JP2004202339A - 洗車排水のリサイクル処理システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シャンプー洗車、ワックス洗車及びシリコーン系撥水剤洗車ができる洗車機、並びに凝集処理部を有する排水処理装置を備えた洗車排水のリサイクル処理システムであり、洗車排水が、洗浄排水に含まれているアニオン系界面活性剤のモル数とカチオン系界面活性剤のモル数の比(アニオン/カチオン)が0.5〜2.0の範囲のものであり、前記洗車排水が排水処理装置で処理される、洗車排水のリサイクル処理システム。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗車機及び洗車排水の処理装置を備えた洗車排水のリサイクル処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
水資源の有効利用への関心の高まりと共に、大量に水道水を消費する洗車場などの洗浄水(1台当たり150L以上必要)に対する節水の要望と、その一方で排水をそのまま垂れ流すことに対する水質汚染への懸念が大きくなっている。特に洗車場で生じる排水には、土砂と共にワックス等の油分だけでなく、界面活性剤が含まれている。界面活性剤は自然分解されにくいために、河川、湖沼の環境汚染に繋がる。そこで、洗車排水を処理し、処理水を洗車用水として再利用することで、上記課題を解決しようとする試みがなされている。
【0003】
洗車排水等の処理法としては、砂濾過処理、凝集沈澱処理、オゾン処理等の方法のほか、特開2000−127913号公報に開示された中空糸膜を用いた濾過器を備えた濾過による洗車システムが知られているが、いずれの方法においても、装置が大きく、広い設置場所を確保する必要があり、処理コストが高くなるという問題がある。特に設置場所の確保については、洗車場のスペースは様々であるため、狭いスペースであっても、処理能力を低下させることなく適用できる排水処理装置が望まれている。
【0004】
また中空糸膜等を用いた膜濾過法の場合、濾過性能は優れているものの、洗車排水等を処理した場合、膜に対する負荷が大きいために膜の交換寿命が短くなり、運転コストが高くなることが大きな問題となっている。
【0005】
本発明は、各種洗車場等で生じる油分及び界面活性剤を含有する排水を処理し、洗浄水として再利用できる処理水が得られ、しかも運転コストを抑制でき、設置場所の確保も容易な洗車排水のリサイクル処理システムを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、洗車排水を処理する場合において、処理能力と運転コストの抑制とを両立させる観点から、洗車機で使用する洗車用洗浄剤と排水処理装置とを関連づけることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0007】
本発明は、上記課題の解決手段として、シャンプー洗車、ワックス洗車及びシリコーン系撥水剤洗車ができる洗車機、並びに凝集処理部を有する排水処理装置を備えた洗車排水のリサイクル処理システムであり、
洗車排水に含まれているアニオン系界面活性剤のモル数とカチオン系界面活性剤のモル数の比(アニオン/カチオン)が0.5〜2.0の範囲のものであり、前記洗車排水が排水処理装置で処理される、洗車排水のリサイクル処理システムを提供する。
【0008】
アニオン/カチオンが0.5〜2.0の範囲であると、凝集剤の使用量を低減することができ、更に洗車排水の処理装置によるワックス成分及びシリコーン系撥水剤の凝集及び除去効果が高められるため、高度に浄化された処理水が得られる。
【0009】
本発明では、洗車排水中におけるBOD濃度/COD濃度が0.1〜0.5の範囲で、かつn−ヘキサン抽出物量/COD濃度が0.01〜0.3の範囲であるように設定することにより、更に処理能力を高めることができるので望ましい。
【0010】
洗車排水中のアニオン/カチオンの比率範囲は、洗車機段階で調整する方法、排水処置装置に洗車排水を供給する段階で調整する方法の一方又は両方を適用できる。
【0011】
洗車機段階におけるアニオン/カチオンの比率範囲の調整は、洗車機用洗浄剤の成分の調整か、又は洗車機への洗浄機用洗浄剤の供給量の調整により行うことができる。
【0012】
洗車機用洗浄剤は、シャンプー洗車、ワックス洗車及びシリコーン系撥水剤洗車ができるものであり、具体的には、洗車機用シャンプー、洗車機用ワックス及び洗車機用シリコーン系撥水剤である。
【0013】
排水処置装置に洗車排水を供給する段階におけるアニオン/カチオンの比率範囲の調整は、油水分離槽又は洗車排水の貯水タンクにて行うことができる。
【0014】
本発明では、排水処理装置として、凝集処理部及び膜分離部を備えているもの、凝集処理部、膜分離部及び活性炭処理部を備えているものを用いることができる。 凝集処理部においては、モンモリロナイト、硫酸アルミニウム、水溶性多糖類及び水溶性高分子を含有する凝集剤を使用することが好ましい。
【0015】
本発明でいう洗車排水は、各種車両、電車等の乗り物等を洗浄した際に生じる排水であるため、排水中には、洗車機用洗浄剤、油分と共に床面等の汚染物質も含まれる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の洗車排水のリサイクル処理システムについての実施の形態を説明する。図1、図2は、いずれもい本発明のリサイクル処理システムを説明するための概念図であり、それぞれの膜分離部3の濾過方法が異なっている。図1はデッドエンド濾過法、図2はクロスフロー濾過法である。
【0017】
図1、図2で示すリサイクル処理システムは、凝集処理部、膜分離部、活性炭処理部等を備えており、各構成部がパイプ等で連結されているものであるが、図に示されていない排水処理に必要な構成を含んでいてもよい。図1、図2中、Pはポンプ、P1〜P4は圧力計、F1〜F2は流量計、MVは流量調整バルブを示し、開閉弁は全て同じ表示である。なお、図1、図2は、各構成部、各構成部の連結状態、排水の処理フローを示すものであり、各構成部の配置状態や装置全体の大きさを示すものではない。
【0018】
まず図1に示すリサイクル処理システムの実施の形態について説明する。洗車場等で生じた洗車機用洗浄剤を含む洗車排水は、通常は、排水ピットを経て洗車場等に設置されている油水分離槽20に貯水される。油水分離槽20には、雨水、施設の床面清掃時の洗剤や油混じりの排水等も合わせて回収されることもある。このような排水が、本発明のリサイクル処理システムにおける処理対象となる。なお、油水分離槽は洗車場等に既設のものであり、本発明のリサイクル処理システムには含まれない。
【0019】
洗車機用洗浄剤は、アニオン系界面活性剤を含む洗車機用シャンプー、カチオン系界面活性剤を含む洗車機用ワックス、及びシリコーン系撥水剤を含む洗車機用撥水剤が含まれる。
【0020】
洗車機用シャンプーは、界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン等の硫酸エステル塩;高級脂肪酸、高級アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩;高級アルコール燐酸エステル塩等を含むものが挙げられる。これらの界面活性剤は1又は2以上組み合わせて配合できるが、必要に応じて、更にノニオン系界面活性剤、両性型界面活性剤、アニオン系界面活性剤と相溶性のあるカチオン系界面活性剤を配合することができる。洗車機用シャンプーには、無機塩等のアルカリビルダー、キレート剤等の有機ビルダー、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、多価アルコール、防腐剤、腐食抑制剤、酵素、染料、香料等を配合しても良い。
【0021】
洗車機用ワックスは、界面活性剤として第四級アンモニウム塩型、高級アルキルアミン塩型から選ばれる1又は2以上を含み、ワックス成分として鉱物油、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス等の植物系ワックス等を含んでいる。洗車機用ワックスには、ノニオン系界面活性剤、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル、多価アルコール、グリコールエーテル等の水溶性溶剤、染料、香料等を配合しても良い。
【0022】
シリコーン系撥水剤を含む洗車機用撥水剤は、アミノ変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル、ノニオン系界面活性剤を含んでいる。洗車機用撥水剤には、カチオン系界面活性剤、両性型界面活性剤、紫外線吸収剤、低級アルコール、多価アルコール、グリコールエーテル等の水溶性溶剤、染料、香料等を配合しても良い。
【0023】
油水分離槽20は、図示するような計4槽の沈殿槽からなり、砂利、砂のような大きなものから順に沈殿させていき、最終沈殿槽の排水をポンプにより汲み上げて、原水貯水タンク1に送って貯水する。油水分離槽20の排水が流入する最初の沈殿槽には、砂利、砂のような大きめの異物を取り除くため、図2に示すような濾網(金網等からなるもの)を設置することができる。
【0024】
原水貯水タンク1に貯水された排水が、本発明の処理対象となる洗車排水となる。洗車排水は、洗車機用洗浄剤の構成成分に起因するアニオン系界面活性剤のモル数とカチオン系界面活性剤のモル数の比(アニオン/カチオン)が0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.2になるように設定されたものである。
【0025】
アニオン/カチオンが0.5〜2.0の範囲であると、凝集剤の使用量を低減することができ、更に洗車排水の処理装置によるワックス成分及びシリコーン系撥水剤の凝集及び除去効果が高められるため、高度に浄化された処理水が得られる。
【0026】
アニオン/カチオンを0.5〜2.0の範囲に設定する方法は、洗車機段階において、洗車機用洗浄剤(洗車機用シャンプー、洗車機用ワックス及び洗車機用撥水剤)の成分を調整する方法、及び洗車機への洗浄機用洗浄剤(洗車機用シャンプー、洗車機用ワックス及び洗車機用撥水剤)の供給量を調整する方法の一方又は両方を組み合わせて適用できる。
【0027】
また、前記調整法に加えて、又は前記調整法とは別個に、原水貯水タンク1においてアニオン/カチオンの比率範囲を計測し、前記比率を調整する方法も適用できる。
【0028】
処理対象となる洗車排水は、BOD濃度/COD濃度が0.1〜0.5の範囲で、かつn−ヘキサン抽出物量/COD濃度が0.01〜0.3の範囲であるように設定することにより、更に処理能力を高めることができるので望ましい。BOD濃度/COD濃度は0.2〜0.4の範囲がより好ましく、n−ヘキサン抽出物量/COD濃度は0.02〜0.2の範囲がより好ましい。
【0029】
BOD濃度/COD濃度が上記範囲内であると、洗車排水や処理水中にバクテリア等が発生しにくくなり、N−ヘキサン抽出物量/COD濃度が上記範囲内であると、凝集剤使用量が低減され、膜分離部における膜及び活性炭処理部における活性炭の交換寿命が延長される。
【0030】
BOD濃度は、洗車機用シャンプーが5,000〜125,000mg/L、洗車機用ワックスが5,000〜125,000mg/L、洗車機用撥水剤が3,000〜40,000mg/Lであることが好ましい。
【0031】
COD濃度は、洗車機用シャンプーが50,000〜250,000mg/L、洗車機用ワックスが50,000〜250,000mg/L、洗車機用撥水剤が30,000〜80,000mg/Lであることが好ましい。
【0032】
N−ヘキサン抽出物量は、洗車機用シャンプーが500〜70,000mg/L、洗車機用ワックスが500〜70,000mg/L、洗車機用撥水剤が300〜20,000mg/Lであることが好ましい。
【0033】
油水分離槽20の最終沈殿槽(第4槽)に流入した排水(処理用原水)は、ポンプの作動により、原水貯水タンク1に送られ、原水貯水タンク1の原水は、凝集処理部2に送られる。このとき、排水は、油水分離槽20から直接凝集処理部2に送られても良いし、量が少なく、砂、泥等も少ないような排水であれば、油水分離槽20を使用せずに、直接原水貯水タンク1又は凝集処理部2に送られても良い。
【0034】
凝集処理部2では、原水に凝集剤が添加され、油分、界面活性剤、泥等の懸濁質(SS)の一部が凝集沈降処理される。この処理により、次の膜分離部3における負荷が軽減されると共に、ポンプ、バルブ、連結パイプ等が目詰まりすることも防止される。
【0035】
凝集処理部2は、図示するように、第1仕切り壁27、第2仕切り壁28により、第1槽24、第2槽25、第3槽26の3つの槽に分離されている。そして第1槽24内に、凝集剤供給機22により所要量の凝集剤を添加する。このとき、凝集剤が液状の場合は定量ポンプを作動させ、凝集剤が粉体状の場合は定量フィーダー(図示せず)を作動させて添加するが、操作法及び運転法が簡単であり、メンテナンスも容易であることから、粉体状の凝集剤を用いることが好ましい。
【0036】
粉体状の凝集剤を用いる場合には、粉体のブロッキングを防止し、供給量の調節が容易に行うことができる定量スクリューフィーダーを用いることが好ましく、更にホッパーに、アジテーションパドルやスクリューアジテーター等のブリッジング防止機構を備えた定量スクリューフィーダーを用いることがより好ましい。
【0037】
このようにして凝集剤を添加した後、凝集沈降処理し、第1槽24から第1仕切り壁27を越えて溢れた上澄み液を第2槽25に流入させ、同様にして第2仕切り壁28を越えて溢れさせた上澄み液を第3槽26に流入させる。21は第1槽24内をかき混ぜるための攪拌機である。凝集処理部2の各槽に溜まった沈殿物は、各開閉弁を操作して適宜底部から抜き出す。
【0038】
凝集沈澱部2で用いる凝集剤は特に限定されないが、有機化合物と無機化合物の混合凝集剤が油分の高度除去の観点から望ましく、アルギン酸塩及び/又はカチオン系高分子凝集剤を含む有機凝集剤と、イオン性鉱物及び/又は硫酸アルミニウムを含む無機凝集剤との組み合わせからなり、有機凝集剤としてアルギン酸塩及びカチオン系高分子凝集剤を含み、無機凝集剤としてイオン性鉱物及び硫酸アルミニウムを含むものが好ましい。
【0039】
有機凝集剤と無機凝集剤の含有割合は、有機凝集剤が2〜20質量%、好ましくは4〜14重量%、より好ましくは5〜13質量%であり、無機凝集剤が98〜20質量%、好ましくは96〜86質量%、より好ましくは95〜87質量%である。
【0040】
有機凝集剤として使用するアルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムが好ましく、カチオン系高分子凝集剤はポリアミン類、ポリジシアンジアミド類、カチオン化デンプン、カチオン性ポリ(メタ)アクリルアミド、水溶性アニリン樹脂、ポリチオ尿素、ポリエチレンイミン、第4級アンモニウム塩類、ポリビニルピリジン類、キトサン等を挙げることができ、これらの中でもカチオン化デンプン、カチオン化ポリ(メタ)アクリルアミド又はこれらの混合物が好ましい。
【0041】
有機凝集剤としてアルギン酸塩とカチオン系高分子凝集剤を含むとき、それらの含有割合(アルギン酸塩/カチオン系高分子凝集剤で示される質量比)は1:2〜2:1であることが好ましく、2:3〜3:2であることがより好ましい。
【0042】
無機凝集剤として使用するイオン性鉱物としては、モンモリロナイト、カオリン等の粘土鉱物やゼオライト等を挙げることができ、これらの中でも、安価でかつ吸着面積が大きく、エマルジョン化された油分を吸着しやすいモンモリロナイトが好ましい。
【0043】
無機凝集剤としてイオン性鉱物と硫酸アルミニウムを含むとき、それらの含有割合(イオン性鉱物/硫酸アルミニウムで示される質量比)は1:2〜2:1であることが好ましく、2:3〜3:2であることがより好ましい。
【0044】
有機凝集剤としては、上記以外にも(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリルアミド等の親水性単量体を共重合させたアクリル系共重合体等、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、マレイン酸共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、リグニンスルホン酸ナトリウム、カ成デンプン、ポリオキシエチレンジプロピルアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどの界面活性剤、(メタ)アクリル酸とアクリルアミドとの共重合体等のアニオン又はノニオン系の高分子凝集剤、両性高分子凝集剤、プロピレンジアミン等の低分子アミン凝集剤等を含有させることができる。
【0045】
無機凝集剤としては、上記以外にもポリ塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、消石灰、珪酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、アルミニウムミョウバン類等を含有させることができる。
【0046】
凝集剤として、アルギン酸ナトリウム等の水溶性多糖類、カチオン系アクリルアミド等のカチオン系高分子凝集剤と、モンモリロナイト、硫酸アルミニウムとの有機及び無機凝集剤の組み合わせからなるものを使用したとき、水処理能力が向上され、特に洗車機用撥水剤に含有されているシリコーンの吸着除去能力が高いこと等から好ましい。
【0047】
次に、凝集処理部2の第3槽26内の処理水は膜分離部3に送られ、固液分離される。膜分離部3における濾過処理は、低圧力でかつ一定の膜間差圧で行われる。膜分離部3における濾過方式は、外圧型クロスフロー濾過方式、外圧型デッドエンド濾過方式、内圧型クロスフロー濾過方式及び内圧型デッドエンド濾過方式のいずれも採用できるが、濾過効率、均一性、膜濾過性能の回復のための洗浄性等を考慮すると、クロスフロー濾過方式が良く、中でも内圧型クロスフロー濾過方式が最良である。
【0048】
一方、内圧型デッドエンド濾過方式は、クロスフロー濾過方式に比べて、低動力で運転できるという利点のほか、装置コストが低くなるという利点もある。更に、膜間差圧を一定にすることで、膜間差圧が変動する一定流量(フラックス)運転に比べて、膜のファウリングが抑制できる利点がある。
【0049】
膜間差圧を一定にするには、圧力検知によりポンプの回転数をインバーター制御する方法のほか、モジュール入口手前に設置したバルブや、循環ポンプ流量を調整する方法によればよい。膜間差圧は5〜30kPa、好ましくは5〜25kPaの範囲の低圧力範囲から選択する。
【0050】
膜間差圧を低圧力にすることにより、低動力化できると共に、膜圧損のロスによる濾過効率の低下を防ぐことができる。また、膜のファウリングが抑制されるため、長期間に渡って安定に処理水量が維持できる。このように低圧力で濾過することで、内圧式クロスフロー濾過方式における膜の入口と出口の平均膜面線速を小さくでき、好ましくは0.1m/秒以下、より好ましくは0.08m/秒以下の平均膜面線速で運転する。
【0051】
膜分離部3で用いる膜は、酢酸セルロース系、ポリスルホン系及びポリアクリロニトリル系限外濾過膜から選ばれる中空糸膜であることが好ましく、耐ファウリング性の観点からは、酢酸セルロース系限外濾過膜がより好ましい。また、この膜は、分画分子量は1万〜50万が好ましく、10万〜30万がより好ましい。
【0052】
次に、膜分離部3で処理した処理水は、そのまま貯水タンク5に送られて貯水され、再利用することができるが、膜分離部3と貯水タンク5の間に設けた活性炭処理部4に送られ、活性炭処理されて、主として油分等に起因する臭気成分と、残存する界面活性剤が吸着除去されることが望ましい。この活性炭処理部4における活性炭と処理水との接触方法は制限されず、例えば、活性炭フィルターに処理水を通す方式が適用される。
【0053】
本発明のリサイクル処理システムでは、凝集処理部2と膜分離部3とを組み合わせることで、油分、界面活性剤、SS等の除去率を相乗的に高めることができるので、排水組成の変動に応じて凝集剤の添加量を格別調整する必要がなくなる。
【0054】
次に、活性炭処理部4で処理した処理水は貯水部5に送られ、貯水される。この貯水部5に送られた水は、再度洗車等の洗浄水として再利用できる。このように貯水部5を設けることにより、処理水の再利用が容易になる。
【0055】
なお、図2に示すように、膜分離部3と活性炭処理部4との間に逆圧洗浄用タンク6を設けることができる。この逆圧洗浄用タンク6には、膜分離部3で固液分離処理した処理水が貯水され、逆圧洗浄水として使用される。
【0056】
本発明の排水処理装置では、油分及び界面活性剤を含有する排水は、凝集処理部2、膜分離部3、場合により更に活性炭処理部4の順に処理されるが、この処理を継続して行った場合、膜分離部3の膜面に汚れが付着して、固液分離性能が低下することがある。このため、適当間隔で逆圧洗浄することにより、固液分離性能を安定した状態に保持することが望ましい。
【0057】
逆圧洗浄は、膜分離部3の透過液側から原液側に、貯水部5内の処理水を圧入させる方法が適用できる。逆圧洗浄の間隔は、15〜60分が好ましく、20〜45分がより好ましい。逆圧洗浄時の流量は、2〜20m/dayが好ましく、5〜15m/dayがより好ましい。
【0058】
また逆圧洗浄に際しては、洗浄効果を高めるため、薬液タンク30から次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の薬液を、ポンプを作動させることで洗浄水に添加して、薬液洗浄することができる。薬液の添加量は、次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合、逆洗後の残留塩素濃度が1〜100mg/Lの範囲になるようにすることが好ましい。
【0059】
本発明のリサイクル処理システムは、排水の流入量に応じて処理量を自動制御できるように設定したり、円滑な洗車作業ができるように、洗車作業時の水の使用量等に応じて最終貯水タンク7の処理水を自動供給できるように設定することもできる。
【0060】
本発明のリサイクル処理システムは、既設の油水分離槽を凝集沈殿処理手段として利用することができるため、高い処理能力を維持したまま、処理装置自体における処理手段を簡略化できるため、処理装置及びシステム全体をよりコンパクトにすることができる。従って、洗車排水の処理装置は、洗車場等の実状に応じて、家庭用の洗濯機や冷蔵庫程度の大きさから、更に大きなものまで適宜大きさを調節することができ、車に積んで移動できるようにすることもできる。
【0061】
本発明のリサイクル処理システムでは、組成(アニオン/カチオン)が調整された洗車排水を処理対象とすることにより、排水処理装置に対する負荷が軽減されるので、凝集処理部における凝集剤の使用量の低減、排水処理装置に含まれる膜分離部の膜交換寿命の延長、活性炭処理部における活性炭交換寿命の延長等ができるようになるので、運転コストが低減できる。
【0062】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0063】
(1)洗車機用洗浄剤
(1-1)洗車機用シャンプー〔(株)ダイフク製のS104〕
アニオン系界面活性剤、防腐剤、着色剤、安定剤を含むもの
アニオン系界面活性剤濃度0.90mol/L
BOD濃度40,000mg/L
COD濃度130,000mg/L
n−ヘキサン抽出物量2,500mg/L
(1-2-1)洗車機用ワックス〔(株)ダイフク製のW103〕
パラフィン系ワックス、オイル、カチオン系界面活性剤、エチレングリコール、着色剤を含むもの
カチオン系界面活性剤濃度0.082mol/L
BOD濃度34,000mg/L
COD濃度130,000mg/L
n−ヘキサン抽出物量21,000mg/L
(1-2-2)洗車機用ワックスW
下記の各数値となるように調製したもの
カチオン系界面活性剤濃度0.129mol/L
BOD濃度130,000mg/L
COD濃度170,000mg/L
n−ヘキサン抽出物量190,000mg/L
(1-3) 洗車機用撥水剤〔(株)ダイフク製のDU105〕
特殊シリコーンオイル、ノニオン系界面活性剤、エチレングリコール、防腐剤、防錆剤を含むもの
BOD濃度19,000mg/L
COD濃度55,000mg/L
n−ヘキサン抽出物量8,000mg/L
(2)洗車機における洗車
上記の洗車機用洗浄剤を用い、自動車用洗車機により自動車の洗浄を行った。1台当たり平均で約120Lの水(本発明により得られたリサイクル水/水道水=7/3;容量比)を使用した。洗車用水となる120L/台に対する各洗浄剤の使用量は次のとおり。
【0064】
シャンプー洗車の場合:洗車機用シャンプー7ml
ワックス洗車の場合:洗車機用シャンプー7ml/洗車機用ワックス35ml、洗車機用シャンプー7ml/洗車機用ワックス77ml、又は洗車機用シャンプー7ml/洗車機用ワックス126ml
撥水洗車の場合:洗車機用ワックス7ml/洗車機用撥水剤250ml
(3)洗車排水処理装置及び洗車排水処理システムの詳細
図1に示す洗車排水処理システムを用いた。各部の詳細は次のとおり。
【0065】
(3-1)凝集処理部
攪拌槽24、沈殿槽25、膜原水貯留槽26の3槽からなり、各槽の内容量の合計は1m3である。攪拌槽24には、凝集剤投入機(スクリューフィーダー)及び攪拌機が備え付けられており、原水貯水タンク1から3m3/hrで洗浄排水が送られる。
【0066】
凝集剤は、モンモリロナイト48質量%、硫酸アルミニウム48質量%、アルギン酸ナトリウム2質量%、カチオン系高分子凝集剤(カチオン系ポリアクリルアミド)2質量%を含有する凝集剤を用いた。凝集剤の投入量は、50mg/Lである。
【0067】
(3-2)膜分離部
酢酸セルロース中空糸膜モジュール(モジュール有効膜面積16m2/本、分画分子量:15万)を3本並列したものを用いた。濾過はクロスフロー濾過方式とし、中空糸膜内における液線速は0.05m/s、膜間差圧は15〜25kPaに維持した。
【0068】
(3-3)活性炭処理部
ヤシ殻活性炭(CW130A、二村化学工業(株)製)60kgを充填したカラム(直径40cm×高さ1.5m)を用いた。
【0069】
(4)測定方法
(4-1)処理速度
膜分離部3に設置した透過液流量計(図1中のF1)により計測した。
【0070】
(4-2)COD濃度
運転開始から2週間隔で計8回、排水及び処理液を採取し、2mlをCOD試薬バイアル(Cat.21259-25;0〜1,500mg/L用;HACH社製)に投入し、150℃にて2時間加熱し、冷却後、HACH社製の水質分析計(DR/2010)により測定した。
【0071】
(4-3)BOD濃度
運転開始から2週間隔で計8回、排水及び処理液を採取し、JIS K0120工場排水試験方法(日本工業標準調査会)p49-54(1998年)により測定した。
【0072】
(4-4)n−ヘキサン抽出物量
運転開始から2週間隔で計8回、排水及び処理液を採取し、JISハンドブック2001/53環境測定II水質(日本規格協会)p327-329により測定した。
【0073】
実施例1〜4、比較例1〜3
図1で示す洗車排水処理装置及び洗車排水処理システムを用い、洗車排水の処理を行った。
【0074】
洗車排水は、複数台の自動車に対してシャンプー洗車、ワックス洗車又は撥水洗車をして生じた排水が油水分離槽20に集められたのち、原水貯水タンク1に貯水されたものである。なお、実施例3及び比較例3で別途調製した洗車機用ワックスWを用いたほかは、上記のとおり、シャンプーとしてS104、ワックスとしてW103、撥水剤としてDU105を用いて洗車機による洗浄を行い、表1に示すような洗車排水を得た。
【0075】
原水貯水タンク1に貯水された洗車排水は、凝集処理部2、膜処理部3及び活性炭処理部4の順に処理した。処理条件は上記のとおりである。なお、実施例4では、凝集剤としてカチオン系ポリアクリルアミドのみからなるものを使用した。処理速度及び処理後の水質を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例1〜4と比較例1〜3との対比から、洗浄排水中のアニオン/カチオンが0.5〜2.0の範囲であることにより、処理速度、処理水質が向上することが確認された。処理速度の向上は、排水処理装置を構成する各処理部の交換寿命が長くなることを意味しており、処理水質の向上は、リサイクル水を洗車用水として再利用ができることを意味している。
【0078】
実施例3は、洗浄排水中のアニオン/カチオンは0.5〜2.0の範囲であるが、BOD/COD及びn−ヘキサン抽出物量/CODの比率範囲が好ましい範囲外であるため、実施例1、2と比べると処理速度及び処理後の水質が劣っていた。
【0079】
実施例4は、凝集処理部で使用した凝集剤がカチオン系ポリアクリルアミドであったため、実施例1、2と比べると処理速度及び処理後の水質が劣っていた。特に実施例4では、処理後のn−ヘキサン抽出物量が劣っており、この事実から、凝集剤として、モンモリロナイト、硫酸アルミニウム、アルギン酸ナトリウム、カチオン系ポリアクリルアミドからなるものを用いることにより、油分に対する凝集処理能力が大幅に向上することが確認された。
【0080】
以上の結果から、アニオン/カチオンの比率範囲と共に、BOD/COD及びn−ヘキサン抽出物量/CODの比率範囲が所定範囲に設定された洗車排水を処理対象とすることにより、処理能力が相乗的に向上することが確認された。
【0081】
【発明の効果】
本発明の洗車排水のリサイクル処理システムによれば、処理能力と処理水質が向上され、高度に処理されたリサイクル処理水が長期間安定して供給できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗車排水のリサイクル処理システムの概念図。
【図2】本発明の洗車排水のリサイクル処理システムの概念図
【符号の説明】
1 原水貯水タンク
2 凝集処理部
3 膜分離部
4 活性炭処理部
Claims (7)
- シャンプー洗車、ワックス洗車及びシリコーン系撥水剤洗車ができる洗車機、並びに凝集処理部を有する排水処理装置を備えた洗車排水のリサイクル処理システムであり、
洗車排水に含まれているアニオン系界面活性剤のモル数とカチオン系界面活性剤のモル数の比(アニオン/カチオン)が0.5〜2.0の範囲のものであり、前記洗車排水が排水処理装置で処理される、洗車排水のリサイクル処理システム。 - 洗車排水中のアニオン/カチオンの比率範囲が、洗車機段階で調整されるか、及び/又は排水処置装置に洗車排水を供給する段階で調整される、請求項1記載の洗車排水のリサイクル処理システム。
- 洗車機段階におけるアニオン/カチオンの比率範囲の調整が、洗車機用洗浄剤の成分の調整か、又は洗車機への洗浄機用洗浄剤の供給量の調整によるものである、請求項2記載の洗車排水のリサイクル処理システム。
- 排水処置装置に洗車排水を供給する段階におけるアニオン/カチオンの比率範囲の調整が、洗車排水の貯水タンクにて行われるものである、請求項2記載の洗車排水のリサイクル処理システム。
- 洗車排水の処理装置として、凝集処理部及び膜分離部を備えている、請求項1〜4のいずれかに記載の洗車排水のリサイクル処理システム。
- 洗車排水の処理装置として、凝集処理部、膜分離部及び活性炭処理部を備えている、請求項1〜4のいずれかに記載の洗車排水のリサイクル処理システム。
- 凝集処理部において、モンモリロナイト、硫酸アルミニウム、水溶性多糖類及び水溶性高分子を含有する凝集剤を使用する、請求項1〜6のいずれかに記載の洗車排水のリサイクル処理システム。
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