JP2004189527A - ニッケルまたは珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法 - Google Patents

ニッケルまたは珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】炭素などの不純物を含むことのない高純度な、ニッケルまたは珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法を提供する。
【解決手段】ニッケル基板あるいはニッケル薄膜が付着したシリコンウェハーの温度がホウ素および酸化マグネシウムの混合物の温度よりも低くなるように、それらを不活性ガス気流中において加熱し、ホウ素と酸化マグネシウムを反応させて酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気を発生させ、その混合蒸気をニッケル基板上あるいはニッケル薄膜が付着したシリコンウェハー上に導き、さらにアンモニアガスを供給してニッケル基板上あるいはニッケル薄膜が付着したシリコンウェハー上で酸化ホウ素と反応させて窒化ホウ素ナノチューブを形成するとともにニッケルあるいは珪化ニッケルを窒化ホウ素ナノチューブ内に充填する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、ニッケルまたは珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、炭素などの不純物を含むことのない高純度な、ニッケルまたは珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
金属ニッケルあるいは珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブは、窒化ホウ素ナノチューブが絶縁性を有しかつ耐酸化性に優れていることから、マイクロエレクトロニクス部品、高性能セラミックス、オプトエレクトロニクス部品、触媒などの分野において、耐酸化性コーティング層、絶縁層、反応促進剤などとして利用されることが期待されている。
【0003】
しかしながら、窒化ホウ素ナノチューブは濡れ性があまり良くないため、毛管法によって金属を充填することは難しく、これまで濡れ性のよいカーボンナノチューブを鋳型として窒化ホウ素チューブを製造する際に同時にインバール鉄ニッケル合金を充填する方法が行われている(非特許文献1)。
【0004】
またごく最近になってニッケルと炭素を触媒として窒化ホウ素と炭化珪素を同時に成長させた窒化ホウ素で被覆された炭化珪素ナノワイヤーを製造する方法が見出されており(非特許文献2)、さらに不純物として炭素を含まない窒化ホウ素ナノチューブの製造方法が報告されている(非特許文献3)。
【0005】
しかしながら上記のようなカーボンナノチューブを鋳型として用いた金属や金属化合物が充填された窒化ホウ素ナノチューブを製造する方法においては、カーボンなどの不純物の混入を避けることはきわめて難しく、そのためこれまでカーボンナノチューブを鋳型として用いずに金属や金属化合物が充填された窒化ホウ素ナノチューブを製造する方法が強く求められていた。
【0006】
【非特許文献1】
Y. Bando , K. Ogawa および D. Golberg, ”Insulating `nanocables’: Invar Fe−Ni alloy nanorods inside BN nanotubes” Chemical Physics Letter,347巻, pp. 349−354, 2001年
【非特許文献2】
C. Tang, Y. Bando, T. Sato および K. Kurashima, ”Comparative studies on BN−coatings on SiC and Si nanowires” Journal of Materials Chemistry, 12巻, pp. 1910−1913, 2002年
【非特許文献3】
C. Tang, Y Bando, T. Sato および K. Kurashima, ”A novel precursor for synthesis of pure boron nitride nanotubes” Chemical Communications, 12巻, pp. 1290−1291, 2002年
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、炭素などの不純物を含むことのない高純度な、ニッケルまたは珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブを提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、ニッケル基板と、ホウ素および酸化マグネシウムの混合物を不活性ガス気流中においてニッケル基板の加熱温度が混合物の加熱温度よりも低くなるように加熱し、ホウ素と酸化マグネシウムを反応させて酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気を発生させ、酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気の混合蒸気をニッケル基板上に導き、さらにアンモニアガスを供給してニッケル基板上で混合蒸気の酸化ホウ素と反応させて窒化ホウ素ナノチューブを形成するとともに、ニッケル基板中のニッケルを窒化ホウ素ナノチューブ内に充填することを特徴とするニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法を提供する。
【0008】
第2には、この出願の発明は、第1の発明において、ホウ素と酸化マグネシウムの反応温度およびアンモニアガスと酸化ホウ素の反応温度が1100℃以上1600℃以下であることを特徴とするニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法を提供する。
【0009】
さらに第3には、第1または2の発明において、不活性ガスとしてアルゴンを使用することを特徴とするニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法を提供する。
【0010】
また第4には、第1ないし3のいずれかの発明において、ニッケル基板の加熱温度がホウ素と酸化マグネシウムの混合物の加熱温度よりも100〜500℃低いことを特徴とするニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
【0011】
第5には、ニッケルの薄膜が付着したシリコンウェハーと、ホウ素および酸化マグネシウムの混合物を不活性ガス気流中においてニッケル薄膜が付着したシリコンウェハーの加熱温度が混合物の加熱温度よりも低くなるように加熱し、ホウ素と酸化マグネシウムを反応させて酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気を発生させた後、酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気の混合蒸気をニッケル薄膜が付着したシリコンウェハー上に導き、さらにアンモニアガスを供給しニッケル薄膜上で付着したシリコンウェハー上で混合蒸気の酸化ホウ素と反応させて窒化ホウ素ナノチューブを形成するとともに、ニッケル薄膜が付着したシリコンウェハーより得られる珪化ニッケルを窒化ホウ素ナノチューブに充填させることを特徴とする珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法を提供する。
【0012】
第6には、第5の発明において、ホウ素と酸化マグネシウムの反応温度およびアンモニアガスと酸化ホウ素の反応温度が1100℃以上1600℃以下であることを特徴とする珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法を提供する。
【0013】
第7には、第5または6の発明において、不活性ガスとしてアルゴンを使用することを特徴とする珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法を提供する。
【0014】
第8には、第5ないし7のいずれかの発明において、ニッケル薄膜の付着したシリコンウェハーの加熱温度がホウ素と酸化マグネシウムの混合物の加熱温度よりも100〜500℃低いことを特徴とする珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法をも提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0016】
この出願の発明のニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法では、ニッケル基板と、ホウ素および酸化マグネシウムの混合物を不活性ガス気流中においてニッケル基板の加熱温度が混合物の加熱温度よりも低くなるように加熱し、ホウ素と酸化マグネシウムを反応させて酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気を発生させ、酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気の混合蒸気をニッケル基板上に導き、さらにアンモニアガスを供給して混合蒸気とアンモニアガスを反応させて窒化ホウ素ナノチューブを形成するとともに、ニッケル基板中のニッケルを窒化ホウ素ナノチューブに充填させることを大きな特徴としている。このような製造方法を用いることによって炭素などの不純物を含まない高純度な、ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブを製造することが可能となる。
【0017】
なおこの出願においては、ニッケル基板あるいはニッケル薄膜の付着したシリコンウェハーと、ホウ素および酸化マグネシウムの混合物を“ニッケル基板(ニッケル薄膜が付着したシリコンウェハー)の加熱温度が混合物の加熱温度よりも低くなるように”加熱するとしているが、加熱方法としては同じ加熱源あるいは異なる加熱源のいずれを用いてもよく、ニッケル基板(ニッケル薄膜が付着したシリコンウェハー)の加熱温度が混合物の加熱温度がよりも低くなるように加熱することが可能であればどのような方法を用いてもよい。
【0018】
このとき、ホウ素と酸化マグネシウムの反応温度およびアンモニアガスと酸化ホウ素の反応温度を1100℃以上1600℃以下とすることで酸化ホウ素とマグネシウムの蒸気を確実に発生させることができ、また確実にアンモニアガスと混合蒸気を反応させることができ、その結果高純度なニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブを形成することができる。なお、このとき不活性ガスとしてアルゴンを好適に使用することができる。
【0019】
またニッケル基板の加熱温度をホウ素と酸化マグネシウムの混合物の加熱温度よりも100〜500℃低くすることで、発生した蒸気もしくは反応物がニッケル基板に堆積しやすくすることができる。なお、ニッケル基板の加熱温度がホウ素と酸化マグネシウムの混合物の加熱温度と同程度に高い場合には発生した蒸気もしくは反応物が系外に逃げてしまうなどニッケル基板への付着率が悪くなる。
【0020】
この出願の発明のニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法は以上のような特徴を有しているが、以下に、より具体的なニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法の手順の一例を示す。
【0021】
まず厚さ1mm程度のニッケル基板を蒸留水で洗浄するとともにアセトンで脱脂し、希フッ化水素水溶液で2〜3秒間表面の粗化を行う。次に非晶質のホウ素粉末(純度99.995%程度のものが好ましい)と酸化マグネシウム(純度99%程度のものが好ましい)のモル比1:1の混合物をボールミルで6時間かけて十分に微粉化する。そしてニッケル基板と、ホウ素の粉末と酸化マグネシウムの粉末の混合物を窒化ホウ素製のボートの中に離して配置させ、対象物を高温に加熱するのに適した高周波誘導加熱炉を用いて混合物を1100〜1600℃に加熱する。このとき、ニッケル基板に対しても加熱を行うが、ニッケル基板の加熱温度を混合物の加熱温度よりも100〜500℃低く保つようにする。
【0022】
そして加熱によりホウ素の粉末と酸化マグネシウムの混合物が、
2B + 2MgO →B + 2Mg
で示される反応を起こし、酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気が発生する。この発生した混合蒸気を流速30sccm程度のアルゴンガスとともにニッケル基板上に移送する。そしてニッケル基板が所定の温度に達したときにそこに流速200sccm程度のアンモニアガスを流入させる(供給する)ことでニッケル基板を覆い、1〜3時間アンモニアガスを流すことで、
+ NH → 2BN + 2HO +H
の反応が起こり、その反応とともにニッケル基板中のニッケルが窒化ホウ素ナノチューブの中空部に充填される。その後アンモニアガスの流入を止め、高周波誘導加熱炉の温度を徐々に室温に冷却することで窒化ホウ素ナノチューブ内の液状のニッケルが結晶化される。
【0023】
このような方法を用いることによって、炭素などの不純物を含まない高純度なニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブを製造することができるのである。
【0024】
またこの出願の発明の珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法は、ニッケル薄膜が堆積されたシリコンウェハーと、ホウ素および酸化マグネシウムの混合物を不活性ガス気流中においてニッケル薄膜が付着したシリコンウェハーの加熱温度が混合物の加熱温度よりも低くなるように加熱し、酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気を発生させた後、酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気の混合蒸気をニッケル薄膜が付着したシリコンウェハー上に導き、さらにアンモニアガスを供給しニッケル薄膜が付着したシリコンウェハー上で混合蒸気の酸化ホウ素と反応させて窒化ホウ素ナノチューブを形成するとともに、ニッケル薄膜が付着したシリコンウェハーから得られる珪化ニッケルを窒化ホウ素ナノチューブに充填させることを特徴としている。このような製造方法によって炭素などの不純物を含まない高純度な珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブを製造することが可能となる。
【0025】
このとき、ホウ素と酸化マグネシウムの反応温度およびアンモニアガスと酸化ホウ素の反応温度を1100℃以上1600℃以下とすることによって酸化ホウ素とマグネシウムの蒸気を確実に発生させることができ、また確実にアンモニアガスと混合蒸気を反応させることができ、その結果高純度な珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブを形成することができる。なおこのとき、不活性ガスとしてアルゴンを好適に用いることができる。
【0026】
またニッケル薄膜の付着したシリコンウェハーの加熱温度をホウ素と酸化マグネシウムの混合物の加熱温度よりも100〜500℃低く保つことで、発生した蒸気もしくは反応物をニッケル薄膜の付着したシリコンウェハーに堆積しやすくすることができる。なお、ニッケル薄膜の付着したシリコンウェハーの加熱温度がホウ素と酸化マグネシウムの混合物の加熱温度と同じ程度に高い場合には発生した蒸気もしくは反応物のシリコンウェハーへの付着率が悪くなる。
【0027】
この場合も以下に具体的に示すようにニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法とほぼ同様の手順で珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブが製造される。
【0028】
まず、シリコンウェハーを蒸留水で洗浄するとともにアセトンで脱脂した後希フッ化水素水溶液で2〜3秒間エッチングし、シリコンウェハー表面の酸化物を除去する。そしてスパッタリングにより厚さ約300nmのニッケルを成長速度1.5nm/minで4時間かけてシリコンウェハー上に成長させ、生成したニッケル薄膜とシリコンとの密着強度を上げるためにアルゴン気流中で500℃、3時間加熱を行う。
【0029】
その後、ホウ素粉末と酸化マグネシウムを反応させて酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気を発生させ、それらの混合蒸気をアルゴンガスとともにシリコンウェハー上に移送し、シリコンウェハーが所定の温度に達したときにアンモニアガスを、基板を覆うように流す。
【0030】
そして1〜3時間アンモニアガスを流すことで、
+ NH → 2BN + 2HO + H
の反応が起こり、窒化ホウ素ナノチューブを形成するとともにニッケル薄膜が付着したシリコンより、
Ni + 2Si → NiSi
の反応で得られる珪化ニッケルが窒化ホウ素ナノチューブ内に充填される。
【0031】
その後アンモニアガスの流入を止め、高周波誘導加熱炉の温度を徐々に室温に冷却することで、液状の珪化ニッケルが結晶化される。このような製造方法を用いることにより、高純度な珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブを製造することができるのである。
【0032】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この出願の発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0033】
【実施例】
<実施例1>
この出願の発明の製造方法を用いてニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブを製造した。
【0034】
まず窒化ホウ素ナノチューブを成長させる基板として、厚さ1mmのニッケル基板を用い、そのニッケル基板を蒸留水で洗浄するとともに、アセトンで脱脂を行った。次に希フッ化水素水溶液で2〜3秒間エッチングすることでニッケル基板の表面を粗化した。一方で非晶質の純度99.995%のホウ素粉末と純度99%の酸化マグネシウム粉末の混合物(モル比1:1)をボールミルで6時間かけて微粉化し、エッチングして粗化したニッケル基板と上記混合物を窒化ホウ素製ボートの中に離して配置させ、ボートをグラファイト製の支持台に載置した。
【0035】
そして高周波誘導加熱炉を用いてホウ素粉末と酸化マグネシウム粉末の混合物を1300℃に加熱し、発生した酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの混合蒸気を30sccmの流速のアルゴンガスでニッケル基板の方へ移送した。
【0036】
ニッケル基板の加熱温度が1100℃に達した時点で、アンモニアガスを200sccmの流速でニッケル基板を覆うように流入させ、100分間混合蒸気の酸化ホウ素と反応させた後、加熱炉を30℃以下の室温まで徐々に冷却し、ニッケル基板上に堆積した生成物を採取した。
【0037】
採取した生成物を四塩化炭素に分散させ、超音波処理した後、高解像度透過型電子顕微鏡像を観察するために銅グリッドに塗布した。生成物におけるナノチューブおよびその充填物の元素組成を同定するために、X線回折と電子エネルギー損失スペクトルを調べた。生成物のX線回折パターンを図1(b)に示す。同図より生成物が六方晶系と菱面体晶系の窒化ホウ素と面心立方晶系のニッケルからなることが分かった。
【0038】
また図2(a)と(b)に生成物の透過型電子顕微鏡像の写真を示す。これらの写真および図1(b)の解析結果から窒化ホウ素ナノチューブの中にニッケルのナノ粒子およびナノワイヤーが充填されていることが確認された。なお図2(a)、(b)中の(1)が窒化ホウ素ナノチューブであり、その中空部にニッケル(2)が充填されている。またこの測定結果から充填されているニッケルのナノワイヤーは最も長いもので数百ナノメートルであった。また、電子エネルギー損失スペクトルの測定結果からBとNの比は1:1であることが分かった。
<実施例2>
次にこの出願の発明の製造方法により、珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブを製造した。
【0039】
まず、シリコンウェハーを蒸留水およびアセトンで洗浄し、次に希フッ化水素水溶液で2〜3秒間エッチングし、シリコン表面の酸化膜を除去した。そして高周波スパッタリングによってニッケル薄膜を成膜速度1.5nm/minで4時間成膜して膜厚約300nmのニッケル薄膜をシリコンウェハー上に堆積した。
【0040】
さらにシリコンウェハーとニッケル薄膜の密着性を上げるために、アルゴン雰囲気中においてそれらを500℃で3時間加熱した。その後、そのニッケル薄膜が付着したシリコンウェハーと純度99.995%のホウ素粉末と純度99%の酸化マグネシウムの混合物(モル比1:1)を窒化ホウ素製ボートの中に離して配置させ、ボートをグラファイト製の支持台に載置した。そして実施例1と同様に処理し同様の条件で反応させた。反応終了後室温まで冷却し、ニッケルの薄膜の付着したシリコンウェハー上に堆積した生成物を採取した。
【0041】
実施例1と同様に、採取した生成物を四塩化炭素に分散させ超音波処理した後、高解像度透過型電子顕微鏡像を観察するために銅グリッドに塗布し、またナノチューブおよび充填物の元素成分を同定するためにX線回折と電子エネルギー損失スペクトルを調べた。
【0042】
生成物のX線回折のパターンを図1(c)に示す。同図より生成物は六方晶系と菱面体晶系の窒化ホウ素と面心立方晶系の珪化ニッケルとからなり、そしてNiとSiの比は1:2であった。また図2(c)と(d)にその透過型電子顕微鏡像の写真を示す。
【0043】
これらの写真および図1(c)の解析結果より珪化ニッケルのナノ粒子およびナノワイヤーが窒化ホウ素ナノチューブの中に充填されていることが分かり、この珪化ニッケルのナノワイヤーの長さはニッケルのナノワイヤーに比べて長く数マイクロメートルに達していることが分かった。なお図2(c)、(d)中の(1)が窒化ホウ素ナノチューブでありその中空部に珪化ニッケル(3)が充填されている。
【0044】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、マイクロエレクトロニクス部品、高性能セラミックス、オプトエレクトロニクス部品、触媒などの分野において、耐酸化性コーティング層、絶縁層、反応促進剤などとして利用可能であり、炭素などの不純物を含むことのない高純度な、ニッケルまたは珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) ニッケルあるいは珪化ニッケルを含まない窒化ホウ素ナノチューブのX線回折のパターンである。
(b) ニッケル基板上に堆積した生成物のX線回折のパターンである。
(c) ニッケル薄膜の付着したシリコンウェハー上に堆積した生成物のX線回折のパターンである。
【図2】(a)、(b) ニッケル基板上に堆積した生成物の透過型電子顕微鏡像の写真である。
(c)、(d) ニッケル薄膜の付着したシリコンウェハー上に堆積した生成物の透過型電子顕微鏡像の写真である。
【符号の説明】
1 窒化ホウ素ナノチューブ
2 ニッケル
3 珪化ニッケル

Claims (8)

  1. ニッケル基板と、ホウ素および酸化マグネシウムの混合物を不活性ガス気流中においてニッケル基板の加熱温度が混合物の加熱温度よりも低くなるように加熱し、ホウ素と酸化マグネシウムを反応させて酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気を発生させ、酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気の混合蒸気をニッケル基板上に導き、さらにアンモニアガスを供給してニッケル基板上で混合蒸気の酸化ホウ素と反応させて窒化ホウ素ナノチューブを形成するとともに、ニッケル基板中のニッケルを窒化ホウ素ナノチューブ内に充填することを特徴とするニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
  2. ホウ素と酸化マグネシウムの反応温度およびアンモニアガスと酸化ホウ素の反応温度が1100℃以上1600℃以下であることを特徴とする請求項1記載のニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
  3. 不活性ガスとしてアルゴンを使用することを特徴とする請求項1または2記載のニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
  4. ニッケル基板の加熱温度がホウ素と酸化マグネシウムの混合物の加熱温度よりも100〜500℃低いことを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
  5. ニッケルの薄膜が付着したシリコンウェハーと、ホウ素および酸化マグネシウムの混合物を不活性ガス気流中においてニッケル薄膜が付着したシリコンウェハーの加熱温度が混合物の加熱温度よりも低くなるように加熱し、ホウ素と酸化マグネシウムを反応させて酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気を発生させた後、酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの蒸気の混合蒸気をニッケル薄膜が付着したシリコンウェハー上に導き、さらにアンモニアガスを供給しニッケル薄膜が付着したシリコンウェハー上で混合蒸気の酸化ホウ素と反応させて窒化ホウ素ナノチューブを形成するとともに、ニッケル薄膜が付着したシリコンウェハーより得られる珪化ニッケルを窒化ホウ素ナノチューブに充填させることを特徴とする珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
  6. ホウ素と酸化マグネシウムの反応温度およびアンモニアガスと酸化ホウ素の反応温度が1100℃以上1600℃以下であることを特徴とする請求項5記載の珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
  7. 不活性ガスとしてアルゴンを使用することを特徴とする請求項5または6記載の珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
  8. ニッケル薄膜の付着したシリコンウェハーの加熱温度がホウ素と酸化マグネシウムの混合物の加熱温度よりも100〜500℃低いことを特徴とする請求項5ないし7いずれかに記載の珪化ニッケルが充填された窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
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