JP2004194457A - 直流機 - Google Patents
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Abstract
【課題】整流変化を抑制して良好な整流を行うことができる直流機を提供する。
【解決手段】ブロアモータ1は、等角度間隔に設けられた複数のティース6aを有する電機子コア6の所定数の該ティース6aに電機子コイル7を巻装して構成される電機子3と、該電機子3を挟んで対向配置されるマグネット4,5とを備える。マグネット4,5は、径方向の磁束密度が周方向に均一である主磁極部4a,5aと、主磁極部4a,5aの電機子3の回転方向側に配置され主磁極部4a,5aとの境界位置を弱磁束位置にするとともに回転方向側に向かって徐々に径方向の磁束密度を増加させる延長部4b,5bとを有する。主磁極部4a,5aの電機子3の回転方向逆側には、主磁極部4a,5aに対し逆極性の磁束密度を有する異極部11,12が設けられている。
【選択図】 図1
【解決手段】ブロアモータ1は、等角度間隔に設けられた複数のティース6aを有する電機子コア6の所定数の該ティース6aに電機子コイル7を巻装して構成される電機子3と、該電機子3を挟んで対向配置されるマグネット4,5とを備える。マグネット4,5は、径方向の磁束密度が周方向に均一である主磁極部4a,5aと、主磁極部4a,5aの電機子3の回転方向側に配置され主磁極部4a,5aとの境界位置を弱磁束位置にするとともに回転方向側に向かって徐々に径方向の磁束密度を増加させる延長部4b,5bとを有する。主磁極部4a,5aの電機子3の回転方向逆側には、主磁極部4a,5aに対し逆極性の磁束密度を有する異極部11,12が設けられている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネットを有する直流機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
直流機としての直流モータなどは、一般的に異なる極性(N極、S極)を有するマグネットと、電機子と、コンミュテータと、2つのブラシとを備えている。そして、直流モータは、ブラシとコンミュテータとで電機子コイルに通電している電流の方向を切り替えることで回転する。
【0003】
しかし、この電流の方向を切り替えるいわゆる整流の際、電機子コイルのインダクタンス(L)のために電流の直線的な変化を遅らせようとする作用が生じ、不足整流となりやすい。この場合、整流終期においてコンミュテータから電機子コイルに流れる電流は強制的に遮断されることになり、火花放電(整流火花)を発生することになる。この現象が、ブラシ摩耗、騒音、電磁ノイズの原因となることは既に知られており、根本的な対策法が望まれている。
【0004】
そこで、本出願人は、特許文献1及び特許文献2などでマグネットに磁束変化部を設定することによる整流改善の方法を提案している。例えば、特許文献1では、整流改善を図るために2つのマグネットの各内周面に凹部を形成し、電機子コイルを通過する磁束量Φを図7に示すように変化させている。そして、この磁束量Φの変化により、誘起電圧(=−dΦ/dt)を発生させている。図8に示すように、この誘起電圧により電機子コイルのインダクタンスに基づくリアクタンス電圧が打ち消され、不足整流の改善が図られている。つまり、リアクタンス電圧に完全に一致する誘起電圧を発生させることで整流波形が図8の破線で示すようになり、理想的な整流の1つである直線整流が実現されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−95218号公報
【特許文献2】
特開2002−262537号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、これら特許文献による整流改善は、直線整流を狙うものであった。従って、図8に範囲C11,C12で示す整流開始点及び終了点において急激な整流変化が発生している。すなわち、整流開始点及び終了点において、整流波形が屈曲している。しかし、直流モータの耐久性等の重要性能に影響するブラシ摩耗、騒音、電磁ノイズは整流の変化率に影響されやすいものであることから、整流はなるべく緩やかに変化することが好ましい。特に、直線整流では、ブラシとコンミュテータとの微小な接触変動による整流時間の短縮でも容易に整流が悪化してしまう。
【0007】
本発明の目的は、整流変化を抑制して良好な整流を行うことができる直流機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、等角度間隔に設けられた複数のティースを有する電機子コアの所定数の該ティースに電機子コイルを巻装して構成される電機子と、該電機子を挟んで対向配置されるマグネットとを備え、整流中に該電機子コイルが接続されたコンミュテータの隣接する2つのコンミ片がブラシにより短絡されて該電機子コイルの電流の向きが反転される直流機において、前記マグネットは、径方向の磁束密度が周方向に均一である主磁極部と、前記主磁極部の前記電機子の回転方向側に配置され該主磁極部との境界位置を弱磁束位置にするとともに該回転方向側に向かって徐々に径方向の磁束密度を増加させる延長部とを有し、前記主磁極部の前記電機子の回転方向逆側には、該主磁極部に対し逆極性の磁束密度を有する異極部が設けられたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の直流機において、前記異極部は、前記電機子コイルが巻装される前記所定数のティースの前記電機子の回転方向逆側の端部に配置されたティースの基端が整流中に通過する範囲内に配置されていることを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の直流機において、前記電機子コイルが巻装される前記所定数のティースの前記電機子の回転方向側の端部に配置されたティースの先端は、整流開始時に前記弱磁束位置に配置されることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の直流機において、前記異極部は、前記マグネットの一部を着磁させて該マグネットに一体で設けたことを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の直流機において、前記異極部は、前記マグネットと別体で設けたことを要旨とする。
(作用)
請求項1又は2に記載の発明によれば、例えば前記電機子コイルが巻装される前記所定数のティースの前記電機子の回転方向逆側の端部に配置されたティースの基端が整流中に通過する範囲内に、前記異極部が配置されるとする。このとき、前記電機子の回転方向逆側の端部に配置されたティースの基端が異極部を通過することで、電機子コイルを通過する磁束量は電機子の回転に応じて急激に増加する。この電機子コイルを通過する磁束量の変化により、電機子コイルのインダクタンスに基づくリアクタンス電圧を打ち消す誘起電圧が発生され、整流変化の抑制された良好な整流が行われる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、前記電機子コイルが巻装される前記所定数のティースの前記電機子の回転方向側の端部に配置されたティースの先端が、整流開始時に前記弱磁束位置に配置されることで、整流当初において電機子コイルを通過する磁束量は、電機子の回転に応じて徐々に増加する。そして、この電機子コイルを通過する磁束量の変化により、電機子コイルに発生する誘起電圧も、電機子の回転位置に応じて緩やかに変動する。このため、電機子コイルのインダクタンスに基づくリアクタンス電圧と上記誘起電圧とにより整流変化の抑制された良好な整流が行われる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、異極部をマグネットに一体で設けることで部品点数の増大が抑制される。
請求項5に記載の発明によれば、異極部をマグネットと別体で設けることで、その着磁(発生磁束密度)の調整が容易なものとされる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態の直流機としてのブロアモータ1の概略構造を示す部分断面図である。
【0016】
ブロアモータ1は、2極の直流機であって、モータハウジングヨーク2内には、電機子3が回転可能に軸支され、該電機子3を挟んでN極及びS極をそれぞれ形成する2つのマグネット4,5が対向配置されている。電機子3は、電機子コア6とその電機子コア6に巻装される電機子コイル7とを有し、直流電流の供給により回転する。
【0017】
電機子コア6には、複数のティース6aが形成されており、複数の電機子コイル7は、それぞれ隣接するn個のティース6aの周囲に電機子コイル7が巻き付けられている。尚、本実施形態では、ティース6aの個数は12個であり、そのティース6aが、電機子3の周方向に30°毎に形成されている。つまり、隣り合うティース6aは、その中心線のなす角度(モータ電機子スロット角、以下、ティース6a間の角度という。)θが30°となるように形成されている。又、図示を省略しているが、複数の電機子コイル7がそれぞれ5つ(n=5)のティース6a毎に同様に巻き付けられている。つまり、巻線の巻装方式は分布巻である。
【0018】
電機子3の一端には、複数のコンミ片8aを有するコンミュテータ8が配設されている。複数(図において2つ)のブラシ9がコンミュテータ8の各コンミ片8aに摺接するように付勢された状態で配設されている。そして、図示しない直流電源から供給される直流電流が、ブラシ9とコンミュテータ8のコンミ片8aとを経て電機子コイル7に流入すると、電機子3が回転し始める。そして、いずれかのブラシ9に対して隣接する一対のコンミ片8aが接触して、それらのコンミ片8a間がブラシ9を介して短絡することにより、電機子コイル7に流れる電流の向きが変更されて、電機子3が図1における時計回り方向(図中、矢印X方向)に回転し続ける。
【0019】
本実施形態では、12個のコンミ片8aが周方向に30°毎に設けられており、電機子3がブラシ9に対して略30°回転するとき、電機子コイル7の電流の向きが変更される。この時、電機子コイル7が整流中であるといい、この回転する区間が各電機子コイル7に対する整流区間である。つまり、電機子3の30°の回転によって電機子コイル7の整流が行われる。尚、本実施形態では、コンミ片8a間角度は前記ティース6a間の角度θと同じに設定され、ブラシ9とコンミ片8aとの当接幅に対応する当接幅角度は前記ティース6a間の角度θと同じに設定されている。そして、各電機子コイル7の整流区間に対応する電機子3の回転角度も前記ティース6a間の角度θに一致している。
【0020】
前記マグネット4,5は、主磁極部4a,5aと、延長部4b,5bとを有している。
主磁極部4a,5aは、整流中の電機子コイル7が巻装されるn個(5つ)のティース6aのうち回転方向側の端部に配置されるティース61及び回転方向逆側の端部に配置されるティース62の中心線間の角度(=120°の角度)に対応した長さとなるように、略均一の厚みにて形成されている。従って、着磁されたマグネット4,5は、主磁極部4a,5aにおいて周方向に均一となる径方向の磁束密度を有する。そして、上記主磁極部4a,5aの中心と整流中の電機子コイル7が巻装される電機子コア6(5つのティース6a)の中心が一致する回転位置が整流中心となる(図1の状態。)。この回転位置において、ブラシ9によって短絡される電機子コイル7の電流の向きが反転する。
【0021】
又、延長部4b,5bは、マグネット4,5において主磁極部4a,5aの回転方向側の端部に延出形成されている。延長部4b,5bは、整流区間の30°の角度に対応した長さとなるように形成されており、当該区間で回転方向に徐々に厚くなるように形成されている。従って、着磁されたマグネット4,5は、主磁極部4a,5a及び延長部4b,5bの境界位置近傍において最小となり、延長部4b,5bにおいて回転方向に向かって徐々に増加する径方向の磁束密度を有している。
【0022】
ここで、マグネット4,5において主磁極部4a,5aの回転方向逆側の端部には、異極部11,12が延出形成されている。この異極部11,12は、主磁極部4a,5aと同等の径方向の厚さにて整流区間の30°の半分(=15°)の角度に対応した長さとなるように形成されており、当該区間でマグネット4,5(主磁極部4a,5a及び延長部4b,5b)とは異なる極性を形成している。具体的には、N極を形成するマグネット4に対して設けられた異極部11はS極を形成し、S極を形成するマグネット5に対して設けられた異極部12はN極を形成している。そして、着磁された異極部11,12は、主磁極部4a,5aと同等の大きさ(B0)で周方向に均一となる径方向の磁束密度を有している。
【0023】
次に、整流時の電機子コイル7によって巻装される電機子コア6(5つのティース6a)と異極部11,12を含むマグネット4,5による磁束密度との位置関係を図2を用いて説明する。尚、同図では、当該磁束密度を形成する主磁極部4a,5a、延長部4b,5b及び異極部11,12を対応させてその符号を併記している。
【0024】
電機子3が回転して電機子コア6が移動する。そして、図2(a)のように電機子コア先端(ティース61において電機子3の回転方向側である先端61a)がマグネット4,5における主磁極部4a,5a及び延長部4b,5bの境界位置に相当する弱磁束位置Aに略配置されるとき、電機子コイル7の整流が開始される。その状態から図2(b)のように15°回転した位置が整流中心となり、この位置で電機子コイル7を流れる電流の方向が反転する。さらに、図2(c)のように15°回転した回転位置で整流が終了する。つまり、電機子コア6が図2(a)→図2(b)→図2(c)の順に30°回転するときに電機子コイル7の整流が実施される。尚、整流中心において電機子コア6の基端(ティース62において電機子3の回転方向逆側である基端62a)は異極部11,12の基端に略配置される。又、整流が終了するとき、電機子コア6の基端(ティース62の基端62a)は主磁極部4a,5a及び異極部11,12の境界位置に相当する磁束反転位置Bに略配置される。
【0025】
この整流時において、電機子コア6の先端(ティース61の先端61a)に対向する延長部4b,5bに対応して、整流区間の30°の角度に対応する部分で徐々に磁束密度が大きくなるように形成されている。一方、電機子コア6の基端(ティース62の基端62a)に対向する異極部11,12に対応して、整流区間の後半の15°の角度に対応する部分で磁束密度が反転するように形成されている。
【0026】
図3は、このように構成されたブロアモータ1の回転位置(電機子3の回転位置)に応じた動作をシミュレーションにて解析したものである。すなわち、図3(a)は、上記回転位置に応じたマグネット4,5等による磁束密度の変化を近似したものである。また、図3(b)は、当該回転位置に応じたある電機子コイル7を通過する磁束量Φの変化及び誘起電圧の変化をそれぞれ表したものである。詳細すれば、図3(b)の基準となる電機子コイル7の位置は、回転方向側のコイル先端位置(言い換えると、複数のティースをまたいでコイルが巻装された回転側のティースと、そのティースのさらに回転側のティースとの間のスロット中心線)であり、その位置を0°〜360°回転させて、電機子コイル7を通過する前記変化を表したのである。よって図1の状態は、最上点を0°とすれば、描かれた電機子コイル7の位置が165°回転したときの状態である。この磁束量Φは、主磁束(マグネット4,5及び異極部11,12からの磁束)及び電機子3の回転時における磁束(電機子コイル7を流れる電流による磁束)を合計した磁束量に相当する。また、誘起電圧は、便宜的に主磁束により発生する誘起電圧、電機子3の回転時における磁束により発生する誘起電圧、及びこれらの合成誘起電圧eの各変化をそれぞれ示している。なお、図3(b)において当該電機子コイル7に対応する整流区間の角度を破線にて示している。そして、図4では、当該電機子コイル7の整流区間におけるリアクタンス電圧(L(di/dt)、実際にはこれに対応する電流波形。)、合成誘起電圧e(実際にはこれに対応する電流波形。)及びこれらに基づく整流波形の各変化をそれぞれ示している。同図4では、参考として直線整流における整流波形を破線にて図示している。
【0027】
既述のように、電機子コア先端(ティース61の先端61a)がマグネット4,5の弱磁束位置A(図2(a)参照。)に略配置されるとき電機子コイル7の整流が開始される。従って、図3(b)に示すように、整流区間の前半では、整流中の電機子コイル7を通過する磁束量Φは、電機子3の回転に応じて徐々に増加する。又、電機子コア基端(ティース62の基端62a)が異極部11,12(図2(b)参照。)に略到達するときが整流中心になる。従って、整流区間の後半では、整流中の電機子コイル7を通過する磁束量Φは、整流中心の近傍で急激に変化(急増)した後に電機子3の回転に応じて徐々に増加する。
【0028】
このように電機子コイル7を通過する磁束量Φが変化するため、整流区間の前半において、電機子コイル7に発生する合成誘起電圧e(=−dΦ/dt)は、電機子3の回転位置に応じて略直線状に緩やかに変動(減少)する(図4参照。)。又、整流区間の後半において、電機子コイル7に発生する合成誘起電圧e(=−dΦ/dt)は、整流中心の近傍で急激に変動(減少)した後、電機子3の回転位置に応じ緩やかに変動(減少)する(図4参照。)。
【0029】
以上により、図4に示したように、整流区間の前半では合成誘起電圧eが緩やかに変動することからリアクタンス電圧の特性が顕著となり、リアクタンス電圧との合計に基づく整流波形は上に凸となる略正弦波状に推移する。従って、整流区間の前半での整流波形は、不足整流気味に緩やかな変化で形成される。また、整流区間の後半では、合成誘起電圧eが急激に変動した後に再び緩やかに変動することから合成誘起電圧eの特性が顕著となり、上記整流波形は下に凸となる略正弦波状に推移する。従って、整流区間の後半での整流波形は、過整流気味に緩やかな変化で形成される。そして、整流区間を通じ整流変化が緩やかになるように合成誘起電圧eによってリアクタンス電圧は打ち消される。
【0030】
整流区間における以上の合成誘起電圧e及びリアクタンス電圧の関係により、整流区間を通じて正弦波状の整流波形となる正弦波整流が実現され、図4に範囲C1,C2で示す整流開始点及び終了点での整流変化が緩やかにされる。すなわち、整流開始点及び終了点での整流波形の接線方向が略水平になることから、ブラシ9とコンミュテータ8との接触変動による整流時間の短縮が生じたとしても整流の悪化が抑制される。
【0031】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、電機子コイル7が巻装される5つのティース6aの前記電機子3の回転方向側の端部に配置されたティース61の先端61aが、整流開始時に前記弱磁束位置Aに配置されることで、整流当初において電機子コイル7を通過する磁束量Φは、電機子3の回転に応じて徐々に増加する。そして、この電機子コイル7を通過する磁束量Φの変化により、電機子コイル7に発生する誘起電圧eも、電機子3の回転位置に応じて緩やかに変動する。このため整流当初では、電機子コイルのインダクタンスに基づくリアクタンス電圧と上記誘起電圧eとにより整流変化の抑制された良好な整流が行われる。
【0032】
また、電機子コイル7が巻装される5つのティース6aの前記電機子3の回転方向逆側の端部に配置されたティース62の基端62aが整流中に通過する範囲内に、前記異極部11,12が配置される。このとき、前記電機子3の回転方向逆側の端部に配置されたティース62の基端62aが異極部11,12を通過することで、電機子コイル7を通過する磁束量Φは電機子3の回転に応じて急激に増加する。その後、電機子コイル7を通過する磁束量Φは、電機子3の回転に応じて徐々に増加する。この電機子コイル7を通過する磁束量Φの変化により、電機子コイル7のインダクタンスに基づくリアクタンス電圧を打ち消す(影響を無くす)誘起電圧eを発生でき、整流変化の抑制された良好な整流が行われる。
【0033】
以上により、整流区間を通じて緩やかな整流変化となる正弦波整流を実現できる。そして、例えばブラシ9とコンミ片8aとの接触幅が短くなる接触変動が起きても、整流悪化の度合いが抑制された安定した整流が可能となる。そして、整流改善により耐久性を向上させるとともに騒音及び電磁ノイズを抑制することができる。
【0034】
(2)本実施形態では、異極部をマグネットと別体で設けることで、その着磁(発生磁束密度)の調整が容易なものとされる。
なお、本発明の実施の形態は上記実施形態に限定されるものではなく、次のように変更してもよい。
【0035】
・前記実施形態において、図5に示すように異極部11,12が形成する磁束密度の大きさ(強さ)B0(図2及び図3参照。)は、整流波形の撓み具合Xに影響を及ぼす。すなわち、図3のシミュレーションではマグネット4,5(主磁極部4a,5a)と同等の磁束密度の大きさ(B0)で逆極性となる異極部11,12の場合を解析したが、異極部11,12が形成する磁束密度の大きさB0を大きくしていくに従い整流波形は大きく撓む。従って、磁束密度(B0)を強くしすぎると、この撓みが強くなりすぎて例えば整流開始点で整流波形の接線方向が水平方向から広がるように外側(図5の上側)に屈曲することになる。このような整流波形の逆方向への屈曲(直線整流とは逆方向への屈曲)も好ましいものではない。従って、異極部11,12の調整においては、このような磁束密度の大きさB0と撓み具合Xとの関係を考慮して、整流波形を監視しつつ同大きさB0を適宜設定することが好ましい。
【0036】
・前記実施形態においては、異極部11,12の周方向の幅(幅角度)を整流区間の角度(θ)の半分(θ/2)に対応させた。これに対して、例えば図6(a)に示すように異極部11,12の周方向の幅(幅角度)を整流区間の角度(θ)の3分の1(1/3・θ)に対応させたり、あるいは図6(b)に示すように整流区間の角度(θ)の3分の2(2/3・θ)に対応させてもよい。異極部11,12の周方向の幅(幅角度)は、零〜θの範囲であれば所要の整流波形を得る適宜の調整が可能である。
【0037】
・前記実施形態においては、異極部11,12をマグネット4,5と別体で設けたが、例えばマグネットの一部を着磁させてこれに一体で設けてもよい。この場合、部品点数の増大を抑制できる。
【0038】
・前記実施形態において、異極部11,12は、マグネット4,5の主磁極部4a,5aと同等の厚さである必要はなく、例えば主磁極部4a,5aの厚さよりも薄くしてもよい。
【0039】
・前記実施形態においては、マグネット4,5の延長部4b,5bにおける磁束密度の変化をその厚みを変化させることで実現したが、例えば周方向の厚みが一定であるマグネットにおいて、その着磁の強弱の制御により同様の磁束密度の変化を実現してもよい。あるいは、周方向の厚みが一定であるマグネットにおいて、磁気双極子の配向の制御により同様の磁束密度の変化を実現してもよい。
【0040】
・前記実施形態においては、延長部4b,5bをマグネット4,5に一体で設けたが、別体で設けてもよい。
・前記実施形態では、本発明を直流機としてのブロアモータ1に具体化したが、ブロアモータ1以外の直流機に具体化しても良い。
【0041】
・前記実施形態では、ティース6aが12個設けられたブロアモータ1に具体化したが、ティースが12個以外の複数個設けられた直流機に具体化して実施しても良い。
【0042】
・前記実施形態では、各電機子コイル7は5つのティースに巻装されていたが、5個以外のn個のティースに巻装しても良い。
【0043】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1乃至5に記載の発明によれば、整流変化を抑制して良好な整流を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】直流機としてのブロアモータを示す断面図。
【図2】マグネット及び異極部の磁束密度と電機子の回転位置との関係を示す模式図。
【図3】電機子の回転位置に応じたシミュレーションを示す説明図。
【図4】整流曲線の説明図。
【図5】整流曲線のたわみ特性を示す説明図。
【図6】別例の整流曲線の説明図。
【図7】従来の電機子の回転位置と磁束量及び誘起電圧との関係を示す説明図。
【図8】従来の整流曲線の説明図。
【符号の説明】
3…電機子、4,5…マグネット、4a,5a…主磁極部、4b,5b…延長部、6…電機子コア、6a,61,62…ティース、7…電機子コイル、8…コンミュテータ、8a…コンミ片、9…ブラシ、11,12…異極部、61a…先端、62a…基端、A…弱磁束位置。
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネットを有する直流機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
直流機としての直流モータなどは、一般的に異なる極性(N極、S極)を有するマグネットと、電機子と、コンミュテータと、2つのブラシとを備えている。そして、直流モータは、ブラシとコンミュテータとで電機子コイルに通電している電流の方向を切り替えることで回転する。
【0003】
しかし、この電流の方向を切り替えるいわゆる整流の際、電機子コイルのインダクタンス(L)のために電流の直線的な変化を遅らせようとする作用が生じ、不足整流となりやすい。この場合、整流終期においてコンミュテータから電機子コイルに流れる電流は強制的に遮断されることになり、火花放電(整流火花)を発生することになる。この現象が、ブラシ摩耗、騒音、電磁ノイズの原因となることは既に知られており、根本的な対策法が望まれている。
【0004】
そこで、本出願人は、特許文献1及び特許文献2などでマグネットに磁束変化部を設定することによる整流改善の方法を提案している。例えば、特許文献1では、整流改善を図るために2つのマグネットの各内周面に凹部を形成し、電機子コイルを通過する磁束量Φを図7に示すように変化させている。そして、この磁束量Φの変化により、誘起電圧(=−dΦ/dt)を発生させている。図8に示すように、この誘起電圧により電機子コイルのインダクタンスに基づくリアクタンス電圧が打ち消され、不足整流の改善が図られている。つまり、リアクタンス電圧に完全に一致する誘起電圧を発生させることで整流波形が図8の破線で示すようになり、理想的な整流の1つである直線整流が実現されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−95218号公報
【特許文献2】
特開2002−262537号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、これら特許文献による整流改善は、直線整流を狙うものであった。従って、図8に範囲C11,C12で示す整流開始点及び終了点において急激な整流変化が発生している。すなわち、整流開始点及び終了点において、整流波形が屈曲している。しかし、直流モータの耐久性等の重要性能に影響するブラシ摩耗、騒音、電磁ノイズは整流の変化率に影響されやすいものであることから、整流はなるべく緩やかに変化することが好ましい。特に、直線整流では、ブラシとコンミュテータとの微小な接触変動による整流時間の短縮でも容易に整流が悪化してしまう。
【0007】
本発明の目的は、整流変化を抑制して良好な整流を行うことができる直流機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、等角度間隔に設けられた複数のティースを有する電機子コアの所定数の該ティースに電機子コイルを巻装して構成される電機子と、該電機子を挟んで対向配置されるマグネットとを備え、整流中に該電機子コイルが接続されたコンミュテータの隣接する2つのコンミ片がブラシにより短絡されて該電機子コイルの電流の向きが反転される直流機において、前記マグネットは、径方向の磁束密度が周方向に均一である主磁極部と、前記主磁極部の前記電機子の回転方向側に配置され該主磁極部との境界位置を弱磁束位置にするとともに該回転方向側に向かって徐々に径方向の磁束密度を増加させる延長部とを有し、前記主磁極部の前記電機子の回転方向逆側には、該主磁極部に対し逆極性の磁束密度を有する異極部が設けられたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の直流機において、前記異極部は、前記電機子コイルが巻装される前記所定数のティースの前記電機子の回転方向逆側の端部に配置されたティースの基端が整流中に通過する範囲内に配置されていることを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の直流機において、前記電機子コイルが巻装される前記所定数のティースの前記電機子の回転方向側の端部に配置されたティースの先端は、整流開始時に前記弱磁束位置に配置されることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の直流機において、前記異極部は、前記マグネットの一部を着磁させて該マグネットに一体で設けたことを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の直流機において、前記異極部は、前記マグネットと別体で設けたことを要旨とする。
(作用)
請求項1又は2に記載の発明によれば、例えば前記電機子コイルが巻装される前記所定数のティースの前記電機子の回転方向逆側の端部に配置されたティースの基端が整流中に通過する範囲内に、前記異極部が配置されるとする。このとき、前記電機子の回転方向逆側の端部に配置されたティースの基端が異極部を通過することで、電機子コイルを通過する磁束量は電機子の回転に応じて急激に増加する。この電機子コイルを通過する磁束量の変化により、電機子コイルのインダクタンスに基づくリアクタンス電圧を打ち消す誘起電圧が発生され、整流変化の抑制された良好な整流が行われる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、前記電機子コイルが巻装される前記所定数のティースの前記電機子の回転方向側の端部に配置されたティースの先端が、整流開始時に前記弱磁束位置に配置されることで、整流当初において電機子コイルを通過する磁束量は、電機子の回転に応じて徐々に増加する。そして、この電機子コイルを通過する磁束量の変化により、電機子コイルに発生する誘起電圧も、電機子の回転位置に応じて緩やかに変動する。このため、電機子コイルのインダクタンスに基づくリアクタンス電圧と上記誘起電圧とにより整流変化の抑制された良好な整流が行われる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、異極部をマグネットに一体で設けることで部品点数の増大が抑制される。
請求項5に記載の発明によれば、異極部をマグネットと別体で設けることで、その着磁(発生磁束密度)の調整が容易なものとされる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態の直流機としてのブロアモータ1の概略構造を示す部分断面図である。
【0016】
ブロアモータ1は、2極の直流機であって、モータハウジングヨーク2内には、電機子3が回転可能に軸支され、該電機子3を挟んでN極及びS極をそれぞれ形成する2つのマグネット4,5が対向配置されている。電機子3は、電機子コア6とその電機子コア6に巻装される電機子コイル7とを有し、直流電流の供給により回転する。
【0017】
電機子コア6には、複数のティース6aが形成されており、複数の電機子コイル7は、それぞれ隣接するn個のティース6aの周囲に電機子コイル7が巻き付けられている。尚、本実施形態では、ティース6aの個数は12個であり、そのティース6aが、電機子3の周方向に30°毎に形成されている。つまり、隣り合うティース6aは、その中心線のなす角度(モータ電機子スロット角、以下、ティース6a間の角度という。)θが30°となるように形成されている。又、図示を省略しているが、複数の電機子コイル7がそれぞれ5つ(n=5)のティース6a毎に同様に巻き付けられている。つまり、巻線の巻装方式は分布巻である。
【0018】
電機子3の一端には、複数のコンミ片8aを有するコンミュテータ8が配設されている。複数(図において2つ)のブラシ9がコンミュテータ8の各コンミ片8aに摺接するように付勢された状態で配設されている。そして、図示しない直流電源から供給される直流電流が、ブラシ9とコンミュテータ8のコンミ片8aとを経て電機子コイル7に流入すると、電機子3が回転し始める。そして、いずれかのブラシ9に対して隣接する一対のコンミ片8aが接触して、それらのコンミ片8a間がブラシ9を介して短絡することにより、電機子コイル7に流れる電流の向きが変更されて、電機子3が図1における時計回り方向(図中、矢印X方向)に回転し続ける。
【0019】
本実施形態では、12個のコンミ片8aが周方向に30°毎に設けられており、電機子3がブラシ9に対して略30°回転するとき、電機子コイル7の電流の向きが変更される。この時、電機子コイル7が整流中であるといい、この回転する区間が各電機子コイル7に対する整流区間である。つまり、電機子3の30°の回転によって電機子コイル7の整流が行われる。尚、本実施形態では、コンミ片8a間角度は前記ティース6a間の角度θと同じに設定され、ブラシ9とコンミ片8aとの当接幅に対応する当接幅角度は前記ティース6a間の角度θと同じに設定されている。そして、各電機子コイル7の整流区間に対応する電機子3の回転角度も前記ティース6a間の角度θに一致している。
【0020】
前記マグネット4,5は、主磁極部4a,5aと、延長部4b,5bとを有している。
主磁極部4a,5aは、整流中の電機子コイル7が巻装されるn個(5つ)のティース6aのうち回転方向側の端部に配置されるティース61及び回転方向逆側の端部に配置されるティース62の中心線間の角度(=120°の角度)に対応した長さとなるように、略均一の厚みにて形成されている。従って、着磁されたマグネット4,5は、主磁極部4a,5aにおいて周方向に均一となる径方向の磁束密度を有する。そして、上記主磁極部4a,5aの中心と整流中の電機子コイル7が巻装される電機子コア6(5つのティース6a)の中心が一致する回転位置が整流中心となる(図1の状態。)。この回転位置において、ブラシ9によって短絡される電機子コイル7の電流の向きが反転する。
【0021】
又、延長部4b,5bは、マグネット4,5において主磁極部4a,5aの回転方向側の端部に延出形成されている。延長部4b,5bは、整流区間の30°の角度に対応した長さとなるように形成されており、当該区間で回転方向に徐々に厚くなるように形成されている。従って、着磁されたマグネット4,5は、主磁極部4a,5a及び延長部4b,5bの境界位置近傍において最小となり、延長部4b,5bにおいて回転方向に向かって徐々に増加する径方向の磁束密度を有している。
【0022】
ここで、マグネット4,5において主磁極部4a,5aの回転方向逆側の端部には、異極部11,12が延出形成されている。この異極部11,12は、主磁極部4a,5aと同等の径方向の厚さにて整流区間の30°の半分(=15°)の角度に対応した長さとなるように形成されており、当該区間でマグネット4,5(主磁極部4a,5a及び延長部4b,5b)とは異なる極性を形成している。具体的には、N極を形成するマグネット4に対して設けられた異極部11はS極を形成し、S極を形成するマグネット5に対して設けられた異極部12はN極を形成している。そして、着磁された異極部11,12は、主磁極部4a,5aと同等の大きさ(B0)で周方向に均一となる径方向の磁束密度を有している。
【0023】
次に、整流時の電機子コイル7によって巻装される電機子コア6(5つのティース6a)と異極部11,12を含むマグネット4,5による磁束密度との位置関係を図2を用いて説明する。尚、同図では、当該磁束密度を形成する主磁極部4a,5a、延長部4b,5b及び異極部11,12を対応させてその符号を併記している。
【0024】
電機子3が回転して電機子コア6が移動する。そして、図2(a)のように電機子コア先端(ティース61において電機子3の回転方向側である先端61a)がマグネット4,5における主磁極部4a,5a及び延長部4b,5bの境界位置に相当する弱磁束位置Aに略配置されるとき、電機子コイル7の整流が開始される。その状態から図2(b)のように15°回転した位置が整流中心となり、この位置で電機子コイル7を流れる電流の方向が反転する。さらに、図2(c)のように15°回転した回転位置で整流が終了する。つまり、電機子コア6が図2(a)→図2(b)→図2(c)の順に30°回転するときに電機子コイル7の整流が実施される。尚、整流中心において電機子コア6の基端(ティース62において電機子3の回転方向逆側である基端62a)は異極部11,12の基端に略配置される。又、整流が終了するとき、電機子コア6の基端(ティース62の基端62a)は主磁極部4a,5a及び異極部11,12の境界位置に相当する磁束反転位置Bに略配置される。
【0025】
この整流時において、電機子コア6の先端(ティース61の先端61a)に対向する延長部4b,5bに対応して、整流区間の30°の角度に対応する部分で徐々に磁束密度が大きくなるように形成されている。一方、電機子コア6の基端(ティース62の基端62a)に対向する異極部11,12に対応して、整流区間の後半の15°の角度に対応する部分で磁束密度が反転するように形成されている。
【0026】
図3は、このように構成されたブロアモータ1の回転位置(電機子3の回転位置)に応じた動作をシミュレーションにて解析したものである。すなわち、図3(a)は、上記回転位置に応じたマグネット4,5等による磁束密度の変化を近似したものである。また、図3(b)は、当該回転位置に応じたある電機子コイル7を通過する磁束量Φの変化及び誘起電圧の変化をそれぞれ表したものである。詳細すれば、図3(b)の基準となる電機子コイル7の位置は、回転方向側のコイル先端位置(言い換えると、複数のティースをまたいでコイルが巻装された回転側のティースと、そのティースのさらに回転側のティースとの間のスロット中心線)であり、その位置を0°〜360°回転させて、電機子コイル7を通過する前記変化を表したのである。よって図1の状態は、最上点を0°とすれば、描かれた電機子コイル7の位置が165°回転したときの状態である。この磁束量Φは、主磁束(マグネット4,5及び異極部11,12からの磁束)及び電機子3の回転時における磁束(電機子コイル7を流れる電流による磁束)を合計した磁束量に相当する。また、誘起電圧は、便宜的に主磁束により発生する誘起電圧、電機子3の回転時における磁束により発生する誘起電圧、及びこれらの合成誘起電圧eの各変化をそれぞれ示している。なお、図3(b)において当該電機子コイル7に対応する整流区間の角度を破線にて示している。そして、図4では、当該電機子コイル7の整流区間におけるリアクタンス電圧(L(di/dt)、実際にはこれに対応する電流波形。)、合成誘起電圧e(実際にはこれに対応する電流波形。)及びこれらに基づく整流波形の各変化をそれぞれ示している。同図4では、参考として直線整流における整流波形を破線にて図示している。
【0027】
既述のように、電機子コア先端(ティース61の先端61a)がマグネット4,5の弱磁束位置A(図2(a)参照。)に略配置されるとき電機子コイル7の整流が開始される。従って、図3(b)に示すように、整流区間の前半では、整流中の電機子コイル7を通過する磁束量Φは、電機子3の回転に応じて徐々に増加する。又、電機子コア基端(ティース62の基端62a)が異極部11,12(図2(b)参照。)に略到達するときが整流中心になる。従って、整流区間の後半では、整流中の電機子コイル7を通過する磁束量Φは、整流中心の近傍で急激に変化(急増)した後に電機子3の回転に応じて徐々に増加する。
【0028】
このように電機子コイル7を通過する磁束量Φが変化するため、整流区間の前半において、電機子コイル7に発生する合成誘起電圧e(=−dΦ/dt)は、電機子3の回転位置に応じて略直線状に緩やかに変動(減少)する(図4参照。)。又、整流区間の後半において、電機子コイル7に発生する合成誘起電圧e(=−dΦ/dt)は、整流中心の近傍で急激に変動(減少)した後、電機子3の回転位置に応じ緩やかに変動(減少)する(図4参照。)。
【0029】
以上により、図4に示したように、整流区間の前半では合成誘起電圧eが緩やかに変動することからリアクタンス電圧の特性が顕著となり、リアクタンス電圧との合計に基づく整流波形は上に凸となる略正弦波状に推移する。従って、整流区間の前半での整流波形は、不足整流気味に緩やかな変化で形成される。また、整流区間の後半では、合成誘起電圧eが急激に変動した後に再び緩やかに変動することから合成誘起電圧eの特性が顕著となり、上記整流波形は下に凸となる略正弦波状に推移する。従って、整流区間の後半での整流波形は、過整流気味に緩やかな変化で形成される。そして、整流区間を通じ整流変化が緩やかになるように合成誘起電圧eによってリアクタンス電圧は打ち消される。
【0030】
整流区間における以上の合成誘起電圧e及びリアクタンス電圧の関係により、整流区間を通じて正弦波状の整流波形となる正弦波整流が実現され、図4に範囲C1,C2で示す整流開始点及び終了点での整流変化が緩やかにされる。すなわち、整流開始点及び終了点での整流波形の接線方向が略水平になることから、ブラシ9とコンミュテータ8との接触変動による整流時間の短縮が生じたとしても整流の悪化が抑制される。
【0031】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、電機子コイル7が巻装される5つのティース6aの前記電機子3の回転方向側の端部に配置されたティース61の先端61aが、整流開始時に前記弱磁束位置Aに配置されることで、整流当初において電機子コイル7を通過する磁束量Φは、電機子3の回転に応じて徐々に増加する。そして、この電機子コイル7を通過する磁束量Φの変化により、電機子コイル7に発生する誘起電圧eも、電機子3の回転位置に応じて緩やかに変動する。このため整流当初では、電機子コイルのインダクタンスに基づくリアクタンス電圧と上記誘起電圧eとにより整流変化の抑制された良好な整流が行われる。
【0032】
また、電機子コイル7が巻装される5つのティース6aの前記電機子3の回転方向逆側の端部に配置されたティース62の基端62aが整流中に通過する範囲内に、前記異極部11,12が配置される。このとき、前記電機子3の回転方向逆側の端部に配置されたティース62の基端62aが異極部11,12を通過することで、電機子コイル7を通過する磁束量Φは電機子3の回転に応じて急激に増加する。その後、電機子コイル7を通過する磁束量Φは、電機子3の回転に応じて徐々に増加する。この電機子コイル7を通過する磁束量Φの変化により、電機子コイル7のインダクタンスに基づくリアクタンス電圧を打ち消す(影響を無くす)誘起電圧eを発生でき、整流変化の抑制された良好な整流が行われる。
【0033】
以上により、整流区間を通じて緩やかな整流変化となる正弦波整流を実現できる。そして、例えばブラシ9とコンミ片8aとの接触幅が短くなる接触変動が起きても、整流悪化の度合いが抑制された安定した整流が可能となる。そして、整流改善により耐久性を向上させるとともに騒音及び電磁ノイズを抑制することができる。
【0034】
(2)本実施形態では、異極部をマグネットと別体で設けることで、その着磁(発生磁束密度)の調整が容易なものとされる。
なお、本発明の実施の形態は上記実施形態に限定されるものではなく、次のように変更してもよい。
【0035】
・前記実施形態において、図5に示すように異極部11,12が形成する磁束密度の大きさ(強さ)B0(図2及び図3参照。)は、整流波形の撓み具合Xに影響を及ぼす。すなわち、図3のシミュレーションではマグネット4,5(主磁極部4a,5a)と同等の磁束密度の大きさ(B0)で逆極性となる異極部11,12の場合を解析したが、異極部11,12が形成する磁束密度の大きさB0を大きくしていくに従い整流波形は大きく撓む。従って、磁束密度(B0)を強くしすぎると、この撓みが強くなりすぎて例えば整流開始点で整流波形の接線方向が水平方向から広がるように外側(図5の上側)に屈曲することになる。このような整流波形の逆方向への屈曲(直線整流とは逆方向への屈曲)も好ましいものではない。従って、異極部11,12の調整においては、このような磁束密度の大きさB0と撓み具合Xとの関係を考慮して、整流波形を監視しつつ同大きさB0を適宜設定することが好ましい。
【0036】
・前記実施形態においては、異極部11,12の周方向の幅(幅角度)を整流区間の角度(θ)の半分(θ/2)に対応させた。これに対して、例えば図6(a)に示すように異極部11,12の周方向の幅(幅角度)を整流区間の角度(θ)の3分の1(1/3・θ)に対応させたり、あるいは図6(b)に示すように整流区間の角度(θ)の3分の2(2/3・θ)に対応させてもよい。異極部11,12の周方向の幅(幅角度)は、零〜θの範囲であれば所要の整流波形を得る適宜の調整が可能である。
【0037】
・前記実施形態においては、異極部11,12をマグネット4,5と別体で設けたが、例えばマグネットの一部を着磁させてこれに一体で設けてもよい。この場合、部品点数の増大を抑制できる。
【0038】
・前記実施形態において、異極部11,12は、マグネット4,5の主磁極部4a,5aと同等の厚さである必要はなく、例えば主磁極部4a,5aの厚さよりも薄くしてもよい。
【0039】
・前記実施形態においては、マグネット4,5の延長部4b,5bにおける磁束密度の変化をその厚みを変化させることで実現したが、例えば周方向の厚みが一定であるマグネットにおいて、その着磁の強弱の制御により同様の磁束密度の変化を実現してもよい。あるいは、周方向の厚みが一定であるマグネットにおいて、磁気双極子の配向の制御により同様の磁束密度の変化を実現してもよい。
【0040】
・前記実施形態においては、延長部4b,5bをマグネット4,5に一体で設けたが、別体で設けてもよい。
・前記実施形態では、本発明を直流機としてのブロアモータ1に具体化したが、ブロアモータ1以外の直流機に具体化しても良い。
【0041】
・前記実施形態では、ティース6aが12個設けられたブロアモータ1に具体化したが、ティースが12個以外の複数個設けられた直流機に具体化して実施しても良い。
【0042】
・前記実施形態では、各電機子コイル7は5つのティースに巻装されていたが、5個以外のn個のティースに巻装しても良い。
【0043】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1乃至5に記載の発明によれば、整流変化を抑制して良好な整流を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】直流機としてのブロアモータを示す断面図。
【図2】マグネット及び異極部の磁束密度と電機子の回転位置との関係を示す模式図。
【図3】電機子の回転位置に応じたシミュレーションを示す説明図。
【図4】整流曲線の説明図。
【図5】整流曲線のたわみ特性を示す説明図。
【図6】別例の整流曲線の説明図。
【図7】従来の電機子の回転位置と磁束量及び誘起電圧との関係を示す説明図。
【図8】従来の整流曲線の説明図。
【符号の説明】
3…電機子、4,5…マグネット、4a,5a…主磁極部、4b,5b…延長部、6…電機子コア、6a,61,62…ティース、7…電機子コイル、8…コンミュテータ、8a…コンミ片、9…ブラシ、11,12…異極部、61a…先端、62a…基端、A…弱磁束位置。
Claims (5)
- 等角度間隔に設けられた複数のティースを有する電機子コアの所定数の該ティースに電機子コイルを巻装して構成される電機子と、該電機子を挟んで対向配置されるマグネットとを備え、整流中に該電機子コイルが接続されたコンミュテータの隣接する2つのコンミ片がブラシにより短絡されて該電機子コイルの電流の向きが反転される直流機において、
前記マグネットは、
径方向の磁束密度が周方向に均一である主磁極部と、
前記主磁極部の前記電機子の回転方向側に配置され該主磁極部との境界位置を弱磁束位置にするとともに該回転方向側に向かって徐々に径方向の磁束密度を増加させる延長部とを有し、
前記主磁極部の前記電機子の回転方向逆側には、該主磁極部に対し逆極性の磁束密度を有する異極部が設けられたことを特徴とする直流機。 - 請求項1に記載の直流機において、
前記異極部は、前記電機子コイルが巻装される前記所定数のティースの前記電機子の回転方向逆側の端部に配置されたティースの基端が整流中に通過する範囲内に配置されていることを特徴とする直流機。 - 請求項1又は2に記載の直流機において、
前記電機子コイルが巻装される前記所定数のティースの前記電機子の回転方向側の端部に配置されたティースの先端は、整流開始時に前記弱磁束位置に配置されることを特徴とする直流機。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の直流機において、
前記異極部は、前記マグネットの一部を着磁させて該マグネットに一体で設けたことを特徴とする直流機。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の直流機において、
前記異極部は、前記マグネットと別体で設けたことを特徴とする直流機。
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