JP2004175940A - ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)無機層状化合物に(b)パラジウムを担持させた化合物と、(c)レドックス触媒能を有する化合物を含有するポリカーボネート製造用触媒を用い、非ハロゲン溶媒中で、芳香族ジヒドロキシ化合物又は、脂肪族ジヒドロキシ化合物と、一酸化炭素及び酸素とを反応させることを特徴とするポリカーボネートの製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネートの製造方法に関し、詳しくは、芳香族ジヒドロキシ化合物や脂肪族ジヒドロキシ化合物と、一酸化炭素及び酸素とを反応させ、ポリカーボネートを効率よく製造する方法に関するものである。
ポリカーボネートは電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野、構造材料分野等における樹脂材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネートの製造方法としては、一般に、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとをアルカリの存在下で反応させる方法が知られている。この方法では猛毒なホスゲンを用いる上に、化学量論量のアルカリ塩が副生することなどの問題がある。
また、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルとをエステル交換反応させる方法(エステル交換法)や、ジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルをカルボニル源として使用して加熱溶融して反応させる方法(溶融法)も知られているが、エステル交換法では複雑な工程で炭酸ジエステルを製造しなければならず、原料製造工程や副生物のリサイクル工程等を含めた製造工程全体としては、経済的とはいえない等の問題があり、溶融法では炭酸ジエステルの製造や溶融のために加熱が必要であり、高温に加熱されることから得られたポリカーボネートが着色する等の問題があった。
【0003】
新しいポリカーボネートの製造方法として、パラジウム/レドックス剤/ハロゲン化オニウム塩触媒を用いる酸化的カルボニル化反応による方法が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、反応速度が不十分であり、重合度の低いポリカーボネートしか得られない。
また、上記問題を解決するために、パラジウム化合物/無機レドックス触媒/有機レドックス触媒/ハロゲン化オニウム化合物/脱水剤の触媒系で酸化的カルボニル化反応を行い、ポリカーボネートオリゴマーを製造し、その後エステル交換反応によりポリカーボネートを得る方法があるが(例えば、特許文献2参照)、2段階の反応工程が必要であり複雑となる。さらに、パラジウム化合物が溶媒に溶解する(均一触媒)ため、パラジウム(0)のクラスターを形成し、触媒が失活する可能性がある。
【0004】
【特許文献1】
特開昭53−68744号公報(第1〜2頁)
【特許文献2】
特開2000−29714号公報(第1頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリカーボネート製造方法における上記のような問題点を解消し、有害な塩素ガスやホスゲン、環境に悪影響を与えると考えられるジクロロメタンやクロロホルムのようなハロゲン化有機溶媒を用いずに、高い収率でポリカーボネートを得る製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、無機層状化合物にパラジウムを担持させた化合物とレドックス触媒能を有する化合物からなる触媒組成物に非ハロゲン溶媒を用いて酸化的カルボニル化反応を行うことにより、高い収率でポリカーボネートが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のポリカーボネートの製造方法を提供するものである。
[1] (a)無機層状化合物に(b)パラジウムを担持させた化合物と、(c)レドックス触媒能を有する化合物を含有するポリカーボネート製造用触媒を用い、非ハロゲン溶媒中で、芳香族ジヒドロキシ化合物又は、脂肪族ジヒドロキシ化合物と、一酸化炭素及び酸素とを反応させることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
[2] 更に、(d)オニユウム塩を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる[1]記載のポリカーボネートの製造法。
[3] 更に、(e)助触媒を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる[1]または[2]記載のポリカーボネートの製造方法。
[4] 更に、(f)脱水剤を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
[5] (a)の無機層状化合物が合成スメクタイト及び/又は合成ハイドロタルサイトである[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
[6] 前記非ハロゲン溶媒がカーボネート結合を有する化合物である[1]〜6のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
[7] 前記非ハロゲン溶媒がプロピレンカーボネートである[6]記載のポリカーボネートの製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明のポリカーボネートの製造方法は、(a)無機層状化合物に(b)パラジウムを担持させた化合物と、(c)レドックス触媒能を有する化合物を含有するポリカーボネート製造用触媒を用い、非ハロゲン溶媒中で、芳香族ジヒドロキシ化合物又は、脂肪族ジヒドロキシ化合物と、一酸化炭素及び酸素とを反応させることを特徴とするとする。
【0009】
(a)無機層状化合物
本発明に用いられるポリカーボネート触媒において、必須成分である無機層状化合物としては特に制限は無く、パラジウムを担持できるものであれば使用できる。例えば、スメクタイト、カオリナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、バーミキュライト、ハイドロタルサイト、ハイドロアパタイト等が挙げられる。これらは、天然物でも合成物でも構わない。なかでも、スメクタイト、ハイドロタルサイトが好ましく、特に合成スメクタイト、合成ハイドロタルサイトが好ましい。
例えば、合成スメクタイトとして、コープケミカル株式会社製、商品名「ルーセンタイトSWN」が挙げられ、合成ハイドロタルサイトとしては、協和工業株式会社製、商品名「キョーワード1000」、「キョーワード500」が挙げられる。
また、これらの無機層状化合物は、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0010】
(b)パラジウム
本発明に用いられるポリカーボネート触媒において、無機層状化合物(a)に必須成分として担持されるパラジウム(b)には種々の化合物を用いることができ、特に制限されないが、一般的な塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、塩化カルボニルパラジウム、酢酸パラジウム(II)等の他、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)等が用いられる。
これらのパラジウム化合物は単独で用いても、二種以上を併用しても差し支えない。
【0011】
本発明に用いられるポリカーボネート触媒において、無機層状化合物にパラジウムを担持する方法としては特に制限はない。例えば、パラジウム塩が溶解する溶媒を用い、無機層状化合物とパラジウム塩を室温で攪拌することにより行われる。
具体的には、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)のアセトン溶液で、合成スメクタイトや合成ハイドロタルサイトに担持することが可能である。
これらの担持型触媒は単独で用いても、2種以上併用しても差し支えない。また、パラジウム塩や無機レドックス剤を併用することができる。
【0012】
(c)レドックス触媒能を有する化合物
更に、本発明に用いられるポリカーボネート触媒においては、(c)成分としてレドックス触媒能を有する化合物が必須成分として用いられる。これらはレドックス触媒能を有する物であれば特に制限はないが、レドックス触媒能を有する化合物として、無機及び有機のレドックス触媒能を有する化合物が用いられる。
無機レドックス触媒能を有する化合物としては、ランタノイド化合物、第5〜7族遷移金属化合物、鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、銅化合物等が挙げられ、中でも、コバルト化合物、セリウム化合物又はマンガン化合物が好ましい。
例えば、コバルト化合物としては、酢酸コバルト(II)、塩化コバルト、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)コバルト(III)等が用いられる。セリウム化合物としては、酢酸セリウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)セリウム(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)セリウム(IV)、テトラ(トロポロナト)セリウム(IV)等が用いられる。マンガン化合物としては、酢酸マンガン(II)、トリス(アセチルアセトナト)マンガン(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)マンガン(IV)等が用いられる。
また、有機レドックス触媒能を有する化合物としては、ハイドロキノン、ベンゾキノン、α−ナフトキノン、アントラキノン、カテコール、2,2’−ビフェニル、4,4’−ビフェニル等が挙げられる。これらのレドックス触媒能を有する化合物は、単独で用いても2種以上併用してもよい。使用量としては、担持された(b)パラジウムに対して0.1〜100モル程度の範囲で用いられる。
【0013】
(d)有機オニウム塩
また、本発明に用いられるポリカーボネート触媒においては、後述するポリカーボネートの原料である芳香族ジヒドロキシ化合物又は脂肪族ジヒドロキシ化合物を活性化する機能を有する有機オニウム塩が、必要に応じて用いられる。
有機オニウム塩としては、アンモニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられる。中でもアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。
具体的には、アンモニウム塩として、テトラ(n−ブチル)アンモニウムブロマイド、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムブロマイド等が用いられる。ホスホニウム塩として、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等が用いられる。
オニウム塩の使用量は、原料であるヒドロキシ化合物に対し、0.1モル%程度以上あればよい。
【0014】
(e)助触媒
更に、本発明に用いられるポリカーボネート触媒においては、触媒活性、目的とする生成物への選択率、収率、あるいは寿命の向上を目的に(e)成分として、助触媒を添加することができる。助触媒は反応に悪影響を及ぼさない限りいかなるものも使用できるが、ヘテロポリ酸やヘテロポリ酸のオニウム塩等が好適に用いられる。
ヘテロポリ酸としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸等が挙げられる。また、これらのオニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩等も用いることが可能である。これらは単独でも、2種以上併用しても差し支えない。
【0015】
(f)脱水剤
必要に応じて添加される脱水剤としては、モレキュラシーブスやゼオライト等が用いられ、特に制限はない。中でも好ましいのは合成ゼオライトのモレキュラシーブである。A−3、A−4が好ましく、より好ましくはA−3である。
【0016】
非ハロゲン溶媒
本発明のポリカーボネート製造において、環境問題等から反応溶媒として、非ハロゲン溶媒を用いることが好ましい。非ハロゲン系のものであれば特に制限はなく、例えば、テトラヒドロフラン、アセトフェノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、さらに非ハロゲン溶媒として有用な溶媒として、カ−ボネート結合を有する化合物が挙げられる。具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジアリルカーボネート、アリルメチルカーボネート、ビス(2−メトキシフェニル)カーボネート、ビニレンカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジ(ο−メトキシフェニル)カーボネート、メチルエチルカーボネート等が挙げられる。中でも好ましいのはプロピレンカーボネートである。これらのカ−ボネート系溶媒は単独でも2種以上併用しても差し支えない。
【0017】
芳香族ジヒドロキシ化合物又は脂肪族ジヒドロキシ化合物
次に、本発明においてポリカーボネートは、前記触媒の存在下、芳香族ジヒドロキシ化合物又は脂肪族ジヒドロキシ化合物と一酸化炭素及び酸素とを反応させることにより製造される。芳香族ジヒドロキシ化合物および脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、従来公知の種々のものが使用でき、所望のポリカーボネートの種類により適宜選定することができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、一般式(I)
【0018】
【化1】
【0019】
[式中、Ra及びRbは、それぞれハロゲン原子(例えば、塩素,臭素,フッ素,ヨウ素)あるいは炭素数1〜8のアルキル基であり、a及びbは、それぞれ0〜4の整数である。このRa及びRbが複数の場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。そしてYは単結合,炭素数1〜8のアルキレン基,炭素数2〜8のアルキリデン基,炭素数5〜15のシクロアルキレン基,炭素数5〜15のシクロアルキリデン基,−S−,−SO−,−SO2−,−O−,−CO−結合または一般式
【0020】
【化2】
【0021】
で表される基を示す。]で表される炭素数12〜27の芳香族ジヒドロキシ化合物(二価フェノール)である。
【0022】
ここで、上記一般式(VI)で表される二価フェノールとしては、様々なものがあるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]が好ましい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等のビスフェノールA以外のビス(4−ヒドロキシフェニル)化合物またはビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のハロゲン化ビスフェノール類等が挙げられる。これらのフェノール類が置換基としてアルキル基を有する場合には、該アルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0023】
また、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、一般式
HOR1OH
(ただしR1は炭素数2〜20の脂肪族アルキレン基を示す。R1の構造としては任意の位置に、分岐構造、環状構造、ハロゲン原子等を含んでいてもよい。)で表される脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。具体的には、エチレングリコール、1,2−ジヒドロキシプロパン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,2−ジヒドロキシブタン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,2−ジヒドロキシヘキサン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,2−ジヒドロキシオクタン、1,8−ジヒドロキシオクタン、1,2−ジヒドロキシデカン、1,10−ジヒドロキシデカン、1,2−ジヒドロキシドデカン、1,10−ジヒドロキシドデカン、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,2−ジヒドロキシ−1−フェニルエタン、p−(ヒドロキシメチル)ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0024】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物又は脂肪族ジヒドロキシ化合物と反応させる一酸化炭素は、単体であってもよいが、不活性ガスで希釈されていても、水素との混合ガスであってもよい。また、上記芳香族ヒドロキシ化合物と反応させる酸素は、純酸素であってもよいが、一般には不活性ガスで希釈されたもの、例えば空気等の酸素含有ガスであってもよい。
また、本発明においては、末端停止剤として、芳香族ヒドロキシ化合物(フェノール)又は、脂肪族ヒドロキシ化合物(アルコール)を加えても良い。
芳香族ヒドロキシ化合物としては、フェノール、o−、m−、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−α−クミルフェノール、メトキシフェノール、クロロフェノール、トリクロロフェノール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、フルオロフェノール、シアノフェノール等のフェノール類が例示される。
脂肪族ヒドロキシ化合物としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−クロロ−1−プロパノール、1−クロロ−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、3−エチル−1−ブタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、2−デカノール、1−ドデカノール、2−ドデカノール、1−テトラデカノール、2−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、2−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール、2−オクタデカノール、ベンジルアルコール等が例示される。
【0025】
本発明の方法における反応温度は30〜180℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜120℃である。30℃以上であれば反応が進行し、一方、180℃以下であれば副反応が起きにくく、生成物の着色する可能性も低い。
また、反応圧力は、一酸化炭素や酸素等のガス状の原料を用いるため、加圧状態に設定することが一般的であり、一酸化炭素分圧は1×10−2〜20MPa、好ましくは1×10−2〜10MPaの範囲内で、酸素分圧は1×10−2〜10MPa、好ましくは1×10−2〜5MPaの範囲内であればよい。特に、酸素分圧は、反応系内のガス組成が爆発範囲を外れるように調節することが望ましく、上記反応圧力があまり低圧では反応速度が低下し、また高圧過ぎると反応装置が大型となり、設備費用が高く、経済的に不利である。不活性ガスや水素等を用いる際には、その分圧は特に規定されないが、適宜実用的な圧力範囲で用いればよい。反応時間は、たとえば回分式の場合は1〜48時間の場合が好ましい。1時間以上であれば充分な収率が確保でき、48時間以下であれば経済的な不利益もない。以上の観点から反応時間は、好ましくは2〜36時間、より好ましくは3〜24時間である。
【0026】
反応方式は、回分式、原料と触媒等を連続的に反応器に投入する半連続式、原料と触媒等を連続的に反応器に投入し、反応生成物を連続的に抜き出す連続式の何れでも可能である。
また、本発明に用いられる触媒系は、ジヒドロキシ化合物だけではなく、モノヒドロキシ化合物のカルボニル化にも有用であり、ジフェニルカーボネートの合成にも適用できる。
【0027】
【実施例】
以下に、本発明を実施例及び比較例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、各実施例および比較例の結果を示す第1表において、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算のゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)のデータを示す。
また、ポリマー中のパラジウム(Pd)の残存金属量は、ポリマーを硫酸で分解し、誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP)によって測定した。
【0028】
合成例1 担持型触媒Aの調製
無機層状化合物として、コープケミカル株式会社製、商品名「ルーセンタイトSWN」の合成スメクタイト 4.0gをアセトンにサスペンドさせ、そこへ、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)のアセトン溶液[ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II):0.5mmol、アセトン:40ml]をゆっくり加えて、室温で24時間攪拌する。
その後、沈殿物をろ過し、アセトンで洗浄した後、100℃で24時間真空乾燥して、担持型触媒Aを得た。
合成例2 担持型触媒Bの調製
合成例1においてルーセンタイトSWN4.0gの代わりに、無機層状化合物として、協和化学工業株式会社製、商品名「キョーワード1000」の合成ハイドロタルサイト 0.5gを用い、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)を1.0mmolに変更した以外は合成例1と同様に実施し、担持型触媒Bを得た。
合成例3 担持型触媒Cの調製
協和化学工業株式会社製、商品名「Pd−ハイドロタルサイト」(Pd:1.5%)を160℃で24時間乾燥し、担持型触媒Cを得た。
【0029】
実施例1
内容量30mlのオートクレーブに、ビスフェノールA4.16mmol、合成例1で得られた担持型触媒A200mg、酢酸コバルト(II)四水和物0.125mmol、テトラ(n−ブチル)アンモニウムブロマイド0.625mmol、ベンゾキノン0.625mmol、合成ゼオライトA−3粉末(和光純薬製粒径75μm未満)1.0g、プロピレンカーボネート10mlをいれ、一酸化炭素6.0MPa、酸素0.3MPaを25℃で充填した。封入した後に容器を閉構造とし、100℃で24時間加熱した。反応終了後、合成ゼオライト及び担持型触媒を除き、メタノール再沈殿により、目的のポリカーボネートを得た。これを100℃で24時間、真空乾燥した。得られたポリカーボネートの収率と数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、パラジウム(Pd)触媒のポリカーボネート中の残存量(ppm)を第1表に示す。
【0030】
参考例1
実施例1で除いた合成ゼオライト及び担持型触媒を160℃で24時間真空乾燥した。内容量30mlのオートクレーブに、ビスフェノールA4.16mmol、乾燥させた合成ゼオライト及び担持触媒(回収した全量)、酢酸コバルト(II)四水和物0.125mmol、テトラ(n−ブチル)アンモニウムブロマイド0.625mmol、ベンゾキノン0.625mmol、プロピレンカーボネート10mlをいれ、一酸化炭素6.0MPa、酸素0.3MPaを25℃で充填した。封入した後に容器を閉構造とし、100℃で24時間加熱した。反応終了後、合成ゼオライト及び担持型触媒を除き、メタノール再沈殿により、目的のポリカーボネートを得た。これを100℃で24時間、真空乾燥した。得られたポリカーボネートの収率と数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を第1表に示す。
【0031】
実施例2
実施例1において、担持型触媒A200mgのかわりに、合成例2で得られた担持型触媒B17mgを用いた他は実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示す。
【0032】
参考例2
参考例1同様、実施例2で除いた合成ゼオライト及び担持触媒を160℃で24時間乾燥させ、再度ポリカーボネートの重合をおこなった。結果を第1表に示す。
【0033】
実施例3
実施例1において、担持型触媒A200mgのかわりに、合成例3で得られた担持型触媒C177mgを用いた他は実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示す。
【0034】
参考例3
参考例1同様、実施例3で除いた合成ゼオライト及び担持触媒を160℃で24時間乾燥させ、再度ポリカーボネートの重合をおこなった。結果を第1表に示す。
【0035】
比較例1
実施例1において、担持型触媒A200mgのかわりに酢酸パラジウム(II)0.025mmolを用いた他は実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野、構造材料分野等における樹脂材料として有用なポリカーボネートを、有害な塩素ガスやホスゲン、環境に悪影響を与えると考えられるジクロロメタンやクロロホルムのようなハロゲン化有機溶媒を用いずに、高い収率で容易に得ることができる。
また、担持型触媒のため、触媒とポリカーボネートの分離が容易であり、触媒が再生可能である。また、ポリカーボネート中の残存パラジウム量を抑えることが出来る。
従って、本発明の触媒を用いた本発明の方法は、工業的ポリカーボネートの製造法として利用価値が高いものである。
Claims (7)
- (a)無機層状化合物に(b)パラジウムを担持させた化合物と、(c)レドックス触媒能を有する化合物を含有するポリカーボネート製造用触媒を用い、非ハロゲン溶媒中で、芳香族ジヒドロキシ化合物又は、脂肪族ジヒドロキシ化合物と、一酸化炭素及び酸素とを反応させることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
- 更に、(d)オニウム塩を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる請求項1記載のポリカーボネートの製造法。
- 更に、(e)助触媒を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる請求項1または請求項2記載のポリカーボネートの製造方法。
- 更に、(f)脱水剤を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
- (a)の無機層状化合物が合成スメクタイト及び/又は合成ハイドロタルサイトである請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記非ハロゲン溶媒がカーボネート結合を有する化合物である請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記非ハロゲン溶媒がプロピレンカーボネートである請求項6記載のポリカーボネートの製造方法。
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JP2002344359A JP3966410B2 (ja) | 2002-11-27 | 2002-11-27 | ポリカーボネートの製造方法 |
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