JP2004187609A - 最適アンチセンス配列の決定法 - Google Patents

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Makoto Koizumi
誠 小泉
Daisuke Nakai
大介 中井
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Abstract

【課題】mRNAが細胞内で本来有する高次構造に基づいて最適なアンチセンス配列を予測するための新規な方法、および該方法を利用したアンチセンスオリゴヌクレオチドの製造方法を提供すること。
【解決手段】ランダムな配列を有するRNA プールより、実質的に細胞内と同等の条件下において標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択し、選択したRNAから、再び前記条件下で前記mRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する工程を繰り返すことを特徴とする、標的遺伝子に対するアンチセンス配列の決定方法。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアンチセンス配列の決定方法に関する。より詳細には、mRNAが細胞内で本来有する高次構造に基づいて最適なアンチセンス配列を決定する方法、および該方法を利用したアンチセンスオリゴヌクレオチドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列特異的にmRNAとワトソン−クリック型の塩基対を形成して目的タンパク質の発現を抑制するというユニークなメカニズムで作用することから、既存の薬剤よりも高い選択性と低い副作用が期待されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
アンチセンス配列は、通常mRNAの機能部位、例えば、5'-非翻訳部位、開始コドン近傍、スプライス部位、終止コドン近傍などから選ばれる場合が多い。また、標的遺伝子のヌクレオチド配列に基づいてアンチセンス配列を決定するいくつかの方法も周知である。例えば、ランダムな短鎖DNA断片と標的遺伝子のRNAを混ぜ、RNase Hで消化し、切断部位をアンチセンス配列とする方法(例えば、非特許文献2〜4参照);ランダムな短鎖DNA断片と標的遺伝子のRNAを混ぜ、結合したものをゲルシフト法により選択し、結合部位を決定する方法(例えば、特許文献1および非特許文献5参照);アンチセンス配列を有する20量体程度のオリゴヌクレオチドをガラスプレート等に固定化したアレイを作製し、ラジオアイソトープ等で標識した標的遺伝子のRNAを用いてハイブリダイゼーションを行い、RNAが結合する配列を決定する方法(例えば、非特許文献6参照)等が知られている。さらに、コンピュータープログラムを用いてアンチセンス配列を決定する方法も報告されている(例えば、非特許文献7および8参照)。
【0004】
しかしながら、これらの方法はRNase Hの反応に適した塩濃度(高Naイオン濃度)など、細胞内環境とは異なる条件下においてアンチセンス部位を検索するものであるため、必ずしもmRNAが本来有する高次構造を反映した方法とはいえない。
【0005】
核酸の構造は、そのリン酸基、糖水酸基、塩基部の複素環窒素、アミノ基等に金属イオンが配位することによって、変化することが知られている(例えば、非特許文献9参照)。また、核酸はアミノ基、リン酸基等のプロトン付加部位を有するため、外部のpHが細胞内の値(約pH7.2)から大きくずれると、その構造が生体内で本来有する構造とは異なってくることが予測される。
【0006】
したがって、標的核酸の発現を生体内でより効果的に阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドを得るために、mRNAが本来有する高次構造に基づいてアンチセンス配列を検索する、新規な方法が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】
米国特許 第6,022,691号明細書
【非特許文献1】
R. Schlingensiepen and K.-H. Schinggensiepen, "Antisense- from technology to therapy", Black Sciences Ltd., Berlin, edrs, R. Schlingensiepen, W. Brysch and K.-H. Schinggensiepen Chaper I, p3-28.
【非特許文献2】
Lloyd,B.H. et al., “ヌクレイック アシッド リサーチ(Nucleic Acids Research)”, 2001, 29, p3664-3673.
【非特許文献3】
Ho,S.P. et al., “ヌクレイック アシッド リサーチ(Nucleic Acids Research)”, 1996, 24, p1901-1907.
【非特許文献4】
Matveeva,O., “ヌクレイック アシッド リサーチ(Nucleic Acids Research)”, 1997, 25, p5010-5016.
【非特許文献5】
Bruce,T.W. and Lima,W.F., “バイオケミストリー(Biochemistry)”, 1997, 36, p5004-5019.
【非特許文献6】
Sohail,M. et al., “ヌクレイック アシッド リサーチ(Nucleic Acids Research)”, 2001, 29, p2041-2051.
【非特許文献7】
Scherr,M., “ヌクレイック アシッド リサーチ(Nucleic Acids Research)”, 2000, 28, p2455-2461.
【非特許文献8】
Patzel et al., “ヌクレイック アシッド リサーチ(Nucleic Acids Research)”, 1999, 27, p4328-4334.
【非特許文献9】
W.ゼンガー著、西村善文訳「核酸構造(上)」、シュプリンガーフェアクラーク東京、第十五章 tRNA:立体化学の情報の宝庫
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、mRNAが細胞内で本来有する高次構造に基づいて最適なアンチセンス配列を予測するための新規な方法と、該方法を利用したアンチセンスオリゴヌクレオチドの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ランダムなRNAプールから、細胞内により近い条件下でmRNAにハイブリダイズする配列を検索するための簡便な方法を確立した。そして、この方法によれば、mRNAの複雑な高次構造を解析することなく、本来の高次構造を保持したmRNAに対して高い親和性でハイブリダイズしうるアンチセンス配列を簡便に決定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、標的遺伝子に対するアンチセンス配列の決定方法であって、ランダムな配列を有するRNA プールより、実質的に細胞内と同等の条件下において標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択し、選択したRNAから、再び前記条件下で前記mRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する工程を繰り返すことを特徴とする方法に関する。
【0011】
前記方法は、好適には以下の工程を含む:
1)ランダムな配列を有するRNAプールより、実質的に細胞内と同等の条件下において標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する;
2)選択したRNAを、逆転写して増幅後、再びRNAに転写する;
3)上記RNAから、再び実質的に細胞内と同等の条件下で標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する;
4)上記2)および3)の工程を繰り返し、得られたRNAの配列に基づき標的遺伝子のアンチセンス配列を決定する。
【0012】
本発明の方法において、実質的に細胞内と同等の条件は、少なくとも標的遺伝子のmRNAが存在する細胞内の温度、pH、および塩濃度の値によって規定される。
【0013】
前記条件は、例えば、温度30〜45℃、pH6.5〜8.0、Naイオン5〜50mM、Kイオン100〜200mM、Caイオン0.5〜2mM、かつMgイオン5〜20mMの条件であり、より好適には、温度37℃、pH7.2、Naイオン10mM、Kイオン160mM、Caイオン1mM、かつMgイオン13mMの条件である。
【0014】
本発明の方法において、RNAプールより選択したRNAから、再び標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する工程は、少なくとも3回以上、より好ましくは7回以上繰り返すことが望ましい。
【0015】
また、本発明で用いられるRNAプールは、16〜25塩基長の連続したランダムな配列を含むRNAオリゴヌクレオチドからなることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、本発明の方法によって決定されたアンチセンス配列に基づき、標的遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを製造する方法を提供する。
【0017】
前記方法の好適な態様において、製造されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、下記一般式(I)に示される構造を少なくとも1つ含む修飾オリゴヌクレオチド、またはその塩、ならびにこれらの水和物である。
【0018】
【化2】
Figure 2004187609
[式中、Aは、単結合、または炭素数1乃至4個のアルキレン基を示し、Bは、プリン−9−イル基、2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、または下記α群から選択される置換基を有する置換プリン−9−イル基、若しくは置換2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を示す:
(α群)
水酸基、保護された水酸基、炭素数1乃至4個のアルコキシ基、メルカプト基、保護されたメルカプト基、炭素数1乃至4個のアルキルチオ基、アミノ基、保護されたアミノ基、炭素数1乃至4個のアルキル基で置換されたアミノ基、炭素数1乃至4個のアルキル基、およびハロゲン原子。]
【0019】
前記修飾ヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは標的mRNAに対する結合力が強いため、天然型アンチセンスオリゴヌクレオチドに比較して、より高いアンチセンス効果を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.用語の定義
標的遺伝子:本明細書中において、「標的遺伝子」とは、その転写・発現を阻害する対象となる遺伝子を意味する。遺伝子には、構造遺伝子からオペレーター等の制御遺伝子まで遺伝情報を担う核酸分子の全てを含み、DNA、RNA、mRNA、tRNA、rRNAのほか、cDNA、cRNAも含むものとする。
【0021】
アンチセンス配列:本明細書中において、「アンチセンス配列」とは、標的遺伝子のmRNAの少なくとも一部に相補的配列を含み、該mRNAに特異的にハイブリダイズして、その転写・発現を阻害しうるヌクレオチド配列を意味する。
【0022】
ハイブリダイズ:「ハイブリダイズ」は、DNAがワトソン−クリックのモデルに基づく塩基対結合によって2重らせん構造(double helix structure)を形成することを意味する。2つの核酸分子が完全に相補的でない場合でも、前記塩基対結合による2重らせん構造を構成する限り、ハイブリダイズに含まれる。
【0023】
RNAプール:本明細書中において、「RNAプール」とは、あらゆる配列を含むRNA分子の集合体(プール)を意味する。プールを構成するRNA分子は、その全てあるいは一部に16〜25塩基長程度の連続したランダムな配列を含むことが好ましい。このRNAプールを構成するRNAの構造や数については次項で詳細に説明する。
【0024】
2. ランダムな配列を有するRNAプール
2.1 RNAプールの構成
本発明で用いられる、RNAプールは、すべての可能性のあるRNA配列をカバーすることが好ましい。ここで、プールに含まれるRNAのランダム部位の長さを、16ヌクレオチドとすると、全ての可能性のある配列は416=約4 x 109存在することになる。この数値は、ヒトゲノムのサイズである30億塩基を上回り、16ヌクレオチドにマッチする配列は、確率的に1度しか出現しない計算になる。また、ランダム部位の長さを、20ヌクレオチドとすると、全ての可能性にある配列は420=約1012存在することになる。いずれの場合も、通常試験管内で酵素反応等の実験を行うのに適当な100 pmol=6 x 1013分子のスケール範囲において、すべての可能性のある分子をカバーする。さらに、ランダム部位の長さを、25ヌクレオチドとすると、全ての可能性にある配列は425=約1015となる。ランダム部位の長さが増えるほど、実験に用いる試薬量も多くなるため、作業性を考慮するとランダム部位の長さとしては25塩基長程度を上限とすることが好ましい。
【0025】
以上より、配列の出現頻度、実験の容易さから、プールを構成するRNA分子中のランダム部位の長さは16〜25塩基長が好ましく、18から22塩基長がさらに好ましい。このランダム部位の長さは、一般にアンチセンス核酸として好適であると言われる塩基長(20塩基長程度)をカバーしうる。
【0026】
2.2 RNAプールの調製
ランダムな配列を有するRNAプールの調製方法は、特に限定されず、公知の核酸合成法や核酸増幅法によって作製されたDNAプールをRNAに転写して調製することができる。
【0027】
例えば、RNAプールの好適な調製方法として、Bartelらの方法(Bartel, D.P.,Szostak,J.W. Science (1993), 261, 1411)を挙げることができる。Bartelらの方法では、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジンのアミダイト試薬を、その反応性を考慮して、3:2:3:2のモル比になるように混合し、DNA合成機上で縮合した後、脱保護、精製して鋳型DNAを作製する。次いで、この鋳型DNAを増幅・転写してRNAプールを調製する。したがって、鋳型DNAには増幅・転写のためのプライマー結合部位やT7プロモーター配列が必要で、これら配列を含まない場合には、公知の方法により該配列を付加して、増幅・転写に供さねばならない。
【0028】
このプライマー結合部位やT7プロモーター配列の導入は、選択されたRNAを次の選択サイクルに供するための、逆転写・増幅・転写の段階でも必要とされる。
そこで、RNAプールの調製方法については、「3.4 Gn RNAの調製」の項で、RNAの構造(プライマー結合部位を含むか否か)に基づき4つに場合分けして詳細に説明する。
【0029】
2.3 標的遺伝子のmRNAまたはcRNA
RNAプールにハイブリダイズさせる標的遺伝子は、該遺伝子のmRNAそのものが利用可能であればこれを用いればよいが、一般に目的とするmRNAは試料中ごく微量にしか存在しない。そこで、mRNAからcDNAクローンを作製し、これを転写して得たcRNAをmRNAの代わりに用いることができる。これらのmRNAやcRNAは、標的遺伝子の全ての部分をコードするものであっても良いし、特定の機能を有する部分のみをコードするものであってもよい。
【0030】
なお、cRNAの調製は、公知の方法にしたがって容易に実施することができる。例えば、標的遺伝子を多量に発現している細胞から、公知の方法にしたがい、全RNAを抽出する。抽出方法は特に限定されず、例えば、チオシアン酸グアニジン・塩化セシウム超遠心法、チオシアン酸グアニジン・ホットフェノール法、グアニジン塩酸法、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法(Chomczynski, P. and Sacchi, N., (1987) Anal. Biochem., 162, 156-159)等を採用することができる。
【0031】
次いで、抽出された全RNAをさらにmRNAに精製する。精製方法は特に限定されないが、真核細胞の細胞質に存在するmRNAの多くは、その3'末端にポリ(A)配列を持つため、この特徴を利用して、例えば、以下のように実施することができる。まず、抽出した全RNAにビオチン化オリゴ(dT)プローブを加えてポリ(A)+RNAを吸着させ;ストレプトアビジンを固定化した常磁性粒子担体を加え、ビオチン/ストレプトアビジン結合を利用して、ポリ(A)+RNAを捕捉させ;洗浄操作の後、オリゴ(dT)プローブからポリ(A)+RNAを溶出する。この方法のほか、オリゴ(dT)セルロースカラムを用いてポリ(A)+RNAを吸着させ、これを溶出して精製する方法も採用してもよい。溶出されたポリ(A)+RNAは、さらに、ショ糖密度勾配遠心法等により分画してもよい。
【0032】
精製されたmRNAは逆転写してcDNAを合成する。次いで2本鎖DNAとし、平滑化した後、適当なリンカーまたはアダプターを付加してベクターに組み込み、cDNAライブラリーを作製する。このcDNAライブラリーを対象に、標的遺伝子または類似遺伝子の配列をもとに作製したプローブやプライマーを用いて、標的遺伝子のスクリーニングを行うか、あるいは発現スクリーニングを行う。かくして、標的遺伝子cDNAが単離されれば、これを増幅し、適当なRNAポリメラーゼで転写することにより標的遺伝子のcRNAを調製することができる。
【0033】
3. アンチセンス配列の決定プロセス
アンチセンス配列の決定は、以下の工程を順次行うことにより実施される:
1)ランダムな配列を有するRNAプールから、実質的に細胞内と同等の条件下において標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する;
2)選択したRNAを、逆転写して増幅後、再びRNAに転写する;
3)上記RNAから、再び実質的に細胞内と同等の条件下で標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する;
4)上記2)および3)の工程を繰り返し、得られたRNAの配列に基づき標的遺伝子のアンチセンス配列を決定する。
【0034】
3.1 ハイブリダイゼーション
(1)実質的に細胞内と同等の条件
前項で調製したRNAプールと、標的遺伝子のmRNAまたはcRNAをハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの条件は、アンチセンス核酸が実際に機能しうる環境とできる限り近い条件、すなわち実質的に細胞内と同等の条件でなければならない。
【0035】
これは、核酸の構造が、そのリン酸基、糖水酸基、塩基部の複素環窒素、アミノ基等に金属イオンが配位することによって変化すること(W.ゼンガー著、西村善文訳、「核酸構造」、第十五章 tRNA:立体化学の情報の宝庫);また、核酸はアミノ基、リン酸基等のプロトン付加部位を有するため、外部のpHが細胞内の値(約pH7.2)から大きくずれると、その構造が生体内で本来有する構造とは異なってくると予測されること;のためである。
【0036】
ここで、「細胞内と同等の条件」とは、mRNAが存在する細胞内と同じ環境条件を意味し、例えば、核酸構造に影響を及ぼすと思われる、温度、pH、塩濃度によって規定される。また、「実質的に」とは、細胞内と完全に同じではないが、mRNAが細胞内と同じ立体構造を維持できる範囲において、細胞内に近い条件を含むことを意味する。したがって、「実質的に細胞内と同等の条件」は、細胞内の温度、pH、塩濃度等の各平均値に許容しうる変動を加味して、例えば、温度30〜45℃、pH6.5〜8.0、Naイオン5〜50mM、Kイオン100〜200mM、Caイオン0.5〜2mM、かつMgイオン5〜20mMの条件として設定される。より好適には、温度37℃、pH7.2、Naイオン10mM、Kイオン160mM、Caイオン1mM、かつMgイオン13mMの条件として設定される。なお、上記陽イオンのカウンターイオンとしては、例えば、無機イオンであれば、塩素イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン等を、有機イオンであれば、炭酸イオン、重炭酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン、乳酸イオン等を挙げることができる。
【0037】
(2)ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションは、上記のように、実質的に細胞内と同等の条件下において、RNAプールに標的遺伝子のmRNAまたはcRNAを添加して実施する。例えば、Naイオン10mM、Kイオン160mM、Caイオン1mM、Mgイオン13mMを含むTris-HCl(pH7.2、37℃)にRNAプールを溶解し、標的遺伝子のmRNAまたはcRNAを添加して37℃でインキュベートする。
【0038】
上記反応系に添加されるRNAプールの量は特に限定されず、例えば、1pmol〜0.1μmol程度を添加することができる。また上記反応系に添加される標的遺伝子のmRNAまたはcRNAの量も特に限定されず、例えば、1fmol〜1pmol程度を添加することができる。反応時間は、少なくとも2分以上、好ましくは5〜60分程度にするとよい。
【0039】
なお、後述するように、オリゴ(dT)固相化担体を用いてBF分離を行う場合は、RNAプールは予めオリゴ(dT)固相化担体に結合するRNAを除去しておくことが好ましい。
【0040】
3.2 BF分離
前記ハイブリダイゼーション後、標的遺伝子のmRNAまたはcRNAにハイブリダイズしたRNA(B)と遊離のRNA(F)を分離する。分離方法は特に限定されず、例えば、オリゴ(dT)固相化担体や限外ろ過膜を利用した方法を挙げることができる。
【0041】
(1)オリゴ(dT)固相化担体
mRNA(cRNA)は、その3'末端にポリ(A)配列を持つため、この特徴を利用して、オリゴ(dT)を固定化した固相担体(オリゴ(dT)固相化担体)にmRNAまたはcRNAを結合させることにより、遊離のRNA(F)と分離する。そして、分離されたmRNAまたはcRNAよりこれにハイブリダイズしているRNA(B)を適当な条件で溶出させることにより、標的遺伝子のmRNAまたはcRNAに特異的にハイブリダイズしたRNA(B)を選択することができる。
【0042】
なお、オリゴ(dT)固相化担体を用いたBF分離を行う場合、RNAプールからオリゴ(dT)にハイブリダイズしうるRNAを予め除いておくことが好ましい。すなわち、ハイブリダイゼーションの前に、RNAプールはオリゴ(dT)固相化担体を加え、あるいはオリゴ(dT)固相化担体を充填したカラムに通し、これに結合しないものを選択して用いることが好ましい。
オリゴ(dT)固相化担体にmRNAまたはcRNAを介して付着したRNA(B)は、例えば、適当量の滅菌水を用いて溶出することができる。
【0043】
(2)限外ろ過
遊離のRNA(F)とmRNAまたはcRNAに結合したRNA(B)を、サイズの違いを利用することにより、限外ろ過法を用いてBF分離を行うこともできる。
使用する限外ろ過膜の分画分子量は、16〜80塩基長程度の遊離のRNA(F)と標的遺伝子のmRNA(cRNA)に結合したRNA(B)を分離できるものであればよい。したがって、一般には5,000〜30,000程度の分画分子量を有するものが好ましい。また、限外ろ過膜は、遠心チューブとセットされた市販の遠心ろ過デバイス(例えば、Amicon製、Microcon製 等)を用いると操作が簡便でよい
最後に、限外ろ過膜上にあるmRNA(cRNA)に結合したRNA(B)を回収する。
【0044】
(3)各サイクルにおけるBF分離
本発明の方法では、上記のハイブリダイゼーション⇒選択(分離)の操作を数回繰り返す。ここで、n回目の選択操作で得られるRNAをGn RNAと呼ぶこととする。つまり、ハイブリダイゼーション前のRNAプールはG0 RNA、1回の選択操作を行ったRNAはG1 RNAとなる。
前述したようにBF分離の方法は特に限定されず、上記オリゴ(dT)固相化担体と限外ろ過法の一方のみを用いてもよいし、両方法を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
3.3 RNAの増幅
得られたGn RNAは次の選択サイクルに供するため増幅を行う。この増幅プロセスは、Gn RNAの2本鎖DNAへの逆転写⇒増幅⇒RNAへの転写の3つのステップによって達成される。
【0046】
(1)逆転写と増幅
まず、選択されたGn RNAを逆転写酵素を用いてcDNAに逆転写し、2本鎖DNAとした後、増幅を行う。逆転写反応は、公知の方法にしたがい、適当なReverse Transcriptase を用いて行えばよい。また、増幅法はPCR増幅が一般的であるが、SDA法、LCA法等、公知のいずれの核酸増幅法を用いてもよい。逆転写からPCR増幅までの一連の反応は、市販のキット(例えば、Ready-To-Go RT-PCR Beads(Amersham-Pharmacia 製)等)を用いて簡便に実施することができる。
【0047】
(2)転写
増幅した2本鎖DNAはRNAポリメラーゼを用いてRNAに転写する。用いられるRNAはT7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ等、特に限定されないが、鋳型となる2本鎖DNAにはこれらRNAポリメラーゼのプロモーター配列が含まれていることが必要となる。
【0048】
3.4 Gn RNAの調製
上記の逆転写・増幅・転写の反応では、鋳型となるDNAやRNAに、増幅・転写のためのプライマー結合部位やRNAポリメラーゼプロモーター配列が必要とされる。したがって、これら配列を含まない場合には、公知の方法により該配列を付加して、増幅・転写に供さねばならない。
【0049】
以下に、RNAプールを構成するG0 RNA、およびGn RNAの調製方法を、当該RNAの構造(プライマー結合部位を含むか否か)に基づき、4つに場合分けして説明する。
【0050】
(1) ランダム配列の両側にプライマー結合部位を持つ場合
図1−1に示すように、16-25ヌクレオチド程度のランダム部位を含み、このランダム配列の両側にPCR増幅のためのプライマー結合部位を有するRNAプールの調製方法について説明する。
【0051】
まず鋳型DNAとして、ランダム配列の両側に適当な配列が連結されたDNAを合成する。次に、上記鋳型DNAを、少なくともいずれか一方にRNAポリメラーゼプロモーター配列を含むプライマーを用いてPCR増幅する。
【0052】
例えば、以下のような鋳型DNAを、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列を含む5'側プライマーおよび3'側のプライマーで増幅する。
鋳型DNA:5'-GTGGCCAAGCTTACCG(N)16-25GTCGCCATCTCTTCCTATAGTGAGTCGTATTAGAATTA-3'(配列番号1:Nは任意のヌクレオチド、配列表は(N)20として記載)
5'側プライマー:5'-GAATTCTAATAGGACTCACTATAGGAAGAGATGGCGAC-3'(配列番号2)
3'側プライマー:5'-GTGGCCAAGATTACCG-3'(配列番号3)
増幅された生成物は、RNAポリメラーゼのプロモーター配列を含むため、これを転写、精製することによりランダム配列の両側にプライマー結合部位を持ったRNAプール(G0 RNA)を作製することができる。
【0053】
例えば、例示した上記鋳型DNAと上記プライマーで増幅した生成物をT7RNAポリメラーゼで転写すれば、ランダム配列部位の5'側に、5'-GGAAGAGAUGGCGAC-3'(配列番号3:図中、波線部分)を、3'側に5'-CGGUAAGCUUGGCCAC-3'(配列番号4:図中、細線部分)を含むRNAを得ることができる。
このRNAプールから選択されたGn RNAの増幅・転写は、上記のG0 RNAの増幅・転写と基本的に同様のステップで行うことができる(図1−1参照)
【0054】
(2) ランダム配列の3'側にのみプライマー結合部位を持つ場合
図1−2に示すように、16-25ヌクレオチド程度のランダム部位を含み、該ランダム配列の3'側にのみPCR増幅のためのプライマー結合部位を有するRNAプールの調製方法について説明する。
【0055】
まず鋳型DNAとして、ランダム配列の3'側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列に相補的配列がこの順で連結されたDNAを合成する。次に、上記鋳型DNAを、RNAポリメラーゼプロモーター配列を含む5'側プライマーと、適当な3'側プライマーを用いてPCR増幅する。
【0056】
例えば、以下のような鋳型DNAを、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列を3'側に含む5'側プライマーおよび3'側のプライマーで増幅する。
鋳型DNA:5'-GTGGCCAAGCTTACCG(N)16-25CTATAGTGAGTCGTATTAGAATTC-3'(配列番号5:Nは任意のヌクレオチド、配列表は(N)20として記載)
5'側プライマー:5'-GAATTCTAATACGACTCACTATA-3'(配列番号6)
3'側プライマー:5'-GTGGCCAAGCTTACCG-3'(配列番号3)
【0057】
増幅された生成物は、RNAポリメラーゼで転写可能であるため、これを転写、精製することによりランダム配列の3'側にのみプライマー結合部位を持つRNAプールを作製することができる。例えば、例示した上記鋳型DNAを上記プライマーで増幅した生成物をT7RNAポリメラーゼで転写すれば、ランダム配列部位の3'側にのみ5'-CGGUAAGCUUGGCCAC-3'(配列番号4:図中、細線部分)を含むRNAが得られる。
【0058】
このRNAプールから選択されたRNAを増幅するためには、まず、大腸菌由来アルカリ性ホスファターゼなどのホスファターゼ処理により、トリリン酸基を除去し、3'末端のジオールを過ヨウ素酸酸化し、アルデヒドとした後、アルカリ性溶液で処理して、一塩基短いRNAとする(日本生化学会編「続生化学実験講座1、遺伝子の研究法I」、東京化学同人、1986年10月刊、第3章 RNAリガーゼによるRNAの構造変換)。
【0059】
次に、3'-ホスファターゼフリーのT4ポリヌクレオチドキナーゼ等によって、3',5'の両末端にリン酸基をもったRNAとする。これを、RNAリガーゼ等を用いて、5'側にRNAポリメラーゼプロモーター配列を含むオリゴヌクレオチド、例えば、5'-CUAAUACGACUCACUAUA-3' (配列番号7:図中、波線部分)と結合する(日本生化学会編「続生化学実験講座1、遺伝子の研究法I」、東京化学同人、1986年10月刊、第3章 RNAリガーゼによるRNAの構造変換)。
その後は、通常の方法で逆転写、PCR増幅、RNAポリメラーゼによる転写を順次行えば、目的とするGn RNAが得られる(図1−2参照)。
【0060】
(3) ランダム配列の5'側にのみプライマー結合部位を持つ場合
図1−3に示すように、16-25ヌクレオチド程度のランダム部位を含み、該ランダム配列の5'側にのみPCR増幅のためのプライマー結合部位を有するRNAプールの調製方法について説明する。
【0061】
まず鋳型DNAとして、ランダム配列の5'末端に隣接して制限酵素切断部位を有するDNAを合成する。次に、上記鋳型DNAを、RNAポリメラーゼプロモーター配列を含む5'側プライマーと、3'末端側に制限酵素切断部位を含む3'側プライマーを用いてPCR増幅する。
【0062】
例えば、以下のような鋳型DNAを、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列を含む5'側プライマーおよびBalI切断部位を含む3'側のプライマーで増幅する。
鋳型DNA:5'-GTGGCCAAGCTTACCGTGGCCA(N)16-25GTCGCCATCTCTTCCTATAGTGAGTCGTATTAGAATTC-3'(配列番号8:Nは任意のヌクレオチド、配列表は(N)20として記載)
5'側プライマー:5'-GAATTCTAATACGACTCACTATAGGAAGAGATGGCGAC-3'(配列番号2)
3'側プライマー:5'-GTGGCCAAGCTTACCGTGGCCA-3'(配列番号9)
増幅された生成物を、制限酵素で切断すれば、ランダム配列の5'側にのみプライマー結合部位を有し、かつRNAポリメラーゼで転写可能なDNAが得られる。したがって、これを転写、精製することによりランダム配列の5'側にのみプライマー結合部位を持つRNAプール(G0 RNA)を作製することができる。
【0063】
例えば、例示した上記鋳型DNAを上記プライマー増幅された生成物を、BalIで切断し、T7RNAポリメラーゼで転写すれば、ランダム配列部位の5'側にのみ5'-GGAAGAGAUGGCGAC-3'(配列番号10:図中、波線部分)を含むG0 RNAが得られる。
【0064】
このRNAプールから選択されたRNAを増幅するためには、まず、大腸菌由来アルカリ性ホスファターゼなどのホスファターゼ処理により、トリリン酸基を除去し、これに、RNAリガーゼを用いて、3'側にPCRで増幅可能な配列:例えば、5'-CCACGGUAAGCUUGGCCAC-3'(配列番号11:図中、細線部分)を結合する。
【0065】
これをRT-PCRで2本鎖DNAとした後、上記プライマーでPCR増幅する。増幅生成物は3'側のプライマーに制限酵素切断部位(BalI切断部位)が含まれているため、TGGCCAのGC間がBalIで切断され、ランダム配列の5'側にのみ5'-GGAAGAGAUGGCGAC-3'(配列番号10:図中、波線部分)を含むGn RNAが得られる。
【0066】
上記の例では、BalIを用いたが、異なる制限酵素を用いても同様に実施できる。なお、制限酵素によって増幅された断片の内側が切断される場合には、本方法ではGn RNAを取得することができないので、このような問題を防ぐためには複数の制限酵素を組み合わせて使うこともできる。
【0067】
(4) ランダム配列にプライマー結合部位を持たない場合
図1−4に示すように、16-25ヌクレオチド程度のランダム部位の両側にPCR増幅のためのプライマー結合部位を持たないRNAのプールの調製方法について説明する。
【0068】
まず鋳型DNAとして、ランダム配列の3'側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列に相補的な配列、また5'側に制限酵素切断部位を有する配列が連結されたDNAを合成する。次に、上記鋳型DNAを、RNAポリメラーゼプロモーター配列を含む5'側プライマーと、3'末端に制限酵素切断部位を含む3'側プライマーを用いてPCR増幅する。
【0069】
例えば、以下のような鋳型DNAを、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列とプライマー結合部位を含む5'側プライマーおよびBalI切断部位を含む3'側のプライマーで増幅する。
鋳型DNA:5'-GTGGCCAAGCTTACCGTGGCCA(N)16-25CTATAGTGAGTCGTATTAGAATTC-3'(配列番号12:Nは任意のヌクレオチド、配列表は(N)20として記載)
5'側プライマー:5'-GAATTCTAATACGACTCACTATA-3'(配列番号6)
3'側プライマー:5'-GTGGCCAAGCTTACCGTGGCCA-3'(配列番号9)
【0070】
増幅された生成物を、制限酵素で切断すれば、ランダム配列の5'側にのみプライマー結合部位を有し、RNAポリメラーゼで転写可能なDNAが得られる。したがって、これを転写、精製することによりにプライマー結合部位を持たないRNAプールを作製することができる。
【0071】
このRNAプールから選択されたRNAを増幅するためには、まず、大腸菌由来アルカリ性ホスファターゼなどのホスファターゼ処理により、トリリン酸基を除去し、これに、RNAリガーゼを用いて、3'側にPCRで増幅可能な配列を結合する。その後、3'-ホスファターゼフリーのT4ポリヌクレオチドキナーゼ等によって、3'、5'の両末端にリン酸基をもったRNAとする。次いで、RNAリガーゼを用いて、5'側にRNAポリメラーゼプロモーター配列を結合する。
【0072】
これをRT-PCRで2本鎖DNAとした後、上記プライマーでPCR増幅する。増幅生成物は3'側のプライマーに制限酵素切断部位(BalI切断部位)が含まれているため、TGGCCAのGC間がBalIで切断され、ランダム配列の両側にプライマー結合部位をもたないGn RNAが得られる。
【0073】
上記の例では、BalIを用いたが、異なる制限酵素を用いても同様に実施できる。なお、制限酵素によって増幅された断片の内側が切断される場合には、本方法ではGn RNAを取得することができないので、このような問題を防ぐためには複数の制限酵素を組み合わせて使うこともできる。
【0074】
3.5 クローニング
3.1〜3.4に説明した選択サイクルを繰り返し、アンチセンス配列に適したRNA配列がある程度絞りこまれてきたら、最終的に得られたGn RNAのクローニングを行う。選択サイクルの回数は標的遺伝子によって異なるが、通常少なくとも3回以上、好適には7回以上で、多くとも20回以下であることが望ましい。
【0075】
選択されたGn RNAのクローニングは、公知の方法にしたがい、得られたGn RNAを適当な制限酵素で切断後、適当なクローニングベクターに組み込んでクローニングすればよい。用いるベクターは特に限定されず、pUC18、pUC19等のpUC系ベクターやpBlueScriptII等、公知のベクターを任意に用いることができる。なかでも、制限部位カットバックの必要がないTOPOクローニングベクター(TOPOクローニングキット:Invitrogen製)は、正確な配列のクローニングができるという点で好ましい。
【0076】
3.6 シークエンシング
クローニングされたGn RNAの塩基配列の決定はマキサム-ギルバートの化学修飾法、またはM13ファージを用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法等、公知の手法により行うことができるが、自動塩基配列解析装置(ABI PRISM Model3700:Perkin-Elmer製等)を用いる方法が簡便で好ましい。
得られた配列は、標的遺伝子のmRNAまたはcRNAのアンチセンス配列との類似性を市販の解析ソフトを用いて解析するとよい。
【0077】
4. アンチセンスオリゴヌクレオチドの製造方法
本発明はまた、本発明の方法によって選択された最適アンチセンス配列に基づいて、アンチセンスオリゴヌクレオチドを製造する方法を提供する。
【0078】
4.1 合成
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロアミダイト法やホスファイト法、およびこれらに固相法を組み合わせた公知の化学合成法により合成することができる。
【0079】
核酸の化学合成は、市販の核酸自動合成機(ABI PRISM Model 394:Perkin-Elmer製等)を用いれば、より簡便に実施することができる。例えば、ホスホロアミダイト法を利用する場合であれば、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジンのホスホロアミダイトを混合し、適当な固相担体を用いて核酸合成機上で縮合する。合成された核酸は、例えば濃アンモニア水で処理するなどして固相担体から切り出すとともに、脱保護し、電気泳動やHPLC等を用いて精製する。なお、ヌクレオチドのホスホロアミダイトは、公知の方法にしたがって合成してもよいし、市販のもの(例えば、PE Biosystems製等)を用いても良い。固相担体としては、例えば、市販のものや特開平7−87982に記載の修飾コントロールポアグラスを好適に用いることができる。
【0080】
4.2 誘導体化
アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用にあたっては、標的 mRNAに対する相補性だけでなく、核酸分解酵素に対する安定性や細胞膜透過性、標的mRNAや2本鎖DNAに対する結合能力も問題になる。さらに、実用化を考慮すれば、その大量合成や精製の容易さも要求されることはいうまでもない。最近では、核酸分解酵素に対して安定で、かつ安全性にも優れた修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド(誘導体)も開発され、アンチセンス医薬としての臨床効果が期待されている。
【0081】
したがって、本発明の方法を用いて決定されたアンチセンス配列に基づいて合成されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、天然型ヌクレオチドのほか、上記誘導体のような非天然型ヌクレオチドを含むものであってもよい。
【0082】
好適な誘導体の例として、特開2000−297097号に記載されている修飾オリゴヌクレオチド(下記一般式(I)に示される構造を少なくとも1つ含む修飾オリゴヌクレオチド、またはその塩、ならびにこれらの水和物)を挙げることができる。
【0083】
【化3】
Figure 2004187609
[式中、Aは、炭素数1乃至4個のアルキレン基を示し、Bは、プリン−9−イル基、2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、または下記α群から選択される置換基を有する置換プリン−9−イル基若しくは置換2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を示す:
(α群)
水酸基、保護された水酸基、炭素数1乃至4個のアルコキシ基、メルカプト基、保護されたメルカプト基、炭素数1乃至4個のアルキルチオ基、アミノ基、保護されたアミノ基、炭素数1乃至4個のアルキル基で置換されたアミノ基、炭素数1乃至4個のアルキル基、およびハロゲン原子。]
【0084】
上記化合物は、例えば、5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O,4'-C-エチレン-6-N-ベンゾイルアデノシン-3'-O-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピル)ホスホロアミダイト(図2−2のAe2)、5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O,4'-N-イソブチリルグアノシン-3'-O-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピル)ホスホロアミダイト(図2−2のGe2)、5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O,4'-C-エチレン-4-N-ベンゾイル-5-メチルシチジン-3'-O-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピル)ホスホロアミダイト(図2−2のCe2)、5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O,4'-C-エチレン-5-メチルウリジン-3'-O-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピル)ホスホロアミダイト等を用いて合成することができる。
【0085】
その他、好適な修飾ヌクレオチドとしては、WO99/14226号およびWO00/47599号に記載の化合物やその塩、ならびにFreierら(S. M. Freier et al, Nucleic Acids Res., 25, 4429 (1997) )に記載の化合物やその塩を挙げることができる。
【0086】
さらに、チオエート化したヌクレオチドも好適に用いることができる。チオエート誘導体は、例えば、硫黄やテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD、アプライドバイオシステムズ社)、Beaucage試薬(Glen Research社)等の3価のリン酸に反応してチオエートを形成する試薬を用い、公知の方法(Tetarhedron Letters, 32, 3005(1991)、J. Am. Chem. Soc., 112, 1253(1990) )にしたがって得ることが出来る。
【0087】
上記化合物は、いずれも塩としても利用することができる。そのような塩としては、好適にはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩等の金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;弗化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリ−ルスルホン酸塩、酢酸塩、りんご酸塩、フマ−ル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩を挙げることができる。
【0088】
修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドは、上記の修飾ヌクレオチドを用いて、通常の核酸合成法と同様に核酸自動合成機により化学合成することができる。
【0089】
5. アンチセンス効果
5.1 アンチセンスオリゴヌクレオチドの導入
合成されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果は、実際に個体または細胞に該アンチセンスオリゴヌクレオチドを導入して、標的遺伝子の機能が特異的に阻害されるかどうかを観察することによって確認することができる。
【0090】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの個体または細胞への導入方法は、特に限定されず、導入対象となる個体や細胞に応じて適宜決定される。導入は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを直接個体または細胞に導入するほか、プラスミド等の適当なベクターに挿入して導入してもよい。例えば、動物個体への導入であれば、筋肉内、皮下、腹腔内への注射等により、また動物細胞への導入であれば、リポソーム法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法等を用いて直接アンチセンスオリゴヌクレオチドを導入することができる。植物個体への導入は種子に直接注入するほか、アンチセンスオリゴヌクレオチドを挿入したプラスミドをトランスフェクトすることにより、また植物細胞への導入であれば、リポソーム法、マイクロインジェクション法、あるいはプロトプラストへのエレクトロポレーション法等により導入することができる。
【0091】
5.2 アンチセンス効果の評価
アンチセンスオリゴヌクレオチドを導入された個体または細胞内における、標的遺伝子の発現阻害効果は、当該遺伝子の発現量を指標として評価してもよいし、該遺伝子による表現上の変化を指標として評価してもよい。例えば、本発明の実施例で用いたoatp2やoatp3のような細胞膜上有機トランスポーターであれば、トランスポーター機能の阻害に基づく、輸送物資の取り込み量変化に基づいて評価することができる。
【0092】
6. アンチセンスオリゴヌクレオチドの利用
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、個体または細胞に導入することにより、標的遺伝子の発現を特異的に阻害して該遺伝子の機能を特定するなど研究分野に利用可能なほか、個体や細胞の性質を改変するなど医薬品分野にも応用することができる。
【0093】
例えば、VEGF遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドであれば、VEGFによる血管新生や血管透過性亢進に関連した各種疾患、例えば、ガン、糖尿病網膜症、慢性関節リューマチ、乾癬、血管腫、強皮症、血管新生緑内障、癌性腹水貯留または虚血再灌流障害時の脳浮腫の治療および予防のための医薬組成物として利用できる。その他、疾患に関連するあらゆるタンパク質が発現抑制の標的となり得る。
【0094】
当該医薬組成物は、本発明の方法によって決定された配列に基づいて合成されたアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは薬学的に許容可能なその塩に、キャリヤー、増粘剤、希釈剤、バッファー、保存剤、表面活性剤、リポソーム、脂質調合剤等を適当量を混合することにより製造することができる。当該医薬組成物はまた、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬およびその類似薬剤のような、一つあるいはそれ以上の活性成分を含有させることもできる。当該医薬組成物は、被検者の局所および全身等に当該技術分野で公知のいずれかの投与法により投与することができる。具体的には、静脈内滴注、皮下、腹膜内または筋肉内注射等によって投与することができる。
【0095】
当該医薬組成物の投与量や投与期間は、各医薬組成物の効能等に依存して決定され、一般的には、分子量およびインビトロでのEC50および/または動物実験に基づいて、算出することができる。通常の場合、投与量は、0.001μg〜100gであり、毎日、毎週、毎月または毎年の間隔で一回〜数回、投与することができる。
【0096】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、特定遺伝子の機能を特異的に阻害することにより、動物または植物若しくは動物細胞または植物細胞を所望の性質を有するものに改変することができる。例えば、動物であれば特定遺伝子を機能が特異的に阻害された実験モデル動物の作製に、植物であれば改良品種の作製に利用できる。
【0097】
【実施例】
以下、実施例等を用いて本発明について詳細に説明するが、これら実施例等は例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕ランダムRNAプール(G0 RNA)の調製
下記のランダムな配列を持つオリゴデオキシリボヌクレオチドR1:5'-GTGGCCAAGCTTACCGNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGTCGCCATCTCTTCCTATAGTGAGTCGTATTAGAATTC-3'(配列番号1:Nは任意のヌクレオチド)
は、Bartelらの方法(Bartel, D.P., Szostak,J.W. Science (1993), 261, 1411)にしたがって合成した。すなわち、Nに相当する部分はアデノシン、グアノシン、シチジン、チミジンのアミダイト試薬を3:2:3:2のモル比(Totalのアミダイト濃度:0.1 M)になるように混合し、DNA合成機上で縮合した後、アンモニア水を加えて60℃ 5時間加熱して脱保護し、7M尿素を含む10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により精製した。
【0098】
このオリゴデオキシリボヌクレオチドR1(100 pmol)に、下記のprimer 1(110 pmol, 11.0 μl):
primer 1:5'-GAATTCTAATACGACTCACTATAGGAAGAGATGGCGAC-3'(配列番号2)と、5 x first strand buffer (GIBCO BRL製, 20 μl)を加え、滅菌水で全量を100μlとした。この溶液を90℃で1分間加温し、室温で5分間放置後、10mM 4dNTP (10 μl)、 SuperScript II reverse transcriptase (200 U, 2 μl)を加え、37℃で1時間加温して増幅した。反応液は、エタノール沈殿を行い、反応生成物を回収した。
【0099】
上記反応生成物を20μlの滅菌水に溶解し、AmpliScribe T7 transcription kit (Epicentre Technologies製)を用いて転写した。得られた転写産物は、7M尿素を含む10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動で精製し、ランダムRNAプール(G0 RNAと呼ぶ)とした。
【0100】
〔実施例2〕 ラットoatp2およびoatp3 cRNAの調製
ラットoatp2およびoatp3のcDNAからcRNAを調製した。cRNAは、制限酵素NotIで消化して直鎖状にしたcDNA (Abe, T. et al. J. Biol. Chem.、第273巻、22395頁、1998年)を鋳型として、T7 RNAポリメラーゼ(ストラタジーン製)を用いて合成した。なお、反応にはmCAP RNAキャッピングキット(ストラタジーン製)を用いた。
【0101】
〔実施例3〕:ランダムRNAプールからoatp cRNAに結合するRNAの選択
下記の操作1〜3を繰り返し、G1 RNAからG5 RNAを得た。G6 RNAおよびG7 RNAについては、操作1のかわりに下記操作4を行い、操作4、2、3の順に繰り返し、G8 RNAを得た。図3に操作の概略を示す。
【0102】
操作1:
実施例1で調製したランダムRNAプール(100 pmol)を buffer I(100 mM Tris-HCl (pH7.2、37℃)、10mM NaCl、160mM KCl、1mM CaCl2、13mM MgCl2)に溶解し、60℃ 5分間加温し、37℃ 10分間放置した。これにoligo-dT30 super(Roche Diagnostics製、 50μl)を加え、37℃で5分間加熱し、12000rpmで1分間遠心をし、上清を回収した。
【0103】
回収した上清に実施例2で調製したoatp2 cRNAまたは、oatp3 cRNA(0.1 μg、約0.2pmol)を加え、37℃で加温した。30分後、新たなoligo-dT30 super 50μlを加え、37℃で10分間加温した。12000rpmで1分間遠心をし、oligo-dT30 superを回収し、buffer I(50μl)を加え、再度遠心をし、この洗浄の操作を5回繰り返した。oligo-dT30 superに滅菌水50μlを加え、数分間放置することにより、ランダムRNAプールより選ばれoligo-dT30 superに結合したRNA (このような選択する操作を1回行ったものをG1 RNAと呼ぶ。以後、n回後の操作で選択されたRNAをGn RNAと呼ぶ)を溶出した。
【0104】
操作2:
Ready-To-Go RT-PCR Beads (Amasham-Pharmacia製)中に、G1 RNA(20μl)、実施例1で用いたprimer 1(10μM, 10μl)、下記の配列を有するprimer 2(10μM, 10μl):
primer 2:5'-GTGGCCAAGATTACCG-3'(配列番号3)、および
滅菌水10μlを加え、Takara thermal cycler TP(TAKARA製)を用い、マニュアルにしたがい逆転写反応を行い、PCR反応を行った(PCR条件:94度(15秒)、50℃(30秒)、72℃(30秒)、サイクル数:20回)。増幅したPCR産物である2本鎖DNAは、エタノール沈殿により得られた。
【0105】
操作3:
2本鎖DNAを16μlの滅菌水に溶解し、AmpliScribe T7transcription kit (Epicentre Technologies製)を用いて転写した。得られた転写産物は、7M尿素を含む10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動で精製し、増幅したGn RNA(n=1〜4)とした。
【0106】
操作4:
G5 RNA(0.5pmol)を buffer Iに溶解し、60℃で5分間加温し、37℃で10分間放置した。これにoligo-dT30 super(Roche製:50μl)を加え、37℃で5分間加温し、12000rpmで1分間遠心をし、上清を回収した。これに実施例2で調製したoatp2 cRNAまたは、oatp3 cRNA(0.1μg、約0.2pmol)を加え、37℃で加温した。30分後、限外ろ過フィルター(Microcon製、YM-5)を用いて、12000rpmで約5分間遠心し、buffer I(100μl)を加え、再度遠心をした。この操作を3回繰り返し、フィルター上部の溶液を回収してG6 RNAとした。
【0107】
G6 RNAについても、操作1の代りに上記の操作を行った。
クローニングと配列決定:
G8 RNAに対して操作2を行うことで、2本鎖DNAとし、そのDNAをTOPO TA Cloning kit(Invitrogen製)を使って、クローニングし、各クローンについてABI PRISM Model 3700(Perkin-Elmer製)を使って塩基配列を決定した。ここで得られた配列とoatp mRNAのアンチセンス配列との類似性をGENETYX-WIN ver.4(ソフトウエア開発社製)を用いて解析した。oatp mRNAと得られたクローンの配列の類似性を図4に示す。
【0108】
このうち、oatp2に対するアンチセンス配列として、5'-aagactacctcagca-3'(配列番号13)を選択した。この配列は、oatp2のcDNA(GenBank accession No.:U9511)のヌクレオチド番号1268−1282に相補的な配列である。
【0109】
また、oatp3に対するアンチセンス配列として、5'-ccaagcaccaaccca-3'(配列番号14)を選択した。この配列は、oatp3のcDNA(GenBank accession No.:AF041105)のヌクレオチド番号721-735に相補的な配列である。
【0110】
各々の配列に基づき、以下の実施例4〜9の化合物を合成し、細胞内でのアンチセンス活性を評価することとした。
【0111】
〔実施例4〕 oatp2に対するアンチセンスDNA(Ph-Ap-Ap-Gp-Ap-Cp-Tp-Ap-Cp-Cp-Tp-Cp-Ap-Gp-Cp-Ap-E-H)の合成
oatp2に対するアンチセンス核酸として表記の化合物:Ph-Ap-Ap-Gp-Ap-Cp-Tp-Ap-Cp-Cp-Tp-Cp-Ap-Gp-Cp-Ap-E-H(配列番号13)〔式中、Ap,Gp,Cp,Tpはそれぞれ天然型ヌクレオチド(図2−1参照)、Eは -CH2CH2O-、Phは下式で表される構造を示す〕を合成した。
【0112】
【化4】
Figure 2004187609
【0113】
合成は核酸自動合成機(ABI model 394 DNA/RNA synthesizer:Perkin-Elmer製)を用い、40nmolスケールの付属のプログラムで行った。各合成サイクルにおける溶媒、試薬、ホスホロアミダイトの濃度は天然オリゴヌクレオチド合成の場合と同じである。また、溶媒、試薬、天然型ヌクレオチドのホスホロアミダイトはPE Biosystems社製のものを用いた。固相担体として、修飾されたコントロールポアグラス(CPG)(特開平7−87982の実施例12b 参照)を用い、oatp2に対するアンチセンス核酸として表記の化合物を合成した。また、5'-末端にフェニルリン酸を導入するために、最後の縮合にPhenyl 2-cyanoethyl N,N-diisopropylphosphoramidite (Hotada, H. et al. Nucleosides & Nucleotides 15, 531-538, (1996))を用いた。
【0114】
目的配列を有する保護されたオリゴヌクレオチド類縁体を濃アンモニア水で処理することによりオリゴマーを支持体から切り出すとともに、リン原子上の保護基シアノエチル基と核酸塩基上の保護基をはずした。溶媒を減圧下留去し、残った残渣を逆相HPLC(LC-10VP:島津製作所製、カラム(Chromolith Performance RP-18e(4.6×100mm):Merck製))、A溶液:5%アセトニトリル、0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA)、pH7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:0%→40%(10分、linear gradient);60℃;2ml/分;254nm)にて精製し、3.7分に溶出する分画を集めた(2.3 A260 Units)(λmax(H2O)=260nm)。
【0115】
〔実施例5〕 oatp3に対するアンチセンス核酸(Ph-Cp-Cp-Ap-Ap-Gp-Cp-Ap-Cp-Cp-Ap-Ap-Cp-Cp-Cp-Ap-E-H)の合成
実施例4と同様にして、oatp3に対するアンチセンス核酸として表記の化合物:Ph-Cp-Cp-Ap-Ap-Gp-Cp-Ap-Cp-Cp-Ap-Ap-Cp-Cp-Cp-Ap-E-H(配列番号14)を合成した。脱保護後、逆相HPLC(LC-10VP:島津製作所製、カラム(Chromolith Performance RP-18e(4.6×100mm):Merck製))、A溶液:5%アセトニトリル、0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA)、pH7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:0%→40%(10分、linear gradient);60℃;2ml/分;254nm)にて精製し、3.61分に溶出する分画を集めた(2.3 A260 Units)(λmax(H2O)=262nm)。
【0116】
〔実施例6〕 oatp2に対するアンチセンス核酸(Ph-Ae2-Ae2-Gp-Ap-Cp-Tp-Ap-Cp-Cp-Tp-Cp-Ap-Gp-Ce2-Ae2-E-H)の合成
oatp2に対するアンチセンス核酸として表記の化合物:Ph-Ae2-Ae2-Gp-Ap-Cp-Tp-Ap-Cp-Cp-Tp-Cp-Ap-Gp-Ae2-Ae2-E-H(配列番号15)を合成した。なおヌクレオチド記号右上のe2はENA(2'-O,4'-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)修飾された非天然型ヌクレオチドを示す(図2−2参照)。
【0117】
合成は核酸自動合成機(ABI model 394 DNA/RNA synthesizer:Perkin-Elmer製 )を用い、40nmolスケールで行った。各合成サイクルにおける溶媒、試薬、ホスホロアミダイトの濃度は天然オリゴヌクレオチド合成の場合と同じであり、溶媒、試薬、天然型ヌクレオチドのホスホロアミダイトはPE Biosystems社製のものを用いた。非天然型のホスホロアミダイトは 5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O,4'-C-エチレン-6-N-ベンゾイルアデノシン-3'-O-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピル)ホスホロアミダイト、5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O,4'-N-イソブチリルグアノシン-3'-O-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピル)ホスホロアミダイト、5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O,4'-C-エチレン-4-N-ベンゾイル-5-メチルシチジン-3'-O-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピル)ホスホロアミダイト、5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O,4'-C-エチレン-5-メチルウリジン-3'-O-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピル)ホスホロアミダイト(特開2000−297097 参照)を用いた。固相担体は、修飾されたコントロールポアグラス(CPG)(特開平7−87982の実施例12b 参照)を用いた。また、5'-末端にフェニルリン酸を導入するために、最後の縮合にPhenyl 2-cyanoethyl N,N-diisopropylphosphoramidite (Hotada, H. et al. Nucleosides & Nucleotides 15, 531-538, (1996))を用いた。
【0118】
目的配列を有する保護されたオリゴヌクレオチド類縁体を濃アンモニア水で処理することによってオリゴマーを支持体から切り出すとともに、リン原子上の保護基シアノエチル基と核酸塩基上の保護基をはずした。溶媒を減圧下留去し、残った残渣を逆相HPLC(LC-10VP:島津製作所製、カラム(Chromolith Performance RP-18e(4.6×100mm):Merck製))、A溶液:5%アセトニトリル、0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA)、pH7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→15%(10分、linear gradient);60℃;2ml/分;254nm)にて精製し、5.06分に溶出する分画を集めた(0.40 A260 Units)(λmax(H2O)=261nm)。
【0119】
〔実施例7〕 oatp2に対するアンチセンス核酸(Ph-Ae2-Ae2-Gp-Ap-Cp-Tp-Ap-Cp-Cp-Tp-Cp-Ap-Ge2-Ce2-Ae2-E-H)の合成
実施例6と同様にしてoatp2に対するアンチセンス核酸として表記の化合物:Ph-Ae2-Ae2-Gp-Ap-Cp-Tp-Ap-Cp-Cp-Tp-Cp-Ap-Ge2-Ce2-Ae2-E-H(配列番号16)を合成した。脱保護後、逆相HPLC(LC-10VP:島津製作所製、カラム(Chromolith Performance RP-18e(4.6×100mm):Merck製))、A溶液:5%アセトニトリル、0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA)、pH7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→15%(10分、linear gradient);60℃;2ml/分;254nm)にて精製し、5.03分に溶出する分画を集めた。(0.60 A260 Units)(λmax(H2O)=260nm)。
【0120】
〔実施例8〕 oatp2に対するアンチセンス核酸(Ph-Ae2-Ae2-Ge2-Ap-Cp-Tp-Ap-Cp-Cp-Tp-Cp-Ap-Ge2-Ce2-Ae2-E-H)の合成
実施例6と同様にして、oatp2に対するアンチセンス核酸として表記の化合物:Ph-Ae2-Ae2-Ge2-Ap-Cp-Tp-Ap-Cp-Cp-Tp-Cp-Ap-Ge2-Ce2-Ae2-E-H(配列番号17)を合成した。脱保護後、逆相HPLC(LC-10VP:島津製作所製、カラム(Chromolith Performance RP-18e(4.6×100mm):Merck製))、A溶液:5%アセトニトリル、0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA)、pH7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→15%(10分、linear gradient);60℃;2ml/分;254nm)にて精製し、6.52分に溶出する分画を集めた。(0.35 A260 Units)(λmax(H2O)=261nm)。
【0121】
〔実施例9〕 oatp2に対するアンチセンス核酸(Ph-Ae2-Ae2-Ge2-Ap-Cp-Tp-Ap-Cp-Cp-Tp-Cp-Ae2-Ge2-Ce2-Ae2-E-H)の合成
実施例6と同様にして、oatp2に対するアンチセンス核酸として表記の化合物:Ph-Ae2-Ae2-Ge2-Ap-Cp-Tp-Ap-Cp-Cp-Tp-Cp-Ae2-Ge2-Ce2-Ae2-E-H(配列番号18)を合成した。脱保護後、逆相HPLC(LC-10VP:島津製作所製、カラム(Chromolith Performance RP-18e(4.6×100mm):Merck製))、A溶液:5%アセトニトリル、0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA)、pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→13%(8分、linear gradient)、60℃;2ml/分;254nm)にて精製し、5.36分に溶出する分画を集めた。(0.29 A260 Units)(λmax(H2O)=261nm)。
【0122】
〔比較例1〕 Ph-Gp-Tp-Gp-Gp-Ap-Tp-Tp-Tp-Tp-Cp-Cp-Ap-Tp-Ap-Tp-E-Hの合成
実施例3で選択されたoatp2のアンチセンス配列に近接する領域と同じ配列を有する核酸:Ph-Gp-Tp-Gp-Gp-Ap-Tp-Tp-Tp-Tp-Cp-Cp-Ap-Tp-Ap-Tp-E-H(配列番号19)を、実施例4にしたがって合成した。脱保護後、逆相HPLC(LC-10VP:島津製作所製、カラム(Chromolith Performance RP-18e(4.6×100mm):Merck製))、A溶液:5%アセトニトリル、0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA)、pH7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:0%→40%(10分、linear gradient);60℃;2ml/分;254nm)にて精製し、3.71分に溶出する分画を集めた(2.1 A260 Units)(λmax(H2O)=262nm)。
【0123】
なお、本化合物の塩基配列は、oatp2のcDNA(GenBank accession No.:U9511)のヌクレオチド番号1253−1267に相補的な配列である。
【0124】
〔比較例2〕 Ph-Cp-Ap-Ap-Ap-Ap-Ap-Gp-Cp-Cp-Gp-Ap-Tp-Cp-Cp-Ap-E-Hの合成
実施例3で選択されたoatp3のアンチセンス配列に近接する領域と同じ配列を有する核酸:Ph-Cp-Ap-Ap-Ap-Ap-Ap-Gp-Cp-Cp-Gp-Ap-Tp-Cp-Cp-Ap-E-H(配列番号20)を、実施例4にしたがって合成した。
脱保護後、逆相HPLC(LC-10VP:島津製作所製、カラム(Chromolith Performance RP-18e(4.6×100mm):Merck製))、A溶液:5%アセトニトリル、0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA)、pH7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:0%→40%(10分、linear gradient);60℃;2ml/分;254nm)にて精製し、3.67分に溶出する分画を集めた(1.1 A260 Units)(λmax(H2O)=259nm)。
【0125】
なお、本化合物の塩基配列は、oatp3のcDNA(GenBank accession No.AF041105)のヌクレオチド番号736-750に相補的な配列である。
【0126】
〔試験例1〕 アンチセンス効果測定試験
1.試験方法
阿部らの方法(Abe, T. et al. J. Biol. Chem.、第273巻、22395頁、1998年)に準じて、アフリカツメガエルの卵母細胞に実施例4〜9、比較例1および2のアンチセンス核酸を注入し、基質の取り込み実験を行った。
【0127】
雌のアフリカツメガエル(Xenopus laevis:浜松生物教材社より購入)を、氷冷した0.1% 3-アミノ安息香酸エチルエステル(MS-222)/0.3% 重炭酸カリウム溶液に浸し麻酔した。腹部を切開し、片側の卵巣を適当量取り出した後、OR2緩衝液(32.5mM 塩化ナトリウム、2mM 塩化カリウム、1mM 塩化マグネシウム、5mMHEPES、pH7.5)を浸したシャーレに入れ、卵母細胞20-30個程度に細切した。2%コラゲナーゼ溶液(OR2緩衝液に溶解)中で30分間ゆっくり振とうした後、新しいコラゲナーゼ溶液に交換し、ほとんどの卵母細胞がバラバラになるまで、さらに60乃至90分間振とうした。卵母細胞をバースの溶液(Barth's Solution)(88mM 塩化ナトリウム、1mM 塩化カリウム、0.33mM 硝酸カルシウム、0.41mM 塩化カルシウム、0.82mM 塩化マグネシウム、2.4mM 炭酸水素ナトリウム、10mM HEPES、50μg/ml ゲンタマイシン、10単位/ml ペニシリン、10μg/ml ストレプトマイシン、2.5mM ピルビン酸、pH7.4)を浸したシャーレに移し、実体顕微鏡下で段階Vおよび段階VIの卵母細胞(Dumontら、J. Morphol.、第136巻、153頁、1972年)を選別した。
【0128】
実体顕微鏡下、マイクロマニピュレーター(MN-153:ナリシゲ製)を用いて、上記cRNA溶液、cRNAと実施例または比較例の化合物とインキュベーションした溶液または水のみを50nlずつ卵母細胞に注入した後、バースの溶液を満たした20mlのガラスバイアルに移し、3日間培養した。すべての操作は18℃に調節された恒温室内で行なった。cRNAと実施例または比較例の化合物とのインキュベーション溶液は、cRNAの終濃度が100ng/ml、アンチセンスDNAの終濃度が100ng/mlあるいは10ng/mlとなるように混和し、42℃で15分間インキュベーションを行い調製した。
【0129】
この卵母細胞についてタウロコレートの取り込み実験を行い、アンチセンスDNA添加によるタウロコレート取り込みに対する影響を調べた。すなわち、卵母細胞をバースの溶液を満たした栄研チューブに3乃至9個ずつ移し、室温(21℃〜22℃)に静置した。バースの溶液をアスピレーターを用いて取り除いた後、3H−タウロコレート(NENライフサイエンスプロダクツ製)11.5μMを含む取り込み溶液(100mM 塩化コリン、2mM 塩化カリウム、1mM 塩化カルシウム、1mM 塩化マグネシウム、10mM HEPES、pH7.5)100μlを添加して室温で培養した。1時間後、氷冷した緩衝液で卵母細胞を洗浄し、一つずつシンチレーションバイアルに移し、10% SDS溶液 500μlで溶解した後、シンチレーションカクテル(ピコフロー:パッカード製)4mlを加え、放射能を測定した。放射能の測定には、シンチレーションカウンター(2250CA:パッカード製)を用いた。
【0130】
さらに、アンチセンス効果の認められた実施例4の化合物をENA(2'-O,4'-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids )修飾した実施例6〜9の化合物について、同様に試験を行った。本試験においては、アンチセンス核酸の濃度は10ng/mlに設定した。
【0131】
2.試験結果
図5に示すように、oatp2−cRNAを注入した卵母細胞への3H−タウロコレートの取り込みは、コントロールとして水を注入した卵母細胞への取り込みに比べ38倍高かった。それに対し、実施例4の化合物の添加により、oatp2を介した3H−タウロコレートの取り込みは72%抑制されたが、比較例1の化合物を添加した場合には、49%の抑制であり、実施例4の化合物に比べ弱かった。なお、cRNAを注入した卵母細胞への3H−タウロコレートの取り込みから、水を注入した卵母細胞への取り込みを差し引いた値を、oatp2を介した取り込みとした。
【0132】
図6に示すように、実施例4の化合物に比べ、実施例6〜9の化合物では、いずれも3H−タウロコレートの取り込みが低下しており、ENA導入によりアンチセンス効果が増強することが認められた。
【0133】
図7に示すように、oatp3−cRNAを注入した卵母細胞への3H−タウロコレートの取り込みは、コントロールとして水を注入した卵母細胞への取り込みに比べ10倍高かった。それに対し、実施例5の化合物の添加により、oatp3を介した3H−タウロコレートの取り込みは82%抑制されたが、比較例2の化合物を添加した場合には31%の抑制であり、実施例5に比べて顕著に弱かった。
【0134】
【発明の効果】
本発明によれば、mRNAの複雑な高次構造を解析することなく、本来の高次構造を保持したmRNAに対して高い親和性でハイブリダイズしうるアンチセンス配列を簡便に決定できる。そして、この方法によって製造されたアンチセンス核酸は顕著なアンチセンス効果を有する。
【0135】
【配列表】
Figure 2004187609
Figure 2004187609
Figure 2004187609
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Figure 2004187609
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Figure 2004187609
Figure 2004187609
【0136】
【配列表フリーテキスト】
Figure 2004187609

【図面の簡単な説明】
【図1−1】図1−1は、ランダム配列の両側にプライマー結合部位を持つ場合のGn RNA調製のスキームを示す。
【図1−2】図1−2は、ランダム配列の3'側にのみプライマー結合部位を持つ場合のGnRNA調製のスキームを示す。
【図1−3】図1−3は、ランダム配列の5'側にのみプライマー結合部位を持つ場合のGnRNA調製のスキームを示す。
【図1−4】図1−4は、ランダム配列にプライマー結合部位を持たない場合のGn RNA調製のスキームを示す。
【図2−1】図2−1は、各種天然型ヌクレオチドの構造を示す。
【図2−2】図2−2は、各種非天然型(修飾)ヌクレオチドの構造を示す。
【図3】図3は、ランダムRNAプールからoatp cRNAに結合するRNAを選択するプロセスの概略を示す。
【図4】図4は、oatp cRNA配列と得られたクローンの配列との類似性を示す。
【図5】図5は、アフリカツメガエル卵母細胞系を用いたoatp2を介したタウロコレート取り込みに対するアンチセンスDNAの影響実験の結果を表すグラフである。
【図6】図6は、アフリカツメガエル卵母細胞系を用いたoatp2を介したタウロコレート取り込みに対するアンチセンスDNAの影響実験の結果を表すグラフである。
【図7】図7は、アフリカツメガエル卵母細胞系を用いたoatp3を介したタウロコレート取り込みに対するアンチセンスDNAの影響実験の結果を表すグラフである。

Claims (10)

  1. 標的遺伝子に対するアンチセンス配列の決定方法であって、ランダムな配列を有するRNAプールより、実質的に細胞内と同等の条件下において標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択し、選択したRNAから、再び前記条件下で前記mRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する工程を繰り返すことを特徴とする前記方法。
  2. 以下の工程を含む、請求項1記載の方法:
    1)ランダムな配列を有するRNAプールより、実質的に細胞内と同等の条件下において標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する;
    2)選択したRNAを、逆転写して増幅後、再びRNAに転写する;
    3)上記RNAから、再び実質的に細胞内と同等の条件下で標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する;
    4)上記2)および3)の工程を繰り返し、得られたRNAの配列に基づき標的遺伝子のアンチセンス配列を決定する。
  3. 実質的に細胞内と同等の条件が、標的遺伝子のmRNAが存在する細胞内の温度、pH、および塩濃度の値によって規定される、請求項1または2記載の方法。
  4. 実質的に細胞内と同等の条件が、温度30〜45℃、pH6.5〜8.0、Naイオン5〜50mM、Kイオン100〜200mM、Caイオン0.5〜2mM、かつMgイオン5〜20mMの条件である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 実質的に細胞内と同等の条件が、温度37℃、pH7.2、Naイオン10mM、Kイオン160mM、Caイオン1mM、かつMgイオン13mMの条件である、請求項4記載の方法。
  6. RNAプールより選択したRNAから、再び標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する工程を、少なくとも3回以上繰り返すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. RNAプールより選択したRNAから、再び標的遺伝子のmRNAまたはcRNAとハイブリダイズするRNAを選択する工程を、少なくとも7回以上繰り返すことを特徴とする、請求項6記載の方法。
  8. RNAプールが、16〜25塩基長の連続したランダムな配列を含むRNAオリゴヌクレオチドからなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法によって決定されたアンチセンス配列に基づき、標的遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを製造する方法。
  10. アンチセンスオリゴヌクレオチドが、下記一般式(I)に示される構造を少なくとも1つ含む修飾オリゴヌクレオチド、またはその塩、ならびにこれらの水和物である、請求項9記載の方法。
    Figure 2004187609
    [式中、Aは、単結合、または炭素数1乃至4個のアルキレン基を示し、Bは、プリン−9−イル基、2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、または下記α群から選択される置換基を有する置換プリン−9−イル基、若しくは置換2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を示す:
    (α群)
    水酸基、保護された水酸基、炭素数1乃至4個のアルコキシ基、メルカプト基、保護されたメルカプト基、炭素数1乃至4個のアルキルチオ基、アミノ基、保護されたアミノ基、炭素数1乃至4個のアルキル基で置換されたアミノ基、炭素数1乃至4個のアルキル基、およびハロゲン原子。]
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