JP2004174498A - 雨スジ汚染を低減する方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 タイル等の基体外面にシリカ及び結合用珪酸質物質を含有する微細液粒を均一に塗付し、ついで300〜700℃で熱処理することにより珪酸質バインダーを形成せしめ、これによりシリカ微粒子を結合した微細粗面を有し、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、親水性の微細多孔防汚層を基体外面に持つタイル等の構造体を製造する。
【選択図】 なし
Description
この公報に記載の皮膜は、酸性コロイド状シリカ2.5〜15重量部、アミン化合物0.1〜15重量部、シリカ、アルミナあるいはムライト等の無機充填材10〜80重量部、水あるいは親水性有機溶剤17〜87重量部(すべて合計で100重量部)よりなるコーティング用組成物をセメント、コンクリート、ガラス、セラミック等の表面に塗付し、30〜200℃にて加熱して塗膜を硬化させるものであり、その結果、親水性で汚れの付着しにくい塗膜が得られるとしている。
すなわち、酸化チタン系の超親水性皮膜は、TiO2の光触媒作用を利用しているため日光の当たらない場所又は夜間等にあっては防汚性が発揮できないという短所がある。
また、初期段階では汚れ防止効果は発揮するものの、長期的には触媒機能の低下により汚染成分の分解効果が低下し、汚染防止能は通常のタイルと大差のないものとなってしまう。
特に外壁の施工時にタイルの目地あるいはタイルとサッシの間等にシリコーン系シーリングが使用された際に該シーリング材下部にシリコーン系シーリング材溶出物に由来して発生する雨スジ汚れの防止には不充分なものであった。
したがって、本発明は、この課題を解消することができる、微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体及び該防汚層形成用塗布剤、並びに該構造体を製造する方法を提供することを解決すべき課題とするものである。
すなわち、本発明に係る微細多孔防汚層には、触媒作用を利用する酸化チタン系の超親水性皮膜を形成するものではないから、それを利用することによって生ずる短所の発生もない。
以上のとおりであるから、本発明はこれらの特性を有する微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体を提供することを解決課題、すなわち発明の目的とするものである。
以上のとおりであるから、本発明の親水性の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体は、卓越した効果を奏するものである。
それらのことは、図1に示す前記構造体の表面を撮影した電子顕微鏡写真からわかる。
その粗面の粗さは、極めて微小ではあるが、原子力間顕微鏡(以下、AMFと略称する)によって測定することが可能であり、その測定結果によれば、平均粗さで2〜100nmがよく、特には20〜30nmが好ましい。
そのAMFは、試料と探針の間に働く微小な力(原子間力)を検出することによって、試料表面の形状を観察するものである。
その探針はカンチレバー(片持ち梁)と呼ばれる柔らかくて小さな腕の先端に形成されており、試料表面に近づけられた探針に働く原子間力は、カンチレバー変位に置き換えられて検出されることになる。
そのフォトディテクターは2分割又は4分割されており、カンチレバーの変位(たわみ)により変化する反射光の角度を、各ディテクターの入射光の相対値として検出する。
典型的な値としてカンチレバーは長さが200μm、厚さが0.1μmであり、その先端の探針は長さが3μm、曲率半径が20nmである。
試料と探針の距離は数nm以下であり、検出される原子間力は、nN(ナノニュートン)以下という小さな力である。
一般にAMFでは、カンチレバーの変位を一定に保つように試料位置のフィードバック制御をしながら、試料表面上(X,Y軸)の微細な形状をトレースしていく。 その走査に対応して、Z軸のフィードバック量を計算機に取り込んで処理することにより、試料表面の凹凸像(AFM観察像)を得るものである。
このようにして観察し、表面粗さを算出することができる。
すなわち、珪酸質バインダーは水ガラスが元来有する特性である潮解性を消失しており、水ガラスは熱処理によって他の化学構造のものに変質したものとなっている。
その結果、基体が元来有する色彩、模様あるいは装飾形状等をそのまま生かすことができ、意匠的にもすぐれたものとすることがでる。
例えば、この防汚層を窓ガラスに形成した場合には、雨スジ汚れが防止されると同時に視覚に悪影響を与えることもないし、タイルに形成した場合には、同様に雨スジ汚れが防止されると同時に表面の装飾性を損なうことがない。
すなわち、図2の下側にはつぶつぶが存在しない平面的な領域があり、それがタイルの切断面である。その平面的な領域の上には2種のつぶつぶの形態の領域が観察され、そのうちの中央側の領域が微細多孔防汚層の切断面に該当し、その上のつぶつぶの領域が微細粗面であることがわかる。
また、その写真中には長さが表示されているから防汚層の厚さも把握できる。
その観察結果によれば微細多孔防汚層の厚さは1000nm以下がよく、特に20〜500nmが好ましく、その中でも50〜200nmが好ましい。
この図2のように大きく拡大した顕微鏡観察により本発明が奏する卓越した新規な作用効果を発現するところの新規な構造がはじめて観察することができた。
その理由は水ガラス使用に伴う耐水性の低下を改善させることができるからであり、0.01未満ではその効果を充分に発揮することができず、10重量%を越えると密着性が低下するため前記範囲がよい。
このシリカ微粒子の微細多孔防汚層中における含有量は、60重量%以上99重量%以下であることが好ましく、特には85〜98重量%が好ましい。
また、その粒径は50nm以下が好ましく、特には10〜30nmが好ましい。
そのシリカ微粒子の微細多孔防汚層中における含有量は、0.1〜30重量%であることが好ましく、特には1〜10重量%が好ましい。
このアルミニウム成分の添加は水ガラス使用に伴う耐水性の低下を改善させることができる。
そのためのアルミニウム成分としては、具体的にはアルミナ、ケイ酸アルミ、水溶性アルミニウム化合物がよく、それらを単独あるいは2種以上を混合して使用することが可能である。
具体的な基体の構造物としては、タイル、便器、浴槽、ユニットバスの壁、洗面台、カーテンウォール、アルミサッシ、水栓金具、建築用ボード、鏡、レンズ、窓ガラス等の各種ガラス製品があり、タイルについては、施釉、無施釉のいずれであってもよい。
なお、ここにおけるガラス層とは、タイルであれば釉薬層をいい、ホーローであれば金属基材表面の被覆層である釉薬層をいい、ガラス製品であれば、ガラスそのものをいう。
陶磁器質等の基体表面にシリカ及び結合用珪酸質物質を含有する微細液粒を均一に塗付し、更に300〜700℃、好ましくは500〜700℃で焼成することにより、結合用珪酸質物質を水和しても潮解性を示さない、すなわち非可逆性の珪酸質バインダーとせしめ、これによりシリカ微粒子を結合した微細粗面を有し、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、親水性の微細多孔防汚層を基体外面に形成するものである。
コロイダルシリカ 60〜99重量%
結合用珪酸質物質 0.1〜30重量%
アルミニウム成分 0.01〜10重量%
コロイダルシリカ 85〜98重量%
結合用珪酸質物質 1〜10重量%
アルミニウム成分 0.1〜5重量%
さらに、この塗布液については、SiO2/アルカリのモル比が18〜93であるのがよく、特には、40〜80が好ましい。その理由は、93を越えると密着性が低下するからであり、反対に18未満になると防汚性能が低下するからである。
具体的には、はけ塗り、幕掛け、ディッピング、スプレー塗布あるいはミスト塗布等を用いることができる。
特に好ましいのは、ミストを粒径選別手段に通し更に所定の粒径範囲に選別するものがよく、その選別手段としては、例えば特願2000−17719号に記載されているような噴霧ノズル等から放出された微小液粒を下降流路、重力に逆行する上昇流路及び下降流路を順次通過させることにより、粒径を選別し所定粒径範囲のものが被覆対象物である基体表面に到達するようにするものがあり、それが特に好ましい。
この変質により珪酸質バインダーを形成し、シリカ微粒子を基体外面に結合する。
その結果、結合したシリカ微粒子は、微細粗面を有し、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、親水性の微細多孔防汚層を基体外面に形成する。
また逆に700℃を超えると微細多孔防汚層中のガラス成分が融解し、該層の吸湿性が低下し防汚性能を低下させることになるからである。
この実施例では、微細多孔防汚層を有するタイルを製造した。
その製造方法は以下のとおりである。
コロイダルシリカ 97.8重量%
水ガラス(無水ベース換算) 2.0重量%
アルミナ 0.2重量%
SiO2/アルカリのモル比 55
焼成後に得れらたタイル外面に形成された微細多孔防汚層の構造は図1及び2の電子顕微鏡写真に示すとおりである。
図1は、微細多孔防汚層の表面構造、図2はその断面構造を示すものである。
図2の電子顕微鏡写真は、150,000倍であるが、50,000倍の電子顕微鏡写真によっても、実施例のタイルの表面に形成された微細多孔防汚層の前記した構造は確認できた。
さらに、微細多孔防汚層が透明であることは目視によって確認した。
孔径・・・12〜42nm
厚さ・・・120nm
表面の平均粗さ・・・25nm
[防汚性能評価試験]
本発明で採用した防汚性能評価試験は以下のとおりである。
すなわち、45×95×6mmのタイル12枚を約5mmの目地間隔でフレキシボードに張り付け、目地部には、シリコーン系のシーリング材を施し、これを屋外で暴露試験した。
また、同時に本発明の微細多孔防汚層がシリコーン系シーリング材溶出物に由来する雨スジ汚れに対する防止機能が優れてることを示すためでもある。
さらに、比較のために前記微細多孔防汚層を備えないタイル(比較例1)及び従来技術に属するところの親水性塗布層を備えたタイル(比較例2)についても同様の評価試験を実施した。
この試験結果によれば、本発明の微細多孔防汚層を備えたタイルは、日当たり良好及び高紫外線照射量の場合にも、また日当たり不良及び低紫外線照射量の場合にも、いずれもシリコーン系シーリング材溶出物に由来する雨スジ汚れに対する防止機能が良好であることがわかる。
それに対して微細多孔防汚層を備えないタイル及び従来技術に属するところの親水性塗布層を備えたタイルは、いずれの場合にも不良でありことが明らかである。
その性能の差異は小さなものではなく、大きなものである。
に属する親水性塗布層を形成したタイルについても電子顕微鏡による観察を実施し、撮影した写真は図3に図示した。
その結果によれば、従来技術に属する製法にしたがって形成した塗布層には、その表面にシリカ微粒子の突き出た微細粗面もなく、また表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有するという構造も存在しないことが判明した。
さらに、この組成物100重量部に対して、緑色無機顔料67重量部、無機質充填剤17重量部および水22重量部を加え、ボールミル中で混合分散して塗布膜形成液を調製した。
ついで、この形成液を実施例と同じタイルに塗布して比較用のタイルを製造した。
Claims (11)
- 表面がシリカ微粒子の突き出た微細粗面となっていて、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、シリカ微粒子を珪酸質バインダーで結合した親水性の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
- 前記微細多孔防汚層の破断面を電子顕微鏡において50,000倍以上で観察することにより、シリカ微粒子形状が観察可能である請求項1記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
- 前記微細孔の孔径が1000nm以下である請求項1又は2記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
- 前記微細多孔防汚層の厚さが20〜500nmである請求項1、2又は3記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
- 前記微細粗面の凹凸の平均粗さが2〜100nmである請求項1ないし4のいずれか1に記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
- 前記微細多孔防汚層が更にアルミニウム化合物を含有するものである請求項1ないし5のいずれか1に記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
- 前記微細多孔防汚層中のシリカ含有量が50〜99質量%である請求項1ないし6のいずれか1に記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
- 前記微細多孔防汚層が透明である請求項1ないし7のいずれか1に記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
- シリカ及び結合用珪酸質物質を含有し、かつSiO2/アルカリのモル比を18〜93とせしめた親水性の微細多孔防汚層形成用の塗布液。
- 陶磁器等の基体外面にシリカ及び結合用珪酸質物質を含有する塗布液を塗付し、ついで300〜700℃で熱処理することにより結合用珪酸質物質を珪酸質バインダーとせしめ、これによりシリカ微粒子を結合した微細粗面を有し、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、親水性の微細多孔防汚層を基体外面に持つ構造体を製造する方法。
- 前記塗布液がミストである請求項10記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体を製造する方法。
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