JP2004195730A - 樹脂成形品の製造方法及び金型の製造方法、並びに樹脂成形品及びチップ - Google Patents
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Abstract
【課題】精密で安価な樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂成形品は、(a)基板上へのレジスト層の形成、(b)マスクとレジスト層のギャップを設定、(c)マスクを用いたレジスト層の露光、(d)レジスト層の現像を行い、所望のレジストパターンを形成する、レジストパターン形成ステップと、前記レジストパターンにしたがって、前記基板上に金属構造体をメッキにより堆積させる金属構造体形成ステップと、前記金属構造体を型として、樹脂成形品を形成する成形品形成ステップによって製造される。マスクを用いたレジスト層の露光において、マスクとレジスト層の距離が1mm以下である。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の樹脂成形品は、(a)基板上へのレジスト層の形成、(b)マスクとレジスト層のギャップを設定、(c)マスクを用いたレジスト層の露光、(d)レジスト層の現像を行い、所望のレジストパターンを形成する、レジストパターン形成ステップと、前記レジストパターンにしたがって、前記基板上に金属構造体をメッキにより堆積させる金属構造体形成ステップと、前記金属構造体を型として、樹脂成形品を形成する成形品形成ステップによって製造される。マスクを用いたレジスト層の露光において、マスクとレジスト層の距離が1mm以下である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所望の造形深さを有する樹脂成形品の製造方法、それらにより得られる樹脂成形品、及び樹脂成形品の製造に使用される金型の製造方法に関する。特に、本発明の方法は、臨床検査分野、遺伝子処理分野、コンビナトリアルケミストリー分野の、診断、反応、分離、計測等に使用される樹脂成形品の製造法として有用である。
【0002】
【従来の技術】
今日、社会の成熟にしたがい、医療・健康に対する価値観は、狭い範囲の基本的健康から、「ゆたかですこやかな生活」を求めるよう変化しつつある。このような価値観の変化の背景で、医療費が増大し、また健康と疾病の境界領域にある人々が増加している。この背景から、また治療に比べて予防のほうが低負担であるため、今後の社会においては、個人の意識は、治療医学よりも予防医学を重視する方向に変化していくものと考えられている。このような個人意識の変化にともない、医療分野、なかでも臨床検査分野において、患者の近く、例えば手術室、ベッドサイド、あるいは在宅等で、より迅速な検査・診断を行うことが可能となる無拘束な検査システム、血液などの検体量がより少量ですむ無侵襲、または低侵襲である検査システムが望まれている。また、前記のような迅速な検査・診断を行うことが可能となる無拘束な検査システムを実現するためには、検査・診断の際に使用される基板の小型化によって、例えば装置に携帯性を付与させることが必要である。
【0003】
近年、化学分析装置に携帯性を付与させる新たなアプローチとして、マイクロマシン技術による小型化が注目されている。例えば、生化学分析等で主流の比色分析の自動化装置では、ダイナミックな対流を発生させて2液を混合させるものと、最初から2液を交互に分散させた状況を作り出し、分子拡散により混合させるものに大別される。現在の主流になりつつあるのは、迅速な混合が可能、微量化、小型化に適している点で、分子拡散による方式である。
【0004】
マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が1mmから0.1mmに微細化が可能となれば、サンプルの微量化だけでなく、混合に要する時間を10分の1以下に短縮させることができる。さらに、マイクロマシン技術により流路の直径を微細化できれば、装置に携帯性を付与させると同時に、従来の大型装置と同じ機能を果たすことが期待されている。また、流路の微細化により、同一基板上に複数配することもでき、並列処理も期待されている。特に、臨床検査分野においては、血液などの検体量がより少量ですむ無侵襲、または低侵襲な検査システムを実現するためにも、検査・診断の際に使用される容器の微細化が期待されている。
【0005】
さらに近年、世界的なヒト・ゲノム解析計画の進展により、現在DNA診断が可能な疾患の種類や数は増加の一途をたどり、従来は生化学的分析により間接的に診断されてきた疾患の多くが、DNAレベルで疾患の原因あるいは発生機序にまで迫る確定的な診断ができるようになった。
【0006】
2000年6月26日、アメリカホワイトハウスにて、われわれ人類にとって非常に意義深い研究報告がなされた。それは「人間の設計図」とも言われるヒト遺伝子を構成する約30憶の遺伝暗号の80%以上が決定されたというものであった。人間の設計図であるヒト遺伝子の全解読は人類科学の最も輝かしい成果の1つとなると考えられている。
【0007】
約32憶個の塩基対の解析は、2003年に終了すると予定されている。ヒト遺伝子の全配列決定後、研究のターゲットは形質マッピングと、それを元にしたゲノム創薬、オーダーメイド医療である。形質マッピングとは、ヒト遺伝子配列のどこに形質(疾患のあるなし、薬物に対する固体の反応)が関係しているかを一つ一つ明らかにしていくことである。それにより、疾患治療のターゲット分子を効率的に捜索することが可能であり、また、そのデータをもとに、個人に適した薬物治療が行えるようになると期待されている。
【0008】
従来では生化学的分析により間接的に診断されてきた疾患の多くが、DNAレベルで疾患の原因あるいは発生機序にまで迫る確定的な診断ができるようになった結果、将来はオーダーメイド医療といわれる個人に適した副作用のない薬物治療のための診断、個人別の特定疾患のあるなし診断に使用する基板が町の診療所レベルに普及することが予測されており、精密で安価な基板が期待されている。
【0009】
遺伝子関連用途でよく利用される方法には、キャピラリー電気泳動法、マイクロアレイ方式、微量なゲノムサンプルを10万倍以上に増幅した高感度で検出できる遺伝子増幅(PCR:Polymerase Chain Reaction)法等がある。キャピラリー電気泳動法は、直径100〜200μmのキャピラリーに試料を導入、電気泳動により分離するものである。このキャピラリー径の微細化が可能となれば、更に診断時間の高速化が期待されている。キャピラリー径の微細化により、同一基板上に複数配することもでき、並列処理も期待されている。
【0010】
マイクロアレイ方式は、ガラス、シリコン、金属、プラスチック等の表面グリッドにバイオモレキュラーが固定化されており、検出は高感度、特異性を考慮して蛍光装置やラベル化が進められている。その際、マイクロマシン技術を用いてマイクロアレイが形成される。このマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析の概要は、比較したい2つのサンプル(例えば細胞Aと細胞B)から抽出したmRNAをそれぞれ異なる蛍光色素(Cy5、赤;Cy3、緑)でラベルした後、それらを混合して、スライドガラス上に固定された数千から数万種類の遺伝子と結合(ハイブリダイゼーション)させる。そして、各スポットの蛍光強度を蛍光スキャナーで検出することにより、各遺伝子の発現量比を知ることができる。例えば、赤いスポットはCy5(赤)でラベルされたものの方がCy3(緑)でラベルされたものより多いということがわかり、すなわち、細胞Bに比べ細胞Aで発現が高いことを示している。同様に、緑のスポットは細胞Aに比べ細胞Bで発現が高いことを示している。また、黄色のスポットはCy5(赤)とCy3(緑)でラベルされたものの量が等しく、すなわち、細胞Aと細胞Bで同程度に発現していることを示している。このように、1度に数千から数万の単位での遺伝子発現情報が得られると、それらの情報をデータベース化することにより、将来、オーダーメイド医療をはじめ、さまざまな応用が期待される。
【0011】
マイクロアレイの作製方法には、基板上で遺伝子合成を行うタイプと、遺伝子をスライドガラスにスポットするタイプがある。基板上で遺伝子合成を行うタイプは、フォトリソグラフィックマスクによる遮光により、光照射された特定のセルのみが活性化され、ヌレオクチドの化学的なカップリング反応を行わせる。そして、あらかじめデザインしたマスクを順次用いることにより、アレイ上の決められた位置に各種のオリゴヌクレオチドプローブを合成し、高密度アレイを構築する。また、遺伝子をスライドガラスにスポットするタイプは、例えば、384ウェルプレートに各遺伝子由来のcDNAあるいは合成DNA溶液を分注しておき、アレイヤー(スポッター)を用いてスライドガラスにスポットしていく。
【0012】
一般に、蛍光強度を蛍光スキャナーで検出する際、検出感度、および再現性が高くなければ、正確な遺伝子発現情報を取得することができない。また、基板上で遺伝子合成を行うマイクロアレイでは、基板上のアレイ密度を低くすることなく、検出感度、および再現性を高めるために1個のアレイ面積を広くすることが試みられている。しかしながら、平面基板上で拡大可能な面積には限界があり、基板上のアレイ密度を低くすること無く、検出感度と再現性を高めるのに限界が生じる。
【0013】
そこで、微細な容器を有する基板が可能になれば、1個のアレイ面積、および容積を飛躍的に増大させることが可能となり、検出感度、および再現性を高めることが期待されている。遺伝子をスライドガラスにスポットするマイクロアレイでは、微細な容器を有する基板によって、各遺伝子由来のcDNAあるいは合成DNA溶液のサンプル量を少なくし、かつスポット数を増大させることで解析速度を加速させることが期待されている。
【0014】
PCR法は、ポリメラーゼを使うことにより、目的とするDNAを短時間で10万倍以上に増幅するものである。PCR法では、例えば、96穴ウェルプレート型の容器が使用されており、容量2.5〜10.0μlの試料を導入、熱変性により増幅する。この容器の小型化が可能となれば、高速化・高効率化とともに、高価な抗体や基質の使用量を低減できるといった低コスト化も期待されている。さらに、バイオテクノロジー分野においては、微細化により、同一基板上に複数の流路、複数の混合部、複数の容器を配することができれば、キャピラリー電気泳動法とPCR法とを同一基板上で行うことも期待されている。
【0015】
また近年、コンビナトリアルケミストリーの分野において、著しい進歩が見られている。コンビナトリアルケミストリー(Combinatorial Chemistry)とは、いろいろなビルディングブロック(化合物を合成する際に、最終的にその目的化合物の幹や枝葉になっていく単位ともいうべき化合物)を一度にまたは段階的に合成し、ライブラリー(いろいろな化合物群)を構築していく技術である。
【0016】
これまでに行われてきた通常の合成と、コンビナトリアルケミストリーを比較してみると、通常の合成ではAとBから単一の化合物のABしか得られないのに対して、コンビナトリアルケミストリーでは、A1からAnとB1からBnのすべての組み合わせを一度に反応させて、A1B1〜AnBnの化合物を得ることができる。
【0017】
例えば、A1からAnまで100個、B1からBnまで同じく100個の化合物があるとすると、100×100=10,000種類の化合物群(ライブラリー)を一度に合成できる。
【0018】
このように、コンビナトリアルケミストリーでは、組み合わせを利用して、多くの化合物郡(ライブラリー)を効率的に合成し、それらの化合物をさまざまな目的に応じて活用することが可能である。そして、コンビナトリアルケミストリーによる技術を用いる目的の一つに医薬品開発があげられる。そして、多数の化合物を合成し、そのなかから目的とする化合物を見いだしていく手法は、医薬品開発に限らず、化学品の合成・分析、工業生産を含めて広く利用できる科学技術としてとらえることができる。コンビナトリアルケミストリー分野、なかでも製薬開発分野においても微細化が期待されている。
【0019】
コンビナトリアルケミストリーのように、数多くの化合物を一度にまたは段階的に合成し、ライブラリーを構築していく技術には、パラレル合成法とスプリット法がある。パラレル合成は、個々の化合物を混合物でなく単一の化合物として別の容器で合成するものである。基本的には物理的に仕切られた空間があればよいわけで、例えば、96穴のウェルプレートを用いて、反応はそれぞれの穴(くぼみ)でロボットを用いて自動的に行い、そのまま活性をテストするようなシステムも開発されている。
【0020】
スプリット合成はほとんど固相で行われるのに対して、パラレル合成は、液相でも行うことができる。スプリット合成の例を、3つの化合物A1〜A3、B1〜B3、C1〜C3を順次反応させていく簡単な系で示す。
【0021】
まず樹脂に担持したA1、A2、A3を均一に混合した後、これを3等分し、それぞれにB1、B2、B3を作用させる。ここで反応後、B1と反応させた容器には末端にB1を含む3種類の樹脂が含まれており、同様にB2と反応させた容器には末端にB2を含む3種類の樹脂が、B3と反応させた容器には末端にB3を含む3種類の樹脂が含まれている。
【0022】
したがって、この段階で合計9種類の樹脂が合成されたことになる。ここで再びこれらの樹脂を均一に混合した後、これを3等分し、それぞれにC1、C2、C3を作用させる。今度は9種類ずつ、合計27種類の樹脂が合成される。この方法によれば、膨大な数の化合物を含むライブラリーを迅速に構築することが可能で、例えば、天然型のアミノ酸20種類を3回反応させると8,000(20×20×20)、4回反応させると16万、5回反応させると320万(20×20×20×20×20)のペプチドが合成できることになる。
【0023】
1960年代以降、ランダムスクリーニングにより天然物の抽出液から生理活性物質が数多く発見されており、その時期には、スクリーニングする化合物・抽出液は数百から数千で、試験管レベルで行えるものであった。1980年代には、スクリーニングする合成化合物や天然物の抽出液は一つの研究所で数万から10万を超える場合があり、また分子生物学の進展に伴い医薬・動物薬・農薬の標的も急速に増加したため、試験管レベルでは処理できなくなってきた。
【0024】
そこで、これに対応する技術としてハイスループットスクリーニング(HTS、High Throughput Screening)が開発された。ハイスループットスクリーニングとは、コンビナトリアル合成したものから、例えば、リード化合物(創薬のための先導化合物、スクリーニングで見いだされた化合物)を見いだしたり、最適化したりする際に化合物を高速でふるいわける技術のことである。また、ハイスループットスクリーニングでは、スクリーニング用のアッセイロボット(生物学的な活性を見る試験を自動的に行う機械)を用いたりする。
【0025】
現在、ハイスループットスクリーニングを可能にした要因として、微量のサンプルを測定できる技術が発展したこと、コンピュータやロボットの発達、試験管にかわって24あるいは96個のサンプルを一度に処理できるプレートが普及してきたことがあげられる。今後、構造的に多様性のある化合物はさらに蓄積され、スクリーニングの標的はさらに増加すると予測され、96穴プレートから384穴プレート(反応液の微量化)へ移行することにより創薬開発の加速(迅速化)、微量化(コストダウン)が期待されている。
【0026】
現在、製薬開発の分野において、ハイスループットスクリーニング等の用途に使用されている96穴プレート、384穴プレートは、複数のサンプルを同時にスクリーニングすることができ、例えば、自動分注装置との組み合わせによって創薬開発の加速に貢献している。
【0027】
マイクロマシン技術により、例えば、容器の幅または直径が10mmから0.4mm、深さが10mmから0.3mmに微細化が可能になれば、同一基板上に1,000個〜5,000個のマイクロ容器を有することができ、創薬開発の飛躍的な加速が期待できる。特に近年、半導体デバイスの実現がエレクトロニクスに画期的な進歩と情報革命をもたらしたことと同様な技術革命がコンビナトリアルケミストリー分野、なかでも化学技術や化学産業分野にも微細化が期待されている。
【0028】
実験室レベルで使用される混合、反応のための容器サイズが大きい場合、混合、反応に時間を要し、目的とする分析結果を得るのに数日間かかってしまう。しかし、マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が深さ1mmから0.1mmに微細化が可能になれば、混合に要する時間を10分の1以下に短縮させることができ、数日間かかっていた分析を数10分で完了することが期待されている。また、流路の微細化により、同一基板上に複数配したり、基板を重ね合わせたりすることで更なる効率の向上も期待できる。
【0029】
マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が深さ1mmから0.1mmに微細化が可能になれば、混合、反応に使用する薬液量の大幅な低減、ひいては廃液量の大幅な低減が期待でき、環境負荷の低減に大きな効果を生むことになる。一般に反応容器をスケールアップした場合、物質や熱の移動はそれに比例して変化するわけではないので、反応特性は変わってしまう。そのため従来の化学プラント建設においては、実験室レベルから段階的に大きな反応装置を組み、その都度問題点を洗い出してやるというコストのかかる過程が必要だった。マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が深さ1mmから0.1mmに微細化が可能になれば、同一基板上に複数配したり、基板を重ね合わせたりすることでスケールアップが可能となるため、この問題を解決できることが期待できる。
【0030】
従来の樹脂成形品は、鋳型または切削法による金属製金型を用いて、射出成形、ブロー成形あるいはプレス成形することにより、形成していた。しかしながら、鋳型から金属製金型を作成する場合には、鋳型の精度に限界があるため、それを用いた金属製金型への造形範囲に制約がある。また、切削法により金属製金型を作製する場合も、切削バイトの切削精度に限界があるため、いずれの加工法を用いても精密、かつ微細な形状を有する樹脂成形品は実現されていないのが実情である。
【0031】
このように、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、いずれの加工法においても精密、かつ微細な形状を有する樹脂成形品は実現されていないのが現状である。そのため、得られた樹脂成形品を臨床検査分野、なかでも血液検査用途等に供する場合、流路、容器の精度、小型化には限界があり、血液等の検体量が多くなるという問題があった。ひいては、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、検査・診断装置の携帯性を付与することができないといった欠点を有していた。
【0032】
同様に、得られた樹脂成形品を臨床検査分野、なかでも、生化学分析用途等に供する場合、流路、容器の精度、微細化には限界があり、混合に要する時間(診断に要する時間)を短縮できず、ひいては装置に携帯性を付与することができないといった欠点を有していた。また同様に、得られた樹脂成形品を臨床検査分野、なかでも免疫測定用途等に供する場合、チャンバーの精度、小型化には限界があり、高価な抗体や基質の使用量を低減できないといった欠点を有していた。
【0033】
さらに、鋳型や切削法による金属製金型を用いて得られた樹脂成形品を遺伝子関連分野の遺伝子解析、なかでもキャピラリー電気泳動法による解析用途等に供する場合、流路の精度、微細化には限界があり、試料の導入、分離に要する時間(診断に要する時間)を短縮できないといった欠点を有していた。ひいては、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、基板を小型化することができないといった問題点も有していた。
【0034】
同様に、得られた樹脂成形品を遺伝子関連分野の遺伝子解析、なかでもマイクロアレイ方式による解析用途等に供する場合、容器の精度、小型化には限界があり、検出感度、再現性を高めることができない、サンプル量を少なくできない、解析速度を高めることができない、ひいては基板を小型化することができないといった欠点を有していた。
【0035】
また同様に、得られた樹脂成形品を遺伝子関連分野の遺伝子増幅(PCR)法による増幅用途に供する場合、容器の精度、小型化には限界があり、高速化・高効率化とともにサンプル量を少なくできない、ひいては基板を小型化することができないといった欠点を有していた。さらにまた、鋳型や切削法による金属製金型を用いて得られた樹脂成形品をコンビナトリアルケミストリー関連用途、なかでも製薬開発用途のハイスループットスクリーニング用途に供する場合、容器の微細化には限界があり、創薬開発の飛躍的な加速(迅速化)、微量化(コストダウン)ができない欠点を有していた。
【0036】
同様に、得られた樹脂成形品をコンビナトリアルケミストリー関連用途、なかでも化学産業分野の化学合成・分析用途に供する場合、流路の精度、微細化には限界があり、化学合成・分析時間を短縮できない、混合、反応に使用する薬品量の低減、廃液量の低減、環境負荷の低減ができない欠点を有していた。
【0037】
また同様に、化学合成用途に供する場合、流路の精度、微細化には限界があり、同一基板上に複数配したり、ひいては基板を重ね合わせたりすることでスケールアップすることができないため、従来の化学プラント建設におけるスケールアップの問題点を解決することができないといった欠点を有していた。
【0038】
このような、鋳型または切削法による金属製金型を用いる場合の係る問題を解決する加工法として、半導体微細加工技術を応用したガラスまたはシリコン基板へのウェットエッチング加工、またはドライエッチング加工により微細加工を施す技術が知られている。しかしながら、ウェットエッチングでは、マスキング材料下部のアンダーエッチングの進行により、造形深さが0.5mmよりも深くなると幅(または直径)精度が得られにくくなるため、精密な加工法とはいえなかった。
【0039】
ウェットエッチングに対して、ドライエッチングはSi半導体のパターン形成プロセスから発展した技術であり、各種プラズマ源種による各種電子部品、化合物半導体への応用が研究されている。しかしながら、この方法は、優れた微細加工性を有する反面、エッチング速度が500〜2,000nm/分と遅いため、例えば造形深さが0.1mmの加工を行う場合、50分以上の加工時間が必要となり、生産性に優れた安価な加工法とはいえなかった。
【0040】
また、ドライエッチングの加工時間が1時間以上になると、装置電極が熱を持つようになり、基板の変形、または装置の損傷が懸念されるため、装置電極が60℃を超えるような場合は装置を一時停止させ、再び加工を開始するなどの処置が必要となり生産性は更に低下する。
【0041】
そして、鋳型または切削法による金属性金型を用いる場合の係る問題を解決する他の方法としてリソグラフィー法が知られている。このリソグラフィー法では、まず、基板上にレジスト塗布を行い、該レジスト層の露光を実施した後、現像によりレジストパターンを形成する。そして、前記レジストパターンにしたがって、前記基板上に金属構造体を電気メッキにより堆積させた後、前記金属構造体を型として射出成形で成形品を形成する。
【0042】
この方法による商品としてレーザーディスク、CD−ROM、ミニディスクが代表例としてあげられるように、1枚の金属構造体から、例えば約5万枚以上の成形品を得ることが可能である。さらに、リソグラフィー法は、精密で極めて安価に製造できる点で、生産性に優れた方法といえる。また、扱える材料がシリコンとは異なる点においても、材料単価が安いことなど、今後の用途展開への大きいことが期待されている。
【0043】
しかしながら、リソグラフィーによる方法は、商品としてレーザーディスク、CD−ROM、ミニディスクが代表例としてあげられるように、造形深さは1〜3ミクロンが中心である。したがって、流路、容器といった例えば30ミクロンの造形深さを有する例は実現されていないのが実情である。その理由は、例えば射出成形によって樹脂成形品を得ようとした場合、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を得ることが難しいことが一因である。
【0044】
レーザーディスク等の場合、造形深さは1〜3ミクロンであるため金属構造体深さ方向の角度が垂直に近くても転写性、離型性に優れる樹脂成形品を得ることは可能であった。しかしながら、同様の垂直角度で流路、容器といった例えば30ミクロンの造形深さを有する樹脂成形品を得ようとすると、金属構造体に樹脂の一部が残る、又は形状が変更するなどして転写性、離型性に優れる樹脂成形品を得ることができない問題を生じていた。
【0045】
リソグラフィー法、なかでもシンクロトロン放射光を露光光源としたリソグラフィー法が知られている(例えば、特許文献1参照)。シンクロトロン放射光のもつ高い指向性はレーザー光に匹敵し、レーザーで実現できない短波長の光は、微細加工でネックとなる回折限界をクリアすることができる。したがって、シンクロトロン放射光を露光光源に用いた場合、より厚い層を露光処理することができるので、従来の光源と比較してより微細かつ深い造形深さを得ることが可能である。
【0046】
しかしながら、シンクロトロン放射光を使用した露光処理の場合、その高い指向性からレジスト層は垂直方向に露光されるため、得られる金属構造体のパターンは垂直になり、転写性、離型性に優れる樹脂成形品は得ることができない問題を生じる。より深い層を露光できるシンクロトロン放射光の場合、その転写性、離型性が損なわれる現象はより顕著となる。このように、従来の樹脂成形品の製造方法では、金属構造体の深さ方向の角度が制御できないため、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を生産性よく製造することができないという問題点があった。また、シンクロトロン放射設備は非常に大型の設備であり、その設備を建設・維持していくことは容易でない。特に、設備の建設、及び維持に多大なコストがかかるため、射出成形によって得られた成形品のコストは、通常のリソグラフィー法によって得られた成形品よりも数十倍の高価格となることが予測される。
【0047】
【特許文献1】
特開2001−38738号公報
【0048】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の樹脂成形品の製造方法では、金属構造体の形状が効率良く制御できないため、所望の形状を有する樹脂成形品を生産性良く製造することができないという問題点があった。
【0049】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、所望の形状を有する樹脂成形品を生産性良く製造することができる樹脂成形品の製造方法、及びその製造に使用される金型の製造方法を提供することを一つの目的とする。
【0050】
また、本発明は、所望の造形深さを有する樹脂成形品、あるいは、臨床検査分野、遺伝子関連分野、コンビナトリアルケミストリー分野における使用に好適なチップを提供することを目的とする。
【0051】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの態様である樹脂成形品の製造方法は、金属構造体を形成するステップと、前記金属構造体を型として樹脂成形品を形成するステップとを有する樹脂成形品の製造方法であって、前記金属構造体を形成するステップは、基板上にレジスト層を形成するステップと、マスクを用いて前記レジスト層を露光するステップであって、前記マスクと前記レジスト層との距離が実質的に1.0mm以下であるステップと、前記露光されたレジスト層を現像処理し、レジストパターンを形成すステップと、前記レジストパターンに基づいて、金属層をメッキにより堆積させるステップと、を備えたものである。これにより、所望の形状を有する樹脂成形品を生産性良く製造することができる。
【0052】
前記マスクと前記レジスト層との距離が0mmより大きくすることができる。これにより、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を生産性良く製造することができる。尚、前記マスクと前記レジスト層との距離が1.0mm以下ということは、限定的記載のない限り、0mmを含む。この点は以下の解決手段の記載において同様である。
【0053】
好適には、本発明にかかる樹脂成形品の製造方法では、前記マスクと前記レジスト層との距離が0.02mm以上、0.6mm以下である。より好ましくは、本発明にかかる樹脂成形品の製造方法では、前記マスクと前記レジスト層との距離が0.05mm以上、0.3mm以下である。
【0054】
前記金属層をメッキにより堆積させるステップは、前記金属構造体の凹凸面を形成するものであることができる。
前記レジストパターンを形成するステップにおいて露光に用いられる光源は、紫外線ランプ又はレーザー光とすることができる。これにより、樹脂成形品を効率的に製造することができる。
【0055】
前記樹脂成形品を形成するステップにより形成される樹脂成形品の凹部の深さは、実質的に5μm乃至300μmであることが、好ましい。さらに、前記樹脂成形品を形成するステップにより形成される樹脂成形品の凹部の深さは、実質的に10μm乃至200μmであることが、より好ましい。
【0056】
本発明の他の態様は、上記態様にかかる発明によって製造された、樹脂成形品である。特に、上記態様にかかる発明によって製造された樹脂成形品は、臨床検査に用いられるチップ、コンビナトリアルケミストリーに用いられるチップ、遺伝子関連に用いられるチップとして使用するのに好適な造形深さを有する樹脂成形品である。
【0057】
樹脂成形品の凹凸面上には、流路パターン、混合部パターン、容器パターンの中から少なくとも一つのパターンを形成させることができる。また、樹脂成形品は、電極、ヒータ、温度センサの中から少なくとも一つのパターンを有することができる。
【0058】
臨床検査に用いられるチップは、特に、血液検査用チップ、尿検査用チップ又は生化学検査用チップを含む。コンビナトリアルケミストリーに用いられるチップは、特に、医薬開発チップ又は化学合成・分析用チップを含む。遺伝子関連に用いられるチップは、遺伝子増幅用チップを含む。
【0059】
本発明の他の態様である金型の製造方法は、樹脂成形品を形成するために型として用いる金属構造体を製造する金型の製造方法であって、基板上にレジスト層を形成するステップと、マスクを用いて前記レジスト層を露光するステップであって、前記マスクと前記レジスト層との距離が実質的に1.0mm以下であるステップと、前記露光されたレジスト層を現像処理し、レジストパターンを形成すステップと、前記レジストパターンに基づいて、金属層をメッキにより堆積させるステップとを備えたものである。これにより、所望の形状を有する金型を生産性良く製造することができる。前記マスクと前記レジスト層との距離が0mmより大きくすることができる。これにより、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を生産性良く製造することができる。
【0060】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。図1は、本実施の形態における樹脂成形品の製造工程を示している。本実施の形態を実現するために使用される製造装置は広く知られたものであり、ここでは説明を省略する。図1を参照して、本実施の形態における製造方法を説明する。
【0061】
本形態の樹脂成形品は、
(a)基板上へのレジスト層の形成
(b)マスクとレジスト層のギャップを設定
(c)マスクを用いたレジスト層の露光
(d)レジスト層の現像
を行い、所望のレジストパターンを形成する。さらに、形成されたレジストパターンにしたがって、基板上に金属構造体をメッキにより堆積させる。この金属構造体を型として、樹脂成形品を形成することによって、樹脂成形品が製造される。
【0062】
レジストパターン形成処理について更に詳細に説明する。
(a)基板上へのレジスト層の形成について説明する。成形品形成ステップで得られる樹脂成形品の平面度は、基板1上へレジスト層2を形成する工程にて決定づけられる。すなわち、基板1上にレジスト層2を形成した時点の平面度が金属構造体、ひいては樹脂成形品の平面度に反映される。
【0063】
基板1上にレジスト層2を形成する方法は何ら限定されないが、一般的にスピンコート方式、ディッピング方式、ロール方式、ドライフィルムレジストの貼り合わせ等を挙げることができる。なかでも、スピンコート方式は、回転しているガラス基板上にレジストを塗布する方法で、直径300mmを超えるガラス基板にレジストを高い平面度で塗布する利点がある。従って、高い平面度を実現できる観点から、スピンコート方式が好ましく用いられる。
【0064】
用いられるレジストにはポジ型レジスト、ネガ型レジストの2種類がある。いずれも、露光条件により、レジストの焦点深度が変わるため、例えばUV露光装置を使用した場合、露光時間、UV出力値をレジスト厚さ、感度に応じて種類を選択するのが望ましい。
【0065】
用いるレジストがウェットレジストの場合、例えばスピンコート方式で所定のレジスト厚さを得るには、スピンコート回転数を変更する方法と、粘度調整する方法がある。
【0066】
スピンコート回転数を変更する方法は、スピンコーターの回転数を設定することによって所望のレジスト厚さを得るものである。粘度調整する方法は、レジスト厚さが厚い場合、又は塗布面積が大きくなると平面度が低下することが懸念されるため、実際使用上で要求される平面度に応じて粘度を調整するものである。
【0067】
例えばスピンコート方式の場合、1回で塗布するレジスト層2の厚さは、高い平面度を保持することを考慮し、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは、20〜50μmの範囲内であることが望ましい。高い平面度を保持したうえで、所望のレジスト層の厚さを得るためには、複数のレジスト層を形成することができる。
【0068】
(b)マスクとレジスト層のギャップ設定について説明する。医療分野、遺伝子関連分野、コンビナトリアルケミストリーなどに使用されるチップは、大きな造形深さが必要とされる。そのため、露光深度を大きくするために、マスクとレジスト層との距離は所定の値以下であることが要求とされることを発明者らは見出した。マスクとレジスト層との距離が小さいほど、典型的には、露光深度を大きくすることができる。さらに、上記のようなチップを成形する場合、大きな造形深さを有するため、成形品の転写性、離型性が悪化するという問題を見出した。図1(b)に示されるマスク4とレジスト層2のギャップ3は、転写性、離型性に優れる樹脂成形品製造の生産性を向上させる。つまり、金属構造体の造形深さが深くなると、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を得ることが難しくなる。これは樹脂材料の成形収縮などによって、金属構造体側に樹脂が残り易くなるためであり、樹脂の一部が残る、又は形状が変更するなどの問題を生じる。
【0069】
転写性・離型性を向上させるには、得ようとする樹脂成形品の造形深さに応じ、金属構造体の深さ方向の角度を設定することが必要である。そのため、十分な造形深さを得、又、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を得るため、基板1上に形成するレジストパターン5への深さ角度設定を行う。
【0070】
レジストパターン5の深さ角度設定は、マスク4とレジスト層2のギャップ調節によって行うことができる。マスク4とレジスト層2の距離3が0mmでは、例えばUV露光光源を使用する場合、レジストパターン5の深さ角度はほぼ垂直となり、0mmより大きいギャップ3を設けることで光がマスク4の遮光部側に回り込むことで傾斜したレジストパターン5を形成することが可能となる。
【0071】
マスク4とレジスト層2のギャップ3は、その間隔が広くなると、より傾斜したレジストパターン5を形成することが可能であり、実際使用上で好ましい範囲で設定することが望ましい。マスク4とレジスト層2のギャップ3を正確に設定する方法として、例えば、マスク4とレジスト層2の間に金属シムを設けることがあげられる。傾斜したレジストパターン5の角度を確認する方法として、例えばレーザー顕微鏡、SEM観察をあげることができる。
【0072】
また、マスク4とレジスト層2のギャップ3が0mmの場合、マスク4にレジストが付着し、マスク洗浄にかかる時間から生産性を低下させ、あるいは樹脂成形品の寸法精度を低下させ、ひいては樹脂成形品の品質を低下させる懸念がある。0mmより大きいギャップ3を設けることにより、この問題を未然に防ぐことも可能となる。
【0073】
レジストパターン5の傾斜角度は、成形条件、樹脂材料、離型剤添加量等に応じて設定することが好ましいが、特に、得ようとする樹脂成形品の造形深さが10μm以上である場合に設けることが好ましく、20μm以上である場合はその必要性がさらに高まる。
【0074】
マスク4とレジスト層2の距離は、成形条件、樹脂材料、離型剤添加量等によって適宜選択すること好ましい。特にレジスト層への露光深度の観点から、マスク4とレジスト層2の距離3は、1.0mm以下であることが好ましい。さらに、所定の造形深さを有する樹脂成形品の転写性・離型性を向上させるため、0.0mmより大きなギャップを形成することが好ましい。マスク4とレジスト層2のギャップの大きさは、上記観点から、好ましくは、0.02mm以上、0.6mm以下であり、より好ましい範囲は、0.05mm以上、0.3mm以下である。なお、マスク4とレジスト層2の距離を0mmとする場合、露光する光を調節することにより、傾斜したレジストパターン5を形成することができる。
【0075】
傾斜したレジストパターン5を形成する他の方法は、レジスト材料を選択する方法、又は現像時間を調節する方法である。レジスト材料を選択する方法は、ポジ型(光分解型)レジストを使用することで、レジスト層上部よりも下部の幅が狭くなり傾斜を形成しやすいことを利用する。現像時間を調整する方法は、現像時間を長くすることで傾斜から垂直パターンとなることから、要求される傾斜角度に応じて現像時間を調整するものである。マスク4とレジスト層2のギャップ3を設ける方法とこれらを組み合わせることで、より正確な傾斜パターンの造形が可能となる。
【0076】
(c)マスクを用いたレジスト層の露光について説明する。図1(b)に示される工程で使用するマスク4は何ら限定されないが、エマルジョンマスク、クロムマスク等を挙げることが出来る。レジストパターン形成ステップでは、使用するマスク4によって流路の幅、深さ、容器間隔、および容器幅(または直径)、深さの寸法、および精度が左右される。そして、その寸法および精度は、樹脂成形品にも反映される。したがって、樹脂成形品の各寸法、および精度を所定のものとするためには、マスク4の寸法、および精度を規定する必要がある。マスク4の精度を高める方法は何ら限定しないが、例えば、マスク4のパターン形成に使用するレーザー光源をより波長の短いものに変えることを挙げることができるが、設備費用が高額であり、マスク製作費が高額となるため、樹脂成形品が実用的に要求される精度に応じて適宜規定するのが望ましい。
【0077】
露光に用いられる光源は設備費用が安価である紫外線またはレーザー光であることが好ましい。シンクロトロン放射光は露光深度が深いものの、かかる設備費用が高額であり、実質的に樹脂成形品の価格が高額となり、工業的に実用的でない。
【0078】
露光時間や露光強度等の露光条件はレジスト層2の材質、厚み等により変化するため、得られるパターンに応じて適宜調節することが好ましい。特に流路の幅、深さ、容器間隔、および容器幅(または直径)、深さ等のパターンの寸法、および精度に影響を与えるため、露光条件の調節は重要である。また、レジストの種類により焦点深度が変わるため、例えばUV露光装置を使用した場合、露光時間、UV出力値をレジストの厚さ、感度に応じて選択するのが望ましい。
【0079】
(d)レジスト層の現像について説明する。図1(c)に示される工程の現像は用いたレジストに対応する所定の現像液を用いることが好ましい。現像時間、現像温度、現像液濃度等の現像条件はレジスト厚みやパターン形状に応じて適宜調節することが好ましい。例えば、必要な深さを得るために現像時間を長くしすぎると、容器間隔、および容器幅(または直径)が所定の寸法よりも大きくなってしまうため、適宜条件を設定することが好ましい。
【0080】
レジスト層全体の厚みが増してくると、現像工程において、レジスト底部の幅(または直径)よりも表面の幅(または直径)が広くなることが懸念される。レジストを複数層形成する場合、各レジスト層の形成において、感度の異なるレジストを段階に分けて形成することが好ましい場合がある。この場合には、例えば、表面に近い層のレジストの感度を底部に近い層よりも高くすることなどが挙げられる。さらに具体的には、感度の高いレジストとして東京応化工業株式会社製のBMR C−1000PMを、そして感度の低いレジストとして東京応化工業株式会社製のPMER−N−CA3000PMを用いることができる。その他、レジストの乾燥時間を変えることにより感度を調整するようにしてもよい。例えば、東京応化工業株式会社製のBMR C−1000PMを使用した場合、スピンコート後のレジスト乾燥時、1層目の乾燥時間を110℃で40分、2層目の乾燥時間を110℃で20分とすることで、1層目の感度を高めることができる。
【0081】
流路や混合部、容器などの深さ・精度が均一な成形品を得るための方法としては、例えば、レジスト塗布で使用するレジスト種類(ネガ型、ポジ型)を変更する方法、金属構造体の表面を研磨する方法などがあげられる。
【0082】
尚、所望の造形深さを得るために複数のレジスト層を形成する場合、それらレ複数のジスト層を同時に露光・現像処理する、あるいは、一つのレジスト層を形成及び露光処理した後、さらにレジスト層の形成及び露光処理を行い、2つのレジスト層を同時に現像処理することが可能である。
【0083】
金属構造体形成ステップについてさらに詳細に説明する。金属構造体形成ステップとはレジストパターン形成ステップで得られたレジストパターン5に沿って金属を堆積させ、金属構造体の凹凸面をレジストパターンに沿って形成することにより、金属構造体を得る工程である。
【0084】
図1(d)に示されるように、この工程では予めレジストパターン5に沿って導電性膜6を形成する。該導電性膜6の形成方法は特に限定されないが、好ましくは蒸着、スパッタリング等を用いることができる。導電性膜6に用いられる導電性材料としては金、銀、白金、銅などを挙げることができる。
【0085】
図1(e)に示されるように、導電性膜6を形成した後、パターンに沿って金属をメッキにより堆積して金属構造体7を形成する。金属を堆積させるメッキ方法は特に限定されないが、例えば電解メッキ、無電解メッキ等を挙げることができる。用いられる金属は特に限定されないが、ニッケル、銅、金を挙げることができ、経済性・耐久性の観点からニッケルが好ましく用いられる。
【0086】
金属構造体7はその表面状態に応じて研磨しても構わない。ただし、汚れが造形物に付着することが懸念されるため、研磨後、超音波洗浄を実施することが好ましい。また、金属構造体7はその表面状態を改善するために、離型剤等で表面処理しても構わない。なお、金属構造体7の深さ方向の傾斜角度は、樹脂成形品の形状から50〜90°であることが望ましく、より望ましくは60°〜87°である。
【0087】
図1(f)に示されるように、メッキにより堆積した金属構造体7はレジストパターン5から分離される。尚、当業者は、上記各処理を適宜、変更適用することで、金属構造体を複数の金属層で形成することが可能である。又、樹脂成形用型として使用される型用金属構造体7は、例えば、金属中間構造体を使用して形成することができる。本形態の各処理は、この金属中間構造体の形成に適用することが可能である。
【0088】
成形品形成ステップについて更に詳細に説明する。成形品形成ステップは、図1(g)に示されるように、前記金属構造体7を型として、樹脂成形品8を形成する工程である。樹脂成形品8の形成方法は特に限定されないが、例えば射出成形、プレス成形、モノマーキャスト成形、溶剤キャスト成形、押出成形によるロール転写等を挙げることができ、生産性、型転写性の観点から射出成形が好ましく用いられる。所定の寸法を選択した金属構造体7を型として射出成形で樹脂成形品8を形成する場合、金属構造体7の形状を高い転写率で樹脂成形品8に再現することが可能である。転写率を確認する方法としては、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等を使用して行うことができる。
【0089】
金属構造体7を型として、例えば射出成形で樹脂成形品8を形成する場合、1枚の金属構造体7で1万枚〜5万枚、場合によっては20万枚もの樹脂成形品8を得ることができ、金属構造体7の製作にかかる費用負担を大幅に解消することが可能である。また、射出成形1サイクルに必要な時間は5秒〜30秒と短く、生産性の面で極めて効率的である。射出成形1サイクルで同時に複数個の樹脂成形品8を形成可能な成形金型を使用すれば、更に生産性を向上することが可能となる。上記成形方法では金属構造体7を金属型として用いても、金属構造体7を予め用意した金属型内部にセットして用いても構わない。
【0090】
樹脂成形品8を形成するのに使用する樹脂材料としては特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、スチレン系樹脂、アクリル・スチレン系共重合樹脂(MS樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系共重合樹脂、スチレン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系樹脂ポリジメチルシロキサンなどのシリコン樹脂等を挙げることができる。
【0091】
これらの樹脂は必要に応じて滑剤、光安定剤、熱安定剤、防曇剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの1種または2種以上を含有することができる。
【0092】
前記成形方法により得られる樹脂成形品について更に詳細に説明する。
図2は、本形態の製造方法を使用して製造しうる樹脂成形品の一例を示している。図2の樹脂成形品は、流路及び複数の流路が交差する混合部を有している。さらに、樹脂成形品は、ヒータ、温度センサ及び電極を有している。ヒータ及び温度センサは流路上に配置されている。電極もしくはヒータなどの金属部は、スパッタリングや蒸着にて形成することができる。加温、または反応処理を行うために必要とされる温度制御のため、温度センサが配置されている。このような樹脂成形品8の各寸法、および精度については、実際使用上で必要となる数値に応じて、前記各工程により、適宜調整することが望ましい。樹脂成形品8における流路、混合部、容器等の各寸法は、以下の範囲内であることが好ましい。
【0093】
樹脂成形品8の流路の幅の最小値は、マスク4の加工精度に由来しており、工業技術的にはX線、レーザーなど波長の短いレーザー光を使用することでより微細化は可能であると推測される。しかし、本発明は精密で安価な樹脂成形品8を医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野へ広く提供することが目的であり、特に、臨床検査、コンビナトリアルケミストリー、あるいは遺伝子関連に使用されるチップに好適なものであることから、工業的に再現し易い観点から幅が5μm以上であることが好ましい。また、規格化されていない多品種小ロットの樹脂成形品8の用途においても、精密で安価な容器として提供していく観点で幅が5μm以上であることが好ましい。流路の幅の最大値は、特に制限されないが、微細化による診断時間の短縮、複数処理を可能とし、装置に携帯性を付与させるために、300μm以下であることが好ましい。
【0094】
樹脂成形品8の流路の深さの最小値は、流路としての機能を有するためには、5μm以上であることが好ましい。流路の深さの最大値は、特に制限されないが、化学分析、DNA診断等の用途において、流路の幅の微細化による診断時間の短縮、複数処理を可能にし装置に携帯性を付与させるといった利点を損なわないためには、300μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは200μm以下である。
【0095】
樹脂成形品8の流路の長さの最小値は、化学分析、DNA診断等の用途において、試料の導入、分離(解析)の機能を有するためには5mm以上であることが好ましい。流路の長さの最大値は、特に制限されないが、化学分析、DNA診断等の用途において、流路の長さを短くすることで診断時間の短縮、複数処理を可能にし装置に携帯性を付与させるといった利点を損なわないためには、300mm以下であることが好ましい。
【0096】
樹脂成形品8の容器間隔の最小値は、マスク4の加工精度に由来しており、工業技術的にはX線、レーザーなど波長の短いレーザー光を使用することでより微細化は可能であると推測される。しかし、本発明は精密で安価な容器を医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野などへ広く提供することが目的であり、特に、臨床検査、コンビナトリアルケミストリー、あるいは遺伝子関連に使用されるチップに好適なものであることから、工業的に再現し易い観点で容器間隔が5μm以上であることが好ましい。
【0097】
また、容器間隔の最小値は、例えば、血液検査装置の位置決め精度によって決定される場合も想定されることから、装置の仕様に応じて適宜選択することが好ましい。また、規格化されていない多品種小ロットの用途においても、精密で安価な容器として提供していく観点から5μm以上であることが好ましい。容器間隔の最大値は、特に制限されないが、容器の小型化により複数処理を可能にし、装置に携帯性を付与させるためには、10,000μm以下であることが好ましい。
【0098】
上記理由により、樹脂成形品8の容器幅(または直径)においても、最小値5μm以上、最大値10,000μm以下であることが好ましい。樹脂成形品8の容器深さの最小値は、特に制限されないが、容器としての機能を有するためには、10μm以上であることが好ましい。容器深さの最大値は、例えば、複数回のレジスト塗布、十分な焦点深度を得るために露光光源をX線ビーム等のレーザーを使用する等によって、より深い造形を得ることは可能であると推測される。しかし、本発明は、精密で安価な容器を医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野へ広く提供することが目的であり、工業的に再現し易い観点から深さが1000μm以下であることが好ましい。
【0099】
樹脂成形品8の平面度の最小値は、工業的に再現し易い観点から1μm以上であることが好ましい。樹脂成形品8の平面度の最大値は、例えば、該成形品を他の基板と貼り合わせて使用する際に支障とならない観点から200μm以下であることが好ましい。樹脂成形品8の流路の幅、深さの寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±0.5〜10%の範囲内であることが好ましい。樹脂成形品8の容器間隔、容器幅(または直径)、深さの寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±0.5〜10%の範囲内であることが好ましい。
【0100】
樹脂成形品8の厚さに対する寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±20.5〜10%の範囲内であることが好ましい。樹脂成形品8の厚さは特に規定されないが、射出成形での取り出し時の破損、取り扱い時の破損、変形、歪みを考慮し、0.2〜10mmの範囲内であることが好ましい。樹脂成形品8の寸法は特に限定されないが、リソグラフィー法でレジストパターン5を形成する際、例えば、レジスト層2の形成をスピンコート法にて行う場合、直径400mmの範囲の中から採取できるよう用途に応じて適宜選択することが好ましい。
【0101】
本発明により得られる樹脂成形品8の用途は特定用途に限定されないが、例えば、化学分析用、DNA診断用、検体容器、抗体容器、試薬容器などの医療用途、微粒子配列などの工業用途、細胞処理などのバイオテクノロジー用途、反応容器などの自動化学分析などの用途に好適である。
【0102】
医療分野、なかでも抗血栓性(抗血小板付着)や細胞毒性試験における有害性の排除といった生体適合性を必要とする用途には、抗血栓性の効果が知られている材料を用いたり、表面処理を施したりすることが好ましい。表面処理により生体適合性を向上する方法として、例えば、射出成形で成形品を形成した後、スパッタリングによりSiO2膜を堆積させた後、熱酸化によりSiO2膜を成長させることで生体適合性を付与する方法があげられる。
【0103】
樹脂成形品8を形成した後、医療分野、なかでも臨床検査分野において、生化学分析、DNA診断分野等に使用する場合、樹脂成形品8上で加温、反応、信号検出等の処理を必要とする場合がある。樹脂成形品8上で加温、または反応処理を行う方法として、例えば、スパッタリングにて電極パターンを形成し、装置から電圧を印加する方法や、ヒータを配置することが考えられる。また、加温、または反応処理を行う際、温度制御が必要となる場合は、例えば、温度センサを配置することも考えられる。信号検出を行う場合、例えば、フォトダイオードを配置することが考えられる。
【0104】
医療分野、なかでも臨床検査分野において、生化学分析、DNA診断分野等に使用する場合、流路の微細化によって診断に要する時間を短縮することが期待されている成形品は、本発明により得られる樹脂成形品8を使用することによって達成される。本形態により得られる樹脂成形品8は、精密で安価であり、生化学分析、DNA診断分野等、なかでも手術室、ベッドサイド、在宅、あるいは町の診療所等、産業上大量使用される用途において特に効果的である。
【0105】
工業分野においては、道路標識等に使用されている再帰反射板の反射効果を高めることで視認性を向上させる、またはテレビ、コンピュータ等の表示画面の輝度を高めることで鮮明な画像を実現させるための研究開発が進められている。
【0106】
この要求を解決する手段の一つとして、表示板、または表示画面上に10μm〜100μmの範囲の中から選択された所定の寸法のポリマー粒子を一列に配列することが試みられている。ポリマー粒子を一列に、かつポリマー粒子同士が互いに接する密度で配列させることができれば、正面、または斜め方向からの入射光に対し、ポリマー粒子と空隙の空気との屈折率差を利用して、横方向に散乱していた光を正面方向へ再帰反射させることで正面輝度を高め視認性を向上させようとしたものである。従来技術の場合、容器の微細化に限界がある、または生産性に劣るため、所定の寸法を選択されたポリマー粒子を、一列に、かつポリマー粒子同士が互いに接する密度で配列できない欠点を有していたが、本発明の樹脂成形品8を使用することによって達成することが可能となる。
【0107】
例えば、粒子径40μmのポリマー粒子を、一列に、かつポリマー粒子同士が互いに接する密度で配列させる場合、例えば、容器間隔10μm、容器直径45μm、深さ25μm、平面度10μm以内、寸法精度±5%以内の樹脂成形品8によって達成される。あらかじめ、粒子径40μm±5%以内にポリマー粒子を分級した後、該ポリマー粒子を上記容器にコートすると、該ポリマー粒子は、1個の容器に1個のポリマー粒子が収まった形で成形品全体に均一に分散した状態となる。
【0108】
この状態の樹脂成形品容器を、例えば、表面に接着剤をコートした再帰反射板用の基板等に貼り合わせることにより、ポリマー粒子を、一層に、かつポリマー粒子同士が互いに接する密度で配列させることが可能となる。樹脂成形品8を再帰反射板用の基板等に貼り合わせた直後は、粒子は容器間隔10μmの距離をとっているが、硬化前の接着剤の表面張力により、しだいに粒子同士は互いに接した状態となる。
【0109】
本発明により得られる樹脂成形品8は、精密で安価であり、再帰反射板等へのポリマー微粒子配列に使用する際、繰り返し使用することも可能であるが、樹脂成形品表面の汚れ、変形等の欠陥が生じた場合、廃棄して新品を使用してもコスト高が極力抑えられるため、道路標識の再帰反射板、またはコンピュータの表示画面等、産業上大量使用される用途において特に効果的である。
【0110】
一方、バイオテクノロジー分野においては、多量の細胞の融合を一括して行うため、大きさや細胞膜の厚さや活性度のばらつき等の固体差のある細胞を全て確実に融合させることが困難であり、未融合細胞と融合細胞とを選別するための労力を必要とする問題があった。
【0111】
この要求を解決するための手段の一つとして、一対(2個)の細胞を配することで多数の細胞を効率よく融合させるための成形品は、本発明の樹脂成形品8を使用することによって達成される。
【0112】
取り扱う細胞の大きさが20〜100μmの場合、まず最初に、例えば容器間隔800μm、容器幅250μm、深さ250μm、平面度50μm以内、寸法精度±5%以内の基板を上記製造方法にて作製する。そして、各容器ごとに独立した電極を設けるため、例えば、スパッタリングにより、電極のパターン通りにマスキングを施した後、電極材料(例えばPt+W/Cr)、次に電極の酸化防止膜(例えばSiO2)を堆積させた樹脂成形品8によって達成される。
【0113】
液体中で上記容器のそれぞれに所定の細胞を位置決めし、各容器に設けられた一対の電極とこれに加えられる電圧によって得られる電気的情報により、各容器ごとに検出することが可能となる。
【0114】
本形態により得られる樹脂成形品8は、精密で安価であり、該成形品を繰り返し使用することも可能であるが、基板表面の汚れ、変形等の欠陥が生じた場合、コスト高が極力抑えられるため廃棄して新品を使用しても、労力の解消、処理時間の短縮といった作業効率が重要である用途において特に効果的である。本形態により得られる樹脂成形品8は、精密で安価であり、医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野の他に、コンビナトリアルケミストリーといった自動化学分析の分野においても広く応用が期待できる。特に検体量の微少化は、同時に廃棄の際の廃液量を大幅に削減することができ、環境保全の観点からも特に効果的である。
【0115】
尚、本発明にかかる製造方法により金属構造体7及び樹脂成形品8を製造した場合、金属構造体7及び樹脂成形品8に、マスク4とレジスト層2のギャップ3を設けたことによる(光の回り込みによる)深さ方向の線が形成されることがあるが、実用上何ら問題はない。
【0116】
本形態により得られる樹脂成形品は、従来の成形品と対比して高い精度などを発揮することができる。また、当該樹脂成形品は精密であると同時に安価に形成することができるため、製造コストを極力抑えられる利点を発揮できるような産業上大量に使用される用途に適用した場合に、特に効果的である。
【0117】
【実施例】
本発明にしたがって、樹脂成形品を形成する方法について、図を参照しながら以下により具体的に説明する。
図1(a)を参照して、まず基板1上に、有機材料(東京応化工業製「PMER N-CA3000PM」をベースとするレジスト塗布を行った。そして、図1(b)を参照して、レジスト層2を形成した後、所望のチャンバーのマスクパターンに加工したマスク4とレジスト層とのギャップ3を金属シムを用いて設定した。
【0118】
次にUV露光装置(ウシオユーテック製「UPE−500S」波長365nm、照度20mV/cm2)により、レジスト層2をUV光により露光を行った後、図1(c)に示すように、前記レジスト層2を有する基板1を現像し、基板1上にレジストパターン5を形成した(現像液:東京応化工業製「PMER現像液P-7G」)。
【0119】
そして、図1(d)に示すように前記レジストパターン5を有する基板1表面に蒸着、またはスパッタリングを行い、レジストパターンの表面に銀からなる導電性膜6を堆積させた。この工程において、他に白金、金、銅などを堆積させることができる。
【0120】
次に図1(e)に示すように、前記レジストパターン5を有する基板1をメッキ液に浸け、電気メッキを行い、レジストパターンの谷間に金属構造体7(以下、Ni構造体7)を堆積させた。この工程において、他に銅、金などを堆積させることができる。続いて、図1(f)に示すように基板1とレジストパターン5を除いてNi構造体7を得た。
図1(g)に示すように、得られたNi構造体7を金型として、射出成形でプラスチック材をNi構造体7に充填し、プラスチック成形体8を得た。
【0121】
樹脂成形品1[容器を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を1回、マスクとレジスト層のギャップを0mmとした後、図3に示すような横70mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、容器幅300μm、深さ10μmの容器を有する成形品を製造した。
【0122】
樹脂成形品2[容器を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を1回、マスクとレジスト層のギャップを0.02mmとした後、図4に示すような横70mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、容器幅300μm、深さ20μmの容器を有する成形品を製造した。
【0123】
樹脂成形品3[容器を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を2回繰り返し、マスクとレジスト層のギャップを0.02mmとした後、図5に示すような横70mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、容器幅300μm、深さ50μmの容器を有する成形品を製造した。
【0124】
樹脂成形品4[容器を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を4回繰り返し、マスクとレジスト層のギャップを0.10mmとした後、図6に示すような横70mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、容器幅300μm、深さ100μmの容器を有する成形品を製造した。
【0125】
【発明の効果】
本発明により、所望の形状を有する樹脂成形品を生産性良く製造することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例において、樹脂成形品を形成する工程を示す模式図である。
【図2】本実施形態における樹脂成形品の製造方法に従って製造される、樹脂成形品の一例を示す図である。
【図3】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、容器を有する樹脂成形品を示す図である。
【図4】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、容器を有する樹脂成形品を示す図である。
【図5】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、容器を有する樹脂成形品を示す図である。
【図6】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、容器を有する樹脂成形品を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 レジスト層
3 マスクとレジスト層のギャップ
4 マスク
5 レジストパターン
6 導電性膜
7 金属構造体
8 樹脂成形品
【発明の属する技術分野】
本発明は、所望の造形深さを有する樹脂成形品の製造方法、それらにより得られる樹脂成形品、及び樹脂成形品の製造に使用される金型の製造方法に関する。特に、本発明の方法は、臨床検査分野、遺伝子処理分野、コンビナトリアルケミストリー分野の、診断、反応、分離、計測等に使用される樹脂成形品の製造法として有用である。
【0002】
【従来の技術】
今日、社会の成熟にしたがい、医療・健康に対する価値観は、狭い範囲の基本的健康から、「ゆたかですこやかな生活」を求めるよう変化しつつある。このような価値観の変化の背景で、医療費が増大し、また健康と疾病の境界領域にある人々が増加している。この背景から、また治療に比べて予防のほうが低負担であるため、今後の社会においては、個人の意識は、治療医学よりも予防医学を重視する方向に変化していくものと考えられている。このような個人意識の変化にともない、医療分野、なかでも臨床検査分野において、患者の近く、例えば手術室、ベッドサイド、あるいは在宅等で、より迅速な検査・診断を行うことが可能となる無拘束な検査システム、血液などの検体量がより少量ですむ無侵襲、または低侵襲である検査システムが望まれている。また、前記のような迅速な検査・診断を行うことが可能となる無拘束な検査システムを実現するためには、検査・診断の際に使用される基板の小型化によって、例えば装置に携帯性を付与させることが必要である。
【0003】
近年、化学分析装置に携帯性を付与させる新たなアプローチとして、マイクロマシン技術による小型化が注目されている。例えば、生化学分析等で主流の比色分析の自動化装置では、ダイナミックな対流を発生させて2液を混合させるものと、最初から2液を交互に分散させた状況を作り出し、分子拡散により混合させるものに大別される。現在の主流になりつつあるのは、迅速な混合が可能、微量化、小型化に適している点で、分子拡散による方式である。
【0004】
マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が1mmから0.1mmに微細化が可能となれば、サンプルの微量化だけでなく、混合に要する時間を10分の1以下に短縮させることができる。さらに、マイクロマシン技術により流路の直径を微細化できれば、装置に携帯性を付与させると同時に、従来の大型装置と同じ機能を果たすことが期待されている。また、流路の微細化により、同一基板上に複数配することもでき、並列処理も期待されている。特に、臨床検査分野においては、血液などの検体量がより少量ですむ無侵襲、または低侵襲な検査システムを実現するためにも、検査・診断の際に使用される容器の微細化が期待されている。
【0005】
さらに近年、世界的なヒト・ゲノム解析計画の進展により、現在DNA診断が可能な疾患の種類や数は増加の一途をたどり、従来は生化学的分析により間接的に診断されてきた疾患の多くが、DNAレベルで疾患の原因あるいは発生機序にまで迫る確定的な診断ができるようになった。
【0006】
2000年6月26日、アメリカホワイトハウスにて、われわれ人類にとって非常に意義深い研究報告がなされた。それは「人間の設計図」とも言われるヒト遺伝子を構成する約30憶の遺伝暗号の80%以上が決定されたというものであった。人間の設計図であるヒト遺伝子の全解読は人類科学の最も輝かしい成果の1つとなると考えられている。
【0007】
約32憶個の塩基対の解析は、2003年に終了すると予定されている。ヒト遺伝子の全配列決定後、研究のターゲットは形質マッピングと、それを元にしたゲノム創薬、オーダーメイド医療である。形質マッピングとは、ヒト遺伝子配列のどこに形質(疾患のあるなし、薬物に対する固体の反応)が関係しているかを一つ一つ明らかにしていくことである。それにより、疾患治療のターゲット分子を効率的に捜索することが可能であり、また、そのデータをもとに、個人に適した薬物治療が行えるようになると期待されている。
【0008】
従来では生化学的分析により間接的に診断されてきた疾患の多くが、DNAレベルで疾患の原因あるいは発生機序にまで迫る確定的な診断ができるようになった結果、将来はオーダーメイド医療といわれる個人に適した副作用のない薬物治療のための診断、個人別の特定疾患のあるなし診断に使用する基板が町の診療所レベルに普及することが予測されており、精密で安価な基板が期待されている。
【0009】
遺伝子関連用途でよく利用される方法には、キャピラリー電気泳動法、マイクロアレイ方式、微量なゲノムサンプルを10万倍以上に増幅した高感度で検出できる遺伝子増幅(PCR:Polymerase Chain Reaction)法等がある。キャピラリー電気泳動法は、直径100〜200μmのキャピラリーに試料を導入、電気泳動により分離するものである。このキャピラリー径の微細化が可能となれば、更に診断時間の高速化が期待されている。キャピラリー径の微細化により、同一基板上に複数配することもでき、並列処理も期待されている。
【0010】
マイクロアレイ方式は、ガラス、シリコン、金属、プラスチック等の表面グリッドにバイオモレキュラーが固定化されており、検出は高感度、特異性を考慮して蛍光装置やラベル化が進められている。その際、マイクロマシン技術を用いてマイクロアレイが形成される。このマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析の概要は、比較したい2つのサンプル(例えば細胞Aと細胞B)から抽出したmRNAをそれぞれ異なる蛍光色素(Cy5、赤;Cy3、緑)でラベルした後、それらを混合して、スライドガラス上に固定された数千から数万種類の遺伝子と結合(ハイブリダイゼーション)させる。そして、各スポットの蛍光強度を蛍光スキャナーで検出することにより、各遺伝子の発現量比を知ることができる。例えば、赤いスポットはCy5(赤)でラベルされたものの方がCy3(緑)でラベルされたものより多いということがわかり、すなわち、細胞Bに比べ細胞Aで発現が高いことを示している。同様に、緑のスポットは細胞Aに比べ細胞Bで発現が高いことを示している。また、黄色のスポットはCy5(赤)とCy3(緑)でラベルされたものの量が等しく、すなわち、細胞Aと細胞Bで同程度に発現していることを示している。このように、1度に数千から数万の単位での遺伝子発現情報が得られると、それらの情報をデータベース化することにより、将来、オーダーメイド医療をはじめ、さまざまな応用が期待される。
【0011】
マイクロアレイの作製方法には、基板上で遺伝子合成を行うタイプと、遺伝子をスライドガラスにスポットするタイプがある。基板上で遺伝子合成を行うタイプは、フォトリソグラフィックマスクによる遮光により、光照射された特定のセルのみが活性化され、ヌレオクチドの化学的なカップリング反応を行わせる。そして、あらかじめデザインしたマスクを順次用いることにより、アレイ上の決められた位置に各種のオリゴヌクレオチドプローブを合成し、高密度アレイを構築する。また、遺伝子をスライドガラスにスポットするタイプは、例えば、384ウェルプレートに各遺伝子由来のcDNAあるいは合成DNA溶液を分注しておき、アレイヤー(スポッター)を用いてスライドガラスにスポットしていく。
【0012】
一般に、蛍光強度を蛍光スキャナーで検出する際、検出感度、および再現性が高くなければ、正確な遺伝子発現情報を取得することができない。また、基板上で遺伝子合成を行うマイクロアレイでは、基板上のアレイ密度を低くすることなく、検出感度、および再現性を高めるために1個のアレイ面積を広くすることが試みられている。しかしながら、平面基板上で拡大可能な面積には限界があり、基板上のアレイ密度を低くすること無く、検出感度と再現性を高めるのに限界が生じる。
【0013】
そこで、微細な容器を有する基板が可能になれば、1個のアレイ面積、および容積を飛躍的に増大させることが可能となり、検出感度、および再現性を高めることが期待されている。遺伝子をスライドガラスにスポットするマイクロアレイでは、微細な容器を有する基板によって、各遺伝子由来のcDNAあるいは合成DNA溶液のサンプル量を少なくし、かつスポット数を増大させることで解析速度を加速させることが期待されている。
【0014】
PCR法は、ポリメラーゼを使うことにより、目的とするDNAを短時間で10万倍以上に増幅するものである。PCR法では、例えば、96穴ウェルプレート型の容器が使用されており、容量2.5〜10.0μlの試料を導入、熱変性により増幅する。この容器の小型化が可能となれば、高速化・高効率化とともに、高価な抗体や基質の使用量を低減できるといった低コスト化も期待されている。さらに、バイオテクノロジー分野においては、微細化により、同一基板上に複数の流路、複数の混合部、複数の容器を配することができれば、キャピラリー電気泳動法とPCR法とを同一基板上で行うことも期待されている。
【0015】
また近年、コンビナトリアルケミストリーの分野において、著しい進歩が見られている。コンビナトリアルケミストリー(Combinatorial Chemistry)とは、いろいろなビルディングブロック(化合物を合成する際に、最終的にその目的化合物の幹や枝葉になっていく単位ともいうべき化合物)を一度にまたは段階的に合成し、ライブラリー(いろいろな化合物群)を構築していく技術である。
【0016】
これまでに行われてきた通常の合成と、コンビナトリアルケミストリーを比較してみると、通常の合成ではAとBから単一の化合物のABしか得られないのに対して、コンビナトリアルケミストリーでは、A1からAnとB1からBnのすべての組み合わせを一度に反応させて、A1B1〜AnBnの化合物を得ることができる。
【0017】
例えば、A1からAnまで100個、B1からBnまで同じく100個の化合物があるとすると、100×100=10,000種類の化合物群(ライブラリー)を一度に合成できる。
【0018】
このように、コンビナトリアルケミストリーでは、組み合わせを利用して、多くの化合物郡(ライブラリー)を効率的に合成し、それらの化合物をさまざまな目的に応じて活用することが可能である。そして、コンビナトリアルケミストリーによる技術を用いる目的の一つに医薬品開発があげられる。そして、多数の化合物を合成し、そのなかから目的とする化合物を見いだしていく手法は、医薬品開発に限らず、化学品の合成・分析、工業生産を含めて広く利用できる科学技術としてとらえることができる。コンビナトリアルケミストリー分野、なかでも製薬開発分野においても微細化が期待されている。
【0019】
コンビナトリアルケミストリーのように、数多くの化合物を一度にまたは段階的に合成し、ライブラリーを構築していく技術には、パラレル合成法とスプリット法がある。パラレル合成は、個々の化合物を混合物でなく単一の化合物として別の容器で合成するものである。基本的には物理的に仕切られた空間があればよいわけで、例えば、96穴のウェルプレートを用いて、反応はそれぞれの穴(くぼみ)でロボットを用いて自動的に行い、そのまま活性をテストするようなシステムも開発されている。
【0020】
スプリット合成はほとんど固相で行われるのに対して、パラレル合成は、液相でも行うことができる。スプリット合成の例を、3つの化合物A1〜A3、B1〜B3、C1〜C3を順次反応させていく簡単な系で示す。
【0021】
まず樹脂に担持したA1、A2、A3を均一に混合した後、これを3等分し、それぞれにB1、B2、B3を作用させる。ここで反応後、B1と反応させた容器には末端にB1を含む3種類の樹脂が含まれており、同様にB2と反応させた容器には末端にB2を含む3種類の樹脂が、B3と反応させた容器には末端にB3を含む3種類の樹脂が含まれている。
【0022】
したがって、この段階で合計9種類の樹脂が合成されたことになる。ここで再びこれらの樹脂を均一に混合した後、これを3等分し、それぞれにC1、C2、C3を作用させる。今度は9種類ずつ、合計27種類の樹脂が合成される。この方法によれば、膨大な数の化合物を含むライブラリーを迅速に構築することが可能で、例えば、天然型のアミノ酸20種類を3回反応させると8,000(20×20×20)、4回反応させると16万、5回反応させると320万(20×20×20×20×20)のペプチドが合成できることになる。
【0023】
1960年代以降、ランダムスクリーニングにより天然物の抽出液から生理活性物質が数多く発見されており、その時期には、スクリーニングする化合物・抽出液は数百から数千で、試験管レベルで行えるものであった。1980年代には、スクリーニングする合成化合物や天然物の抽出液は一つの研究所で数万から10万を超える場合があり、また分子生物学の進展に伴い医薬・動物薬・農薬の標的も急速に増加したため、試験管レベルでは処理できなくなってきた。
【0024】
そこで、これに対応する技術としてハイスループットスクリーニング(HTS、High Throughput Screening)が開発された。ハイスループットスクリーニングとは、コンビナトリアル合成したものから、例えば、リード化合物(創薬のための先導化合物、スクリーニングで見いだされた化合物)を見いだしたり、最適化したりする際に化合物を高速でふるいわける技術のことである。また、ハイスループットスクリーニングでは、スクリーニング用のアッセイロボット(生物学的な活性を見る試験を自動的に行う機械)を用いたりする。
【0025】
現在、ハイスループットスクリーニングを可能にした要因として、微量のサンプルを測定できる技術が発展したこと、コンピュータやロボットの発達、試験管にかわって24あるいは96個のサンプルを一度に処理できるプレートが普及してきたことがあげられる。今後、構造的に多様性のある化合物はさらに蓄積され、スクリーニングの標的はさらに増加すると予測され、96穴プレートから384穴プレート(反応液の微量化)へ移行することにより創薬開発の加速(迅速化)、微量化(コストダウン)が期待されている。
【0026】
現在、製薬開発の分野において、ハイスループットスクリーニング等の用途に使用されている96穴プレート、384穴プレートは、複数のサンプルを同時にスクリーニングすることができ、例えば、自動分注装置との組み合わせによって創薬開発の加速に貢献している。
【0027】
マイクロマシン技術により、例えば、容器の幅または直径が10mmから0.4mm、深さが10mmから0.3mmに微細化が可能になれば、同一基板上に1,000個〜5,000個のマイクロ容器を有することができ、創薬開発の飛躍的な加速が期待できる。特に近年、半導体デバイスの実現がエレクトロニクスに画期的な進歩と情報革命をもたらしたことと同様な技術革命がコンビナトリアルケミストリー分野、なかでも化学技術や化学産業分野にも微細化が期待されている。
【0028】
実験室レベルで使用される混合、反応のための容器サイズが大きい場合、混合、反応に時間を要し、目的とする分析結果を得るのに数日間かかってしまう。しかし、マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が深さ1mmから0.1mmに微細化が可能になれば、混合に要する時間を10分の1以下に短縮させることができ、数日間かかっていた分析を数10分で完了することが期待されている。また、流路の微細化により、同一基板上に複数配したり、基板を重ね合わせたりすることで更なる効率の向上も期待できる。
【0029】
マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が深さ1mmから0.1mmに微細化が可能になれば、混合、反応に使用する薬液量の大幅な低減、ひいては廃液量の大幅な低減が期待でき、環境負荷の低減に大きな効果を生むことになる。一般に反応容器をスケールアップした場合、物質や熱の移動はそれに比例して変化するわけではないので、反応特性は変わってしまう。そのため従来の化学プラント建設においては、実験室レベルから段階的に大きな反応装置を組み、その都度問題点を洗い出してやるというコストのかかる過程が必要だった。マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が深さ1mmから0.1mmに微細化が可能になれば、同一基板上に複数配したり、基板を重ね合わせたりすることでスケールアップが可能となるため、この問題を解決できることが期待できる。
【0030】
従来の樹脂成形品は、鋳型または切削法による金属製金型を用いて、射出成形、ブロー成形あるいはプレス成形することにより、形成していた。しかしながら、鋳型から金属製金型を作成する場合には、鋳型の精度に限界があるため、それを用いた金属製金型への造形範囲に制約がある。また、切削法により金属製金型を作製する場合も、切削バイトの切削精度に限界があるため、いずれの加工法を用いても精密、かつ微細な形状を有する樹脂成形品は実現されていないのが実情である。
【0031】
このように、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、いずれの加工法においても精密、かつ微細な形状を有する樹脂成形品は実現されていないのが現状である。そのため、得られた樹脂成形品を臨床検査分野、なかでも血液検査用途等に供する場合、流路、容器の精度、小型化には限界があり、血液等の検体量が多くなるという問題があった。ひいては、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、検査・診断装置の携帯性を付与することができないといった欠点を有していた。
【0032】
同様に、得られた樹脂成形品を臨床検査分野、なかでも、生化学分析用途等に供する場合、流路、容器の精度、微細化には限界があり、混合に要する時間(診断に要する時間)を短縮できず、ひいては装置に携帯性を付与することができないといった欠点を有していた。また同様に、得られた樹脂成形品を臨床検査分野、なかでも免疫測定用途等に供する場合、チャンバーの精度、小型化には限界があり、高価な抗体や基質の使用量を低減できないといった欠点を有していた。
【0033】
さらに、鋳型や切削法による金属製金型を用いて得られた樹脂成形品を遺伝子関連分野の遺伝子解析、なかでもキャピラリー電気泳動法による解析用途等に供する場合、流路の精度、微細化には限界があり、試料の導入、分離に要する時間(診断に要する時間)を短縮できないといった欠点を有していた。ひいては、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、基板を小型化することができないといった問題点も有していた。
【0034】
同様に、得られた樹脂成形品を遺伝子関連分野の遺伝子解析、なかでもマイクロアレイ方式による解析用途等に供する場合、容器の精度、小型化には限界があり、検出感度、再現性を高めることができない、サンプル量を少なくできない、解析速度を高めることができない、ひいては基板を小型化することができないといった欠点を有していた。
【0035】
また同様に、得られた樹脂成形品を遺伝子関連分野の遺伝子増幅(PCR)法による増幅用途に供する場合、容器の精度、小型化には限界があり、高速化・高効率化とともにサンプル量を少なくできない、ひいては基板を小型化することができないといった欠点を有していた。さらにまた、鋳型や切削法による金属製金型を用いて得られた樹脂成形品をコンビナトリアルケミストリー関連用途、なかでも製薬開発用途のハイスループットスクリーニング用途に供する場合、容器の微細化には限界があり、創薬開発の飛躍的な加速(迅速化)、微量化(コストダウン)ができない欠点を有していた。
【0036】
同様に、得られた樹脂成形品をコンビナトリアルケミストリー関連用途、なかでも化学産業分野の化学合成・分析用途に供する場合、流路の精度、微細化には限界があり、化学合成・分析時間を短縮できない、混合、反応に使用する薬品量の低減、廃液量の低減、環境負荷の低減ができない欠点を有していた。
【0037】
また同様に、化学合成用途に供する場合、流路の精度、微細化には限界があり、同一基板上に複数配したり、ひいては基板を重ね合わせたりすることでスケールアップすることができないため、従来の化学プラント建設におけるスケールアップの問題点を解決することができないといった欠点を有していた。
【0038】
このような、鋳型または切削法による金属製金型を用いる場合の係る問題を解決する加工法として、半導体微細加工技術を応用したガラスまたはシリコン基板へのウェットエッチング加工、またはドライエッチング加工により微細加工を施す技術が知られている。しかしながら、ウェットエッチングでは、マスキング材料下部のアンダーエッチングの進行により、造形深さが0.5mmよりも深くなると幅(または直径)精度が得られにくくなるため、精密な加工法とはいえなかった。
【0039】
ウェットエッチングに対して、ドライエッチングはSi半導体のパターン形成プロセスから発展した技術であり、各種プラズマ源種による各種電子部品、化合物半導体への応用が研究されている。しかしながら、この方法は、優れた微細加工性を有する反面、エッチング速度が500〜2,000nm/分と遅いため、例えば造形深さが0.1mmの加工を行う場合、50分以上の加工時間が必要となり、生産性に優れた安価な加工法とはいえなかった。
【0040】
また、ドライエッチングの加工時間が1時間以上になると、装置電極が熱を持つようになり、基板の変形、または装置の損傷が懸念されるため、装置電極が60℃を超えるような場合は装置を一時停止させ、再び加工を開始するなどの処置が必要となり生産性は更に低下する。
【0041】
そして、鋳型または切削法による金属性金型を用いる場合の係る問題を解決する他の方法としてリソグラフィー法が知られている。このリソグラフィー法では、まず、基板上にレジスト塗布を行い、該レジスト層の露光を実施した後、現像によりレジストパターンを形成する。そして、前記レジストパターンにしたがって、前記基板上に金属構造体を電気メッキにより堆積させた後、前記金属構造体を型として射出成形で成形品を形成する。
【0042】
この方法による商品としてレーザーディスク、CD−ROM、ミニディスクが代表例としてあげられるように、1枚の金属構造体から、例えば約5万枚以上の成形品を得ることが可能である。さらに、リソグラフィー法は、精密で極めて安価に製造できる点で、生産性に優れた方法といえる。また、扱える材料がシリコンとは異なる点においても、材料単価が安いことなど、今後の用途展開への大きいことが期待されている。
【0043】
しかしながら、リソグラフィーによる方法は、商品としてレーザーディスク、CD−ROM、ミニディスクが代表例としてあげられるように、造形深さは1〜3ミクロンが中心である。したがって、流路、容器といった例えば30ミクロンの造形深さを有する例は実現されていないのが実情である。その理由は、例えば射出成形によって樹脂成形品を得ようとした場合、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を得ることが難しいことが一因である。
【0044】
レーザーディスク等の場合、造形深さは1〜3ミクロンであるため金属構造体深さ方向の角度が垂直に近くても転写性、離型性に優れる樹脂成形品を得ることは可能であった。しかしながら、同様の垂直角度で流路、容器といった例えば30ミクロンの造形深さを有する樹脂成形品を得ようとすると、金属構造体に樹脂の一部が残る、又は形状が変更するなどして転写性、離型性に優れる樹脂成形品を得ることができない問題を生じていた。
【0045】
リソグラフィー法、なかでもシンクロトロン放射光を露光光源としたリソグラフィー法が知られている(例えば、特許文献1参照)。シンクロトロン放射光のもつ高い指向性はレーザー光に匹敵し、レーザーで実現できない短波長の光は、微細加工でネックとなる回折限界をクリアすることができる。したがって、シンクロトロン放射光を露光光源に用いた場合、より厚い層を露光処理することができるので、従来の光源と比較してより微細かつ深い造形深さを得ることが可能である。
【0046】
しかしながら、シンクロトロン放射光を使用した露光処理の場合、その高い指向性からレジスト層は垂直方向に露光されるため、得られる金属構造体のパターンは垂直になり、転写性、離型性に優れる樹脂成形品は得ることができない問題を生じる。より深い層を露光できるシンクロトロン放射光の場合、その転写性、離型性が損なわれる現象はより顕著となる。このように、従来の樹脂成形品の製造方法では、金属構造体の深さ方向の角度が制御できないため、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を生産性よく製造することができないという問題点があった。また、シンクロトロン放射設備は非常に大型の設備であり、その設備を建設・維持していくことは容易でない。特に、設備の建設、及び維持に多大なコストがかかるため、射出成形によって得られた成形品のコストは、通常のリソグラフィー法によって得られた成形品よりも数十倍の高価格となることが予測される。
【0047】
【特許文献1】
特開2001−38738号公報
【0048】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の樹脂成形品の製造方法では、金属構造体の形状が効率良く制御できないため、所望の形状を有する樹脂成形品を生産性良く製造することができないという問題点があった。
【0049】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、所望の形状を有する樹脂成形品を生産性良く製造することができる樹脂成形品の製造方法、及びその製造に使用される金型の製造方法を提供することを一つの目的とする。
【0050】
また、本発明は、所望の造形深さを有する樹脂成形品、あるいは、臨床検査分野、遺伝子関連分野、コンビナトリアルケミストリー分野における使用に好適なチップを提供することを目的とする。
【0051】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの態様である樹脂成形品の製造方法は、金属構造体を形成するステップと、前記金属構造体を型として樹脂成形品を形成するステップとを有する樹脂成形品の製造方法であって、前記金属構造体を形成するステップは、基板上にレジスト層を形成するステップと、マスクを用いて前記レジスト層を露光するステップであって、前記マスクと前記レジスト層との距離が実質的に1.0mm以下であるステップと、前記露光されたレジスト層を現像処理し、レジストパターンを形成すステップと、前記レジストパターンに基づいて、金属層をメッキにより堆積させるステップと、を備えたものである。これにより、所望の形状を有する樹脂成形品を生産性良く製造することができる。
【0052】
前記マスクと前記レジスト層との距離が0mmより大きくすることができる。これにより、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を生産性良く製造することができる。尚、前記マスクと前記レジスト層との距離が1.0mm以下ということは、限定的記載のない限り、0mmを含む。この点は以下の解決手段の記載において同様である。
【0053】
好適には、本発明にかかる樹脂成形品の製造方法では、前記マスクと前記レジスト層との距離が0.02mm以上、0.6mm以下である。より好ましくは、本発明にかかる樹脂成形品の製造方法では、前記マスクと前記レジスト層との距離が0.05mm以上、0.3mm以下である。
【0054】
前記金属層をメッキにより堆積させるステップは、前記金属構造体の凹凸面を形成するものであることができる。
前記レジストパターンを形成するステップにおいて露光に用いられる光源は、紫外線ランプ又はレーザー光とすることができる。これにより、樹脂成形品を効率的に製造することができる。
【0055】
前記樹脂成形品を形成するステップにより形成される樹脂成形品の凹部の深さは、実質的に5μm乃至300μmであることが、好ましい。さらに、前記樹脂成形品を形成するステップにより形成される樹脂成形品の凹部の深さは、実質的に10μm乃至200μmであることが、より好ましい。
【0056】
本発明の他の態様は、上記態様にかかる発明によって製造された、樹脂成形品である。特に、上記態様にかかる発明によって製造された樹脂成形品は、臨床検査に用いられるチップ、コンビナトリアルケミストリーに用いられるチップ、遺伝子関連に用いられるチップとして使用するのに好適な造形深さを有する樹脂成形品である。
【0057】
樹脂成形品の凹凸面上には、流路パターン、混合部パターン、容器パターンの中から少なくとも一つのパターンを形成させることができる。また、樹脂成形品は、電極、ヒータ、温度センサの中から少なくとも一つのパターンを有することができる。
【0058】
臨床検査に用いられるチップは、特に、血液検査用チップ、尿検査用チップ又は生化学検査用チップを含む。コンビナトリアルケミストリーに用いられるチップは、特に、医薬開発チップ又は化学合成・分析用チップを含む。遺伝子関連に用いられるチップは、遺伝子増幅用チップを含む。
【0059】
本発明の他の態様である金型の製造方法は、樹脂成形品を形成するために型として用いる金属構造体を製造する金型の製造方法であって、基板上にレジスト層を形成するステップと、マスクを用いて前記レジスト層を露光するステップであって、前記マスクと前記レジスト層との距離が実質的に1.0mm以下であるステップと、前記露光されたレジスト層を現像処理し、レジストパターンを形成すステップと、前記レジストパターンに基づいて、金属層をメッキにより堆積させるステップとを備えたものである。これにより、所望の形状を有する金型を生産性良く製造することができる。前記マスクと前記レジスト層との距離が0mmより大きくすることができる。これにより、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を生産性良く製造することができる。
【0060】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。図1は、本実施の形態における樹脂成形品の製造工程を示している。本実施の形態を実現するために使用される製造装置は広く知られたものであり、ここでは説明を省略する。図1を参照して、本実施の形態における製造方法を説明する。
【0061】
本形態の樹脂成形品は、
(a)基板上へのレジスト層の形成
(b)マスクとレジスト層のギャップを設定
(c)マスクを用いたレジスト層の露光
(d)レジスト層の現像
を行い、所望のレジストパターンを形成する。さらに、形成されたレジストパターンにしたがって、基板上に金属構造体をメッキにより堆積させる。この金属構造体を型として、樹脂成形品を形成することによって、樹脂成形品が製造される。
【0062】
レジストパターン形成処理について更に詳細に説明する。
(a)基板上へのレジスト層の形成について説明する。成形品形成ステップで得られる樹脂成形品の平面度は、基板1上へレジスト層2を形成する工程にて決定づけられる。すなわち、基板1上にレジスト層2を形成した時点の平面度が金属構造体、ひいては樹脂成形品の平面度に反映される。
【0063】
基板1上にレジスト層2を形成する方法は何ら限定されないが、一般的にスピンコート方式、ディッピング方式、ロール方式、ドライフィルムレジストの貼り合わせ等を挙げることができる。なかでも、スピンコート方式は、回転しているガラス基板上にレジストを塗布する方法で、直径300mmを超えるガラス基板にレジストを高い平面度で塗布する利点がある。従って、高い平面度を実現できる観点から、スピンコート方式が好ましく用いられる。
【0064】
用いられるレジストにはポジ型レジスト、ネガ型レジストの2種類がある。いずれも、露光条件により、レジストの焦点深度が変わるため、例えばUV露光装置を使用した場合、露光時間、UV出力値をレジスト厚さ、感度に応じて種類を選択するのが望ましい。
【0065】
用いるレジストがウェットレジストの場合、例えばスピンコート方式で所定のレジスト厚さを得るには、スピンコート回転数を変更する方法と、粘度調整する方法がある。
【0066】
スピンコート回転数を変更する方法は、スピンコーターの回転数を設定することによって所望のレジスト厚さを得るものである。粘度調整する方法は、レジスト厚さが厚い場合、又は塗布面積が大きくなると平面度が低下することが懸念されるため、実際使用上で要求される平面度に応じて粘度を調整するものである。
【0067】
例えばスピンコート方式の場合、1回で塗布するレジスト層2の厚さは、高い平面度を保持することを考慮し、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは、20〜50μmの範囲内であることが望ましい。高い平面度を保持したうえで、所望のレジスト層の厚さを得るためには、複数のレジスト層を形成することができる。
【0068】
(b)マスクとレジスト層のギャップ設定について説明する。医療分野、遺伝子関連分野、コンビナトリアルケミストリーなどに使用されるチップは、大きな造形深さが必要とされる。そのため、露光深度を大きくするために、マスクとレジスト層との距離は所定の値以下であることが要求とされることを発明者らは見出した。マスクとレジスト層との距離が小さいほど、典型的には、露光深度を大きくすることができる。さらに、上記のようなチップを成形する場合、大きな造形深さを有するため、成形品の転写性、離型性が悪化するという問題を見出した。図1(b)に示されるマスク4とレジスト層2のギャップ3は、転写性、離型性に優れる樹脂成形品製造の生産性を向上させる。つまり、金属構造体の造形深さが深くなると、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を得ることが難しくなる。これは樹脂材料の成形収縮などによって、金属構造体側に樹脂が残り易くなるためであり、樹脂の一部が残る、又は形状が変更するなどの問題を生じる。
【0069】
転写性・離型性を向上させるには、得ようとする樹脂成形品の造形深さに応じ、金属構造体の深さ方向の角度を設定することが必要である。そのため、十分な造形深さを得、又、転写性、離型性に優れる樹脂成形品を得るため、基板1上に形成するレジストパターン5への深さ角度設定を行う。
【0070】
レジストパターン5の深さ角度設定は、マスク4とレジスト層2のギャップ調節によって行うことができる。マスク4とレジスト層2の距離3が0mmでは、例えばUV露光光源を使用する場合、レジストパターン5の深さ角度はほぼ垂直となり、0mmより大きいギャップ3を設けることで光がマスク4の遮光部側に回り込むことで傾斜したレジストパターン5を形成することが可能となる。
【0071】
マスク4とレジスト層2のギャップ3は、その間隔が広くなると、より傾斜したレジストパターン5を形成することが可能であり、実際使用上で好ましい範囲で設定することが望ましい。マスク4とレジスト層2のギャップ3を正確に設定する方法として、例えば、マスク4とレジスト層2の間に金属シムを設けることがあげられる。傾斜したレジストパターン5の角度を確認する方法として、例えばレーザー顕微鏡、SEM観察をあげることができる。
【0072】
また、マスク4とレジスト層2のギャップ3が0mmの場合、マスク4にレジストが付着し、マスク洗浄にかかる時間から生産性を低下させ、あるいは樹脂成形品の寸法精度を低下させ、ひいては樹脂成形品の品質を低下させる懸念がある。0mmより大きいギャップ3を設けることにより、この問題を未然に防ぐことも可能となる。
【0073】
レジストパターン5の傾斜角度は、成形条件、樹脂材料、離型剤添加量等に応じて設定することが好ましいが、特に、得ようとする樹脂成形品の造形深さが10μm以上である場合に設けることが好ましく、20μm以上である場合はその必要性がさらに高まる。
【0074】
マスク4とレジスト層2の距離は、成形条件、樹脂材料、離型剤添加量等によって適宜選択すること好ましい。特にレジスト層への露光深度の観点から、マスク4とレジスト層2の距離3は、1.0mm以下であることが好ましい。さらに、所定の造形深さを有する樹脂成形品の転写性・離型性を向上させるため、0.0mmより大きなギャップを形成することが好ましい。マスク4とレジスト層2のギャップの大きさは、上記観点から、好ましくは、0.02mm以上、0.6mm以下であり、より好ましい範囲は、0.05mm以上、0.3mm以下である。なお、マスク4とレジスト層2の距離を0mmとする場合、露光する光を調節することにより、傾斜したレジストパターン5を形成することができる。
【0075】
傾斜したレジストパターン5を形成する他の方法は、レジスト材料を選択する方法、又は現像時間を調節する方法である。レジスト材料を選択する方法は、ポジ型(光分解型)レジストを使用することで、レジスト層上部よりも下部の幅が狭くなり傾斜を形成しやすいことを利用する。現像時間を調整する方法は、現像時間を長くすることで傾斜から垂直パターンとなることから、要求される傾斜角度に応じて現像時間を調整するものである。マスク4とレジスト層2のギャップ3を設ける方法とこれらを組み合わせることで、より正確な傾斜パターンの造形が可能となる。
【0076】
(c)マスクを用いたレジスト層の露光について説明する。図1(b)に示される工程で使用するマスク4は何ら限定されないが、エマルジョンマスク、クロムマスク等を挙げることが出来る。レジストパターン形成ステップでは、使用するマスク4によって流路の幅、深さ、容器間隔、および容器幅(または直径)、深さの寸法、および精度が左右される。そして、その寸法および精度は、樹脂成形品にも反映される。したがって、樹脂成形品の各寸法、および精度を所定のものとするためには、マスク4の寸法、および精度を規定する必要がある。マスク4の精度を高める方法は何ら限定しないが、例えば、マスク4のパターン形成に使用するレーザー光源をより波長の短いものに変えることを挙げることができるが、設備費用が高額であり、マスク製作費が高額となるため、樹脂成形品が実用的に要求される精度に応じて適宜規定するのが望ましい。
【0077】
露光に用いられる光源は設備費用が安価である紫外線またはレーザー光であることが好ましい。シンクロトロン放射光は露光深度が深いものの、かかる設備費用が高額であり、実質的に樹脂成形品の価格が高額となり、工業的に実用的でない。
【0078】
露光時間や露光強度等の露光条件はレジスト層2の材質、厚み等により変化するため、得られるパターンに応じて適宜調節することが好ましい。特に流路の幅、深さ、容器間隔、および容器幅(または直径)、深さ等のパターンの寸法、および精度に影響を与えるため、露光条件の調節は重要である。また、レジストの種類により焦点深度が変わるため、例えばUV露光装置を使用した場合、露光時間、UV出力値をレジストの厚さ、感度に応じて選択するのが望ましい。
【0079】
(d)レジスト層の現像について説明する。図1(c)に示される工程の現像は用いたレジストに対応する所定の現像液を用いることが好ましい。現像時間、現像温度、現像液濃度等の現像条件はレジスト厚みやパターン形状に応じて適宜調節することが好ましい。例えば、必要な深さを得るために現像時間を長くしすぎると、容器間隔、および容器幅(または直径)が所定の寸法よりも大きくなってしまうため、適宜条件を設定することが好ましい。
【0080】
レジスト層全体の厚みが増してくると、現像工程において、レジスト底部の幅(または直径)よりも表面の幅(または直径)が広くなることが懸念される。レジストを複数層形成する場合、各レジスト層の形成において、感度の異なるレジストを段階に分けて形成することが好ましい場合がある。この場合には、例えば、表面に近い層のレジストの感度を底部に近い層よりも高くすることなどが挙げられる。さらに具体的には、感度の高いレジストとして東京応化工業株式会社製のBMR C−1000PMを、そして感度の低いレジストとして東京応化工業株式会社製のPMER−N−CA3000PMを用いることができる。その他、レジストの乾燥時間を変えることにより感度を調整するようにしてもよい。例えば、東京応化工業株式会社製のBMR C−1000PMを使用した場合、スピンコート後のレジスト乾燥時、1層目の乾燥時間を110℃で40分、2層目の乾燥時間を110℃で20分とすることで、1層目の感度を高めることができる。
【0081】
流路や混合部、容器などの深さ・精度が均一な成形品を得るための方法としては、例えば、レジスト塗布で使用するレジスト種類(ネガ型、ポジ型)を変更する方法、金属構造体の表面を研磨する方法などがあげられる。
【0082】
尚、所望の造形深さを得るために複数のレジスト層を形成する場合、それらレ複数のジスト層を同時に露光・現像処理する、あるいは、一つのレジスト層を形成及び露光処理した後、さらにレジスト層の形成及び露光処理を行い、2つのレジスト層を同時に現像処理することが可能である。
【0083】
金属構造体形成ステップについてさらに詳細に説明する。金属構造体形成ステップとはレジストパターン形成ステップで得られたレジストパターン5に沿って金属を堆積させ、金属構造体の凹凸面をレジストパターンに沿って形成することにより、金属構造体を得る工程である。
【0084】
図1(d)に示されるように、この工程では予めレジストパターン5に沿って導電性膜6を形成する。該導電性膜6の形成方法は特に限定されないが、好ましくは蒸着、スパッタリング等を用いることができる。導電性膜6に用いられる導電性材料としては金、銀、白金、銅などを挙げることができる。
【0085】
図1(e)に示されるように、導電性膜6を形成した後、パターンに沿って金属をメッキにより堆積して金属構造体7を形成する。金属を堆積させるメッキ方法は特に限定されないが、例えば電解メッキ、無電解メッキ等を挙げることができる。用いられる金属は特に限定されないが、ニッケル、銅、金を挙げることができ、経済性・耐久性の観点からニッケルが好ましく用いられる。
【0086】
金属構造体7はその表面状態に応じて研磨しても構わない。ただし、汚れが造形物に付着することが懸念されるため、研磨後、超音波洗浄を実施することが好ましい。また、金属構造体7はその表面状態を改善するために、離型剤等で表面処理しても構わない。なお、金属構造体7の深さ方向の傾斜角度は、樹脂成形品の形状から50〜90°であることが望ましく、より望ましくは60°〜87°である。
【0087】
図1(f)に示されるように、メッキにより堆積した金属構造体7はレジストパターン5から分離される。尚、当業者は、上記各処理を適宜、変更適用することで、金属構造体を複数の金属層で形成することが可能である。又、樹脂成形用型として使用される型用金属構造体7は、例えば、金属中間構造体を使用して形成することができる。本形態の各処理は、この金属中間構造体の形成に適用することが可能である。
【0088】
成形品形成ステップについて更に詳細に説明する。成形品形成ステップは、図1(g)に示されるように、前記金属構造体7を型として、樹脂成形品8を形成する工程である。樹脂成形品8の形成方法は特に限定されないが、例えば射出成形、プレス成形、モノマーキャスト成形、溶剤キャスト成形、押出成形によるロール転写等を挙げることができ、生産性、型転写性の観点から射出成形が好ましく用いられる。所定の寸法を選択した金属構造体7を型として射出成形で樹脂成形品8を形成する場合、金属構造体7の形状を高い転写率で樹脂成形品8に再現することが可能である。転写率を確認する方法としては、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等を使用して行うことができる。
【0089】
金属構造体7を型として、例えば射出成形で樹脂成形品8を形成する場合、1枚の金属構造体7で1万枚〜5万枚、場合によっては20万枚もの樹脂成形品8を得ることができ、金属構造体7の製作にかかる費用負担を大幅に解消することが可能である。また、射出成形1サイクルに必要な時間は5秒〜30秒と短く、生産性の面で極めて効率的である。射出成形1サイクルで同時に複数個の樹脂成形品8を形成可能な成形金型を使用すれば、更に生産性を向上することが可能となる。上記成形方法では金属構造体7を金属型として用いても、金属構造体7を予め用意した金属型内部にセットして用いても構わない。
【0090】
樹脂成形品8を形成するのに使用する樹脂材料としては特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、スチレン系樹脂、アクリル・スチレン系共重合樹脂(MS樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系共重合樹脂、スチレン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系樹脂ポリジメチルシロキサンなどのシリコン樹脂等を挙げることができる。
【0091】
これらの樹脂は必要に応じて滑剤、光安定剤、熱安定剤、防曇剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの1種または2種以上を含有することができる。
【0092】
前記成形方法により得られる樹脂成形品について更に詳細に説明する。
図2は、本形態の製造方法を使用して製造しうる樹脂成形品の一例を示している。図2の樹脂成形品は、流路及び複数の流路が交差する混合部を有している。さらに、樹脂成形品は、ヒータ、温度センサ及び電極を有している。ヒータ及び温度センサは流路上に配置されている。電極もしくはヒータなどの金属部は、スパッタリングや蒸着にて形成することができる。加温、または反応処理を行うために必要とされる温度制御のため、温度センサが配置されている。このような樹脂成形品8の各寸法、および精度については、実際使用上で必要となる数値に応じて、前記各工程により、適宜調整することが望ましい。樹脂成形品8における流路、混合部、容器等の各寸法は、以下の範囲内であることが好ましい。
【0093】
樹脂成形品8の流路の幅の最小値は、マスク4の加工精度に由来しており、工業技術的にはX線、レーザーなど波長の短いレーザー光を使用することでより微細化は可能であると推測される。しかし、本発明は精密で安価な樹脂成形品8を医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野へ広く提供することが目的であり、特に、臨床検査、コンビナトリアルケミストリー、あるいは遺伝子関連に使用されるチップに好適なものであることから、工業的に再現し易い観点から幅が5μm以上であることが好ましい。また、規格化されていない多品種小ロットの樹脂成形品8の用途においても、精密で安価な容器として提供していく観点で幅が5μm以上であることが好ましい。流路の幅の最大値は、特に制限されないが、微細化による診断時間の短縮、複数処理を可能とし、装置に携帯性を付与させるために、300μm以下であることが好ましい。
【0094】
樹脂成形品8の流路の深さの最小値は、流路としての機能を有するためには、5μm以上であることが好ましい。流路の深さの最大値は、特に制限されないが、化学分析、DNA診断等の用途において、流路の幅の微細化による診断時間の短縮、複数処理を可能にし装置に携帯性を付与させるといった利点を損なわないためには、300μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは200μm以下である。
【0095】
樹脂成形品8の流路の長さの最小値は、化学分析、DNA診断等の用途において、試料の導入、分離(解析)の機能を有するためには5mm以上であることが好ましい。流路の長さの最大値は、特に制限されないが、化学分析、DNA診断等の用途において、流路の長さを短くすることで診断時間の短縮、複数処理を可能にし装置に携帯性を付与させるといった利点を損なわないためには、300mm以下であることが好ましい。
【0096】
樹脂成形品8の容器間隔の最小値は、マスク4の加工精度に由来しており、工業技術的にはX線、レーザーなど波長の短いレーザー光を使用することでより微細化は可能であると推測される。しかし、本発明は精密で安価な容器を医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野などへ広く提供することが目的であり、特に、臨床検査、コンビナトリアルケミストリー、あるいは遺伝子関連に使用されるチップに好適なものであることから、工業的に再現し易い観点で容器間隔が5μm以上であることが好ましい。
【0097】
また、容器間隔の最小値は、例えば、血液検査装置の位置決め精度によって決定される場合も想定されることから、装置の仕様に応じて適宜選択することが好ましい。また、規格化されていない多品種小ロットの用途においても、精密で安価な容器として提供していく観点から5μm以上であることが好ましい。容器間隔の最大値は、特に制限されないが、容器の小型化により複数処理を可能にし、装置に携帯性を付与させるためには、10,000μm以下であることが好ましい。
【0098】
上記理由により、樹脂成形品8の容器幅(または直径)においても、最小値5μm以上、最大値10,000μm以下であることが好ましい。樹脂成形品8の容器深さの最小値は、特に制限されないが、容器としての機能を有するためには、10μm以上であることが好ましい。容器深さの最大値は、例えば、複数回のレジスト塗布、十分な焦点深度を得るために露光光源をX線ビーム等のレーザーを使用する等によって、より深い造形を得ることは可能であると推測される。しかし、本発明は、精密で安価な容器を医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野へ広く提供することが目的であり、工業的に再現し易い観点から深さが1000μm以下であることが好ましい。
【0099】
樹脂成形品8の平面度の最小値は、工業的に再現し易い観点から1μm以上であることが好ましい。樹脂成形品8の平面度の最大値は、例えば、該成形品を他の基板と貼り合わせて使用する際に支障とならない観点から200μm以下であることが好ましい。樹脂成形品8の流路の幅、深さの寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±0.5〜10%の範囲内であることが好ましい。樹脂成形品8の容器間隔、容器幅(または直径)、深さの寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±0.5〜10%の範囲内であることが好ましい。
【0100】
樹脂成形品8の厚さに対する寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±20.5〜10%の範囲内であることが好ましい。樹脂成形品8の厚さは特に規定されないが、射出成形での取り出し時の破損、取り扱い時の破損、変形、歪みを考慮し、0.2〜10mmの範囲内であることが好ましい。樹脂成形品8の寸法は特に限定されないが、リソグラフィー法でレジストパターン5を形成する際、例えば、レジスト層2の形成をスピンコート法にて行う場合、直径400mmの範囲の中から採取できるよう用途に応じて適宜選択することが好ましい。
【0101】
本発明により得られる樹脂成形品8の用途は特定用途に限定されないが、例えば、化学分析用、DNA診断用、検体容器、抗体容器、試薬容器などの医療用途、微粒子配列などの工業用途、細胞処理などのバイオテクノロジー用途、反応容器などの自動化学分析などの用途に好適である。
【0102】
医療分野、なかでも抗血栓性(抗血小板付着)や細胞毒性試験における有害性の排除といった生体適合性を必要とする用途には、抗血栓性の効果が知られている材料を用いたり、表面処理を施したりすることが好ましい。表面処理により生体適合性を向上する方法として、例えば、射出成形で成形品を形成した後、スパッタリングによりSiO2膜を堆積させた後、熱酸化によりSiO2膜を成長させることで生体適合性を付与する方法があげられる。
【0103】
樹脂成形品8を形成した後、医療分野、なかでも臨床検査分野において、生化学分析、DNA診断分野等に使用する場合、樹脂成形品8上で加温、反応、信号検出等の処理を必要とする場合がある。樹脂成形品8上で加温、または反応処理を行う方法として、例えば、スパッタリングにて電極パターンを形成し、装置から電圧を印加する方法や、ヒータを配置することが考えられる。また、加温、または反応処理を行う際、温度制御が必要となる場合は、例えば、温度センサを配置することも考えられる。信号検出を行う場合、例えば、フォトダイオードを配置することが考えられる。
【0104】
医療分野、なかでも臨床検査分野において、生化学分析、DNA診断分野等に使用する場合、流路の微細化によって診断に要する時間を短縮することが期待されている成形品は、本発明により得られる樹脂成形品8を使用することによって達成される。本形態により得られる樹脂成形品8は、精密で安価であり、生化学分析、DNA診断分野等、なかでも手術室、ベッドサイド、在宅、あるいは町の診療所等、産業上大量使用される用途において特に効果的である。
【0105】
工業分野においては、道路標識等に使用されている再帰反射板の反射効果を高めることで視認性を向上させる、またはテレビ、コンピュータ等の表示画面の輝度を高めることで鮮明な画像を実現させるための研究開発が進められている。
【0106】
この要求を解決する手段の一つとして、表示板、または表示画面上に10μm〜100μmの範囲の中から選択された所定の寸法のポリマー粒子を一列に配列することが試みられている。ポリマー粒子を一列に、かつポリマー粒子同士が互いに接する密度で配列させることができれば、正面、または斜め方向からの入射光に対し、ポリマー粒子と空隙の空気との屈折率差を利用して、横方向に散乱していた光を正面方向へ再帰反射させることで正面輝度を高め視認性を向上させようとしたものである。従来技術の場合、容器の微細化に限界がある、または生産性に劣るため、所定の寸法を選択されたポリマー粒子を、一列に、かつポリマー粒子同士が互いに接する密度で配列できない欠点を有していたが、本発明の樹脂成形品8を使用することによって達成することが可能となる。
【0107】
例えば、粒子径40μmのポリマー粒子を、一列に、かつポリマー粒子同士が互いに接する密度で配列させる場合、例えば、容器間隔10μm、容器直径45μm、深さ25μm、平面度10μm以内、寸法精度±5%以内の樹脂成形品8によって達成される。あらかじめ、粒子径40μm±5%以内にポリマー粒子を分級した後、該ポリマー粒子を上記容器にコートすると、該ポリマー粒子は、1個の容器に1個のポリマー粒子が収まった形で成形品全体に均一に分散した状態となる。
【0108】
この状態の樹脂成形品容器を、例えば、表面に接着剤をコートした再帰反射板用の基板等に貼り合わせることにより、ポリマー粒子を、一層に、かつポリマー粒子同士が互いに接する密度で配列させることが可能となる。樹脂成形品8を再帰反射板用の基板等に貼り合わせた直後は、粒子は容器間隔10μmの距離をとっているが、硬化前の接着剤の表面張力により、しだいに粒子同士は互いに接した状態となる。
【0109】
本発明により得られる樹脂成形品8は、精密で安価であり、再帰反射板等へのポリマー微粒子配列に使用する際、繰り返し使用することも可能であるが、樹脂成形品表面の汚れ、変形等の欠陥が生じた場合、廃棄して新品を使用してもコスト高が極力抑えられるため、道路標識の再帰反射板、またはコンピュータの表示画面等、産業上大量使用される用途において特に効果的である。
【0110】
一方、バイオテクノロジー分野においては、多量の細胞の融合を一括して行うため、大きさや細胞膜の厚さや活性度のばらつき等の固体差のある細胞を全て確実に融合させることが困難であり、未融合細胞と融合細胞とを選別するための労力を必要とする問題があった。
【0111】
この要求を解決するための手段の一つとして、一対(2個)の細胞を配することで多数の細胞を効率よく融合させるための成形品は、本発明の樹脂成形品8を使用することによって達成される。
【0112】
取り扱う細胞の大きさが20〜100μmの場合、まず最初に、例えば容器間隔800μm、容器幅250μm、深さ250μm、平面度50μm以内、寸法精度±5%以内の基板を上記製造方法にて作製する。そして、各容器ごとに独立した電極を設けるため、例えば、スパッタリングにより、電極のパターン通りにマスキングを施した後、電極材料(例えばPt+W/Cr)、次に電極の酸化防止膜(例えばSiO2)を堆積させた樹脂成形品8によって達成される。
【0113】
液体中で上記容器のそれぞれに所定の細胞を位置決めし、各容器に設けられた一対の電極とこれに加えられる電圧によって得られる電気的情報により、各容器ごとに検出することが可能となる。
【0114】
本形態により得られる樹脂成形品8は、精密で安価であり、該成形品を繰り返し使用することも可能であるが、基板表面の汚れ、変形等の欠陥が生じた場合、コスト高が極力抑えられるため廃棄して新品を使用しても、労力の解消、処理時間の短縮といった作業効率が重要である用途において特に効果的である。本形態により得られる樹脂成形品8は、精密で安価であり、医療分野、工業分野、バイオテクノロジー分野の他に、コンビナトリアルケミストリーといった自動化学分析の分野においても広く応用が期待できる。特に検体量の微少化は、同時に廃棄の際の廃液量を大幅に削減することができ、環境保全の観点からも特に効果的である。
【0115】
尚、本発明にかかる製造方法により金属構造体7及び樹脂成形品8を製造した場合、金属構造体7及び樹脂成形品8に、マスク4とレジスト層2のギャップ3を設けたことによる(光の回り込みによる)深さ方向の線が形成されることがあるが、実用上何ら問題はない。
【0116】
本形態により得られる樹脂成形品は、従来の成形品と対比して高い精度などを発揮することができる。また、当該樹脂成形品は精密であると同時に安価に形成することができるため、製造コストを極力抑えられる利点を発揮できるような産業上大量に使用される用途に適用した場合に、特に効果的である。
【0117】
【実施例】
本発明にしたがって、樹脂成形品を形成する方法について、図を参照しながら以下により具体的に説明する。
図1(a)を参照して、まず基板1上に、有機材料(東京応化工業製「PMER N-CA3000PM」をベースとするレジスト塗布を行った。そして、図1(b)を参照して、レジスト層2を形成した後、所望のチャンバーのマスクパターンに加工したマスク4とレジスト層とのギャップ3を金属シムを用いて設定した。
【0118】
次にUV露光装置(ウシオユーテック製「UPE−500S」波長365nm、照度20mV/cm2)により、レジスト層2をUV光により露光を行った後、図1(c)に示すように、前記レジスト層2を有する基板1を現像し、基板1上にレジストパターン5を形成した(現像液:東京応化工業製「PMER現像液P-7G」)。
【0119】
そして、図1(d)に示すように前記レジストパターン5を有する基板1表面に蒸着、またはスパッタリングを行い、レジストパターンの表面に銀からなる導電性膜6を堆積させた。この工程において、他に白金、金、銅などを堆積させることができる。
【0120】
次に図1(e)に示すように、前記レジストパターン5を有する基板1をメッキ液に浸け、電気メッキを行い、レジストパターンの谷間に金属構造体7(以下、Ni構造体7)を堆積させた。この工程において、他に銅、金などを堆積させることができる。続いて、図1(f)に示すように基板1とレジストパターン5を除いてNi構造体7を得た。
図1(g)に示すように、得られたNi構造体7を金型として、射出成形でプラスチック材をNi構造体7に充填し、プラスチック成形体8を得た。
【0121】
樹脂成形品1[容器を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を1回、マスクとレジスト層のギャップを0mmとした後、図3に示すような横70mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、容器幅300μm、深さ10μmの容器を有する成形品を製造した。
【0122】
樹脂成形品2[容器を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を1回、マスクとレジスト層のギャップを0.02mmとした後、図4に示すような横70mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、容器幅300μm、深さ20μmの容器を有する成形品を製造した。
【0123】
樹脂成形品3[容器を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を2回繰り返し、マスクとレジスト層のギャップを0.02mmとした後、図5に示すような横70mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、容器幅300μm、深さ50μmの容器を有する成形品を製造した。
【0124】
樹脂成形品4[容器を有する成形品の製造]
図1に示す成形品を形成する方法に従って、レジスト塗布を4回繰り返し、マスクとレジスト層のギャップを0.10mmとした後、図6に示すような横70mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、容器幅300μm、深さ100μmの容器を有する成形品を製造した。
【0125】
【発明の効果】
本発明により、所望の形状を有する樹脂成形品を生産性良く製造することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例において、樹脂成形品を形成する工程を示す模式図である。
【図2】本実施形態における樹脂成形品の製造方法に従って製造される、樹脂成形品の一例を示す図である。
【図3】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、容器を有する樹脂成形品を示す図である。
【図4】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、容器を有する樹脂成形品を示す図である。
【図5】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、容器を有する樹脂成形品を示す図である。
【図6】図1に示す、樹脂成形品を形成する工程によって製造された、容器を有する樹脂成形品を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 レジスト層
3 マスクとレジスト層のギャップ
4 マスク
5 レジストパターン
6 導電性膜
7 金属構造体
8 樹脂成形品
Claims (19)
- 金属構造体を形成するステップと、前記金属構造体を型として樹脂成形品を形成するステップとを有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記金属構造体を形成するステップは、
基板上にレジスト層を形成するステップと、
マスクを用いて前記レジスト層を露光するステップであって、前記マスクと前記レジスト層との距離が実質的に1.0mm以下であるステップと、
前記露光されたレジスト層を現像処理し、レジストパターンを形成すステップと、
前記レジストパターンに従って、金属層をメッキにより堆積させるステップと、
を備えた樹脂成形品の製造方法。 - 前記マスクと前記レジスト層との距離が0mmより大きいことを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記マスクと前記レジスト層との距離が0.02mm以上、0.6mm以下であることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記マスクと前記レジスト層との距離が0.05mm以上、0.3mm以下であることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記金属層をメッキにより堆積させるステップは、前記金属構造体の凹凸面を形成する、請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記レジストパターンを形成するステップにおいて露光に用いられる光源は、紫外線ランプ又はレーザー光であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記樹脂成形品を形成するステップにより形成される樹脂成形品の凹部の深さは、実質的に5μm乃至300μmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記樹脂成形品を形成するステップにより形成される樹脂成形品の凹部の深さは、実質的に10μm乃至200μmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法により得られる樹脂成形品。
- 流路パターン、混合部パターン、容器パターンの中から少なくとも一つのパターンを有する請求項9記載の樹脂成形品。
- 電極、ヒータ、温度センサの中から少なくとも一つのパターンを有する請求項9又は10記載の樹脂成形品。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法により得られる臨床検査に用いられるチップ。
- 血液検査用チップ、尿検査用チップ又は生化学検査用チップのいずれか一つであることを特徴とする請求項12に記載の臨床検査に用いられるチップ。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法により得られるコンビナトリアルケミストリーに用いられるチップ。
- 医薬開発チップ又は化学合成・分析用チップであることを特徴とする請求項14記載のコンビナトリアルケミストリーに用いられるチップ。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法により得られる遺伝子関連に用いられるチップ。
- 遺伝子増幅用チップであることを特徴とする請求項16記載の遺伝子関連に用いられるチップ。
- 樹脂成形品を形成するために型として用いる金属構造体を製造する方法であって、
基板上にレジスト層を形成するステップと、
マスクを用いて前記レジスト層を露光するステップであって、前記マスクと前記レジスト層との距離が実質的に1.0mm以下であるステップと、
前記露光されたレジスト層を現像処理し、レジストパターンを形成すステップと、
前記レジストパターンに基づいて、金属層をメッキにより堆積させるステップと、
を備えた方法。 - 前記マスクと前記レジスト層との距離が0mmより大きいことを特徴とする請求項18記載の方法。
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JP2002365147A JP2004195730A (ja) | 2002-12-17 | 2002-12-17 | 樹脂成形品の製造方法及び金型の製造方法、並びに樹脂成形品及びチップ |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007228818A (ja) * | 2006-02-28 | 2007-09-13 | Kuraray Co Ltd | 細胞培養容器、その製造方法および細胞培養方法 |
US8980625B2 (en) | 2006-02-24 | 2015-03-17 | National Food Research Institute | Cell culture plate and method of manufacturing the same |
JP2016013079A (ja) * | 2014-07-01 | 2016-01-28 | 大日本印刷株式会社 | 細胞培養容器 |
-
2002
- 2002-12-17 JP JP2002365147A patent/JP2004195730A/ja active Pending
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