JP2004201358A - ハイブリッド車両 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジン10とトランスミッション40との間に、モータユニット20を結合してハイブリッド車両を構成する。モータユニットは、プラネタリギヤとモータから構成され、エンジンからの動力を増速してトランスミッションに伝達する。プラネタリギヤを構成するサンギヤ21は固定され、プラネタリキャリアにはエンジンの出力軸11が結合され、リングギヤ23には、トランスミッションへの出力軸31が結合される。モータは、リングギヤの外周に一体的に結合されたロータ25と、更にその外周に配置されたステータ26によって構成される。かかる構成により、モータユニット20の薄型化を図ることができ、装置の大型化を回避しつつ、ハイブリッド化を図ることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動力源としてエンジンと電動機とを備えるハイブリッド車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッド車両は、エンジンと電動機とを駆動力源として走行する車両である。例えば、特許文献1には、エンジン、トランスミッション、モータをこの順に駆動軸に結合したハイブリッド車両が開示されている。ハイブリッド車両は、エネルギ効率が高く、環境性に優れるため、近年では、エンジンと変速機を備える従来型の車両に電動機を追加することで、簡易にハイブリッド化する試みもある。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−305822号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
簡易にハイブリッド化する場合には、駆動系の設計余裕が非常に小さいため、装置の大型化を極力回避可能な構造を採ることが要求される。かかる要求は、特に、前輪駆動車で強い。前輪駆動車では、エンジンが車体中心線に直交する方向、即ち進行方向に向かって横方向に配置されるのが通常であり、操舵時の前輪の可動範囲を考えると、エンジンの軸方向の余裕が非常に小さいからである。本発明は、かかる課題を考慮し、ハイブリッド車両において、エンジンと変速機に電動機を追加した駆動系の小型化を図ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明のハイブリッド車両は、駆動力源としてのエンジンを有する。駆動力を出力するための駆動軸には、変速機が結合されている。また、エンジンと変速機との間には、エンジンからの動力を増速して変速機に伝達するための増速機が結合される。増速機では、エンジンに結合される回転軸を入力軸、変速機に結合された回転軸を出力軸と称するものとする。本発明のハイブリッド車両は、更に、増速機の出力軸に結合され、増速機と一体的に構成された電動機とを備える。
【0006】
本発明では、増速機の作用により、電動機のトルクが増幅されてエンジンに加えられる。従って、電動機から比較的小さなトルクを出力するだけで、エンジンを始動したり、エンジンの出力トルクを運転効率が高い点に変動させたりすることができる。この結果、電動機の小型化、ひいては駆動系の小型化を図ることができる。本発明は、特に、電動機に要求されるトルクが抑えられるため、電動機の軸長を短くすることができ、車両搭載に適用しやすい構造を実現することができる利点がある。
【0007】
また、増速機の作用により、エンジンから変速機に入力される最大トルクを抑制することができるため、併せて、変速機の小型化を図ることができる利点もある。ディーゼルエンジンのように、比較的低速回転で高トルクを出力可能なエンジンに適した構造を実現することができる。
【0008】
本発明においては、直流モータ、交流モータなど種々の電動機を利用することができる。交流モータとしては、例えば、誘導モータ、同期モータなどが挙げられる。これらの電動機は、エンジンに正負いずれのトルクを付加することもできるよう、発電可能な回路構成とすることが好ましい。また、電源は、バッテリやキャパシタなど、発電された電力を充電可能な蓄電器とすることが好ましい。
【0009】
本発明において、増速機は、例えば、同軸状に配置された3つの回転軸を有し、いずれかの回転軸が固定されたプラネタリギヤを用いることができる。この構造では、入力軸と出力軸を同軸状に配置できるため、装置の小型化を図ることができる。
【0010】
プラネタリギヤは、一般に、プラネタリピニオンギヤを軸支するプラネタリキャリア、サンギヤ、リングギヤを有している。これらに結合された3つの回転軸のいずれを固定させるかは、種々の設定が可能である。一例として、プラネタリキャリアに結合された回転軸を入力軸、リングギヤに結合された回転軸を出力軸とするとともに、サンギヤを固定する構造を採ることができる。これは、プラネタリキャリアに入力されたエンジンの動力を増速してリングギヤから出力する構造である。プラネタリギヤを利用した種々の結合状態のうち、この構造によれば、入出力のトルク比を最大とすることができるため、装置の小型化に最適である。
【0011】
上記構成においては、リングギヤの外周に電動機のロータを一体的に構成し、更にその外周に電動機のステータを構成することが好ましい。かかる構成により、電動機をリングギヤと一体的に構成することができる。一般に電動機の出力可能なトルクは径に比例するため、大径のリングギヤと電動機とを一体的に構成することにより、電動機の軸長をより短縮することができる。
【0012】
本発明では、電動機を種々の態様で活用することができる。例えば、出力軸と駆動軸とを切断するよう変速機を制御するとともに、エンジンの始動を行うよう電動機を力行制御してもよい。こうすることで、電動機をスタータとして利用できるため、エンジンのスタータを別途設ける必要がなく、構成の簡素化を図ることができる。切断方法は、始動時には、変速機をいわゆるニュートラル状態にする方法を採ってもよいし、出力軸と変速機との結合部にクラッチを設け、このクラッチを切断状態する方法を採っても良い。
【0013】
別の態様として、次の制御を適用してもよい。駆動軸から出力すべき要求回転数および要求トルクを設定し、この要求回転数および要求トルクを出力するよう設定された目標回転数および目標トルクでエンジンの運転を制御する。エンジンには、この目標回転数において最適な運転効率となる最適トルクが存在するから、目標トルクをこの最適トルクに近づけるよう電動機の出力トルクを制御する。エンジンの目標トルクは、電動機の出力トルクを反映し、要求トルクを出力するよう設定する。こうすることで、エンジンの運転効率、ひいてはハイブリッド車両の運転効率を向上することができる。
【0014】
例えば、電動機がトルクを出力しない状態ではエンジンの目標トルクが最適トルクよりも低い場合には、電動機を回生制御して負荷を与えることによりエンジンの目標トルクを増大させ、最適トルクに近づけることができる。逆に、電動機がトルクを出力しない状態ではエンジンの目標トルクが最適トルクよりも大きい場合には、電動機を力行制御することによりエンジンの目標トルクを低減させ、最適トルクに近づけることができる。
【0015】
電動機から出力すべきトルクは、電動機がトルクを出力しない状態における目標トルクと最適トルクとの偏差に基づいて設定することができる。更に、電動機の電源における充放電可能な電力量に基づく制限を考慮してもよい。
【0016】
本発明は、ハイブリッド車両としての構成に限らず、種々の態様で構成することができる。例えば、駆動軸から動力を出力するための動力出力装置として構成してもよい。また、動力出力装置およびハイブリッド車両において、電動機でエンジンの始動を行わせる制御方法、エンジンの運転効率を向上させる制御方法として構成してもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、以下の項目に分けて説明する。
A.装置構成:
B.増速機の作用:
C.運転制御:
D.通常走行制御:
【0018】
A.装置構成:
図1は実施例としてのハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。このハイブリッド車両は駆動力源として、エンジン10、モータユニット20を有する。エンジン10は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンのいずれであってもよい。
【0019】
モータユニット20は、モータと増速機とを一体的に結合したユニットである。本実施例では、同期モータを用いるものとしたが、誘導モータその他のタイプの交流モータや直流モータを用いてもよい。増速機は、サンギヤ21、プラネタリキャリア22、リングギヤ23を有するプラネタリギヤを用いて構成されている。
【0020】
エンジン10のクランクシャフト11は、増速機の入力軸に相当し、プラネタリキャリア22に結合されている。サンギヤ21は、ハウジングに固定されている。リングギヤ23には増速機の出力軸31が結合されている。リングギヤ23の外周には、モータのロータ25が組み付けられており、更にその外周に相当する位置には、モータのステータ26がハウジングに固定されている。このようにリングギヤ23にモータを一体的に構成することにより、モータユニット20の厚さLを抑制することができる。本実施例では、この厚さは、10cmに満たない程度となっている。前輪駆動車両において、エンジン10を車両の左右方向に配置する横置き時には、操舵時のタイヤの可動範囲確保のため、特に本実施例における薄型のモータユニット20の有用性が高い。
【0021】
モータの電源は、バッテリ110である。バッテリ110から供給される直流電流は、インバータ120によって3層交流化され、モータに供給される。モータは発電機としても機能し、この電力でバッテリ110を充電することもできる。電源は、バッテリ110に限らず、キャパシタなど充放電可能な種々の蓄電手段を用いることができる。
【0022】
エンジン10から出力されたトルクは、増速機でトルク変換され、出力軸31から出力される。この際、モータを力行または回生することにより、トルクを増減することができる。
【0023】
出力軸31は、クラッチ30を介して、トランスミッション40の入力軸32に結合されている。トランスミッション40は、機械的に5段階の変速を行う周知の機構である。トランスミッション40としては、図示した構成に限らず、種々の構成を適用可能である。
【0024】
本実施例では、図示する通り、1速〜5速までのギヤ41〜45およびリバースのギヤ46を備える構成を用いた。1速および2速のギヤ41、42、リバースのギヤ46は入力軸32に常に結合されているが、3〜5速走行時やニュートラル状態では、中間伝達軸33、ひいては駆動軸51から切り離される。3速〜5速のギヤ43〜45は、常に中間伝達軸33、ひいては駆動軸51と結合されているが、1速、2速、リバース走行時およびニュートラル時には、入力軸32から切り離される。この機構では、図中に示すスプライン47〜49をそれぞれ図中の左右方向に移動させることにより、各変速を実現することができる。トランスミッション40からの出力は、ディファレンシャルギヤ50を介して駆動軸51、駆動輪52に伝達される。
【0025】
ハイブリッド車両の各部の動作は、制御ユニット100によって制御される。制御ユニット100は、内部にCPU、RAM、ROMを備えるマイクロコンピュータであり、制御用のソフトウェアに従って、各部の制御を実行する。
【0026】
この制御を実現するため、制御ユニット100には、種々の入出力が行われる。図中には、走行時に用いる主要な入出力のみを図示した。入力としては、例えば、バッテリ110の残容量センサ111、アクセル開度センサ101の検出結果が含まれる。出力としては、エンジン10への燃料噴射量、点火時期などの制御信号、インバータ120へのモータ駆動用の制御信号などが含まれる。
【0027】
B.増速機の作用:
図2および図3はモータユニットの種々の構成例を示す説明図である。モータユニットは、プラネタリギヤへの結合状態に応じて、図示する6通りの構成を実現することができる。構成Aは、本実施例(図1)の構成に相当する。各構成の結合状態は、次の通りである。リングギヤ以外の部位に結合される場合、モータは、例えば、構成Bのようにロータ25A、ステータ26Aを用いて構成することができる。
【0028】
構成A…SG:固定 PC…エンジン RG…モータ;
構成B…SG:モータ PC…エンジン RG…固定;
構成C…SG:モータ PC…固定 RG…エンジン;
構成D…SG:固定 PC…モータ RG…エンジン;
構成E…SG:エンジン PC…モータ RG…固定;
構成F…SG:エンジン PC…固定 RG…モータ;
SGはサンギヤ、PCはプラネタリキャリア、RGはリングギヤを意味する。
【0029】
機構学上、プラネタリギヤの各ギヤの回転状態は共線図で表され、各回転数が直線上にのることが知られている。各構成についての共線図を図中に併せて示した。構成Aについては、固定されているサンギヤ(S)の回転数は0である。プラネタリキャリア(C)の回転数およびリングギヤ(R)の回転数の関係は、図示する通り、サンギヤ(S)の回転数「0」を通過する直線で拘束される。ここで、ρはプラネタリギヤのギヤ比「サンギヤ歯数/リングギヤ歯数」である。一般的には、ρ=0.3〜0.5である。
【0030】
共線図から、構成Aについては、「エンジンの回転数Ne>モータの回転数Nm」、つまり、エンジンの出力はプラネタリギヤによって増速されることが分かる。これに伴い、エンジンから出力されるトルクTeは、低減されて出力される。逆に、モータから出力されるトルクは、増幅されてエンジンに伝達される。出力されるトルクTmとエンジントルクTeとの関係は、次式で表される。
Tm=Te×1/(1+ρ);
【0031】
同様にして、構成B、構成Cでは、次の関係となる。
構成B…Tm=Te×1/ρ;
構成C…Tm=Te×(1+ρ)/ρ;
一般的なギヤ比の範囲では、構成A、構成B、構成Cの順に変速比は大きくなる。
【0032】
構成D〜Fでは、「エンジンの回転数Ne<モータの回転数Nm」、つまり、エンジンの出力はプラネタリギヤによって減速されることが分かる。これに伴い、エンジンから出力されるトルクTeは、増大されて出力される。逆にモータからの出力トルクは低減されてエンジンに伝達される。出力されるトルクTmとエンジントルクTeとの関係は、次式で表される。
構成D…Tm=Te×(1+ρ);
構成E…Tm=Te×ρ/(1+ρ);
構成F…Tm=Te×ρ;
【0033】
本実施例では、上記6通りの結合状態のうち、以下の理由から、構成Aを適用した。本実施例では、後述する通り、モータからエンジンにトルクを出力することで、エンジンを始動したり、エンジンの運転効率を向上したりする。構成Aでは、モータからエンジンに伝達されるトルクが増大されるため、モータの小型化を図りつつ、この用途を実現することができる。また、構成Aでは、エンジンからトランスミッション40に伝達されるトルクが低減されるため、トランスミッション40の小型化を図ることができる利点もある。モータからエンジンへのトルクが増大可能な構成A〜Cの中で、構成Aは、変速比が大きいため、特に、有用である。
【0034】
構成Aでは、構造上の利点もある。つまり、構成Aではリングギヤにモータを一体化させることができる。一般にモータのトルクは径に比例する。従って、大径のリングギヤにモータを一体化することにより、モータの軸長の短縮を図ることもできる。
【0035】
実施例の結合状態は、一例に過ぎず、構成Bまたは構成Cを用いても構わない。また、プラネタリギヤを用いずに、ギヤ比の異なるギヤの組み合わせ、動力伝達ベルトなどを用いた機構を増速機として用いても良い。
【0036】
C.運転制御:
図4はクラッチおよびモータの動作状態を示す説明図である。図中では、6つの車両運転モードに分けて、クラッチおよびモータの動作を示した。エンジン始動時には、クラッチをOFFとし、トランスミッション40とモータユニット20とを切り離す。この状態で、モータを力行することにより、エンジン10を始動することができる。クラッチのOFFに代えて、トランスミッション40をニュートラルにしてもよい。
【0037】
発電モードは、停車中に、バッテリ110を充電するための運転モードである。このモードでは、クラッチをOFFとし、トランスミッション40とモータユニット20とを切り離す。この状態で、エンジン10からの動力でモータを回生駆動することにより、発電させることができる。クラッチのOFFに代えて、トランスミッション40をニュートラルにしてもよい。
【0038】
低速走行は、車両の発進時などの低速状態で、エンジン10の動力をモータでアシストする運転モードである。このモードでは、クラッチをONとし、エンジン10からの動力が駆動軸51に伝達可能な状態とし、更に、モータを力行する。トランスミッション40は1速としておくことが好ましい。モータが低速走行に十分なトルクを出力可能な場合には、エンジン10の運転を停止し、モータのみで走行してもよい。
【0039】
通常走行時には、クラッチをONとして、エンジン10の動力で走行する。モータは、エンジンの運転効率を向上するよう、要求動力に応じて、回生運転または力行運転を行う。通常走行時の制御については後述する。
【0040】
制動時には、クラッチをONとして、駆動軸51の回転動力をモータで回生する。こうすることで、車両の運動エネルギを電力として活用することができ、エネルギ効率を向上させることができる。
【0041】
後退時には、クラッチをONとして、トランスミッション40をリバースギヤにし、エンジン10の動力で走行する。モータは空転状態である。後退時においても、通常走行時と同様、モータを力行または回生運転して、エンジンの運転効率を向上させてもよい。
【0042】
D.通常走行制御:
図5はエンジン10の運転効率を示す説明図である。この図を用いて、エンジン10の運転効率を向上するための制御方法の考え方について説明する。図中、曲線Bはエンジン10が出力可能な回転数およびトルクの限界を示している。曲線α1〜α6は、運転効率、即ち、単位動力を出力するために必要となる燃料量が等しくなる運転ポイントを示している。曲線α1〜α6の順に、運転効率は低下する。
【0043】
曲線C1〜C3は、エンジンからの等出力線である。図示するマップによれば、曲線C1に相当する出力を行う場合には、運転ポイントA1、即ち回転数Ne1、トルクTe1が最も運転効率が高くなる。同様にして、曲線C2、C3の出力に対しては、運転ポイントA2、A3が最も運転効率が高くなる。このように各出力に対して、最適の運転効率を実現可能な点の集合が、動作曲線Aである。
【0044】
駆動軸51から出力すべき動力は、運転者のアクセル操作に基づいて決まる。この時の車速で駆動軸51の回転数が決まるから、トランスミッション40およびモータユニット20のギヤ比を考慮すると、エンジン10の目標回転数Nteが決まる。従って、エンジン10から出力される目標トルクTteも決まる。
【0045】
こうして決められた目標回転数、目標トルクが図中の運転ポイントQであるとする。この回転数では、運転ポイントA2が最適の運転状態であるから、目標トルクは運転ポイントA2に対応する最適トルクT2よりも小さいことが分かる。かかる場合に、本実施例では、モータによってエンジン10に図中Pwに相当するトルク負荷をかけることにより、エンジン10を最適の運転ポイントA2で運転させる。この時、エンジン10の出力は運転者が要求した動力よりも大きくなるが、余剰の動力は、モータによって電力として回生され、バッテリ110に充電される。逆に、エンジン10の目標トルクが最適のトルクよりも大きい場合には、モータを力行してエンジン10をアシストすることにより、エンジン10を最適な運転ポイントで運転することができる。
【0046】
図6は通常運転制御のフローチャートである。図5で説明した制御を実現するためのフローチャートであり、車両の走行中に、制御ユニット100が繰り返し実行する処理である。
【0047】
この処理では、制御ユニット100は、アクセル開度に基づき、要求出力Preを入力する(ステップS10)。要求出力Prは、エンジン10の要求トルクTr、回転数Nrの組み合わせで特定することができる。
【0048】
次に、制御ユニット100は、バッテリ110の残容量を検出し、充放電可能な電力Qlimを求める(ステップS11)。バッテリ110が満充電に近い状態にある場合には充電可能な電力が制限され、残容量が低い場合には放電可能な電力が制限されることになる。
【0049】
制御ユニット100は、充電可能電力Qlimの範囲で、モータの目標出力Ptmを設定する(ステップS12)。図中に設定方法を示した。図示する通り、要求出力Preに基づいてエンジン10の運転ポイントPr(回転数Nr、トルクTr)が求まる。一方、動作曲線Aと回転数Nrとの交点から、最適な運転ポイントPtが求まる。図中の例では、運転ポイントPrよりも最適な運転ポイントPtの方が、トルクが大きい。従って、最適運転ポイントPtに相当する最適出力Pteと要求出力Preの差分Ptm(=Pte−Pre)に相当する負荷をモータでかけることにより、エンジン10を最適運転ポイントPtで運転することができる。要求出力Preの最適出力Pteよりも大きい場合には、両者の差分に相当する動力Ptm(=Pre−Pte)をモータから出力すればよい。
【0050】
制御ユニット100は、このようにしてモータで与えるべき負荷、またはモータからの出力を決定し、充放電可能電力Qlimに基づく制限をかける。例えば、モータによる負荷で得られる電力Ptmが充電可能な電力Qlimを上回る場合には、モータの目標出力PtmをQlimに制限する。モータから動力を出力する場合も同様に、出力すべき動力Ptmがバッテリ110から供給可能な電力Qlimを上回る場合には、モータの目標出力PtmをQlimに制限する。これらの制限により、エンジン10の運転ポイントは最適のポイントPtからずれるが、運転ポイントPrよりは運転効率の高い運転ポイントでエンジン10の運転は行われる。
【0051】
制御ユニット100は、こうして設定された目標出力Ptmに基づき、モータの回転数およびトルクを設定し、運転を制御する(ステップS13)。また、モータの目標出力Ptmを反映して、要求出力Preが出力されるよう、エンジン10の目標出力Pteを設定し、運転を制御する(ステップS14)。以上の処理を繰り返し実行することにより、高い運転効率で通常走行を行うことができる。
【0052】
以上で説明した本実施例のハイブリッド車両によれば、エンジン10とトランスミッション40の間に、プラネタリギヤを用いた変速機を介してモータを結合することにより、モータユニット20の薄型化を図ることができる。従って、簡易な構造で駆動系を小型化したハイブリッド車両を実現することができる。ハイブリッド化で必要となるモータユニット20を十分に薄型化することができるため、特に、エンジン10とトランスミッション40を備える従来型車両を大幅な設計変更なくハイブリッド化することができる利点がある。
【0053】
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、以上の制御処理はソフトウェアで実現する他、ハードウェア的に実現するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例としてのハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。
【図2】モータユニットの種々の構成例を示す説明図である。
【図3】モータユニットの種々の構成例を示す説明図である。
【図4】クラッチおよびモータの動作状態を示す説明図である。
【図5】エンジン10の運転効率を示す説明図である。
【図6】通常運転制御のフローチャートである。
【符号の説明】
10…エンジン
11…クランクシャフト
20…モータユニット
21…サンギヤ
22…プラネタリキャリア
23…リングギヤ
25、25A…ロータ
26、26A…ステータ
30…クラッチ
31…出力軸
32…入力軸
33…中間伝達軸
40…トランスミッション
41〜46…ギヤ
47〜49…スプライン
50…ディファレンシャルギヤ
51…駆動軸
52…駆動輪
100…制御ユニット
101…アクセル開度センサ
110…バッテリ
111…残容量センサ
120…インバータ
Claims (6)
- ハイブリッド車両であって、
エンジンと、
駆動軸に結合された変速機と、
前記エンジンに入力軸が結合され、前記変速機に出力軸が結合され、入力軸の動力を増速して出力軸に伝達する増速機と、
該増速機の出力軸に結合され、該増速機と一体的に構成された電動機とを備えるハイブリッド車両。 - 請求項1記載のハイブリッド車両であって、
前記増速機は、同軸状に配置された3つの回転軸を有し、いずれかの回転軸が固定されたプラネタリギヤであるハイブリッド車両。 - 請求項2記載のハイブリッド車両であって、
前記プラネタリギヤは、プラネタリピニオンギヤを軸支するプラネタリキャリア、サンギヤ、リングギヤを有し、
前記プラネタリキャリアに結合された回転軸を入力軸、前記リングギヤに結合された回転軸を出力軸とするとともに、前記サンギヤが固定されているハイブリッド車両。 - 請求項3記載のハイブリッド車両であって、
前記リングギヤの外周に前記電動機のロータが一体的に構成されるとともに、更にその外周に前記電動機のステータが構成されたハイブリッド車両。 - 請求項1〜4いずれか記載のハイブリッド車両であって、
前記出力軸を前記駆動軸から切断するよう前記変速機を制御するとともに、前記電動機を力行して前記エンジンの始動を行う始動制御部を備えるハイブリッド車両。 - 請求項1〜5いずれか記載のハイブリッド車両であって、
前記駆動軸から出力すべき要求回転数および要求トルクを設定する要求値設定部と、
該要求回転数および要求トルクを出力する目標回転数および目標トルクで前記エンジンの運転を制御するエンジン制御部と、
前記目標回転数において前記エンジンが最適な運転効率となる最適トルクに、前記目標トルクを近づけるよう前記電動機の出力トルクを制御する電動機制御部とを備えるハイブリッド車両。
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