JP2004172909A - 携帯通信機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】積層軟磁性シートを装着した携帯電話機等の携帯通信機器における電磁波の放射効率をより向上させることを目的とする。
【解決手段】絶縁層11と軟磁性金属層12とが交互に積層された第1積層体に、さらに導電層14と絶縁層15とからなる第2積層体13とを積層してシート状部材20を得る。導電層14が形成された側が使用時にユーザ側に配置されるように携帯電話機内に配設することにより、電磁波の放射効率向上効果がより期待できる。導電層14としては、Ni、Cu、Co等、50μΩcm以下の電気抵抗率の小さな金属を用いることができる。
【選択図】 図4
【解決手段】絶縁層11と軟磁性金属層12とが交互に積層された第1積層体に、さらに導電層14と絶縁層15とからなる第2積層体13とを積層してシート状部材20を得る。導電層14が形成された側が使用時にユーザ側に配置されるように携帯電話機内に配設することにより、電磁波の放射効率向上効果がより期待できる。導電層14としては、Ni、Cu、Co等、50μΩcm以下の電気抵抗率の小さな金属を用いることができる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁波の放射効率を向上させた携帯電話機等の携帯通信機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話機は、年々小型・軽量化されてきており、携帯電話機使用時にそのアンテナの位置は人体、具体的には頭部の極めて近い位置に配置されることになる。このときアンテナの特性は人体の影響を受け、アンテナ性能が低下する傾向にある。つまり、アンテナから放射される電磁波の一部が人体に吸収されることに起因する電力損失が、受信感度の低減、電池の寿命低減を招く。
一方で、人体による電磁波の吸収量が増加し、人体への影響が懸念されている。したがって、日本を含め各国で局所吸収指針が定められている。各国が局所吸収指針において定める局所吸収の評価量として、以下の式で定義されるSAR(Specific Absorption Rate:局所吸収量)が用いられている。
SAR=σE2/2ρ
(E:人体に侵入した電界,σ:人体組織の誘電率、ρ:人体組織の密度)
そのため、携帯電話機から放射された電磁波の実効的な利用率、つまり放射効率を向上しつつSARを低減する方法として、低損失磁性板をアンテナ近傍に配置する方法が提案されている。ところが、磁性微粉と樹脂からなる複合材料を用いた磁性板を使用する方法では、板厚を5mmとしても放射効率改善効果が0.6dBと小さい。携帯電話機の小型、軽量化に対応するため、板厚を0.2mm以下、さらには0.1mm以下にすることが望ましい。したがって、低損失磁性板を携帯電話機へ適用することは困難である。
携帯電話機における他の課題として電磁波障害(EMI:Electromagnetic Interference)が増加している。1GHzを超える高周波領域でのノイズ吸収特性の優れた材料として、軟磁性金属粉末を樹脂、ゴム中に分散させた複合軟磁性部材が提案されている。例えば、扁平状のFe−Si系軟磁性合金粉末をゴム、樹脂中に配向・配列した複合磁性材料(特開平9−35927号公報、「工業材料」1998年10月号 第31頁〜第35頁、第36頁〜第40頁等)が提案されている。
携帯電話機における放射効率向上およびSAR対策部材として、上記の複合軟磁性部材を携帯電話機の筐体内部または外部に貼り付けることができる。ところが、前述した複合軟磁性部材は、例えば、800MHz〜3GHzといった高周波数帯域における透磁率が低いため、厚さを0.2mm以下にしたのでは、所望の特性を得ることが困難である。
【0003】
以上の問題点を解消した材料が、電子情報通信学会技術研究報告、信学技報Vol.101 No.274 2001年8月28日発行 第19頁〜第24頁「軟磁性金属薄膜を配置した携帯電話の放射効率に関する実験的検討」に開示されている。この材料は、厚さ12μmのPETフィルムの上に金属Niを0.1μmスパッタした下地に0.5μmの80Ni−20Fe軟磁性金属をメッキしたシートを複数枚積層したものである。この従来の積層軟磁性シートを用いることにより、ファントムと逆の方向約180度の範囲で放射レベルが大きく改善され、最大2.2dB向上することが報告されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−35927号公報(第1頁、図1)
【非特許文献1】
「工業材料」1998年10月号 第31頁〜第35頁、第36頁〜第40頁
【非特許文献2】
電子情報通信学会技術研究報告、信学技報Vol.101 No.274 2001年8月28日発行 第19頁〜第24頁「軟磁性金属薄膜を配置した携帯電話の放射効率に関する実験的検討」
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、積層軟磁性シートを装着した携帯電話機等の携帯通信機器における電磁波の放射効率をより向上させることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は積層軟磁性シートを用いて電磁波の放射効率(以下、単に放射効率と言うことがある)を向上させることについて検討した。その結果、積層軟磁性シートに対して所定の導電層を形成し、かつ、この導電層が形成された側の面を携帯電話機の操作面側に向けて配設することにより、積層軟磁性シートを単体で携帯電話機に配設した場合に比べて放射効率がより改善できることを究明した。
本発明は使用時にユーザに対向する第1の面と前記第1の面に対向する第2の面とを有する機器本体と、前記機器本体の前記第1の面と前記第2の面との間に配設される軟磁性層を含むシート状部材と、を備え、前記シート状部材は、第1積層体と、前記第1積層体に接する第2積層体とを備え、前記第1積層体は、絶縁層と、前記絶縁層上に形成された下地金属層と、前記下地金属層上に形成された軟磁性金属層とが積層され、前記第2積層体は、導電層と、前記導電層上に形成される絶縁層とが積層され、前記第2積層体が前記第1積層体と前記機器本体の前記第1の面との間に配置されるように前記シート状部材を配設したことを特徴とする携帯通信機器である。
第1積層体と第2積層体とは、携帯通信機器に配設される前に一体として積層されていてもよいし、別体として用意され、携帯通信機器に配設される際に積層されてもよい。
【0007】
本発明の携帯通信機器において、前記第2積層体における前記導電層は、電気抵抗率が50μΩcm以下の金属から構成することが望ましい。
また本発明の携帯通信機器は、前記シート状部材の総厚さが0.2mm以下、前記第1積層体における前記軟磁性金属層の厚さが0.8μm未満、前記絶縁層の厚さが25μm以下、前記第2積層体における導電層の厚さが0.5μm以下、前記絶縁層の厚さが25μm以下とすることが望ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施の形態におけるシート状部材の基本的な製造工程は以下の通りである。すなわち、軟磁性シートを作成し、この軟磁性シートを複数積層して第1積層体を得る。次いで、第1積層体と、別途作成された第2積層体とを積層してシート状部材を得る。そこで以下の説明では、軟磁性シートの構成・製造方法、第1積層体の構成、第2積層体の構成、シート状部材の構成、第1積層体の製造方法、第2積層体の製造方法、第1積層体との積層および携帯電話機への配設の順に本実施の形態の説明を行なっていく。
<軟磁性シートの構成・製造方法>
図1および図2は、本発明のシート状部材を構成する軟磁性シートの例を示す部分断面図である。
図1に示す軟磁性シート1は、樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2上に形成された下地金属層3と、下地金属層3上に形成された軟磁性金属層4とから構成される。
樹脂フィルム2は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂を用いることができる。その中で、後述するように積層軟磁性部材の製造過程で熱処理を施す場合には、耐熱性を有する樹脂材料を用いることが望ましい。
【0009】
軟磁性金属層4は、磁性を示す遷移金属元素のいずれか、あるいは遷移金属元素と他の金属元素とからなる合金により構成することができる。具体的な例としては、Fe、CoおよびNiの1種または2種以上を主成分とする合金であり、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Co−Ni系合金が該当する。これらのなかで、飽和磁束密度が1.0T、さらには1.5T以上の合金が望ましい。特にこの中で、Fe含有量が20〜80wt%(望ましくは30〜70wt%、さらに望ましくは40〜65wt%)のFe−Ni合金、Fe−Co合金およびCo−Ni−Fe合金が望ましい。この組成系の合金は、飽和磁化が大きく、異方性制御により異方性磁界を増大させて、共鳴周波数を高周波側へシフトさせるのに有利である。これら合金に15at%以下のNb,Mo,Ta,W,Zr,Mn,Ti,Cr,Cu,Coの1種以上を含有することができる。また、軟磁性金属層4をめっきで形成する場合にはCおよびS等の元素を不可避的に含むが、本発明の軟磁性金属層4は、そのような元素の含有を許容する。
【0010】
軟磁性金属層4は、結晶質合金および非晶質合金のいずれの態様であっても構わない。非晶質合金としては、Co系およびFe系の非晶質合金を用いることができる。また、Fe系の微結晶合金を用いることも本発明は許容する。微結晶合金は、一般的に、結晶粒径が10nm程度の微細な結晶が主体をなす合金として知られている。
軟磁性金属層4は、めっき(電解または無電解)、真空蒸着法、スパッタリング法等の各種の膜形成プロセスによって作成することができる。これらの膜形成プロセスは、単独で行なうことができる。したがって、めっきのみで軟磁性金属層4を形成することもできるし、蒸着のみで軟磁性金属層4を形成することもできる。もちろん、複数の膜形成プロセスを組み合わせることもできる。めっきは、真空蒸着法、スパッタリング法に比べて低温で膜を形成することができる点で本発明にとって好適である。本発明において、軟磁性金属層4は樹脂フィルム2上に形成するため、樹脂フィルム2に熱的な影響を与えないことが望ましいからである。また、めっきは、真空蒸着法、スパッタリング法に比べて、所定の厚さの膜を短時間で得ることができるメリットがある。なお、めっきにより軟磁性金属層4を得る場合、めっき浴中に含まれているS等の元素が軟磁性金属層4に混入することから、他のプロセスによる軟磁性金属層4との区別ができる。
【0011】
下地金属層3は、軟磁性金属層4を電解めっきによって樹脂フィルム2上に形成する場合に必要となる導電層としての役割を果たす。下地金属層3は、例えば、真空蒸着法によって形成することができる。また、無電解めっきにより下地金属層3を形成した後に、電解めっきにより軟磁性金属層4を形成することもできる。電解めっき以外の方法で軟磁性金属層4を形成する場合には、下地金属層3を省略することもできる。つまり、下地金属層3は本発明において選択的な要素である。もっとも、下地金属層3に軟磁性金属を用いる場合には、下地金属層3が軟磁性金属層4の一部を構成することになる。
【0012】
下地金属層3として、軟磁性金属層4よりも保磁力が大きい材質を選択することが望ましい。そうすることにより、軟磁性金属層4の異方性磁界を増大させて、GHz帯域の強磁性共鳴周波数を大きくできる。その結果、2GHz付近のμ’(複素透磁率の実数部分)を増大させ、同時にμ”(複素透磁率の虚数部分)を低減することができる。携帯通信機器が使用する周波数帯域では、μ’が大きくμ”が小さいほど電磁波の放射効率改善効果が大きい。なお、下地金属層3と同様の材質からなる層を、軟磁性金属層4上に形成してもGHz帯域の透磁率改善効果が望める。
【0013】
次に、軟磁性シート1において、樹脂フィルム2の厚さは、50μm以下とする。樹脂フィルム2は、軟磁性シート1を積層した際に軟磁性金属層4同士を絶縁する機能を果たす。しかし、この絶縁層が厚くなると軟磁性金属層4同士の磁気的な結合を弱め、ひいては積層軟磁性部材としての透磁率が低下するため50μm以下とする。望ましい樹脂フィルム2の厚さは25μm以下、さらに望ましい樹脂フィルム2の厚さは10μm以下である。もっとも、極端に薄い樹脂フィルム2は製造が困難であるとともに、軟磁性金属層4を形成するための所定の強度を持つことができなくなる。したがって、0.2μmあるいは、2μm以上の厚さとすることが推奨される。
【0014】
軟磁性金属層4は、1μm以下の厚さとすることが望ましい。これを超える厚さでは、本発明が対象とする800MHzを超える高周波数帯域での渦電流損失が大きくなり、磁性体としての機能が減じてしまうからである。したがって、軟磁性金属層4の厚さは、0.5μm以下とすることがさらに望ましい。軟磁性金属層4は、緻密に形成されているのが望ましいため、各種プロセスによって緻密な膜を形成することができる程度の最低限の膜厚を有していることが必要である。なお、軟磁性金属層4の表面に酸化膜が形成されていてもよい。
【0015】
下地金属層3は、電解めっき時の導電層として機能することを考慮すると、数10nm程度の厚さを有していれば足りる。なお、下地金属層3の表面、つまり下地金属層3と軟磁性金属層4との間には酸化膜が存在していてもよい。電気抵抗の大きな酸化膜が介在することで、下地金属層3と軟磁性金属層4との間の磁気的結合はやや弱くなるが、膜断面方向の電気抵抗が増大して渦電流を低減する効果がある。酸化膜の厚さが厚すぎるとめっきが難しくなるので、その厚さを40nm以下、望ましくは20nm以下、さらに望ましくは10nm以下とする。この酸化膜は、下地金属層3を形成した後に大気に晒すことにより形成することができる。軟磁性金属層4の表面に形成される酸化膜も同様である。
【0016】
図2に示す軟磁性シート5は軟磁性金属層8a,8bが樹脂フィルム6の表裏両側に形成されている点で図1に示した軟磁性シート1と相違する。つまり、軟磁性シート5は、樹脂フィルム6と、樹脂フィルム6の表裏両面に形成された下地金属層7a,7bと、下地金属層7a,7b上に形成された軟磁性金属層8a,8bとから構成される。樹脂フィルム6、下地金属層7a,7bおよび軟磁性金属層8a,8bの材質、寸法および作成プロセスは、図1に基づいて説明した軟磁性シート1と同様にすればよい。
【0017】
以上では、絶縁層として樹脂フィルム2,6を用いた例を示したが、本発明は樹脂フィルム2,6の代わりに下地金属層3,7a,7bに熱融着された樹脂層(熱融着層)を用いることができる。この熱融着層としては、例えば、ポリアミドを用いることができる。また、熱融着層を構成する樹脂は、静電塗装、塗布、スプレー、フィルムの貼り付け等種々の方法によって形成することができる。塗布、スプレーによって形成される熱融着層は、1.0μm以下、さらには0.5μm以下の極めて薄い膜とすることができる。ただし、あまり薄すぎると、熱融着層が形成されない部分が生じるおそれがあるため、0.1μm以上の厚さとすることが望ましい。
また、絶縁層として、熱圧着された樹脂層(熱圧着層)を用いることができる。熱圧着層を得るためには、例えば樹脂フィルム2としてPETフィルムを用い、軟磁性シート1を複数枚積層した後に所定温度、圧力で加熱・加圧処理を施すことにより得ることができる。
また、本発明の軟磁性シート1,5において、軟磁性金属層4,8a、8bの上に絶縁のための樹脂層をさらに形成することもできる。この樹脂層は、樹脂フィルム2,6を積層することにより形成することもできるし、熱融着層により形成することもできる。
【0018】
<第1積層体の構成>
図3は本実施の形態による第1積層体10の一例を示す断面図である。第1積層体10は、図1または図2に示した軟磁性シート1または5を複数枚積層した形態を有している。
図3に示すように、第1積層体10は、絶縁層11と軟磁性金属層12とが交互に積層された断面構造を有している。ここで、第1積層体10全体としての厚さは、0.2mm以下とすることが重要である。前述のように、携帯電話機に第1積層体10を含むシート状部材を貼り付ける場合には、携帯電話機のサイズに対応する必要があるからである。より望ましい厚さは、0.15mm以下、さらには0.1mm以下である。
【0019】
図1または図2で示した軟磁性シート1または5を積層することにより第1積層体10を得ることができる。
この場合、図3に示すように、軟磁性シート1,5の樹脂フィルム2,6が絶縁層11を構成することになる。また、軟磁性シート1,5における軟磁性金属層4,8a,8bが軟磁性金属層12を構成することになる。積層の仕方は、図5〜図8に基づいて後述する。なお、図3は、軟磁性シート1、5に形成していた下地金属層3,7a,7bの記載を省略している。
軟磁性シート1,5の樹脂フィルム2,6が絶縁層11を構成するので、絶縁層11の厚さは50μm以下となる。もっとも、軟磁性シート1,5を積層する場合に接着剤を層間に介在させると、絶縁層11が樹脂フィルム2,6の厚さより厚くなる場合がある。したがって、接着剤を用いる場合には、絶縁層11の厚さが50μm以下となるように樹脂フィルム2,6の厚さを定める必要がある。このとき、接着剤が樹脂で形成されていると、接着剤層も絶縁層11を構成することになる。なお、図3には示していないが、軟磁性金属層12が表面に露出しないように、最上層の軟磁性金属層12上に絶縁層11を配設することができる。以下の実施の形態、具体例においても同様である。
ここで、前述したように、樹脂フィルム2,6の代わりに熱融着層または熱圧着層を用いることができる。
また、第1積層体10の表面のいずれか一方に、粘着剤または両面粘着テープを設けることができる。携帯電話機等の機器に第1積層体10を含むシート状部材を貼り付ける際の便宜のためである。
【0020】
<第2積層体の構成、シート状部材の構成>
以上説明した第1積層体10の表面のいずれか一方に、導電層と、前記導電層上に形成される絶縁層11を積層することにより本発明によるシート状部材20が構成される。この形態によるシート状部材20を図4に示している。図4に示すように、絶縁層11と軟磁性金属層12とが交互に積層された第1積層体10に、さらに導電層14と絶縁層15とを積層する。導電層14と絶縁層15とで第2積層体13が構成される。そして、このシート状部材20を、導電層14が形成された側が使用時にユーザ側に配置されるように携帯電話機内に配設することにより、後述するように、電磁波の放射効率向上効果がより期待できる。なお、この導電層14としては、Ni、Cu、Co等、50μΩcm以下の電気抵抗率の小さな金属を用いることができる。また、導電層14は、0.1μm以下、望ましくは0.5μm以下の厚さとすることが望ましい。絶縁層15は50μm以下、望ましくは25μm以下の厚さとする。なお、図4では導電層14、絶縁層15を各々1層だけ設けた例を示したが、本発明はこれに限定されない。
なお、シート状部材20は、第1積層体10の最表面に絶縁層11が配設されることが外部との絶縁を図る上で望ましい。
【0021】
<第1積層体の製造方法>
以下、図5〜図8に基づいて、第1積層体10を得るのに好適な製造方法を説明する。なお、図5および図6は図1に示した軟磁性シート1を用いて第1積層体10を得る製造方法を、図7は図2に示した軟磁性シート5を用いて第1積層体10を得る製造方法を、また図8は絶縁層11として熱融着層を用いて第1積層体10を得る製造方法を示している。
図5において、はじめに樹脂フィルム2に、例えば、真空蒸着法により下地金属層3を形成する(図5(a))。
下地金属層3を形成した後、例えば電解めっきにより軟磁性金属層4を下地金属層3上に形成することによって、図1に示した軟磁性シート1を得ることができる(図5(b))。
軟磁性シート1を所定の枚数作成し、各軟磁性シート1の樹脂フィルム2と軟磁性金属層4とを対向させた状態で積層する(図5(c))ことにより、図3に示した第1積層体10を得ることができる。
【0022】
軟磁性シート1同士の接合は、軟磁性シート1間に例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の接着剤を配置して行なうことができる。接着剤の粘度は、1000cP以下、望ましくは300cP以下、さらに望ましくは200cP以下とする。溶剤を加えた接着剤を軟磁性シート1に塗布し、その後接着剤が粘着性を保持する程度まで溶剤を蒸発させ、しかる後に軟磁性シート1を積層する。軟磁性シート1を構成する樹脂フィルム2の静電気により、接着剤を用いることなく積層状態を維持することもできる。この場合、接合強度を向上するために、軟磁性シート1を積層後に、接着剤に浸漬して外周部のみを接着することもできる。
【0023】
第1積層体10を得た後に、応力緩和熱処理を行なうことにより、磁気特性の向上を図ることもできる。応力緩和熱処理は、例えば軟磁性シート1同士の接合に接着剤を用いた場合には、接着剤の乾燥のための加熱を兼ねて行なうこともできる。応力緩和熱処理を行なう場合には、樹脂フィルム2に耐熱性に優れたポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂を用いることが望ましい。
また、第1積層体10は、温間プレス加工によって、所望する形状に加工することもできる。さらに、切断を行なって、所望する寸法に加工することもできる。
【0024】
次に、図6について説明する。前述のように図6は、図1に示した軟磁性シート1を用いて第1積層体10を得る製造方法を示している。しかし、図5の製造方法とは異なり、帯状の軟磁性シート1をトロイダル状に巻回することにより軟磁性シート1を積層する。巻回体の部分断面図を図6に示しているが、図3で示した第1積層体10と同様の積層構造を有している。そして、この巻回体をそのまま第1積層体10として用いることもできるし、切断等適宜加工を施すことにより、扁平状の第1積層体10を得ることもできる。また、図6では、円形に巻回した例を示しているが、軟磁性シート1は可撓性を有しているため、楕円形、矩形等任意の断面形状の巻回体を容易に得ることができる。
以上のように、本発明において、軟磁性シート1を積層するとは、独立した軟磁性シート1を複数枚積層する場合に加えて、帯状の軟磁性シート1を巻回することによって積層要素を得る場合をも包含している。
【0025】
次に、図7に示す製造方法について説明する。図7は、図2に示した軟磁性シート5により第1積層体10を得るための方法を示している。
はじめに、樹脂フィルム6の表裏両面に下地金属層7a,7bを形成する(図7(a))。下地金属層7a,7bは、図5に示した製造方法と同様に、真空蒸着法を用いることができる。
表裏両面に下地金属層7a,7bを形成した後、例えば電解めっきにより、下地金属層7a,7b上に軟磁性金属層8a,8bを形成する(図7(b))。これで軟磁性シート5が得られる。この軟磁性シート5を複数枚積層することにより、第1積層体10を得ることができる。ただし、軟磁性シート5は、表裏両面に軟磁性金属層8a,8bが露出した構造をなしているので、そのままで積層することはできない。そこで、樹脂フィルム16を別途用意し、この樹脂フィルム16を介在させて軟磁性シート5を積層する(図7(c))ことにより、第1積層体10を得る。
【0026】
次に熱融着層を用いて第1積層体10を得る製造方法を図8に基づいて説明する。
図8において、はじめに樹脂フィルム2に、例えば、真空蒸着法により下地金属層3を形成する(図8(a))。下地金属層3を形成した後、例えば電解めっきにより軟磁性金属層4を下地金属層3上に形成する(図8(b))。ここまでの工程は、図5に示した製造方法と同様である。
次に、軟磁性金属層4上に熱融着のための樹脂層17を形成する(図8(c))。樹脂層17の形成は、塗布、スプレー等の種々の手法で行なうことができる。
樹脂層17を形成した後に、樹脂フィルム2を剥離、除去することにより、下地金属層3、軟磁性金属層4および樹脂層17とが積層された軟磁性シート9を得る(図8(d))。下地金属層3に対する樹脂フィルム2の密着強度よりも軟磁性金属層4に対する樹脂層17の密着強度のほうが高いため、樹脂フィルム2の剥離は比較的に容易に行なうことができる。
【0027】
軟磁性シート9を所定の枚数作成し、各軟磁性シート9の樹脂層17と下地金属層3とを対向させた状態で積層する(図8(e))ことにより、第1積層体10を得ることができる。
軟磁性シート9同士の接合は、樹脂層17を用いて行なうことができる。つまり、各軟磁性シート9の樹脂層17と軟磁性金属層4とを対向させた状態で積層した後に、所定の加熱処理を施して樹脂層17を溶融、硬化させることにより、隣接する軟磁性シート9同士の接合強度を確保することができる。また、図8では複数の軟磁性シート9を作成した後にそれらを積層する例を示したが、樹脂フィルム2の剥離および樹脂層17の形成を連続的に行い、かつシート体を巻回して巻回体を得ることももちろんできる。
なお、以上では樹脂層17を熱融着することによって軟磁性シート9を接合したが、軟磁性シート9を樹脂層17の熱圧着による接合を行なうことができる。例えば、樹脂層17としてPETを選択して150〜300℃程度の温度に加熱した状態で所定の圧力を付与することにより、熱圧着された樹脂層17によって軟磁性シート9同士を接合することができる。
【0028】
<第2積層体の製造方法、第1積層体との積層>
図4に示した導電層14と絶縁層15とからなる第2積層体13は、絶縁層15を構成する樹脂フィルムの表面に上記金属を蒸着等によって成膜することによって得ることができる。第1積層体10と第2積層体13との積層は、第1積層体10の製造方法で示した積層手法を用いることにより容易に行なうことができる。
【0029】
<携帯電話機への配設>
以上のようにして得られたシート状部材20は、携帯電話機内に配設することができる。なお、ここでは携帯通信機器として携帯電話機を例にするが、これはあくまで本発明の適用事例にすぎない。
シート状部材20を携帯電話機内に配設する様子を図9に模式的に示している。携帯電話機30は、フロント・カバー31とケース34とを備え、その間に必要に応じてホイップ・アンテナが取り付けられる回路基板32が配設される。ケース34内には内蔵アンテナ36が収容されており、シート状部材20は、内蔵アンテナ36とその一部が重なるように、回路基板32とケース34との間に配設される。なお、シート状部材20の固定は、前述したように粘着剤、両面粘着テープを用いて行なうことができる。このとき、シート状部材20は、フロント・カバー31と第2積層体13が対向し、ケース34と第1積層体10が対向するように配設される。したがって、第2積層体13がフロント・カバー31と第1積層体10との間に配置される。
【0030】
以下本発明をより具体的な例に基づいて説明する。
<具体例1>
具体例1として、本発明のシート状部材を構成する第1積層体の部分についての具体例をいくつか説明する。
(具体例1−1)
膜厚4μmのポリアミド樹脂フィルムを用意し、このポリアミド樹脂フィルム上(片面)に、真空蒸着法によりNi膜を形成した。Ni膜の厚さは50nmである。このNi膜は、軟磁性金属層を電解めっき法により形成するための下地金属層として機能するとともに、自身が磁性金属層としても機能する。
Niを蒸着した後に、以下に示すめっき液を用いてNi膜上に軟磁性合金である81wt%Ni−19wt%Fe合金(パーマロイ)膜を形成した。めっき液の条件は、浴温が35〜55℃、PHが2.0〜3.0である。そして、めっき膜厚が1μmになるまで、2A/dm2の電流密度で電解した。なお、めっき膜の欠陥防止およびめっき液の表面張力低減のために、界面活性剤を適宜添加した。
【0031】
【0032】
以上により、厚さ4μmのポリアミド樹脂フィルムからなる絶縁層と、ポリアミド樹脂フィルム上に形成されたNiからなる下地層と、下地層上に形成された81wt%Ni−19wt%Fe合金層とからなる軟磁性シートを得た。なお、下地層を構成するNiは保磁力が9480A/m(120エルステッド(Oe))、異方性磁界が20540A/m(260エルステッド)、磁歪が負であり、81wt%Ni−19wt%Fe合金層は保磁力が632A/m(8エルステッド)、異方性磁界が1580A/m(20エルステッド)、磁歪が正である。この軟磁性シートを打ち抜き加工することによりトロイダル形状の軟磁性シートを得、ポリアミド樹脂フィルムと81wt%Ni−19wt%Fe合金層とが対向するようにして積層した。軟磁性シートを20枚積層することにより、厚さが約0.1mmの第1積層体を得た。この第1積層体の複素透磁率を、横河ヒューレットパッカード(株)製のインピーダンスマテリアルアナライザー4291ARFで測定した。その結果を図10に示す。なお、図10中、μ’は複素透磁率の実数部分、μ”は複素透磁率の虚数部分を示している。
【0033】
比較例として軟磁性合金粉末を樹脂中に分散した従来の複合軟磁性部材を作成して、同様に透磁率を測定した。なお、軟磁性合金粉末は、70wt%Fe−20wt%Si−10wt%Cr系合金の組成を有し、粒径5〜50μm、粉末の厚さ0.2〜0.3μm、長さ数10μmの扁平状粉末である。また、樹脂としては塩素化ポリエチレンを用い、扁平状粉末の添加量が73wt%の厚さ0.25mmの複合軟磁性部材である。測定結果を図11に示す。
図10および図11を比較すればわかるように、本発明による第1積層体は、従来の複合軟磁性部材に比べて、測定した全周波数帯域で透磁率μ’が高く、特に108Hz(100MHz)においても、5倍以上の透磁率μ’が得られることがわかる。このことは、本発明の第1積層体が高周波特性に優れたノイズ対策部材、特に携帯電話機のSAR対策に好適であることがわかる。
【0034】
(具体例1−2)
次に、本発明による図1に示す形態の軟磁性シートまたは図3に示す形態の第1積層体のみを図9に示すように携帯電話機に貼り付け、放射電磁界を測定した。軟磁性合金層としての81wt%Ni−19wt%Fe合金(パーマロイ)膜の厚さを0.5μmとし、また樹脂フィルムの厚さを9μmとした以外は具体例1−1と同様のプロセスによって得た軟磁性シートを30mm×50mmに切断し、この軟磁性シートを5枚積層することによって本発明による第1積層体(本発明材)を得た。また、比較のために、具体例1−1で用いたポリアミド樹脂フィルム上に厚さ4μmのCuめっき膜を形成した部材(比較材1)および厚さ50μmの珪素鋼板(比較材2)を用意した。
【0035】
測定条件概略は以下の通りである。すなわち、電波暗室内において、本発明材、比較材1および2をそれぞれその表示面側に貼り付けた携帯電話機から送信される電波を、携帯電話機から3mの位置に配置された受信アンテナで垂直偏波の受信レベルを測定した。この測定法を、以下3m法という。なお、携帯電話機の表示面側にはファントムを配置するとともに、携帯電話機およびファントムを360度回転し、5度ごとに1.8GHzの放射電磁波のレベル(受信レベル)を測定した。なお、本発明材、比較材1および2を貼り付けない場合についても同様にして測定した(これを「基準」とする。)。結果を図12に示す。
【0036】
図12は、各位置(角度)における受信レベル(dBm)を示す円グラフであり、携帯電話機およびファントムは円グラフの中心に配置されていることになる。また、図12の円グラフは、角度が0度の位置がファントムの正面を示している。したがって、図12において、0〜180度の範囲がファントムの存在する側(ファントム側)の測定結果を示し、180〜360度の範囲がファントムの存在しない側(空間側)の測定結果を示すことになる。ここで、180〜360度の範囲における受信レベル、つまり利得が高いことが、携帯電話機の放射効率向上にとって望ましいことになる。
【0037】
図12に示すように、本発明材、比較材1および2を貼り付けると、基準に対して、空間側における受信レベルが向上していることがわかる。図13は、理解を容易にするために図12を展開したグラフを示している。270〜300度の範囲において、本発明材を貼り付けることにより基準よりも受信レベルが相対的に2dB程度向上していることがわかる。比較材1および2を貼り付けることによっても受信レベルは基準よりも向上するが、本発明材を貼り付けることによって比較材1および2よりさらに1dB程度の受信レベル向上が図られている。
【0038】
以上のように、本発明による第1積層体を携帯電話機に貼り付けることによって放射電磁界の利得が改善されることがわかった。次に、第1積層体における軟磁性シートの積層枚数による利得改善の影響を調査した。つまり、本具体例で用いた図1に示す形態の軟磁性シートを1枚だけ携帯電話機に装着した場合、3枚積層した図3に示す形態の第1積層体を携帯電話機に装着した場合および5枚積層した図3に示す形態の第1積層体を携帯電話機に装着した場合について、先と同様に受信レベルを測定した。結果を図14および図15に示す。
図14および図15から、積層枚数が増えることにより放射利得の改善程度が増加することがわかる。
【0039】
(具体例1−3)
図16に示す試料1〜6の第1積層体を作成し、具体例1−2と同様に放射電磁界を測定した。
なお、図16において、試料1〜3は下記の製造方法Aにしたがって作成された第1積層体であり、また試料4〜6は下記の製造方法Bにしたがって作成された第1積層体である。
<製造方法A>
絶縁層を構成する樹脂フィルムに、真空蒸着法により軟磁性金属層を構成する合金膜を形成することにより軟磁性シートを得る。軟磁性合金層の膜厚は図16に記載の通りである。この軟磁性シートを図16に記載されている積層枚数だけ積層することにより第1積層体を得る。得られた第1積層体の厚さは図16の通りである。
<製造方法B>
膜厚9μmのポリアミド樹脂フィルム上に、下地層を無電解めっきにより50nm形成する。各試料におけるめっきの材質は図16に示す通りである。下地層を形成した後に、下地層上に電解めっきにより図16に示す軟磁性合金層を電解めっきにより形成する。そしてその後、軟磁性合金層上に熱融着層としてナイロン系樹脂を図16に示す厚さだけ塗布する。続いて、ポリアミド樹脂フィルムを剥離することにより、軟磁性金属層と絶縁層としての熱融着層とが積層された軟磁性シートを得る。この軟磁性シートを図16に記載されている積層枚数だけ積層することにより第1積層体を得る。さらにその後、この第1積層体を170℃で30分保持することにより、熱融着層を硬化させた。
【0040】
放射電磁界を測定し、270〜300度(具体例1−2参照)の範囲における利得改善効果を図16に示す。なお、この利得改善効果は、第1積層体を装着しない携帯電話機を基準としている(具体例1−2の基準)。図16に示すように、本発明による第1積層体を携帯電話機に装着することにより、空間側の放射電磁界の利得が著しく改善されることが確認された。
【0041】
(具体例1−4)
厚さ13μmのポリアミド樹脂フィルム上に下地金属層として厚さ0.2μmのNi膜(保磁力:8690A/m(110エルステッド)、異方性磁界:21330A/m(270エルステッド)、磁歪:負)を真空蒸着法により形成した。また、同様のポリアミド樹脂フィルムに下地金属層として厚さ0.2μmの80wt%Ni−Fe合金膜(保磁力:711A/m(9エルステッド)、異方性磁界:1422A/m(18エルステッド)、磁歪:正)を形成した。下地金属層上に26wt%Fe−Ni合金(保磁力:948A/m(12エルステッド)、異方性磁界:1738A/m(22エルステッド)、磁歪:負)をめっきして厚さ0.2μmの軟磁性金属層(Fe−Ni層)を形成して軟磁性シートを得た。続いて、溶剤で薄めて粘度を約100cPとしたエポキシ樹脂を作製し、軟磁性シートの軟磁性金属層表面に塗布した。この後、溶剤を一部蒸発させ、粘着性が残っている状態で軟磁性シート同士を積層して第1積層体を得た。なお、この第1積層体は、軟磁性シートを3層だけ積層したものである。
【0042】
以上の2種類の第1積層体について具体例1−1と同様に複素透磁率を測定した。なお、この測定には、凌和電子製造(株)製の透磁率測定装置PMF−3000を用いた。その結果を図17に示す。なお、図17において、(Ni−Fe/Ni)とはNi下地層上に26wt%Fe−Ni合金を形成した軟磁性シートを用いた場合を示している。また、図17において、(Ni−Fe/Ni−Fe)とは、80wt%Ni−Fe合金層上に26wt%Fe−Ni合金を形成した軟磁性シートを用いた場合を示している。
【0043】
80wt%Ni−Fe蒸着膜を下地金属層とする場合と比較すると、Ni蒸着膜を下地金属層とする場合の複素透磁率のμ”が2山分布となり、かつピーク値が高周波側に現れる傾向が認められた。このように、めっき膜よりも保磁力の大きい材料で下地金属層を構成することにより、軟磁性金属層の異方性磁界を大きくして、共鳴周波数を高周波化することが可能となる。
なお、エポキシ樹脂で3層に積層した積層体の複素透磁率の周波数依存性は、積層前の軟磁性シート単体における特性とほぼ同等であり、エポキシ樹脂接着が複素透磁率に与える影響は無視し得ることがわかった。同様の積層プロセスを800cPの粘度を有するシリコーン樹脂で検討したが、シリコーン樹脂接着による複素透磁率の変化は認められなかった。
【0044】
(具体例1−5)
厚さ13μmのPETフィルム上に下地金属層として厚さ0.1μmのNi膜を真空蒸着法により形成した。PETフィルムには真空蒸着前に膜の密着性を良くする目的でボンバード処理を施した。このフィルムに20wt%〜80wt%Fe−Ni合金をめっきして厚さ0.2μmの軟磁性金属層としてのFe−Ni層を形成して軟磁性シートを得た。続いて、溶剤で薄めて粘度を約300cPとしたエポキシ樹脂を作製し、軟磁性シートの積層軟磁性金属表面に塗布した。この後、溶剤を一部蒸発させ、粘着性が残っている状態で軟磁性シート同士を積層して第1積層体を得た。なお、この第1積層体は、軟磁性シートを3層だけ積層したものである。
【0045】
以上の第1積層体について、Fe−Ni膜のFe含有量に対して二段に変化する高周波側のμ’が減衰を始める周波数(fμ’att)およびμ”のピークが現れる周波数(fμ”peak)をプロットした結果を図18に示す。図18より、Feが20wt%より多く80wt%より少ない領域、特に60wt%Fe−Ni付近の組成で透磁率の劣化が少なく、共鳴周波数が高周波側にシフトすることがわかる。Fe含有量が多いほど飽和磁化が大きくなると同時に電気抵抗が大きくなることが、渦電流の低減と共鳴周波数の高周波化に寄与すると考えられる。
【0046】
軟磁性金属層を60wt%Fe−Ni合金とした第1積層体を携帯電話ディスプレイ近傍とファントムの間に配置させ、3m法による受信レベルを測定した結果、約1.8dBの放射効率の改善が確認された、ファントム側では、利得が減少しており、SARに対しても良好であることが確認された。
【0047】
(具体例1−6)
厚さ13μmのPETフィルム上に下地金属層として厚さ0.1μmの80wt%Ni−Fe合金膜(保磁力:1975A/m(25エルステッド)、異方性磁界:2844A/m(36エルステッド)、磁歪:正)を真空蒸着法により形成した。PETフィルムには真空蒸着前に膜の密着性を良くする目的でボンバード処理を施した。このフィルムに26%Fe−Ni合金(保磁力:1817A/m(23エルステッド)、異方性磁界:3239A/m(41エルステッド)、磁歪:正)をめっきして厚さ0.2μmの軟磁性金属層としてのFe−Ni層を形成して軟磁性シートを得た。続いて、軟磁性シートを3枚重ねて160℃および220℃の2種類の温度で60秒間熱圧着することにより第1積層体を得た。なお、付与された圧力は5MPaである。
【0048】
得られた積層軟磁性部材について具体例1と同様に複素透磁率を測定した。その結果を図19に示す。図19より、160℃よりも220℃で熱圧着するほうが高周波での複素透磁率が高周波側に伸びているのがわかる。高温におけるPETの収縮が軟磁性金属層の磁気弾性エネルギを増大させて異方性磁界を大きくするので、複素透磁率の高周波化が可能となる。
【0049】
220℃で熱圧着した積層軟磁性部材を携帯電話ディスプレイ近傍とファントムの間に配置させ、3m法による受信レベルを測定した結果、約1.6dBの放射効率の改善が確認された、ファントム側での利得の減少も確認された。
【0050】
(具体例1−7)
厚さ13μmのPETフィルム上に下地金属層として厚さ0.35μmのNi膜(保磁力:9480A/m(120エルステッド)、異方性磁界:19750A/m(250エルステッド)、磁歪:負)を真空蒸着法により形成した。PETフィルムには真空蒸着前に膜の密着性を良くする目的でボンバード処理を施した。このフィルムに30wt%Fe−Ni合金(保磁力:1422A/m(18エルステッド)、異方性磁界:2607A/m(33エルステッド)、磁歪:正)をめっきして厚さ0.25μmの軟磁性金属層としてのFe−Ni膜を形成して軟磁性シートを得た。なお、Ni膜蒸着後、PETフィルムは所定時間大気に晒されている。Fe−Ni膜形成後に、透過型電子顕微鏡により軟磁性シートの断面構造を観察した。観察された顕微鏡像を図20に示す。NiとFe−Ni合金界面に3〜15nmの酸化膜が認められた。
【0051】
得られた軟磁性シートを5枚重ねて200℃で60秒間加圧する熱圧着を行うことにより50mm×30mmのサイズの第1積層体を得た。この第1積層体に両面粘着テープを貼り、これを携帯電話機表面とアンテナの間に固定し、電波暗室中でファントムに隣接させて配置した。携帯電話機から発信させた電磁波を3m法で受信した結果、多層膜を配置したことにより、1.7dBの放射効率改善が認められた。
【0052】
(具体例1−8)
電波暗室において、携帯電話機高さと受信アンテナ高さを1.4m一定とし、携帯電話機の給電点位置に対して幅30mm、長さ30〜60mmの第1積層体をアンテナとファントム間に配置して3m法による受信レベルを測定した。なお、第1積層体は、具体例1−5で得られたものを用いた。その結果、30〜60mmの多層膜の長さが30mmから60mmの範囲では第1積層体の長さによらず、逆Fアンテナ給電点より11mm±3mm下側に第1積層体の重心を配置した場合に放射効率の改善効果が著しかった。この位置はアンテナの構造、配置により異なるが、給電点位置から50mmを超える距離だけ離した位置に本発明による第1積層体を配置すると、放射効率の改善効果が著しく小さくなる。
【0053】
(具体例2)
厚さ6μmのPETフィルム40に0.05μmのCo膜(保磁力:55300A/m(700エルステッド)、異方性磁界:94800A/m(1200エルステッド)、磁歪:負)41を真空蒸着した後にCo膜41上に厚さ0.2μmの27%Fe−Ni合金膜(保磁力:1264A/m(16エルステッド)、異方性磁界:2370A/m(30エルステッド)、磁歪:正)42をめっきしてシート体(第1積層体)aを得た。また、厚さ6μmのPETフィルム50に厚さ0.033、0.086、0.144および0.277μmのNi膜(保磁力:3160A/m(40エルステッド) 、異方性磁界:22120A/m(280エルステッド)、磁歪:正)51を蒸着したシート体(第2積層体)bを得た。
【0054】
以上のシート体aおよびシート体bを用いて、2種類の積層軟磁性部材AおよびBを得た。積層軟磁性部材Aは、シート体aを3枚とシート体bを1枚重ねた状態で200℃で60秒間熱圧着することにより作成されたものである。作成された積層軟磁性部材Aの断面構造を図21(a)に示している。なお、積層軟磁性部材Aについては、シート体bにおけるNi膜51の厚さが異なる4種類の積層軟磁性部材Aを作成した。
積層軟磁性部材Bは、シート体aを3枚と厚さ6μmのPETフィルム40単体を最上層に位置するシート体aの表面に重ねた状態で熱圧着することにより作成されたものである。作成された積層軟磁性部材Bの断面構造を図21(b)に示している。
得られた積層軟磁性部材AおよびBを各々携帯電話機のアンテナとファントムとの間に配置して3m法により放射特性を測定した。なお、積層軟磁性部材Aは、ファントムとシート体aとの間にシート体bが配置されるように携帯電話機内に配設した。測定結果を図22に示す。なお、図22において、「27%Fe−Ni/Ni」との表記は積層軟磁性部材Aを示し、括弧内の数字はシート体bにおけるNi膜51の厚さを示している。また、「27%Fe−Ni」との表記は積層軟磁性部材Bを示し、「Blank」との表記は積層軟磁性部材A、Bともに配設していないことを示している。
ファントムとの間にNi膜51が挿入された形態の積層軟磁性部材Aは、積層軟磁性部材Bに対して、放射効率がさらに0.5dB改善されることが確認された。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、例えば携帯電話機において、人体頭部と反対側の電磁波の放射効率を改善できるとともに、人体頭部側の電磁波レベルを低減し、SARを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による軟磁性シートの一例を示す断面図である。
【図2】本発明による軟磁性シートの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明による第1積層体の一例を示す断面図である。
【図4】本発明によるシート状部材の例を示す断面図である。
【図5】本発明による第1積層体の製造方法の一例を示す図である。
【図6】本発明による第1積層体の製造方法の他の例を示す図である。
【図7】本発明による第1積層体の製造方法の他の例を示す図である。
【図8】本発明による第1積層体の製造方法の他の例を示す図である。
【図9】携帯電話機に本発明によるシート状部材を配設した状態を模式的に示す図である。
【図10】具体例1で得られた第1積層体の複素透磁率の周波数特性を示すグラフである。
【図11】従来例で得られた積層軟磁性部材の複素透磁率の周波数特性を示すグラフである。
【図12】具体例1−2における放射電磁界の測定結果を示すグラフである。
【図13】具体例1−2における放射電磁界の測定結果を示すグラフである。
【図14】具体例1−2における放射電磁界の測定結果を示すグラフである。
【図15】具体例1−2における放射電磁界の測定結果を示すグラフである。
【図16】具体例1−3にて用いた第1積層体の仕様を示す図表である。
【図17】具体例1−4で得られた第1積層体の複素透磁率の周波数特性を示すグラフである。
【図18】具体例1−5で得られた第1積層体の軟磁性金属層中のFeの含有量とμ’減衰周波数およびμ”ピーク周波数の関係を示すグラフである。
【図19】具体例1−6で得られた第1積層体の複素透磁率の周波数特性を示すグラフである。
【図20】具体例1−7で得られた第1積層体の断面構造を示す透過型電子顕微鏡像である。
【図21】具体例2で用いた第1積層体の構成を示す図である。
【図22】具体例2における放射電磁界の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1,5,9…軟磁性シート、2,6,16…樹脂フィルム、3,7a,7b…下地金属層、4,8a,8b…軟磁性金属層、10…第1積層体、11…絶縁層、12…軟磁性金属層、13…第2積層体、14…導電層、15…絶縁層、17…樹脂層、20…シート状部材、30…携帯電話機、31…フロント・カバー、32…回路基板、34…ケース、36…内蔵アンテナ、40,50…PETフィルム、41…Co膜、42…Fe−Ni合金膜、51…Ni膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁波の放射効率を向上させた携帯電話機等の携帯通信機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話機は、年々小型・軽量化されてきており、携帯電話機使用時にそのアンテナの位置は人体、具体的には頭部の極めて近い位置に配置されることになる。このときアンテナの特性は人体の影響を受け、アンテナ性能が低下する傾向にある。つまり、アンテナから放射される電磁波の一部が人体に吸収されることに起因する電力損失が、受信感度の低減、電池の寿命低減を招く。
一方で、人体による電磁波の吸収量が増加し、人体への影響が懸念されている。したがって、日本を含め各国で局所吸収指針が定められている。各国が局所吸収指針において定める局所吸収の評価量として、以下の式で定義されるSAR(Specific Absorption Rate:局所吸収量)が用いられている。
SAR=σE2/2ρ
(E:人体に侵入した電界,σ:人体組織の誘電率、ρ:人体組織の密度)
そのため、携帯電話機から放射された電磁波の実効的な利用率、つまり放射効率を向上しつつSARを低減する方法として、低損失磁性板をアンテナ近傍に配置する方法が提案されている。ところが、磁性微粉と樹脂からなる複合材料を用いた磁性板を使用する方法では、板厚を5mmとしても放射効率改善効果が0.6dBと小さい。携帯電話機の小型、軽量化に対応するため、板厚を0.2mm以下、さらには0.1mm以下にすることが望ましい。したがって、低損失磁性板を携帯電話機へ適用することは困難である。
携帯電話機における他の課題として電磁波障害(EMI:Electromagnetic Interference)が増加している。1GHzを超える高周波領域でのノイズ吸収特性の優れた材料として、軟磁性金属粉末を樹脂、ゴム中に分散させた複合軟磁性部材が提案されている。例えば、扁平状のFe−Si系軟磁性合金粉末をゴム、樹脂中に配向・配列した複合磁性材料(特開平9−35927号公報、「工業材料」1998年10月号 第31頁〜第35頁、第36頁〜第40頁等)が提案されている。
携帯電話機における放射効率向上およびSAR対策部材として、上記の複合軟磁性部材を携帯電話機の筐体内部または外部に貼り付けることができる。ところが、前述した複合軟磁性部材は、例えば、800MHz〜3GHzといった高周波数帯域における透磁率が低いため、厚さを0.2mm以下にしたのでは、所望の特性を得ることが困難である。
【0003】
以上の問題点を解消した材料が、電子情報通信学会技術研究報告、信学技報Vol.101 No.274 2001年8月28日発行 第19頁〜第24頁「軟磁性金属薄膜を配置した携帯電話の放射効率に関する実験的検討」に開示されている。この材料は、厚さ12μmのPETフィルムの上に金属Niを0.1μmスパッタした下地に0.5μmの80Ni−20Fe軟磁性金属をメッキしたシートを複数枚積層したものである。この従来の積層軟磁性シートを用いることにより、ファントムと逆の方向約180度の範囲で放射レベルが大きく改善され、最大2.2dB向上することが報告されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−35927号公報(第1頁、図1)
【非特許文献1】
「工業材料」1998年10月号 第31頁〜第35頁、第36頁〜第40頁
【非特許文献2】
電子情報通信学会技術研究報告、信学技報Vol.101 No.274 2001年8月28日発行 第19頁〜第24頁「軟磁性金属薄膜を配置した携帯電話の放射効率に関する実験的検討」
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、積層軟磁性シートを装着した携帯電話機等の携帯通信機器における電磁波の放射効率をより向上させることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は積層軟磁性シートを用いて電磁波の放射効率(以下、単に放射効率と言うことがある)を向上させることについて検討した。その結果、積層軟磁性シートに対して所定の導電層を形成し、かつ、この導電層が形成された側の面を携帯電話機の操作面側に向けて配設することにより、積層軟磁性シートを単体で携帯電話機に配設した場合に比べて放射効率がより改善できることを究明した。
本発明は使用時にユーザに対向する第1の面と前記第1の面に対向する第2の面とを有する機器本体と、前記機器本体の前記第1の面と前記第2の面との間に配設される軟磁性層を含むシート状部材と、を備え、前記シート状部材は、第1積層体と、前記第1積層体に接する第2積層体とを備え、前記第1積層体は、絶縁層と、前記絶縁層上に形成された下地金属層と、前記下地金属層上に形成された軟磁性金属層とが積層され、前記第2積層体は、導電層と、前記導電層上に形成される絶縁層とが積層され、前記第2積層体が前記第1積層体と前記機器本体の前記第1の面との間に配置されるように前記シート状部材を配設したことを特徴とする携帯通信機器である。
第1積層体と第2積層体とは、携帯通信機器に配設される前に一体として積層されていてもよいし、別体として用意され、携帯通信機器に配設される際に積層されてもよい。
【0007】
本発明の携帯通信機器において、前記第2積層体における前記導電層は、電気抵抗率が50μΩcm以下の金属から構成することが望ましい。
また本発明の携帯通信機器は、前記シート状部材の総厚さが0.2mm以下、前記第1積層体における前記軟磁性金属層の厚さが0.8μm未満、前記絶縁層の厚さが25μm以下、前記第2積層体における導電層の厚さが0.5μm以下、前記絶縁層の厚さが25μm以下とすることが望ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施の形態におけるシート状部材の基本的な製造工程は以下の通りである。すなわち、軟磁性シートを作成し、この軟磁性シートを複数積層して第1積層体を得る。次いで、第1積層体と、別途作成された第2積層体とを積層してシート状部材を得る。そこで以下の説明では、軟磁性シートの構成・製造方法、第1積層体の構成、第2積層体の構成、シート状部材の構成、第1積層体の製造方法、第2積層体の製造方法、第1積層体との積層および携帯電話機への配設の順に本実施の形態の説明を行なっていく。
<軟磁性シートの構成・製造方法>
図1および図2は、本発明のシート状部材を構成する軟磁性シートの例を示す部分断面図である。
図1に示す軟磁性シート1は、樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2上に形成された下地金属層3と、下地金属層3上に形成された軟磁性金属層4とから構成される。
樹脂フィルム2は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂を用いることができる。その中で、後述するように積層軟磁性部材の製造過程で熱処理を施す場合には、耐熱性を有する樹脂材料を用いることが望ましい。
【0009】
軟磁性金属層4は、磁性を示す遷移金属元素のいずれか、あるいは遷移金属元素と他の金属元素とからなる合金により構成することができる。具体的な例としては、Fe、CoおよびNiの1種または2種以上を主成分とする合金であり、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Co−Ni系合金が該当する。これらのなかで、飽和磁束密度が1.0T、さらには1.5T以上の合金が望ましい。特にこの中で、Fe含有量が20〜80wt%(望ましくは30〜70wt%、さらに望ましくは40〜65wt%)のFe−Ni合金、Fe−Co合金およびCo−Ni−Fe合金が望ましい。この組成系の合金は、飽和磁化が大きく、異方性制御により異方性磁界を増大させて、共鳴周波数を高周波側へシフトさせるのに有利である。これら合金に15at%以下のNb,Mo,Ta,W,Zr,Mn,Ti,Cr,Cu,Coの1種以上を含有することができる。また、軟磁性金属層4をめっきで形成する場合にはCおよびS等の元素を不可避的に含むが、本発明の軟磁性金属層4は、そのような元素の含有を許容する。
【0010】
軟磁性金属層4は、結晶質合金および非晶質合金のいずれの態様であっても構わない。非晶質合金としては、Co系およびFe系の非晶質合金を用いることができる。また、Fe系の微結晶合金を用いることも本発明は許容する。微結晶合金は、一般的に、結晶粒径が10nm程度の微細な結晶が主体をなす合金として知られている。
軟磁性金属層4は、めっき(電解または無電解)、真空蒸着法、スパッタリング法等の各種の膜形成プロセスによって作成することができる。これらの膜形成プロセスは、単独で行なうことができる。したがって、めっきのみで軟磁性金属層4を形成することもできるし、蒸着のみで軟磁性金属層4を形成することもできる。もちろん、複数の膜形成プロセスを組み合わせることもできる。めっきは、真空蒸着法、スパッタリング法に比べて低温で膜を形成することができる点で本発明にとって好適である。本発明において、軟磁性金属層4は樹脂フィルム2上に形成するため、樹脂フィルム2に熱的な影響を与えないことが望ましいからである。また、めっきは、真空蒸着法、スパッタリング法に比べて、所定の厚さの膜を短時間で得ることができるメリットがある。なお、めっきにより軟磁性金属層4を得る場合、めっき浴中に含まれているS等の元素が軟磁性金属層4に混入することから、他のプロセスによる軟磁性金属層4との区別ができる。
【0011】
下地金属層3は、軟磁性金属層4を電解めっきによって樹脂フィルム2上に形成する場合に必要となる導電層としての役割を果たす。下地金属層3は、例えば、真空蒸着法によって形成することができる。また、無電解めっきにより下地金属層3を形成した後に、電解めっきにより軟磁性金属層4を形成することもできる。電解めっき以外の方法で軟磁性金属層4を形成する場合には、下地金属層3を省略することもできる。つまり、下地金属層3は本発明において選択的な要素である。もっとも、下地金属層3に軟磁性金属を用いる場合には、下地金属層3が軟磁性金属層4の一部を構成することになる。
【0012】
下地金属層3として、軟磁性金属層4よりも保磁力が大きい材質を選択することが望ましい。そうすることにより、軟磁性金属層4の異方性磁界を増大させて、GHz帯域の強磁性共鳴周波数を大きくできる。その結果、2GHz付近のμ’(複素透磁率の実数部分)を増大させ、同時にμ”(複素透磁率の虚数部分)を低減することができる。携帯通信機器が使用する周波数帯域では、μ’が大きくμ”が小さいほど電磁波の放射効率改善効果が大きい。なお、下地金属層3と同様の材質からなる層を、軟磁性金属層4上に形成してもGHz帯域の透磁率改善効果が望める。
【0013】
次に、軟磁性シート1において、樹脂フィルム2の厚さは、50μm以下とする。樹脂フィルム2は、軟磁性シート1を積層した際に軟磁性金属層4同士を絶縁する機能を果たす。しかし、この絶縁層が厚くなると軟磁性金属層4同士の磁気的な結合を弱め、ひいては積層軟磁性部材としての透磁率が低下するため50μm以下とする。望ましい樹脂フィルム2の厚さは25μm以下、さらに望ましい樹脂フィルム2の厚さは10μm以下である。もっとも、極端に薄い樹脂フィルム2は製造が困難であるとともに、軟磁性金属層4を形成するための所定の強度を持つことができなくなる。したがって、0.2μmあるいは、2μm以上の厚さとすることが推奨される。
【0014】
軟磁性金属層4は、1μm以下の厚さとすることが望ましい。これを超える厚さでは、本発明が対象とする800MHzを超える高周波数帯域での渦電流損失が大きくなり、磁性体としての機能が減じてしまうからである。したがって、軟磁性金属層4の厚さは、0.5μm以下とすることがさらに望ましい。軟磁性金属層4は、緻密に形成されているのが望ましいため、各種プロセスによって緻密な膜を形成することができる程度の最低限の膜厚を有していることが必要である。なお、軟磁性金属層4の表面に酸化膜が形成されていてもよい。
【0015】
下地金属層3は、電解めっき時の導電層として機能することを考慮すると、数10nm程度の厚さを有していれば足りる。なお、下地金属層3の表面、つまり下地金属層3と軟磁性金属層4との間には酸化膜が存在していてもよい。電気抵抗の大きな酸化膜が介在することで、下地金属層3と軟磁性金属層4との間の磁気的結合はやや弱くなるが、膜断面方向の電気抵抗が増大して渦電流を低減する効果がある。酸化膜の厚さが厚すぎるとめっきが難しくなるので、その厚さを40nm以下、望ましくは20nm以下、さらに望ましくは10nm以下とする。この酸化膜は、下地金属層3を形成した後に大気に晒すことにより形成することができる。軟磁性金属層4の表面に形成される酸化膜も同様である。
【0016】
図2に示す軟磁性シート5は軟磁性金属層8a,8bが樹脂フィルム6の表裏両側に形成されている点で図1に示した軟磁性シート1と相違する。つまり、軟磁性シート5は、樹脂フィルム6と、樹脂フィルム6の表裏両面に形成された下地金属層7a,7bと、下地金属層7a,7b上に形成された軟磁性金属層8a,8bとから構成される。樹脂フィルム6、下地金属層7a,7bおよび軟磁性金属層8a,8bの材質、寸法および作成プロセスは、図1に基づいて説明した軟磁性シート1と同様にすればよい。
【0017】
以上では、絶縁層として樹脂フィルム2,6を用いた例を示したが、本発明は樹脂フィルム2,6の代わりに下地金属層3,7a,7bに熱融着された樹脂層(熱融着層)を用いることができる。この熱融着層としては、例えば、ポリアミドを用いることができる。また、熱融着層を構成する樹脂は、静電塗装、塗布、スプレー、フィルムの貼り付け等種々の方法によって形成することができる。塗布、スプレーによって形成される熱融着層は、1.0μm以下、さらには0.5μm以下の極めて薄い膜とすることができる。ただし、あまり薄すぎると、熱融着層が形成されない部分が生じるおそれがあるため、0.1μm以上の厚さとすることが望ましい。
また、絶縁層として、熱圧着された樹脂層(熱圧着層)を用いることができる。熱圧着層を得るためには、例えば樹脂フィルム2としてPETフィルムを用い、軟磁性シート1を複数枚積層した後に所定温度、圧力で加熱・加圧処理を施すことにより得ることができる。
また、本発明の軟磁性シート1,5において、軟磁性金属層4,8a、8bの上に絶縁のための樹脂層をさらに形成することもできる。この樹脂層は、樹脂フィルム2,6を積層することにより形成することもできるし、熱融着層により形成することもできる。
【0018】
<第1積層体の構成>
図3は本実施の形態による第1積層体10の一例を示す断面図である。第1積層体10は、図1または図2に示した軟磁性シート1または5を複数枚積層した形態を有している。
図3に示すように、第1積層体10は、絶縁層11と軟磁性金属層12とが交互に積層された断面構造を有している。ここで、第1積層体10全体としての厚さは、0.2mm以下とすることが重要である。前述のように、携帯電話機に第1積層体10を含むシート状部材を貼り付ける場合には、携帯電話機のサイズに対応する必要があるからである。より望ましい厚さは、0.15mm以下、さらには0.1mm以下である。
【0019】
図1または図2で示した軟磁性シート1または5を積層することにより第1積層体10を得ることができる。
この場合、図3に示すように、軟磁性シート1,5の樹脂フィルム2,6が絶縁層11を構成することになる。また、軟磁性シート1,5における軟磁性金属層4,8a,8bが軟磁性金属層12を構成することになる。積層の仕方は、図5〜図8に基づいて後述する。なお、図3は、軟磁性シート1、5に形成していた下地金属層3,7a,7bの記載を省略している。
軟磁性シート1,5の樹脂フィルム2,6が絶縁層11を構成するので、絶縁層11の厚さは50μm以下となる。もっとも、軟磁性シート1,5を積層する場合に接着剤を層間に介在させると、絶縁層11が樹脂フィルム2,6の厚さより厚くなる場合がある。したがって、接着剤を用いる場合には、絶縁層11の厚さが50μm以下となるように樹脂フィルム2,6の厚さを定める必要がある。このとき、接着剤が樹脂で形成されていると、接着剤層も絶縁層11を構成することになる。なお、図3には示していないが、軟磁性金属層12が表面に露出しないように、最上層の軟磁性金属層12上に絶縁層11を配設することができる。以下の実施の形態、具体例においても同様である。
ここで、前述したように、樹脂フィルム2,6の代わりに熱融着層または熱圧着層を用いることができる。
また、第1積層体10の表面のいずれか一方に、粘着剤または両面粘着テープを設けることができる。携帯電話機等の機器に第1積層体10を含むシート状部材を貼り付ける際の便宜のためである。
【0020】
<第2積層体の構成、シート状部材の構成>
以上説明した第1積層体10の表面のいずれか一方に、導電層と、前記導電層上に形成される絶縁層11を積層することにより本発明によるシート状部材20が構成される。この形態によるシート状部材20を図4に示している。図4に示すように、絶縁層11と軟磁性金属層12とが交互に積層された第1積層体10に、さらに導電層14と絶縁層15とを積層する。導電層14と絶縁層15とで第2積層体13が構成される。そして、このシート状部材20を、導電層14が形成された側が使用時にユーザ側に配置されるように携帯電話機内に配設することにより、後述するように、電磁波の放射効率向上効果がより期待できる。なお、この導電層14としては、Ni、Cu、Co等、50μΩcm以下の電気抵抗率の小さな金属を用いることができる。また、導電層14は、0.1μm以下、望ましくは0.5μm以下の厚さとすることが望ましい。絶縁層15は50μm以下、望ましくは25μm以下の厚さとする。なお、図4では導電層14、絶縁層15を各々1層だけ設けた例を示したが、本発明はこれに限定されない。
なお、シート状部材20は、第1積層体10の最表面に絶縁層11が配設されることが外部との絶縁を図る上で望ましい。
【0021】
<第1積層体の製造方法>
以下、図5〜図8に基づいて、第1積層体10を得るのに好適な製造方法を説明する。なお、図5および図6は図1に示した軟磁性シート1を用いて第1積層体10を得る製造方法を、図7は図2に示した軟磁性シート5を用いて第1積層体10を得る製造方法を、また図8は絶縁層11として熱融着層を用いて第1積層体10を得る製造方法を示している。
図5において、はじめに樹脂フィルム2に、例えば、真空蒸着法により下地金属層3を形成する(図5(a))。
下地金属層3を形成した後、例えば電解めっきにより軟磁性金属層4を下地金属層3上に形成することによって、図1に示した軟磁性シート1を得ることができる(図5(b))。
軟磁性シート1を所定の枚数作成し、各軟磁性シート1の樹脂フィルム2と軟磁性金属層4とを対向させた状態で積層する(図5(c))ことにより、図3に示した第1積層体10を得ることができる。
【0022】
軟磁性シート1同士の接合は、軟磁性シート1間に例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の接着剤を配置して行なうことができる。接着剤の粘度は、1000cP以下、望ましくは300cP以下、さらに望ましくは200cP以下とする。溶剤を加えた接着剤を軟磁性シート1に塗布し、その後接着剤が粘着性を保持する程度まで溶剤を蒸発させ、しかる後に軟磁性シート1を積層する。軟磁性シート1を構成する樹脂フィルム2の静電気により、接着剤を用いることなく積層状態を維持することもできる。この場合、接合強度を向上するために、軟磁性シート1を積層後に、接着剤に浸漬して外周部のみを接着することもできる。
【0023】
第1積層体10を得た後に、応力緩和熱処理を行なうことにより、磁気特性の向上を図ることもできる。応力緩和熱処理は、例えば軟磁性シート1同士の接合に接着剤を用いた場合には、接着剤の乾燥のための加熱を兼ねて行なうこともできる。応力緩和熱処理を行なう場合には、樹脂フィルム2に耐熱性に優れたポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂を用いることが望ましい。
また、第1積層体10は、温間プレス加工によって、所望する形状に加工することもできる。さらに、切断を行なって、所望する寸法に加工することもできる。
【0024】
次に、図6について説明する。前述のように図6は、図1に示した軟磁性シート1を用いて第1積層体10を得る製造方法を示している。しかし、図5の製造方法とは異なり、帯状の軟磁性シート1をトロイダル状に巻回することにより軟磁性シート1を積層する。巻回体の部分断面図を図6に示しているが、図3で示した第1積層体10と同様の積層構造を有している。そして、この巻回体をそのまま第1積層体10として用いることもできるし、切断等適宜加工を施すことにより、扁平状の第1積層体10を得ることもできる。また、図6では、円形に巻回した例を示しているが、軟磁性シート1は可撓性を有しているため、楕円形、矩形等任意の断面形状の巻回体を容易に得ることができる。
以上のように、本発明において、軟磁性シート1を積層するとは、独立した軟磁性シート1を複数枚積層する場合に加えて、帯状の軟磁性シート1を巻回することによって積層要素を得る場合をも包含している。
【0025】
次に、図7に示す製造方法について説明する。図7は、図2に示した軟磁性シート5により第1積層体10を得るための方法を示している。
はじめに、樹脂フィルム6の表裏両面に下地金属層7a,7bを形成する(図7(a))。下地金属層7a,7bは、図5に示した製造方法と同様に、真空蒸着法を用いることができる。
表裏両面に下地金属層7a,7bを形成した後、例えば電解めっきにより、下地金属層7a,7b上に軟磁性金属層8a,8bを形成する(図7(b))。これで軟磁性シート5が得られる。この軟磁性シート5を複数枚積層することにより、第1積層体10を得ることができる。ただし、軟磁性シート5は、表裏両面に軟磁性金属層8a,8bが露出した構造をなしているので、そのままで積層することはできない。そこで、樹脂フィルム16を別途用意し、この樹脂フィルム16を介在させて軟磁性シート5を積層する(図7(c))ことにより、第1積層体10を得る。
【0026】
次に熱融着層を用いて第1積層体10を得る製造方法を図8に基づいて説明する。
図8において、はじめに樹脂フィルム2に、例えば、真空蒸着法により下地金属層3を形成する(図8(a))。下地金属層3を形成した後、例えば電解めっきにより軟磁性金属層4を下地金属層3上に形成する(図8(b))。ここまでの工程は、図5に示した製造方法と同様である。
次に、軟磁性金属層4上に熱融着のための樹脂層17を形成する(図8(c))。樹脂層17の形成は、塗布、スプレー等の種々の手法で行なうことができる。
樹脂層17を形成した後に、樹脂フィルム2を剥離、除去することにより、下地金属層3、軟磁性金属層4および樹脂層17とが積層された軟磁性シート9を得る(図8(d))。下地金属層3に対する樹脂フィルム2の密着強度よりも軟磁性金属層4に対する樹脂層17の密着強度のほうが高いため、樹脂フィルム2の剥離は比較的に容易に行なうことができる。
【0027】
軟磁性シート9を所定の枚数作成し、各軟磁性シート9の樹脂層17と下地金属層3とを対向させた状態で積層する(図8(e))ことにより、第1積層体10を得ることができる。
軟磁性シート9同士の接合は、樹脂層17を用いて行なうことができる。つまり、各軟磁性シート9の樹脂層17と軟磁性金属層4とを対向させた状態で積層した後に、所定の加熱処理を施して樹脂層17を溶融、硬化させることにより、隣接する軟磁性シート9同士の接合強度を確保することができる。また、図8では複数の軟磁性シート9を作成した後にそれらを積層する例を示したが、樹脂フィルム2の剥離および樹脂層17の形成を連続的に行い、かつシート体を巻回して巻回体を得ることももちろんできる。
なお、以上では樹脂層17を熱融着することによって軟磁性シート9を接合したが、軟磁性シート9を樹脂層17の熱圧着による接合を行なうことができる。例えば、樹脂層17としてPETを選択して150〜300℃程度の温度に加熱した状態で所定の圧力を付与することにより、熱圧着された樹脂層17によって軟磁性シート9同士を接合することができる。
【0028】
<第2積層体の製造方法、第1積層体との積層>
図4に示した導電層14と絶縁層15とからなる第2積層体13は、絶縁層15を構成する樹脂フィルムの表面に上記金属を蒸着等によって成膜することによって得ることができる。第1積層体10と第2積層体13との積層は、第1積層体10の製造方法で示した積層手法を用いることにより容易に行なうことができる。
【0029】
<携帯電話機への配設>
以上のようにして得られたシート状部材20は、携帯電話機内に配設することができる。なお、ここでは携帯通信機器として携帯電話機を例にするが、これはあくまで本発明の適用事例にすぎない。
シート状部材20を携帯電話機内に配設する様子を図9に模式的に示している。携帯電話機30は、フロント・カバー31とケース34とを備え、その間に必要に応じてホイップ・アンテナが取り付けられる回路基板32が配設される。ケース34内には内蔵アンテナ36が収容されており、シート状部材20は、内蔵アンテナ36とその一部が重なるように、回路基板32とケース34との間に配設される。なお、シート状部材20の固定は、前述したように粘着剤、両面粘着テープを用いて行なうことができる。このとき、シート状部材20は、フロント・カバー31と第2積層体13が対向し、ケース34と第1積層体10が対向するように配設される。したがって、第2積層体13がフロント・カバー31と第1積層体10との間に配置される。
【0030】
以下本発明をより具体的な例に基づいて説明する。
<具体例1>
具体例1として、本発明のシート状部材を構成する第1積層体の部分についての具体例をいくつか説明する。
(具体例1−1)
膜厚4μmのポリアミド樹脂フィルムを用意し、このポリアミド樹脂フィルム上(片面)に、真空蒸着法によりNi膜を形成した。Ni膜の厚さは50nmである。このNi膜は、軟磁性金属層を電解めっき法により形成するための下地金属層として機能するとともに、自身が磁性金属層としても機能する。
Niを蒸着した後に、以下に示すめっき液を用いてNi膜上に軟磁性合金である81wt%Ni−19wt%Fe合金(パーマロイ)膜を形成した。めっき液の条件は、浴温が35〜55℃、PHが2.0〜3.0である。そして、めっき膜厚が1μmになるまで、2A/dm2の電流密度で電解した。なお、めっき膜の欠陥防止およびめっき液の表面張力低減のために、界面活性剤を適宜添加した。
【0031】
【0032】
以上により、厚さ4μmのポリアミド樹脂フィルムからなる絶縁層と、ポリアミド樹脂フィルム上に形成されたNiからなる下地層と、下地層上に形成された81wt%Ni−19wt%Fe合金層とからなる軟磁性シートを得た。なお、下地層を構成するNiは保磁力が9480A/m(120エルステッド(Oe))、異方性磁界が20540A/m(260エルステッド)、磁歪が負であり、81wt%Ni−19wt%Fe合金層は保磁力が632A/m(8エルステッド)、異方性磁界が1580A/m(20エルステッド)、磁歪が正である。この軟磁性シートを打ち抜き加工することによりトロイダル形状の軟磁性シートを得、ポリアミド樹脂フィルムと81wt%Ni−19wt%Fe合金層とが対向するようにして積層した。軟磁性シートを20枚積層することにより、厚さが約0.1mmの第1積層体を得た。この第1積層体の複素透磁率を、横河ヒューレットパッカード(株)製のインピーダンスマテリアルアナライザー4291ARFで測定した。その結果を図10に示す。なお、図10中、μ’は複素透磁率の実数部分、μ”は複素透磁率の虚数部分を示している。
【0033】
比較例として軟磁性合金粉末を樹脂中に分散した従来の複合軟磁性部材を作成して、同様に透磁率を測定した。なお、軟磁性合金粉末は、70wt%Fe−20wt%Si−10wt%Cr系合金の組成を有し、粒径5〜50μm、粉末の厚さ0.2〜0.3μm、長さ数10μmの扁平状粉末である。また、樹脂としては塩素化ポリエチレンを用い、扁平状粉末の添加量が73wt%の厚さ0.25mmの複合軟磁性部材である。測定結果を図11に示す。
図10および図11を比較すればわかるように、本発明による第1積層体は、従来の複合軟磁性部材に比べて、測定した全周波数帯域で透磁率μ’が高く、特に108Hz(100MHz)においても、5倍以上の透磁率μ’が得られることがわかる。このことは、本発明の第1積層体が高周波特性に優れたノイズ対策部材、特に携帯電話機のSAR対策に好適であることがわかる。
【0034】
(具体例1−2)
次に、本発明による図1に示す形態の軟磁性シートまたは図3に示す形態の第1積層体のみを図9に示すように携帯電話機に貼り付け、放射電磁界を測定した。軟磁性合金層としての81wt%Ni−19wt%Fe合金(パーマロイ)膜の厚さを0.5μmとし、また樹脂フィルムの厚さを9μmとした以外は具体例1−1と同様のプロセスによって得た軟磁性シートを30mm×50mmに切断し、この軟磁性シートを5枚積層することによって本発明による第1積層体(本発明材)を得た。また、比較のために、具体例1−1で用いたポリアミド樹脂フィルム上に厚さ4μmのCuめっき膜を形成した部材(比較材1)および厚さ50μmの珪素鋼板(比較材2)を用意した。
【0035】
測定条件概略は以下の通りである。すなわち、電波暗室内において、本発明材、比較材1および2をそれぞれその表示面側に貼り付けた携帯電話機から送信される電波を、携帯電話機から3mの位置に配置された受信アンテナで垂直偏波の受信レベルを測定した。この測定法を、以下3m法という。なお、携帯電話機の表示面側にはファントムを配置するとともに、携帯電話機およびファントムを360度回転し、5度ごとに1.8GHzの放射電磁波のレベル(受信レベル)を測定した。なお、本発明材、比較材1および2を貼り付けない場合についても同様にして測定した(これを「基準」とする。)。結果を図12に示す。
【0036】
図12は、各位置(角度)における受信レベル(dBm)を示す円グラフであり、携帯電話機およびファントムは円グラフの中心に配置されていることになる。また、図12の円グラフは、角度が0度の位置がファントムの正面を示している。したがって、図12において、0〜180度の範囲がファントムの存在する側(ファントム側)の測定結果を示し、180〜360度の範囲がファントムの存在しない側(空間側)の測定結果を示すことになる。ここで、180〜360度の範囲における受信レベル、つまり利得が高いことが、携帯電話機の放射効率向上にとって望ましいことになる。
【0037】
図12に示すように、本発明材、比較材1および2を貼り付けると、基準に対して、空間側における受信レベルが向上していることがわかる。図13は、理解を容易にするために図12を展開したグラフを示している。270〜300度の範囲において、本発明材を貼り付けることにより基準よりも受信レベルが相対的に2dB程度向上していることがわかる。比較材1および2を貼り付けることによっても受信レベルは基準よりも向上するが、本発明材を貼り付けることによって比較材1および2よりさらに1dB程度の受信レベル向上が図られている。
【0038】
以上のように、本発明による第1積層体を携帯電話機に貼り付けることによって放射電磁界の利得が改善されることがわかった。次に、第1積層体における軟磁性シートの積層枚数による利得改善の影響を調査した。つまり、本具体例で用いた図1に示す形態の軟磁性シートを1枚だけ携帯電話機に装着した場合、3枚積層した図3に示す形態の第1積層体を携帯電話機に装着した場合および5枚積層した図3に示す形態の第1積層体を携帯電話機に装着した場合について、先と同様に受信レベルを測定した。結果を図14および図15に示す。
図14および図15から、積層枚数が増えることにより放射利得の改善程度が増加することがわかる。
【0039】
(具体例1−3)
図16に示す試料1〜6の第1積層体を作成し、具体例1−2と同様に放射電磁界を測定した。
なお、図16において、試料1〜3は下記の製造方法Aにしたがって作成された第1積層体であり、また試料4〜6は下記の製造方法Bにしたがって作成された第1積層体である。
<製造方法A>
絶縁層を構成する樹脂フィルムに、真空蒸着法により軟磁性金属層を構成する合金膜を形成することにより軟磁性シートを得る。軟磁性合金層の膜厚は図16に記載の通りである。この軟磁性シートを図16に記載されている積層枚数だけ積層することにより第1積層体を得る。得られた第1積層体の厚さは図16の通りである。
<製造方法B>
膜厚9μmのポリアミド樹脂フィルム上に、下地層を無電解めっきにより50nm形成する。各試料におけるめっきの材質は図16に示す通りである。下地層を形成した後に、下地層上に電解めっきにより図16に示す軟磁性合金層を電解めっきにより形成する。そしてその後、軟磁性合金層上に熱融着層としてナイロン系樹脂を図16に示す厚さだけ塗布する。続いて、ポリアミド樹脂フィルムを剥離することにより、軟磁性金属層と絶縁層としての熱融着層とが積層された軟磁性シートを得る。この軟磁性シートを図16に記載されている積層枚数だけ積層することにより第1積層体を得る。さらにその後、この第1積層体を170℃で30分保持することにより、熱融着層を硬化させた。
【0040】
放射電磁界を測定し、270〜300度(具体例1−2参照)の範囲における利得改善効果を図16に示す。なお、この利得改善効果は、第1積層体を装着しない携帯電話機を基準としている(具体例1−2の基準)。図16に示すように、本発明による第1積層体を携帯電話機に装着することにより、空間側の放射電磁界の利得が著しく改善されることが確認された。
【0041】
(具体例1−4)
厚さ13μmのポリアミド樹脂フィルム上に下地金属層として厚さ0.2μmのNi膜(保磁力:8690A/m(110エルステッド)、異方性磁界:21330A/m(270エルステッド)、磁歪:負)を真空蒸着法により形成した。また、同様のポリアミド樹脂フィルムに下地金属層として厚さ0.2μmの80wt%Ni−Fe合金膜(保磁力:711A/m(9エルステッド)、異方性磁界:1422A/m(18エルステッド)、磁歪:正)を形成した。下地金属層上に26wt%Fe−Ni合金(保磁力:948A/m(12エルステッド)、異方性磁界:1738A/m(22エルステッド)、磁歪:負)をめっきして厚さ0.2μmの軟磁性金属層(Fe−Ni層)を形成して軟磁性シートを得た。続いて、溶剤で薄めて粘度を約100cPとしたエポキシ樹脂を作製し、軟磁性シートの軟磁性金属層表面に塗布した。この後、溶剤を一部蒸発させ、粘着性が残っている状態で軟磁性シート同士を積層して第1積層体を得た。なお、この第1積層体は、軟磁性シートを3層だけ積層したものである。
【0042】
以上の2種類の第1積層体について具体例1−1と同様に複素透磁率を測定した。なお、この測定には、凌和電子製造(株)製の透磁率測定装置PMF−3000を用いた。その結果を図17に示す。なお、図17において、(Ni−Fe/Ni)とはNi下地層上に26wt%Fe−Ni合金を形成した軟磁性シートを用いた場合を示している。また、図17において、(Ni−Fe/Ni−Fe)とは、80wt%Ni−Fe合金層上に26wt%Fe−Ni合金を形成した軟磁性シートを用いた場合を示している。
【0043】
80wt%Ni−Fe蒸着膜を下地金属層とする場合と比較すると、Ni蒸着膜を下地金属層とする場合の複素透磁率のμ”が2山分布となり、かつピーク値が高周波側に現れる傾向が認められた。このように、めっき膜よりも保磁力の大きい材料で下地金属層を構成することにより、軟磁性金属層の異方性磁界を大きくして、共鳴周波数を高周波化することが可能となる。
なお、エポキシ樹脂で3層に積層した積層体の複素透磁率の周波数依存性は、積層前の軟磁性シート単体における特性とほぼ同等であり、エポキシ樹脂接着が複素透磁率に与える影響は無視し得ることがわかった。同様の積層プロセスを800cPの粘度を有するシリコーン樹脂で検討したが、シリコーン樹脂接着による複素透磁率の変化は認められなかった。
【0044】
(具体例1−5)
厚さ13μmのPETフィルム上に下地金属層として厚さ0.1μmのNi膜を真空蒸着法により形成した。PETフィルムには真空蒸着前に膜の密着性を良くする目的でボンバード処理を施した。このフィルムに20wt%〜80wt%Fe−Ni合金をめっきして厚さ0.2μmの軟磁性金属層としてのFe−Ni層を形成して軟磁性シートを得た。続いて、溶剤で薄めて粘度を約300cPとしたエポキシ樹脂を作製し、軟磁性シートの積層軟磁性金属表面に塗布した。この後、溶剤を一部蒸発させ、粘着性が残っている状態で軟磁性シート同士を積層して第1積層体を得た。なお、この第1積層体は、軟磁性シートを3層だけ積層したものである。
【0045】
以上の第1積層体について、Fe−Ni膜のFe含有量に対して二段に変化する高周波側のμ’が減衰を始める周波数(fμ’att)およびμ”のピークが現れる周波数(fμ”peak)をプロットした結果を図18に示す。図18より、Feが20wt%より多く80wt%より少ない領域、特に60wt%Fe−Ni付近の組成で透磁率の劣化が少なく、共鳴周波数が高周波側にシフトすることがわかる。Fe含有量が多いほど飽和磁化が大きくなると同時に電気抵抗が大きくなることが、渦電流の低減と共鳴周波数の高周波化に寄与すると考えられる。
【0046】
軟磁性金属層を60wt%Fe−Ni合金とした第1積層体を携帯電話ディスプレイ近傍とファントムの間に配置させ、3m法による受信レベルを測定した結果、約1.8dBの放射効率の改善が確認された、ファントム側では、利得が減少しており、SARに対しても良好であることが確認された。
【0047】
(具体例1−6)
厚さ13μmのPETフィルム上に下地金属層として厚さ0.1μmの80wt%Ni−Fe合金膜(保磁力:1975A/m(25エルステッド)、異方性磁界:2844A/m(36エルステッド)、磁歪:正)を真空蒸着法により形成した。PETフィルムには真空蒸着前に膜の密着性を良くする目的でボンバード処理を施した。このフィルムに26%Fe−Ni合金(保磁力:1817A/m(23エルステッド)、異方性磁界:3239A/m(41エルステッド)、磁歪:正)をめっきして厚さ0.2μmの軟磁性金属層としてのFe−Ni層を形成して軟磁性シートを得た。続いて、軟磁性シートを3枚重ねて160℃および220℃の2種類の温度で60秒間熱圧着することにより第1積層体を得た。なお、付与された圧力は5MPaである。
【0048】
得られた積層軟磁性部材について具体例1と同様に複素透磁率を測定した。その結果を図19に示す。図19より、160℃よりも220℃で熱圧着するほうが高周波での複素透磁率が高周波側に伸びているのがわかる。高温におけるPETの収縮が軟磁性金属層の磁気弾性エネルギを増大させて異方性磁界を大きくするので、複素透磁率の高周波化が可能となる。
【0049】
220℃で熱圧着した積層軟磁性部材を携帯電話ディスプレイ近傍とファントムの間に配置させ、3m法による受信レベルを測定した結果、約1.6dBの放射効率の改善が確認された、ファントム側での利得の減少も確認された。
【0050】
(具体例1−7)
厚さ13μmのPETフィルム上に下地金属層として厚さ0.35μmのNi膜(保磁力:9480A/m(120エルステッド)、異方性磁界:19750A/m(250エルステッド)、磁歪:負)を真空蒸着法により形成した。PETフィルムには真空蒸着前に膜の密着性を良くする目的でボンバード処理を施した。このフィルムに30wt%Fe−Ni合金(保磁力:1422A/m(18エルステッド)、異方性磁界:2607A/m(33エルステッド)、磁歪:正)をめっきして厚さ0.25μmの軟磁性金属層としてのFe−Ni膜を形成して軟磁性シートを得た。なお、Ni膜蒸着後、PETフィルムは所定時間大気に晒されている。Fe−Ni膜形成後に、透過型電子顕微鏡により軟磁性シートの断面構造を観察した。観察された顕微鏡像を図20に示す。NiとFe−Ni合金界面に3〜15nmの酸化膜が認められた。
【0051】
得られた軟磁性シートを5枚重ねて200℃で60秒間加圧する熱圧着を行うことにより50mm×30mmのサイズの第1積層体を得た。この第1積層体に両面粘着テープを貼り、これを携帯電話機表面とアンテナの間に固定し、電波暗室中でファントムに隣接させて配置した。携帯電話機から発信させた電磁波を3m法で受信した結果、多層膜を配置したことにより、1.7dBの放射効率改善が認められた。
【0052】
(具体例1−8)
電波暗室において、携帯電話機高さと受信アンテナ高さを1.4m一定とし、携帯電話機の給電点位置に対して幅30mm、長さ30〜60mmの第1積層体をアンテナとファントム間に配置して3m法による受信レベルを測定した。なお、第1積層体は、具体例1−5で得られたものを用いた。その結果、30〜60mmの多層膜の長さが30mmから60mmの範囲では第1積層体の長さによらず、逆Fアンテナ給電点より11mm±3mm下側に第1積層体の重心を配置した場合に放射効率の改善効果が著しかった。この位置はアンテナの構造、配置により異なるが、給電点位置から50mmを超える距離だけ離した位置に本発明による第1積層体を配置すると、放射効率の改善効果が著しく小さくなる。
【0053】
(具体例2)
厚さ6μmのPETフィルム40に0.05μmのCo膜(保磁力:55300A/m(700エルステッド)、異方性磁界:94800A/m(1200エルステッド)、磁歪:負)41を真空蒸着した後にCo膜41上に厚さ0.2μmの27%Fe−Ni合金膜(保磁力:1264A/m(16エルステッド)、異方性磁界:2370A/m(30エルステッド)、磁歪:正)42をめっきしてシート体(第1積層体)aを得た。また、厚さ6μmのPETフィルム50に厚さ0.033、0.086、0.144および0.277μmのNi膜(保磁力:3160A/m(40エルステッド) 、異方性磁界:22120A/m(280エルステッド)、磁歪:正)51を蒸着したシート体(第2積層体)bを得た。
【0054】
以上のシート体aおよびシート体bを用いて、2種類の積層軟磁性部材AおよびBを得た。積層軟磁性部材Aは、シート体aを3枚とシート体bを1枚重ねた状態で200℃で60秒間熱圧着することにより作成されたものである。作成された積層軟磁性部材Aの断面構造を図21(a)に示している。なお、積層軟磁性部材Aについては、シート体bにおけるNi膜51の厚さが異なる4種類の積層軟磁性部材Aを作成した。
積層軟磁性部材Bは、シート体aを3枚と厚さ6μmのPETフィルム40単体を最上層に位置するシート体aの表面に重ねた状態で熱圧着することにより作成されたものである。作成された積層軟磁性部材Bの断面構造を図21(b)に示している。
得られた積層軟磁性部材AおよびBを各々携帯電話機のアンテナとファントムとの間に配置して3m法により放射特性を測定した。なお、積層軟磁性部材Aは、ファントムとシート体aとの間にシート体bが配置されるように携帯電話機内に配設した。測定結果を図22に示す。なお、図22において、「27%Fe−Ni/Ni」との表記は積層軟磁性部材Aを示し、括弧内の数字はシート体bにおけるNi膜51の厚さを示している。また、「27%Fe−Ni」との表記は積層軟磁性部材Bを示し、「Blank」との表記は積層軟磁性部材A、Bともに配設していないことを示している。
ファントムとの間にNi膜51が挿入された形態の積層軟磁性部材Aは、積層軟磁性部材Bに対して、放射効率がさらに0.5dB改善されることが確認された。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、例えば携帯電話機において、人体頭部と反対側の電磁波の放射効率を改善できるとともに、人体頭部側の電磁波レベルを低減し、SARを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による軟磁性シートの一例を示す断面図である。
【図2】本発明による軟磁性シートの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明による第1積層体の一例を示す断面図である。
【図4】本発明によるシート状部材の例を示す断面図である。
【図5】本発明による第1積層体の製造方法の一例を示す図である。
【図6】本発明による第1積層体の製造方法の他の例を示す図である。
【図7】本発明による第1積層体の製造方法の他の例を示す図である。
【図8】本発明による第1積層体の製造方法の他の例を示す図である。
【図9】携帯電話機に本発明によるシート状部材を配設した状態を模式的に示す図である。
【図10】具体例1で得られた第1積層体の複素透磁率の周波数特性を示すグラフである。
【図11】従来例で得られた積層軟磁性部材の複素透磁率の周波数特性を示すグラフである。
【図12】具体例1−2における放射電磁界の測定結果を示すグラフである。
【図13】具体例1−2における放射電磁界の測定結果を示すグラフである。
【図14】具体例1−2における放射電磁界の測定結果を示すグラフである。
【図15】具体例1−2における放射電磁界の測定結果を示すグラフである。
【図16】具体例1−3にて用いた第1積層体の仕様を示す図表である。
【図17】具体例1−4で得られた第1積層体の複素透磁率の周波数特性を示すグラフである。
【図18】具体例1−5で得られた第1積層体の軟磁性金属層中のFeの含有量とμ’減衰周波数およびμ”ピーク周波数の関係を示すグラフである。
【図19】具体例1−6で得られた第1積層体の複素透磁率の周波数特性を示すグラフである。
【図20】具体例1−7で得られた第1積層体の断面構造を示す透過型電子顕微鏡像である。
【図21】具体例2で用いた第1積層体の構成を示す図である。
【図22】具体例2における放射電磁界の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1,5,9…軟磁性シート、2,6,16…樹脂フィルム、3,7a,7b…下地金属層、4,8a,8b…軟磁性金属層、10…第1積層体、11…絶縁層、12…軟磁性金属層、13…第2積層体、14…導電層、15…絶縁層、17…樹脂層、20…シート状部材、30…携帯電話機、31…フロント・カバー、32…回路基板、34…ケース、36…内蔵アンテナ、40,50…PETフィルム、41…Co膜、42…Fe−Ni合金膜、51…Ni膜
Claims (3)
- 使用時にユーザに対向する第1の面と前記第1の面に対向する第2の面とを有する機器本体と、
前記機器本体の前記第1の面と前記第2の面との間に配設される軟磁性層を含むシート状部材と、を備え、
前記シート状部材は、
第1積層体と、前記第1積層体に接する第2積層体とを備え、
前記第1積層体は、絶縁層と、前記絶縁層上に形成された下地金属層と、前記下地金属層上に形成された軟磁性金属層とが積層され、
前記第2積層体は、導電層と、前記導電層上に形成される絶縁層とが積層され、
前記第2積層体が前記第1積層体と前記機器本体の前記第1の面との間に配置されるように前記シート状部材を配設したことを特徴とする携帯通信機器。 - 前記第2積層体における前記導電層は、電気抵抗率が50μΩcm以下の金属から構成されることを特徴とする請求項1に記載の携帯通信機器。
- 前記シート状部材の総厚さが0.2mm以下、
前記第1積層体における前記軟磁性金属層の厚さが0.8μm未満、前記絶縁層の厚さが25μm以下、
前記第2積層体における前記導電層の厚さが0.5μm以下、前記絶縁層の厚さが25μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯通信機器。
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