JP2004175815A - ポリエステル製造用触媒およびポリエステルの製造方法 - Google Patents

ポリエステル製造用触媒およびポリエステルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高活性で、しかも短時間で安価に且つ効率的に製造することができるポリエステル製造用触媒を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される構造を有するシラン化合物を水溶性の有機溶媒中で加水分解し、得られた生成物と金属の化合物とを反応させて得られた化合物を含有する。
χSi(OR ・・・一般式(1)
χSiX ・・・一般式(2)
(一般式(1)及び一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基を表し、各R及びRは異なっていても良い。また、Xはハロゲンを表し、χは1又は2を表し、yは4−χを満たす数を表す。)
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、ポリエステル製造用触媒と、それを用いるポリエステルの製造方法に関するものである。
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートをはじめとするポリエステルは、機械的強度、化学的安定性など、その優れた性質のゆえに、広く種々の分野、例えば、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用などの各種フィルムやシート、ボトルやエンジニアリングプラスチックなどの成形物など、広く種々の分野で用いられている。中でも、ガスバリヤ性、衛生性などに優れ、比較的安価で軽量であるために、各種食品、飲料包装容器として幅広く用いられ、かつその応用分野はますます拡大している。
【0002】
一般にポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(ジカルボン酸エステルなど)と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体(オキサイド付加物など)とにより、多段階法で製造される。
【0003】
多段階法によるポリエステルの製造について説明する。
まず、ジカルボン酸と過剰のジオールとのエステル化、またはジカルボン酸エステルとジオールとのエステル交換により、重縮合すべきエステルまたは重縮合すべきエステルとオリゴエステルとの混合物からなる比較的低分子量のポリエステル予備縮合物を製造する。次に、得られたポリエステル予備縮合物を、ポリエステル製造用触媒の存在下、副生するアルコールおよび/または水を分離しながら重縮合させ、目的とする高分子量のポリエステルとする。
【0004】
上記の重縮合反応の促進のために、既に多数のポリエステル製造用触媒が提案されているが、ほとんど全ての商業的プロセスにおいては、アンチモン化合物またはゲルマニウム化合物がポリエステル製造用触媒として用いられている。
【0005】
アンチモン化合物、なかでもSbは、安価でかつ優れた活性を有する触媒である。しかし、Sb触媒を用いて製造されたポリエステル中に残留する触媒残渣は比較的大きな粒子状となり易く、異物となってポリエステルの品質を低下させるという課題がある。
【0006】
一方、ゲルマニウム化合物触媒としては、GeO等が知られており、アンチモン化合物触媒と比較し高品質のポリエステルを製造することができ、さらに環境面からの課題も少ない。しかし、ゲルマニウムは埋蔵量が少ないためゲルマニウム化合物が高価であり、したがってゲルマニウム化合物触媒を用いたポリエステルは製造コストが著しく上昇してしまうという課題がある。よって、ゲルマニウム化合物触媒を用いたポリエステルの製造では、触媒コストを低減させるために更なる触媒活性の向上が求められていた。このため、アンチモン化合物やゲルマニウム化合物に代わる、更に性能の改良されたポリエステル製造用触媒が求められている。
【0007】
アンチモン化合物またはゲルマニウム化合物にかわるポリエステル製造用触媒を提供するための研究が、これまで繰り返し行なわれている。例えば、チタン化合物を用いた例として、特許文献1、特許文献2に記載されている様に、テトラブチルチタネートのようなアルキルチタネート触媒が提案されている。
【0008】
しかしながら、チタン化合物触媒の使用は、重縮合したポリエステルに強い着色を起こすほか、得られたポリエステルの加熱成形時の熱安定性が低いという課題があった。
【0009】
また、このチタン化合物触媒の使用によるポリエステルの着色を抑制し、加熱成形時の熱安定性を向上させるための手段として、リン化合物を添加する方法が広く知られている。しかし、リン化合物の添加はチタン化合物触媒の重縮合活性を低下させるため、チタン化合物触媒の効果が限定的なものになってしまうという課題があった。
【0010】
また、従来のポリエステル製造用触媒のなかには、製造過程が複雑で、製造に長い時間を要するものもあった。特に、不純物をできるだけ少なくして触媒成分の純度を高めるため、熟成や精製等の工程が必須なものについては、効率面や価格面での課題の解決が強く期待されていた。
【0011】
【特許文献1】
特公昭49−11474号公報
【特許文献2】
特開昭55−23136号公報
【0012】
【発明の課題】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、高活性で、しかも短時間で安価に且つ効率的に製造することができるポリエステル製造用触媒、及びそれを用いたポリエステルの製造方法を提供することに存する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を行なった結果、特定の構造を有するシラン化合物を水溶性の有機溶媒中で加水分解し、得られた生成物を金属の化合物と反応させて得られた化合物が、ポリエステル製造用触媒として高い活性を有するとともに、従来のポリエステル製造用触媒と比較して短時間で安価に且つ効率的に製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される構造を有するシラン化合物を水溶性の有機溶媒中で加水分解し、得られた生成物と金属の化合物とを反応させて得られた化合物を含有することを特徴とする、ポリエステル製造用触媒に存する(請求項1)。
χSi(OR ・・・化学式(1)
χSiX ・・・化学式(2)
(上記一般式(1)及び一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基を表し、各R及びRは異なっていても良い。また、Xはハロゲンを表し、χは1又は2を表し、yは4−χを満たす数を表す。)
【0015】
このとき、該金属として、周期表(IUPAC無機化学命名法1990年規則。以下同様)第2族、第3族、第4族、第13族、第14族及び第15族から選択される少なくとも1種の金属を用いても良い(請求項2)。
【0016】
また、該水溶性の有機溶媒として、アルコール類、ケトン類、アルキルニトリル類、エーテル類の少なくともいずれかを用いても良い(請求項3)。
【0017】
また、上記加水分解後に、水の除去を行ってもよい(請求項4)。
【0018】
また、本発明の別の要旨は、ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとジオールとからポリエステルを製造する方法において、上記のポリエステル製造用触媒を用いることを特徴とする、ポリエステルの製造方法に存する(請求項5)。
【0019】
このとき、ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとジオールとをエステル化又はエステル交換反応させてポリエステル予備縮合物を製造し、次いで、該ポリエステル予備縮合物を該ポリエステル製造用触媒の存在下反応させてポリエステルを製造するようにしてもよい(請求項6)。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。
本発明のポリエステル製造用触媒は、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される構造を有するシラン化合物を加水分解し、この加水分解により得られた生成物と金属の化合物とを反応させて得られた化合物を含有することを特徴とする。
χSi(OR ・・・化学式(1)
χSiX ・・・化学式(2)
【0021】
ここで、R及びRはそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭化水素基を表す。各R,Rはそれぞれ異なってもよいが、R同志は同じであるのが好ましい。炭化水素基は通常、アルキル基、アリール基またはアルケニル基である。Rの炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であって、通常30以下、好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。Rの炭素数は通常1以上であって、通常6以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0022】
としてはアルキル基またはアリール基が好ましく用いられる。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の環状アルキル基などが挙げられる。該アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ナフチル基、ジ−t−ブチルナフチル基、ピリジル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基等が挙げられる。
【0023】
上記例示の中でも、Rとしては、無置換又は置換の、環状アルキル基又はフェニル基が好ましく、無置換の環状アルキル基は、後述のシラン化合物の加水分解の主生成物として得られるケイ素を含有する化合物が立方体状の立体構造を取りやすいため特に好ましい。無置換の環状アルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基等が挙げられるが、中でもシクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロヘプチル基が特に好ましい。
【0024】
は、結合しているOとSiとが加水分解されるものであれば特に限定されないが、Rとしてはアルキル基が好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基が挙げられる。
【0025】
なお、上述の炭化水素基は、更に置換基を有していても良い。上述の炭化水素基が更に置換基を有している場合には、この置換基を含めた全体の炭素数が上記範囲となるようにする。この置換基としては、反応系に悪影響を及ぼす虞のないものであれば特に制限されないが、具体的には、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アミノ基、アミド基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基、エステル基等が好ましい。
【0026】
ここで、反応系に悪影響を及ぼす基としては、触媒を被毒させるもの、例えば共役ジエンを含む基や、上記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される構造を有するシラン化合物を酸化・変性させるもの、例えばパーオキサイドを含む基などが挙げられる。従って、本明細書全体を通じて、「反応系に悪影響を及ぼす虞の無い」基とは、反応系に悪影響を及ぼすこれらの基を除くという意に解すべきである。
【0027】
また、Xは、ハロゲン原子を表わす。具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられるが、その中でも、塩素又は臭素が好ましい。
また、χは1又は2であって、好ましくは1である。さらにyは4−χを満たす数を表す。
【0028】
以降、上記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される構造を有するシラン化合物を、適宜、シラン化合物と略称する。
【0029】
次に、加水分解について説明する。加水分解は、上述のシラン化合物と水とを、水溶性を有する有機溶媒(以下、水溶性有機溶媒という)中で反応させることで行なう。
【0030】
水溶性有機溶媒としては、水と均一に混合する極性溶媒であれば制限はないが、例えば、水と均一に混合するアルコール類、水と均一に混合するケトン類、水と均一に混合するアルキルニトリル類、水と均一に混合するエーテル類等が挙げられる。具体的には、好ましいものとして、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられ、さらに好ましいものとして、アセトン又はアセトニトリルが挙げられる。
溶媒としてアセトン又はアセトニトリルを用いると、下記のケイ素を含有する化合物がシラノール基を持ちやすく、後述の金属の化合物との反応がしやすくなる。
【0031】
加水分解は、通常は0℃以上、水溶性有機溶媒の沸点以下の温度条件下で行なわれる。好ましくは室温以上、100℃以下であり、より好ましくは室温以上、70℃以下である。また、好ましくは常圧以上10atm以下、より好ましくは常圧以上5atm以下の圧力下で行なう。
【0032】
加水分解に用いる水の量は、充分に加水分解が進行するように、上記シラン化合物に対し、通常は3モル等量以上である。上限は特に制限されないが、あまり過剰に用いると、後述する揮発成分の除去に長時間を要することになるので、好ましくは150モル等量以下、より好ましくは100モル等量以下である。
【0033】
上記シラン化合物を加水分解すると、各種の化合物を含む生成物が得られる(以下、中間生成物と呼ぶ。)。この中間生成物に含まれる化合物は、ケイ素を含有する化合物(以下、主生成物と呼ぶ。)と、ケイ素を含有しない化合物(以下、副生成物と呼ぶ。)とに分けることができる。
前者の主生成物には、各種のアルキルシロキサン化合物やアリールシロキサン化合物等(例えば、以下の一般式(3)で表されるオルガノシロキサン化合物)が含まれる。
(R χSiO0.5y(HO)0.5n ・・・一般式(3)
(上記一般式(3)中、χは1〜2の数を表し、yは4−χを満たす数を表し、mは1以上の整数を表し、nは2以上の整数を表す。また、Rは上記一般式(1)及び一般式(2)で説明したRと同じ炭化水素を表す。)
後者の副生成物には、ROHで表わされるアルコール化合物、HXで表わされるハロゲン化水素、水等が含まれる。
【0034】
ここで、中間生成物を次の工程に用いる前に、中間生成物中に存在する水、アルコール化合物、ハロゲン化水素等の副生成物を除去しても良い。
【0035】
特に、水は、次の工程で主生成物と反応させるために加える金属の化合物と反応してしまい、金属の化合物を消費してしまう可能性が高いため、これを防ぐためにこの段階で除去しておくことが好ましい。
【0036】
水の除去は、通常は水を蒸発させることにより行なう。主生成物が固体である場合には濾別、遠心分離又はデカンテーションにより行なうことも可能であるが、水を確実に除去するためには蒸発により除去することが好ましい。水を蒸発させて除去する際の温度条件は、あまりに高温だと中間生成物の変性や不要な反応を招く虞があるため、通常は常温以上、水溶性有機溶媒の沸点以下及び/又は100℃以下の温度で行なう(なお、本明細書において化合物の「沸点」とは、特に断りの無い限り、その化合物の1atm下における沸点、即ち標準沸点を表わす。)。また、圧力条件としては、通常は常圧以下、好ましくは減圧下において行なう。
【0037】
また、副生成物に含まれる上述のアルコール化合物やハロゲン化水素も、金属の化合物と反応してしまい、金属の化合物を消費してしまう可能性があるため、この段階で除去しておくことが望まれる。生成するアルコール化合物やハロゲン化水素の種類は、使用するシラン化合物の種類によって決まるため、これらのアルコール化合物やハロゲン化水素の沸点を推測することが可能である。これらの沸点が100℃以下であれば、これらのアルコール化合物やハロゲン化水素は水と同時に容易に除去される。一方、沸点が100℃よりも高いアルコール化合物やハロゲン化水素の発生が予想される場合には、これらの沸点よりも高い沸点の水溶性有機溶媒を使用するとともに、加水分解後に、この水溶性有機溶媒の沸点以下の温度条件において、水とともにアルコール化合物やハロゲン化水素の除去を行なうことが望まれる。
【0038】
多くの場合には、水等の中間生成物の除去に伴って、上述の水溶性有機溶媒がともに蒸発してしまう。よって、次の工程に移行する前に、中間生成物を新たな有機溶媒(以下、これを「第2の有機溶媒」という。)に溶解又は分散させる必要がある。第2の有機溶媒としては、反応系に悪影響を及ぼす虞の無い有機溶媒であって、中間生成物を溶解又は分散させることが可能なものであれば、その種類は特に制限されないが、中間生成物を溶解させることが可能な有機溶媒が好ましい。具体的には、各種の炭化水素類、エーテル類、アルコール類等が挙げられる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール又は1,4−ブタンジオール等が例示される。これらの例示溶媒は、任意の一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせで混合して用いても良い。これらの中でも、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が好ましく、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が特に好ましい。
【0039】
なお、以下の説明において、水性有機溶媒と第2の有機溶媒とを特に区別する必要が無い場合には、単に「有機溶媒」と呼ぶ。
【0040】
続いて、中間生成物が溶解又は分散された有機溶媒中に金属の化合物を混合し、これを中間生成物、特に主生成物と反応させる。
【0041】
金属としては特に制限はないが、好ましくは周期表の第2族、第3族、第4族、第13族、第14族又は第15族から選択される金属が挙げられる。具体的には、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb,Sb又はBi等が例示される。これらの例示金属は、任意の一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせでともに用いても良い。上記例示の中でも、好ましくはMg、Ca、Sr、Ba、Sc、Ti、Zr、Hf、Al、Ga、Ge又はSnが挙げられ、より好ましくはTi、Zr、Hf、Al又はGeが挙げられる。
【0042】
金属の化合物としては、上記の金属を含む化合物であればその種類は制限されず、任意の種類の化合物が使用できる。具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸と上記の金属との塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸と上記の金属との塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸と上記の金属との塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸と上記の金属との塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキジカルボン酸と上記の金属との塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫酸水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸と上記の金属との塩、メタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機スルホン酸と上記の金属との塩、メトキシ基、エトキシ基、n−プロボキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基が上記の金属に結合した金属アルコキシド、上記の金属のアセチルアセトナートなどのキレート化合物、上記の金属のクロリド化物、ブロミド化物などの上記の金属の金属ハロゲン化物が挙げられる。これらの中でも好ましくは、飽和脂肪族カルボン酸と上記の金属との塩、上記の金属の金属アルコキシド、又は上記の金属の金属ハロゲン化物であり、特に好ましくは上記の金属の金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物である。
【0043】
上記の中間生成物と金属の化合物との反応は、中間生成物と金属との混合割合がシリカと金属とのモル比として、通常99:1〜1:99、好ましくは99:1〜1:1、より好ましくは7:1〜1:1となるように反応させる。
上記の中間生成物と金属の化合物との反応は、通常0℃以上、好ましくは室温以上、また、通常は水性有機溶媒及び/又は第2の有機溶媒の沸点以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは70℃以下の温度条件下、並びに、好ましくは常圧以上10atm以下、より好ましくは常圧以上5atm以下の圧力条件下で、通常1〜24時間、好ましくは1〜10時間、より好ましくは1〜4時間行なわれる。
【0044】
以上の中間生成物と金属の化合物との反応により、有機溶媒中に反応生成物が得られる。これを、そのままポリエステル製造用触媒として用いることもできるが、ポリエステル製造工程で有機溶媒を除去する必要が生じるので、予め、有機溶媒を除去することが好ましい。
【0045】
有機溶媒の除去は、好ましくは有機溶媒を蒸発させることにより行なう。有機溶媒を蒸発させる際の条件としては、通常は常温以上、有機溶媒の沸点以下及び/又は100℃以下の温度条件下で、且つ、通常は常圧以下の圧力条件下で行なう。
有機溶媒を除去して得られた反応生成物は、通常固体または粘稠の液体である。
【0046】
続いて、本発明の重縮合反応触媒を用いてポリエステルを製造する方法(以下、適宜「本発明のポリエステルの製造方法」又は単に「本発明の製造方法」と略称する。)について説明する。
【0047】
本発明のポリエステルの製造方法は、ジカルボン酸成分とジオール成分とを、ポリエステル製造用触媒の存在下に重縮合させることによりポリエステル樹脂を製造するものであるが、基本的には、従来公知のポリエステル樹脂の慣用の製造方法が採用できる。
【0048】
例えば、ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとジオールとをエステル化又はエステル交換反応させてポリエステル予備縮合物を製造し、次いで、該予備縮合物を、ポリエステル製造用触媒の存在下重縮合反応させることにより、ポリエステルを製造することができる。以下、この方法に関して具体的に説明する。
【0049】
本発明のポリエステル製造用触媒は、以下に説明するポリエステル樹脂の製造工程中の任意の段階で混合することができるが、好ましくは、直接エステル化反応またはエステル交換反応終了後、重縮合反応の直前又は重縮合反応の初期の段階で混合させることが望ましい。
触媒を混合する際には、反応原料であるジオール中に溶解又は分散させて混合することが好ましい。ジオールに溶解または分散できないときには、ジオール以外の溶媒を用いても良い。
【0050】
ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体等があげられ、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体の具体的な例としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルエーテルジカルボン酸、ビフェニルスルフォンジカルボン酸、ビフェニルケトンジカルボン酸、ビフェノキシエタンジカルボン酸及びフェニレンジオキシジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、また、これらの芳香族ジカルボン酸の炭素数1〜4程度のアルキルエステル、例えばジメチルテレフタレート、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルなどやハロゲン化物が挙げられる。
【0051】
脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体の具体的な例としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ピペリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカンジカルボン酸及びドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、また、これらの脂肪族ジカルボン酸の炭素数1〜4程度のアルキルエステルやハロゲン化物が使用でき、例えばジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル等が挙げられる。
【0052】
これらの内、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジメチルテレフタレート又は2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルであり、より好ましくはテレフタル酸又はジメチルテレフタレートである。
【0053】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリオキシテトラメチレングリコール等の脂肪族グリコールが挙げられる。
【0054】
また、これらの脂肪族グリコールの他に、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,5−ノルボルネンジメタノール等の脂環式グリコール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の分岐型脂肪族グリコール、キシリレングリコール等の芳香族グリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フロパンのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が使用できる。
【0055】
これらの内、好ましくは、エチレングリコール、テトラメチレングリコール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、より好ましくはエチレングリコールである。
【0056】
更に、上記の原料の他に、本発明の効果を逸脱しない範囲で単官能成分や多官能成分を少量含んでいてもよい。具体的な例としては、ステアリン酸、安息香酸などの単官能成分、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、没食子酸、トリメチロールプロパン、トリエチロールエタン、ペンタエリスリトール、グリセリン及びテトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどの3官能以上の多官能成分が挙げられる。
【0057】
また、重縮合反応段階にて使用されるポリエステル製造用触媒に含まれる本発明にかかる触媒化合物の量は、生成するポリエステルの重量に対し、金属の量換算で通常0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上、また、通常5000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは100ppm以下を用いることができる。
【0058】
また、生成するポリエステルの色調、加熱成形時の熱安定性などを向上させる目的で、本発明のポリエステルの製造方法においてリン化合物を混合してもよい。
【0059】
混合するリン化合物は特に限定されないが、具体的には、例えば、亜リン酸や次亜リン酸、そしてこれらのエステル類(例えば、ジエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト及びトリスノニルデシルホスファイトなど)や、これらのリチウム、ナトリウム及びカリウム等の金属塩等の3価のリン化合物が挙げられる。また、正リン酸やポリリン酸、そしてトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノプチルホスフェート、ジオクチルホスフェート及びトリエチレングリコールアシッドホスフェートなどのエステル類等の5価のリン化合物が挙げられる。
【0060】
これらの内、亜リン酸、正リン酸、エチルアシッドホスフェート、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート又はエチルジエチルホスホノアセテートが好ましく、また重合系内の異物生成抑制や色相の観点から、エチルアシッドホスフェート、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート又はエチルジエチルホスホノアセテートが特に好ましい。
【0061】
ポリエステル予備縮合物の製造時の反応条件の例としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とを、エステル化反応槽で、必要に応じてエステル化触媒の存在下に、通常240℃以上、好ましくは250℃以上、また、通常280℃以下、好ましくは270℃以下において、通常0.3MPa以下、好ましくは0.2MPa以下の圧力下で、攪拌下に1〜10時間でエステル化反応をさせ、ポリエステル予備縮合物を得る。又は、ジカルボン酸成分に代えて、ジカルボン酸のエステル誘導体を用いて、エステル交換反応により、ポリエステル予備縮合物を得ることもできる。
【0062】
次に、ポリエステルを製造する重縮合工程に移る。得られたポリエステル予備縮合物は、通常ポリエステル低分子量体である。このポリエステル予備縮合物を重縮合槽に移送した後、上記ポリエステル製造用触媒を混合させ、通常250℃以上、好ましくは260℃以上、また、通常290℃以下、好ましくは285℃以下において、常圧から漸次として最終的に通常10Pa以上、好ましくは50Pa以上、また、通常1500Pa以下、好ましくは650Pa以下で、攪拌下に0.5〜20時間で溶融重縮合させることによりポリエステルが製造される。また、これらの予備縮合物を製造する工程及びポリエステルを製造する工程は連続式、又は回分式でなされる。
【0063】
通常、溶融重縮合により得られた樹脂は、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ状等の粒状体(通常、固有粘度は0.4〜1.5dl/g)とされる。
【0064】
本発明のポリエステル製造用触媒を用いて製造したポリエステルは、固有粘度、色調等、従来公知の触媒を用いて製造したポリエステルと同等の品質を有するので、繊維、フィルム、ボトルなど、従来のポリエステルが適用できる用途には好適に用いることができる。
【0065】
【実施例】
以下、本発明を下記の実施例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
(固有粘度の測定方法)
樹脂試料0.5gを、フェノール/1,1,2,2テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒に、濃度(c)を1.0g/dlとして、110℃で30分間かけて溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で、フェノール/1,1,2,2テトラクロロエタン混合溶媒の原液との相対粘度(ηrel)を測定した。この相対粘度から式{ηsp=(ηrel)−1}により求めた比粘度(ηsp)と濃度(c)との比(ηsp/c)を求め、同じく濃度(c)を0.5g/dl、0.2g/dl、0.1g/dlとしたときについてもそれぞれの比(ηsp/c)を求め、これらの値より、濃度(c)を0に外挿したときの比(ηsp/c)を固有粘度〔η〕(dl/g)として求めた。
【0067】
(ポリエステル製造用触媒の調製)
シクロヘキシルトリクロロシラン1.53g(7.0mmol)を、アセトニトリル40mLに溶解した溶液中に、HO10mLを加え、室温にて4.5時間攪拌した。攪拌終了後、エバポレーターを使用し、減圧下、室温にて水及びアセトニトリルを除去し、ゲル状の無色固体を得た。得られた無色固体をテトラヒドロフラン40mLに溶解した溶液中に、テトライソプロピルチタネート0.29g(1.0mmol)を加え、N雰囲気下、50℃にて5時間加熱攪拌した。加熱攪拌終了後、エバポレーターを使用し、減圧下、室温にてテトラヒドロフランを除去、さらに150Pa以下の減圧下、室温にて8時間真空乾燥し、淡黄色固体1.12gを得た。得られた固体を1重量パーセントとなるようにトルエン中へ溶解し、ポリエステル製造用触媒溶液とした。
【0068】
(重縮合反応)
回分式反応器内に、別途調整したテレフタル酸とエチレングリコールとの無触媒直接エステル化反応により得られたポリエステルオリゴマー(予備縮合物:数平均重合度=6.9)100gを仕込み、反応器内を窒素置換するとともに260℃に昇温した。約1時間後、ポリエステルオリゴマーが溶融したところで、撹拌を開始し、Ti金属換算で20ppmとなるように上記のポリエステル製造用触媒溶液を混合させた。続いて、反応器内を常圧から減圧するとともに260℃から280℃まで20分かけて昇温し、また減圧は20分かけて行ない、400Paに保持し、溶融重縮合反応を行なったところ、固有粘度0.57dL/gのポリエステルを得るまでに、減圧開始から57分を必要とした。
【0069】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、特定の構造を有するシラン化合物を水溶性の有機溶媒中で加水分解して、得られた生成物を金属の化合物と反応させて得られた化合物を用いることにより、従来のポリエステル製造用触媒よりも短時間で安価に且つ効率的に、高活性なポリエステル製造用触媒を得ることができる。本発明の触媒は、例えばジカルボン酸又はそのアルキルエステルとジオールとからポリエステルを製造する際の触媒として、好適に使用することができる。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される構造を有するシラン化合物を水溶性の有機溶媒中で加水分解し、得られた生成物と金属の化合物とを反応させて得られた化合物を含有する
    ことを特徴とする、ポリエステル製造用触媒。
    χSi(OR ・・・一般式(1)
    χSiX ・・・一般式(2)
    (上記一般式(1)及び一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基を表し、各R及びRは異なっていても良い。また、Xはハロゲンを表し、χは1又は2を表し、yは4−χを満たす数を表す。)
  2. 該金属が、周期表の第2族、第3族、第4族、第13族、第14族及び第15族から選択される少なくとも1種の金属である
    ことを特徴とする、請求項1記載のポリエステル製造用触媒。
  3. 上記の水溶性の有機溶媒が、アルコール類、ケトン類、アルキルニトリル類、エーテル類の少なくとも何れかである
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のポリエステル製造用触媒。
  4. 上記加水分解後に水を除去する
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のポリエステル製造用触媒。
  5. ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとジオールとからポリエステルを製造する方法において、請求項1〜4の何れか一項に記載のポリエステル製造用触媒を用いる
    ことを特徴とする、ポリエステルの製造方法。
  6. 上記のジカルボン酸又はそのアルキルエステルと上記のジオールとをエステル化又はエステル交換反応させてポリエステル予備縮合物を製造し、次いで、該ポリエステル予備縮合物を該ポリエステル製造用触媒の存在下反応させてポリエステルを製造する
    ことを特徴とする、請求項5記載のポリエステルの製造方法。
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