JP2004172288A - 回路の製造方法および該回路を備えた回路板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板14上に回路パターンで印刷されたインキ樹脂13の表面13aに、平均粒子径が0.1nm〜50nmの導電性ナノ金属粉末20を分散させたコロイド溶液Qをコーティングした後に、コロイド溶液Q及びインキ樹脂13を加熱して、コロイド溶液Q中の液体を蒸発させると共に導電性ナノ金属粉末20同士を融着し、 加熱硬化させるインキ樹脂13の表面に導電性金属被膜21を形成する。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回路の製造方法および該回路を備えた回路板に関し、詳しくは、電気機器からの電磁波シールド等として用いられ、微細で高精度な印刷パターンを有する回路を、良好な導電性を実現しながら容易に製造可能とするものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、回路パターンを形成する方法として、パターンを形成する際に感光性のレジストを用いて露光を行うフォトリソ法が挙げられる。フォトリソ法には、以下に示すように、サブトラクティブ法とアディティブ法の2種類に分けられる。
【0003】
サブトラクティブ法では導電性層を予め作成する。通常、導電性層には銅箔を用いる場合が多いが、無電解銅メッキや電解銅メッキにより作成しても良い。次に、感光性のレジスト(フォトレジスト)を導電性の層の上に形成し、フォトマスクを通して所定のパターンのみに感光性レジストを感光させる。さらに、現像で未感光部分のフォトレジストを洗浄し、硬化させた後に導電性の層をエッチング液(塩化第二鉄等)に浸漬させることで未感光部の導電性層のむきだしになっている部分のみを腐食(エッチング)させる。最後にフォトレジストをアルカリ(KOH)で剥離させれば所定のパターンのみの回路が形成可能となる。
【0004】
アディティブ法は、サブトラクティブ法とは反対で予め基板の上に感光性レジストの層を形成し、フォトマスクを通じて所定のパターンのみに感光性レジストを感光させる。現像で未感光部分のフォトレジストを洗浄し、露光された部分のみの感光性レジストのパターンを形成する。次に、無電解銅メッキを全面に形成し、さらに電解メッキを全面に形成する。最後にフォトレジストを剥離すると所定の露光されていない部分のパターンの回路が形成できる。
【0005】
一方、アディティブ法と同様な方法として印刷法が挙げられる。印刷法は、導電性のインキを用いて所定のパターンに印刷することで回路を形成するため、材料コストも少なく、製造設備も安いために安価なプロセスとして期待されている。
【0006】
また、このような回路は、従来、ディスプレー装置前面等に設置される電磁波シールド材等に用いられており、優れた電磁波シールド性の他に、視認性、透視性に優れ、かつ視野角が広いことが要求されている。この要求を満たす電磁波シールド材として、特開平10−163673号では、透明フィルムの少なくとも一方の面にメッキ触媒を含む透明樹脂塗膜を形成し、無電解メッキにより銅箔層を形成しレジストをその上に形成した後、選択的にエッチングして電磁波シールドパネルを形成することが提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−163673号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、サブトラクティブ法の最大の問題点はエッチングに用いた多量の有害な廃液が発生することである。この廃液は金属を多量に含んでおり廃液処理にコストがかかり、環境にも良くない。また、導電性層は高価な層であり、余分な部分も捨てることは非常に無駄が多い。フォトマスクを通じて露光させる装置も非常に高価であるためコストがかかる点が問題である。また、エッチングは導電性層を厚み方向のみではなく、平面方向にも腐食するため、導電性層の厚みが厚い場合にはサイドエッチングが進み、線幅が所定のパターンよりも細くなり、極端な場合には断線することもある。
【0009】
また、アディティブ法の問題点は無電解銅メッキ、電解銅メッキともに材料が高価でありプロセスが増えるためにコストが上がることである。さらに、露光プロセスを伴うのでサブトラクティブ法と同じで非常に高価な装置が必要である。
【0010】
一方、印刷法は、導電性インキとして導電性金属が樹脂中に分散されたものを用いるが特に被印刷体が樹脂等の場合には高い温度をかけることができず、その結果、導電性が悪く、用途が限定される点が大きな問題である。また、導電性を向上させるために、導電性金属粉末を多量にインキに添加すると印刷性が著しく悪くなり、電解銅メッキ等を印刷したパターンに施すと工程が増えコスト増を招くこととなる。
【0011】
上記特開平10−163673号では、選択的にエッチングするが透過率と電磁波シールド性を考慮するとせっかくメッキにより形成された銅箔層の大部分をエッチングにより削除してしまうことになり、無駄であり、かつ廃液処理の費用もかかるため、低コストで電磁波シールドを作成するには限界がある。
【0012】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、簡易な工程で、材料の無駄を低減し、導電性の極めて良好な回路を容易に形成する回路の製造方法を提供することを課題としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、基板上に回路パターンで印刷されたインキ樹脂の表面に、平均粒子径が0.1nm〜50nmの導電性ナノ金属粉末を分散させたコロイド溶液をコーティングした後に、
上記コロイド溶液及び上記インキ樹脂を加熱して、該コロイド溶液中の液体を蒸発させると共に上記導電性ナノ金属粉末同士を融着し、 加熱硬化させる上記インキ樹脂の表面に導電性金属被膜を形成していることを特徴とする回路の製造方法を提供している。
【0014】
このように、予め印刷されたパターン状のインキ樹脂の表面に導電性の良好な粒子径の非常に細かなナノ粒子径の金属粉末を分散させたコロイド溶液を均一にコーティングする。その後、コロイド溶液及びインキ樹脂を加熱することで、コロイド溶液中の液体が蒸発すると共に、コロイド溶液中に分散されていた導電性ナノ金属粉末同士が互いに融着する。その結果、インキ樹脂の硬化と共に、インキ樹脂の表面に導電性金属被膜を形成することができ、導電性金属被膜とインキ樹脂とを密着性も良好なものとすることができる。よって、導電性の極めて良好な回路を容易に形成することができる。
【0015】
即ち、本発明は、本発明者が鋭意研究の結果、導電性金属粉末の粒子径を0.1nm〜50nm程度に小さくすることで、非常に金属表面の活性が高くなり、金属の融着温度が著しく低下し、金属粉末同士が低温で融着可能となることを見出したことに基づくものである。例えば、銀の場合、バルクの融点が963℃であるが、0.1nm〜50nm程度のナノ銀粉末とすると融着温度が200℃程度と著しく低下することを見出した。また、導電性ナノ金属粉末をそのまま用いるのではなく、コロイド溶液中に分散させて用いているため、粉塵爆発の危険もなく取り扱いが楽である。また、クリーンルーム等では埃の問題もない。さらに、導電性ナノ金属粉末をそのまま用いるよりも、コロイド溶液中に分散させている方がよりクリーンである。
【0016】
また、導電性ナノ金属粉末はお互いが溶融して金属被膜化することで非常に低抵抗とすることができると共に、導電性ナノ金属粉末の融着温度でインキ樹脂も硬化させることができる。よって、導電性ナノ金属粉末とインキ樹脂の界面部分を強固に接着することができ、被印刷体からインキ樹脂や金属被膜が外れる等の問題も発生しない。
【0017】
さらに、従来のフォトリソ法に比べ必要な部分にのみインキを形成するので捨てる部分がなく材料の消費量も少ない上に、現像等の工程がないため廃液の流出が全くなく環境への影響を心配する必要もない。また、印刷法によりパターン状のインキ樹脂を印刷しているため、フォトリソ法に比べ装置の構造が簡単で比較的安価である。
【0018】
導電性ナノ金属粉末の粒子径は融着温度に大きく影響を及ぼす重要なファクターであり、種々検討を行った結果、導電性ナノ金属粉末の平均粒子径を0.1nm〜50nmとしている。これは、0.1nmより小さいと、常温でも非常に活性が高くなり、導電性ナノ金属粉末同士で一部凝集等が発生すると共に、表面の酸化も多くなり金属酸化膜が形成されてしまうためである。一方、50nmより大きいと、融着温度が低下せず、低温での金属被膜形成を行えないためである。また、粒子径が小さい方が融着温度が下がるため好ましい粒子径は1nm〜50nmであり、より好ましくは1nm〜10nmである。
【0019】
また、導電性ナノ金属粉末の硬化後の被膜の厚みは、1μm〜15μmが好ましい。1μmより薄いと断線が発生しやすく、また導電性も良くない。一方、15μmより厚くても導電性は十分満たしており材料コストがかかり無駄となる他、表面の平坦性が悪くなる。
【0020】
コロイド溶液に媒体として含まれる液体は、水系あるいはトルエン、アルコール等の溶剤系であることが好ましく、揮発性が高く蒸発しやすい液体とするのが良い。また、コロイド溶液に媒体として含まれる液体は、印刷パターンのインキ樹脂や基材の種類によって適切なものを選択する必要があり、未硬化のインキ樹脂との濡れ性は良く、基材との濡れ性が悪いものが好ましい。
【0021】
導電性ナノ金属粉末はコロイド溶液の全体積の10%〜95%の体積割合でコロイド溶液中に均一に分散させていることが好ましい。これにより金属粉末同士を効率良く均等に接触させることができる。上記範囲としているのは、上記範囲より小さいと、金属粉末同士が十分に密着しにくく加熱時に金属被膜を形成しにくくなるためである。一方、上記範囲より大きいと、コロイド溶液が安定せずに凝集してしまい、粒子径が大きくなり低温でも溶融しなくなるという問題があるためである。なお、より好ましくは30%〜80%である。
【0022】
上記コロイド溶液は、バーコート、スピンコーター、スクリーン印刷、ロールコーターから選択される方法により上記印刷された未硬化のインキ樹脂表面の全面にコーティングされ、できるだけパターン状のインキ樹脂の表面のみに均一にコロイド溶液をコーティングできる方法が好ましい。
【0023】
コロイド溶液は、パターン状のインキ樹脂の表面にのみコーティングすることが好ましいが、パターン状のインキ樹脂の表面以外にコーティングされたコロイド溶液は除去し、除去後にコロイド溶液及び未硬化のインキ樹脂を加熱していることが好ましい。また、コロイド溶液を加熱前に吸引除去することで、吸引したコロイド溶液を再度使用することもできる。コロイド溶液の除去方法としては、具体的には、基板の水洗や乾燥後粘着ロールで洗浄させる等の方法が挙げられる。
【0024】
導電性ナノ金属粉末は金、銀、銅、白金、パラジウムのいずれかまたはこれらの混合物からなることが好ましい。これらの金属は、ある程度の導電性を有する上に、ナノ粒子とすることができる。特にコスト面と導電性の面から銀が好ましい。金属粉末の形状は、球状、楕円球状、柱状、鱗片状、繊維状等の種々の形状とすることができる。
【0025】
加熱温度は100℃〜250℃であることが好ましい。100℃より低いと金属粉末が溶融せず金属被膜を形成しにくいためである。一方、250℃より高いインキ樹脂の分解や基板の熱劣化を生じる恐れがある。より好ましくは150℃〜250℃である。なお、金属被膜の形成とインキ樹脂の硬化を十分に行えるように加熱温度、加熱時間を適宜設定することができる。加熱時間は5分〜120分、さらには10分〜60分が好ましい。
【0026】
インキ樹脂は非導電性樹脂あるいは導電度が低い樹脂とすることができる。本発明の製造方法によれば、このような非導電性あるいは導電度が低い樹脂を用いた場合でも回路に良好な導電性を付与することができる。なお、インキ樹脂として導電性樹脂を用いることもでき、このような導電性を有するインキ樹脂の表面に金属被膜を形成することで、よりいっそう導電性を高めることができる。
【0027】
上記基板表面にインキ樹脂からなる回路パターンの印刷法として、凹版からブランケットへインキ樹脂を一旦転写させた後に、上記ブランケットから上記基板へ上記インキ樹脂を転写させる凹版オフセット印刷法を用いていることが好ましい。また、平板オフセット印刷、凸版印刷等の従来公知の印刷法を用いることもできる。
【0028】
版に凹版を用いる凹版オフセット印刷は凹版の深さを変えることで自由にインキ厚みを制御することが可能であり比較的厚みのある印刷が可能である。また、凹版の解像度は非常に高く10μm前後の非常に微細なパターンも忠実に印刷で再現することが可能である。
【0029】
上記ブランケットの表面ゴムはシリコンゴムからなり、上記凹版はガラスからなると共に、上記インキ樹脂は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂から選択される1種以上の樹脂とし、上記インキ樹脂には上記ブランケットに対する膨潤度が小さい溶剤が含まれていることが好ましい。
【0030】
凹版オフセット印刷において、特に、ブランケットの表面ゴムにシリコンゴムを用いると凹版からブランケットに移ったインキを100%基板に移転させることが可能であり、1回で十分にインキ厚みの厚い印刷を行うことも可能である。しかも、インキの分断が1回しか起こらないために印刷物形状が非常に良好であり、約10μmの非常に微細な形状も印刷で再現可能である。例えば、深さが10μmの凹版を用いたブランケットとしてシリコンゴムを表面ゴムに用いると約5μmの印刷が1回で可能である。
【0031】
また、凹版は金属やガラスをフォトリソ法でエッチングすると非常に形状に良好な凹版を形成することが可能であるので平滑で転移性の良好なブランケットを組み合わせれば非常に形状の良好な印刷を行うことが可能となる。ナノ金属粉末を用いた本発明において凹版オフセット印刷は非常に適した印刷方式であることが判明した。
【0032】
凹版について検討を行った結果、表面の平滑性が非常に重要であることが判明した。表面の平滑性が悪いとインキをドクターする際に凹版表面にインキのかき残りが起こり非画線部分の汚れ(地汚れ)が発生する。もっとも安価に表面平滑性の良好な凹版を作るにはガラスを用いエッチングすることである。ガラスはソーダガラスやノンアルカリガラス共に使用可能であるが、ノンアルカリガラスは非常に高価であるために高度な寸法精度を要求されない分野ではソーダガラスで十分である。また、金属材料をエッチングにより凹版を作成することも可能である。金属材料としては各種材料が使用可能であるが、特にエッチング性の良好なステンレスや42合金(Fe−Ni合金(Ni42%))、銅、真鍮、アンバー材等の材料が使用可能である。これらの金属を用いた凹版の場合には表面を鏡面加工にラッピング研磨を行うことで平滑性を上げる必要がある。また、金属表面の機械強度を向上させるために最表面に硬質クロムメッキ等の表面強化処理を行うことも考えられる。凹版の深さは目的のインキ膜厚みに応じて設計する必要があるが、通常は1〜50μm程度が良い。凹版の深さの約半分の量のインキがブランケットに転移し、シリコンゴムのブランケットを用いるとほぼ100%が被印刷体に印刷される。
【0033】
ブランケットの表面ゴム硬度が高いとゴムが変形せずに版のインキを十分に転移させることが難しい。また、硬度が低いとゴムの変形が大きくなり精度良く印刷を行うことが難しい。よって、上記の面からブランケットのゴム硬度はJIS−A硬度で70〜20、より好ましくは60〜30である。また、ブランケットの表面形状は特に印刷パターンが微細になるほど印刷形状に大きく影響を及ぼす。ライン幅20μm程度の微細なパターン形成には表面粗度として10点平均粗さで1.0μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下の平滑な表面が望ましい。材料としてシリコンゴムを用いるとインキの転移が良好であり1回の印刷で膜厚みの厚いものを印刷することが可能である。
【0034】
インキに含まれる溶剤はオフセット印刷で印刷適正を支配する重要な因子である。特に印刷時にはインキ中の溶剤が常にブランケットに接触するためにブランケットの表面ゴムは溶剤にて膨潤し表面の濡れ特性は変化する。一般には膨潤の少ない溶剤を用いればブランケットの表面濡れ性は変化が少なく安定した印刷が可能であるがブランケットとの受理性を考慮すると若干膨潤する溶剤を選定する方が良好である。ただし、連続印刷すると膨潤のため表面の濡れ性の変化が大きく、安定した印刷ができなくなる。表面濡れ性が増加し印刷の線幅が広がる、版表面の微少な汚れを転写する、被印刷体への転写が悪くなる等の問題が発生してくる。表面ゴム中の溶剤は表面ゴムを加熱することで蒸発、乾燥し、元の表面状態に完全に戻すことが可能である。よって、蒸発乾燥のし易さは加熱温度、溶剤の沸点やゴム厚みが関係してくるが加熱温度40℃〜200℃であれば十分効果的に乾燥させることが可能である。加熱乾燥はブランケット胴を直接加温することが有効であるが、特に限定されたものではなく、ブランケット外部から熱風を吹きつけて乾燥させることも可能である。また、乾燥は常時加温させることも可能であるが不定期的に加温、冷却を繰り返すような使用も可能である。
【0035】
乾燥後はブランケットの表面温度が高いと版と接触するために版が熱により膨潤し印刷精度が悪くなるといった問題がある。そのため、版の表面温度を通常±1℃以内に保つ必要があり、もちろんクリーンルーム内の室温もそれ以内に保つことが前提であるが、ブランケット表面の温度は+5℃以内に収める必要がある。版の表面温度よりもばらつきが大きいのはブランケットが接触して転がる際に凹版に熱が逃げるためで+5℃以上であると凹版の温度を+1℃以上になり印刷精度への悪影響が出てくる。ブランケットの表面温度を+5℃以上にする手法としてブランケットの表面を冷風で強制的に冷却することが一番効果的であり、ブランケットシリンダーも金属で熱容量が大きいために効果的に冷却が可能である。また、金属定盤上を転がすことでブランケット表面温度を急激に冷却することも可能である。その他、特に限定されることはなく、各種手法が可能である。
【0036】
インキ樹脂については、熱硬化性、紫外線硬化性等の各種使用可能である。熱硬化性樹脂としてポリエステル−メラミン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等が可能である。紫外線硬化型樹脂としてアクリル樹脂が挙げられる。
【0037】
上記基板は透明性を有する樹脂とし、上記インキ樹脂は、線幅5〜40μm、線間隔50〜500μmのメッシュ状パターンで印刷することができる。これにより、特に透明性電磁波シールドとして好適な回路を形成することができる。インキ樹脂の印刷は、基板の片面のみでも良いし、両面に印刷しても良い。
【0038】
透明性を有する樹脂としてはロール状に連続処理できるものが好ましい。透明性が高く、耐熱性が高いものが好ましいが、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン等のビニル類、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂等が挙げられる。この中でも非常に透過性が良好で安価なPETフィルムが一番望ましい。
【0039】
印刷パターンについて特に1〜1000MHzでの電磁波シールド性能を向上させるには、できるだけ細かいパターンを印刷し形成することが重要であることが判った。鋭意研究を進めた結果、線幅は5〜40μmであれば良好であることが判明した。線幅が40μmを超えると開口率を向上させることができず透過率が下がる。また、インキ樹脂パターンの幾何学模様が肉眼で確認され視認性が劣る。また、線幅が5μmより小さいと電磁波シールド効果が衰えると共にパターンを形成する際に断線が発生しやすくなり、良品を安定して生産することは非常に難しい。またPDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)用途を考慮すると、電磁波シールド特性として1〜1000MHzでの電界成分を十分にカットする必要がある。また、線間隔は50〜500μmであれば透明性と電磁波シールド性の両立が可能である。線間隔が50μmより小さくなると透過率が急激に小さくなる。また、500μmより大きい場合には電磁波シールド性が悪くなる。
【0040】
他の印刷法としてはフォトリソ法同等の高い印刷精度が得られる方が用途が広がり好ましい。スクリーン印刷ではライン幅が100μmより小さいと忠実に版の形状を再現しにくりことがある。また、原理上スクリーン紗はスクリーンの中央部分と周辺部分ではかかる力が異なり伸び量が異なる。このため中央部分と周辺部分でパターンの印刷精度が悪くなることがある。
【0041】
また、凸版印刷(またはフレキソ印刷)では1回のインキ膜厚み0.1μm〜1.0μmと薄くなり、版自身の解像度がやや低い。インキの膜厚みが薄い場合には付着させるナノ金属粉末をしっかりと固定させにくいことがあり、ある程度のインキの膜厚みが必要である。また、凸版ではパターンの周辺にインキが広がるマージナルゾーンと呼ばれる現象があり、同じくパターンを忠実に再現しにくいことがある。
【0042】
平版を用いた平版オフセット印刷および最近では版として非画線部分にシリコンゴムを用いた水なし平版(東レ製の商品名TAN)が多く使用されるようになってきている。水ありのPS版を用いるよりも解像度が高く、好ましいが印刷試験を行った結果、1回のインキの膜厚みが0.5μm〜1.0μmと薄いためにナノ金属粉末を固定化するには1〜3μmある方が好ましい。また、50μmよりも微細なパターンは版形状を忠実に再現しにくいことがある。
【0043】
本発明におけるパターン状印刷の幾何学模様とは格子状模様や三角形、四角形、N角形の円や楕円などの模様の単独または複数の繰り返しとすることができる。例えば、透過率やモアレ現象(画面のピッチとの関係で光干渉縞が発生する)と電磁波シールド特性に応じて設計することが可能である。また、本発明で規定している線幅とピッチ間隔であるが、線幅は幾何学模様を形成する1ユニット(格子や三角形、四角形、N角形、円、楕円など)の線幅でありピッチ間隔はそのユニットとユニットの間の距離である。ピッチ間隔が算出しにくい場合はユニット面積の平方根(ユニットを正方形に換算したときの1辺の長さ)をピッチ間隔と定義する。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の回路の製造方法の第1実施形態を図面を参照して説明する。
まず、印刷法により、基板の表面上にインキ樹脂を印刷する。印刷法は、図1(A)(B)(C)(D)に示すように、平台型凹版オフセット印刷機10を使用し、凹版11からブランケット12へインキ樹脂13を一旦転写させた後に、ブランケット12から基板14へインキ樹脂13を転写させる凹版オフセット印刷としている。
【0045】
ブランケット12の表面12aはシリコーンゴム(ゴム硬度JIS−A 40、常温硬化型シリコーンゴム付加型、ゴム厚み360μm)とし、表面粗度は10点平均粗さで0.1μmとしている。凹版11はソーダライムガラスからなるガラス製凹版としている。
【0046】
基板14はポリイミド樹脂製とし、インキ樹脂13は非導電性の熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂を、ブランケット12に対する膨潤度が小さい溶剤(酢酸ブチルカルビトール)にて粘度を調整したものを用いている。
【0047】
平台型凹版オフセット印刷機10は、基板14へ10枚分の印刷を終えると、加熱装置15の送風口15aからブランケット12へ熱風を当てブランケット12を加熱している。ブランケット12の表面温度が80℃となるように調整して5分間行っている。なお、印刷機が設置されているクリーンルーム内の温度は23℃±1℃に制御されており凹版11の表面温度も23℃±1℃に調整している。このように10枚印刷毎に表面に熱風を当て乾燥を行っている。
【0048】
乾燥後は、冷却装置16の送風口16aからブランケット12に冷風をあてて5分間冷却を行っている。冷却後のブランケット表面温度は面内で室温+3℃以内に調整している。
【0049】
このような方法で基板14の表面14aへインキ樹脂13を印刷しており、印刷パターンは線幅W1が20μm、線間隔W2が360μm、未硬化状態での膜厚みが3μmのストライプパターンとしている。ブランケット12上で転移したインキ樹脂13は100%完全に基板14へ転移し、パターン形状は非常に良好で膜厚みも安定したものを得ている。
【0050】
次に、図2(A)に示すように、凹版オフセット印刷にて予め基板14上に印刷したパターン状の未硬化のインキ樹脂13の表面13aの全面に渡って均一に、平均粒子径が10nmであり略球形状の銀粉末からなる導電性ナノ金属粉末20を分散させたコロイド溶液Qをバーコーターでコーティングしている。導電性ナノ金属粉末20はコロイド溶液Qの全体積の60%の体積割合でコロイド溶液Q中に均一に分散させたものを用いている。
【0051】
その後、インキ樹脂13が印刷されると共にコロイド溶液Qがコーティングされた基板14の表面14aを水で洗浄する。水洗してもコロイド溶液Qとインキ樹脂13との濡れ性が高いためコロイド溶液Qはインキ樹脂13の表面13aから流されない。また、基板14の表面14a上で、印刷されたパターン状のインキ樹脂13の表面13a以外の部分にコーティングされていたコロイド溶液Qは、コロイド溶液Qと基板14であるポリイミド樹脂の濡れ性が悪いために、水洗により容易に取り除くことができる。
【0052】
インキ樹脂13の表面13aにのみコロイド溶液Qがコーティングされた状態で、コロイド溶液Q及びインキ樹脂13を200℃×1時間で加熱して、図2(B)に示すように、コロイド溶液Q中の水を蒸発させると共に、コロイド溶液Q中の導電性ナノ金属粉末20は完全に融着して、 加熱硬化させたインキ樹脂13の表面に厚さ1μmの銀からなる導電性金属被膜21を形成する。これにより、基板14上にパターン状に印刷されたインキ樹脂13と、インキ樹脂13の表面13aに導電性金属被膜21を有する回路板30を形成する。
【0053】
このように、10nmと非常に粒子径を小さくした導電性ナノ金属粉末20を分散させたコロイド溶液Qをインキ樹脂13の表面13aにコーティング後、加熱している。
【0054】
具体的には、粒子径を小さくすることで、非常に導電性ナノ金属粉末20の表面活性が高くなり、金属の融着温度が著しく低下し、導電性ナノ金属粉末20同士が低温で融着可能となる。よって、200℃で加熱することにより、導電性ナノ金属粉末20が融着し導電性金属被膜21が形成されると共に、インキ樹脂13も硬化させることができる。よって、非常に低抵抗とすることができると共に、導電性金属被膜21とインキ樹脂13の界面部分を強固に接着することができ、基板14とインキ樹脂13や導電性金属被膜21との密着性も高めることができる。従って、簡易な工程で、材料の無駄を低減し、容易に回路を形成することができる。
【0055】
図3(A)(B)は第2実施形態を示し、上記第1実施形態と同様の方法で製造された回路板30’からなる透光性電磁波シールドである。基板14’は透明性を有する樹脂であるPETフィルムとし、インキ樹脂13’は、線幅W1’が20μm、線間隔W2’が200μmの正方形メッシュ状パターンで印刷されており、インキ樹脂13’の表面13a’には導電性金属被膜21’を有している。
【0056】
上記実施形態以外にも、導電性ナノ金属粉末としては、金、銅、白金、パラジウムのいずれかまたはこれらの混合物等を用いることができる。コロイド溶液の液体としてはトルエン、アルコール等の溶剤を用いることもできる。インキ樹脂は、非導電性あるいは導電度が低い樹脂以外にも、導電性樹脂を用いることができ、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂から選択される1種以上の樹脂を用いることができ、導電性樹脂としても良く、平版印刷等の他の印刷法により印刷することもできる。
【0057】
基板34上に印刷されるインキ樹脂33の印刷パターン形状としては、図4(A)に示すように円形模様パター−ン、図4(B)に示すようにひし形模様パターン、図4(C)に示すように正六角形模様パターン、図4(D)に示すように三角形模様パターン、その他、種々の形状のパターン、複数のパターンの組み合わせ等とすることもできる。
【0058】
以下、本発明の回路の製造方法の実施例、比較例について詳述する。
【0059】
(実施例1)
基板として200mm×200mmであるポリイミド樹脂(DuPont社製、商品名カプトン)を用いた。ポリイミド樹脂の表面上に、非導電性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂(住友ゴム社製)を溶剤(酢酸ブチルカルビトール)にて粘度をに調整したインキ樹脂を、凹版オフセット印刷法にて印刷した。印刷にはガラス製凹版を用い、印刷パターンは線幅50μm、線間隔200μmのストライプパターンとした。
【0060】
シリコーンゴム(ゴム硬度JIS−A 40、常温硬化型シリコーンゴム付加型(信越化学工業(株)製:KE1600)、ゴム厚み300μm)を表面ゴムにもつブランケット(表面粗度 10点平均粗さ 0.1μm)を作成して使用した。印刷パターンを40℃×1時間で乾燥させた後、パターンの厚み(未硬化)を測定すると約2μmであった。
【0061】
インキ樹脂の印刷後に、インキ樹脂の表面に、導電性ナノ金属粉末として平均粒子径が10nmの銀粉末を分散させたコロイド溶液(日本ペイント社製、水媒体)をバーコーターでコーティングした。銀粉末はコロイド溶液の全体積の60%の体積割合でコロイド溶液中に均一に分散させたものを用いた。その後、水で洗浄した。印刷パターン以外の部分にコーティングされていたコロイド溶液は、コロイド溶液と基板であるポリイミド樹脂の濡れ性が悪いために、容易に取り除くことができた。
【0062】
コロイド溶液及びインキ樹脂を200℃×1時間で加熱して、コロイド溶液中の水を蒸発させると共に、銀粉末は完全に融着して、 加熱硬化させたインキ樹脂の表面に厚さ1μmの銀の被膜を形成した。体積抵抗で3×10−6Ω・cmと非常に良好な導電性を発現した。
【0063】
(比較例1)
インキ樹脂の表面にコロイド溶液をコーティングするのではなく、上記不飽和ポリエステル樹脂に銀粉末(5μm)、溶剤を三本ロールで練り込んだものをインキとして用いた。具体的には、不飽和ポリエステル樹脂100重量部、銀粉末1000重量部、溶剤(BCA 酢酸ブチルカルビトール)を練り込んだ。このインキを印刷後、印刷パターンを200℃×1時間で加熱し、抵抗値測定後、体積固有抵抗を測定したところ2.0×10−4Ω・cmと導電性が悪かった。銀粒子径が5μmと大きいため200℃×1時間では銀粒子同士が点接触し、接触抵抗が大きく全体の抵抗が高くなるためである。
【0064】
(比較例2)
比較例1のパターン表面に無電界銅めっき、電界銅めっきを施した。抵抗値測定後体積固有抵抗を測定したところ3.1×10−6Ω・cmと実施例1と同等の導電性を得られたものの、めっき材料が高価である上に製造工程が増加し、コストアップになった。製造コストは実施例1を1とすると3倍のコストがかかった。
【0065】
実施例及び比較例から、本発明によりインキ樹脂上にめっきを使用することなく、極めて低抵抗で導電性に優れた回路を容易かつ安価に製造できることが確認できた。
【0066】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、粒子径を0.1nm〜50nm程度に小さくした導電性ナノ金属粉末が分散されたコロイド溶液をインキ樹脂の表面にコーティングした後に、加熱することのみで回路を製造している。このため、形成された金属被膜により導電性の極めて良好な回路が得られ、このような回路を簡易な工程で、安価に製造することができる。
【0067】
また、従来のフォトリソ法に比べ必要な部分にのみインキを形成するので捨てる部分がなく材料の消費量も少ない上に、現像等の工程がないため廃液の流出が全くなく環境への影響を心配する必要もない。また、印刷法によりパターン状のインキ樹脂を印刷しているため、フォトリソ法に比べ装置の構造が簡単で比較的安価である。
【0068】
よって、本発明の製造方法により製造される回路を備えた回路板は、CRT(ブラウン管)、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)等の電子機器から照射される電磁波を遮蔽する電磁波シールド等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)(B)(C)(D)は、凹版オフセット印刷による印刷工程の説明図である。
【図2】(A)は導電性ナノ金属粉末が分散されたコロイド溶液がコーティングされた状態を示す図、(B)は回路の構成を示す図である。
【図3】(A)(B)は正方形格子状パターンを示す図である。
【図4】(A)は円形状パターン、(B)はひし形状パターン、(C)は正六角形状パターン、(D)は三角形状パターンを示す図である。
【符号の説明】
11 凹版
12 ブランケット
13 インキ樹脂
14 基板
20 導電性ナノ金属粉末
21 導電性金属被膜
30 回路板
Q コロイド溶液
Claims (8)
- 基板上に回路パターンで印刷されたインキ樹脂の表面に、平均粒子径が0.1nm〜50nmの導電性ナノ金属粉末を分散させたコロイド溶液をコーティングした後に、
上記コロイド溶液及び上記インキ樹脂を加熱して、該コロイド溶液中の液体を蒸発させると共に上記導電性ナノ金属粉末同士を融着し、 加熱硬化させる上記インキ樹脂の表面に導電性金属被膜を形成していることを特徴とする回路の製造方法。 - 上記コロイド溶液に含まれる液体は、水系あるいは溶剤系であり、上記導電性ナノ金属粉末は上記コロイド溶液の全体積の10%〜95%の体積割合で上記コロイド溶液中に均一に分散させている請求項1に記載の回路の製造方法。
- 上記コロイド溶液は、バーコート、スピンコーター、スクリーン印刷、ロールコーターから選択される方法により上記印刷されたインキ樹脂表面にコーティングされ、印刷パターン以外にコーティングされた上記コロイド溶液を除去した後に、上記コロイド溶液及び上記インキ樹脂を加熱している請求項1または請求項2に記載の回路の製造方法。
- 上記導電性ナノ金属粉末は、金、銀、銅、白金、パラジウムのいずれかまたはこれらの混合物からなり、上記加熱温度は100℃〜250℃としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の回路の製造方法。
- 上記インキ樹脂は非導電性樹脂あるいは導電度が低い樹脂である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の回路の製造方法。
- 上記基板表面にインキ樹脂からなる回路パターンの印刷法として、凹版からブランケットへインキ樹脂を一旦転写させた後に、上記ブランケットから上記基板へ上記インキ樹脂を転写させる凹版オフセット印刷法を用いている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の回路の製造方法。
- 上記ブランケットの表面ゴムはシリコンゴムからなり、上記凹版はガラスからなると共に、
上記インキ樹脂は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂から選択される1種以上の樹脂としている請求項6に記載の回路の製造方法。 - 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載された製造方法で製造され、基板上に印刷されたパターンの回路を備えた回路板。
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