JP2004197271A - アラミド布帛の洗浄方法 - Google Patents

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裕美 石丸
Sadamitsu Murayama
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Abstract

【課題】油汚れしたアラミド布帛或いはそれからなる防炎服の洗浄・精練を効率的に行うことが出来る洗浄方法を提供すること。
【解決手段】前記の課題は、アラミド繊維からなる布帛を、曇点が10〜100℃の非イオン界面活性剤を20〜80重量%、アルカリ剤を80〜20重量%の割合で含有する洗浄剤を、その濃度が0.5〜3.0g/Lとなるように溶解させた洗浄液を用い、該洗浄剤の曇点以下の温度で洗浄する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アラミド繊維からなる布帛(アラミド布帛)の洗浄方法に関するものであり、さらに詳しくは、油等で汚れたアラミド布帛を効率よく洗浄できる洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、アラミド繊維はその優れた性能を利用して、衣料用のみならず産業用の様々な用途に使用されてきた。それらの1つに各種作業着の用途があり、例えば、その優れた耐久性や耐熱性を利用した用途の例として、火災現場で着用される防炎服や、機械工場或いは溶鉱炉の作業現場で着用される作業着などがある。
【0003】
このような防炎服や作業着はその作業の性質上、汚れがひどく、特に、機械油などによる油汚れは、通常の洗濯では完全に除去することが困難であるため、繰り返し洗濯が行なわれるが、何度も繰り返し洗濯を行なうと、布帛表面が毛羽立ったり、耐熱性、例えば耐スパッタリング性が低下することがあるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば特開平8−158262号公報には、アラミド繊維からなる布帛にフッ素樹脂を被覆させ、耐スパッタリング性の洗濯耐久性を向上させる方法が開示されているが、樹脂被覆を行なった場合は、風合が硬化したり、布帛を廃棄する際、環境に悪影響を及ぼす恐れがある、という問題があり、繰り返し洗濯を行なわなくても油汚れなどを除去することが可能な洗浄方法が切望されていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−158262号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述のような問題点を解消し、油汚れしたアラミド布帛或いはそれからなる防炎服の洗浄・精練を効率的に行うことが出来る洗浄方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の課題は、アラミド繊維からなる布帛を、曇点が10〜100℃の非イオン界面活性剤を20〜80重量%、アルカリ剤を80〜20重量%の割合で含有する洗浄剤を、その濃度が0.5〜3.0g/Lとなるように溶解させた洗浄液を用い、該洗浄剤の曇点以下の温度で洗浄することを特徴とするアラミド布帛の洗浄方法により解決される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で使用する非イオン界面活性剤としては、曇点が10〜100℃の範囲にある非イオン界面活性剤が使用される。曇点は該非イオン界面活性剤が水に溶ける臨界の温度を示すものであるが、本発明で使用する非イオン界面活性剤は、曇点が前記の範囲にあるものを使用することが肝要である。
【0009】
該曇点が10℃未満の場合は、洗浄液の温度が低くなりすぎてアラミド布帛に付着した油を洗浄するのには適当ではない。また、該曇点が100℃を超える場合は、曇点と相関のあるHLB値(Hydrophile-Lipophile Balance;親水性-親油性バランス)が大きくなり、界面活性剤の親水性が増して油を洗浄するのには適当ではなくなる。例えば、ポリエチレン高級アルコールエーテルでは、曇点が100℃以上で、HLB値は16.2である。つまり、曇点が高い場合には、界面活性剤の親水性が大きくなり、油を洗浄するには適当ではない。
【0010】
このような非イオン界面活性剤は、脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、下記一般式で表されるものが好ましく例示される。
【0011】
【化1】
Figure 2004197271
【0012】
上記式中、[ ]内のAO単位及びBO単位の付加形態はブロック付加若しくはランダム付加のいずれでもよく、また、式中、Rは炭素数8〜14のアルキル基(側鎖を有していてもよい)、Aは−C24−又は−CH2CH(CH3)−、またBは−CH2CH(C25)−を表す。xは0又は1〜5の整数であり、yは1〜5の整数、またzは5〜15の整数である。
【0013】
特に好ましく使用される非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルやポリオキシエチレン高級アルコールエーテルなどが例示される。
【0014】
次に本発明で使用するアルカリ剤としては、通常ビルダーと呼ばれている炭酸塩やケイ酸塩が例示される。該炭酸塩には、主に炭酸ナトリウムが用いられ、油汚れの中の遊離脂肪酸と反応してこれを石鹸に変え、この石鹸の働きで汚れを取り除く作用を有するものである。また、ケイ酸塩としては、メタケイ酸ナトリウムなどを用いるとよい。
【0015】
このような非イオン界面活性剤とアルカリ剤とを含む洗浄剤は、その比率が非イオン界面活性剤が20〜80重量%、アルカリ剤が80〜20重量%の割合であるものが使用される。該非イオン界面活性剤の使用比率が20重量%未満の場合には、本発明の効果が奏されない。
【0016】
次に、本発明に使用するアラミド繊維とは、芳香族環がアミド結合で結合された繰り返し単位を有し、該繰り返し単位が全体の少なくとも80%を占める重合体、又は、共重合体からなる繊維を意味する。これらの重合体、又は、共重合体からなる繊維としては、ポリパラアミノベンズアミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリパラアミノベンズヒドラジドテレフタルアミド、ポリテレフタル酸ヒドラジド、ポリメタフェニレンイソフタラミドや、これらの共重合体からなる繊維が例示される。
【0017】
また、本発明で使用されるアラミド布帛は、主として前記のようなアラミド繊維から構成されるものを言い、本発明の目的を損なわない範囲で他の繊維を含んでいても良い。布帛の形態としては、織物や編物のいずれでもよく、また、該編織物の組織は特に限定されるものではない。
【0018】
本発明においては、上記アラミド布帛或いはそれからなる防炎服を、上記洗浄剤を、その濃度が0.5〜3.0g/Lとなるように溶解させた洗浄液を用いて洗浄する。
【0019】
この際、洗浄方法としては、従来公知の方法が任意に採用できるが、洗浄液の温度は、そこに含まれる洗浄剤の曇点以下の温度である必要がある。この温度が洗浄剤の曇点を超える場合は、洗浄液に濁りが生じ、アラミド布帛を効率よく洗浄することができなくなる。
【0020】
【発明の作用】
本発明において使用する、非イオン界面活性剤とアルカリ剤とを組み合わせた洗浄剤は、極めて高い洗浄効果を示す。例えば、目視判定で洗浄後の布帛を観察して、見かけは油汚れが洗浄されているように見える場合であっても、実際は布帛の内部に油汚れが残存していることが多いが、本発明の方法によれば、布帛の内部にある油汚れであっても、かなりの割合で除去(9割以上)することが出来る。その洗浄メカニズムは完全には解明されていないが、非イオン界面活性剤とアルカリ剤の相乗効果に起因しているものと考えられる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例で用いた試験布の作成及び物性の測定は下記の方法によった。
【0022】
(1)汚れ試験布の作成方法
人工油(カーボンブラック0.62g、B重油12.68g、モーターオイル1986.7g)をアラミド繊維からなる織物にディップした後、濾紙に挟み、245Paの圧力をかけて一昼夜放置し、残脂量が30wt%になるように汚れ試験布を作成した。
【0023】
なお、アラミド繊維からなる織物としては、ポリメタフェニレンイソフタルアミドからなり、単繊維繊度が3.0デニール、カット長が51mmの短繊維(「コーネックス」;帝人(株)製)を用いて得た、30sの紡績糸を綾織組織に織成した織物を用いた。
【0024】
(2)洗浄効率
洗浄効率は、人工油にディップする前の原布織物の重量、人工油にディップした後の織物であって洗浄前の織物の重量、及び人工油にディップした後、洗浄した織物の重量をそれぞれ測定し、下記式により算出した。
【0025】
【数1】
Figure 2004197271
【0026】
(3)汚れ
JIS L−0801−78に示す方法に従い、グレースケールを用いて目視判定した。
【0027】
(4)曇点
濃度2wt%に調整した洗浄剤水溶液の温度を徐々に上げていき、水溶液が濁り始める温度を曇点とした。
【0028】
[実施例1]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル9モル付加物(曇点56℃)0.8g/Lと、ビルダー(珪酸塩)0.4g/Lを水温40℃の水30Lに溶かして洗浄液を作り、該洗浄液中で汚れ試験布を洗浄した。洗浄剤の曇点と洗浄効率、及び汚れの判定結果を表1に示す。
【0029】
[実施例2]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル9モル付加物(曇点56℃)0.4g/Lとビルダー(珪酸塩)0.8g/Lを水温40℃の水30Lに溶かして洗浄液を作り、該洗浄液中で汚れ試験布を洗浄した。洗浄剤の曇点と洗浄効率、及び汚れの判定結果を表1に示す。
【0030】
[実施例3]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル9モル付加物(曇点56℃)0.8g/Lとビルダー(珪酸塩)0.4g/Lを水温20℃の水30Lに溶かして洗浄液を作り、該洗浄液中で汚れ試験布を洗浄した。洗浄剤の曇点と洗浄効率、及び汚れの判定結果を表1に示す。
【0031】
[実施例4]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル12モル付加物(曇点83℃)0.8g/Lとビルダー(珪酸塩)0.4g/Lを水温40℃の水30Lに溶かして洗浄液を作り、該洗浄液中で汚れ試験布を洗浄した。洗浄剤の曇点と洗浄効率、及び汚れの判定結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸ナトリウム、水軟化剤、アルカリ剤、酵素、蛍光剤、分散剤、工程安定剤を含んだ剤(花王(株)製、「アタック(粉末)」)1.0g/Lを水温40℃の水30Lに溶かして洗浄液を作り、該洗浄液中で汚れ試験布を洗浄した。洗浄剤の曇点と洗浄効率、及び汚れの判定結果を表1に示す。
【0033】
[比較例2]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル9モル付加物(曇点56℃)1.0g/Lを水温40℃の水30Lに溶かして洗浄液を作り、該洗浄液中で汚れ試験布を洗浄した。洗浄剤の曇点と洗浄効率、及び汚れの判定結果を表1に示す。
【0034】
[比較例3]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル9モル付加物(曇点56℃)0.8g/Lとビルダー(珪酸塩)0.4g/Lを水温60℃の水30Lに溶かして洗浄液を作り、該洗浄液中で汚れ試験布を洗浄した。洗浄剤の曇点と洗浄効率、及び汚れの判定結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
Figure 2004197271

Claims (4)

  1. アラミド繊維からなる布帛を、曇点が10〜100℃の非イオン界面活性剤を20〜80重量%、アルカリ剤を80〜20重量%の割合で含有する洗浄剤を、その濃度が0.5〜3.0g/Lとなるように溶解させた洗浄液を用い、該洗浄剤の曇点以下の温度で洗浄することを特徴とするアラミド布帛の洗浄方法。
  2. 非イオン界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルである請求項1記載のアラミド布帛の洗浄方法。
  3. アルカリ剤が、珪酸塩、及び/又は炭酸塩である請求項1又は2記載のアラミド布帛の洗浄方法。
  4. アラミド繊維からなる布帛が防炎服を形成している請求項1〜3のいずれか1項に記載のアラミド布帛の洗浄方法。
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