JP2004281814A - 積層軟磁性部材の製造方法、軟磁性シートの製造方法、積層軟磁性部材の熱処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】薄くても高周波数帯域における透磁率の優れた積層軟磁性部材の製造方法等を提供する。
【解決手段】軟磁性シート1、11を絶縁層をはさんで積層することにより、絶縁層と軟磁性金属層とが交互に積層された積層軟磁性部材5を生成する。このとき、軟磁性シート1、11を得て積層する前の段階、あるいは軟磁性シート1、11を積層して積層軟磁性部材5を得た後に、熱処理の目的等に応じて設定した条件で熱処理を施す。熱処理に際しては、加圧処理を合わせて行うこともできる。
【選択図】 図7
【解決手段】軟磁性シート1、11を絶縁層をはさんで積層することにより、絶縁層と軟磁性金属層とが交互に積層された積層軟磁性部材5を生成する。このとき、軟磁性シート1、11を得て積層する前の段階、あるいは軟磁性シート1、11を積層して積層軟磁性部材5を得た後に、熱処理の目的等に応じて設定した条件で熱処理を施す。熱処理に際しては、加圧処理を合わせて行うこともできる。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話等の電子機器に取り付けて使用することのできる積層軟磁性部材の製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータ、携帯電話機等の電子機器の高速動作処理化、デジタル化の発展に従って、電磁波障害(EMI:Electromagnetic Interference)が増加している。特に、デジタル機器はノイズにより誤動作を起こすこともあることから、デジタル機器から発生するノイズの低減が重要である。
現在も普及率が伸び続けているパーソナルコンピュータについてみると、CPUのクロック周波数の高周波化により、発生するノイズの周波数も一段と高くなってきている。クロック周波数が1GHzを超えるCPUが実用化されており、ノイズ対策の対象周波数は、5GHz程度の高周波帯域まで広がってきた。
従来、ノイズ対策の1つの手段として磁性材料で構成したノイズフィルタによりノイズを吸収することが行われている。ノイズフィルタを構成する代表的な磁性材料としてスピネル型の結晶構造をもつフェライト材料がある。高周波帯域では電気抵抗の大きい材料ほど渦電流損失が小さくなりノイズ吸収に有利となるから高周波帯域に関してはフェライト材料の中でも電気抵抗の大きいNi系フェライト材料が用いられてきた。しかし、ノイズがギガヘルツの帯域となると、「Snoekeの限界」が問題となる。つまり、フェライト材料のノイズ吸収帯域の上限は1GHzであり、近時の高周波ノイズに対応することは難しい。しかもフェライト材料は脆性材料であることから、落下、衝撃等で破壊されることがあった。
【0003】
1GHzを超える高周波領域でのノイズ吸収特性の優れた材料として、軟磁性金属粉末を樹脂、ゴム中に分散させた複合軟磁性部材が提案されている。例えば、扁平状のFe−Si系軟磁性合金粉末をゴム、樹脂中に配向・配列した複合磁性材料が提案されている(例えば特許文献1、非特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−35927号公報
【非特許文献1】
“工業材料”、平成10年(1998年)10月号、p.31〜35、p.36〜40
【0005】
この複合磁性材料は、高周波、かつ広帯域において優れたノイズ吸収特性を有している。しかも、ベースが可撓性のあるゴム、樹脂から構成されているため、フェライト材料のような落下、衝撃による破損の心配はない。したがって、この複合磁性材料は、極めて実用的なノイズ吸収体であるといえる。
【0006】
複合軟磁性部材は、軟磁性金属粉末をゴム、プラスチック等の絶縁体マトリックスに混合分散させ、プレス成形・押出し成形およびカレンダーロール成形等により作成される。マトリックスおよび加工法を選択することにより、0.25mm程度から数mm程度のシート状あるいはブロック状等種々の形態の部材を作成することができる。また、マトリックスを選択し、かつ厚さを制御することにより、可撓性を付与したり、逆に剛性を高めたりすることもできる。また、マトリックスを選択することにより、250℃程度の高温での使用も可能である。
【0007】
軟磁性金属粉末としては、Fe−Si系、Fe−Si−Al系、ステンレス系の材質が実用化されている。電磁気特性を決定づける要素として、磁性材料自身の特性、磁性粉末の形状・大きさ、マトリックスに対する粉末の混合比率、配向・配列等が挙げられる。広帯域・高磁気損失特性を得るための主要なポイントの一つは、粉末の形状・大きさと配向度にある。具体的には、扁平状(鱗片状)のアスペクト比(縦と横の寸法比)が大きいほど大きな磁気損失が得られるため、広帯域化への対応が可能となる。ただし、偏平状の粉末を得ることができない磁性材料もあり、また、マトリックスと複合化する場合に粉末に付与される圧縮や引張り応力によって磁歪定数の関係から特性が劣化することもある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
携帯電話機は、年々小型・軽量化されてきており、携帯電話機使用時にそのアンテナの位置は人体、具体的には頭部の極めて近い位置に配置されることになる。このときアンテナの特性は人体の影響を受け、アンテナ性能が低下する傾向にある。つまり、アンテナから放射される電磁波の一部が人体に吸収されることに起因する電力損失が、受信感度の低減、電池の寿命低減を招く。
一方で、人体による電磁波の吸収量が増加し、人体への影響が懸念されている。したがって、日本を含め各国で局所吸収指針が定められている。各国が局所吸収指針において定める人体による電磁波の局所吸収の評価量として、以下の式で定義されるSAR(Specific Absorption Rate:局所吸収量)が用いられている。
SAR=σE2/2ρ
(E:人体に侵入した電界,σ:人体組織の誘電率、ρ:人体組織の密度)
そのため、携帯電話機から放射された電磁波の実効的な利用率、つまり放射効率を向上しつつSARを低減する方法として、低損失磁性板をアンテナ近傍に配置する方法が提案されている。ところが、磁性微粉と樹脂からなる複合材料を用いた磁性板を使用する方法では、板厚を5mmとしても放射効率改善効果が0.6dBと小さい。携帯電話機の小型、軽量化に対応するため、板厚を0.2mm以下、さらには0.1mm以下にすることが望ましい。したがって、低損失磁性板を携帯電話機へ適用することは困難である。
【0009】
このため放射効率向上およびSAR対策部材として、上記の複合軟磁性部材を携帯電話機の筐体内部または外部に貼り付けることができる。ところが、前述した複合軟磁性部材は、例えば、800MHz〜3GHzといった高周波数帯域における透磁率が低いため、厚さを0.2mm以下にしたのでは、所望の特性を得ることが困難である。
【0010】
そこで本発明は、薄くても高周波数帯域における透磁率の優れた積層軟磁性部材の製造方法等を提供する。さらに、本発明は、そのような積層軟磁性部材に用いることが好適な軟磁性シートの製造方法を提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
従来の複合軟磁性部材は、前述のように、軟磁性金属粉末をゴム、プラスチック等の絶縁体マトリックスに混合分散させた構造を有している。ここで、マトリックス中に分散された軟磁性金属粉末間には反磁界が生じることになる。また、軟磁性金属粉末は、主に水アトマイズ法によって製造されるため、その後に熱処理を施しても、応力が残留してしまう。そのために、複合軟磁性部材は、800MHzを超える高周波数帯域における透磁率が劣る。
そこで本出願人は、従来の複合軟磁性部材のように軟磁性金属粉末を分散させるのではなく、軟磁性金属からなる複数の層を絶縁層が介在した形態で積層することを検討した。そして、樹脂製のフィルム上にめっき等の手段により軟磁性金属膜を形成したシートを作成し、そのシートを積層することにより、厚さが0.2mm以下の積層軟磁性部材を得ることができ、この積層軟磁性部材は800MHzを超える高周波数帯域において従来の複合軟磁性部材に比べて優れた透磁率を示すことを確認するに到り、既に、「複数の軟磁性金属層と、前記複数の軟磁性金属層の間に介在する絶縁層と、が積層する積層体である積層軟磁性部材」、「絶縁樹脂フィルムと、前記絶縁樹脂フィルム上に直接または間接的に形成された軟磁性金属層と、を備えた」ことを主旨とする軟磁性シート等についての出願を為している(特開2002−359113号公報)。
そして、このような複合軟磁性部材を、携帯電話機の筐体内部に収めたり外部に貼り付けたりすることで、高周波帯域における電磁波の放射効率を向上させ、SARを低減させることができるのである。
【0012】
本発明者らは、上記のような積層軟磁性部材、軟磁性シートについて、さらに鋭意検討を進めた。
その過程で、PET(ポリエチレンテレフタレート)等から形成される絶縁層上に、下地金属層を真空蒸着し、さらにその上に軟磁性金属層をめっきして形成すると、軟磁性金属層に応力が発生し、恐らくこれが原因となって、積層軟磁性部材、軟磁性シートの磁気特性が損なわれていることを見出した。
【0013】
そこでなされた本発明の積層軟磁性部材の製造方法は、複数の軟磁性金属層と、複数の軟磁性金属層の間に介在する絶縁層とを積層させた積層軟磁性部材の製造方法であって、絶縁層を形成する絶縁樹脂フィルム上に軟磁性金属層を形成することで軟磁性シートを得るシート生成工程と、軟磁性シートを複数枚積層することで積層軟磁性部材を得る積層工程と、シート生成工程で得られた軟磁性シートまたは積層工程で得られた積層軟磁性部材に対し、完成状態の積層軟磁性部材に求められる磁気特性に応じて設定された条件で熱処理を施す熱処理工程と、を有することを特徴とする。
シート生成工程で得られた軟磁性シートまたは積層工程で得られた積層軟磁性部材に対し、熱処理を施すと、その温度、時間等の条件に応じ、積層磁性部材の磁気特性が変化する。これに基づき、例えば、特定の周波数領域で高い磁気特性を有すること、あるいは特定の方向に高い磁気特性を有すること、逆に異方性の少ない(無い)安定した磁気特性を有すること等、完成状態の積層磁性部材の用途等によって求められる磁気特性に応じ、最適な熱処理の条件を設定するのである。ここで完成状態とは、熱処理を経た状態を示すものである。このような熱処理条件は、絶縁層を形成する絶縁樹脂フィルムの厚さや材質、軟磁性金属層の厚さや組成等によっても変わる。
このような熱処理工程は、積層工程の前段で行うこともできるし、積層工程の後段で行うこともできる。さらには、熱処理工程を、積層工程と同時に行うこともでき、そのような場合は、シート生成工程で得られた複数枚の軟磁性シートを、互いに対向し、かつ所定の温度に加熱しておいたローラ間に通して積層するのが好ましい。
また、熱処理工程にて、軟磁性シートまたは積層軟磁性部材に、熱を加えるだけでなく、所定の圧力を加えるようにしてもよい。
ここで、絶縁樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレート製である場合、熱処理の温度は70〜150℃とするのが好ましく、また一定時間継続して熱処理を行う場合、その継続時間は60秒以上とするのが好ましい。さらに、加圧処理を行う場合には、加える圧力を180〜2000MPaとするのが好ましい。
ところで、このような積層軟磁性部材の軟磁性シートは、絶縁樹脂フィルム上に直接または間接的に軟磁性金属層を形成した構成となっている。絶縁樹脂フィルム上に間接的に軟磁性金属層を形成する場合、絶縁樹脂フィルム上に金属下地層を形成した後、金属下地層上に軟磁性金属によるめっきを施すことができる。
【0014】
本発明は、絶縁樹脂フィルム上に、軟磁性金属層が形成された軟磁性シートの製造方法として捉えることもできる。この場合、本発明は、絶縁樹脂フィルム上に、軟磁性金属によるめっきを直接または間接的に施すことで軟磁性金属層を形成して軟磁性シートを得る工程と、軟磁性シートによって構成される軟磁性部材の完成状態で求められる磁気特性に応じて設定された条件に応じ、軟磁性シートの磁気特性を調整する工程と、を有することを特徴とする。
ここで、磁気特性を調整する工程は、軟磁性シートを加熱することで行うのが好ましい。また、軟磁性シートによって構成される軟磁性部材の完成状態で求められる磁気特性に応じて設定された時間だけ、軟磁性シートを継続して加熱することもできる。さらに、軟磁性シートを加熱するときに、軟磁性シートに所定の圧力をかけることもできる。
このような軟磁性シートは、1枚のみで軟磁性部材を構成することもできるが、複数枚を積層して軟磁性部材(積層軟磁性部材)を構成することもできる。
また、軟磁性シートを得る工程では、絶縁樹脂フィルム上に金属下地層を形成した後、金属下地層上に軟磁性金属によるめっきを施すことができる。
ところで、絶縁樹脂フィルムは、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等の耐熱性を有する樹脂材料で形成することもできるが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートによって形成することもできる。
【0015】
また、本発明は、複数の軟磁性金属層と、複数の軟磁性金属層の間に介在する絶縁層とを積層させた積層軟磁性部材に対し、完成状態の積層軟磁性部材に求められる特性に応じて熱処理を施すことを特徴とする積層軟磁性部材の熱処理方法として捉えることもできる。
ここで、上記積層軟磁性部材の製造方法に示したように積層軟磁性部材の製造と熱処理とを連続した工程で行うこともできるし、製造された状態の積層軟磁性部材に対し、熱処理のみを施すようにしてもよい。
このような熱処理は、積層軟磁性部材の磁気特性を調整するために行うことができる。
本発明者らは、上記検討の際に、絶縁層上に下地金属層を真空蒸着し、さらにその上に軟磁性金属層をめっきして形成すると、恐らく軟磁性金属層に発生する応力に起因して、積層軟磁性部材、軟磁性シートにロール状の反りが発生することも見出した。これは、得られた積層軟磁性部材、軟磁性シートを携帯電話機等に組み込む際のハンドリングの妨げとなり、結果的に作業性を損なう要因となる。このため、熱処理を、積層軟磁性部材の反りを調整するために行うこともできる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を説明する。
<軟磁性シート>
図1および図2は、本発明の積層軟磁性部材に用いられる軟磁性シートの例を示している。
図1に示す軟磁性シート(軟磁性部材)1は、樹脂フィルム(絶縁樹脂フィルム)2と、樹脂フィルム2上に形成された下地金属層3と、下地金属層3上に形成された軟磁性金属層4とから構成される。
樹脂フィルム2は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等の耐熱性を有する樹脂材料、または、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を用いることができるが、本実施の形態ではPETを用いるものとする。
軟磁性金属層4は、軟磁性を示す遷移金属元素のいずれか、あるいは遷移金属元素と他の金属元素とからなる合金により構成することができる。具体的な例としては、Fe、CoおよびNiの一種以上を主成分とする合金であり、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Co−Ni系合金が該当する。これらの中で、飽和磁束密度が1.0T以上の合金が望ましい。またこの中で、Feを20〜80wt%含有するFe−Ni系合金が本発明にとって望ましい。特に、Feを30〜70wt%、さらにはFeを40〜65wt%含有するFe−Ni系合金が望ましい。また、Fe−Co系合金、Co−Ni−Fe系合金を用いるのが望ましい。これら合金において、15at%以下のNb、Mo、Ta、W、Zr、Mn、Ti、Cr、Cu、Coの一種以上を含有することができる。また、軟磁性金属層4をめっきで形成する場合にはCおよびS等の元素を不可避的に含むが、本発明の軟磁性金属層4は、そのような元素の含有を許容する。
軟磁性金属層4は、結晶質合金および非晶質合金のいずれの態様であっても構わない。非晶質合金としては、Co系およびFe系の非晶質合金を用いることができる。また、Fe系の微結晶合金を用いることも本発明は許容する。微結晶合金は、一般的に、結晶粒径が0.01μm以下の微細な結晶が主体をなす合金として知られている。
【0017】
軟磁性金属層4は、めっき(電解または無電解)、真空蒸着法、スパッタリング法等の各種の膜形成プロセスによって作成することができる。これらの膜形成プロセスは、単独で行うことができる。したがって、めっきのみで軟磁性金属層4を形成することもできるし、蒸着のみで軟磁性金属層4を形成することもできる。もちろん、複数の膜形成プロセスを組み合わせることもできる。めっきは、真空蒸着法、スパッタリング法に比べて低温で膜を形成することができる点で本発明にとって好適である。本発明において、軟磁性金属層4は樹脂フィルム2上に形成するため、樹脂フィルム2に熱的な影響を与えないことが望ましいからである。また、めっきは、スパッタリング法に比べて、短時間で所定の厚さの膜を得ることができるメリットがある。なお、めっきにより軟磁性金属層4を得る場合、めっき浴中に含まれているS等の元素が軟磁性金属層4に混入することから、他のプロセスによる軟磁性金属層4との区別ができる。
【0018】
下地金属層3は、軟磁性金属層4を電解めっきによって樹脂フィルム2上に形成する場合に必要となる導電層としての役割を果たす。下地金属層3は、例えば、真空蒸着法によって形成することができる。また、無電解めっきにより下地金属層3を形成した後に、電解めっきにより軟磁性金属層4を形成することもできる。電解めっき以外の方法で軟磁性金属層4を形成する場合には、下地金属層3を形成する必要はない。つまり、下地金属層3は本発明において選択的な要素である。もっとも、下地金属層3に軟磁性金属を用いる場合には、下地金属層3が軟磁性金属層4の一部を構成することになる。
【0019】
次に、軟磁性シート1において、樹脂フィルム2の厚さは、50μm以下とする。樹脂フィルム2は、本発明の積層軟磁性部材において、軟磁性金属層4同士を絶縁する機能を果たす。しかし、この絶縁層が厚くなると軟磁性金属層4の占有率が低下し、ひいては積層軟磁性部材としての透磁率が低下するためである。望ましい樹脂フィルム2の厚さは20μm以下である。もっとも、極端に薄い樹脂フィルム2は製造が困難であるとともに、軟磁性金属層4を形成するための所定の強度を持つことができなくなる。したがって、0.2μm以上あるいは、2μm以上の厚さとすることが推奨される。
【0020】
軟磁性金属層4は、1μm以下の厚さとすることが望ましい。これを超える厚さでは、例えば800MHzを超える高周波数帯域での渦電流損失が大きくなり、磁性体としての機能が減じてしまうからである。したがって、本実施の形態において、軟磁性金属層4の厚さは、0.5μm以下とすることが望ましい。軟磁性金属層4は、緻密に形成されている必要性が高く、したがって、各種プロセスによって緻密な膜を形成することができる程度の最低限の膜厚を有していることが必要である。下地金属層3は、電解めっき時の導電層として機能するものであり、0.01μm程度の厚さを有していれば足りる。
【0021】
図2に示す軟磁性シート(軟磁性部材)11は、図1に示した軟磁性シート1の軟磁性金属層4が樹脂フィルム2の片面に形成されているのに対して、両面に形成されている点で相違する。つまり、軟磁性シート11は、樹脂フィルム(絶縁樹脂フィルム)12と、樹脂フィルム12の表裏両面に形成された下地金属層13a、13bと、下地金属層13a、13b上に形成された軟磁性金属層14a、14bとから構成される。樹脂フィルム12、下地金属層13a、13bおよび軟磁性金属層14a、14bの材質、寸法および作成プロセスは、軟磁性シート1と同様にすればよい。
また、本発明の軟磁性シート11において、軟磁性金属層14aの上に樹脂層を形成することもできる。
【0022】
<積層軟磁性部材>
図3は本実施の形態による積層軟磁性部材(軟磁性部材)5の一例を示す断面図である。
図3に示すように、積層軟磁性部材5は、絶縁層6と軟磁性金属層7とが交互に積層された断面構造を有している。ここで、積層軟磁性部材5全体としての厚さは、0.2mm以下とすることが重要である。前述のように、携帯電話機に積層軟磁性部材5を貼り付ける場合には、携帯電話機の小型化に対応する必要があるからである。より望ましい厚さは、0.15mm、さらには0.1mm以下である。
図3の(a)および(b)に示すように、図1および図2で示した軟磁性シート1、11を積層することにより積層軟磁性部材5を得ることができる。したがって、軟磁性シート1、11の樹脂フィルム2、12が絶縁層6を構成することになる。そのため、絶縁層6の厚さは50μm以下となる。もっとも、軟磁性シート1、11を積層する場合に接着剤を層間に介在させると、絶縁層6が樹脂フィルム2、12の厚さより厚くなる場合がある。したがって、接着剤を用いる場合には、絶縁層6の厚さが50μm以下となるように樹脂フィルム2、12の厚さを定める必要がある。このとき、接着剤が樹脂で形成されていると、接着剤層も絶縁層6を構成することになる。また、軟磁性金属層7は、軟磁性シート1、11における軟磁性金属層4、14a、14bが該当することになる。
【0023】
<軟磁性シート、積層軟磁性部材の製造方法>
以下、図4〜図6に基づいて、積層軟磁性部材5を得るのに好適な製造方法を説明する。なお、図4は、積層軟磁性部材5を得るための基本的な製造工程の全体を、図5は図1に示した軟磁性シート1を用いて積層軟磁性部材5を得る製造方法を、図6は図2に示した軟磁性シート11を用いて積層軟磁性部材5を得る製造方法を示している。
【0024】
図4、図5(a)または図6(a)において、まず軟磁性シート1、11を得るには、真空引きした蒸着装置内の坩堝で、下地金属層3、13a、13bの原料となる金属を溶解した後、この金属を、樹脂フィルム2、12となるPETフィルムに蒸着させることで、下地金属層3、13a、13bを樹脂フィルム2、12上に成膜させる(ステップS101)。
続いて、図4、図5(b)または図6(b)に示すように、下地金属層3、13a、13bが形成された樹脂フィルム2、12を、めっき装置内で、例えば電解メッキにより軟磁性金属層4、14a、14bを形成する(ステップS102)。
これにより、軟磁性シート1、11が得られる。なおこのとき、蒸着装置、めっき装置では、樹脂フィルム2、12として帯状のものをロール状に巻き回したロール体を用い、このロール体から繰り出した樹脂フィルム2、12に対し、蒸着、メッキ処理を施す。したがって、得られた軟磁性シート1、11も、帯状でロール状に巻かれたロール体の形態をなしている。
【0025】
この後、図4、図5(c)または図6(c)に示すように、得られた複数枚の軟磁性シート1、11を積層する(ステップS103)。
これには、軟磁性シート1、11に接着剤を塗布した後(ステップS103−1)、これらを積層して接着する(ステップS103−2)。
積層工程では、例えば、図7に示すように、互いに積層する2枚の軟磁性シート1、11を、互いに対向したローラ21、22間に導き、ローラ21、22で抑えつけることで2枚の軟磁性シート1、11を積層することができる。
また、図6に示した構成の場合、軟磁性シート11は、表裏両面に軟磁性金属層14a、14bが露出した構造をなしているので、そのままで積層することはできない。そこで、樹脂フィルム(絶縁樹脂フィルム)15を別途用意し、この樹脂フィルム15を介在させて軟磁性シート11を積層する(図6(c))ことにより、積層軟磁性部材5を得る。
【0026】
さて、本実施の形態では、図4(b)に示すように、軟磁性シート1、11を得て積層する前の段階、あるいは図4(c)に示すように、軟磁性シート1、11を積層して積層軟磁性部材5を得た後に、所定の熱処理を施す(ステップS200)。
具体的には、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5に対し、予め設定した条件で熱処理を施す。また、所定圧力の加圧処理を合わせて行うこともできる。また、熱処理は、例えば軟磁性シート1、11同士の接合に接着剤を用いた場合には、接着剤の乾燥のための加熱を兼ねたものとして行うこともできる。
このような熱処理条件、加圧処理条件は、完成状態の積層軟磁性部材5の用途、積層軟磁性部材5を構成する樹脂フィルム2、12の厚さや材質、下地金属層3、13a、13bや軟磁性金属層4、14a、14bの厚さ、組成、完成状態の積層軟磁性部材5における軟磁性シート1、11の積層枚数等、種々の条件によって変わるため、これらを鑑み、予め最適な熱処理条件、加圧処理条件を設定しておく。
【0027】
一例を挙げれば、軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5を構成する樹脂フィルム2、12が、厚さ13μmのPETフィルムであり、下地金属層3、13a、13bとして厚さ0.014μmのNi膜を真空蒸着により形成し、軟磁性金属層4、14a、14bとして厚さ0.15μmの81wt%Ni−19wt%Fe合金(パーマロイ)膜をめっきにより形成する場合、熱処理温度は、70〜150℃、温度を所定時間保持する場合には、その保持時間を60秒以上とするのが特に好ましい。また、加圧処理を行う場合、その圧力は180〜2000MPaとするのが好ましい。
このような熱処理を施すことで、得られる積層軟磁性部材5の磁気特性を向上させたり、磁気特性の異方性をコントロールしたり、積層軟磁性部材5の反りを防止したりすることが可能となる。
【0028】
なお、このような熱処理は、図7(a)に示すように、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5に対向するヒータ23や、他のヒータによって雰囲気が加熱された空間に、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5を導入して行うことができる。また、加圧処理は、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5にプレスを施すことにより、あるいは図7(a)に示したように対向するローラ21、22間に軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5を通し、ローラ21に所定の圧力を発揮させることで行うことができる。
また、図7(b)に示すように、ローラ21、22自体をヒータ24、25によって所定の温度に加熱し、これらローラ21、22間に軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5を通すことで、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5に対し熱処理を施すこともできる。以下、この後者の方法をロール法と称する。
ロール法の場合、ローラ21自体の自重により軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5に対して圧力を作用させることもできるが、これ以外にローラ21を加圧することで、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5に対し、熱処理と同時に加圧処理を施すこともできる。
【0029】
そして、図4(a)に示したように、上記の積層工程および熱処理工程を完了した積層軟磁性部材5は、プレス加工等によって、所望する形状に加工することもできる。また、切断を行って、所望する寸法に加工することもできる(ステップS104)。
【0030】
上記したような熱処理、加圧処理の、より具体的な条件を例示すれば、上記に例示した軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5において、周波数800MHz以上までμ’の値が一定な磁気特性を得ることを目的とするのであれば、熱処理の温度は85℃以上とするのが好ましい。また熱処理は一定の温度を一定時間を保持するのが好ましく、例えば85℃で熱処理を行う場合、保持時間は10秒以上、さらには60秒以上とするのが好ましい。さらに、加圧処理を行うのであれば、85℃の熱処理を60秒保持する場合、その圧力は460MPa程度とするのが好ましい。
また、周波数1〜3GHzまでμ’が一定な磁気特性を得ることを目的とするのであれば、熱処理の温度は100〜150℃とするのが好ましい。また熱処理に際し一定の温度を一定時間保持するのであれば、例えば100℃の熱処理の場合、保持時間は10秒以上、さらには60秒以上とするのが好ましい。さらに、加圧処理を行うのであれば、85℃の熱処理を60秒保持する場合、その圧力は、920MPa程度とするのが好ましい。
さらに、上記に例示した軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5において、磁気特性において異方性の無い(少ない)ものとするのであれば、熱処理の温度は70〜85℃とするのが好ましい。また熱処理に際し一定の温度を一定時間保持するのであれば、例えば85℃の熱処理の場合、保持時間は10〜60秒とするのが好ましい。また、加圧処理を行うのであれば、例えば461MPaの圧力を加え、熱処理温度を60〜70℃とするのが好ましい。
【0031】
また、上記に例示した軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5において、樹脂フィルム2、12の厚さを6μmとした場合の処理条件についても例を示す。
周波数800MHz以上でμ’が一定な磁気特性を得ることを目的とするのであれば、熱処理の温度は60〜80℃とするのが好ましい。
また、周波数1〜3GHzまでμ’が一定な磁気特性を得ることを目的とするのであれば、熱処理の温度は80〜110℃とするのが好ましい。
さらに、上記に例示した軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5において、磁気特性において異方性の無い(少ない)ものとするのであれば、熱処理の温度は60〜70℃とするのが好ましい。
【0032】
上記したような条件はあくまでも一例である。熱処理、加圧処理の条件は、前述したように、完成状態の積層軟磁性部材5で吸収させたい電磁波の周波数、携帯電話機等の電子機器に対する積層軟磁性部材5の装着位置や向き、積層軟磁性部材5を構成する樹脂フィルム2、12の厚さや材質、下地金属層3、13a、13bや軟磁性金属層4、14a、14bの厚さ、組成等によって変わるものである。また、熱処理時における温度保持時間の長さ、加圧処理の有無等によっても条件は変わる。
さらに、上記に例示した条件も、積層軟磁性部材5に求める磁気特性と異方性とのバランス、さらには製造工程における生産効率(熱処理、加圧処理に費やすことのできる時間の長さ)等によって、採用する条件は変動する。
【0033】
また、熱処理、加圧処理は、軟磁性シート1、11を得て積層する前の段階、軟磁性シート1、11を積層して積層軟磁性部材5を得た後、のどちらで行ってもよいが、同条件の熱処理、加圧処理を行ったとしても、積層の前で行うか、積層の後で行うかによって、得られる磁気特性等が変わり得るため、処理のタイミングに応じて条件を設定する必要がある。
例えば、上記に例示した軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5において、軟磁性シート1、11の積層後に熱処理、加圧処理を行う場合の方が、軟磁性シート1、11の積層前に熱処理、加圧処理を行う場合に較べ、同じ処理条件であれば磁気特性に優れる。
【0034】
【実施例】
以下本発明を具体的実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
膜厚13μmのPETフィルムを用意し、このPETフィルム上(片面)に、真空蒸着により厚さ0.014μmのNi膜を形成した。このとき、PETフィルムは、ロール体から繰り出した帯状のものを用いる。Niを蒸着した後に、以下に示すめっき液を用いてNi膜上に軟磁性合金である81wt%Ni−19wt%Fe合金(パーマロイ)膜を形成し、軟磁性シート1を得た。なおめっき液の条件は、浴温が35〜55℃、PHが2.0〜3.0である。そして、めっき膜厚が0.15μmになるまで、2A/dm2の電流密度で電解した。なお、めっき膜の欠陥防止およびめっき液の表面張力低減のために、界面活性剤を適宜添加した。
【0035】
【0036】
次いで、図8に示すように、得られた軟磁性シート1を、帯状のPETフィルムが連続する方向(長手方向、繰出し方向、以下この方向をR方向と称する)に3cm、PETフィルムの幅方向(以下、この方向をP方向と称する)に5cmの長方形状に打ち抜き加工し、打ち抜かれたシート1Tを、70、80、85、90、100、110、120、130℃の各温度で60秒間保持し、熱処理を行った(加圧処理は行っていない)。また、比較のために、熱処理を行わない軟磁性シート1から得たシート1Tも用意した。
熱処理後の各シート1Tと、熱処理を行わないシート1Tについて、複素透磁率を、凌和電子株式会社製の透磁率測定装置PMF−3000で測定した。測定方向は、各シート1TのP方向とした。
【0037】
その結果を、図9、図10、図11に示す。図9は、複素透磁率の実数成分μ’と周波数の関係を示すものであり、図10は、複素透磁率の虚数成分μ’’と、周波数の関係を示すものである。また、図11(a)は、図9および図10の結果より得られる、μ’が減衰し始める周波数(f(μ’att))およびμ’’のピークが現れる周波数(f(μ’’p))と熱処理温度の関係を示すものであり、図11(b)は、(μ’’/μ’)であるtanδと、熱処理温度の関係を示すものである。なお、図9、図10中、(r.t)とは、熱処理を行わないシート1Tの特性を示すものである。
これらの図9、図10、図11に示すように、熱処理温度を70℃以上とすることで、熱処理を行わないシート1Tに対し、磁気特性が変化しているのは明らかである。具体的には、熱処理温度が70〜85℃ではμ’およびμ’’が大きくなり、熱処理温度がさらに高温になるにしたがい、μ’およびμ’’が高周波側に延びることが分かる。さらに、図11(b)により、熱処理温度を上げると、tanδが小さくなることが分かる。
このようにして、熱処理を施すことで、得られるシート1T、積層軟磁性部材5の磁気特性を向上させることができるのが明らかである。また、熱処理温度を、目的とする周波数帯にあわせて適宜設定することで、より優れた磁気特性を得ることもできる。
【0038】
また、上記実施例1において、PETフィルムの膜厚を6μmとした場合について、同様の実験を行った。なお、熱処理温度は、80、95、110、130℃とした。その結果を図12、図13、図14に示す。
これらの図12、図13、図14に示すように、PETフィルムの膜厚が6μmの場合についても、膜厚が13μmの場合と同様、熱処理を施すことで軟磁性シート1、積層軟磁性部材5の磁気特性を変化させることができ、熱処理温度を適宜設定することで、目的に合わせた優れた磁気特性を得ることが可能である。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様の工程で得たシート1Tを、85℃の熱処理温度で、プレス機により、184、461、922、1843MPaの各圧力で加圧処理した。
各圧力で加圧処理したシート1Tと、加熱処理と加圧処理を施していないシート1T、加圧処理のみ施していないシート1Tについて、複素透磁率と周波数の関係を確認した。なお、測定装置、条件等は実施例1と同様である。
その結果を図15、図16、図17に示す。
これらの図15、図16、図17に示すように、加圧処理条件を変えることで、複素透磁率が変動していることが分かる。詳しくは、図17(a)に示すように、圧力を高めると、μ’が高周波側に伸び、また図17(b)に示すように、圧力を高めると、tanδが小さくなることがわかる。
これにより、加圧処理を行い、その圧力条件を変えることで、得られる軟磁性シート1、積層軟磁性部材5の磁気特性を制御することができるのがわかる。
【0040】
(実施例3)
実施例1と同様の工程で得たシート1Tを、熱処理の時間を変えて評価した。熱処理温度は85℃とし、処理時間(温度保持時間)を、10、30、60、300秒とした。これらのシート1Tについて、周波数10MHzにおけるP方向とR方向のμ’を測定した。
結果を図18に示す。
この図18に示すように、熱処理時間を10秒以上とすることにより、飛躍的にP方向のμ’が向上する。その後も、熱処理時間が長くなるに伴ない、μ’が向上する傾向にある。そして熱処理時間60秒でμ’が最大となるので、最も大きくμ’を向上させるには、熱処理時間を少なくとも60秒とするのが好ましいことがわかる。
また、直交するR方向については、P方向とは逆の傾向を示している。すなわち、熱処理時間を10秒以上とすることにより、R方向のμ’が著しく低下する。その後も、熱処理時間が長くなるに伴ない、μ’が低下する傾向にある。
このようにして、熱処理時間を変えることで、μ’を変動させることができる。このとき、図18を見ればわかるように、熱処理時間が0、つまり熱処理を行わない場合には、P方向よりR方向のμ’の方が大きく、この軟磁性シート1、積層軟磁性部材5は、磁気特性に異方性を有している。このような軟磁性シート1、積層軟磁性部材5に対する熱処理時間が10秒以内であるときに磁気特性の異方性が逆転している。したがって、軟磁性シート1、積層軟磁性部材5に対し、熱処理をかけ、さらにその処理時間を適宜設定することにより、磁気特性に異方性の無い(少ない)、あるいは所望の異方性を有した軟磁性シート1、積層軟磁性部材5を得ることが可能となる。
【0041】
(実施例4)
実施例1と同様の工程で得たシート1Tの磁気特性の異方性について、熱処理温度を変えて評価した。加圧処理を行わない条件(圧力0MPa)下で、熱処理温度を、室温(熱処理を施さない場合:図中では25℃)、70、80、85、100、110、120、130℃とし、温度保持時間は60秒で一定としたシート1Tと、加圧条件(圧力461MPa)下で、熱処理温度を、室温(熱処理を施さない場合)、60、65、70、75、80、90、100、110℃とし、温度保持時間は60秒で一定としたシート1Tについて、それぞれ、周波数10MHzにおけるP方向とR方向のμ’を測定した。
結果を図19に示す。図19(a)は加圧処理を行わない場合、図19(b)は加圧処理を行った場合の結果を示している。
この図19に示すように、加熱処理を施すことにより、P方向とR方向が変化し、特に、図19(a)に示すように、加圧処理を行わない場合には70〜85℃、図19(b)に示すように、加圧処理を行った場合には60〜80℃にかけて、μ’が著しく変化する。そして、P方向においては、加圧処理を行わない場合には熱処理温度85℃、加圧処理を行った場合には熱処理温度80℃にてμ’が最大となるので、最も大きくP方向のμ’を向上させるには、熱処理温度を前記の条件とするのが好ましいことがわかる。
また、P方向と、直交するR方向は、互いに逆の傾向を示している。
このようにして、加圧処理を行わない場合、行った場合とも、熱処理温度を変えることで、μ’を変動させることができる。このとき、図19を見ればわかるように、熱処理温度が室温(図19中では25℃)、つまり熱処理を行わない場合には、P方向よりR方向のμ’の方が大きく、この軟磁性シート1、積層軟磁性部材5は、磁気特性に異方性を有している。ここで、加圧処理を行わない場合には熱処理温度が70〜80℃、加圧処理を行う場合には熱処理温度が60〜70℃、具体的には65℃近辺において、磁気特性の異方性が少なくなっていることがわかる。このような軟磁性シート1、積層軟磁性部材5に対し、一定時間熱処理をかけ、さらにその処理温度を適宜設定することにより、磁気特性に異方性の無い(少ない)、あるいは所望の異方性を有した軟磁性シート1、積層軟磁性部材5を得ることが可能となる。
【0042】
上記実施例4においても、PETフィルムの膜厚を6μmとした場合について、同様の実験を行った(加圧処理を行わない場合のみ)。その結果を図20に示す。
この図20に示すように、PETフィルムの膜厚が6μmの場合についても、熱処理温度が60〜70℃において、磁気特性の異方性が少なくなっており、膜厚が13μmの場合と同様の結果が得られるのがわかる。
【0043】
(実施例5)
次に、熱処理工程を積層前に行った場合(図4(b)の工程順に相当)と、積層後に行った場合(図4(c)の工程順に相当)について評価をした。
実施例1と同様の工程で得たシート1Tを、熱処理を経た後に、接着剤により積層した積層軟磁性部材5と、実施例1と同様の工程で得たシート1Tを、接着剤により積層した後に熱処理を施した積層軟磁性部材5について、実施例1等と同様にして周波数特性を計測した。
このとき、熱処理温度は、120、130、140、150℃とし、加圧処理を、9.3、23kg/cm2の2通りとした。シートの送り速度は226mm/minで一定とした。
結果を図21に示す。ここで、図21において、“−1”、“−2”、“−3”、“−4”の記号を付したものは、以下のような条件である。
“−1”:熱処理後に積層、加圧条件は9.3kg/cm2、
“−2”:熱処理後に積層、加圧条件は23kg/cm2、
“−3”:積層後に熱処理、加圧条件は9.3kg/cm2、
“−4”:積層後に熱処理、加圧条件は23kg/cm2。
【0044】
この図21に示すように、μ’のatt値、μ’’のピーク値とも、積層後に熱処理した方が、高周波数側に伸びる傾向が見られる。また、tanδについても同様に、積層後に熱処理した方が小さくなる傾向が見られる。
このようにして、積層後に熱処理した方が、得られる積層軟磁性部材5の磁気特性的に有利である、と考えられる。
【0045】
(実施例6)
次に、ロール法において条件を変化させた場合の軟磁性シート1の磁気特性の異方性について評価した。
ここで、ローラの温度を80、100、110、120、130℃とし、ローラに圧力はかけない条件とし、それぞれ、周波数10MHzにおけるP方向とR方向のμ’を測定した。ただし、ローラ自体の自重による圧力:2.48kgf/cm2が、シート1Tに作用している。また、ローラによるシート1Tの送り速度は、56.5mm/minとした。
その結果を図22に示す。
この図22に示すように、ロール法においても、加熱処理を施すことにより、P方向とR方向の双方においてμ’が変化する。そして、P方向と、直交するR方向は、互いに逆の傾向を示している。これらの傾向は、実施例4(図19(a))と同様である。また、熱処理温度110℃付近で、磁気的な異方性がなくなることが確認できた。
このようにして、ロール法に於いても、熱処理温度を変えることで、μ’を変動させることができるので、軟磁性シート1、積層軟磁性部材5に対し、熱処理をかけ、さらにその処理温度を適宜設定することにより、磁気特性に異方性の無い(少ない)、あるいは所望の異方性を有した軟磁性シート1、積層軟磁性部材5を得ることが可能となる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、薄くても高周波数帯域における透磁率の優れた積層軟磁性部材を提供することができ、しかも、その磁気特性を向上させたり目的に応じて調整したりすることもできる。また、積層軟磁性部材の反りをコントロールして組立時の作業性を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における軟磁性シートの構成を示す断面図である。
【図2】他の軟磁性シートの構成を示す断面図である。
【図3】積層軟磁性部材の構成を示す断面図である。
【図4】積層軟磁性部材の製造工程を示す図である。
【図5】図1に示した軟磁性シートを用いて積層軟磁性部材を製造するときの流れを示す図である。
【図6】図2に示した軟磁性シートを用いて積層軟磁性部材を製造するときの流れを示す図である。
【図7】積層工程で用いる装置の構成を示す図である。
【図8】実施例で用いたシートの例を示す図であり、(a)はロール体から繰り出した帯状の軟磁性シート、およびシートの切り出し位置を示す図、(b)は切り出したシートにおける方向の定義を示す図である。
【図9】実施例1の結果を示す図であり、厚さ13μmのPETフィルムにおいて、熱処理温度を変えた場合のμ’と周波数の関係を示す図である。
【図10】同、μ’’と周波数の関係を示す図である。
【図11】同、熱処理温度と周波数、tanδの関係を示す図である。
【図12】実施例1において、厚さ6μmのPETフィルムを用いた場合の結果を示す図であり、熱処理温度を変えた場合のμ’と周波数の関係を示す図である。
【図13】同、μ’’と周波数の関係を示す図である。
【図14】同、熱処理温度と周波数、tanδの関係を示す図である。
【図15】実施例2の結果を示す図であり、厚さ13μmのPETフィルムにおいて、熱処理時にかける圧力を変えた場合のμ’と周波数の関係を示す図である。
【図16】同、μ’’と周波数の関係を示す図である。
【図17】同、熱処理温度と周波数、tanδの関係を示す図である。
【図18】実施例3の結果を示す図であり、熱処理時間を変えた場合のμ’の変化を示す図である。
【図19】実施例4の結果を示す図であり、厚さ13μmのPETフィルムにおいて、熱処理温度を変えた場合の、磁気特性の異方性の変化を示す図である。
【図20】実施例4において、厚さ6μmのPETフィルムを用いた場合の結果を示す図であり、熱処理温度を変えた場合の磁気特性の異方性の変化を示す図である。
【図21】実施例5の結果を示す図であり、積層前に熱処理を行った場合と、積層後に熱処理を行った場合における、熱処理温度と複素透磁率、tanδとの関係を示す図である。
【図22】実施例6の結果を示す図であり、ロール法において熱処理温度を変えた場合の、磁気特性の異方性の変化を示す図である。
【符号の説明】
1、11…軟磁性シート(軟磁性部材)、2、12、15…樹脂フィルム(絶縁樹脂フィルム)、3、13a、13b…下地金属層、4、14a、14b…軟磁性金属層、5…積層軟磁性部材(軟磁性部材)、6…絶縁層、7…軟磁性金属層、21、22…ローラ、23、24、25…ヒータ
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話等の電子機器に取り付けて使用することのできる積層軟磁性部材の製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータ、携帯電話機等の電子機器の高速動作処理化、デジタル化の発展に従って、電磁波障害(EMI:Electromagnetic Interference)が増加している。特に、デジタル機器はノイズにより誤動作を起こすこともあることから、デジタル機器から発生するノイズの低減が重要である。
現在も普及率が伸び続けているパーソナルコンピュータについてみると、CPUのクロック周波数の高周波化により、発生するノイズの周波数も一段と高くなってきている。クロック周波数が1GHzを超えるCPUが実用化されており、ノイズ対策の対象周波数は、5GHz程度の高周波帯域まで広がってきた。
従来、ノイズ対策の1つの手段として磁性材料で構成したノイズフィルタによりノイズを吸収することが行われている。ノイズフィルタを構成する代表的な磁性材料としてスピネル型の結晶構造をもつフェライト材料がある。高周波帯域では電気抵抗の大きい材料ほど渦電流損失が小さくなりノイズ吸収に有利となるから高周波帯域に関してはフェライト材料の中でも電気抵抗の大きいNi系フェライト材料が用いられてきた。しかし、ノイズがギガヘルツの帯域となると、「Snoekeの限界」が問題となる。つまり、フェライト材料のノイズ吸収帯域の上限は1GHzであり、近時の高周波ノイズに対応することは難しい。しかもフェライト材料は脆性材料であることから、落下、衝撃等で破壊されることがあった。
【0003】
1GHzを超える高周波領域でのノイズ吸収特性の優れた材料として、軟磁性金属粉末を樹脂、ゴム中に分散させた複合軟磁性部材が提案されている。例えば、扁平状のFe−Si系軟磁性合金粉末をゴム、樹脂中に配向・配列した複合磁性材料が提案されている(例えば特許文献1、非特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−35927号公報
【非特許文献1】
“工業材料”、平成10年(1998年)10月号、p.31〜35、p.36〜40
【0005】
この複合磁性材料は、高周波、かつ広帯域において優れたノイズ吸収特性を有している。しかも、ベースが可撓性のあるゴム、樹脂から構成されているため、フェライト材料のような落下、衝撃による破損の心配はない。したがって、この複合磁性材料は、極めて実用的なノイズ吸収体であるといえる。
【0006】
複合軟磁性部材は、軟磁性金属粉末をゴム、プラスチック等の絶縁体マトリックスに混合分散させ、プレス成形・押出し成形およびカレンダーロール成形等により作成される。マトリックスおよび加工法を選択することにより、0.25mm程度から数mm程度のシート状あるいはブロック状等種々の形態の部材を作成することができる。また、マトリックスを選択し、かつ厚さを制御することにより、可撓性を付与したり、逆に剛性を高めたりすることもできる。また、マトリックスを選択することにより、250℃程度の高温での使用も可能である。
【0007】
軟磁性金属粉末としては、Fe−Si系、Fe−Si−Al系、ステンレス系の材質が実用化されている。電磁気特性を決定づける要素として、磁性材料自身の特性、磁性粉末の形状・大きさ、マトリックスに対する粉末の混合比率、配向・配列等が挙げられる。広帯域・高磁気損失特性を得るための主要なポイントの一つは、粉末の形状・大きさと配向度にある。具体的には、扁平状(鱗片状)のアスペクト比(縦と横の寸法比)が大きいほど大きな磁気損失が得られるため、広帯域化への対応が可能となる。ただし、偏平状の粉末を得ることができない磁性材料もあり、また、マトリックスと複合化する場合に粉末に付与される圧縮や引張り応力によって磁歪定数の関係から特性が劣化することもある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
携帯電話機は、年々小型・軽量化されてきており、携帯電話機使用時にそのアンテナの位置は人体、具体的には頭部の極めて近い位置に配置されることになる。このときアンテナの特性は人体の影響を受け、アンテナ性能が低下する傾向にある。つまり、アンテナから放射される電磁波の一部が人体に吸収されることに起因する電力損失が、受信感度の低減、電池の寿命低減を招く。
一方で、人体による電磁波の吸収量が増加し、人体への影響が懸念されている。したがって、日本を含め各国で局所吸収指針が定められている。各国が局所吸収指針において定める人体による電磁波の局所吸収の評価量として、以下の式で定義されるSAR(Specific Absorption Rate:局所吸収量)が用いられている。
SAR=σE2/2ρ
(E:人体に侵入した電界,σ:人体組織の誘電率、ρ:人体組織の密度)
そのため、携帯電話機から放射された電磁波の実効的な利用率、つまり放射効率を向上しつつSARを低減する方法として、低損失磁性板をアンテナ近傍に配置する方法が提案されている。ところが、磁性微粉と樹脂からなる複合材料を用いた磁性板を使用する方法では、板厚を5mmとしても放射効率改善効果が0.6dBと小さい。携帯電話機の小型、軽量化に対応するため、板厚を0.2mm以下、さらには0.1mm以下にすることが望ましい。したがって、低損失磁性板を携帯電話機へ適用することは困難である。
【0009】
このため放射効率向上およびSAR対策部材として、上記の複合軟磁性部材を携帯電話機の筐体内部または外部に貼り付けることができる。ところが、前述した複合軟磁性部材は、例えば、800MHz〜3GHzといった高周波数帯域における透磁率が低いため、厚さを0.2mm以下にしたのでは、所望の特性を得ることが困難である。
【0010】
そこで本発明は、薄くても高周波数帯域における透磁率の優れた積層軟磁性部材の製造方法等を提供する。さらに、本発明は、そのような積層軟磁性部材に用いることが好適な軟磁性シートの製造方法を提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
従来の複合軟磁性部材は、前述のように、軟磁性金属粉末をゴム、プラスチック等の絶縁体マトリックスに混合分散させた構造を有している。ここで、マトリックス中に分散された軟磁性金属粉末間には反磁界が生じることになる。また、軟磁性金属粉末は、主に水アトマイズ法によって製造されるため、その後に熱処理を施しても、応力が残留してしまう。そのために、複合軟磁性部材は、800MHzを超える高周波数帯域における透磁率が劣る。
そこで本出願人は、従来の複合軟磁性部材のように軟磁性金属粉末を分散させるのではなく、軟磁性金属からなる複数の層を絶縁層が介在した形態で積層することを検討した。そして、樹脂製のフィルム上にめっき等の手段により軟磁性金属膜を形成したシートを作成し、そのシートを積層することにより、厚さが0.2mm以下の積層軟磁性部材を得ることができ、この積層軟磁性部材は800MHzを超える高周波数帯域において従来の複合軟磁性部材に比べて優れた透磁率を示すことを確認するに到り、既に、「複数の軟磁性金属層と、前記複数の軟磁性金属層の間に介在する絶縁層と、が積層する積層体である積層軟磁性部材」、「絶縁樹脂フィルムと、前記絶縁樹脂フィルム上に直接または間接的に形成された軟磁性金属層と、を備えた」ことを主旨とする軟磁性シート等についての出願を為している(特開2002−359113号公報)。
そして、このような複合軟磁性部材を、携帯電話機の筐体内部に収めたり外部に貼り付けたりすることで、高周波帯域における電磁波の放射効率を向上させ、SARを低減させることができるのである。
【0012】
本発明者らは、上記のような積層軟磁性部材、軟磁性シートについて、さらに鋭意検討を進めた。
その過程で、PET(ポリエチレンテレフタレート)等から形成される絶縁層上に、下地金属層を真空蒸着し、さらにその上に軟磁性金属層をめっきして形成すると、軟磁性金属層に応力が発生し、恐らくこれが原因となって、積層軟磁性部材、軟磁性シートの磁気特性が損なわれていることを見出した。
【0013】
そこでなされた本発明の積層軟磁性部材の製造方法は、複数の軟磁性金属層と、複数の軟磁性金属層の間に介在する絶縁層とを積層させた積層軟磁性部材の製造方法であって、絶縁層を形成する絶縁樹脂フィルム上に軟磁性金属層を形成することで軟磁性シートを得るシート生成工程と、軟磁性シートを複数枚積層することで積層軟磁性部材を得る積層工程と、シート生成工程で得られた軟磁性シートまたは積層工程で得られた積層軟磁性部材に対し、完成状態の積層軟磁性部材に求められる磁気特性に応じて設定された条件で熱処理を施す熱処理工程と、を有することを特徴とする。
シート生成工程で得られた軟磁性シートまたは積層工程で得られた積層軟磁性部材に対し、熱処理を施すと、その温度、時間等の条件に応じ、積層磁性部材の磁気特性が変化する。これに基づき、例えば、特定の周波数領域で高い磁気特性を有すること、あるいは特定の方向に高い磁気特性を有すること、逆に異方性の少ない(無い)安定した磁気特性を有すること等、完成状態の積層磁性部材の用途等によって求められる磁気特性に応じ、最適な熱処理の条件を設定するのである。ここで完成状態とは、熱処理を経た状態を示すものである。このような熱処理条件は、絶縁層を形成する絶縁樹脂フィルムの厚さや材質、軟磁性金属層の厚さや組成等によっても変わる。
このような熱処理工程は、積層工程の前段で行うこともできるし、積層工程の後段で行うこともできる。さらには、熱処理工程を、積層工程と同時に行うこともでき、そのような場合は、シート生成工程で得られた複数枚の軟磁性シートを、互いに対向し、かつ所定の温度に加熱しておいたローラ間に通して積層するのが好ましい。
また、熱処理工程にて、軟磁性シートまたは積層軟磁性部材に、熱を加えるだけでなく、所定の圧力を加えるようにしてもよい。
ここで、絶縁樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレート製である場合、熱処理の温度は70〜150℃とするのが好ましく、また一定時間継続して熱処理を行う場合、その継続時間は60秒以上とするのが好ましい。さらに、加圧処理を行う場合には、加える圧力を180〜2000MPaとするのが好ましい。
ところで、このような積層軟磁性部材の軟磁性シートは、絶縁樹脂フィルム上に直接または間接的に軟磁性金属層を形成した構成となっている。絶縁樹脂フィルム上に間接的に軟磁性金属層を形成する場合、絶縁樹脂フィルム上に金属下地層を形成した後、金属下地層上に軟磁性金属によるめっきを施すことができる。
【0014】
本発明は、絶縁樹脂フィルム上に、軟磁性金属層が形成された軟磁性シートの製造方法として捉えることもできる。この場合、本発明は、絶縁樹脂フィルム上に、軟磁性金属によるめっきを直接または間接的に施すことで軟磁性金属層を形成して軟磁性シートを得る工程と、軟磁性シートによって構成される軟磁性部材の完成状態で求められる磁気特性に応じて設定された条件に応じ、軟磁性シートの磁気特性を調整する工程と、を有することを特徴とする。
ここで、磁気特性を調整する工程は、軟磁性シートを加熱することで行うのが好ましい。また、軟磁性シートによって構成される軟磁性部材の完成状態で求められる磁気特性に応じて設定された時間だけ、軟磁性シートを継続して加熱することもできる。さらに、軟磁性シートを加熱するときに、軟磁性シートに所定の圧力をかけることもできる。
このような軟磁性シートは、1枚のみで軟磁性部材を構成することもできるが、複数枚を積層して軟磁性部材(積層軟磁性部材)を構成することもできる。
また、軟磁性シートを得る工程では、絶縁樹脂フィルム上に金属下地層を形成した後、金属下地層上に軟磁性金属によるめっきを施すことができる。
ところで、絶縁樹脂フィルムは、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等の耐熱性を有する樹脂材料で形成することもできるが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートによって形成することもできる。
【0015】
また、本発明は、複数の軟磁性金属層と、複数の軟磁性金属層の間に介在する絶縁層とを積層させた積層軟磁性部材に対し、完成状態の積層軟磁性部材に求められる特性に応じて熱処理を施すことを特徴とする積層軟磁性部材の熱処理方法として捉えることもできる。
ここで、上記積層軟磁性部材の製造方法に示したように積層軟磁性部材の製造と熱処理とを連続した工程で行うこともできるし、製造された状態の積層軟磁性部材に対し、熱処理のみを施すようにしてもよい。
このような熱処理は、積層軟磁性部材の磁気特性を調整するために行うことができる。
本発明者らは、上記検討の際に、絶縁層上に下地金属層を真空蒸着し、さらにその上に軟磁性金属層をめっきして形成すると、恐らく軟磁性金属層に発生する応力に起因して、積層軟磁性部材、軟磁性シートにロール状の反りが発生することも見出した。これは、得られた積層軟磁性部材、軟磁性シートを携帯電話機等に組み込む際のハンドリングの妨げとなり、結果的に作業性を損なう要因となる。このため、熱処理を、積層軟磁性部材の反りを調整するために行うこともできる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を説明する。
<軟磁性シート>
図1および図2は、本発明の積層軟磁性部材に用いられる軟磁性シートの例を示している。
図1に示す軟磁性シート(軟磁性部材)1は、樹脂フィルム(絶縁樹脂フィルム)2と、樹脂フィルム2上に形成された下地金属層3と、下地金属層3上に形成された軟磁性金属層4とから構成される。
樹脂フィルム2は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等の耐熱性を有する樹脂材料、または、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を用いることができるが、本実施の形態ではPETを用いるものとする。
軟磁性金属層4は、軟磁性を示す遷移金属元素のいずれか、あるいは遷移金属元素と他の金属元素とからなる合金により構成することができる。具体的な例としては、Fe、CoおよびNiの一種以上を主成分とする合金であり、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Co−Ni系合金が該当する。これらの中で、飽和磁束密度が1.0T以上の合金が望ましい。またこの中で、Feを20〜80wt%含有するFe−Ni系合金が本発明にとって望ましい。特に、Feを30〜70wt%、さらにはFeを40〜65wt%含有するFe−Ni系合金が望ましい。また、Fe−Co系合金、Co−Ni−Fe系合金を用いるのが望ましい。これら合金において、15at%以下のNb、Mo、Ta、W、Zr、Mn、Ti、Cr、Cu、Coの一種以上を含有することができる。また、軟磁性金属層4をめっきで形成する場合にはCおよびS等の元素を不可避的に含むが、本発明の軟磁性金属層4は、そのような元素の含有を許容する。
軟磁性金属層4は、結晶質合金および非晶質合金のいずれの態様であっても構わない。非晶質合金としては、Co系およびFe系の非晶質合金を用いることができる。また、Fe系の微結晶合金を用いることも本発明は許容する。微結晶合金は、一般的に、結晶粒径が0.01μm以下の微細な結晶が主体をなす合金として知られている。
【0017】
軟磁性金属層4は、めっき(電解または無電解)、真空蒸着法、スパッタリング法等の各種の膜形成プロセスによって作成することができる。これらの膜形成プロセスは、単独で行うことができる。したがって、めっきのみで軟磁性金属層4を形成することもできるし、蒸着のみで軟磁性金属層4を形成することもできる。もちろん、複数の膜形成プロセスを組み合わせることもできる。めっきは、真空蒸着法、スパッタリング法に比べて低温で膜を形成することができる点で本発明にとって好適である。本発明において、軟磁性金属層4は樹脂フィルム2上に形成するため、樹脂フィルム2に熱的な影響を与えないことが望ましいからである。また、めっきは、スパッタリング法に比べて、短時間で所定の厚さの膜を得ることができるメリットがある。なお、めっきにより軟磁性金属層4を得る場合、めっき浴中に含まれているS等の元素が軟磁性金属層4に混入することから、他のプロセスによる軟磁性金属層4との区別ができる。
【0018】
下地金属層3は、軟磁性金属層4を電解めっきによって樹脂フィルム2上に形成する場合に必要となる導電層としての役割を果たす。下地金属層3は、例えば、真空蒸着法によって形成することができる。また、無電解めっきにより下地金属層3を形成した後に、電解めっきにより軟磁性金属層4を形成することもできる。電解めっき以外の方法で軟磁性金属層4を形成する場合には、下地金属層3を形成する必要はない。つまり、下地金属層3は本発明において選択的な要素である。もっとも、下地金属層3に軟磁性金属を用いる場合には、下地金属層3が軟磁性金属層4の一部を構成することになる。
【0019】
次に、軟磁性シート1において、樹脂フィルム2の厚さは、50μm以下とする。樹脂フィルム2は、本発明の積層軟磁性部材において、軟磁性金属層4同士を絶縁する機能を果たす。しかし、この絶縁層が厚くなると軟磁性金属層4の占有率が低下し、ひいては積層軟磁性部材としての透磁率が低下するためである。望ましい樹脂フィルム2の厚さは20μm以下である。もっとも、極端に薄い樹脂フィルム2は製造が困難であるとともに、軟磁性金属層4を形成するための所定の強度を持つことができなくなる。したがって、0.2μm以上あるいは、2μm以上の厚さとすることが推奨される。
【0020】
軟磁性金属層4は、1μm以下の厚さとすることが望ましい。これを超える厚さでは、例えば800MHzを超える高周波数帯域での渦電流損失が大きくなり、磁性体としての機能が減じてしまうからである。したがって、本実施の形態において、軟磁性金属層4の厚さは、0.5μm以下とすることが望ましい。軟磁性金属層4は、緻密に形成されている必要性が高く、したがって、各種プロセスによって緻密な膜を形成することができる程度の最低限の膜厚を有していることが必要である。下地金属層3は、電解めっき時の導電層として機能するものであり、0.01μm程度の厚さを有していれば足りる。
【0021】
図2に示す軟磁性シート(軟磁性部材)11は、図1に示した軟磁性シート1の軟磁性金属層4が樹脂フィルム2の片面に形成されているのに対して、両面に形成されている点で相違する。つまり、軟磁性シート11は、樹脂フィルム(絶縁樹脂フィルム)12と、樹脂フィルム12の表裏両面に形成された下地金属層13a、13bと、下地金属層13a、13b上に形成された軟磁性金属層14a、14bとから構成される。樹脂フィルム12、下地金属層13a、13bおよび軟磁性金属層14a、14bの材質、寸法および作成プロセスは、軟磁性シート1と同様にすればよい。
また、本発明の軟磁性シート11において、軟磁性金属層14aの上に樹脂層を形成することもできる。
【0022】
<積層軟磁性部材>
図3は本実施の形態による積層軟磁性部材(軟磁性部材)5の一例を示す断面図である。
図3に示すように、積層軟磁性部材5は、絶縁層6と軟磁性金属層7とが交互に積層された断面構造を有している。ここで、積層軟磁性部材5全体としての厚さは、0.2mm以下とすることが重要である。前述のように、携帯電話機に積層軟磁性部材5を貼り付ける場合には、携帯電話機の小型化に対応する必要があるからである。より望ましい厚さは、0.15mm、さらには0.1mm以下である。
図3の(a)および(b)に示すように、図1および図2で示した軟磁性シート1、11を積層することにより積層軟磁性部材5を得ることができる。したがって、軟磁性シート1、11の樹脂フィルム2、12が絶縁層6を構成することになる。そのため、絶縁層6の厚さは50μm以下となる。もっとも、軟磁性シート1、11を積層する場合に接着剤を層間に介在させると、絶縁層6が樹脂フィルム2、12の厚さより厚くなる場合がある。したがって、接着剤を用いる場合には、絶縁層6の厚さが50μm以下となるように樹脂フィルム2、12の厚さを定める必要がある。このとき、接着剤が樹脂で形成されていると、接着剤層も絶縁層6を構成することになる。また、軟磁性金属層7は、軟磁性シート1、11における軟磁性金属層4、14a、14bが該当することになる。
【0023】
<軟磁性シート、積層軟磁性部材の製造方法>
以下、図4〜図6に基づいて、積層軟磁性部材5を得るのに好適な製造方法を説明する。なお、図4は、積層軟磁性部材5を得るための基本的な製造工程の全体を、図5は図1に示した軟磁性シート1を用いて積層軟磁性部材5を得る製造方法を、図6は図2に示した軟磁性シート11を用いて積層軟磁性部材5を得る製造方法を示している。
【0024】
図4、図5(a)または図6(a)において、まず軟磁性シート1、11を得るには、真空引きした蒸着装置内の坩堝で、下地金属層3、13a、13bの原料となる金属を溶解した後、この金属を、樹脂フィルム2、12となるPETフィルムに蒸着させることで、下地金属層3、13a、13bを樹脂フィルム2、12上に成膜させる(ステップS101)。
続いて、図4、図5(b)または図6(b)に示すように、下地金属層3、13a、13bが形成された樹脂フィルム2、12を、めっき装置内で、例えば電解メッキにより軟磁性金属層4、14a、14bを形成する(ステップS102)。
これにより、軟磁性シート1、11が得られる。なおこのとき、蒸着装置、めっき装置では、樹脂フィルム2、12として帯状のものをロール状に巻き回したロール体を用い、このロール体から繰り出した樹脂フィルム2、12に対し、蒸着、メッキ処理を施す。したがって、得られた軟磁性シート1、11も、帯状でロール状に巻かれたロール体の形態をなしている。
【0025】
この後、図4、図5(c)または図6(c)に示すように、得られた複数枚の軟磁性シート1、11を積層する(ステップS103)。
これには、軟磁性シート1、11に接着剤を塗布した後(ステップS103−1)、これらを積層して接着する(ステップS103−2)。
積層工程では、例えば、図7に示すように、互いに積層する2枚の軟磁性シート1、11を、互いに対向したローラ21、22間に導き、ローラ21、22で抑えつけることで2枚の軟磁性シート1、11を積層することができる。
また、図6に示した構成の場合、軟磁性シート11は、表裏両面に軟磁性金属層14a、14bが露出した構造をなしているので、そのままで積層することはできない。そこで、樹脂フィルム(絶縁樹脂フィルム)15を別途用意し、この樹脂フィルム15を介在させて軟磁性シート11を積層する(図6(c))ことにより、積層軟磁性部材5を得る。
【0026】
さて、本実施の形態では、図4(b)に示すように、軟磁性シート1、11を得て積層する前の段階、あるいは図4(c)に示すように、軟磁性シート1、11を積層して積層軟磁性部材5を得た後に、所定の熱処理を施す(ステップS200)。
具体的には、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5に対し、予め設定した条件で熱処理を施す。また、所定圧力の加圧処理を合わせて行うこともできる。また、熱処理は、例えば軟磁性シート1、11同士の接合に接着剤を用いた場合には、接着剤の乾燥のための加熱を兼ねたものとして行うこともできる。
このような熱処理条件、加圧処理条件は、完成状態の積層軟磁性部材5の用途、積層軟磁性部材5を構成する樹脂フィルム2、12の厚さや材質、下地金属層3、13a、13bや軟磁性金属層4、14a、14bの厚さ、組成、完成状態の積層軟磁性部材5における軟磁性シート1、11の積層枚数等、種々の条件によって変わるため、これらを鑑み、予め最適な熱処理条件、加圧処理条件を設定しておく。
【0027】
一例を挙げれば、軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5を構成する樹脂フィルム2、12が、厚さ13μmのPETフィルムであり、下地金属層3、13a、13bとして厚さ0.014μmのNi膜を真空蒸着により形成し、軟磁性金属層4、14a、14bとして厚さ0.15μmの81wt%Ni−19wt%Fe合金(パーマロイ)膜をめっきにより形成する場合、熱処理温度は、70〜150℃、温度を所定時間保持する場合には、その保持時間を60秒以上とするのが特に好ましい。また、加圧処理を行う場合、その圧力は180〜2000MPaとするのが好ましい。
このような熱処理を施すことで、得られる積層軟磁性部材5の磁気特性を向上させたり、磁気特性の異方性をコントロールしたり、積層軟磁性部材5の反りを防止したりすることが可能となる。
【0028】
なお、このような熱処理は、図7(a)に示すように、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5に対向するヒータ23や、他のヒータによって雰囲気が加熱された空間に、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5を導入して行うことができる。また、加圧処理は、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5にプレスを施すことにより、あるいは図7(a)に示したように対向するローラ21、22間に軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5を通し、ローラ21に所定の圧力を発揮させることで行うことができる。
また、図7(b)に示すように、ローラ21、22自体をヒータ24、25によって所定の温度に加熱し、これらローラ21、22間に軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5を通すことで、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5に対し熱処理を施すこともできる。以下、この後者の方法をロール法と称する。
ロール法の場合、ローラ21自体の自重により軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5に対して圧力を作用させることもできるが、これ以外にローラ21を加圧することで、軟磁性シート1、11あるいは積層軟磁性部材5に対し、熱処理と同時に加圧処理を施すこともできる。
【0029】
そして、図4(a)に示したように、上記の積層工程および熱処理工程を完了した積層軟磁性部材5は、プレス加工等によって、所望する形状に加工することもできる。また、切断を行って、所望する寸法に加工することもできる(ステップS104)。
【0030】
上記したような熱処理、加圧処理の、より具体的な条件を例示すれば、上記に例示した軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5において、周波数800MHz以上までμ’の値が一定な磁気特性を得ることを目的とするのであれば、熱処理の温度は85℃以上とするのが好ましい。また熱処理は一定の温度を一定時間を保持するのが好ましく、例えば85℃で熱処理を行う場合、保持時間は10秒以上、さらには60秒以上とするのが好ましい。さらに、加圧処理を行うのであれば、85℃の熱処理を60秒保持する場合、その圧力は460MPa程度とするのが好ましい。
また、周波数1〜3GHzまでμ’が一定な磁気特性を得ることを目的とするのであれば、熱処理の温度は100〜150℃とするのが好ましい。また熱処理に際し一定の温度を一定時間保持するのであれば、例えば100℃の熱処理の場合、保持時間は10秒以上、さらには60秒以上とするのが好ましい。さらに、加圧処理を行うのであれば、85℃の熱処理を60秒保持する場合、その圧力は、920MPa程度とするのが好ましい。
さらに、上記に例示した軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5において、磁気特性において異方性の無い(少ない)ものとするのであれば、熱処理の温度は70〜85℃とするのが好ましい。また熱処理に際し一定の温度を一定時間保持するのであれば、例えば85℃の熱処理の場合、保持時間は10〜60秒とするのが好ましい。また、加圧処理を行うのであれば、例えば461MPaの圧力を加え、熱処理温度を60〜70℃とするのが好ましい。
【0031】
また、上記に例示した軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5において、樹脂フィルム2、12の厚さを6μmとした場合の処理条件についても例を示す。
周波数800MHz以上でμ’が一定な磁気特性を得ることを目的とするのであれば、熱処理の温度は60〜80℃とするのが好ましい。
また、周波数1〜3GHzまでμ’が一定な磁気特性を得ることを目的とするのであれば、熱処理の温度は80〜110℃とするのが好ましい。
さらに、上記に例示した軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5において、磁気特性において異方性の無い(少ない)ものとするのであれば、熱処理の温度は60〜70℃とするのが好ましい。
【0032】
上記したような条件はあくまでも一例である。熱処理、加圧処理の条件は、前述したように、完成状態の積層軟磁性部材5で吸収させたい電磁波の周波数、携帯電話機等の電子機器に対する積層軟磁性部材5の装着位置や向き、積層軟磁性部材5を構成する樹脂フィルム2、12の厚さや材質、下地金属層3、13a、13bや軟磁性金属層4、14a、14bの厚さ、組成等によって変わるものである。また、熱処理時における温度保持時間の長さ、加圧処理の有無等によっても条件は変わる。
さらに、上記に例示した条件も、積層軟磁性部材5に求める磁気特性と異方性とのバランス、さらには製造工程における生産効率(熱処理、加圧処理に費やすことのできる時間の長さ)等によって、採用する条件は変動する。
【0033】
また、熱処理、加圧処理は、軟磁性シート1、11を得て積層する前の段階、軟磁性シート1、11を積層して積層軟磁性部材5を得た後、のどちらで行ってもよいが、同条件の熱処理、加圧処理を行ったとしても、積層の前で行うか、積層の後で行うかによって、得られる磁気特性等が変わり得るため、処理のタイミングに応じて条件を設定する必要がある。
例えば、上記に例示した軟磁性シート1、11、積層軟磁性部材5において、軟磁性シート1、11の積層後に熱処理、加圧処理を行う場合の方が、軟磁性シート1、11の積層前に熱処理、加圧処理を行う場合に較べ、同じ処理条件であれば磁気特性に優れる。
【0034】
【実施例】
以下本発明を具体的実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
膜厚13μmのPETフィルムを用意し、このPETフィルム上(片面)に、真空蒸着により厚さ0.014μmのNi膜を形成した。このとき、PETフィルムは、ロール体から繰り出した帯状のものを用いる。Niを蒸着した後に、以下に示すめっき液を用いてNi膜上に軟磁性合金である81wt%Ni−19wt%Fe合金(パーマロイ)膜を形成し、軟磁性シート1を得た。なおめっき液の条件は、浴温が35〜55℃、PHが2.0〜3.0である。そして、めっき膜厚が0.15μmになるまで、2A/dm2の電流密度で電解した。なお、めっき膜の欠陥防止およびめっき液の表面張力低減のために、界面活性剤を適宜添加した。
【0035】
【0036】
次いで、図8に示すように、得られた軟磁性シート1を、帯状のPETフィルムが連続する方向(長手方向、繰出し方向、以下この方向をR方向と称する)に3cm、PETフィルムの幅方向(以下、この方向をP方向と称する)に5cmの長方形状に打ち抜き加工し、打ち抜かれたシート1Tを、70、80、85、90、100、110、120、130℃の各温度で60秒間保持し、熱処理を行った(加圧処理は行っていない)。また、比較のために、熱処理を行わない軟磁性シート1から得たシート1Tも用意した。
熱処理後の各シート1Tと、熱処理を行わないシート1Tについて、複素透磁率を、凌和電子株式会社製の透磁率測定装置PMF−3000で測定した。測定方向は、各シート1TのP方向とした。
【0037】
その結果を、図9、図10、図11に示す。図9は、複素透磁率の実数成分μ’と周波数の関係を示すものであり、図10は、複素透磁率の虚数成分μ’’と、周波数の関係を示すものである。また、図11(a)は、図9および図10の結果より得られる、μ’が減衰し始める周波数(f(μ’att))およびμ’’のピークが現れる周波数(f(μ’’p))と熱処理温度の関係を示すものであり、図11(b)は、(μ’’/μ’)であるtanδと、熱処理温度の関係を示すものである。なお、図9、図10中、(r.t)とは、熱処理を行わないシート1Tの特性を示すものである。
これらの図9、図10、図11に示すように、熱処理温度を70℃以上とすることで、熱処理を行わないシート1Tに対し、磁気特性が変化しているのは明らかである。具体的には、熱処理温度が70〜85℃ではμ’およびμ’’が大きくなり、熱処理温度がさらに高温になるにしたがい、μ’およびμ’’が高周波側に延びることが分かる。さらに、図11(b)により、熱処理温度を上げると、tanδが小さくなることが分かる。
このようにして、熱処理を施すことで、得られるシート1T、積層軟磁性部材5の磁気特性を向上させることができるのが明らかである。また、熱処理温度を、目的とする周波数帯にあわせて適宜設定することで、より優れた磁気特性を得ることもできる。
【0038】
また、上記実施例1において、PETフィルムの膜厚を6μmとした場合について、同様の実験を行った。なお、熱処理温度は、80、95、110、130℃とした。その結果を図12、図13、図14に示す。
これらの図12、図13、図14に示すように、PETフィルムの膜厚が6μmの場合についても、膜厚が13μmの場合と同様、熱処理を施すことで軟磁性シート1、積層軟磁性部材5の磁気特性を変化させることができ、熱処理温度を適宜設定することで、目的に合わせた優れた磁気特性を得ることが可能である。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様の工程で得たシート1Tを、85℃の熱処理温度で、プレス機により、184、461、922、1843MPaの各圧力で加圧処理した。
各圧力で加圧処理したシート1Tと、加熱処理と加圧処理を施していないシート1T、加圧処理のみ施していないシート1Tについて、複素透磁率と周波数の関係を確認した。なお、測定装置、条件等は実施例1と同様である。
その結果を図15、図16、図17に示す。
これらの図15、図16、図17に示すように、加圧処理条件を変えることで、複素透磁率が変動していることが分かる。詳しくは、図17(a)に示すように、圧力を高めると、μ’が高周波側に伸び、また図17(b)に示すように、圧力を高めると、tanδが小さくなることがわかる。
これにより、加圧処理を行い、その圧力条件を変えることで、得られる軟磁性シート1、積層軟磁性部材5の磁気特性を制御することができるのがわかる。
【0040】
(実施例3)
実施例1と同様の工程で得たシート1Tを、熱処理の時間を変えて評価した。熱処理温度は85℃とし、処理時間(温度保持時間)を、10、30、60、300秒とした。これらのシート1Tについて、周波数10MHzにおけるP方向とR方向のμ’を測定した。
結果を図18に示す。
この図18に示すように、熱処理時間を10秒以上とすることにより、飛躍的にP方向のμ’が向上する。その後も、熱処理時間が長くなるに伴ない、μ’が向上する傾向にある。そして熱処理時間60秒でμ’が最大となるので、最も大きくμ’を向上させるには、熱処理時間を少なくとも60秒とするのが好ましいことがわかる。
また、直交するR方向については、P方向とは逆の傾向を示している。すなわち、熱処理時間を10秒以上とすることにより、R方向のμ’が著しく低下する。その後も、熱処理時間が長くなるに伴ない、μ’が低下する傾向にある。
このようにして、熱処理時間を変えることで、μ’を変動させることができる。このとき、図18を見ればわかるように、熱処理時間が0、つまり熱処理を行わない場合には、P方向よりR方向のμ’の方が大きく、この軟磁性シート1、積層軟磁性部材5は、磁気特性に異方性を有している。このような軟磁性シート1、積層軟磁性部材5に対する熱処理時間が10秒以内であるときに磁気特性の異方性が逆転している。したがって、軟磁性シート1、積層軟磁性部材5に対し、熱処理をかけ、さらにその処理時間を適宜設定することにより、磁気特性に異方性の無い(少ない)、あるいは所望の異方性を有した軟磁性シート1、積層軟磁性部材5を得ることが可能となる。
【0041】
(実施例4)
実施例1と同様の工程で得たシート1Tの磁気特性の異方性について、熱処理温度を変えて評価した。加圧処理を行わない条件(圧力0MPa)下で、熱処理温度を、室温(熱処理を施さない場合:図中では25℃)、70、80、85、100、110、120、130℃とし、温度保持時間は60秒で一定としたシート1Tと、加圧条件(圧力461MPa)下で、熱処理温度を、室温(熱処理を施さない場合)、60、65、70、75、80、90、100、110℃とし、温度保持時間は60秒で一定としたシート1Tについて、それぞれ、周波数10MHzにおけるP方向とR方向のμ’を測定した。
結果を図19に示す。図19(a)は加圧処理を行わない場合、図19(b)は加圧処理を行った場合の結果を示している。
この図19に示すように、加熱処理を施すことにより、P方向とR方向が変化し、特に、図19(a)に示すように、加圧処理を行わない場合には70〜85℃、図19(b)に示すように、加圧処理を行った場合には60〜80℃にかけて、μ’が著しく変化する。そして、P方向においては、加圧処理を行わない場合には熱処理温度85℃、加圧処理を行った場合には熱処理温度80℃にてμ’が最大となるので、最も大きくP方向のμ’を向上させるには、熱処理温度を前記の条件とするのが好ましいことがわかる。
また、P方向と、直交するR方向は、互いに逆の傾向を示している。
このようにして、加圧処理を行わない場合、行った場合とも、熱処理温度を変えることで、μ’を変動させることができる。このとき、図19を見ればわかるように、熱処理温度が室温(図19中では25℃)、つまり熱処理を行わない場合には、P方向よりR方向のμ’の方が大きく、この軟磁性シート1、積層軟磁性部材5は、磁気特性に異方性を有している。ここで、加圧処理を行わない場合には熱処理温度が70〜80℃、加圧処理を行う場合には熱処理温度が60〜70℃、具体的には65℃近辺において、磁気特性の異方性が少なくなっていることがわかる。このような軟磁性シート1、積層軟磁性部材5に対し、一定時間熱処理をかけ、さらにその処理温度を適宜設定することにより、磁気特性に異方性の無い(少ない)、あるいは所望の異方性を有した軟磁性シート1、積層軟磁性部材5を得ることが可能となる。
【0042】
上記実施例4においても、PETフィルムの膜厚を6μmとした場合について、同様の実験を行った(加圧処理を行わない場合のみ)。その結果を図20に示す。
この図20に示すように、PETフィルムの膜厚が6μmの場合についても、熱処理温度が60〜70℃において、磁気特性の異方性が少なくなっており、膜厚が13μmの場合と同様の結果が得られるのがわかる。
【0043】
(実施例5)
次に、熱処理工程を積層前に行った場合(図4(b)の工程順に相当)と、積層後に行った場合(図4(c)の工程順に相当)について評価をした。
実施例1と同様の工程で得たシート1Tを、熱処理を経た後に、接着剤により積層した積層軟磁性部材5と、実施例1と同様の工程で得たシート1Tを、接着剤により積層した後に熱処理を施した積層軟磁性部材5について、実施例1等と同様にして周波数特性を計測した。
このとき、熱処理温度は、120、130、140、150℃とし、加圧処理を、9.3、23kg/cm2の2通りとした。シートの送り速度は226mm/minで一定とした。
結果を図21に示す。ここで、図21において、“−1”、“−2”、“−3”、“−4”の記号を付したものは、以下のような条件である。
“−1”:熱処理後に積層、加圧条件は9.3kg/cm2、
“−2”:熱処理後に積層、加圧条件は23kg/cm2、
“−3”:積層後に熱処理、加圧条件は9.3kg/cm2、
“−4”:積層後に熱処理、加圧条件は23kg/cm2。
【0044】
この図21に示すように、μ’のatt値、μ’’のピーク値とも、積層後に熱処理した方が、高周波数側に伸びる傾向が見られる。また、tanδについても同様に、積層後に熱処理した方が小さくなる傾向が見られる。
このようにして、積層後に熱処理した方が、得られる積層軟磁性部材5の磁気特性的に有利である、と考えられる。
【0045】
(実施例6)
次に、ロール法において条件を変化させた場合の軟磁性シート1の磁気特性の異方性について評価した。
ここで、ローラの温度を80、100、110、120、130℃とし、ローラに圧力はかけない条件とし、それぞれ、周波数10MHzにおけるP方向とR方向のμ’を測定した。ただし、ローラ自体の自重による圧力:2.48kgf/cm2が、シート1Tに作用している。また、ローラによるシート1Tの送り速度は、56.5mm/minとした。
その結果を図22に示す。
この図22に示すように、ロール法においても、加熱処理を施すことにより、P方向とR方向の双方においてμ’が変化する。そして、P方向と、直交するR方向は、互いに逆の傾向を示している。これらの傾向は、実施例4(図19(a))と同様である。また、熱処理温度110℃付近で、磁気的な異方性がなくなることが確認できた。
このようにして、ロール法に於いても、熱処理温度を変えることで、μ’を変動させることができるので、軟磁性シート1、積層軟磁性部材5に対し、熱処理をかけ、さらにその処理温度を適宜設定することにより、磁気特性に異方性の無い(少ない)、あるいは所望の異方性を有した軟磁性シート1、積層軟磁性部材5を得ることが可能となる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、薄くても高周波数帯域における透磁率の優れた積層軟磁性部材を提供することができ、しかも、その磁気特性を向上させたり目的に応じて調整したりすることもできる。また、積層軟磁性部材の反りをコントロールして組立時の作業性を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における軟磁性シートの構成を示す断面図である。
【図2】他の軟磁性シートの構成を示す断面図である。
【図3】積層軟磁性部材の構成を示す断面図である。
【図4】積層軟磁性部材の製造工程を示す図である。
【図5】図1に示した軟磁性シートを用いて積層軟磁性部材を製造するときの流れを示す図である。
【図6】図2に示した軟磁性シートを用いて積層軟磁性部材を製造するときの流れを示す図である。
【図7】積層工程で用いる装置の構成を示す図である。
【図8】実施例で用いたシートの例を示す図であり、(a)はロール体から繰り出した帯状の軟磁性シート、およびシートの切り出し位置を示す図、(b)は切り出したシートにおける方向の定義を示す図である。
【図9】実施例1の結果を示す図であり、厚さ13μmのPETフィルムにおいて、熱処理温度を変えた場合のμ’と周波数の関係を示す図である。
【図10】同、μ’’と周波数の関係を示す図である。
【図11】同、熱処理温度と周波数、tanδの関係を示す図である。
【図12】実施例1において、厚さ6μmのPETフィルムを用いた場合の結果を示す図であり、熱処理温度を変えた場合のμ’と周波数の関係を示す図である。
【図13】同、μ’’と周波数の関係を示す図である。
【図14】同、熱処理温度と周波数、tanδの関係を示す図である。
【図15】実施例2の結果を示す図であり、厚さ13μmのPETフィルムにおいて、熱処理時にかける圧力を変えた場合のμ’と周波数の関係を示す図である。
【図16】同、μ’’と周波数の関係を示す図である。
【図17】同、熱処理温度と周波数、tanδの関係を示す図である。
【図18】実施例3の結果を示す図であり、熱処理時間を変えた場合のμ’の変化を示す図である。
【図19】実施例4の結果を示す図であり、厚さ13μmのPETフィルムにおいて、熱処理温度を変えた場合の、磁気特性の異方性の変化を示す図である。
【図20】実施例4において、厚さ6μmのPETフィルムを用いた場合の結果を示す図であり、熱処理温度を変えた場合の磁気特性の異方性の変化を示す図である。
【図21】実施例5の結果を示す図であり、積層前に熱処理を行った場合と、積層後に熱処理を行った場合における、熱処理温度と複素透磁率、tanδとの関係を示す図である。
【図22】実施例6の結果を示す図であり、ロール法において熱処理温度を変えた場合の、磁気特性の異方性の変化を示す図である。
【符号の説明】
1、11…軟磁性シート(軟磁性部材)、2、12、15…樹脂フィルム(絶縁樹脂フィルム)、3、13a、13b…下地金属層、4、14a、14b…軟磁性金属層、5…積層軟磁性部材(軟磁性部材)、6…絶縁層、7…軟磁性金属層、21、22…ローラ、23、24、25…ヒータ
Claims (16)
- 複数の軟磁性金属層と、前記複数の軟磁性金属層の間に介在する絶縁層とを積層させた積層軟磁性部材の製造方法であって、
前記絶縁層を形成する絶縁樹脂フィルム上に直接または間接的に前記軟磁性金属層を形成することで軟磁性シートを得るシート生成工程と、
前記軟磁性シートを複数枚積層することで前記積層軟磁性部材を得る積層工程と、
前記シート生成工程で得られた前記軟磁性シートまたは前記積層工程で得られた前記積層軟磁性部材に対し、完成状態の前記積層軟磁性部材に求められる磁気特性に応じて設定された条件で熱処理を施す熱処理工程と、
を有することを特徴とする積層軟磁性部材の製造方法。 - 前記熱処理工程は、前記積層工程の前段で行われることを特徴とする請求項1に記載の積層軟磁性部材の製造方法。
- 前記熱処理工程は、前記積層工程の後段で行われることを特徴とする請求項1に記載の積層軟磁性部材の製造方法。
- 前記熱処理工程は、前記積層工程と同時に行われることを特徴とする請求項1に記載の積層軟磁性部材の製造方法。
- 前記シート生成工程で得られた複数枚の前記軟磁性シートを、互いに対向したローラ間に通して積層し、かつ、前記ローラを所定の温度に加熱しておくことで、前記熱処理工程を前記積層工程と同時に行うことを特徴とする請求項4に記載の積層軟磁性部材の製造方法。
- 前記熱処理工程にて、前記シート生成工程で得られた前記軟磁性シートまたは前記積層工程で得られた前記積層軟磁性部材に、所定の圧力を加えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の積層軟磁性部材の製造方法。
- 絶縁樹脂フィルム上に、軟磁性金属層が直接または間接的に形成された軟磁性シートの製造方法であって、
前記絶縁樹脂フィルム上に、軟磁性金属によるめっきを直接または間接的に施すことで前記軟磁性金属層を形成して前記軟磁性シートを得る工程と、
前記軟磁性シートによって構成される軟磁性部材の完成状態で求められる磁気特性に応じて設定された条件に応じ、前記軟磁性シートの磁気特性を調整する工程と、
を有することを特徴とする軟磁性シートの製造方法。 - 前記磁気特性を調整する工程は、前記軟磁性シートを加熱することで行われることを特徴とする請求項7に記載の軟磁性シートの製造方法。
- 前記軟磁性シートを、当該軟磁性シートによって構成される軟磁性部材の完成状態で求められる磁気特性に応じて設定された時間だけ継続して加熱することを特徴とする請求項8に記載の軟磁性シートの製造方法。
- 前記軟磁性シートを加熱するときに、当該軟磁性シートに所定の圧力をかけることを特徴とする請求項8または9に記載の軟磁性シートの製造方法。
- 前記軟磁性シートを複数枚積層する工程をさらに備えることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の軟磁性シートの製造方法。
- 前記軟磁性シートを得る工程では、前記絶縁樹脂フィルム上に金属下地層を形成した後、当該金属下地層上に前記軟磁性金属によるめっきを施すことを特徴とする請求項7から11のいずれかに記載の軟磁性シートの製造方法。
- 前記絶縁樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート製であることを特徴とする請求項7から12のいずれかに記載の軟磁性シートの製造方法。
- 複数の軟磁性金属層と、前記複数の軟磁性金属層の間に介在する絶縁層とを積層させた積層軟磁性部材に対し、完成状態の前記積層軟磁性部材に求められる特性に応じた熱処理を施すことを特徴とする積層軟磁性部材の熱処理方法。
- 前記熱処理は、前記積層軟磁性部材の磁気特性を調整するために行われることを特徴とする請求項14に記載の積層軟磁性部材の熱処理方法。
- 前記熱処理は、前記積層軟磁性部材の反りを調整するために行われることを特徴とする請求項14に記載の積層軟磁性部材の熱処理方法。
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