JP2004174566A - ローリングダイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】連続する平行ねじ部6を持つねじローラ3を具えるローリングダイスにおいて、前記ねじローラ3の前記平行ねじ部6よりも先端側に、ねじ山の外径部と谷底部とのうち少なくとも外径部が前記ねじローラ3の先端へ向かって先細りとなった食付き部7を設けたことを特徴とするものである。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、おねじの塑性加工用のねじローラを具えるローリングダイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図10は、従来のローリングダイスのねじローラを示し、図示の如く従来のローリングダイスのねじローラ3は、連続する平行ねじ部17のみで構成されている。かかる平行ねじ部17のみのねじローラ3を具える従来のローリングダイスは、一般に使用されている自動旋盤等で使用できるメリットはあるものの、自進力が弱く、ワークに食い付きにくいので、被加工ねじのピッチに合うように送りカムを調整したりローリングダイスの押し込み量や押し込み力を調整したりする必要があった。
【0003】
さらに従来のローリングダイスは、ねじローラ3が連続する平行ねじ部17のみで構成されているため、ねじローラ3の平行ねじ部17の第1山17aで完全ねじ山を形成しようとすることから、ワークの塑性流動させる体積の急激な増加により、特に第1山17aへ加わる盛り上げ抵抗が大きくなり、ねじローラ3のねじ山の摩耗や欠けによる寿命への影響が大きかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決して、長寿命のねじローラを具える耐久性の向上したローリングダイスを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明のローリングダイスは、連続する平行ねじ部を持つねじローラを具えるローリングダイスにおいて、前記ねじローラの前記平行ねじ部よりも先端側に、ねじ山の外径部と谷底部とのうち少なくとも外径部が前記ねじローラの先端へ向かって先細りとなった食付き部を設けたことを特徴としている。
【0006】
かかる本発明のローリングダイスによれば、ねじローラの平行ねじ部よりも先端側に、ねじ山の外径部と谷底部とのうち少なくとも外径部が前記ねじローラの先端へ向かって先細りとなった食付き部を設けたから、その食付き部の先細りの外径部が、ワークの先端部の外周面に強固に食い付いて、強い自進力を生じさせるので、被加工ねじのピッチに合うように送りカムを調整したりローリングダイスの押し込み量や押し込み力を調整したりする必要が殆どもしくは全くない。
【0007】
しかも食付き部の少なくとも外径部を先細りとしたから、ねじローラの食付き部の食付き初めのねじ山で完全ねじ山を形成せず、複数のねじ山でワークの塑性流動させる体積を徐々に増加させるので、食付き初めのねじ山にかかる負担を少なくし得て、ねじ山の摩耗や欠けを防止することができ、これにより、ねじローラの寿命を延ばし、ローリングダイスの耐久性を向上させることができる。ここで、被加工ねじの中心軸線に対してねじローラの中心軸線が平行に延在する場合は、ねじローラのねじ山は螺旋状とされるが、被加工ねじの中心軸線に対してねじローラの中心軸線が平行でなく傾斜している場合は、ねじローラのねじ山は螺旋状でなくそれ自身がリードを持たない環状の突条であっても良い。
【0008】
なお、本発明においては、請求項2に記載のように、前記食付き部のねじ山の山頂の切取り高さを前記平行ねじ部のねじ山の山頂の切取り高さより小さくすることにより、前記食付き部の山頂の幅を前記平行ねじ部の山頂の幅よりも狭くしても良く、このようにすれば、さらに食付き性がよくなり自進力が増すので、より長寿命のねじローラを具える、より耐久性の向上したローリングダイスを提供することができる。
【0009】
また本発明においては、請求項3に記載のように、前記食付き部から前記平行ねじ部にかけてのねじ山ピッチを、ねじ山の山頂を基準として設定しても良く、このようにすれば、ワークへの食付きピッチが一定になって自進力がさらに増すので、より長寿命のねじローラを具える、より耐久性の向上したローリングダイスを提供することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1(a)および(b)は、本発明のローリングダイスの第1実施例を示す正面図および側面図であり、図2は、その第1実施例のローリングダイスの、ねじローラのねじ部の拡大説明図、図3は、3個のねじローラを被加工ねじのリードに合わせて組み付けたときのそれぞれの食付き部の働きを示す拡大説明図、そして図4はその食付き部の盛り上げ形態図である。
【0011】
この第1実施例のローリングダイスは、図1に示すように、ワークに雄ねじを盛り上げるための3個(1番ねじローラ、2番ねじローラ、3番ねじローラ)のねじローラ3と、それらのねじローラ3を挿入孔2の周りに周方向に等間隔に配置するための母体となるリング状のダイス駒1と、各ねじローラ3をダイス駒1に回転自在に組み付けるためのピン4とを具えてなり、この実施例では被加工ねじの中心軸線に対し各ねじローラ3の中心軸線を平行でなく被加工ねじのリード角に等しく傾斜させて配置するように、各ピン4をダイス駒1の中心軸線に対し傾けてダイス駒1に固定いているので、各ねじローラ3は、ねじ山にリードのない、中心軸線に対し直交する平面に沿って延在する(螺旋状でなく環状の)複数条のねじ山を形成されており、3個のねじローラ3は、被加工ねじのリードに合うように互いにリードの3分の1ずつねじ山をずらされてダイス駒1に組み付けられている。
【0012】
そしてこの第1実施例では、図2に1番ねじローラについて代表で示す如く、各ねじローラ3のねじ部5が、連続する平行ねじ部6と、その平行ねじ部6に対しねじローラ3の先端側に連続した食付き部7とを有しており、ここでの食付き部7は、ねじ山の外径部と谷底部との両方がねじローラ3の先端へ向かって先細りとなっていて、上述した3個のねじローラ3のねじ山の互いのずれにより、図3に示すように、食付き部7の先端の最も低い1番ねじローラ3の第1山7aから2番ねじローラ3の第1山7d、3番ねじローラ3の第1山7f、さらに1番ねじローラ3の第2山7b、2番ねじローラ3の第2山7e、3番ねじローラ3の第2山7g、そして平行ねじ部6にかかる最も高い1番ねじローラ3の第3山7cまで順次ねじ山の高さが高く(外径が大きく)なっており、これにより、外径部の傾斜角θ1に沿った裁頭円錐状の食付き形状となっている。
【0013】
この第1実施例のローリングダイスによれば、ねじローラ3の平行ねじ部6よりも先端側に、ねじ山の外径部と谷底部との両方がねじローラ3の先端へ向かって先細りとなった食付き部7を設けたから、その食付き部7の先細りの外径部がワークの先端部の外周面に強固に食い付いて強い自進力を生じさせるので、被加工ねじのピッチに合うように送りカムを調整したりローリングダイスの押し込み量や押し込み力を調整したりする必要が殆どもしくは全くない。
【0014】
しかも食付き部7の外径部と谷径部とを先細りとしたから、3個のねじローラ3が、それらの食付き部7の食付き初めのねじ山7a,7d,7fで完全ねじ山を形成せず、図4に示すように、複数のねじ山7a〜7gでワークの塑性流動させる体積を徐々に増加させて被加工ねじを盛り上げるので、食付き初めのねじ山7a,7d,7fにかかる負担を少なくし得て、ねじ山の摩耗や欠けを防止することができ、これによりねじローラ3の寿命を延ばし得て、ローリングダイスの耐久性を向上させることができる。
【0015】
図5は、本発明のローリングダイスの第2実施例の、ねじローラのねじ部の拡大説明図であり、図6は、3個のねじローラを被加工ねじのリードに合わせて組み付けたときのそれぞれの食付き部の働きを示す拡大説明図、そして図7は、その食付き部の盛り上げ形態図である。
【0016】
この第2実施例では、挿入孔2を持つダイス駒1と、そのダイス駒1に固定されるピン4とは先の実施例と同一であるが、3個のねじローラ3は先の実施例と異なって互いに同一であり、各ねじローラ3は、図5に1番ねじローラについて代表で示す如く、ねじ部8が、連続する平行ねじ部9と、その平行ねじ部9に対しねじローラ3の先端側に連続した食付き部10とを有している。
【0017】
ここでの食付き部10は、ねじ山の外径部と谷底部との両方がねじローラ3の先端へ向かって先細りとなっていているものの、ねじローラ同士互いに同一のため、上述した3個のねじローラ3のねじ山の互いのずれにより、図6に示すように、1番ねじローラ3の第1山10aと2番ねじローラ3の第1山10dと3番ねじローラ3の第1山10fとが同一高さ、また1番ねじローラ3の第2山10bと2番ねじローラ3の第2山10eと3番ねじローラ3の第2山10gとが同一高さで、食付き部5の先端の最も低い第1山10a,10d,10fから、第2山10b,10e,10gを間において、平行ねじ部6にかかる最も高い第3山10cまで順次ねじ山の高さが高く(外径が大きく)なっており、これにより階段状の食付き形状となっている。ここで、図5に示すねじ山10c〜10aの先細りする量については、特に限定されず、適宜定めることができる。
【0018】
この第2実施例のローリングダイスによれば、図7に示すように、複数のねじ山10a〜10gでワークの塑性流動させる体積を段階的に増加させて被加工ねじを盛り上げるので、先の第1実施例と同様の作用効果を得ることができ、しかも3個のねじローラ3が互いに同一であるので、ねじローラ3ひいてはローリングダイスの製造コストを安価にすることができる。
【0019】
図8は、本発明のローリングダイスの第3実施例の、ねじローラのねじ部の拡大説明図である。この第3実施例では、挿入孔2を持つダイス駒1と、そのダイス駒1に固定されるピン4とは先の実施例と同一であるが、図8に1番ねじローラについて代表で示す如く、3個のねじローラ3の各々のねじ部11が、連続する平行ねじ部12と、その平行ねじ部12に対しねじローラ3の先端側に連続した食付き部13とを有しているものの、食付き部13のねじ山頂の切取り高さを平行ねじ部12のねじ山頂の切取り高さより小さくすることにより、その食付き部13のねじ山頂の幅W2,W3が、平行ねじ部12のねじ山頂の幅W1よりも狭くされている。なお、第1山の山頂幅W2と第2山の山頂幅W3とは同一でも良く、異なっていても良い。また3個のねじローラ3は、先の第1実施例と同様に食付き部13のねじ山が順次に高くなるものでも良く、先の第2実施例と同様に互いに同一であっても良い。
【0020】
この第3実施例のローリングダイスによれば、先の第1,第2実施例と同様の作用効果を得ることができ、しかも、食付き性がよくなり自進力が増すので、ねじローラ3の寿命をより延ばし得て、ローリングダイスの耐久性をより向上させることができる。
【0021】
図9は、本発明のローリングダイスの第4実施例の、ねじローラのねじ部の拡大説明図である。この第4実施例では、挿入孔2を持つダイス駒1と、そのダイス駒1に固定されるピン4とは先の実施例と同一であるが、図9に1番ねじローラについて代表で示す如く、3個のねじローラ3の各々のねじ部14が、連続する平行ねじ部15と、その平行ねじ部15に対しねじローラ3の先端側に連続した食付き部16とを有しているものの、その食付き部16から平行ねじ部15にかけてのねじ山ピッチPを、ねじ山の山頂16a,16b,16cを基準として設定している。すなわちここでは、食付き部16から平行ねじ部15にかけての谷底のピッチを、ずれ量A1およびB1だけ補正して、それぞれ第1山16aと第2山16bの間でP+A1−B1、第2山16bと第3山16cの間でP+B1とすることで、ねじ山頂基準で正規のピッチとしている。なお、3個のねじローラ3は、先の第1実施例と同様に食付き部13のねじ山が順次に高くなるものでも良く、先の第2実施例と同様に互いに同一であっても良い。
【0022】
この第4実施例のローリングダイスによれば、先の第1,第2実施例と同様の作用効果を得ることができ、しかも、ワークへの食付きピッチが一定になって自進力がさらに増すので、ねじローラ3の寿命をさらに延ばし得て、ローリングダイスの耐久性をさらに向上させることができる。
【0023】
以下の表1は、上記第4実施例のローリングダイス(但し3個のねじローラ3は先の第2実施例と同様に食付き部13のねじ山が階段状に高くなるもの)と従来のローリングダイス(従来品)とでそれぞれねじ加工を行って、ワークへの食付き時の押込み力を求めた結果を比較して示すものであり、ねじ加工の条件は何れも以下の通りである。
【0024】
【表1】
【0025】
この表1に示す結果からも、上記第4実施例のローリングダイスは明らかに、従来品と比較して自進力が増すので、ねじローラの寿命を延ばし得て、ローリングダイスの耐久性を向上させることができることがわかる。
【0026】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上記各実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で、例えば、食付き部のねじ山の外径部のみねじローラの先端へ向けて先細りとしたり、食付き部の先細りのテーパを断面円弧状にしたり、食付き部のねじ山の角度を変えて相似形で盛り上げないようにしたりする等の各種変更が可能であることはいうまでもない。
【0027】
また本発明は、ねじローラに表面処理を施すローリングダイスにも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)および(b)は、本発明のローリングダイスの第1実施例を示す正面図および側面図である。
【図2】上記第1実施例のローリングダイスの、ねじローラのねじ部の拡大説明図である。
【図3】上記第1実施例における3個のねじローラを被加工ねじのリードに合わせて組み付けたときのそれぞれの食付き部の働きを示す拡大説明図である。
【図4】上記第1実施例における上記食付き部の盛り上げ形態図である。
【図5】本発明のローリングダイスの第2実施例の、ねじローラのねじ部の拡大説明図である。
【図6】上記第2実施例における3個のねじローラを被加工ねじのリードに合わせて組み付けたときのそれぞれの食付き部の働きを示す拡大説明図である。
【図7】上記第2実施例における食付き部の盛り上げ形態図である。
【図8】本発明のローリングダイスの第3実施例の、ねじローラのねじ部の拡大説明図である。
【図9】本発明のローリングダイスの第4実施例の、ねじローラのねじ部の拡大説明図である。
【図10】従来のローリングダイスの、ねじローラのねじ部の拡大説明図である。
【符号の説明】
1 ダイス駒
2 挿入孔
3 ねじローラ(1番ローラ、2番ローラ、3番ローラ)
4 ピン
5,8,11,14 ねじ部
6,9,12,15,17 平行ねじ部
7,10,13,16 食付き部
7a,7d,7f,10a,10d,10f,16a,17a 第1山
7b,7e,7g,10b,10e,10g,16b 第2山
7c,10c,16c 第3山
W1 平行ねじ部山頂幅
W2,W3 食付き部山頂幅
A1 第1谷底と第2谷底間のピッチ補正量
B1 第2谷底と第3谷底間のピッチ補正量
P ピッチ
θ1 食付き部のねじ山の外径部の傾斜角
Claims (3)
- 連続する平行ねじ部を持つねじローラを具えるローリングダイスにおいて、
前記ねじローラ(3)の前記平行ねじ部(6,9,12,15)よりも先端側に、ねじ山の外径部と谷底部とのうち少なくとも外径部が前記ねじローラの先端へ向かって先細りとなった食付き部(7,10,13,16)を設けたことを特徴とする、ローリングダイス。 - 前記食付き部(13)のねじ山の山頂の切取り高さを前記平行ねじ部(12)のねじ山の山頂の切取り高さより小さくすることにより、前記食付き部(13)の山頂の幅を前記平行ねじ部(12)の山頂の幅よりも狭くしたことを特徴とする、請求項1記載のローリングダイス。
- 前記食付き部(16)から前記平行ねじ部(15)にかけてのねじ山ピッチ(P)を、ねじ山の山頂を基準として設定したことを特徴とする、請求項1または2記載のローリングダイス。
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