JP2004179039A - 電池用セパレータ及び電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】電池が高温になる場合であっても、セパレータ形状を維持して電極間の絶縁性を維持することができ、しかも十分な機械的強度を有する電池用セパレータ、及びこれを用いた電池を提供すること。
【解決手段】本発明の電池用セパレータは、メチルペンテン系ポリマーを繊維表面に備えており、前記メチルペンテン系ポリマーの融点よりも融点の高い高融点ポリマーを備えたメチルペンテン系複合繊維を含み、前記メチルペンテン系複合繊維のメチルペンテン系ポリマーが全体的に融着した繊維シートからなる。本発明の電池は、前記の電池用セパレータを用いたものである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電池用セパレータ及びこれを用いた電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、アルカリ電池の正極と負極とを分離して短絡を防止すると共に、電解液を保持して起電反応を円滑に行なうことができるように、正極と負極との間にセパレータが使用されている。
【0003】
このようなアルカリ電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」という)として、従来、6ナイロン繊維や66ナイロン繊維をナイロン系樹脂で接着したナイロン系不織布や、ポリプロピレン繊維などのポリオレフィン系繊維をポリオレフィン系樹脂で接着したポリオレフィン系不織布が開発されてきた。このようなセパレータは通常のニッケル−カドミウム電池やニッケル−水素電池には十分に使用できるものであったが、例えば、高出力を必要とする電動工具用ニッケル−カドミウム電池やニッケル−水素電池においては、使用条件によっては電池温度が200℃以上に達することがあるため、前者のナイロン系不織布の場合には、電解液による加水分解が高温環境により加速され、セパレータ形状を維持できなかったり、加水分解物によって電池寿命を短くしてしまう場合があり、他方、後者のポリオレフィン系不織布の場合には、接着に関与するポリオレフィン系樹脂がポリエチレンであるのが一般的であるため、セパレータが溶融変形し、電極間の絶縁を保持できないため短絡が発生したり、ポリオレフィン系繊維の溶融及び収縮によりセパレータ(不織布)の孔が閉鎖され、正極から発生する酸素の負極への通過性が低下し、電池内圧が上昇してしまい、結果として電池寿命が短くなる場合があった。
【0004】
例えば、スルホン基を導入したメチルペンテン系ポリマーを鞘成分とし、ポリプロピレンやポリエチレン等を芯成分とした芯鞘型複合繊維を使用したセパレータが提案されている(特許文献1、特開平5−186964号公報)。しかしながら、このセパレータはスパンレース加工又はスポットエンボス加工を行って製造した機械的強度が不十分なものであるため、電池を製造する際にセパレータが切れたり、伸びたりして安定生産が難しく、また電極板のエッジがセパレータを貫通してショートが発生しやすく歩留まりが悪いものであった。更に、200℃を超える高温下において収縮が発生して短絡が発生しやすいものであった。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−186964号公報(特許請求の範囲、段落番号0019〜0020、段落番号0021、段落番号0030)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、電池が高温になる場合であっても、セパレータ形状を維持して電極間の絶縁性を維持することができ、しかも十分な機械的強度を有する電池用セパレータ、及びこれを用いた電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1にかかる発明は、「メチルペンテン系ポリマーを繊維表面に備えており、前記メチルペンテン系ポリマーの融点よりも融点の高い高融点ポリマーを備えたメチルペンテン系複合繊維を含み、前記メチルペンテン系複合繊維のメチルペンテン系ポリマーが全体的に融着した繊維シートからなることを特徴とする電池用セパレータ」である。本発明の電池用セパレータは、230℃〜240℃程度の融点を有するメチルペンテン系ポリマーの融着によって形態を維持しており、メチルペンテン系複合繊維全体は200℃程度の高温でも溶融しないため、200℃を超えるような高温下においても収縮するなど変形せず、しかもメチルペンテン系複合繊維は電解液によって浸食されにくいことにより、セパレータ形状を維持できるため、絶縁性に優れている。また、メチルペンテン系複合繊維のメチルペンテン系ポリマーの全体的な融着によりセパレータ形態を維持しているため、機械的強度も優れている。したがって、歩留まり良く、安定して電池を製造できるセパレータである。
【0008】
本発明の請求項2にかかる発明は、「前記メチルペンテン系複合繊維を構成する高融点ポリマーが、ポリアミド系樹脂からなることを特徴とする、請求項1記載の電池用セパレータ」である。高融点ポリマーがポリアミド系樹脂からなると、融点がメチルペンテン系ポリマーの融点に近いためメチルペンテン系複合繊維の紡糸工程及び延伸工程を安定して行うことができる利点がある。また、ポリアミド系樹脂は汎用材料であるため経済的にも有利である。
【0009】
本発明の請求項3にかかる発明は、「前記メチルペンテン系複合繊維が延伸状態にあることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の電池用セパレータ」である。メチルペンテン系複合繊維が延伸状態にあると、特にセパレータの機械的強度が優れている。
【0010】
本発明の請求項4にかかる発明は、「融点又は炭化温度が200℃以上の繊維のみから構成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電池用セパレータ」である。融点又は炭化温度が200℃以上の繊維のみから構成されていると、200℃を超える高温におけるセパレータの形状維持性、及び絶縁性に特に優れている。
【0011】
本発明の請求項5にかかる発明は、「スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤処理、放電処理、親水性樹脂付与処理の中から選ばれる親水化処理が施されていることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電池用セパレータ」である。親水化処理が施されているため、セパレータは電解液の保持性に優れている。
【0012】
本発明の請求項6にかかる発明は、「請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電池用セパレータを用いていることを特徴とする電池」である。そのため、高出力かつ長寿命の製造しやすい電池であることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の電池用セパレータは、200℃を超えるような高温下においても繊維形態を維持して、セパレータの収縮を防止したり、セパレータが溶融して孔を閉鎖して電池内圧が高くならないように、またアルカリなどの電解液によって浸食されないように、メチルペンテン系ポリマーを繊維表面に備えており、このメチルペンテン系ポリマーの融点よりも融点の高い高融点ポリマーを備えたメチルペンテン系複合繊維を含んでいる。
【0014】
本発明のメチルペンテン系複合繊維の繊維表面を構成するメチルペンテン系ポリマーは特に限定されるものではないが、例えば、ポリ−4−メチルペンテン−1ホモポリマー、4−メチルペンテン−1とオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセンなど1種類以上)との共重合ポリマーを挙げることができる。これらの中でも、4−メチルペンテン−1とオレフィンとの共重合ポリマーが好ましい。なお、組成の異なるメチルペンテン系ポリマーを2種類以上備えていても良い。
【0015】
なお、メチルペンテン系ポリマーは繊維表面の一部又は全部を占めていれば良いが、耐電解液性の点及び融着性の点から、メチルペンテン系ポリマーは繊維表面の60%以上を占めているのが好ましく、80%以上を占めているのがより好ましく、全部(両端部を除く)を占めているのが最も好ましい。
【0016】
本発明のメチルペンテン系複合繊維は、メチルペンテン系複合繊維のメチルペンテン系ポリマーを融着させてセパレータを製造する際に、メチルペンテン系複合繊維の繊維形態を維持して地合いや目付のバラツキを抑えたり、セパレータ使用時の熱によってもセパレータが収縮しないように、上述のようなメチルペンテン系ポリマーに加えて、メチルペンテン系ポリマーよりも融点の高い高融点ポリマーを備えている。
【0017】
この高融点ポリマーは前述のようなメチルペンテン系ポリマーよりも融点が高いものであれば良く、特に限定されるものではないが、メチルペンテン系ポリマーを融着させてセパレータを製造する際に、地合いや目付のバラツキを抑えることができるように、メチルペンテン系ポリマーよりも融点が10℃以上高いのが好ましく、20℃以上高いのがより好ましい。
【0018】
具体的には、本発明の高融点ポリマーとして、例えば、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂などを挙げることができる。これらの中でもポリアミド系樹脂は融点がメチルペンテン系ポリマーの融点に近いためメチルペンテン系複合繊維の紡糸工程及び延伸工程を安定して行うことができる利点がある。また、ポリアミド系樹脂は汎用材料であるため経済的にも有利である。なお、本発明のメチルペンテン系複合繊維においては、上述のような高融点ポリマーを2種類以上含んでいても良い。
【0019】
また、融点の点で異なる2種類以上のメチルペンテン系ポリマーからなるメチルペンテン系複合繊維であり、融点の最も高いメチルペンテン系ポリマー以外のメチルペンテン系ポリマーを繊維表面に備えているメチルペンテン系複合繊維であっても使用できる。
【0020】
本発明における「融点」は、示差走査熱量計を用いて、昇温温度10℃/分で室温から昇温して得られる融解吸熱曲線の極大値を与える温度をいう。
【0021】
本発明のメチルペンテン系複合繊維の横断面形状は、メチルペンテン系ポリマーを繊維表面に備えている限り限定されるものではないが、例えば、芯鞘型、偏芯型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、或いは多重バイメタル型などを挙げることができる。これらの中でも、メチルペンテン系複合繊維の繊維表面全体をメチルペンテン系ポリマーが占めることのできる、芯鞘型、偏芯型、或いは海島型であるのが好ましい。
【0022】
本発明のメチルペンテン系複合繊維におけるメチルペンテン系ポリマーと高融点ポリマーとの質量比率は特に限定するものではないが、メチルペンテン系ポリマーの融着によって機械的強度の優れるセパレータであることができるように、メチルペンテン系ポリマーはメチルペンテン系複合繊維の20mass%以上を占めているのが好ましく、40mass%以上を占めているのがより好ましい。他方、メチルペンテン系ポリマー量が多すぎると、メチルペンテン系ポリマーを融着させてセパレータを形成する際に地合いが悪くなったり、目付のバラツキが発生しやすくなるため、メチルペンテン系ポリマーはメチルペンテン系複合繊維の80mass%以下を占めているのが好ましく、70mass%以下を占めているのがより好ましい。
【0023】
本発明のメチルペンテン系複合繊維は上述のようなポリマーから構成していることができるが、機械的強度に優れているように、延伸状態にあるのが好ましい。なお、「延伸状態」とは、紡糸工程とは別の延伸工程(例えば、延伸ねん糸機による延伸工程)により延伸されていることをいい、例えば、メルトブロー法のように溶融押し出した樹脂に対して熱風を吹き付けて繊維化した繊維は、紡糸工程と延伸工程とが同じであるため延伸状態にはない。なお、延伸工程は、常温で実施されていても良いし、加熱下で実施されていても良い。
【0024】
また、本発明のメチルペンテン系複合繊維の繊維径は特に限定するものではないが、均一な地合いのセパレータであり、セパレータの孔径が大きくなりすぎず、しかもセパレータの機械的強度を大きく低下させないように、1〜30μmであるのが好ましく、3〜20μmであるのがより好ましい。
【0025】
本発明における「繊維径」は、繊維の横断面形状が円形である場合には、その直径をいい、繊維の横断面形状が非円形である場合には、その断面積と同じ面積の円の直径を繊維径とみなす。
【0026】
更に、本発明のメチルペンテン系複合繊維の繊維長は特に限定するものではなく、セパレータ、つまり繊維シートの形成方法によって、適宜選択することができる。例えば、繊維シートが湿式不織布からなる場合には、0.1〜25mmであるのが好ましく、1〜15mmであるのがより好ましい。また、繊維シートが乾式不織布からなる場合には、25〜110mmであるのが好ましく、30〜60mmであるのがより好ましい。
【0027】
本発明における「繊維長」は、JIS L 1015、8.4により得られる値をいう。
【0028】
本発明のセパレータは上述のようなメチルペンテン系複合繊維を含み、このメチルペンテン系複合繊維のメチルペンテン系ポリマーが全体的に融着したものであるため、200℃を超える高温下においても収縮したり、溶融せず、しかもメチルペンテン系複合繊維は電解液によって浸食されにくいことによりセパレータ形状を維持できるため、絶縁性を維持して短絡の発生を抑制できるものである。また、機械的強度も優れているため、電池を製造する際にセパレータが切れたり、伸びたりせず、また電極板のエッジがセパレータを貫通してショートが発生しにくいため、歩留まり良く、安定して電池を製造できるセパレータである。
【0029】
本発明のセパレータ(繊維シート)においては、上述のような効果を発揮しやすいように、メチルペンテン系複合繊維は、セパレータ(繊維シート)中、セパレータ(繊維シート)の10mass%以上を占めているのが好ましく、30mass%以上を占めているのがより好ましい。
【0030】
本発明のセパレータ(繊維シート)は前述のようなメチルペンテン系複合繊維を含んでいるが、融点又は炭化温度が200℃以上の繊維のみから構成されているのが好ましい。このような状態にあると、セパレータが200℃以上の高温に曝された場合であっても、セパレータが収縮したり、溶融しないでセパレータ形状を維持して絶縁性を維持し、寿命の長い電池とすることができるためである。この融点又は炭化温度が高ければ高い程、前記効果が優れているため、セパレータを構成する全ての繊維の融点又は炭化温度は210℃以上であるのが好ましく、220℃以上であるのがより好ましく、230℃以上であるのが更に好ましい。
【0031】
この融点又は炭化温度が200℃以上の繊維(前述のようなメチルペンテン複合繊維以外)としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアミド系繊維(ナイロン6繊維、ナイロン66繊維、芳香族環を備えたモノマーを一部又は全部用いて合成したポリアミド樹脂から構成することができる)メチルペンテン系繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、シンジオタクチックポリスチレン繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアミドイミド繊維などを挙げることができ、これら繊維を1種類以上含んでいることができる。これらの中でも、ポリフェニレンサルファイド繊維又は全芳香族ポリアミド繊維は耐熱性に優れているばかりでなく、繊維自体が機械的強度や耐電解液性に優れており、電池を製造する際にセパレータが切れたり、伸びたりしにくく、また電極板のエッジがセパレータを貫通してショートが発生しにくく、歩留まり良く、安定して電池を製造できるため好適である。
【0032】
なお、メチルペンテン系繊維としては、例えば、ポリメチルペンテン系ポリマーが繊維表面を占めていないメチルペンテン系繊維、メチルペンテン系ポリマーのみからなるメチルペンテン系繊維などを挙げることができる。
【0033】
また、メチルペンテン系複合繊維以外の繊維の繊維径は特に限定するものではないが、セパレータの均一な地合いを損なわず、セパレータの孔径が大きくなりすぎず、しかもセパレータの機械的強度を低下させないように、1〜30μmであるのが好ましく、3〜20μmであるのがより好ましい。また、メチルペンテン系複合繊維以外の繊維の繊維長は特に限定するものではなく、セパレータ(繊維シート)の形成方法によって、適宜選択することができ、例えば、セパレータが湿式不織布からなる場合には、0.1〜25mmであるのが好ましく、1〜15mmであるのがより好ましい。また、セパレータが乾式不織布からなる場合には、25〜110mmであるのが好ましく、30〜60mmであるのがより好ましい。
【0034】
本発明における「炭化温度」は、JIS K 7120に規定されている熱重量測定により得られる温度をいう。
【0035】
本発明のセパレータ(繊維シート)は前述のようなメチルペンテン系複合繊維のメチルペンテン系ポリマーが全体的に融着した状態にあるため、十分な機械的強度を有するものである。なお、メチルペンテン系複合繊維の高融点ポリマーも溶融させると、フィルム化した状態となり、気体の透過性が低下し、電池内圧が上昇して電池寿命が短くなる傾向があるため、メチルペンテン系ポリマーのみが融着しているのが好ましい。
【0036】
なお、「メチルペンテン系ポリマーが全体的に融着した」とは、メチルペンテン系複合繊維の全ての繊維交点におけるメチルペンテン系ポリマーが融着していることをいい、例えば、繊維シート前駆体(例えば、繊維ウエブ)全体をメチルペンテン系ポリマーの融点以上の温度に加熱することにより、前記状態とすることができる。なお、繊維シート前駆体を加熱された表面平滑ロールとエンボスロールとの間を通過させた場合には、エンボス部分しかメチルペンテン系ポリマーを溶融させることができないため、全ての繊維交点におけるメチルペンテン系ポリマーを融着させることはできない。
【0037】
本発明のセパレータは機械的強度に優れるように、長手方向における引張り強さが70N/5cm幅以上(好ましくは100N/5cm幅以上、更に好ましくは150N/5cm幅以上)であるのが好ましい。この「引張り強さ」は、長手方向と直交する方向に5cm、長手方向に20cmに裁断したセパレータ(繊維シート)を、引張り強さ試験機(オリエンテック製、テンシロンUTM−III−100)のチャックに固定(チャック間距離:10cm)し、引張り速度300mm/min.で、セパレータを引っ張って、セパレータが破断するのに必要とする力をいう。
【0038】
また、本発明のセパレータは高温下において収縮したり溶融せず、セパレータの形態を維持できるように、200℃における収縮率が3%以下であるのが好ましく、2%以下であるのがより好ましく、1%以下であるのが更に好ましく、0%であるのが最も好ましい。この「200℃における収縮率」は、次の方法により得られる値をいう。まず、10cm角に切り取ったセパレータを、温度200℃のオーブン中に放置して10分間加熱した後、セパレータを取り出してセパレータの寸法を測定する。次いで、加熱後のセパレータの寸法から加熱後のセパレータの面積A(cm)を算出する。そして、次の式により算出される値を200℃における収縮率(S)とする。
S={(100−A)/100}×100=100−A
【0039】
本発明のセパレータを構成する繊維シートの態様は特に限定するものではないが、例えば、不織布、織物、編物などを挙げることができ、構造的に電解液の保持性に優れている不織布であるのが好ましい。
【0040】
本発明のセパレータの目付は特に限定するものではないが、5〜120g/mであるのが好ましく、10〜100g/mであるのがより好ましく、10〜70g/mであるのが更に好ましい。また、本発明のセパレータの厚さは特に限定するものではないが、0.02〜0.3mmであるのが好ましく、0.02〜0.2mmであるのがより好ましく、0.02〜0.15mmであるのが更に好ましい。
【0041】
本発明における「目付」は、JIS L 1096、附属書3に規定されている単位面積あたりの質量に規定されている単位面積あたりの質量をいい、「厚さ」はJIS B 7502:1994に規定されている外側マイクロメーター(0〜25mm)を用いて、JIS C 2111 5.1(1)の測定法により測定した、無作為に選んだ10点の平均値をいう。
【0042】
本発明のセパレータはメチルペンテン系ポリマーを繊維表面に備えたメチルペンテン系複合繊維を含んでいるため、電解液の保持性が乏しい場合がある。そのような場合には、電解液の保持性を付与又は高めるために、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤処理、放電処理、親水性樹脂付与処理の中から選ばれる親水化処理が施されているのが好ましい。
【0043】
本発明のセパレータを構成する繊維シートは、例えば、前述のようなメチルペンテン系複合繊維を常法により溶融紡糸して形成した後、常法により繊維シートを製造することができる。例えば、好適である不織布からなるセパレータは、次のようにして製造することができる。
【0044】
まず、前述のようなメチルペンテン系複合繊維を使用して、場合によりメチルペンテン系複合繊維以外の融点又は炭化温度が200℃以上の繊維を使用して、湿式法や乾式法(例えば、カード法、エアレイ法など)などにより、繊維ウエブを製造する。なお、これら単独の繊維ウエブから不織布を製造しても良いし、繊維配合及び/又は繊維ウエブの形成方法の点で同じ又は異なる繊維ウエブ2枚以上から不織布を製造しても良い。
【0045】
次いで、形成した繊維ウエブを構成するメチルペンテン系複合繊維のメチルペンテン系ポリマーを全体的に融着させて不織布を製造する。このメチルペンテン系複合繊維の融着処理は、例えば、繊維ウエブ全体をメチルペンテン系ポリマーの融点以上の温度に加熱して実施することができる。なお、メチルペンテン系ポリマーが結晶化する前に、一対のロール等で繊維ウエブを加圧することにより、メチルペンテン系ポリマーの繊維交点を増やすことができ、より機械的強度の優れるセパレータ(不織布)とすることができるため好適である。
【0046】
なお、融着処理は上記融着処理に限定されず、加熱と同時に加圧して実施することもできる。
【0047】
上述のような融着処理に先立って、繊維ウエブを流体流(特に水流)によって絡合すると、繊維同士の交点の多い状態で融着することになるため、更に機械的強度の優れるセパレータとすることができる。
【0048】
この流体流による処理条件は特に限定するものではないが、例えば、ノズル径0.05〜0.3mm、ピッチ0.2〜3mmで、一列又は二列以上にノズルを配置したノズルプレートから、圧力1MPa〜30MPaの流体流を噴出させて、繊維ウエブに対して衝突させることができる。このような流体流による処理は1回以上、繊維ウエブの片面又は両面に対して実施することができる。なお、流体流で処理する際に、繊維ウエブを支持する支持体の非開孔部が太いと、得られる不織布は大きな貫通孔を有するものとなり、短絡が生じやすくなるので、非開孔部の太さが0.25mm以下の支持体を使用するのが好ましい。
【0049】
本発明のセパレータを構成するメチルペンテン系複合繊維は繊維表面がメチルペンテン系ポリマーから構成されているため、電解液の保持性が乏しい場合がある。そのような場合には、電解液の保持性を付与又は向上させるために、例えば、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤処理、放電処理、或は親水性樹脂付与処理の中から選ばれる親水化処理を施すのが好ましい。なお、この親水化処理は繊維シート形成後ではなく、繊維シート形成前、つまり繊維(例えば、メチルペンテン系複合繊維)に対して実施しても良い。しかしながら、繊維に対して親水化処理を実施した場合には繊維シート形成時に親水性の低下を引き起こす場合があるため、繊維シート形成後に実施するのが好ましい。以下、繊維シート形成後に実施する場合について説明するが、繊維に対しても同様に実施することができる。
【0050】
スルホン化処理としては、特に限定するものではないが、例えば、発煙硫酸、硫酸、三酸化イオウ、クロロ硫酸、又は塩化スルフリルからなる溶液中に、繊維シートを浸漬してスルホン酸基を導入する方法や、一酸化硫黄ガス、二酸化硫黄ガス或いは三酸化硫黄ガスなどの存在下で放電を作用させて繊維シートにスルホン酸基を導入する方法等がある。
【0051】
フッ素ガス処理についても、特に限定するものではないが、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)で希釈したフッ素ガスと、酸素ガス、二酸化炭素ガス、及び二酸化硫黄ガスの中から選ばれる少なくとも1種類のガスとの混合ガスに、繊維シートをさらすことにより、繊維表面にスルホン酸基、水酸基、カルボキシル基、或いはカルボニル基などの親水性官能基を導入して、親水化することができる。なお、繊維シートに二酸化硫黄ガスをあらかじめ付着させた後に、フッ素ガスを接触させると、より効率的に恒久的な親水性を付与することができる。
【0052】
ビニルモノマーのグラフト重合としては、ビニルモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、或いはスチレンを使用することができる。なお、スチレンをグラフト重合した場合にはスルホン化するのが好ましい。これらの中でも、アクリル酸は電解液との親和性に優れているため好適に使用できる。
【0053】
これらビニルモノマーの重合方法としては、例えば、ビニルモノマーと重合開始剤を含む溶液中に繊維シートを浸漬して加熱する方法、繊維シートにビニルモノマーを塗布した後に放射線を照射する方法、繊維シートに放射線を照射した後にビニルモノマーと接触させる方法、増感剤を含むビニルモノマー溶液を繊維シートに含浸した後に紫外線を照射する方法などがある。なお、ビニルモノマー溶液と繊維シートとを接触させる前に、紫外線照射、コロナ放電、プラズマ放電などにより、繊維シートの表面を改質処理すると、ビニルモノマー溶液との親和性が高くなるため、効率的にグラフト重合できる。
【0054】
界面活性剤処理としては、例えば、アニオン系界面活性剤(例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸塩、もしくはスルホコハク酸エステル塩など)、又はノニオン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、もしくはポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルなど)の溶液中に繊維シートを浸漬したり、この溶液を繊維シートに塗布又は散布して付着させることができる。
【0055】
放電処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、沿面放電処理又は電子線処理などがある。これら放電処理の中でも、空気中の大気圧下で、それぞれが誘電体を担持する一対の電極間に、これら両方の誘電体と接触するように繊維シートを配置し、これら両電極間に交流電圧を印加し、繊維シートの内部空隙で放電を発生させる方法であると、繊維シートの内部を構成する繊維等の表面も親水化することができるため、セパレータの内部における電解液の保持性に優れている。
【0056】
親水性樹脂付与処理としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、架橋可能なポリビニルアルコール、又はポリアクリル酸などの親水性樹脂を繊維シートに付着させることができる。これらの親水性樹脂を適当な溶媒に溶解又は分散させた後、この溶媒中に繊維シートを浸漬したり、この溶媒を繊維シートに塗布又は散布し、乾燥して付着させることができる。なお、親水性樹脂の付着量は、通気性を損なわないように、繊維シート全体の0.3〜5mass%であるのが好ましい。
【0057】
この架橋可能なポリビニルアルコールとしては、例えば、水酸基の一部を感光性基で置換したポリビニルアルコールがあり、より具体的には、感光性基としてスチリルピリジニウム系のもの、スチリルキノリニウム系のもの、スチリルベンゾチアゾリウム系のもので置換したポリビニルアルコールがある。この架橋可能なポリビニルアルコールも他の親水性樹脂と同様にして繊維シートに付着させた後、光照射によって架橋させることができる。このような水酸基の一部を感光性基で置換したポリビニルアルコールは耐電解液性に優れ、しかもイオンとキレートを形成できる水酸基を多く含んでおり、放電時及び/又は充電時に、極板上に樹枝状の金属が析出する前のイオンとキレートを形成し、電極間の短絡を生じにくいので好適に使用できる。
【0058】
本発明の電池は前述のようなセパレータを使用したものであり、前述のセパレータは電池が200℃を超えるような高温となっても、セパレータが収縮変形したり溶融しにくく、また、電解液によって浸食されにくいため、電極間の絶縁性を維持できる、短絡が発生しにくいものである。また、メチルペンテン系ポリマーは電解液によって分解しないため、高出力かつ寿命の長い電池であることができる。
【0059】
本発明の電池は前述のようなセパレータを使用したこと以外は、従来の電池と全く同様の構造であることができる。
【0060】
例えば、円筒型ニッケル−水素電池は、ニッケル正極板と水素吸蔵合金負極板とを、前述のようなセパレータを介して渦巻き状に巻回した極板群を、金属のケースに挿入した構造を有する。前記ニッケル正極板としては、例えば、スポンジ状ニッケル多孔体に水酸化ニッケル固溶体粉末からなる活物質を充填したものを使用することができ、水素吸蔵合金負極板としては、例えば、ニッケルメッキ穿孔鋼板、発泡ニッケル、或いはニッケルネットに、AB系(希土類系)合金、AB/AB系(Ti/Zr系)合金、或いはAB(Laves相)系合金を充填したものを使用することができる。なお、電解液として、例えば、水酸化カリウム/水酸化リチウムの二成分系のもの、或いは水酸化カリウム/水酸化ナトリウム/水酸化リチウムの三成分系のものを使用することができる。また、前記ケースは安全弁を備えた封口板により、絶縁ガスケットを介して封口されている。更に、正極集電体や絶縁板を備えており、必要であれば負極集電体を備えている。
【0061】
本発明の電池は、例えば、アルカリマンガン電池、水銀電池、酸化銀電池、空気電池などの一次電池、ニッケル−カドミウム電池、銀−亜鉛電池、銀−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、ニッケル−水素電池などの二次電池であることができ、ニッケル−カドミウム電池又はニッケル−水素電池であるのが好ましく、密閉型のニッケル−カドミウム電池又はニッケル−水素電池であるのが特に好ましい。なお、本発明の電池は円筒形である必要はなく、角型、ボタン型などであっても良い。角型の場合には、正極板と負極板との間にセパレータが配置された積層構造を有する。
【0062】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
【実施例】
(実施例1)
鞘成分がポリ−4−メチルペンテン−1とオレフィンとの共重合ポリマー(融点:238℃、三井化学(株)、TPX(登録商標)−DX820)からなり、芯成分(高融点ポリマー)がナイロン66(融点:265℃)からなるメチルペンテン系芯鞘型複合繊維(繊度:2.2dtex、繊維径:17μm、繊維長:5mm、芯成分の質量:鞘成分の質量=50:50、繊維表面はポリ−4−メチルペンテン−1とオレフィンとの共重合ポリマーのみから構成(両端部を除く)、延伸状態にある)を用意した。
【0064】
次いで、このメチルペンテン系芯鞘型複合繊維100%を水中分散させたスラリーから、湿式法(水平長網方式)により繊維ウエブ(目付:65g/m)を形成した。
【0065】
次いで、この繊維ウエブを温度245℃に設定されたサクションドライヤーにより1分間乾燥した後、温度245℃に設定されたオーブンで30秒間熱処理を実施してメチルペンテン系ポリマーを全体的に融着させた。
【0066】
次いで、温度100℃に加熱された表面が平滑な熱カレンダーロール間を通過させることにより、厚さを調整して、厚さが0.15mmの不織布を製造した。
【0067】
次いで、図1に示すような放電処理装置を用意した。つまり、誘電体1d、1eとしてポリテトラフルオロエチレン膜(厚さ:0.1mm)を担持した、一対の平板状ステンレススチール電極1b、1c(大きさ:150mm×210mm)を、誘電体1d、1e同士が対向するように配置した放電処理装置1を用意した。
【0068】
次いで、前記放電処理装置1の誘電体1d、1eによって、前記不織布1fを一方の平板状ステンレススチール電極1bの自重を利用して挟持した状態で、大気圧下、空気中で、両極性正弦波電圧(高周波電源AGI−020(春日電気製)1a、出力:18kW)を両電極間に20秒間印加して、不織布1fの内部空隙で放電を発生させて、前記不織布の親水化を実施して、本発明のセパレータ(目付:65g/m、厚さ:0.15mm)を製造した。
【0069】
(実施例2)
実施例1と同じメチルペンテン系芯鞘型複合繊維に加えて、ポリフェニレンサルファイド繊維(繊度:2.0dtex、繊維径:14μm、繊維長:6mm、延伸状態にある、融点:278℃)、及び全芳香族ポリアミド繊維(繊度:1.7dtex、繊維径:12μm、繊維長:6mm、延伸状態にある、炭化温度:500℃以上)を用意した。
【0070】
次いで、メチルペンテン系芯鞘型複合繊維対ポリフェニレンサルファイド繊維対全芳香族ポリアミド繊維を5:4:1の質量比率で水中分散させたスラリーを調製し、このスラリーを使用したこと以外は実施例1と全く同様に繊維ウエブの形成、乾燥、融着処理、厚さ調整、及び放電処理を実施し、本発明のセパレータ(目付:65g/m、厚さ:0.15mm)を製造した。
【0071】
(比較例1)
鞘成分がナイロン6(融点:225℃)からなり、芯成分がナイロン66(融点:265℃)からなるナイロン系芯鞘型複合繊維(繊度:1.7dtex、繊維径:14μm、繊維長:5mm、芯成分の質量:鞘成分の質量=50:50、繊維表面はナイロン6のみから構成(両端部を除く)、延伸状態にある)を用意した。
【0072】
次いで、このナイロン系芯鞘型複合繊維100%を水中分散させたスラリーから、湿式法(水平長網方式)により繊維ウエブ(目付:65g/m)を形成した。
【0073】
次いで、この繊維ウエブを用いたこと以外は実施例1と全く同様に乾燥、融着処理、厚さ調整、及び放電処理を実施し、比較用のセパレータ(目付:65g/m、厚さ:0.15mm)を製造した。
【0074】
(比較例2)
鞘成分が高密度ポリエチレン(融点:130℃)からなり、芯成分がポリプロピレン(融点:170℃)からなるオレフィン系芯鞘型複合繊維(繊度:1.7dtex、繊維径:15μm、繊維長:5mm、芯成分の質量:鞘成分の質量=50:50、繊維表面は高密度ポリエチレンのみから構成(両端部を除く)、延伸状態にある)を用意した。
【0075】
次いで、このオレフィン系芯鞘型複合繊維100%を水中分散させたスラリーから、湿式法(水平長網方式)により繊維ウエブ(目付:65g/m)を形成した。
【0076】
次いで、この繊維ウエブを温度135℃に設定されたサクションドライヤーにより1分間乾燥した後、温度135℃に設定されたオーブンで30秒間熱処理を実施して、高密度ポリエチレンを全体的に融着させた。
【0077】
次いで、温度60℃に加熱された表面が平滑な熱カレンダーロール間を通過させることにより、厚さを調整して、厚さが0.15mmの不織布を製造した。
【0078】
次いで、実施例1と同様に放電処理を実施し、比較用のセパレータ(目付:65g/m、厚さ:0.15mm)を製造した。
【0079】
(比較例3)
鞘成分がポリ−4−メチルペンテン−1とオレフィンとの共重合ポリマー(融点:238℃、三井化学(株)、TPX(登録商標)−DX820)からなり、芯成分がポリプロピレン(融点:170℃)からなる芯鞘型複合繊維(繊度:1.7dtex、繊維径:16μm、繊維長:51mm、芯成分の質量:鞘成分の質量=50:50、繊維表面はポリ−4−メチルペンテン−1とオレフィンとの共重合ポリマーのみから構成(両端部を除く)、延伸状態にある)を用意した。
【0080】
次いで、この芯鞘型複合繊維100%をローラーカードに通すことにより繊維ウエブ(目付:65g/m)を形成した。
【0081】
次いで、この繊維ウエブを165℃に加熱したスポットボンドロールと表面平滑ロールとの間を通過させることにより、メチルペンテン系ポリマー及びポリプロピレンを部分的に圧着して不織布(1つの圧着面積:0.23mm、圧着総面積:15%)を形成した。
【0082】
次いで、実施例1と同様に厚さ調整及び放電処理を実施し、比較用のセパレータ(目付:65g/m、凸部の厚さ:0.15mm)を製造した。
【0083】
(比較例4)
鞘成分がポリ−4−メチルペンテン−1とオレフィンとの共重合ポリマー(融点:238℃、三井化学(株)、TPX(登録商標)−DX820)からなり、芯成分がポリプロピレン(融点:170℃)からなる芯鞘型複合繊維(繊度:1.7dtex、繊維径:16μm、繊維長:5mm、芯成分の質量:鞘成分の質量=50:50、繊維表面はポリ−4−メチルペンテン−1とオレフィンとの共重合ポリマーのみから構成(両端部を除く)、延伸状態にある)を用意した。
【0084】
次いで、このメチルペンテン系芯鞘型複合繊維100%を水中分散させたスラリーから、湿式法(水平長網方式)により繊維ウエブ(目付:65g/m)を形成した。
【0085】
次いで、この繊維ウエブを温度245℃に設定されたサクションドライヤーにより1分間乾燥した後、温度245℃に設定されたオーブンで30秒間熱処理を実施して、メチルペンテン系ポリマー及びポリプロピレンを全体的に融着させた。
【0086】
次いで、温度100℃に加熱された表面が平滑な熱カレンダーロール間を通過させることにより、厚さを調整して、厚さが0.15mmの不織布を製造した。
【0087】
次いで、実施例1と同様に放電処理を実施し、比較用のセパレータ(目付:65g/m、厚さ:0.15mm)を製造した。なお、このセパレータは融着時に収縮してしまい、地合いが悪く、目付のバラツキの大きいものであった。
【0088】
(比較例5)
ポリ−4−メチルペンテン−1とオレフィンとの共重合ポリマー(融点:238℃、三井化学(株)、TPX(登録商標)−DX820)を用い、常法のメルトブロー法により不織布を形成(目付:65g/m)した。
【0089】
次いで、実施例1と同様に厚さ調整及び放電処理を実施し、比較用のセパレータ(目付:65g/m、厚さ:0.15mm)を製造した。
【0090】
(200℃における収縮率の測定)
前述の方法により、各セパレータの200℃における収縮率を測定した。この結果は表1に示す通りであった。この結果から、本発明のセパレータは収縮率が0でセパレータの形態維持性に優れているため、200℃程度の高温下においても絶縁性を維持できるため、長期間にわたって信頼性の高い電池を製造できるセパレータであることがわかった。
【0091】
(長手方向における引張り強さの測定)
前述の方法により、各セパレータの長手方向における引張り強さを測定した。この結果は表1に示す通りであった。この結果から、本発明のセパレータは機械的強度が優れているため、電池を製造する際にセパレータが切れたり、伸びたりせず、また電極板のエッジがセパレータを貫通しにくいものであるため、歩留まり良く、安定して電池を製造できるものであることが予測できるものであった。
【0092】
(耐電解液性試験)
温度100℃の7.6N水酸化カリウム水溶液中に、各セパレータを30日間浸漬した後に、長手方向における引張り強さを測定した。そして、30日後の長手方向における引張り強さの、浸漬前の長手方向における引張り強さに対する百分率を算出した。この結果は表1に示す通りであった。この結果から、本発明のセパレータは引張り強さの低下の程度が低いため、高温の電解液によっても浸食されにくく、セパレータ形態を維持できるものであることがわかった。
【0093】
(電池寿命の測定)
電極の集電体として、ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルを主成分とした正極活物質を充填したニッケル正極(33mm幅、182mm長)と、ニッケル焼結基板に水酸化カドミウムを主成分とした負極活物質を充填したカドミウム負極(33mm幅、247mm長)とを作成した。
【0094】
次いで、各セパレータを33mm幅、410mm長に裁断した後、それぞれのセパレータを正極と負極との間に挟み込み、渦巻き状に巻回して、SC(sub−C)型対応の電極群を作成した。
【0095】
次いで、この電極群を外装缶に収納し、電解液として5N水酸化カリウム及び1N水酸化リチウムを外装缶に注液し、封緘して、容量が2000mAhの円筒型ニッケル−カドミウム電池を作成した。
【0096】
次いで、それぞれの円筒型ニッケル−カドミウム電池について、(1)0.2Cでの120%充電と、(2)30Cで終止電圧0.8Vまで放電することからなる充放電サイクルを繰り返し、容量が初期容量の50%に達するまでのサイクル数を測定した。その結果、サイクル数が300以上を○、サイクル数が300未満を×と評価した。その結果は表1に示す通りであった。この表1から明らかなように、本発明のセパレータを用いた電池は電解液が高温になっても電池寿命の長いものであった。これは高温の電解液環境下においてもセパレータが収縮したり、電解液によって浸食されて機械的強度の低下が起きたりせずにセパレータ形態を維持して絶縁性を維持しており、またセパレータ構成繊維が溶融せず、通気性に優れていることによって内圧が上昇しないためであると予測された。
【0097】
【表1】
Figure 2004179039
【0098】
【発明の効果】
本発明の電池用セパレータは、200℃を超えるような高温下においても収縮したり溶融せず、しかも電解液によって浸食されにくいことから、セパレータ形状を維持できるため絶縁性に優れており、また、機械的強度も優れている。したがって、高出力かつ長寿命の電池を歩留まり良く、安定して製造できる電池用セパレータである。
【0099】
本発明の電池は、高出力かつ長寿命の製造しやすい電池であることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電処理装置の断面模式図
【符号の説明】
1 放電処理装置
1a 高周波電源
1b、1c 電極
1d、1e 誘電体
1f 不織布

Claims (6)

  1. メチルペンテン系ポリマーを繊維表面に備えており、前記メチルペンテン系ポリマーの融点よりも融点の高い高融点ポリマーを備えたメチルペンテン系複合繊維を含み、前記メチルペンテン系複合繊維のメチルペンテン系ポリマーが全体的に融着した繊維シートからなることを特徴とする電池用セパレータ。
  2. 前記メチルペンテン系複合繊維を構成する高融点ポリマーが、ポリアミド系樹脂からなることを特徴とする、請求項1記載の電池用セパレータ。
  3. 前記メチルペンテン系複合繊維が延伸状態にあることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の電池用セパレータ。
  4. 融点又は炭化温度が200℃以上の繊維のみから構成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  5. スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤処理、放電処理、親水性樹脂付与処理の中から選ばれる親水化処理が施されていることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電池用セパレータを用いていることを特徴とする電池。
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