JP2004200915A - 水晶振動片とその製造方法及び水晶振動片を利用した水晶デバイス、ならびに水晶デバイスを利用した携帯電話装置および水晶デバイスを利用した電子機器 - Google Patents

水晶振動片とその製造方法及び水晶振動片を利用した水晶デバイス、ならびに水晶デバイスを利用した携帯電話装置および水晶デバイスを利用した電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】水晶振動片を製造するにあたり、その外形エッチングと溝のエッチングを同時に行い、製造工程を減らして、製造を容易にすることができる水晶振動片と、その製造方法、及びこの水晶振動片を利用した水晶デバイス、ならびに水晶デバイスを利用した携帯電話と電子機器を提供すること。
【解決手段】全体が水晶により形成され、基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕35に長さ方向に延びる溝56を有する水晶振動片を水晶材料でなる基板をエッチングして形成する製造方法であって、前記溝を前記水晶材料のエッチングにより前記水晶振動片の外形形状を形成するに際して、この溝幅NWを、前記エッチングの際に水晶の異方性によって、前記各振動腕に形成される異形形状65の突出量hを越えない大きさに選定する。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水晶振動片とその製造方法及び、この水晶振動片をパッケージに収容した水晶デバイス、ならびに水晶デバイスを利用した携帯電話と電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において、パッケージ内に水晶振動片を収容した水晶振動子や水晶発振器等の水晶デバイスが広く使用されている。
図13は、このような水晶デバイスに使用される水晶振動片の公知の構成例を示す概略斜視図であり、図14は、図13のA−A線切断端面図である(特許文献1参照)。
【0003】
これらの図において、水晶振動片3は、例えば水晶の単結晶から切り出され音叉型に加工されて形成されている。このとき、図13に示すX軸が電気軸、Y軸が機械軸及びZ軸が光軸となるように水晶の単結晶から切り出されることになる。 また、水晶の単結晶から切り出す際、上述のX軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系において、X軸回りに、X軸とY軸とからなるXY平面を反時計方向に約1度乃至5度傾けて形成される。
このような水晶材料でなる基板(後述)をエッチングすることにより図示の形状が形成されている。この場合、水晶振動片3は、基部5と、この基部5から平行に延びる一対の振動腕6,7を備える音叉型水晶片で構成されている。
【0004】
水晶振動片3の基部5は、図示しないパッケージ側の電極部に対して固定されている。振動腕6,7には、長さ方向に延びる溝9,10がそれぞれ形成されており、さらにこの振動腕6,7の表面には、励振電極11,12が形成されている。この励振電極11,12に対して外部から駆動電圧を印加することにより、振動腕6,7はその先端側6a,7aを互いに接近、離間するように振動する。このような振動に基づく振動周波数を取り出すことにより、制御用のクロック信号等の各種信号に利用されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−76806号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような構造の水晶振動片3は、図14に示されているように、各振動腕6,7の上面及び下面に、それぞれ溝9,9,10,10を形成して、各溝9,9,10,10内にも励振電極11,12を設けることで、電界効率を向上させて、優れた振動性能を得るようにしている。
そして、このような形状を有する水晶振動片3を形成するためには、その外形を水晶のエッチングにより形成し、さらに、各振動腕6,7の溝9,9,10,10をハーフエッチングにより形成する工程が採用されている。
【0007】
図15ないし図17は、水晶振動片3の製造方法を示す工程図である。各工程は、上述した図14の振動腕6,7の切断面のうち、一方の振動腕6に対応した領域についてだけ工程順に示されているが、振動腕6,7を含む全体について同様に進行するものである。
【0008】
図15(a)に示すように、水晶材料でなる基板13を用意し、図15(b)に示すように、基板13の表面(表裏面)に、スパッタリングもしくは蒸着等の手法により、耐蝕膜14を形成する。耐蝕膜14は、例えば、下地層としてのクロム層と、その上に被覆される金被覆層で構成される。
尚、以下の工程では、基板13の図15において上下両面に同一の加工が行われるので、煩雑さを避けるため、上面についてだけ説明する。
【0009】
次いで、図15(c)に示すように、全面にレジスト15を塗布する。そして、水晶振動片(図13の水晶振動片3参照)の外形に対応して、図15(d)に示すように、例えばマスク16を配置し、水晶振動片の形状の外側となる部分のレジスト15を感光させて、除去する。続けて、図15(e)に示すように、露出した耐蝕膜14を、図16(f)に示すように、除去し、さらに、図16(g)に示すように、レジスト15を剥離する。
次いで、図16(h)に示すように、表裏面に溝形成に利用するためのレジスト16を塗布し、図16(i)に示すように、溝を形成する際にエッチングにより残される部分に対応したマスク17,17をレジスト16の表面に配置する。
【0010】
次に、図16(j)に示すように、溝を形成する際にエッチングにより残される部分に対応した箇所を残して、レジスト16を除去する。この状態で水晶材料でなる基板13を所定のエッチング液によりエッチングすると、図17(k)に示すように、水晶の異方性により、側方に突出した異形形状が形成された状態で、水晶振動片の外形がエッチングにより形成される。この外形エッチング工程に140分程度要する。
【0011】
次いで、図17(l)に示すように、溝を形成する箇所の耐蝕膜14をエッチングにより除去し、図17(m)に示すように、溝を形成するために、水晶材料でなる基板13をハーフエッチングする。これにより、溝12が形成される。このハーフエッチング工程は、例えば、32.5分(±5分)程度要する。
続いて、図17(n)に示すように、レジスト16及び耐蝕膜14を除去して、水晶振動片としての外形を備えた水晶片を得る。最後に図17(o)に示すように、表面に所定の励振電極9,11を設けることにより、溝つきの水晶振動片が形成される。
【0012】
以上述べたように、従来の水晶振動片3に、溝9,12を形成するためのプロセスは、その外形エッチングと溝形成のためのハーフエッチングを別々に行う必要があり、複雑で多数の工程数を必要とするものであった。
【0013】
本発明は、水晶振動片を製造するにあたり、その外形エッチングと溝のエッチングを同時に行い、製造工程を減らして、製造を容易にすることができる水晶振動片と、その製造方法、及びこの水晶振動片を利用した水晶デバイス、ならびに水晶デバイスを利用した携帯電話と電子機器を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述の目的は、第1の発明によれば、全体が水晶により形成され、基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕に長さ方向に延びる溝を有する水晶振動片を、水晶材料でなる基板をエッチングすることにより形成する製造方法であって、前記溝を前記水晶材料のエッチングにより前記水晶振動片の外形形状を形成するに際して、この溝幅Wを、前記エッチングの際に水晶の異方性によって、前記各振動腕に形成される異形形状の突出量hを越えない大きさに選定する水晶振動片の製造方法により、達成される。
【0015】
第1の発明の構成によれば、エッチングにより基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕に長さ方向に延びる溝を有する水晶振動片を製造するにあたって、水晶振動片の外形と溝をエッチングにより形成する際に、この溝幅Wを、水晶の異方性に基づいてエッチングされないで残る異形形状の突出量hを越えない大きさに選定する。これにより、形成された溝の内側底部には、水晶材料が完全に除去されないエッチングの残存部分が残る。すなわち、水晶の異方性を積極的に利用して、溝形成の際の溝底部を前記エッチングの残存部分により形成するようにしたものである。これにより、溝形成のための面倒なハーフエッチング工程を設けなくても、水晶振動片の外形を形成するエッチングの際に、前記溝幅を水晶の異方性に基づいてエッチングされないで残る異形形状の突出量hを越えない大きさに選定するようにしてエッチングすることで、水晶振動片の外形形成と、振動腕の溝形成を同時に行うことができるので、製造工程を大幅に簡略化することができる。
これにより、本発明の効果として、水晶振動片を製造するにあたり、その外形エッチングと溝のエッチングを同時に行い、製造工程を減らして、製造を容易にすることができる製造方法を実現することができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記溝の溝幅を、前記突出量hよりも大きな溝幅で形成する場合には、この大きな溝幅NWが、前記突出量hのほぼ整数倍となるように選定することを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、振動腕に形成する溝の溝幅NWを決定するにあたり、この溝幅を大きくしようとする場合には、溝幅NWを前記突出量hのほぼ整数倍となるように、選定することで、溝の底部には、突出量hが連続する状態で、エッチングの残存部分を形成することができる。これにより、水晶材料が貫通することなく、必要な幅の溝を形成することができる。
【0017】
第3の発明は、第2の発明の構成において、前記溝には、前記溝幅NWを幅方向に分割する突条もしくは壁部を形成することを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、前記溝内に前記突条もしくは前記壁部を形成することで、溝が形成される振動腕の剛性を強化することができる。
【0018】
上記目的は、第4の発明によれば、水晶材料でなる基板の表面に、耐蝕膜を形成する工程と、前記耐蝕膜に重ねてレジストを塗布する工程と、前記レジスト及び前記耐蝕膜に対して、振動腕に形成される溝に対応した形状及び前記水晶振動片の外形形状に適合するようにマスキングを施し、水晶材料のエッチングを行うエッチング工程と、前記水晶振動片の外形と各振動腕の前記溝を形成した後に、必要な電極膜を形成する工程とを含んでおり、前記エッチング工程において、前記溝幅Wを、前記エッチングの際に水晶の異方性によって、前記各振動腕に形成される異形形状の突出量hを越えない大きさに選定する、水晶振動片の製造方法により、達成される。
第4の発明の構成によれば、水晶材料でなる基板表面に耐蝕膜を形成してレジストを塗布した後で、水晶振動片の外形と溝を形成する際のエッチング工程において、前記溝幅Wを、水晶の異方性に基づいてエッチングされないで残る異形形状の突出量hを越えない大きさに選定する。これにより、形成された溝の内側底部には、水晶材料が完全に除去されないエッチングの残存部分が残る。すなわち、水晶の異方性を積極的に利用して、溝形成の際の溝底部を前記エッチングの残存部分により形成するようにしたものである。これにより、前記エッチング工程では、水晶振動片の外形形成と、振動腕の溝形成を同時に行うことができるので、製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0019】
上述の目的は、第5の発明によれば、全体が水晶により形成され、基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕に長さ方向に延びる溝を有する水晶振動片であって、前記溝の内側底部に、長さ方向に延びる凸条を有する、水晶振動片により、達成される。
第5の発明の構成によれば、前記振動腕の前記溝の内側底部に、長さ方向に延びるひとつもしくは複数の凸条が設けられている。このため、材料の厚みの薄くなった溝部において、長さ方向の凸条は、振動腕の剛性を向上させる役割を果たす。これにより、破損しにくい丈夫な水晶振動片を得ることができる。
【0020】
第6の発明は、第5の発明の構成において、前記突条が、前記溝を幅方向に分割して複数の小さな溝を形成する壁部とされていることを特徴とする。
第6の発明の構成によれば、壁部を形成する場合には、前記突条を設ける場合よりもさらに振動腕の剛性を向上させることができる。
【0021】
また、上述の目的は、第7の発明によれば、パッケージ内に水晶振動片を収容した水晶デバイスであって、前記水晶振動片は、全体が水晶により形成され、基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕に長さ方向に延びる溝を有する水晶振動片であって、前記溝の内側底部に、長さ方向に延びる凸条を有する、水晶デバイスにより、達成される。
第7の発明の構成によれば、前記水晶振動片が、前記振動腕の前記溝の内側底部に、長さ方向に延びるひとつもしくは複数の凸条が設けられており、その剛性が高められている。このため、パッケージ内部に収容された精密な水晶振動片が破損しにくいため、丈夫な水晶デバイスを得ることができる。
【0022】
また、上述の目的は、第8の発明によれば、パッケージ内に水晶振動片を収容した水晶デバイスを利用した携帯電話装置であって、前記水晶振動片が、全体が水晶により形成され、基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕に長さ方向に延びる溝を有する水晶振動片であって、前記溝の内側底部に、長さ方向に延びる凸条を有する水晶デバイスにより、制御用のクロック信号を得るようにした携帯電話装置により、達成される。
【0023】
また、上述の目的は、第9の発明によれば、パッケージ内に水晶振動片を収容した水晶デバイスを利用した電子機器であって、前記水晶振動片が、全体が水晶により形成され、基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕に長さ方向に延びる溝を有する水晶振動片であって、前記溝の内側底部に、長さ方向に延びる凸条を有する水晶デバイスにより、制御用のクロック信号を得るようにした電子機器により、達成される。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は、本発明の水晶デバイスの実施の形態を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のB−B線概略断面図である。
図において、水晶デバイス30は、水晶振動子を構成した例を示しており、この水晶デバイス30は、パッケージ36内に水晶振動片32を収容している。パッケージ36は、例えば、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して形成される複数の基板を積層した後、焼結して形成されている。複数の各基板は、その内側に所定の孔を形成することで、積層した場合に内側に所定の内部空間S2を形成するようにされている。
この内部空間S2が水晶振動片を収容するための収容空間である。
すなわち、図2に示されているように、この実施形態では、パッケージ36は、例えば、下から第1の積層基板61、第2の積層基板64、第3の積層基板68を重ねて形成されている。
【0025】
パッケージ36の内部空間S2内の図において左端部付近において、内部空間S2に露出して内側底部を構成する第2の積層基板64には、例えば、タングステンメタライズ上にニッケルメッキ及び金メッキで形成した電極部31,31が設けられている。
この電極部31,31は、外部と接続されて、駆動電圧を供給するものである。この各電極部31,31の上に導電性接着剤43,43が塗布され、この導電性接着剤43,43の上に水晶振動片32の基部51が載置されて、導電性接着剤43,43が硬化されるようになっている。尚、導電性接着剤43,43としては、接合力を発揮する接着剤成分としての合成樹脂剤に、銀製の細粒等の導電性の粒子を含有させたものが使用でき、シリコーン系、エポキシ系またはポリイミド系導電性接着剤等を利用することができる。
【0026】
水晶振動片32は、後述する製造工程により水晶をエッチングして形成されており、本実施形態の場合、水晶振動片32は、小型に形成して、必要な性能を得るために、特に図3の概略斜視図で示す形状とされている。
すなわち、水晶振動片32は、パッケージ36側と後述するようにして固定される基部51と、この基部51を基端として、図において左方に向けて、二股に別れて平行に延びる一対の振動腕34,35を備えており、全体が音叉のような形状とされた、所謂、音叉型水晶振動片が利用されている。
【0027】
水晶振動片32の各振動腕34,35には、それぞれ長さ方向に延びる溝56,57が形成されている。この各溝56,57は、図3のC−C線切断端面図である図4に示されているように、各振動腕34,35の表裏両面に形成されている。
さらに、図1において、水晶振動片32の基部51の端部(図3では右端部)の幅方向両端付近には、引き出し電極52,53が形成されている。各引き出し電極52,53は、水晶振動片32の基部51の図示しない裏面にも同様に形成されている。
これらの各引き出し電極52,53は、上述したように図1に示されているパッケージ側の電極部31,31と導電性接着剤43,43により接続される部分である。そして、各引き出し電極52,53は、図示されているように、各振動腕34,35の溝56,57内に設けた励振電極54,55と接続されている。また、各励振電極54,55は、図4に示されているように各振動腕34,35の両側面にも形成されており、一方の振動腕、例えば、振動腕34に関しては、溝57内の励振電極54と、その側面部の励振電極55は互いに異極となるようにされている。
【0028】
さらに、本実施形態の水晶振動片32においては、その製造工程中で、各振動腕34,35に異形形状65,65が形成され、図4では、断面形状において先端がやや細くなった突起もしくは突条として示されている。このような異形形状65,65は、後述するように、水晶のエッチングの過程で水晶の異方性により形成される。この場合、各振動腕34,35のそれぞれ同じ側の側面(図4において右側の側面)において、厚み方向の中間付近で、各振動腕34,35の長さ方向に延びる突起もしくは突条として現れている。
図5は、振動腕35を溝56の途中で切断し、切断箇所よりも先端側を示した概略斜視図である。溝56の内側底部(溝の底部)には、それぞれ凸条が形成されており、この場合、各溝56,56内に二本の凸条66,66が形成されている。各凸条66,66は、溝56の全長にわたって長さ方向に延びるように形成されている。
このため、材料の厚みの薄くなった溝56の箇所において、長さ方向の凸条66,66は、振動腕の剛性を向上させる役割を果たす。これにより、破損しにくい丈夫な水晶振動片32を得ることができる。
【0029】
図6は、振動腕35−1に、溝56,56を形成する場合に、その溝幅Wを極めて小さく形成する場合の概略断面図を示している。
この場合には、溝幅Wを異形形状65の突出高さhと同じかこれを越えない幅に選定している。このようにすることで、溝幅Wは後述する製造方法におけるエッチング工程で、貫通することなく、底部66a,66aを形成することができる。尚、この場合には、底部66aは図5の場合の突起もしくは突条66とは異なる形態であり、図8にて概略的に示すように、異形形状65が形成される側に向かって、徐々に厚みが薄くなるように、断面がほぼテーパ状でなる底部66a,66aが形成される。これにより、従来の振動腕の溝内に形成される底部と異なり、断面がほぼ同一の厚みの底部ではないことから、図5の場合と同様に、底部66a,66aは振動腕35−1の剛性を向上させる役割を果たす。
【0030】
図7は、図6の場合と比較して、振動腕35に形成する溝56の溝幅NWを大きく形成する必要がある場合の構成を示す図であり、その形態は基本的には図5に示した形態と同じである。このように、溝幅NWを大きく形成する必要がある場合には、図5で説明した溝56,56に形成される突起または突状66が、溝幅の選定と後述するエッチング工程の条件により、ひとつひとつが図5の場合よりも高く形成され、溝56を幅方向に沿って、複数の小さな溝56a,56b,56cに分割する壁部66−1,66−2として起立して形成されることがある。 このような構成は、後述する製造工程で詳しく説明するように、溝56を異形形状65の突出高さhよりも大きくする必要がある場合に形成される。この場合には、溝56に形成される小さな溝56a,56b,56cの数をn(図示の場合nは3)として、溝56の全体の溝幅NWを異形形状65の突出高さhの整数倍と同じか、n・hを越えない幅に設定する必要がある。
そして、図7の場合においても、溝56の箇所において、壁部66−1,66−2は、振動腕35の剛性を向上させる役割を果たす。これにより、破損しにくい丈夫な水晶振動片を得ることができる。
尚、理解の便宜のため、図5ないし図7においては振動腕に設ける励振電極は省略されている。
【0031】
また、パッケージ36の底面のほぼ中央付近には、パッケージ36を構成する2枚の積層基板に連続する貫通孔37a,37bを形成することにより、外部に開口した貫通孔37が設けられている。この貫通孔37を構成する2つの貫通孔のうち、パッケージ内部に開口する第1の孔37bに対して、第2の孔である外側の貫通孔37aは、より大きな内径を備えるようにされている。これにより、貫通孔37は、図2において下向きの段部62を備える段つき開口とされている。この段部62の表面には、金属被覆部が設けられていることが好ましい。
【0032】
ここで、貫通孔37に充填される金属製封止材38としては、例えば、鉛を含有しない封止材が選択されることが好ましく、例えば、銀ロウ、Au/Sn合金、Au/Ge合金等から選択される。これに対応して、段部62の表面の金属被覆部には、タングステンメタライズ上にニッケルメッキ及び金メッキを形成することが好ましい。
パッケージ36の開放された上端には、蓋体39が接合されることにより、封止されている。蓋体39は、好ましくは、パッケージ36に封止固定した後で、図2に示すように、外部からレーザ光L2を水晶振動片32の後述する金属被覆部に照射して、質量削減方式により周波数調整を行うために、光を透過する材料,特に、薄板ガラスにより形成されている。
蓋体39として適するガラス材料としては、例えば、ダウンドロー法により製造される薄板ガラスとして、例えば、硼珪酸ガラスが使用される。
【0033】
次に、図8及び図9は、本実施形態の水晶振動片32の製造方法の一例を説明するための工程図であり、各工程は、図4に対応した部分の切断端面図にて、上述した図4の振動腕34,35の切断面のうち、一方の振動腕35に対応した領域についてだけ工程順に示されているが、振動腕34,35を含む水晶振動片32の全体について同様に進行するものである。
【0034】
これらの図を参照して、水晶振動片32の好ましい製造方法を説明する。
図8(a)において、水晶振動片32を複数もしくは多数分離することができる大きさの水晶材料でなる基板71を用意する。例えば水晶の単結晶から切り出され音叉型に加工されて形成されている。このとき基板71は、図3に示すX軸が電気軸、Y軸が機械軸及びZ軸が光軸となるように水晶の単結晶から切り出されることになる。また、水晶の単結晶から切り出す際、上述のX軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系において、X軸回りに、X軸とY軸とからなるXY平面を時計方向に約マイナス5度乃至プラス5度傾けて形成される。
【0035】
(耐蝕膜の形成工程)
次に、図8(b)に示すように、基板71の表面(表裏面)に、スパッタリングもしくは蒸着等の手法により、耐蝕膜72を形成する。図示されているように、水晶基板71の表裏両面に耐蝕膜72が形成され、耐蝕膜72は、例えば、下地層としてのクロム層と、その上に被覆される金被覆層で構成される。
尚、以下の工程では、基板71の図8において上下両面に同一の加工が行われるので、煩雑さを避けるため、上面についてだけ説明する。
【0036】
(パターニング工程)
次いで、図8(c)に示すように、全面にレジスト73を塗布する(レジストの塗布工程)。そして、図8(d)に示すように、外形パターニングのためにレジスト73の上にマスク74を配置する。レジスト73としては、例えば、OFPR−800LB 34cpが好適に使用できる。
ここで、マスク74と、水晶振動片に形成される溝との関係を説明する。
マスク74のパターン幅PWは、図5に示すようにして決定される。
図5において、溝56の溝幅NWは、振動腕35に形成される異形形状65の突出量hに基づいて決定される。ここで、この製造方法で利用される原理を説明すると、水晶材料をエッチングする場合に、水晶の異方性により、異形形状65が形成される。この異形形状は、図5ほど整った形状ではないが、図示されているように、振動腕35の一方の側面において、材料の厚み方向(図5の上下の方向)のほぼ中央付近にて、エッチング方向Eと直交する方向に突出するように水晶材料が残存するものである。
【0037】
この実施形態の製造方法では、このような現象を積極的に利用して、この異形形状を溝の底部を形成するために役立てるようにしている。
具体的には、図5に示されているように、振動腕35の一方の側面35aには、突出量hの異形形状65が形成されることから、振動腕35に溝56を形成するに当たり、溝幅NWを、例えば、突出量hに基づいて、以下に説明するように設定し、この溝幅NWに適合するようにパターニングを行えば、溝56は貫通しないと考えられる。
つまり、図8(d)のマスク74の開口幅を突出量hを越えない幅のパターン幅PWとして、エッチングを行うと、水晶振動片の外形はエッチングされるが、振動腕35の一方の側面に異形形状65が形成されるのと同様の原理により、振動腕35の溝56内には、同一の形状が形成される。
【0038】
このことから、水晶振動片の溝幅NWを、突出量hを越えないパターン幅PWのほぼ整数倍の幅NWとする。そして、マスク74の開口を突出量hを越えない幅のパターン幅PWの開口が、複数個幅方向に並ぶ形状とすれば、図5に示すように、振動腕35には、幅NWの溝56が形成されると共に、溝56の内側底部には、N個の凸条66,66が形成されることになる。図5では、水晶振動片の溝幅NWのNが3であり、幅方向に、異形形状65の突出量hを越えない幅PWの開口が3つ並んだマスク74を利用する場合を示している。勿論、フォトリソグラフィの手法に基づき、ネガとポジの両方の手法を選択する場合には、マスク74の開口部とその周囲との関係は反対となる。
【0039】
(エッチング工程)
かくして、図8(d)に示すように、外形パターニングのためにレジスト73の上に上述のようにしてパターン幅PWを設定したマスク74を配置し、露光後、図8(e)に示すように、感光したレジスト73を除去する。
次に、図9(f)に示すように、除去したレジスト部分に対応してAu,Crの順に耐蝕膜である金属被覆層を除去する。そして、図9(g)に示すように、露出した基板71に関して、例えば、フッ酸溶液をエッチング液として、水晶振動片の外形のエッチングと溝のエッチングを同時に行う(エッチング工程)。このエッチング工程は、100分ないし200分で、フッ酸溶液の濃度や種類、温度等により変化する。この実施形態では、エッチング液として、フッ酸、フッ化アンモニウムを用いて、その濃度として容量比1:1、温度65度±1度(摂氏)の条件により、140分程度でエッチング工程が完了する。
【0040】
ここで、図10を参照して、マスク74のパターン幅(N)PWと溝幅NWについて多少のずれが生じることを説明する。図10は図9(g)の工程をより詳しく示した拡大図である。
レジスト73及び耐蝕膜72の形成された隙間はマスク74のパターン幅PWに対応しており、図示の場合には、同一の3つのパターン幅PW1、PW2、PW3に対して、それぞれ、符号a,b,c,d,e,f,g,iで示すように、余剰にエッチングされる部分が生じる。このため、例えば、小さな溝56aの溝幅SWはパターン幅PW1よりも大きくなる。したがって、マスク74のパターン幅全体、すなわちパターンを設ける領域の大きさNPWは、小さな溝56a,56b,56cの全ての溝幅を合計した全体の溝幅NWよりも小さくなる(図10参照)。
【0041】
このように、水晶振動片の振動腕に設ける溝の溝幅NWは、原理説明で述べたように、異形形状65の突出量hを越えないパターン幅PWのほぼ整数倍の幅NWに設定すればよいが、この時、実際のパターン幅PWは、上述した余剰エッチング量を考慮して、これよりもやや小さな幅に設定する。これは、エッチング条件の相違により変化するので、実行するエッチング条件に適合させて、幅調整する必要がある。この実施形態では、上述した条件に基づくと、PW1/SWが ほぼ1/3程度となる。
そして、エッチング工程を行った後で、次に図9(h)に示すように、レジスト73と耐蝕膜72を順番に全て除去することで音叉型の水晶片が得られる。
【0042】
(電極膜の形成工程)
続いて、水晶振動片32の電極を形成する。
すなわち、電極が形成されていない水晶片の全外面に、スパッタリング等によって、電極となる金属で電極膜を被覆する(図示せず)。電極膜は、例えば、Crを下地層として、Auを被覆する。
次に、その外側に例えば、スプレー方式により、レジストを塗布し、パターニングを行い、露光により感光していないレジストを除去する。
そして、レジストが除去されることにより露出した電極膜についてAu、Crの順にエッチングにより除去する。
これにより、図9(i)に示すように、水晶振動片が完成する。なお、図9(i)では、振動腕35の断面だけが示されている。
【0043】
このように、本実施形態の製造方法によれば、水晶振動片32の外形を形成するエッチングと、従来、外形エッチングとは別に行っていた溝形成のためのハーフエッチングとが同時に行われるので、工程が著しく簡単になるとともに、製造工程に要する時間が短縮される。
また、この実施形態の製造方法においては、水晶振動片32の振動腕34,35の各溝56,57の内側底部に、長さ方向に延びるひとつもしくは複数の凸条66,66が設けられることになる(図5参照)。このため、材料の厚みの薄くなった溝部56において、長さ方向の凸条66,66は、振動腕35の剛性を向上させる役割を果たす。これにより、破損しにくい丈夫な水晶振動片32を得ることができる。
【0044】
図11は、図9(g)ないし図9(i)で説明した工程に対応した工程を順番に示したものであり、特に、図9(g)で、エッチングが進む過程で、壁部66−1,66−2が消失して、突状66,66だけが残される場合、すなわち、図5で説明した形態が形成される場合について示している。それ以外の点では、図9の製造工程と同じである。
【0045】
図12は、本発明の上述した実施形態に係る水晶デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。
図において、送信者の音声を受信するマイクロフォン308及び受信内容を音声出力とするためのスピーカ309を備えており、さらに、送受信信号の変調及び復調部に接続された制御部としての集積回路等でなるコントローラ301を備えている。
コントローラ301は、送受信信号の変調及び復調の他に画像表示部としてのLCDや情報入力のための操作キー等でなる情報の入出力部302や、RAM,ROM等でなる情報記憶手段303の制御を行うようになっている。このため、コントローラ301には、圧電デバイス30または圧電デバイス90や圧電デバイス100が取り付けられて、その出力周波数をコントローラ301に内蔵された所定の分周回路(図示せず)等により、制御内容に適合したクロック信号として利用するようにされている。このコントローラ301に取付けられる圧電デバイス30は、圧電デバイス30等単体でなくても、圧電デバイス30等と、所定の分周回路等とを組み合わせた発振器であってもよい。
【0046】
コントローラ301は、さらに、温度補償水晶発振器(TCXO)305と接続され、温度補償水晶発振器305は、送信部307と受信部306に接続されている。これにより、コントローラ301からの基本クロックが、環境温度が変化した場合に変動しても、温度補償水晶発振器305により修正されて、送信部307及び受信部306に与えられるようになっている。
【0047】
このように、デジタル式携帯電話装置300のような電子機器に、上述した実施形態に係る水晶デバイス30を利用することにより、パッケージに収容されている水晶振動片32が振動により破損しにくく、しかも製造工程が簡略されていることで低コストで製造できることにより、信頼性の高い品質を備えた低コストで製造できるデジタル式携帯電話装置300を得ることができる。
【0048】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
また、この発明は、パッケージ内に水晶振動片を収容するものであれば、水晶振動子、水晶発振器等の名称にかかわらず、全ての水晶デバイスに適用することができる。
また、上述の実施形態では、パッケージに水晶材料を使用した箱状のものを利用しているが、このような形態に限らず、シリンダー状のパッケージやその他のケースに水晶振動片を収容するものであれば、いかなるパッケージやケースを伴うものについても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水晶デバイスの第1の実施形態を示す概略平面図。
【図2】図1のB−B線概略断面図。
【図3】図1の水晶デバイスのパッケージに収容される水晶振動片の概略斜視図。
【図4】図3のC−C線切断端面図。
【図5】図3の水晶振動片の一方の振動腕を切断した状態を示す概略斜視図。
【図6】図3の水晶振動片の振動腕に小さな溝幅の溝を形成した場合の構造を示す概略断面図。
【図7】図3の水晶振動片の振動腕に異形形状の高さよりも大きな溝幅の溝を形成した場合の構造を示す概略断面図。
【図8】図1の水晶デバイスに収容された水晶振動片の製造工程を順番に示す概略断面図。
【図9】図1の水晶デバイスに収容された水晶振動片の製造工程を順番に示す概略断面図。
【図10】図9の工程の一部を拡大して示す概略断面図。
【図11】図9の製造工程の変形例を示す概略断面図。
【図12】本発明の実施形態に係る水晶デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図。
【図13】従来の水晶振動片の構成例を示す概略斜視図。
【図14】図13のA−A線概略断面図。
【図15】図13の水晶振動片の製造工程を順番に示す概略断面図。
【図16】図13の水晶振動片の製造工程を順番に示す概略断面図。
【図17】図13の水晶振動片の製造工程を順番に示す概略断面図。
【符号の説明】
30・・・水晶デバイス、32・・・水晶振動片 、34,35・・・振動腕、56,57・・・溝、65・・・異形形状(部)、66,66・・・突起もしくは突条。

Claims (9)

  1. 全体が水晶により形成され、基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕に長さ方向に延びる溝を有する水晶振動片を、水晶材料でなる基板をエッチングすることにより形成する製造方法であって、
    前記溝を前記水晶材料のエッチングにより前記水晶振動片の外形形状を形成するに際して、この溝幅Wを、前記エッチングの際に水晶の異方性によって、前記各振動腕に形成される異形形状の突出量hを越えない大きさに選定する
    ことを特徴とする、水晶振動片の製造方法。
  2. 前記溝の溝幅を、前記突出量hよりも大きな溝幅で形成する場合には、この大きな溝幅NWが、前記突出量hのほぼ整数倍となるように選定することを特徴とする、請求項1に記載の水晶振動片の製造方法。
  3. 前記溝には、前記溝幅NWを幅方向に分割する突条もしくは壁部を形成することを特徴とする請求項2に記載の水晶振動片の製造方法。
  4. 水晶材料でなる基板の表面に、耐蝕膜を形成する工程と、
    前記耐蝕膜に重ねてレジストを塗布する工程と、
    前記レジスト及び前記耐蝕膜に対して、振動腕に形成される溝に対応した形状及び前記水晶振動片の外形形状に適合するようにマスキングを施し、水晶材料のエッチングを行うエッチング工程と、
    前記水晶振動片の外形と各振動腕の前記溝を形成した後に、必要な電極膜を形成する工程と
    を含んでおり、
    前記エッチング工程において、前記溝幅Wを、前記エッチングの際に水晶の異方性によって、前記各振動腕に形成される異形形状の突出量hを越えない大きさに選定する
    ことを特徴とする、水晶振動片の製造方法。
  5. 全体が水晶により形成され、基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕に長さ方向に延びる溝を有する水晶振動片であって、
    前記溝の内側底部に、長さ方向に延びる凸条を有する
    ことを特徴とする、水晶振動片。
  6. 前記突条が、前記溝を幅方向に分割して複数の小さな溝を形成する壁部とされていることを特徴とする請求項4に記載の水晶振動片。
  7. パッケージ内に水晶振動片を収容した水晶デバイスであって、
    前記水晶振動片は、
    全体が水晶により形成され、基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕に長さ方向に延びる溝を有する水晶振動片であって、
    前記溝の内側底部に、長さ方向に延びる凸条を有する
    ことを特徴とする、水晶デバイス。
  8. パッケージ内に水晶振動片を収容した水晶デバイスを利用した携帯電話装置であって、
    前記水晶振動片が、
    全体が水晶により形成され、基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕に長さ方向に延びる溝を有する水晶振動片であって、
    前記溝の内側底部に、長さ方向に延びる凸条を有する水晶デバイスにより、制御用のクロック信号を得るようにしたことを特徴とする、携帯電話装置。
  9. パッケージ内に水晶振動片を収容した水晶デバイスを利用した電子機器であって、
    前記水晶振動片が、
    全体が水晶により形成され、基部と、この基部から平行に延びる一対の振動腕とを備え、各振動腕に長さ方向に延びる溝を有する水晶振動片であって、
    前記溝の内側底部に、長さ方向に延びる凸条を有する水晶デバイスにより、制御用のクロック信号を得るようにしたことを特徴とする、電子機器。
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