JP2004196008A - 樹脂製自動車ウィンドウおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハードコート層の硬度を低下させることなく耐久性を向上させた、ハードコートプラスチック製自動車ウィンドウを提供する。
【解決手段】図1(a)に示す樹脂製自動車ウィンドウ1は、基板2、ハードコート層3、プライマー層4の夫々に熱収縮を生じると、図1(b)に示すように、基板2が大きく収縮して、分割された各ハードコート層3の間隙3aの幅を狭める。一方、基板2、ハードコート層3、プライマー層4の夫々に熱膨張を生じると、図1(c)に示すように、基板2が大きく膨張して、分割された各ハードコート層3の間隙3aの幅を広げる。何れの場合も、基板2とハードコート層3とに生じる熱膨張の差を、プライマー層4で吸収し、基板2とハードコート層3との間に生じる熱応力を緩和することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】図1(a)に示す樹脂製自動車ウィンドウ1は、基板2、ハードコート層3、プライマー層4の夫々に熱収縮を生じると、図1(b)に示すように、基板2が大きく収縮して、分割された各ハードコート層3の間隙3aの幅を狭める。一方、基板2、ハードコート層3、プライマー層4の夫々に熱膨張を生じると、図1(c)に示すように、基板2が大きく膨張して、分割された各ハードコート層3の間隙3aの幅を広げる。何れの場合も、基板2とハードコート層3とに生じる熱膨張の差を、プライマー層4で吸収し、基板2とハードコート層3との間に生じる熱応力を緩和することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気象条件の変化による劣化の影響を受けることのない、改良されたハードコートプラスチック製自動車ウィンドウと、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、透明プラスチック基板にハードコート層を形成することにより、ガラスよりも軽量で、かつ、基板自体の持つ強度を補強したハードコートプラスチック(例えば、特許文献1参照。)が、様々な用途に用いられている。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−56002号公報(第2項、〔0007〕、〔0008〕)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ガラスと同程度の耐傷つき性を持つハードコート層を、ポリカーボネート製の透明基板上に設けたハードコートプラスチックは、ハードコート層にクラックが生じたり、長期の使用においてハードコート層の剥離を生ずる等の問題が発生することがある。このクラック発生等の問題は、ポリカーボネートとハードコート層との熱膨張率の違い(70:3)により、ハードコート層に生ずる応力が主な原因である。したがって、ハードコート層の硬度を低下させて、ポリカーボネートとハードコート層との熱膨張率の差を少なくすればクラックの発生等を防ぐことが可能となる。しかしながら、ハードコート層の硬度を低下させた結果、必要な耐傷つき性を得ることができなくなるといった別の問題が生じることとなる。このため、高強度、高耐久性を要求される自動車ウィンドウに、ハードコートプラスチックを用いる場合には、ハードコート層の硬度を低下させることなくクラック発生等の問題を解決することが必要不可欠となる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハードコート層の硬度を低下させることなく耐久性を向上させた、ハードコートプラスチック製自動車ウィンドウを提供することにより、樹脂製自動車ウィンドウの採用の機会を広げ、自動車ウィンドウの軽量化を促進することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための、本発明の請求項1に係る樹脂製自動車ウィンドウは、ポリカーボネート製の基板と、当該基板上に設けられた分割されたハードコート層とを有することを特徴とするものである。
本発明によれば、前記基板上のハードコート層を分割して設けることによって、分割された各部位におけるハードコート層の硬度を低下させることなく、ハードコート層と基板との間に生じる熱応力を緩和することができる。
【0006】
また、本発明の請求項2に係る樹脂製自動車ウィンドウは、請求項1記載の樹脂製自動車ウィンドウにおいて、前記分割されたハードコート層を前記基板上に固定するプライマー層を有するものである。
本発明によれば、前記基板と前記ハードコート層とに生じる熱膨張或いは熱収縮の差を、前記プライマー層で吸収し、ハードコート層と基板との間に生じる熱応力を緩和することができる。
【0007】
また、本発明の請求項3に係る樹脂製自動車ウィンドウは、請求項2記載の樹脂製自動車ウィンドウにおいて、前記プライマー層の一部が、分割された各ハードコート層の間隙を少なくとも部分的に埋めるように設けられているものである。
本発明によれば、前記分割された各ハードコート層の間隙に前記プライマー層の一部が入り込む構造を有することで、前記ハードコート層と前記プライマー層との密着性を高めることが可能となる。
【0008】
また、上記課題を解決するための、本発明の請求項4に係る樹脂製自動車ウィンドウの製造方法は、ポリカーボネート製の基板の表面にプライマー層を形成し、当該プライマー層の一部をマスクした後表面のエッチングを行い、続いてプライマー層上にハードコート層を形成し、前記マスクを外して前記プライマー層上のハードコート層を分割する各工程を有することを特徴とするものである。
本発明では、プライマー層の一部をマスクした後表面のエッチングを行うことで、前記プライマー層を、マスクされた部分が高くそれ以外の部分が低い段差形状とする。続いて、かかる段差形状をなすプライマー層の上にハードコート層を形成し、前記プライマー層の高い部分(マスクされた部分)以上の高さまでハードコート層を形成する。そして、前記マスクを外すことで、プライマー層上に形成されたハードコート層が分割される。また、前記マスクを外すことで、前記マスクの下に隠れていたプライマー層の高い部分が、分割されたハードコート層の間隙に現われる。ここで現われるプライマー層の表面は、前記ハードコート層の表面よりも低く前記ハードコート層の底面よりも高い位置にある。換言すれば、前記分割された各ハードコート層の間隙に前記プライマー層の一部が入り込む構造を有することとなり、前記ハードコート層と前記プライマー層との密着性を高めることが可能となる。
【0009】
また、本発明の請求項5に係る樹脂製自動車ウィンドウの製造方法は、請求項4記載の樹脂製自動車ウィンドウの製造方法において、前記マスクを外す工程の後、表面を再度エッチングするものである。
本発明によれば、前記マスクを外すことによって分割されたハードコート層の間隙に現われるプライマー層の、深さ、表面の形状等を再度のエッチング工程で調整することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
【0011】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る樹脂製自動車ウィンドウ1を、模式的に断面図示したものである。樹脂製自動車ウインドウ1は、ポリカーボネート製の基板2と、基板2上に設けられた分割されたハードコート層3とを有するものである。また、分割されたハードコート層3を、基板2上に固定するためのプライマー層4を有している。さらに、プライマー層4の一部4aが、分割された各ハードコート層3の間隙3aに入り込み、間隙3aを少なくとも部分的に埋めるように設けられている。なお、間隙3aを少なくとも部分的に埋める、プライマー層4の一部4aの上面は、図示の如く谷状に窪んだものに限らず、後述する加工手順によって、より水平面に近い状態とすることも可能である。なお、基板2の熱膨張率α2と、ハードコート層の熱膨張率α3と、プライマー層4の熱膨張率α4との関係が、α2<α3<α4となる材料を選択して用いる。
【0012】
ここで、図2を参照しながら、樹脂製自動車ウインドウ1の製造手順の具体例を示しつつ、以下に説明する。
(1)まず、ポリカーボネート製の基板を120℃で2時間アニールした後、洗浄等の前処理を施す。
(2)次に、図2(a)に示すように、基板2の成膜面にプライマーを塗布し、プライマー層4を形成する。そして、プライマー層4の一部をマスク5で覆い隠す。ここで、プライマー層4には常温硬化ガラス等を用い、マスク5にはタングステンワイヤ等を格子状に組んだもの(例えば、直径75μm程度のタングステンワイヤを20〜50μm程度のピッチで組んだもの。)を用いる。
(3)図2(a)の基板2をスパッタ装置に設置し、O2プラズマにて表面のエッチングを行う。そして、図2(b)に示すように、プライマー層4を、マスクされた部分4a(プライマー層の一部)が高くそれ以外の部分4bが低い段差形状とする(4a、4bの段差を、2500Å程度に形成する。)。このときの電圧は100W、時間は20〜60秒程度とする。
(4)続いて、図2(c)に示すように、プライマー層4上にハードコート層3を形成する。使用したターゲットは酸化シリコン、電圧は230Wとする。また、成膜圧力は0.1Paとする。そして、成膜後のハードコート層(酸化シリコン膜)の膜厚は、5000Åである(なお、上記の例では、α2:α3:α4=70:10:3である。(α2=7×10-5、α3=1×10-5、α4=3×10-6))。
(5)さらに、図2(d)に示すように、マスク5を外すことにより、プライマー層上に形成されたハードコート層を分割する。
(6)必要に応じ、分割されたハードコート層3の間隙3aに現われるプライマー層の一部4aの表面を、再度O2プラズマにてエッチングする。
【0013】
上記構成をなす本発明の実施の形態により得られる作用効果は以下の通りである。図1(a)に示す樹脂製自動車ウィンドウ1は、温度低下により、基板2、ハードコート層3、プライマー層4の夫々に熱収縮を生じる。すると、図1(b)に示すように、基板2が大きく収縮して、分割された各ハードコート層3の間隙3aの幅を狭める。その結果、間隙3aを少なくとも部分的に埋めるプライマー層4の一部4aは、弾性変形しながらハードコート層3の表面近傍へとせり上がる。そして、基板2とハードコート層3とに生じる熱収縮の差を、プライマー層4で吸収し、基板2とハードコート層3との間に生じる熱応力を緩和することができる。
【0014】
また、図1(a)に示す樹脂製自動車ウィンドウ1は、温度上昇により、基板2、ハードコート層3、プライマー層4の夫々に熱膨張を生じる。すると、図1(c)に示すように、基板2が大きく膨張して、分割された各ハードコート層3の間隙3aの幅を広げる。その結果、間隙3aを少なくとも部分的に埋めるプライマー層4の一部4aは、弾性変形しながらハードコート層3の底面近傍へと沈下する。そして、基板2とハードコート層3とに生じる熱膨張の差を、プライマー層4で吸収し、基板2とハードコート層3との間に生じる熱応力を緩和することができる。
【0015】
以上の如く、樹脂製自動車ウィンドウ1は、分割された各部位におけるハードコート層3の硬度を低下させることなく、ハードコート層3と基板2との間に生じる熱応力を、プライマー層4で緩和することができる。よって、樹脂製自動車ウィンドウ1は、ハードコート層3にクラックが生じたり、長期の使用においてハードコート層3の剥離を生ずる等の問題を回避することができる。
【0016】
しかも、本発明の実施の形態では、プライマー層4の一部4aが、分割された各ハードコート層3の間隙3aに入り込み、間隙3aを少なくとも部分的に埋めるように設けられていることから、ハードコート層3とプライマー層4との密着性を高め、ハードコート層4の剥離を防止することが可能となる。
なお、分割された各ハードコート層3の間隙3aを、1mm以下とすることで、間隙3aに対する、ワイパーブレードやウエス等の引っ掛かりを防ぐことができる。
【0017】
また、樹脂製自動車ウィンドウ1の製造工程において、図2(a)に示すようにプライマー層4の一部をマスク5で被覆した後、図2(b)に示すように表面のエッチングを行うことで、プライマー層4を、マスクされた部分4a(プライマー層の一部)が高くそれ以外の部分4bが低い段差形状とすることができる。続いて、かかる段差形状をなすプライマー層4の上にハードコート層3を形成し、プライマー層4の一部4a(マスクされた部分)以上の高さまで、ハードコート層3を形成する。
そして、図2(d)に示すようにマスク5を外すことで、プライマー層4上に形成されたハードコート層3が分割される。また、マスク5を外すことで、マスク5の下に隠れていたプライマー層の一部4aが、分割されたハードコート層3の間隙3aに現われる。ここで現われるプライマー層の一部4aの表面は、図2(d)に示すように、ハードコート層3の表面3bよりも低くハードコート層の底面3cよりも高い位置にある。すなわち、前述の如く、分割された各ハードコート層3の間隙3aにプライマー層4の一部4aが入り込む構造を有することとなり、ハードコート層3とプライマー層4との密着性を高めることが可能となる。
【0018】
なお、マスク5を外す工程の後、表面を再度エッチングすることにより、ハードコート層3の間隙3aに現われるプライマー層の一部4aの、深さ、表面の形状等を当該再度のエッチング工程で調整することが可能となる。また、当該調整は、マスク5の断面形状、直径等を変更することによっても調整することが可能である。
【0019】
なお、本発明の実施の形態に係る樹脂製自動車ウィンドウ1は、発明者らによる試験製造の結果によれば、成膜後のハードコート層4にクラックは見られず、また、冷熱繰り返し試験(JISD0202「自動車部品の塗膜通則」サイクルクラック性試験)及び煮沸試験(JISR3211)においても、膜剥がれやクラックは発生しなかった。さらに、当該試験後のテープ剥離試験でも膜剥離は見られず、自動車ウィンドウに求められる高強度、高耐久性を備えるものであることが確認された。
【0020】
【発明の効果】
本発明はこのように構成したので、ハードコート層の硬度を低下させることなく耐久性を向上させた、ハードコートプラスチック製自動車ウィンドウを提供することにより、樹脂製自動車ウィンドウの採用の機会を広げ、自動車ウィンドウの軽量化を促進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る樹脂製自動車ウィンドウの要部を模式的に断面図示したものであり、(a)を常温状態として、(b)は収縮状態を、(c)は膨張状態を夫々示すものである。
【図2】本発明の実施の形態に係る樹脂製自動車ウィンドウの製造方法を、順を追って(a)から(d)に示した説明図である。
【符号の説明】
1 樹脂製自動車ウィンドウ
2 基板
3 ハードコート層
3a 間隙
4 プライマー層
4a プライマー層の一部
【発明の属する技術分野】
本発明は、気象条件の変化による劣化の影響を受けることのない、改良されたハードコートプラスチック製自動車ウィンドウと、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、透明プラスチック基板にハードコート層を形成することにより、ガラスよりも軽量で、かつ、基板自体の持つ強度を補強したハードコートプラスチック(例えば、特許文献1参照。)が、様々な用途に用いられている。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−56002号公報(第2項、〔0007〕、〔0008〕)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ガラスと同程度の耐傷つき性を持つハードコート層を、ポリカーボネート製の透明基板上に設けたハードコートプラスチックは、ハードコート層にクラックが生じたり、長期の使用においてハードコート層の剥離を生ずる等の問題が発生することがある。このクラック発生等の問題は、ポリカーボネートとハードコート層との熱膨張率の違い(70:3)により、ハードコート層に生ずる応力が主な原因である。したがって、ハードコート層の硬度を低下させて、ポリカーボネートとハードコート層との熱膨張率の差を少なくすればクラックの発生等を防ぐことが可能となる。しかしながら、ハードコート層の硬度を低下させた結果、必要な耐傷つき性を得ることができなくなるといった別の問題が生じることとなる。このため、高強度、高耐久性を要求される自動車ウィンドウに、ハードコートプラスチックを用いる場合には、ハードコート層の硬度を低下させることなくクラック発生等の問題を解決することが必要不可欠となる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハードコート層の硬度を低下させることなく耐久性を向上させた、ハードコートプラスチック製自動車ウィンドウを提供することにより、樹脂製自動車ウィンドウの採用の機会を広げ、自動車ウィンドウの軽量化を促進することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための、本発明の請求項1に係る樹脂製自動車ウィンドウは、ポリカーボネート製の基板と、当該基板上に設けられた分割されたハードコート層とを有することを特徴とするものである。
本発明によれば、前記基板上のハードコート層を分割して設けることによって、分割された各部位におけるハードコート層の硬度を低下させることなく、ハードコート層と基板との間に生じる熱応力を緩和することができる。
【0006】
また、本発明の請求項2に係る樹脂製自動車ウィンドウは、請求項1記載の樹脂製自動車ウィンドウにおいて、前記分割されたハードコート層を前記基板上に固定するプライマー層を有するものである。
本発明によれば、前記基板と前記ハードコート層とに生じる熱膨張或いは熱収縮の差を、前記プライマー層で吸収し、ハードコート層と基板との間に生じる熱応力を緩和することができる。
【0007】
また、本発明の請求項3に係る樹脂製自動車ウィンドウは、請求項2記載の樹脂製自動車ウィンドウにおいて、前記プライマー層の一部が、分割された各ハードコート層の間隙を少なくとも部分的に埋めるように設けられているものである。
本発明によれば、前記分割された各ハードコート層の間隙に前記プライマー層の一部が入り込む構造を有することで、前記ハードコート層と前記プライマー層との密着性を高めることが可能となる。
【0008】
また、上記課題を解決するための、本発明の請求項4に係る樹脂製自動車ウィンドウの製造方法は、ポリカーボネート製の基板の表面にプライマー層を形成し、当該プライマー層の一部をマスクした後表面のエッチングを行い、続いてプライマー層上にハードコート層を形成し、前記マスクを外して前記プライマー層上のハードコート層を分割する各工程を有することを特徴とするものである。
本発明では、プライマー層の一部をマスクした後表面のエッチングを行うことで、前記プライマー層を、マスクされた部分が高くそれ以外の部分が低い段差形状とする。続いて、かかる段差形状をなすプライマー層の上にハードコート層を形成し、前記プライマー層の高い部分(マスクされた部分)以上の高さまでハードコート層を形成する。そして、前記マスクを外すことで、プライマー層上に形成されたハードコート層が分割される。また、前記マスクを外すことで、前記マスクの下に隠れていたプライマー層の高い部分が、分割されたハードコート層の間隙に現われる。ここで現われるプライマー層の表面は、前記ハードコート層の表面よりも低く前記ハードコート層の底面よりも高い位置にある。換言すれば、前記分割された各ハードコート層の間隙に前記プライマー層の一部が入り込む構造を有することとなり、前記ハードコート層と前記プライマー層との密着性を高めることが可能となる。
【0009】
また、本発明の請求項5に係る樹脂製自動車ウィンドウの製造方法は、請求項4記載の樹脂製自動車ウィンドウの製造方法において、前記マスクを外す工程の後、表面を再度エッチングするものである。
本発明によれば、前記マスクを外すことによって分割されたハードコート層の間隙に現われるプライマー層の、深さ、表面の形状等を再度のエッチング工程で調整することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
【0011】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る樹脂製自動車ウィンドウ1を、模式的に断面図示したものである。樹脂製自動車ウインドウ1は、ポリカーボネート製の基板2と、基板2上に設けられた分割されたハードコート層3とを有するものである。また、分割されたハードコート層3を、基板2上に固定するためのプライマー層4を有している。さらに、プライマー層4の一部4aが、分割された各ハードコート層3の間隙3aに入り込み、間隙3aを少なくとも部分的に埋めるように設けられている。なお、間隙3aを少なくとも部分的に埋める、プライマー層4の一部4aの上面は、図示の如く谷状に窪んだものに限らず、後述する加工手順によって、より水平面に近い状態とすることも可能である。なお、基板2の熱膨張率α2と、ハードコート層の熱膨張率α3と、プライマー層4の熱膨張率α4との関係が、α2<α3<α4となる材料を選択して用いる。
【0012】
ここで、図2を参照しながら、樹脂製自動車ウインドウ1の製造手順の具体例を示しつつ、以下に説明する。
(1)まず、ポリカーボネート製の基板を120℃で2時間アニールした後、洗浄等の前処理を施す。
(2)次に、図2(a)に示すように、基板2の成膜面にプライマーを塗布し、プライマー層4を形成する。そして、プライマー層4の一部をマスク5で覆い隠す。ここで、プライマー層4には常温硬化ガラス等を用い、マスク5にはタングステンワイヤ等を格子状に組んだもの(例えば、直径75μm程度のタングステンワイヤを20〜50μm程度のピッチで組んだもの。)を用いる。
(3)図2(a)の基板2をスパッタ装置に設置し、O2プラズマにて表面のエッチングを行う。そして、図2(b)に示すように、プライマー層4を、マスクされた部分4a(プライマー層の一部)が高くそれ以外の部分4bが低い段差形状とする(4a、4bの段差を、2500Å程度に形成する。)。このときの電圧は100W、時間は20〜60秒程度とする。
(4)続いて、図2(c)に示すように、プライマー層4上にハードコート層3を形成する。使用したターゲットは酸化シリコン、電圧は230Wとする。また、成膜圧力は0.1Paとする。そして、成膜後のハードコート層(酸化シリコン膜)の膜厚は、5000Åである(なお、上記の例では、α2:α3:α4=70:10:3である。(α2=7×10-5、α3=1×10-5、α4=3×10-6))。
(5)さらに、図2(d)に示すように、マスク5を外すことにより、プライマー層上に形成されたハードコート層を分割する。
(6)必要に応じ、分割されたハードコート層3の間隙3aに現われるプライマー層の一部4aの表面を、再度O2プラズマにてエッチングする。
【0013】
上記構成をなす本発明の実施の形態により得られる作用効果は以下の通りである。図1(a)に示す樹脂製自動車ウィンドウ1は、温度低下により、基板2、ハードコート層3、プライマー層4の夫々に熱収縮を生じる。すると、図1(b)に示すように、基板2が大きく収縮して、分割された各ハードコート層3の間隙3aの幅を狭める。その結果、間隙3aを少なくとも部分的に埋めるプライマー層4の一部4aは、弾性変形しながらハードコート層3の表面近傍へとせり上がる。そして、基板2とハードコート層3とに生じる熱収縮の差を、プライマー層4で吸収し、基板2とハードコート層3との間に生じる熱応力を緩和することができる。
【0014】
また、図1(a)に示す樹脂製自動車ウィンドウ1は、温度上昇により、基板2、ハードコート層3、プライマー層4の夫々に熱膨張を生じる。すると、図1(c)に示すように、基板2が大きく膨張して、分割された各ハードコート層3の間隙3aの幅を広げる。その結果、間隙3aを少なくとも部分的に埋めるプライマー層4の一部4aは、弾性変形しながらハードコート層3の底面近傍へと沈下する。そして、基板2とハードコート層3とに生じる熱膨張の差を、プライマー層4で吸収し、基板2とハードコート層3との間に生じる熱応力を緩和することができる。
【0015】
以上の如く、樹脂製自動車ウィンドウ1は、分割された各部位におけるハードコート層3の硬度を低下させることなく、ハードコート層3と基板2との間に生じる熱応力を、プライマー層4で緩和することができる。よって、樹脂製自動車ウィンドウ1は、ハードコート層3にクラックが生じたり、長期の使用においてハードコート層3の剥離を生ずる等の問題を回避することができる。
【0016】
しかも、本発明の実施の形態では、プライマー層4の一部4aが、分割された各ハードコート層3の間隙3aに入り込み、間隙3aを少なくとも部分的に埋めるように設けられていることから、ハードコート層3とプライマー層4との密着性を高め、ハードコート層4の剥離を防止することが可能となる。
なお、分割された各ハードコート層3の間隙3aを、1mm以下とすることで、間隙3aに対する、ワイパーブレードやウエス等の引っ掛かりを防ぐことができる。
【0017】
また、樹脂製自動車ウィンドウ1の製造工程において、図2(a)に示すようにプライマー層4の一部をマスク5で被覆した後、図2(b)に示すように表面のエッチングを行うことで、プライマー層4を、マスクされた部分4a(プライマー層の一部)が高くそれ以外の部分4bが低い段差形状とすることができる。続いて、かかる段差形状をなすプライマー層4の上にハードコート層3を形成し、プライマー層4の一部4a(マスクされた部分)以上の高さまで、ハードコート層3を形成する。
そして、図2(d)に示すようにマスク5を外すことで、プライマー層4上に形成されたハードコート層3が分割される。また、マスク5を外すことで、マスク5の下に隠れていたプライマー層の一部4aが、分割されたハードコート層3の間隙3aに現われる。ここで現われるプライマー層の一部4aの表面は、図2(d)に示すように、ハードコート層3の表面3bよりも低くハードコート層の底面3cよりも高い位置にある。すなわち、前述の如く、分割された各ハードコート層3の間隙3aにプライマー層4の一部4aが入り込む構造を有することとなり、ハードコート層3とプライマー層4との密着性を高めることが可能となる。
【0018】
なお、マスク5を外す工程の後、表面を再度エッチングすることにより、ハードコート層3の間隙3aに現われるプライマー層の一部4aの、深さ、表面の形状等を当該再度のエッチング工程で調整することが可能となる。また、当該調整は、マスク5の断面形状、直径等を変更することによっても調整することが可能である。
【0019】
なお、本発明の実施の形態に係る樹脂製自動車ウィンドウ1は、発明者らによる試験製造の結果によれば、成膜後のハードコート層4にクラックは見られず、また、冷熱繰り返し試験(JISD0202「自動車部品の塗膜通則」サイクルクラック性試験)及び煮沸試験(JISR3211)においても、膜剥がれやクラックは発生しなかった。さらに、当該試験後のテープ剥離試験でも膜剥離は見られず、自動車ウィンドウに求められる高強度、高耐久性を備えるものであることが確認された。
【0020】
【発明の効果】
本発明はこのように構成したので、ハードコート層の硬度を低下させることなく耐久性を向上させた、ハードコートプラスチック製自動車ウィンドウを提供することにより、樹脂製自動車ウィンドウの採用の機会を広げ、自動車ウィンドウの軽量化を促進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る樹脂製自動車ウィンドウの要部を模式的に断面図示したものであり、(a)を常温状態として、(b)は収縮状態を、(c)は膨張状態を夫々示すものである。
【図2】本発明の実施の形態に係る樹脂製自動車ウィンドウの製造方法を、順を追って(a)から(d)に示した説明図である。
【符号の説明】
1 樹脂製自動車ウィンドウ
2 基板
3 ハードコート層
3a 間隙
4 プライマー層
4a プライマー層の一部
Claims (5)
- ポリカーボネート製の基板と当該基板上に設けられた分割されたハードコート層とを有することを特徴とする樹脂製自動車ウィンドウ。
- 前記分割されたハードコート層を前記基板上に固定するプライマー層を有することを特徴とする請求項1記載の樹脂製自動車ウィンドウ。
- 前記プライマー層の一部が、分割された各ハードコート層の間隙を少なくとも部分的に埋めるように設けられていることを特徴とする請求項2記載の樹脂製自動車ウィンドウ。
- ポリカーボネート製の基板の表面にプライマー層を形成し、当該プライマー層の一部をマスクした後表面のエッチングを行い、続いてプライマー層上にハードコート層を形成し、前記マスクを外して前記プライマー層上のハードコート層を分割する各工程を有することを特徴とする樹脂製自動車ウィンドウの製造方法。
- 前記マスクを外して分割された前記ハードコート層の間隙に現われるプライマー層の表面を、再度エッチングすることを特徴とする請求項4記載の樹脂製自動車ウィンドウの製造方法。
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2002
- 2002-12-16 JP JP2002363713A patent/JP2004196008A/ja active Pending
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