JP2004202958A - 積層フィルム - Google Patents
積層フィルム Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004202958A JP2004202958A JP2002376968A JP2002376968A JP2004202958A JP 2004202958 A JP2004202958 A JP 2004202958A JP 2002376968 A JP2002376968 A JP 2002376968A JP 2002376968 A JP2002376968 A JP 2002376968A JP 2004202958 A JP2004202958 A JP 2004202958A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- film
- laminated film
- conductive
- coating
- conductive layer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Laminated Bodies (AREA)
Abstract
【課題】低体積抵抗率であり、機械特性に優れる積層フィルムを提供する。
【解決手段】貫通孔を有する基材の両面に導電層を有し、体積抵抗率が1012Ω・cm以下である積層フィルムである。導電層がイオン伝導性成分、電子伝導性ポリマー、導電性金属酸化物等を含むことが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】貫通孔を有する基材の両面に導電層を有し、体積抵抗率が1012Ω・cm以下である積層フィルムである。導電層がイオン伝導性成分、電子伝導性ポリマー、導電性金属酸化物等を含むことが好ましい。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は積層フィルムに関し、更に詳しくは体積抵抗率が低く、機械特性に優れた低体積抵抗率積層フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二軸配向ポリエステルフィルムは、寸法安定性、機械的性質、耐熱性、透明性および電気的性質などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料あるいはグラフィックアーツ材料などの多くの用途の基材フィルムとして広く使用されている。
【0003】
しかしながら一方で、二軸配向ポリエステルフィルムは一般に静電気が発生し易く、製膜工程、加工工程、製品の使用時などに塵埃の付着などのトラブルを発生し易いという欠点を有している。このため、従来から、ポリエステルフィルム表面に種々の方法で帯電防止性を与えるための検討がなされてきた。
【0004】
従来、例えば、帯電防止剤をポリエステルフィルムに添加する方法(例えば特許文献1および特許文献2参照)、ポリエステルフィルムにスルホン酸塩基を有する化合物を塗布する方法(例えば特許文献3、特許文献4および特許文献5参照)、ポリエステルフィルム上にリン酸塩基を含有する塗布層を形成する方法(例えば特許文献6参照)、あるいはポリエステルフィルム上にイオン化された窒素原子を有する化合物を塗布する方法(例えば特許文献7参照)などが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−141525号公報
【0006】
【特許文献2】特開平6−145394号公報
【0007】
【特許文献3】特開平2−283733号公報
【0008】
【特許文献4】特開平4−28728号公報
【0009】
【特許文献5】特開平2−110141号公報
【0010】
【特許文献6】特開平7−81015号公報
【0011】
【特許文献7】特開平6−172562号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のポリエステルフィルムでは、帯電防止剤の一部が界面に集積しフィルムの反対面などに移行することによるトラブルの発生や、そのポリエステルフィルム上に絶縁層を設けた後に帯電防止機能が悪化するなどの問題があった。また、従来のポリエステルフィルムは用途によっては帯電防止機能が不十分であり更なる帯電防止能の改良が求められていた。
【0013】
更に、近年ではプリンタ用受容紙などの一部の分野において、表面抵抗だけではなく厚み方向の抵抗すなわち体積抵抗率が低いフィルムに対するニーズが高まっているが、十分に要求を満たす技術は確立されていない。
【0014】
このような課題を根本的に改良する方法としては、導電性成分をポリエステル樹脂に混練した原料を用いて製膜を行う方法が考えられる。例えば、導電性の金属粒子、導電性金属酸化物、導電性ポリマー、導電性有機物などを溶融混練した原料を用いることによりフィルムそのものの抵抗値を下げ、極めて優れた、安定性のある帯電防止機能及び低体積抵抗特性を付与することができるが、十分な帯電防止性・低体積抵抗特性を得るためには導電成分の添加量を多くする必要があり、様々な副作用が発生する。具体的には、導電性金属粒子、導電性金属酸化物粒子などの場合、多量添加によりフィルムの機械的特性、光学特性が悪化する(靱性低下、透明性低下など)。また、界面活性剤などの導電性有機物を添加する場合、多量添加によりブリードアウト量が多くなり前述したような移行などのトラブルの原因となる。
【0015】
本発明は、このような従来技術の欠点を改良し、機械特性に優れ、安定して極めて高いレベルの帯電防止性能を発揮することができる低体積抵抗率積層フィルムを提供することを目的とする。また、本発明のもう一つの目的は、表面抵抗だけでなく、厚み方向の抵抗すなわち体積抵抗率の低いフィルムを提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、次の構成を有する。すなわち、本発明の積層フィルムは、貫通孔を有する基材の両面に導電層を有し、体積抵抗率が1012Ω・cm以下である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳しく説明する。
【0018】
本発明の積層フィルムは、貫通孔を有する基材の両面に導電層が積層された基本構成を有しており、体積抵抗率が1012Ω・cm以下である。熱可塑性樹脂などを用いて貫通孔や導電成分を持たないフィルムを形成した場合、体積抵抗率は通常1015Ω・cm以上となるが、本発明のフィルムでは貫通孔の両側から導電層を積層することにより、導電層形成成分が貫通孔の中に入りこんだ図1あるいは図2のような構造となるため、体積抵抗率が効率的に低下するものと考えられる。
【0019】
尚、体積抵抗率が1012Ω・cmより大きい場合には、十分な帯電防止性を発現することができないため、またフィルム表面から裏面への電荷リークが十分に起こらず、通常の樹脂フィルムとの差別化が図れない。
【0020】
本発明の好ましい体積抵抗率の範囲は特に限定されるものでなく用途により異なる。例えば、電子写真プロセス用受容紙などの半導体領域の抵抗値が求められる場合には体積抵抗率は107〜1012Ω・cm程度が好ましく、電磁波シールド等を目的とする場合には102〜106Ω・cm程度が好ましく、導電フィルムを目的とする場合は102Ω・cm以下が好ましい。
【0021】
本発明では、貫通孔を有する基材が用いられる。貫通孔とは基材の表面と裏面が繋がっている穴をいうが、特に形状は限定されない。例えば、打ち抜き、レーザー照射などにより形成できる円柱状の穴であってもよいし、多孔質材料に見られるように多数の孔が繋がった穴であってもよい。基材に貫通孔を形成する方法としては特に限定されるものではないが、例えば、孔を有していない基材に機械的方法、光学的方法、熱的方法、あるいは化学的方法により穴を開けてもよいし、貫通パスを有する多孔質基材を用いてもよい。光学的方法としては、炭酸ガスレーザーやYAGレーザーなどのレーザー光を照射するドライエッチング法が挙げられる。また、化学的方法としては、例えば、離型フィルムの上に感光性樹脂層を形成後、貫通孔パターンを有するマスクを介して露光して、貫通孔部をウエットエッチングする方法が挙げられる。
【0022】
本発明において、基材の貫通孔の大きさは、本発明の体積抵抗率が達成できるものであれば特に限定されるものではないが、通常1μm〜1mm程度、好ましくは10〜500μm程度である。穴が小さすぎる場合、穴形成プロセスが困難になる他、体積抵抗率が低くなりにくいという問題が発生する。大き過ぎる場合、フィルムの機械的強度低下、導電層塗布性悪化などの問題が生じる他、穴が肉眼にて視認しやすくなり意匠性の低下をまねく
また、多孔質基材を用いることもでき、ポリマーの溶解度差を利用する方法、溶剤可溶の固体微粒子を混入して溶出させる方法、焼結により多孔膜とする方法、気泡入り高分子シートの圧潰による方法、機械的に樹脂フィルムを延伸する方法などの多孔化技術によって製造されたものを適用できる。
【0023】
不織布や不織布に多孔性材料を積層した部材などを用いることもできる。
【0024】
本発明における基材の材料としては、取り扱い性、加工性の観点から、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの成形性、可とう性に優れる熱可塑性樹脂が好ましい。中でも機械的特性、寸法安定性、耐熱性、透明性および電気絶縁性などに優れた性質を有するポリエステル樹脂が好ましい。
【0025】
ポリエステルとしては、特に限定しないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。またこれらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよいが、この場合は結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のものが好ましい。結晶化度が25%未満の場合には、寸法安定性や機械的強度が不十分となりやすい。
【0026】
また、ポリエステルフィルムは、内層と表層の2層以上の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルム、内層部に粗大粒子を有し、表層部に微細粒子を含有させた積層体フィルム、内層部が微細な気泡を含有した層であって表層部は実質的に気泡を含有しない複合体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部が異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。
【0027】
上述したポリエステルを使用する場合には、25℃のo−クロロフェノール中で測定したその極限粘度が0.4〜1.2dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。極限粘度が低すぎる場合はポリエステルの分子量が低くフィルムの機械的強度が弱くなるなどの理由により好ましくない。逆に高すぎる場合はフィルム製造の際押出性が悪化する。
【0028】
本発明におけるポリエステルフィルムは、二軸配向されたものが好ましい。二軸配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。熱可塑性フィルムが二軸配向していない場合には、積層フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなるので好ましくない。
【0029】
熱可塑性フィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜300μmである。
【0030】
また、本発明では、透明タイプのポリエステルフィルムの他に、白色ポリエステルフィルムも好適に用いることができる。この白色ポリエステルフィルムは、白色に着色されたポリエステルフィルムであれば特に限定されるものではなく、好ましくは白色度が85〜150%、より好ましくは90〜130%であり、光学濃度が好ましくは0.5〜5、より好ましくは1〜3のフィルムである。例えば、白色度の小さい基材フィルムを使用した場合、反対面の模様や着色が透過し表面の印刷層の美観が損なわれ易く、一方、光学濃度が小さい場合、十分な光線反射が得られず、肉眼で見た場合白さが減少する、反対面の影響を受けるなど好ましくない場合がある。
【0031】
このような光学濃度、白色度を得る方法は、特に限定されないが、通常は無機粒子あるいはポリエステルと非相溶の樹脂をポリエステルに添加することにより得ることができる。添加する量は特に限定されないが、無機粒子の場合、好ましくは3〜35重量%、より好ましくは5〜25重量%である。また、ポリエステルと非相溶性の樹脂を添加する場合は、好ましくは3〜35体積%、より好ましくは5〜25体積%である。無機粒子は、特に限定されないが、平均粒径は好ましくは0.1〜4μm、より好ましくは0.3〜1.5μmの無機粒子などをその代表的なものとして用いることができる。具体的に無機粒子としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、タルク、クレー等あるいはこれらの混合物を挙げることができる。これらの無機粒子は、他の無機化合物、例えば、リン酸カルシウム、酸化チタン、雲母、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウムまたはフッ化カルシウムなどと併用することができる。
【0032】
また、上述のポリエステルと非相溶の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2、6−ナフタレートと混合する場合についていえば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性オレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキシドなどを用いることができ、当然、上述した無機粒子と併用してもよい。
【0033】
本発明の積層フィルムにおいては、基材である貫通孔を有するフィルムの両面に導電層が積層される。
【0034】
導電層として積層される材料としては、積層によって十分にフィルムの体積抵抗率が低下するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、界面活性剤、イオン伝導性ポリマーなどのイオン伝導性導電成分、電子伝導性ポリマー、導電性金属酸化物、金属類などがある。
【0035】
イオン伝導性導電成分である界面活性剤、イオン伝導性ポリマーについては具体的には下記のようなものが挙げられる。
【0036】
界面活性剤としては、スルホン酸塩化合物、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩などの陰イオン界面活性剤、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤、カルボキシベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミノカルボン酸塩などの両性界面活性剤などがが挙げられる。中でもスルホン酸塩化合物本発明に好ましく適用され、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム、オクチルナフタレンスルホン酸リチウム、オキチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸カリウムブチルスルホン酸ナトリウム、ペンチルスルホン酸ナトリウム、ヘキシルスルホン酸ナトリウム、ヘプチルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、ノニルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ウンデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、トリデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、ペンタデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、ヘプタデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホンオ酸ナトリウム、デシルスルホン酸カリウム、ドデシルスルホン酸カリウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、などが例示できる。
【0037】
イオン伝導性ポリマーとしてはポリスチレンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などのポリスチレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸エステル塩やアルキルエーテルリン酸エステル塩に代表されるリン酸塩系低分子化合物をモノマとして共重合したリン酸塩系高分子化合物、イオン性官能基を有するポリアクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0038】
電子伝導性導電成分である電子伝導性ポリマーとしては具体的には下記のようなものが挙げられる。
【0039】
例えば、ポリアセチレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフィニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフラン誘導体、ポリアズレン誘導体などの公知の導電性ポリマーなどがある。しかし、ポリマーの合成、安定性、溶解性などを考慮すると、ポリフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体が好適に用いられる。ポリフェニレン誘導体としては、ポリアルキルフェニレン、ポリアシルフェニレンの他、側鎖にホルミル基、カルボキシル基を有するポリフェニレンなどが例示できる。また、ポリチオフェン誘導体としては、ポリアルキルチオフェン、ポリアルコキシチオフェンなどの他、側鎖にスルフォン酸基を有するポリチオフェンが例示されるが、帯電防止能の高さ・安定性に優れるアルコキシポリチオフェンを用いることがより好ましい。
【0040】
これらの電子伝導性ポリマーには、通常、補助成分としてドーパント成分が添加される。ドーパント成分としては、例えば、Br2、Cl2、I2などのハロゲン類、BF3、PF3、SbF5、AsF5などのルイス酸、H2SO4、HClO4、HCl、HF、CF3SO4などのプロトン酸、FeCl3、MoCl3、WCl3、SnCl4、MoF5などの遷移金属ハライドなどの低分子量ドーパントの他、ポリスチレンスルフォン酸誘導体のようなポリマータイプのドーパントが例示できる。
ドーパントの量としては、特に限定されるものではないが、通常、電子伝導性ポリマー100重量部に対して、10〜500重量部程度が用いられる。
【0041】
また、導電性金属酸化物としては ITO、ATOなどの錫化合物、導電性処理が表面に施された酸化チタン、シリカ、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化バナジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタルなどを例示できる。
【0042】
また、Al,Cr,Cd,Ti,Fe,Cu,In,Ni,Pd,Pt,Rh,Ag,Au,Ru,W,Sn,Zr,Irなどの金属類を蒸着あるいは塗布することによって形成される導電層も本発明に適用することができる。
【0043】
また、本発明の導電層には、バインダー成分、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂およびこれらの変性体などが配合されていてもよく、中でも各種被覆物との接着性などを付与できる点で、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびこれらの変性体から選ばれる少なくとも1種を好ましく用いることができる。これらのバインダー成分は、水、有機溶媒など任意の溶媒に溶解もしくは分散した状態で用いるのが好ましい。
【0044】
さらに、本発明にかかる導電層には、本発明の効果が損なわれない範囲内で、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、核剤などが配合されていてもよい。
【0045】
本発明の導電層に、粒子や架橋剤を添加することは任意であるが、これらの添加によって易滑性や耐ブロッキング性が向上するので、好適な態様である。
【0046】
本発明にかかる導電層に任意に添加される粒子としては、特に限定されないが、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどを用いることができる。その平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜3μm、最も好ましくは0.08〜2μmである。また、塗布層中の全樹脂に対する粒子の混合比は、特に限定されないが、固形分重量比で0.05〜8重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0047】
本発明の導電層に任意に添加される架橋剤としては、特に限定されないが、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系の樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン系化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。その添加量は、特に限定されないが、塗布層を形成する全樹脂に対し、0.5〜50重量部が好ましく、より好ましくは1〜30重量部である。
【0048】
また、本発明の導電層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.02〜5μm、より好ましくは0.03〜2μm、最も好ましくは0.05〜1.0μmである。特に塗布層の厚みが薄いときには、体積抵抗率が高くなり、帯電防止性が不良となる場合がある。また、経済的見地から導電層は上記上限値以下であることが好ましい。
【0049】
本発明における導電層の積層方法は特に限定されるものではないが、例えば、スパッタリング、蒸着、化学蒸着(CVD)、気相めっき、液相めっき、ウエットコーティングなどにより実施することができる。
【0050】
また、本発明は各種導電成分を含む樹脂を溶融してシート状にし貫通孔を有する基材にラミネートする押出ラミネート法などでも実施することができる。
【0051】
本発明積層フィルムの全光線透過率は、好ましくは60〜100%、より好ましくは70〜100%、更に好ましくは80〜100%である。また、ヘイズは好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%、更に好ましくは0〜5%である。全光線透過率、ヘイズが上記条件を満たす場合、非常に透明度の高いフィルムとなり、液晶ディスプレイ、PDPディスプレイなどのパネル部材、印刷物などの保護フィルムなど光透過性が求められる用途に好ましく適用することができる。
【0052】
このような高い全光線透過率、低いヘイズ値を達成する方法は特に限定されるものではないが、例えば、基材の透明性・表面平滑性を向上させるため基材に添加する無機粒子などの添加量を少なくする方法、基材全体の透過率を上げるために基材内部には粒子を添加せず基材最表面のみに粒子添加層を設ける方法、積層する導電層材料として透明性の高い材料を選択する方法などが挙げられ、これらの方法によって全光線透過率を60〜100%、ヘイズを0〜20%の範囲でコントロールすることができる。
【0053】
次に、本発明の積層フィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する)を基材フィルムとした例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
両面にコロナ処理されたPETフィルムをレーザー加工することにより、貫通孔を有するPETフィルムを製造する。次に、このフィルムの片面に導電性塗剤を塗布し、70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導いて乾燥する。引き続いて得られたフィルムの非コート面に導電性塗剤を塗布し、70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導いて乾燥することによって本発明の低体積抵抗率積層フィルムが得られる。この場合に用いられる塗液は環境汚染や防爆性の点で水系塗液が好ましい。
【0055】
導電性組成物からなる塗液のウエットコーティング方法としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。各々の方式には特徴があり、積層フィルムの要求特性、使用用途などにより、塗布方法を適宜選択するとよい。各種積層プロセスの中でウエットコーティング法は均一な導電膜を簡便に設けられる点で好ましい方法である。
【0056】
このようにして得られた積層フィルムは、体積抵抗率が低く、機械特性に優れ、更に、コストパフォーマンスに優れているため、広範な用途に使用できる。
【0057】
本発明の積層フィルムは、帯電防止性、特定の体積抵抗率などが必要とされる用途であれば特に限定されるものではないが、例えば、タッチパネル、フィルム、ガラスや金属板に貼合わせるディスプレイ用(例えば、反射防止フィルム、電子ペーパーなど)などのベースフィルム、電子白板やホワイトボードなどの表示用、ラベル、シール、OHP用、カード、宅配便伝票、インクジェットプリンタ用受像紙、電子写真式プリンタ用受容紙、オフセット印刷用受像紙などの用途のベースフィルム、更に種々の表面保護材、例えば、電卓や計器のカバーなどのベースフィルムとして好適に用いることができる。
【0058】
<特性の測定方法および効果の評価方法>
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)体積抵抗率
試料フィルムを23℃、相対湿度65%で24時間放置した後、デジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用いて印加電圧500Vで測定した。
(2)全光線透過率、ヘイズ測定
全自動直読ヘイズコンピューターHGM−DP(スガ試験機(株)製)を用いてフィルムの厚み方向の全光線透過率及びヘイズを5回測定しその平均値を用いた。
(3)塗布層の厚み
日立製作所(株)製透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、塗布層を設けた積層フィルムの断面を観察した写真から求めた。厚みは測定視野内の30個の平均値とした。
(4)帯電防止性1、表面比抵抗
表面比抵抗は、サンプルを常態(23℃、相対湿度65%)で24時間放置した後、その環境下においてデジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用いて印加電圧100Vで測定した。本発明では表面比抵抗が5×1011Ω/□以下である時、帯電防止性良好とした。
(5)帯電防止性2(積層時の帯電防止性)
測定サンプル表面に下記条件にてポリビニルアルコール塗膜(厚み10μm)を積層し、得られたサンプルのポリビニルアルコール積層面の表面表面比抵抗を上述(4)と同様の方法にて測定した。この時の表面比抵抗が5×1011Ω/□以下である時、積層時の帯電防止性良好とした。
塗膜積層条件:ポリビニルアルコール(ゴーセノールGH-23;日本合成化学社製)10重量%水溶液をメタバーコート法によりコートして120℃・2分間加熱することにより乾燥塗膜厚み10μmのサンプルを得た。
(6)屈曲性
積層フィルムの機械特性をフィルムを折り曲げた時の破壊状態で判断した。サンプルを塗膜屈曲試験機MODEL HD-5110(株式会社上島製作所製)を用いて、10mm心棒に折り曲げ角度180°で巻き付けた時のフィルムの破壊状態を確認した。フィルムにヒビ、割れが無い場合を○、フィルムにヒビが入った場合、割れた場合を×とした。
【0059】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。
<塗剤の調製>
下記の組成の塗剤を調製した。
(塗剤1)
架橋性官能基を有するアクリル樹脂エマルジョンA 2重量部
Mw=7万のポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 1重量部
水 97重量部
(上記アクリル樹脂エマルジョンA)の組成
メチルメタアクリレ−ト(以下、MMAと略称する) 60重量部
エチルアクリレ−ト(以下、EAと略称する) 34重量部
アクリル酸(以下、AAと略称する) 2重量部
N−メチロ−ルアクリルアミド(以下、N−MAMと略称する) 4重量部
(塗剤2)
アクリル樹脂エマルジョンA 2重量部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩 0.1重量部
水 97重量部
(塗剤3)
ポリチオフェン水系塗剤(DENATRON5002RZナカ゛セケムテック(株)社製) 50重量部
水 50重量部
(塗剤4)
10重量%酸化錫 水溶液 90重量部
アクリル樹脂エマルジョンA 10重量部
(塗剤5)
アクリル樹脂エマルジョンA 2重量部
水 98重量部
。
【0060】
(実施例1)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%および平均粒径1.5μmの同じくコロイダルシリカを0.005重量%含有するPET原料より製膜された188μmの厚みのPETフィルムの両面に空気雰囲気中でコロナ放電処理を施した後、機械的方法によって直径0.3mmの貫通孔を形成した(孔密度:1個/cm2)。このフィルムの片面に塗剤1をグラビアコ−ト方式で乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布し120℃で乾燥した。引き続き反対面に塗剤1をグラビアコ−ト方式で乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布し120℃で乾燥することによって、導電層が両面に設けられたPETフィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性、帯電防止性、積層時の帯電防止性に極めて優れ、体積抵抗率が低いフィルムであることが確認された。
【0061】
(実施例2)
塗剤2を用いた以外は実施例1とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性、帯電防止性、積層時の帯電防止性に極めて優れ、体積抵抗率が低いフィルムであることが確認された。
【0062】
(実施例3)
塗剤3を用いた以外は実施例1とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性、帯電防止性、積層時の帯電防止性に極めて優れ、体積抵抗率が低いフィルムであることが確認された。
【0063】
(実施例4)
塗剤4を用いた以外は実施例1とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性、帯電防止性、積層時の帯電防止性に極めて優れ、体積抵抗率が低いフィルムであることが確認された。
【0064】
(実施例5)
PETフィルムにレーザーにて0.07mmの貫通孔(孔密度:4個/cm2)を形成した以外は実施例1とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性、帯電防止性、積層時の帯電防止性に極めて優れ、体積抵抗率が低いフィルムであることが確認された。
【0065】
(比較例1)
塗剤5を用いた以外は実施例1とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性は良好だが、帯電防止性が不良であり、体積抵抗率が高いフィルムであることが確認された。
【0066】
(比較例2)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%および平均粒径1.5μmの同じくコロイダルシリカを0.005重量%含有するPET原料より製膜された188μmの厚みのPETフィルムの両面に空気雰囲気中でコロナ放電処理を施した。このフィルムの片面に塗剤1をグラビアコ−ト方式で乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布し120℃で乾燥した。引き続き反対面に塗剤1をグラビアコ−ト方式で乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布し120℃で乾燥することによって、導電層が両面に設けられたPETフィルムを得た。
【0067】
表1に示すように、この積層フィルムは機械特性は良好だが、体積抵抗率が高いフィルムであることが確認された。また、帯電防止性は良好であったがポリビニルアルコール層の積層により帯電防止性が悪化した。
【0068】
(比較例3)
塗剤2を用いた以外は比較例2とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性は良好だが、体積抵抗率が高いフィルムであることが確認された。また、帯電防止性は良好であったがポリビニルアルコール層の積層により帯電防止性が悪化した。
【0069】
(比較例4)
塗剤3を用いた以外は比較例2とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性は良好だが、体積抵抗率が高いフィルムであることが確認された。また、帯電防止性は良好であったがポリビニルアルコール層の積層により帯電防止性が悪化した。
【0070】
(比較例5)
塗剤4を用いた以外は比較例2とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性は良好だが、体積抵抗率が高いフィルムであることが確認された。また、帯電防止性は良好であったがポリビニルアルコール層の積層により帯電防止性が悪化した。
【0071】
(比較例6)
平均粒径0.4μmの導電層コート酸化チタンを20重量%および平均粒径0.5μmのコロイダルシリカを0.02重量%含むPET原料を用いて通常の2軸延伸法によって188μmの厚みのPETフィルムを得た。表1に示すように、このフィルムは帯電防止性は良好であり、体積抵抗率も低いが、屈曲性に乏しいフィルムであることが確認された。
【0072】
【表1】
【0073】
【発明の効果】
本発明によって、機械特性に優れ、安定して極めて高いレベルの帯電防止性能を発揮することができる低体積抵抗率積層フィルムを提供される。また、本発明によって、表面抵抗だけでなく、厚み方向の抵抗すなわち体積抵抗率の低いフィルムを提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】円柱状の孔を有する本発明の一実施形態を示す断面図。
【図2】本発明の他の実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
1 導電層
2 基材
【発明の属する技術分野】
本発明は積層フィルムに関し、更に詳しくは体積抵抗率が低く、機械特性に優れた低体積抵抗率積層フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二軸配向ポリエステルフィルムは、寸法安定性、機械的性質、耐熱性、透明性および電気的性質などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、各種写真材料あるいはグラフィックアーツ材料などの多くの用途の基材フィルムとして広く使用されている。
【0003】
しかしながら一方で、二軸配向ポリエステルフィルムは一般に静電気が発生し易く、製膜工程、加工工程、製品の使用時などに塵埃の付着などのトラブルを発生し易いという欠点を有している。このため、従来から、ポリエステルフィルム表面に種々の方法で帯電防止性を与えるための検討がなされてきた。
【0004】
従来、例えば、帯電防止剤をポリエステルフィルムに添加する方法(例えば特許文献1および特許文献2参照)、ポリエステルフィルムにスルホン酸塩基を有する化合物を塗布する方法(例えば特許文献3、特許文献4および特許文献5参照)、ポリエステルフィルム上にリン酸塩基を含有する塗布層を形成する方法(例えば特許文献6参照)、あるいはポリエステルフィルム上にイオン化された窒素原子を有する化合物を塗布する方法(例えば特許文献7参照)などが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−141525号公報
【0006】
【特許文献2】特開平6−145394号公報
【0007】
【特許文献3】特開平2−283733号公報
【0008】
【特許文献4】特開平4−28728号公報
【0009】
【特許文献5】特開平2−110141号公報
【0010】
【特許文献6】特開平7−81015号公報
【0011】
【特許文献7】特開平6−172562号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のポリエステルフィルムでは、帯電防止剤の一部が界面に集積しフィルムの反対面などに移行することによるトラブルの発生や、そのポリエステルフィルム上に絶縁層を設けた後に帯電防止機能が悪化するなどの問題があった。また、従来のポリエステルフィルムは用途によっては帯電防止機能が不十分であり更なる帯電防止能の改良が求められていた。
【0013】
更に、近年ではプリンタ用受容紙などの一部の分野において、表面抵抗だけではなく厚み方向の抵抗すなわち体積抵抗率が低いフィルムに対するニーズが高まっているが、十分に要求を満たす技術は確立されていない。
【0014】
このような課題を根本的に改良する方法としては、導電性成分をポリエステル樹脂に混練した原料を用いて製膜を行う方法が考えられる。例えば、導電性の金属粒子、導電性金属酸化物、導電性ポリマー、導電性有機物などを溶融混練した原料を用いることによりフィルムそのものの抵抗値を下げ、極めて優れた、安定性のある帯電防止機能及び低体積抵抗特性を付与することができるが、十分な帯電防止性・低体積抵抗特性を得るためには導電成分の添加量を多くする必要があり、様々な副作用が発生する。具体的には、導電性金属粒子、導電性金属酸化物粒子などの場合、多量添加によりフィルムの機械的特性、光学特性が悪化する(靱性低下、透明性低下など)。また、界面活性剤などの導電性有機物を添加する場合、多量添加によりブリードアウト量が多くなり前述したような移行などのトラブルの原因となる。
【0015】
本発明は、このような従来技術の欠点を改良し、機械特性に優れ、安定して極めて高いレベルの帯電防止性能を発揮することができる低体積抵抗率積層フィルムを提供することを目的とする。また、本発明のもう一つの目的は、表面抵抗だけでなく、厚み方向の抵抗すなわち体積抵抗率の低いフィルムを提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、次の構成を有する。すなわち、本発明の積層フィルムは、貫通孔を有する基材の両面に導電層を有し、体積抵抗率が1012Ω・cm以下である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳しく説明する。
【0018】
本発明の積層フィルムは、貫通孔を有する基材の両面に導電層が積層された基本構成を有しており、体積抵抗率が1012Ω・cm以下である。熱可塑性樹脂などを用いて貫通孔や導電成分を持たないフィルムを形成した場合、体積抵抗率は通常1015Ω・cm以上となるが、本発明のフィルムでは貫通孔の両側から導電層を積層することにより、導電層形成成分が貫通孔の中に入りこんだ図1あるいは図2のような構造となるため、体積抵抗率が効率的に低下するものと考えられる。
【0019】
尚、体積抵抗率が1012Ω・cmより大きい場合には、十分な帯電防止性を発現することができないため、またフィルム表面から裏面への電荷リークが十分に起こらず、通常の樹脂フィルムとの差別化が図れない。
【0020】
本発明の好ましい体積抵抗率の範囲は特に限定されるものでなく用途により異なる。例えば、電子写真プロセス用受容紙などの半導体領域の抵抗値が求められる場合には体積抵抗率は107〜1012Ω・cm程度が好ましく、電磁波シールド等を目的とする場合には102〜106Ω・cm程度が好ましく、導電フィルムを目的とする場合は102Ω・cm以下が好ましい。
【0021】
本発明では、貫通孔を有する基材が用いられる。貫通孔とは基材の表面と裏面が繋がっている穴をいうが、特に形状は限定されない。例えば、打ち抜き、レーザー照射などにより形成できる円柱状の穴であってもよいし、多孔質材料に見られるように多数の孔が繋がった穴であってもよい。基材に貫通孔を形成する方法としては特に限定されるものではないが、例えば、孔を有していない基材に機械的方法、光学的方法、熱的方法、あるいは化学的方法により穴を開けてもよいし、貫通パスを有する多孔質基材を用いてもよい。光学的方法としては、炭酸ガスレーザーやYAGレーザーなどのレーザー光を照射するドライエッチング法が挙げられる。また、化学的方法としては、例えば、離型フィルムの上に感光性樹脂層を形成後、貫通孔パターンを有するマスクを介して露光して、貫通孔部をウエットエッチングする方法が挙げられる。
【0022】
本発明において、基材の貫通孔の大きさは、本発明の体積抵抗率が達成できるものであれば特に限定されるものではないが、通常1μm〜1mm程度、好ましくは10〜500μm程度である。穴が小さすぎる場合、穴形成プロセスが困難になる他、体積抵抗率が低くなりにくいという問題が発生する。大き過ぎる場合、フィルムの機械的強度低下、導電層塗布性悪化などの問題が生じる他、穴が肉眼にて視認しやすくなり意匠性の低下をまねく
また、多孔質基材を用いることもでき、ポリマーの溶解度差を利用する方法、溶剤可溶の固体微粒子を混入して溶出させる方法、焼結により多孔膜とする方法、気泡入り高分子シートの圧潰による方法、機械的に樹脂フィルムを延伸する方法などの多孔化技術によって製造されたものを適用できる。
【0023】
不織布や不織布に多孔性材料を積層した部材などを用いることもできる。
【0024】
本発明における基材の材料としては、取り扱い性、加工性の観点から、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの成形性、可とう性に優れる熱可塑性樹脂が好ましい。中でも機械的特性、寸法安定性、耐熱性、透明性および電気絶縁性などに優れた性質を有するポリエステル樹脂が好ましい。
【0025】
ポリエステルとしては、特に限定しないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。またこれらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよいが、この場合は結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のものが好ましい。結晶化度が25%未満の場合には、寸法安定性や機械的強度が不十分となりやすい。
【0026】
また、ポリエステルフィルムは、内層と表層の2層以上の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルム、内層部に粗大粒子を有し、表層部に微細粒子を含有させた積層体フィルム、内層部が微細な気泡を含有した層であって表層部は実質的に気泡を含有しない複合体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部が異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。
【0027】
上述したポリエステルを使用する場合には、25℃のo−クロロフェノール中で測定したその極限粘度が0.4〜1.2dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。極限粘度が低すぎる場合はポリエステルの分子量が低くフィルムの機械的強度が弱くなるなどの理由により好ましくない。逆に高すぎる場合はフィルム製造の際押出性が悪化する。
【0028】
本発明におけるポリエステルフィルムは、二軸配向されたものが好ましい。二軸配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。熱可塑性フィルムが二軸配向していない場合には、積層フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなるので好ましくない。
【0029】
熱可塑性フィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜300μmである。
【0030】
また、本発明では、透明タイプのポリエステルフィルムの他に、白色ポリエステルフィルムも好適に用いることができる。この白色ポリエステルフィルムは、白色に着色されたポリエステルフィルムであれば特に限定されるものではなく、好ましくは白色度が85〜150%、より好ましくは90〜130%であり、光学濃度が好ましくは0.5〜5、より好ましくは1〜3のフィルムである。例えば、白色度の小さい基材フィルムを使用した場合、反対面の模様や着色が透過し表面の印刷層の美観が損なわれ易く、一方、光学濃度が小さい場合、十分な光線反射が得られず、肉眼で見た場合白さが減少する、反対面の影響を受けるなど好ましくない場合がある。
【0031】
このような光学濃度、白色度を得る方法は、特に限定されないが、通常は無機粒子あるいはポリエステルと非相溶の樹脂をポリエステルに添加することにより得ることができる。添加する量は特に限定されないが、無機粒子の場合、好ましくは3〜35重量%、より好ましくは5〜25重量%である。また、ポリエステルと非相溶性の樹脂を添加する場合は、好ましくは3〜35体積%、より好ましくは5〜25体積%である。無機粒子は、特に限定されないが、平均粒径は好ましくは0.1〜4μm、より好ましくは0.3〜1.5μmの無機粒子などをその代表的なものとして用いることができる。具体的に無機粒子としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、タルク、クレー等あるいはこれらの混合物を挙げることができる。これらの無機粒子は、他の無機化合物、例えば、リン酸カルシウム、酸化チタン、雲母、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウムまたはフッ化カルシウムなどと併用することができる。
【0032】
また、上述のポリエステルと非相溶の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2、6−ナフタレートと混合する場合についていえば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性オレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキシドなどを用いることができ、当然、上述した無機粒子と併用してもよい。
【0033】
本発明の積層フィルムにおいては、基材である貫通孔を有するフィルムの両面に導電層が積層される。
【0034】
導電層として積層される材料としては、積層によって十分にフィルムの体積抵抗率が低下するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、界面活性剤、イオン伝導性ポリマーなどのイオン伝導性導電成分、電子伝導性ポリマー、導電性金属酸化物、金属類などがある。
【0035】
イオン伝導性導電成分である界面活性剤、イオン伝導性ポリマーについては具体的には下記のようなものが挙げられる。
【0036】
界面活性剤としては、スルホン酸塩化合物、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩などの陰イオン界面活性剤、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤、カルボキシベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミノカルボン酸塩などの両性界面活性剤などがが挙げられる。中でもスルホン酸塩化合物本発明に好ましく適用され、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム、オクチルナフタレンスルホン酸リチウム、オキチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸カリウムブチルスルホン酸ナトリウム、ペンチルスルホン酸ナトリウム、ヘキシルスルホン酸ナトリウム、ヘプチルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、ノニルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ウンデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、トリデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、ペンタデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、ヘプタデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホンオ酸ナトリウム、デシルスルホン酸カリウム、ドデシルスルホン酸カリウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、などが例示できる。
【0037】
イオン伝導性ポリマーとしてはポリスチレンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などのポリスチレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸エステル塩やアルキルエーテルリン酸エステル塩に代表されるリン酸塩系低分子化合物をモノマとして共重合したリン酸塩系高分子化合物、イオン性官能基を有するポリアクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0038】
電子伝導性導電成分である電子伝導性ポリマーとしては具体的には下記のようなものが挙げられる。
【0039】
例えば、ポリアセチレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフィニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフラン誘導体、ポリアズレン誘導体などの公知の導電性ポリマーなどがある。しかし、ポリマーの合成、安定性、溶解性などを考慮すると、ポリフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体が好適に用いられる。ポリフェニレン誘導体としては、ポリアルキルフェニレン、ポリアシルフェニレンの他、側鎖にホルミル基、カルボキシル基を有するポリフェニレンなどが例示できる。また、ポリチオフェン誘導体としては、ポリアルキルチオフェン、ポリアルコキシチオフェンなどの他、側鎖にスルフォン酸基を有するポリチオフェンが例示されるが、帯電防止能の高さ・安定性に優れるアルコキシポリチオフェンを用いることがより好ましい。
【0040】
これらの電子伝導性ポリマーには、通常、補助成分としてドーパント成分が添加される。ドーパント成分としては、例えば、Br2、Cl2、I2などのハロゲン類、BF3、PF3、SbF5、AsF5などのルイス酸、H2SO4、HClO4、HCl、HF、CF3SO4などのプロトン酸、FeCl3、MoCl3、WCl3、SnCl4、MoF5などの遷移金属ハライドなどの低分子量ドーパントの他、ポリスチレンスルフォン酸誘導体のようなポリマータイプのドーパントが例示できる。
ドーパントの量としては、特に限定されるものではないが、通常、電子伝導性ポリマー100重量部に対して、10〜500重量部程度が用いられる。
【0041】
また、導電性金属酸化物としては ITO、ATOなどの錫化合物、導電性処理が表面に施された酸化チタン、シリカ、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化バナジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタルなどを例示できる。
【0042】
また、Al,Cr,Cd,Ti,Fe,Cu,In,Ni,Pd,Pt,Rh,Ag,Au,Ru,W,Sn,Zr,Irなどの金属類を蒸着あるいは塗布することによって形成される導電層も本発明に適用することができる。
【0043】
また、本発明の導電層には、バインダー成分、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂およびこれらの変性体などが配合されていてもよく、中でも各種被覆物との接着性などを付与できる点で、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびこれらの変性体から選ばれる少なくとも1種を好ましく用いることができる。これらのバインダー成分は、水、有機溶媒など任意の溶媒に溶解もしくは分散した状態で用いるのが好ましい。
【0044】
さらに、本発明にかかる導電層には、本発明の効果が損なわれない範囲内で、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、核剤などが配合されていてもよい。
【0045】
本発明の導電層に、粒子や架橋剤を添加することは任意であるが、これらの添加によって易滑性や耐ブロッキング性が向上するので、好適な態様である。
【0046】
本発明にかかる導電層に任意に添加される粒子としては、特に限定されないが、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどを用いることができる。その平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜3μm、最も好ましくは0.08〜2μmである。また、塗布層中の全樹脂に対する粒子の混合比は、特に限定されないが、固形分重量比で0.05〜8重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0047】
本発明の導電層に任意に添加される架橋剤としては、特に限定されないが、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系の樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン系化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。その添加量は、特に限定されないが、塗布層を形成する全樹脂に対し、0.5〜50重量部が好ましく、より好ましくは1〜30重量部である。
【0048】
また、本発明の導電層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.02〜5μm、より好ましくは0.03〜2μm、最も好ましくは0.05〜1.0μmである。特に塗布層の厚みが薄いときには、体積抵抗率が高くなり、帯電防止性が不良となる場合がある。また、経済的見地から導電層は上記上限値以下であることが好ましい。
【0049】
本発明における導電層の積層方法は特に限定されるものではないが、例えば、スパッタリング、蒸着、化学蒸着(CVD)、気相めっき、液相めっき、ウエットコーティングなどにより実施することができる。
【0050】
また、本発明は各種導電成分を含む樹脂を溶融してシート状にし貫通孔を有する基材にラミネートする押出ラミネート法などでも実施することができる。
【0051】
本発明積層フィルムの全光線透過率は、好ましくは60〜100%、より好ましくは70〜100%、更に好ましくは80〜100%である。また、ヘイズは好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%、更に好ましくは0〜5%である。全光線透過率、ヘイズが上記条件を満たす場合、非常に透明度の高いフィルムとなり、液晶ディスプレイ、PDPディスプレイなどのパネル部材、印刷物などの保護フィルムなど光透過性が求められる用途に好ましく適用することができる。
【0052】
このような高い全光線透過率、低いヘイズ値を達成する方法は特に限定されるものではないが、例えば、基材の透明性・表面平滑性を向上させるため基材に添加する無機粒子などの添加量を少なくする方法、基材全体の透過率を上げるために基材内部には粒子を添加せず基材最表面のみに粒子添加層を設ける方法、積層する導電層材料として透明性の高い材料を選択する方法などが挙げられ、これらの方法によって全光線透過率を60〜100%、ヘイズを0〜20%の範囲でコントロールすることができる。
【0053】
次に、本発明の積層フィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する)を基材フィルムとした例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
両面にコロナ処理されたPETフィルムをレーザー加工することにより、貫通孔を有するPETフィルムを製造する。次に、このフィルムの片面に導電性塗剤を塗布し、70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導いて乾燥する。引き続いて得られたフィルムの非コート面に導電性塗剤を塗布し、70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導いて乾燥することによって本発明の低体積抵抗率積層フィルムが得られる。この場合に用いられる塗液は環境汚染や防爆性の点で水系塗液が好ましい。
【0055】
導電性組成物からなる塗液のウエットコーティング方法としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。各々の方式には特徴があり、積層フィルムの要求特性、使用用途などにより、塗布方法を適宜選択するとよい。各種積層プロセスの中でウエットコーティング法は均一な導電膜を簡便に設けられる点で好ましい方法である。
【0056】
このようにして得られた積層フィルムは、体積抵抗率が低く、機械特性に優れ、更に、コストパフォーマンスに優れているため、広範な用途に使用できる。
【0057】
本発明の積層フィルムは、帯電防止性、特定の体積抵抗率などが必要とされる用途であれば特に限定されるものではないが、例えば、タッチパネル、フィルム、ガラスや金属板に貼合わせるディスプレイ用(例えば、反射防止フィルム、電子ペーパーなど)などのベースフィルム、電子白板やホワイトボードなどの表示用、ラベル、シール、OHP用、カード、宅配便伝票、インクジェットプリンタ用受像紙、電子写真式プリンタ用受容紙、オフセット印刷用受像紙などの用途のベースフィルム、更に種々の表面保護材、例えば、電卓や計器のカバーなどのベースフィルムとして好適に用いることができる。
【0058】
<特性の測定方法および効果の評価方法>
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)体積抵抗率
試料フィルムを23℃、相対湿度65%で24時間放置した後、デジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用いて印加電圧500Vで測定した。
(2)全光線透過率、ヘイズ測定
全自動直読ヘイズコンピューターHGM−DP(スガ試験機(株)製)を用いてフィルムの厚み方向の全光線透過率及びヘイズを5回測定しその平均値を用いた。
(3)塗布層の厚み
日立製作所(株)製透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、塗布層を設けた積層フィルムの断面を観察した写真から求めた。厚みは測定視野内の30個の平均値とした。
(4)帯電防止性1、表面比抵抗
表面比抵抗は、サンプルを常態(23℃、相対湿度65%)で24時間放置した後、その環境下においてデジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用いて印加電圧100Vで測定した。本発明では表面比抵抗が5×1011Ω/□以下である時、帯電防止性良好とした。
(5)帯電防止性2(積層時の帯電防止性)
測定サンプル表面に下記条件にてポリビニルアルコール塗膜(厚み10μm)を積層し、得られたサンプルのポリビニルアルコール積層面の表面表面比抵抗を上述(4)と同様の方法にて測定した。この時の表面比抵抗が5×1011Ω/□以下である時、積層時の帯電防止性良好とした。
塗膜積層条件:ポリビニルアルコール(ゴーセノールGH-23;日本合成化学社製)10重量%水溶液をメタバーコート法によりコートして120℃・2分間加熱することにより乾燥塗膜厚み10μmのサンプルを得た。
(6)屈曲性
積層フィルムの機械特性をフィルムを折り曲げた時の破壊状態で判断した。サンプルを塗膜屈曲試験機MODEL HD-5110(株式会社上島製作所製)を用いて、10mm心棒に折り曲げ角度180°で巻き付けた時のフィルムの破壊状態を確認した。フィルムにヒビ、割れが無い場合を○、フィルムにヒビが入った場合、割れた場合を×とした。
【0059】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。
<塗剤の調製>
下記の組成の塗剤を調製した。
(塗剤1)
架橋性官能基を有するアクリル樹脂エマルジョンA 2重量部
Mw=7万のポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩 1重量部
水 97重量部
(上記アクリル樹脂エマルジョンA)の組成
メチルメタアクリレ−ト(以下、MMAと略称する) 60重量部
エチルアクリレ−ト(以下、EAと略称する) 34重量部
アクリル酸(以下、AAと略称する) 2重量部
N−メチロ−ルアクリルアミド(以下、N−MAMと略称する) 4重量部
(塗剤2)
アクリル樹脂エマルジョンA 2重量部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩 0.1重量部
水 97重量部
(塗剤3)
ポリチオフェン水系塗剤(DENATRON5002RZナカ゛セケムテック(株)社製) 50重量部
水 50重量部
(塗剤4)
10重量%酸化錫 水溶液 90重量部
アクリル樹脂エマルジョンA 10重量部
(塗剤5)
アクリル樹脂エマルジョンA 2重量部
水 98重量部
。
【0060】
(実施例1)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%および平均粒径1.5μmの同じくコロイダルシリカを0.005重量%含有するPET原料より製膜された188μmの厚みのPETフィルムの両面に空気雰囲気中でコロナ放電処理を施した後、機械的方法によって直径0.3mmの貫通孔を形成した(孔密度:1個/cm2)。このフィルムの片面に塗剤1をグラビアコ−ト方式で乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布し120℃で乾燥した。引き続き反対面に塗剤1をグラビアコ−ト方式で乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布し120℃で乾燥することによって、導電層が両面に設けられたPETフィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性、帯電防止性、積層時の帯電防止性に極めて優れ、体積抵抗率が低いフィルムであることが確認された。
【0061】
(実施例2)
塗剤2を用いた以外は実施例1とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性、帯電防止性、積層時の帯電防止性に極めて優れ、体積抵抗率が低いフィルムであることが確認された。
【0062】
(実施例3)
塗剤3を用いた以外は実施例1とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性、帯電防止性、積層時の帯電防止性に極めて優れ、体積抵抗率が低いフィルムであることが確認された。
【0063】
(実施例4)
塗剤4を用いた以外は実施例1とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性、帯電防止性、積層時の帯電防止性に極めて優れ、体積抵抗率が低いフィルムであることが確認された。
【0064】
(実施例5)
PETフィルムにレーザーにて0.07mmの貫通孔(孔密度:4個/cm2)を形成した以外は実施例1とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性、帯電防止性、積層時の帯電防止性に極めて優れ、体積抵抗率が低いフィルムであることが確認された。
【0065】
(比較例1)
塗剤5を用いた以外は実施例1とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性は良好だが、帯電防止性が不良であり、体積抵抗率が高いフィルムであることが確認された。
【0066】
(比較例2)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%および平均粒径1.5μmの同じくコロイダルシリカを0.005重量%含有するPET原料より製膜された188μmの厚みのPETフィルムの両面に空気雰囲気中でコロナ放電処理を施した。このフィルムの片面に塗剤1をグラビアコ−ト方式で乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布し120℃で乾燥した。引き続き反対面に塗剤1をグラビアコ−ト方式で乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布し120℃で乾燥することによって、導電層が両面に設けられたPETフィルムを得た。
【0067】
表1に示すように、この積層フィルムは機械特性は良好だが、体積抵抗率が高いフィルムであることが確認された。また、帯電防止性は良好であったがポリビニルアルコール層の積層により帯電防止性が悪化した。
【0068】
(比較例3)
塗剤2を用いた以外は比較例2とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性は良好だが、体積抵抗率が高いフィルムであることが確認された。また、帯電防止性は良好であったがポリビニルアルコール層の積層により帯電防止性が悪化した。
【0069】
(比較例4)
塗剤3を用いた以外は比較例2とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性は良好だが、体積抵抗率が高いフィルムであることが確認された。また、帯電防止性は良好であったがポリビニルアルコール層の積層により帯電防止性が悪化した。
【0070】
(比較例5)
塗剤4を用いた以外は比較例2とまったく同様にして、両面に厚み0.3μmの導電層を設けた厚み188μmの積層フィルムを得た。表1に示すように、この積層フィルムは機械特性は良好だが、体積抵抗率が高いフィルムであることが確認された。また、帯電防止性は良好であったがポリビニルアルコール層の積層により帯電防止性が悪化した。
【0071】
(比較例6)
平均粒径0.4μmの導電層コート酸化チタンを20重量%および平均粒径0.5μmのコロイダルシリカを0.02重量%含むPET原料を用いて通常の2軸延伸法によって188μmの厚みのPETフィルムを得た。表1に示すように、このフィルムは帯電防止性は良好であり、体積抵抗率も低いが、屈曲性に乏しいフィルムであることが確認された。
【0072】
【表1】
【0073】
【発明の効果】
本発明によって、機械特性に優れ、安定して極めて高いレベルの帯電防止性能を発揮することができる低体積抵抗率積層フィルムを提供される。また、本発明によって、表面抵抗だけでなく、厚み方向の抵抗すなわち体積抵抗率の低いフィルムを提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】円柱状の孔を有する本発明の一実施形態を示す断面図。
【図2】本発明の他の実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
1 導電層
2 基材
Claims (8)
- 貫通孔を有する基材の両面に導電層を有し、体積抵抗率が1012Ω・cm以下である積層フィルム。
- 導電層がイオン伝導性導電成分を含む請求項1記載の積層フィルム。
- イオン伝導性導電成分がポリスチレンスルホン酸である請求項2記載の積層フィルム。
- 導電層が電子伝導性ポリマーを含む請求項1記載の積層フィルム。
- 導電層が導電性金属酸化物を含む請求項1記載の積層フィルム。
- 全光線透過率が60〜100%、ヘイズが0〜20%である請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
- 基材がポリエステルフィルムである請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
- 導電層がウエットコーティングにより設けられた請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002376968A JP2004202958A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 積層フィルム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002376968A JP2004202958A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 積層フィルム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004202958A true JP2004202958A (ja) | 2004-07-22 |
Family
ID=32814282
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002376968A Pending JP2004202958A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 積層フィルム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004202958A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US10854357B2 (en) * | 2016-07-11 | 2020-12-01 | Shin-Etsu Polymer Co., Ltd. | Coating material for forming conductive release layer, method for producing same, conductive release film, and method for producing same |
-
2002
- 2002-12-26 JP JP2002376968A patent/JP2004202958A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US10854357B2 (en) * | 2016-07-11 | 2020-12-01 | Shin-Etsu Polymer Co., Ltd. | Coating material for forming conductive release layer, method for producing same, conductive release film, and method for producing same |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US8137788B2 (en) | Laminated film | |
JP4997973B2 (ja) | 電磁波シールドフィルム | |
US9199438B2 (en) | Transparent conductive composite films | |
JP5526477B2 (ja) | 液晶ディスプレイ反射板用白色ポリエステルフイルム | |
AU2013284329B2 (en) | Antistatic film | |
TWI269709B (en) | Laminated film and process for producing laminated film | |
JP4701750B2 (ja) | 偏光板保護用積層フィルム | |
JP4765710B2 (ja) | ポリカーボネートフィルムの製造方法 | |
JP2007253512A (ja) | 光学用積層二軸延伸ポリエステルフィルム及びそれを用いたハードコートフィルム | |
JP2009214360A (ja) | 光学用積層ポリエステルフィルム | |
JP2007298963A (ja) | 液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源 | |
JP2004202958A (ja) | 積層フィルム | |
JP2016168809A (ja) | 導電積層体 | |
KR20160090799A (ko) | 하드 코트 필름 및 투명 도전성 필름 | |
JP2001232737A (ja) | 白色積層ポリエステルフィルム | |
JP5371503B2 (ja) | 光学用積層ポリエステルフィルム | |
JP5645883B2 (ja) | 積層ポリエステルフィルム | |
JP3966055B2 (ja) | 白色積層ポリエステルフィルム及びそれを用いた感熱転写記録用受容シート | |
JPH11129373A (ja) | 導電性熱収縮性積層フィルム | |
KR20080073663A (ko) | 반사판용 백색 폴리에스테르 필름 | |
JP2005144982A (ja) | ダミー缶用積層ポリエステルフィルム | |
JP2018039258A (ja) | 積層ポリエステルフィルム | |
JPH06171045A (ja) | 空洞含有積層ポリエステル系フィルム | |
KR20060066887A (ko) | 내수성 및 비전사 특성이 우수한 대전방지 폴리에스테르필름 |