JP2004183012A - 電源、スパッタリング用電源及びスパッタリング装置 - Google Patents

電源、スパッタリング用電源及びスパッタリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】アーク放電などの突発電流を迅速に遮断し、しかも電源の規模もコンパクトにできる電源、スパッタ電源及びスパッタ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】負荷に対して順方向の電力を出力して定常運転を行い、前記負荷のインピーダンスの低下が生ずると前記負荷に対して逆方向の電圧を出力した後に前記順方向の電力を出力する電源であって、前記定常運転の電圧よりもゼロに近い電圧において前記順方向の電力を出力する際に、電流の出力を定格電流よりも小さな値に制限することにより、アーク放電が生じた状態での出力電流を制限できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電源、スパッタ用電源及びスパッタ装置に関し、特に、順方向に電圧を印加した状態においてアーク放電などの突発的な短絡電流が発生した場合に、これを遮断するために逆方向に電圧を印加可能な電源、スパッタ用電源及びスパッタ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種のプラズマ応用機器や、マイクロ波などの電磁波発生器、電力スイッチング装置などにおいて、電源の運転中に負荷側で突発的なインピーダンスの低下が生ずることがある。このインピーダンスの低下は、負荷側で、短絡的な突発電流が流れることなどによる。このような突発放電が生ずると機器の動作に弊害をもたらす場合が多いため、短絡電流を確実且つ迅速に遮断する回路が必要とされる場合が多い。
【0003】
以下、このような電源の具体例として、薄膜形成に用いるスパッタ用電源を例に挙げて説明する。
【0004】
図13は、DC(direct current)スパッタ装置の要部構成を表す模式図である。このスパッタ装置は、真空チャンバ101とスパッタ用DC電源110とを有する。電源110の陽極は、接続ケーブル120Aを介してチャンバ101に接続され、接地電位とされている。一方、電源110の陰極は、接続ケーブル120Bを介して、チャンバ101の内部に設けられたスパッタリング・ターゲット104に接続されている。そして、チャンバ101の内部には、薄膜を堆積する基板100が設置される。
【0005】
成膜に際しては、まず、真空排気ポンプ106によりチャンバ101内を真空状態にし、ガス供給源107からアルゴン(Ar)などの放電ガスを導入してチャンバ内を所定の放電圧力に維持する。そして、電源110によりターゲット104とチャンバ101との間に電界を印加し、グロー放電108を発生させる。すると、放電空間において生成されたプラズマ中の正イオンがターゲット104の表面に衝突し、ターゲット104の原子をはじき出す。このようなスパッタ現象を利用することにより、ターゲット104の材料からなる薄膜を基板100の上に形成することができる。
【0006】
しかし、このようなスパッタ動作中に、チャンバ101内での放電が停止する場合がある。例えば、ガス供給源107から供給されるガスとポンプ106による排気速度とのバランスが変動したような場合、放電条件が満たされなくなると放電が停止してプラズマが消失することがある。放電が停止すると、スパッタ電流が流れなくなり、負荷インピーダンスが急激に上昇する。従って、電源110は、このような負荷インピーダンスの急激な上昇に対して柔軟に対応できる構造を有する必要がある。
【0007】
また一方、スパッタ動作中に、チャンバ101内でアーク放電150が生ずる場合がある。このようなアーク放電150は、ターゲット104の近傍において生ずる場合が比較的多いが、基板100の近傍において生ずる場合もある。そして、このようなアーク放電150が生ずると、局所的に大電流が流れるために、チャンバの負荷インピーダンスが低下し、ターゲット104や基板100に損傷が生ずる。
【0008】
例えば、ターゲット104の側でアーク放電150が生ずると、ターゲット104の微小領域に大電流が集中するために、その部分から瞬間に大量の被着材料が放出される。この現象は「スプラッシュ」などと称され、基板100の表面に被着材料の粒子が飛び散るために、被害を受けてしまう。
【0009】
一方、基板100の側にアーク放電150が生じた場合にも、基板100が損傷を受けて不良品になってしまう場合がある。
【0010】
従って、このようなアーク放電が発生した場合に、迅速且つ確実にアークを消弧できるアーク遮断機能を有するスパッタ用電源が必要とされている。
【0011】
図14は、本発明者が本発明に至る過程で試作したスパッタ用電源の要部を表す模式図である。
【0012】
この電源は、直流電源DC1とトランジスタQ1〜4を共有した2つのインバータを有する。すなわち、直流電源DC1、トランジスタQ1〜4、トランスT1及び整流器DB1を有する第1のインバータINV1と、直流電源DC1、トランジスタQ1〜4、トランスT1及び整流器DB2を有する第2のインバータINV2と、を有する。これらインバータの出力電流は、インダクタL1とL2とによりそれぞれ平滑化されてチャンバ101及びターゲット104に供給される。
【0013】
その動作について説明すると、スパッタを実施する時には、インバータINV1、INV2を起動し、整流されたインバータ電流を断続するトランジスタQ5・6を閉じる。また、インダクタ電流を短絡する絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタIGBT1・2を開いた状態として、直流電圧をチャンバ101及びターゲット104に出力する。
【0014】
一方、チャンバ内にアーク放電が発生すると、チャンバのインピーダンスが低下し、電圧が低下する。このような電圧の低下によってアーク放電を検出すると、IGBT1・2を閉じ、トランジスタQ5・6を開く。これにより、逆バイアス電圧源DC2からIGBT2・1、DA1・2、チャンバ(101、104)、DC2の閉回路によって逆方向バイアス電圧を印加し、アーク電流を急速に遮断する。また、このアーク遮断動作の際には、インダクタL1・2の電流は、それぞれD1とIGBT1、D2とIGBT2により構成される短絡回路によって保存される。
【0015】
このようにして、所定の「遮断期間」の間、チャンバに対して逆方向の電圧を印加した後に、「判定期間」に入る。「判定期間」においては、IGBT1・2を再び開いて順方向電圧を印加し、チャンバの電圧を調べることによりアーク放電が停止したか否かの判定を行う。
【0016】
「判定期間」にアーク放電を検出した場合、すなわちチャンバの電圧が所定値を下回る場合には、再び「遮断期間」に入り、逆バイアス電圧源DC2から逆電圧を印加する。一方、「判定期間」にアーク放電を検出しない場合には、そのまま順方向電圧を印加してスパッタを再開する。
【0017】
「判定期間」におけるインダクタ電流すなわちインバータからの出力電流は、通常のスパッタ時と同様に、アーク発生直前の指令電流を目標に定電流制御される。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図14に例示した電源の場合、チャンバ内で大規模アークなどが発生すると、遮断動作を繰り返しても消弧までに長い時間を要することがある。この場合、アーク放電が消弧されるまでの間は、「判定期間」には順方向のスパッタ電力が印加される。この順方向電力はアーク発生点に投入されるため、その温度が上昇して「スプラッシュ」などのアーク被害が増大するという問題が生ずる。また、温度の上昇により熱電子の放出も助長されるため、アーク放電を消弧しにくくなるという問題も生ずる。
【0019】
このような問題は、電源を並列接続したり、大電力で運転する場合などに特に顕著となる。
【0020】
また一方、アーク放電が頻発すると、スパッタ時と変わらないインダクタ電流がアーク遮断中の逆バイアス電圧源DC2を流れることとなる。逆バイアス電圧源DC2は、アーク放電がなければ電流が流れないにも拘わらず、このようなアーク遮断中に流れるインダクタ電流に耐えるだけの電流容量を確保しなければならない。このため、逆バイアス電圧源のDC2を大型化する必要が生ずる。
【0021】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、アーク放電などの突発電流を迅速に遮断し、しかも電源の規模もコンパクトにできる電源、スパッタ電源及びスパッタ装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、通常のスパッタ条件よりも低い電圧範囲において、電流に制限を設ける。こうすると、アーク放電が連続したり多発するような場合に、「判定期間」のインダクタ電流すなわちインバータ出力電流を抑制できる。その結果として、「判定期間」にアーク発生点に投入される電力が抑制され、アーク発生点の温度が低下して消弧も早くなる。
【0023】
すなわち、本発明の第1の電源は、負荷に対して順方向の電力を出力して定常運転を行い、前記負荷のインピーダンスの低下が生ずると前記負荷に対して逆方向の電圧を出力した後に前記順方向の電力を出力する電源であって、
前記定常運転の電圧よりもゼロに近い電圧において前記順方向の電力を出力する際に、電流の出力を定格電流よりも小さな値に制限することを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、アーク放電などの突発電流を迅速に遮断し、しかも電源の規模もコンパクトにできる電源を提供することができる。
【0025】
また、本発明の第2の電源は、負荷に対して順方向の電力を出力する順方向出力手段と、負荷に対して逆方向の電圧を出力する逆方向出力手段と、を備え、
前記順方向出力手段による前記順方向の電力の出力中に前記負荷のインピーダンスの低下が生ずると、前記逆方向出力手段により前記負荷に対して前記逆方向の電圧を出力する電源であって、前記順方向出力手段は、前記負荷のインピーダンスの低下が生じた状態での電圧範囲において、電流の出力を定格電流よりも小さな値に制限することを特徴とする。
【0026】
上記構成によっても、アーク放電などの突発電流を迅速に遮断し、しかも電源の規模もコンパクトにできる電源を提供することができる。
【0027】
また、本発明の第3の電源は、負荷に対して順方向の電力を出力する順方向出力手段と、負荷に対して逆方向の電圧を出力する逆方向出力手段と、を備え、
第1の電圧範囲において前記順方向出力手段による前記順方向の電力の出力中に前記負荷のインピーダンスの低下が生ずると、前記逆方向出力手段により前記負荷に対して前記逆方向の電圧を出力する電源であって、前記順方向出力手段は、前記第1の電圧範囲よりもゼロに近い電圧範囲において、電流の出力を定格電流よりも小さな値に制限することを特徴とする。
【0028】
上記構成によれば、アーク放電などの突発電流を迅速に遮断し、しかも電源の規模もコンパクトにできる電源を提供することができる。
【0029】
上記第3の電源において、前記負荷のインピーダンスの低下が生じて前記逆方向出力手段による前記逆方向の電圧を出力した後に、前記順方向出力手段により前記負荷に対して前記順方向の電力を出力して前記負荷のインピーダンスを判定するものとすることができる。
【0030】
またここで、前記負荷のインピーダンスを判定した結果、そのインピーダンスが低下した状態のままの時には、前記逆方向出力手段による前記逆方向の電圧を再び出力するものとしてもよい。
【0031】
一方、前記順方向出力手段は、前記第1の電圧範囲よりもゼロに近い電圧からゼロに至る電圧範囲において、電圧がゼロに近づくに従って電流の上限を連続的にゼロに近づけるものとしてもよい。
【0032】
また、前記順方向出力手段は、前記第1の電圧範囲よりもゼロに近い電圧からゼロに至る電圧範囲において、電圧がゼロに近づくに従って電流の上限をステップ的ににゼロに近づけるものとすることもできる。
【0033】
また、前記順方向出力手段は、前記第1の電圧範囲よりもゼロに近い電圧からゼロに至る電圧範囲において、電流の上限を一定値としてもよい。
【0034】
また、前記順方向出力手段は、電圧がゼロの時の電流の上限をゼロとはしないものとすれば、電圧がゼロの状態でも有限の電流を流すことができる。
【0035】
一方、本発明のスパッタリング用電源は、ターゲットをスパッタして薄膜を形成するスパッタリング用電源であって、上記のいずれかの電源を備え、
前記順方向の電力を前記ターゲットに与えて前記スパッタを実施可能としたことを特徴とする。
【0036】
ここで、前記インピーダンスの低下は、前記スパッタの際のアーク放電の発生によるものとすることができる。
【0037】
一方、本発明のスパッタリング装置は、上記のいずれかのスパッタリング用電源と、前記ターゲットを収容可能とし大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な真空チャンバと、を備えたことを特徴とし、アーク放電などの突発電流を迅速に遮断し、しかも電源の規模もコンパクトなスパッタリング装置を提供することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0039】
図1は、本発明の実施の形態にかかる電源の要部を表す模式図である。
【0040】
本具体例の電源も、図14に表したものと同様に、直流電源DC1とトランジスタQ1〜4を共有した2つのインバータを有する。すなわち、直流電源DC1、トランジスタQ1〜4、トランスT1及び整流器DB1を有する第1のインバータINV1と、直流電源DC1、トランジスタQ1〜4、トランスT1及び整流器DB2を有する第2のインバータINV2と、を有する。これらインバータの出力電流は、インダクタL1とL2とによりそれぞれ平滑化されてチャンバ101及びターゲット104に供給される。但し、本発明の電源におけるインバータの数は、2つに限定されるものではなく、3つあるいはそれ以上のインバータを設けてもよい。
【0041】
これらインバータは、電力制御部PCからパルス幅変調器PWMを介して出力されるパルス信号により駆動される。すなわち、電力制御部PCは、上位の制御装置(図示せず)から電力設定信号Psetを入力し、また、同図に波線で例示したような経路を介してチャンバに印加されている電圧と流れている電流とを適宜モニタする。そして、チャンバ電流と電圧とが設定信号Psetに対応した値となるようにフィードバック制御を行う。そして、この電力制御部PCに、電流制限部CLが設けられている。電流制限部CLは、チャンバ電圧が通常のスパッタ電圧よりも低い電圧範囲において、出力電流を制限する。
【0042】
図2は、電流制限部CLが行う電流制限動作を説明するためのグラフ図である。すなわち、同図の横軸はチャンバ電圧の絶対値、縦軸はチャンバ電流をそれぞれ表す。なお、DCスパッタ用電源の場合、チャンバ101は接地電位とし、ターゲット104には通常はマイナスの電圧を印加するが、図2の横軸には、ターゲットに印加する電圧の絶対値を表した。
【0043】
電源は、その出力電力に上限を有し、例えば本具体例においては、最大電力は6キロワットである。また、定格電流は、例えば、図示したように12アンペアとすることができる。
【0044】
正常なスパッタ動作時は、チャンバには例えば、マイナス400ボルト乃至マイナス750ボルト程度の電圧が生ずる。従って、そのスパッタ電圧において、定格電流及び最大出力を超えない範囲で、電力設定信号Psetに対応した電力が得られるように、チャンバ電流を制御する。
【0045】
これに対して、チャンバのインピーダンスが低下し、正常なスパッタ動作において用いられないような低い電圧となった場合に、電圧に応じて電流値を制限する。例えば、アーク放電が発生した場合には、チャンバ電圧はマイナス150ボルトあるいはそれよりも低い(絶対値が小さい)電圧にまで降下する。そこで、本具体例の場合、0ボルトからマイナス360ボルトの電圧範囲に電流の上限を設け、チャンバ電流が電流限界線CLVを超えないように電流制限部CLが電流制限動作をする。
【0046】
このようにすれば、アーク放電に対する「遮断期間」の後の「判定期間」に、アーク放電を助長するという問題を抑制できる。すなわち、「判定期間」においてもしアーク放電が残留している場合には、チャンバ電圧は低いままである。従って、このような低い電圧の場合に出力電流を制限することによって、アーク放電による被害の拡大を防ぐことができる。
【0047】
なお、電源の起動やプラズマの点火などを考慮して、電圧がゼロの時でも指令電流はゼロとせずあるオフセット(図2の場合には、1.2アンペア)を設けることが望ましい。
【0048】
図1の電源の動作について説明すると、以下の如くである。
【0049】
スパッタを開始する時には、電源は、電流の制限上限値を例えば1.2アンペア(図2)として起動する。そしてまず、インバータINV1、INV2を起動し、整流されたインバータ電流を断続するトランジスタQ5・6を閉じる。また、インダクタ電流を短絡するIGBT1・2を開いた状態として、直流電圧(例えば、マイナス1500V)をチャンバ101及びターゲット104に出力する。つまり、この状態では、インバータINV1、インダクタL2、インバータINV2、チャンバ101、ターゲット104、出力ダイオードDA1・2、インダクタL1、インバータINV1という経路で電圧を出力する。
【0050】
チャンバ内でプラズマが点火しグロー放電が始まると、スパッタ電流が流れはじめるが、プラズマの成長により出力電圧も上昇するので、図2の電流限界線CLVの特性に応じて電流の制限上限も緩和される。そして、例えば電圧が360ボルトに達すると、電流限界線CLVによる制限が解除され、上位の制御装置(図示せず)からの電力設定信号Psetによる電力でスパッタ動作が開始される。
【0051】
スパッタ中の放電電圧の絶対値は、概ね400ボルト以上であるが、チャンバ内でアーク放電が発生すると、負荷電圧の絶対値は80ボルト程度まで低下する。電源は、この電圧低下によりアーク放電を検出すると、アーク遮断動作を開始する。
【0052】
すなわち、電源は、IGBT1・2を閉じ、トランジスタQ5・6を開く。これにより、逆バイアス電圧源DC2からIGBT2・1、DA1・2、チャンバ(101、104)、DC2の閉回路によって逆方向バイアス電圧を印加し、アーク電流を急速に遮断する。また、このアーク遮断動作の際には、インダクタL1・2の電流は、それぞれD1とIGBT1、D2とIGBT2により構成される短絡回路によって保存される。
【0053】
このようにして、所定の「遮断期間」の間、チャンバに対して逆方向の電圧を印加した後に、「判定期間」に入る。判定期間においては、IGBT1・2を再び開いて順方向電圧を印加し、チャンバの電圧を調べることによりアーク放電が停止したか否かの判定を行う。
【0054】
図3は、本実施形態の電源におけるアーク遮断動作の一例を表すグラフ図である。すなわち、同図(a)の実線は電源からの出力電圧、波線はチャンバにおける電圧観測値の時間変化をそれぞれ表す。また、同図(b)の実線は本実施形態の電源を用いた場合のチャンバ電流、一点鎖線は電流制限部CLにおいて設定される電流制限値、波線は図14に例示した比較例の電源を用いた場合のチャンバ電流の時間変化をそれぞれ表す。
【0055】
図3(a)に表したように、正常なスパッタ時の放電電圧と比べて、アーク放電が発生した時には、電圧の絶対値が低下する。すると、電流制限部CLはこの電圧の低下に応じて、図2に例示した電流限界線CLVに従って電流を制限する。
【0056】
所定の「遮断期間」の後には、チャンバに対して順方向電圧を印加してアーク放電の有無を判定する「判定期間」が設けられる。この際に、電流制限部CLによって電流が制限されているので、アーク放電を助長することがない。
【0057】
実際の動作においては、このように電流を制限した場合、インバータの動作は停止することもある。しかし、短時間の遮断動作によって、インダクタ電流が低下する前にアーク放電を消弧できれば、出力電圧が回復してインバータが再起動する。これにより、スパッタ動作の中断を最小限に抑えることができる。
【0058】
一方、アーク遮断が長引いて連続アーク状態になる場合には、チャンバ電圧は低いままである。従って、電流制限部CLによる電流制限が継続し、インバータが停止したままで「遮断期間」と「判定期間」とが繰り返される。この時に、図14に表したような電流制限部を備えない電源の場合、図3(b)に波線で表したように、「判定期間」にチャンバ電流が大量に流れ続け、アーク放電が消弧されない。
【0059】
これに対して、本発明の電源の場合、「判定期間」の電流を制限することにより、図3(b)に実線で表したように、アーク放電電流を確実に減衰させることができる。例えば、アーク放電の電圧がマイナス80ボルトの時は、「遮断期間」と「判定期間」の平均の電圧はおよそマイナス40ボルトである。そこで、図2の電流限界線CLVにより規定されるように、電流指令値2.4アンペアまでインダクタ電流を下げた後に、インバータが起動して定電流制御モードで運転しながら「遮断期間」と「判定期間」とを繰り返す。このようにしてアークが消弧すると、スパッタ電圧がマイナス400ボルト以上まで上昇するので、その電圧上昇に従って、電流の上限も緩和される。最終的には、アーク放電が発生する前の電圧と電流レベルに回復してスパッタが再開される。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、正常なスパッタでは用いない低い電圧範囲において、電流を制限することにより、「判定期間」のアーク被害の拡大を防ぐことができる。
【0061】
またさらに、「遮断期間」においては、逆バイアス電圧源DC2にアーク放電電流が流れることとなるが、この電流を抑制することにより、逆バイアス電圧源DC2の電源容量を小さくすることができる。その結果として、電源をコンパクトにし、信頼性も上げることができる。
【0062】
なお、図2に表した電流限界線CLVは一例に過ぎず、本発明においては、その他にも各種の特性線を設定することができる。
【0063】
図4及び図5は、本発明において用いることができる電流限界線CLVの他の具体例を表すグラフ図である。
【0064】
図4の本具体例の場合、ゼロボルトからマイナス360ボルトの範囲において、電流の上限をステップ的に制限している。
【0065】
また、図5の具体例の場合、ゼロボルトからマイナス360ボルトの範囲において、電流を1.2アンペアの一定値に制限している。
【0066】
このように、通常の使用条件における電圧よりも低い電圧範囲において電流値を適宜制限することより、本発明の作用効果を同様に得ることができる。
【0067】
次に、本実施形態の電源の具体例について説明する。
【0068】
図6は、本実施形態の電源の具体例を表す模式図である。同図については、図1乃至5及び図14に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
本具体例の電源は、その電力制御部PCに、チャンバ電流をモニタするための電流センサCsenと、チャンバ電圧をモニタするための電圧センサVsenとを有する。これらにより検出された電流データCmsrと電圧データVmsrは、乗算回路MTLにおいて乗算され、チャンバ電力が計算される。一方、図示しない上位の制御装置からは電力設定値Psetが入力され、乗算回路MTLからのチャンバ電力との差分が差分演算回路Perrにおいて演算され、電流指令値Csetが出力される。
【0070】
電流指令値Csetは、誤差増幅アンプCerrにおいて所定のゲインで増幅され、パルス幅変調器PWMに入力されて、インバータの制御パルスが形成される。このようにして、電力設定値Psetに対する電力フィードバック制御が可能とされている。
【0071】
そして、本具体例の場合、電圧センサVsenの出力が、電流制限部CLに並列に入力される。電流制限部CLは、電圧増幅器Vampと、その出力に逆方向に接続されたクランプダイオードclumpとを有する。クランプダイオードclumpの先には、順方向に接続されたダイオードLDと基準電圧源Vrefとからなる定格リミット回路RLが設けられている。
【0072】
定格リミット回路RLは、電源の定格電流を超える出力を防ぐ役割を有し、電流指令値Csetが基準電圧源Vrefを超えると、ダイオードLDがオンすることにより、電流指令値Csetを抑制する。
【0073】
一方、電流制限部CLにおいては、電圧センサVsenから電圧データVmsrが電圧増幅器Vampに入力され、増幅されてクランプダイオードclumpに印加される。従って、電圧増幅器Vampからの出力電圧が電流指令値Csetを下回った場合には、クランプダイオードclumpがオンすることにより、電流指令値Csetを抑制する。つまり、この電流制限部CLは、電圧データVmsrに応じて電流指令値Csetを抑制する「可変リミッタ」として動作する。
【0074】
例えば、ゼロアンペアから定格の12アンペアの出力電流の範囲に対応して、電流指令値Csetの範囲を0ボルトからプラス6ボルトとすることができる。この場合、クランプダイオードclumpの順方向電圧降下量を0.6ボルトとすると、電流制限用の増幅器Vampは、電源の出力電圧がゼロボルトの時にゼロボルトを出力し、出力電圧がマイナス360ボルトの時にプラス5.4ボルトを出力するように設定できる。このようにすれば、図2に表した電流限界線CLVに従って、電圧がゼロボルトからマイナス360ボルトの範囲において電流の上限を1.2アンペアから12アンペアまで連続的に設定できる。
【0075】
図7は、本発明の変形例の電源を表す模式図である。同図についても、図1乃至6及び図14に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0076】
本変形例においては、インバータINV1、INV2の出力にコンデンサC1、C2がそれぞれ接続されている。また、電源の出力前段には、トランスT3が設けられ、トランスT3の1次巻線を介して電流を出力し、スイッチング素子IGBT1によってその2次側コイルの短絡回路が形成されている。
【0077】
アーク放電が発生すると出力電圧が低下するが、電圧変化はトランスT3の1次巻線のインダクタンスが吸収し、トランスの入力電圧、すなわち(C1+C2)の直列電圧は維持される。IGBTを閉じるとトランスT3の2次巻線に(C1+C2)に充電された放電電圧がかかるが、1次巻線は2次巻線よりも20パーセント程度、巻数が多いので、1次巻線は放電電圧の1.2倍で誘導される。これにより、放電電圧の20パーセントを逆極性で出力する。
【0078】
そして、本変形例の電源においても、電力制御部PCに電流制限部CLが設けられ、図6に関して前述したものと同様の動作により、電圧に応じて電流を制御する。その結果として、「判定期間」におけるチャンバ電流を制限し、アーク放電を速やかに減衰させることが可能となる。
【0079】
次に、本発明の電源において用いることができる電力制御部PCの変形例について説明する。
【0080】
図8は、本発明において用いることができる電力制御部PCの一例を表すブロック図である。すなわち、同図は、出力電流を限界線CLV以下に制御する機能を有する電力制御部PCを表す。
【0081】
この電力制御部PCは、出力電力演算部11と、電力制御部12と、電流制御部13と、最大電流信号生成部21と、オフセット生成部22と、を有する。これらのうち、出力電力演算部11〜電流制御部13までが、出力電力のフィードバック制御部に対応し、最大電流信号生成部21とオフセット生成部22が、電流制限部に対応する。
【0082】
出力電力演算部11には、スパッタリング装置のターゲット電流を表す信号Imsrとターゲット電圧を表す信号Vmsrがそれぞれ入力される。出力電力演算部11は、これらの信号Imsr、Vmsrとに基づいて、電源から出力されている電力を演算し、それに対応する出力電力信号OSを出力する。
【0083】
電力制御部12は、電力フィードバック制御を実行する。すなわち、出力電力演算部11から出力された出力電力信号OSと、出力電力の設定値Psetとを比較し、その差分に応じた電流設定値を演算する。そして、後に詳述するように、電流限界信号CL2と比較して、電流設定信号CSを出力する。
【0084】
電流制御部13は、電流フィードバック制御を実行する。すなわち、電流設定信号CSと、信号Imsrとを比較して、DC電源部DCPのインバータINVのゲートパルス幅を制御するレベル信号LSを出力する。
【0085】
以上説明した各ブロックにより、電流設定信号Psetに対して、ImsrとVmsrとをフィードバック信号としたDC電源部DCPのフィードバック制御が実行される。
【0086】
本発明においてはさらに、最大電流信号生成部21において、例えば、図2、図4、図5などに表した電流限界線CLVに対応するような電流の上限が設定されている。そして、最大電流信号生成部21に、ターゲット電圧を表す信号Vmsrを入力し、この電流限界線CLVの上での電流の上限値を演算する。そして、この電流上限値を表す信号を電流限界信号CL1として出力する。
【0087】
この電流限界信号CL1は、オフセット生成部22に出力され、例えば、出力電圧がゼロボルトの場合でも電流設定がゼロアンペアよりも大きくなるようなオフセットが付与された電流限界信号CL2として、電力制御部12に出力される。
【0088】
なお、本具体例においては、最大電流信号生成部21とオフセット生成部22とを別のブロックとしたが、本発明はこれには限定されず、これらは同一のブロック内に設けることもできる。つまり、オフセットまで考慮した電流限界信号CL2を一度に生成してもよい。
【0089】
電力制御部12は、出力電力演算部11から出力された出力電力信号OSと、出力電力の設定値Psetとを比較して、その差分に応じた電流設定値を演算するが、さらに、この電流設定値と電流限界信号CL2とを比較する。
【0090】
そして、電流設定値が電流限界信号CL2よりも小さい場合、すなわち、流すべき電流値が電流限界線(例えば、図2、図4、図5などの限界線CLV)よりも小さい場合には、その電流設定値をそのまま電流設定信号CSとして出力する。
【0091】
一方、電力制御部12は、電流設定値が電流限界信号CL2よりも大きい場合、すなわち、流すべき電流値が限界線CLVよりも大きい場合には、その電流設定値に代えて、電流限界信号CL2を電流設定信号CSとして出力する。
【0092】
以上説明したように、本発明によれば、最大電流信号生成部21において、電源の用途などを考慮した電流限界線CLVを設定し、ターゲット電圧Vmsrに応じた電流リミットを設定する。つまり、図2、図4、図5などに例示したように、順方向の出力電流が、予め定めた電流限界線CLVを超えない範囲において、電源を動作させる。
【0093】
このようにすれば、アーク放電が発生した際の「判定期間」において、電流限界線CLVを超えたチャンバ電流を流すことを防ぐことができる。その結果として、アーク被害の拡大を解消し、アークを確実に消弧することができる。
【0094】
さらにまた、電源の構成や、スパッタリング装置の構造、スパッタする材料、条件などに応じて好適な電流限界線CLVを選択することにより、確実にアークを消去することができ、ターゲットや基板あるいは電源の電気部品などにストレスを与える虞もなくなる。
【0095】
ここで、オフセット生成部22により電流設定値にオフセットを与えることにより、アーク電圧以下で、電流限界値の設定を定格の例えば5パーセント程度に固定することにより、最初の出力電圧が出るようにすることができる。但し、このようなオフセット(例えば、図2において、ゼロボルトに対応して設定された1.2アンペアの電流値)は、最大電流信号生成部21において設定してもよい。
【0096】
図9は、図8に表したブロック図を具体化した回路の一例を表す模式図である。本具体例の回路の場合、チャンバ電流を表す信号Imsrとチャンバ電圧を表す信号Vmsrは、それぞれ0〜5ボルト、0〜マイナス6.66ボルトの電圧信号として与えられる。また、電力設定値を表す信号Psetは、0〜10ボルトの電圧信号として与えられる。
【0097】
そして、信号IoとVoは、掛け算器U1に入力されて掛け算され、出力電力OSが演算される。
【0098】
この出力信号OSは、電力フィードバック制御の誤差アンプU2に入力され、電力設定信号Psetと比較することにより、電流設定信号が出力される。
【0099】
U3は、電流フィードバック制御の誤差アンプで、誤差アンプU2で計算した電流設定値とImsrとを比較してインバータINVのゲートパルス幅(または周波数)を決めるレベル信号を生成する。誤差アンプU2の最大出力が電流の最大値となるように定数設定しておけば、最大電流値(例えば、図2の限界線CLV)でリミットをかけることができる。
【0100】
そしてさらに、演算器U4において、LC定数により予め決定した限界特性線に基づいて、チャンバ電圧Vmsrに比例した電流限界信号CL1を生成する。
【0101】
そして、演算器U5において、出力電圧が0ボルトであっても電流設定が0アンペアよりも上になるように、小さなオフセットを与えた電流限界信号CL2を生成する。
【0102】
このような具体例により、図2、図4、図5に例示したように、電流限界線CLVよりも下側の領域で動作する電源を実現できる。
【0103】
図10は、本発明の放電用電源の要部の変型例を表す模式図である。同図については、図1乃至図9に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0104】
前述した図9の回路を用いることにより基本的な動作をするのであるが、例えば、出力電圧が80ボルト以下の場合、オフセットの関係で電流設定が0アンペアにならない。
【0105】
そこで、本変型例においては、図10に表したように、コンパレータU6を追加している。コンパレータU6は、ヒステリシスを持ったコンパレータであり、出力電圧が第1の既定電圧、例えば200Vを越えるとトランジスタTrをON(オン)して演算器U5で与えたオフセットを消去する。一方、出力電圧が第2の既定電圧、例えば10V以下になると、CRタイマーにより所定のタイミングでトランジスタTrをOFF(オフ)してオフセットを与える。
【0106】
アーク電圧以下では、電流限界値の設定を定格の5パーセント程度に固定することにより最初の電圧が出るようにできるが、一方、一旦例えば200ボルト以上の出力電圧が出た場合には、このオフセットを消去することにより、アーク放電が発生した場合に、電流設定をゼロとして、「判定期間」におけるアーク被害の拡大をより確実に防ぐことができる。
【0107】
図11は、本発明の放電用電源の要部のさらなる変型例を表す模式図である。同図についても、図1乃至図10に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0108】
本変型例は、アーク放電を検出して、インバータに対するゲートパルスをただちに止める機能を追加したものである。具体的には、演算器U7、U8、U9を追加し、演算器U7で出力電圧の判定、演算器U8で出力電流の判定を行い、演算器U9でこれらの論理積(AND)をとってアーク判定して出力を止める信号を作っている。
【0109】
演算器U7においては、信号Vmsrと、既定の電圧とを比較して論理を出力する。この場合の既定の電圧は、例えば、150ボルト程度とすることができる。すなわち、この既定値よりもスパッタ電圧が低下したら、アーク放電の可能性があると判定する。
【0110】
同様に、演算器U8においては、信号Imsrと、既定の電流値に対応する信号と、を比較する。ここで既定の電流値は、例えば、定格出力電流の1/5〜1/10程度とすることが望ましい。
【0111】
そして、これら演算器U7及びU8の論理積をとることにより、スパッタ電圧が既定値よりも低く、スパッタ電流が既定値よりも大きい時に、アーク放電と判定する。そして、この判定に基づいて、ゲートパルスを直ちに停止する。
【0112】
また、本変型例の回路によれば、アークが消えると短時間で出力を復帰させ、無駄な待ち時間は最少で動作させることができる。
【0113】
すなわち、連続アークの判定を付加して、連続アークの判定で、電力制御のスイッチングをただちに止め、電流限界値のオフセットも殺すことにより、連続アークの発生時にアーク電流と持続時間を短くして連続アークに入るエネルギーを小さくするとともに、「判定期間」も必要最小限に制御することができる。
【0114】
以上、本発明の電源について、スパッタ用電源を例に挙げて説明した。しかし、本発明は、本発明の電源はスパッタ用に限定されるものではなく、例えば、マグネトロンの発振用電源としても同様に用いて同様の作用効果が得られる。
【0115】
すなわち、マグネトロンに順方向電力を供給して発振動作を生じさせ、何らかの原因により、突発的な短絡電流が生じた場合にも、上述した充電動作により充電された逆バイアス電圧源から逆電圧を印加して、迅速に電流を遮断することができる。
【0116】
図12は、本発明の電源をマグネトロンの発振に用いた構成を例示する概念図である。すなわち、同図は、マグネトロンを用いたマイクロ波発生システムを表す。
【0117】
このシステムの電源110は、所定の直流高電圧をマグネトロン200に印加して発振させる。この電源110として、図1乃至図11に関して前述した本発明の電源を用いることができる。マグネトロン200の発振により生じたマイクロ波電力は、導波管を伝送路としてアイソレータ310、マイクロ波センサ320、マイクロ波整合器340を介して、負荷500に供給される。また、センサ320からはフィードバック信号FSが、電源110のインバータに与えられ、マイクロ波の出力電力の制御が行われる。
【0118】
このようなシステムの場合にも、マグネトロン200に順方向電力を供給して発振動作を生じさせ、その間に逆バイアス電圧源C1を適宜、充電しておき、マグネトロン200において突発的な短絡的電流が生じた場合にも、電源110は、上述したアーク放電遮断動作と同様の動作により、迅速に電流を遮断することができる。その結果として、高性能で軽量且つコンパクトな電源を実現できる。
【0119】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0120】
例えば、図1、図6及び図7においては、2つのインバータを設けた電源を例示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、3つあるいはそれ以上のインバータを設けた、いわゆる「多段インバータ構成」の電源についても同様に適用して同様の作用効果を得ることができる。
【0121】
また一方、本発明の電源、スパッタ用電源及びスパッタ装置における各部の構成、構造、数、配置、形状、材質などに関しては、上記具体例に限定されず、当業者が適宜選択採用したものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に包含される。
【0122】
より具体的には、例えば、スイッチング回路としてMOSトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の記号により例示したものや、保護用素子としてバリスタの記号により例示したものなどは、これら特定の電気素子には限定されず、同様の機能または作用を有する単一の電気素子あるいは複数の電気素子を含む電気回路として構成することができ、これらすべての変形は、本発明の範囲に包含される。
【0123】
また、同様に、インバータやコンパレータ、論理回路、保護回路などの具体的な構成や、ダイオード、抵抗、トランジスタをはじめとする各回路素子の数や配置関係などについても、当業者が適宜設計変更したものは本発明の範囲に包含される。
【0124】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての電源、スパッタ用電源及びスパッタ装置は本発明の範囲に包含される。
【0125】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、スパッタなどの通常の使用条件よりも低い電圧において出力電流を制限することにより、アーク放電が連続したようなは場合にインダクタ電流を絞り込むことができる。こうすることにより、アーク遮断の「判定期間」に出力する電流を小さくしてアーク発生点に投入する電力を抑制できる。その結果として、アーク発生点の温度が低下しやすくなり、消弧も早くなるので、並列運転などの大電力スパッタの際にも、スプラッシュなどの発生が減少し、アーク被害が抑制される。
【0126】
また、本発明によれば、アーク放電が頻発するような場合も、インダクタ電流が抑制されるので、高速にアーク遮断するための逆バイアス電圧源の電流容量も小さくでき、電源の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる電源の要部を表す模式図である。
【図2】電流制限部CLが行う電流制限動作を説明するためのグラフ図である。
【図3】本発明の実施形態の電源におけるアーク遮断動作の一例を表すグラフ図である。
【図4】本発明において用いることができる電流限界線CLVの他の具体例を表すグラフ図である。
【図5】本発明において用いることができる電流限界線CLVの他の具体例を表すグラフ図である。
【図6】本発明の実施形態の電源の具体例を表す模式図である。
【図7】本発明の変形例の電源を表す模式図である。
【図8】本発明において用いることができる電力制御部PCの一例を表すブロック図である。
【図9】図8に表したブロック図を具体化した回路の一例を表す模式図である。
【図10】本発明の放電用電源の要部の変型例を表す模式図である。
【図11】本発明の放電用電源の要部のさらなる変型例を表す模式図である。
【図12】本発明の電源をマグネトロンの発振に用いた構成を例示する概念図である。
【図13】DC(direct current)スパッタ装置の要部構成を表す模式図である。
【図14】本発明者が本発明に至る過程で試作したスパッタ用電源の要部を表す模式図である。
【符号の説明】
12 電力制御部
13 電流制御部
21 最大電流信号生成部
22 オフセット生成部
LD ダイオード
clump クランプダイオード
100 基板
101 チャンバ
104 ターゲット
106 真空排気ポンプ
107 ガス供給源
108 グロー放電
110 電源
120A、120B 接続ケーブル
150 アーク放電
200 マグネトロン
310 アイソレータ
320 マイクロ波センサ
340 マイクロ波整合器
500 負荷
Cerr 誤差増幅アンプ
Cmsr 電流データ
Csen 電流センサ
Cset 電流指令値
C1 コンデンサ
CL 電流制限部
CL1、CL2 電流限界信号
CLV 電流限界線
CS 電流設定信号
DA1 出力ダイオード
DB1、DB2 整流器
DB2 整流器
DC2 逆バイアス電圧源
Imsr 電流データ
INV1、INV2 インバータ
L1、L2 インダクタ
MTL 乗算回路
Perr 差分演算回路
Pset 電力設定値
PC 電力制御部
PWM パルス幅変調器
RL 定格リミット回路
Vmsr 電圧データ
Vref 基準電圧源
Vsen 電圧センサ

Claims (12)

  1. 負荷に対して順方向の電力を出力して定常運転を行い、前記負荷のインピーダンスの低下が生ずると前記負荷に対して逆方向の電圧を出力した後に前記順方向の電力を出力する電源であって、
    前記定常運転の電圧よりもゼロに近い電圧において前記順方向の電力を出力する際に、電流の出力を定格電流よりも小さな値に制限することを特徴とする電源。
  2. 負荷に対して順方向の電力を出力する順方向出力手段と、
    負荷に対して逆方向の電圧を出力する逆方向出力手段と、
    を備え、
    前記順方向出力手段による前記順方向の電力の出力中に前記負荷のインピーダンスの低下が生ずると、前記逆方向出力手段により前記負荷に対して前記逆方向の電圧を出力する電源であって、
    前記順方向出力手段は、前記負荷のインピーダンスの低下が生じた状態での電圧範囲において、電流の出力を定格電流よりも小さな値に制限することを特徴とする電源。
  3. 負荷に対して順方向の電力を出力する順方向出力手段と、
    負荷に対して逆方向の電圧を出力する逆方向出力手段と、
    を備え、
    第1の電圧範囲において前記順方向出力手段による前記順方向の電力の出力中に前記負荷のインピーダンスの低下が生ずると、前記逆方向出力手段により前記負荷に対して前記逆方向の電圧を出力する電源であって、
    前記順方向出力手段は、前記第1の電圧範囲よりもゼロに近い電圧範囲において、電流の出力を定格電流よりも小さな値に制限することを特徴とする電源。
  4. 前記負荷のインピーダンスの低下が生じて前記逆方向出力手段による前記逆方向の電圧を出力した後に、前記順方向出力手段により前記負荷に対して前記順方向の電力を出力して前記負荷のインピーダンスを判定することを特徴とする請求項3記載の電源。
  5. 前記負荷のインピーダンスを判定した結果、そのインピーダンスが低下した状態のままの時には、前記逆方向出力手段による前記逆方向の電圧を再び出力することを特徴とする請求項4記載の電源。
  6. 前記順方向出力手段は、前記第1の電圧範囲よりもゼロに近い電圧からゼロに至る電圧範囲において、電圧がゼロに近づくに従って電流の上限を連続的にゼロに近づけることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の電源。
  7. 前記順方向出力手段は、前記第1の電圧範囲よりもゼロに近い電圧からゼロに至る電圧範囲において、電圧がゼロに近づくに従って電流の上限をステップ的ににゼロに近づけることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の電源。
  8. 前記順方向出力手段は、前記第1の電圧範囲よりもゼロに近い電圧からゼロに至る電圧範囲において、電流の上限を一定値とすることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の電源。
  9. 前記順方向出力手段は、電圧がゼロの時の電流の上限をゼロとはしないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の電源。
  10. ターゲットをスパッタして薄膜を形成するスパッタリング用電源であって、
    請求項1〜9のいずれか1つに記載の電源を備え、
    前記順方向の電力を前記ターゲットに与えて前記スパッタを実施可能としたことを特徴とするスパッタリング用電源。
  11. 前記インピーダンスの低下は、前記スパッタの際のアーク放電の発生によるものであることを特徴とする請求項10記載のスパッタリング用電源。
  12. 請求項9または10に記載のスパッタリング用電源と、
    前記ターゲットを収容可能とし大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な真空チャンバと、
    を備えたことを特徴とするスパッタリング装置。
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