JP2004177791A - フラッシュパネルの遮音構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面材の部分的な改良を施すことによって各種遮音欠損を同時に減少させることのできるフラッシュパネルの遮音構造を提供すること。
【解決手段】空間厚みを形成するように配置された一対の表面材10,11を含んでフラッシュパネルPが形成されている。表面材10,11の各内面側には、空気層Cを形成する遮音シート14,15、部分的な剛性を高める板材16が部材追加されているとともに、一方の表面材11の内面に凹部17が形成されている。これら遮音シート、板材及び凹部は、遮音欠損を生じさせる各種周波数の振幅最大位置に略対応して設けられている。
【選択図】 図2
【解決手段】空間厚みを形成するように配置された一対の表面材10,11を含んでフラッシュパネルPが形成されている。表面材10,11の各内面側には、空気層Cを形成する遮音シート14,15、部分的な剛性を高める板材16が部材追加されているとともに、一方の表面材11の内面に凹部17が形成されている。これら遮音シート、板材及び凹部は、遮音欠損を生じさせる各種周波数の振幅最大位置に略対応して設けられている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラッシュパネルの遮音構造に係り、更に詳しくは、共鳴透過現象及びコインシデンス効果による低周波域及び中高周波域での遮音欠損や、表面材の共振による遮音欠損等を発生し難くして遮音性能を全体的に改善するフラッシュパネルの遮音構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
壁或いは天井などに用いられる防音用のフラッシュパネルとしては、例えば、図5(A)に示されるよう、一対の表面材50,50と、これら表面材の外周に沿って各表面材間に配置された枠体51と、各表面材50,50の内面にそれぞれ全面接着された遮音用のシート材53とを備えたものが知られている。また、他の構造のフラッシュパネルとしては、図5(B)及び特許文献1に示されるように、前記シート材53が表面材50の内面に対して非接触となる空気層Cを形成するように当該表面材50に固定されたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−206294号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、シート材53が表面材50に全面接着されたフラッシュパネルにあっては、表面材50の曲げ剛性等に起因して発生する高周波域すなわち2kHz以上の周波数でのコインシデンス効果による遮音性能の低下現象を改善することができないという不都合がある。
また、特許文献1に示されるフラッシュパネルにあっては、空気層Cを設けることで、シート材53が有するコインシデンス周波数における遮音性能を、全面接着タイプに比べて向上させることができ、また、表面材50にシート53を部分的に取り付けることにより、シート材53の重量を集中的に表面材50に付加することとなり、質量を付加された部分の表面材50の振動を減衰させて遮音性能を向上させることができ、更に、各表面材50,50の振動特性を変えて位相をずらし、特定の周波数での共振を抑制して遮音性能を改善することができる。しかしながら、フラッシュパネルでの弱点となるべき減少には、大きく三種類あり、その弱点が発現する周波数も少なくとも三つ以上存在し、それらの全てに対応するものとはなっていない。
【0005】
ところで、共鳴透過現象による遮音欠損を減少させるためには、表面材の質量を増加させるか、空気層を増加させる構成、コインシデンス効果による遮音欠損を減少させるためには、各表面材の材質や厚みを極端に変更する構成、表面材の共振による遮音欠損を減少させるためには、パネルの幅や長さを変更する等の対策が効果的であると理解されている。
【0006】
しかしながら、現実的なフラッシュパネルにおいては、コスト等の制限により、材質、寸法等の各種の要件の全てに対応することは、極めて困難である。
【0007】
【発明の目的】
ここに、本発明の目的は、現実的に適合できるパネル構造を前提とし、部分的な改良を施すことによって前述した各種遮音欠損を同時に減少させることのできるフラッシュパネルの遮音構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、相互に所定間隔を隔てて配置された一対の表面材を含むフラッシュパネルの遮音構造であって、
前記パネルの共鳴透過周波数、コインシデンス周波数、表面材の共振周波数の各最大振幅位置に対応する領域に振動調整部材を配置する、という構成を採っている。
本発明においては、表面材が未加工、部材追加なしの場合のフラッシュパネルで共鳴透過周波数、コインシデンス周波数、表面材の共振周波数及び表面材のそれぞれの周波数における振幅最大位置を実測又は解析により特定し、その振幅最大位置に加工、部材追加が行われる。これにより、各表面材に複雑な振動特性を付与することができるようになり、同一周波数での振動を防止して数種の遮音欠損を同時に減少させることができる。すなわち、前述した周波数の特定に基づく数種の部材追加、加工を通じた遮音欠損の減少により、パネル特有の遮音性能上の弱点となる特性を除去し、周波数に対してバランスのよいパネルを実現することが可能となる。更に、音源が発生する周波数が特定できるような構造体、例えば、防音室に適用したような場合には、当該周波数のみに対応すれば足りることもできる。
【0009】
本発明において、前記表面材に面加工、部材追加を行うことによって前記振動調整を行うことができる。このような構成とすれば、パネル基本構造を大きく変更することがないので、コスト上昇も抑制することができる。
【0010】
また、前記振動調整部材は、各表面材における非対称の位置に配置されて各表面材の振動に位相差を生じさせる、という構成を採っている。これによれば、各表面材における振動の位相差が得られることとなる。従って、各表面材が同一周波数にて、例えば180°逆位相にて振動させるような設計も可能となり、これにより遮音欠損の減少を図ることが期待される。
【0011】
更に、前記振動調整部材は、前記表面材の内面側に接着等の手段で取り付けられた板材、表面材との間に空気層を形成するように取り付けられたシート材、表面材の内面側に形成された凹部により構成することができ、これにより、振動調整構造をシンプルなものとすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1ないし図3に示されるように、本発明に係るフラッシュパネルPは、相互に所定間隔(空間厚み)を隔てて配置された一対の表面材10,11と、これら表面材10,11の外周側に位置して前記間隔を形成する略方形の輪郭となる木製の枠体12と、各表面材10,11の内面側に配置されて振動調整部材として作用する第1及び第2の遮音シート14,15(シート材)、板材16、凹部17とを備えて構成されている。
【0013】
前記表面材10,11は、取り扱いの容易性の観点から、平面サイズが(450mm×900mm)〜(900mm×2000mm)程度に設けられている。表面材10,11は、厚み5mm〜15mm程度、ヤング率300〜3000Kgf/mm2程度の木質板、パーティクルボード或いは石膏ボードなどにより形成されている。また、枠体12の厚みすなわち表面材10,11間の空間厚みは、40mm程度に設けられている。空間厚みは、20mm〜100mmとすることが好ましい。20mm未満ではパネル全体が薄くなりすぎる一方、100mm越えるとパネル全体の厚みが大きくなりすぎて実用的でなくなるためである。なお、これら寸法等の緒条件は、限定的なものではなく、一般に流通しているタイプのものと同程度のものであればよい。また、表面材の材質の組合わせは任意である。
【0014】
前記第1及び第2の遮音シート14,15は、アスファルトや軟質塩化ビニル樹脂オレフィンなどの樹脂に鉄粉等の高比重成分を混入したものからなる柔軟性を有するシート材によって形成されている。本実施形態では、厚み1mm程度のオレフィン樹脂に鉄粉を混入したものが用いられている。これら第1及び第2の遮音シート14,15は、枠体12の内周面より若干内側位置を外縁位置とする状態で表面材10,11に固定されている。具体的には、第1の遮音シート14は、その上端縁領域14A、下端縁領域14B及び中間領域14Cが、図2中紙面直交方向に沿って接着剤等を介して固定され、当該紙面直交方向に沿う両端、すなわち、図1中左右両端が開放する状態で、縦断面形状が波状を形成して表面材10,11との間に空気層Cを形成するようにようになっている。ここで、第1の遮音シート14の固定部分を節とし、空気層Cを形成するように湾曲している領域を腹としたときに、当該節の位置が、パネル10特有の共鳴周波数、コインシデンス周波数、表面板の共振周波数の何れかの振幅最大領域に対応して位置するように設定される。また、第2の遮音シート15は、図2中上下方向長さが第1の遮音シート14よりも短いものが用いられており、その上端縁領域15A、下端縁領域15B及び二つの中間領域15C位置にて接着剤等で表面材11に固定され、第1の遮音シート14よりも周期の短い波状をなして表面材11との間に空気層Cを形成するようになっている。また、第2の遮音シート15も第1の遮音シート14と同様に、前述した周波数における振幅最大領域に略対応して節の位置が設定されている。従って、第1及び第2の遮音シート14,15は、相互に非対称な位置となる。ここで、空気層Cの最大厚さ(図中左右方向幅)は、3mm〜50mm程度とするとよい。3mm未満では遮音性能向上の効果が小さくなり、50mmを越えるとパネル全体厚みが大きくなりすぎるためである。
【0015】
前記板材16は、特に限定されるものではないが、厚さ10mm程度を有し、且つ、正面視略円形、楕円形、四角形等の多角形状に設けられ、これにより、表面材の部分的な剛性を大きくしてコインシデンス周波数を低い方向にずらすことができ、更に、質量付加の効果によって意図した周波数以外での遮音性を向上させることができる。板材16の材質としては、木製、金属若しくは樹脂板を使用することができる。この板材16の個数は限定的なものではないが、本実施形態では、表面材10の内面側において、前記空気層C,C内の略中間部(表面材10の幅方向中間部)に各一個ずつ位置するように上下二箇所に配置されている。この一方、表面材11の内面側には、板材16が、上、中、下の三段位置において、表面材11の幅方向中間部に各一個ずつ配置され、これにより、表面材10側の板材16と非対称な位置を取るようになっている。これらの板材16は、前述した各周波数の何れかの振幅最大位置に対応して配置される。
【0016】
前記凹部17は、表面材11の内面側における上部及び下部の二箇所に設けられている。これらの凹部17は、正面視略円形、楕円形、四角形等の多角形状に設けられ、実質的に板材16と略同様の外縁形状をなすようになっている。本実施形態では、凹部17は、第2の遮音シート15により形成された空気層C、C内において、表面材11の幅方向中間部に設けられている。また、凹部17も、前記周波数の何れかの振幅最大位置に対応して形成されている。この凹部17は、表面材の剛性を小さくすることにより、コインシデンス周波数を高い方向にずらすこととなる。
【0017】
図4には、本発明に係るフラッシュパネル10の遮音効果を確認するための実験結果が示されている。この実験は、所定音源(帯域雑音(ピンクノイズ)をスピーカーから発生)が設置された音源室(容積50m3)と、音響透過損失が測定される受音室(容積50m3)との間の仕切壁の一部として、高さ方向寸法が約2000mm、幅方向寸法が約900mm、厚みが約60mmとなるパネル10を二枚並べた場合と、これと同一サイズとなる図5(A)に示す従来例のパネル50を幅方向に二枚並べた場合を比較例1とし、図5(B)に示す従来例のパネル50を幅方向に二枚並べた場合を比較例2として音響透過損失を測定したものである。また、本実施例では、表面材10,11の厚みが10mm、空気層Cの最大厚みが20mm、木製の板材16、凹部17は、それぞれ四角形で幅600mm、高さ300mm、厚み、凹みをそれぞれ5mmとし、これらの配置は、図2に示される場合と略同一とした。なお、予め行った実測、解析に基づいて、一方の表面材10における遮音シート14は共鳴周波数となる100Hzの振幅最大位置を節として取り付けられており、他方の表面材11における遮音シート15は、共振周波数となる400Hzの振幅最大位置を節として取り付けた。また、表面材10側の板材16は、共振周波数となる200Hz及びコインシデンス周波数のうち2000Hz〜4000Hzの振幅最大位置に対応して表面材10の幅方向中央部に各一個取り付けた。表面材11側の板材16は、共振周波数となる300Hz及びコインシデンス周波数のうち3000Hz〜6000Hzの振幅最大位置に対応して表面材11の幅方向中央部に各一個取り付けた。更に、凹部17は、表面材11において、コインシデンス周波数近傍となる1000〜2000Hzの振幅最大位置において、表面材11の幅方向中央部に各一個形成した。
【0018】
図4に示されるように、本発明に係るパネルによれば、比較例1,2に比べ、略全周波数域において、遮音性能が向上していることが明らかに認められる。これは、板材や遮音シート等を、前述した周波数における振幅最大位置に対応して設けたことにより、各表面材が複雑な振動特性を有するようになる結果によるものと推測される。
【0019】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材料などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
例えば、前記説明では、板材16及び凹部17は、表面材の幅方向中央部に設けた場合を示したが、幅方向に沿う複数箇所に複数設けてもよく、また、一枚の円形をなす板材を固定することもできる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、各表面材に複雑な振動特性を付与することができるようになり、同一周波数での振動を防止して数種の遮音欠損を同時に減少させることができ、低周波、中高周波の略全領域において、全体的に遮音欠損の減少を防止できる、という従来にない優れたフラッシュパネルの遮音構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のフラッシュパネルの一部を破断した概略正面図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】図2のB−B線に沿う断面図。
【図4】実験例を比較例と共に示す線図。
【図5】従来のフラッシュパネルを示す縦断面図。
【符号の説明】
10,11…表面材、14…第1の遮音シート、15…第2の遮音シート、16…板材、17…凹部、C…空気層、P…フラッシュパネル
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラッシュパネルの遮音構造に係り、更に詳しくは、共鳴透過現象及びコインシデンス効果による低周波域及び中高周波域での遮音欠損や、表面材の共振による遮音欠損等を発生し難くして遮音性能を全体的に改善するフラッシュパネルの遮音構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
壁或いは天井などに用いられる防音用のフラッシュパネルとしては、例えば、図5(A)に示されるよう、一対の表面材50,50と、これら表面材の外周に沿って各表面材間に配置された枠体51と、各表面材50,50の内面にそれぞれ全面接着された遮音用のシート材53とを備えたものが知られている。また、他の構造のフラッシュパネルとしては、図5(B)及び特許文献1に示されるように、前記シート材53が表面材50の内面に対して非接触となる空気層Cを形成するように当該表面材50に固定されたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−206294号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、シート材53が表面材50に全面接着されたフラッシュパネルにあっては、表面材50の曲げ剛性等に起因して発生する高周波域すなわち2kHz以上の周波数でのコインシデンス効果による遮音性能の低下現象を改善することができないという不都合がある。
また、特許文献1に示されるフラッシュパネルにあっては、空気層Cを設けることで、シート材53が有するコインシデンス周波数における遮音性能を、全面接着タイプに比べて向上させることができ、また、表面材50にシート53を部分的に取り付けることにより、シート材53の重量を集中的に表面材50に付加することとなり、質量を付加された部分の表面材50の振動を減衰させて遮音性能を向上させることができ、更に、各表面材50,50の振動特性を変えて位相をずらし、特定の周波数での共振を抑制して遮音性能を改善することができる。しかしながら、フラッシュパネルでの弱点となるべき減少には、大きく三種類あり、その弱点が発現する周波数も少なくとも三つ以上存在し、それらの全てに対応するものとはなっていない。
【0005】
ところで、共鳴透過現象による遮音欠損を減少させるためには、表面材の質量を増加させるか、空気層を増加させる構成、コインシデンス効果による遮音欠損を減少させるためには、各表面材の材質や厚みを極端に変更する構成、表面材の共振による遮音欠損を減少させるためには、パネルの幅や長さを変更する等の対策が効果的であると理解されている。
【0006】
しかしながら、現実的なフラッシュパネルにおいては、コスト等の制限により、材質、寸法等の各種の要件の全てに対応することは、極めて困難である。
【0007】
【発明の目的】
ここに、本発明の目的は、現実的に適合できるパネル構造を前提とし、部分的な改良を施すことによって前述した各種遮音欠損を同時に減少させることのできるフラッシュパネルの遮音構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、相互に所定間隔を隔てて配置された一対の表面材を含むフラッシュパネルの遮音構造であって、
前記パネルの共鳴透過周波数、コインシデンス周波数、表面材の共振周波数の各最大振幅位置に対応する領域に振動調整部材を配置する、という構成を採っている。
本発明においては、表面材が未加工、部材追加なしの場合のフラッシュパネルで共鳴透過周波数、コインシデンス周波数、表面材の共振周波数及び表面材のそれぞれの周波数における振幅最大位置を実測又は解析により特定し、その振幅最大位置に加工、部材追加が行われる。これにより、各表面材に複雑な振動特性を付与することができるようになり、同一周波数での振動を防止して数種の遮音欠損を同時に減少させることができる。すなわち、前述した周波数の特定に基づく数種の部材追加、加工を通じた遮音欠損の減少により、パネル特有の遮音性能上の弱点となる特性を除去し、周波数に対してバランスのよいパネルを実現することが可能となる。更に、音源が発生する周波数が特定できるような構造体、例えば、防音室に適用したような場合には、当該周波数のみに対応すれば足りることもできる。
【0009】
本発明において、前記表面材に面加工、部材追加を行うことによって前記振動調整を行うことができる。このような構成とすれば、パネル基本構造を大きく変更することがないので、コスト上昇も抑制することができる。
【0010】
また、前記振動調整部材は、各表面材における非対称の位置に配置されて各表面材の振動に位相差を生じさせる、という構成を採っている。これによれば、各表面材における振動の位相差が得られることとなる。従って、各表面材が同一周波数にて、例えば180°逆位相にて振動させるような設計も可能となり、これにより遮音欠損の減少を図ることが期待される。
【0011】
更に、前記振動調整部材は、前記表面材の内面側に接着等の手段で取り付けられた板材、表面材との間に空気層を形成するように取り付けられたシート材、表面材の内面側に形成された凹部により構成することができ、これにより、振動調整構造をシンプルなものとすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1ないし図3に示されるように、本発明に係るフラッシュパネルPは、相互に所定間隔(空間厚み)を隔てて配置された一対の表面材10,11と、これら表面材10,11の外周側に位置して前記間隔を形成する略方形の輪郭となる木製の枠体12と、各表面材10,11の内面側に配置されて振動調整部材として作用する第1及び第2の遮音シート14,15(シート材)、板材16、凹部17とを備えて構成されている。
【0013】
前記表面材10,11は、取り扱いの容易性の観点から、平面サイズが(450mm×900mm)〜(900mm×2000mm)程度に設けられている。表面材10,11は、厚み5mm〜15mm程度、ヤング率300〜3000Kgf/mm2程度の木質板、パーティクルボード或いは石膏ボードなどにより形成されている。また、枠体12の厚みすなわち表面材10,11間の空間厚みは、40mm程度に設けられている。空間厚みは、20mm〜100mmとすることが好ましい。20mm未満ではパネル全体が薄くなりすぎる一方、100mm越えるとパネル全体の厚みが大きくなりすぎて実用的でなくなるためである。なお、これら寸法等の緒条件は、限定的なものではなく、一般に流通しているタイプのものと同程度のものであればよい。また、表面材の材質の組合わせは任意である。
【0014】
前記第1及び第2の遮音シート14,15は、アスファルトや軟質塩化ビニル樹脂オレフィンなどの樹脂に鉄粉等の高比重成分を混入したものからなる柔軟性を有するシート材によって形成されている。本実施形態では、厚み1mm程度のオレフィン樹脂に鉄粉を混入したものが用いられている。これら第1及び第2の遮音シート14,15は、枠体12の内周面より若干内側位置を外縁位置とする状態で表面材10,11に固定されている。具体的には、第1の遮音シート14は、その上端縁領域14A、下端縁領域14B及び中間領域14Cが、図2中紙面直交方向に沿って接着剤等を介して固定され、当該紙面直交方向に沿う両端、すなわち、図1中左右両端が開放する状態で、縦断面形状が波状を形成して表面材10,11との間に空気層Cを形成するようにようになっている。ここで、第1の遮音シート14の固定部分を節とし、空気層Cを形成するように湾曲している領域を腹としたときに、当該節の位置が、パネル10特有の共鳴周波数、コインシデンス周波数、表面板の共振周波数の何れかの振幅最大領域に対応して位置するように設定される。また、第2の遮音シート15は、図2中上下方向長さが第1の遮音シート14よりも短いものが用いられており、その上端縁領域15A、下端縁領域15B及び二つの中間領域15C位置にて接着剤等で表面材11に固定され、第1の遮音シート14よりも周期の短い波状をなして表面材11との間に空気層Cを形成するようになっている。また、第2の遮音シート15も第1の遮音シート14と同様に、前述した周波数における振幅最大領域に略対応して節の位置が設定されている。従って、第1及び第2の遮音シート14,15は、相互に非対称な位置となる。ここで、空気層Cの最大厚さ(図中左右方向幅)は、3mm〜50mm程度とするとよい。3mm未満では遮音性能向上の効果が小さくなり、50mmを越えるとパネル全体厚みが大きくなりすぎるためである。
【0015】
前記板材16は、特に限定されるものではないが、厚さ10mm程度を有し、且つ、正面視略円形、楕円形、四角形等の多角形状に設けられ、これにより、表面材の部分的な剛性を大きくしてコインシデンス周波数を低い方向にずらすことができ、更に、質量付加の効果によって意図した周波数以外での遮音性を向上させることができる。板材16の材質としては、木製、金属若しくは樹脂板を使用することができる。この板材16の個数は限定的なものではないが、本実施形態では、表面材10の内面側において、前記空気層C,C内の略中間部(表面材10の幅方向中間部)に各一個ずつ位置するように上下二箇所に配置されている。この一方、表面材11の内面側には、板材16が、上、中、下の三段位置において、表面材11の幅方向中間部に各一個ずつ配置され、これにより、表面材10側の板材16と非対称な位置を取るようになっている。これらの板材16は、前述した各周波数の何れかの振幅最大位置に対応して配置される。
【0016】
前記凹部17は、表面材11の内面側における上部及び下部の二箇所に設けられている。これらの凹部17は、正面視略円形、楕円形、四角形等の多角形状に設けられ、実質的に板材16と略同様の外縁形状をなすようになっている。本実施形態では、凹部17は、第2の遮音シート15により形成された空気層C、C内において、表面材11の幅方向中間部に設けられている。また、凹部17も、前記周波数の何れかの振幅最大位置に対応して形成されている。この凹部17は、表面材の剛性を小さくすることにより、コインシデンス周波数を高い方向にずらすこととなる。
【0017】
図4には、本発明に係るフラッシュパネル10の遮音効果を確認するための実験結果が示されている。この実験は、所定音源(帯域雑音(ピンクノイズ)をスピーカーから発生)が設置された音源室(容積50m3)と、音響透過損失が測定される受音室(容積50m3)との間の仕切壁の一部として、高さ方向寸法が約2000mm、幅方向寸法が約900mm、厚みが約60mmとなるパネル10を二枚並べた場合と、これと同一サイズとなる図5(A)に示す従来例のパネル50を幅方向に二枚並べた場合を比較例1とし、図5(B)に示す従来例のパネル50を幅方向に二枚並べた場合を比較例2として音響透過損失を測定したものである。また、本実施例では、表面材10,11の厚みが10mm、空気層Cの最大厚みが20mm、木製の板材16、凹部17は、それぞれ四角形で幅600mm、高さ300mm、厚み、凹みをそれぞれ5mmとし、これらの配置は、図2に示される場合と略同一とした。なお、予め行った実測、解析に基づいて、一方の表面材10における遮音シート14は共鳴周波数となる100Hzの振幅最大位置を節として取り付けられており、他方の表面材11における遮音シート15は、共振周波数となる400Hzの振幅最大位置を節として取り付けた。また、表面材10側の板材16は、共振周波数となる200Hz及びコインシデンス周波数のうち2000Hz〜4000Hzの振幅最大位置に対応して表面材10の幅方向中央部に各一個取り付けた。表面材11側の板材16は、共振周波数となる300Hz及びコインシデンス周波数のうち3000Hz〜6000Hzの振幅最大位置に対応して表面材11の幅方向中央部に各一個取り付けた。更に、凹部17は、表面材11において、コインシデンス周波数近傍となる1000〜2000Hzの振幅最大位置において、表面材11の幅方向中央部に各一個形成した。
【0018】
図4に示されるように、本発明に係るパネルによれば、比較例1,2に比べ、略全周波数域において、遮音性能が向上していることが明らかに認められる。これは、板材や遮音シート等を、前述した周波数における振幅最大位置に対応して設けたことにより、各表面材が複雑な振動特性を有するようになる結果によるものと推測される。
【0019】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材料などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
例えば、前記説明では、板材16及び凹部17は、表面材の幅方向中央部に設けた場合を示したが、幅方向に沿う複数箇所に複数設けてもよく、また、一枚の円形をなす板材を固定することもできる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、各表面材に複雑な振動特性を付与することができるようになり、同一周波数での振動を防止して数種の遮音欠損を同時に減少させることができ、低周波、中高周波の略全領域において、全体的に遮音欠損の減少を防止できる、という従来にない優れたフラッシュパネルの遮音構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のフラッシュパネルの一部を破断した概略正面図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】図2のB−B線に沿う断面図。
【図4】実験例を比較例と共に示す線図。
【図5】従来のフラッシュパネルを示す縦断面図。
【符号の説明】
10,11…表面材、14…第1の遮音シート、15…第2の遮音シート、16…板材、17…凹部、C…空気層、P…フラッシュパネル
Claims (4)
- 相互に所定間隔を隔てて配置された一対の表面材を含むフラッシュパネルの遮音構造であって、
前記パネルの共鳴透過周波数、コインシデンス周波数、表面材の共振周波数の各最大振幅位置に略対応する領域に振動調整部材を配置したことを特徴とするフラッシュパネルの遮音構造。 - 前記表面材に面加工、部材追加を行うことによって前記振動調整を行うことを特徴とする請求項1記載のフラッシュパネルの遮音構造。
- 前記振動調整部材は、各表面材における非対称の位置に配置されて各表面材の振動に位相差を生じさせることを特徴とする請求項1又は2記載のフラッシュパネルの遮音構造。
- 前記振動調整部材は、前記表面材の内面側に接着等の手段で取り付けられた板材、表面材との間に空気層を形成するように取り付けられたシート材、表面材の内面側に形成された凹部により構成されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載のフラッシュパネルの遮音構造。
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JP2002345774A JP2004177791A (ja) | 2002-11-28 | 2002-11-28 | フラッシュパネルの遮音構造 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011504830A (ja) * | 2007-10-26 | 2011-02-17 | サン−ゴバン グラス フランス | 優れた振動音響減衰挙動を有するグレージング、そのようなグレージングの製造方法、および車両の客室の音響保護方法 |
-
2002
- 2002-11-28 JP JP2002345774A patent/JP2004177791A/ja not_active Withdrawn
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