JP2004192681A - 磁気ディスク装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】プリアンプからヘッド素子に至る差動線路において、特性インピーダンスを動的に変化させて所望の応答が得られる差動線路を有する磁気ディスク装置、また数多くのデータを効率良く取り、分析し、製品設計スピードを加速することができる磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】磁気ディスク装置であって、プリアンプからヘッド素子に至る差動線路21において、その差動線路21の周囲に微細な誘導電流を流す微細誘導電流線10を多数配置し、その微細誘導電流線10の接続を任意に組み合わせることにより、その伝送線路の相互インダクタンスを変化させ、その結果として特性インピーダンスを変化させる。これにより、記録電流波形、再生波形の各種パラメータを比較検討し、所望の応答を得ることができる。
【選択図】 図2
【解決手段】磁気ディスク装置であって、プリアンプからヘッド素子に至る差動線路21において、その差動線路21の周囲に微細な誘導電流を流す微細誘導電流線10を多数配置し、その微細誘導電流線10の接続を任意に組み合わせることにより、その伝送線路の相互インダクタンスを変化させ、その結果として特性インピーダンスを変化させる。これにより、記録電流波形、再生波形の各種パラメータを比較検討し、所望の応答を得ることができる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク装置におけるプリアンプからヘッド素子に至るまでの伝送線路に関し、特にその特性インピーダンスの調整方法、記録電流波形、再生電流波形の各種パラメータを調整する方法に適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者が検討したところによれば、磁気ディスク装置などにおける伝送線路に関しては、以下のような技術が考えられる。
【0003】
例えば、高周波回路で信号を伝送する際には、その高周波のために波長が線路に対して無視できない長さになり、インピーダンスミスマッチによる反射、それに伴うリンギング等の現象が見えてくるようになり、さらにそれらが引き起こす二次的な線路近傍へのクロストークや不要輻射、ロジック系IC等においてはタイミングのディレイや、最悪の場合、システムに障害を及ぼすようなロジック・ミスにつながりかねない。
【0004】
磁気ディスク装置においてもその傾向は例外でなく、近年では、例えばプリアンプからヘッドに送られる周波数は年々速くなっている。上述のような不安は、その周波数の上昇に対し加速度的に増加する。そのため、プリアンプなどの能動素子や、抵抗、コイル、コンデンサなどの受動素子を接続する場合、その負荷とのインピーダンスを適切にマッチングさせる必要がある。
【0005】
この特性インピーダンスを調整する方法としては、(1)マイクロストリップライン、(2)ストリップライン、(3)コプレーナライン等があり、作りやすさや、グランドとの容量的な結合によって特性インピーダンスを調整する手法が確立されている。以下において、マイクロストリップラインを始めとする代表的なインピーダンスのコントロールされた線路について説明する。
【0006】
(1)マイクロストリップラインについては、この伝送線路は特性インピーダンスをコントロールするために片面をグランドにし、決まった厚さの誘電体を挟み、決まった幅のトレースを引くことによって特性インピーダンスを調整している。この特性インピーダンスを決定するパラメータは、誘電体の誘電率、信号線の厚み、誘電体の厚み、信号線の幅である。
【0007】
(2)ストリップラインは、特性インピーダンスをコントロールするために両面をグランドにし、決まった厚さの誘電体を挟み、決まった幅のトレースを内部に埋め込むことにより、特性インピーダンスを調整する。この特性インピーダンスを決定するパラメータは、誘電体の誘電率、信号線の厚み、誘電体の厚み、信号線の幅である。
【0008】
(3)コプレーナラインは、特性インピーダンスをコントロールするために信号の両脇をグランドにし、決まった厚さの誘電体をその下に配置し、グランドと信号線との間隙を調整することにより特性インピーダンスを調整する。この特性インピーダンスを決定するパラメータは、誘電体の誘電率、信号線の厚み、誘電体の厚み、信号線の幅、信号線とグランドとの間隙距離である。
【0009】
前述のどの線路も、その設計方法として、その伝送線路をグランド等との容量的な結合、つまり物理構造から特性インピーダンスを調整できるようにしている。このような容量的な結合を考慮した技術には、マイクロストリップラインにおいて、ストリップ線路と基板との間に誘電体層を段階的に積層することにより、誘電体層の厚さを入出力側で異ならせて特性インピーダンスを変化させるものがある(例えば、特許文献1)。また、線路とグランドとの間の寄生容量を低減させるために、磁気ヘッド用線路の下方の金属フレクシャ及びロードビームを一部除去するようにした技術がある(例えば、特許文献2)。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−291518号公報(第1頁の要約など)
【0011】
【特許文献2】
特開2001−256627号公報(第1頁の要約など)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記のような磁気ディスク装置の伝送線路の技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0013】
例えば、前述したマイクロストリップライン等のどの線路も、その伝送線路をグランド等との容量的な結合から特性インピーダンスを調整できるようにしているため、実際の回路の設計を行っている現場では電磁界シミュレータ、回路シミュレータ等を使って試作を行う前に特性インピーダンス等の各種設計値を所望の値になる様に検討を行う。
【0014】
しかし、シミュレータはやはり模擬的な装置であるので、特性インピーダンスの実測とシミュレータ上の数値のズレや、ICなどの能動素子の実際とシミュレータ上での理論値などにズレ等が生じる。そのため、シミュレータ上では適した設計であっても、実装状態でその特性インピーダンスで本当に所望の応答になるかどうかを判断するためには、あらかじめ信号線幅や信号線間隔を調整して特性インピーダンスを調整した伝送線路を多数用意し、数多くの測定を行わなければならない。
【0015】
また、実際に線路を作成する際、個々の線路の特性インピーダンスがばらついてしまっても調整することができない。
【0016】
このように、前述した伝送線路の設計技術では、一度、“もの”として物理的に製作してしまうと、特性インピーダンスを調整できないという課題が生じる。また、前述したマイクロストリップライン等の伝送線路、特許文献1及び2の技術は、いずれも容量的な結合から特性インピーダンスを調整するものであり、インダクタンスを考慮したものではない。
【0017】
そこで、本発明の目的は、インダクタンスを考慮して、物理的に伝送線路を製造した後からでも、特性インピーダンスを動的に変化させ、プリアンプ等の能動素子や抵抗、コイル、コンデンサ等の受動素子等の伝送線路を用いた接続において所望の性能が出るような伝送線路を有する磁気ディスク装置を提供することにある。
【0018】
また、本発明の他の目的は、一つの伝送線路を評価する回路等に実装したままで特性インピーダンスを変化させることにより、数多くのデータを効率良く取り、分析し、製品設計スピードを加速することができる磁気ディスク装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、磁気ディスク装置のプリアンプからヘッド素子へ至る差動で動作する伝送線路の周囲に、その伝送線路に比べて十分に微細であり、その断面積が、例えば250μm2以下で規定される微細誘導電流線を多数配置し、その微細誘導電流線をその伝送線路の差動性を崩さないように適切に接続し、相互インダクタンスを所望の値にコントロールすることにより、特性インピーダンスを調整する。その結果として、伝送線路を物理的に製造した後からでも、特性インピーダンスを所望の値になる様に細かく調整し、実機実装状態におけるプリアンプからヘッド素子へ至るまでの差動線路の伝送特性を所望の応答が得られるようにコントロール可能にしたものである。
【0020】
すなわち、本発明は、プリアンプからヘッド素子に至るまでの差動線路を有する磁気ディスク装置に適用され、以下のような特徴を有するものである。
【0021】
(1)差動線路より細い幅で形成され、差動線路の下層に配置され、誘導電流を流す複数の微細誘導電流線を有し、複数の微細誘導電流線のうち、差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の微細誘電電流線の両端を接続するものである。
【0022】
(2)差動線路より細い幅で形成され、差動線路と同一層に配置され、誘導電流を流す複数の微細誘導電流線を有し、複数の微細誘導電流線のうち、差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の微細誘電電流線の両端を接続するものである。
【0023】
(3)差動線路より細い幅で形成され、差動線路の上層または下層の一方に配置され、誘導電流を流す複数の微細誘導電流線と、差動線路の上層または下層の他方に配置され、基準電位となる基準電位層とを有し、基準電位層を差動線路の特性インピーダンスを所定の値に設定するように分割し、複数の微細誘導電流線のうち、差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の微細誘電電流線の両端を接続するものである。
【0024】
(4)差動線路より細い幅で形成され、差動線路の上層および下層に配置され、誘導電流を流す複数の第1微細誘導電流線と、差動線路より細い幅で形成され、差動線路と同一層の左側および右側に配置され、誘導電流を流す複数の第2微細誘導電流線とを有し、複数の第1微細誘導電流線と複数の第2微細誘導電流線のうち、差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の微細誘電電流線の両端を組み合わせて接続するものである。
【0025】
(5)差動線路より細い幅で形成され、差動線路の第1線路と第2線路との間の内側または外側に配置され、誘導電流を流す複数の微細誘導電流線を有し、複数の微細誘導電流線のうち、差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の微細誘電電流線の両端を接続し、シールド性能を持たせるように両端を接続した微細誘電電流線以外の微細誘電電流線を基準電位に接地するものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
まず、図1により、本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置の構成の一例を説明する。図1は磁気ディスク装置の構成図を示す。
【0028】
本実施の形態の磁気ディスク装置20は、例えばハードディスク22に対してデータをリード/ライトする磁気ヘッド23と、リード/ライトデータを増幅するプリアンプ24と、リード/ライトデータを選択するリードライトチャネル25と、ハードディスク22に対してリード/ライトするデータを制御するハードディスクコントローラ26と、ボイスコイルモータ27を駆動するボイスコイルドライバ28と、スピンドルモータ29を駆動するスピンドルドライバ30と、ボイスコイルドライバ28およびスピンドルドライバ30を制御する制御回路31などから構成されている。
【0029】
この磁気ディスク装置20では、プリアンプ24から磁気ヘッド23のヘッド素子に至るまでの伝送線路が、それぞれ、リード側に2本の線路が一対となる差動線路21、ライト側に2本の線路が一対となる差動線路21で形成されている。本発明は、リード側、ライト側の差動線路21に適用され、所望の特性インピーダンスを得ることを特徴とするものである。以下において、伝送線路の構造例を説明する。
【0030】
次に、図2〜図7により、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの伝送線路の構造例について説明する。図2〜図7はそれぞれ伝送線路の断面図を示す。なお、図2〜図7においては、ライト側の差動線路を例に説明するが、リード側の差動線路についても同様である。
【0031】
図2の構造例は、差動線路21より細い誘導電流を流す微細誘導電流線10を差動線路21の下に多数配置し、その微細誘導電流線10の両端での接続方法を任意に接続するようにした伝送線路である。なお、これらの差動線路21、微細誘導電流線10は誘電体12により覆われている。この伝送線路は、差動線路21の特性インピーダンスを動的に変化させることができる。
【0032】
図3の構造例は、微細誘導電流線10を差動線路21と同一層に多数配置し、その微細誘導電流線10の両端での接続方法を任意に接続するようにした伝送線路である。この伝送線路では、製造のしやすさを考慮しつつ、差動線路21の特性インピーダンスを動的に変化させることができる。
【0033】
図4の構造例は、微細誘導電流線10を差動線路21の上下面のどちらか片側に多数配置し、その逆の面には、まずグランド(基準電位)となるグランド層13を配置し、その面にエッチングを用いて分離溝14を形成することにより大まかな特性インピーダンスを設定し、その後、微細誘導電流線10を任意に接続するようにした伝送線路である。この伝送線路では、差動線路21の特性インピーダンスを動的に、かつ細かく変化させることができる。
【0034】
図5の構造例は、差動線路21を微細誘導電流線10で取り囲むように多数配置し、差動線路21の上下に配置された相互インダクタンスの大きい微細誘導電流線10とその差動線路21の左右、斜めに配置された相互インダクタンスの小さな微細誘導電流線10を任意に組み合わせて接続するようにした伝送線路である。この伝送線路では、差動線路21の特性インピーダンスを動的に、かつ細かく変化させることができる。
【0035】
図6の構造例は、差動線路21をその差動線路21の導体厚み方向に上下になるように配置し、さらにその差動線路21の上下に微細誘導電流線10を多数配置し、任意の微細誘導電流線10を接続し、また接続しない微細誘導電流線10を回路の基準電位に接地するようにした伝送線路である。この伝送線路では、差動線路21の特性インピーダンスを動的に変化させることができ、かつシールド性能を持たせることができる。
【0036】
図7の構造例は、差動線路21をその差動線路21で誘電体12を挟み込むように、かつ向かい合うように配置し、その挟んだ誘電体12の間に微細誘導電流線10を2層にわたって多数配置するようにした伝送線路である。この伝送線路では、差動線路21からの外部磁束の漏れが非常に少なく、ノイズ誘導能力が極めて低く、さらに動的に特性インピーダンスを調整することができる。
【0037】
次に、図8〜図10により、前述した図2の伝送線路を例に、本発明の物理的な構造を詳細に説明する。それぞれ、図8(a),(b)は丸線導体の差動線路によるインダクタンスの説明図、図9は微細誘導電流線を両端で接続しないときのインダクタンスの説明図、図10は接続したときのインダクタンスの説明図を示す。
【0038】
伝送線路において、微細誘導電流線10は、上述したように特性インピーダンスを十分に細かく設定するためと、接続された微細誘導電流線10の表面を最大限に活用し、表皮効果による損失を防ぐために十分に微細である必要がある。例えば、微細誘導電流線10の断面積を250μm2以下とする。
【0039】
ここでは、本発明の原理についての説明を明瞭化、単純化するために、図8に示すように、まず2本の丸線導体の差動線路について、特性インピーダンスや相互インダクタンスについて考えてみる。2本の差動で動作する丸線導体の実効インダクタンスLeffは式(1)で与えられる。ここで、L1,L2は自己インダクタンスで、Mは相互インダクタンスである。
【0040】
【数1】
【0041】
丸線導体の自己インダクタンスLselfは、lを導体の長さ、aを丸線導体の断面の半径とし、l>>aが成り立つとすれば、式(2)で与えられる。
【0042】
【数2】
【0043】
また、相互インダクタンスMは、式(3)で与えられる。ここで、lは導体の長さで、またdは差動線間の距離である。
【0044】
【数3】
【0045】
加えて、特性インピーダンスZについては、その導体の損失が無視できるとする時、式(4)が成り立つ。ここで、Leff,Ceffは単位長さ当たりの実効的な値である。
【0046】
【数4】
【0047】
以上のことから、導体の自己インダクタンスは、その物理形状から決まってしまうが、その導体間の距離を変化させることにより相互インダクタンスを変化させ、その結果、実効的なインダクタンスを変化させて、最終的に特性インピーダンスを変化させることができることがわかる。本発明のモデルでは、微細誘導電流線10が多数あるので、上述した丸線導体ほど単純ではない。しかし、相互インダクタンスの調整により特性インピーダンスが変化する原理は同様である。
【0048】
これらのことを踏まえて、本発明の構造について考えてみると、微細誘導電流線10をその伝送線路の両端で全く接続しないときは、図9に示すように差動線路21自体の相互インダクタンスのみで結合する。すなわち、差動線路21にそれぞれ逆方向の電流(I,−I)を流した場合の相互インダクタンスMによる結合は弱くなる。
【0049】
次に、差動線路21の下の微細誘導電流線10を両端で接続した図10の場合を考えてみると、このときは差動線路21自体の相互インダクタンスMに加え、その差動線路21が微細誘導電流線10に誘導する電流(I)により、さらに強く結合する。そのため、微細誘導電流線10を全く接続しない場合に比べ、相互インダクタンスMが大きくなり、そのために実効的なインダクタンスが小さくなり、その結果、特性インピーダンスが低くなる。
【0050】
また、微細誘導電流線10の接続の組み合わせによりその微細誘導電流線10と差動線路21との距離は変化するので、その組み合わせによって相互インダクタンスMが変化する。このことから、微細誘導電流線10の組み合わせにより特性インピーダンスを調整することができることがわかる。ここで、微細誘導電流線10の選び方であるが、信号線が差動線路21なので、その対称性を崩さないように対称に選ぶ必要がある。
【0051】
以上のように、本実施の形態の磁気ディスク装置20においては、プリアンプ24から磁気ヘッド23のヘッド素子に至るまでの差動で動作する差動線路21の特性インピーダンスを、その差動線路21の周囲に微細誘導電流線10を多数配置することによって所望の特性インピーダンスを得ることを特徴とした伝送線路である。
【0052】
そのため、本実施の形態による効果を期待するには、その微細誘導電流線10の両端での接続方法が重要となる。その具体的な接続方法を、以下において説明する。
【0053】
次に、図11〜図13により、微細誘導電流線の接続方法の一例を説明する。それぞれ、図11は圧着による接続方法の説明図、図12はねじ止めによる接続方法の説明図、図13は半田付けによる接続方法の説明図を示す。
【0054】
図11に示した実装方法は、微細誘導電流線10を両端で圧着する手法である。微細誘導電流線10の両端(一端のみを図示しているが他端も同様)にランドパターン92を形成し、そのランドパターン92をプラスチック等のある程度の強度があり、また加工が容易な絶縁物体94で挟み込むことによって、絶縁物体94に製作した接続パターン93で接続を確保する。例えば、図11において左端のランドパターン92同士を接続パターン93で接続したり、またはその右側、さらにその右側、右端のランドパターン92同士を接続することができる。
【0055】
なお、図11には片側にしか微細誘導電流線10を接続する接続パターン93が無いが、前述した図5〜図7に示されるように微細誘導電流線10を上下に配置した場合には、接続パターン93をその絶縁物体94の上下に製作することは言うまでもない。
【0056】
また、ランドパターン92への接続は一通りではなく、微細誘導電流線10を接続する接続パターン93を2つに限らず、一度に3つ以上などの複数の微細誘導電流線10を接続できるような形状にすることにより、細かな特性インピーダンスの調整を実現できる。
【0057】
図12に示した実装方法は、微細誘導電流線10をねじ止め式で微細誘導電流線10のランドパターン102にコンタクトして接続する手法である。微細誘導電流線10の両サイドにねじ穴103をあけ、コンタクトを支持する絶縁物体105を固定できるようにし、コンタクト部分はランドパターン102を接続するために必要十分な硬さを持った金属部分106を形成し、そのランドパターン102と金属部分106とのコンタクトの力の強さをねじ104と微細誘導電流線10を形成しているパターンとの間にバネ107を挿入することにより調整する。なお、このバネ性はコンタクトする金属部分106に持たせても良い。
【0058】
例えば、図12において上側から1番目と6番目のランドパターン102同士を金属部分106で接続したり、または2番目と5番目、3番目と4番目のランドパターン102同士を接続することができる。あるいは、1番目のランドパターン102については、2番目〜5番目の任意のランドパターン102と接続することも可能であり、また2番目〜6番目のランドパターン102についても同様である。さらには、3つ以上のランドパターン102同士を接続することもできる。
【0059】
図13に示した実装方法は、微細誘導電流線10のその両端にランドパターン112を用意し、そこに半田付けを行うことによって接続する。半田付けには、半田ごて113を用いてワイヤ114により接続する。もしくは、ワイヤーボンディングにより接続することも可能である。この接続方法においても、前記図11などと同様に種々の変形が可能である。
【0060】
なお、図13にはランドパターン112が図11と同じように配置されているが、図12のように配置しても良い。また、本構造の場合は半田を接続に用いるため、あらかじめ必要な微細誘導電流線10を接続しておいて、後からその接続を外していき、所望の特性インピーダンスを得ることも可能である。
【0061】
以上のようにして、磁気ディスク装置20におけるプリアンプ24から磁気ヘッド23のヘッド素子に至るまでの差動線路21の特性インピーダンスを微細誘導電流線10の適切な接続によって所望の値に設定できる。また、一つの伝送線路の構造で特性インピーダンスを細かく、かつダイナミックに変化させることができるので、データを細かく、効率良く採取することが可能になる。
【0062】
次に、図14〜図20により、本実施の形態の伝送線路における効果を検証するためのシミュレーションについて説明する。それぞれ、図14(a),(b)は効果検証のために用いた伝送線路の断面図、図15はTDR測定の回路の構成図、図16はTDR測定の検証結果の特性図、図17は記録電流波形を測定する回路の構成図、図18は記録電流波形測定の検証結果の特性図、図19は記録電流波形の各種パラメータの説明図、図20は検証結果に基づいた各種パラメータ一覧の説明図を示す。
【0063】
この検証においては、電磁界解析シミュレータ、回路シミュレータを用いてシミュレーションを行い、この効果を検証した。ここで、シミュレータを利用したのは実測における外乱の要因を排除し、本実施の形態の効果を純粋に説明するためにあえて用いた。
【0064】
図14に示すように、効果検証のために用いた伝送線路183には、前述した図2に示した物理的な構造の伝送線路を例に用いた。ここでは、差動線路21をそれぞれS1とS2とし、また微細誘導電流線10としてSUS1〜SUS11からなる11個の場合で行った。図14(b)に示すように、差動線路21は幅が100μmで厚さが10μm、微細誘導電流線10は幅が25μmで厚さが10μmで間隔が25μmの場合で、また差動線路21の上方、差動線路21と微細誘導電流線10との間、微細誘導電流線10の下方の厚さはそれぞれ10μmとした。
【0065】
図15に示すように、TDR法を用いて伝送線路の特性インピーダンスを求める際の回路ブロックは、入力が振幅500mV/立ち上がり50psで、内部抵抗50Ωを持つパルス181に特性インピーダンス50Ω/線路長40mmの測定用ケーブル182を接続し、さらに本実施の形態の構造の伝送線路183を50mm接続して構成した。この検証結果を、図16に示す。
【0066】
図16においては、SUS_no_connect:微細誘導電流線10を全く接続しない、SUS5−SUS7:微細誘導電流線10のSUS5とSUS7を両端で接続する、SUS4−SUS8:微細誘導電流線10のSUS4とSUS8を両端で接続する、SUS3−SUS9:微細誘導電流線10のSUS3とSUS9を両端で接続する、SUS2−SUS10:微細誘導電流線10のSUS2とSUS10を両端で接続する、SUS1−SUS11:微細誘導電流線10のSUS1とSUS11を両端で接続する、SUS_all_connect:微細誘導電流線10のSUS1〜SUS11を全て接続する、場合の接続方法を例に示している。
【0067】
図16に示すように、時間Time[ns]に対する測定端子間電圧[mV]の変化は、どの接続方法においても約0.2ns程度で約250mV程度まで急激に上昇し、約0.5ns程度まではこの約250mV程度の値を保持し、その後、約0.5ns程度〜約1.7ns程度の範囲でそれぞれの接続方法にばらつきが生じる。そして、約1.7ns程度以降は、どの接続方法も約500mV程度の値に集約された結果となった。
【0068】
図17に示すように、実際に、プリアンプIC191とヘッド素子192の間を伝送線路183で接続した回路ブロックでは、前述と同様に本実施の形態の構造の伝送線路183の線路長は50mmとした。この検証結果を、図18に示す。
【0069】
図18に示すように、時間Time[ns]に対する記録電流Iw[mA]の変化は、どの接続方法においても約61.4ns程度までは約−40mA程度の値を保持し、その後、それぞれの接続方法でばらつきが生じて約62.3ns程度までに約90mA程度〜約110mA程度まで急激に上昇する。その後、約63.2ns程度で約40mA程度〜約10mA程度まで下降し、そして約64ns程度から約40mA程度の値に集約される。
【0070】
その後は逆に、約71.5ns程度まではこの約40mA程度の値を保持し、その後、それぞれの接続方法でばらつきが生じて約72.5ns程度までに約−90mA程度〜約−110mA程度まで急激に下降する。その後、約73.2ns程度で約−10mA程度〜約−30mA程度まで上昇し、そして約74ns程度から約−40mA程度の値に集約される。
【0071】
図18の検証結果に基づいて、各種パラメータは図19の記録電流波形例により求められる。すなわち、Iwpp:記録電流波形のpeak−to−peak[mA]、tr:記録電流波形の立ち上がり(10%〜90%)[ns]、tp:記録電流波形の反転前の直流部分からピークまで[ns]、OS:オーバーシュート(図19においてA/B×100%により算出)[%]、が求められる。
【0072】
以上のような検証結果に基づいて、各種パラメータを表にすると図20のようになる。例えば、SUS_no_connectの接続方法においては、Zが138Ω、Iwppが177.9mApp、trが0.236ns、tpが0.840ns、OSが58.8%となる。同様に、SUS5+SUS7の接続方法では、Zが74Ω、Iwppが207.0mApp、trが0.219ns、tpが0.775ns、OSが78.0%となり、・・・、SUS_all_connectの接続方法では、Zが34Ω、Iwppが229.4mApp、trが0.265ns、tpが0.911ns、OSが91.9%となる。
【0073】
なお、各接続方法における特性インピーダンスZ[Ω]については、Z=((1+ρ)/(1−ρ))×測定系のインピーダンス、から求めることができる。この場合に、反射率ρ=(V2−V1)/V1となる。例えば、SUS_no_connectの接続方法の場合には、前述した図16の測定端子間電圧よりV1=250mV、V2=367mVが求まり、ρ=(367mV−250mV)/250mV=0.468となり、この測定系のインピーダンスは50Ωなので、Z=((1+0.468)/(1−0.468))×50Ω=138Ωとなる。
【0074】
以上の結果より、伝送線路の特性インピーダンスを本実施の形態の構造により広く、細かく設定することができることが確認でき、またその伝送線路を接続した場合の各種パラメータを比較、検討することにより、所望の特性を得ることが確認できた。
【0075】
なお、以上においては、前述した図2に示した物理的な構造の伝送線路を例に効果を検証したが、前述した図3〜図7に示した物理的な構造の伝送線路についても、図2と同様の検証結果が得られることはいうまでもない。
【0076】
【発明の効果】
本発明を用いることによって、磁気ディスク装置におけるプリアンプからヘッド素子に至るまでの差動線路の特性インピーダンスを微細誘導電流線の適切な接続によって所望の値に設定できる。また、一つの伝送線路の構造で特性インピーダンスを細かく、かつダイナミックに変化させることができるので、データを細かく、効率良く採取することが可能になる。これは、製品を製造する上で設計のスピードを加速させ、かつ製品に対するフィードバックを強くかけられるという利点を生む。さらに、後から特性インピーダンスを調整できるため、個々の製造にバラツキが出ても、そのバラツキを吸収するように調整できる。これにより、製品の歩留まり、信頼性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの伝送線路を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの別の伝送線路を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの別の伝送線路を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの別の伝送線路を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの別の伝送線路を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの別の伝送線路を示す断面図である。
【図8】(a),(b)は本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、丸線導体の差動線路によるインダクタンスを示す説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、微細誘導電流線を両端で接続しないときのインダクタンスを示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、微細誘導電流線を両端で接続したときのインダクタンスを示す説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、圧着による接続方法を示す説明図である。
【図12】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、ねじ止めによる接続方法を示す説明図である。
【図13】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、半田付けによる接続方法を示す説明図である。
【図14】(a),(b)は本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、効果検証のために用いた伝送線路を示す断面図である。
【図15】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、TDR測定の回路を示す構成図である。
【図16】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、TDR測定の検証結果を示す特性図である。
【図17】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、記録電流波形を測定する回路を示す構成図である。
【図18】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、記録電流波形測定の検証結果を示す特性図である。
【図19】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、記録電流波形の各種パラメータを示す説明図である。
【図20】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、検証結果に基づいた各種パラメータ一覧を示す説明図である。
【符号の説明】
10…微細誘導電流線、12…誘電体、13…グランド層、14…分離溝、20…磁気ディスク装置、21…差動線路、22…ハードディスク、23…磁気ヘッド、24…プリアンプ、25…リードライトチャネル、26…ハードディスクコントローラ、27…ボイスコイルモータ、28…ボイスコイルドライバ、29…スピンドルモータ、30…スピンドルドライバ、31…制御回路、92…ランドパターン、93…接続パターン、94…絶縁物体、102…ランドパターン、103…ねじ穴、104…ねじ、105…絶縁物体、106…金属部分、107…バネ、112…ランドパターン、113…半田ごて、114…ワイヤ、181…パルス、182…測定用ケーブル、183…伝送線路、191…プリアンプIC、192…ヘッド素子。
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク装置におけるプリアンプからヘッド素子に至るまでの伝送線路に関し、特にその特性インピーダンスの調整方法、記録電流波形、再生電流波形の各種パラメータを調整する方法に適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者が検討したところによれば、磁気ディスク装置などにおける伝送線路に関しては、以下のような技術が考えられる。
【0003】
例えば、高周波回路で信号を伝送する際には、その高周波のために波長が線路に対して無視できない長さになり、インピーダンスミスマッチによる反射、それに伴うリンギング等の現象が見えてくるようになり、さらにそれらが引き起こす二次的な線路近傍へのクロストークや不要輻射、ロジック系IC等においてはタイミングのディレイや、最悪の場合、システムに障害を及ぼすようなロジック・ミスにつながりかねない。
【0004】
磁気ディスク装置においてもその傾向は例外でなく、近年では、例えばプリアンプからヘッドに送られる周波数は年々速くなっている。上述のような不安は、その周波数の上昇に対し加速度的に増加する。そのため、プリアンプなどの能動素子や、抵抗、コイル、コンデンサなどの受動素子を接続する場合、その負荷とのインピーダンスを適切にマッチングさせる必要がある。
【0005】
この特性インピーダンスを調整する方法としては、(1)マイクロストリップライン、(2)ストリップライン、(3)コプレーナライン等があり、作りやすさや、グランドとの容量的な結合によって特性インピーダンスを調整する手法が確立されている。以下において、マイクロストリップラインを始めとする代表的なインピーダンスのコントロールされた線路について説明する。
【0006】
(1)マイクロストリップラインについては、この伝送線路は特性インピーダンスをコントロールするために片面をグランドにし、決まった厚さの誘電体を挟み、決まった幅のトレースを引くことによって特性インピーダンスを調整している。この特性インピーダンスを決定するパラメータは、誘電体の誘電率、信号線の厚み、誘電体の厚み、信号線の幅である。
【0007】
(2)ストリップラインは、特性インピーダンスをコントロールするために両面をグランドにし、決まった厚さの誘電体を挟み、決まった幅のトレースを内部に埋め込むことにより、特性インピーダンスを調整する。この特性インピーダンスを決定するパラメータは、誘電体の誘電率、信号線の厚み、誘電体の厚み、信号線の幅である。
【0008】
(3)コプレーナラインは、特性インピーダンスをコントロールするために信号の両脇をグランドにし、決まった厚さの誘電体をその下に配置し、グランドと信号線との間隙を調整することにより特性インピーダンスを調整する。この特性インピーダンスを決定するパラメータは、誘電体の誘電率、信号線の厚み、誘電体の厚み、信号線の幅、信号線とグランドとの間隙距離である。
【0009】
前述のどの線路も、その設計方法として、その伝送線路をグランド等との容量的な結合、つまり物理構造から特性インピーダンスを調整できるようにしている。このような容量的な結合を考慮した技術には、マイクロストリップラインにおいて、ストリップ線路と基板との間に誘電体層を段階的に積層することにより、誘電体層の厚さを入出力側で異ならせて特性インピーダンスを変化させるものがある(例えば、特許文献1)。また、線路とグランドとの間の寄生容量を低減させるために、磁気ヘッド用線路の下方の金属フレクシャ及びロードビームを一部除去するようにした技術がある(例えば、特許文献2)。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−291518号公報(第1頁の要約など)
【0011】
【特許文献2】
特開2001−256627号公報(第1頁の要約など)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記のような磁気ディスク装置の伝送線路の技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0013】
例えば、前述したマイクロストリップライン等のどの線路も、その伝送線路をグランド等との容量的な結合から特性インピーダンスを調整できるようにしているため、実際の回路の設計を行っている現場では電磁界シミュレータ、回路シミュレータ等を使って試作を行う前に特性インピーダンス等の各種設計値を所望の値になる様に検討を行う。
【0014】
しかし、シミュレータはやはり模擬的な装置であるので、特性インピーダンスの実測とシミュレータ上の数値のズレや、ICなどの能動素子の実際とシミュレータ上での理論値などにズレ等が生じる。そのため、シミュレータ上では適した設計であっても、実装状態でその特性インピーダンスで本当に所望の応答になるかどうかを判断するためには、あらかじめ信号線幅や信号線間隔を調整して特性インピーダンスを調整した伝送線路を多数用意し、数多くの測定を行わなければならない。
【0015】
また、実際に線路を作成する際、個々の線路の特性インピーダンスがばらついてしまっても調整することができない。
【0016】
このように、前述した伝送線路の設計技術では、一度、“もの”として物理的に製作してしまうと、特性インピーダンスを調整できないという課題が生じる。また、前述したマイクロストリップライン等の伝送線路、特許文献1及び2の技術は、いずれも容量的な結合から特性インピーダンスを調整するものであり、インダクタンスを考慮したものではない。
【0017】
そこで、本発明の目的は、インダクタンスを考慮して、物理的に伝送線路を製造した後からでも、特性インピーダンスを動的に変化させ、プリアンプ等の能動素子や抵抗、コイル、コンデンサ等の受動素子等の伝送線路を用いた接続において所望の性能が出るような伝送線路を有する磁気ディスク装置を提供することにある。
【0018】
また、本発明の他の目的は、一つの伝送線路を評価する回路等に実装したままで特性インピーダンスを変化させることにより、数多くのデータを効率良く取り、分析し、製品設計スピードを加速することができる磁気ディスク装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、磁気ディスク装置のプリアンプからヘッド素子へ至る差動で動作する伝送線路の周囲に、その伝送線路に比べて十分に微細であり、その断面積が、例えば250μm2以下で規定される微細誘導電流線を多数配置し、その微細誘導電流線をその伝送線路の差動性を崩さないように適切に接続し、相互インダクタンスを所望の値にコントロールすることにより、特性インピーダンスを調整する。その結果として、伝送線路を物理的に製造した後からでも、特性インピーダンスを所望の値になる様に細かく調整し、実機実装状態におけるプリアンプからヘッド素子へ至るまでの差動線路の伝送特性を所望の応答が得られるようにコントロール可能にしたものである。
【0020】
すなわち、本発明は、プリアンプからヘッド素子に至るまでの差動線路を有する磁気ディスク装置に適用され、以下のような特徴を有するものである。
【0021】
(1)差動線路より細い幅で形成され、差動線路の下層に配置され、誘導電流を流す複数の微細誘導電流線を有し、複数の微細誘導電流線のうち、差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の微細誘電電流線の両端を接続するものである。
【0022】
(2)差動線路より細い幅で形成され、差動線路と同一層に配置され、誘導電流を流す複数の微細誘導電流線を有し、複数の微細誘導電流線のうち、差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の微細誘電電流線の両端を接続するものである。
【0023】
(3)差動線路より細い幅で形成され、差動線路の上層または下層の一方に配置され、誘導電流を流す複数の微細誘導電流線と、差動線路の上層または下層の他方に配置され、基準電位となる基準電位層とを有し、基準電位層を差動線路の特性インピーダンスを所定の値に設定するように分割し、複数の微細誘導電流線のうち、差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の微細誘電電流線の両端を接続するものである。
【0024】
(4)差動線路より細い幅で形成され、差動線路の上層および下層に配置され、誘導電流を流す複数の第1微細誘導電流線と、差動線路より細い幅で形成され、差動線路と同一層の左側および右側に配置され、誘導電流を流す複数の第2微細誘導電流線とを有し、複数の第1微細誘導電流線と複数の第2微細誘導電流線のうち、差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の微細誘電電流線の両端を組み合わせて接続するものである。
【0025】
(5)差動線路より細い幅で形成され、差動線路の第1線路と第2線路との間の内側または外側に配置され、誘導電流を流す複数の微細誘導電流線を有し、複数の微細誘導電流線のうち、差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の微細誘電電流線の両端を接続し、シールド性能を持たせるように両端を接続した微細誘電電流線以外の微細誘電電流線を基準電位に接地するものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
まず、図1により、本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置の構成の一例を説明する。図1は磁気ディスク装置の構成図を示す。
【0028】
本実施の形態の磁気ディスク装置20は、例えばハードディスク22に対してデータをリード/ライトする磁気ヘッド23と、リード/ライトデータを増幅するプリアンプ24と、リード/ライトデータを選択するリードライトチャネル25と、ハードディスク22に対してリード/ライトするデータを制御するハードディスクコントローラ26と、ボイスコイルモータ27を駆動するボイスコイルドライバ28と、スピンドルモータ29を駆動するスピンドルドライバ30と、ボイスコイルドライバ28およびスピンドルドライバ30を制御する制御回路31などから構成されている。
【0029】
この磁気ディスク装置20では、プリアンプ24から磁気ヘッド23のヘッド素子に至るまでの伝送線路が、それぞれ、リード側に2本の線路が一対となる差動線路21、ライト側に2本の線路が一対となる差動線路21で形成されている。本発明は、リード側、ライト側の差動線路21に適用され、所望の特性インピーダンスを得ることを特徴とするものである。以下において、伝送線路の構造例を説明する。
【0030】
次に、図2〜図7により、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの伝送線路の構造例について説明する。図2〜図7はそれぞれ伝送線路の断面図を示す。なお、図2〜図7においては、ライト側の差動線路を例に説明するが、リード側の差動線路についても同様である。
【0031】
図2の構造例は、差動線路21より細い誘導電流を流す微細誘導電流線10を差動線路21の下に多数配置し、その微細誘導電流線10の両端での接続方法を任意に接続するようにした伝送線路である。なお、これらの差動線路21、微細誘導電流線10は誘電体12により覆われている。この伝送線路は、差動線路21の特性インピーダンスを動的に変化させることができる。
【0032】
図3の構造例は、微細誘導電流線10を差動線路21と同一層に多数配置し、その微細誘導電流線10の両端での接続方法を任意に接続するようにした伝送線路である。この伝送線路では、製造のしやすさを考慮しつつ、差動線路21の特性インピーダンスを動的に変化させることができる。
【0033】
図4の構造例は、微細誘導電流線10を差動線路21の上下面のどちらか片側に多数配置し、その逆の面には、まずグランド(基準電位)となるグランド層13を配置し、その面にエッチングを用いて分離溝14を形成することにより大まかな特性インピーダンスを設定し、その後、微細誘導電流線10を任意に接続するようにした伝送線路である。この伝送線路では、差動線路21の特性インピーダンスを動的に、かつ細かく変化させることができる。
【0034】
図5の構造例は、差動線路21を微細誘導電流線10で取り囲むように多数配置し、差動線路21の上下に配置された相互インダクタンスの大きい微細誘導電流線10とその差動線路21の左右、斜めに配置された相互インダクタンスの小さな微細誘導電流線10を任意に組み合わせて接続するようにした伝送線路である。この伝送線路では、差動線路21の特性インピーダンスを動的に、かつ細かく変化させることができる。
【0035】
図6の構造例は、差動線路21をその差動線路21の導体厚み方向に上下になるように配置し、さらにその差動線路21の上下に微細誘導電流線10を多数配置し、任意の微細誘導電流線10を接続し、また接続しない微細誘導電流線10を回路の基準電位に接地するようにした伝送線路である。この伝送線路では、差動線路21の特性インピーダンスを動的に変化させることができ、かつシールド性能を持たせることができる。
【0036】
図7の構造例は、差動線路21をその差動線路21で誘電体12を挟み込むように、かつ向かい合うように配置し、その挟んだ誘電体12の間に微細誘導電流線10を2層にわたって多数配置するようにした伝送線路である。この伝送線路では、差動線路21からの外部磁束の漏れが非常に少なく、ノイズ誘導能力が極めて低く、さらに動的に特性インピーダンスを調整することができる。
【0037】
次に、図8〜図10により、前述した図2の伝送線路を例に、本発明の物理的な構造を詳細に説明する。それぞれ、図8(a),(b)は丸線導体の差動線路によるインダクタンスの説明図、図9は微細誘導電流線を両端で接続しないときのインダクタンスの説明図、図10は接続したときのインダクタンスの説明図を示す。
【0038】
伝送線路において、微細誘導電流線10は、上述したように特性インピーダンスを十分に細かく設定するためと、接続された微細誘導電流線10の表面を最大限に活用し、表皮効果による損失を防ぐために十分に微細である必要がある。例えば、微細誘導電流線10の断面積を250μm2以下とする。
【0039】
ここでは、本発明の原理についての説明を明瞭化、単純化するために、図8に示すように、まず2本の丸線導体の差動線路について、特性インピーダンスや相互インダクタンスについて考えてみる。2本の差動で動作する丸線導体の実効インダクタンスLeffは式(1)で与えられる。ここで、L1,L2は自己インダクタンスで、Mは相互インダクタンスである。
【0040】
【数1】
【0041】
丸線導体の自己インダクタンスLselfは、lを導体の長さ、aを丸線導体の断面の半径とし、l>>aが成り立つとすれば、式(2)で与えられる。
【0042】
【数2】
【0043】
また、相互インダクタンスMは、式(3)で与えられる。ここで、lは導体の長さで、またdは差動線間の距離である。
【0044】
【数3】
【0045】
加えて、特性インピーダンスZについては、その導体の損失が無視できるとする時、式(4)が成り立つ。ここで、Leff,Ceffは単位長さ当たりの実効的な値である。
【0046】
【数4】
【0047】
以上のことから、導体の自己インダクタンスは、その物理形状から決まってしまうが、その導体間の距離を変化させることにより相互インダクタンスを変化させ、その結果、実効的なインダクタンスを変化させて、最終的に特性インピーダンスを変化させることができることがわかる。本発明のモデルでは、微細誘導電流線10が多数あるので、上述した丸線導体ほど単純ではない。しかし、相互インダクタンスの調整により特性インピーダンスが変化する原理は同様である。
【0048】
これらのことを踏まえて、本発明の構造について考えてみると、微細誘導電流線10をその伝送線路の両端で全く接続しないときは、図9に示すように差動線路21自体の相互インダクタンスのみで結合する。すなわち、差動線路21にそれぞれ逆方向の電流(I,−I)を流した場合の相互インダクタンスMによる結合は弱くなる。
【0049】
次に、差動線路21の下の微細誘導電流線10を両端で接続した図10の場合を考えてみると、このときは差動線路21自体の相互インダクタンスMに加え、その差動線路21が微細誘導電流線10に誘導する電流(I)により、さらに強く結合する。そのため、微細誘導電流線10を全く接続しない場合に比べ、相互インダクタンスMが大きくなり、そのために実効的なインダクタンスが小さくなり、その結果、特性インピーダンスが低くなる。
【0050】
また、微細誘導電流線10の接続の組み合わせによりその微細誘導電流線10と差動線路21との距離は変化するので、その組み合わせによって相互インダクタンスMが変化する。このことから、微細誘導電流線10の組み合わせにより特性インピーダンスを調整することができることがわかる。ここで、微細誘導電流線10の選び方であるが、信号線が差動線路21なので、その対称性を崩さないように対称に選ぶ必要がある。
【0051】
以上のように、本実施の形態の磁気ディスク装置20においては、プリアンプ24から磁気ヘッド23のヘッド素子に至るまでの差動で動作する差動線路21の特性インピーダンスを、その差動線路21の周囲に微細誘導電流線10を多数配置することによって所望の特性インピーダンスを得ることを特徴とした伝送線路である。
【0052】
そのため、本実施の形態による効果を期待するには、その微細誘導電流線10の両端での接続方法が重要となる。その具体的な接続方法を、以下において説明する。
【0053】
次に、図11〜図13により、微細誘導電流線の接続方法の一例を説明する。それぞれ、図11は圧着による接続方法の説明図、図12はねじ止めによる接続方法の説明図、図13は半田付けによる接続方法の説明図を示す。
【0054】
図11に示した実装方法は、微細誘導電流線10を両端で圧着する手法である。微細誘導電流線10の両端(一端のみを図示しているが他端も同様)にランドパターン92を形成し、そのランドパターン92をプラスチック等のある程度の強度があり、また加工が容易な絶縁物体94で挟み込むことによって、絶縁物体94に製作した接続パターン93で接続を確保する。例えば、図11において左端のランドパターン92同士を接続パターン93で接続したり、またはその右側、さらにその右側、右端のランドパターン92同士を接続することができる。
【0055】
なお、図11には片側にしか微細誘導電流線10を接続する接続パターン93が無いが、前述した図5〜図7に示されるように微細誘導電流線10を上下に配置した場合には、接続パターン93をその絶縁物体94の上下に製作することは言うまでもない。
【0056】
また、ランドパターン92への接続は一通りではなく、微細誘導電流線10を接続する接続パターン93を2つに限らず、一度に3つ以上などの複数の微細誘導電流線10を接続できるような形状にすることにより、細かな特性インピーダンスの調整を実現できる。
【0057】
図12に示した実装方法は、微細誘導電流線10をねじ止め式で微細誘導電流線10のランドパターン102にコンタクトして接続する手法である。微細誘導電流線10の両サイドにねじ穴103をあけ、コンタクトを支持する絶縁物体105を固定できるようにし、コンタクト部分はランドパターン102を接続するために必要十分な硬さを持った金属部分106を形成し、そのランドパターン102と金属部分106とのコンタクトの力の強さをねじ104と微細誘導電流線10を形成しているパターンとの間にバネ107を挿入することにより調整する。なお、このバネ性はコンタクトする金属部分106に持たせても良い。
【0058】
例えば、図12において上側から1番目と6番目のランドパターン102同士を金属部分106で接続したり、または2番目と5番目、3番目と4番目のランドパターン102同士を接続することができる。あるいは、1番目のランドパターン102については、2番目〜5番目の任意のランドパターン102と接続することも可能であり、また2番目〜6番目のランドパターン102についても同様である。さらには、3つ以上のランドパターン102同士を接続することもできる。
【0059】
図13に示した実装方法は、微細誘導電流線10のその両端にランドパターン112を用意し、そこに半田付けを行うことによって接続する。半田付けには、半田ごて113を用いてワイヤ114により接続する。もしくは、ワイヤーボンディングにより接続することも可能である。この接続方法においても、前記図11などと同様に種々の変形が可能である。
【0060】
なお、図13にはランドパターン112が図11と同じように配置されているが、図12のように配置しても良い。また、本構造の場合は半田を接続に用いるため、あらかじめ必要な微細誘導電流線10を接続しておいて、後からその接続を外していき、所望の特性インピーダンスを得ることも可能である。
【0061】
以上のようにして、磁気ディスク装置20におけるプリアンプ24から磁気ヘッド23のヘッド素子に至るまでの差動線路21の特性インピーダンスを微細誘導電流線10の適切な接続によって所望の値に設定できる。また、一つの伝送線路の構造で特性インピーダンスを細かく、かつダイナミックに変化させることができるので、データを細かく、効率良く採取することが可能になる。
【0062】
次に、図14〜図20により、本実施の形態の伝送線路における効果を検証するためのシミュレーションについて説明する。それぞれ、図14(a),(b)は効果検証のために用いた伝送線路の断面図、図15はTDR測定の回路の構成図、図16はTDR測定の検証結果の特性図、図17は記録電流波形を測定する回路の構成図、図18は記録電流波形測定の検証結果の特性図、図19は記録電流波形の各種パラメータの説明図、図20は検証結果に基づいた各種パラメータ一覧の説明図を示す。
【0063】
この検証においては、電磁界解析シミュレータ、回路シミュレータを用いてシミュレーションを行い、この効果を検証した。ここで、シミュレータを利用したのは実測における外乱の要因を排除し、本実施の形態の効果を純粋に説明するためにあえて用いた。
【0064】
図14に示すように、効果検証のために用いた伝送線路183には、前述した図2に示した物理的な構造の伝送線路を例に用いた。ここでは、差動線路21をそれぞれS1とS2とし、また微細誘導電流線10としてSUS1〜SUS11からなる11個の場合で行った。図14(b)に示すように、差動線路21は幅が100μmで厚さが10μm、微細誘導電流線10は幅が25μmで厚さが10μmで間隔が25μmの場合で、また差動線路21の上方、差動線路21と微細誘導電流線10との間、微細誘導電流線10の下方の厚さはそれぞれ10μmとした。
【0065】
図15に示すように、TDR法を用いて伝送線路の特性インピーダンスを求める際の回路ブロックは、入力が振幅500mV/立ち上がり50psで、内部抵抗50Ωを持つパルス181に特性インピーダンス50Ω/線路長40mmの測定用ケーブル182を接続し、さらに本実施の形態の構造の伝送線路183を50mm接続して構成した。この検証結果を、図16に示す。
【0066】
図16においては、SUS_no_connect:微細誘導電流線10を全く接続しない、SUS5−SUS7:微細誘導電流線10のSUS5とSUS7を両端で接続する、SUS4−SUS8:微細誘導電流線10のSUS4とSUS8を両端で接続する、SUS3−SUS9:微細誘導電流線10のSUS3とSUS9を両端で接続する、SUS2−SUS10:微細誘導電流線10のSUS2とSUS10を両端で接続する、SUS1−SUS11:微細誘導電流線10のSUS1とSUS11を両端で接続する、SUS_all_connect:微細誘導電流線10のSUS1〜SUS11を全て接続する、場合の接続方法を例に示している。
【0067】
図16に示すように、時間Time[ns]に対する測定端子間電圧[mV]の変化は、どの接続方法においても約0.2ns程度で約250mV程度まで急激に上昇し、約0.5ns程度まではこの約250mV程度の値を保持し、その後、約0.5ns程度〜約1.7ns程度の範囲でそれぞれの接続方法にばらつきが生じる。そして、約1.7ns程度以降は、どの接続方法も約500mV程度の値に集約された結果となった。
【0068】
図17に示すように、実際に、プリアンプIC191とヘッド素子192の間を伝送線路183で接続した回路ブロックでは、前述と同様に本実施の形態の構造の伝送線路183の線路長は50mmとした。この検証結果を、図18に示す。
【0069】
図18に示すように、時間Time[ns]に対する記録電流Iw[mA]の変化は、どの接続方法においても約61.4ns程度までは約−40mA程度の値を保持し、その後、それぞれの接続方法でばらつきが生じて約62.3ns程度までに約90mA程度〜約110mA程度まで急激に上昇する。その後、約63.2ns程度で約40mA程度〜約10mA程度まで下降し、そして約64ns程度から約40mA程度の値に集約される。
【0070】
その後は逆に、約71.5ns程度まではこの約40mA程度の値を保持し、その後、それぞれの接続方法でばらつきが生じて約72.5ns程度までに約−90mA程度〜約−110mA程度まで急激に下降する。その後、約73.2ns程度で約−10mA程度〜約−30mA程度まで上昇し、そして約74ns程度から約−40mA程度の値に集約される。
【0071】
図18の検証結果に基づいて、各種パラメータは図19の記録電流波形例により求められる。すなわち、Iwpp:記録電流波形のpeak−to−peak[mA]、tr:記録電流波形の立ち上がり(10%〜90%)[ns]、tp:記録電流波形の反転前の直流部分からピークまで[ns]、OS:オーバーシュート(図19においてA/B×100%により算出)[%]、が求められる。
【0072】
以上のような検証結果に基づいて、各種パラメータを表にすると図20のようになる。例えば、SUS_no_connectの接続方法においては、Zが138Ω、Iwppが177.9mApp、trが0.236ns、tpが0.840ns、OSが58.8%となる。同様に、SUS5+SUS7の接続方法では、Zが74Ω、Iwppが207.0mApp、trが0.219ns、tpが0.775ns、OSが78.0%となり、・・・、SUS_all_connectの接続方法では、Zが34Ω、Iwppが229.4mApp、trが0.265ns、tpが0.911ns、OSが91.9%となる。
【0073】
なお、各接続方法における特性インピーダンスZ[Ω]については、Z=((1+ρ)/(1−ρ))×測定系のインピーダンス、から求めることができる。この場合に、反射率ρ=(V2−V1)/V1となる。例えば、SUS_no_connectの接続方法の場合には、前述した図16の測定端子間電圧よりV1=250mV、V2=367mVが求まり、ρ=(367mV−250mV)/250mV=0.468となり、この測定系のインピーダンスは50Ωなので、Z=((1+0.468)/(1−0.468))×50Ω=138Ωとなる。
【0074】
以上の結果より、伝送線路の特性インピーダンスを本実施の形態の構造により広く、細かく設定することができることが確認でき、またその伝送線路を接続した場合の各種パラメータを比較、検討することにより、所望の特性を得ることが確認できた。
【0075】
なお、以上においては、前述した図2に示した物理的な構造の伝送線路を例に効果を検証したが、前述した図3〜図7に示した物理的な構造の伝送線路についても、図2と同様の検証結果が得られることはいうまでもない。
【0076】
【発明の効果】
本発明を用いることによって、磁気ディスク装置におけるプリアンプからヘッド素子に至るまでの差動線路の特性インピーダンスを微細誘導電流線の適切な接続によって所望の値に設定できる。また、一つの伝送線路の構造で特性インピーダンスを細かく、かつダイナミックに変化させることができるので、データを細かく、効率良く採取することが可能になる。これは、製品を製造する上で設計のスピードを加速させ、かつ製品に対するフィードバックを強くかけられるという利点を生む。さらに、後から特性インピーダンスを調整できるため、個々の製造にバラツキが出ても、そのバラツキを吸収するように調整できる。これにより、製品の歩留まり、信頼性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの伝送線路を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの別の伝送線路を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの別の伝送線路を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの別の伝送線路を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの別の伝送線路を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、プリアンプから磁気ヘッドのヘッド素子に至るまでの別の伝送線路を示す断面図である。
【図8】(a),(b)は本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、丸線導体の差動線路によるインダクタンスを示す説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、微細誘導電流線を両端で接続しないときのインダクタンスを示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、微細誘導電流線を両端で接続したときのインダクタンスを示す説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、圧着による接続方法を示す説明図である。
【図12】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、ねじ止めによる接続方法を示す説明図である。
【図13】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、半田付けによる接続方法を示す説明図である。
【図14】(a),(b)は本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、効果検証のために用いた伝送線路を示す断面図である。
【図15】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、TDR測定の回路を示す構成図である。
【図16】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、TDR測定の検証結果を示す特性図である。
【図17】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、記録電流波形を測定する回路を示す構成図である。
【図18】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、記録電流波形測定の検証結果を示す特性図である。
【図19】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、記録電流波形の各種パラメータを示す説明図である。
【図20】本発明の一実施の形態の磁気ディスク装置において、検証結果に基づいた各種パラメータ一覧を示す説明図である。
【符号の説明】
10…微細誘導電流線、12…誘電体、13…グランド層、14…分離溝、20…磁気ディスク装置、21…差動線路、22…ハードディスク、23…磁気ヘッド、24…プリアンプ、25…リードライトチャネル、26…ハードディスクコントローラ、27…ボイスコイルモータ、28…ボイスコイルドライバ、29…スピンドルモータ、30…スピンドルドライバ、31…制御回路、92…ランドパターン、93…接続パターン、94…絶縁物体、102…ランドパターン、103…ねじ穴、104…ねじ、105…絶縁物体、106…金属部分、107…バネ、112…ランドパターン、113…半田ごて、114…ワイヤ、181…パルス、182…測定用ケーブル、183…伝送線路、191…プリアンプIC、192…ヘッド素子。
Claims (5)
- プリアンプからヘッド素子に至るまでの差動線路を有する磁気ディスク装置であって、
前記差動線路より細い幅で形成され、前記差動線路の下層に配置され、誘導電流を流す複数の誘導電流線を有し、
前記複数の誘導電流線のうち、前記差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の誘電電流線の両端を接続することを特徴とする磁気ディスク装置。 - プリアンプからヘッド素子に至るまでの差動線路を有する磁気ディスク装置であって、
前記差動線路より細い幅で形成され、前記差動線路と同一層に配置され、誘導電流を流す複数の誘導電流線を有し、
前記複数の誘導電流線のうち、前記差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の誘電電流線の両端を接続することを特徴とする磁気ディスク装置。 - プリアンプからヘッド素子に至るまでの差動線路を有する磁気ディスク装置であって、
前記差動線路より細い幅で形成され、前記差動線路の上層または下層の一方に配置され、誘導電流を流す複数の誘導電流線と、
前記差動線路の上層または下層の他方に配置され、基準電位となる基準電位層とを有し、
前記基準電位層を前記差動線路の特性インピーダンスを所定の値に設定するように分割し、前記複数の誘導電流線のうち、前記差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の誘電電流線の両端を接続することを特徴とする磁気ディスク装置。 - プリアンプからヘッド素子に至るまでの差動線路を有する磁気ディスク装置であって、
前記差動線路より細い幅で形成され、前記差動線路の上層および下層に配置され、誘導電流を流す複数の第1誘導電流線と、
前記差動線路より細い幅で形成され、前記差動線路と同一層の左側および右側に配置され、誘導電流を流す複数の第2誘導電流線とを有し、
前記複数の第1誘導電流線と前記複数の第2誘導電流線のうち、前記差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の誘電電流線の両端を組み合わせて接続することを特徴とする磁気ディスク装置。 - プリアンプからヘッド素子に至るまでの差動線路を有し、前記差動線路は、第1層に形成される第1線路と、前記第1層の上層または下層の第2層に形成される第2線路とからなる磁気ディスク装置であって、
前記差動線路より細い幅で形成され、前記差動線路の前記第1線路と前記第2線路との間の内側または外側に配置され、誘導電流を流す複数の誘導電流線を有し、
前記複数の誘導電流線のうち、前記差動線路の特性インピーダンスを動的に変化させるように所定の誘電電流線の両端を接続し、シールド性能を持たせるように前記両端を接続した誘電電流線以外の誘電電流線を基準電位に接地することを特徴とする磁気ディスク装置。
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JP2010062325A (ja) * | 2008-09-03 | 2010-03-18 | Nitto Denko Corp | 配線回路基板およびその製造方法 |
-
2002
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