JP2004197642A - 筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】成層燃焼の設定条件が異なる隣り合う運転域の境界を横切る際にも、成層燃焼を持続させつつNOx排出量の増大を防止する。
【解決手段】所定運転域でリーン空燃比での成層燃焼を行う筒内直接噴射式火花点火エンジンにおいて、成層燃焼を行う所定運転域のうち隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件が異なる場合に、その隣り合う運転域の境界を横切る際に、一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせる一時的理論空燃比運転実行手段(41、7)と、この理論空燃比での均質燃焼時に排気中に含まれるNOxを還元する触媒(31)とを備える。
【選択図】 図4
【解決手段】所定運転域でリーン空燃比での成層燃焼を行う筒内直接噴射式火花点火エンジンにおいて、成層燃焼を行う所定運転域のうち隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件が異なる場合に、その隣り合う運転域の境界を横切る際に、一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせる一時的理論空燃比運転実行手段(41、7)と、この理論空燃比での均質燃焼時に排気中に含まれるNOxを還元する触媒(31)とを備える。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
タンブル制御弁の開度を連続的に制御しつつ、吸気弁下流に生成される二次渦成分がなくなるように可変動弁機構により吸気弁閉時期をタンブル制御弁開度の変化に連動して制御するものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−3755号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、筒内直接噴射式火花点火エンジンでは、所定運転域でリーン空燃比での成層燃焼を行うのであるが、成層燃焼を行う所定運転域のうち隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件を異ならせたものが提案されている。
【0005】
このものにおける成層燃焼域での混合気の形成方法を説明すると、成層燃焼域のうち隣り合う運転域を領域R1と領域R2とに区別する。例えば図3に示したように、成層燃焼域のうち低回転速度側を領域R1、高回転速度側を領域R2とする。各領域R1、R2での混合気形成方法は次の通りである。
【0006】
領域R1での混合気形成方法:燃料噴射量が少ないこの領域で安定した成層混合気を形成するために、シリンダヘッドと、上昇してきたピストン冠面のキャビティに囲まれた空間に、コンパクトに噴霧を収める(図15の左側参照)。また、元々ガス流動場は弱いこともあり、この力を用いて混合気形成を行うのではなく、噴射期間と噴霧の貫徹力により混合気を形成する。
【0007】
領域R2での混合気形成方法:この領域になると、燃料噴射量が多いため、噴射期間が長く設定される。そのとき、スモークや未燃燃料の発生を抑制する面から、燃料が冠面に付着するのを防ぐために噴射開始時期を領域R1の場合より早める必要があり、ピストン冠面の位置が、より下がった状態で混合気形成を行う(図15の右側参照)。その際、噴射期間と噴霧の貫徹力だけで混合気形成を行うのではなく、ガス流動を利用する。すなわち、吸気ポートに設けたガス流動制御弁を閉じることによってシリンダ内にガス流動を生成し、燃焼室空間に噴射した噴霧を、その生成したガス流動を利用して点火プラグへと移送することで、安定した混合気形成を行う。
【0008】
このように、2つの領域R1、R2で混合気の形成方法が異なるため、隣り合う運転域でありながら成層燃焼の設定条件(ガス流動弁の作動状態、空燃比、EGR率、噴射時期、点火時期等)が大きく異なっている。このため、運転条件がその隣り合う運転域の境界を横切る際には、成層燃焼の設定条件を、領域R1に適合した値から領域R2に適合した値へと、あるいはその逆へと切換える必要がある。具体的には領域R1より領域R2へと移行させる際にはガス流動弁を開状態より閉状態へと、また領域R2より領域R1へと移行させる際にはガス流動弁を閉状態より開状態へと切換えなければならない。
【0009】
しかしながら、ガス流動弁の閉作動中や開作動中は燃焼状態が過渡的に変化するため、噴射時期と点火時期とで決まる安定燃焼領域を外れる可能性がある。これを図6を参照しながら説明すると、図6はガス流動制御弁(TCV)の作動状態の違いによる燃焼安定領域の差異を示している。ここで、横軸は噴射時期(右側が遅角側)、縦軸は点火時期(上側が進角側)であり、これらのバランスの上に燃焼安定領域が定まる。図示の4重丸のうち2重丸の部分のみが燃焼安定領域であり、その外側は燃焼不安定領域である。
【0010】
成層燃焼域である領域R1、R2では燃費向上のため空燃比はリーン状態にあり、このリーン状態で多く発生するNOxを低減するためEGR率を大きくしている。このため、領域R1、R2とも燃焼安定領域は狭く、領域R1での燃焼安定領域は右上に示すように、これに対して領域R2での燃焼安定領域は左上に示すようになる。両者を比較すると、左上のほうが2重丸の領域が少しだけ大きくなっているのでそれだけ燃焼安定領域が広い。また、左上の燃焼安定領域よりも右上の燃焼安定領域のほうが点火時期が進角側に偏っていることがわかる。
【0011】
さて、点火時期を変えなくとも2つの領域R1、R2で共に燃焼安定領域でいられる点火時期があるのか否かを調べるために引いたのが図示の2本の平行線で、上側の線より進角側(上側)にあれば領域R1では燃焼安定領域に入り、下側の線より遅角側(下側)であれば領域R2で燃焼安定領域に入る。ということは、2つの領域R1、R2で共に燃焼安定領域でいられる点火時期はない。従って、燃焼安定を保ちつつかつ点火時期を変更することなく右上に示す状態(領域R1での成層燃焼状態)より左上に示す状態(領域R2での成層燃焼状態)へと、あるいはこの逆へと移すことはできない。従って、領域R1より領域R2へのあるいはその逆への移行途中において成層燃焼を持続させようとした場合、燃焼安定度を確保するために成層燃焼の設定値を甘く設定せざるを得ない。すなわち、図6の場合で再度説明すると、右上、左上に対して空燃比をリッチ化すると共にEGR率を小さくすれば、右下、左下に示したように燃焼安定領域が拡大する。これら右下、左下の2つの状態で、点火時期を変えることなく共に燃焼安定領域でいられる点火時期があるのか否かを調べるために図示の2本の平行線を引いてみると、今度は上の直線と下の直線の間の点火時期であれば、右下、左下の2つの状態で共に燃焼安定領域でいられることになる。このことは、成層燃焼の設定条件を甘くして、右下と左下の状態が得られるようにしておけば、右下と左下の間では点火時期(噴射時期についても)を一定に保った状態でTCVを開状態から閉状態へあるいはこの逆に閉状態から開状態へと切換えても燃焼安定領域を外れることがないことを意味する。
【0012】
しかしながら、右下、左下の状態で燃焼安定領域が大きくなっているのは、空燃比をリッチ化すると共にEGR率を小さくすることによって燃焼ガスが高温化しているからであり、この燃焼ガスの高温化によってNOx排出量が増大する。同図には等NOx排出量線を書き入れており、その線幅が太くなるほどNOx排出量が増大することを表している。右下、左下の状態では右上、左上の状態より燃焼安定領域を横切る、等NOx排出量線の線幅が太く、NOx排出量が増大していることがわかる。
【0013】
このように、成層燃焼域のうち成層燃焼の設定条件が異なる隣り合う運転域の境界を横切る際にも成層燃焼を持続させようとして、成層燃焼の設定値を甘く設定したのでは、NOx排出量が多くなり、排気を悪化させてしまうのである。
【0014】
そこで本発明は、成層燃焼のうち成層燃焼の設定条件が異なる隣り合う運転域の境界を横切る際に、一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせ、この均質燃焼状態でガス流動制御弁を切換えると共に、理論空燃比での均質燃焼時に排出されるNOxは触媒により還元浄化することにより、成層燃焼の設定条件が異なる隣り合う運転域の境界を横切る際にも、成層燃焼を持続させつつNOx排出量の増大を防止することを目的とする。
【0015】
一方、上記の従来装置はガス流動制御弁が中間開度のときに、生成される旋回流の質が低下してしまうことを解決課題とするのに対して、隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件が異なる場合に、その隣り合う運転域の境界を横切る際に成層燃焼状態が不安定にならざるを得ない点を解決課題とする本発明とは技術的思想が異なる。
【0016】
【問題点を解決するための手段】
本発明は、所定運転域でリーン空燃比での成層燃焼を行う筒内直接噴射式火花点火エンジンにおいて、成層燃焼を行う所定運転域のうち隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件が異なる場合に、その隣り合う運転域の境界を横切る際に、一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせる一時的理論空燃比運転実行手段と、この理論空燃比での均質燃焼時に排気中に含まれるNOxを還元する触媒とを備える。
【0017】
【発明の効果】
成層燃焼域のうち隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件が異なる場合に、その隣り合う運転域の境界を横切る際には、燃焼状態が過渡的に変化するため、噴射時期と点火時期とで決まる安定燃焼領域を外れる可能性があるのであるのであるが、本発明では一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせるので、その隣り合う運転域の境界を横切る際にも燃焼状態が安定し、かつ理論空燃比での均質燃焼時に排気中に含まれるNOxは触媒により還元浄化されるので、成層燃焼域のうち成層燃焼の設定条件が異なる隣り合う運転域の境界を横切る際にも、成層燃焼を持続させつつNOxの増大をも防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は筒内直接噴射式火花点火エンジンの概略構成図である。
【0020】
図1に示すように、シリンダヘッド2と、シリンダブロック3に形成されるシリンダ4と、このシリンダ4を摺動するピストン5との間に燃焼室6が画成される。点火プラグ7が燃焼室中央部に臨み、ペントルーフ型に傾斜する燃焼室天井壁には2本の吸気ポート8a、8bと2本の排気ポート9a、9bが点火プラグ7を挟むようにして互いに対向して設けられる。10a、10bは吸気ポート8a、8bの燃焼室6への開口部を開閉するための吸気弁、11a、11bは排気ポート9a、9bの燃焼室6への開口部を開閉するための排気弁、13は吸気ポート8a、8bの途中にあって閉じられたとき吸気を絞る、ガス流動制御弁としてのタンブルコントロールバルブ(以下単に「TCV」という。)である。
【0021】
燃焼室6天井壁にはその側部から燃焼室6に臨む燃料噴射弁12が設けられる。燃料噴射弁12は各吸気弁10a、10bの側方で、かつ各吸気ポート8a、8bの間に位置して燃焼室6に臨んでいる。
【0022】
当該エンジンでは図3に示す低中回転速度域かつ低負荷域である領域R1及びR2で成層燃焼運転を行うが、この成層燃焼域(R1、R2)においては、燃焼室6内のガス流動を利用して燃料噴射弁12より燃焼室6内に直接噴射された燃料の噴霧をまとめつつ点火プラグ7近傍へと導き、この過程で混合気の塊となったものに対して着火している。燃料噴射弁12より噴射された燃料を混合気の塊状態にして点火プラグ7に誘導する方法は、エアガイド式といわれるものである。
【0023】
エアガイド式による混合気の形成方法を図2を参照しながら具体的に説明すると、同図は左側より右側に向けて時間的経過を表している。
【0024】
TCV開時:
図3に示す領域R1ではもともとガス流動場は弱いこともあり、このガス流動を用いて混合気を形成することは困難であるので、噴霧の貫徹力により混合気を形成する。すなわち、上死点に近づくにつれて形成される、シリンダヘッド2とピストンキャビティ5aに挟まれた空間内に燃料を噴射するため、噴射時期は遅角側に設定している(圧縮行程噴射)。この狭い空間に噴射された噴霧は噴霧の貫徹力だけで混合気を形成しつつ点火プラグ7へと到達する(図2上段参照)。
【0025】
TCV閉時:
図3に示す領域R2になるとガス流動を利用できる。すなわち、TCV13を閉じると各吸気ポート8a、8bの上側半分からのみ吸気が流入することになって吸気の流速が早まり、ピストン5の冠部上でシリンダ4中心線と直交する軸を中心に旋回するタンブルが十分な強さで生起する(図2下段最左端の矢印参照)。このタンブルを助長するようにキャビティ5aは浅皿状に形成されている。このため、燃料噴射弁12から噴射される燃料噴霧は、燃料噴射弁12の中心線を中心とする円錐状に拡がる。上記のタンブルによって燃料噴射弁21より噴射された燃料噴霧は、点火プラグ7のある方向に導かれ、その過程で着火可能な混合気塊を形成する。そして、この点火プラグ7近傍に達したこの混合気塊に対して点火を行うことで、安定した成層燃焼運転が可能になる。
【0026】
この場合、領域R2では領域R1より燃料噴射量が多くなりその分だけ噴射期間が長くなる。その際、燃料が冠面に付着するとスモークや未燃燃料の発生の原因となるのでこれを防ぐために噴射開始時期を領域R1より進角側に設定し(圧縮行程噴射)、ピストン冠面の位置が、より下がった状態で混合気形成を行う。点火時期についても同様に領域R1より進角側への設定となる。
【0027】
このように、成層燃焼域のうち隣り合う2つの領域R1とR2とでは、混合気の形成方法が異なるため、隣り合う運転域でありながら成層燃焼の設定条件(TCV13の作動状態、空燃比、EGR率、噴射時期、点火時期等)が大きく異なっている。
【0028】
これに対して、図3に示す領域R3、R4(均質燃焼域)になると、TCV13を開いた状態でも燃焼室6内に強いタンブルが発生するため、TCV13を開いた状態とし、燃焼室6内にタンブルを作りながら吸気行程で燃料を噴射することにより、燃焼室6全体に理論空燃比付近の均質な混合気を生成し、これによって均質燃焼運転を行う。
【0029】
ここで、均質燃焼域での目標空燃比は基本的に理論空燃比(14.7)である。これは理論空燃比付近の混合気の燃焼のとき、排気中のNOx、HC、COを排気通路21に設けた三元触媒(後述するNOxトラップ触媒31に付加されている)で同時に浄化できるためである。
【0030】
一方、成層燃焼域での目標空燃比は14.7より大きな値であり、このリーンな空燃比のとき多く排出されるNOxを低減するためEGR(排気還流)を行う。なお、図3では領域R3においてもEGRを行っている。成層燃焼域でのEGRがNOx低減を主目的とするものであるのに対して、領域R3でのEGRは燃費向上を主目的とするものである。
【0031】
なお、図3において「λ」は空気過剰率を表す。この空気過剰率λと空燃比との間には次の関係がある。
【0032】
空気過剰率λ=空燃比/理論空燃比…(1)
例えば領域R3では目標空燃比が理論空燃比であるので、これを(1)式に代入するとλ=1となる。また、領域R4では目標空燃比が理論空燃比または理論空燃比よりもリッチ側の値、つまり14.7以下の値であるから、これを(1)式に代入するとλ≦1となる。
【0033】
図4は筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御システム図である。
【0034】
エンジンには、点火装置を備える。点火装置は、バッテリからの電気エネルギーを蓄える点火コイル22と、パワートランジスタと、燃焼室6の天井に設けられた点火プラグ7とからなり、エンジンコントローラ41より点火信号がパワートランジスタに送られ、点火コイル22の一次電流が遮断されたとき(点火時期)、点火コイル22の二次側に高電圧が発生し、この高電圧を受けて、点火プラグ7が火花放電を行う。なお、図4では最下段に位置する気筒のみの点火装置を記載しているが、残りの気筒も同様であるため、記載を省略している。
【0035】
エンジンにはまたEGR装置としてのEGR弁26を備える。EGR弁26は排気通路23と吸気通路24を連通するEGR通路25に介装され、EGR弁アクチュエータ27により駆動されるもので、EGR弁26が所定のEGR領域で開かれると、排気の一部が不活性ガスとして吸気通路24に導かれ、この不活性ガスにより成層燃焼域(領域R1、R2)では燃焼ガス温度が低下してNOxの発生が抑えられ、またこの不活性ガスにより均質燃焼域(領域R3)ではポンピングロスが低下してそのぶん燃費が向上する。
【0036】
EGR通路25の分岐口より下流の排気通路23にはNOxトラップ触媒31を備える。NOxトラップ触媒31は、流入する排気の空燃比がリーンであるとき排気中のNOxをトラップし、流入する排気の空燃比が理論空燃比またはリッチ空燃比であるとき、トラップしていたNOxを脱離すると共に、この脱離したNOxを排気中のHC、COを還元剤として用いて還元浄化する。このNOxトラップ触媒31には三元触媒機能が付加されている。NOxトラップ触媒31と別体で三元触媒を設けてもかまわない。
【0037】
アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)に応じたエンジントルクが発生するようにするため、また成層燃焼域と均質燃焼域との切換時にトルク段差を生じさせないようにするために吸気通路24にスロットル弁28とこれを駆動するスロットルアクチュエータ29とからなる電子制御式スロットル装置が設けられている。
【0038】
アクセルセンサ42からのアクセル開度(エンジン負荷相当)の信号、クランク角センサ43からの基準位置の信号(点火時期や燃料噴射時期を制御するための信号となる)やクランク角1°毎の信号、エアフローメータ44からの信号等が入力されるエンジンコントローラ41では、運転条件に応じ
▲1▼燃料噴射弁12を介しての燃料噴射量と燃料噴射時期の制御、
▲2▼点火プラグ7を介しての点火時期の制御、
▲3▼EGR弁26を介してのEGR弁開度(EGR率)の制御、
▲4▼スロットル弁28を介してのスロットル弁開度の制御、
▲5▼NOxトラップ触媒31の再生処理
をそれぞれ行うと共に、TCV13の開閉を制御する。
【0039】
上記▲1▼の燃料噴射制御については次の通りである。図3に示す成層燃焼域(R1とR2)、均質燃焼域(R3とR4)の各領域毎に最適な目標当量比Tfbyaを演算し、この目標当量比Tfbyaが得られるように燃料噴射量を演算し、この燃料噴射量を燃料噴射弁12の開弁期間に変換し、この開弁期間を含んだパルス信号を燃料噴射弁12の駆動回路(図示せず)に出力する。これに伴って、駆動回路からパルス信号に対応する駆動電流が燃料噴射弁12のアクチュエータに送られ、燃料噴射弁12のニードルがリフトして噴孔を開弁する。燃料噴射パルス幅が長いほど燃料噴射弁12の開弁期間が長くなり、燃料噴射量が増えるようになっている。このように、実際の制御上においては空燃比でなく当量比を使っている。この当量比と空燃比との間には後述する(2)式の関係がある。
【0040】
また、成層燃焼域で燃料噴射時期をピストン5が上昇する圧縮行程の後半に設定し、均質燃焼域で燃料噴射時期をピストン5が下降する吸気行程に設定する。
【0041】
上記▲2▼、▲3▼、▲4▼の制御については次の通りである。アクセル開度とエンジン回転速度に基づいて点火時期を演算する。アクセル開度とエンジン回転速度に基づいて目標EGR率を演算し、この目標EGR率が得られるようにEGR弁開度を演算する。アクセル開度とエンジン回転速度に基づいて目標トルクを演算し、この目標トルクに基づいて目標空気量を演算し、この目標空気量が得られるようにスロットル弁開度を演算する。
【0042】
上記▲5▼の再生処理については次の通りである。NOxとラップ触媒31にトラップされたNOx量がある程度溜まったタイミングで成層燃焼域にあっても空燃比を理論空燃比またはリッチ空燃比へと一時的に切換え、これにより定期的にNOxトラップ触媒31を再生する。
【0043】
このように上記▲1▼〜▲5▼の各制御を行うものを前提として、本実施形態ではさらに、図3に示す成層燃焼域のうち隣り合う運転域R1、R2の境界を横切る際に一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせ、その状態でTCV13を切換える。すなわち、領域R1(TCV13を開いている一方の運転域)より領域R2(TCV13を閉じている他方の運転域)への移行時に、TCV13の作動状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第1の処理を行い、その後にTCV13を閉じると共にEGR率を領域R2に適合した値へと変化させる第2の処理を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第3の処理を行う。また、領域R2より領域R1への移行時に、TCV13の作動状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第4の処理を行い、その後にTCV13を開くと共にEGR率を領域R1に適合した値へと変化させる第5の処理を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第6の処理を行う。
【0044】
これを図5を参照しながら説明すると、図5において左半分は領域R1より領域R2への移行時に、また右半分はこの逆への移行時にTCV13の作動状態、空燃比A/F、EGR率、噴射時期IT、点火時期Advがそれぞれどのように変化するのかを示した波形図である。なお、噴射時期ITと点火時期Advとは上側が進角側である。
【0045】
この場合、図5右半分に示す一連の操作は、図5左半分に示す一連の操作のちょうど逆を行うものであり、従って、図5左半分での一連の操作のみを説明する。
【0046】
図5左半分において図示のように各タイミングにt1〜t6を割り振り、t1のタイミングで運転条件が領域R1より領域R2へと移行するものとする。
【0047】
〈1〉t1〜t2直前まで:これは上記第1の処理である。すなわち、領域R1より領域R2へと移行するt1のタイミングでは、TCV13をまだ閉じない。TCV13は開状態を保ったままt1のタイミングより空燃比A/Fを領域R1での適合値から理論空燃比(λ=1)になるまで徐々に小さくする。空燃比A/Fを所定の傾きで変化させているのは、領域移行時のトルク変動を防止するためである。
【0048】
また空燃比を小さくするのに合わせて点火時期Advをt1より徐々に遅角側に移している。これは、エンジンの発生するトルクを領域移行前後で一定に保つためである。すなわち、点火時期が同じであれば空燃比が小さくなるほどトルクが大きくなるので、このトルクの増大を、点火時期をリタードすることによって抑制しトルクを一定に保つのである。
【0049】
〈2〉t2〜t5直前まで:これは上記第2の処理である。すなわち、空燃比A/Fが理論空燃比に達するt2のタイミングよりTCV13を閉じると共に、EGR率を領域R2での適合値へと変化させ、かつ噴射時期ITを圧縮行程から吸気行程へと切換え、さらに点火時期Advを理論空燃比での均質燃焼状態にふさわしい値へと切換える。
【0050】
TCV13はTCVアクチュエータへの通電に対して所定の傾きをもって閉じている。この傾きはTCVアクチュエータの変化速度で決まる。また、目標EGR率がステップ変化するのに対して、実際のEGR率(図5左半分第3段目に示す実線は実際のEGR率の動きである)は所定の傾きをもって小さくなっているが、この傾きもEGR弁アクチュエータ27の変化速度で決まっている。TCV13がt3のタイミングで全閉位置に達するのに対して、EGR率がt4のタイミングで領域R2での適合値に達しているのは、TCV13とEGR率とではEGR率の応答のほうが遅いためである。t4からt5直前までの区間は状態が安定するのを待つ時間である。
【0051】
〈3〉t5〜t6まで:これは上記第3の処理である。すなわち、空燃比A/Fを理論空燃比から領域R2での適合値になるまで徐々に大きくすると共に、点火時期Advをt2直前の大きく遅角された値Cへとステップ的に切換えた後に徐々に進角側に移し、かつ噴射時期ITを吸気行程から圧縮行程へと戻す。空燃比A/Fを所定の傾きで変化させているのは領域移行前後でのトルク変動を防止するため、また空燃比A/Fを大きくするのに合わせて点火時期Advを徐々に進角側に移すのはトルクを一定に保つためである。
【0052】
なお、空燃比A/Fが理論空燃比となるt2のタイミングとなってから噴射時期ITと点火時期Advを、理論空燃比での均質燃焼にふさわしい値へと切換えるのではなく、t2よりも早いタイミングで切換えているのは、成層燃焼状態より理論空燃比に向けて空燃比をリッチ化すると、成層燃焼において形成される混合気塊が濃すぎて安定的に燃えなくなるので、成層燃焼を諦めて燃焼が安定して行われる均質燃焼へと早めに移すためである(エアガイド式では既知)。
【0053】
このように本実施形態では、領域R1より領域R2へと移行させる際に、TCV13は開状態にしたままで、空燃比をまず理論空燃比へと切換え、この理論空燃比の状態でTCV13を閉じ、その後に空燃比を領域R2での適合値へと移すようにしているのであるが、比較のため本実施形態とは異なる方法を図6を参照しながら説明する。
【0054】
図6はTCV13の作動状態の違いによる燃焼安定領域の差異を示す。ここで、横軸は噴射時期IT(右側が遅角側)、縦軸は点火時期Adv(上側が進角側)であり、これらのバランスの上に燃焼安定領域が定まっている。図示の4重丸のうち2重丸の部分のみが燃焼安定領域であり、その外側は燃焼不安定領域である。
【0055】
領域R1、R2では燃費向上のため空燃比はリーン状態にあり、このリーン状態で多く発生するNOxを低減するためEGR率を大きくしている。このため、領域R1、R2とも燃焼安定領域は狭く、領域R1での燃焼安定領域は右上に示すように、これに対して領域R2での燃焼安定領域は左上に示すようになる。両者を比較すると、左上のほうが2重丸の領域が少しだけ大きくなっているのでそれだけ燃焼安定領域が広いことを示す。また、左上の燃焼安定領域よりも右上の燃焼安定領域のほうが点火時期が進角側に偏っていることがわかる。
【0056】
さて、この2つの領域R1、R2で共に点火時期を変えずに燃焼安定領域でいられる点火時期があるのか否かを調べるために引いたのが図示の2本の平行線である。上側の線より進角側にあれば領域R1では燃焼安定領域に入り、下側の線より遅角側であれば領域R2で燃焼安定領域に入る。ということは、2つの領域R1、R2で共に点火時期を変えずに燃焼安定領域でいられる点火時期はなく、従って燃焼を安定に保ちつつ、かつ点火時期を変更することなく右上に示す状態より左上に示す状態へと、この逆に左上の状態より右上の状態へと移すことはできない。これを逆にいうと、点火時期と噴射時期を同一に保ちつつ燃焼安定領域の一部が重なるようにしてやれば、点火時期と噴射時期を変えることなく燃焼を安定に保ちつつ右上より左上へと、この逆に左上より右上へと状態を移すことができる。
【0057】
このため、右下に示す状態と左下に示す状態とを追加する。右下は右上に示す状態に対して、左下は左上に示す状態に対して空燃比をリッチ化すると共にEGR率を小さくしたものである。これらの操作の結果、燃焼安定領域が右下、左下の状態とも大きくなっている。従って、これら右下、左下の2つの状態で共に点火時期を変えることなく燃焼安定領域でいられる点火時期があるのか否かを調べるために図示の2本の平行線を引いてみると、今度は上の直線と下の直線の間の点火時期であれば、右下、左下の2つの状態で共に燃焼安定領域でいられる。このことは、右下と左下の間では点火時期Advと噴射時期ITを一定に保った状態でTCV13を開状態から閉状態へ、あるいはこの逆に閉状態から開状態へと切換えても燃焼安定領域を外れることがないことを意味する。
【0058】
これより、TCV13が開状態にある右上の状態よりTCV13が閉状態にある左上の状態へと、あるいはこの逆へと燃焼安定領域を外れることなく移すには、右下、左下の状態を途中に加えればよいこと分かる。すなわち、TCV13が開状態にある右上の状態よりTCV13は開状態のまま空燃比のリッチ化とEGR率の減少化とを行って右下の状態に移し、この状態でTCV13を開状態より閉状態へと切換えて左下の状態に移し、再び空燃比を領域2での適合値へとリーン化すると共にEGR率を領域2での適合値へと大きくしてやれば左上の状態に移る。また、TCV13が閉状態にある左上の状態よりTCV13は閉状態のまま空燃比のリッチ化とEGR率の減少化を行って左下の状態に移し、この状態でTCV13を閉より開へと切換えて右下の状態に移し、再び空燃比を領域R1での適合値へとリーン化すると共にEGR率を領域R1での適合値へと大きくしてやれば右上の状態に移る。
【0059】
しかしながら、このように領域移行途中に空燃比をリッチ化すると共にEGR率を小さくする操作を挟む方法において、右下、左下の状態で燃焼安定領域が大きくなっているのは燃焼ガスが高温化しているからであり、この燃焼ガスの高温化によってNOx排出量が増大する。同図には等NOx排出量線を書き入れており、その線幅が太くなるほどNOx排出量が増大することを表している。右下、左下の状態では右上、左上の状態より燃焼安定領域を横切る、等NOx排出量線の線幅が太く、NOx排出量が増大していることがわかる。
【0060】
これに対して本実施形態による領域移行方法によれば、安定した燃焼の得られる理論空燃比での均質燃焼状態において、TCV13を開状態より閉状態へと切換えることで、TCVの切換に伴う燃焼状態の不安定が抑制される。また、理論空燃比での均質燃焼であれば、そのとき発生するNOxは、NOxトラップ触媒31に付加されている三元触媒機能によりその燃焼ガス中に含まれるHC、COを用いて効率よく浄化することができる。
【0061】
エンジンコントローラ41で実行される領域移行時の制御をフローチャートに基づいて詳述する。ただし、領域R1より領域R2への移行時についてだけ説明する。
【0062】
図7は領域移行中フラグを設定するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0063】
ステップ1では運転条件(エンジンの回転速度と負荷とから定まる)が成層燃焼域(図3に示す領域R1とR2)にあるかどうかみる。成層燃焼域になければそのまま今回の処理を終了する。
【0064】
成層燃焼域にあるときにはステップ2に進み領域移行切換中フラグ(ゼロに初期設定)をみる。ここでは領域移行中フラグ=0であるとして述べると、このとき、ステップ3、4に進んで今回に運転条件が領域R2にあるか否か、また前回は運転条件が領域R1にあったか否かをみる。今回に運転条件が領域R2にありかつ前回に運転条件が領域R1にあったとき、つまり領域R1より領域R2に移行した直後であるときにはステップ5に進み領域移行中フラグ=1とする。この領域移行中フラグは領域R1より領域R2への移行時に1となり、後述するように領域移行制御を終了するときにゼロとなるフラグである。
【0065】
今回に運転条件が領域R2にないときや、今回、前回とも領域R2にあるときにはそのまま今回の処理を終了する。
【0066】
図8は目標当量比Tfbyaを演算するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0067】
なお、図6では空燃比で説明したが、実際の制御上では当量比を使っている。この当量比と空燃比との間には次の関係がある。
【0068】
当量比=14.7/空燃比…(2)
(2)式より空燃比が理論空燃比(14.7)のとき当量比は1.0となる。空燃比が理論空燃比よりリッチ側の値であるときには当量比は1.0を超える値に、この逆に空燃比が理論空燃比よりリーン側の値であるときには当量比は1.0未満の値になる。
【0069】
ステップ11では運転条件に基づいて目標当量比の基本値Tfbya0を演算する。例えば、均質燃焼域と成層燃焼域とに分けて別々に目標当量比基本値のマップを備えさせ、運転条件がいずれの燃焼域にあるのかを判定した後、そのときのエンジンの回転速度と負荷とからその判定した燃焼域のマップを検索することにより目標当量比基本値Tfbya0を求めればよい。
【0070】
ステップ12、13では今回に領域移行中フラグ=1であるか否か、また前回に領域移行中フラグ=0であったか否かをみる。今回に領域移行中フラグ=0であるときにはステップ14に進み基本値Tfbya0をそのまま目標当量比Tfbyaに入れる。
【0071】
今回に領域移行中フラグ=1でありかつ前回に領域移行中フラグ=0であったとき、つまり領域移行中フラグがゼロより1へと切換わった直後(運転条件が領域R1より領域R2に移行した直後)であるときにはステップ15に進み基本値Tfbya0を領域移行中の目標当量比の前回値を現す「TfbyaTR(前回)」に入れ、ステップ16で、
TfbyaTR=TfbyaTR(前回)+Δ1…(3)
ただし、Δ1:正の所定値(例えば一定値)、
の式により領域移行中の目標当量比TfbyaTRを演算し、このTfbyaTRをステップ17において目標当量比Tfbyaに入れる。
【0072】
ここで、運転条件が領域R1よりR2に移行したタイミングではステップ11で演算される基本値Tfbya0は、理論空燃比よりもリーン側の空燃比で運転される成層燃焼時の値であるため1.0未満の正の値である。このため、(3)式右辺第1項のTfbyaTR(前回)も1.0未満の正の値である。
【0073】
一方、今回、前回とも領域移行中フラグ=1であるときにはステップ12、13よりステップ18、19に進んで今回に復帰フラグ(ゼロに初期設定)=1であるか否か、また前回に復帰フラグ=0であったか否かをみる。ここで、復帰フラグは、後述するように目標当量比Tfbyaが1.0に到達したタイミングより所定時間が経過したとき1となるフラグである(図10のステップ50、51参照)。
【0074】
領域R1より領域R2に移行してすぐは復帰フラグ=0であるので、ステップ20に進み、領域移行中の目標当量比TfbyaTRと1.0を比較する。ここで、1.0は理論空燃比のときの当量比の値である。
【0075】
運転条件が領域R1よりR2に移行してしばらくはTfbyaTRが1.0未満の値であるので、ステップ16、17の処理を繰り返す。
【0076】
上記(3)式は運転条件が領域R1よりR2に移行したタイミングだけでなく、このように領域R2になってからも繰り返し行われるのであり、領域移行中の目標当量比TfbyaTRを演算周期当たりΔ1ずつ漸増させる式である。これは図5左半分の第2段目のt1よりt2直前までの操作を行うものである。これによって空燃比は理論空燃比へと向かう。
【0077】
ステップ16での繰り返し操作の結果、やがて領域移行中の目標当量比TfbyaTRが1.0以上となればステップ20よりステップ21に進み理論空燃比到達フラグ(ゼロに初期設定)=1とした後、目標当量比Tfbyaに1.0を入れる。ここで、理論空燃比到達フラグ=1は領域移行中の目標当量比TfbyaTRが1.0つまり空燃比が理論空燃比に到達したことを表す。
【0078】
また、このあと復帰フラグ=1となるまでにはしばらく時間を要するため、このときにはステップ20〜22の操作を繰り返す。これは図5左半分の第2段目のt2よりt5直前までの操作を行うものである。これによって空燃比は理論空燃比に維持される。
【0079】
今回に復帰フラグ=1でありかつ前回に復帰フラグ=0であったとき、つまり復帰フラグがゼロより1へと切換わった直後であるときにはステップ23に進み、1.0を領域移行中の目標当量比の前回値を現す「TfbyaTR(前回)」に入れ、ステップ24で、
TfbyaTR=TfbyaTR(前回)−Δ1…(4)
ただし、Δ1:正の所定値(例えば一定値)、
の式により領域移行中の目標当量比TfbyaTRを演算し、このTfbyaTRの値をステップ25において目標当量比Tfbyaに入れる。
【0080】
一方、今回、前回とも復帰フラグ=1であるときにはステップ18、19よりステップ26に進んで領域移行中の目標当量比TfbyaTRとマップ値であるTfbya0を比較する。当初はTfbyaTRがTfbya0より大きいのでこのときにはステップ24、25の操作を実行する。
【0081】
上記の(4)式は復帰フラグがゼロより1へと切換わったタイミングだけでなく、このように今回、前回とも復帰フラグ=1であるときにも繰り返し行われるのであり、領域移行中の目標当量比TfbyaTRを演算周期当たりΔ1ずつ漸減させる式である。これは図5左半分の第2段目のt5よりt6直前までの操作を行うものである。これによって空燃比は理論空燃比より領域R2での適合値へと向かう。
【0082】
ステップ24での領域移行中の目標当量比TfbyaTRの漸減操作によりやがてTfbyaTRがTfbya0以下になるとステップ26よりステップ27に進み領域移行中の制御を終了するため、領域移行中フラグ、理論空燃比到達フラグ、EGR到達フラグ、復帰フラグを総てゼロに戻した後、基本値Tfbya0をそのまま目標当量比Tfbyaに入れる。なお、EGR到達フラグについては後述する。
【0083】
このようにして演算される目標当量比TFBYAは、図示しない燃料噴射パルス幅Tiの演算フローにおいて用いられ、例えば
Ti=Tp×Tfbya×(α+αm−1)×2+Ts…(5)
ただし、Tp:基本噴射パルス幅、
α:空燃比フィードバック補正係数、
αm:空燃比学習値、
Ts:無効パルス幅、
の式によりシーケンシャル噴射時の燃料噴射パルス幅Tiが演算される。
【0084】
図9はTCV13を開閉駆動するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0085】
ステップ31では運転条件が成層燃焼域にあるか否か、ステップ32、33では領域移行中フラグと理論空燃比到達フラグをみる。
【0086】
運転条件が成層燃焼域にあり、領域移行中フラグ=1かつ理論空燃比到達フラグ=0である場合にはステップ31、32、33よりステップ34に進んでTCVを開状態とする。これは図5左半分の第1段目のt1よりt2直前までの操作を行うものである。これによってTCV13は開状態に保持される。
【0087】
運転条件が成層燃焼域にあり、領域移行中フラグ=1かつ理論空燃比到達フラグ=1である場合にはステップ31、32、33よりステップ35に進んでTCV13を閉状態とする。これは図5左半分の第1段目のt2以降の操作を行うものである。
【0088】
このように、領域R1より領域R2への移行当初にTCV13は開状態に保ったままであり、目標当量比Tfbyaが1.0と一致したタイミングでTCV13が閉じられる。
【0089】
一方、領域移行中フラグ=0であるときにはステップ32よりステップ36に進んで運転条件が領域R1、R2のいずれにあるのかをみる。運転条件が領域R1にあるときにはステップ37に進んでTCV13を開き、運転条件が領域R2にあるときにはステップ38に進んでTCV13を閉じる。また、成層燃焼域にないときにもステップ31よりステップ37に進んでTCV13を開く。これらは、領域移行中を除いた運転条件でのTCV13に対する操作である。
【0090】
図10は目標EGR率を演算するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0091】
ステップ41では運転条件がEGR領域にあるか否かをみる。EGR領域は図3に示す領域R1、R2、R3である。運転条件がEGR領域にないときにはステップ42に進んで目標EGR率Megr=0とする。
【0092】
運転条件がEGR領域にあるときにはステップ41よりステップ43に進み、目標EGR率Megrを演算する。例えば、目標EGR率マップを備えさせ、そのときのエンジンの回転速度と負荷とからその目標EGR率マップを検索することにより目標EGR率Megrを求めればよい。
【0093】
ステップ44では領域移行中フラグをみる。領域移行中フラグ=0であるときにはそのまま今回の処理を終了する。
【0094】
領域移行中フラグ=1であるときにはステップ45に進んでEGR到達フラグ(ゼロに初期設定)=1であるか否かをみる。ここでは、EGR到達フラグ=0であるとして述べると、このときステップ46に進んで実EGR率Regrを演算する。EGR弁アクチュエータ27に応答遅れがあるため実EGR率は応答遅れを持って目標EGR率に追従するので、実EGR率は目標EGR率の一次遅れ処理で求めればよい。
【0095】
ステップ47では、このようにして演算した実EGR率Regrと目標EGR率Megrとを比較する。実EGR率Regrと目標EGR率Megrとを比較するのは実EGR率が領域R2での目標EGR率に到達したか否かをみるためである。実EGR率が目標EGR率以下となれば実EGR率が目標EGR率に追いついたと判断する。実EGR率が目標EGR率に追いついたタイミングは図5左半分の第3段目でいうとt4である。このときにはステップ48、49に進んでEGR到達フラグ=1とすると共にタイマを起動する。すなわち、EGR到達フラグ=1は実EGR率が目標EGR率に追いついたことを表す。タイマは実EGR率が目標EGR率に追いついてからの経過時間(つまりt4からの経過時間)を計測するためのものである。
【0096】
このEGR到達フラグ=1により次回にはステップ45よりステップ50に進み、タイマ値と所定時間を比較する。ここで、所定時間は図5左半分の第3段目に示したように、空燃比を理論空燃比にした状態でTCV13を閉じると共に目標EGR率を領域R2での適合値へと小さくした後に、状態が安定するまでの時間である。
【0097】
タイマ値が所定時間未満であるときにはそのまま今回の処理を終了し、やがてタイマ値が所定時間以上になるとステップ51に進んで復帰フラグ=1とする。図5左半分でいうと、復帰フラグ=1となるタイミングはt5である。
【0098】
この復帰フラグ=1により前述したように目標当量比Tfbyaが1.0より領域R2での値である基本値Tfbya0へと戻される。
【0099】
図示しない目標EGR弁開度を演算するフローでは、このようにして演算される目標EGR率Megrに基づいて目標EGR弁開度を演算し、この目標EGR弁開度をEGR弁アクチュエータ27への指令値に変えて出力する。
【0100】
図11は噴射時期を設定するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0101】
ステップ61では運転条件が成層燃焼域にあるか否かを、またステップ62では領域移行中フラグをみる。運転条件が成層燃焼域にないときにはステップ63に進んで吸気行程噴射を設定する。
【0102】
運転条件が成層燃焼域にありかつ領域移行中でないときには基本的に圧縮行程噴射であるので、ステップ61、62よりステップ64に進み圧縮行程噴射とする。
【0103】
一方、図5左半分の第4段目に示したようにt1よりt6までの領域移行中において図示のA、Bの各期間は圧縮行程噴射、それ以外の期間は理論空燃比での均質燃焼に最適な吸気行程噴射とするので、ステップ65、66で期間Aであるか否かを、またステップ67、68で期間Bであるか否かを確かめる。
【0104】
理論空燃比到達フラグ=0かつ目標当量比Tfbyaが所定値(例えば0.8)以下である、つまり図5左半分の第4段目のA期間であるときにはステップ64に進み圧縮行程噴射とし、また理論空燃比到達フラグ=1かつ復帰フラグ=1かつ目標当量比Tfbyaが0.8以下である、つまり図5左半分の第4段目のB期間であるときにはステップ69に進み圧縮行程噴射とする。
【0105】
これに対して、
(a)理論空燃比到達フラグ=0かつ目標当量比Tfbyaが0.8を超えている(図5左半分の第4段目のA期間の終了よりt2直前まで)、
(b)理論空燃比到達フラグ=1かつ復帰フラグ=0である(図5左半分の第4段目のt2よりt5直前まで)、
(c)理論空燃比到達フラグ=1かつ復帰フラグ=1かつ目標当量比Tfbyaが0.8を超えている(図5左半分の第4段目のt5よりB期間の開始直前まで)
のときにはステップ63に進み吸気行程噴射とする。
【0106】
図12は点火時期を演算するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0107】
ステップ71では運転条件に基づいて点火時期の基本値ADV0を演算する。例えば、点火時期基本値マップを備えさせ、そのときのエンジンの回転速度と負荷とからその点火時期基本値マップを検索することにより点火時期基本値ADV0を求めればよい。
【0108】
ステップ73、74では今回に領域移行中フラグ=1であるか否か、また前回に領域移行中フラグ=0であったか否かをみる。今回に領域移行中フラグ=0であるときにはステップ72に進み点火時期基本値ADV0をそのまま点火時期ADVに入れる。
【0109】
今回に領域移行中フラグ=1でありかつ前回に領域移行中フラグ=0であったとき、つまり領域移行中フラグがゼロより1へと切換わった直後(運転条件が領域R1より領域R2に移行した直後)であるときにはステップ75に進みADV0を領域移行中の点火時期の前回値を現す「ADVTR(前回)」に入れ、ステップ76で、
ADVTR=ADVTR(前回)−Δ2…(6)
ただし、Δ2:正の所定値(例えば一定値)、
の式により領域移行中の点火時期ADVTRを演算し、このADVTRをステップ77において点火時期ADVに入れる。
【0110】
一方、今回、前回とも領域移行中フラグ=1であるときにはステップ73、74よりステップ78、79に進んで理論空燃比到達フラグをみると共に目標当量比Tfbyaと0.8を比較する。
【0111】
理論空燃比到達フラグ=0かつ目標当量比Tfbyaが0.8以下のときにはステップ76、77の操作を実行する。
【0112】
上記(6)式は運転条件が領域R1よりR2に移行したタイミングだけでなく、このように領域R2になってからも繰り返し行われるのであり、領域移行中の点火時期ADVTRを演算周期当たりΔ2ずつ遅角させる式である。これは図5左半分の最下段のt1よりA区間の終了直前までの操作を行うものである。これによって点火時期は遅角されてゆく。
【0113】
やがて、理論空燃比到達フラグ=0かつ目標当量比Tfbyaが0.8を超えるとステップ80に進み復帰時の点火時期の進角処理に備えてTfbyaが0.8を超える直前のADVTRを初期値に移し、ステップ81で点火時期基本値ADV0を点火時期ADVに入れる。
【0114】
ステップ80、81の操作は理論空燃比到達フラグ=1となるまで続く。これは図5左半分の最下段のA期間の終了よりt2直前までの操作を行うものである。これによって点火時期は理論空燃比での均質燃焼に最適な値に維持される。
【0115】
やがて、理論空燃比到達フラグ=1になるとステップ78よりステップ82、83に進んで今回に目標当量比Tfbyaが0.8以下となったか否か、また前回に目標当量比Tfbyaが0.8を超えていたか否かをみる。今回に目標当量比Tfbyaが0.8を超えているときにはステップ81の操作を実行する。
【0116】
ステップ81の操作は、理論空燃比到達フラグ=1かつ目標当量比Tfbyaが0.8以下になる直前まで続く。これは図5左半分の最下段のt2よりB期間の開始直前までの操作を行うものである。これによって点火時期は理論空燃比での均質燃焼に最適な値に維持される。
【0117】
今回に目標当量比Tfbyaが0.8以下でありかつ前回に目標当量比Tfbyaが0.8を超えていたとき、つまり今回初めて目標当量比Tfbyaが0.8以下となったときにはステップ84に進み、ステップ80で記憶している初期値を領域移行中の点火時期の前回値を現す「ADVTR(前回)」に入れ、またステップ85で初期値を点火時期ADVに移す。
【0118】
一方、今回、前回とも目標当量比Tfbyaが0.8以下であるときにはステップ82、83よりステップ86に進んで復帰フラグをみる。復帰フラグ=1であるときにはステップ87で、
ADVTR=ADVTR(前回)+Δ2…(7)
ただし、Δ2:正の所定値(例えば一定値)、
の式により領域移行中の点火時期ADVTRを演算し、このADVTRをステップ88において点火時期ADVに入れる。
【0119】
上記(7)式は今回、前回とも目標当量比Tfbyaが0.8以下でありかつ復帰フラグ=1である限り繰り返し行われるのであり、領域移行中の点火時期ADVTRを演算周期当たりΔ2ずつ進角させる式である。これは図5左半分の最下段のB期間開始よりt6直前までの操作を行うものである。これによって点火時期は領域R2での適合値へと進角されてゆく。
【0120】
やがて、復帰フラグ=0になると領域移行中を終了するので、このときにはステップ72の操作を実行する。
【0121】
このようにして演算される点火時期ADV[°BTDC]は、図示しない点火時期制御のフローにおいて用いられ、実際のクランク角がこの点火時期ADVと一致したタイミングで点火コイル22の一次側回路が遮断され、これによって点火プラグ7に火花が飛ぶ。
【0122】
ここで、本実施形態の作用を説明する。
【0123】
成層燃焼域のうち隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件が異なることがある。例えば、図3に示す領域R1とR2とではTCV13の作動状態、EGR率、空燃比、噴射時期、点火時期が異なっている。この場合に、TCV13を開いている領域R1、TCV13を閉じている領域R2とも、ある範囲の燃焼安定領域を残して最大のEGR率としており、従って領域R1とR2とで燃焼安定領域は重なっていない(図6右上、左上参照)。
【0124】
この場合に例えば領域R1よりR2へと移行させるには、TCV13の作動を開状態より閉状態へと切り換えるだけなく、同時に、少なくとも点火時期を領域R2での適合値へと変更する必要がある。
【0125】
しかしながら、燃焼状態に大きく影響するTCV13の作動状態と点火時期とを同時に変化させるのでは、燃焼状態が過渡的に大きく変化することが考えられ、噴射時期と点火時期とで決まる安定燃焼領域を外れる可能性がある。
【0126】
これに対して本実施形態(請求項1に記載の発明)では、領域R1より領域R2へとあるいはその逆へと移行させる際には、一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせている。具体的には次のように、段階的な処理を行っている(請求項6に記載の発明)。
【0127】
(1)領域R1より領域R2への移行時:TCV13の作動状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第1の処理(図5左半分においてt1よりt2直前までの処理)を行い、その後にTCV13を閉じると共にEGR率を領域R2での適合値へと変化させる第2の処理(図5左半分においてt2よりt5直前までの処理)を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第3の処理(図5左半分においてt5よりt6直前までの処理)を行い、また
(2)領域R2より領域R1への移行時:TCV13の状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第4の処理(図5右半分においてt1よりt2直前までの処理)を行い、その後にTCV13を開くと共にEGR率を領域R1での適合値へと変化させる第5の処理(図5右半分においてt2よりt5直前までの処理)を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第6の処理(図5右半分においてt5よりt6直前までの処理)を行う。
【0128】
すなわち、理論空燃比での均質燃焼では燃焼状態がよいので、この燃焼状態のよい状態でTCV13を開状態より閉状態へあるいはその逆へと切換えても、リーン空燃比での成層燃焼の状態でTCV13を開状態より閉状態へあるいはその逆へと切換える場合に比べて燃焼が悪化しにくいのであり、これにより、成層燃焼域で隣り合う運転域(R1、R2)の境界を横切る際にも燃焼状態を安定させつつ隣り合う領域間を移行させることができる。
【0129】
また、理論空燃比での均質燃焼時に発生するNOxは、NOxトラップ触媒31に付加されている三元触媒機能により排気中のHC、COを還元剤として用いて還元浄化される。
【0130】
このように、本実施形態(請求項1、6に記載の発明)によれば、成層燃焼域のうち成層燃焼の設定条件が異なる隣り合う運転域R1、R2の境界を横切る際にも、成層燃焼を持続させつつNOx排出量の増大を防止することができる。
【0131】
図13は第2実施形態の領域移行時の作用を説明するための波形図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。
【0132】
この実施形態は、図示のようにA期間、B期間のうちにD、Eの各期間を定め、このD、E期間で圧縮行程噴射に加えて吸気行程噴射を行わせるようにしたものである(請求項7に記載の発明)。
【0133】
このように、リーン空燃比での成層燃焼から理論空燃比での均質燃焼への移行時及びその逆への移行時に、吸気行程噴射と圧縮行程噴射を共に行うようにすることで、成層燃焼のリッチ限界空燃比と、均質燃焼のリーン限界空燃比が離れている場合でも、トルク段差を生じさせることなく、成層燃焼より均質燃焼へあるいはその逆へと燃焼状態を切換えることができる。
【0134】
図14は第3実施形態の領域移行時の作用を説明するための波形図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。
【0135】
第3実施形態は上記第1または第4の処理を行う際にリッチスパイク処理を行うものである(請求項9に記載の発明)。ここで、リッチスパイク処理とは空燃比を一時的にリッチ空燃比にする空燃比リッチ化処理のことである。第3実施形態によれば、領域移行時の制御を行う以前の成層運転中にNOxトラップ触媒31にトラップされているNOxを還元浄化してNOxとラップ触媒31を再生することができる。
【0136】
この場合、領域R2より領域R1への移行時においてリッチスパイク処理を行うタイミングを、領域R1より領域R2への移行時においてリッチスパイク処理を行うタイミングよりも早く設定している(請求項10に記載の発明)。すなわち、図14において左半分に示す領域R1より領域R2への移行時にはt2のタイミングよりリッチスパイク処理を行うのに対して、右半分に示す領域R2より領域R1への移行時にはt2のタイミングの少し手前よりリッチスパイク処理を開始している。これは、均質燃焼状態でも、TCV13が開状態にある場合とTCVが閉状態にある場合とで燃焼安定性が異なることに着目したものである。すなわち、TCV13が閉状態である場合の均質燃焼のほうが、TCV13が開状態である場合の均質燃焼より燃焼安定度が優れ、空燃比をよりリッチ化することが、かつ点火時期をよりリタード側にすることが可能であるためである。
【0137】
理論空燃比を表す水平線とリッチスパイク処理における空燃比波形とで囲まれる面積が、NOx還元剤の量に対応するので、このように、領域R2より領域R1への移行時に早期にリッチスパイク処理を開始すれば、その分、理論空燃比を表す水平線とリッチスパイク処理における空燃比波形とで囲まれる面積、つまりNOx還元剤の量を増やすことができ、これによってTCV13が閉状態にある場合のほうが、NOxの還元処理能力を高めることができる。
【0138】
請求項1に記載の一時的理論空燃比運転実行手段の機能は図8のフロー及び燃料噴射弁12により果たされている。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の筒内直噴式火花点火エンジンの概略構成図。
【図2】エアガイド式による混合気の形成方法を示す説明図。
【図3】運転領域図。
【図4】筒内直噴式火花点火エンジンの制御システム図。
【図5】本実施形態の領域移行時の作用を説明するための波形図。
【図6】TCVの作動状態の違いによる燃焼安定領域の差異を示す特性図。
【図7】領域移行フラグの設定を説明するためのフローチャート。
【図8】目標当量比の演算を説明するためのフローチャート。
【図9】TCVの開閉制御を説明するためのフローチャート。
【図10】目標EGR率の演算を説明するためのフローチャート。
【図11】噴射時期の設定を説明するためのフローチャート。
【図12】点火時期の演算を説明するためのフローチャート。
【図13】第2実施形態の領域移行時の作用を説明するための波形図。
【図14】第3実施形態の領域移行時の作用を説明するための波形図。
【図15】エアガイド式による混合気の形成方法を示す説明図。
【符号の説明】
7 点火プラグ
12 燃料噴射弁
13 TCV(ガス流動制御弁)
31 三元触媒機能付きNOxトラップ触媒
41 エンジンコントローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
タンブル制御弁の開度を連続的に制御しつつ、吸気弁下流に生成される二次渦成分がなくなるように可変動弁機構により吸気弁閉時期をタンブル制御弁開度の変化に連動して制御するものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−3755号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、筒内直接噴射式火花点火エンジンでは、所定運転域でリーン空燃比での成層燃焼を行うのであるが、成層燃焼を行う所定運転域のうち隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件を異ならせたものが提案されている。
【0005】
このものにおける成層燃焼域での混合気の形成方法を説明すると、成層燃焼域のうち隣り合う運転域を領域R1と領域R2とに区別する。例えば図3に示したように、成層燃焼域のうち低回転速度側を領域R1、高回転速度側を領域R2とする。各領域R1、R2での混合気形成方法は次の通りである。
【0006】
領域R1での混合気形成方法:燃料噴射量が少ないこの領域で安定した成層混合気を形成するために、シリンダヘッドと、上昇してきたピストン冠面のキャビティに囲まれた空間に、コンパクトに噴霧を収める(図15の左側参照)。また、元々ガス流動場は弱いこともあり、この力を用いて混合気形成を行うのではなく、噴射期間と噴霧の貫徹力により混合気を形成する。
【0007】
領域R2での混合気形成方法:この領域になると、燃料噴射量が多いため、噴射期間が長く設定される。そのとき、スモークや未燃燃料の発生を抑制する面から、燃料が冠面に付着するのを防ぐために噴射開始時期を領域R1の場合より早める必要があり、ピストン冠面の位置が、より下がった状態で混合気形成を行う(図15の右側参照)。その際、噴射期間と噴霧の貫徹力だけで混合気形成を行うのではなく、ガス流動を利用する。すなわち、吸気ポートに設けたガス流動制御弁を閉じることによってシリンダ内にガス流動を生成し、燃焼室空間に噴射した噴霧を、その生成したガス流動を利用して点火プラグへと移送することで、安定した混合気形成を行う。
【0008】
このように、2つの領域R1、R2で混合気の形成方法が異なるため、隣り合う運転域でありながら成層燃焼の設定条件(ガス流動弁の作動状態、空燃比、EGR率、噴射時期、点火時期等)が大きく異なっている。このため、運転条件がその隣り合う運転域の境界を横切る際には、成層燃焼の設定条件を、領域R1に適合した値から領域R2に適合した値へと、あるいはその逆へと切換える必要がある。具体的には領域R1より領域R2へと移行させる際にはガス流動弁を開状態より閉状態へと、また領域R2より領域R1へと移行させる際にはガス流動弁を閉状態より開状態へと切換えなければならない。
【0009】
しかしながら、ガス流動弁の閉作動中や開作動中は燃焼状態が過渡的に変化するため、噴射時期と点火時期とで決まる安定燃焼領域を外れる可能性がある。これを図6を参照しながら説明すると、図6はガス流動制御弁(TCV)の作動状態の違いによる燃焼安定領域の差異を示している。ここで、横軸は噴射時期(右側が遅角側)、縦軸は点火時期(上側が進角側)であり、これらのバランスの上に燃焼安定領域が定まる。図示の4重丸のうち2重丸の部分のみが燃焼安定領域であり、その外側は燃焼不安定領域である。
【0010】
成層燃焼域である領域R1、R2では燃費向上のため空燃比はリーン状態にあり、このリーン状態で多く発生するNOxを低減するためEGR率を大きくしている。このため、領域R1、R2とも燃焼安定領域は狭く、領域R1での燃焼安定領域は右上に示すように、これに対して領域R2での燃焼安定領域は左上に示すようになる。両者を比較すると、左上のほうが2重丸の領域が少しだけ大きくなっているのでそれだけ燃焼安定領域が広い。また、左上の燃焼安定領域よりも右上の燃焼安定領域のほうが点火時期が進角側に偏っていることがわかる。
【0011】
さて、点火時期を変えなくとも2つの領域R1、R2で共に燃焼安定領域でいられる点火時期があるのか否かを調べるために引いたのが図示の2本の平行線で、上側の線より進角側(上側)にあれば領域R1では燃焼安定領域に入り、下側の線より遅角側(下側)であれば領域R2で燃焼安定領域に入る。ということは、2つの領域R1、R2で共に燃焼安定領域でいられる点火時期はない。従って、燃焼安定を保ちつつかつ点火時期を変更することなく右上に示す状態(領域R1での成層燃焼状態)より左上に示す状態(領域R2での成層燃焼状態)へと、あるいはこの逆へと移すことはできない。従って、領域R1より領域R2へのあるいはその逆への移行途中において成層燃焼を持続させようとした場合、燃焼安定度を確保するために成層燃焼の設定値を甘く設定せざるを得ない。すなわち、図6の場合で再度説明すると、右上、左上に対して空燃比をリッチ化すると共にEGR率を小さくすれば、右下、左下に示したように燃焼安定領域が拡大する。これら右下、左下の2つの状態で、点火時期を変えることなく共に燃焼安定領域でいられる点火時期があるのか否かを調べるために図示の2本の平行線を引いてみると、今度は上の直線と下の直線の間の点火時期であれば、右下、左下の2つの状態で共に燃焼安定領域でいられることになる。このことは、成層燃焼の設定条件を甘くして、右下と左下の状態が得られるようにしておけば、右下と左下の間では点火時期(噴射時期についても)を一定に保った状態でTCVを開状態から閉状態へあるいはこの逆に閉状態から開状態へと切換えても燃焼安定領域を外れることがないことを意味する。
【0012】
しかしながら、右下、左下の状態で燃焼安定領域が大きくなっているのは、空燃比をリッチ化すると共にEGR率を小さくすることによって燃焼ガスが高温化しているからであり、この燃焼ガスの高温化によってNOx排出量が増大する。同図には等NOx排出量線を書き入れており、その線幅が太くなるほどNOx排出量が増大することを表している。右下、左下の状態では右上、左上の状態より燃焼安定領域を横切る、等NOx排出量線の線幅が太く、NOx排出量が増大していることがわかる。
【0013】
このように、成層燃焼域のうち成層燃焼の設定条件が異なる隣り合う運転域の境界を横切る際にも成層燃焼を持続させようとして、成層燃焼の設定値を甘く設定したのでは、NOx排出量が多くなり、排気を悪化させてしまうのである。
【0014】
そこで本発明は、成層燃焼のうち成層燃焼の設定条件が異なる隣り合う運転域の境界を横切る際に、一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせ、この均質燃焼状態でガス流動制御弁を切換えると共に、理論空燃比での均質燃焼時に排出されるNOxは触媒により還元浄化することにより、成層燃焼の設定条件が異なる隣り合う運転域の境界を横切る際にも、成層燃焼を持続させつつNOx排出量の増大を防止することを目的とする。
【0015】
一方、上記の従来装置はガス流動制御弁が中間開度のときに、生成される旋回流の質が低下してしまうことを解決課題とするのに対して、隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件が異なる場合に、その隣り合う運転域の境界を横切る際に成層燃焼状態が不安定にならざるを得ない点を解決課題とする本発明とは技術的思想が異なる。
【0016】
【問題点を解決するための手段】
本発明は、所定運転域でリーン空燃比での成層燃焼を行う筒内直接噴射式火花点火エンジンにおいて、成層燃焼を行う所定運転域のうち隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件が異なる場合に、その隣り合う運転域の境界を横切る際に、一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせる一時的理論空燃比運転実行手段と、この理論空燃比での均質燃焼時に排気中に含まれるNOxを還元する触媒とを備える。
【0017】
【発明の効果】
成層燃焼域のうち隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件が異なる場合に、その隣り合う運転域の境界を横切る際には、燃焼状態が過渡的に変化するため、噴射時期と点火時期とで決まる安定燃焼領域を外れる可能性があるのであるのであるが、本発明では一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせるので、その隣り合う運転域の境界を横切る際にも燃焼状態が安定し、かつ理論空燃比での均質燃焼時に排気中に含まれるNOxは触媒により還元浄化されるので、成層燃焼域のうち成層燃焼の設定条件が異なる隣り合う運転域の境界を横切る際にも、成層燃焼を持続させつつNOxの増大をも防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は筒内直接噴射式火花点火エンジンの概略構成図である。
【0020】
図1に示すように、シリンダヘッド2と、シリンダブロック3に形成されるシリンダ4と、このシリンダ4を摺動するピストン5との間に燃焼室6が画成される。点火プラグ7が燃焼室中央部に臨み、ペントルーフ型に傾斜する燃焼室天井壁には2本の吸気ポート8a、8bと2本の排気ポート9a、9bが点火プラグ7を挟むようにして互いに対向して設けられる。10a、10bは吸気ポート8a、8bの燃焼室6への開口部を開閉するための吸気弁、11a、11bは排気ポート9a、9bの燃焼室6への開口部を開閉するための排気弁、13は吸気ポート8a、8bの途中にあって閉じられたとき吸気を絞る、ガス流動制御弁としてのタンブルコントロールバルブ(以下単に「TCV」という。)である。
【0021】
燃焼室6天井壁にはその側部から燃焼室6に臨む燃料噴射弁12が設けられる。燃料噴射弁12は各吸気弁10a、10bの側方で、かつ各吸気ポート8a、8bの間に位置して燃焼室6に臨んでいる。
【0022】
当該エンジンでは図3に示す低中回転速度域かつ低負荷域である領域R1及びR2で成層燃焼運転を行うが、この成層燃焼域(R1、R2)においては、燃焼室6内のガス流動を利用して燃料噴射弁12より燃焼室6内に直接噴射された燃料の噴霧をまとめつつ点火プラグ7近傍へと導き、この過程で混合気の塊となったものに対して着火している。燃料噴射弁12より噴射された燃料を混合気の塊状態にして点火プラグ7に誘導する方法は、エアガイド式といわれるものである。
【0023】
エアガイド式による混合気の形成方法を図2を参照しながら具体的に説明すると、同図は左側より右側に向けて時間的経過を表している。
【0024】
TCV開時:
図3に示す領域R1ではもともとガス流動場は弱いこともあり、このガス流動を用いて混合気を形成することは困難であるので、噴霧の貫徹力により混合気を形成する。すなわち、上死点に近づくにつれて形成される、シリンダヘッド2とピストンキャビティ5aに挟まれた空間内に燃料を噴射するため、噴射時期は遅角側に設定している(圧縮行程噴射)。この狭い空間に噴射された噴霧は噴霧の貫徹力だけで混合気を形成しつつ点火プラグ7へと到達する(図2上段参照)。
【0025】
TCV閉時:
図3に示す領域R2になるとガス流動を利用できる。すなわち、TCV13を閉じると各吸気ポート8a、8bの上側半分からのみ吸気が流入することになって吸気の流速が早まり、ピストン5の冠部上でシリンダ4中心線と直交する軸を中心に旋回するタンブルが十分な強さで生起する(図2下段最左端の矢印参照)。このタンブルを助長するようにキャビティ5aは浅皿状に形成されている。このため、燃料噴射弁12から噴射される燃料噴霧は、燃料噴射弁12の中心線を中心とする円錐状に拡がる。上記のタンブルによって燃料噴射弁21より噴射された燃料噴霧は、点火プラグ7のある方向に導かれ、その過程で着火可能な混合気塊を形成する。そして、この点火プラグ7近傍に達したこの混合気塊に対して点火を行うことで、安定した成層燃焼運転が可能になる。
【0026】
この場合、領域R2では領域R1より燃料噴射量が多くなりその分だけ噴射期間が長くなる。その際、燃料が冠面に付着するとスモークや未燃燃料の発生の原因となるのでこれを防ぐために噴射開始時期を領域R1より進角側に設定し(圧縮行程噴射)、ピストン冠面の位置が、より下がった状態で混合気形成を行う。点火時期についても同様に領域R1より進角側への設定となる。
【0027】
このように、成層燃焼域のうち隣り合う2つの領域R1とR2とでは、混合気の形成方法が異なるため、隣り合う運転域でありながら成層燃焼の設定条件(TCV13の作動状態、空燃比、EGR率、噴射時期、点火時期等)が大きく異なっている。
【0028】
これに対して、図3に示す領域R3、R4(均質燃焼域)になると、TCV13を開いた状態でも燃焼室6内に強いタンブルが発生するため、TCV13を開いた状態とし、燃焼室6内にタンブルを作りながら吸気行程で燃料を噴射することにより、燃焼室6全体に理論空燃比付近の均質な混合気を生成し、これによって均質燃焼運転を行う。
【0029】
ここで、均質燃焼域での目標空燃比は基本的に理論空燃比(14.7)である。これは理論空燃比付近の混合気の燃焼のとき、排気中のNOx、HC、COを排気通路21に設けた三元触媒(後述するNOxトラップ触媒31に付加されている)で同時に浄化できるためである。
【0030】
一方、成層燃焼域での目標空燃比は14.7より大きな値であり、このリーンな空燃比のとき多く排出されるNOxを低減するためEGR(排気還流)を行う。なお、図3では領域R3においてもEGRを行っている。成層燃焼域でのEGRがNOx低減を主目的とするものであるのに対して、領域R3でのEGRは燃費向上を主目的とするものである。
【0031】
なお、図3において「λ」は空気過剰率を表す。この空気過剰率λと空燃比との間には次の関係がある。
【0032】
空気過剰率λ=空燃比/理論空燃比…(1)
例えば領域R3では目標空燃比が理論空燃比であるので、これを(1)式に代入するとλ=1となる。また、領域R4では目標空燃比が理論空燃比または理論空燃比よりもリッチ側の値、つまり14.7以下の値であるから、これを(1)式に代入するとλ≦1となる。
【0033】
図4は筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御システム図である。
【0034】
エンジンには、点火装置を備える。点火装置は、バッテリからの電気エネルギーを蓄える点火コイル22と、パワートランジスタと、燃焼室6の天井に設けられた点火プラグ7とからなり、エンジンコントローラ41より点火信号がパワートランジスタに送られ、点火コイル22の一次電流が遮断されたとき(点火時期)、点火コイル22の二次側に高電圧が発生し、この高電圧を受けて、点火プラグ7が火花放電を行う。なお、図4では最下段に位置する気筒のみの点火装置を記載しているが、残りの気筒も同様であるため、記載を省略している。
【0035】
エンジンにはまたEGR装置としてのEGR弁26を備える。EGR弁26は排気通路23と吸気通路24を連通するEGR通路25に介装され、EGR弁アクチュエータ27により駆動されるもので、EGR弁26が所定のEGR領域で開かれると、排気の一部が不活性ガスとして吸気通路24に導かれ、この不活性ガスにより成層燃焼域(領域R1、R2)では燃焼ガス温度が低下してNOxの発生が抑えられ、またこの不活性ガスにより均質燃焼域(領域R3)ではポンピングロスが低下してそのぶん燃費が向上する。
【0036】
EGR通路25の分岐口より下流の排気通路23にはNOxトラップ触媒31を備える。NOxトラップ触媒31は、流入する排気の空燃比がリーンであるとき排気中のNOxをトラップし、流入する排気の空燃比が理論空燃比またはリッチ空燃比であるとき、トラップしていたNOxを脱離すると共に、この脱離したNOxを排気中のHC、COを還元剤として用いて還元浄化する。このNOxトラップ触媒31には三元触媒機能が付加されている。NOxトラップ触媒31と別体で三元触媒を設けてもかまわない。
【0037】
アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)に応じたエンジントルクが発生するようにするため、また成層燃焼域と均質燃焼域との切換時にトルク段差を生じさせないようにするために吸気通路24にスロットル弁28とこれを駆動するスロットルアクチュエータ29とからなる電子制御式スロットル装置が設けられている。
【0038】
アクセルセンサ42からのアクセル開度(エンジン負荷相当)の信号、クランク角センサ43からの基準位置の信号(点火時期や燃料噴射時期を制御するための信号となる)やクランク角1°毎の信号、エアフローメータ44からの信号等が入力されるエンジンコントローラ41では、運転条件に応じ
▲1▼燃料噴射弁12を介しての燃料噴射量と燃料噴射時期の制御、
▲2▼点火プラグ7を介しての点火時期の制御、
▲3▼EGR弁26を介してのEGR弁開度(EGR率)の制御、
▲4▼スロットル弁28を介してのスロットル弁開度の制御、
▲5▼NOxトラップ触媒31の再生処理
をそれぞれ行うと共に、TCV13の開閉を制御する。
【0039】
上記▲1▼の燃料噴射制御については次の通りである。図3に示す成層燃焼域(R1とR2)、均質燃焼域(R3とR4)の各領域毎に最適な目標当量比Tfbyaを演算し、この目標当量比Tfbyaが得られるように燃料噴射量を演算し、この燃料噴射量を燃料噴射弁12の開弁期間に変換し、この開弁期間を含んだパルス信号を燃料噴射弁12の駆動回路(図示せず)に出力する。これに伴って、駆動回路からパルス信号に対応する駆動電流が燃料噴射弁12のアクチュエータに送られ、燃料噴射弁12のニードルがリフトして噴孔を開弁する。燃料噴射パルス幅が長いほど燃料噴射弁12の開弁期間が長くなり、燃料噴射量が増えるようになっている。このように、実際の制御上においては空燃比でなく当量比を使っている。この当量比と空燃比との間には後述する(2)式の関係がある。
【0040】
また、成層燃焼域で燃料噴射時期をピストン5が上昇する圧縮行程の後半に設定し、均質燃焼域で燃料噴射時期をピストン5が下降する吸気行程に設定する。
【0041】
上記▲2▼、▲3▼、▲4▼の制御については次の通りである。アクセル開度とエンジン回転速度に基づいて点火時期を演算する。アクセル開度とエンジン回転速度に基づいて目標EGR率を演算し、この目標EGR率が得られるようにEGR弁開度を演算する。アクセル開度とエンジン回転速度に基づいて目標トルクを演算し、この目標トルクに基づいて目標空気量を演算し、この目標空気量が得られるようにスロットル弁開度を演算する。
【0042】
上記▲5▼の再生処理については次の通りである。NOxとラップ触媒31にトラップされたNOx量がある程度溜まったタイミングで成層燃焼域にあっても空燃比を理論空燃比またはリッチ空燃比へと一時的に切換え、これにより定期的にNOxトラップ触媒31を再生する。
【0043】
このように上記▲1▼〜▲5▼の各制御を行うものを前提として、本実施形態ではさらに、図3に示す成層燃焼域のうち隣り合う運転域R1、R2の境界を横切る際に一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせ、その状態でTCV13を切換える。すなわち、領域R1(TCV13を開いている一方の運転域)より領域R2(TCV13を閉じている他方の運転域)への移行時に、TCV13の作動状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第1の処理を行い、その後にTCV13を閉じると共にEGR率を領域R2に適合した値へと変化させる第2の処理を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第3の処理を行う。また、領域R2より領域R1への移行時に、TCV13の作動状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第4の処理を行い、その後にTCV13を開くと共にEGR率を領域R1に適合した値へと変化させる第5の処理を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第6の処理を行う。
【0044】
これを図5を参照しながら説明すると、図5において左半分は領域R1より領域R2への移行時に、また右半分はこの逆への移行時にTCV13の作動状態、空燃比A/F、EGR率、噴射時期IT、点火時期Advがそれぞれどのように変化するのかを示した波形図である。なお、噴射時期ITと点火時期Advとは上側が進角側である。
【0045】
この場合、図5右半分に示す一連の操作は、図5左半分に示す一連の操作のちょうど逆を行うものであり、従って、図5左半分での一連の操作のみを説明する。
【0046】
図5左半分において図示のように各タイミングにt1〜t6を割り振り、t1のタイミングで運転条件が領域R1より領域R2へと移行するものとする。
【0047】
〈1〉t1〜t2直前まで:これは上記第1の処理である。すなわち、領域R1より領域R2へと移行するt1のタイミングでは、TCV13をまだ閉じない。TCV13は開状態を保ったままt1のタイミングより空燃比A/Fを領域R1での適合値から理論空燃比(λ=1)になるまで徐々に小さくする。空燃比A/Fを所定の傾きで変化させているのは、領域移行時のトルク変動を防止するためである。
【0048】
また空燃比を小さくするのに合わせて点火時期Advをt1より徐々に遅角側に移している。これは、エンジンの発生するトルクを領域移行前後で一定に保つためである。すなわち、点火時期が同じであれば空燃比が小さくなるほどトルクが大きくなるので、このトルクの増大を、点火時期をリタードすることによって抑制しトルクを一定に保つのである。
【0049】
〈2〉t2〜t5直前まで:これは上記第2の処理である。すなわち、空燃比A/Fが理論空燃比に達するt2のタイミングよりTCV13を閉じると共に、EGR率を領域R2での適合値へと変化させ、かつ噴射時期ITを圧縮行程から吸気行程へと切換え、さらに点火時期Advを理論空燃比での均質燃焼状態にふさわしい値へと切換える。
【0050】
TCV13はTCVアクチュエータへの通電に対して所定の傾きをもって閉じている。この傾きはTCVアクチュエータの変化速度で決まる。また、目標EGR率がステップ変化するのに対して、実際のEGR率(図5左半分第3段目に示す実線は実際のEGR率の動きである)は所定の傾きをもって小さくなっているが、この傾きもEGR弁アクチュエータ27の変化速度で決まっている。TCV13がt3のタイミングで全閉位置に達するのに対して、EGR率がt4のタイミングで領域R2での適合値に達しているのは、TCV13とEGR率とではEGR率の応答のほうが遅いためである。t4からt5直前までの区間は状態が安定するのを待つ時間である。
【0051】
〈3〉t5〜t6まで:これは上記第3の処理である。すなわち、空燃比A/Fを理論空燃比から領域R2での適合値になるまで徐々に大きくすると共に、点火時期Advをt2直前の大きく遅角された値Cへとステップ的に切換えた後に徐々に進角側に移し、かつ噴射時期ITを吸気行程から圧縮行程へと戻す。空燃比A/Fを所定の傾きで変化させているのは領域移行前後でのトルク変動を防止するため、また空燃比A/Fを大きくするのに合わせて点火時期Advを徐々に進角側に移すのはトルクを一定に保つためである。
【0052】
なお、空燃比A/Fが理論空燃比となるt2のタイミングとなってから噴射時期ITと点火時期Advを、理論空燃比での均質燃焼にふさわしい値へと切換えるのではなく、t2よりも早いタイミングで切換えているのは、成層燃焼状態より理論空燃比に向けて空燃比をリッチ化すると、成層燃焼において形成される混合気塊が濃すぎて安定的に燃えなくなるので、成層燃焼を諦めて燃焼が安定して行われる均質燃焼へと早めに移すためである(エアガイド式では既知)。
【0053】
このように本実施形態では、領域R1より領域R2へと移行させる際に、TCV13は開状態にしたままで、空燃比をまず理論空燃比へと切換え、この理論空燃比の状態でTCV13を閉じ、その後に空燃比を領域R2での適合値へと移すようにしているのであるが、比較のため本実施形態とは異なる方法を図6を参照しながら説明する。
【0054】
図6はTCV13の作動状態の違いによる燃焼安定領域の差異を示す。ここで、横軸は噴射時期IT(右側が遅角側)、縦軸は点火時期Adv(上側が進角側)であり、これらのバランスの上に燃焼安定領域が定まっている。図示の4重丸のうち2重丸の部分のみが燃焼安定領域であり、その外側は燃焼不安定領域である。
【0055】
領域R1、R2では燃費向上のため空燃比はリーン状態にあり、このリーン状態で多く発生するNOxを低減するためEGR率を大きくしている。このため、領域R1、R2とも燃焼安定領域は狭く、領域R1での燃焼安定領域は右上に示すように、これに対して領域R2での燃焼安定領域は左上に示すようになる。両者を比較すると、左上のほうが2重丸の領域が少しだけ大きくなっているのでそれだけ燃焼安定領域が広いことを示す。また、左上の燃焼安定領域よりも右上の燃焼安定領域のほうが点火時期が進角側に偏っていることがわかる。
【0056】
さて、この2つの領域R1、R2で共に点火時期を変えずに燃焼安定領域でいられる点火時期があるのか否かを調べるために引いたのが図示の2本の平行線である。上側の線より進角側にあれば領域R1では燃焼安定領域に入り、下側の線より遅角側であれば領域R2で燃焼安定領域に入る。ということは、2つの領域R1、R2で共に点火時期を変えずに燃焼安定領域でいられる点火時期はなく、従って燃焼を安定に保ちつつ、かつ点火時期を変更することなく右上に示す状態より左上に示す状態へと、この逆に左上の状態より右上の状態へと移すことはできない。これを逆にいうと、点火時期と噴射時期を同一に保ちつつ燃焼安定領域の一部が重なるようにしてやれば、点火時期と噴射時期を変えることなく燃焼を安定に保ちつつ右上より左上へと、この逆に左上より右上へと状態を移すことができる。
【0057】
このため、右下に示す状態と左下に示す状態とを追加する。右下は右上に示す状態に対して、左下は左上に示す状態に対して空燃比をリッチ化すると共にEGR率を小さくしたものである。これらの操作の結果、燃焼安定領域が右下、左下の状態とも大きくなっている。従って、これら右下、左下の2つの状態で共に点火時期を変えることなく燃焼安定領域でいられる点火時期があるのか否かを調べるために図示の2本の平行線を引いてみると、今度は上の直線と下の直線の間の点火時期であれば、右下、左下の2つの状態で共に燃焼安定領域でいられる。このことは、右下と左下の間では点火時期Advと噴射時期ITを一定に保った状態でTCV13を開状態から閉状態へ、あるいはこの逆に閉状態から開状態へと切換えても燃焼安定領域を外れることがないことを意味する。
【0058】
これより、TCV13が開状態にある右上の状態よりTCV13が閉状態にある左上の状態へと、あるいはこの逆へと燃焼安定領域を外れることなく移すには、右下、左下の状態を途中に加えればよいこと分かる。すなわち、TCV13が開状態にある右上の状態よりTCV13は開状態のまま空燃比のリッチ化とEGR率の減少化とを行って右下の状態に移し、この状態でTCV13を開状態より閉状態へと切換えて左下の状態に移し、再び空燃比を領域2での適合値へとリーン化すると共にEGR率を領域2での適合値へと大きくしてやれば左上の状態に移る。また、TCV13が閉状態にある左上の状態よりTCV13は閉状態のまま空燃比のリッチ化とEGR率の減少化を行って左下の状態に移し、この状態でTCV13を閉より開へと切換えて右下の状態に移し、再び空燃比を領域R1での適合値へとリーン化すると共にEGR率を領域R1での適合値へと大きくしてやれば右上の状態に移る。
【0059】
しかしながら、このように領域移行途中に空燃比をリッチ化すると共にEGR率を小さくする操作を挟む方法において、右下、左下の状態で燃焼安定領域が大きくなっているのは燃焼ガスが高温化しているからであり、この燃焼ガスの高温化によってNOx排出量が増大する。同図には等NOx排出量線を書き入れており、その線幅が太くなるほどNOx排出量が増大することを表している。右下、左下の状態では右上、左上の状態より燃焼安定領域を横切る、等NOx排出量線の線幅が太く、NOx排出量が増大していることがわかる。
【0060】
これに対して本実施形態による領域移行方法によれば、安定した燃焼の得られる理論空燃比での均質燃焼状態において、TCV13を開状態より閉状態へと切換えることで、TCVの切換に伴う燃焼状態の不安定が抑制される。また、理論空燃比での均質燃焼であれば、そのとき発生するNOxは、NOxトラップ触媒31に付加されている三元触媒機能によりその燃焼ガス中に含まれるHC、COを用いて効率よく浄化することができる。
【0061】
エンジンコントローラ41で実行される領域移行時の制御をフローチャートに基づいて詳述する。ただし、領域R1より領域R2への移行時についてだけ説明する。
【0062】
図7は領域移行中フラグを設定するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0063】
ステップ1では運転条件(エンジンの回転速度と負荷とから定まる)が成層燃焼域(図3に示す領域R1とR2)にあるかどうかみる。成層燃焼域になければそのまま今回の処理を終了する。
【0064】
成層燃焼域にあるときにはステップ2に進み領域移行切換中フラグ(ゼロに初期設定)をみる。ここでは領域移行中フラグ=0であるとして述べると、このとき、ステップ3、4に進んで今回に運転条件が領域R2にあるか否か、また前回は運転条件が領域R1にあったか否かをみる。今回に運転条件が領域R2にありかつ前回に運転条件が領域R1にあったとき、つまり領域R1より領域R2に移行した直後であるときにはステップ5に進み領域移行中フラグ=1とする。この領域移行中フラグは領域R1より領域R2への移行時に1となり、後述するように領域移行制御を終了するときにゼロとなるフラグである。
【0065】
今回に運転条件が領域R2にないときや、今回、前回とも領域R2にあるときにはそのまま今回の処理を終了する。
【0066】
図8は目標当量比Tfbyaを演算するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0067】
なお、図6では空燃比で説明したが、実際の制御上では当量比を使っている。この当量比と空燃比との間には次の関係がある。
【0068】
当量比=14.7/空燃比…(2)
(2)式より空燃比が理論空燃比(14.7)のとき当量比は1.0となる。空燃比が理論空燃比よりリッチ側の値であるときには当量比は1.0を超える値に、この逆に空燃比が理論空燃比よりリーン側の値であるときには当量比は1.0未満の値になる。
【0069】
ステップ11では運転条件に基づいて目標当量比の基本値Tfbya0を演算する。例えば、均質燃焼域と成層燃焼域とに分けて別々に目標当量比基本値のマップを備えさせ、運転条件がいずれの燃焼域にあるのかを判定した後、そのときのエンジンの回転速度と負荷とからその判定した燃焼域のマップを検索することにより目標当量比基本値Tfbya0を求めればよい。
【0070】
ステップ12、13では今回に領域移行中フラグ=1であるか否か、また前回に領域移行中フラグ=0であったか否かをみる。今回に領域移行中フラグ=0であるときにはステップ14に進み基本値Tfbya0をそのまま目標当量比Tfbyaに入れる。
【0071】
今回に領域移行中フラグ=1でありかつ前回に領域移行中フラグ=0であったとき、つまり領域移行中フラグがゼロより1へと切換わった直後(運転条件が領域R1より領域R2に移行した直後)であるときにはステップ15に進み基本値Tfbya0を領域移行中の目標当量比の前回値を現す「TfbyaTR(前回)」に入れ、ステップ16で、
TfbyaTR=TfbyaTR(前回)+Δ1…(3)
ただし、Δ1:正の所定値(例えば一定値)、
の式により領域移行中の目標当量比TfbyaTRを演算し、このTfbyaTRをステップ17において目標当量比Tfbyaに入れる。
【0072】
ここで、運転条件が領域R1よりR2に移行したタイミングではステップ11で演算される基本値Tfbya0は、理論空燃比よりもリーン側の空燃比で運転される成層燃焼時の値であるため1.0未満の正の値である。このため、(3)式右辺第1項のTfbyaTR(前回)も1.0未満の正の値である。
【0073】
一方、今回、前回とも領域移行中フラグ=1であるときにはステップ12、13よりステップ18、19に進んで今回に復帰フラグ(ゼロに初期設定)=1であるか否か、また前回に復帰フラグ=0であったか否かをみる。ここで、復帰フラグは、後述するように目標当量比Tfbyaが1.0に到達したタイミングより所定時間が経過したとき1となるフラグである(図10のステップ50、51参照)。
【0074】
領域R1より領域R2に移行してすぐは復帰フラグ=0であるので、ステップ20に進み、領域移行中の目標当量比TfbyaTRと1.0を比較する。ここで、1.0は理論空燃比のときの当量比の値である。
【0075】
運転条件が領域R1よりR2に移行してしばらくはTfbyaTRが1.0未満の値であるので、ステップ16、17の処理を繰り返す。
【0076】
上記(3)式は運転条件が領域R1よりR2に移行したタイミングだけでなく、このように領域R2になってからも繰り返し行われるのであり、領域移行中の目標当量比TfbyaTRを演算周期当たりΔ1ずつ漸増させる式である。これは図5左半分の第2段目のt1よりt2直前までの操作を行うものである。これによって空燃比は理論空燃比へと向かう。
【0077】
ステップ16での繰り返し操作の結果、やがて領域移行中の目標当量比TfbyaTRが1.0以上となればステップ20よりステップ21に進み理論空燃比到達フラグ(ゼロに初期設定)=1とした後、目標当量比Tfbyaに1.0を入れる。ここで、理論空燃比到達フラグ=1は領域移行中の目標当量比TfbyaTRが1.0つまり空燃比が理論空燃比に到達したことを表す。
【0078】
また、このあと復帰フラグ=1となるまでにはしばらく時間を要するため、このときにはステップ20〜22の操作を繰り返す。これは図5左半分の第2段目のt2よりt5直前までの操作を行うものである。これによって空燃比は理論空燃比に維持される。
【0079】
今回に復帰フラグ=1でありかつ前回に復帰フラグ=0であったとき、つまり復帰フラグがゼロより1へと切換わった直後であるときにはステップ23に進み、1.0を領域移行中の目標当量比の前回値を現す「TfbyaTR(前回)」に入れ、ステップ24で、
TfbyaTR=TfbyaTR(前回)−Δ1…(4)
ただし、Δ1:正の所定値(例えば一定値)、
の式により領域移行中の目標当量比TfbyaTRを演算し、このTfbyaTRの値をステップ25において目標当量比Tfbyaに入れる。
【0080】
一方、今回、前回とも復帰フラグ=1であるときにはステップ18、19よりステップ26に進んで領域移行中の目標当量比TfbyaTRとマップ値であるTfbya0を比較する。当初はTfbyaTRがTfbya0より大きいのでこのときにはステップ24、25の操作を実行する。
【0081】
上記の(4)式は復帰フラグがゼロより1へと切換わったタイミングだけでなく、このように今回、前回とも復帰フラグ=1であるときにも繰り返し行われるのであり、領域移行中の目標当量比TfbyaTRを演算周期当たりΔ1ずつ漸減させる式である。これは図5左半分の第2段目のt5よりt6直前までの操作を行うものである。これによって空燃比は理論空燃比より領域R2での適合値へと向かう。
【0082】
ステップ24での領域移行中の目標当量比TfbyaTRの漸減操作によりやがてTfbyaTRがTfbya0以下になるとステップ26よりステップ27に進み領域移行中の制御を終了するため、領域移行中フラグ、理論空燃比到達フラグ、EGR到達フラグ、復帰フラグを総てゼロに戻した後、基本値Tfbya0をそのまま目標当量比Tfbyaに入れる。なお、EGR到達フラグについては後述する。
【0083】
このようにして演算される目標当量比TFBYAは、図示しない燃料噴射パルス幅Tiの演算フローにおいて用いられ、例えば
Ti=Tp×Tfbya×(α+αm−1)×2+Ts…(5)
ただし、Tp:基本噴射パルス幅、
α:空燃比フィードバック補正係数、
αm:空燃比学習値、
Ts:無効パルス幅、
の式によりシーケンシャル噴射時の燃料噴射パルス幅Tiが演算される。
【0084】
図9はTCV13を開閉駆動するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0085】
ステップ31では運転条件が成層燃焼域にあるか否か、ステップ32、33では領域移行中フラグと理論空燃比到達フラグをみる。
【0086】
運転条件が成層燃焼域にあり、領域移行中フラグ=1かつ理論空燃比到達フラグ=0である場合にはステップ31、32、33よりステップ34に進んでTCVを開状態とする。これは図5左半分の第1段目のt1よりt2直前までの操作を行うものである。これによってTCV13は開状態に保持される。
【0087】
運転条件が成層燃焼域にあり、領域移行中フラグ=1かつ理論空燃比到達フラグ=1である場合にはステップ31、32、33よりステップ35に進んでTCV13を閉状態とする。これは図5左半分の第1段目のt2以降の操作を行うものである。
【0088】
このように、領域R1より領域R2への移行当初にTCV13は開状態に保ったままであり、目標当量比Tfbyaが1.0と一致したタイミングでTCV13が閉じられる。
【0089】
一方、領域移行中フラグ=0であるときにはステップ32よりステップ36に進んで運転条件が領域R1、R2のいずれにあるのかをみる。運転条件が領域R1にあるときにはステップ37に進んでTCV13を開き、運転条件が領域R2にあるときにはステップ38に進んでTCV13を閉じる。また、成層燃焼域にないときにもステップ31よりステップ37に進んでTCV13を開く。これらは、領域移行中を除いた運転条件でのTCV13に対する操作である。
【0090】
図10は目標EGR率を演算するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0091】
ステップ41では運転条件がEGR領域にあるか否かをみる。EGR領域は図3に示す領域R1、R2、R3である。運転条件がEGR領域にないときにはステップ42に進んで目標EGR率Megr=0とする。
【0092】
運転条件がEGR領域にあるときにはステップ41よりステップ43に進み、目標EGR率Megrを演算する。例えば、目標EGR率マップを備えさせ、そのときのエンジンの回転速度と負荷とからその目標EGR率マップを検索することにより目標EGR率Megrを求めればよい。
【0093】
ステップ44では領域移行中フラグをみる。領域移行中フラグ=0であるときにはそのまま今回の処理を終了する。
【0094】
領域移行中フラグ=1であるときにはステップ45に進んでEGR到達フラグ(ゼロに初期設定)=1であるか否かをみる。ここでは、EGR到達フラグ=0であるとして述べると、このときステップ46に進んで実EGR率Regrを演算する。EGR弁アクチュエータ27に応答遅れがあるため実EGR率は応答遅れを持って目標EGR率に追従するので、実EGR率は目標EGR率の一次遅れ処理で求めればよい。
【0095】
ステップ47では、このようにして演算した実EGR率Regrと目標EGR率Megrとを比較する。実EGR率Regrと目標EGR率Megrとを比較するのは実EGR率が領域R2での目標EGR率に到達したか否かをみるためである。実EGR率が目標EGR率以下となれば実EGR率が目標EGR率に追いついたと判断する。実EGR率が目標EGR率に追いついたタイミングは図5左半分の第3段目でいうとt4である。このときにはステップ48、49に進んでEGR到達フラグ=1とすると共にタイマを起動する。すなわち、EGR到達フラグ=1は実EGR率が目標EGR率に追いついたことを表す。タイマは実EGR率が目標EGR率に追いついてからの経過時間(つまりt4からの経過時間)を計測するためのものである。
【0096】
このEGR到達フラグ=1により次回にはステップ45よりステップ50に進み、タイマ値と所定時間を比較する。ここで、所定時間は図5左半分の第3段目に示したように、空燃比を理論空燃比にした状態でTCV13を閉じると共に目標EGR率を領域R2での適合値へと小さくした後に、状態が安定するまでの時間である。
【0097】
タイマ値が所定時間未満であるときにはそのまま今回の処理を終了し、やがてタイマ値が所定時間以上になるとステップ51に進んで復帰フラグ=1とする。図5左半分でいうと、復帰フラグ=1となるタイミングはt5である。
【0098】
この復帰フラグ=1により前述したように目標当量比Tfbyaが1.0より領域R2での値である基本値Tfbya0へと戻される。
【0099】
図示しない目標EGR弁開度を演算するフローでは、このようにして演算される目標EGR率Megrに基づいて目標EGR弁開度を演算し、この目標EGR弁開度をEGR弁アクチュエータ27への指令値に変えて出力する。
【0100】
図11は噴射時期を設定するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0101】
ステップ61では運転条件が成層燃焼域にあるか否かを、またステップ62では領域移行中フラグをみる。運転条件が成層燃焼域にないときにはステップ63に進んで吸気行程噴射を設定する。
【0102】
運転条件が成層燃焼域にありかつ領域移行中でないときには基本的に圧縮行程噴射であるので、ステップ61、62よりステップ64に進み圧縮行程噴射とする。
【0103】
一方、図5左半分の第4段目に示したようにt1よりt6までの領域移行中において図示のA、Bの各期間は圧縮行程噴射、それ以外の期間は理論空燃比での均質燃焼に最適な吸気行程噴射とするので、ステップ65、66で期間Aであるか否かを、またステップ67、68で期間Bであるか否かを確かめる。
【0104】
理論空燃比到達フラグ=0かつ目標当量比Tfbyaが所定値(例えば0.8)以下である、つまり図5左半分の第4段目のA期間であるときにはステップ64に進み圧縮行程噴射とし、また理論空燃比到達フラグ=1かつ復帰フラグ=1かつ目標当量比Tfbyaが0.8以下である、つまり図5左半分の第4段目のB期間であるときにはステップ69に進み圧縮行程噴射とする。
【0105】
これに対して、
(a)理論空燃比到達フラグ=0かつ目標当量比Tfbyaが0.8を超えている(図5左半分の第4段目のA期間の終了よりt2直前まで)、
(b)理論空燃比到達フラグ=1かつ復帰フラグ=0である(図5左半分の第4段目のt2よりt5直前まで)、
(c)理論空燃比到達フラグ=1かつ復帰フラグ=1かつ目標当量比Tfbyaが0.8を超えている(図5左半分の第4段目のt5よりB期間の開始直前まで)
のときにはステップ63に進み吸気行程噴射とする。
【0106】
図12は点火時期を演算するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
【0107】
ステップ71では運転条件に基づいて点火時期の基本値ADV0を演算する。例えば、点火時期基本値マップを備えさせ、そのときのエンジンの回転速度と負荷とからその点火時期基本値マップを検索することにより点火時期基本値ADV0を求めればよい。
【0108】
ステップ73、74では今回に領域移行中フラグ=1であるか否か、また前回に領域移行中フラグ=0であったか否かをみる。今回に領域移行中フラグ=0であるときにはステップ72に進み点火時期基本値ADV0をそのまま点火時期ADVに入れる。
【0109】
今回に領域移行中フラグ=1でありかつ前回に領域移行中フラグ=0であったとき、つまり領域移行中フラグがゼロより1へと切換わった直後(運転条件が領域R1より領域R2に移行した直後)であるときにはステップ75に進みADV0を領域移行中の点火時期の前回値を現す「ADVTR(前回)」に入れ、ステップ76で、
ADVTR=ADVTR(前回)−Δ2…(6)
ただし、Δ2:正の所定値(例えば一定値)、
の式により領域移行中の点火時期ADVTRを演算し、このADVTRをステップ77において点火時期ADVに入れる。
【0110】
一方、今回、前回とも領域移行中フラグ=1であるときにはステップ73、74よりステップ78、79に進んで理論空燃比到達フラグをみると共に目標当量比Tfbyaと0.8を比較する。
【0111】
理論空燃比到達フラグ=0かつ目標当量比Tfbyaが0.8以下のときにはステップ76、77の操作を実行する。
【0112】
上記(6)式は運転条件が領域R1よりR2に移行したタイミングだけでなく、このように領域R2になってからも繰り返し行われるのであり、領域移行中の点火時期ADVTRを演算周期当たりΔ2ずつ遅角させる式である。これは図5左半分の最下段のt1よりA区間の終了直前までの操作を行うものである。これによって点火時期は遅角されてゆく。
【0113】
やがて、理論空燃比到達フラグ=0かつ目標当量比Tfbyaが0.8を超えるとステップ80に進み復帰時の点火時期の進角処理に備えてTfbyaが0.8を超える直前のADVTRを初期値に移し、ステップ81で点火時期基本値ADV0を点火時期ADVに入れる。
【0114】
ステップ80、81の操作は理論空燃比到達フラグ=1となるまで続く。これは図5左半分の最下段のA期間の終了よりt2直前までの操作を行うものである。これによって点火時期は理論空燃比での均質燃焼に最適な値に維持される。
【0115】
やがて、理論空燃比到達フラグ=1になるとステップ78よりステップ82、83に進んで今回に目標当量比Tfbyaが0.8以下となったか否か、また前回に目標当量比Tfbyaが0.8を超えていたか否かをみる。今回に目標当量比Tfbyaが0.8を超えているときにはステップ81の操作を実行する。
【0116】
ステップ81の操作は、理論空燃比到達フラグ=1かつ目標当量比Tfbyaが0.8以下になる直前まで続く。これは図5左半分の最下段のt2よりB期間の開始直前までの操作を行うものである。これによって点火時期は理論空燃比での均質燃焼に最適な値に維持される。
【0117】
今回に目標当量比Tfbyaが0.8以下でありかつ前回に目標当量比Tfbyaが0.8を超えていたとき、つまり今回初めて目標当量比Tfbyaが0.8以下となったときにはステップ84に進み、ステップ80で記憶している初期値を領域移行中の点火時期の前回値を現す「ADVTR(前回)」に入れ、またステップ85で初期値を点火時期ADVに移す。
【0118】
一方、今回、前回とも目標当量比Tfbyaが0.8以下であるときにはステップ82、83よりステップ86に進んで復帰フラグをみる。復帰フラグ=1であるときにはステップ87で、
ADVTR=ADVTR(前回)+Δ2…(7)
ただし、Δ2:正の所定値(例えば一定値)、
の式により領域移行中の点火時期ADVTRを演算し、このADVTRをステップ88において点火時期ADVに入れる。
【0119】
上記(7)式は今回、前回とも目標当量比Tfbyaが0.8以下でありかつ復帰フラグ=1である限り繰り返し行われるのであり、領域移行中の点火時期ADVTRを演算周期当たりΔ2ずつ進角させる式である。これは図5左半分の最下段のB期間開始よりt6直前までの操作を行うものである。これによって点火時期は領域R2での適合値へと進角されてゆく。
【0120】
やがて、復帰フラグ=0になると領域移行中を終了するので、このときにはステップ72の操作を実行する。
【0121】
このようにして演算される点火時期ADV[°BTDC]は、図示しない点火時期制御のフローにおいて用いられ、実際のクランク角がこの点火時期ADVと一致したタイミングで点火コイル22の一次側回路が遮断され、これによって点火プラグ7に火花が飛ぶ。
【0122】
ここで、本実施形態の作用を説明する。
【0123】
成層燃焼域のうち隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件が異なることがある。例えば、図3に示す領域R1とR2とではTCV13の作動状態、EGR率、空燃比、噴射時期、点火時期が異なっている。この場合に、TCV13を開いている領域R1、TCV13を閉じている領域R2とも、ある範囲の燃焼安定領域を残して最大のEGR率としており、従って領域R1とR2とで燃焼安定領域は重なっていない(図6右上、左上参照)。
【0124】
この場合に例えば領域R1よりR2へと移行させるには、TCV13の作動を開状態より閉状態へと切り換えるだけなく、同時に、少なくとも点火時期を領域R2での適合値へと変更する必要がある。
【0125】
しかしながら、燃焼状態に大きく影響するTCV13の作動状態と点火時期とを同時に変化させるのでは、燃焼状態が過渡的に大きく変化することが考えられ、噴射時期と点火時期とで決まる安定燃焼領域を外れる可能性がある。
【0126】
これに対して本実施形態(請求項1に記載の発明)では、領域R1より領域R2へとあるいはその逆へと移行させる際には、一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせている。具体的には次のように、段階的な処理を行っている(請求項6に記載の発明)。
【0127】
(1)領域R1より領域R2への移行時:TCV13の作動状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第1の処理(図5左半分においてt1よりt2直前までの処理)を行い、その後にTCV13を閉じると共にEGR率を領域R2での適合値へと変化させる第2の処理(図5左半分においてt2よりt5直前までの処理)を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第3の処理(図5左半分においてt5よりt6直前までの処理)を行い、また
(2)領域R2より領域R1への移行時:TCV13の状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第4の処理(図5右半分においてt1よりt2直前までの処理)を行い、その後にTCV13を開くと共にEGR率を領域R1での適合値へと変化させる第5の処理(図5右半分においてt2よりt5直前までの処理)を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第6の処理(図5右半分においてt5よりt6直前までの処理)を行う。
【0128】
すなわち、理論空燃比での均質燃焼では燃焼状態がよいので、この燃焼状態のよい状態でTCV13を開状態より閉状態へあるいはその逆へと切換えても、リーン空燃比での成層燃焼の状態でTCV13を開状態より閉状態へあるいはその逆へと切換える場合に比べて燃焼が悪化しにくいのであり、これにより、成層燃焼域で隣り合う運転域(R1、R2)の境界を横切る際にも燃焼状態を安定させつつ隣り合う領域間を移行させることができる。
【0129】
また、理論空燃比での均質燃焼時に発生するNOxは、NOxトラップ触媒31に付加されている三元触媒機能により排気中のHC、COを還元剤として用いて還元浄化される。
【0130】
このように、本実施形態(請求項1、6に記載の発明)によれば、成層燃焼域のうち成層燃焼の設定条件が異なる隣り合う運転域R1、R2の境界を横切る際にも、成層燃焼を持続させつつNOx排出量の増大を防止することができる。
【0131】
図13は第2実施形態の領域移行時の作用を説明するための波形図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。
【0132】
この実施形態は、図示のようにA期間、B期間のうちにD、Eの各期間を定め、このD、E期間で圧縮行程噴射に加えて吸気行程噴射を行わせるようにしたものである(請求項7に記載の発明)。
【0133】
このように、リーン空燃比での成層燃焼から理論空燃比での均質燃焼への移行時及びその逆への移行時に、吸気行程噴射と圧縮行程噴射を共に行うようにすることで、成層燃焼のリッチ限界空燃比と、均質燃焼のリーン限界空燃比が離れている場合でも、トルク段差を生じさせることなく、成層燃焼より均質燃焼へあるいはその逆へと燃焼状態を切換えることができる。
【0134】
図14は第3実施形態の領域移行時の作用を説明するための波形図で、第1実施形態の図5と置き換わるものである。
【0135】
第3実施形態は上記第1または第4の処理を行う際にリッチスパイク処理を行うものである(請求項9に記載の発明)。ここで、リッチスパイク処理とは空燃比を一時的にリッチ空燃比にする空燃比リッチ化処理のことである。第3実施形態によれば、領域移行時の制御を行う以前の成層運転中にNOxトラップ触媒31にトラップされているNOxを還元浄化してNOxとラップ触媒31を再生することができる。
【0136】
この場合、領域R2より領域R1への移行時においてリッチスパイク処理を行うタイミングを、領域R1より領域R2への移行時においてリッチスパイク処理を行うタイミングよりも早く設定している(請求項10に記載の発明)。すなわち、図14において左半分に示す領域R1より領域R2への移行時にはt2のタイミングよりリッチスパイク処理を行うのに対して、右半分に示す領域R2より領域R1への移行時にはt2のタイミングの少し手前よりリッチスパイク処理を開始している。これは、均質燃焼状態でも、TCV13が開状態にある場合とTCVが閉状態にある場合とで燃焼安定性が異なることに着目したものである。すなわち、TCV13が閉状態である場合の均質燃焼のほうが、TCV13が開状態である場合の均質燃焼より燃焼安定度が優れ、空燃比をよりリッチ化することが、かつ点火時期をよりリタード側にすることが可能であるためである。
【0137】
理論空燃比を表す水平線とリッチスパイク処理における空燃比波形とで囲まれる面積が、NOx還元剤の量に対応するので、このように、領域R2より領域R1への移行時に早期にリッチスパイク処理を開始すれば、その分、理論空燃比を表す水平線とリッチスパイク処理における空燃比波形とで囲まれる面積、つまりNOx還元剤の量を増やすことができ、これによってTCV13が閉状態にある場合のほうが、NOxの還元処理能力を高めることができる。
【0138】
請求項1に記載の一時的理論空燃比運転実行手段の機能は図8のフロー及び燃料噴射弁12により果たされている。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の筒内直噴式火花点火エンジンの概略構成図。
【図2】エアガイド式による混合気の形成方法を示す説明図。
【図3】運転領域図。
【図4】筒内直噴式火花点火エンジンの制御システム図。
【図5】本実施形態の領域移行時の作用を説明するための波形図。
【図6】TCVの作動状態の違いによる燃焼安定領域の差異を示す特性図。
【図7】領域移行フラグの設定を説明するためのフローチャート。
【図8】目標当量比の演算を説明するためのフローチャート。
【図9】TCVの開閉制御を説明するためのフローチャート。
【図10】目標EGR率の演算を説明するためのフローチャート。
【図11】噴射時期の設定を説明するためのフローチャート。
【図12】点火時期の演算を説明するためのフローチャート。
【図13】第2実施形態の領域移行時の作用を説明するための波形図。
【図14】第3実施形態の領域移行時の作用を説明するための波形図。
【図15】エアガイド式による混合気の形成方法を示す説明図。
【符号の説明】
7 点火プラグ
12 燃料噴射弁
13 TCV(ガス流動制御弁)
31 三元触媒機能付きNOxトラップ触媒
41 エンジンコントローラ
Claims (10)
- 所定運転域でリーン空燃比での成層燃焼を行う筒内直接噴射式火花点火エンジンにおいて、
成層燃焼を行う所定運転域のうち隣り合う運転域で成層燃焼の設定条件が異なる場合に、その隣り合う運転域の境界を横切る際に、一時的に理論空燃比での均質燃焼を行わせる一時的理論空燃比運転実行手段と、
この理論空燃比での均質燃焼時に排気中に含まれるNOxを還元する触媒と
を備えることを特徴とする筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置。 - EGR装置を備え、前記隣り合う運転域ではいずれもEGR率を大きくすると共に、ガス流動制御弁を備え、前記隣り合う運転域の一方でこのガス流動制御弁を開き、前記隣り合う運転域の他方でこのガス流動制御弁を閉じることを特徴とする請求項1に記載の筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置。
- EGR装置を備え、前記隣り合う運転域ではいずれもEGR率を大きく、かつ点火時期と噴射時期とで定まる燃焼安定領域が前記隣り合う運転域で重なっていないことを特徴とする請求項1に記載の筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置。
- ガス流動制御弁を開いている一方の運転域よりガス流動制御弁を閉じている他方の運転域への移行時に、ガス流動制御弁の状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第1の処理を行い、その後にガス流動制御弁を閉じると共にEGR率を前記他方の運転域に適合した値へと変化させる第2の処理を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第3の処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置。
- ガス流動制御弁を閉じている他方の運転域よりガス流動制御弁を開いている一方の運転域への移行時に、ガス流動制御弁の状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第4の処理を行い、その後にガス流動制御弁を開くと共にEGR率を前記一方の運転域に適合した値へと変化させる第5の処理を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第6の処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置。
- ガス流動制御弁を開いている一方の運転域よりガス流動制御弁を閉じている他方の運転域への移行時に、ガス流動制御弁の状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第1の処理を行い、その後にガス流動制御弁を閉じると共にEGR率を前記他方の運転域に適合した値へと変化させる第2の処理を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第3の処理を行い、またガス流動制御弁を閉じている他方の運転域よりガス流動制御弁を開いている一方の運転域への移行時に、ガス流動制御弁の状態とEGR率はそのままで理論空燃比での均質燃焼に切換える第4の処理を行い、その後にガス流動制御弁を開くと共にEGR率を前記一方の運転域に適合した値へと変化させる第5の処理を行い、その後でリーン空燃比での成層燃焼へと復帰させる第6の処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置。
- 前記第1または第4の処理を行う際に吸気行程と圧縮行程で燃料噴射を行うことを特徴とする請求項4から6までのいずれか一つに記載の筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置。
- 流入する排気の空燃比がリーンであるときに排気中のNOxをトラップし、
流入する排気の空燃比が理論空燃比またはリッチ空燃比であるときにトラップしていたNOxを放出すると共に、排気中の物質を還元剤として用いてこの放出したNOxを還元浄化するNOxトラップ触媒を備え、前記第1または前記第4の処理を行う際には空燃比を一時的にリッチ空燃比にする空燃比リッチ化処理を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置。 - 流入する排気の空燃比がリーンであるときに排気中のNOxをトラップし、
流入する排気の空燃比が理論空燃比またはリッチ空燃比であるときにトラップしていたNOxを放出すると共に、排気中の物質を還元剤として用いてこの放出したNOxを還元浄化するNOxトラップ触媒を備え、前記第1または前記第4の処理を行う際には空燃比を一時的にリッチ空燃比にする空燃比リッチ化処理を行うことを特徴とする請求項6に記載の筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置。 - 前記第4の処理を行う際に空燃比リッチ化処理を行うタイミングを、前記第1の処理を行う際に空燃比リッチ化を行うタイミングよりも早く設定することを特徴とする請求項9に記載の筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置。
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JP2002366725A JP2004197642A (ja) | 2002-12-18 | 2002-12-18 | 筒内直接噴射式火花点火エンジンの制御装置 |
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JP (1) | JP2004197642A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007291990A (ja) * | 2006-04-26 | 2007-11-08 | Mazda Motor Corp | 吸気制御弁開度推定装置 |
JP2015137611A (ja) * | 2014-01-23 | 2015-07-30 | トヨタ自動車株式会社 | 内燃機関の制御装置 |
-
2002
- 2002-12-18 JP JP2002366725A patent/JP2004197642A/ja active Pending
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