコード方向が交差する他方側外側ベルトプライが配置されており、
前記一方側外側ベルトプライはベルト端付近に配置され、前記他方側外側ベルトプライは、前記一方側外側ベルトプライに比較してベルト端よりもタイヤ赤道面側へずれた位置に配置されている、ことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記一方側外側ベルトプライは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の25%〜40%の範囲内に配置され、
前記他方側外側ベルトプライは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の40%〜50%の範囲内に配置されている、ことを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。 - タイヤ周方向に対して傾斜するコードを含む少なくとも2枚のベルトプライから構成され、隣接するベルトプライ同士では互いのコード方向がタイヤ赤道面に対して反対方向に傾斜するベルト層を備えた空気入りタイヤであって、
少なくとも1枚のベルトプライは、コードのタイヤ周方向に対する角度がタイヤ幅方向で部分的に異なり、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側のショルダー付近と、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面とショルダー部との中間部分における前記コードのタイヤ赤道面に対する角度が、それ以外の範囲における前記コードのタイヤ赤道面に対する角度よりも小さく設定されている、ことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記ショルダー付近とは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向一方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の25%〜40%の第1の範囲内であり、
前記中間部分とは、タイヤ赤道面を境にしてタイヤ幅方向他方側でかつタイヤ赤道面からショルダー側へ前記ベルト層の幅の40%〜50%の第2の範囲内である、ことを特徴とする請求項6に記載の空気入りタイヤ。 - 負荷回転時に発生する横力の状態を示す目印をタイヤ表面に付与した、ことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009046109A (ja) * | 2007-07-25 | 2009-03-05 | Yokohama Rubber Co Ltd:The | 空気入りタイヤ |
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-
2002
- 2002-12-26 JP JP2002376736A patent/JP2004203298A/ja active Pending
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