JP2004186341A - セラミック積層体の製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】機能導体パターンの周囲に形状保持パターンを形成して機能導体パターンの厚みによる段差をなくすことができるとともに、積層成形体中の脱気を効果的に行うことができるセラミック積層体の製法を提供する。
【解決手段】容量形成用導体パターン3の周囲に、該容量形成用導体パターン3を取り囲むように環状に形状保持パターン5が形成され、グリーンシート1間における容量形成用導体パターン3及び形状保持パターン5で形成される空間同士が連通するように、形状保持パターン5の一部が切り欠かれていることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】容量形成用導体パターン3の周囲に、該容量形成用導体パターン3を取り囲むように環状に形状保持パターン5が形成され、グリーンシート1間における容量形成用導体パターン3及び形状保持パターン5で形成される空間同士が連通するように、形状保持パターン5の一部が切り欠かれていることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック積層体の製法に関し、特に、多層配線基板、積層型圧電アクチュエータ、積層型圧電トランス、積層セラミックコンデンサのようにセラミックグリーンシートおよび機能導体パターンが薄層多層化して形成されたセラミック積層体の製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、電子機器の小型化、高密度化に伴い、セラミック積層体中に導体パターンが形成された配線基板や積層セラミックコンデンサは、小型薄型化および高寸法精度が求められており、例えば、積層セラミックコンデンサでは小型高容量化が求められ、このためセラミックグリーンシートや導体パターンの薄層化および多層化が進められている。
【0003】
このようなセラミック積層体では、セラミックグリーンシートの薄層化および多層化に伴い、セラミックグリーンシート上に形成された導体パターンの厚みが大きく影響するようになり、導体パターンが形成されている部分と形成されていない部分との間で導体パターンの厚みによる段差が累積し、導体パターンの無い周囲のセラミックグリーンシート同士の密着が弱くなり、デラミネーションやクラックが発生しやすくなる。このためセラミックグリーンシート上の段差を無くす工夫が図られている。
【0004】
このようなセラミック積層体の製法として、図7に示すように、セラミックグリーンシート81の主面に導体パターン83を形成する工程において、導体パターン83の端部は、セラミックグリーンシート81の主面に対して鋭角をもつ傾斜面87を与えるように形成されるとともに、この導体パターン83の周辺にセラミックペーストを付与する工程において、セラミックペーストは、導体パターン83の傾斜面87に重なるように付与された製法が知られている(特許文献1参照。)。
【0005】
上記の製法によれば、導体パターン83の端部には傾斜面87が形成されていることから、この傾斜面87に重なるようにセラミックペーストが付与されても、その後において、導体パターン83間へと迅速に移動し円滑にレベリングされ、導体パターン83の厚みによる段差を実質的に無くすことができ、導体パターン83の厚みの影響を受けない状態で、セラミックグリーンシート81を積層することができる、と記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−311831号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
近年の電子部品の低コスト化に対して、セラミック積層体を母体積層体から多数個取りして製造するために、セラミックグリーンシート81や印刷用スクリーンはワークサイズの大面積化が行われ、例えば、1個の面積がおおよそ1×2mm2以下の導体パターンを約0.5mm以下の間隔で配列させ、有効サイズを150×150mm2以上とした印刷スクリーンが用いられるようになってきている。
【0008】
このように有効サイズの大きい印刷スクリーンを用いてセラミックペーストを印刷する場合、この印刷スクリーンの周辺領域における印圧による伸び率が中央部に比較して大きいことから、セラミックグリーンシート81上に予め形成された導体パターン83のうち、特に、周辺領域に形成された導体パターン83間に形成されるセラミックパターン89の位置ずれが大きくなるという問題があった。
【0009】
即ち、印刷スクリーンは、矩形状の枠体にスクリーンの外周が固定された構造を有しており、ブレードを、スクリーンの一方の端から他方の端までスクリーン側に押圧した状態で移動させることにより印刷することができるが、ブレードのスクリーン側への押圧、並びに移動により、スクリーンの伸びが中央部に比較して周辺部が大きくなり、周辺部におけるセラミックパターン89の印刷位置ずれが大きくなる。
【0010】
従って、上記した特許文献1に開示されるセラミック積層体の製法では、セラミックペーストが導体パターン83の傾斜面87に重なるように塗布され、導体パターン83の端部85に乗り上げたセラミックペーストが、導体パターン83間へと移動しレベリングされると記載されているものの、上記したように、印刷スクリーンの周辺領域を用いて印刷されるセラミックペーストは位置ずれが大きく、例え、印刷前に、導体パターン83の端部にセラミックペーストが重なるように印刷スクリーンの位置を制御したとしても、印刷スクリーンの周辺領域では、導体パターン83の端部の傾斜面87に重なるように付与することができなくなり、導体パターン83の端部への乗り上げが大きくなるという問題があった。
【0011】
これにより、導体パターン83の端部近傍において、セラミックパターン89による盛り上がりが形成され、印刷スクリーンの周辺部を用いて印刷された部分では、局部的な厚み増加が発生し、セラミック積層体にデラミネーションやクラックが発生しやすいという問題があった。
【0012】
即ち、特許文献1では、導体パターン83の傾斜面87にセラミックペーストを塗布するため、印刷スクリーンの位置を厳密に制御すると、印刷スクリーンの中央部では、セラミックペーストを導体パターン83の傾斜面87に重なるように付与できるが、周辺領域では導体パターン83の端部上面にセラミックペーストが印刷され、導体パターン83の端部にセラミックペーストが塗布された部分では、セラミックペースト中に含まれている溶剤が、印刷後においてポーラス体である導体パターン83中に染み込むため、一部のセラミックペーストが、導体パターン83の端部近傍に堆積し、この部分の厚みが増加する。これにより導体パターン83やセラミックパターン89が形成されたセラミックグリーンシート81を、例えば、100層以上、特に、200層以上積層した場合に、導体パターン83の端部では厚みが累積することから、印刷スクリーンの周辺に印刷された部分で、セラミックグリーンシート間の密着性が低下し、焼成後にクラックやデラミネーションが発生し、歩留まりが低下するという問題があった。
【0013】
このような問題を防止するため、印刷スクリーン周辺部でセラミックパターン89を導体パターン83の端部上面に堆積しないように、パターン制御すると、セラミックグリーンシート81間に、セラミックパターン89と導体パターン83とで形成される空間を内包してしまい、しかも前記空間は、周囲がセラミックパターン89で囲まれているため、成形後の脱気工程でも除去することが困難となり、焼成後にクラックやデラミネーション等の発生原因となるという問題があった。
【0014】
従って、本発明は、機能導体パターンの周囲に形状保持パターンを形成して機能導体パターンの厚みによる段差をなくすことができるとともに、積層成形体中の脱気を効果的に行うことができるセラミック積層体の製法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミック積層体の製法は、積層された複数のセラミックグリーンシート間に、対向する一対のエンドマージン側辺及び対向する一対のサイドマージン側辺を有する矩形状の機能導体パターンを複数所定間隔をおいて整列してなる母体積層体を作製する工程と、該母体積層体を所定位置で積層方向に切断して、異なる端面に前記機能導体パターンのエンドマージン側辺が交互に露出する積層成形体を作製する工程とを具備するセラミック積層体の製法であって、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように環状に形状保持パターンが形成され、前記グリーンシート間における前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンで形成される空間同士が連通するように、前記形状保持パターンの一部が切り欠かれていることを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の他のセラミック積層体の製法は、セラミックグリーンシートの主面上に導体ペーストを印刷して、対向する一対のエンドマージン側辺及び対向する一対のサイドマージン側辺を有する矩形状の機能導体パターンを複数所定間隔をおいて整列して形成する工程と、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように一部が切り欠かれた環状の形状保持パターンを形成する工程と、前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンが形成されたセラミックグリーンシートを複数積層して母体積層体を作製する工程と、該母体積層体を所定位置で積層方向に切断して、異なる端面に前記機能導体パターンのエンドマージン側辺が交互に露出する積層成形体を作製する工程とを具備することを特徴とする。
【0017】
また、本発明のさらに他のセラミック積層体の製法は、セラミックグリーンシートの主面上に導体ペーストを印刷して、対向する一対のエンドマージン側辺及び対向する一対のサイドマージン側辺を有する矩形状の機能導体パターンを複数所定間隔をおいて整列して形成する導体パターン形成工程と、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように一部が切り欠かれた環状の形状保持パターンを形成する形状保持パターン形成工程と、前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンが形成されたセラミックグリーンシートに、前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンを被覆するように前記グリーンシートを積層するグリーンシート積層工程と、該グリーンシートの主面上に、前記導体パターン形成工程、前記形状保持パターン形成工程及び前記グリーンシート積層工程を順次繰り返して母体積層体を作製する工程と、該母体積層体を所定位置で積層方向に切断して、異なる端面に前記機能導体パターンのエンドマージン側辺が交互に露出する積層成形体を作製する工程とを具備することを特徴とする。
【0018】
また、本発明のさらに他のセラミック積層体の製法は、積層された複数のセラミックグリーンシート間に機能導体パターンを介在してなる積層成形体を作製する工程を具備するセラミック積層体の製法であって、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように環状に形状保持パターンが形成され、前記グリーンシート間における前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンで形成される空間が外部と連通するように、前記形状保持パターンの一部が切り欠かれていることを特徴とする。
【0019】
このような本発明のセラミック積層体の製法では、機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように環状の形状保持パターンが形成されているため、機能導体パターンの厚みによる段差の累積を低減でき、これにより焼成されたセラミック積層体(例えばコンデンサ本体)のデラミネーションやクラックの発生を大幅に抑制できる。
【0020】
また、これらの製法では、環状の形状保持パターンの一部が切り欠かれているため、この形状保持パターンが機能導体パターンを取り囲むように形成されたとしても、セラミックグリーンシート間であって、形状保持パターンと機能導体パターンにより形成される空間が、形状保持パターンの切り欠き部を介して外部と連通することになり、この切り欠き部を介して母体積層体や積層成形体中の空気を十分に除去すること(脱気)ができ、焼成後におけるクラックやデラミネーションを抑制することができる。
【0021】
また、本発明のセラミック積層体の製法は、形状保持パターンはセラミックパターンであることを特徴とする。形状保持パターンとしてセラミックパターンを用いる場合には、セラミックグリーンシート間にはセラミックパターンが介在することになり、セラミックグリーンシート間の接合強度を向上することができ、焼成後におけるクラックやデラミネーションをさらに抑制できる。尚、本発明のセラミックパターンとは、ガラスセラミックパターンも含む概念である。
【0022】
さらに、本発明のセラミック積層体の製法は、形状保持パターンは、機能導体パターンと所定間隔をおいて形成されていることを特徴とする。このような製法では、形状保持パターンが機能導体パターンの外周端部の傾斜面に重ならないように離間して形成されることから、印刷スクリーンの印圧により周辺領域に伸びが生じて印刷時の位置ずれが生じたとしても、機能導体パターンと形状保持パターンとの位置精度のマージンを有することから、機能導体パターン間に形状保持パターンを確実に形成でき、機能導体パターンと形状保持パターンが形成されたセラミックグリーンシートを多層化してセラミック積層体を形成した場合にも、このセラミック積層体の変形を抑制できる。
【0023】
また、本発明のセラミック積層体の製法は、形状保持パターンの端部は、機能導体パターンの端部と重畳していることを特徴とする。印刷スクリーンの周辺領域における不具合を無くすため、形状保持パターンが機能導体パターンの端部上面に突出して形成されないように、かつ、形状保持パターンによる効果を最大限に発揮すべく、形状保持パターンの端部(傾斜面)を機能導体パターンの端部(傾斜面)と重畳させたとしても、パターン端部は傾斜しているため、グリーンシート間に空間が形成されるが、このような空間は、形状保持パターンの切り欠き部を介して外部と連通することになり、この切り欠き部を介して母体積層体や積層成形体中の脱気を十分に行うことができ、焼成後におけるクラックやデラミネーションを抑制することができる。
【0024】
さらに、本発明のセラミック積層体の製法は、形状保持パターンの厚みは、機能導体パターンの厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0025】
形状保持パターン及び機能導体パターンが形成されたグリーンシートは、吸着ヘッドに吸着されて積層されるが、本発明では、形状保持パターンの厚みを機能導体パターンよりも厚く形成することにより、積層時に用いる吸着ヘッドの吸着面を形状保持パターンにのみ接触させることができることから、加圧の初期段階すなわち低圧のときから機能用導体パターンが形状保持パターンと同時に加圧されることがなく、形状保持パターンのみが、もしくは形状保持パターンが先に加圧された後に機能導体パターンが加圧されることから、機能導体パターンの吸着ヘッドによる型跡の形成や変形が抑制され、吸着ヘッドの吸引孔部分の機能導体パターンが突出し、本来絶縁されるべき領域にまで機能導体パターンが延出したりすることがなくなり、セラミック積層体の絶縁不良やショートを抑えることができる。
【0026】
このような場合には、特に空気が残存しやすいため、形状保持パターンに切り欠き部を形成して脱気する本発明を用いる意義が大きい。
【0027】
また、本発明のセラミック積層体の製法は、形状保持パターンの厚みをt1、機能導体パターンの厚みをt2としたときに、1<t1/t2≦2を満足することを特徴とする。
【0028】
t1/t2比をこのような範囲とすることにより、形状保持パターンの過剰厚みによるセラミック積層体の厚みばらつきを低減し、デラミネーションをさらに抑制できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック積層体の製法は、例えば、電子部品の一つである積層セラミックコンデンサに適用される。
【0030】
積層セラミックコンデンサを構成するセラミックグリーンシート1は、図1(a)に示すように、まず、キャリアフィルム2上にセラミックスラリを塗布して形成される。
【0031】
次に、図1(b)に示すように、このセラミックグリーンシート1の一方主面上に導体ペーストを印刷して、図2に示すように、平面視で矩形状の容量形成用導体パターン(機能導体パターン)3を所定間隔をおいて複数整列して形成し、この後、図1(c)に示すように、セラミックペーストを用いて、容量形成用導体パターン3間に、容量形成用導体パターン3と離間して形状保持パターン5が形成される。
【0032】
即ち、図2に示したように、セラミックグリーンシート1の一方主面側に、導体ペーストを印刷して形成された矩形状の容量形成用導体パターン3が所定間隔L1をおいて複数整列して形成されており、これらの容量形成用導体パターン3は、対向する一対のエンドマージン側辺3a及び対向する一対のサイドマージン側辺3bを有している。尚、図2では、隣設する容量形成用導体パターン3の対向するエンドマージン側辺3a間の間隔と、隣設する容量形成用導体パターン3の対向するサイドマージン側辺3b間の間隔とを同一間隔L1としたが、必ずしも同一間隔とする必要はない。
【0033】
そして、隣設する容量形成用導体パターン3の対向するエンドマージン側辺3a間、及びサイドマージン側辺3b間に、該エンドマージン側辺3a、サイドマージン側辺3bと所定間隔L2をおいて、セラミックパターンからなる形状保持パターン5が形成されている。
【0034】
この形状保持パターン5は、容量形成用導体パターン3の周囲に、該容量形成用導体パターン3を取り囲むように形成されており、その一部は切り欠かれており、容量形成用導体パターン3と形状保持パターン5との隙間6は、隣設する容量形成用導体パターン3と形状保持パターン5との隙間6と、形状保持パターン5の切り欠き部7で連通している。
【0035】
即ち、形状保持パターン5は、全体的に見ると格子状に形成されており、その格子を構成する枠に隙間6が形成された形状とされ、さらに言い換えれば、形状保持パターン5は複数に分割されており、これらの分割されたセラミックパターンが、容量形成用導体パターン3の周囲に、容量形成用導体パターン3を囲むように所定間隔をおいて形成されている。
【0036】
形状保持パターン5と容量形成用導体パターン3との間隔L2は60μm以上とされている。これにより容量形成用導体パターン3や形状保持パターン5の印刷ずれ、積層ずれ、および切断時のずれが生じたとしても、形状保持パターン5が容量形成用導体パターン3上に形成されることを防止できる。
【0037】
また、上記のように形成された容量形成用導体パターン3および形状保持パターン5の端部は、図3に示すように、セラミックグリーンシート1の主面に対して傾斜面8を有していることが望ましく、その傾斜の角度θ2は0.5°〜40°の範囲であることが望ましい。特に、積層加圧した場合に、パターン3、5間へのセラミックグリーンシート1の急激な埋没を抑制し、セラミック積層体の急激な変形を抑えるという理由から、角度θ2は1°〜20°、さらには、2°〜10°がより望ましい。
【0038】
この角度θ2は、セラミックグリーンシート1上に形成した容量形成用導体パターン3や形状保持パターン5を、簡易的には触針式表面粗さ計を用いて測定できる。また、詳細には走査型電子顕微鏡を用いて断面観察を行い測定できる。
【0039】
また、本発明のセラミック積層体の製法により形成される形状保持パターン5の厚みは、容量形成用導体パターン3の厚みよりも大なることが望ましい。つまり、形状保持パターン5の厚みをt1、容量形成用導体パターン3の厚みをt2としたときに、t1>t2の関係を満足するものであるが、さらには、1<t1/t2≦2であることが望ましく、特に、セラミック積層体のデラミネーションや導体のショートを防止できるという点から1.05〜1.2であることがより望ましい。
【0040】
積層セラミックコンデンサでは、一般に、図4に示すように、セラミックグリーンシート1上の形状保持パターン5の高さを容量形成用導体パターン3の高さよりも高く形成することにより、セラミックグリーンシート1を積層する際に用いられる吸着ヘッド20に形状保持パターン5のみを接触させて吸着することができ、このため吸着ヘッド20による容量形成用導体パターン3の変形を防止できる。
【0041】
つまり、容量形成用導体パターン3は吸着ヘッド20の吸着面21に接触しないように積層されるために、この工程での吸着や加圧による容量形成用導体パターン3の型跡の形成や変形が防止される。
【0042】
尚、本発明では、1.05≦t1/t2≦1.2とすることが望ましく、これにより形状保持パターン5と容量形成用導体パターン3との間の厚み差が僅かとなり、積層工程における吸着力の低下の影響を無視できる。さらには、形状保持パターン5と容量形成用導体パターン3との間の厚み差が僅かであることから積層工程における吸着力の低下も無くすことができる。
【0043】
形状保持パターン5の厚みを容量形成用導体パターン3の厚みよりも厚くするには、オープニングが異なる印刷スクリーンを用いることにより可能である。
【0044】
次に、図1(d)に示すように、容量形成用導体パターン3及び形状保持パターン5が形成されたセラミックグリーンシート1を複数積層して母体積層体9が形成される。この母体積層体9では、セラミックグリーンシート1を介して対向して形成される容量形成用導体パターン3のエンドマージン側辺3aは、ずれて形成されている。
【0045】
母体積層体9は、具体的には、図5に示すように、キャリアフィルム2上に形成されたパターン3、5が形成されたセラミックグリーンシート1が、真空ポンプ(図示せず)の作動により空気を吸引することで吸着ヘッド20の吸引孔22から吸引され、セラミックグリーンシート1の形状保持パターン5を吸着ヘッド20の吸着面21に吸着させ、吸着ヘッド20を上方へ移動させることにより、キャリアフィルム2からセラミックグリーンシート1を剥離する。
【0046】
次に、吸着ヘッド20により吸着したセラミックグリーンシート1を支持台23上面に載置し、且つ吸着ヘッド20の吸着面21と支持台23上面とで加圧する。そして、これらの工程を繰り返し実施することによって、複数のセラミックグリーンシート1を積層し、母体積層体9が形成される。
【0047】
すなわち、このような積層工程では、容量形成用導体パターン3や形状保持パターン5が形成されたセラミックグリーンシート1を積層する場合、セラミックグリーンシート1からそれを支持しているキャリアフィルム2を剥離するために、容量形成用導体パターン3及び形状保持パターン5側を吸着ヘッド20に吸着させるものである。
【0048】
この後、母体積層体9の加圧加熱しながら脱気が行われる。母体積層体9の脱気は、母体積層体9がある程度軟化する温度まで加熱された状態で、母体積層体9を加圧しながら、母体積層体が収容された室の真空度を上げて、母体積層体9内に存在している空気を除去することにより行われる。
【0049】
本発明では、容量形成用導体パターン3と形状保持パターン5との間に間隔L2の隙間6を形成したとしても、容量形成用導体パターン3と形状保持パターン5とを形成したセラミックグリーンシート1を多層化してセラミック積層体を形成する場合に、仮積層されセラミックグリーンシート1間に貯まっている空気を、形状保持パターン5の切り欠き部7を介して効果的に脱気できる。
【0050】
なお、本発明では、上記のように、予めキャリアフィルム2から剥離したセラミックグリーンシート1を用いる以外に、導体パターン3および形状保持パターン5を形成したセラミックグリーンシート1がキャリアフィルム2に付いた状態で、キャリアフィルム2面が上側になるようにして積層し、積層後に、このキャリアフィルム2を剥離する工程を繰り返して母体積層体9を形成しても良い。
【0051】
次に、図1(e)、(e’)に示すように、この母体積層体9を、形状保持パターン5の幅方向中央部を積層方向に所定幅で2分割するように切断して、セラミック積層成形体41を形成する。即ち、格子状に形成された形状保持パターン5の枠の幅方向中央を切断し、全体的に見ると格子状に切断する。
【0052】
このセラミック積層成形体41には、内部に形成された容量形成用導体パターン3の周辺には、形状保持パターン5と、セラミックグリーンシート1が充填されることにより形成されたサイドマージン10aおよびエンドマージン10bが形成されている。
【0053】
また、セラミック積層成形体41には、図6に示すように、対向する端面に容量形成用導体パターン3のエンドマージン側辺3aが交互に露出されている。
【0054】
この後、このセラミック積層成形体を所定の雰囲気下、温度条件で焼成してセラミック積層体本体が形成され、さらに、このセラミック積層体本体の端部に外部電極を形成することによりセラミック積層体の一例である積層セラミックコンデンサが形成される。
【0055】
本発明のセラミック積層体の製法では、セラミックグリーンシート1はキャリアフィルム2を用いてシート成形法を用いて行われる。このセラミックグリーンシート1の厚みは、小型、大容量化という理由から、5μm以下、特に、1〜4μmであることが望ましい。
【0056】
また、グリーンシート1を形成するセラミックスラリは、例えば、セラミック粉末とバインダと、このバインダを溶解する溶媒とを混合したものが好適に用いられる。
【0057】
セラミック材料としては、具体的には、BaTiO3を主成分とするセラミック粉末が高誘電率という理由から好適に用いられる。また、ガラス粉末を加えてもよい。
【0058】
次に、作製されたこのセラミックグリーンシート1上には、導体ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等の方法により印刷して容量形成用導体パターン3が形成される。この導体ペーストは、金属粒子と、脂肪族炭化水素と高級アルコールとの混合物からなる有機溶剤と、この有機溶剤に対して可溶性のエチルセルロースからなる有機粘結剤と、該有機溶剤に難溶解性のエポキシ樹脂からなる有機粘結剤とを含有するものである。
【0059】
また、この導体ペーストの粘度は、この導体ペースト中の金属粉末、粘結剤、溶媒および分散剤を適正化して制御でき、このことにより導体ペーストにチクソトロピック性を付与することができる。つまり、本発明の容量形成用導体パターン3を形成するための、導体ペーストの粘度としては、せん断速度0.01s−1における導体ペーストの粘度をη1、せん断速度が100s−1における前記導体ペーストの粘度をη2としたとき、η1/η2>5であることが望ましい。
【0060】
また、導電性ペースト中に含まれる金属粒子としては、平均粒径0.05〜0.5μmの卑金属粒子が用いられる。卑金属としては、Ni、Co、Cuがあり、金属の焼成温度が一般の絶縁体の焼成温度と一致する点、およびコストが安いという点からNiが望ましい。耐酸化性に有利なこれらの金属からなる合金を用いることもできる。
【0061】
また、導体ペーストには、固形分として、金属粉末以外に、容量形成用導体パターン3の焼結性を抑えるために微細なセラミック粉末を混合して用いることが好ましく、容量形成用導体パターン3の均一な粒子径の形成と、平滑性を向上させるために、セラミック粉末の粒径は0.15〜0.3μmが望ましい。
【0062】
そして、このような導体ペーストを用いて形成される容量形成用導体パターン3の厚みは、コンデンサの小型、高信頼性化という点から2μm以下、特には1μm以下であることが望ましい。
【0063】
また、容量形成用導体パターン3の形成後には、セラミックグリーンシート1上に、セラミックペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等の方法により印刷して形状保持パターン5が形成される。
【0064】
形状保持パターン5を形成するセラミックペーストは、セラミック粉末、バインダ、粘結剤、溶媒および分散剤等から構成されている。セラミックペーストのバインダ組成は、容量形成用導体パターン3を形成した導体ペーストと同組成もしくは異なる組成のセラミックペーストの両方を適用できるが、特に、導体ペーストの印刷と同じ条件を採用できることおよびセラミックグリーンシート1の表面からの粘結剤の揮発速度を一致させるという理由から、セラミックペーストは導体ペーストと同じ組成であることが望ましい。
【0065】
また、このセラミックスラリに用いるセラミック粉末組成は、セラミックグリーンシート1の粉末組成もしくは異なる粉末組成のセラミックペーストの両方を適用できるが、セラミックグリーンシート1と形状保持パターン5との密着性を高め、焼成収縮率を合致させるという理由から、セラミックペーストはセラミックグリーンシート1を形成するセラミックスラリと同じ粉末組成であることが望ましい。
【0066】
また、このセラミックペースト中に含まれる材料比率は、80%以下が望ましく、特に、近接する導体パターンに滲まないという理由から、溶剤量は20〜70重量%が望ましい。そして、ここで用いる溶剤もまた、導体ペーストに用いる溶剤と同じものが望ましい。
【0067】
また、このようなセラミックパターンを形成するためには、セラミックペーストの粘度がチクソトロピック性を有するとともに、せん断速度0.01s−1におけるセラミックペーストの粘度をη1、せん断速度が100s−1における前記セラミックペーストの粘度をη2としたとき、η2/η1>5であることが望ましく、特に、導体パターンに滲むことなく保形性を向上させることができ、導体パターン間に所定間隔をおいて高精度に形状保持パターン5を形成できるという理由から、セラミックペーストの粘度特性として、上記せん断速度の範囲において、η2/η1は10〜50の範囲にあることが望ましい。
【0068】
また、このセラミックペーストの粘度は、このセラミックペースト中のセラミック粉末、粘結剤、溶媒および分散剤を適正化して制御でき、このことによりセラミックペーストにチクソトロピック性を付与することができる。そして、このようにセラミックペーストの粘度特性を制御することにより形状保持パターン5の端部に傾斜面8を形成し、その角度を制御することができる。
【0069】
尚、上記形態では、容量形成用導体パターン3の周囲に、該容量形成用導体パターン3と間隔L2をおいて形状保持パターン5を形成したが、容量形成用導体パターン3間にセラミックスラリを充填して形状保持パターンを形成しても良い。
【0070】
このような形状保持パターンでは、容量形成用導体パターンの傾斜面(端部)と形状保持パターンの傾斜面(端部)とは重畳しているが、容量形成用導体パターン上面への形状保持パターンの形成による盛り上がりを防止するため、上記重畳幅を小さくせざるを得ず、形状保持パターン及び容量形成用導体パターンを挟持するグリーンシート間の重畳部において空間が形成されるが、このような場合でも本発明を採用することにより、本発明では、形状保持パターンの切り欠き部を介して脱気を十分行うことができ、内部ポアを無くして、クラックやデラミネーションを防止できる。
【0071】
尚、セラミックグリーンシートの主面上に容量形成用導体パターン及び形状保持パターンを形成し、この上にセラミックグリーンシートを積層し、このグリーンシート上に容量形成用導体パターン及び形状保持パターンを形成する工程を繰り返すセラミック積層体の製法においても、本発明を有効に用いることができることは勿論である。
【0072】
また、上記形態では、積層セラミックコンデンサについて説明したが、本発明は、セラミックグリーンシート間に機能導体を介在する多層配線基板、積層型圧電アクチュエータ、積層型圧電トランス等においても好適に用いることができる。
【0073】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように環状の形状保持パターンが形成されているため、機能導体パターンの厚みによる段差の累積を低減でき、これにより焼成されたセラミック積層体のデラミネーションやクラックの発生を大幅に抑制できる。
【0074】
また、環状の形状保持パターンの一部が切り欠かれているため、この形状保持パターンが機能導体パターンを取り囲むように形成されたとしても、セラミックグリーンシート間であって、形状保持パターンと機能導体パターンにより形成される空間が、形状保持パターンの切り欠き部を介して外部と連通することになり、この切り欠き部を介して母体積層体や積層成形体中の空気を十分に除去すること(脱気)ができ、焼成後におけるクラックやデラミネーションを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック積層体を製造するための工程図を示す。
【図2】セラミックグリーンシート上に容量形成用導体パターン、形状保持パターンを形成した状態を示す概略斜視図である。
【図3】図2の概略断面図である。
【図4】容量形成用導体パターンおよび形状保持パターンが形成されたセラミックグリーンシートを吸着ヘッドで吸着した状態を示す概略断面図である。
【図5】セラミックグリーンシートを吸着ヘッドを用いて積層する工程の模式図である。
【図6】セラミック積層成形体の断面図である。
【図7】従来の積層セラミックコンデンサの製法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1・・・セラミックグリーンシート
3・・・容量形成用導体パターン
3a・・・エンドマージン側辺
3b・・・サイドマージン側辺
5・・・形状保持パターン
7・・・切り欠き部
9・・・母体積層体
41・・・積層成形体
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック積層体の製法に関し、特に、多層配線基板、積層型圧電アクチュエータ、積層型圧電トランス、積層セラミックコンデンサのようにセラミックグリーンシートおよび機能導体パターンが薄層多層化して形成されたセラミック積層体の製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、電子機器の小型化、高密度化に伴い、セラミック積層体中に導体パターンが形成された配線基板や積層セラミックコンデンサは、小型薄型化および高寸法精度が求められており、例えば、積層セラミックコンデンサでは小型高容量化が求められ、このためセラミックグリーンシートや導体パターンの薄層化および多層化が進められている。
【0003】
このようなセラミック積層体では、セラミックグリーンシートの薄層化および多層化に伴い、セラミックグリーンシート上に形成された導体パターンの厚みが大きく影響するようになり、導体パターンが形成されている部分と形成されていない部分との間で導体パターンの厚みによる段差が累積し、導体パターンの無い周囲のセラミックグリーンシート同士の密着が弱くなり、デラミネーションやクラックが発生しやすくなる。このためセラミックグリーンシート上の段差を無くす工夫が図られている。
【0004】
このようなセラミック積層体の製法として、図7に示すように、セラミックグリーンシート81の主面に導体パターン83を形成する工程において、導体パターン83の端部は、セラミックグリーンシート81の主面に対して鋭角をもつ傾斜面87を与えるように形成されるとともに、この導体パターン83の周辺にセラミックペーストを付与する工程において、セラミックペーストは、導体パターン83の傾斜面87に重なるように付与された製法が知られている(特許文献1参照。)。
【0005】
上記の製法によれば、導体パターン83の端部には傾斜面87が形成されていることから、この傾斜面87に重なるようにセラミックペーストが付与されても、その後において、導体パターン83間へと迅速に移動し円滑にレベリングされ、導体パターン83の厚みによる段差を実質的に無くすことができ、導体パターン83の厚みの影響を受けない状態で、セラミックグリーンシート81を積層することができる、と記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−311831号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
近年の電子部品の低コスト化に対して、セラミック積層体を母体積層体から多数個取りして製造するために、セラミックグリーンシート81や印刷用スクリーンはワークサイズの大面積化が行われ、例えば、1個の面積がおおよそ1×2mm2以下の導体パターンを約0.5mm以下の間隔で配列させ、有効サイズを150×150mm2以上とした印刷スクリーンが用いられるようになってきている。
【0008】
このように有効サイズの大きい印刷スクリーンを用いてセラミックペーストを印刷する場合、この印刷スクリーンの周辺領域における印圧による伸び率が中央部に比較して大きいことから、セラミックグリーンシート81上に予め形成された導体パターン83のうち、特に、周辺領域に形成された導体パターン83間に形成されるセラミックパターン89の位置ずれが大きくなるという問題があった。
【0009】
即ち、印刷スクリーンは、矩形状の枠体にスクリーンの外周が固定された構造を有しており、ブレードを、スクリーンの一方の端から他方の端までスクリーン側に押圧した状態で移動させることにより印刷することができるが、ブレードのスクリーン側への押圧、並びに移動により、スクリーンの伸びが中央部に比較して周辺部が大きくなり、周辺部におけるセラミックパターン89の印刷位置ずれが大きくなる。
【0010】
従って、上記した特許文献1に開示されるセラミック積層体の製法では、セラミックペーストが導体パターン83の傾斜面87に重なるように塗布され、導体パターン83の端部85に乗り上げたセラミックペーストが、導体パターン83間へと移動しレベリングされると記載されているものの、上記したように、印刷スクリーンの周辺領域を用いて印刷されるセラミックペーストは位置ずれが大きく、例え、印刷前に、導体パターン83の端部にセラミックペーストが重なるように印刷スクリーンの位置を制御したとしても、印刷スクリーンの周辺領域では、導体パターン83の端部の傾斜面87に重なるように付与することができなくなり、導体パターン83の端部への乗り上げが大きくなるという問題があった。
【0011】
これにより、導体パターン83の端部近傍において、セラミックパターン89による盛り上がりが形成され、印刷スクリーンの周辺部を用いて印刷された部分では、局部的な厚み増加が発生し、セラミック積層体にデラミネーションやクラックが発生しやすいという問題があった。
【0012】
即ち、特許文献1では、導体パターン83の傾斜面87にセラミックペーストを塗布するため、印刷スクリーンの位置を厳密に制御すると、印刷スクリーンの中央部では、セラミックペーストを導体パターン83の傾斜面87に重なるように付与できるが、周辺領域では導体パターン83の端部上面にセラミックペーストが印刷され、導体パターン83の端部にセラミックペーストが塗布された部分では、セラミックペースト中に含まれている溶剤が、印刷後においてポーラス体である導体パターン83中に染み込むため、一部のセラミックペーストが、導体パターン83の端部近傍に堆積し、この部分の厚みが増加する。これにより導体パターン83やセラミックパターン89が形成されたセラミックグリーンシート81を、例えば、100層以上、特に、200層以上積層した場合に、導体パターン83の端部では厚みが累積することから、印刷スクリーンの周辺に印刷された部分で、セラミックグリーンシート間の密着性が低下し、焼成後にクラックやデラミネーションが発生し、歩留まりが低下するという問題があった。
【0013】
このような問題を防止するため、印刷スクリーン周辺部でセラミックパターン89を導体パターン83の端部上面に堆積しないように、パターン制御すると、セラミックグリーンシート81間に、セラミックパターン89と導体パターン83とで形成される空間を内包してしまい、しかも前記空間は、周囲がセラミックパターン89で囲まれているため、成形後の脱気工程でも除去することが困難となり、焼成後にクラックやデラミネーション等の発生原因となるという問題があった。
【0014】
従って、本発明は、機能導体パターンの周囲に形状保持パターンを形成して機能導体パターンの厚みによる段差をなくすことができるとともに、積層成形体中の脱気を効果的に行うことができるセラミック積層体の製法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミック積層体の製法は、積層された複数のセラミックグリーンシート間に、対向する一対のエンドマージン側辺及び対向する一対のサイドマージン側辺を有する矩形状の機能導体パターンを複数所定間隔をおいて整列してなる母体積層体を作製する工程と、該母体積層体を所定位置で積層方向に切断して、異なる端面に前記機能導体パターンのエンドマージン側辺が交互に露出する積層成形体を作製する工程とを具備するセラミック積層体の製法であって、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように環状に形状保持パターンが形成され、前記グリーンシート間における前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンで形成される空間同士が連通するように、前記形状保持パターンの一部が切り欠かれていることを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の他のセラミック積層体の製法は、セラミックグリーンシートの主面上に導体ペーストを印刷して、対向する一対のエンドマージン側辺及び対向する一対のサイドマージン側辺を有する矩形状の機能導体パターンを複数所定間隔をおいて整列して形成する工程と、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように一部が切り欠かれた環状の形状保持パターンを形成する工程と、前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンが形成されたセラミックグリーンシートを複数積層して母体積層体を作製する工程と、該母体積層体を所定位置で積層方向に切断して、異なる端面に前記機能導体パターンのエンドマージン側辺が交互に露出する積層成形体を作製する工程とを具備することを特徴とする。
【0017】
また、本発明のさらに他のセラミック積層体の製法は、セラミックグリーンシートの主面上に導体ペーストを印刷して、対向する一対のエンドマージン側辺及び対向する一対のサイドマージン側辺を有する矩形状の機能導体パターンを複数所定間隔をおいて整列して形成する導体パターン形成工程と、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように一部が切り欠かれた環状の形状保持パターンを形成する形状保持パターン形成工程と、前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンが形成されたセラミックグリーンシートに、前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンを被覆するように前記グリーンシートを積層するグリーンシート積層工程と、該グリーンシートの主面上に、前記導体パターン形成工程、前記形状保持パターン形成工程及び前記グリーンシート積層工程を順次繰り返して母体積層体を作製する工程と、該母体積層体を所定位置で積層方向に切断して、異なる端面に前記機能導体パターンのエンドマージン側辺が交互に露出する積層成形体を作製する工程とを具備することを特徴とする。
【0018】
また、本発明のさらに他のセラミック積層体の製法は、積層された複数のセラミックグリーンシート間に機能導体パターンを介在してなる積層成形体を作製する工程を具備するセラミック積層体の製法であって、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように環状に形状保持パターンが形成され、前記グリーンシート間における前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンで形成される空間が外部と連通するように、前記形状保持パターンの一部が切り欠かれていることを特徴とする。
【0019】
このような本発明のセラミック積層体の製法では、機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように環状の形状保持パターンが形成されているため、機能導体パターンの厚みによる段差の累積を低減でき、これにより焼成されたセラミック積層体(例えばコンデンサ本体)のデラミネーションやクラックの発生を大幅に抑制できる。
【0020】
また、これらの製法では、環状の形状保持パターンの一部が切り欠かれているため、この形状保持パターンが機能導体パターンを取り囲むように形成されたとしても、セラミックグリーンシート間であって、形状保持パターンと機能導体パターンにより形成される空間が、形状保持パターンの切り欠き部を介して外部と連通することになり、この切り欠き部を介して母体積層体や積層成形体中の空気を十分に除去すること(脱気)ができ、焼成後におけるクラックやデラミネーションを抑制することができる。
【0021】
また、本発明のセラミック積層体の製法は、形状保持パターンはセラミックパターンであることを特徴とする。形状保持パターンとしてセラミックパターンを用いる場合には、セラミックグリーンシート間にはセラミックパターンが介在することになり、セラミックグリーンシート間の接合強度を向上することができ、焼成後におけるクラックやデラミネーションをさらに抑制できる。尚、本発明のセラミックパターンとは、ガラスセラミックパターンも含む概念である。
【0022】
さらに、本発明のセラミック積層体の製法は、形状保持パターンは、機能導体パターンと所定間隔をおいて形成されていることを特徴とする。このような製法では、形状保持パターンが機能導体パターンの外周端部の傾斜面に重ならないように離間して形成されることから、印刷スクリーンの印圧により周辺領域に伸びが生じて印刷時の位置ずれが生じたとしても、機能導体パターンと形状保持パターンとの位置精度のマージンを有することから、機能導体パターン間に形状保持パターンを確実に形成でき、機能導体パターンと形状保持パターンが形成されたセラミックグリーンシートを多層化してセラミック積層体を形成した場合にも、このセラミック積層体の変形を抑制できる。
【0023】
また、本発明のセラミック積層体の製法は、形状保持パターンの端部は、機能導体パターンの端部と重畳していることを特徴とする。印刷スクリーンの周辺領域における不具合を無くすため、形状保持パターンが機能導体パターンの端部上面に突出して形成されないように、かつ、形状保持パターンによる効果を最大限に発揮すべく、形状保持パターンの端部(傾斜面)を機能導体パターンの端部(傾斜面)と重畳させたとしても、パターン端部は傾斜しているため、グリーンシート間に空間が形成されるが、このような空間は、形状保持パターンの切り欠き部を介して外部と連通することになり、この切り欠き部を介して母体積層体や積層成形体中の脱気を十分に行うことができ、焼成後におけるクラックやデラミネーションを抑制することができる。
【0024】
さらに、本発明のセラミック積層体の製法は、形状保持パターンの厚みは、機能導体パターンの厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0025】
形状保持パターン及び機能導体パターンが形成されたグリーンシートは、吸着ヘッドに吸着されて積層されるが、本発明では、形状保持パターンの厚みを機能導体パターンよりも厚く形成することにより、積層時に用いる吸着ヘッドの吸着面を形状保持パターンにのみ接触させることができることから、加圧の初期段階すなわち低圧のときから機能用導体パターンが形状保持パターンと同時に加圧されることがなく、形状保持パターンのみが、もしくは形状保持パターンが先に加圧された後に機能導体パターンが加圧されることから、機能導体パターンの吸着ヘッドによる型跡の形成や変形が抑制され、吸着ヘッドの吸引孔部分の機能導体パターンが突出し、本来絶縁されるべき領域にまで機能導体パターンが延出したりすることがなくなり、セラミック積層体の絶縁不良やショートを抑えることができる。
【0026】
このような場合には、特に空気が残存しやすいため、形状保持パターンに切り欠き部を形成して脱気する本発明を用いる意義が大きい。
【0027】
また、本発明のセラミック積層体の製法は、形状保持パターンの厚みをt1、機能導体パターンの厚みをt2としたときに、1<t1/t2≦2を満足することを特徴とする。
【0028】
t1/t2比をこのような範囲とすることにより、形状保持パターンの過剰厚みによるセラミック積層体の厚みばらつきを低減し、デラミネーションをさらに抑制できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック積層体の製法は、例えば、電子部品の一つである積層セラミックコンデンサに適用される。
【0030】
積層セラミックコンデンサを構成するセラミックグリーンシート1は、図1(a)に示すように、まず、キャリアフィルム2上にセラミックスラリを塗布して形成される。
【0031】
次に、図1(b)に示すように、このセラミックグリーンシート1の一方主面上に導体ペーストを印刷して、図2に示すように、平面視で矩形状の容量形成用導体パターン(機能導体パターン)3を所定間隔をおいて複数整列して形成し、この後、図1(c)に示すように、セラミックペーストを用いて、容量形成用導体パターン3間に、容量形成用導体パターン3と離間して形状保持パターン5が形成される。
【0032】
即ち、図2に示したように、セラミックグリーンシート1の一方主面側に、導体ペーストを印刷して形成された矩形状の容量形成用導体パターン3が所定間隔L1をおいて複数整列して形成されており、これらの容量形成用導体パターン3は、対向する一対のエンドマージン側辺3a及び対向する一対のサイドマージン側辺3bを有している。尚、図2では、隣設する容量形成用導体パターン3の対向するエンドマージン側辺3a間の間隔と、隣設する容量形成用導体パターン3の対向するサイドマージン側辺3b間の間隔とを同一間隔L1としたが、必ずしも同一間隔とする必要はない。
【0033】
そして、隣設する容量形成用導体パターン3の対向するエンドマージン側辺3a間、及びサイドマージン側辺3b間に、該エンドマージン側辺3a、サイドマージン側辺3bと所定間隔L2をおいて、セラミックパターンからなる形状保持パターン5が形成されている。
【0034】
この形状保持パターン5は、容量形成用導体パターン3の周囲に、該容量形成用導体パターン3を取り囲むように形成されており、その一部は切り欠かれており、容量形成用導体パターン3と形状保持パターン5との隙間6は、隣設する容量形成用導体パターン3と形状保持パターン5との隙間6と、形状保持パターン5の切り欠き部7で連通している。
【0035】
即ち、形状保持パターン5は、全体的に見ると格子状に形成されており、その格子を構成する枠に隙間6が形成された形状とされ、さらに言い換えれば、形状保持パターン5は複数に分割されており、これらの分割されたセラミックパターンが、容量形成用導体パターン3の周囲に、容量形成用導体パターン3を囲むように所定間隔をおいて形成されている。
【0036】
形状保持パターン5と容量形成用導体パターン3との間隔L2は60μm以上とされている。これにより容量形成用導体パターン3や形状保持パターン5の印刷ずれ、積層ずれ、および切断時のずれが生じたとしても、形状保持パターン5が容量形成用導体パターン3上に形成されることを防止できる。
【0037】
また、上記のように形成された容量形成用導体パターン3および形状保持パターン5の端部は、図3に示すように、セラミックグリーンシート1の主面に対して傾斜面8を有していることが望ましく、その傾斜の角度θ2は0.5°〜40°の範囲であることが望ましい。特に、積層加圧した場合に、パターン3、5間へのセラミックグリーンシート1の急激な埋没を抑制し、セラミック積層体の急激な変形を抑えるという理由から、角度θ2は1°〜20°、さらには、2°〜10°がより望ましい。
【0038】
この角度θ2は、セラミックグリーンシート1上に形成した容量形成用導体パターン3や形状保持パターン5を、簡易的には触針式表面粗さ計を用いて測定できる。また、詳細には走査型電子顕微鏡を用いて断面観察を行い測定できる。
【0039】
また、本発明のセラミック積層体の製法により形成される形状保持パターン5の厚みは、容量形成用導体パターン3の厚みよりも大なることが望ましい。つまり、形状保持パターン5の厚みをt1、容量形成用導体パターン3の厚みをt2としたときに、t1>t2の関係を満足するものであるが、さらには、1<t1/t2≦2であることが望ましく、特に、セラミック積層体のデラミネーションや導体のショートを防止できるという点から1.05〜1.2であることがより望ましい。
【0040】
積層セラミックコンデンサでは、一般に、図4に示すように、セラミックグリーンシート1上の形状保持パターン5の高さを容量形成用導体パターン3の高さよりも高く形成することにより、セラミックグリーンシート1を積層する際に用いられる吸着ヘッド20に形状保持パターン5のみを接触させて吸着することができ、このため吸着ヘッド20による容量形成用導体パターン3の変形を防止できる。
【0041】
つまり、容量形成用導体パターン3は吸着ヘッド20の吸着面21に接触しないように積層されるために、この工程での吸着や加圧による容量形成用導体パターン3の型跡の形成や変形が防止される。
【0042】
尚、本発明では、1.05≦t1/t2≦1.2とすることが望ましく、これにより形状保持パターン5と容量形成用導体パターン3との間の厚み差が僅かとなり、積層工程における吸着力の低下の影響を無視できる。さらには、形状保持パターン5と容量形成用導体パターン3との間の厚み差が僅かであることから積層工程における吸着力の低下も無くすことができる。
【0043】
形状保持パターン5の厚みを容量形成用導体パターン3の厚みよりも厚くするには、オープニングが異なる印刷スクリーンを用いることにより可能である。
【0044】
次に、図1(d)に示すように、容量形成用導体パターン3及び形状保持パターン5が形成されたセラミックグリーンシート1を複数積層して母体積層体9が形成される。この母体積層体9では、セラミックグリーンシート1を介して対向して形成される容量形成用導体パターン3のエンドマージン側辺3aは、ずれて形成されている。
【0045】
母体積層体9は、具体的には、図5に示すように、キャリアフィルム2上に形成されたパターン3、5が形成されたセラミックグリーンシート1が、真空ポンプ(図示せず)の作動により空気を吸引することで吸着ヘッド20の吸引孔22から吸引され、セラミックグリーンシート1の形状保持パターン5を吸着ヘッド20の吸着面21に吸着させ、吸着ヘッド20を上方へ移動させることにより、キャリアフィルム2からセラミックグリーンシート1を剥離する。
【0046】
次に、吸着ヘッド20により吸着したセラミックグリーンシート1を支持台23上面に載置し、且つ吸着ヘッド20の吸着面21と支持台23上面とで加圧する。そして、これらの工程を繰り返し実施することによって、複数のセラミックグリーンシート1を積層し、母体積層体9が形成される。
【0047】
すなわち、このような積層工程では、容量形成用導体パターン3や形状保持パターン5が形成されたセラミックグリーンシート1を積層する場合、セラミックグリーンシート1からそれを支持しているキャリアフィルム2を剥離するために、容量形成用導体パターン3及び形状保持パターン5側を吸着ヘッド20に吸着させるものである。
【0048】
この後、母体積層体9の加圧加熱しながら脱気が行われる。母体積層体9の脱気は、母体積層体9がある程度軟化する温度まで加熱された状態で、母体積層体9を加圧しながら、母体積層体が収容された室の真空度を上げて、母体積層体9内に存在している空気を除去することにより行われる。
【0049】
本発明では、容量形成用導体パターン3と形状保持パターン5との間に間隔L2の隙間6を形成したとしても、容量形成用導体パターン3と形状保持パターン5とを形成したセラミックグリーンシート1を多層化してセラミック積層体を形成する場合に、仮積層されセラミックグリーンシート1間に貯まっている空気を、形状保持パターン5の切り欠き部7を介して効果的に脱気できる。
【0050】
なお、本発明では、上記のように、予めキャリアフィルム2から剥離したセラミックグリーンシート1を用いる以外に、導体パターン3および形状保持パターン5を形成したセラミックグリーンシート1がキャリアフィルム2に付いた状態で、キャリアフィルム2面が上側になるようにして積層し、積層後に、このキャリアフィルム2を剥離する工程を繰り返して母体積層体9を形成しても良い。
【0051】
次に、図1(e)、(e’)に示すように、この母体積層体9を、形状保持パターン5の幅方向中央部を積層方向に所定幅で2分割するように切断して、セラミック積層成形体41を形成する。即ち、格子状に形成された形状保持パターン5の枠の幅方向中央を切断し、全体的に見ると格子状に切断する。
【0052】
このセラミック積層成形体41には、内部に形成された容量形成用導体パターン3の周辺には、形状保持パターン5と、セラミックグリーンシート1が充填されることにより形成されたサイドマージン10aおよびエンドマージン10bが形成されている。
【0053】
また、セラミック積層成形体41には、図6に示すように、対向する端面に容量形成用導体パターン3のエンドマージン側辺3aが交互に露出されている。
【0054】
この後、このセラミック積層成形体を所定の雰囲気下、温度条件で焼成してセラミック積層体本体が形成され、さらに、このセラミック積層体本体の端部に外部電極を形成することによりセラミック積層体の一例である積層セラミックコンデンサが形成される。
【0055】
本発明のセラミック積層体の製法では、セラミックグリーンシート1はキャリアフィルム2を用いてシート成形法を用いて行われる。このセラミックグリーンシート1の厚みは、小型、大容量化という理由から、5μm以下、特に、1〜4μmであることが望ましい。
【0056】
また、グリーンシート1を形成するセラミックスラリは、例えば、セラミック粉末とバインダと、このバインダを溶解する溶媒とを混合したものが好適に用いられる。
【0057】
セラミック材料としては、具体的には、BaTiO3を主成分とするセラミック粉末が高誘電率という理由から好適に用いられる。また、ガラス粉末を加えてもよい。
【0058】
次に、作製されたこのセラミックグリーンシート1上には、導体ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等の方法により印刷して容量形成用導体パターン3が形成される。この導体ペーストは、金属粒子と、脂肪族炭化水素と高級アルコールとの混合物からなる有機溶剤と、この有機溶剤に対して可溶性のエチルセルロースからなる有機粘結剤と、該有機溶剤に難溶解性のエポキシ樹脂からなる有機粘結剤とを含有するものである。
【0059】
また、この導体ペーストの粘度は、この導体ペースト中の金属粉末、粘結剤、溶媒および分散剤を適正化して制御でき、このことにより導体ペーストにチクソトロピック性を付与することができる。つまり、本発明の容量形成用導体パターン3を形成するための、導体ペーストの粘度としては、せん断速度0.01s−1における導体ペーストの粘度をη1、せん断速度が100s−1における前記導体ペーストの粘度をη2としたとき、η1/η2>5であることが望ましい。
【0060】
また、導電性ペースト中に含まれる金属粒子としては、平均粒径0.05〜0.5μmの卑金属粒子が用いられる。卑金属としては、Ni、Co、Cuがあり、金属の焼成温度が一般の絶縁体の焼成温度と一致する点、およびコストが安いという点からNiが望ましい。耐酸化性に有利なこれらの金属からなる合金を用いることもできる。
【0061】
また、導体ペーストには、固形分として、金属粉末以外に、容量形成用導体パターン3の焼結性を抑えるために微細なセラミック粉末を混合して用いることが好ましく、容量形成用導体パターン3の均一な粒子径の形成と、平滑性を向上させるために、セラミック粉末の粒径は0.15〜0.3μmが望ましい。
【0062】
そして、このような導体ペーストを用いて形成される容量形成用導体パターン3の厚みは、コンデンサの小型、高信頼性化という点から2μm以下、特には1μm以下であることが望ましい。
【0063】
また、容量形成用導体パターン3の形成後には、セラミックグリーンシート1上に、セラミックペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等の方法により印刷して形状保持パターン5が形成される。
【0064】
形状保持パターン5を形成するセラミックペーストは、セラミック粉末、バインダ、粘結剤、溶媒および分散剤等から構成されている。セラミックペーストのバインダ組成は、容量形成用導体パターン3を形成した導体ペーストと同組成もしくは異なる組成のセラミックペーストの両方を適用できるが、特に、導体ペーストの印刷と同じ条件を採用できることおよびセラミックグリーンシート1の表面からの粘結剤の揮発速度を一致させるという理由から、セラミックペーストは導体ペーストと同じ組成であることが望ましい。
【0065】
また、このセラミックスラリに用いるセラミック粉末組成は、セラミックグリーンシート1の粉末組成もしくは異なる粉末組成のセラミックペーストの両方を適用できるが、セラミックグリーンシート1と形状保持パターン5との密着性を高め、焼成収縮率を合致させるという理由から、セラミックペーストはセラミックグリーンシート1を形成するセラミックスラリと同じ粉末組成であることが望ましい。
【0066】
また、このセラミックペースト中に含まれる材料比率は、80%以下が望ましく、特に、近接する導体パターンに滲まないという理由から、溶剤量は20〜70重量%が望ましい。そして、ここで用いる溶剤もまた、導体ペーストに用いる溶剤と同じものが望ましい。
【0067】
また、このようなセラミックパターンを形成するためには、セラミックペーストの粘度がチクソトロピック性を有するとともに、せん断速度0.01s−1におけるセラミックペーストの粘度をη1、せん断速度が100s−1における前記セラミックペーストの粘度をη2としたとき、η2/η1>5であることが望ましく、特に、導体パターンに滲むことなく保形性を向上させることができ、導体パターン間に所定間隔をおいて高精度に形状保持パターン5を形成できるという理由から、セラミックペーストの粘度特性として、上記せん断速度の範囲において、η2/η1は10〜50の範囲にあることが望ましい。
【0068】
また、このセラミックペーストの粘度は、このセラミックペースト中のセラミック粉末、粘結剤、溶媒および分散剤を適正化して制御でき、このことによりセラミックペーストにチクソトロピック性を付与することができる。そして、このようにセラミックペーストの粘度特性を制御することにより形状保持パターン5の端部に傾斜面8を形成し、その角度を制御することができる。
【0069】
尚、上記形態では、容量形成用導体パターン3の周囲に、該容量形成用導体パターン3と間隔L2をおいて形状保持パターン5を形成したが、容量形成用導体パターン3間にセラミックスラリを充填して形状保持パターンを形成しても良い。
【0070】
このような形状保持パターンでは、容量形成用導体パターンの傾斜面(端部)と形状保持パターンの傾斜面(端部)とは重畳しているが、容量形成用導体パターン上面への形状保持パターンの形成による盛り上がりを防止するため、上記重畳幅を小さくせざるを得ず、形状保持パターン及び容量形成用導体パターンを挟持するグリーンシート間の重畳部において空間が形成されるが、このような場合でも本発明を採用することにより、本発明では、形状保持パターンの切り欠き部を介して脱気を十分行うことができ、内部ポアを無くして、クラックやデラミネーションを防止できる。
【0071】
尚、セラミックグリーンシートの主面上に容量形成用導体パターン及び形状保持パターンを形成し、この上にセラミックグリーンシートを積層し、このグリーンシート上に容量形成用導体パターン及び形状保持パターンを形成する工程を繰り返すセラミック積層体の製法においても、本発明を有効に用いることができることは勿論である。
【0072】
また、上記形態では、積層セラミックコンデンサについて説明したが、本発明は、セラミックグリーンシート間に機能導体を介在する多層配線基板、積層型圧電アクチュエータ、積層型圧電トランス等においても好適に用いることができる。
【0073】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように環状の形状保持パターンが形成されているため、機能導体パターンの厚みによる段差の累積を低減でき、これにより焼成されたセラミック積層体のデラミネーションやクラックの発生を大幅に抑制できる。
【0074】
また、環状の形状保持パターンの一部が切り欠かれているため、この形状保持パターンが機能導体パターンを取り囲むように形成されたとしても、セラミックグリーンシート間であって、形状保持パターンと機能導体パターンにより形成される空間が、形状保持パターンの切り欠き部を介して外部と連通することになり、この切り欠き部を介して母体積層体や積層成形体中の空気を十分に除去すること(脱気)ができ、焼成後におけるクラックやデラミネーションを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック積層体を製造するための工程図を示す。
【図2】セラミックグリーンシート上に容量形成用導体パターン、形状保持パターンを形成した状態を示す概略斜視図である。
【図3】図2の概略断面図である。
【図4】容量形成用導体パターンおよび形状保持パターンが形成されたセラミックグリーンシートを吸着ヘッドで吸着した状態を示す概略断面図である。
【図5】セラミックグリーンシートを吸着ヘッドを用いて積層する工程の模式図である。
【図6】セラミック積層成形体の断面図である。
【図7】従来の積層セラミックコンデンサの製法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1・・・セラミックグリーンシート
3・・・容量形成用導体パターン
3a・・・エンドマージン側辺
3b・・・サイドマージン側辺
5・・・形状保持パターン
7・・・切り欠き部
9・・・母体積層体
41・・・積層成形体
Claims (9)
- 積層された複数のセラミックグリーンシート間に、対向する一対のエンドマージン側辺及び対向する一対のサイドマージン側辺を有する矩形状の機能導体パターンを複数所定間隔をおいて整列してなる母体積層体を作製する工程と、該母体積層体を所定位置で積層方向に切断して、異なる端面に前記機能導体パターンのエンドマージン側辺が交互に露出する積層成形体を作製する工程とを具備するセラミック積層体の製法であって、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように環状に形状保持パターンが形成され、前記グリーンシート間における前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンで形成される空間同士が連通するように、前記形状保持パターンの一部が切り欠かれていることを特徴とするセラミック積層体の製法。
- セラミックグリーンシートの主面上に導体ペーストを印刷して、対向する一対のエンドマージン側辺及び対向する一対のサイドマージン側辺を有する矩形状の機能導体パターンを複数所定間隔をおいて整列して形成する工程と、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように一部が切り欠かれた環状の形状保持パターンを形成する工程と、前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンが形成されたセラミックグリーンシートを複数積層して母体積層体を作製する工程と、該母体積層体を所定位置で積層方向に切断して、異なる端面に前記機能導体パターンのエンドマージン側辺が交互に露出する積層成形体を作製する工程とを具備することを特徴とするセラミック積層体の製法。
- セラミックグリーンシートの主面上に導体ペーストを印刷して、対向する一対のエンドマージン側辺及び対向する一対のサイドマージン側辺を有する矩形状の機能導体パターンを複数所定間隔をおいて整列して形成する導体パターン形成工程と、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように一部が切り欠かれた環状の形状保持パターンを形成する形状保持パターン形成工程と、前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンが形成されたセラミックグリーンシートに、前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンを被覆するように前記グリーンシートを積層するグリーンシート積層工程と、該グリーンシートの主面上に、前記導体パターン形成工程、前記形状保持パターン形成工程及び前記グリーンシート積層工程を順次繰り返して母体積層体を作製する工程と、該母体積層体を所定位置で積層方向に切断して、異なる端面に前記機能導体パターンのエンドマージン側辺が交互に露出する積層成形体を作製する工程とを具備することを特徴とするセラミック積層体の製法。
- 積層された複数のセラミックグリーンシート間に機能導体パターンを介在してなる積層成形体を作製する工程を具備するセラミック積層体の製法であって、前記機能導体パターンの周囲に、該機能導体パターンを取り囲むように環状に形状保持パターンが形成され、前記グリーンシート間における前記機能導体パターン及び前記形状保持パターンで形成される空間が外部と連通するように、前記形状保持パターンの一部が切り欠かれていることを特徴とするセラミック積層体の製法。
- 形状保持パターンはセラミックパターンであることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれかに記載のセラミック積層体の製法。
- 形状保持パターンは、機能導体パターンと所定間隔をおいて形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれかに記載のセラミック積層体の製法。
- 形状保持パターンの端部は、機能導体パターンの端部と重畳していることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれかに記載のセラミック積層体の製法。
- 形状保持パターンの厚みは、機能導体パターンの厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれかに記載のセラミック積層体の製法。
- 形状保持パターンの厚みをt1、機能導体パターンの厚みをt2としたときに、1<t1/t2≦2を満足することを特徴とする請求項1乃至8のうちいづれかに記載のセラミック積層体の製法。
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JP2006100754A (ja) * | 2004-09-30 | 2006-04-13 | Murata Mfg Co Ltd | 積層セラミック電子部品の製造方法 |
JP2006210422A (ja) * | 2005-01-25 | 2006-08-10 | Tdk Corp | 積層電子部品の製造方法 |
CN108878142A (zh) * | 2014-05-21 | 2018-11-23 | 株式会社村田制作所 | 层叠陶瓷电容器 |
-
2002
- 2002-12-02 JP JP2002350512A patent/JP2004186341A/ja active Pending
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