JP2004174498A - 雨スジ汚染を低減する方法 - Google Patents

雨スジ汚染を低減する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 タイル等の構造体表面に出現する雨スジ汚染、特にシリコーン系シーリング剤の使用に伴う雨スジ汚染を好適に低減せしめることができる新規な構造の微細多孔防汚層を有する構造体及び該防汚層形成用塗布液、並びに該構造体を製造する方法の提供。
【解決手段】 タイル等の基体外面にシリカ及び結合用珪酸質物質を含有する微細液粒を均一に塗付し、ついで300〜700℃で熱処理することにより珪酸質バインダーを形成せしめ、これによりシリカ微粒子を結合した微細粗面を有し、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、親水性の微細多孔防汚層を基体外面に持つタイル等の構造体を製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、外面に新規な構造の微細多孔防汚層を有するガラス、タイル等の構造体、より詳しくは、建築物外壁に使用されているタイル等の表面に出現する雨スジ汚染、特にシリコーン系シーリング剤の使用に伴う雨スジ汚染を好適に低減せしめることができるセルフクリーニング機能を持つところのタイル等の外面に新規な構造の微細多孔防汚層を有する構造体及び該防汚層形成用塗布液、並びに該構造体を製造する方法に関する。
[先行技術文献]
特開平10−158585号公報 特開平10−330646号公報 タイルあるいは板ガラス等の板状基体表面に超親水性の皮膜を形成すると、基体表面に水が付着した際に皮膜表面に広がり、雨水等と共に汚れが皮膜表面にも広がって流れ落ちるようになり基体表面に汚れが付きにくくなり、また目立ちにくくなる。 このようなセルフクリーニング機構を有する超親水性皮膜としては触媒機能を有する酸化チタン(Ti02)皮膜が広く知られている。
そして、前記酸化チタン(Ti02)皮膜以外にもタイル等の基体表面に防汚性皮膜を形成する技術については提案があり、それには例えば特許文献1に記載のものがある。
この公報に記載の皮膜は、酸性コロイド状シリカ2.5〜15重量部、アミン化合物0.1〜15重量部、シリカ、アルミナあるいはムライト等の無機充填材10〜80重量部、水あるいは親水性有機溶剤17〜87重量部(すべて合計で100重量部)よりなるコーティング用組成物をセメント、コンクリート、ガラス、セラミック等の表面に塗付し、30〜200℃にて加熱して塗膜を硬化させるものであり、その結果、親水性で汚れの付着しにくい塗膜が得られるとしている。
また、特許文献2にも同様の皮膜の提案があり、その公報には、可溶性珪酸カリウムおよび水性シリカゾルを含む塗料を鋼板に塗付して150〜250℃にて加熱し、これによって親水性で耐汚染性に優れた塗膜を形成することが記載されている。
前述のようにタイル等の基体表面の汚染を低減せしめるために、防汚性の皮膜を形成する提案が行われているが、これまでの提案は下記のとおりいずれも問題があり十分なものではなかった。
すなわち、酸化チタン系の超親水性皮膜は、TiO2の光触媒作用を利用しているため日光の当たらない場所又は夜間等にあっては防汚性が発揮できないという短所がある。
また、初期段階では汚れ防止効果は発揮するものの、長期的には触媒機能の低下により汚染成分の分解効果が低下し、汚染防止能は通常のタイルと大差のないものとなってしまう。
そして、特許文献1及び特許文献2に提案の皮膜は、本願発明と同様にいずれもシリカを含み親水性及び耐汚染性という特性を有するものではあるが、水分子の吸着性能が低いことから汚れ防止特性が十分なものではなかった。
特に外壁の施工時にタイルの目地あるいはタイルとサッシの間等にシリコーン系シーリングが使用された際に該シーリング材下部にシリコーン系シーリング材溶出物に由来して発生する雨スジ汚れの防止には不充分なものであった。
本発明者も、これら課題に関し従来から取り組んでおり、その結果開発に成功したのが本発明の親水性の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体である。
したがって、本発明は、この課題を解消することができる、微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体及び該防汚層形成用塗布剤、並びに該構造体を製造する方法を提供することを解決すべき課題とするものである。
すなわち、本発明に係る微細多孔防汚層には、触媒作用を利用する酸化チタン系の超親水性皮膜を形成するものではないから、それを利用することによって生ずる短所の発生もない。
また、本発明に係る防汚層は、特許文献1及び特許文献2に記載の塗膜と同様にシリカを利用するものではあるが、その防汚層の微細構造はそれら公報に記載のものとは異なっており、その結果、両公報に記載の塗膜と比較すると、シリコーン系シーリング材溶出物に由来して発生する雨スジ汚れの防止機能も充分に満足できるものとなっている。
以上のとおりであるから、本発明はこれらの特性を有する微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体を提供することを解決課題、すなわち発明の目的とするものである。
本発明は、前記課題を解決するために親水性の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体及び該防汚層形成用塗布剤、並びに該構造体を製造する方法を提供するものであり、その構造体は、表面がシリカ微粒子の突き出た微細粗面となっていて、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、シリカ微粒子を珪酸質バインダーで結合した親水性の微細多孔防汚層を基体外面に有するものである。
また、その防汚層形成用の塗布剤は、シリカ及び結合用珪酸質物質を含有し、かつSiO2/アルカリのモル比を18〜93とせしめたものであり、好ましくはアルミニウム化合物を含有するのがよい。
さらに、その構造体を製造する方法は、焼成した陶磁器質基体表面にシリカ及び結合用珪酸質物質を含有する液粒を塗付し、ついで300〜700℃で熱処理することにより結合用珪酸質物質珪酸質を珪酸質バインダーとせしめ、これによりシリカ微粒子を結合した微細粗面を有し、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、親水性の微細多孔防汚層を基体外面に持つものとするものである。
そして、本発明では、このような構造の親水性の微細多孔防汚層を基体外面に形成するものであるから、夜間等に触媒機能を発現することができず、かつ長期機能維持性に欠ける酸化チタン系の成分を使用することもなく、また先行の公報に提案されているシリカを利用する塗膜と比較すると、シリコーン系シーリング材溶出物に由来して発生する雨スジ汚れの防止機能においても充分に満足できる優れた機能を発現するものとなっている。
また、その防汚層は、透明で、目視的には平滑なものとなっており、そのため、素材すなわち基体外面をそのままの状態で観察することができ、その結果、基体が元来有する色彩、模様あるいは装飾形状等をそのまま生かすことができる意匠的にもすぐれたものとなっている。
本発明では、前記したとおりの構造の親水性の微細多孔防汚層を基体外面に形成するものであるから、触媒機能を利用する酸化チタン系の超親水性皮膜の場合のように、夜間等に防汚機能が発揮できないということもないし、また長期間経過後における触媒機能の低下に伴う汚染防止機能の低下もない。
さらに、前記した先行の特許公報に提案されているシリカを利用する塗膜の場合と比較すると、シリコーン系シーリング材溶出物に由来して発生する雨スジ汚れの防止機能において充分に満足できる優れた機能を発現するものとなっている。
以上のとおりであるから、本発明の親水性の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体は、卓越した効果を奏するものである。
以下に、本発明の親水性の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体について、電子顕微鏡で撮影した写真である図1及び2のタイルを参考にしながら、発明を実施するための最良の形態を含む本願発明の実施の態様に関し、具体的に説明するが、本発明は、この写真の構造及び発明を実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもないことである。
本発明の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体は、タイルあるいはガラス等の基体外面にコロイダルシリカ等のシリカ微粒子がそれぞれ独立した状態で存在し、その微粒子が珪酸質バインダーを結合材として結合されたものである。
それらのことは、図1に示す前記構造体の表面を撮影した電子顕微鏡写真からわかる。
また、その微細多孔防汚層の表面は図1に図示するようにシリカ微粒子がはっきりと認識できるように浮き出た状態で基体外面に珪酸質バインダーにより結合されており、かつその表面は粗面化されている。
その粗面の粗さは、極めて微小ではあるが、原子力間顕微鏡(以下、AMFと略称する)によって測定することが可能であり、その測定結果によれば、平均粗さで2〜100nmがよく、特には20〜30nmが好ましい。
なお、AMFによる表面粗さの測定は、既知であり、その概略を示すと以下のとおりである。
そのAMFは、試料と探針の間に働く微小な力(原子間力)を検出することによって、試料表面の形状を観察するものである。
その探針はカンチレバー(片持ち梁)と呼ばれる柔らかくて小さな腕の先端に形成されており、試料表面に近づけられた探針に働く原子間力は、カンチレバー変位に置き換えられて検出されることになる。
カンチレバーの上面に焦点を結んだレーザー光の反射光はミラーを経てフォトディテクターへ入射する。
そのフォトディテクターは2分割又は4分割されており、カンチレバーの変位(たわみ)により変化する反射光の角度を、各ディテクターの入射光の相対値として検出する。
典型的な値としてカンチレバーは長さが200μm、厚さが0.1μmであり、その先端の探針は長さが3μm、曲率半径が20nmである。
試料と探針の距離は数nm以下であり、検出される原子間力は、nN(ナノニュートン)以下という小さな力である。
試料は、圧電素子を用いたスキャナにより0.1nm以下の精度で三次元方向に走査・制御される。
一般にAMFでは、カンチレバーの変位を一定に保つように試料位置のフィードバック制御をしながら、試料表面上(X,Y軸)の微細な形状をトレースしていく。 その走査に対応して、Z軸のフィードバック量を計算機に取り込んで処理することにより、試料表面の凹凸像(AFM観察像)を得るものである。
このようにして観察し、表面粗さを算出することができる。
前記したシリカ微粒子を結合するところの結合用珪酸質物質としては、水ガラスが好適なものであり、それは大気中に放置した際には潮解性を呈することが特徴となっているが、本発明における珪酸質バインダーは大気中に長時間放置してもその特性が消失したものとなっている。
すなわち、珪酸質バインダーは水ガラスが元来有する特性である潮解性を消失しており、水ガラスは熱処理によって他の化学構造のものに変質したものとなっている。
このように、本発明においては、結合材である珪酸質バインダーが熱処理により再度もとの状態に復元することのない状態、換言すれば不可逆的な状態に変化していることが重要であり、このことによって、タイルとして優れた雨スジ汚れの防止機能を発現しているものと考えられる。
すなわち、300℃未満の温度での熱処理温度では、結合用珪酸質物質は大気中に長期間放置すると次第に水和潮解する性質を再現しており、かつ雨スジ汚れの防止機能も不充分なものとなっているのに対し、300℃以上で熱処理した場合には水和潮解力が再度発現することもなく、かつ優れた雨スジ汚れの防止機能も発現していることから、前記のように推測できる。
また、その防汚層の外観は、透明で、目視的には平滑なものとなっており、そのため、素材すなわち基体外面をそのままの状態で観察することができる。
その結果、基体が元来有する色彩、模様あるいは装飾形状等をそのまま生かすことができ、意匠的にもすぐれたものとすることがでる。
例えば、この防汚層を窓ガラスに形成した場合には、雨スジ汚れが防止されると同時に視覚に悪影響を与えることもないし、タイルに形成した場合には、同様に雨スジ汚れが防止されると同時に表面の装飾性を損なうことがない。
そして、その微細多孔防汚層の切断面を斜め上方からみると図2のようになっており、その厚さが観察できる。
すなわち、図2の下側にはつぶつぶが存在しない平面的な領域があり、それがタイルの切断面である。その平面的な領域の上には2種のつぶつぶの形態の領域が観察され、そのうちの中央側の領域が微細多孔防汚層の切断面に該当し、その上のつぶつぶの領域が微細粗面であることがわかる。
その図2は、150,000倍の電子顕微鏡写真であるが、前記のような微細多孔防汚層の切断面の構造は50,000倍以上の倍率の電子顕微鏡写真により観察することが可能である。
また、その写真中には長さが表示されているから防汚層の厚さも把握できる。
その観察結果によれば微細多孔防汚層の厚さは1000nm以下がよく、特に20〜500nmが好ましく、その中でも50〜200nmが好ましい。
また、この図から、結合されたシリカ微粒子間に暗部となっている隙間が存在し、その隙間が表面から内部に連通する屈曲した微細孔を形成しており、その微細孔の孔径は0.1〜500nmが好ましく、特に0.1〜200nmが好ましい。
この図2のように大きく拡大した顕微鏡観察により本発明が奏する卓越した新規な作用効果を発現するところの新規な構造がはじめて観察することができた。
前記微細多孔防汚層中には、シリカ及び珪酸質バインダーに加えてアルミニウム化合物が含有されていることが望ましく、その含有量は、0.01〜10重量%がよく、特には0.1〜5重量%が好ましい。
その理由は水ガラス使用に伴う耐水性の低下を改善させることができるからであり、0.01未満ではその効果を充分に発揮することができず、10重量%を越えると密着性が低下するため前記範囲がよい。
本発明の微細多孔防汚層形成用の塗布液中のシリカについては、特段制限されることはなく、コロイダルシリカ、マイクロシリカあるいはシリカ系アルコキシドの各種シリカ化合物が使用可能ではあるが、扱い易さの点でコロイダルシリカが好ましい。
このシリカ微粒子の微細多孔防汚層中における含有量は、60重量%以上99重量%以下であることが好ましく、特には85〜98重量%が好ましい。
また、その粒径は50nm以下が好ましく、特には10〜30nmが好ましい。
また、結合用珪酸質物質についても、含水珪酸塩物質であって結合機能を有するものであれば使用可能であり、特段制限されることはなく、Na系水ガラスあるいはK系水ガラス等の各種水ガラスが使用可能ではあるが、コストの点でNa系水ガラスが好ましい。
そのシリカ微粒子の微細多孔防汚層中における含有量は、0.1〜30重量%であることが好ましく、特には1〜10重量%が好ましい。
本発明では微細多孔防汚層形成用の塗布液には、前記以外にアルミニウム成分を添加することが好ましい。
このアルミニウム成分の添加は水ガラス使用に伴う耐水性の低下を改善させることができる。
そのためのアルミニウム成分としては、具体的にはアルミナ、ケイ酸アルミ、水溶性アルミニウム化合物がよく、それらを単独あるいは2種以上を混合して使用することが可能である。
本発明の微細多孔防汚層を形成する基体については、シリカ微粒子と結合用珪酸質物質を塗付した後に熱処理する際の温度である300℃以上の温度において安定した状態で存在できるものであれば特に除外されることはなく、それにはタイル等の陶磁器、ガラス、ホーロー、珪酸カルシウム、石膏等のセラミックス、金属、高温で安定な特殊な合成樹脂等が例示できるが、陶磁器中でもタイルが特に好ましい。
具体的な基体の構造物としては、タイル、便器、浴槽、ユニットバスの壁、洗面台、カーテンウォール、アルミサッシ、水栓金具、建築用ボード、鏡、レンズ、窓ガラス等の各種ガラス製品があり、タイルについては、施釉、無施釉のいずれであってもよい。
それら基体については、外面にガラス層を有しているのが好ましい。その理由は該ガラス層の存在より、微細多孔防汚層と基体外面との結合力が向上し、その結果微細多孔防汚層が基体から剥離し難くなるからである。
なお、ここにおけるガラス層とは、タイルであれば釉薬層をいい、ホーローであれば金属基材表面の被覆層である釉薬層をいい、ガラス製品であれば、ガラスそのものをいう。
つぎに、本発明の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体の製造方法について説明する。
陶磁器質等の基体表面にシリカ及び結合用珪酸質物質を含有する微細液粒を均一に塗付し、更に300〜700℃、好ましくは500〜700℃で焼成することにより、結合用珪酸質物質を水和しても潮解性を示さない、すなわち非可逆性の珪酸質バインダーとせしめ、これによりシリカ微粒子を結合した微細粗面を有し、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、親水性の微細多孔防汚層を基体外面に形成するものである。
本発明において、陶磁器質等の基体表面に塗付するところ塗布液は、コロイダルシリカ50〜99重量%及び結合用珪酸質物質0.1〜30重量%の範囲で含有すればよいが、その組成は以下のものが好ましい。
コロイダルシリカ 60〜99重量%
結合用珪酸質物質 0.1〜30重量%
アルミニウム成分 0.01〜10重量%
また、その組成ついては、以下のものが特に好ましい。
コロイダルシリカ 85〜98重量%
結合用珪酸質物質 1〜10重量%
アルミニウム成分 0.1〜5重量%
さらに、この塗布液については、SiO2/アルカリのモル比が18〜93であるのがよく、特には、40〜80が好ましい。その理由は、93を越えると密着性が低下するからであり、反対に18未満になると防汚性能が低下するからである。
本発明の微細多孔防汚層形成用の塗布液の塗布手段については、特に制限されることなく、各種塗布手段が採用できる。
具体的には、はけ塗り、幕掛け、ディッピング、スプレー塗布あるいはミスト塗布等を用いることができる。
特に塗布手段として、ミスト塗布を用いた場合には、塗布液を1〜1000nmの範囲の微細な液粒に形成することができるので、塗布液を基体外面に対して均一で薄く塗布することが可能となり好ましい。
具体的には、噴霧ノズルから噴射した液粒を被衝突物に衝突させてミストを発生させる装置あるいは超音波によるミスト発生装置等が使用可能であり、それらが好ましい。
特に好ましいのは、ミストを粒径選別手段に通し更に所定の粒径範囲に選別するものがよく、その選別手段としては、例えば特願2000−17719号に記載されているような噴霧ノズル等から放出された微小液粒を下降流路、重力に逆行する上昇流路及び下降流路を順次通過させることにより、粒径を選別し所定粒径範囲のものが被覆対象物である基体表面に到達するようにするものがあり、それが特に好ましい。
微細液粒塗付後の熱処理は、300〜700℃で行うことになるが、この熱処理により、結合用珪酸質物質は水和しても潮解することができないものに変化せしめることが重要である。
この変質により珪酸質バインダーを形成し、シリカ微粒子を基体外面に結合する。
その結果、結合したシリカ微粒子は、微細粗面を有し、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、親水性の微細多孔防汚層を基体外面に形成する。
その際の加熱温度を前記のとおりとしたのは、300℃未満であると、結合用珪酸質物質は水和しても潮解することがないものへの変質が充分でなく、結合用珪酸質物質の性質が残存し親水性の微細多孔防汚層としての本来の機能が十分なものとならない。
また逆に700℃を超えると微細多孔防汚層中のガラス成分が融解し、該層の吸湿性が低下し防汚性能を低下させることになるからである。
ついで、本発明の微細多孔防汚層を基体外面に持つ構造体を製造する実施例を示すが、本発明は、この実施例に何等限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて把握されるものであることは勿論である。
この実施例では、微細多孔防汚層を有するタイルを製造した。
その製造方法は以下のとおりである。
下記組成の微細液粒形成用の塗付液を調製し、これを施釉タイルに塗付した。
コロイダルシリカ 97.8重量%
水ガラス(無水ベース換算) 2.0重量%
アルミナ 0.2重量%
SiO2/アルカリのモル比 55
使用した施釉タイルのサイズは45×95×6mmであり、このタイルへの前記塗付液の塗付は、前記塗付液を噴霧ノズルから対面する衝突板に向けて噴射して、微細液粒、すなわちミストを発生させ、それを下降流路、重力に逆行する上昇流路および下降流路を順次通過させ、最後の下降流路の下にベルトコンベア−により移動するタイルを通過させることにより行った。
得られた微小液粒が塗布されたタイルをコンベア−搬送式連続焼成炉で加熱処理した。 その焼成炉通過に要した時間は15分であり、その間における最高温度は600℃であった。
焼成後に得れらたタイル外面に形成された微細多孔防汚層の構造は図1及び2の電子顕微鏡写真に示すとおりである。
図1は、微細多孔防汚層の表面構造、図2はその断面構造を示すものである。
これら電子顕微鏡写真から、本発明の構造体に形成される微細多孔防汚層の構造に関し、前記したとおりの基体外面にシリカ微粒子の突き出た微細粗面と、表面から内部に連通する屈曲した多数の微細孔とを有するものであることが確認できる。
図2の電子顕微鏡写真は、150,000倍であるが、50,000倍の電子顕微鏡写真によっても、実施例のタイルの表面に形成された微細多孔防汚層の前記した構造は確認できた。
さらに、微細多孔防汚層が透明であることは目視によって確認した。
また、その微細多孔防汚層の構造を具体的に測定したところ以下のとおりである。
孔径・・・12〜42nm
厚さ・・・120nm
表面の平均粗さ・・・25nm
このようにして製造した微細多孔防汚層を有するタイルについて防汚性能評価試験を行った。
[防汚性能評価試験]
本発明で採用した防汚性能評価試験は以下のとおりである。
すなわち、45×95×6mmのタイル12枚を約5mmの目地間隔でフレキシボードに張り付け、目地部には、シリコーン系のシーリング材を施し、これを屋外で暴露試験した。
なお、このようにしたのは、本発明者らはタイルの施工に本来使用されるセメント系の目地ではタイルには殆ど汚れが発生しないことを既に確認しており、そのためにシリコーン系のシーリング材を目地に用いて、そのボードを雨水に晒すことにより、タイル表面の汚染を促進することができるからである。
また、同時に本発明の微細多孔防汚層がシリコーン系シーリング材溶出物に由来する雨スジ汚れに対する防止機能が優れてることを示すためでもある。
また、その試験の際には、タイル表面に雨水が流れるように工夫した。それに加えて紫外線による影響を極力回避するために、太陽光線が当たらず、雨水だけがタイル表面にかかるように屋根を取り付けると共に周囲を囲んで工夫した試料についても評価した。
さらに、比較のために前記微細多孔防汚層を備えないタイル(比較例1)及び従来技術に属するところの親水性塗布層を備えたタイル(比較例2)についても同様の評価試験を実施した。
それらの試験結果は表1に示した。
この試験結果によれば、本発明の微細多孔防汚層を備えたタイルは、日当たり良好及び高紫外線照射量の場合にも、また日当たり不良及び低紫外線照射量の場合にも、いずれもシリコーン系シーリング材溶出物に由来する雨スジ汚れに対する防止機能が良好であることがわかる。
それに対して微細多孔防汚層を備えないタイル及び従来技術に属するところの親水性塗布層を備えたタイルは、いずれの場合にも不良でありことが明らかである。
その性能の差異は小さなものではなく、大きなものである。
さらに、本発明の微細多孔防汚層を備えたタイルとの構造比較のために、前記従来技術
に属する親水性塗布層を形成したタイルについても電子顕微鏡による観察を実施し、撮影した写真は図3に図示した。
その結果によれば、従来技術に属する製法にしたがって形成した塗布層には、その表面にシリカ微粒子の突き出た微細粗面もなく、また表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有するという構造も存在しないことが判明した。
なお、その試験に使用した、従来技術に属するシリカを含有する親水性塗布膜が形成されたタイルの具体的製造方法は特開平10−330646号公報に記載の実施例5に準じたものであり、具体的には以下のとおりである。
すなわち、可溶性珪酸カリウムと水性シリカゾルとをSiO2/K2Oのモル比5.5の膠質透明液を調製し、この固形分100重量部に対してアルカリ・アルキル・シリコネート17.9重量部を添加、加熱攪拌し、攪拌終了後水を加えて室温まで降温し固形分30%の無機質バインダー組成物を形成した。
さらに、この組成物100重量部に対して、緑色無機顔料67重量部、無機質充填剤17重量部および水22重量部を加え、ボールミル中で混合分散して塗布膜形成液を調製した。
ついで、この形成液を実施例と同じタイルに塗布して比較用のタイルを製造した。
Figure 2004174498
実施例で得たタイル外面に形成された微細多孔防汚層の表面を電子顕微鏡で観察撮影した写真である。 実施例で得たタイル外面に形成された微細多孔防汚層の切断面を電子顕微鏡で観察撮影した写真である。 従来技術に属するところのタイル外面に形成された、シリカを含有する親水性塗布膜の切断面を電子顕微鏡で観察撮影した写真である。

Claims (11)

  1. 表面がシリカ微粒子の突き出た微細粗面となっていて、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、シリカ微粒子を珪酸質バインダーで結合した親水性の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
  2. 前記微細多孔防汚層の破断面を電子顕微鏡において50,000倍以上で観察することにより、シリカ微粒子形状が観察可能である請求項1記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
  3. 前記微細孔の孔径が1000nm以下である請求項1又は2記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
  4. 前記微細多孔防汚層の厚さが20〜500nmである請求項1、2又は3記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
  5. 前記微細粗面の凹凸の平均粗さが2〜100nmである請求項1ないし4のいずれか1に記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
  6. 前記微細多孔防汚層が更にアルミニウム化合物を含有するものである請求項1ないし5のいずれか1に記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
  7. 前記微細多孔防汚層中のシリカ含有量が50〜99質量%である請求項1ないし6のいずれか1に記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
  8. 前記微細多孔防汚層が透明である請求項1ないし7のいずれか1に記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体。
  9. シリカ及び結合用珪酸質物質を含有し、かつSiO2/アルカリのモル比を18〜93とせしめた親水性の微細多孔防汚層形成用の塗布液。
  10. 陶磁器等の基体外面にシリカ及び結合用珪酸質物質を含有する塗布液を塗付し、ついで300〜700℃で熱処理することにより結合用珪酸質物質を珪酸質バインダーとせしめ、これによりシリカ微粒子を結合した微細粗面を有し、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、親水性の微細多孔防汚層を基体外面に持つ構造体を製造する方法。
  11. 前記塗布液がミストである請求項10記載の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体を製造する方法。
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