JP2004196998A - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】高いレベルで難燃化できるとともに、電気特性に影響を及ぼすガスの発生を抑制できる難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供する。
【解決手段】芳香族ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、リン系難燃剤(B)1〜50重量部、ホウ酸金属塩(C) 0.05〜50重量部、ノボラック型フェノール系樹脂(D)3〜70重量部、及び25℃における水溶液系の標準電極電位が+0.4V以上の化合物(E)0.001〜20重量部を含む難燃性樹脂組成物を調製する。前記リン系難燃剤(B)が、赤リン、例えば、実質的に破砕面を有していない球状赤リン粒子を熱硬化性樹脂で被覆した平均粒径0.5〜40μmの安定化赤リンなどで構成されていてもよい。前記樹脂組成物は、さらに窒素含有化合物や無機充填剤などを含んでいてもよい。
【選択図】 なし
【解決手段】芳香族ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、リン系難燃剤(B)1〜50重量部、ホウ酸金属塩(C) 0.05〜50重量部、ノボラック型フェノール系樹脂(D)3〜70重量部、及び25℃における水溶液系の標準電極電位が+0.4V以上の化合物(E)0.001〜20重量部を含む難燃性樹脂組成物を調製する。前記リン系難燃剤(B)が、赤リン、例えば、実質的に破砕面を有していない球状赤リン粒子を熱硬化性樹脂で被覆した平均粒径0.5〜40μmの安定化赤リンなどで構成されていてもよい。前記樹脂組成物は、さらに窒素含有化合物や無機充填剤などを含んでいてもよい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リン系難燃剤の安定性を高め、作業性及び安全性に優れるとともに、電気特性などに影響を及ぼすガス発生量を低減した非ハロゲン系難燃性樹脂組成物及びその成形体(電気・電子部品など)に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は、物理的および化学的に優れた性質を備えることから、電気、機械、自動車および建築等の広い分野で多量に用いられている。例えば、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂は、優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性などを有するため、電気・電子分野、自動車分野などの用途の成形品として広く利用されている。これらの中で、難燃性が要求される用途は多く、主にハロゲン化合物やアンチモン化合物を難燃剤や難燃助剤として使用することにより難燃性を付与している。
【0003】
しかし、ハロゲン系難燃剤は、分解生成物が電気製品である金属を腐蝕し易く、また、一部のハロゲン系難燃剤は、有毒ガスの発生など、環境への影響が大きい。従って、非ハロゲン系難燃剤が求められている。
【0004】
代表的な非ハロゲン系難燃剤としては、リン化合物が挙げられ、例えば、有機リン化合物として、トリフェニルホスフェート(TPP)などの低分子リン酸エステルが従来から一般的に使用されている。しかし、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂は、比較的加工温度が高く、低分子量のリン酸エステルの場合は、ブリードアウトが発生すると共に、耐熱性が充分でない。
【0005】
一方、リン系化合物のなかでも赤リンは、比較的少量の添加で樹脂組成物に有効な難燃性を付与することができ、樹脂本来の耐熱性や機械的強度を低下させることが少ない。さらに、赤リンは難燃剤として、汎用プラスチックからエンジニアリングプラスチックに至るまで幅広く適用できる。
【0006】
例えば、ジャーナル・オブ・ファイア・リターダント・ケミストリー(Journalof Fire Retardant Chemistry),vol.7,第69-76頁(1980年)には、赤リン及びフェノール樹脂によって難燃化されたポリスチレンが開示されている。また、プラスチックス・エンジニアリング(Plastics Engineering),November,第29-31頁(1993年)には、赤リン及びフェノール樹脂によって難燃化されたPBTが開示されている。
【0007】
しかし、赤リンは、熱、摩擦及び衝撃などに対して不安定であり、保管や取扱いに危険を伴い、特に樹脂との混練時に危険を伴う。従って、赤リンを樹脂に配合する場合、市販の赤リンがそのまま用いられることは少なく、赤リンに皮膜を形成して安定化処理を施した上で用いるのが通常である。
【0008】
例えば、特公平2−37379号公報には、150℃以上の軟化点を有するポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレートなど)、熱可塑性樹脂で被覆された安定化赤リン及び強化充填剤で構成された難燃性ポリエステル系樹脂組成物が開示されている。しかし、このような安定化処理を施しても赤リンは、空気中の水分や酸素と反応して僅かながら有害ガスであるホスフィンを生成し、環境負荷ばかりでなく、電気・電子部品の安全かつ安定動作に悪影響を及ぼす。
【0009】
特開2000−297216号公報には、熱可塑性ポリエステル、特定のノボラック型フェノール樹脂及び安定化赤リンで構成された難燃性樹脂組成物が開示されている。この文献には、任意の添加剤として、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫化モリブデン、酸化銅などを配合することが記載されているが、酸化銅は電気特性を損うため、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫化モリブデンが好ましいと記載されている。この樹脂組成物では、フェノールガスの発生は抑制されているものの、金属の腐食性に関しては改善されていない。従って、この材料から得られる成形品を電気・電子部品として応用した場合、電気・電子部品中の金属部品の腐食が激しく、製品の安全性が充分でない。また、難燃性も充分ではなく、特に薄肉成形品においては難燃性が低下する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高いレベルで難燃化できるとともに、電気特性に影響を及ぼすガスの発生を抑制できる難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、薄肉成形品においても高い難燃性を有する難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、安全性及び作業性に優れるとともに、ブリードアウトを抑制できる難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討の結果、熱可塑性樹脂に、リン系難燃剤と、ホウ酸金属塩と、ノボラック型フェノール系樹脂と、特定の標準電極電位を有する化合物とを組み合わせて添加すると、高いレベルで難燃化できるとともに、電気特性に影響を及ぼすガスの発生を抑制できることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)、リン系難燃剤(B)、ホウ酸金属塩(C)、ノボラック型フェノール系樹脂(D)、及び25℃における水溶液系の標準電極電位が+0.4V以上の化合物(E)で構成されている。前記熱可塑性樹脂(A)は、芳香族ポリエステル系樹脂、例えば、C2-4アルキレンアリレート単位を有するホモ又はコポリエステル(ポリブチレンテレフタレート系樹脂など)などで構成されていてもよい。前記リン系難燃剤(B)は、赤リンであってもよい。また、前記リン系難燃剤は、例えば、実質的に破砕面を有していない球状赤リン粒子と、この赤リン粒子を被覆する熱硬化性樹脂とで構成されていてもよく、その平均粒径は0.5〜40μm程度であってもよい。前記ホウ酸金属塩(C)は、アルカリ土類金属ホウ酸塩、周期表第2B族金属ホウ酸塩、これらの水和物(例えば、ホウ酸亜鉛の水和物及び/又はホウ酸カルシウムの水和物など)などで構成されていてもよい。前記ノボラック型フェノール系樹脂(D)の重量平均分子量は300〜20000(特に500〜15000)程度である。前記化合物(E)は、平均粒径0.1〜50μm程度であり、25℃における水溶液系の標準電極電位が+0.4〜+3Vの粉粒状無機化合物などであってもよい。各成分の割合は、例えば、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、リン系難燃剤(B)1〜50重量部(特に3〜30重量部)、ホウ酸金属塩(C)0.05〜50重量部(特に0.1〜45重量部)、ノボラック型フェノール系樹脂(D)3〜70重量部(好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部)、化合物(E)0.001〜20重量部(特に0.01〜10重量部)程度であってもよい。前記難燃性樹脂組成物は、さらに、ヒンダードアミン類、トリアジン類、尿素類、窒素含有樹脂などの窒素含有化合物(F)を含んでいてもよい。また、前記難燃性樹脂組成物は、さらに、無機充填剤(G)を含んでいてもよい。
【0015】
本発明には、前記難燃性樹脂組成物で形成された電気・電子部品用成形品も含まれる。
【0016】
【発明の実施の形態】
[熱可塑性樹脂(A)]
熱可塑性樹脂(A)としては、成形用として利用される種々の樹脂、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。これらのうち、機械特性、耐熱性、耐薬品性などの点から、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0017】
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、オキシカルボン酸又はラクトンの重縮合、またはこれらの成分の重縮合などにより得られるホモポリエステル又はコポリエステルである。好ましいポリエステル系樹脂は、通常、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合により得られた芳香族ポリエステル系樹脂(芳香族飽和ポリエステル系樹脂)が含まれる。
【0018】
ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの炭素数4〜40程度のジカルボン酸、好ましくは炭素数4〜14程度のジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などの炭素数8〜12程度のジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メチルイソフタル酸、メチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4′−ジオキシ安息香酸、4,4′−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルケトンジカルボン酸などの炭素数8〜16程度のジカルボン酸)、又はこれらの誘導体(例えば、低級アルキルエステル、アリールエステル、酸無水物などのエステル形成可能な誘導体)などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
好ましいジカルボン酸成分には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸(特にテレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸)が含まれる。ジカルボン酸成分中には、例えば、50モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上程度の芳香族ジカルボン酸が含まれているのが好ましい。さらに、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸などを併用してもよい。
【0020】
ジオール成分には、例えば、脂肪族アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールなどの炭素数2〜12程度の脂肪族グリコール、好ましくは炭素数2〜10程度の脂肪族グリコール)、ポリオキシアルキレングリコール[アルキレン基の炭素数が2〜4程度であり、複数のオキシアルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど]、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなど)などが挙げられる。また、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコールなどの芳香族ジオールを併用してもよい。これらのジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0021】
好ましいジオール成分には、C2-10アルキレングリコール(エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖状アルキレングリコール)などが含まれる。ジオール成分中には、例えば、50モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のC2-10アルキレングリコールが含まれているのが好ましい。さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオールを併用してもよい。
【0022】
好ましいポリエステル系樹脂には、アルキレンテレフタレート、アルキレンナフタレートなどのアルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50〜100モル%、好ましくは75〜100モル%程度)とするホモポリエステル又はコポリエステル[例えば、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート)、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリテトラメチレンナフタレートなどのポリC2-4アルキレンナフタレート)などのホモポリエステル;アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレート単位を主成分(例えば、50モル%以上)として含有するコポリエステル]が含まれる。特に好ましいポリエステル系樹脂は、エチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、テトラメチレンテレフタレート、テトラメチレン−2,6−ナフタレートなどのC2-4アルキレンアリレート単位を80モル%以上(特に90モル%以上)含むホモポリエステル又はコポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなど)である。コポリエステルにおいて、C2-4アルキレンアリレート単位の含有量は70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%(特に90〜100モル%)程度であってもよい。
【0023】
ポリエステル系樹脂の固有粘度(25℃でのオルソクロロフェノール中での測定値をもとに算出された値)は、0.5〜1.4dl/g、好ましくは0.6〜1.2dl/g程度である。固有粘度が高すぎると流動性が低下し、固有粘度が低すぎると機械的強度が低下する。
【0024】
[リン系難燃剤(B)]
リン系難燃剤(B)は、リン原子を有する化合物である限り、特に制限されないが、例えば、無機リン化合物[例えば、赤リンや、オルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸(メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等)、ポリ亜リン酸(メタ亜リン酸、ピロ亜リン酸等)などの非縮合又は縮合(亜)リン酸塩(カルシウムなどの金属塩など)など]、有機リン化合物[リン酸エステル(リン酸トリフェニルなどの芳香族リン酸エステルなど)、リン酸エステルアミド、ホスホニトリル化合物((ポリ)フェノキシホスファゼンなど)、有機ホスホン酸化合物(メタンホスホン酸ジフェニルやフェニルホスホン酸ジエチルなどのホスホン酸エステルなど)、有機ホスフィン酸化合物(ホスフィン酸メチルなど)、ホスフィンオキシド(トリフェニルホスフィンオキシド、トリクレジルホスフィンオキシドなど)など]などが例示できる。これらのリン系難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのリン系難燃剤のうち、無機リン化合物、特に赤リンが好ましい。
【0025】
赤リンとしては、粒子状または粉末状の赤リンを用いる。また、赤リンは、安定性を向上するために、被覆層を形成して安定化赤リンとして用いるのが好ましい。赤リンの安定化処理は、通常、赤リン粒子に少なくとも一つの被覆層を形成することによって行われる。被覆層には、有機物(熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂など)及び無機物(金属水酸化物や金属酸化物等の金属化合物など)のいずれも用いることができる。このような安定化赤リンを用いると、高温、機械的ショックなどによる発火やホスフィン発生などが抑制される。
【0026】
赤リンの表面を被覆するための熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂(メラミン系樹脂、尿素系樹脂、アニリン系樹脂等)、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等が挙げられ、金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化スズ等が挙げられる。これらの樹脂及び金属化合物は、同系統又は異なる系統で、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
さらに、赤リンの表面を金属で被覆し安定化する方法としては、例えば、無電解メッキ法により、金属(鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、亜鉛、マンガン、スズ、チタン、ジルコニウム等)又はこれらの合金で被覆する方法が挙げられる。その他の赤リン表面の被覆方法としては、金属塩(アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、チタン、銅、銀、鉄、ニッケル等の塩)の溶液で赤リンを処理し、赤リンの表面に金属リン化合物を形成させて安定化する方法なども含まれる。
【0028】
これらのうち、赤リン粒子の被覆層は、熱硬化性樹脂で形成するのが好ましい。さらに、金属化合物の被覆層と組み合わせてもよく、特に金属化合物の被膜で被覆した上に、熱硬化性樹脂で少なくとも1層(特に多層)に被覆処理するのが好ましい。熱硬化性樹脂で被覆された赤リン粉末は、赤リン単独に比べて取扱い等の安全性の点で著しく改善されているが、使用に際しては、さらに安全性を期すためにも、熱可塑性樹脂と予め溶融混練されたマスターバッチとして用いるのが好ましい。
【0029】
赤リン粒子に対する被覆層の割合は、赤リン粒子100重量部に対して、例えば、0.5〜50重量部、好ましくは1〜35重量部(特に1〜20重量部)程度である。
【0030】
なお、赤リン粒子の形状は球体様(球状)であるのが好ましい。赤リン粒子の形状は製造方法によって異なり、例えば、粉砕工程を経て製造された赤リン粒子が破砕面のある粒子形状を有するのに対して、粉砕工程を経ずに製造された赤リン粒子は実質的に破砕面のない粒子形状(球体様の形状)を有する。球状の赤リン粒子は、欠損のない被覆層を形成し易く、形成された被覆層の剥離も少ない。そのため、赤リン粒子としては、例えば、黄リンの転化処理によって、直接得られ、かつ実質的に破砕面のない球体様粒子(球状粒子)が好ましい。このような球体様赤リン粒子を用いることにより、表面が極めて安定化され、赤リンの安定化が高まり、組成物の安定性が向上する。このような球体様赤リン粒子は、例えば、次の方法で製造することができる。
【0031】
すなわち、不活性ガスで置換した密閉容器中で、黄リンを沸点付近の温度に加熱して赤リンの転化反応を開始させ、転化率又は赤リンの粒径が所望の水準に達すると反応を停止し、未転化の黄リンを留去すると、粉砕する必要のない微小球体様粒子又はその集合体で構成された無定形赤リンが得られる。反応時間、反応温度によって転化率や赤リンの粒径が調節されるが、反応温度は250〜350℃程度が好ましく、転化率は60%以下程度が好ましい。
【0032】
赤リン粒子の平均粒径は、0.1〜150μmの範囲から選択でき、安定化赤リン粒子の平均粒径は200μm以下(例えば、0.5〜200μm)、好ましくは1〜150μm、さらに好ましくは3〜100μm(特に5〜50μm)程度であってもよい。この範囲の平均粒径の安定化赤リンを用いると、樹脂組成物の機械的物性を維持することができる。
【0033】
リン系難燃剤(B)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。リン系難燃剤(B)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは3〜30重量部、さらに好ましくは5〜20重量部程度であってもよい。リン系難燃剤の割合が少なすぎると難燃化効果に乏しく、多すぎると機械的特性が大幅に低下するとともに、ホスフィンの発生量を増加させる。
【0034】
[ホウ酸金属塩(C)]
ホウ酸金属塩のホウ酸としては、オルトホウ酸、メタホウ酸等の非縮合ホウ酸;ピロホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸などの縮合ホウ酸、並びに塩基性ホウ酸などが好ましい。金属は、アルカリ金属などであってもよいが、アルカリ土類金属、遷移金属、周期表2B族金属の多価金属であるのが好ましい。
【0035】
ホウ酸金属塩は、通常、含水塩であり、例えば、非縮合ホウ酸塩[オルトホウ酸カルシウム、メタホウ酸カルシウムなどのアルカリ土類金属非縮合ホウ酸塩;オルトホウ酸マンガン、メタホウ酸銅などの遷移金属非縮合ホウ酸塩;メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸カドミウムなどの周期表第2B族金属の非縮合ホウ酸塩(特にメタホウ酸塩)など]、縮合ホウ酸塩(四ホウ酸三マグネシウム、ピロホウ酸カルシウムなどのアルカリ土類金属縮合ホウ酸塩;四ホウ酸マンガン、二ホウ酸ニッケルなどの遷移金属縮合ホウ酸塩;四ホウ酸亜鉛、四ホウ酸カドミウムなどの周期表第2B族金属の縮合ホウ酸塩など);塩基性ホウ酸塩(塩基性ホウ酸亜鉛、塩基性ホウ酸カドミウムなどの周期表第2B族金属の塩基性ホウ酸塩など)などが挙げられる。また、これらのホウ酸塩に対応するホウ酸水素塩(例えば、オルトホウ酸水素マンガンなど)なども使用できる。ホウ酸金属塩(C)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。特に、アルカリ土類金属又は周期表第2B族金属ホウ酸塩(非縮合又は縮合ホウ酸塩)、例えば、ホウ酸亜鉛類及びホウ酸カルシウム類が好ましい。
【0036】
ホウ酸亜鉛類には、ホウ酸亜鉛(2ZnO・3B2O3)やホウ酸亜鉛・3.5水和物(2ZnO・3B2O3・3.5H2O)等が含まれ、ホウ酸カルシウム類には、ホウ酸カルシウム(2CaO・3B2O3)やホウ酸カルシウム・5水和物(2CaO・3B2O3・5H2O)等が含まれる。これらのホウ酸亜鉛類やホウ酸カルシウム類の中でも、特に水和物が好ましい。
【0037】
ホウ酸金属塩(C)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.05〜50重量部、好ましくは0.1〜45重量部、さらに好ましくは1〜40重量部(特に10〜40重量部)程度であってもよい。ホウ酸金属塩の割合が少なすぎると、難燃性が低下するとともに、高温多湿下で成形品の表面に滲み出しが発生する。一方、多すぎると、樹脂組成物の安定性が低下し、成形品の機械的特性も低下する。
【0038】
[ノボラック型フェノール系樹脂(D)]
ノボラック型フェノール系樹脂は、例えば、フェノール類と、アルデヒド類との反応により得られる。
【0039】
フェノール類としては、例えば、フェノール、o−,p−又はm−クレゾール、3,5−キシレノール、アルキルフェノール(例えば、t−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのC1-20アルキルフェノール)、アリールフェノール(例えば、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール)などが挙げられる。これらのフェノール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
好ましいフェノール類は、フェノール、クレゾール(オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール)である。フェノール類には、フェノール及び/又はクレゾールが、例えば、70モル%以上、好ましくは80モル%以上含まれているのが好ましい。
【0041】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなどが挙げられる。これらのアルデヒド類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0042】
好ましいアルデヒド類としては、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。また、トリオキサン、パラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒドの縮合体も使用できる。
【0043】
フェノール類とアルデヒド類との割合(モル比)は、前者/後者=1/0.4〜1/1、好ましくは1/0.5〜1/1程度である。
【0044】
フェノール類とアルデヒド類との縮合反応は、通常、酸触媒の存在下で行われる。酸触媒としては、例えば、無機触媒(例えば、塩酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸などの無機酸など)、有機触媒[有機酸(ギ酸、シュウ酸、マレイン酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル−p−トルエンステアリン酸など)や、脂肪酸又はナフテン酸金属塩(鉛、カルシウム、錫、亜鉛などの二価金属塩など)]などが挙げられる。
【0045】
ノボラック型フェノール系樹脂の重量平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜20000、好ましくは500〜15000、さらに好ましくは600〜10000(特に600〜5000)程度の範囲から選択できる。
【0046】
ノボラック型フェノール系樹脂(D)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、3〜70重量部、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部程度であり、高度な難燃性を付与するためには、10〜40重量部程度であるのが特に好ましい。ノボラック型フェノール系樹脂の割合が少なすぎると、難燃性が低下し、多すぎると、成形品の機械的特性が低下する。
【0047】
本発明では、リン系難燃剤(特に赤リン)と、ホウ酸金属塩と、ノボラック型フェノール系樹脂とを組み合わせて用いることにより、熱可塑性樹脂(特に芳香族ポリエステル系樹脂)に対する難燃化効果を高めることができ、特に、成形品を薄肉化(例えば、0.5mm以下のシート状)しても、難燃性を確保することができる。
【0048】
[化合物(E)]
化合物(E)としては、25℃における水溶液系の標準電極電位(E°)が+0.4V以上の化合物が使用でき、このような化合物(E)は、改訂3版化学便覧基礎編II(丸善(株))などを参照できる。本発明では、化合物(E)として、通常、非ハロゲン系であり、かつ非毒性化合物が使用される。また、化合物(E)は、有機化合物であってもよいが、一般に無機化合物である。
【0049】
化合物(E)の前記標準電極電位(E°)は、通常、+0.4〜+3Vの範囲から選択でき、好ましくは+0.4〜+2V、さらに好ましくは+0.4〜+1.5V(特に+0.45〜+1.3V)程度であってもよい。前記標準電極電位が+0.4V以上の化合物を用いると、実質的にホスフィンの発生を抑制できる樹脂組成物が得られる。
【0050】
化合物(E)の具体例としては、例えば、酸化銅[Cu2O(0.47)、CuO(0.57)]、酸化銀[AgO(0.57)、Ag2O3(0.74)]、酸化コバルト[Co3O4(0.78)、Co2O3(1.02)]、酸化パラジウム[PdO(0.85)、PdO2(1.46,1.47)]、酸化マンガン[MnO2(0.98,1.23)]、酸化モリブデン[MoO4(0.86,1.40)]、Sb2O3(0.86)、酸化ニッケル[NiO2(0.49,1.59)、Ni2O3(1.03)]、酸化テルル[TeO2(0.52)]、Cr(0.55)、硫酸銀[AgSO4(0.65)]、O2(0.68)、キノン[C6H4O2(0.70)]、酸化白金[PtO(0.98)]、酸化ルテニウム[RuO4(0.99)]、酸化ポロニウム[PoO3(1.47)]、複合金属酸化物[AgCrO4(0.45)、Ag2CrO4(0.46)、AgCr2O4(0.46)、Ag2WO4(0.47)、Ag2MoO4(0.49)等]などが例示できる。なお、参考までに、前記標準電極電位を括弧内に記載する。これらの化合物(E)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの化合物のうち、ハンドリング性やコストの点から、金属酸化物、例えば、酸化銅[Cu2O、CuO]や酸化マンガン[MnO2]などが好ましい。
【0051】
化合物(E)は、通常、粉粒状で使用され、平均粒子径は、溶融混練性、成形性や難燃性、成形品の特性を損なわない範囲であればよく、例えば、100μm以下(例えば、0.01〜100μm)、好ましくは0.05〜70μm、さらに好ましくは0.1〜50μm程度であってもよい。粉粒状化合物は、例えば、タイラー(Tyler)表記の200メッシュ以上の篩を通過する粉粒体(例えば、平均粒子系74μm以下の粉粒体)を好ましく使用できる。200メッシュ以上の篩にかけずに使用すると、粒子径が大きく、ホスフィンの低減効果が小さい。さらに、押出や成形時に装置のスクリューを摩耗させる。
【0052】
化合物(E)の純度は85%(特に90%)以上が好ましい。純度は、それぞれの化合物について、JISの試薬の品位に準じて測定できる。純度が85%未満であると、硫酸イオンなどが成形品から染み出し、電気・電子用途の成形品では、製品の動作安定性を著しく抑制する場合がある。
【0053】
また、化合物(E)は、押出ペレットや成形品に実質的に含まれていればよく、樹脂組成物を調製する前段階では、上記標準電極電位を有する化合物である必要はなく、例えば、調製過程で酸化処理などを施して、前記化合物(D)としてもよい。
【0054】
化合物(E)の割合は、芳香族ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜20重量部、好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部(特に0.1〜3重量部)程度であってもよい。化合物(E)の割合が少なすぎると、ホスフィン発生の抑制効果が低下し、多すぎると、樹脂組成物の安定性が低下し、機械的特性も低下する。
【0055】
[窒素含有化合物(F)]
本発明の樹脂組成物には、ガスの発生を抑制し、難燃性を向上させるため、さらに窒素含有化合物(F)を含有させるのが好ましい。窒素含有化合物(F)は、窒素原子を有する化合物である限り、特に制限されず、例えば、窒素原子を含有する低分子化合物や高分子化合物(窒素含有樹脂)などが含まれる。
【0056】
窒素含有低分子化合物としては、例えば、アンモニウム化合物(リン酸アンモニウム塩などの酸素酸アンモニウム塩など)、アミン類[脂肪族アミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなど)、芳香族アミン(o−トルイジン、p−トルイジン、p−フェニレンジアミンなどの芳香族第2級又は3級アミンなど)など]、ヒンダードアミン類[ポリC1-3アルキルピペリジン又はその誘導体(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのビス(トリ乃至ペンタC1-3アルキルピペリジル)C2-20アルカンジカルボン酸エステル)など]、アミド化合物(マロンアミド、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、p−アミノベンズアミドなど)、ヒドラジン又はその誘導体(ヒドラジン、アセトンヒドラゾンやベンズフェノンヒドラゾンなどのヒドラゾン、マロンジヒドラジドなどの多価カルボン酸ヒドラジドなど)、尿素類[非環状尿素化合物(尿素、メチレンジウレア、ビウレット、ビウレアなど)、環状尿素化合物(エチレン尿素、ヒダントイン、アラントイン、尿酸、アセチレン尿素など)、チオ尿素又はその誘導体など]、トリアジン類[メラミン化合物(メラミン、2−メチルメラミン、グアニルメラミン、メラミン縮合物(メラム、メレム、メロンなど))、グアナミン化合物(グアナミン、メチルグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、CTU−グアナミンなど)、これらのトリアジン類と(イソ)シアヌール酸との塩(メラミンシアヌール酸など)、これらのトリアジン類と酸素酸との塩(リン酸メラミンなど)など]、ウラシル類(ウラシル、ウリジンなど)、シトシン(シトシン、シチジンなど)などが挙げられる。
【0057】
窒素含有樹脂としては、例えば、アミノ樹脂[尿素樹脂、チオ尿素樹脂、メラミン系樹脂(例えば、メラミン樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド樹脂)、グアナミン樹脂などの単独縮合樹脂や、尿素−メラミン樹脂、尿素−ベンゾグアナミン樹脂、フェノール−メラミン樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン樹脂、芳香族ポリアミン−メラミン樹脂などの共縮合樹脂など)、芳香族アミン−ホルムアルデヒド樹脂(例えば、アニリン樹脂など)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン3、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、ナイロン4−6、ナイロン6−10、ナイロン6−11、ナイロン6−12、ナイロン6−66−610などの単独又は共重合ポリアミド、メチロール基やアルコキシメチルなどを有する置換ポリアミドなど)、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルアミド、ポリアミノチオエーテルなどが挙げられる。
【0058】
これらの窒素含有化合物(F)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ヒンダードアミン類[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのビス(トリ乃至ペンタC1-3アルキルピペリジル)C2-20アルカンジカルボン酸エステルなど]、尿素類(尿素などの非環状尿素化合物、アラントインやアセチレン尿素などの環状尿素化合物など)、トリアジン類(メラミンやグアナミン、CTUグアナミンなどのアミノ基を有するトリアジン化合物など)、窒素含有樹脂(メラミン樹脂などのメラミン系樹脂や尿素樹脂、ポリアミド樹脂など)、特に、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ジカルボキシレートなどのヒンダードアミン類、アラントインなどの環状尿素化合物、トリアジン環を有する化合物や樹脂(メラミン、グアナミン、メラミン樹脂など)が好ましい。
【0059】
窒素含有化合物(F)の割合は、芳香族ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは0.01〜2重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部程度であってもよい。窒素含有化合物(F)の割合が少なすぎると、ガス発生の抑制効果が小さく、多すぎると、樹脂組成物の滞留安定性が低下する。
【0060】
[無機充填剤(G)]
本発明の樹脂組成物には、機械的強度、剛性、耐熱性及び電気的性質等をさらに向上させるため、さらに無機充填剤(G)を含有させるのが好ましい。無機充填剤には、繊維状充填剤、非繊維充填剤(板状充填剤、粉粒状充填剤など)が含まれる。
【0061】
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、繊維状ウォラストナイト、シリカ・アルミナ繊維、ボロン繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維等が例示できる。
【0062】
非繊維状充填剤のうち、板状又は鱗片状充填剤には、例えば、カオリン、タルク、ガラスフレーク、マイカ、グラファイト、各種金属箔などが例示できる。
【0063】
粉粒状又は無定形状充填剤には、カーボンブラック、ホワイトカーボン、炭化ケイ素、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー(ミルドガラスファイバーなど)、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、長石系鉱物、クレー、ケイ藻土等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等)、金属の炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、金属の硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)、金属粉末などが含まれる。
【0064】
これらの無機充填剤の使用に当たっては、必要ならば、収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。このような収束剤又は表面処理剤としては、官能性化合物が含まれる。前記官能性化合物としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、好ましくはエポキシ系化合物、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0065】
無機充填剤は、前記収束剤又は表面処理剤により、収束処理又は表面処理されていてもよい。処理の時期については、無機充填剤の添加と同時に処理してもよく、添加前に予め処理してもよい。
【0066】
また、併用される官能性表面処理剤又は収束剤の使用量は、無機充填剤に対して5重量%以下、好ましくは0.05〜2重量%程度である。
【0067】
これらの無機充填剤(G)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機充填剤のうち、繊維状無機充填剤、例えば、機械的強度及び耐熱性などの点で、ガラス繊維(例えば、チョップドストランドなど)が好ましい。
【0068】
無機充填剤(G)の割合は、例えば、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、さらに好ましくは5〜150重量部(特に10〜150重量部)程度である。
【0069】
[他の添加剤]
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤又は熱安定剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、可塑剤、離型剤、顔料、難燃性改質剤(ポリテトラフルオロエチレンなどのドリッピング防止剤)、核剤、帯電防止剤などが含まれていてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0070】
これらの添加剤の割合は、それぞれ又は総量で、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部程度であってもよい。
【0071】
さらに、本発明の樹脂組成物には、熱可塑性エラストマー(オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマーなど)などの衝撃改良剤などが含まれていてもよい。
【0072】
これらの衝撃改良剤の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは1〜50重量部程度であってもよい。
【0073】
[製造方法]
本発明の難燃性樹脂組成物は、粉粒体混合物や溶融混合物であってもよく、熱可塑性樹脂(A)と、リン系難燃剤(B)と、ホウ酸金属塩(C)と、ノボラック型フェノール系樹脂(D)と、化合物(E)と、必要により他の添加剤などとを慣用の方法で混合することにより調製できる。例えば、(1)各成分を混合して、一軸又は二軸押出機により混練し押出してペレットを調製し、このペレットを成形に供して成形品を得る方法、(2)一旦、組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、所定の組成の成形品を得る方法、(3)成形機に各成分の1種又は2種類以上を直接仕込み成形して成形品とする方法等を用いることができる。
【0074】
さらに、押出機によるペレットの製造方法としては、(1)脆性充填剤(例えば、ガラス系充填剤)を除く成分を先に溶融混合した後に、脆性充填剤成分を混合する製造方法、(2)リン系難燃剤(例えば、赤リンなど)及び脆性充填剤を除く成分を先に溶融混合した後に、脆性充填剤及びリン系難燃剤を(同じフィード位置で)同時混合する製造方法、(3)リン系難燃剤及び脆性充填剤を除く成分を先に溶融混合した後に、脆性充填剤及びリン系難燃剤を(別々のフィード位置で)順次混合する製造方法等が採用できる。この押出機によるペレット製造において、少量の芳香族化合物やハロゲン化合物を分散助剤として押出時に配合してもよい。この分散助剤は押出機のベント口から混練樹脂より除去されてもよい。また、成形品に用いられる組成物の調製において、樹脂成分の粉粒体(例えば、熱可塑性樹脂の一部又は全部を粉砕した粉粒体)と、他の成分(難燃剤など)とを混合して溶融混練すると、他の成分の分散を向上させるのに有利である。
【0075】
なお、ハンドリングの観点から、非樹脂状成分と樹脂状成分とを一旦溶融混合することにより、マスターバッチを調製すると便利である。特に、赤リンはマスターバッチとして調製する場合が多い。
【0076】
また、本発明の難燃性樹脂組成物を溶融混練し、押出成形、射出成形、圧縮成形などの慣用の方法で成形でき、形成された成形品は、難燃性及び成形加工性に優れているため、種々の用途に使用できる。例えば、電気・電子部品、オフィスオートメーション(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、自動車機構部品、包装材料やケースなどに用いることができる。特に、本発明の樹脂組成物は、薄肉成形品(例えば、厚み0.5mm以下の薄肉成形品)であっても、高度な難燃性を付与することができるため、少なくとも一部に薄肉部分を有する成形品に適している。
【0077】
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、高度な難燃性を有するとともに、電気特性に影響を及ぼすガスの発生を抑制できるため、金属部材(特に銀などの腐食性金属)に対する腐食性が低いので、前記用途の中でも、電気・電子部品(例えば、スイッチ部品、モーター部品、イグニッションコイルケース、コイルボビン、コネクター、リレーケース、ヒューズケース、フライバクトランス部品、フォーカスブロック部品、ディスリビューターキャップ、ハーネスコネクターなど)、特に金属接点を有する部品(例えば、接点や端子等の金属部を有する電子・電気部品)に有用である。
【0078】
【発明の効果】
本発明では、熱可塑性樹脂と、リン系難燃剤と、ホウ酸金属塩と、ノボラック型フェノール系樹脂と、特定の標準電極電位を有する化合物とを組み合わせるので、高いレベルで難燃化できるとともに、電気特性に影響を及ぼすガスの発生を抑制できる。特に、この難燃性樹脂組成物を用いて得られた成形品は、薄肉成形品であっても高い難燃性を有する。さらに、得られた成形品は、ブリードアウトも抑制されているとともに、ハロゲン系難燃剤を使用していないため、安全性及び作業性に優れる。
【0079】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、下記の試験により樹脂組成物の各種特性を評価した。また、樹脂組成物の調製に用いた各成分は以下の通りである。
【0080】
[難燃性]
UL94規格垂直燃焼試験法により、0.4mm厚みの試験片を用いて難燃性を評価した。難燃性はUL94に記載の評価方法に従って、V−0,V−1,V−2,HBに分類した。
【0081】
[金属腐食性]
試料を130℃で5時間乾燥して乾燥ペレットとした。乾燥ペレットの3gを22mlのバイアル瓶に詰め、短冊状の銀板を入れて密封した。密封したバイアル瓶を120℃、72時間オーブンに入れ、腐食の状態を目視により以下の判断基準で評価した。
【0082】
◎:金属表面に光沢を有し、曇りがない
○:金属表面に部分的に僅かなしみができるものの、光沢を有する
×:金属表面に光沢がなく、曇っている。
【0083】
[成形品表面の滲み出し性]
0.8mm厚みの試験片に油性マジック(トンボ(株)製、F−1)で文字を記載し、121℃、100%RH下で48時間処理後の文字の滲み出し性を目視により以下の判断基準で評価した。
【0084】
○:文字が滲んでいない
×:文字が滲んでいる。
【0085】
[滞留安定性]
キャピログラフ1B(東洋精機製作所(株)製)を用いて、シリンダー温度250℃及びシェアレート1000s-1における樹脂組成物の溶融粘度(Pa・s)を、滞留時間9分及び15分において測定した。そして、15分間滞留させた溶融粘度に対する9分間滞留させた溶融粘度の比を求め、滞留安定性を評価した。両者の溶融粘度比が1に近いほど、滞留安定性が高いことを示している。
【0086】
[樹脂組成物の各成分]
(A)PBT(ポリテトラメチレンテレフタレート):300FP、ウィンテックポリマー(株)製
(B)PBT−M:熱硬化性樹脂で被覆された赤リン粉末(赤リン含量92重量%以上、ノーバエクセル140、燐化学工業(株)製)を、PBT(A)に30重量%練り込んだマスターバッチ
(C)ホウ酸カルシウム:U.B.POWDER、キンセイマテック(株)製
(D)ノボラック型フェノール樹脂:PR53647、住友ベークライト(株)製、重量平均分子量840
(F−1)メラミン:三菱化学(株)製
(F−2)メラミン樹脂:大日ケミカル(株)
(F−3)アラントイン:川研ファインケミカル(株)製
(F−4)CTUグアナミン:味の素ファインテクノ(株)製
(F−5)ヒンダードアミン:サノールLS−770、三共(株)製
(G)ガラス繊維:CS3PE948S、日東紡(株)製、繊維径13μm、繊維長3mm。
【0087】
実施例1〜7及び比較例1〜4
前記成分を表1及び表2に示す割合(重量部)で、二軸押出機のTEX30(日本製鋼所(株)製、スクリュー径30mm)に供給し、シリンダー温度250℃、吐出量はいずれも15kg/時間、スクリュー回転数140rpmで溶融混練し、カッターによりペレット化した。実施例及び比較例のいずれの樹脂組成物も、ストランド切れが殆ど起こらず、押出加工性は安定であった。
【0088】
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、溶融温度250℃、金型温度80℃の条件に設定し、試験片を作製した。これらのペレット、試験片を用いて、前記評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
表1及び表2から明らかなように、実施例1〜7では、いずれも難燃性が高く、金属の腐食が抑制され、成形品表面の滲み出しが少なく、滞留安定性が優れている。特に、実施例1〜5では、いずれの特性も高いレベルを保持している。
【0092】
これに対して、比較例1〜2では、金属腐食の抑制と難燃性の向上とを両立できない。比較例3では、難燃性が低下するとともに、成形品表面からの滲み出しが激しくなる。なお、比較例4では、滞留安定性も低下している。
【発明の属する技術分野】
本発明は、リン系難燃剤の安定性を高め、作業性及び安全性に優れるとともに、電気特性などに影響を及ぼすガス発生量を低減した非ハロゲン系難燃性樹脂組成物及びその成形体(電気・電子部品など)に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は、物理的および化学的に優れた性質を備えることから、電気、機械、自動車および建築等の広い分野で多量に用いられている。例えば、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂は、優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性などを有するため、電気・電子分野、自動車分野などの用途の成形品として広く利用されている。これらの中で、難燃性が要求される用途は多く、主にハロゲン化合物やアンチモン化合物を難燃剤や難燃助剤として使用することにより難燃性を付与している。
【0003】
しかし、ハロゲン系難燃剤は、分解生成物が電気製品である金属を腐蝕し易く、また、一部のハロゲン系難燃剤は、有毒ガスの発生など、環境への影響が大きい。従って、非ハロゲン系難燃剤が求められている。
【0004】
代表的な非ハロゲン系難燃剤としては、リン化合物が挙げられ、例えば、有機リン化合物として、トリフェニルホスフェート(TPP)などの低分子リン酸エステルが従来から一般的に使用されている。しかし、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂は、比較的加工温度が高く、低分子量のリン酸エステルの場合は、ブリードアウトが発生すると共に、耐熱性が充分でない。
【0005】
一方、リン系化合物のなかでも赤リンは、比較的少量の添加で樹脂組成物に有効な難燃性を付与することができ、樹脂本来の耐熱性や機械的強度を低下させることが少ない。さらに、赤リンは難燃剤として、汎用プラスチックからエンジニアリングプラスチックに至るまで幅広く適用できる。
【0006】
例えば、ジャーナル・オブ・ファイア・リターダント・ケミストリー(Journalof Fire Retardant Chemistry),vol.7,第69-76頁(1980年)には、赤リン及びフェノール樹脂によって難燃化されたポリスチレンが開示されている。また、プラスチックス・エンジニアリング(Plastics Engineering),November,第29-31頁(1993年)には、赤リン及びフェノール樹脂によって難燃化されたPBTが開示されている。
【0007】
しかし、赤リンは、熱、摩擦及び衝撃などに対して不安定であり、保管や取扱いに危険を伴い、特に樹脂との混練時に危険を伴う。従って、赤リンを樹脂に配合する場合、市販の赤リンがそのまま用いられることは少なく、赤リンに皮膜を形成して安定化処理を施した上で用いるのが通常である。
【0008】
例えば、特公平2−37379号公報には、150℃以上の軟化点を有するポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレートなど)、熱可塑性樹脂で被覆された安定化赤リン及び強化充填剤で構成された難燃性ポリエステル系樹脂組成物が開示されている。しかし、このような安定化処理を施しても赤リンは、空気中の水分や酸素と反応して僅かながら有害ガスであるホスフィンを生成し、環境負荷ばかりでなく、電気・電子部品の安全かつ安定動作に悪影響を及ぼす。
【0009】
特開2000−297216号公報には、熱可塑性ポリエステル、特定のノボラック型フェノール樹脂及び安定化赤リンで構成された難燃性樹脂組成物が開示されている。この文献には、任意の添加剤として、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫化モリブデン、酸化銅などを配合することが記載されているが、酸化銅は電気特性を損うため、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫化モリブデンが好ましいと記載されている。この樹脂組成物では、フェノールガスの発生は抑制されているものの、金属の腐食性に関しては改善されていない。従って、この材料から得られる成形品を電気・電子部品として応用した場合、電気・電子部品中の金属部品の腐食が激しく、製品の安全性が充分でない。また、難燃性も充分ではなく、特に薄肉成形品においては難燃性が低下する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高いレベルで難燃化できるとともに、電気特性に影響を及ぼすガスの発生を抑制できる難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、薄肉成形品においても高い難燃性を有する難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、安全性及び作業性に優れるとともに、ブリードアウトを抑制できる難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討の結果、熱可塑性樹脂に、リン系難燃剤と、ホウ酸金属塩と、ノボラック型フェノール系樹脂と、特定の標準電極電位を有する化合物とを組み合わせて添加すると、高いレベルで難燃化できるとともに、電気特性に影響を及ぼすガスの発生を抑制できることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)、リン系難燃剤(B)、ホウ酸金属塩(C)、ノボラック型フェノール系樹脂(D)、及び25℃における水溶液系の標準電極電位が+0.4V以上の化合物(E)で構成されている。前記熱可塑性樹脂(A)は、芳香族ポリエステル系樹脂、例えば、C2-4アルキレンアリレート単位を有するホモ又はコポリエステル(ポリブチレンテレフタレート系樹脂など)などで構成されていてもよい。前記リン系難燃剤(B)は、赤リンであってもよい。また、前記リン系難燃剤は、例えば、実質的に破砕面を有していない球状赤リン粒子と、この赤リン粒子を被覆する熱硬化性樹脂とで構成されていてもよく、その平均粒径は0.5〜40μm程度であってもよい。前記ホウ酸金属塩(C)は、アルカリ土類金属ホウ酸塩、周期表第2B族金属ホウ酸塩、これらの水和物(例えば、ホウ酸亜鉛の水和物及び/又はホウ酸カルシウムの水和物など)などで構成されていてもよい。前記ノボラック型フェノール系樹脂(D)の重量平均分子量は300〜20000(特に500〜15000)程度である。前記化合物(E)は、平均粒径0.1〜50μm程度であり、25℃における水溶液系の標準電極電位が+0.4〜+3Vの粉粒状無機化合物などであってもよい。各成分の割合は、例えば、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、リン系難燃剤(B)1〜50重量部(特に3〜30重量部)、ホウ酸金属塩(C)0.05〜50重量部(特に0.1〜45重量部)、ノボラック型フェノール系樹脂(D)3〜70重量部(好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部)、化合物(E)0.001〜20重量部(特に0.01〜10重量部)程度であってもよい。前記難燃性樹脂組成物は、さらに、ヒンダードアミン類、トリアジン類、尿素類、窒素含有樹脂などの窒素含有化合物(F)を含んでいてもよい。また、前記難燃性樹脂組成物は、さらに、無機充填剤(G)を含んでいてもよい。
【0015】
本発明には、前記難燃性樹脂組成物で形成された電気・電子部品用成形品も含まれる。
【0016】
【発明の実施の形態】
[熱可塑性樹脂(A)]
熱可塑性樹脂(A)としては、成形用として利用される種々の樹脂、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。これらのうち、機械特性、耐熱性、耐薬品性などの点から、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0017】
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、オキシカルボン酸又はラクトンの重縮合、またはこれらの成分の重縮合などにより得られるホモポリエステル又はコポリエステルである。好ましいポリエステル系樹脂は、通常、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合により得られた芳香族ポリエステル系樹脂(芳香族飽和ポリエステル系樹脂)が含まれる。
【0018】
ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの炭素数4〜40程度のジカルボン酸、好ましくは炭素数4〜14程度のジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などの炭素数8〜12程度のジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メチルイソフタル酸、メチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4′−ジオキシ安息香酸、4,4′−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルケトンジカルボン酸などの炭素数8〜16程度のジカルボン酸)、又はこれらの誘導体(例えば、低級アルキルエステル、アリールエステル、酸無水物などのエステル形成可能な誘導体)などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
好ましいジカルボン酸成分には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸(特にテレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸)が含まれる。ジカルボン酸成分中には、例えば、50モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上程度の芳香族ジカルボン酸が含まれているのが好ましい。さらに、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸などを併用してもよい。
【0020】
ジオール成分には、例えば、脂肪族アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールなどの炭素数2〜12程度の脂肪族グリコール、好ましくは炭素数2〜10程度の脂肪族グリコール)、ポリオキシアルキレングリコール[アルキレン基の炭素数が2〜4程度であり、複数のオキシアルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど]、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなど)などが挙げられる。また、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコールなどの芳香族ジオールを併用してもよい。これらのジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0021】
好ましいジオール成分には、C2-10アルキレングリコール(エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖状アルキレングリコール)などが含まれる。ジオール成分中には、例えば、50モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のC2-10アルキレングリコールが含まれているのが好ましい。さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオールを併用してもよい。
【0022】
好ましいポリエステル系樹脂には、アルキレンテレフタレート、アルキレンナフタレートなどのアルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50〜100モル%、好ましくは75〜100モル%程度)とするホモポリエステル又はコポリエステル[例えば、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート)、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリテトラメチレンナフタレートなどのポリC2-4アルキレンナフタレート)などのホモポリエステル;アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレート単位を主成分(例えば、50モル%以上)として含有するコポリエステル]が含まれる。特に好ましいポリエステル系樹脂は、エチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、テトラメチレンテレフタレート、テトラメチレン−2,6−ナフタレートなどのC2-4アルキレンアリレート単位を80モル%以上(特に90モル%以上)含むホモポリエステル又はコポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなど)である。コポリエステルにおいて、C2-4アルキレンアリレート単位の含有量は70〜100モル%、好ましくは80〜100モル%(特に90〜100モル%)程度であってもよい。
【0023】
ポリエステル系樹脂の固有粘度(25℃でのオルソクロロフェノール中での測定値をもとに算出された値)は、0.5〜1.4dl/g、好ましくは0.6〜1.2dl/g程度である。固有粘度が高すぎると流動性が低下し、固有粘度が低すぎると機械的強度が低下する。
【0024】
[リン系難燃剤(B)]
リン系難燃剤(B)は、リン原子を有する化合物である限り、特に制限されないが、例えば、無機リン化合物[例えば、赤リンや、オルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸(メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等)、ポリ亜リン酸(メタ亜リン酸、ピロ亜リン酸等)などの非縮合又は縮合(亜)リン酸塩(カルシウムなどの金属塩など)など]、有機リン化合物[リン酸エステル(リン酸トリフェニルなどの芳香族リン酸エステルなど)、リン酸エステルアミド、ホスホニトリル化合物((ポリ)フェノキシホスファゼンなど)、有機ホスホン酸化合物(メタンホスホン酸ジフェニルやフェニルホスホン酸ジエチルなどのホスホン酸エステルなど)、有機ホスフィン酸化合物(ホスフィン酸メチルなど)、ホスフィンオキシド(トリフェニルホスフィンオキシド、トリクレジルホスフィンオキシドなど)など]などが例示できる。これらのリン系難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのリン系難燃剤のうち、無機リン化合物、特に赤リンが好ましい。
【0025】
赤リンとしては、粒子状または粉末状の赤リンを用いる。また、赤リンは、安定性を向上するために、被覆層を形成して安定化赤リンとして用いるのが好ましい。赤リンの安定化処理は、通常、赤リン粒子に少なくとも一つの被覆層を形成することによって行われる。被覆層には、有機物(熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂など)及び無機物(金属水酸化物や金属酸化物等の金属化合物など)のいずれも用いることができる。このような安定化赤リンを用いると、高温、機械的ショックなどによる発火やホスフィン発生などが抑制される。
【0026】
赤リンの表面を被覆するための熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂(メラミン系樹脂、尿素系樹脂、アニリン系樹脂等)、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等が挙げられ、金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化スズ等が挙げられる。これらの樹脂及び金属化合物は、同系統又は異なる系統で、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
さらに、赤リンの表面を金属で被覆し安定化する方法としては、例えば、無電解メッキ法により、金属(鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、亜鉛、マンガン、スズ、チタン、ジルコニウム等)又はこれらの合金で被覆する方法が挙げられる。その他の赤リン表面の被覆方法としては、金属塩(アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、チタン、銅、銀、鉄、ニッケル等の塩)の溶液で赤リンを処理し、赤リンの表面に金属リン化合物を形成させて安定化する方法なども含まれる。
【0028】
これらのうち、赤リン粒子の被覆層は、熱硬化性樹脂で形成するのが好ましい。さらに、金属化合物の被覆層と組み合わせてもよく、特に金属化合物の被膜で被覆した上に、熱硬化性樹脂で少なくとも1層(特に多層)に被覆処理するのが好ましい。熱硬化性樹脂で被覆された赤リン粉末は、赤リン単独に比べて取扱い等の安全性の点で著しく改善されているが、使用に際しては、さらに安全性を期すためにも、熱可塑性樹脂と予め溶融混練されたマスターバッチとして用いるのが好ましい。
【0029】
赤リン粒子に対する被覆層の割合は、赤リン粒子100重量部に対して、例えば、0.5〜50重量部、好ましくは1〜35重量部(特に1〜20重量部)程度である。
【0030】
なお、赤リン粒子の形状は球体様(球状)であるのが好ましい。赤リン粒子の形状は製造方法によって異なり、例えば、粉砕工程を経て製造された赤リン粒子が破砕面のある粒子形状を有するのに対して、粉砕工程を経ずに製造された赤リン粒子は実質的に破砕面のない粒子形状(球体様の形状)を有する。球状の赤リン粒子は、欠損のない被覆層を形成し易く、形成された被覆層の剥離も少ない。そのため、赤リン粒子としては、例えば、黄リンの転化処理によって、直接得られ、かつ実質的に破砕面のない球体様粒子(球状粒子)が好ましい。このような球体様赤リン粒子を用いることにより、表面が極めて安定化され、赤リンの安定化が高まり、組成物の安定性が向上する。このような球体様赤リン粒子は、例えば、次の方法で製造することができる。
【0031】
すなわち、不活性ガスで置換した密閉容器中で、黄リンを沸点付近の温度に加熱して赤リンの転化反応を開始させ、転化率又は赤リンの粒径が所望の水準に達すると反応を停止し、未転化の黄リンを留去すると、粉砕する必要のない微小球体様粒子又はその集合体で構成された無定形赤リンが得られる。反応時間、反応温度によって転化率や赤リンの粒径が調節されるが、反応温度は250〜350℃程度が好ましく、転化率は60%以下程度が好ましい。
【0032】
赤リン粒子の平均粒径は、0.1〜150μmの範囲から選択でき、安定化赤リン粒子の平均粒径は200μm以下(例えば、0.5〜200μm)、好ましくは1〜150μm、さらに好ましくは3〜100μm(特に5〜50μm)程度であってもよい。この範囲の平均粒径の安定化赤リンを用いると、樹脂組成物の機械的物性を維持することができる。
【0033】
リン系難燃剤(B)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。リン系難燃剤(B)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは3〜30重量部、さらに好ましくは5〜20重量部程度であってもよい。リン系難燃剤の割合が少なすぎると難燃化効果に乏しく、多すぎると機械的特性が大幅に低下するとともに、ホスフィンの発生量を増加させる。
【0034】
[ホウ酸金属塩(C)]
ホウ酸金属塩のホウ酸としては、オルトホウ酸、メタホウ酸等の非縮合ホウ酸;ピロホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸などの縮合ホウ酸、並びに塩基性ホウ酸などが好ましい。金属は、アルカリ金属などであってもよいが、アルカリ土類金属、遷移金属、周期表2B族金属の多価金属であるのが好ましい。
【0035】
ホウ酸金属塩は、通常、含水塩であり、例えば、非縮合ホウ酸塩[オルトホウ酸カルシウム、メタホウ酸カルシウムなどのアルカリ土類金属非縮合ホウ酸塩;オルトホウ酸マンガン、メタホウ酸銅などの遷移金属非縮合ホウ酸塩;メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸カドミウムなどの周期表第2B族金属の非縮合ホウ酸塩(特にメタホウ酸塩)など]、縮合ホウ酸塩(四ホウ酸三マグネシウム、ピロホウ酸カルシウムなどのアルカリ土類金属縮合ホウ酸塩;四ホウ酸マンガン、二ホウ酸ニッケルなどの遷移金属縮合ホウ酸塩;四ホウ酸亜鉛、四ホウ酸カドミウムなどの周期表第2B族金属の縮合ホウ酸塩など);塩基性ホウ酸塩(塩基性ホウ酸亜鉛、塩基性ホウ酸カドミウムなどの周期表第2B族金属の塩基性ホウ酸塩など)などが挙げられる。また、これらのホウ酸塩に対応するホウ酸水素塩(例えば、オルトホウ酸水素マンガンなど)なども使用できる。ホウ酸金属塩(C)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。特に、アルカリ土類金属又は周期表第2B族金属ホウ酸塩(非縮合又は縮合ホウ酸塩)、例えば、ホウ酸亜鉛類及びホウ酸カルシウム類が好ましい。
【0036】
ホウ酸亜鉛類には、ホウ酸亜鉛(2ZnO・3B2O3)やホウ酸亜鉛・3.5水和物(2ZnO・3B2O3・3.5H2O)等が含まれ、ホウ酸カルシウム類には、ホウ酸カルシウム(2CaO・3B2O3)やホウ酸カルシウム・5水和物(2CaO・3B2O3・5H2O)等が含まれる。これらのホウ酸亜鉛類やホウ酸カルシウム類の中でも、特に水和物が好ましい。
【0037】
ホウ酸金属塩(C)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.05〜50重量部、好ましくは0.1〜45重量部、さらに好ましくは1〜40重量部(特に10〜40重量部)程度であってもよい。ホウ酸金属塩の割合が少なすぎると、難燃性が低下するとともに、高温多湿下で成形品の表面に滲み出しが発生する。一方、多すぎると、樹脂組成物の安定性が低下し、成形品の機械的特性も低下する。
【0038】
[ノボラック型フェノール系樹脂(D)]
ノボラック型フェノール系樹脂は、例えば、フェノール類と、アルデヒド類との反応により得られる。
【0039】
フェノール類としては、例えば、フェノール、o−,p−又はm−クレゾール、3,5−キシレノール、アルキルフェノール(例えば、t−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのC1-20アルキルフェノール)、アリールフェノール(例えば、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール)などが挙げられる。これらのフェノール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
好ましいフェノール類は、フェノール、クレゾール(オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール)である。フェノール類には、フェノール及び/又はクレゾールが、例えば、70モル%以上、好ましくは80モル%以上含まれているのが好ましい。
【0041】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなどが挙げられる。これらのアルデヒド類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0042】
好ましいアルデヒド類としては、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。また、トリオキサン、パラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒドの縮合体も使用できる。
【0043】
フェノール類とアルデヒド類との割合(モル比)は、前者/後者=1/0.4〜1/1、好ましくは1/0.5〜1/1程度である。
【0044】
フェノール類とアルデヒド類との縮合反応は、通常、酸触媒の存在下で行われる。酸触媒としては、例えば、無機触媒(例えば、塩酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸などの無機酸など)、有機触媒[有機酸(ギ酸、シュウ酸、マレイン酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル−p−トルエンステアリン酸など)や、脂肪酸又はナフテン酸金属塩(鉛、カルシウム、錫、亜鉛などの二価金属塩など)]などが挙げられる。
【0045】
ノボラック型フェノール系樹脂の重量平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜20000、好ましくは500〜15000、さらに好ましくは600〜10000(特に600〜5000)程度の範囲から選択できる。
【0046】
ノボラック型フェノール系樹脂(D)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、3〜70重量部、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部程度であり、高度な難燃性を付与するためには、10〜40重量部程度であるのが特に好ましい。ノボラック型フェノール系樹脂の割合が少なすぎると、難燃性が低下し、多すぎると、成形品の機械的特性が低下する。
【0047】
本発明では、リン系難燃剤(特に赤リン)と、ホウ酸金属塩と、ノボラック型フェノール系樹脂とを組み合わせて用いることにより、熱可塑性樹脂(特に芳香族ポリエステル系樹脂)に対する難燃化効果を高めることができ、特に、成形品を薄肉化(例えば、0.5mm以下のシート状)しても、難燃性を確保することができる。
【0048】
[化合物(E)]
化合物(E)としては、25℃における水溶液系の標準電極電位(E°)が+0.4V以上の化合物が使用でき、このような化合物(E)は、改訂3版化学便覧基礎編II(丸善(株))などを参照できる。本発明では、化合物(E)として、通常、非ハロゲン系であり、かつ非毒性化合物が使用される。また、化合物(E)は、有機化合物であってもよいが、一般に無機化合物である。
【0049】
化合物(E)の前記標準電極電位(E°)は、通常、+0.4〜+3Vの範囲から選択でき、好ましくは+0.4〜+2V、さらに好ましくは+0.4〜+1.5V(特に+0.45〜+1.3V)程度であってもよい。前記標準電極電位が+0.4V以上の化合物を用いると、実質的にホスフィンの発生を抑制できる樹脂組成物が得られる。
【0050】
化合物(E)の具体例としては、例えば、酸化銅[Cu2O(0.47)、CuO(0.57)]、酸化銀[AgO(0.57)、Ag2O3(0.74)]、酸化コバルト[Co3O4(0.78)、Co2O3(1.02)]、酸化パラジウム[PdO(0.85)、PdO2(1.46,1.47)]、酸化マンガン[MnO2(0.98,1.23)]、酸化モリブデン[MoO4(0.86,1.40)]、Sb2O3(0.86)、酸化ニッケル[NiO2(0.49,1.59)、Ni2O3(1.03)]、酸化テルル[TeO2(0.52)]、Cr(0.55)、硫酸銀[AgSO4(0.65)]、O2(0.68)、キノン[C6H4O2(0.70)]、酸化白金[PtO(0.98)]、酸化ルテニウム[RuO4(0.99)]、酸化ポロニウム[PoO3(1.47)]、複合金属酸化物[AgCrO4(0.45)、Ag2CrO4(0.46)、AgCr2O4(0.46)、Ag2WO4(0.47)、Ag2MoO4(0.49)等]などが例示できる。なお、参考までに、前記標準電極電位を括弧内に記載する。これらの化合物(E)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの化合物のうち、ハンドリング性やコストの点から、金属酸化物、例えば、酸化銅[Cu2O、CuO]や酸化マンガン[MnO2]などが好ましい。
【0051】
化合物(E)は、通常、粉粒状で使用され、平均粒子径は、溶融混練性、成形性や難燃性、成形品の特性を損なわない範囲であればよく、例えば、100μm以下(例えば、0.01〜100μm)、好ましくは0.05〜70μm、さらに好ましくは0.1〜50μm程度であってもよい。粉粒状化合物は、例えば、タイラー(Tyler)表記の200メッシュ以上の篩を通過する粉粒体(例えば、平均粒子系74μm以下の粉粒体)を好ましく使用できる。200メッシュ以上の篩にかけずに使用すると、粒子径が大きく、ホスフィンの低減効果が小さい。さらに、押出や成形時に装置のスクリューを摩耗させる。
【0052】
化合物(E)の純度は85%(特に90%)以上が好ましい。純度は、それぞれの化合物について、JISの試薬の品位に準じて測定できる。純度が85%未満であると、硫酸イオンなどが成形品から染み出し、電気・電子用途の成形品では、製品の動作安定性を著しく抑制する場合がある。
【0053】
また、化合物(E)は、押出ペレットや成形品に実質的に含まれていればよく、樹脂組成物を調製する前段階では、上記標準電極電位を有する化合物である必要はなく、例えば、調製過程で酸化処理などを施して、前記化合物(D)としてもよい。
【0054】
化合物(E)の割合は、芳香族ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜20重量部、好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部(特に0.1〜3重量部)程度であってもよい。化合物(E)の割合が少なすぎると、ホスフィン発生の抑制効果が低下し、多すぎると、樹脂組成物の安定性が低下し、機械的特性も低下する。
【0055】
[窒素含有化合物(F)]
本発明の樹脂組成物には、ガスの発生を抑制し、難燃性を向上させるため、さらに窒素含有化合物(F)を含有させるのが好ましい。窒素含有化合物(F)は、窒素原子を有する化合物である限り、特に制限されず、例えば、窒素原子を含有する低分子化合物や高分子化合物(窒素含有樹脂)などが含まれる。
【0056】
窒素含有低分子化合物としては、例えば、アンモニウム化合物(リン酸アンモニウム塩などの酸素酸アンモニウム塩など)、アミン類[脂肪族アミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなど)、芳香族アミン(o−トルイジン、p−トルイジン、p−フェニレンジアミンなどの芳香族第2級又は3級アミンなど)など]、ヒンダードアミン類[ポリC1-3アルキルピペリジン又はその誘導体(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのビス(トリ乃至ペンタC1-3アルキルピペリジル)C2-20アルカンジカルボン酸エステル)など]、アミド化合物(マロンアミド、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、p−アミノベンズアミドなど)、ヒドラジン又はその誘導体(ヒドラジン、アセトンヒドラゾンやベンズフェノンヒドラゾンなどのヒドラゾン、マロンジヒドラジドなどの多価カルボン酸ヒドラジドなど)、尿素類[非環状尿素化合物(尿素、メチレンジウレア、ビウレット、ビウレアなど)、環状尿素化合物(エチレン尿素、ヒダントイン、アラントイン、尿酸、アセチレン尿素など)、チオ尿素又はその誘導体など]、トリアジン類[メラミン化合物(メラミン、2−メチルメラミン、グアニルメラミン、メラミン縮合物(メラム、メレム、メロンなど))、グアナミン化合物(グアナミン、メチルグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、CTU−グアナミンなど)、これらのトリアジン類と(イソ)シアヌール酸との塩(メラミンシアヌール酸など)、これらのトリアジン類と酸素酸との塩(リン酸メラミンなど)など]、ウラシル類(ウラシル、ウリジンなど)、シトシン(シトシン、シチジンなど)などが挙げられる。
【0057】
窒素含有樹脂としては、例えば、アミノ樹脂[尿素樹脂、チオ尿素樹脂、メラミン系樹脂(例えば、メラミン樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド樹脂)、グアナミン樹脂などの単独縮合樹脂や、尿素−メラミン樹脂、尿素−ベンゾグアナミン樹脂、フェノール−メラミン樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン樹脂、芳香族ポリアミン−メラミン樹脂などの共縮合樹脂など)、芳香族アミン−ホルムアルデヒド樹脂(例えば、アニリン樹脂など)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン3、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、ナイロン4−6、ナイロン6−10、ナイロン6−11、ナイロン6−12、ナイロン6−66−610などの単独又は共重合ポリアミド、メチロール基やアルコキシメチルなどを有する置換ポリアミドなど)、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルアミド、ポリアミノチオエーテルなどが挙げられる。
【0058】
これらの窒素含有化合物(F)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ヒンダードアミン類[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのビス(トリ乃至ペンタC1-3アルキルピペリジル)C2-20アルカンジカルボン酸エステルなど]、尿素類(尿素などの非環状尿素化合物、アラントインやアセチレン尿素などの環状尿素化合物など)、トリアジン類(メラミンやグアナミン、CTUグアナミンなどのアミノ基を有するトリアジン化合物など)、窒素含有樹脂(メラミン樹脂などのメラミン系樹脂や尿素樹脂、ポリアミド樹脂など)、特に、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ジカルボキシレートなどのヒンダードアミン類、アラントインなどの環状尿素化合物、トリアジン環を有する化合物や樹脂(メラミン、グアナミン、メラミン樹脂など)が好ましい。
【0059】
窒素含有化合物(F)の割合は、芳香族ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは0.01〜2重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部程度であってもよい。窒素含有化合物(F)の割合が少なすぎると、ガス発生の抑制効果が小さく、多すぎると、樹脂組成物の滞留安定性が低下する。
【0060】
[無機充填剤(G)]
本発明の樹脂組成物には、機械的強度、剛性、耐熱性及び電気的性質等をさらに向上させるため、さらに無機充填剤(G)を含有させるのが好ましい。無機充填剤には、繊維状充填剤、非繊維充填剤(板状充填剤、粉粒状充填剤など)が含まれる。
【0061】
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、繊維状ウォラストナイト、シリカ・アルミナ繊維、ボロン繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維等が例示できる。
【0062】
非繊維状充填剤のうち、板状又は鱗片状充填剤には、例えば、カオリン、タルク、ガラスフレーク、マイカ、グラファイト、各種金属箔などが例示できる。
【0063】
粉粒状又は無定形状充填剤には、カーボンブラック、ホワイトカーボン、炭化ケイ素、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー(ミルドガラスファイバーなど)、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、長石系鉱物、クレー、ケイ藻土等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等)、金属の炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、金属の硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)、金属粉末などが含まれる。
【0064】
これらの無機充填剤の使用に当たっては、必要ならば、収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。このような収束剤又は表面処理剤としては、官能性化合物が含まれる。前記官能性化合物としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、好ましくはエポキシ系化合物、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0065】
無機充填剤は、前記収束剤又は表面処理剤により、収束処理又は表面処理されていてもよい。処理の時期については、無機充填剤の添加と同時に処理してもよく、添加前に予め処理してもよい。
【0066】
また、併用される官能性表面処理剤又は収束剤の使用量は、無機充填剤に対して5重量%以下、好ましくは0.05〜2重量%程度である。
【0067】
これらの無機充填剤(G)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機充填剤のうち、繊維状無機充填剤、例えば、機械的強度及び耐熱性などの点で、ガラス繊維(例えば、チョップドストランドなど)が好ましい。
【0068】
無機充填剤(G)の割合は、例えば、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、さらに好ましくは5〜150重量部(特に10〜150重量部)程度である。
【0069】
[他の添加剤]
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤又は熱安定剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、可塑剤、離型剤、顔料、難燃性改質剤(ポリテトラフルオロエチレンなどのドリッピング防止剤)、核剤、帯電防止剤などが含まれていてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0070】
これらの添加剤の割合は、それぞれ又は総量で、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部程度であってもよい。
【0071】
さらに、本発明の樹脂組成物には、熱可塑性エラストマー(オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマーなど)などの衝撃改良剤などが含まれていてもよい。
【0072】
これらの衝撃改良剤の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは1〜50重量部程度であってもよい。
【0073】
[製造方法]
本発明の難燃性樹脂組成物は、粉粒体混合物や溶融混合物であってもよく、熱可塑性樹脂(A)と、リン系難燃剤(B)と、ホウ酸金属塩(C)と、ノボラック型フェノール系樹脂(D)と、化合物(E)と、必要により他の添加剤などとを慣用の方法で混合することにより調製できる。例えば、(1)各成分を混合して、一軸又は二軸押出機により混練し押出してペレットを調製し、このペレットを成形に供して成形品を得る方法、(2)一旦、組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、所定の組成の成形品を得る方法、(3)成形機に各成分の1種又は2種類以上を直接仕込み成形して成形品とする方法等を用いることができる。
【0074】
さらに、押出機によるペレットの製造方法としては、(1)脆性充填剤(例えば、ガラス系充填剤)を除く成分を先に溶融混合した後に、脆性充填剤成分を混合する製造方法、(2)リン系難燃剤(例えば、赤リンなど)及び脆性充填剤を除く成分を先に溶融混合した後に、脆性充填剤及びリン系難燃剤を(同じフィード位置で)同時混合する製造方法、(3)リン系難燃剤及び脆性充填剤を除く成分を先に溶融混合した後に、脆性充填剤及びリン系難燃剤を(別々のフィード位置で)順次混合する製造方法等が採用できる。この押出機によるペレット製造において、少量の芳香族化合物やハロゲン化合物を分散助剤として押出時に配合してもよい。この分散助剤は押出機のベント口から混練樹脂より除去されてもよい。また、成形品に用いられる組成物の調製において、樹脂成分の粉粒体(例えば、熱可塑性樹脂の一部又は全部を粉砕した粉粒体)と、他の成分(難燃剤など)とを混合して溶融混練すると、他の成分の分散を向上させるのに有利である。
【0075】
なお、ハンドリングの観点から、非樹脂状成分と樹脂状成分とを一旦溶融混合することにより、マスターバッチを調製すると便利である。特に、赤リンはマスターバッチとして調製する場合が多い。
【0076】
また、本発明の難燃性樹脂組成物を溶融混練し、押出成形、射出成形、圧縮成形などの慣用の方法で成形でき、形成された成形品は、難燃性及び成形加工性に優れているため、種々の用途に使用できる。例えば、電気・電子部品、オフィスオートメーション(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、自動車機構部品、包装材料やケースなどに用いることができる。特に、本発明の樹脂組成物は、薄肉成形品(例えば、厚み0.5mm以下の薄肉成形品)であっても、高度な難燃性を付与することができるため、少なくとも一部に薄肉部分を有する成形品に適している。
【0077】
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、高度な難燃性を有するとともに、電気特性に影響を及ぼすガスの発生を抑制できるため、金属部材(特に銀などの腐食性金属)に対する腐食性が低いので、前記用途の中でも、電気・電子部品(例えば、スイッチ部品、モーター部品、イグニッションコイルケース、コイルボビン、コネクター、リレーケース、ヒューズケース、フライバクトランス部品、フォーカスブロック部品、ディスリビューターキャップ、ハーネスコネクターなど)、特に金属接点を有する部品(例えば、接点や端子等の金属部を有する電子・電気部品)に有用である。
【0078】
【発明の効果】
本発明では、熱可塑性樹脂と、リン系難燃剤と、ホウ酸金属塩と、ノボラック型フェノール系樹脂と、特定の標準電極電位を有する化合物とを組み合わせるので、高いレベルで難燃化できるとともに、電気特性に影響を及ぼすガスの発生を抑制できる。特に、この難燃性樹脂組成物を用いて得られた成形品は、薄肉成形品であっても高い難燃性を有する。さらに、得られた成形品は、ブリードアウトも抑制されているとともに、ハロゲン系難燃剤を使用していないため、安全性及び作業性に優れる。
【0079】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、下記の試験により樹脂組成物の各種特性を評価した。また、樹脂組成物の調製に用いた各成分は以下の通りである。
【0080】
[難燃性]
UL94規格垂直燃焼試験法により、0.4mm厚みの試験片を用いて難燃性を評価した。難燃性はUL94に記載の評価方法に従って、V−0,V−1,V−2,HBに分類した。
【0081】
[金属腐食性]
試料を130℃で5時間乾燥して乾燥ペレットとした。乾燥ペレットの3gを22mlのバイアル瓶に詰め、短冊状の銀板を入れて密封した。密封したバイアル瓶を120℃、72時間オーブンに入れ、腐食の状態を目視により以下の判断基準で評価した。
【0082】
◎:金属表面に光沢を有し、曇りがない
○:金属表面に部分的に僅かなしみができるものの、光沢を有する
×:金属表面に光沢がなく、曇っている。
【0083】
[成形品表面の滲み出し性]
0.8mm厚みの試験片に油性マジック(トンボ(株)製、F−1)で文字を記載し、121℃、100%RH下で48時間処理後の文字の滲み出し性を目視により以下の判断基準で評価した。
【0084】
○:文字が滲んでいない
×:文字が滲んでいる。
【0085】
[滞留安定性]
キャピログラフ1B(東洋精機製作所(株)製)を用いて、シリンダー温度250℃及びシェアレート1000s-1における樹脂組成物の溶融粘度(Pa・s)を、滞留時間9分及び15分において測定した。そして、15分間滞留させた溶融粘度に対する9分間滞留させた溶融粘度の比を求め、滞留安定性を評価した。両者の溶融粘度比が1に近いほど、滞留安定性が高いことを示している。
【0086】
[樹脂組成物の各成分]
(A)PBT(ポリテトラメチレンテレフタレート):300FP、ウィンテックポリマー(株)製
(B)PBT−M:熱硬化性樹脂で被覆された赤リン粉末(赤リン含量92重量%以上、ノーバエクセル140、燐化学工業(株)製)を、PBT(A)に30重量%練り込んだマスターバッチ
(C)ホウ酸カルシウム:U.B.POWDER、キンセイマテック(株)製
(D)ノボラック型フェノール樹脂:PR53647、住友ベークライト(株)製、重量平均分子量840
(F−1)メラミン:三菱化学(株)製
(F−2)メラミン樹脂:大日ケミカル(株)
(F−3)アラントイン:川研ファインケミカル(株)製
(F−4)CTUグアナミン:味の素ファインテクノ(株)製
(F−5)ヒンダードアミン:サノールLS−770、三共(株)製
(G)ガラス繊維:CS3PE948S、日東紡(株)製、繊維径13μm、繊維長3mm。
【0087】
実施例1〜7及び比較例1〜4
前記成分を表1及び表2に示す割合(重量部)で、二軸押出機のTEX30(日本製鋼所(株)製、スクリュー径30mm)に供給し、シリンダー温度250℃、吐出量はいずれも15kg/時間、スクリュー回転数140rpmで溶融混練し、カッターによりペレット化した。実施例及び比較例のいずれの樹脂組成物も、ストランド切れが殆ど起こらず、押出加工性は安定であった。
【0088】
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、溶融温度250℃、金型温度80℃の条件に設定し、試験片を作製した。これらのペレット、試験片を用いて、前記評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
表1及び表2から明らかなように、実施例1〜7では、いずれも難燃性が高く、金属の腐食が抑制され、成形品表面の滲み出しが少なく、滞留安定性が優れている。特に、実施例1〜5では、いずれの特性も高いレベルを保持している。
【0092】
これに対して、比較例1〜2では、金属腐食の抑制と難燃性の向上とを両立できない。比較例3では、難燃性が低下するとともに、成形品表面からの滲み出しが激しくなる。なお、比較例4では、滞留安定性も低下している。
Claims (18)
- 熱可塑性樹脂(A)、リン系難燃剤(B)、ホウ酸金属塩(C)、ノボラック型フェノール系樹脂(D)、及び25℃における水溶液系の標準電極電位が+0.4V以上の化合物(E)で構成された難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)が芳香族ポリエステル系樹脂で構成されている請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)が、C2-4アルキレンアリレート単位を有するホモ又はコポリエステルである請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- リン系難燃剤(B)が、赤リンで構成されている請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- リン系難燃剤(B)が、実質的に破砕面を有していない球状赤リン粒子と、この赤リン粒子を被覆する熱硬化性樹脂とで構成された球状リン系難燃剤である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 球状リン系難燃剤の平均粒径が0.5〜40μmである請求項5記載の難燃性樹脂組成物。
- ホウ酸金属塩(C)が、アルカリ土類金属ホウ酸塩、周期表第2B族金属ホウ酸塩、及びこれらの水和物から選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- ノボラック型フェノール系樹脂(D)の重量平均分子量が300〜20000である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 化合物(E)が、25℃における水溶液系の標準電極電位が+0.4〜+3Vの粉粒状無機化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、リン系難燃剤(B)1〜50重量部、ホウ酸金属塩(C)0.05〜50重量部、ノボラック型フェノール系樹脂(D)3〜70重量部、化合物(E)0.001〜20重量部を含有する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、ノボラック型フェノール系樹脂(D)の割合が、5〜50重量部である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- さらに、窒素含有化合物(F)を含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 窒素含有化合物(F)が、ヒンダードアミン類、トリアジン類、尿素類及び窒素含有樹脂から選択された少なくとも一種で構成されている請求項12記載の難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、窒素含有化合物(F)の割合が0.005〜5重量部である請求項12記載の難燃性樹脂組成物。
- さらに、無機充填剤(G)を含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂100重量部に対して、無機充填剤(G)0.1〜200重量部を含む請求項15記載の難燃性樹脂組成物。
- ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A1)100重量部に対して、安定化赤リン(B1)3〜30重量部、ホウ酸亜鉛の水和物及び/又はホウ酸カルシウムの水和物(C1)0.1〜45重量部、重量平均分子量500〜15000のノボラック型フェノール系樹脂(D1)10〜40重量部、及び平均粒径0.1〜50μmであり、25℃における水溶液系の標準電極電位が+0.4〜+3Vの金属酸化物(E1)0.01〜10重量部を含有する難燃性樹脂組成物。
- 請求項1記載の難燃性樹脂組成物で形成された電気・電子部品用成形品。
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WO2015037592A1 (ja) * | 2013-09-10 | 2015-03-19 | ウィンテックポリマー株式会社 | 難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物 |
CN114106045A (zh) * | 2021-10-27 | 2022-03-01 | 重庆大学 | 一种生物基磷氮型阻燃剂的制备及其应用 |
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