JP2004201673A - ラブコネクチン3結合蛋白質 - Google Patents
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Abstract
【課題】Ca2+依存性エキソサイトーシス、特にはRab3Aの活性化および不活性化の制御機構の解明に有用な蛋白質、ならびに、この蛋白質を用いる、Ca2+依存性エキソサイトーシス、特にはRab3Aの活性化および不活性化の制御に有用な物質のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】抗Rab3 GEP抗体を用いる共免疫沈降により、Rab3Aの活性化および不活性化の制御に関与する蛋白質を特定した。この蛋白質は、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合するので、この結合を増加または減少させる物質のスクリーニングに使用できる。
【選択図】 図1
【解決手段】抗Rab3 GEP抗体を用いる共免疫沈降により、Rab3Aの活性化および不活性化の制御に関与する蛋白質を特定した。この蛋白質は、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合するので、この結合を増加または減少させる物質のスクリーニングに使用できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラブコネクチン3(rabconnectin−3)およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する蛋白質およびそれをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0002】
【従来の技術】
Rab3Aは、Rab3A,−3B,−3C,−3Dの4つからなるRab3ファミリーのひとつで、神経伝達物質のCa2+依存性エキソサイトーシスの制御に重要な役割を果たすことが知られている。神経伝達物質のCa2+依存性エキソサイトーシスのプロセスは、(1)プレシナプス貯溜プールから、Ca2+チャンネルが存在する原形質膜の活性帯へのシナプス小胞の移動、(2)小胞の活性帯へのドッキング、(3)すでに放出可能な状態にあるプールでの、小胞のドッキングからプライミングへの推移、および、(4)Ca2+流入により誘導された小胞と膜の融合のステップを含む。
【0003】
Rab3A遺伝子ノックアウトマウス解析により、(1)シナプス小胞のプレシナプス原形質膜への移動とドッキングを促進し、(2)Ca2+により誘導された、小胞と原形質膜との融合を阻害するというRab3Aの二つの働きが明らかになっている。しかし、神経伝達物質のCa2+依存性エキソサイトーシスにおける、これらRab3Aの働きの分子メカニズムは知られていない。
【0004】
Rab3ファミリーメンバーは、GDP解離抑制蛋白質(Rab GDI)、GDP/GTP交換反応促進蛋白質(Rab3 GEP)およびGTPase活性促進蛋白質(Rab3 GAP)の三つの制御因子により制御されることが知られている。Rab3 GEPとRab3 GAPはRab3ファミリーメンバーに特異であるが、Rab GDIは全てのRabファミリーメンバーに対して活性である。これらの制御因子の働きによるRab3Aの循環的な活性化と不活性化が、神経伝達物質のCa2+依存性エキソサイトーシスにおけるRab3Aの働きに必須である。これら制御因子の働きに関する、現在のモデルの一つは以下の通りである。GDP−Rab3AがRab GDIとの複合体として細胞質中に貯留される。Rab5、−7、−9に対してはGDI置換因子(GDF)、またはYpt1と−7に対してはRabリサイクリング因子(RRF)の様に、他の未同定分子の助けを受け、Rab3 GEPの働きによりGDP−Rab3AがGTP−Rab3Aに活性化される部位であるシナプス小胞に、この複合体が動員される。GDFとRRFは同定されていない。GTP−Rab3Aは、その下流の二つのエフェクター、すなわち、小胞と活性帯にそれぞれ存在するラブフィリン3(rabphilin−3)とRim−3に結合する。融合段階の前または後に、エフェクターと複合体を形成するGTP−Rab3Aは、Rab3 GAPの働きによりGDP−Rab3Aに非活性化される。GDP−Rab3AはRab GDIによりトラップされ、小胞から細胞質に移動する。それゆえ、Rab3 GEPとRab3 GAPはおそらくそれらが機能するとき、小胞へ動員されると考えられるが、それらのメカニズムは依然不明である。
【0005】
最近、ラット脳の粗シナプス小胞(CSV)画分から、Rab3 GEPまたはRab3 GAPを用いた共免疫沈降により新規蛋白質が単離され、ラブコネクチン3と命名されている(非特許文献1参照)。ヒトラブコネクチン3は3,036アミノ酸からなり、計算上の分子量は339,753である。ラブコネクチン3は12個のWDドメインを持つ。ラブコネクチン3は、シナプス小胞と関連する脳に豊富に発現している。また、さらにふたつの蛋白質がラット脳のCSV画分からRab3 GEPを用いて共免疫沈降されることが見出されている(非特許文献1参照)。
【0006】
【非特許文献1】
「ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)」、2002年、第277巻、第12号、第9629−9632頁
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、Ca2+依存性エキソサイトーシス、特にはRab3Aの活性化および不活性化の制御機構の解明に有用な蛋白質を提供すること、ならびに、この蛋白質を用いる、Ca2+依存性エキソサイトーシス、特にはRab3Aの活性化および不活性化の制御に有用な物質のスクリーニング方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、GDP/GTP交換反応促進蛋白質に直接結合するラブコネクチン3結合蛋白質を得ることに成功し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)下記(a)または(b)の蛋白質。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列を有する蛋白質。
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質。
【0010】
(2)配列番号2に示すアミノ酸配列を有する(1)記載の蛋白質。
【0011】
(3)(1)または(2)の蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
【0012】
(4)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列を有する(3)のポリヌクレオチド。
【0013】
(5)下記(a)または(b)のポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列を有するポリヌクレオチド。
(b)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
【0014】
(6)下記(a)または(b)のポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列を有するポリヌクレオチド。
(b)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列と相同性が80%以上の塩基配列を有し、かつラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
【0015】
(7)(3)〜(6)のいずれか1項のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【0016】
(8)(3)〜(6)のいずれか1項のポリヌクレオチドにより宿主を形質転換して得られる形質転換体。
【0017】
(9)(8)の形質転換体を培養し、該形質転換体が発現した、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質を培養物から採取することを含む、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質の製造法。
【0018】
(10)(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを検出するための、3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプローブまたはプライマーの使用。
【0019】
(11)(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプローブまたはプライマーを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることを特徴とする(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの解析方法。
【0020】
(12)被検ポリヌクレオチドが被検組織または被検細胞中に存在することを特徴とする(11)に記載の解析方法。
【0021】
(13)(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプローブまたはプライマーを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることを特徴とする(1)または(2)に記載の蛋白質をコードする遺伝子の解析方法。
【0022】
(14)被検ポリヌクレオチドが被検組織または被検細胞中に存在することを特徴とする(12)に記載の遺伝子解析方法。
【0023】
(15)(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプライマーを用いて、被検組織または被検細胞中のmRNAをRT−PCR法によって増幅させ、(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを測定することを特徴とする遺伝子解析方法。
【0024】
(16)(1)または(2)に記載の蛋白質をコードするmRNAにハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド。
【0025】
(17)(1)または(2)に記載の蛋白質をコードするmRNAを切断するリボザイム。
【0026】
(18)(1)または(2)に記載の蛋白質をコードするmRNAをRNA干渉により切断する二本鎖RNA。
【0027】
(19)(1)または(2)に記載の蛋白質に対する抗体。
【0028】
(20)(19)に記載の抗体を用いることを特徴とする(1)または(2)記載の蛋白質の免疫組織学的な解析方法。
【0029】
(21)蛋白質の局在を解析する方法である(20)に記載の解析方法。
【0030】
(22)蛋白質の発現量を解析する方法である(20)に記載の解析方法。
【0031】
(23)(1)または(2)の蛋白質またはその異種相同蛋白質であるラブコネクチン3結合蛋白質と、ラブコネクチン3との結合を促進する物質または阻害する物質の候補物質のスクリーニング方法であって、ラブコネクチン3結合蛋白質と、ラブコネクチン3とを前記候補物質の存在下および非存在下で反応させ、前記結合を増加または減少させる前記候補物質を選択することを含む前記方法。
【0032】
(24)(1)または(2)の蛋白質またはその異種相同蛋白質であるRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質と、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質との結合を促進する物質または阻害する物質の候補物質のスクリーニング方法であって、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質とRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質とを前記候補物質の存在下および非存在下で反応させ、前記結合を増加または減少させる前記候補物質を選択することを含む前記方法。
【0033】
【発明の実施の形態】
<本発明の蛋白質等>
本発明の蛋白質は、ラブコネクチン3およびRab3 GEPに直接結合する蛋白質である。本発明の蛋白質はラブコネクチン3と複合体を形成することから、以下、本発明蛋白質をラブコネクチン3βと、ラブコネクチン3をラブコネクチン3αとも呼ぶ。
【0034】
本発明の蛋白質のうち、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する蛋白質は、後述の実施例に記載したように、ヒトのラブコネクチン3βとして特定された蛋白質である。蛋白質には、同一の機能を有する変異体の存在が予測され、また、蛋白質のアミノ酸配列を、例えば保存的置換のように適宜改変することによって、同一の機能を有する変異体を得ることができる。従って、配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質も本発明の蛋白質に包含される。
【0035】
蛋白質のアミノ酸配列の改変は、部位特異的変異誘発法などの周知の手段により蛋白質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を改変し、塩基配列が改変されたポリヌクレオチドを発現させることによって行うことができる。また、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性は、生理的な条件でこれらに結合することを意味し、この活性は公知の蛋白質相互間の結合を測定する方法に従って測定できる(例えば、後記実施例、または、「タンパク実験プロトコール 機能解析編」、秀潤社(1997)、第9章 免疫沈降、親和性レジンを用いた相互作用解析、第151〜161頁参照)。従って、同一の機能を有するか否かを決定することは当業者であれば容易である。
【0036】
本発明の蛋白質を構成するアミノ酸残基は天然に存在するものでも、また修飾されたものであっても良い。アミノ酸残基の修飾としては、アシル化、アセチル化、アミド化、アルギニル化、GPIアンカー形成、架橋、γ−カルボキシル化、環化、共有架橋の形成、グリコシル化、酸化、脂質または脂肪誘導体の共有結合化、ジスルフィド結合の形成、セレノイル化、脱メチル化、蛋白質の分解処理、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合化、ヒドロキシル化、ピログルタメーピログルタメートの形成、フラビンの共有結合化、プレニル化、ヘム部分の共有結合化、ホスファチジルイノシトールの共有結合化、ホルミル化、ミリストイル化、メチル化、ユビキチン化、ヨウ素化、ラセミ化、ADP−リボシル化、硫酸化、リン酸化等が例示される。さらに、本発明の蛋白質にはシグナルペプチド部分がついた前駆体、シグナルペプチド部分を欠く成熟蛋白質、及びその他のペプチド配列により修飾された融合蛋白質を含む。本発明の蛋白質に付加するペプチド配列としては、インフルエンザ凝集素(HA)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、サブスタンスP、多重ヒスチジンタグ(6×His、10×His等)、プロテインC断片、マルトース結合蛋白質(MBP)、免疫グロブリン定常領域、α−チューブリン断片、β−ガラクトシダーゼ、B−タグ、c−myc断片、E−タグ(モノクローナルファージ上のエピトープ)、FLAG(Hopp et al. (1988) Bio/Tehcnol. 6: 1204−10)、lckタグ、p18 HIV断片、HSV−タグ(ヒト単純ヘルペスウイルス糖蛋白質)、SV40T抗原断片、T7−タグ(T7 gene10蛋白質)、VSV−GP断片(Vesicular stomatitisウイルス糖蛋白質)等の蛋白質の精製を容易にする配列(例えば、pcDNA3.1/Myc−His(Invitrogen)のようなベクターを利用できる)、組換え技術により蛋白質を生産する際に安定性を付与する配列等を選択することができる。
【0037】
本発明の蛋白質は公知の遺伝子組換え技術により、また化学的な合成法により製造することができる。遺伝子組換え技術により本発明の蛋白質を製造する場合、製造される蛋白質は、選択する宿主の種類によってグリコシル化を受ける場合と受けない場合、さらに分子量、等電点等が異なる場合がある。通常、大腸菌等の原核細胞を宿主として蛋白質を発現させた場合、得られる蛋白質は本来蛋白質が有していたN−末端にメチオニン残基が付加された形で産生される。このような宿主の違いにより、構造の異なる蛋白質も本発明の蛋白質に含まれる。
【0038】
<蛋白質の製造>
In vitroで蛋白質を製造する場合、in vitroトランスレーション(Dasso and Jackson (1989) Nucleic Acids Res. 17: 3129−44)等の方法に従って、細胞を含まない試験管内の系で蛋白質を製造することができる。それに対して、細胞を用いて蛋白質を製造する場合、まず、適当な宿主細胞を選択し、目的とするDNAによる形質転換を行う。続いて形質転換された細胞を培養することにより所望の蛋白質を得ることができる。培養は、選択した細胞に適した公知の方法により行う。例えば、動物細胞を選択した場合には、DMEM(Virology 8: 396 (1959)、MEM(Science 122: 501 (1952))、RPMI1640(J. Am. Med. Assoc. 199: 519 (1967))、199(Proc. Soc. Biol. Med. 73: 1 (1950))、IMDM等の培地を用い、必要に応じウシ胎児血清(FCS)等の血清を添加し、pH約6〜8、30〜40℃において15〜200時間前後の培養を行うことができる。その他、必要に応じ途中で培地の交換を行ったり、通気及び攪拌を行ったりすることができる。
【0039】
一方、in vivoにおける蛋白質の生産系を確立するためには、動物または植物へ目的とするDNAを導入し、生体内において蛋白質を産生させる。ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシ等の哺乳動物、カイコ等の昆虫(Susumu (1985) Nature 315: 592−4)等の動物系が公知である(Lubon (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4: 1−54)。また、哺乳動物系においてトランスジェニック動物を用いることもできる。
【0040】
例えば、所望の蛋白質をヤギの乳汁中に分泌させることを目的とする場合、該蛋白質をコードするDNAをβカゼイン等の乳汁中に特異的分泌される蛋白質をコードするDNAと結合し、目的蛋白質を融合蛋白質として発現させるようにする。次に、融合蛋白質をコードするDNAをヤギの胚へ導入する。DNAを導入した胚を雌ヤギの子宮へ移植する。このヤギから生まれるトランスジェニックヤギ、またはその子孫は乳汁中に所望の蛋白質を分泌する。必要に応じ、乳汁量を増やすため、ホルモンを投与することもできる(Ebert et al. (1994) Bio/Technology 12: 699−702)。
【0041】
タバコ等の植物を用いたトランスジェニック植物の蛋白質産生系が公知である。まず、所望の蛋白質コードDNAをpMON530等の植物発現に適したベクターに組み込み、Agrobacterium tumefaciens等の細菌に導入する。DNAの導入された細菌をNicotina tabacum等の植物に感染させ、植物を再生させることにより、所望の蛋白質を得られたトランスジェニック植物の葉より単離することができる(Julian et al. (1994) Eur. J. Immunol. 24: 131−8)。その他の方法としては、PEGを用いプロトプラストへDNAを導入して植物体を再生する方法(Gene Transfer to Plants, Potrykus and Spangenberg ed. (1995) pp. 66−74;インド型イネ品種に適する)、電気パルスによりプロトプラストへDNAを導入して植物体を再生する方法(Toki et al. (1992) Plant Physiol. 100: 1503−7;日本型イネに適する)、パーティクルガン法で植物細胞に直接DNAを導入し植物体を再生する方法(Christou et al. (1991) Bio/Technology 9: 957−62)、アグロバクテリウムを介し細胞にDNAを導入し植物体を再生する方法(Hiei et al. (1994) Plant J. 6:271−82)等が確立されている。植物を再生する方法については、Toki et al. (1995) Plant Physiol. 100: 1503−7を参照することができる。
【0042】
トランスジェニック植物が一度得られた後は、さらに該植物の種子、果実、塊茎、塊根、株、切穂、カルス、プロトプラスト等を材料として同じように本発明の蛋白質を産生する植物宿主を繁殖させ得ることができる。
【0043】
通常、遺伝子組換え技術により製造された本発明の蛋白質は、まず、蛋白質が細胞外に分泌される場合には培地を、特にトランスジェニック生物の場合には体液等を、細胞内に産生される場合には細胞を溶解して溶解物を回収する。そして、蛋白質の精製方法として公知の塩析、蒸留、各種クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、ゲル濾過、限外濾過、再結晶、酸抽出、透析、免疫沈降、溶媒沈澱、溶媒抽出、硫安またはエタノール沈澱等を適宜組合せることにより所望の蛋白質を精製する。クロマトグラフィーとしては、アニオンまたはカチオン交換等のイオン交換、アフィニティー、逆相、吸着、ゲル濾過、疎水性、ヒドロキシアパタイト、ホスホセルロース、レクチンクロマトグラフィー等が公知である(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual, Marshak et al. ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1996))。HPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0044】
また、天然由来の蛋白質を精製して取得してもよい。例えば、後述の本発明の蛋白質に対する抗体を利用して、アフィニティークロマトグラフィーにより精製することもできる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 16.1−16.19)。また、GSTとの融合蛋白質とした場合にはグルタチオンカラムを、ヒスチジンタグを付加した融合蛋白質とした場合にはニッケルカラムを用いた精製法も利用できる。本発明の蛋白質を融合蛋白質として製造した場合には、必要に応じて精製後にトロンビンまたはファクターXa等を使用して不要な部分を切断することもできる。さらに、必要に応じキモトリプシン、グルコシダーゼ、トリプシン、プロテインキナーゼ、リシルエンドペプチダーゼ等の酵素を用い得られたポリペプチドを修飾することも可能である。
【0045】
<ポリヌクレオチド>
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチドである。このポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質を遺伝子工学的に発現させる際に使用することができる。また、本発明のポリヌクレオチドは、ラブコネクチン3結合蛋白質遺伝子の検出試薬として用いることができる。つまり、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド、またはその一部の特異的断片を使用して、分子生物学的解析方法を行うことができ、ポリヌクレオチドを検出する方法、ポリヌクレオチドの発現量を解析する方法を提供する。例えば、サザンブロット法、ノーザンブロット法、PCR法、RT−PCR法、定量的RT−PCR法、in situ ハイブリダイゼーション法等があげられる。
【0046】
本発明において、ラブコネクチン3結合蛋白質がシナプスに局在することが確認されたことから、ラブコネクチン3結合蛋白質をシナプスのマーカーとして使用することができる。すなわち、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド、またはその一部の特異的断片を使用して、ラブコネクチン3結合蛋白質遺伝子の発現を検出することによりシナプスを検出することができる。従って、本発明のポリヌクレオチドは、シナプス検出試薬として用いることができる。また、本発明の蛋白質は、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合することが確認されたことから、本発明のポリヌクレオチドは、これらの検出にも用いることができる。
【0047】
ここで、「ポリヌクレオチド」とは、複数のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)等の塩基または塩基対からなる重合体を指し、cDNA、ゲノムDNA、化学合成DNA及びRNAを含む。また、天然以外の塩基、例えば、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、2’−O−メチルシチジン、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’−O−メチルプソイドウリジン、β−D−ガラクトシルキュェオシン、2’−O−メチルグアノシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルプソイドウリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、β−D−マンノシルキュェオシン、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウリジン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、5−メトキシウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、N−((9−β−D−リボフラノシル−2−メチルリオプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)N−メチルカルバモイル)トレオニン、ウリジン−5−オキシ酢酸−メチルエステル、ウリジン−5オキシ酢酸、ワイブトキソシン、プソイドウリジン、キュェオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−メチルウリジン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、2’−O−メチル−5−メチルウリジン、2’−O−メチルウリジン、ワイブトシン、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジン等を必要に応じて含むポリヌクレオチドも包含する。
【0048】
本発明のポリヌクレオチドとしては、配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列を有するポリヌクレオチドが挙げられる。このポリヌクレオチドは、後述の実施例において、塩基配列が決定されたポリヌクレオチドである。さらに、本発明のポリヌクレオチドは、ラブコネクチン3β蛋白質をコードする、配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列を含む。このようなアミノ酸配列をコードする核酸配列は、配列番号1に記載された核酸配列に加えて、遺伝子暗号の縮重により配列番号1記載の配列とは異なる核酸配列を含むものである。本発明のポリヌクレオチドを遺伝子工学的な手法によりポリペプチドを発現させるのに用いる場合、使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、発現効率の高いヌクレオチド配列を選択し、設計することができる(Grantham et al. (1981) Nucleic Acids Res. 9: r43−74)。
【0049】
本発明のポリヌクレオチドは、ラブコネクチン3β蛋白質、またはその抗原性断片をコードする、配列番号2のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列を含む。1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列からなる変異ポリペプチドで、元のポリペプチドと同じ生物学的活性が維持されることは公知である(Mark et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 5662−6; Zoller and Smith (1982) Nucleic Acids Res. 10: 6487−500; Wang et al. (1984) Science 224: 1431−3; Dalbadie−McFarland et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 6409−13)。複数個とは、通常には2〜30個、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜5個である。
【0050】
ここで、アミノ酸の置換とは、配列中のアミノ酸残基の一つ以上が、異なる種類のアミノ酸残基に変えられた変異を意味する。このような置換により本発明のポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を改変する場合、蛋白質の機能を保持することが必要な場合には、保存的な置換を行うことが好ましい。保存的な置換とは、置換前のアミノ酸と似た性質のアミノ酸をコードするように配列を変化させることである。アミノ酸の性質は、例えば、非極性アミノ酸(Ala, Ile, Leu, Met, Phe, Pro, Trp, Val)、非荷電性アミノ酸(Asn, Cys, Gln, Gly, Ser, Thr, Tyr)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Arg, His, Lys)、中性アミノ酸(Ala, Asn, Cys, Gln, Gly, Ile, Leu, Met, Phe, Pro, Ser, Thr, Trp, Tyr, Val)、脂肪族アミノ酸(Ala, Gly)、分枝アミノ酸(Ile, Leu, Val)、ヒドロキシアミノ酸(Ser, Thr)、アミド型アミノ酸(Gln, Asn)、含硫アミノ酸(Cys, Met)、芳香族アミノ酸(His, Phe, Trp, Tyr)、複素環式アミノ酸(His, Trp)、イミノ酸(Pro, 4Hyp)等に分類することができる。中でも、Ala、Val、Leu及びIleの間、Ser及びThrの間、Asp及びGluの間、Asn及びGlnの間、Lys及びArgの間、Phe及びTyrの間の置換は、蛋白質の性質を保持する置換として好ましい。変異されるアミノ酸の数及び部位は特に制限されず、該ポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸がラブコネクチン3β蛋白質の抗原性を有していれば良い。
【0051】
このような配列番号2のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press (1989))、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley &Sons (1987−1997);特にSection8.1−8.5)、Hashimoto−Goto et al. (1995) Gene152: 271−5、Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488−92、Kramerand Fritz (1987) Method. Enzymol. 154: 350−67、Kunkel (1988) Method. Enzymol. 85: 2763−6等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。
【0052】
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、ラブコネクチン3β蛋白質、またはその抗原性断片をコードする、配列番号1の核酸配列または該核酸配列に相補的な配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、を含むポリヌクレオチドである。このようなポリヌクレオチドとしては、アイソフォーム、アルタナティブアイソフォーム、及びアレリック変異体が考えられ、本発明のポリヌクレオチドに含まれる。このようなポリヌクレオチドは、配列番号1を含む核酸配列からなるポリヌクレオチド、またはその断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の動物のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることができる。cDNAライブラリーの作成方法については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press (1989))を参照することができる。また、市販のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを用いてもよい。
【0053】
より具体的に、cDNAライブラリーの作製においては、まず、本発明のポリヌクレオチドを発現する細胞、臓器、組織等からグアニジン超遠心法(Chirwin et al. (1979) Biochemistry 18: 5294−9)、AGPC法(Chomczynski and Sacchi (1987) Anal. Biochem. 162: 156−9)等の公知の手法により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia)等を用いてmRNAを精製する。QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia)のような、直接mRNAを調製するためのキットを利用してもよい。次に得られたmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業)のようなcDNA合成のためのキットも市販されている。その他の方法として、cDNAはPCRを利用した5’−RACE法(Frohman et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 8998−9002; Belyavsky et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17: 2919−32)により合成、及び増幅させてもよい。また、全長率の高いcDNAライブラリーを作製するために、オリゴキャップ法(Maruyama and Sugano (1994) Gene 138: 171−4; Suzuki (1997) Gene 200: 149−56)等の公知の手法を採用することもできる。上述のようにして得られたcDNAは、適当なベクター中に組み込む。
【0054】
本発明におけるハイブリダイゼーション条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」等の条件を挙げることができる。より詳細には、Rapid−hyb buffer(Amersham Life Science)を用いた方法として、68℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行った後、プローブを添加して1時間以上68℃に保ってハイブリッド形成させ、その後、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を3回、最後に、1×SSC、0.1%SDS中、50℃で20分の洗浄を2回行うことも考えられる。その他、例えばExpresshyb Hybridization Solution (CLONTECH)中、55℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行い、標識プローブを添加し、37〜55℃で1時間以上インキュベートし、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を1回行うこともできる。ここで、例えば、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションや2度目の洗浄の際の温度を上げることにより、よりストリンジェントな条件とすることができる。例えば、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの温度を60℃、さらにストリンジェントな条件としては68℃とすることができる。あるいは、0.1% SDSを含む4×SSC中42℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.1% SDSを含む2×SSC中25℃(好ましくは、0.1% SDSを含む0.1×SSC中50℃)での1時間の洗浄が挙げられる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を適宜設定することができる。
【0055】
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、『Molecular Cloning, ALaboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press (1989);特にSection9.47−9.58) 、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987−1997);特にSection6.3−6.4)、『DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.』(Oxford University (1995);条件については特にSection2.10)等を参照することができる。ハイブリダイズするポリヌクレオチドとしては、配列番号1を含む核酸配列に対して少なくとも50%以上、好ましくは70%、さらに好ましくは80%、より一層好ましくは90%(例えば、95%以上、さらには99%)の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。このような同一性は、BLASTアルゴリズム(Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264−8; Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873−7)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいたプログラムとして、アミノ酸配列についての同一性を決定するプログラムとしてはBLASTX、ヌクレオチド配列についてはBLASTN(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403−10)等が開発されており、本発明の配列に対して使用することができる。具体的な解析方法については、例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov.等を参照することができる。
【0056】
その他、遺伝子増幅技術(PCR)(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 6.1−6.4)により、ラブコネクチン3βのアイソフォームやアレリック変異体等、ラブコネクチン3βと類似した構造及び機能を有する遺伝子を、配列番号1に記載の核酸配列を基にプライマーを設計し、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の動物のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることができる。
【0057】
本発明のポリヌクレオチドの塩基配列の確認は、慣用の方法により配列決定することにより行うことができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463)等により行うことができる。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
【0058】
<ベクター>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。本発明のベクターは、本発明のポリヌクレオチドを宿主細胞内に保持したり、該ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドを発現させたりするのに有用である。本ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、クローニング用ベクター、発現ベクター等の種々のベクターが含まれる(Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Press (1989); Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987))。好ましい態様においては、ベクターを導入した宿主細胞内で本発明のポリヌクレオチドが発現されるように制御配列下に結合する。ここで「制御配列」とは、宿主細胞が原核生物であればプロモーター、リボソーム結合部位、及びターミネーターを含み、真核生物の場合は、プロモーター及びターミネーターであり、場合によってトランスアクチベーター、転写因子、転写物を安定化するポリAシグナル、スプライシング及びポリアデニル化シグナル等が含まれる。このような制御配列は、それに連結されたポリヌクレオチドの発現に必要とされるすべての構成成分を含むものである。また、本発明のベクターは、好ましくは選択可能なマーカーを含む。さらに、細胞内で発現されたポリペプチドを小胞体内腔、グラム陰性菌を宿主とする場合ペリプラズム内、または細胞外へと移行させるために必要とされるシグナルペプチドを目的のポリペプチドに付加するようにして発現ベクターへ組み込むこともできる。さらに、必要に応じリンカーの付加、開始コドン(ATG)、終止コドン(TAA、TAGまたはTGA)の挿入を行ってもよい。
【0059】
本発明のベクターは、好ましくは発現ベクターである。「発現ベクター」とは、in vitroでまたは、目的とする宿主細胞内で発現ベクター中にコードされるポリペプチドを発現することができる構築物を指す。クローニングベクター、バイナリーベクター、インテグレイティングベクター等が本発明の発現ベクターに含まれる。発現の過程には、発現ベクター中のコード配列の翻訳可能なmRNAへの転写、及びmRNAから本発明のポリペプチドへの翻訳、さらに場合によっては発現されたポリペプチドの小胞体内腔、ペリプラズムまたは細胞外への分泌が含まれる。
【0060】
In vitroにおけるポリペプチドの発現を可能にするベクターとしては、pBEST(Promega)を例示することができる。また、E.coli等の原核細胞宿主における発現を可能にするプロモーターとしてはPL、araB(Better et al. (1988) Science 240: 1041−3)、lacZ(Ward et al. (1989) Nature 341: 544−6; Ward et al. (1992) FASEB J. 6: 2422−7)、trp、tac、trc(lacとtrpの融合)等のプロモーターが挙げられる。また、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来ターミネーターが、利用可能である。さらに、大腸菌用のベクターは、好ましくはベクターを宿主内で増幅するための「ori」、及び形質転換された宿主を選抜するためのマーカー遺伝子を持つ。アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、及びクロラムフェニコール等の薬剤により宿主の判別を行うことを可能にする薬剤耐性遺伝子の使用が好ましい。特に、ポリペプチドをペリプラズムへ分泌させることを目的とする場合、pelBシグナル配列(Lei etal. (1987) J. Bacteriol. 169:4379)を使用することができる。例えば、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pCR−Script、pGEX−5X−1(Pharmacia)、pEGFP、pBluescript(Stratagene)、pET(Invitrogen;この場合の宿主はT7ポリメラーゼを発現しているBL21が好ましい)等のベクターを挙げることができる。また、特にサブクローニングまたは切出し用のベクターとしては、pGEM−T、pDIRECT、pT7等を例示できる。
【0061】
大腸菌以外の細菌宿主用としては、バチルス属のものが挙げられ、pUB110系、pc194系のベクターが例示される。より具体的に、枯草菌由来のpPL608、pKTH50等を挙げることができる。その他、Pseudomonas putida、Pseudomonas cepacia等のシュードモナス属、Brevibacterium lactofermentum等のブレビバクテリウム属(pAJ43(Gene 39: 281 (1985))等)、Corynebacterium glutamicum等のコリネバクテリウム属(pCS11(特開昭57−183799号公報; pCB101(Mol. Gen. Genet. 196:175 (1984))等)、ストレプトコッカス属(pHV1301(FEMS Microbiol. Lett. 26: 239 (1985))、pGK1(Appl. Environ. Microbiol. 50: 94 (1985))等)、ラクトバチルス属(pAMβ1(J. Bacteiol. 137: 614 (1979))等)、Rhodococcus rhodochrous等のロドコッカス属(J. Gen. Microbiol. 138: 1003 (1992))、Streptomyces lividans、Streptomyces virginiae等の ストレプトマイセス属(Genetic Manipulation of Streptomyces: A Laboratory Manual, Hopwood et al., Cold Spring Harbor Laboratories (1985)参照;pIJ486(Mol. Gen. Genet. 203: 468−78 (1986))、pKC1064(Gene 103: 97−9 (1991))、pUWL−KS(Gene 165: 149−50 (1995)))の細菌を宿主とするベクター系が開発されている。微生物を宿主として利用できるベクターについては、『微生物学基礎講座8 遺伝子工学』(共立出版)等の文献を参照することができる。ベクターを細菌宿主へ導入するための手法としては、塩化カルシウム法(Mandel and Higa (1970) J. Mol. Biol. 53: 158−62; Hanahan (1983) J. Mol. Biol. 166: 557−80)、エレクトポレーション法等を採用することができる。
【0062】
また、真核細胞宿主での発現を可能にする調節要素は、酵母を宿主とする場合には、AOX1及びGAL1プロモーターが例示される。酵母由来の発現ベクターとしては、Pichia Expression Kit (Invitrogen)、pNV11、SP−Q01等が例示できる。酵母で利用可能なベクターに関しては、Adv. Biochem. Eng. 43: 75−102 (1990)、Yeast 8: 423−88 (1992)等に詳述されている。より具体的には、Saccharomyces cerevisiae等のサッカロマイセス属では、YRp系、YEp系、YCp系、及びYIp系ベクターが利用可能である。特に、多コピーの遺伝子導入が可能であり、安定に遺伝子を保持できるインテグレーションベクター(EP537456等)が有用である。その他、Kluyveromyces lactis等のクルイベロマイセス属では、S.cerevisiae由来2μm系ベクター、pKD1系ベクター(J. Bacteriol. 145: 382−90 (1981))、pGK11由来ベクター、クライベロマイセス自律増殖遺伝子KARS系ベクター等、シゾサッカロマイセス属では、Mol. Cell. Biol. 6: 80 (1986)に記載のベクター、pAUR224(宝酒造)、チゴサッカロマイセスではpSB3(Nucleic Acids Res. 13: 4267 (1985))由来ベクター、Pichia angusta、Pichia pastoris等のピキア属ではYeast 7: 431−43 (1991)、Mol. Cell. Biol. 5: 3376 (1985)、Nucleic Acids Res. 15: 3859 (1987)等の文献記載のベクター、Candida maltosa、C.albicans、C.tropicalis、C.utilis等のキャンディダ属では、特開平8−173170号公報記載のベクター、またC.maltosa由来のARS(Agri. Biol. Chem. 51: 1587 (1987))を利用したベクター、Aspergillus niger、A.oryzae等のアスペルギルス属では、Trends in Biotechnology 7: 283−7 (1989)記載のベクター、トリコデルマ属では菌体外セルラーゼ遺伝子由来プロモーター(Bio/Technology 7: 596−603 (1989))を利用したベクターが利用できる。
【0063】
哺乳動物及びその他の動物細胞を宿主とする場合には、アデノウイルス後期プロモーター(Kaufman et al. (1989) Mol. Cell. Biol. 9: 946)、CAGプロモーター(Niwa et al. (1991) Gene 108: 193−200)、CMV 前初期プロモーター(Seed and Aruffo (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3365−9)、EF1αプロモーター(Mizushima et al. (1990) Nucleic Acids Res. 18: 5322; Kim et al. (1990) Gene 91: 217−23)、HSV TKプロモーター、SRαプロモーター(Takebe et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8: 466)、SV40プロモーター(Mulligan et al. (1979) Nature 277: 108)、SV40 earlyプロモーター(Genetic Engineering Vol.3, Williamson ed., Academic Press (1982) pp.83−141)、SV40 lateプロモーター(Gheysen and Fiers (1982) J. Mol. Appl. Genet. 1: 385−94)、RSV(ラウス肉腫ウイルス)−LTRプロモーター(Cullen (1987) Methods Enzymol. 152: 684−704)、MMLV−LTRプロモーター、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、及びグロビンイントロン等を使用することができる。さらに、ネオマイシン、G418等の薬剤による判別を可能とする薬剤耐性遺伝子がベクターに含まれていることが好ましい。そして、細胞内で遺伝子のコピー数の増加を計る場合には、例えば核酸合成経路を欠損したCHOを宿主とし、その欠損を補うDHFR遺伝子を有するpCHOI等のベクターを採用し、メトトレキセート(MTX)によりコピー数を増幅させることができる。一方、遺伝子の一過性発現のためには、SV40のT抗原遺伝子を染色体上に有するCOS細胞を宿主とし、pcD等のSV40の複製起点、またはアデノウイルス、ウシパピーローマウイルス(BPV)、ポリオーマウイルス等の複製開始点を持つベクターを使用することができる。さらに、遺伝子コピー数の増幅のための選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)、チミジンキナーゼ(TK)、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)等をコードする遺伝子を含んでもよい。適当なベクターとして、例えば、Okayama−Bergの発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8(Nature 329: 840−2 (1987))、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)、pSPORT1(GIBCO BRL)、pSV2dhfr(Mol. Cell. Biol. 1: 854−64 (1981))、pEF−BOS(Nucleic Acids Res. 18: 5322 (1990))、pCEP4(Invitrogen)、pMAM、pDR2、pBK−RSV、pBK−CMV、pOPRSV、pOP13、pME18S(Mol.Cell.Biol. 8: 466−72 (1988))等が公知である。
【0064】
特に動物の生体内において本発明のポリヌクレオチドを発現させるためには、pAdexlcw等のアデノウイルスベクター、pZIPneo等のレトロウイルスベクターが挙げられる。ベクターはアデノウイルス法、エレクトポレーション(電気穿孔)法(Cytotechnology 3: 133 (1990))、カチオニックリポソーム法(カチオニックリポソームDOTAP(Boehringer Mannheim)等)、正電荷ポリマーによる導入法、静電気型リポソーム(electrostatic type liposome)法、内包型リポソーム(internaltype liposome)法、パーティクルガンを用いる方法、リポソーム法、リポフェクション(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 7413 (1987))、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、レセプター介在遺伝子導入法、レトロウイルス法、DEAEデキストラン法、ウイルス−リポソーム法(別冊実験医学『遺伝子治療の基礎技術』羊土社(1997);別冊実験医学『遺伝子導入&発現解析実験法』羊土社(1997); J. Clin. Invest. 93: 1458−64 (1994); Am. J. Physiol. 271: R1212−20 (1996); Molecular Medicine 30: 1440−8 (1993); 実験医学 12: 1822−6 (1994); 蛋白質核酸酵素 42: 1806−13 (1997); Circulation 92(Suppl.II): 479−82 (1995))、naked−DNAの直接導入法等により宿主に導入することができる。アデノウイルス及びレトロウイルス以外由来のウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、トガウイルス、パラミクソウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス等を元に作製されたベクターを利用することもできる。生体内への投与は、ex vivo法でもin vivo法で行ってもよい。
【0065】
その他、昆虫発現システムも異種ポリペプチドを発現させる系として知られており、例えば、Autographa california核ポリへドロシスウイルス(AcNPV)をベクターとし、Spodoptera frugiperda細胞、またはTrichoplusia larvae細胞中で外来遺伝子を発現させることができる。この際、目的とする外来遺伝子は、ウイルスの非必須領域にクローニングする。例えば、ポリヘドリンプロモーター制御下に連結してもよい。この場合、ポリへドリン遺伝子は不活化され、コート蛋白質を欠く組換えウイルスが産生され、該ウイルスに感染したSpodoptera frugiperdaまたはTrichoplusia larvae等の細胞中で目的とするポリペプチドが発現される(Smith (1983) J. Virol. 46: 584; Engelhard (1994) Proc. Natl. Acad. Sci.USA 91: 3224−7)。その他、昆虫細胞由来の発現ベクターとして、Bac−to−BAC baculovirus expression system(Bigco BRL)、pBacPAK8等も公知である。
【0066】
植物細胞を宿主とする場合には、例えばカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター等を利用したベクターが使用可能である。植物細胞へのベクターの導入法としては、PEG法、エレクトポーレション法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法等が公知である。
【0067】
ベクターへのDNAの挿入は、制限酵素サイトを利用したリガーゼ反応により行うことができる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(1987) Section 11.4−11.11; Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Press (1989) Section 5.61−5.63)。
【0068】
<形質転換体>
本発明の形質転換体は、本発明のポリヌクレオチドにより宿主を形質転換して得られる形質転換体であり、本発明の蛋白質を発現する。
【0069】
<宿主>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主が提供される。本発明のポリペプチドの製造には、in vitro及びin vivoの産生系が考えられる。本発明の宿主には、古細菌、細菌、真菌類、植物、昆虫、魚類、両生類、ハ虫類、鳥類、哺乳類由来の原核及び真核細胞が含まれる。本発明の宿主は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞内に含むものである。該ポリヌクレオチドは、宿主細胞のゲノム上の天然に存在する位置になければよく、該ポリヌクレオチド自身のプロモーター支配下にあっても、ゲノム中に組み込まれていても、染色体外の構造として保持されていても良い。
【0070】
細菌宿主としては、E.coli(JM109, DH5α, HB101, XL1Blue)、Serratia marcescens、Bacillus subtilis等、エシェリシア属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、セラチア属、バシルス属等に属するのグラム陽性及びグラム陰性細菌を例示することができる。
【0071】
真核宿主には、酵母等の真菌類、高等植物(Nicotiana tabacum由来細胞)、昆虫(ドロソフィラS2、スポロドプテラSf9、Sf21、Tn5)、魚類、両生類(アフリカツメガエル卵母細胞(Valle et al. (1981) Nature 291: 358−40))、ハ虫類、鳥類、哺乳類(CHO(J. Exp. Med. 108: 945 (1995); 中でもDHFR遺伝子欠損dhfr−CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 4216−20 (1980)及びCHO K−1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 60: 1275 (1968))が好適である)、COS、Hela、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowesメラノーマ細胞)、ミエローマ、Vero、Namalwa、Namalwa KJM−1、HBT5637(特開昭63−299号公報)、植物(ジャガイモ、タバコ、トウモロコシ、イネ、アブラナ、ダイズ、トマト、コムギ、オオムギ、ライ麦、アルファルファ、亜麻等)等の細胞が含まれる。真菌類としては、Saccharomyces属に属するSaccharomyces cerevisiae、Pichia属等の酵母に加えて、糸状菌のAspergillus属のAspergillus niger等の細胞を宿主とした発現系も公知である。
【0072】
宿主細胞へのベクターの導入は、エレクトポレーション法(Chu et al. (1987)Nucleic Acids Res. 15: 1311−26)、カチオニックリポソーム法、電気パルス穿孔法(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 9.1−9.9)、微小ガラス管を使用した直接注入法、マイクロインジェクション法、リポフェクション(Derijard (1994) Cell 7: 1025−37; Lamb (1993) Nature Genetics 5: 22−30; Rabindran et al. (1993) Science 259: 230−4)、リポフェクタミン法(GIBCO−BRL)、リン酸カルシウム法(Chen and Okayama (1987) Mol. Cell. Biol. 7: 2745−52)、DEAEデキストラン法(Lopata et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12: 5707−17; Sussman and Milman (1985) Mol. Cell. Biol. 4: 1642−3)、FuGene6試薬(Boehringer−Mannheim)等により行い得る。
【0073】
本発明の製造法は、本発明の蛋白質すなわちラブコネクチン3結合蛋白質の製造法であり、本発明の形質転換体を培養し、該形質転換体が発現したラブコネクチン3結合蛋白質を培養物から採取することを含む。より具体的には前述の<蛋白質の製造>に記載した方法を用いることができる。
【0074】
ラブコネクチン3βとラブコネクチン3αは、抗ラブコネクチン3α抗体および抗ラブコネクチン3β抗体のいずれを用いても共免疫沈降される。両タンパクは、0.5 M NaClまたは1% CHAPS存在下では互いから分離しないが、1 M NaCl存在下で一部が、1%デオキシコレート存在下では完全に分離する。さらに、これらの二つのタンパクは、シナプス小胞に共存する。これらの結果は、ラブコネクチン3αと3βとがサブユニット構造を構成することを示している。
【0075】
ラブコネクチン3αは膜貫通部分を持たないが、シナプス小胞と結合することが示されている(上記非特許文献1)。ラブコネクチン3αは、Triton X−100やNP−40の様な界面活性剤の存在下で小胞から分離することから、この蛋白質はシナプス小胞の表在性膜蛋白質の一つであることが示唆される。同様に、ラブコネクチン3βは膜貫通部分を持たず、同じ状況下で小胞から分離することから、この蛋白質もまた、シナプス小胞の表在性膜蛋白質の一つであることが示唆される。
【0076】
ラブコネクチン3βは直接Rab3 GEPに化学量論的に結合するが、ラブコネクチン3αは結合しない。ラブコネクチン3αと3βの複合体は直接Rab3 GEPに結合するが、化学量論的にはこの結合はラブコネクチン3βのものよりもずっと小さいことから、3αと3βとの相互作用が、Rab3 GEPが複合体に結合しない様にその結合部位を隠すことが示唆される。対照的に、ラブコネクチン3α、3β、およびそれらの複合体のいずれもRab3 GAPに結合しないことから、ラブコネクチン3βは間接的に、おそらくは未同定の分子を介して、Rab3 GAPに結合すると示唆される。
【0077】
なお、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質は、J. Biol. Chem., 272, 3875−3878(1997)、J. Biol. Chem., 273, 24781−24785、特開平10−210971号公報等に記載されているようにして得ることができる。
【0078】
<プローブ>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドに対するプローブが提供される。本発明のプローブは、本発明のポリヌクレオチドに相補的な、少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなる。ここで「相補的な配列」とは、ヌクレオチド配列中の少なくとも15個の連続した塩基が鋳型に対して完全に対になっている場合のみならず、そのうちの少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上(例えば、97%または99%)が対になっているものも含む。対になっているとは、鋳型となるポリヌクレオチドの塩基配列中のAに対しT(RNAの場合はU)、TまたはUに対しA、Cに対しG、そしてGに対しCが対応して鎖が形成されていることを意味する。そして相同性は、上述のハイブリダイズするポリヌクレオチドの場合と同様の方法で決定することができる。本発明のプローブは、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドの一部の、連続してなる少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなる。本発明のプローブを用いることにより、本発明のポリヌクレオチドを検出または単離することができる。また、本発明の蛋白質をコードする遺伝子発現を解析することができる。さらには、発現の局在を解析することができる。測定するサンプルは、臓器、組織、細胞等である。
【0079】
プローブを用いる本発明のポリヌクレオチドの解析または本発明の蛋白質をコードする遺伝子の解析は、プローブを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることにより行うことができ、通常には、プローブを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせ、生じたハイブリッドを検出し、その検出結果を解析することにより行われる。検出結果の解析には、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の測定(検出、定量を含む)、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の局在の検出が含まれる。被検ポリヌクレオチドは、被検組織または被検細胞中に存在するものであってもよい。
【0080】
<プライマー>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドに対するプライマーが提供される。このような本発明のプライマーは、本発明のポリヌクレオチドに相補的な、少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなり、本発明のポリヌクレオチドを検出または増幅するために利用することができる。通常、プライマーとして使用する場合には15〜100、好ましくは15〜35個の塩基より構成されていることが望ましく、プライマーとして使用する場合には、少なくとも15、好ましくは30個の塩基より構成されていることが望ましい。プライマーの場合には、3’末端側の領域を標的とする配列に対して相補的な配列に、5’末端側には制限酵素認識配列、タグ等を付加した形態に設計することができる。本発明のプライマーは、本発明のポリヌクレオチドに対してハイブリダイズすることができる。本発明のプライマーは、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドの一部の、連続してなる少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなる。本発明のプライマーを用いることにより、本発明のポリヌクレオチドを検出または単離することができる。また、本発明の蛋白質をコードする遺伝子発現を解析することができる。さらには、発現の局在を解析することができる。測定するサンプルは、臓器、組織、細胞等である。これらのプライマーを用いて、mRNAをRT−PCRにより増幅できることは言うまでもない。また、定量的RT−PCRにより、サンプル中のmRNAを定量することもできる。
【0081】
プライマーを用いる本発明のポリヌクレオチドの解析または本発明の蛋白質をコードする遺伝子の解析は、プライマーを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることにより行うことができ、通常には、プライマーを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることによりポリヌクレオチドの増幅を行い(すなわち被検ポリヌクレオチド(必要により逆転写を行う)をテンプレートとし、プライマーを用いてPCRを行い)、増幅産物を検出し、その検出結果を解析することにより行われる。検出結果の解析には、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の測定(検出、定量を含む)、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の局在の検出が含まれる。被検ポリヌクレオチドは、被検組織または被検細胞中に存在するものであってもよい。
【0082】
<アンチセンス>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドに対するアンチセンスポリヌクレオチドが提供される。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドの細胞内における発現をmRNAまたはDNAに対して結合することにより抑制するものである。
【0083】
アンチセンスが標的遺伝子の発現抑制作用の機構としては、(1)3重鎖形成による転写開始阻害、(2)RNAポリメラーゼにより形成される局所的開状ループ構造部位とのハイブリッド形成による転写抑制、(3)合成中のRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、(4)イントロン−エキソン接合点におけるハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(5)スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(6)mRNAとのハイブリッド形成による、mRNAの細胞質への移行抑制、(7)キャッピング部位またはポリA付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(8)翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、(9)リボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、(10)mRNA翻訳領域またはポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長抑制、並びに(11)核酸と蛋白質の相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制が挙げられる(平島及び井上『新生化学実験講座2 核酸IV 遺伝子の複製と発現』日本生化学会編、東京化学同人、pp.319−347 (1993))。
【0084】
本発明のヌクレオチド鎖に含まれるアンチセンスポリヌクレオチドは、上述の(1)〜(11)のどの機構により遺伝子発現を抑制するポリヌクレオチドであってもよく、即ち、発現を阻害する目的の遺伝子の翻訳領域のみならず、非翻訳領域の配列に対するアンチセンス配列を含むものであってもよい。アンチセンスポリヌクレオチドをコードするDNAは、その発現を可能とする適当な制御配列下に連結して使用され得る。アンチセンスポリヌクレオチドは、標的とする遺伝子の翻訳領域または非翻訳領域に対して完全に相補的である必要はなく、効果的に該遺伝子の発現を阻害するものであればよい。このようなアンチセンスポリヌクレオチドとしは、少なくとも15bp以上、好ましくは100bp以上、さらに好ましくは500bp以上であり通常3000bp以内、好ましくは2000bp以内、より好ましくは1000bp以内の鎖長を有し、標的遺伝子の転写産物の相補鎖に対して好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上同一である。このようなアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドを基に、ホスホロチオネート法(Stein (1988) Nucleic Acids Res. 16: 3209−21)等により調製することができる。
【0085】
<リボザイム>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドに対するリボザイムが提供される。本発明のリボザイムは、本発明のポリヌクレオチドの細胞内における発現をmRNAまたはDNAに対して結合することにより抑制するものである。
【0086】
リボザイムとは、RNAを構成成分とする触媒の総称であり、大きくラージリボザイム(large ribozyme)及びスモールリボザイム(small liboyme)に分類される。ラージリボザイムは、核酸のリン酸エステル結合を切断し、反応後に5’−リン酸と3’−ヒドロキシル基を反応部位に残す酵素である。ラージリボザイムは、さらに(1)グアノシンによる5’−スプライス部位でのトランスエステル化反応を行うグループIイントロンRNA、(2)自己スプライシングをラリアット構造を経る二段階反応で行うグループIIイントロンRNA、及び(3)加水分解反応によるtRNA前駆体を5’側で切断するリボヌクレアーゼPのRNA成分に分類される。それに対して、スモールリボザイムは、比較的小さな構造単位(40bp程度)であり、RNAを切断して、5’−ヒドロキシル基と2’−3’環状リン酸を生じさせる。スモールリボザイムには、ハンマーヘッド型(Koizumi et al. (1988) FEBS Lett. 228: 225)、ヘアピン型(Buzayan (1986) Nature 323: 349; Kikuchi and Sasaki (1992) Nucleic Acids Res. 19: 6751; 菊地洋(1992)化学と生物 30: 112)等のリボザイムが含まれる。リボザイムは、改変及び合成が容易になため多様な改良方法が公知であり、例えば、リボザイムの基質結合部を標的部位の近くのRNA配列と相補的となるように設計することにより、標的RNA中の塩基配列UC、UUまたはUAを認識して切断するハンマーヘッド型リボザイムを作ることができる(Koizumi et al. (1988) FEBS Lett. 228: 225; 小泉誠及び大塚栄子(1990)蛋白質核酸酵素35: 2191; Koizumi et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17: 7059)。ヘアピン型のリボザイムについても、公知の方法に従って設計、製造が可能である(Kikuchi and Sasaki (1992) Nucleic Acids Res. 19: 6751; 菊地洋(1992)化学と生物 30: 112)。
【0087】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチド及びリボザイムは、細胞内における遺伝子の発現を制御するために、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルス由来のベクター、リポソーム等を利用した非ウイルスベクター、またはnaked DNAとしてex vivo法またはin vivo法により遺伝子治療に用いることもできる。
【0088】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチド及びリボザイムの塩基配列の確認は、上述のポリヌクレオチドと同様の方法により行うことができる。
【0089】
<RNA干渉>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドに対してRNA干渉により切断する二本鎖RNAが提供される。本発明の二本鎖RNAは、本発明のポリヌクレオチドの細胞内における発現をmRNAに対して結合し、酵素的に切断されることにより抑制するものである (Fire et al. (1998) Nature 391: 806−811; 森田 隆ら. (2002) 蛋白質 核酸 酵素 47: 1939−1945)。
【0090】
本発明の二本鎖RNAは、細胞内における遺伝子の発現を制御するために、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルス由来のベクター、リポソーム等を利用した非ウイルスベクター、またはnaked DNAとしてex vivo法またはin vivo法により遺伝子治療に用いることもできる。
【0091】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイムおよび本発明のポリヌクレオチドに対してRNA干渉により切断する二本鎖RNAは、本発明の蛋白質をコードするmRNAを減少させることができる。従って、本発明の蛋白質を減少させることができる。また、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイムおよび本発明のポリヌクレオチドに対してRNA干渉により切断する二本鎖RNAは、ラブコネクチン3結合蛋白質の阻害試薬として機能するため、本発明の蛋白質の機能解析試薬として有用である。
【0092】
本発明において、ラブコネクチン3結合蛋白質がシナプスに局在することが確認されたこと、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合することが確認されたことから、シナプス小胞の輸送の制御に関与していると考えられるので、ラブコネクチン3結合蛋白質を阻害する物質は、シナプス小胞の輸送の異常が原因と考えられる疾患、例えば、知的障害(精神遅滞)、注意欠陥多動障害、自閉性障害、学習障害などに関与している可能性が考えられる。従って、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイムおよび本発明のポリヌクレオチドに対してRNA干渉により特異的に切断する二本鎖RNAは、本発明の蛋白質に阻害作用を有するこれら疾患の治療剤の有効成分として使用できると考えられる。
【0093】
<抗体>
本発明により、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド断片に対する抗体が提供される。本発明の抗体にはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体(scFV)(Huston et la. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA85: 5879−83; The Pharmacology of Monoclonal Antibody, vol.113, Rosenburg and Moore ed., Springer Verlag (1994) pp.269−315)、ヒト化抗体、多特異性抗体(LeDoussal et al. (1992) Int. J. Cancer Suppl. 7: 58−62; Paulus (1985) Behring Inst. Mitt. 78: 118−32; Millstein and Cuello (1983) Nature 305: 537−9; Zimmermann (1986) Rev. Physiol. Biochem. Pharmacol. 105: 176−260; Van Dijk et al. (1989) Int. J. Cancer 43: 944−9)、並びに、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、Fv等の抗体断片が含まれる。さらに、本発明の抗体は必要に応じ、PEG等により修飾されていてもよい。その他、本発明の抗体は、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合蛋白質、GST、緑色蛍光蛋白質(GFP)等との融合蛋白質として製造され得、二次抗体を用いずに検出できるようにしてもよい。また、ビオチン等により抗体を標識することによりアビジン、ストレプトアビジン等を用いて抗体の回収を行い得るように改変されていてもよい。
【0094】
本発明の抗体は、本発明のポリペプチド若しくはその断片、またはそれらを発現する細胞を感作抗原として製造することができる。また、本発明のポリペプチド若しくはその断片のうち短いものは、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、卵白アルブミン等のキャリアに結合して免疫原として用いてもよい。また、本発明のポリペプチドまたはその断片と共に、アルミニウムアジュバント、完全(または不完全)フロイントアジュバント、百日咳菌アジュバント等の公知のアジュバントを抗原に対する免疫応答を強化するために用いてもよい。
【0095】
ポリクローナル抗体は、例えば、本発明のポリペプチドまたはその断片を所望によりアジュバントと共に哺乳動物に免疫し、免疫した動物より血清を得る。ここで用いる哺乳動物は、特に限定されないが、ゲッ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が一般的である。マウス、ラット、ハムスター等のゲッ歯目、ウサギ等のウサギ目、カニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等のサル等の霊長目の動物が挙げられる。動物の免疫化は、感作抗原をPhosphate−Buffered Saline(PBS)または生理食塩水等で適宜希釈、懸濁し、必要に応じアジュバントを混合して乳化した後、動物の腹腔内または皮下に注射して行われる。その後、好ましくは、フロイント不完全アジュバントに混合した感作抗原を4〜21日毎に数回投与する。抗体の産生は、血清中の所望の抗体レベルを慣用の方法により測定することにより確認することができる。最終的に、血清そのものをポリクローナル抗体として用いても良いし、さらに精製して用いてもよい。具体的な方法として、例えば、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987) Section 11.12−11.13)を参照することができる。
【0096】
モノクローナル抗体を産生するためには、まず、上述のようにして免疫化した動物より脾臓を摘出し、該脾臓より免疫細胞を分離し、適当なミエローマ細胞とポリエチレングリコール(PEG)等を用いて融合してハイブリドーマを作成する。細胞の融合は、Milsteinの方法(Galfre and Milstein (1981) Methods Enzymol.73: 3−46)に準じて行うことができる。ここで、適当なミエローマ細胞として特に、融合細胞を薬剤により選択することを可能にする細胞を挙げられる。このようなミエローマを用いた場合、融合されたハイブリドーマは、融合された細胞以外は死滅するヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液(HAT培養液)で培養して選択する。次に、作成されたハイブリドーマの中から、本発明のポリペプチドまたはその断片に対して結合する抗体を産生するクローンを選択する。その後、選択したクローンをマウス等の腹腔内に移植し、腹水を回収してモノクローナル抗体を得る。また、具体的な方法として、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987) Section 11.4−11.11)を参照することもできる。
【0097】
ハイブリドーマは、その他、最初にEBウイルスに感染させたヒトリンパ球をinvitroで免疫原を用いて感作し、感作リンパ球をヒト由来のミエローマ細胞(U266等)と融合し、ヒト抗体を産生するハイブリドーマを得る方法(特開昭63−17688号公報)によっても得ることができる。また、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物を感作して製造した抗体産生細胞を用いても、ヒト抗体を得ることができる(WO92/03918; WO93/02227; WO94/02602; WO94/25585;WO96/33735; WO96/34096; Mendez et al. (1997) Nat. Genet. 15: 146−56等)。ハイブリドーマを用いない例としては、抗体を産生するリンパ球等の免疫細胞に癌遺伝子を導入して不死化する方法が挙げられる。
【0098】
また、遺伝子組換え技術により抗体を製造することもできる(Borrebaeck and Larrick (1990) Therapeutic Monoclonal Antibodies, MacMillan Publishers LTD., UK参照)。そのためには、まず、抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマまたは抗体産生細胞(感作リンパ球等)からクローニングする。得られた遺伝子を適当なベクターに組み込み、宿主に該ベクターを導入し、宿主を培養することにより抗体を産さ生させる。このような組換え型の抗体も本発明の抗体に含まれる。代表的な組換え型の抗体として、非ヒト抗体由来可変領域及びヒト抗体由来定常領域とからなるキメラ抗体、並びに非ヒト抗体由来相補性決定領域(CDR)、及び、ヒト抗体由来フレームワーク領域(FR)及び定常領域とからなるヒト化抗体が挙げられる(Jones et al. (1986) Nature 321: 522−5; Reichmann et al. (1988) Nature 332: 323−9; Presta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593−6; Methods Enzymol. 203: 99−121 (1991))。
【0099】
本発明の抗体断片は、上述のポリクローナルまたはモノクローナル抗体をパパイン、ペプシン等の酵素で処理することにより製造し得る。または、抗体断片をコードする遺伝子を用いて遺伝子工学的に製造することも可能である(Co et al., (1994) J. Immunol. 152: 2968−76; Better and Horwitz (1989) Methods Enzymol. 178: 476−96; Pluckthun and Skerra (1989) Methods Enzymol. 178: 497−515; Lamoyi (1986) Methods Enzymol. 121: 652−63; Rousseaux et al. (1986) 121: 663−9; Bird and Walker (1991) Trends Biotechnol. 9: 132−7参照)。
【0100】
本発明の多特異性抗体には、二特異性抗体(BsAb)、ダイアボディ(Db)等が含まれる。多特異性抗体は、(1)異なる特異性の抗体を異種二機能性リンカーにより化学的にカップリングする方法(Paulus (1985) Behring Inst. Mill. 78: 118−32)、(2)異なるモノクローナル交代を分泌するハイブリドーマを融合する方法(Millstein and Cuello (1983) Nature 305: 537−9)、(3)異なるモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子(4種のDNA)によりマウス骨髄腫細胞等の真核細胞発現系をトランスフェクションした後、二特異性の一価部分を単離する方法(Zimmermann (1986) Rev. Physio. Biochem. Pharmacol. 105: 176−260; Van Dijk et al. (1989) Int. J. Cancer 43: 944−9)等により作製することができる。一方、Dbは遺伝子融合により構築され得る二価の2本のポリペプチド鎖から構成されるダイマーの抗体断片であり、公知の手法により作製することができる(Holliger et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444−8; EP404097; WO93/11161参照)。
【0101】
抗体及び抗体断片の回収及び精製は、プロテインA及びGを用いて行う他、<ポリペプチドの製造>の項で詳細に記載した蛋白質精製技術によっても行い得る(Antibodies: A Laboratory Manual, Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory (1988))。例えば、本発明の抗体の精製にプロテインAを利用する場合、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia)等のプロテインAカラムが公知であり、使用可能である。得られた抗体の濃度は、その吸光度を測定することにより、または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)等により決定することができる。
【0102】
抗体の抗原結合活性は、吸光度測定、蛍光抗体法、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、ELISA等により測定することができる。ELISA法により測定の場合、本発明の抗体をプレート等の担体に固相化し、次いで本発明のポリペプチドを添加した後、目的とする抗体を含む試料を添加する。ここで、抗体を含む試料としては、抗体産性細胞の培養上清、精製抗体等が考えられる。続いて、本発明の抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートのインキュベーションを行う。その後、プレートを洗浄し、二次抗体に付加された標識を検出する。即ち、二次抗体がアルカリフォスファターゼで標識されている場合には、p−ニトロフェニルリン酸等の酵素基質を添加して吸光度を測定することで、抗原結合活性を測定することができる。また、抗体の活性評価に、BIAcore(Pharmacia)等の市販の系を使用することもできる。
【0103】
本発明の抗体は、ラブコネクチン3結合蛋白質の検出試薬として用いることができる。つまり、本発明の抗体を用いて、免疫組織学的な解析方法を行うことができ、したがって、本発明は、免疫組織学的な解析方法、例えば、蛋白質の発現量を解析する方法、蛋白質の局在を解析する方法を提供する。免疫組織学的な解析方法としては、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、ELISA法、Western blot法、フローサイトメトリー、免疫組織化学染色等があげられる。また、本発明のポリペプチド及びその断片の精製に使用することができる。
【0104】
本発明においてラブコネクチン3結合蛋白質がシナプスに局在することが確認されたことから、ラブコネクチン3結合蛋白質をシナプスのマーカーとして、本発明の抗体を用いた検出を行うこともできる。従って、本発明の抗体は、必要に応じシナプス検出試薬として用いることができる。また、本発明の蛋白質は、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合することが確認されたことから、本発明の抗体は、これらの検出にも用いることができる。
【0105】
<本発明のスクリーニング法>
本発明の蛋白質は、ラブコネクチン3およびRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する。従って、本発明の蛋白質は、これらの結合を増加または減少させる物質のスクリーニングに用いることができる。本発明の蛋白質はヒト由来のものであるが、この用途には、ラットなどの他種に存在する同活性を有する異種相同蛋白質も本発明の蛋白質と同様に使用できる。従って、本発明の蛋白質またはその異種相同蛋白質であるラブコネクチン3結合蛋白質と、ラブコネクチン3との結合を促進する物質または阻害する物質の候補物質のスクリーニング方法であって、ラブコネクチン3結合蛋白質と、ラブコネクチン3とを前記候補物質の存在下および非存在下で反応させ、前記結合を増加または減少させる前記候補物質を選択することを含む前記方法、ならびに、本発明の蛋白質またはその異種相同蛋白質であるRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質と、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質との結合を促進する物質または阻害する物質の候補物質のスクリーニング方法であって、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質とRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質とを前記候補物質の存在下および非存在下で反応させ、前記結合を増加または減少させる前記候補物質を選択することを含む前記方法が提供される。
【0106】
ラブコネクチン3結合蛋白質とラブコネクチン3との結合、および、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質とRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質との結合の測定は、蛋白質相互間の結合を測定する公知の方法に従って行うことができる。
【0107】
本発明の蛋白質およびその異種相同蛋白質は、p160は神経伝達物質放出等のシナプス小胞の輸送の制御に関与していると考えられるので、このように選択されたこれらの結合を促進または阻害する物質は、シナプス小胞の輸送の異常が原因となる疾患(例えば、知的障害(精神遅滞)、注意欠陥多動障害、自閉性障害、学習障害)の治療剤の有効成分として使用できると考えられる。
【0108】
このような治療剤(医薬)は、スクリーニングにより選択された物質(有効成分)を、製剤化することにより製造できる。製剤化は、選択された物質の種類、製剤の形態等により適宜、通常の方法に従って行うことができる。医薬は、有効成分と医薬的に許容な可能な担体との医薬組成物としてもよい。
【0109】
【実施例】
本発明を下記実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0110】
【実施例1】
(1)Rab3 GEPと共免疫沈降されたラット蛋白質の取得
J. Biol. Chem., 277, 9629−9632 (2002)に記載された方法に従って、ラット脳のCSV画分抽出物に対して抗Rab3 GEP抗体を用いて共免疫沈降を行い、沈降物に対して電気泳動を行った。具体的には以下のように行った。この文献に記載のようにラット脳からCSV画分を調製した。画分を、バッファーA(20 mM Tris/HCl(pH7.5), 1 mM EDTA, 1 mM DTT, 0.8% n−オクチルグルコピラノシド)を用いて抽出し、抽出物(各2 mgのタンパク)を、抗Rab3 GEP抗体を固定したプロテインAセファロースビーズ(20μl湿重量)と共に4℃で一晩静置した。バッファーAでビーズを完全に洗浄した後、結合した蛋白質を、ビーズをSDSサンプルバッファー(60 mM Tris/HCl (pH 6.7), 3% SDS, 2% (v/v)2−メルカプトエタノール,5%グリセロール)中で煮沸して抽出した。抽出物をSDS−PAGEにかけ、蛋白質染色を行った。この結果、ラブコネクチン3(バンドNo.1)、p160(バンドNo.3)そしてp60(バンドNo.4)の他に、Rab3 GEPと共免疫沈降されたふたつのタンパク(バンドNo.2)が検出された(図1のA)。
【0111】
No.3バンドをゲルから切り出してトリプシンで消化し、そしてそのペプチドを質量分析にかけた。コンピューターデーターベース検索により、p160がヒトcDNA断片(KIAA0541, GenBankアクセッション番号AB011113)から推定されるアミノ酸配列を含むことが明らかになった。
【0112】
なお、下記(5)に示すように、p160はラブコネクチン3と複合体を形成することが判明したので、以下、p160をラブコネクチン3β、ラブコネクチン3をラブコネクチン3αと呼ぶ。
【0113】
(2)分子クローニングと一次構造決定
KIAA0541 cDNAは、約3.5kbのコーディング領域とインフレーム停止コドンを含むが、予想される開始コドンを欠いていた。また、KIAA0541 cDNAの配列はヒトゲノムのBACクローンに含まれていた(GenBankアクセッション番号AC007052およびAC008006)。この情報を基礎として、ヒトラブコネクチン3β cDNAの5’末端を得るためにPCRを行った。具体的には以下のように行った。ATG GCA GGA AAC AGC CTT GTT CTA CCC ATT GTT C(配列番号3)/GTT GTC ATT GCC AGC CCT TCT TCA CTT CCC(配列番号4)の配列を有するプライマーセットを設計した。cDNA断片を、ヒト心臓cDNA(CLONTECH)からこれらのプライマーを用いて増幅した。PCR産物はpCR4 Bluntベクター(Invitrogen)にサブクローンした。DNAシークエンシングを、ジデオキシ核酸ターミネーション法により、DNAシークエンサー(ABIPRISM 3100 Genetic Analyzer, PE Biosystems)で行った。この結果、約1.0kbのコーディング領域と予想される開始コドンを含むcDNA断片を得た。
【0114】
ヒトラブコネクチン3βcDNAの全長が、このcDNA断片をKIAA0541 cDNAにライゲーションすることで得られた(配列番号1)。コードされる蛋白質は1,490アミノ酸からなり、計算上の分子量は163,808であった(配列番号2)。ヒトラブコネクチン3βは7つのWDドメインを含んでいた(図1のB)。ライゲートしたcDNAがヒトラブコネクチン3βの全長をコードするかどうかを確認するため、このcDNAをHEK293細胞にトランスフェクトし、細胞抽出物をSDS−PAGEにかけ、続いて抗ラブコネクチン3β抗体を用いたウエスタンブロッティングを行った。具体的には以下のように行った。pCMVFaラブコネクチン3β(下記(3)参照)をHEK293細胞にトランスフェクトし、その細胞の溶解液をSDS−PAGE(10%ポリアクリルアミドゲル)にかけ、続いて抗ラブコネクチン3β−1抗体(下記(3)参照)を用いたウエスタンブロッティングが行われた。対照としてHEK293細胞溶解液とラット脳ホモジェネートを、同様にSDS−PAGEにかけ、続いてウエスタンブロッティングを行った。この結果、分子量約160kDaのタンパクが検出された(図1のC)。図1のC中、各レーンは以下の通りである。レーン1,対照HEK293細胞(1μg蛋白質)、レーン2,pCMVFaラブコネクチン3βをトランスフェクトしたHEK293細胞(1μg蛋白質)、レーン3,ラット脳のホモジェネート(20μg蛋白質)。
【0115】
この分子量は、ラット脳由来の天然のラブコネクチン3βと同様であった。それゆえ、このcDNAがヒトラブコネクチン3βの全長をコードすると結論された。ヒトラブコネクチン3βは、ラットTRAG(GenBankアクセッション番号AF305813)とヒトWDR7(GenBankアクセッション番号XM028588)に似た領域構造を示した。TRAG はこれまで、TGF−β耐性細胞株で発現する蛋白質として同定されていたが、その機能は知られていない(Cytogenet. Cell Genet. 88, 324−325, 2000)。
【0116】
(3)ラブコネクチン3βに対する抗体の調製
ラブコネクチン3βの発現ベクターを、pGex4T−1 (Amersham Biosciences Inc)を用いて構築した。構築物はラブコネクチン3βの以下のアミノ酸配列を含んでいた。pGex4T−1ラブコネクチン3β−1、アミノ酸番号487−625; pGex4T−1ラブコネクチン3β−2、アミノ酸番号615−920。
【0117】
GST融合タンパクはE. coliで発現させ、グルタチオンセファロースビーズ(Amersham Biosciences Inc.)を用いて精製した。抗原としてGST−ラブコネクチン3β−1および−2をそれぞれ用いてウサギポリクローナル抗ラブコネクチン3β−1および−2抗体を作成し、NHS−活性化セファロースビーズ(Amersham Biosciences Inc.)に各抗原を共有結合したものを用いてアフィニティー精製した。
【0118】
(4)ラブコネクチン3βの組織および細胞下(subcellular)の分布の検討
ラブコネクチン3βの組織および細胞下分布を検討した。組織分布については、種々のラット組織のホモジェネート(各20μg蛋白質)をSDS−PAGEにかけ、続いて抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いてウエスタンブロッティングを行った。細胞下分布については、ラット大脳のホモジェネートを、細胞下分画し(J. Biol.Chem., 265, 11872−11879 (1990))、各画分(各10μg蛋白質)をそれぞれSDS−PAGEにかけ、抗ラブコネクチン3β−1抗体、抗ラブコネクチン3α抗体、または抗Rab3 GEP抗体を用いてウエスタンブロッティングを行った。
【0119】
この結果、組織分布解析により、ラブコネクチン3βが脳に特異的に発現していることが明らかになった(図2のA)。脳での細胞レベル下分布解析により、ラブコネクチン3βがCSV画分中に高濃度であることを示した(図2のB)。図2のBにおける記号は以下の画分等を示す。Rc−3β, ラブコネクチン3β、Rc−3α, ラブコネクチン3α、GEP, Rab3 GEP、Ho, ホモジェネート画分、P1, 核ペレット画分、P2, 粗シナプトソーム画分、P3, ミクロソーム画分、S, 可溶性細胞質画分、P2A, ミエリン画分、P2B, 小胞体およびゴルジ複合体画分、P2C, シナプトソーム画分、P2D, ミトコンドリア画分、SS, シナプス可溶性画分、CSV, 粗シナプス小胞画分、CSM, 粗シナプス膜画分。なお、図に示した結果は3つの独立した実験の典型的なものである。
【0120】
さらに、マウス海馬とラット海馬ニューロンの初代培養(J. Biol. Chem., 277, 9629−9632 (2002))について免疫電子顕微鏡観察(Biochem. Biophys. Res. Commun., 202, 1235−1243 (1994))を行った。
【0121】
試料は、抗ラブコネクチン3α抗体と抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いて二重染色を行い、続いて免疫蛍光顕微鏡法で観察した。
【0122】
この結果、ラブコネクチン3βはラブコネクチン3αと共に、マウス海馬のシナプス領域と初代培養を行ったラット海馬ニューロンに共存していることが明らかになった(図3のAaとAb)。図3のAaは、マウス海馬CA3領域 、Abは、ラット海馬ニューロン初代培養(培養20日目)である。記号は以下の通りである。SR, 放線状層、 SL, 淡明層、 SP, 錐体層、バー, 30 μm。
【0123】
また、培養22日目のニューロンを、抗ラブコネクチン3β−1抗体で染色した(図3のB)。図3のBにおいてバーは200 nmを示す。この結果は、ラブコネクチン3βがシナプス小胞と関連することを示した(図3のB)。
【0124】
これらの結果は、ラブコネクチン3βとラブコネクチン3αがシナプス小胞に共存することを示す。なお、図3に示した結果は、3つの独立した実験の典型例である。
【0125】
(5)ラブコネクチン3βに対する、ラブコネクチン3α、Rab3 GEPおよびRab3GAPの結合の検討
ラブコネクチン3βとラブコネクチン3αの結合を検討した。CSV画分の抽出物を、抗ラブコネクチン3αまたは3β−2抗体による免疫沈降にかけた。各免疫沈降物をSDS−PAGE(8%ポリアクリルアミドゲル)にかけ、続いて抗ラブコネクチン3αまたは3β−1抗体によるウエスタンブロッティングを行った。さらに、抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いた免疫沈降物は、まず0.5 M NaClまたは1% CHAPSで洗浄し、次いでSDS−PAGE(8%ポリアクリルアミドゲル)にかけ、さらにクーマシーブリリアントブルーによるタンパク染色を行った。結果を図4のAa〜Acに示す。Aaは、抗ラブコネクチン3α抗体による免疫沈降物、Abは、抗ラブコネクチン3β−2抗体による免疫沈降物、Acは、NaClまたはCHAPS処理を行った、抗ラブコネクチン3β−2抗体による免疫沈降物の結果である。
【0126】
ラブコネクチン3αがその抗体を用いてP2C画分抽出物から免疫沈降されたとき、ラブコネクチン3βはウエスタンブロッティングから予想されたように共免疫沈降された(図4のAa)。逆に、ラブコネクチン3βがその抗体を用いてP2C画分抽出物から免疫沈降されたとき、ラブコネクチン3αが共免疫沈降された(図4のAb)。抗ラブコネクチン3β−2抗体により共免疫沈降されたラブコネクチン3αおよびラブコネクチン3βを、0.5 M NaClまたは1% CHAPSのどちらかで洗浄し、続いてクーマシーブリリアントブルーでタンパク染色した。両タンパクは互いに分離せず、明らかに同じ分子比率で染色された(図4のAc)。ラブコネクチン3αとラブコネクチン3βは、1 M NaClで一部が、1%デオキシコレートで完全に互いに分離した(データ省略)。これらの結果は、ラブコネクチン3αとラブコネクチン3βが 複合体を形成することを示している。
【0127】
次に、ラブコネクチン3αおよび3βのいずれがRab3 GEPおよびRab3 GAPに結合しているかを調べた。この目的のため、昆虫細胞から得たラブコネクチン3βとRab3 GEP、そしてE.coli.から得たRab3 GAPの非触媒サブユニット(p150)の純粋なサンプルを調製した(J. Biol. Chem., 272, 3875−3878(1997)、J. Biol. Chem., 273, 24781−24785参照)。ラブコネクチン3αは巨大な蛋白質なので、その全長蛋白質を、COS7細胞のような哺乳類細胞株で発現させることや、その純粋なリコンビナントサンプルをE.coliや昆虫細胞から用意することにまだ成功していない。それゆえ、天然のラブコネクチン3α、および、3αと3βの複合体をラット脳P2C画分から調製した。ラブコネクチン3αと3βの複合体は、プロテインAセファロースビーズに結合した抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いて、P2C画分から免疫沈降され、続いて0.5 M NaClでビーズが洗浄された。このサンプルはラブコネクチン3αと3βの複合体として使われた。鎖の調製をするための別の実験で、プロテインAセファロースビーズに結合した抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いてP2C画分から免疫沈降されたラブコネクチン3αと3βの複合体は、3αを3βから分離するために、1M NaClで洗浄された。ビーズより分離された3αは、続いてプロテインAセファロースビーズに固定した3αに対する抗体を用いて免疫沈降された。
【0128】
ラブコネクチン3β、3αまたは複合体と結合されたアフィニティービーズを準備した。ラブコネクチン3β結合ビーズに関しては、製造者のプロトコールに基づき(GIBCO BRL)pFastBac Hta ラブコネクチン3βを用いて、ラブコネクチン3βcDNAを持つバキュロウイルスを準備し、バキュロウイルスをHigh Five cell(Invitrogen)にトランスフェクトした。細胞の抽出物(5mg蛋白質)をバッファーAを用いて調製し、プロテインAセファロースビーズ(20μl湿容量)に固定された抗ラブコネクチン3β−2抗体と共に4℃で一晩静置した。ラブコネクチン3α結合ビーズに関しては、初めに、プロテインAセファロースビーズに結合された抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いて、ラブコネクチン3αと3βの複合体を上記のP2C画分から免疫沈降させた。次いでラブコネクチン3αを1M NaClを含むバッファーAにより4℃で1時間洗浄することでビーズから分離した。分離したラブコネクチン3α(0.4μg蛋白質)を回収し、プロテインAセファロースビーズ(20μl湿容量)に固定された抗ラブコネクチン3α抗体と共に4℃で一晩静置した。複合体結合ビーズに関しては、ラブコネクチン3αと3βの複合体をP2C画分から同様に免疫沈降させ、次いで0.5 M NaClを含むバッファーAでビーズを洗浄した。ラブコネクチン3α、3β、または複合体と結合したアフィニティービーズは、次いで、バッファーAで完全に洗浄した。
【0129】
リコンビナントRab3 GEPまたはGAP p150を、リコンビナントラブコネクチン3βまたは天然のラブコネクチン3αと結合したプロテインAセファロースビーズと静置した。また一方、ビーズ上に固定された抗ラブコネクチン3β−2抗体により、P2C画分からラブコネクチン3αおよび3βが免疫沈降された後、ビーズを0.5 M NaClで洗浄し、Rab3 GEPまたはGAP p150をビーズと共に静置した。静置の後、これらをSDS−PAGE(8%ポリアクリルアミドゲル)にかけ、続いてクーマシーブリリアントブルーによるタンパク染色または抗Rab3 GEPもしくはGAP p150抗体を用いたウエスタンブロッティングを行った。結果を図4のBa1〜Bb2に示す。Baは、ラブコネクチン3αが結合したビーズ、Bbは、ラブコネクチン3βが結合したビーズを示し、数字は、1がRab3 GEP、2がRab3 GAP p150を示す。
【0130】
この結果、ラブコネクチン3βはリコンビナントRab3 GEPに化学量論的に結合したが、ラブコネクチン3αは結合しなかった(図4のBa1およびBb1)。複合体はRab3 GEPに直接結合したが、化学量論的にはこの結合は、ラブコネクチン3βのものに比べ相当低かった(データ省略)。一方、ラブコネクチン3α、3βそして複合体のいずれも、Rab3 GAPには結合しなかった(図4のBa2, Bb2(複合体についてはデータ省略))。
【0131】
CSV画分の抽出物を、抗Rab3 GEPまたはGAP p150抗体による免疫沈降にかけた。各免疫沈降物をSDS−PAGE(8%ポリアクリルアミドゲル)にかけ、続いて抗Rab3GEPまたはGAP p150抗体そして抗ラブコネクチン3α抗体および抗ラブコネクチン3β−1抗体を用いたウエスタンブロッティングを行った。結果を図4のCaおよびCbに示す。Caは、抗Rab3 GEP抗体を用いた免疫沈降物、Cbは、抗Rab3 GAP p150抗体を用いた免疫沈降部の結果である。
【0132】
ラブコネクチン3βは、ラブコネクチン3αと同様に、P2C画分の抽出物から、抗Rab3 GEPまたは抗Rab3 GAP p150抗体を用いてそれぞれ、Rab3 GEPまたはRab3 GAP p150により一貫して共免疫沈降された(図4のCaおよびCbならびに図1のA参照)。
【0133】
総合すると、これらの結果は、制御された様式で、ラブコネクチン3βが、直接的にRab3 GEPに結合し、また、未同定の分子を介して間接的にRab3 GAPに結合することを示す。なお、図4の結果は、3つの独立した実験の典型例である。
【0134】
なお、実施例1で用いられた抗Rab3 GAP p150抗体、抗Rab3 GEP抗体および抗ラブコネクチン3α抗体は、J. Biol. Chem., 277, 9629−9632 (2002)、J. Biol. Chem., 273, 24781−24785 (1998)およびJ. Biol. Chem., 273, 34580−34585 (1998)に記載された方法により調製されたマウスモノクローナル抗Rab3 GAP p150抗体、ウサギポリクローナル抗Rab3 GEP抗体、および、ラットポリクローナル抗ラブコネクチン3α抗体である。J. Biol. Chem., 277, 9629−9632 (2002)には、抗Rab3 GEP抗体またはRab3 GAP p150抗体を用い、ラブコネクチン3αがRab3 GEPまたはGAPによりCSV画分からそれぞれ共免疫沈降されることが示されている。
【0135】
【実施例2】
ポリL−リジンをコートしたウェルで1×106の神経芽腫細胞PC−12を培養し、培養開始日の翌日にリポフェクチン法によりmycを発現するpCMV myc及びP160(ラブコネクチン3β)をmycとの融合タンパク質として発現するpCMV myc:p160をトランスフェクトした。pCMV mycは、J. Biol. Chem, 272, 11943−11951(1997)に記載されている。pCMV myc:p160は、ラブコネクチン3βのアミノ酸配列1〜1490(全長)をコードするDNAを、ラブコネクチン3βとmycとの融合蛋白質が発現されるように組み込んだものである。
【0136】
トランスフェクションの2日後に、低カリウム(カリウム濃度:4.7 mM)バッファーを加え、37℃で10分間インキュベートした後、バッファーを取り除いて、低カリウム濃度または高カリウム(カリウム濃度:60 mM)のバッファーを加えた。37℃で10分間インキュベートした後、上清中に分泌された成長ホルモン(GH)及び細胞に残されたGHの量を、hGH ELISAキット(ロッシュ社製)にて測定した。結果は、上清中及び細胞中のGHをあわせた量を100%として、分泌されたGHの割合(%)として表現した。
【0137】
その結果、低カリウムバッファーでは全体の2.3%しか放出されなかった成長ホルモンが、高カリウムバッファーでは、8.9%が放出され、カリウムの刺激により増加した成長ホルモンの放出は、p160を発現させることにより7.0%まで抑制された。この結果より、p160は成長ホルモン放出等のシナプス小胞の輸送の制御に関与していると考えられる。
【0138】
【発明の効果】
本発明により、Ca2+依存性エキソサイトーシス、特にはRab3Aの活性化および不活性化の制御機構の解明に有用な蛋白質、ならびに、この蛋白質を用いる、Ca2+依存性エキソサイトーシス、特にはRab3Aの活性化および不活性化の制御に有用な物質のスクリーニング方法が提供される。
【0139】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】p160(ラブコネクチン3β)の単離と一次構造の概要。(A) 抗Rab3 GEP抗体によるp160(ラブコネクチン3β)の共免疫沈降の結果(電気泳動写真)。1; p340、2; p200、3; p160、4; p60。(B)構造概要。グレーはWDドメインを示す。(C)リコンビナントラブコネクチン3βのウェスタンブロッティングの結果(電気泳動写真)。レーン1,対照群HEK293細胞(1μg蛋白質)、レーン2,pCMVFa ラブコネクチン3βをトランスフェクトしたHEK293細胞(1μg蛋白質)、レーン3,ラット脳のホモジェネート(20μg蛋白質)。
【図2】ラブコネクチン3βの組織および細胞レベル下の分布。(A)組織分布(電気泳動写真)。(B)細胞レベル下分布(電気泳動写真)。Rc−3β, ラブコネクチン3β、Rc−3α, ラブコネクチン3α、GEP, Rab3 GEP、Ho, ホモジェネート画分、P1, 核ペレット画分、P2, 粗シナプトソーム画分、P3, ミクロソーム画分、S, 可溶性細胞質画分、P2A, ミエリン画分、P2B, 小胞体およびゴルジ複合体画分、P2C, シナプトソーム画分、P2D, ミトコンドリア画分、SS, シナプス可溶性画分、CSV, 粗シナプス小胞画分、CSM, 粗シナプス膜画分。
【図3】シナプスにおけるラブコネクチン3αと3βの共存を示す免疫蛍光顕微鏡像(顕微鏡写真)。
【図4】ラブコネクチン3に対する、Rab3 GEPの直接的な結合とRab3 GAPの間接的な結合を示すウェスタンブロッティングの結果(電気泳動写真)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラブコネクチン3(rabconnectin−3)およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する蛋白質およびそれをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0002】
【従来の技術】
Rab3Aは、Rab3A,−3B,−3C,−3Dの4つからなるRab3ファミリーのひとつで、神経伝達物質のCa2+依存性エキソサイトーシスの制御に重要な役割を果たすことが知られている。神経伝達物質のCa2+依存性エキソサイトーシスのプロセスは、(1)プレシナプス貯溜プールから、Ca2+チャンネルが存在する原形質膜の活性帯へのシナプス小胞の移動、(2)小胞の活性帯へのドッキング、(3)すでに放出可能な状態にあるプールでの、小胞のドッキングからプライミングへの推移、および、(4)Ca2+流入により誘導された小胞と膜の融合のステップを含む。
【0003】
Rab3A遺伝子ノックアウトマウス解析により、(1)シナプス小胞のプレシナプス原形質膜への移動とドッキングを促進し、(2)Ca2+により誘導された、小胞と原形質膜との融合を阻害するというRab3Aの二つの働きが明らかになっている。しかし、神経伝達物質のCa2+依存性エキソサイトーシスにおける、これらRab3Aの働きの分子メカニズムは知られていない。
【0004】
Rab3ファミリーメンバーは、GDP解離抑制蛋白質(Rab GDI)、GDP/GTP交換反応促進蛋白質(Rab3 GEP)およびGTPase活性促進蛋白質(Rab3 GAP)の三つの制御因子により制御されることが知られている。Rab3 GEPとRab3 GAPはRab3ファミリーメンバーに特異であるが、Rab GDIは全てのRabファミリーメンバーに対して活性である。これらの制御因子の働きによるRab3Aの循環的な活性化と不活性化が、神経伝達物質のCa2+依存性エキソサイトーシスにおけるRab3Aの働きに必須である。これら制御因子の働きに関する、現在のモデルの一つは以下の通りである。GDP−Rab3AがRab GDIとの複合体として細胞質中に貯留される。Rab5、−7、−9に対してはGDI置換因子(GDF)、またはYpt1と−7に対してはRabリサイクリング因子(RRF)の様に、他の未同定分子の助けを受け、Rab3 GEPの働きによりGDP−Rab3AがGTP−Rab3Aに活性化される部位であるシナプス小胞に、この複合体が動員される。GDFとRRFは同定されていない。GTP−Rab3Aは、その下流の二つのエフェクター、すなわち、小胞と活性帯にそれぞれ存在するラブフィリン3(rabphilin−3)とRim−3に結合する。融合段階の前または後に、エフェクターと複合体を形成するGTP−Rab3Aは、Rab3 GAPの働きによりGDP−Rab3Aに非活性化される。GDP−Rab3AはRab GDIによりトラップされ、小胞から細胞質に移動する。それゆえ、Rab3 GEPとRab3 GAPはおそらくそれらが機能するとき、小胞へ動員されると考えられるが、それらのメカニズムは依然不明である。
【0005】
最近、ラット脳の粗シナプス小胞(CSV)画分から、Rab3 GEPまたはRab3 GAPを用いた共免疫沈降により新規蛋白質が単離され、ラブコネクチン3と命名されている(非特許文献1参照)。ヒトラブコネクチン3は3,036アミノ酸からなり、計算上の分子量は339,753である。ラブコネクチン3は12個のWDドメインを持つ。ラブコネクチン3は、シナプス小胞と関連する脳に豊富に発現している。また、さらにふたつの蛋白質がラット脳のCSV画分からRab3 GEPを用いて共免疫沈降されることが見出されている(非特許文献1参照)。
【0006】
【非特許文献1】
「ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)」、2002年、第277巻、第12号、第9629−9632頁
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、Ca2+依存性エキソサイトーシス、特にはRab3Aの活性化および不活性化の制御機構の解明に有用な蛋白質を提供すること、ならびに、この蛋白質を用いる、Ca2+依存性エキソサイトーシス、特にはRab3Aの活性化および不活性化の制御に有用な物質のスクリーニング方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、GDP/GTP交換反応促進蛋白質に直接結合するラブコネクチン3結合蛋白質を得ることに成功し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)下記(a)または(b)の蛋白質。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列を有する蛋白質。
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質。
【0010】
(2)配列番号2に示すアミノ酸配列を有する(1)記載の蛋白質。
【0011】
(3)(1)または(2)の蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
【0012】
(4)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列を有する(3)のポリヌクレオチド。
【0013】
(5)下記(a)または(b)のポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列を有するポリヌクレオチド。
(b)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
【0014】
(6)下記(a)または(b)のポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列を有するポリヌクレオチド。
(b)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列と相同性が80%以上の塩基配列を有し、かつラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
【0015】
(7)(3)〜(6)のいずれか1項のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【0016】
(8)(3)〜(6)のいずれか1項のポリヌクレオチドにより宿主を形質転換して得られる形質転換体。
【0017】
(9)(8)の形質転換体を培養し、該形質転換体が発現した、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質を培養物から採取することを含む、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質の製造法。
【0018】
(10)(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを検出するための、3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプローブまたはプライマーの使用。
【0019】
(11)(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプローブまたはプライマーを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることを特徴とする(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの解析方法。
【0020】
(12)被検ポリヌクレオチドが被検組織または被検細胞中に存在することを特徴とする(11)に記載の解析方法。
【0021】
(13)(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプローブまたはプライマーを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることを特徴とする(1)または(2)に記載の蛋白質をコードする遺伝子の解析方法。
【0022】
(14)被検ポリヌクレオチドが被検組織または被検細胞中に存在することを特徴とする(12)に記載の遺伝子解析方法。
【0023】
(15)(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプライマーを用いて、被検組織または被検細胞中のmRNAをRT−PCR法によって増幅させ、(3)〜(6)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを測定することを特徴とする遺伝子解析方法。
【0024】
(16)(1)または(2)に記載の蛋白質をコードするmRNAにハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド。
【0025】
(17)(1)または(2)に記載の蛋白質をコードするmRNAを切断するリボザイム。
【0026】
(18)(1)または(2)に記載の蛋白質をコードするmRNAをRNA干渉により切断する二本鎖RNA。
【0027】
(19)(1)または(2)に記載の蛋白質に対する抗体。
【0028】
(20)(19)に記載の抗体を用いることを特徴とする(1)または(2)記載の蛋白質の免疫組織学的な解析方法。
【0029】
(21)蛋白質の局在を解析する方法である(20)に記載の解析方法。
【0030】
(22)蛋白質の発現量を解析する方法である(20)に記載の解析方法。
【0031】
(23)(1)または(2)の蛋白質またはその異種相同蛋白質であるラブコネクチン3結合蛋白質と、ラブコネクチン3との結合を促進する物質または阻害する物質の候補物質のスクリーニング方法であって、ラブコネクチン3結合蛋白質と、ラブコネクチン3とを前記候補物質の存在下および非存在下で反応させ、前記結合を増加または減少させる前記候補物質を選択することを含む前記方法。
【0032】
(24)(1)または(2)の蛋白質またはその異種相同蛋白質であるRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質と、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質との結合を促進する物質または阻害する物質の候補物質のスクリーニング方法であって、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質とRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質とを前記候補物質の存在下および非存在下で反応させ、前記結合を増加または減少させる前記候補物質を選択することを含む前記方法。
【0033】
【発明の実施の形態】
<本発明の蛋白質等>
本発明の蛋白質は、ラブコネクチン3およびRab3 GEPに直接結合する蛋白質である。本発明の蛋白質はラブコネクチン3と複合体を形成することから、以下、本発明蛋白質をラブコネクチン3βと、ラブコネクチン3をラブコネクチン3αとも呼ぶ。
【0034】
本発明の蛋白質のうち、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する蛋白質は、後述の実施例に記載したように、ヒトのラブコネクチン3βとして特定された蛋白質である。蛋白質には、同一の機能を有する変異体の存在が予測され、また、蛋白質のアミノ酸配列を、例えば保存的置換のように適宜改変することによって、同一の機能を有する変異体を得ることができる。従って、配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質も本発明の蛋白質に包含される。
【0035】
蛋白質のアミノ酸配列の改変は、部位特異的変異誘発法などの周知の手段により蛋白質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を改変し、塩基配列が改変されたポリヌクレオチドを発現させることによって行うことができる。また、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性は、生理的な条件でこれらに結合することを意味し、この活性は公知の蛋白質相互間の結合を測定する方法に従って測定できる(例えば、後記実施例、または、「タンパク実験プロトコール 機能解析編」、秀潤社(1997)、第9章 免疫沈降、親和性レジンを用いた相互作用解析、第151〜161頁参照)。従って、同一の機能を有するか否かを決定することは当業者であれば容易である。
【0036】
本発明の蛋白質を構成するアミノ酸残基は天然に存在するものでも、また修飾されたものであっても良い。アミノ酸残基の修飾としては、アシル化、アセチル化、アミド化、アルギニル化、GPIアンカー形成、架橋、γ−カルボキシル化、環化、共有架橋の形成、グリコシル化、酸化、脂質または脂肪誘導体の共有結合化、ジスルフィド結合の形成、セレノイル化、脱メチル化、蛋白質の分解処理、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合化、ヒドロキシル化、ピログルタメーピログルタメートの形成、フラビンの共有結合化、プレニル化、ヘム部分の共有結合化、ホスファチジルイノシトールの共有結合化、ホルミル化、ミリストイル化、メチル化、ユビキチン化、ヨウ素化、ラセミ化、ADP−リボシル化、硫酸化、リン酸化等が例示される。さらに、本発明の蛋白質にはシグナルペプチド部分がついた前駆体、シグナルペプチド部分を欠く成熟蛋白質、及びその他のペプチド配列により修飾された融合蛋白質を含む。本発明の蛋白質に付加するペプチド配列としては、インフルエンザ凝集素(HA)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、サブスタンスP、多重ヒスチジンタグ(6×His、10×His等)、プロテインC断片、マルトース結合蛋白質(MBP)、免疫グロブリン定常領域、α−チューブリン断片、β−ガラクトシダーゼ、B−タグ、c−myc断片、E−タグ(モノクローナルファージ上のエピトープ)、FLAG(Hopp et al. (1988) Bio/Tehcnol. 6: 1204−10)、lckタグ、p18 HIV断片、HSV−タグ(ヒト単純ヘルペスウイルス糖蛋白質)、SV40T抗原断片、T7−タグ(T7 gene10蛋白質)、VSV−GP断片(Vesicular stomatitisウイルス糖蛋白質)等の蛋白質の精製を容易にする配列(例えば、pcDNA3.1/Myc−His(Invitrogen)のようなベクターを利用できる)、組換え技術により蛋白質を生産する際に安定性を付与する配列等を選択することができる。
【0037】
本発明の蛋白質は公知の遺伝子組換え技術により、また化学的な合成法により製造することができる。遺伝子組換え技術により本発明の蛋白質を製造する場合、製造される蛋白質は、選択する宿主の種類によってグリコシル化を受ける場合と受けない場合、さらに分子量、等電点等が異なる場合がある。通常、大腸菌等の原核細胞を宿主として蛋白質を発現させた場合、得られる蛋白質は本来蛋白質が有していたN−末端にメチオニン残基が付加された形で産生される。このような宿主の違いにより、構造の異なる蛋白質も本発明の蛋白質に含まれる。
【0038】
<蛋白質の製造>
In vitroで蛋白質を製造する場合、in vitroトランスレーション(Dasso and Jackson (1989) Nucleic Acids Res. 17: 3129−44)等の方法に従って、細胞を含まない試験管内の系で蛋白質を製造することができる。それに対して、細胞を用いて蛋白質を製造する場合、まず、適当な宿主細胞を選択し、目的とするDNAによる形質転換を行う。続いて形質転換された細胞を培養することにより所望の蛋白質を得ることができる。培養は、選択した細胞に適した公知の方法により行う。例えば、動物細胞を選択した場合には、DMEM(Virology 8: 396 (1959)、MEM(Science 122: 501 (1952))、RPMI1640(J. Am. Med. Assoc. 199: 519 (1967))、199(Proc. Soc. Biol. Med. 73: 1 (1950))、IMDM等の培地を用い、必要に応じウシ胎児血清(FCS)等の血清を添加し、pH約6〜8、30〜40℃において15〜200時間前後の培養を行うことができる。その他、必要に応じ途中で培地の交換を行ったり、通気及び攪拌を行ったりすることができる。
【0039】
一方、in vivoにおける蛋白質の生産系を確立するためには、動物または植物へ目的とするDNAを導入し、生体内において蛋白質を産生させる。ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシ等の哺乳動物、カイコ等の昆虫(Susumu (1985) Nature 315: 592−4)等の動物系が公知である(Lubon (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4: 1−54)。また、哺乳動物系においてトランスジェニック動物を用いることもできる。
【0040】
例えば、所望の蛋白質をヤギの乳汁中に分泌させることを目的とする場合、該蛋白質をコードするDNAをβカゼイン等の乳汁中に特異的分泌される蛋白質をコードするDNAと結合し、目的蛋白質を融合蛋白質として発現させるようにする。次に、融合蛋白質をコードするDNAをヤギの胚へ導入する。DNAを導入した胚を雌ヤギの子宮へ移植する。このヤギから生まれるトランスジェニックヤギ、またはその子孫は乳汁中に所望の蛋白質を分泌する。必要に応じ、乳汁量を増やすため、ホルモンを投与することもできる(Ebert et al. (1994) Bio/Technology 12: 699−702)。
【0041】
タバコ等の植物を用いたトランスジェニック植物の蛋白質産生系が公知である。まず、所望の蛋白質コードDNAをpMON530等の植物発現に適したベクターに組み込み、Agrobacterium tumefaciens等の細菌に導入する。DNAの導入された細菌をNicotina tabacum等の植物に感染させ、植物を再生させることにより、所望の蛋白質を得られたトランスジェニック植物の葉より単離することができる(Julian et al. (1994) Eur. J. Immunol. 24: 131−8)。その他の方法としては、PEGを用いプロトプラストへDNAを導入して植物体を再生する方法(Gene Transfer to Plants, Potrykus and Spangenberg ed. (1995) pp. 66−74;インド型イネ品種に適する)、電気パルスによりプロトプラストへDNAを導入して植物体を再生する方法(Toki et al. (1992) Plant Physiol. 100: 1503−7;日本型イネに適する)、パーティクルガン法で植物細胞に直接DNAを導入し植物体を再生する方法(Christou et al. (1991) Bio/Technology 9: 957−62)、アグロバクテリウムを介し細胞にDNAを導入し植物体を再生する方法(Hiei et al. (1994) Plant J. 6:271−82)等が確立されている。植物を再生する方法については、Toki et al. (1995) Plant Physiol. 100: 1503−7を参照することができる。
【0042】
トランスジェニック植物が一度得られた後は、さらに該植物の種子、果実、塊茎、塊根、株、切穂、カルス、プロトプラスト等を材料として同じように本発明の蛋白質を産生する植物宿主を繁殖させ得ることができる。
【0043】
通常、遺伝子組換え技術により製造された本発明の蛋白質は、まず、蛋白質が細胞外に分泌される場合には培地を、特にトランスジェニック生物の場合には体液等を、細胞内に産生される場合には細胞を溶解して溶解物を回収する。そして、蛋白質の精製方法として公知の塩析、蒸留、各種クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、ゲル濾過、限外濾過、再結晶、酸抽出、透析、免疫沈降、溶媒沈澱、溶媒抽出、硫安またはエタノール沈澱等を適宜組合せることにより所望の蛋白質を精製する。クロマトグラフィーとしては、アニオンまたはカチオン交換等のイオン交換、アフィニティー、逆相、吸着、ゲル濾過、疎水性、ヒドロキシアパタイト、ホスホセルロース、レクチンクロマトグラフィー等が公知である(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual, Marshak et al. ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1996))。HPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0044】
また、天然由来の蛋白質を精製して取得してもよい。例えば、後述の本発明の蛋白質に対する抗体を利用して、アフィニティークロマトグラフィーにより精製することもできる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 16.1−16.19)。また、GSTとの融合蛋白質とした場合にはグルタチオンカラムを、ヒスチジンタグを付加した融合蛋白質とした場合にはニッケルカラムを用いた精製法も利用できる。本発明の蛋白質を融合蛋白質として製造した場合には、必要に応じて精製後にトロンビンまたはファクターXa等を使用して不要な部分を切断することもできる。さらに、必要に応じキモトリプシン、グルコシダーゼ、トリプシン、プロテインキナーゼ、リシルエンドペプチダーゼ等の酵素を用い得られたポリペプチドを修飾することも可能である。
【0045】
<ポリヌクレオチド>
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチドである。このポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質を遺伝子工学的に発現させる際に使用することができる。また、本発明のポリヌクレオチドは、ラブコネクチン3結合蛋白質遺伝子の検出試薬として用いることができる。つまり、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド、またはその一部の特異的断片を使用して、分子生物学的解析方法を行うことができ、ポリヌクレオチドを検出する方法、ポリヌクレオチドの発現量を解析する方法を提供する。例えば、サザンブロット法、ノーザンブロット法、PCR法、RT−PCR法、定量的RT−PCR法、in situ ハイブリダイゼーション法等があげられる。
【0046】
本発明において、ラブコネクチン3結合蛋白質がシナプスに局在することが確認されたことから、ラブコネクチン3結合蛋白質をシナプスのマーカーとして使用することができる。すなわち、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド、またはその一部の特異的断片を使用して、ラブコネクチン3結合蛋白質遺伝子の発現を検出することによりシナプスを検出することができる。従って、本発明のポリヌクレオチドは、シナプス検出試薬として用いることができる。また、本発明の蛋白質は、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合することが確認されたことから、本発明のポリヌクレオチドは、これらの検出にも用いることができる。
【0047】
ここで、「ポリヌクレオチド」とは、複数のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)等の塩基または塩基対からなる重合体を指し、cDNA、ゲノムDNA、化学合成DNA及びRNAを含む。また、天然以外の塩基、例えば、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、2’−O−メチルシチジン、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’−O−メチルプソイドウリジン、β−D−ガラクトシルキュェオシン、2’−O−メチルグアノシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルプソイドウリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、β−D−マンノシルキュェオシン、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウリジン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、5−メトキシウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、N−((9−β−D−リボフラノシル−2−メチルリオプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)N−メチルカルバモイル)トレオニン、ウリジン−5−オキシ酢酸−メチルエステル、ウリジン−5オキシ酢酸、ワイブトキソシン、プソイドウリジン、キュェオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−メチルウリジン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、2’−O−メチル−5−メチルウリジン、2’−O−メチルウリジン、ワイブトシン、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジン等を必要に応じて含むポリヌクレオチドも包含する。
【0048】
本発明のポリヌクレオチドとしては、配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列を有するポリヌクレオチドが挙げられる。このポリヌクレオチドは、後述の実施例において、塩基配列が決定されたポリヌクレオチドである。さらに、本発明のポリヌクレオチドは、ラブコネクチン3β蛋白質をコードする、配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列を含む。このようなアミノ酸配列をコードする核酸配列は、配列番号1に記載された核酸配列に加えて、遺伝子暗号の縮重により配列番号1記載の配列とは異なる核酸配列を含むものである。本発明のポリヌクレオチドを遺伝子工学的な手法によりポリペプチドを発現させるのに用いる場合、使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、発現効率の高いヌクレオチド配列を選択し、設計することができる(Grantham et al. (1981) Nucleic Acids Res. 9: r43−74)。
【0049】
本発明のポリヌクレオチドは、ラブコネクチン3β蛋白質、またはその抗原性断片をコードする、配列番号2のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列をコードする核酸配列、または該核酸配列に相補的な配列を含む。1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列からなる変異ポリペプチドで、元のポリペプチドと同じ生物学的活性が維持されることは公知である(Mark et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 5662−6; Zoller and Smith (1982) Nucleic Acids Res. 10: 6487−500; Wang et al. (1984) Science 224: 1431−3; Dalbadie−McFarland et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 6409−13)。複数個とは、通常には2〜30個、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜5個である。
【0050】
ここで、アミノ酸の置換とは、配列中のアミノ酸残基の一つ以上が、異なる種類のアミノ酸残基に変えられた変異を意味する。このような置換により本発明のポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を改変する場合、蛋白質の機能を保持することが必要な場合には、保存的な置換を行うことが好ましい。保存的な置換とは、置換前のアミノ酸と似た性質のアミノ酸をコードするように配列を変化させることである。アミノ酸の性質は、例えば、非極性アミノ酸(Ala, Ile, Leu, Met, Phe, Pro, Trp, Val)、非荷電性アミノ酸(Asn, Cys, Gln, Gly, Ser, Thr, Tyr)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Arg, His, Lys)、中性アミノ酸(Ala, Asn, Cys, Gln, Gly, Ile, Leu, Met, Phe, Pro, Ser, Thr, Trp, Tyr, Val)、脂肪族アミノ酸(Ala, Gly)、分枝アミノ酸(Ile, Leu, Val)、ヒドロキシアミノ酸(Ser, Thr)、アミド型アミノ酸(Gln, Asn)、含硫アミノ酸(Cys, Met)、芳香族アミノ酸(His, Phe, Trp, Tyr)、複素環式アミノ酸(His, Trp)、イミノ酸(Pro, 4Hyp)等に分類することができる。中でも、Ala、Val、Leu及びIleの間、Ser及びThrの間、Asp及びGluの間、Asn及びGlnの間、Lys及びArgの間、Phe及びTyrの間の置換は、蛋白質の性質を保持する置換として好ましい。変異されるアミノ酸の数及び部位は特に制限されず、該ポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸がラブコネクチン3β蛋白質の抗原性を有していれば良い。
【0051】
このような配列番号2のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press (1989))、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley &Sons (1987−1997);特にSection8.1−8.5)、Hashimoto−Goto et al. (1995) Gene152: 271−5、Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488−92、Kramerand Fritz (1987) Method. Enzymol. 154: 350−67、Kunkel (1988) Method. Enzymol. 85: 2763−6等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。
【0052】
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、ラブコネクチン3β蛋白質、またはその抗原性断片をコードする、配列番号1の核酸配列または該核酸配列に相補的な配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、を含むポリヌクレオチドである。このようなポリヌクレオチドとしては、アイソフォーム、アルタナティブアイソフォーム、及びアレリック変異体が考えられ、本発明のポリヌクレオチドに含まれる。このようなポリヌクレオチドは、配列番号1を含む核酸配列からなるポリヌクレオチド、またはその断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の動物のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることができる。cDNAライブラリーの作成方法については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press (1989))を参照することができる。また、市販のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを用いてもよい。
【0053】
より具体的に、cDNAライブラリーの作製においては、まず、本発明のポリヌクレオチドを発現する細胞、臓器、組織等からグアニジン超遠心法(Chirwin et al. (1979) Biochemistry 18: 5294−9)、AGPC法(Chomczynski and Sacchi (1987) Anal. Biochem. 162: 156−9)等の公知の手法により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia)等を用いてmRNAを精製する。QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia)のような、直接mRNAを調製するためのキットを利用してもよい。次に得られたmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業)のようなcDNA合成のためのキットも市販されている。その他の方法として、cDNAはPCRを利用した5’−RACE法(Frohman et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 8998−9002; Belyavsky et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17: 2919−32)により合成、及び増幅させてもよい。また、全長率の高いcDNAライブラリーを作製するために、オリゴキャップ法(Maruyama and Sugano (1994) Gene 138: 171−4; Suzuki (1997) Gene 200: 149−56)等の公知の手法を採用することもできる。上述のようにして得られたcDNAは、適当なベクター中に組み込む。
【0054】
本発明におけるハイブリダイゼーション条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」等の条件を挙げることができる。より詳細には、Rapid−hyb buffer(Amersham Life Science)を用いた方法として、68℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行った後、プローブを添加して1時間以上68℃に保ってハイブリッド形成させ、その後、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を3回、最後に、1×SSC、0.1%SDS中、50℃で20分の洗浄を2回行うことも考えられる。その他、例えばExpresshyb Hybridization Solution (CLONTECH)中、55℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行い、標識プローブを添加し、37〜55℃で1時間以上インキュベートし、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を1回行うこともできる。ここで、例えば、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションや2度目の洗浄の際の温度を上げることにより、よりストリンジェントな条件とすることができる。例えば、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの温度を60℃、さらにストリンジェントな条件としては68℃とすることができる。あるいは、0.1% SDSを含む4×SSC中42℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.1% SDSを含む2×SSC中25℃(好ましくは、0.1% SDSを含む0.1×SSC中50℃)での1時間の洗浄が挙げられる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を適宜設定することができる。
【0055】
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、『Molecular Cloning, ALaboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press (1989);特にSection9.47−9.58) 、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987−1997);特にSection6.3−6.4)、『DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.』(Oxford University (1995);条件については特にSection2.10)等を参照することができる。ハイブリダイズするポリヌクレオチドとしては、配列番号1を含む核酸配列に対して少なくとも50%以上、好ましくは70%、さらに好ましくは80%、より一層好ましくは90%(例えば、95%以上、さらには99%)の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。このような同一性は、BLASTアルゴリズム(Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264−8; Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873−7)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいたプログラムとして、アミノ酸配列についての同一性を決定するプログラムとしてはBLASTX、ヌクレオチド配列についてはBLASTN(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403−10)等が開発されており、本発明の配列に対して使用することができる。具体的な解析方法については、例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov.等を参照することができる。
【0056】
その他、遺伝子増幅技術(PCR)(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 6.1−6.4)により、ラブコネクチン3βのアイソフォームやアレリック変異体等、ラブコネクチン3βと類似した構造及び機能を有する遺伝子を、配列番号1に記載の核酸配列を基にプライマーを設計し、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の動物のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることができる。
【0057】
本発明のポリヌクレオチドの塩基配列の確認は、慣用の方法により配列決定することにより行うことができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463)等により行うことができる。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
【0058】
<ベクター>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。本発明のベクターは、本発明のポリヌクレオチドを宿主細胞内に保持したり、該ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドを発現させたりするのに有用である。本ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、クローニング用ベクター、発現ベクター等の種々のベクターが含まれる(Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Press (1989); Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987))。好ましい態様においては、ベクターを導入した宿主細胞内で本発明のポリヌクレオチドが発現されるように制御配列下に結合する。ここで「制御配列」とは、宿主細胞が原核生物であればプロモーター、リボソーム結合部位、及びターミネーターを含み、真核生物の場合は、プロモーター及びターミネーターであり、場合によってトランスアクチベーター、転写因子、転写物を安定化するポリAシグナル、スプライシング及びポリアデニル化シグナル等が含まれる。このような制御配列は、それに連結されたポリヌクレオチドの発現に必要とされるすべての構成成分を含むものである。また、本発明のベクターは、好ましくは選択可能なマーカーを含む。さらに、細胞内で発現されたポリペプチドを小胞体内腔、グラム陰性菌を宿主とする場合ペリプラズム内、または細胞外へと移行させるために必要とされるシグナルペプチドを目的のポリペプチドに付加するようにして発現ベクターへ組み込むこともできる。さらに、必要に応じリンカーの付加、開始コドン(ATG)、終止コドン(TAA、TAGまたはTGA)の挿入を行ってもよい。
【0059】
本発明のベクターは、好ましくは発現ベクターである。「発現ベクター」とは、in vitroでまたは、目的とする宿主細胞内で発現ベクター中にコードされるポリペプチドを発現することができる構築物を指す。クローニングベクター、バイナリーベクター、インテグレイティングベクター等が本発明の発現ベクターに含まれる。発現の過程には、発現ベクター中のコード配列の翻訳可能なmRNAへの転写、及びmRNAから本発明のポリペプチドへの翻訳、さらに場合によっては発現されたポリペプチドの小胞体内腔、ペリプラズムまたは細胞外への分泌が含まれる。
【0060】
In vitroにおけるポリペプチドの発現を可能にするベクターとしては、pBEST(Promega)を例示することができる。また、E.coli等の原核細胞宿主における発現を可能にするプロモーターとしてはPL、araB(Better et al. (1988) Science 240: 1041−3)、lacZ(Ward et al. (1989) Nature 341: 544−6; Ward et al. (1992) FASEB J. 6: 2422−7)、trp、tac、trc(lacとtrpの融合)等のプロモーターが挙げられる。また、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来ターミネーターが、利用可能である。さらに、大腸菌用のベクターは、好ましくはベクターを宿主内で増幅するための「ori」、及び形質転換された宿主を選抜するためのマーカー遺伝子を持つ。アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、及びクロラムフェニコール等の薬剤により宿主の判別を行うことを可能にする薬剤耐性遺伝子の使用が好ましい。特に、ポリペプチドをペリプラズムへ分泌させることを目的とする場合、pelBシグナル配列(Lei etal. (1987) J. Bacteriol. 169:4379)を使用することができる。例えば、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pCR−Script、pGEX−5X−1(Pharmacia)、pEGFP、pBluescript(Stratagene)、pET(Invitrogen;この場合の宿主はT7ポリメラーゼを発現しているBL21が好ましい)等のベクターを挙げることができる。また、特にサブクローニングまたは切出し用のベクターとしては、pGEM−T、pDIRECT、pT7等を例示できる。
【0061】
大腸菌以外の細菌宿主用としては、バチルス属のものが挙げられ、pUB110系、pc194系のベクターが例示される。より具体的に、枯草菌由来のpPL608、pKTH50等を挙げることができる。その他、Pseudomonas putida、Pseudomonas cepacia等のシュードモナス属、Brevibacterium lactofermentum等のブレビバクテリウム属(pAJ43(Gene 39: 281 (1985))等)、Corynebacterium glutamicum等のコリネバクテリウム属(pCS11(特開昭57−183799号公報; pCB101(Mol. Gen. Genet. 196:175 (1984))等)、ストレプトコッカス属(pHV1301(FEMS Microbiol. Lett. 26: 239 (1985))、pGK1(Appl. Environ. Microbiol. 50: 94 (1985))等)、ラクトバチルス属(pAMβ1(J. Bacteiol. 137: 614 (1979))等)、Rhodococcus rhodochrous等のロドコッカス属(J. Gen. Microbiol. 138: 1003 (1992))、Streptomyces lividans、Streptomyces virginiae等の ストレプトマイセス属(Genetic Manipulation of Streptomyces: A Laboratory Manual, Hopwood et al., Cold Spring Harbor Laboratories (1985)参照;pIJ486(Mol. Gen. Genet. 203: 468−78 (1986))、pKC1064(Gene 103: 97−9 (1991))、pUWL−KS(Gene 165: 149−50 (1995)))の細菌を宿主とするベクター系が開発されている。微生物を宿主として利用できるベクターについては、『微生物学基礎講座8 遺伝子工学』(共立出版)等の文献を参照することができる。ベクターを細菌宿主へ導入するための手法としては、塩化カルシウム法(Mandel and Higa (1970) J. Mol. Biol. 53: 158−62; Hanahan (1983) J. Mol. Biol. 166: 557−80)、エレクトポレーション法等を採用することができる。
【0062】
また、真核細胞宿主での発現を可能にする調節要素は、酵母を宿主とする場合には、AOX1及びGAL1プロモーターが例示される。酵母由来の発現ベクターとしては、Pichia Expression Kit (Invitrogen)、pNV11、SP−Q01等が例示できる。酵母で利用可能なベクターに関しては、Adv. Biochem. Eng. 43: 75−102 (1990)、Yeast 8: 423−88 (1992)等に詳述されている。より具体的には、Saccharomyces cerevisiae等のサッカロマイセス属では、YRp系、YEp系、YCp系、及びYIp系ベクターが利用可能である。特に、多コピーの遺伝子導入が可能であり、安定に遺伝子を保持できるインテグレーションベクター(EP537456等)が有用である。その他、Kluyveromyces lactis等のクルイベロマイセス属では、S.cerevisiae由来2μm系ベクター、pKD1系ベクター(J. Bacteriol. 145: 382−90 (1981))、pGK11由来ベクター、クライベロマイセス自律増殖遺伝子KARS系ベクター等、シゾサッカロマイセス属では、Mol. Cell. Biol. 6: 80 (1986)に記載のベクター、pAUR224(宝酒造)、チゴサッカロマイセスではpSB3(Nucleic Acids Res. 13: 4267 (1985))由来ベクター、Pichia angusta、Pichia pastoris等のピキア属ではYeast 7: 431−43 (1991)、Mol. Cell. Biol. 5: 3376 (1985)、Nucleic Acids Res. 15: 3859 (1987)等の文献記載のベクター、Candida maltosa、C.albicans、C.tropicalis、C.utilis等のキャンディダ属では、特開平8−173170号公報記載のベクター、またC.maltosa由来のARS(Agri. Biol. Chem. 51: 1587 (1987))を利用したベクター、Aspergillus niger、A.oryzae等のアスペルギルス属では、Trends in Biotechnology 7: 283−7 (1989)記載のベクター、トリコデルマ属では菌体外セルラーゼ遺伝子由来プロモーター(Bio/Technology 7: 596−603 (1989))を利用したベクターが利用できる。
【0063】
哺乳動物及びその他の動物細胞を宿主とする場合には、アデノウイルス後期プロモーター(Kaufman et al. (1989) Mol. Cell. Biol. 9: 946)、CAGプロモーター(Niwa et al. (1991) Gene 108: 193−200)、CMV 前初期プロモーター(Seed and Aruffo (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3365−9)、EF1αプロモーター(Mizushima et al. (1990) Nucleic Acids Res. 18: 5322; Kim et al. (1990) Gene 91: 217−23)、HSV TKプロモーター、SRαプロモーター(Takebe et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8: 466)、SV40プロモーター(Mulligan et al. (1979) Nature 277: 108)、SV40 earlyプロモーター(Genetic Engineering Vol.3, Williamson ed., Academic Press (1982) pp.83−141)、SV40 lateプロモーター(Gheysen and Fiers (1982) J. Mol. Appl. Genet. 1: 385−94)、RSV(ラウス肉腫ウイルス)−LTRプロモーター(Cullen (1987) Methods Enzymol. 152: 684−704)、MMLV−LTRプロモーター、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、及びグロビンイントロン等を使用することができる。さらに、ネオマイシン、G418等の薬剤による判別を可能とする薬剤耐性遺伝子がベクターに含まれていることが好ましい。そして、細胞内で遺伝子のコピー数の増加を計る場合には、例えば核酸合成経路を欠損したCHOを宿主とし、その欠損を補うDHFR遺伝子を有するpCHOI等のベクターを採用し、メトトレキセート(MTX)によりコピー数を増幅させることができる。一方、遺伝子の一過性発現のためには、SV40のT抗原遺伝子を染色体上に有するCOS細胞を宿主とし、pcD等のSV40の複製起点、またはアデノウイルス、ウシパピーローマウイルス(BPV)、ポリオーマウイルス等の複製開始点を持つベクターを使用することができる。さらに、遺伝子コピー数の増幅のための選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)、チミジンキナーゼ(TK)、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)等をコードする遺伝子を含んでもよい。適当なベクターとして、例えば、Okayama−Bergの発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8(Nature 329: 840−2 (1987))、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)、pSPORT1(GIBCO BRL)、pSV2dhfr(Mol. Cell. Biol. 1: 854−64 (1981))、pEF−BOS(Nucleic Acids Res. 18: 5322 (1990))、pCEP4(Invitrogen)、pMAM、pDR2、pBK−RSV、pBK−CMV、pOPRSV、pOP13、pME18S(Mol.Cell.Biol. 8: 466−72 (1988))等が公知である。
【0064】
特に動物の生体内において本発明のポリヌクレオチドを発現させるためには、pAdexlcw等のアデノウイルスベクター、pZIPneo等のレトロウイルスベクターが挙げられる。ベクターはアデノウイルス法、エレクトポレーション(電気穿孔)法(Cytotechnology 3: 133 (1990))、カチオニックリポソーム法(カチオニックリポソームDOTAP(Boehringer Mannheim)等)、正電荷ポリマーによる導入法、静電気型リポソーム(electrostatic type liposome)法、内包型リポソーム(internaltype liposome)法、パーティクルガンを用いる方法、リポソーム法、リポフェクション(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 7413 (1987))、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、レセプター介在遺伝子導入法、レトロウイルス法、DEAEデキストラン法、ウイルス−リポソーム法(別冊実験医学『遺伝子治療の基礎技術』羊土社(1997);別冊実験医学『遺伝子導入&発現解析実験法』羊土社(1997); J. Clin. Invest. 93: 1458−64 (1994); Am. J. Physiol. 271: R1212−20 (1996); Molecular Medicine 30: 1440−8 (1993); 実験医学 12: 1822−6 (1994); 蛋白質核酸酵素 42: 1806−13 (1997); Circulation 92(Suppl.II): 479−82 (1995))、naked−DNAの直接導入法等により宿主に導入することができる。アデノウイルス及びレトロウイルス以外由来のウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、トガウイルス、パラミクソウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス等を元に作製されたベクターを利用することもできる。生体内への投与は、ex vivo法でもin vivo法で行ってもよい。
【0065】
その他、昆虫発現システムも異種ポリペプチドを発現させる系として知られており、例えば、Autographa california核ポリへドロシスウイルス(AcNPV)をベクターとし、Spodoptera frugiperda細胞、またはTrichoplusia larvae細胞中で外来遺伝子を発現させることができる。この際、目的とする外来遺伝子は、ウイルスの非必須領域にクローニングする。例えば、ポリヘドリンプロモーター制御下に連結してもよい。この場合、ポリへドリン遺伝子は不活化され、コート蛋白質を欠く組換えウイルスが産生され、該ウイルスに感染したSpodoptera frugiperdaまたはTrichoplusia larvae等の細胞中で目的とするポリペプチドが発現される(Smith (1983) J. Virol. 46: 584; Engelhard (1994) Proc. Natl. Acad. Sci.USA 91: 3224−7)。その他、昆虫細胞由来の発現ベクターとして、Bac−to−BAC baculovirus expression system(Bigco BRL)、pBacPAK8等も公知である。
【0066】
植物細胞を宿主とする場合には、例えばカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター等を利用したベクターが使用可能である。植物細胞へのベクターの導入法としては、PEG法、エレクトポーレション法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法等が公知である。
【0067】
ベクターへのDNAの挿入は、制限酵素サイトを利用したリガーゼ反応により行うことができる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(1987) Section 11.4−11.11; Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Press (1989) Section 5.61−5.63)。
【0068】
<形質転換体>
本発明の形質転換体は、本発明のポリヌクレオチドにより宿主を形質転換して得られる形質転換体であり、本発明の蛋白質を発現する。
【0069】
<宿主>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主が提供される。本発明のポリペプチドの製造には、in vitro及びin vivoの産生系が考えられる。本発明の宿主には、古細菌、細菌、真菌類、植物、昆虫、魚類、両生類、ハ虫類、鳥類、哺乳類由来の原核及び真核細胞が含まれる。本発明の宿主は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞内に含むものである。該ポリヌクレオチドは、宿主細胞のゲノム上の天然に存在する位置になければよく、該ポリヌクレオチド自身のプロモーター支配下にあっても、ゲノム中に組み込まれていても、染色体外の構造として保持されていても良い。
【0070】
細菌宿主としては、E.coli(JM109, DH5α, HB101, XL1Blue)、Serratia marcescens、Bacillus subtilis等、エシェリシア属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、セラチア属、バシルス属等に属するのグラム陽性及びグラム陰性細菌を例示することができる。
【0071】
真核宿主には、酵母等の真菌類、高等植物(Nicotiana tabacum由来細胞)、昆虫(ドロソフィラS2、スポロドプテラSf9、Sf21、Tn5)、魚類、両生類(アフリカツメガエル卵母細胞(Valle et al. (1981) Nature 291: 358−40))、ハ虫類、鳥類、哺乳類(CHO(J. Exp. Med. 108: 945 (1995); 中でもDHFR遺伝子欠損dhfr−CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 4216−20 (1980)及びCHO K−1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 60: 1275 (1968))が好適である)、COS、Hela、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowesメラノーマ細胞)、ミエローマ、Vero、Namalwa、Namalwa KJM−1、HBT5637(特開昭63−299号公報)、植物(ジャガイモ、タバコ、トウモロコシ、イネ、アブラナ、ダイズ、トマト、コムギ、オオムギ、ライ麦、アルファルファ、亜麻等)等の細胞が含まれる。真菌類としては、Saccharomyces属に属するSaccharomyces cerevisiae、Pichia属等の酵母に加えて、糸状菌のAspergillus属のAspergillus niger等の細胞を宿主とした発現系も公知である。
【0072】
宿主細胞へのベクターの導入は、エレクトポレーション法(Chu et al. (1987)Nucleic Acids Res. 15: 1311−26)、カチオニックリポソーム法、電気パルス穿孔法(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 9.1−9.9)、微小ガラス管を使用した直接注入法、マイクロインジェクション法、リポフェクション(Derijard (1994) Cell 7: 1025−37; Lamb (1993) Nature Genetics 5: 22−30; Rabindran et al. (1993) Science 259: 230−4)、リポフェクタミン法(GIBCO−BRL)、リン酸カルシウム法(Chen and Okayama (1987) Mol. Cell. Biol. 7: 2745−52)、DEAEデキストラン法(Lopata et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12: 5707−17; Sussman and Milman (1985) Mol. Cell. Biol. 4: 1642−3)、FuGene6試薬(Boehringer−Mannheim)等により行い得る。
【0073】
本発明の製造法は、本発明の蛋白質すなわちラブコネクチン3結合蛋白質の製造法であり、本発明の形質転換体を培養し、該形質転換体が発現したラブコネクチン3結合蛋白質を培養物から採取することを含む。より具体的には前述の<蛋白質の製造>に記載した方法を用いることができる。
【0074】
ラブコネクチン3βとラブコネクチン3αは、抗ラブコネクチン3α抗体および抗ラブコネクチン3β抗体のいずれを用いても共免疫沈降される。両タンパクは、0.5 M NaClまたは1% CHAPS存在下では互いから分離しないが、1 M NaCl存在下で一部が、1%デオキシコレート存在下では完全に分離する。さらに、これらの二つのタンパクは、シナプス小胞に共存する。これらの結果は、ラブコネクチン3αと3βとがサブユニット構造を構成することを示している。
【0075】
ラブコネクチン3αは膜貫通部分を持たないが、シナプス小胞と結合することが示されている(上記非特許文献1)。ラブコネクチン3αは、Triton X−100やNP−40の様な界面活性剤の存在下で小胞から分離することから、この蛋白質はシナプス小胞の表在性膜蛋白質の一つであることが示唆される。同様に、ラブコネクチン3βは膜貫通部分を持たず、同じ状況下で小胞から分離することから、この蛋白質もまた、シナプス小胞の表在性膜蛋白質の一つであることが示唆される。
【0076】
ラブコネクチン3βは直接Rab3 GEPに化学量論的に結合するが、ラブコネクチン3αは結合しない。ラブコネクチン3αと3βの複合体は直接Rab3 GEPに結合するが、化学量論的にはこの結合はラブコネクチン3βのものよりもずっと小さいことから、3αと3βとの相互作用が、Rab3 GEPが複合体に結合しない様にその結合部位を隠すことが示唆される。対照的に、ラブコネクチン3α、3β、およびそれらの複合体のいずれもRab3 GAPに結合しないことから、ラブコネクチン3βは間接的に、おそらくは未同定の分子を介して、Rab3 GAPに結合すると示唆される。
【0077】
なお、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質は、J. Biol. Chem., 272, 3875−3878(1997)、J. Biol. Chem., 273, 24781−24785、特開平10−210971号公報等に記載されているようにして得ることができる。
【0078】
<プローブ>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドに対するプローブが提供される。本発明のプローブは、本発明のポリヌクレオチドに相補的な、少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなる。ここで「相補的な配列」とは、ヌクレオチド配列中の少なくとも15個の連続した塩基が鋳型に対して完全に対になっている場合のみならず、そのうちの少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上(例えば、97%または99%)が対になっているものも含む。対になっているとは、鋳型となるポリヌクレオチドの塩基配列中のAに対しT(RNAの場合はU)、TまたはUに対しA、Cに対しG、そしてGに対しCが対応して鎖が形成されていることを意味する。そして相同性は、上述のハイブリダイズするポリヌクレオチドの場合と同様の方法で決定することができる。本発明のプローブは、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドの一部の、連続してなる少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなる。本発明のプローブを用いることにより、本発明のポリヌクレオチドを検出または単離することができる。また、本発明の蛋白質をコードする遺伝子発現を解析することができる。さらには、発現の局在を解析することができる。測定するサンプルは、臓器、組織、細胞等である。
【0079】
プローブを用いる本発明のポリヌクレオチドの解析または本発明の蛋白質をコードする遺伝子の解析は、プローブを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることにより行うことができ、通常には、プローブを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせ、生じたハイブリッドを検出し、その検出結果を解析することにより行われる。検出結果の解析には、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の測定(検出、定量を含む)、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の局在の検出が含まれる。被検ポリヌクレオチドは、被検組織または被検細胞中に存在するものであってもよい。
【0080】
<プライマー>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドに対するプライマーが提供される。このような本発明のプライマーは、本発明のポリヌクレオチドに相補的な、少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなり、本発明のポリヌクレオチドを検出または増幅するために利用することができる。通常、プライマーとして使用する場合には15〜100、好ましくは15〜35個の塩基より構成されていることが望ましく、プライマーとして使用する場合には、少なくとも15、好ましくは30個の塩基より構成されていることが望ましい。プライマーの場合には、3’末端側の領域を標的とする配列に対して相補的な配列に、5’末端側には制限酵素認識配列、タグ等を付加した形態に設計することができる。本発明のプライマーは、本発明のポリヌクレオチドに対してハイブリダイズすることができる。本発明のプライマーは、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドの一部の、連続してなる少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなる。本発明のプライマーを用いることにより、本発明のポリヌクレオチドを検出または単離することができる。また、本発明の蛋白質をコードする遺伝子発現を解析することができる。さらには、発現の局在を解析することができる。測定するサンプルは、臓器、組織、細胞等である。これらのプライマーを用いて、mRNAをRT−PCRにより増幅できることは言うまでもない。また、定量的RT−PCRにより、サンプル中のmRNAを定量することもできる。
【0081】
プライマーを用いる本発明のポリヌクレオチドの解析または本発明の蛋白質をコードする遺伝子の解析は、プライマーを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることにより行うことができ、通常には、プライマーを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることによりポリヌクレオチドの増幅を行い(すなわち被検ポリヌクレオチド(必要により逆転写を行う)をテンプレートとし、プライマーを用いてPCRを行い)、増幅産物を検出し、その検出結果を解析することにより行われる。検出結果の解析には、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の測定(検出、定量を含む)、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の局在の検出が含まれる。被検ポリヌクレオチドは、被検組織または被検細胞中に存在するものであってもよい。
【0082】
<アンチセンス>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドに対するアンチセンスポリヌクレオチドが提供される。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドの細胞内における発現をmRNAまたはDNAに対して結合することにより抑制するものである。
【0083】
アンチセンスが標的遺伝子の発現抑制作用の機構としては、(1)3重鎖形成による転写開始阻害、(2)RNAポリメラーゼにより形成される局所的開状ループ構造部位とのハイブリッド形成による転写抑制、(3)合成中のRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、(4)イントロン−エキソン接合点におけるハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(5)スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(6)mRNAとのハイブリッド形成による、mRNAの細胞質への移行抑制、(7)キャッピング部位またはポリA付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(8)翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、(9)リボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、(10)mRNA翻訳領域またはポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長抑制、並びに(11)核酸と蛋白質の相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制が挙げられる(平島及び井上『新生化学実験講座2 核酸IV 遺伝子の複製と発現』日本生化学会編、東京化学同人、pp.319−347 (1993))。
【0084】
本発明のヌクレオチド鎖に含まれるアンチセンスポリヌクレオチドは、上述の(1)〜(11)のどの機構により遺伝子発現を抑制するポリヌクレオチドであってもよく、即ち、発現を阻害する目的の遺伝子の翻訳領域のみならず、非翻訳領域の配列に対するアンチセンス配列を含むものであってもよい。アンチセンスポリヌクレオチドをコードするDNAは、その発現を可能とする適当な制御配列下に連結して使用され得る。アンチセンスポリヌクレオチドは、標的とする遺伝子の翻訳領域または非翻訳領域に対して完全に相補的である必要はなく、効果的に該遺伝子の発現を阻害するものであればよい。このようなアンチセンスポリヌクレオチドとしは、少なくとも15bp以上、好ましくは100bp以上、さらに好ましくは500bp以上であり通常3000bp以内、好ましくは2000bp以内、より好ましくは1000bp以内の鎖長を有し、標的遺伝子の転写産物の相補鎖に対して好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上同一である。このようなアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドを基に、ホスホロチオネート法(Stein (1988) Nucleic Acids Res. 16: 3209−21)等により調製することができる。
【0085】
<リボザイム>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドに対するリボザイムが提供される。本発明のリボザイムは、本発明のポリヌクレオチドの細胞内における発現をmRNAまたはDNAに対して結合することにより抑制するものである。
【0086】
リボザイムとは、RNAを構成成分とする触媒の総称であり、大きくラージリボザイム(large ribozyme)及びスモールリボザイム(small liboyme)に分類される。ラージリボザイムは、核酸のリン酸エステル結合を切断し、反応後に5’−リン酸と3’−ヒドロキシル基を反応部位に残す酵素である。ラージリボザイムは、さらに(1)グアノシンによる5’−スプライス部位でのトランスエステル化反応を行うグループIイントロンRNA、(2)自己スプライシングをラリアット構造を経る二段階反応で行うグループIIイントロンRNA、及び(3)加水分解反応によるtRNA前駆体を5’側で切断するリボヌクレアーゼPのRNA成分に分類される。それに対して、スモールリボザイムは、比較的小さな構造単位(40bp程度)であり、RNAを切断して、5’−ヒドロキシル基と2’−3’環状リン酸を生じさせる。スモールリボザイムには、ハンマーヘッド型(Koizumi et al. (1988) FEBS Lett. 228: 225)、ヘアピン型(Buzayan (1986) Nature 323: 349; Kikuchi and Sasaki (1992) Nucleic Acids Res. 19: 6751; 菊地洋(1992)化学と生物 30: 112)等のリボザイムが含まれる。リボザイムは、改変及び合成が容易になため多様な改良方法が公知であり、例えば、リボザイムの基質結合部を標的部位の近くのRNA配列と相補的となるように設計することにより、標的RNA中の塩基配列UC、UUまたはUAを認識して切断するハンマーヘッド型リボザイムを作ることができる(Koizumi et al. (1988) FEBS Lett. 228: 225; 小泉誠及び大塚栄子(1990)蛋白質核酸酵素35: 2191; Koizumi et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17: 7059)。ヘアピン型のリボザイムについても、公知の方法に従って設計、製造が可能である(Kikuchi and Sasaki (1992) Nucleic Acids Res. 19: 6751; 菊地洋(1992)化学と生物 30: 112)。
【0087】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチド及びリボザイムは、細胞内における遺伝子の発現を制御するために、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルス由来のベクター、リポソーム等を利用した非ウイルスベクター、またはnaked DNAとしてex vivo法またはin vivo法により遺伝子治療に用いることもできる。
【0088】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチド及びリボザイムの塩基配列の確認は、上述のポリヌクレオチドと同様の方法により行うことができる。
【0089】
<RNA干渉>
本発明により、本発明のポリヌクレオチドに対してRNA干渉により切断する二本鎖RNAが提供される。本発明の二本鎖RNAは、本発明のポリヌクレオチドの細胞内における発現をmRNAに対して結合し、酵素的に切断されることにより抑制するものである (Fire et al. (1998) Nature 391: 806−811; 森田 隆ら. (2002) 蛋白質 核酸 酵素 47: 1939−1945)。
【0090】
本発明の二本鎖RNAは、細胞内における遺伝子の発現を制御するために、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルス由来のベクター、リポソーム等を利用した非ウイルスベクター、またはnaked DNAとしてex vivo法またはin vivo法により遺伝子治療に用いることもできる。
【0091】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイムおよび本発明のポリヌクレオチドに対してRNA干渉により切断する二本鎖RNAは、本発明の蛋白質をコードするmRNAを減少させることができる。従って、本発明の蛋白質を減少させることができる。また、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイムおよび本発明のポリヌクレオチドに対してRNA干渉により切断する二本鎖RNAは、ラブコネクチン3結合蛋白質の阻害試薬として機能するため、本発明の蛋白質の機能解析試薬として有用である。
【0092】
本発明において、ラブコネクチン3結合蛋白質がシナプスに局在することが確認されたこと、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合することが確認されたことから、シナプス小胞の輸送の制御に関与していると考えられるので、ラブコネクチン3結合蛋白質を阻害する物質は、シナプス小胞の輸送の異常が原因と考えられる疾患、例えば、知的障害(精神遅滞)、注意欠陥多動障害、自閉性障害、学習障害などに関与している可能性が考えられる。従って、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイムおよび本発明のポリヌクレオチドに対してRNA干渉により特異的に切断する二本鎖RNAは、本発明の蛋白質に阻害作用を有するこれら疾患の治療剤の有効成分として使用できると考えられる。
【0093】
<抗体>
本発明により、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド断片に対する抗体が提供される。本発明の抗体にはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体(scFV)(Huston et la. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA85: 5879−83; The Pharmacology of Monoclonal Antibody, vol.113, Rosenburg and Moore ed., Springer Verlag (1994) pp.269−315)、ヒト化抗体、多特異性抗体(LeDoussal et al. (1992) Int. J. Cancer Suppl. 7: 58−62; Paulus (1985) Behring Inst. Mitt. 78: 118−32; Millstein and Cuello (1983) Nature 305: 537−9; Zimmermann (1986) Rev. Physiol. Biochem. Pharmacol. 105: 176−260; Van Dijk et al. (1989) Int. J. Cancer 43: 944−9)、並びに、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、Fv等の抗体断片が含まれる。さらに、本発明の抗体は必要に応じ、PEG等により修飾されていてもよい。その他、本発明の抗体は、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合蛋白質、GST、緑色蛍光蛋白質(GFP)等との融合蛋白質として製造され得、二次抗体を用いずに検出できるようにしてもよい。また、ビオチン等により抗体を標識することによりアビジン、ストレプトアビジン等を用いて抗体の回収を行い得るように改変されていてもよい。
【0094】
本発明の抗体は、本発明のポリペプチド若しくはその断片、またはそれらを発現する細胞を感作抗原として製造することができる。また、本発明のポリペプチド若しくはその断片のうち短いものは、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、卵白アルブミン等のキャリアに結合して免疫原として用いてもよい。また、本発明のポリペプチドまたはその断片と共に、アルミニウムアジュバント、完全(または不完全)フロイントアジュバント、百日咳菌アジュバント等の公知のアジュバントを抗原に対する免疫応答を強化するために用いてもよい。
【0095】
ポリクローナル抗体は、例えば、本発明のポリペプチドまたはその断片を所望によりアジュバントと共に哺乳動物に免疫し、免疫した動物より血清を得る。ここで用いる哺乳動物は、特に限定されないが、ゲッ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が一般的である。マウス、ラット、ハムスター等のゲッ歯目、ウサギ等のウサギ目、カニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等のサル等の霊長目の動物が挙げられる。動物の免疫化は、感作抗原をPhosphate−Buffered Saline(PBS)または生理食塩水等で適宜希釈、懸濁し、必要に応じアジュバントを混合して乳化した後、動物の腹腔内または皮下に注射して行われる。その後、好ましくは、フロイント不完全アジュバントに混合した感作抗原を4〜21日毎に数回投与する。抗体の産生は、血清中の所望の抗体レベルを慣用の方法により測定することにより確認することができる。最終的に、血清そのものをポリクローナル抗体として用いても良いし、さらに精製して用いてもよい。具体的な方法として、例えば、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987) Section 11.12−11.13)を参照することができる。
【0096】
モノクローナル抗体を産生するためには、まず、上述のようにして免疫化した動物より脾臓を摘出し、該脾臓より免疫細胞を分離し、適当なミエローマ細胞とポリエチレングリコール(PEG)等を用いて融合してハイブリドーマを作成する。細胞の融合は、Milsteinの方法(Galfre and Milstein (1981) Methods Enzymol.73: 3−46)に準じて行うことができる。ここで、適当なミエローマ細胞として特に、融合細胞を薬剤により選択することを可能にする細胞を挙げられる。このようなミエローマを用いた場合、融合されたハイブリドーマは、融合された細胞以外は死滅するヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液(HAT培養液)で培養して選択する。次に、作成されたハイブリドーマの中から、本発明のポリペプチドまたはその断片に対して結合する抗体を産生するクローンを選択する。その後、選択したクローンをマウス等の腹腔内に移植し、腹水を回収してモノクローナル抗体を得る。また、具体的な方法として、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987) Section 11.4−11.11)を参照することもできる。
【0097】
ハイブリドーマは、その他、最初にEBウイルスに感染させたヒトリンパ球をinvitroで免疫原を用いて感作し、感作リンパ球をヒト由来のミエローマ細胞(U266等)と融合し、ヒト抗体を産生するハイブリドーマを得る方法(特開昭63−17688号公報)によっても得ることができる。また、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物を感作して製造した抗体産生細胞を用いても、ヒト抗体を得ることができる(WO92/03918; WO93/02227; WO94/02602; WO94/25585;WO96/33735; WO96/34096; Mendez et al. (1997) Nat. Genet. 15: 146−56等)。ハイブリドーマを用いない例としては、抗体を産生するリンパ球等の免疫細胞に癌遺伝子を導入して不死化する方法が挙げられる。
【0098】
また、遺伝子組換え技術により抗体を製造することもできる(Borrebaeck and Larrick (1990) Therapeutic Monoclonal Antibodies, MacMillan Publishers LTD., UK参照)。そのためには、まず、抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマまたは抗体産生細胞(感作リンパ球等)からクローニングする。得られた遺伝子を適当なベクターに組み込み、宿主に該ベクターを導入し、宿主を培養することにより抗体を産さ生させる。このような組換え型の抗体も本発明の抗体に含まれる。代表的な組換え型の抗体として、非ヒト抗体由来可変領域及びヒト抗体由来定常領域とからなるキメラ抗体、並びに非ヒト抗体由来相補性決定領域(CDR)、及び、ヒト抗体由来フレームワーク領域(FR)及び定常領域とからなるヒト化抗体が挙げられる(Jones et al. (1986) Nature 321: 522−5; Reichmann et al. (1988) Nature 332: 323−9; Presta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593−6; Methods Enzymol. 203: 99−121 (1991))。
【0099】
本発明の抗体断片は、上述のポリクローナルまたはモノクローナル抗体をパパイン、ペプシン等の酵素で処理することにより製造し得る。または、抗体断片をコードする遺伝子を用いて遺伝子工学的に製造することも可能である(Co et al., (1994) J. Immunol. 152: 2968−76; Better and Horwitz (1989) Methods Enzymol. 178: 476−96; Pluckthun and Skerra (1989) Methods Enzymol. 178: 497−515; Lamoyi (1986) Methods Enzymol. 121: 652−63; Rousseaux et al. (1986) 121: 663−9; Bird and Walker (1991) Trends Biotechnol. 9: 132−7参照)。
【0100】
本発明の多特異性抗体には、二特異性抗体(BsAb)、ダイアボディ(Db)等が含まれる。多特異性抗体は、(1)異なる特異性の抗体を異種二機能性リンカーにより化学的にカップリングする方法(Paulus (1985) Behring Inst. Mill. 78: 118−32)、(2)異なるモノクローナル交代を分泌するハイブリドーマを融合する方法(Millstein and Cuello (1983) Nature 305: 537−9)、(3)異なるモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子(4種のDNA)によりマウス骨髄腫細胞等の真核細胞発現系をトランスフェクションした後、二特異性の一価部分を単離する方法(Zimmermann (1986) Rev. Physio. Biochem. Pharmacol. 105: 176−260; Van Dijk et al. (1989) Int. J. Cancer 43: 944−9)等により作製することができる。一方、Dbは遺伝子融合により構築され得る二価の2本のポリペプチド鎖から構成されるダイマーの抗体断片であり、公知の手法により作製することができる(Holliger et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444−8; EP404097; WO93/11161参照)。
【0101】
抗体及び抗体断片の回収及び精製は、プロテインA及びGを用いて行う他、<ポリペプチドの製造>の項で詳細に記載した蛋白質精製技術によっても行い得る(Antibodies: A Laboratory Manual, Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory (1988))。例えば、本発明の抗体の精製にプロテインAを利用する場合、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia)等のプロテインAカラムが公知であり、使用可能である。得られた抗体の濃度は、その吸光度を測定することにより、または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)等により決定することができる。
【0102】
抗体の抗原結合活性は、吸光度測定、蛍光抗体法、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、ELISA等により測定することができる。ELISA法により測定の場合、本発明の抗体をプレート等の担体に固相化し、次いで本発明のポリペプチドを添加した後、目的とする抗体を含む試料を添加する。ここで、抗体を含む試料としては、抗体産性細胞の培養上清、精製抗体等が考えられる。続いて、本発明の抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートのインキュベーションを行う。その後、プレートを洗浄し、二次抗体に付加された標識を検出する。即ち、二次抗体がアルカリフォスファターゼで標識されている場合には、p−ニトロフェニルリン酸等の酵素基質を添加して吸光度を測定することで、抗原結合活性を測定することができる。また、抗体の活性評価に、BIAcore(Pharmacia)等の市販の系を使用することもできる。
【0103】
本発明の抗体は、ラブコネクチン3結合蛋白質の検出試薬として用いることができる。つまり、本発明の抗体を用いて、免疫組織学的な解析方法を行うことができ、したがって、本発明は、免疫組織学的な解析方法、例えば、蛋白質の発現量を解析する方法、蛋白質の局在を解析する方法を提供する。免疫組織学的な解析方法としては、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、ELISA法、Western blot法、フローサイトメトリー、免疫組織化学染色等があげられる。また、本発明のポリペプチド及びその断片の精製に使用することができる。
【0104】
本発明においてラブコネクチン3結合蛋白質がシナプスに局在することが確認されたことから、ラブコネクチン3結合蛋白質をシナプスのマーカーとして、本発明の抗体を用いた検出を行うこともできる。従って、本発明の抗体は、必要に応じシナプス検出試薬として用いることができる。また、本発明の蛋白質は、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合することが確認されたことから、本発明の抗体は、これらの検出にも用いることができる。
【0105】
<本発明のスクリーニング法>
本発明の蛋白質は、ラブコネクチン3およびRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する。従って、本発明の蛋白質は、これらの結合を増加または減少させる物質のスクリーニングに用いることができる。本発明の蛋白質はヒト由来のものであるが、この用途には、ラットなどの他種に存在する同活性を有する異種相同蛋白質も本発明の蛋白質と同様に使用できる。従って、本発明の蛋白質またはその異種相同蛋白質であるラブコネクチン3結合蛋白質と、ラブコネクチン3との結合を促進する物質または阻害する物質の候補物質のスクリーニング方法であって、ラブコネクチン3結合蛋白質と、ラブコネクチン3とを前記候補物質の存在下および非存在下で反応させ、前記結合を増加または減少させる前記候補物質を選択することを含む前記方法、ならびに、本発明の蛋白質またはその異種相同蛋白質であるRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質と、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質との結合を促進する物質または阻害する物質の候補物質のスクリーニング方法であって、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質とRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質とを前記候補物質の存在下および非存在下で反応させ、前記結合を増加または減少させる前記候補物質を選択することを含む前記方法が提供される。
【0106】
ラブコネクチン3結合蛋白質とラブコネクチン3との結合、および、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質とRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質との結合の測定は、蛋白質相互間の結合を測定する公知の方法に従って行うことができる。
【0107】
本発明の蛋白質およびその異種相同蛋白質は、p160は神経伝達物質放出等のシナプス小胞の輸送の制御に関与していると考えられるので、このように選択されたこれらの結合を促進または阻害する物質は、シナプス小胞の輸送の異常が原因となる疾患(例えば、知的障害(精神遅滞)、注意欠陥多動障害、自閉性障害、学習障害)の治療剤の有効成分として使用できると考えられる。
【0108】
このような治療剤(医薬)は、スクリーニングにより選択された物質(有効成分)を、製剤化することにより製造できる。製剤化は、選択された物質の種類、製剤の形態等により適宜、通常の方法に従って行うことができる。医薬は、有効成分と医薬的に許容な可能な担体との医薬組成物としてもよい。
【0109】
【実施例】
本発明を下記実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0110】
【実施例1】
(1)Rab3 GEPと共免疫沈降されたラット蛋白質の取得
J. Biol. Chem., 277, 9629−9632 (2002)に記載された方法に従って、ラット脳のCSV画分抽出物に対して抗Rab3 GEP抗体を用いて共免疫沈降を行い、沈降物に対して電気泳動を行った。具体的には以下のように行った。この文献に記載のようにラット脳からCSV画分を調製した。画分を、バッファーA(20 mM Tris/HCl(pH7.5), 1 mM EDTA, 1 mM DTT, 0.8% n−オクチルグルコピラノシド)を用いて抽出し、抽出物(各2 mgのタンパク)を、抗Rab3 GEP抗体を固定したプロテインAセファロースビーズ(20μl湿重量)と共に4℃で一晩静置した。バッファーAでビーズを完全に洗浄した後、結合した蛋白質を、ビーズをSDSサンプルバッファー(60 mM Tris/HCl (pH 6.7), 3% SDS, 2% (v/v)2−メルカプトエタノール,5%グリセロール)中で煮沸して抽出した。抽出物をSDS−PAGEにかけ、蛋白質染色を行った。この結果、ラブコネクチン3(バンドNo.1)、p160(バンドNo.3)そしてp60(バンドNo.4)の他に、Rab3 GEPと共免疫沈降されたふたつのタンパク(バンドNo.2)が検出された(図1のA)。
【0111】
No.3バンドをゲルから切り出してトリプシンで消化し、そしてそのペプチドを質量分析にかけた。コンピューターデーターベース検索により、p160がヒトcDNA断片(KIAA0541, GenBankアクセッション番号AB011113)から推定されるアミノ酸配列を含むことが明らかになった。
【0112】
なお、下記(5)に示すように、p160はラブコネクチン3と複合体を形成することが判明したので、以下、p160をラブコネクチン3β、ラブコネクチン3をラブコネクチン3αと呼ぶ。
【0113】
(2)分子クローニングと一次構造決定
KIAA0541 cDNAは、約3.5kbのコーディング領域とインフレーム停止コドンを含むが、予想される開始コドンを欠いていた。また、KIAA0541 cDNAの配列はヒトゲノムのBACクローンに含まれていた(GenBankアクセッション番号AC007052およびAC008006)。この情報を基礎として、ヒトラブコネクチン3β cDNAの5’末端を得るためにPCRを行った。具体的には以下のように行った。ATG GCA GGA AAC AGC CTT GTT CTA CCC ATT GTT C(配列番号3)/GTT GTC ATT GCC AGC CCT TCT TCA CTT CCC(配列番号4)の配列を有するプライマーセットを設計した。cDNA断片を、ヒト心臓cDNA(CLONTECH)からこれらのプライマーを用いて増幅した。PCR産物はpCR4 Bluntベクター(Invitrogen)にサブクローンした。DNAシークエンシングを、ジデオキシ核酸ターミネーション法により、DNAシークエンサー(ABIPRISM 3100 Genetic Analyzer, PE Biosystems)で行った。この結果、約1.0kbのコーディング領域と予想される開始コドンを含むcDNA断片を得た。
【0114】
ヒトラブコネクチン3βcDNAの全長が、このcDNA断片をKIAA0541 cDNAにライゲーションすることで得られた(配列番号1)。コードされる蛋白質は1,490アミノ酸からなり、計算上の分子量は163,808であった(配列番号2)。ヒトラブコネクチン3βは7つのWDドメインを含んでいた(図1のB)。ライゲートしたcDNAがヒトラブコネクチン3βの全長をコードするかどうかを確認するため、このcDNAをHEK293細胞にトランスフェクトし、細胞抽出物をSDS−PAGEにかけ、続いて抗ラブコネクチン3β抗体を用いたウエスタンブロッティングを行った。具体的には以下のように行った。pCMVFaラブコネクチン3β(下記(3)参照)をHEK293細胞にトランスフェクトし、その細胞の溶解液をSDS−PAGE(10%ポリアクリルアミドゲル)にかけ、続いて抗ラブコネクチン3β−1抗体(下記(3)参照)を用いたウエスタンブロッティングが行われた。対照としてHEK293細胞溶解液とラット脳ホモジェネートを、同様にSDS−PAGEにかけ、続いてウエスタンブロッティングを行った。この結果、分子量約160kDaのタンパクが検出された(図1のC)。図1のC中、各レーンは以下の通りである。レーン1,対照HEK293細胞(1μg蛋白質)、レーン2,pCMVFaラブコネクチン3βをトランスフェクトしたHEK293細胞(1μg蛋白質)、レーン3,ラット脳のホモジェネート(20μg蛋白質)。
【0115】
この分子量は、ラット脳由来の天然のラブコネクチン3βと同様であった。それゆえ、このcDNAがヒトラブコネクチン3βの全長をコードすると結論された。ヒトラブコネクチン3βは、ラットTRAG(GenBankアクセッション番号AF305813)とヒトWDR7(GenBankアクセッション番号XM028588)に似た領域構造を示した。TRAG はこれまで、TGF−β耐性細胞株で発現する蛋白質として同定されていたが、その機能は知られていない(Cytogenet. Cell Genet. 88, 324−325, 2000)。
【0116】
(3)ラブコネクチン3βに対する抗体の調製
ラブコネクチン3βの発現ベクターを、pGex4T−1 (Amersham Biosciences Inc)を用いて構築した。構築物はラブコネクチン3βの以下のアミノ酸配列を含んでいた。pGex4T−1ラブコネクチン3β−1、アミノ酸番号487−625; pGex4T−1ラブコネクチン3β−2、アミノ酸番号615−920。
【0117】
GST融合タンパクはE. coliで発現させ、グルタチオンセファロースビーズ(Amersham Biosciences Inc.)を用いて精製した。抗原としてGST−ラブコネクチン3β−1および−2をそれぞれ用いてウサギポリクローナル抗ラブコネクチン3β−1および−2抗体を作成し、NHS−活性化セファロースビーズ(Amersham Biosciences Inc.)に各抗原を共有結合したものを用いてアフィニティー精製した。
【0118】
(4)ラブコネクチン3βの組織および細胞下(subcellular)の分布の検討
ラブコネクチン3βの組織および細胞下分布を検討した。組織分布については、種々のラット組織のホモジェネート(各20μg蛋白質)をSDS−PAGEにかけ、続いて抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いてウエスタンブロッティングを行った。細胞下分布については、ラット大脳のホモジェネートを、細胞下分画し(J. Biol.Chem., 265, 11872−11879 (1990))、各画分(各10μg蛋白質)をそれぞれSDS−PAGEにかけ、抗ラブコネクチン3β−1抗体、抗ラブコネクチン3α抗体、または抗Rab3 GEP抗体を用いてウエスタンブロッティングを行った。
【0119】
この結果、組織分布解析により、ラブコネクチン3βが脳に特異的に発現していることが明らかになった(図2のA)。脳での細胞レベル下分布解析により、ラブコネクチン3βがCSV画分中に高濃度であることを示した(図2のB)。図2のBにおける記号は以下の画分等を示す。Rc−3β, ラブコネクチン3β、Rc−3α, ラブコネクチン3α、GEP, Rab3 GEP、Ho, ホモジェネート画分、P1, 核ペレット画分、P2, 粗シナプトソーム画分、P3, ミクロソーム画分、S, 可溶性細胞質画分、P2A, ミエリン画分、P2B, 小胞体およびゴルジ複合体画分、P2C, シナプトソーム画分、P2D, ミトコンドリア画分、SS, シナプス可溶性画分、CSV, 粗シナプス小胞画分、CSM, 粗シナプス膜画分。なお、図に示した結果は3つの独立した実験の典型的なものである。
【0120】
さらに、マウス海馬とラット海馬ニューロンの初代培養(J. Biol. Chem., 277, 9629−9632 (2002))について免疫電子顕微鏡観察(Biochem. Biophys. Res. Commun., 202, 1235−1243 (1994))を行った。
【0121】
試料は、抗ラブコネクチン3α抗体と抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いて二重染色を行い、続いて免疫蛍光顕微鏡法で観察した。
【0122】
この結果、ラブコネクチン3βはラブコネクチン3αと共に、マウス海馬のシナプス領域と初代培養を行ったラット海馬ニューロンに共存していることが明らかになった(図3のAaとAb)。図3のAaは、マウス海馬CA3領域 、Abは、ラット海馬ニューロン初代培養(培養20日目)である。記号は以下の通りである。SR, 放線状層、 SL, 淡明層、 SP, 錐体層、バー, 30 μm。
【0123】
また、培養22日目のニューロンを、抗ラブコネクチン3β−1抗体で染色した(図3のB)。図3のBにおいてバーは200 nmを示す。この結果は、ラブコネクチン3βがシナプス小胞と関連することを示した(図3のB)。
【0124】
これらの結果は、ラブコネクチン3βとラブコネクチン3αがシナプス小胞に共存することを示す。なお、図3に示した結果は、3つの独立した実験の典型例である。
【0125】
(5)ラブコネクチン3βに対する、ラブコネクチン3α、Rab3 GEPおよびRab3GAPの結合の検討
ラブコネクチン3βとラブコネクチン3αの結合を検討した。CSV画分の抽出物を、抗ラブコネクチン3αまたは3β−2抗体による免疫沈降にかけた。各免疫沈降物をSDS−PAGE(8%ポリアクリルアミドゲル)にかけ、続いて抗ラブコネクチン3αまたは3β−1抗体によるウエスタンブロッティングを行った。さらに、抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いた免疫沈降物は、まず0.5 M NaClまたは1% CHAPSで洗浄し、次いでSDS−PAGE(8%ポリアクリルアミドゲル)にかけ、さらにクーマシーブリリアントブルーによるタンパク染色を行った。結果を図4のAa〜Acに示す。Aaは、抗ラブコネクチン3α抗体による免疫沈降物、Abは、抗ラブコネクチン3β−2抗体による免疫沈降物、Acは、NaClまたはCHAPS処理を行った、抗ラブコネクチン3β−2抗体による免疫沈降物の結果である。
【0126】
ラブコネクチン3αがその抗体を用いてP2C画分抽出物から免疫沈降されたとき、ラブコネクチン3βはウエスタンブロッティングから予想されたように共免疫沈降された(図4のAa)。逆に、ラブコネクチン3βがその抗体を用いてP2C画分抽出物から免疫沈降されたとき、ラブコネクチン3αが共免疫沈降された(図4のAb)。抗ラブコネクチン3β−2抗体により共免疫沈降されたラブコネクチン3αおよびラブコネクチン3βを、0.5 M NaClまたは1% CHAPSのどちらかで洗浄し、続いてクーマシーブリリアントブルーでタンパク染色した。両タンパクは互いに分離せず、明らかに同じ分子比率で染色された(図4のAc)。ラブコネクチン3αとラブコネクチン3βは、1 M NaClで一部が、1%デオキシコレートで完全に互いに分離した(データ省略)。これらの結果は、ラブコネクチン3αとラブコネクチン3βが 複合体を形成することを示している。
【0127】
次に、ラブコネクチン3αおよび3βのいずれがRab3 GEPおよびRab3 GAPに結合しているかを調べた。この目的のため、昆虫細胞から得たラブコネクチン3βとRab3 GEP、そしてE.coli.から得たRab3 GAPの非触媒サブユニット(p150)の純粋なサンプルを調製した(J. Biol. Chem., 272, 3875−3878(1997)、J. Biol. Chem., 273, 24781−24785参照)。ラブコネクチン3αは巨大な蛋白質なので、その全長蛋白質を、COS7細胞のような哺乳類細胞株で発現させることや、その純粋なリコンビナントサンプルをE.coliや昆虫細胞から用意することにまだ成功していない。それゆえ、天然のラブコネクチン3α、および、3αと3βの複合体をラット脳P2C画分から調製した。ラブコネクチン3αと3βの複合体は、プロテインAセファロースビーズに結合した抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いて、P2C画分から免疫沈降され、続いて0.5 M NaClでビーズが洗浄された。このサンプルはラブコネクチン3αと3βの複合体として使われた。鎖の調製をするための別の実験で、プロテインAセファロースビーズに結合した抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いてP2C画分から免疫沈降されたラブコネクチン3αと3βの複合体は、3αを3βから分離するために、1M NaClで洗浄された。ビーズより分離された3αは、続いてプロテインAセファロースビーズに固定した3αに対する抗体を用いて免疫沈降された。
【0128】
ラブコネクチン3β、3αまたは複合体と結合されたアフィニティービーズを準備した。ラブコネクチン3β結合ビーズに関しては、製造者のプロトコールに基づき(GIBCO BRL)pFastBac Hta ラブコネクチン3βを用いて、ラブコネクチン3βcDNAを持つバキュロウイルスを準備し、バキュロウイルスをHigh Five cell(Invitrogen)にトランスフェクトした。細胞の抽出物(5mg蛋白質)をバッファーAを用いて調製し、プロテインAセファロースビーズ(20μl湿容量)に固定された抗ラブコネクチン3β−2抗体と共に4℃で一晩静置した。ラブコネクチン3α結合ビーズに関しては、初めに、プロテインAセファロースビーズに結合された抗ラブコネクチン3β−2抗体を用いて、ラブコネクチン3αと3βの複合体を上記のP2C画分から免疫沈降させた。次いでラブコネクチン3αを1M NaClを含むバッファーAにより4℃で1時間洗浄することでビーズから分離した。分離したラブコネクチン3α(0.4μg蛋白質)を回収し、プロテインAセファロースビーズ(20μl湿容量)に固定された抗ラブコネクチン3α抗体と共に4℃で一晩静置した。複合体結合ビーズに関しては、ラブコネクチン3αと3βの複合体をP2C画分から同様に免疫沈降させ、次いで0.5 M NaClを含むバッファーAでビーズを洗浄した。ラブコネクチン3α、3β、または複合体と結合したアフィニティービーズは、次いで、バッファーAで完全に洗浄した。
【0129】
リコンビナントRab3 GEPまたはGAP p150を、リコンビナントラブコネクチン3βまたは天然のラブコネクチン3αと結合したプロテインAセファロースビーズと静置した。また一方、ビーズ上に固定された抗ラブコネクチン3β−2抗体により、P2C画分からラブコネクチン3αおよび3βが免疫沈降された後、ビーズを0.5 M NaClで洗浄し、Rab3 GEPまたはGAP p150をビーズと共に静置した。静置の後、これらをSDS−PAGE(8%ポリアクリルアミドゲル)にかけ、続いてクーマシーブリリアントブルーによるタンパク染色または抗Rab3 GEPもしくはGAP p150抗体を用いたウエスタンブロッティングを行った。結果を図4のBa1〜Bb2に示す。Baは、ラブコネクチン3αが結合したビーズ、Bbは、ラブコネクチン3βが結合したビーズを示し、数字は、1がRab3 GEP、2がRab3 GAP p150を示す。
【0130】
この結果、ラブコネクチン3βはリコンビナントRab3 GEPに化学量論的に結合したが、ラブコネクチン3αは結合しなかった(図4のBa1およびBb1)。複合体はRab3 GEPに直接結合したが、化学量論的にはこの結合は、ラブコネクチン3βのものに比べ相当低かった(データ省略)。一方、ラブコネクチン3α、3βそして複合体のいずれも、Rab3 GAPには結合しなかった(図4のBa2, Bb2(複合体についてはデータ省略))。
【0131】
CSV画分の抽出物を、抗Rab3 GEPまたはGAP p150抗体による免疫沈降にかけた。各免疫沈降物をSDS−PAGE(8%ポリアクリルアミドゲル)にかけ、続いて抗Rab3GEPまたはGAP p150抗体そして抗ラブコネクチン3α抗体および抗ラブコネクチン3β−1抗体を用いたウエスタンブロッティングを行った。結果を図4のCaおよびCbに示す。Caは、抗Rab3 GEP抗体を用いた免疫沈降物、Cbは、抗Rab3 GAP p150抗体を用いた免疫沈降部の結果である。
【0132】
ラブコネクチン3βは、ラブコネクチン3αと同様に、P2C画分の抽出物から、抗Rab3 GEPまたは抗Rab3 GAP p150抗体を用いてそれぞれ、Rab3 GEPまたはRab3 GAP p150により一貫して共免疫沈降された(図4のCaおよびCbならびに図1のA参照)。
【0133】
総合すると、これらの結果は、制御された様式で、ラブコネクチン3βが、直接的にRab3 GEPに結合し、また、未同定の分子を介して間接的にRab3 GAPに結合することを示す。なお、図4の結果は、3つの独立した実験の典型例である。
【0134】
なお、実施例1で用いられた抗Rab3 GAP p150抗体、抗Rab3 GEP抗体および抗ラブコネクチン3α抗体は、J. Biol. Chem., 277, 9629−9632 (2002)、J. Biol. Chem., 273, 24781−24785 (1998)およびJ. Biol. Chem., 273, 34580−34585 (1998)に記載された方法により調製されたマウスモノクローナル抗Rab3 GAP p150抗体、ウサギポリクローナル抗Rab3 GEP抗体、および、ラットポリクローナル抗ラブコネクチン3α抗体である。J. Biol. Chem., 277, 9629−9632 (2002)には、抗Rab3 GEP抗体またはRab3 GAP p150抗体を用い、ラブコネクチン3αがRab3 GEPまたはGAPによりCSV画分からそれぞれ共免疫沈降されることが示されている。
【0135】
【実施例2】
ポリL−リジンをコートしたウェルで1×106の神経芽腫細胞PC−12を培養し、培養開始日の翌日にリポフェクチン法によりmycを発現するpCMV myc及びP160(ラブコネクチン3β)をmycとの融合タンパク質として発現するpCMV myc:p160をトランスフェクトした。pCMV mycは、J. Biol. Chem, 272, 11943−11951(1997)に記載されている。pCMV myc:p160は、ラブコネクチン3βのアミノ酸配列1〜1490(全長)をコードするDNAを、ラブコネクチン3βとmycとの融合蛋白質が発現されるように組み込んだものである。
【0136】
トランスフェクションの2日後に、低カリウム(カリウム濃度:4.7 mM)バッファーを加え、37℃で10分間インキュベートした後、バッファーを取り除いて、低カリウム濃度または高カリウム(カリウム濃度:60 mM)のバッファーを加えた。37℃で10分間インキュベートした後、上清中に分泌された成長ホルモン(GH)及び細胞に残されたGHの量を、hGH ELISAキット(ロッシュ社製)にて測定した。結果は、上清中及び細胞中のGHをあわせた量を100%として、分泌されたGHの割合(%)として表現した。
【0137】
その結果、低カリウムバッファーでは全体の2.3%しか放出されなかった成長ホルモンが、高カリウムバッファーでは、8.9%が放出され、カリウムの刺激により増加した成長ホルモンの放出は、p160を発現させることにより7.0%まで抑制された。この結果より、p160は成長ホルモン放出等のシナプス小胞の輸送の制御に関与していると考えられる。
【0138】
【発明の効果】
本発明により、Ca2+依存性エキソサイトーシス、特にはRab3Aの活性化および不活性化の制御機構の解明に有用な蛋白質、ならびに、この蛋白質を用いる、Ca2+依存性エキソサイトーシス、特にはRab3Aの活性化および不活性化の制御に有用な物質のスクリーニング方法が提供される。
【0139】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】p160(ラブコネクチン3β)の単離と一次構造の概要。(A) 抗Rab3 GEP抗体によるp160(ラブコネクチン3β)の共免疫沈降の結果(電気泳動写真)。1; p340、2; p200、3; p160、4; p60。(B)構造概要。グレーはWDドメインを示す。(C)リコンビナントラブコネクチン3βのウェスタンブロッティングの結果(電気泳動写真)。レーン1,対照群HEK293細胞(1μg蛋白質)、レーン2,pCMVFa ラブコネクチン3βをトランスフェクトしたHEK293細胞(1μg蛋白質)、レーン3,ラット脳のホモジェネート(20μg蛋白質)。
【図2】ラブコネクチン3βの組織および細胞レベル下の分布。(A)組織分布(電気泳動写真)。(B)細胞レベル下分布(電気泳動写真)。Rc−3β, ラブコネクチン3β、Rc−3α, ラブコネクチン3α、GEP, Rab3 GEP、Ho, ホモジェネート画分、P1, 核ペレット画分、P2, 粗シナプトソーム画分、P3, ミクロソーム画分、S, 可溶性細胞質画分、P2A, ミエリン画分、P2B, 小胞体およびゴルジ複合体画分、P2C, シナプトソーム画分、P2D, ミトコンドリア画分、SS, シナプス可溶性画分、CSV, 粗シナプス小胞画分、CSM, 粗シナプス膜画分。
【図3】シナプスにおけるラブコネクチン3αと3βの共存を示す免疫蛍光顕微鏡像(顕微鏡写真)。
【図4】ラブコネクチン3に対する、Rab3 GEPの直接的な結合とRab3 GAPの間接的な結合を示すウェスタンブロッティングの結果(電気泳動写真)。
Claims (24)
- 下記(a)または(b)の蛋白質。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列を有する蛋白質。
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質。 - 配列番号2に示すアミノ酸配列を有する請求項1記載の蛋白質。
- 請求項1または2記載の蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
- 配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列を有する請求項3記載のポリヌクレオチド。
- 下記(a)または(b)のポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列を有するポリヌクレオチド。
(b)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。 - 下記(a)または(b)のポリヌクレオチド。
(a)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列を有するポリヌクレオチド。
(b)配列番号1に示す塩基配列の塩基番号1〜4470の塩基配列と相同性が80%以上の塩基配列を有し、かつラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。 - 請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドにより宿主を形質転換して得られる形質転換体。
- 請求項8記載の形質転換体を培養し、該形質転換体が発現した、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質を培養物から採取することを含む、ラブコネクチン3およびGDP/GTP交換反応促進蛋白質に結合する活性を有する蛋白質の製造法。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを検出するための、請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプローブまたはプライマーの使用。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプローブまたはプライマーを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの解析方法。
- 被検ポリヌクレオチドが被検組織または被検細胞中に存在することを特徴とする請求項11に記載の解析方法。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプローブまたはプライマーを被検ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることを特徴とする請求項1または2に記載の蛋白質をコードする遺伝子の解析方法。
- 被検ポリヌクレオチドが被検組織または被検細胞中に存在することを特徴とする請求項12に記載の遺伝子解析方法。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドからなるプライマーを用いて、被検組織または被検細胞中のmRNAをRT−PCR法によって増幅させ、請求項3〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを測定することを特徴とする遺伝子解析方法。
- 請求項1または2に記載の蛋白質をコードするmRNAにハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド。
- 請求項1または2に記載の蛋白質をコードするmRNAを切断するリボザイム。
- 請求項1または2に記載の蛋白質をコードするmRNAをRNA干渉により切断する二本鎖RNA。
- 請求項1または2に記載の蛋白質に対する抗体。
- 請求項19に記載の抗体を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の蛋白質の免疫組織学的な解析方法。
- 蛋白質の局在を解析する方法である請求項20記載の解析方法。
- 蛋白質の発現量を解析する方法である請求項20記載の解析方法。
- 請求項1または2に記載の蛋白質またはその異種相同蛋白質であるラブコネクチン3結合蛋白質と、ラブコネクチン3との結合を促進する物質または阻害する物質の候補物質のスクリーニング方法であって、ラブコネクチン3結合蛋白質と、ラブコネクチン3とを前記候補物質の存在下および非存在下で反応させ、前記結合を増加または減少させる前記候補物質を選択することを含む前記方法。
- 請求項1または2に記載の蛋白質またはその異種相同蛋白質であるRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質と、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質との結合を促進する物質または阻害する物質の候補物質のスクリーニング方法であって、Rab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質結合蛋白質とRab3 GDP/GTP交換反応促進蛋白質とを前記候補物質の存在下および非存在下で反応させ、前記結合を増加または減少させる前記候補物質を選択することを含む前記方法。
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