JP2004191276A - 路面状態判別装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カメラ1は、路面の所定領域を含む領域のカラー画像を撮像する。画像信号変換部2は、カメラ1からの画像をR,G,B画像に変換する。処理部5は、カメラ1から画像信号変換部2を介して得られたカラー画像のうちの前記所定領域に対応する画像領域の各画素のR,G,Bの濃淡値に基づいて、前記画像領域のR,G,Bごとの分散値を得る。処理部5は、前記画像領域の各画素を当該画素の各色の濃淡値に従ってR,G,B三次元空間内にプロットしたときの、前記画像領域の各画素の前記空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る。処理部5は、画像領域のR,G,Bごとの分散値、及び、前記指標に基づいて、前記路面上の水分の有無を判別する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、路面が乾燥状態であるか否か(路面上に水分の有無)などの路面状態を判別する路面状態判別装置に関し、特に、撮像手段を用いた路面状態判別装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の路面状態判別装置として、例えば、特許文献1に開示された路面状態判別装置が提案されている。この路面状態判別装置は、路面を俯瞰するように取付けられた可視カメラからの路面映像信号をもとに、ある路面範囲における路面の湿潤、乾燥等の状態を検知する路面状態把握装置において、検知したい路面状況に対応した画像を、例えば湿潤に対して、外乱因子となる天候条件、すなわち晴天、曇り、夜間等の環境条件にそれぞれ対応して予め撮像し、それを基に、その時の路面の状態を反映した色、輝度、模様等の特徴量を抽出して、基準画特徴量として蓄えておき、新たに撮像した検査画像に対して同様な処理によって得られる検査画特徴量とを多変量解析によって比較分析することにより、検査画像がどの基準画特徴量に最も近いかを判定して、検査画像における路面状態がどの基準画像に最も近いかを判別するものである。
【0003】
そして、特許文献1には、前記特徴量として、検査画像と基準画像との差分画像からそれぞれ求めた(1)色差及びその分散、(2)輝度及びその分散、並びに(3)テクスチャの、組み合わせを用いることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−162343号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の路面状態判別装置では、選定された特徴量が路面状態を捉えるものとして必ずしも適切なものではないため、十分な精度で路面状態を判別することが困難であった。
【0006】
また、前記路面状態判別装置では、検査画像における路面状態がどの基準画像に最も近いかを判別するために、多変量解析法のマハラノビスの汎距離を用いて線形分離を行っているため、種々の天候条件等に応じて大きく非線形に変化する画像の状態に対応することが困難であった。したがって、この点からも、十分な精度で路面状態を判別することが困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、高い精度で路面状態を判別することができる路面状態判別装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による路面状態判別装置は、路面の所定領域を含む領域のカラー画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段から得られたカラー画像のうちの前記所定領域に対応する画像領域の各画素の各色の濃淡値に基づいて、前記画像領域の各色ごとの分散値を得る分散値演算手段と、前記各色をそれぞれ空間の異なる次元として、前記画像領域の各画素を当該画素の各色の濃淡値に従って前記空間内にプロットしたときの、前記画像領域の各画素の前記空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る、指標演算手段と、前記分散値演算手段により得られた前記画像領域の各色ごとの前記分散値、及び、前記指標演算手段により得られた前記指標に基づいて、前記路面上の水分の有無を判別する水分有無判別手段と、を備えたものである。なお、前記撮像手段は、路面の前記所定領域を俯瞰するように取り付けられることになる。
【0009】
前記画像領域の各色ごとの分散値は、全体として路面の光沢のムラを示している。前記画像領域の各画素を当該画素の各色の濃淡値に従って前記空間内にプロットしたときの、前記画像領域の各画素の前記空間内における分布の広がり状態は、光沢の強さを示している。したがって、前記第1の態様では、路面の光沢の強さとムラを特徴量として用いている。
【0010】
本発明者の研究の結果、以下に説明する事項が判明した。すなわち、撮像手段のレンズに入る路面からの反射光は、正反射光が最も強いと考えられる。つまり、撮像手段は路面の正反射光の強さを計測していることになり、路面の光沢を測っていると考えられる。そして、昼夜を問わず乾燥している路面は、拡散面となり光沢は弱く、路面上に水分(水、氷又は積雪)が存在する時は半鏡面状態となり光沢は強くなる。また、乾燥路面は、一様な表面特性であるので、路面画像領域内のどの点においても光沢の強さはほぼ同一であり、光沢にムラがほとんどない。一方、路面は見かけは平らであるが実際には大小様々な凹凸があるため、路面に水分がある場合は光沢にムラが生じる。
【0011】
これらの現象から、路面の光沢の強さ及び路面の光沢のムラを特徴量として用いることが路面状態を適切に捉える上で好ましい。よって、前記第1の態様によれば、高い精度で路面状態を判別することができる。
【0012】
ところで、前記第1の態様では、各色の濃淡値を用いているが、色自体を特徴量としているわけではない。これは、後に詳述するように種々の理由から路面画像における色は完全な無彩色ではないので、各色の濃淡値を総合的に取り扱った方が、単に輝度で取り扱う場合に比べて、より精度良く光沢の強さや光沢のムラを捉えることができ、ひいては、より高い精度で路面状態を判別することができるためである。もっとも、本発明では、後述する第2、第4及び第5の態様のように、輝度を用いて光沢の強さや光沢のムラを捉えてもよい。
【0013】
本発明の第2の態様による路面状態判別装置は、路面の所定領域を含む領域のカラー画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段から得られた画像のうちの前記所定領域に対応する画像領域の各画素の輝度の濃淡値に基づいて、前記画像領域の輝度の分散値を得る分散値演算手段と、各色をそれぞれ空間の異なる次元として、前記画像領域の各画素を当該画素の各色の濃淡値に従って前記空間内にプロットしたときの、前記画像領域の各画素の前記空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る、指標演算手段と、前記分散値演算手段により得られた前記画像領域の輝度の前記分散値、及び、前記指標演算手段により得られた前記指標に基づいて、前記路面上の水分の有無を判別する水分有無判別手段と、を備えたものである。
【0014】
この第2の態様によっても、前記第1の態様と同様の利点が得られる。
【0015】
本発明の第3の態様による路面状態判別装置は、前記第1又は第2の態様において、前記指標演算手段は、(a)前記各色にそれぞれ対応する入力層ユニットと所定数の競合層ユニットとを有し、前記画像領域の前記各画素の各色の濃淡値が、訓練パターンとして、対応する入力層ユニットにそれぞれ入力されて、自己組織化を行う自己組織化ニューラルネットワークと、(b)自己組織化後の前記所定数の競合層ユニットのうちの少なくとも2つの競合層ユニット間の距離を得る距離演算手段と、を有し、前記距離演算手段により得られた前記距離に応じた値を、前記指標として用いるものである。
【0016】
この第3の態様によれば、前記指標を、前記自己組織化ニューラルネットワーク及び前記距離演算手段を用いることで得ているので、前記分布の広がりを精度良く適切に捉えることができ、ひいては、より高い精度で路面状態を判別することができる。コホーネン(kohonen)の自己組織化マップのような自己組織化ニューラルネットワークは、自己組織化後の競合層ユニットのマッピング位置が入力ベクトルの分布を反映したものとなるという性質がある。前記第3の態様では、この性質を巧みに利用することで、数値化に適した状態で、前記分布の広がりを精度良く捉えることができるのである。
【0017】
本発明の第4の態様による路面状態判別装置は、路面の所定領域を含む領域の画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段から得られた画像のうちの前記所定領域に対応する画像領域の各画素の輝度の濃淡値に基づいて、前記画像領域の輝度の分散値を得る分散値演算手段と、前記輝度を一次元空間として、前記画像領域の各画素を当該画素の輝度の濃淡値に従って前記一次元空間内にプロットしたときの、前記画像領域の各画素の前記一次元空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る、指標演算手段と、前記分散値演算手段により得られた前記画像領域の輝度の前記分散値、及び、前記指標演算手段により得られた前記指標に基づいて、前記路面上の水分の有無を判別する水分有無判別手段と、を備えたものである。なお、前記撮像手段は、路面の前記所定領域を俯瞰するように取り付けられることになる。また、この第4の態様では、撮像手段は、カラー画像を撮像してもよいし、白黒画像を撮像してもよい。
【0018】
前記画像領域の輝度の分散値は、路面の光沢のムラを示している。前記画像領域の各画素を当該画素の輝度の濃淡値に従って前記一次元空間内にプロットしたときの、前記画像領域の各画素の前記一次元空間内における分布の広がり状態は、光沢の強さを示している。したがって、前記第4の態様では、前記第1の態様と同様に、路面の光沢の強さとムラを特徴量として用いている。よって、前記第4の態様によれば、前記第1の態様と同様に、高い精度で路面状態を判別することができる。
【0019】
ただし、前記第4の態様では、輝度を用いて光沢の強さや光沢のムラを捉えているので、前記第1の態様に比べると、光沢の強さや光沢のムラを捉える精度がやや低下すると考えられる。しかしながら、第4の態様では、前記第1の態様に比べて処理が簡単となるという利点が得られる。
【0020】
本発明の第5の態様による路面状態判別装置は、路面の所定領域を含む領域のカラー画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段から得られたカラー画像のうちの前記所定領域に対応する画像領域の各画素の各色の濃淡値に基づいて、前記画像領域の各色ごとの分散値を得る分散値演算手段と、輝度を一次元空間として、前記画像領域の各画素を当該画素の輝度の濃淡値に従って前記一次元空間内にプロットしたときの、前記画像領域の各画素の前記一次元空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る、指標演算手段と、前記分散値演算手段により得られた前記画像領域の各色ごとの前記分散値、及び、前記指標演算手段により得られた前記指標に基づいて、前記路面上の水分の有無を判別する水分有無判別手段と、を備えたものである。
【0021】
この第5の態様によっても、前記第1の態様と同様の利点が得られる。
【0022】
本発明の第6の態様による路面状態判別装置は、前記第4又は第5の態様において、前記指標演算手段は、(a)前記輝度に対応する入力層ユニットと所定数の競合層ユニットとを有し、前記画像領域の前記各画素の輝度の濃淡値が訓練パターンとして前記入力層ユニットに入力されて、自己組織化を行う自己組織化ニューラルネットワークと、(b)自己組織化後の前記所定数の競合層ユニットのうちの少なくとも2つの競合層ユニット間の距離を得る距離演算手段と、を有し、前記距離演算手段により得られた前記距離に応じた値を、前記指標として用いるものである。
【0023】
この第6の態様によれば、前記指標を、前記自己組織化ニューラルネットワーク及び前記距離演算手段を用いることで得ている。したがって、この第6の態様によれば、前記第3の態様と同様の利点が得られる。
【0024】
本発明の第7の態様による路面状態判別装置は、前記第1乃至第6のいずれかの態様において、前記水分有無判別手段は、教師あり学習により予め学習されたニューラルネットワークを含むものである。
【0025】
この第7の態様によれば、前記水分有無判別手段が、教師あり学習により予め学習されたニューラルネットワークを含むので、特徴量の非線形分離を行うことができる。したがって、種々の天候条件等に応じて画像の状態が大きく変化しても、高い精度で路面状態を判別することができる。
【0026】
本発明の第8の態様による路面状態判別装置は、前記第7の態様において、前記予め学習されたニューラルネットワークが階層型ニューラルネットワークであるものである。
【0027】
この第8の態様のように階層型ニューラルネットワークを用いると、より高い精度で路面状態を判別することができ、好ましい。
【0028】
本発明の第9の態様による路面状態判別装置は、前記第7又は第8の態様において、前記予め学習されたニューラルネットワークがバックプロパゲーション型ニューラルネットワークであるものである。
【0029】
この第9の態様のように、バックプロパゲーション型ニューラルネットワークを用いると、教師あり学習を適切に行うことができ、好ましい。
【0030】
本発明の第10の態様による路面状態判別装置は、前記第1乃至第6のいずれかの態様において、前記水分有無判別手段は、互いに異なる条件下で教師あり学習により予め学習された複数のニューラルネットワークを含み、前記複数のニューラルネットワークのうち現在の条件に対応するニューラルネットワークを用いて、前記路面上の水分の有無を判別するものである。
【0031】
この第10の態様のように、各条件ごとに学習された複数のニューラルネットワークを用いれば、各ニューラルネットワークの判定の精度が高まり、ひいては、より精度良く路面状態を判別することができる。
【0032】
本発明の第11の態様による路面状態判別装置は、前記第10の態様において、前記条件が季節であるものである。
【0033】
当該装置が屋外(トンネル内など以外)に設置される場合、季節(春夏秋冬)により太陽高度が大きく異なるので、この第11の態様のように、季節ごとに学習された複数のニューラルネットワークを用いると、より高い精度で路面状態を判別することができる。なお、当該装置が屋外に設置される場合でも、単一の学習済みニューラルネットワークを用いる場合には、夏に学習されたニューラルネットワークを用いる方が、冬に学習されたニューラルネットワークを用いる場合に比べて好ましい。夏は太陽高度が高い状態から低い状態まで含むが、冬は夏の高い太陽高度の状態を含まないからである。
【0034】
本発明の第12の態様による路面状態判別装置は、前記第1乃至第11のいずれかの態様において、前記所定領域付近に車両が存在するか否かを検出する車両検出手段と、該車両検出手段により前記所定領域付近に車両が存在すると検出された場合に、路面状態の判別を中止するものである。
【0035】
この第12の態様によれば、車両の存在による誤った路面状態の判別を回避することができ、好ましい。
【0036】
本発明の第13の態様による路面状態判別装置は、前記第12の態様において、前記車両検出手段は、前記撮像手段により得られた画像に基づいて、前記所定領域付近に車両が存在するか否かを判定する手段を含むものである。
【0037】
前記第12の態様では、前記車両検出手段として、周知の光学式車両検知器などのセンサを用いてもよいが、前記第13の態様のように、撮像手段により得られた画像に基づいて車両の存在の有無を判定すれば、特別のセンサが不要となり、好ましい。
【0038】
本発明の第14の態様による路面状態判別装置は、前記第1乃至第13のいずれかの態様において、前記撮像手段の視界が所望の程度に確保されているか否かを検出する視界検出手段を備え、該視界検出手段により前記視界が前記所望の程度に確保されていないと検出された場合に、路面状態の判別を中止するものである。
【0039】
この第14の態様によれば、霧や豪雨や降雪等により視界が確保されていないことによる路面状態の判別を回避することができ、好ましい。
【0040】
本発明の第15の態様による路面状態判別装置は、前記第14の態様において、前記視界検出手段は、前記撮像手段により得られた画像に基づいて、前記撮像手段の視界が所望の程度に確保されているか否かを判定する手段を含むものである。
【0041】
前記第14の態様では、前記視界検出手段として、周知の視程計などのセンサを用いてもよいが、前記第15の態様のように、撮像手段により得られた画像に基づいて視界を判定すれば、特別のセンサが不要となり、好ましい。
【0042】
本発明の第16の態様による路面状態判別装置は、前記第1乃至第15のいずれかの態様において、路面温度を検出する路面温度検出手段と、前記水分有無判別手段により路面上に水分があると判定され、かつ、前記路面温度検出手段により検出された路面温度が所定温度より高い場合に、路面が湿潤状態であると判別する手段と、を備えたものである。
【0043】
この第16の態様によれば、路面状態として、路面上の水分の有無(すなわち、路面が乾燥状態であるか否か)だけでなく、路面が湿潤状態(凍結や積雪でない状態の水が存在する状態)であるか、それとも、凍結状態及び積雪状態のいずれかの状態であるか、も判別することができ、より細かい路面状態の判別が可能となり、好ましい。
【0044】
本発明の第17の態様による路面状態判別装置は、前記第16の態様において、路面上の積雪の有無を検出する積雪検出手段と、前記水分有無判別手段により路面上に水分があると判定され、前記路面温度検出手段により検出された路面温度が所定温度以下であり、かつ、前記積雪検出手段により路面上の積雪が存在しないと検出された場合に、路面が凍結状態であると判別する手段と、前記水分有無判別手段により路面上に水分があると判定され、前記路面温度検出手段により検出された路面温度が所定温度以下であり、かつ、前記積雪検出手段により路面上の積雪が存在すると検出された場合に、路面が積雪状態であると判別する手段と、を備えたものである。
【0045】
この第17の態様によれば、路面が凍結状態であるか積雪状態であるかも判別することができ、より細かい路面状態の判別が可能となり、好ましい。
【0046】
本発明の第18の態様による路面状態判別装置は、前記第17の態様において、前記積雪検出手段は、前記撮像手段により得られた画像に基づいて、路面上の積雪の有無を判定する手段を含むものである。
【0047】
前記第17の態様では、前記積雪検出手段として、周知の積雪深計(例えば、超音波で上面の高さを計測する計測器)などのセンサを用いてもよいが、前記第18の態様のように、撮像手段により得られた画像に基づいて積雪を判定すれば、特別のセンサが不要となり、好ましい。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による路面状態判別装置について、図面を参照して説明する。
【0049】
[第1の実施の形態]
【0050】
図1は、本発明の第1の実施の形態による路面状態判別装置を示す概略ブロック図である。
【0051】
本実施の形態による路面状態判別装置は、図1に示すように、フルカラー画像を撮像する撮像手段としてのテレビカメラ1と、テレビカメラ1からの画像信号に対してA/D変換及び必要に応じて信号形式の変換を行う画像信号変換部2と、画像信号変換部2により変換された画像(画像信号)を記憶する画像メモリ3と、路面温度を検出する路面温度検出手段としての放射温度計等の路面温度計4と、画像メモリ3からの画像に対して後述する処理を行うとともに路面温度計4からの信号に基づく処理を行って、判別結果としての路面状態を出力する処理部5と、を備えている。なお、図面には示していないが、処理部5は、後述する動作を実現するように、例えば、マイクロコンピュータ及び他の電子回路等で構成されている。
【0052】
本実施の形態では、画像信号変換部2は、処理部5からの指令に応じて、後述する水分有無判別用路面領域に相当する画像領域R1(図3、図9参照)についてR(赤色),G(緑色),B(青色)及びY(輝度)の画像を得るとともに、後述する視界検出用領域に相当する画像領域R2(図9参照)についてR,G,Bの画像を得るようになっており、これらの画像が画像メモリ3に取り込まれる。なお、本実施の形態では、後述する積雪検出用領域に相当する画像領域R3は画像領域1に含まれているので、画像信号変換部2は、画像領域R3についてR,G,Bの画像を得ることは行わないが、画像領域3が画像領域1に含まれない場合は、画像信号変換部2が領域R3についてR,G,Bの画像を得るようにすればよい。
【0053】
図2は、テレビカメラ1により撮像された画像の実例を示す概略図である。図2において、11は道路の一方側の車線の像、12はセンターラインの像、13は他方側の本線車線の像、14は他方側の登坂車線の像、15はトンネルの像、16は登坂車線の終了に伴って本線車線へ誘導するための矢印の像である。図2では、街路灯などの像は省略している。
【0054】
図面には示していないが、テレビカメラ1は、路面の所定領域を含む領域の画像を撮像するべく、例えば図2に示す画像を撮像するように、支柱やアーム等を用いて道路上方又は路側上方に設置され、路面を俯瞰するように設置されている。また、図面には示していないが、路面温度計4は、画像領域R1に相当する路面領域付近の温度を計測するように、支柱等に取り付けられている。
【0055】
図3は、実際の水分有無判別用路面領域に相当する撮像画像上の画像領域R1の設定例を示している。この例では、領域R1は、実際の路面上の車線幅×150m程度の領域に相当している。このように領域R1に相当する実際の路面領域を広範囲に設定すると、道路パトロール員の目視と合致した判別結果が得られ、冬季等における道路管理の有効性が期待できる。もっとも、領域R1に相当する実際の領域の大きさはこの例に何ら限定されるものではない。
【0056】
なお、画像領域R1に相当する路面領域の少なくとも一部は、図示しない街路灯等により照明されるようになっている。
【0057】
ここで、図3中の画像上のA,B,C点に相当する実際の路面上の点からテレビカメラ1のレンズに入射する光の様子について、下記の(1)〜(6)に場合分けして考察する。図4乃至図6は、各場合におけるこの光の様子を示す説明図である。
【0058】
(1)昼間曇天時
昼間曇天時は、太陽は雲に隠れ、光源としては面光源となる。したがって、図3に示すA,B,C点に相当する点における入射光の強度は同一と考えられ、その反射光の強度も同一と考えられる。
【0059】
また、テレビカメラ1のレンズに入射される路面からの反射光は、図4に示すように、画像領域R1に相当する路上領域内の各々の路面上ポイントの正反射光が最も強いと考えられる。
【0060】
つまり、テレビカメラ1は、路面の正反射光の強さを計測していることになる。この正反射光の強さは、路面の光沢を表していると考えられる。
【0061】
アスファルト路面は、拡散面であるので太陽光(ここでは、昼間曇天時であるので、雲からの光)における路面での反射光の配光特性は、図5に示すようになる。画像領域R1に相当する路上領域内のアスファルトは一様な特性であると仮定すると、反射光の強度も一様であると考えられる。
【0062】
(2)昼間雨天時(昼間における日照のない通常の雨天時)
昼間雨天時は、昼間曇天時と同様に、画像領域R1に相当する路面領域内の入射光の強度は同一と考えられる。
【0063】
アスファルト路面は、乾燥時は拡散面であるが、路面上に水分(水、氷又は積雪)が存在する時は、半光沢面となり太陽光(雲からの光)における路面での反射光の配光特性は図6に示すようになる。昼間雨天時の正反射光の強度は、昼間曇天時より強くなる。この状態は、昼間曇天時で路面が濡れている時も同じである。
【0064】
また、アスファルト路面は、見た目には平らに見えるが実際は凸凹している。そのため、路面が濡れている時は、正反射光にムラが生じ、画像領域R1に相当する路面領域内の各々の路面上ポイントの正反射光強度は異なる。この様子を図7に示している。
【0065】
(3)昼間晴天時
昼間晴天時は、雲が存在しない状態で太陽光が直接、路面に降り注ぐ。地球と太陽との距離が太陽の直径より十分に長いので理論上は太陽は点光源であるが、路面の一部分に照射されているのではなく、広範囲の地域に照射されている。また、青空は青い面光源として考えられ、実際には、正反射光の強度は昼間曇天時よりも強いが、路面での反射光の配光特性は昼間曇天時と似ていると思われる。
【0066】
(4)昼間天気雨時(昼間において日照のある雨天時)
昼間天気雨時は、昼間雨天時と同じであると考えられる。しかし、路面に太陽光が映り込むことが考えられる。この場合は、一部分の路面の正反射光が強くなり、正反射光のムラも強調される。
【0067】
(5)夜間晴天時及び夜間曇天時
夜間は、人工光が必要で、晴天時及び曇天時とも、路面が拡散面であるため昼間と同様に正反射光は弱い。また、路面に人工光が照射されている部分とそうでない部分では、反射光のムラは存在するが昼間における路面上に水分が存在する時に比べてかなり少ない。
【0068】
(6)夜間雨天時
夜間雨天時は、路面が半光沢状態になり、正反射光が強くなる。また、路面に人工光が照射されている部分とそうでない部分とでは、明暗がはっきりしており、正反射光のムラが顕著に現れる。
【0069】
以上の(1)〜(6)のことから、路面上に水分が存在する場合には、昼間および夜間において反射光が強くなる一方、路面上に水分が存在しない場合には、昼間および夜間において反射光が弱い。また、路面上に水分が存在する場合には、昼間および夜間において反射光のムラが多い一方、路面上に水分が存在しない場合には、昼間および夜間において反射光のムラが少ない。したがって、路上の水分の有無を判別するためには、自然光・人工光による路面での正反射光の強さ(路面の光沢の強さ)と正反射光のムラ(路面の光沢のムラ)を特徴量として捉えれば良いことが判明した。そこで、本実施の形態では、後述する図8中のステップS5で光沢の強さを数値化し、図8中のステップS6で光沢のムラを数値化している。
【0070】
次に、処理部5の動作について、図8を参照して説明する。図8は、本実施の形態による路面状態判別装置の主に処理部5の動作の一例を示す概略フローチャートである。
【0071】
図8中のステップS1は、本装置の設置時にのみ行われる初期設定処理である。まず、ステップS1において、本装置の設置時に、テレビカメラ1の俯角やテレビカメラ1のレンズの焦点距離やテレビカメラ1の設置高さやテレビカメラ1の画角などの計測条件を設定し、更に、水分有無判別用路面領域に相当する画像領域R1(図3、図9参照)、視界検出用領域に相当する画像領域R2(図9参照)及び積雪検出用領域に相当する画像領域R3(図9参照)を設定する。これらの設定情報は、処理部5の内部メモリ(図示せず)内に格納される。
【0072】
ステップS1の初期設定処理の後、ステップS2〜S13の本処理が行われる。テレビカメラ1からは、順次新たな画像が得られるが、所定時間間隔(例えば、約100mS)で最新に得られた画像が画像メモリ3に順次上書きされることで、取り込まれる。ただし、領域R1のY画像については、約100mS間隔で得られた最新の2枚の画像が前記画像メモリ3に保持される。
【0073】
まず、例えば約100mS間隔で、テレビカメラ1から得られた新たな画像について、領域R1のR,G,B,Y画像、領域R2のR,G,B画像及び領域3のR,G,B画像が、処理部5によって画像メモリ3内に取り込まれる(ステップS2)。なお、以下の説明では、R,G,B,Yの階調は256階調であり、R,G,B,Yの値は、0〜255をとり得るものとする。
【0074】
次に、処理部3は、ステップS2で最新に取り込まれた領域2のR,G,B画像に基づいて、テレビカメラ1の視界が確保されているか否かを判定する(ステップS3)。このステップS3の処理について、以下に説明する。
【0075】
霧や豪雨や降雪等によりテレビカメラ1の視界が確保されなくなると、テレビカメラ1から領域R1に相当する路面領域が見えなくなり、正しい路面状態の判別が不能となる。ステップS1において、視界が確保されている通常状態で例えば黒色又はこれに近い色をなす領域を領域2(図9参照)として設定しておくと、領域2は、テレビカメラ1の視界が低下していくに従って灰色に近づき、テレビカメラ1の視界が確保されなくなると灰色となる。
【0076】
この現象に着目して、ステップS3において、処理部5は、まず、領域2の画像の画素のうち、Rの濃淡値(以下、単に「R値」という。)、Gの濃淡値(以下、単に「G値」という。)及びBの濃淡値(以下、単に「B値」という。)のいずれもが100〜120である画素(すなわち、灰色又はこれに近い色の画素。以下、単に「灰色画素」と呼ぶ。)の数を数える。灰色画素の数が0個の場合は視界が良好であり、その数が増えるほど視界が低下していることを意味する。次に、処理部5は、領域2の全画素数に対する灰色画素数の割合を算出し、その割合が所定の割合(例えば、70%)以上であれば、テレビカメラ1の視界が確保されていないと判定し、所定の割合未満であれば、テレビカメラ1の視界が確保されていると判定する。
【0077】
このように、本実施の形態では、テレビカメラ1で撮像された画像に基づいて、テレビカメラ1の視界が確保されているか否かを判定することで、テレビカメラ1の視界が確保されているか否かの検出を行っている。しかしながら、本発明では、周知の視程計などのセンサを用い、その信号に基づいて、視界が確保されているか否かを処理部5がステップS3で判定するようにしてもよい。
【0078】
ステップS3で視程が確保されていないと判定されると、ステップS4以降の処理が中止されて路面状態の判別が中止され、ステップS2へ戻る。このとき、処理部5は、最後に出力した路面状態の判別結果をそのまま出力し続ける。その代わりに、処理部5は、路面状態の判別が不能である旨を出力してもよい。
【0079】
誤った路面状態の判別を回避するために、ステップS3を行うことが好ましいが、本発明ではステップS3を必ずしも行わなくてもよい。
【0080】
ステップS3で視程が確保されていると判定されると、処理部5は、ステップS2で最新に取り込まれた領域R1のY画像及び前回に取り込まれた領域R1の画像の、2枚のY画像に基づいて、領域R1に相当する路面領域に車両が存在するか否かを判定する(ステップS4)。このステップS4の処理について、以下に説明する。
【0081】
前記2枚の領域R1のY画像の撮像タイミングは、先の説明からわかるように、例えば100msずれている。車両が時速50kmで走行していると仮定すると100ms後に約1.4m移動する。前記2枚の領域R1のY画像の差分画像を得ると、前記2枚の画像のいずれかの画像に走行車両が存在すれば、前記差分画像にはエッジ等の部分が現れる一方、前記2枚の領域R1のY画像のいずれにも走行車両が存在しなければ、前記差分画像にはエッジ等の部分は現れない。
【0082】
この現象に着目して、ステップS4において、処理部5は、まず、前記2枚の領域R1のY画像の差分画像を得る。次に、処理部5は、この差分画像の分散値を算出し、この分散値が所定値以上であれば、領域R1に相当する路面領域に車両が存在すると判定し、この分散値が所定値未満であれば、領域R1に相当する路面領域に車両が存在しないと判定する。
【0083】
このように、本実施の形態では、テレビカメラ1で撮像された画像に基づいて、領域R1に相当する路面領域に車両が存在するか否かを判定することで、領域R1に相当する路面領域に車両が存在するか否かの検出を行っている。しかしながら、本発明では、周知の車両感知器などのセンサを用い、その信号に基づいて、領域R1に相当する路面領域に車両が存在するか否かを処理部5がステップS4で判定するようにしてもよい。
【0084】
ステップS4で領域R1に相当する路面領域に車両が存在すると判定されると、ステップS5以降の処理が中止されて路面状態の判別が中止され、ステップS2へ戻る。このとき、処理部5は、最後に出力した路面状態の判別結果をそのまま出力し続ける。その代わりに、処理部5は、路面状態の判別が不能である旨を出力してもよい。
【0085】
誤った路面状態の判別を回避するために、ステップS4を行うことが好ましいが、本発明ではステップS4を必ずしも行わなくてもよい。
【0086】
ステップS4で領域R1に相当する路面領域に車両が存在しないと判定されると、ステップS5へ移行する。
【0087】
ステップS5において、処理部5は、R,G,Bをそれぞれ空間の異なる次元として、ステップS2で最新に取り込まれた領域R1のR,G,B画像の各画素を当該画素のR値、G値及びB値に従って前記空間(RGB三次元空間)内にプロットしたときの、領域R1の各画素の前記空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る。
【0088】
ここで、RGB三次元空間における領域R1の各画素の分布状態の代表例を、図10及び図11に示す。図10は領域R1に相当する路面領域に水分が存在しない場合(乾燥状態)の各画素の分布状態を示し、図11は領域R1に相当する路面領域に水分が存在する場合の各画素の分布状態を示している。この分布の広がり状態は路面の光沢の強さを示し、この分布が広がる(長い)ほど光沢が強く、この分布が広がらない(短い)ほど光沢が弱い。
【0089】
このように、本実施の形態では、RGB三次元空間における領域R1の各画素の分布状態によって路面の光沢の強さを捉え、路面の光沢の強さを捉えるためにR,G,Bの3値を用いている。その理由を以下に説明する。アスファルト路面やコンクリート路面の色は、黒色から白色に至る無彩色であるが、経年変化によって汚れが付着し、少しであるが茶色を帯びてくる。また、路面は、完全拡散面ではないので乾燥状態であっても自然光による反射が存在し、自然光の色が見えることになる。例えば、夕日や朝日などオレンジを帯びることがある。夜間は、街路灯を用いるので低圧および高圧ナトリューム灯のオレンジ色が路面に写し出される。最近では、路面とタイヤとの摩擦を増やすために茶色の帯状の段差を設けた路面が存在する。以上のことから、路面には多少ではあるが無彩色以外の有彩色が存在する。そのため、R,G,B値を総合的に取り扱った方が、単に輝度で取り扱う場合に比べて、より精度良く光沢の強さを捉えることができ、ひいては、より高い精度で路面状態を判別することができるためである。同様の理由から、本実施の形態では、後述するようにステップS6で、Y画像の分散値ではなく、R画像の分散値、G画像の分散値及びB画像の分散値によって、路面の光沢のムラを捉えている。
【0090】
ステップS5において、RGB三次元空間における領域R1の各画素の分布の広がり状態を示す指標を、具体的にいかに得るかについては、後に詳述する。
【0091】
ステップS5の後、処理部5は、ステップS2で最新に取り込まれた領域R1のR,G,B画像の各々について、下記の数1〜数3に従って分散値VR,VG,VBを得る(ステップS6)。VRは領域R1のR画像の分散値、VGは領域R1のG画像の分散値、VBは領域R1のB画像の分散値、Riは領域R1のi番目の画素のR値、Giは領域R1のi番目の画素のG値、Biは領域R1のi番目の画素のB値、R*は領域R1の全画素のR値の平均値、G*は領域R1の全画素のG値の平均値、B*は領域R1の全画素のB値の平均値、nは領域R1の画素数を示す。これらの分散値VR,VG,VBは路面の光沢のムラを示し、これらの分散値が大きいほど光沢のムラが大きく、これらの分散値が小さいほど光沢のムラが小さい。
【0092】
【数1】
【0093】
【数2】
【0094】
【数3】
【0095】
ステップS6の後、処理部5は、ステップS5で得た指標及びステップS6で得た分散値VR,VG,VBに基づいて、領域R1に相当する路面領域の水分の有無を判別する(ステップS7)。
【0096】
ここで、ステップS5〜S7を示す機能ブロック図を、図12に示す。図12を参照して、ステップS5〜S7の内容について具体的に説明する。なお、図12に示す機能は、本実施の形態ではソフトウエアにより実現されるが、ハードウエアにより実現されるように構成できることは、言うまでもない。
【0097】
図12において、21はステップS5の処理を行う指標演算部、22はステップS6の処理を行う分散値演算部、23はステップS7の処理を行う水分有無判別部を構成するバックプロパゲーション型ニューラルネットワークである。
【0098】
指標演算部21は、R,G,Bにそれぞれ対応する入力層ユニットと所定数(本実施の形態では4個)の競合層ユニットとを有し、領域R1の各画素のR値,B値,C値が、訓練パターンとして、対応する入力層ユニットにそれぞれ入力されて、自己組織化を行う自己組織化ニューラルネットワークと、自己組織化後の前記所定数の競合層ユニットのうちの少なくとも2つの競合層ユニット間の距離(本実施の形態では、4個の競合層ユニットの隣接するユニット間の距離r1,r2,r3)を得るユニット間距離演算部25と、を有している。図12において、31は自己組織化ニューラルネットワーク24の入力層、32は自己組織化ニューラルネットワーク24の競合層を示している。
【0099】
本実施の形態では、図12に示すように、ステップS5の処理を行うために自己組織化ニューラルネットワーク24を用いている。その理由を以下に説明する。自然環境は、複雑であり規則性は存在しない。そのため、路面に照射される昼間の自然光の強さは、薄暮時や日中では大きく異なり、月や季節によっても大きく異なる。1年を通して見た場合、複雑である。路面の反射光の強さは複雑な状態であることが言えるため、図10及び図11に示したようなR,G,B値の分布状態は実際には様々な形状をとる。したがって、多変量解析法などを用いて分布形状を一意的に決めることが困難である。そのため、領域R1の画像を格納する度に、非線形な分布状態の形状を求める必要がある。そこで、本実施の形態では、図10及び図11に示したようなR,G,B値の分布状態から形状を近似するために、自己組織化ニューラルネットワーク24を用いている。
【0100】
本実施の形態では、自己組織化ニューラルネットワーク24として、コホーネン(kohonen)の自己組織化マップを用いている。
【0101】
まず、コホーネンの自己組織化ニューラルネットワークについて、一般的に説明する。このネットワークは自己組織化を特徴として教師なし学習により位相マッピングを行うものである。
【0102】
図13に、コホーネンの自己組織化ニューラルネットワークの基本構造の一例を模式的に示す。このニューラルネットワークは、2層ネットワークであり、入力層(第1層)と競合層(第2層)とを有している。図13の例では、競合層は2次元として構成されている。図13には示していないが、入力層と競合層とは完全結合しており、各入力層ユニットは全ての競合層ユニットと結合している。入力層へ訓練パターンとして入力される入力パターンEは、ベクトル表記され、下記の数4によって表される。nは入力層ユニットの数である。図13では、この入力から競合層の単一のユニットへの結合を示している。入力層から競合層への結合の重み(結合係数)は、ここのユニット間の重みを要素とするベクトル表記され、下記の数5で表される。ただし、iは競合層のユニットを表す(これらの重みはユニットiへ行く。競合層の次元に拘わらず、競合層ユニットは単一の数で識別する。)。
【0103】
【数4】
E=[e1,e2,e3,…,en]
【0104】
【数5】
Ui=[ui1,ui2,…,uin]
【0105】
このニューラルネットワークの自己組織化(教師なし学習、訓練)の際には、手順1として、Uiとして任意の初期値を与える。
【0106】
次に、手順2として、Eとして訓練用の入力パターンをEとして与え、各競合層ユニットiのうちから勝者ユニットを決定する。このとき、各競合層ユニットiに対して一致値が算出される。この一致値として例えばユークリッド距離が用いられる。ユニットiに対する一致値は、‖E−Ui‖であり、次の数6で算出される。
【0107】
【数6】
【0108】
各競合層ユニットiのうち、一致値‖E−Ui‖が最も低い(最も一致する)競合層ユニットが勝者ユニットとして決定される。複数の競合層ユニットが同じ一致値を持つ場合には、例えば、より小さな識別値iを持つユニットが勝者ユニットとして決定される。
【0109】
次に、手順3として、勝者ユニットから距離dで定まる近傍の競合層ユニット(勝利ユニットを含む)に対する重みが更新される。この更新方程式は下記の数7〜数9で示す通りである。
【0110】
【数7】
Δuij=α(ej−uij):ユニットiが前記近傍にある場合
【0111】
【数8】
Δuij=0:それ以外の場合
【0112】
【数9】
【0113】
数7においてαは学習率であり、学習率αは初期値として比較的大きな値を持ち、学習過程で何回もの繰り返しの間に減少する。αの初期値は適当に選択され、α0で表される。学習率αは、例えば下記の数10に示すように設定される。数10において、tは現在の訓練回数であり、Tは行われるべき訓練の全回数である。
【0114】
【数10】
【0115】
勝者ユニットの近傍を決定する距離dは、例えば、下記の数11に従って設定される。数11において、d0は距離dの初期値、tは現在の訓練回数であり、Tは行われるべき訓練の全回数である。
【0116】
【数11】
【0117】
以上説明した手順2,3を、全ての訓練用の入力データについて行う。これが1回の学習(訓練)である。この学習を全回数Tまで繰り返し、全ての学習(自己組織化)が終了する。
【0118】
今、入力層ユニットの数nが2で、競合層が2次元であるものとして、訓練用の入力パターン(e1,e2)として、図14に示す一様に分布した入力データを用いて前述した自己組織化を行うものとする。図14中の小さい黒点が、個々の入力データを示している。すると、前述した自己組織化後に、各競合層ユニットは、図15に示すように競合層にマッピングされる。図15中の黒点が競合層ユニットを示している。図14及び図15から、自己組織化後の競合層ユニットのマッピング位置が入力データ(訓練パターン)の分布を反映したものとなることがわかる。
【0119】
また、入力層ユニットの数nが2で、競合層が2次元であるものとして、訓練用の入力パターン(e1,e2)として、図16に示すように部分的に密に分布した入力データを用いて前述した自己組織化を行うものとする。図16中の小さい黒点が、個々の入力データを示している。すると、前述した自己組織化後に、各競合層ユニットは、図17に示すように競合層にマッピングされる。図17中の黒点が競合層ユニットを示している。図16及び図17からも、自己組織化後の競合層ユニットのマッピング位置が入力データ(訓練パターン)の分布を反映したものとなることがわかる。
【0120】
このように、自己組織化ニューラルネットワークは、自己組織化後の競合層ユニットのマッピング位置が入力データ(訓練パターン)の分布を反映したものとなるという性質がある。本実施の形態では、この性質を利用して、図10や図11に示すような分布状態を数値化する。
【0121】
今、入力層ユニットの数nが3、競合層が3次元、競合層ユニットの数が4であり、訓練用の入力パターン(e1,e2,e3)として、e1をR値、e2をG値、e3をB値とした入力パターンを用い、図18及び図19中の小黒点で示される画素を個々の入力データとして入力することで、前述した自己組織化を行うものとする。図18は、自己組織化前の初期状態の4個の競合層ユニットのマッピング位置を合わせて示している。図19は、自己組織化後の状態の4個の競合層ユニットのマッピング位置を合わせて示している。ただし、図18及び図19では、競合層ユニットがマッピングされる空間の各次元をR,G,Bに合わせかつそのスケールも一致させている。図18に示すように初期状態で空間の中央付近に密に位置していた競合層ユニットが、自己組織化後には、入力データ(ここでは、RGB三次元空間における各画素)の分布状態を反映して、図19に示すように広がる。したがって、自己組織化後の4個の競合層ユニットの互いに隣接するもの同士の距離r1,r2,r3は、RGB三次元空間における各画素の分布の広がり状態を示す指標となり得ることがわかる。
【0122】
本実施の形態では、図12中の自己組織化ニューラルネットワーク24として、入力層ユニットの数nが3、競合層32が3次元、競合層ユニットの数が4の、コホーネンの自己組織化マップが用いられている。そして、このニューラルネットワーク24では、訓練用の入力パターン(e1,e2,e3)として、e1をR値、e2をG値、e3をB値とした入力パターンが用いられ、ステップS2で最新に取り込まれた領域R1の画像の個々の画素のR値,G値,B値が訓練パターンの個々の入力データとして、入力層31に入力され、これにより前述した自己組織化(教師なし学習)が行われるようになっている。
【0123】
今、自己組織化ニューラルネットワーク24の入力層31に、図10に示すようなRGB三次元空間における分布をなす各画素のR値,G値,B値が訓練パターンの個々の入力データとして入力され、自己組織化が行われると、自己組織化後の4個の競合層ユニットは、画素の分布を反映して図20に示すようにマッピングされる。また、図11に示すようなRGB三次元空間における分布をなす各画素のR値,G値,B値が訓練パターンの個々の入力データとして入力され、自己組織化が行われると、自己組織化後の4個の競合層ユニットは、画素の分布を反映して図20に示すようにマッピングされる。なお、図20及び図21においても、図19の場合と同様に、競合層ユニットがマッピングされる空間の各次元をR,G,Bに合わせかつそのスケールも一致させている。なお、図20及び図21から、領域R1に相当する路面領域に水分が存在しない場合(乾燥状態)には、自己組織化後の4個の競合層ユニットの互いに隣接するもの同士の距離r1,r2,r3は短くなる一方、領域R1に相当する路面領域に水分が存在する場合には、距離r1,r2,r3が長くなることがわかる。
【0124】
本実施の形態では、自己組織化ニューラルネットワーク24は、このような自己組織化後の4つの競合層ユニットのマッピング位置を、ユニット間距離演算部25に出力する。なお、競合層ユニットのマッピング位置は、当該競合層ユニットに対する重み及び競合層の次元等により定まる。そして、ユニット間距離演算部25は、前記距離r1,r2,r3を算出する。
【0125】
本実施の形態では、このように、前記距離r1,r2,r3が、RGB三次元空間における領域R1の各画素の分布の広がり状態を示す指標として用いられている。しかしながら、本発明では、例えば、前記4個の競合層ユニットのうちの両端の競合層ユニット間の距離を算出して、これを前記指標として用いてもよい。また、競合層ユニットの数も4個に限定されるものではない。さらに、競合層24は、必ずしも3次元に限定されるものではなく、2次元又は1次元でもよいし、他の次元数でもよい。さらにまた、自己組織化ニューラルネットワーク24は、コホーネンの自己組織化マップに限定されるものではなく、例えば、コホーネンの自己組織化マップを適宜改変したような自己組織化ニューラルネットワークを用いてもよい。
【0126】
図12に示す分散値演算部22は、前述したステップS6で説明した動作を行うので、その重複説明は省略する。
【0127】
図12に示すバックプロパゲーション型ニューラルネットワーク23は、指標演算部21からの出力される距離r1,r2,r3及び分散値演算部22から出力されるR,G,Bの分散値VR,VG,VBが入力層41に入力されて、これらの入力に応じた領域R1の路面領域の水分の有無を示す出力を、出力層44から出力する。ニューラルネットワーク23は、周知のバックプロパゲーション法により、実際の種々の状況で得られた指標演算部21からの出力される距離r1,r2,r3及び分散値演算部22から出力されるR,G,Bの分散値VR,VG,VBに対して目視等により調べた実際の水分の有無の情報を、教師データとして用いることで、予め学習されたものである。
【0128】
本実施の形態では、このネットワーク23は、入力層41及び出力層44の他に、2つの中間層42,43を有し、入力層41は6個のユニットを持ち、中間層42は30個のユニットを持ち、中間層43は15個のユニットを持ち、出力層44は3個のユニットを持っている。例えば、出力層44の3個のユニットの値が1,0,1の場合に水分があることを示し、1,1,0の場合に水分がないことを示すようになっている。もっとも、本発明では、バックプロパゲーション型ニューラルネットワークの構造自体はこのような構造に限定されるものではなく、また、ニューラルネットワーク23に代えて、バックプロパゲーション型ニューラルネットワーク以外の階層型ニューラルネットワークや、教師あり学習により予め学習されたニューラルネットワークを用いてもよい。
【0129】
自然環境は、複雑であり規則性は存在しない。そのため、路面に照射される昼間の自然光の強さは、薄暮時や日中では大きく異なり、月や季節によっても大きく異なる。1年を通して見た場合、複雑である。路面の反射光の強さやムラも通年では複雑な状態であることが言える。つまり、状態が非線形であることが言える。このことから、指標演算部21からの出力される距離r1,r2,r3及び分散値演算部22から出力されるR,G,Bの分散値VR,VG,VBは、複雑に分布しており、多変量解析法等を用いて線形分離することは困難である。そこで、本実施の形態では、バックプロパゲーション型ニューラルネットワーク23が用いられているのである。
【0130】
再び図8を参照すると、ステップS7で水分が無いと判別されると、処理部5は、判別結果として、路面状態が乾燥状態である旨の信号を出力し(ステップS13)、ステップS2へ戻る。
【0131】
ステップS7で水分があると判別されると、処理部5は、路面温度計4からの信号に基づいて、路面温度が所定温度(例えば、1℃)以下であるか否かを判別する(ステップS8)。所定温度より高ければ、処理部5は、路面状態が湿潤状態である旨の信号を出力し(ステップS12)、ステップS2へ戻る。
【0132】
ステップS8で所定温度以下であると判別されると、処理部5は、ステップS2で最新に取り込まれた領域3(図9参照)のR,G,B画像に基づいて、路面上に積雪が存在するか否か判定する(ステップS9)。積雪があれば領域3が白くなることから、具体的には、処理部5は、領域R3の画素のうち、R値,G値及びB値のいずれもが所定値(例えば、240)以上である画素(白色又はこれに近い色)の画素(以下、単に白色画素」と呼ぶ。)の数を数える。そして、処理部5は、全画素数に対する白色画素の割合を算出し、その割合が所定の割合(例えば、80%)以上であれば積雪状態であると判別し、前記所定の割合未満であれば凍結状態であると判別する。
【0133】
このように、本実施の形態では、テレビカメラ1で撮像された画像に基づいて、路面上に積雪が存在するか否かを判定することで、積雪の有無の検出を行っている。しかしながら、本発明では、周知の積雪深計などのセンサを用い、その信号に基づいて、積雪の有無を処理部5がステップS9で判定するようにしてもよい。
【0134】
そして、処理部5は、ステップS9で路面状態が凍結状態であると判別すると、その旨の信号を出力し(ステップS11)、ステップS2へ戻る。一方、処理部5は、ステップS9で路面状態が積雪状態であると判別すると、その旨の信号を出力し(ステップS10)、ステップS2へ戻る。
【0135】
本実施の形態によれば、路面の光沢の強さ及び路面の光沢のムラを特徴量として用いることと、水分有無の判別に教師あり学習により予め学習されたバックプロパゲーション型ニューラルネットワーク24を用いること、の両方が相俟って、高い精度で路面状態を判別することができる。
【0136】
なお、処理部5は、ステップS8,S9の処理を行わずに、ステップS7で水分があると判定された場合には、その旨の信号を出力し、ステップS2へ戻ってもよい。本発明では、このように路面状態が乾燥状態であるか否かを判別するだけでもよい。
【0137】
[第2の実施の形態]
【0138】
図22は、本発明の第2の実施の形態による路面状態判別装置の要部を示す機能ブロック図であり、図12に対応している。図22において、図12中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0139】
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、前記第1の実施の形態では単一のバックプロパゲーション型ニューラルネットワーク23が用いられているのに対し、本実施の形態では、4つのバックプロパゲーション型23a〜23dと、これらの入出力を切り替え指令に応答してそれぞれ切り替える切り替え部51,52を備えている点のみである。
【0140】
本実施の形態では、4つのバックプロパゲーション型ニューラルネットワーク23a〜23dは、春夏秋冬の4つの季節ごとに、実際の種々の状況で得られた指標演算部21からの出力される距離r1,r2,r3及び分散値演算部22から出力されるR,G,Bの分散値VR,VG,VBに対して目視等により調べた実際の水分の有無の情報を、教師データとして用いることで、予めそれぞれ学習されたものである。本実施の形態では、処理部5は、図8中のステップS7の際に、処理部5に内蔵された時計に基づいて現時点がいずれの季節であるかを判別し、4つのニューラルネットワーク23a〜23dのうち、当該季節に応じて学習されたものを選択的に用いて水分の有無を判別する。図22では、この切り替え機能を切り替え部51,52として示している。
【0141】
季節によって太陽高度等が比較的大きく変化するので、本実施の形態のように、季節ごとに学習されたニューラルネットワーク23a〜23dを現在の季節に応じて用いれば、より高い精度で路面状態を判別することができる。
【0142】
なお、本実施の形態では、季節ごとに学習させた水分有無判別用のニューラルネットワークを用意したが、他の条件ごとに学習させた水分有無判別用のニューラルネットワークを用意し、現在の条件に対応するニューラルネットワークを用いて水分の有無を判別するようにしてもよい。
【0143】
[第3の実施の形態]
【0144】
図23は、本発明の第3の実施の形態による路面状態判別装置の要部を示す機能ブロック図であり、図12に対応している。図23において、図12中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0145】
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、以下に説明する点のみである。
【0146】
輝度(Y)の一次元空間における領域R1の各画素の分布状態の代表例を、図24及び図25に示す。図24は領域R1に相当する路面領域に水分が存在しない場合(乾燥状態)の各画素の分布状態を示し、図25は領域R1に相当する路面領域に水分が存在する場合の各画素の分布状態を示している。この分布の広がり状態は路面の光沢の強さを示し、この一次元分布が広がる(長い)ほど光沢が強く、この一次元分布が広がらない(短い)ほど光沢が弱い。また、領域R1のY画像の分散値は、領域R1に相当する路面領域の光沢のムラを示している。本実施の形態では、これらのことを利用する。
【0147】
前記第1の実施の形態では、指標演算部21は、R,G,Bをそれぞれ空間の異なる次元として、ステップS2で最新に取り込まれた領域R1のR,G,B画像の各画素を当該画素のR値、G値及びB値に従って前記空間(RGB三次元空間)内にプロットしたときの、領域R1の各画素の前記空間内における分布の広がり状態を示す指標として、距離r1,r2,r3を得る。これに対し、本実施の形態では、指標演算部21は、輝度(Y)を一次元空間として、ステップS2で最新に取り込まれた領域R1のY画像の各画素を当該画素のY値(輝度の濃淡値)に従って前記一次元空間内にプロットしたときの、領域R1の各画素の前記一次元空間内における分布の広がり状態を示す指標として、距離r1’,r2’,r3’を得る。
【0148】
本実施の形態では、自己組織化ニューラルネットワーク24として、入力層ユニットの数nが1、競合層32が1次元、競合層ユニットの数が4の、コホーネンの自己組織化マップが用いられている。そして、このニューラルネットワーク24では、訓練用の入力パターン(e1)として、e1をY値した入力パターンが用いられ、ステップS2で最新に取り込まれた領域R1の画像の個々の画素のY値が訓練パターンの個々の入力データとして、入力層31に入力され、これにより前述した自己組織化(教師なし学習)が行われるようになっている。
【0149】
今、自己組織化ニューラルネットワーク24の入力層31に、図24に示すようなY一次元空間における分布をなす各画素のY値が訓練パターンの個々の入力データとして入力され、自己組織化が行われると、自己組織化後の4個の競合層ユニットは、画素の分布を反映して図26に示すようにマッピングされる。また、図25に示すようなY一次元空間における分布をなす各画素のY値が訓練パターンの個々の入力データとして入力され、自己組織化が行われると、自己組織化後の4個の競合層ユニットは、画素の分布を反映して図27に示すようにマッピングされる。なお、図26及び図27において、競合層ユニットがマッピングされる空間の次元をYに合わせかつそのスケールも一致させている。なお、図26及び図27から、領域R1に相当する路面領域に水分が存在しない場合(乾燥状態)には、自己組織化後の4個の競合層ユニットの互いに隣接するもの同士の距離r1’,r2’,r3’は短くなる一方、領域R1に相当する路面領域に水分が存在する場合には、距離r1’,r2’,r3’が長くなることがわかる。
【0150】
本実施の形態では、自己組織化ニューラルネットワーク24は、このような自己組織化後の4つの競合層ユニットのマッピング位置を、ユニット間距離演算部25に出力する。なお、競合層ユニットのマッピング位置は、当該競合層ユニットに対する重み及び競合層の次元等により定まる。そして、ユニット間距離演算部25は、前記距離r1’,r2’,r3’を算出する。
【0151】
本実施の形態では、分散値演算部22は、ステップS2で最新に取り込まれた領域R1のY画像の分散値VYを、下記の数12に従って得る。Yiは領域R1のi番目の画素のY値、Y*は領域R1の全画素のY値の平均値、nは領域R1の画素数を示す。これらの分散値VYは路面の光沢のムラを示し、これらの分散値が大きいほど光沢のムラが大きく、これらの分散値が小さいほど光沢のムラが小さい。
【0152】
【数12】
【0153】
本実施の形態では、バックプロパゲーション型ニューラルネットワーク23は、指標演算部21からの出力される距離r1’,r2’,r3’及び分散値演算部22から出力されるYの分散値VYが入力層41に入力されて、これらの入力に応じた領域R1の路面領域の水分の有無を示す出力を、出力層44から出力する。ニューラルネットワーク23は、周知のバックプロパゲーション法により、実際の種々の状況で得られた指標演算部21からの出力される距離r1’,r2’,r3’及び分散値演算部22から出力されるYの分散値VYに対して目視等により調べた実際の水分の有無の情報を、教師データとして用いることで、予め学習されたものである。なお、入力層41のユニット数は4個に変更されている。
【0154】
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。ただし、本実施の形態では、輝度を用いて光沢の強さや光沢のムラを捉えているので、前記第1の実施の形態に比べると、光沢の強さや光沢のムラを捉える精度がやや低下すると考えられる。しかしながら、本実施の形態では、前記第1の実施の形態に比べて処理が簡単となるという利点が得られる。
【0155】
[第4の実施の形態]
【0156】
図28は、本発明の第4の実施の形態による路面状態判別装置の要部を示す機能ブロック図であり、図12及び図22に対応している。図28において、図12及び図22中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0157】
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、分散値演算部22が第3の実施の形態の分散値演算部22と同じ構成に変更され、これに伴う変更がバックプロパゲーション型ニューラルネットワーク23に加えられている点のみである。なお、本実施の形態の指標演算部21は第1の実施の形態の指標演算部21と同一である。
【0158】
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0159】
[第5の実施の形態]
【0160】
図29は、本発明の第5の実施の形態による路面状態判別装置の要部を示す機能ブロック図であり、図12及び図22に対応している。図29において、図12及び図22中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0161】
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、指標演算部21が第3の実施の形態の指標演算部21と同じ構成に変更され、これに伴う変更がバックプロパゲーション型ニューラルネットワーク23に加えられている点のみである。なお、本実施の形態の分散値演算部22は第1の実施の形態の分散値演算部22と同一である。
【0162】
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0163】
【実施例】
前記第1の実施の形態による路面状態判別装置を実際に作製し、所定箇所に設置して、平成13年12月から平成14年3月の期間中に、路面状態の判別精度を検証した。この設置状態で得られる画像は、図3に示す通りであった。バックプロパゲーション型ニューラルネットワーク23の学習は、12月から2月に渡って行った。
【0164】
判別結果の検証は、期間中の1時間毎に収集した路面画像を凍結、積雪、湿潤、乾燥に分類し、その結果と設置した路面状態判別装置の出力と比較し目視判定を行った。凍結は、目視で判定することが困難であるため路面が湿潤状態であり路温が設定値以下(例えば1℃以下)の場合とした。
【0165】
期間中の1時間毎に収集した路面画像を目視で凍結、積雪、湿潤、乾燥の4状態に分別し、この結果を真値とした。
【0166】
自然環境下における路面状態の推移は独立して存在するものではなく、降雨、降雪、気温等の変化が影響して路面状態が変化するものであり、通常、凍結と圧雪、圧雪と湿潤、凍結と湿潤、湿潤と乾燥などの混在状態は頻繁に発生する。
【0167】
また、本装置を設置した場所は、峠道であり気象状態が変化し易く、トンネルの出口から先が長い下り坂になっていることから凍結防止のための散水設備がある。そのため、降雪時は水が撒かれており雪が積もらないので積雪は検証対象外とした。
【0168】
精度検証は、平成13年12月後半から平成14年3月末日まで1704時間行った。各々の月における画像式と目視の路面状態判別時間を、図30に示す。平成13年度の検証結果を図31に示し、一日の路面状態出現図を図32に示す。
【0169】
図31に示すように収集した路面画像の目視判定結果と路面状態判別装置出力を検証した結果、精度は90%以上であった。この結果から、この路面状態判別装置は、冬季の道路管理に大いに役立つものと言える。
【0170】
しかし、図31に示されている路面状態判別時間は、画像式判別と目視判別とは、個々の月では異なっている。これは、バックプロパゲーション型ニューラルネットワーク23の学習における教師データの与え方が必ずしも十分ではなく、月毎の太陽高度の差が判定されたものと考えられる。よって、十分な学習を行えば、更に判別精度を高めることができる。なお、夜間の路面状態判別は、道路照明灯の人工光源を用いるので月毎の変化はない。
【0171】
以上、本発明の各実施の形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0172】
例えば、テレビカメラ1として既存の道路空間監視カメラを用い、管理センタ等に処理装置を設置して、、路線上に点在する道路空間監視カメラ画像を中央に伝送し、一カ所に集約した形で画像処理を行い、路面状態の判別を行うことも可能である。この場合、大幅なコスト削減が可能となる。
【0173】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高い精度で路面状態を判別することができる路面状態判別装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による路面状態判別装置を示す概略ブロック図である。
【図2】テレビカメラにより撮像された画像の実例を示す概略図である。
【図3】実際の水分有無判別用路面領域に相当する撮像画像上の画像領域の設定例を示す図である。
【図4】所定の状態の光の様子を示す説明図である。
【図5】他の状態の光の様子を示す説明図である。
【図6】更に他の状態の光の様子を示す説明図である。
【図7】更に他の状態の光の様子を示す説明図である。
【図8】本実施の形態の第1の実施の形態による路面状態判別装置の主に処理部の動作の一例を示す概略フローチャートである。
【図9】画像上の各領域の設定例を示す図である。
【図10】RGB三次元空間における各画素の分布状態の代表例を示す図である。
【図11】RGB三次元空間における各画素の分布状態の他の代表例を示す図である。
【図12】本実施の形態の第1の実施の形態による路面状態判別装置の要部を示す機能ブロック図である。
【図13】コホーネンの自己組織化ニューラルネットワークの基本構造の一例を示す図である。
【図14】入力層への入力データの分布の例を示す図である。
【図15】競合層ユニットの自己組織化後のマッピングの様子を示す図である。
【図16】入力層への入力データの分布の他の例を示す図である。
【図17】競合層ユニットの自己組織化後のマッピングの様子を示す他の図である。
【図18】入力層への入力データの分布と競合層ユニットの自己組織化前のマッピングの様子を示す図である。
【図19】入力層への入力データの分布と競合層ユニットの自己組織化後のマッピングの様子を示す図である。
【図20】入力層への入力データの分布と競合層ユニットの自己組織化後のマッピングの様子を示す他の図である。
【図21】入力層への入力データの分布と競合層ユニットの自己組織化後のマッピングの様子を示す更に他の図である。
【図22】本発明の第2の実施の形態による路面状態判別装置の要部を示す機能ブロック図である。
【図23】本発明の第3の実施の形態による路面状態判別装置の要部を示す機能ブロック図である。
【図24】Y一次元空間における各画素の分布状態の代表例を示す図である。
【図25】Y一次元空間における各画素の分布状態の他の代表例を示す図である。
【図26】入力層への入力データの分布と競合層ユニットの自己組織化後のマッピングの様子を示す更に他の図である。
【図27】入力層への入力データの分布と競合層ユニットの自己組織化後のマッピングの様子を示す更に他の図である。
【図28】本発明の第4の実施の形態による路面状態判別装置の要部を示す機能ブロック図である。
【図29】本発明の第5の実施の形態による路面状態判別装置の要部を示す機能ブロック図である。
【図30】各々の月における画像式と目視の路面状態判別時間を示す図である。
【図31】判別精度の検証結果を示す図である。
【図32】一日の路面状態出現の様子を示す図である。
【符号の説明】
1 テレビカメラ
2 画像変換部
3 画像メモリ
4 路面温度計
5 処理部
21 指標演算部
22 分散値演算部
23 バックプロパゲーション型ニューラルネットワーク
24 自己組織化ニューラルネットワーク
25 ユニット間距離演算部
Claims (18)
- 路面の所定領域を含む領域のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から得られたカラー画像のうちの前記所定領域に対応する画像領域の各画素の各色の濃淡値に基づいて、前記画像領域の各色ごとの分散値を得る分散値演算手段と、
前記各色をそれぞれ空間の異なる次元として、前記画像領域の各画素を当該画素の各色の濃淡値に従って前記空間内にプロットしたときの、前記画像領域の各画素の前記空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る、指標演算手段と、
前記分散値演算手段により得られた前記画像領域の各色ごとの前記分散値、及び、前記指標演算手段により得られた前記指標に基づいて、前記路面上の水分の有無を判別する水分有無判別手段と、
を備えたことを特徴とする路面状態判別装置。 - 路面の所定領域を含む領域のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から得られた画像のうちの前記所定領域に対応する画像領域の各画素の輝度の濃淡値に基づいて、前記画像領域の輝度の分散値を得る分散値演算手段と、
各色をそれぞれ空間の異なる次元として、前記画像領域の各画素を当該画素の各色の濃淡値に従って前記空間内にプロットしたときの、前記画像領域の各画素の前記空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る、指標演算手段と、
前記分散値演算手段により得られた前記画像領域の輝度の前記分散値、及び、前記指標演算手段により得られた前記指標に基づいて、前記路面上の水分の有無を判別する水分有無判別手段と、
を備えたことを特徴とする路面状態判別装置。 - 前記指標演算手段は、(a)前記各色にそれぞれ対応する入力層ユニットと所定数の競合層ユニットとを有し、前記画像領域の前記各画素の各色の濃淡値が、訓練パターンとして、対応する入力層ユニットにそれぞれ入力されて、自己組織化を行う自己組織化ニューラルネットワークと、(b)自己組織化後の前記所定数の競合層ユニットのうちの少なくとも2つの競合層ユニット間の距離を得る距離演算手段と、を有し、
前記距離演算手段により得られた前記距離に応じた値を、前記指標として用いることを特徴とする請求項1又は2記載の路面状態判別装置。 - 路面の所定領域を含む領域の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から得られた画像のうちの前記所定領域に対応する画像領域の各画素の輝度の濃淡値に基づいて、前記画像領域の輝度の分散値を得る分散値演算手段と、
前記輝度を一次元空間として、前記画像領域の各画素を当該画素の輝度の濃淡値に従って前記一次元空間内にプロットしたときの、前記画像領域の各画素の前記一次元空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る、指標演算手段と、
前記分散値演算手段により得られた前記画像領域の輝度の前記分散値、及び、前記指標演算手段により得られた前記指標に基づいて、前記路面上の水分の有無を判別する水分有無判別手段と、
を備えたことを特徴とする路面状態判別装置。 - 路面の所定領域を含む領域のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から得られたカラー画像のうちの前記所定領域に対応する画像領域の各画素の各色の濃淡値に基づいて、前記画像領域の各色ごとの分散値を得る分散値演算手段と、
輝度を一次元空間として、前記画像領域の各画素を当該画素の輝度の濃淡値に従って前記一次元空間内にプロットしたときの、前記画像領域の各画素の前記一次元空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る、指標演算手段と、
前記分散値演算手段により得られた前記画像領域の各色ごとの前記分散値、及び、前記指標演算手段により得られた前記指標に基づいて、前記路面上の水分の有無を判別する水分有無判別手段と、
を備えたことを特徴とする路面状態判別装置。 - 前記指標演算手段は、(a)前記輝度に対応する入力層ユニットと所定数の競合層ユニットとを有し、前記画像領域の前記各画素の輝度の濃淡値が訓練パターンとして前記入力層ユニットに入力されて、自己組織化を行う自己組織化ニューラルネットワークと、(b)自己組織化後の前記所定数の競合層ユニットのうちの少なくとも2つの競合層ユニット間の距離を得る距離演算手段と、を有し、
前記距離演算手段により得られた前記距離に応じた値を、前記指標として用いることを特徴とする請求項4又は5記載の路面状態判別装置。 - 前記水分有無判別手段は、教師あり学習により予め学習されたニューラルネットワークを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の路面状態判別装置。
- 前記予め学習されたニューラルネットワークが階層型ニューラルネットワークであることを特徴とする請求項7記載の路面状態判別装置。
- 前記予め学習されたニューラルネットワークがバックプロパゲーション型ニューラルネットワークであることを特徴とする請求項7又は8記載の路面状態判別装置。
- 前記水分有無判別手段は、互いに異なる条件下で教師あり学習により予め学習された複数のニューラルネットワークを含み、前記複数のニューラルネットワークのうち現在の条件に対応するニューラルネットワークを用いて、前記路面上の水分の有無を判別することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の路面状態判別装置。
- 前記条件が季節であることを特徴とする請求項10記載の路面状態判別装置。
- 前記所定領域付近に車両が存在するか否かを検出する車両検出手段と、該車両検出手段により前記所定領域付近に車両が存在すると検出された場合に、路面状態の判別を中止することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の路面状態判別装置。
- 前記車両検出手段は、前記撮像手段により得られた画像に基づいて、前記所定領域付近に車両が存在するか否かを判定する手段を含むことを特徴とする請求項12記載の路面状態判別装置。
- 前記撮像手段の視界が所望の程度に確保されているか否かを検出する視界検出手段を備え、該視界検出手段により前記視界が前記所望の程度に確保されていないと検出された場合に、路面状態の判別を中止することを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の路面状態判別装置。
- 前記視界検出手段は、前記撮像手段により得られた画像に基づいて、前記撮像手段の視界が所望の程度に確保されているか否かを判定する手段を含むことを特徴とする請求項14記載の路面状態判別装置。
- 路面温度を検出する路面温度検出手段と、
前記水分有無判別手段により路面上に水分があると判定され、かつ、前記路面温度検出手段により検出された路面温度が所定温度より高い場合に、路面が湿潤状態であると判別する手段と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の路面状態判別装置。 - 路面上の積雪の有無を検出する積雪検出手段と、
前記水分有無判別手段により路面上に水分があると判定され、前記路面温度検出手段により検出された路面温度が所定温度以下であり、かつ、前記積雪検出手段により路面上の積雪が存在しないと検出された場合に、路面が凍結状態であると判別する手段と、
前記水分有無判別手段により路面上に水分があると判定され、前記路面温度検出手段により検出された路面温度が所定温度以下であり、かつ、前記積雪検出手段により路面上の積雪が存在すると検出された場合に、路面が積雪状態であると判別する手段と、
を備えたことを特徴とする請求項16記載の路面状態判別装置。 - 前記積雪検出手段は、前記撮像手段により得られた画像に基づいて、路面上の積雪の有無を判定する手段を含むことを特徴とする請求項17記載の路面状態判別装置。
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