JP2004188901A - 表面加飾成形用シート及びその成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定の組成比のスチレン系単量体及び共役ジエン系単量体の連鎖を有するアニオン重合による重合体を主成分とするスチレン系樹脂シートを用いて、そのシートにエンボス加工を施すことにより、成形時の位置ずれが大幅に低減される。該シートは前記スチレン系樹脂、ポリスチレン樹脂及び耐衝撃性ポリスチレン樹脂の特定比率の樹脂組成物からなることが好ましい。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系樹脂を主成分とする加飾成形用シート及びそのシートを用いてインモールド成形した表面加飾成形体に関するもので、特にポリスチレン系樹脂を基材とした表面加飾成形体に関するものである。尚、本発明において樹脂組成物の配合組成を表す単位「部」及び「%」は、特に断らない限り樹脂成分の合計を100としたときの質量基準で表す。
【0002】
【従来の技術】
従来よりプラスチック成形体に対してその表面に図柄や写真で装飾を施す方法として、これらの図柄等を印刷した加飾成形用のシートもしくはフィルム(以下単に「シート」と略記する。)を用いて、インモールド加飾成形により該シートを成形体の基材表面に一体化する方法が広く行われている。この方法としては、射出成形、プレス成形、又は熱可塑性樹脂シートの熱成形(Thermoforming)に応用されていて、例えば射出成形のインモールドラベル法と呼ばれる方法では、グラビア印刷された樹脂シートを一枚ずつ金型内に貼り付け、型閉じして溶融樹脂を射出することで、該シートと基材を一体化した表面加飾成形体が得られる。この方法では、加飾成形用のシートの印刷面を内側にして成形することも可能で、その場合は該シートで印刷面が保護されるという利点もある。
【0003】
更にプラスチック製品の高品質化や、意匠性の高い成形体の要望があり、その要望に答えるためにインモールド転写成形法、サーモジェクト法、CFI(Coated Film Insert)プロセス等の加飾成形法が開発されてきている。
【0004】
このような加飾成形に用いられるシートとしては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂又はこれらの樹脂を成分とする樹脂組成物等が用いられ、その用途により使い分けられている。例えば、ポリエステル系樹脂は、その表面光沢が良好で印刷適性に優れていること等から、鍍金や金属調の印刷を施して自動車や携帯電話等のパネル部品用に用いられている。又、アクリル系樹脂シートは耐候性に優れ、深絞り度の高い形状にも追従する成形性を有していて、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂との接着性に優れていることから、この樹脂を基材とする成形体の表面装飾に適している。
【0005】
一方でスチレン系樹脂シートは、加飾成形用に殆ど用いられていない。例えば、印刷精度等に優れたフィルムとして、特定の範囲の加熱収縮率等の特性を有するゴム変性ポリスチレン樹脂組成物からなるフィルムが提案されているが(特許文献1)、このフィルムを加飾成形に用いることは全く記載されていない。又一方で、スチレン系樹脂層とポリブチレンテレフタレート系樹脂層を有するインモールド加飾用複合フィルムが提案されているが(特許文献2)、この複合フィルムは、ポリブチレンテレフタレート系樹脂層が必須であり、スチレン系樹脂のみからなるものではない。スチレン系樹脂シートが用いられない理由としては、アクリル系樹脂と比べると耐候性に劣り、ポリエステル系樹脂と比べると印刷適性の点で劣る面が有り、その用途が限定される点が挙げられる。
【0006】
【特許文献1】特開2000−351860号公報
【特許文献2】特開平10−272652号公報
【0007】
しかしながら、近年環境問題からプラスチックのリサイクルへの要求が高まっており、例えばCDケースのような透明ポリスチレンからなるクリアーケースの表面に加飾成形により図柄等を設けようとする場合には、加飾成形用のシートとしては、基材と同様のスチレン系樹脂からなるシートが求められていた。このような用途の場合、耐候性の要求はそれほど主要なものではなく、又印刷適性も最近の印刷技術の進歩で問題ではなくなってきているので、これらの点は大きな問題ではない。ところがポリスチレン系樹脂シートを加飾成形用のシートとして用い、インモールド成形にてクリアーケース等を得ると、図柄の精度が良好な成形体が得られなかったり、成形体の「反り」が生じ商品価値を著しく損なうという問題があり、その改善が求められていた。
【0008】
本発明者等は、前記の問題点の改善を図るために、特定の組成比のスチレン系単量体及び共役ジエン系単量体の連鎖を有するアニオン重合による重合体を主成分とするスチレン系樹脂シートを用いることを提案している(特願2002−150233号)。この発明のシートは、インモールド成形等で熱可塑性樹脂基材、特に透明ポリスチレン樹脂と一体化したときに、金型への密着性が良いので図柄の精度が比較的良好であり、且つ反りの小さな表面加飾成形体を得ることができる点で有用である。しかしながら、これらのシートを用いても、加飾成形を行う際のシートを金型に装着するときに、シート同士が貼りつき、シートの位置がずれ、印刷された図柄のずれを生じることがあり、更にその改善が求められていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、スチレン系樹脂シートで、シートの内部歪みが少なく、印刷が可能な表面平滑性を有し、更にインモールド成形で熱可塑性樹脂基材と一体化する際にシート同士が貼り付くことによる位置ずれが起こらず、更に一体化した成形体の反りが少なく図柄精度が良好で意匠性の優れた表面加飾成形体を得ることのできるシート及びそれを用いた成形体を提供することを課題とする。特にポリスチレン樹脂としてリサイクル可能な透明ポリスチレンを基材とするクリアーケース等の加飾成形体の提供を課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、この課題を解決する為に鋭意検討した結果、特定の組成比のスチレン系単量体及び共役ジエン系単量体の連鎖を有するアニオン重合による重合体を主成分とするスチレン系樹脂シートを用いて、そのシートにエンボス加工を施すと、成形時の位置ずれが大幅に低減されることを見出し本発明に至った。即ち本発明は、スチレン系単量体(a)及び共役ジエン系単量体(b)の連鎖を有するスチレン系樹脂(A)を主成分とするシートの片面にエンボス加工が施されていることを特徴とする加飾成形用スチレン系樹脂シートである。又、スチレン系樹脂(A)が、有機リチウム開始剤を用いたアニオン重合により得られる重合体であって、スチレン系単量体(a)及び共役ジエン系単量体(b)の組成比b/(a+b)が0.20〜0.28であることが好ましい。更に、 スチレン系樹脂(A)を60〜80%、実質的にスチレン系単量体の連鎖のみからなるポリスチレン樹脂(B)を20〜30%及びブタジエン連鎖を含有するポリスチレン樹脂(C)を0〜10%含有する樹脂組成物からなることがより好ましい。
【0011】
一方で本発明は前記のスチレン系樹脂シートのエンボス加工が施された面の反対側の面に加飾印刷を施し加飾シートとし、該シートと熱可塑性樹脂基材を一体化した表面加飾成形体であり、 熱可塑性樹脂基材がポリスチレン系樹脂である表面加飾成形体である。更に、熱可塑性樹脂基材が透明ポリスチレン系樹脂である表面加飾成形体からなるクリアケースである。又、加飾シートと熱可塑性樹脂基材を、射出成形、プレス成形又はシートの熱成形により一体化することを特徴とする表面加飾成形体の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明で使用されるスチレン系共重合樹脂(A)は、有機リチウム開始剤を用いたアニオン重合により得られる重合体であって、スチレン系単量体(a)及び共役ジエン系単量体(b)の連鎖を有する樹脂である。
【0013】
スチレン系単量体(a)とは、スチレンまたは、α―メチルスチレン等であり、共役ジエン系単量体(b)とは、ブタジエン又はイソプレン等である。これらの単量体から該共重合樹脂(A)を製造するには、陰イオン系重合開始剤により、単量体を段階的に重合する方法、両単量体の混合物を不活性溶媒中で共重合する方法、又はこれらを適当に併用する方法によって製造される。該共重合樹脂中に占める共役ジエン単量体の組成比b/(a+b)は0.20〜0.28であることが好ましい。0.20未満では、本発明のシートに用いたとき、シートの柔軟性が不十分となり加飾成形等での型への密着性が不十分となり良好な印刷精度が得られない可能性が有り、得られた成形体の残留応力が大きい為に、いわゆる成形体の「反り」が許容範囲を超えてしまう恐れが有る。
【0014】
又0.28を超えると該シートの」弾性率が低下することや、該シートの耐熱温度が下がる為、該シートへの印刷、乾燥又は加飾成形で熱が加わったときに、シートの反り・波打ち等発生し印刷の位置精度が悪くなる場合が有り、図柄の高精度な成形体が得られない恐れが有る。
【0015】
又、該共重合体(A)は、スチレン系単量体(a)及び共役ジエン単量体(b)の連鎖を有し、重量平均分子量は一般的には6万〜25万の範囲のものである。(a)及び(b)の連鎖の形態は特に限定されるものではなく、(a)連鎖/(b)連鎖/(a)連鎖からなる共重合体のみならず、例えば前記の連鎖を複数回繰り返したいわゆる「マルチブロック共重合体」であっても良く、一方で(a)及び(b)からなる連鎖を3〜5個、多官能性化合物により結合させたいわゆる「星型ブロック共重合体」であっても良い。又、その分子構造としては、それぞれの連鎖が完全連鎖もしくは、特開昭48−48456号公報に見られる如く、(a)連鎖と(b)連鎖の遷移部に(a)(b)ランダム共重合体を含有したいわゆるテーパードブロック構造をゆうするものいずれでもよい。
【0016】
又、該共重合樹脂(A)としては、特公平1−32857号公報に記載された樹脂のように、重量平均分子鎖長と(a)連鎖と(b)連鎖の組成が異なる2つ以上の重合体の混合物であっても良い。
【0017】
本発明のスチレン系樹脂シートは、該共重合樹脂(A)を主成分としたもので、60〜80%含有する組成物からなるシートが好ましい。60%未満では、該シートを用いて加飾成形した際に、前記の成形体の「反り」を許容範囲に押さえることが難しくなることがある。又80%を超えると、製膜自体が困難となるばかりか該シートの腰が弱くなり、加飾成形した際に、図柄の精度の良好な加飾成形体を得ることが困難となる場合がある。
【0018】
本発明で用いるポリスチレン樹脂(B)とは、実質的に前記のスチレン系単量体の連鎖のみからなる樹脂であって、一般に塊状重合や縣濁重合で得られるGPと呼ばれている樹脂を指す。この(B)成分は、特に限定されるものではないが、シートに加工する際に他の成分と溶融混合して押出成形するときのシート押出性の観点からメルトフローインデックス(MFI)がJIS−K7210条件8で測定した値で0.5〜15.0gが好ましく、更に好ましくは2.0〜10.0gの範囲である。本発明のシートにおける(B)成分の比率は20〜30%が好ましい。20%未満では、加飾成形体の図柄精度が低下する場合があり、30%を超えると、シートの柔軟性が低下するため、加飾成形等での型への密着性が不十分となることや成形体の「反り」が許容範囲を超える恐れがある。
【0019】
本発明で用いるポリスチレン系樹脂(C)は、一般にハイインパクトポリスチレン(HIPS)と呼ばれる樹脂であって、ブタジエンゴムの存在下でスチレン系単量体を塊状重合もしくは縣濁重合することによって得られる樹脂である。本発明のシートにおいて、この(C)成分は、該シートの製膜工程においてブロッキングを防止するために必要に応じて添加することができ、その組成比は0〜10%の範囲である。10%を超えると該シートの透明性が著しく低下し、該シートの使用目的に合わなくなる場合がある。
【0020】
本発明のスチレン系樹脂シートには、本発明の効果を阻害しない範囲で、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料などの着色剤、シリコンオイルやアルキルエステル系の離型剤及びタルク、クレイ、シリカ等の粒状滑剤等を添加することができる。
【0021】
本発明のシートは、一般的な熱可塑性樹脂シートのTダイ法による溶融押出成形で得ることができる。この押出成形において、原料組成物の各成分の樹脂及び添加剤を混合する方法は、各成分を十分に混合できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、各原料を、タンブラー等の混合機でペレットを混合した後押出機に供給して一般的なTダイ法によりシートを得ることができる。又、一部の原料を前記のように予め溶融混練しておき、シート押出の際に他の成分と混合して押出機に供給してシートを得ることもできる。溶融状態でTダイから押し出されたシートは、まず鏡面ロールとその表面にエンボス加工を施したゴム硬さ40〜80のロール間で挟持され冷却固化され、その後は一般的な押出成形と同様に必要に応じて複数のロールを通した後に巻取機にてロール状に巻き取られる。尚、本発明の「ゴム硬さ」とは、すべてJIS K6253−1997に準拠したタイプAデュロメータ−により測定した値である。
【0022】
ゴム硬度80以上のものを用いると、シートに対して均一な圧着状態が得られず、シートの残留歪みが大きくなってしまい、基材樹脂と一体化した際に「反り」の原因となってしまう恐れが有り、40以下のものでは、シートに対して意図するエンボス加工が困難となる恐れがある。
【0023】
鏡面ロール及びエンボスロールは、特に限定されるものではなく、一般的なTダイ法で用いるロールを用いる事ができるが、エンボスロールの面粗度はRa=1.0〜3.0μmであることが好ましい。面粗度が1.0μm以下では、インモールド成形の際のシート同士の貼り付きを抑制する効果が小さくなる恐れが有り、3.0μm以上では得られたシートを基材樹脂と一体化した時に、成形品の透明性を損なう恐れがある。
【0024】
本発明においては、前記のようにして得られた混合樹脂組成物を、十分に乾燥した状態で押出機に供給してTダイ法により溶融押出したシートを、ゴム硬さが65以下の下巻きゴムの表面に金属薄膜層を設けたメタルスリーブロールと鏡面金属ロール間に導き、狭圧下で通過させ冷却固化し引き取ることで、シートの残留歪みが小さく、且つ表面光沢の優れたシートが得られる。
【0025】
下巻きゴムのゴム硬さが65を越えたものを用いると、シートに対して均一な圧着状態が得られず、シートの残留歪みが大きくなってしまう。このゴム硬さが65以下のものであれば、冷却後にシートに残留する歪みは緩和される。しかしながら、ロール表面がゴムのロールでは、その表面粗さを小さくするのは困難であり、より表面粗さの大きなロールを用いた場合、得られたシートも表面粗さが大きく透明性に欠けるものであった。本発明者等は、ゴム硬さが65以下の下巻きゴムの表面に、厚さ350μm以下の金属薄膜層を形成しその表面粗さを0.5μm以下としたメタルスリーブロールを用い、そのメタルスリーブロールと鏡面金属ロール間にTダイより溶融押出しされたシートを導き、挟圧下で通過させ冷却固化し引き取ることで、残留歪みは小さく保ったままで、且つ光沢の優れたシートが得られることを見出した。
【0026】
この下巻きゴムの硬さは、シートの残留歪みの観点からは、前記のように65以下であれば良く、柔らか過ぎて問題となることはないが、その表面に形成される金属薄膜の耐久性や得られるシートの厚み精度の観点から、45以上のものを用いるのが一般的である。一方で、シートの製膜工程において、その引き取りの際の挟圧条件やロール温度の設定は、特に限定されるものではなく、通常のシート製膜で用いられている条件で行うことができる。
【0027】
このゴムの表面の金属薄膜層は、一般的にはさが350μm以下で、その表面粗さは0.5μm以下である。その厚さが350μmを越えると、下巻きゴムの有するゴム弾性的な性質が得られず、得られたシートの残留歪みが大きくなってしまう可能性が有る。又、その表面粗さが0.5μmを越えると、得られたシートの透明性が損なわれ、該シートの表面に鍍金調印刷を施した場合などに表面光沢が悪い為に十分な意匠性が得られないことが有る。
【0028】
更に本発明で用いる金属薄膜層は、ロール表面の金属腐食等に対する耐久性の観点から、ニッケル鍍金層の上に厚さ10μm程度のクロム鍍金を施したものが好ましい。
【0029】
本発明のシートの厚さは、特に限定されるものではないが、通常75〜300μm程度である。75μm未満だと、インモールド加飾成形の際の成形条件によっては該シートの強度が不足し良好な図柄が得られないことがある。又通常300μmを超える厚さは必要としない。
【0030】
本発明のシートに加飾印刷をする方法としては、一般的に用いられている方法(グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等)を使用することができる。又、印刷面としては非エンボス面に印刷する事が望ましい。その理由としては、エンボス面に印刷すると印刷図柄の解像度が落ちたり、意図する色の表現が出来ない恐れがあり、結果として印刷図柄のデザインの自由度が制限される事が挙げられる。
【0031】
本発明の表面加飾成形体は、前記のスチレン系樹脂シートに、一般に行われている方法で図柄等を印刷した加飾シートを用いて、射出成形、プレス成形又はシートの熱成形によって、加飾シートと基材樹脂を一体化することによって得ることができる。又、これらの成形方法は、特に限定されるものはではなく、いずれも加飾成形として一般的に行われている方法を用いることができる。これらの成形に於いて加飾シートを金型に装着させる際、該シートの片面(非印刷面)にエンボス加工を施す事によりシート同士が貼りつき印刷図柄の位置ずれ等の加工上のトラブルを大幅に低減することができる。又、これらの成形に於いて、印刷面に樹脂基材を配置すると、一体化した時に前記の印刷図柄のデザインを十分に表現できない可能性が有るので、加飾シートのエンボス加工された非印刷面に基材樹脂を配置することが望ましい。又、本発明におけるCDのクリアーケースのような用途においては、加飾シートの非印刷面側に基材樹脂を一体化させる方が、両者の間に接着剤層を設ける必要も無く合理的である。
【0032】
基材樹脂としては、120〜300℃の温度範囲で加飾成形が可能な樹脂を用いることができ、その例としては各種のポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、各種のポリオレフィン系樹脂、各種の熱可塑性ポリエステル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂等が挙げられるが、特に透明ポリスチレン樹脂は、得られた成形体を回収し、ポリスチレン樹脂としてリサイクル使用することができる。又、この樹脂を基材とした加飾成形体は、透明性や図柄精度が良好であり、フラット面の反りが少ないことから、例えばCDケースに代表される表面を加飾したクリアーケースに好適に用いることができる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
本発明において、シート用樹脂原料としていかに示した樹脂を用いた。
(A)−1 スチレン系共重合樹脂 クリアレン 730L(電気化学工業(株)製)
ブタジエン含有量 b/(a+b)=0.25 MFI=7.2
(A)−2 スチレン系共重合樹脂 クリアレン 530L(電気化学工業(株)製)
ブタジエン含有量 b/(a+b)=0.16 MFI=7.3
(B)−1 ポリスチレン樹脂 トーヨースチロール G14L(東洋スチレン(株)製)
MFI=9.3
(B)−2 ポリスチレン樹脂 トーヨースチロール MW1(東洋スチレン(株)製)
MFI=1.8
(C)−1 ポリスチレン系樹脂 トーヨースチロール HIE6(東洋スチレン(株)製)
ブタジエン含有量 5.5%
(C)−2 ポリスチレン系樹脂 トーヨースチロール HISQ301(東洋スチレン(株)製)
ブタジエン含有量 7.2%
【0034】
前記の原料を表1に示した組成比でブレンドし、65mm単軸押出機に供給し、170〜210℃に設定したシリンダー内で溶融混練した後、ダイ幅700mm、ダイリップ間隔0.5mmのTダイによってシート状に押出し、厚み0.2mmのシートを得た。
【0035】
(成形品の反りの測定)
前記の方法で製膜したシートをオフセット印刷にて印刷し、図1のような装置を用いて、加飾シートの非印刷面側に基材樹脂を一体成形してCDケースの上蓋を得た。(成形品寸法(mm W=124 L=141 D=11)。得られたCDケースの上蓋の図2に示した反り量(21)をデジタルノギスを用いて測定した。実施例及び比較例の測定結果を表1に示した。
【0036】
(シートの摩擦帯電圧の測定)
前記の方法にて得られたシートの摩擦帯電圧を以下の方法にて測定した。実施例及び比較例の測定結果を表1に示した。
使用機器 帯電圧計 キーエンス社製 SR−200、SK−030
測定条件 シートを2枚重ね、120g荷重にて10cm摩擦させた後測定(23℃、50%)
【0037】
(成形品図柄精度の評価)
前記の方法にて製膜したシートをオフセット印刷にて印刷し、図1のような装置を用いてCDケースとして一体成形した。(成形品寸法(mm) W=124L=141 D=11)得られた成形品の図柄精度を目視により観察し、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示した。
100ショットの連続的な成形による評価
○ : 図柄のずれているものが全く無い
× : 図柄のずれているものが有る。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
本発明により、シートの内部歪みが少なく、印刷が可能な表面平滑性を有し、インモールド成形等で熱可塑性樹脂基材と一体化する際にシート同士が貼り付くことによる位置ずれが起こらず、更に一体化した成形体の反りが少なく図柄精度が良好で意匠性の優れた表面加飾成形体を得ることのできるスチレン系樹脂シート及びそれを用いた加飾成形体を得ることができる。特にポリスチレン樹脂としてリサイクル可能な透明ポリスチレンを基材とするクリアーケース等の優れた表面加飾成形体の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面加飾成形体の「反り」評価に用いた装置の概念図である。
【図2】本発明の表面加飾成形体の「反り量」を示す概念図である。
【符号の説明】
11 射出成形機
12 金型
13 熱可塑性樹脂基材
14 加飾シート
Claims (7)
- スチレン系単量体(a)及び共役ジエン系単量体(b)の連鎖を有するスチレン系樹脂(A)を主成分とするシートの片面にエンボス加工が施されていることを特徴とする加飾成形用スチレン系樹脂シート。
- スチレン系樹脂(A)が、有機リチウム開始剤を用いたアニオン重合により得られる重合体であって、スチレン系単量体(a)及び共役ジエン系単量体(b)の組成比b/(a+b)が0.20〜0.28である請求項1に記載の加飾成形用スチレン系樹脂シート。
- スチレン系樹脂(A)を60〜80%、実質的にスチレン系単量体の連鎖のみからなるポリスチレン樹脂(B)を20〜30%及びブタジエン連鎖を含有するポリスチレン樹脂(C)を0〜10%含有する樹脂組成物からなる、請求項1又は請求項2に記載の加飾成形用スチレン系樹脂シート。
- 請求項1〜3のいずれか1項のスチレン系樹脂シートのエンボス加工が施された面の反対側の面に加飾印刷を施し加飾シートとし、該シートと熱可塑性樹脂基材を一体化した表面加飾成形体。
- 熱可塑性樹脂基材がポリスチレン系樹脂である請求項4の表面加飾成形体
- 熱可塑性樹脂基材が透明ポリスチレン系樹脂である請求項4の表面加飾成形体からなるクリアケース。
- 加飾シートと熱可塑性樹脂基材を、射出成形、プレス成形又はシートの熱成形により一体化することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の表面加飾成形体の製造方法。
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