JP2004202454A - 液体中パルス放電を用いるろ過膜及びろ材の洗浄方法と装置 - Google Patents

液体中パルス放電を用いるろ過膜及びろ材の洗浄方法と装置 Download PDF

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Abstract

【課題】逆洗水や薬品を使用せず、または従来の使用量より少ない量で容易にろ過膜やろ材の洗浄が行える、ろ過膜やろ材の洗浄方法及び装置を提供する。
【解決手段】液体のろ過装置において、ろ過槽内のろ過膜又はろ材を浸漬している液体中でパルス放電を行うことを特徴とするろ過膜及びろ材の洗浄方法。また、ろ過膜又はろ材を浸漬しているろ過槽に液体を介して接続する配管内又は容器内の液体中でパルス放電を行うことを特徴とするろ過膜及びろ材の洗浄方法。及びその装置。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技衛分野】
本発明は、液体中でパルス放電を行うことによる、ろ過処理に用いるろ過膜やろ材の洗浄方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体のろ過処理に用いられているろ過膜(以下単に「膜」ともいう)やろ材は、その性能を保つ為に定期的に洗浄する必要がある。従来、ろ過膜やろ材の洗浄には逆洗洗浄法(特許文献1)や、薬品洗浄法(特許文献2、特許文献3)、超音波洗浄法(特許文献4)、散気洗浄法(特許文献5)、水圧スプレー法(特許文献6)等が用いられている。しかし、逆洗洗浄法は時間がかかる上、ろ過した清浄な液体をろ過膜やろ材の洗浄にかなりの量を使用するのでろ過効率が低下するという問題がある。また、薬品洗浄法は薬品コストが高く、また後段で未反応薬品の処理が必要になり、コスト高になるという問題がある。超音波洗浄法は洗浄に長時間を要するという問題があり、さらに、散気洗浄法はエア吹き込み用のコストがかかる上、装置が大型化する、嫌気性処理には使えないなどの問題があった。
【0003】
【特許文献1】
特公平7−20523号公報
【特許文献2】
特許第3024693号公報
【特許文献3】
特許第3194679号公報
【特許文献4】
特許第3249093号公報
【特許文献5】
特開平6−226064号公報
【特許文献6】
特許第3196228号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術に比べ、逆洗水や薬品を使用しない、又は従来の使用量より少ない量で容易にろ過膜やろ材の洗浄が行え、さらに紫外線による殺菌及びバイオフィルム形成防止効果を備えるというパルス放電式洗浄方法及び装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、ろ過膜やろ材を浸漬した液体中で、液体の絶縁破壊電圧を超える電圧条件でパルス放電を行い、放電に伴って発生する衝撃波や紫外線によりろ過膜やろ材に付着している汚染物を除去する方法を用いる。この放電により、電極間では高温高圧のプラズマが瞬間的に発生するため、電極付近の液体が瞬間的に蒸発・膨張して衝撃波を発生し、また同時に紫外線も発生する。液体中で衝撃波を発生させるため、容器を密閉しなくても衝撃波は液体中を効率良く伝播するため、その効果の及ぶ範囲は広い。また逆洗洗浄や薬品洗浄などの従来技術と併用すれば、処理時間の短縮、薬品洗浄に使用する薬品量や逆洗に要する水量を低減できるという効果がある。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の手段により上記の課題を解決することができた。(1)液体のろ過装置において、ろ過槽内のろ過膜又はろ材を浸漬している液体中でパルス放電を行うことを特徴とするろ過膜及びろ材の洗浄方法。
(2)液体のろ過装置において、ろ過槽内のろ過膜又はろ材を浸漬している液体に液体を介して接続する配管内又は容器内の液体中でパルス放電を行うことを特徴とするろ過膜及びろ材の洗浄方法。
(3)液体をろ過するろ過膜又はろ材を液体中に浸漬しているろ過槽において、該ろ過槽の液体中に配置された、又は該ろ過槽と液体を介して接続する配管内或いは容器内に充填されている液体中に配置されたパルス放電用の電極と、該パルス放電用電極にパルス放電を起こすための電源と、該パルス放電を制御するための制御装置と、該電極と該パルス電源を接続するための導線とを有することを特徴とするろ過膜及びろ材用洗浄装置。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施に必要な装置は、電荷蓄積用コンデンサと放電電圧コントロール部を備えた電源1、電源高圧側端子と接続される高圧側電極2、電源低圧側端子もしくは接地されている対電極(接地電極)3、電極と電源を接続する高耐電圧型の導線(電源ケーブル)4、ろ過膜やろ材を浸漬するろ過槽5からなる。電極はろ過膜やろ材が浸漬されているろ過槽もしくはそれにつながる配管内に設置し、また、ろ過前後いずれの側に設置してもよい。
【0008】
ろ過膜の洗浄例の概略を図1〜図4に示す。本装置はろ過対象物の大きさが数十nm以上である限外ろ過膜以上の孔径のろ過膜洗浄に適用できる。また、ろ材の洗浄例を図5〜図8に、さらに異なるろ材が多段に用いられている場合の洗浄例を図9に示す。ろ過膜の場合と同様に、ろ過の前後のいずれに配置しても構わない。また浮上ろ材についても適用可能である。なお、発明の実施の形態及び実施例を説明する全図において、同一機能を有する構成要素は同一符号を用いて示す。
【0009】
導線4は2本の電極に対して1本ずつ用意しても良く、また導線4として芯線周囲の絶縁被覆外周をさらに導線被覆している高耐電圧型の2重ケーブルを用いても良い。その場合、芯線を高圧側に、被覆導線を接地側に接続すれば1本のケーブルで接続できる。
【0010】
印加する電圧の大きさは、絶縁破壊電圧が電極形状、電極間隔、電極に接する液体の種類や電気伝導度によって変化するので、その条件に応じて絶縁破壊電圧を超えるように設定する。たとえば純水中、電極間隔1mmの場合は1kV以上印加するのが好ましいが、電極間隔2mmでは2kV以上が好ましい。またパルス当たりのエネルギーは50〜5000J程度、パルス時間幅は0.1〜1000μ秒程度、周波数は0.3〜200Hz程度が好ましい。発生させる衝撃波の大きさによって、電極−ろ過膜もしくは電極−ろ材間に適当な距離を取ったり、電極−ろ過膜もしくは電極−ろ材間に拡散板6を設けたり、さらに電極背面に反射板7を設けることにより、衝撃波を均一に拡散させることも有効である。
【0011】
図10に向きを変えた例、図11に拡散板を設置した例、図12に反射板を設けた例を、ろ過膜の例として示す。ろ材の場合も同様に向きを変えたり、拡散板や反射板を設けたりすることが可能である。
また、本装置は電極部分のみを水槽内に挿入すれば良いため、既設設備についても容易に着脱が可能な洗浄装置である。図13に上から電極を吊り下げた例を示す。
【0012】
【実施例】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例により何等限定されるものではない。
【0013】
(実施例1)
本発明の具体例の概略図を図14に示す。高圧電極(SUS304製φ6丸棒)2はポリテトラフルオロエチレン(テフロン)で絶縁被覆して、容積1リットルの金属製容器8の蓋に固定した。また金属製容器8を接地して、容器8底部を接地電極として放電を行った。容器8の内部形状は図14(b)に示すように楕円柱状で、楕円の焦点の一方に電極2、3が来るように設計した。試料としては、実際に浄水場で目詰まりした中空糸膜モジュール15の一部(長さ24cm、膜外径540μm×32本、孔径0.1μm)を切り取って使用した。放電により膜モジュール15が吹き飛ばされないように、膜モジュール15上部を紐で蓋に固定した。この膜モジュール15の放電処理前の透水性能を測定した後、水槽8内に浸漬し、蓋をしてからパルス放電を行った。放電後に膜モジュール15を取り出し、再び透水性能を測定した。
【0014】
そして、回復目標とする未使用膜の透水性能との比(透水能比=100×放電後透水性能÷未使用膜の透水性能)を算出し、放電回数による変化を調べた。パルス条件は電極間隔2mm、電圧5kV(1回当たりのエネルギー250J/Pulse)、放電点からの試料までの距離10cm、放電間隔3秒とした。また結果を第1表に示す。放電処理前の透水性能が目標値の25%であったのに対し、パルス放電回数が多くなるにつれて透水能比は増加し、放電処理120回では目標値の37%にまで回復した。120回処理の消費エネルギーは30,000Jであるので、1kWh当たり10円とすると、電気代は0.08円となり、わずかな電気代で回復できることが分かった。
【0015】
【表1】
Figure 2004202454
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、パルス放電処理装置は、逆洗用の水や薬品注入なしでろ過膜やろ材の透水性能を回復でき、消費電力も少ない。また、装置構造が簡易であることから持ち運びも可能であり、既設施設への取付も簡単に行え、さらに逆洗や薬品注入などと併用すれば洗浄速度を速めることが出来るため、使用する薬品や逆洗水量を低減出来、洗浄時間も短縮できる。また空気吹き込みを伴わない洗浄方法であるため、嫌気性処理装置への適用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるろ過膜の洗浄法で、ろ過膜を浸漬している容器内のろ過前の水側に電極を挿入してパルス放電する例である。
【図2】本発明に係わるろ過膜の洗浄法で、ろ過膜を浸漬している容器内のろ過後の水側に電極を挿入してパルス放電する例である。
【図3】本発明に係わるろ過膜の洗浄法で、ろ過膜を浸漬している容器に接続されたろ過前の水の配管に電極を挿入してパルス放電する例である。
【図4】本発明に係わるろ過膜の洗浄法で、ろ過膜を浸漬している容器に接続されたろ過後の水の配管に電極を挿入してパルス放電する例である。
【図5】本発明に係わるろ材の洗浄法で、ろ材を浸漬している容器内のろ過前の水側に電極を挿入してパルス放電する例である。
【図6】本発明に係わるろ材の洗浄法で、ろ材を浸漬している容器内のろ過後の水側に電極を挿入してパルス放電する例である。
【図7】本発明に係わるろ材の洗浄法で、ろ材を浸漬している容器に接続されたろ過前の水の配管に電極を挿入してパルス放電する例である。
【図8】本発明に係わるろ材の洗浄法で、ろ材を浸漬している容器に接続されたろ過後の水の配管に電極を挿入してパルス放電する例である。
【図9】本発明に係わるろ材の洗浄法で、多層ろ材の層間に電極を挿入してパルス放電する例である。
【図10】本発明に係わるろ過膜の洗浄法で、ろ過膜を浸漬している容器内で衝撃が均一になる様に電極位置を調節してパルス放電する例である。
【図11】本発明に係わるろ過膜の洗浄法で、ろ過膜を浸漬している容器内で衝撃が均一になる様に拡散板を挿入してパルス放電する例である。
【図12】本発明に係わるろ過膜の洗浄法で、ろ過膜を浸漬している容器内で衝撃が均一になる様に反射板を挿入してパルス放電する例である。
【図13】本発明に係わるろ過膜の洗浄法で、ろ過膜を浸漬している容器上部より電極を吊るしてパルス放電する例である。
【図14】本発明の実施例に用いた、ろ過膜洗浄のためのパルス放電装置の概略図であり、(a)は側面図、(b)は金属製容器の平面図である。
【符号の説明】
1 電源
2 高圧側電極
3 接地電極
4 電源ケーブル
5 容器(ろ過槽)
6 衝撃波拡散板
7 反射板
8 金属製容器
9 ろ過膜
10 ろ材
11 配管
12 ろ過前液体
13 ろ過後液体
14 電極保持部
15 膜モジュール

Claims (3)

  1. 液体のろ過装置において、ろ過槽内のろ過膜又はろ材を浸漬している液体中でパルス放電を行うことを特徴とするろ過膜及びろ材の洗浄方法。
  2. 液体のろ過装置において、ろ過槽内のろ過膜又はろ材を浸漬している液体に液体を介して接続する配管内又は容器内の液体中でパルス放電を行うことを特徴とするろ過膜及びろ材の洗浄方法。
  3. 液体をろ過するろ過膜又はろ材を液体中に浸漬しているろ過槽において、該ろ過槽の液体中に配置された、又は該ろ過槽と液体を介して接続する配管内或いは容器内に充填されている液体中に配置されたパルス放電用の電極と、該パルス放電用電極にパルス放電を起こすための電源と、該パルス放電を制御するための制御装置と、該電極と該パルス電源を接続するための導線とを有することを特徴とするろ過膜及びろ材用洗浄装置。
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