JP4261162B2 - 回路の製造方法および該回路を備えた回路板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回路の製造方法および該回路を備えた回路板に関し、詳しくは、電気機器からの電磁波シールド等として用いられ、微細で高精度な印刷パターンを有する回路を、導電性ナノ金属粉末から形成するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、回路パターンを形成する方法として、パターンを形成する際に感光性のレジストを用いて露光を行うフォトリソ法が挙げられ、フォトリソ法には、以下に示すように、サブトラクティブ法とアディティブ法の2種類に分けられる。
【0003】
上記サブトラクティブ法では基板上に予め銅箔、無電解銅メッキや電解銅メッキで導電性層を形成し、次に、感光性のレジスト(フォトレジスト)を導電性の層の上に形成し、フォトマスクを通して所定のパターンのみに感光性レジストを感光させる。 ついで、現像で未感光部分のフォトレジストを洗浄し、硬化させた後に導電性の層をエッチング液(塩化第二鉄等)に浸漬させることで未感光部の導電性層のむきだしになっている部分のみを腐食(エッチング)させ、最後にフォトレジストをアルカリ(KOH)で剥離させて所定のパターンのみの回路を形成している。
【0004】
上記アディティブ法は、サブトラクティブ法とは反対で予め基板の上に感光性レジストの層を形成し、フォトマスクを通じて所定のパターンのみに感光性レジストを感光させる。現像で未感光部分のフォトレジストを洗浄し、露光された部分のみの感光性レジストのパターンを形成する。次に、全面に、無電解銅メッキ、続いて電解メッキを施し、最後にフォトレジストを剥離して、露光されていない部分を回路パターンとして形成している。
【0005】
上記アディティブ法と同様な方法な印刷法も用いられており、該印刷法では、導電性のインキを用いて所定のパターンに印刷することで回路を形成している。この方法では、材料コストも少なく、製造設備も安いために安価なプロセスとして期待されている。
【0006】
さらに、微細な回路パターンの形成方法として従来より種々の提案がなされている。例えば、特開平10−242141号では、ナノプローブとプローブとの間に所定電圧を印加することにより微細パターン形成領域に電界支援酸化膜よりなる微細パターンを形成している微細酸化膜パターンが提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−242141号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、サブトラクティブ法の最大の問題点はエッチングに用いた多量の有害な廃液が発生することである。この廃液は金属を多量に含んでおり廃液処理にコストがかかり、環境にも良くない。また、導電性層は高価な層であり、余分な部分も捨てることは非常に無駄が多く、かつ、フォトマスクを通じて露光させる装置も非常に高価であるためコストがかかる点が問題である。また、エッチングは導電性層を厚み方向のみではなく、平面方向にも腐食するため、導電性層の厚みが厚い場合にはサイドエッチングが進み、線幅が所定のパターンよりも細くなり、極端な場合には断線することもある。
【0009】
上記アディティブ法の問題点は、無電解銅メッキ、電解銅メッキともに材料が高価でありプロセスが増えるためにコストが上がることである。さらに、露光プロセスを伴うのでサブトラクティブ法と同じで非常に高価な装置が必要である。
【0010】
また、上記印刷法は、導電性インキとして導電性金属が樹脂中に分散されたものを用いるが、特に、被印刷体が樹脂等の場合には高い温度をかけることができず、その結果、導電性が悪く、用途が限定されことがある。また、導電性を向上させるために、導電性金属粉末を多量にインキに添加すると印刷性が悪くなり、電解銅メッキ等を印刷パターンに施すと工程が増えコスト増を招くこととなる。
【0011】
また、上記特開平10−242141号では、電界支援酸化膜の厚みや膜の形成状態によっては良好な導電性が得られない場合があったり、電圧等を印加する高価な装置等が必要になり、コスト高等を招くこととなる。
【0012】
インキをドット状に飛ばすインキジェット法等も考えられるが、回路等の直線パターンの形成は困難であり、ピンホールや断線が発生しやすい。また、インキジェット法は印刷速度が遅い。そのためヘッド数を増やして印刷速度を改善する試みが行われているが、ヘッド数を増やすと、インキの詰まりの不良の頻度が増えて管理が非常に難しくなる。
【0013】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、簡易な工程で、材料の無駄を低減し、導電性の極めて良好な回路を容易に形成する回路の製造方法を提供することを課題としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、基板表面の非回路パターン領域に熱可塑性樹脂からなるインキ樹脂を印刷し、
ついで、上記基板の上記インキ樹脂印刷部分および回路パターン領域となる非印刷部分の全表面に、平均粒子径が0.1nm〜100nmの導電性ナノ金属粉末を分散させたコロイド溶液を塗布し、
上記インキ樹脂として用いる熱可塑性樹脂の分解昇華温度は、上記導電性ナノ金属粉末同士の融着温度よりも低温としており、
ついで、上記基板を加熱し、上記インキ樹脂印刷部分では上記インキ樹脂を分解昇華させて、その表面の上記導電性ナノ金属粉末を除去すると共に、上記回路パターン領域の上記非印刷部分では上記コロイド溶液中の液体のみを蒸発させて導電性ナノ金属粉末同士を融着させ、導電性ナノ金属粉末のみからなる導電性金属層で回路を形成している回路の製造方法を提供してる。
【0015】
上記本発明に係る回路の製造方法は、本発明者が鋭意研究の結果、以下のことを見出したことに基づきなされたものである。
導電性金属粉末の粒子径を0.1nm〜100nm程度に小さくすることで、非常に金属表面の活性が高くなり、金属の融着温度が著しく低下し、金属粉末同士が低温で融着可能となることを見出した。例えば、銀の場合、バルクの融点が963℃であるが、0.1nm〜100nm程度のナノ銀粉末とすると融着温度が200℃程度と著しく低下する。
よって、ナノ金属粉末同士を融着させて導電性金属層からなる回路を形成することができるが、ナノ金属粉末が細かくなると粉塵爆発の危険も大となることより溶媒中にコロイド状に分散させて安定化させて使用する必要がある。しかしながら、このナノ金属粉末を溶媒中にコロイド分散させたものは非常に粘度が低く、そのため、このナノ金属のコロイド溶液で回路を印刷して形成するのではなく、印刷技術とリフトオフ技術を融合させた方法としている。
【0016】
本発明の製造方法では、上記したように、ナノ金属粉末を液体中に分散させたコロイド溶液として、非回路パターン領域のインキ樹脂印刷部分の表面と、回路パターン領域の非印刷部分の表面とに塗布するため、導電性に優れた非常に細かなナノ粒子の金属コロイドを均一に塗布することができると共に作業性も向上する。
塗布後に加熱することにより、まず、インキ樹脂が昇華分解し、該昇華分解により該インキ樹脂印刷部分の表面に塗布した導電性ナノ金属粉末を除去することが出来る。同時に、該加熱により、非印刷部分ではナノ金属粉末同士が融着して非常に導電性の良好なナノ金属粉末のみからなる導電性金属層が形成され、該導電性金属層からなる回路を形成することができる。
【0017】
導電性ナノ金属粉末の粒子径は融着温度に大きく影響を及ぼす重要なファクターであり、種々検討を行った結果、導電性ナノ金属粉末の平均粒子径を0.1nm〜100nmとしている。これは、0.1nmより小さいと、常温でも非常に活性が高くなり、導電性ナノ金属粉末同士で一部凝集等が発生すると共に、表面の酸化も多くなり金属酸化膜が形成されるためである。一方、100nmより大きいと、融着温度が低下せず、低温での金属被膜形成を行えない上に印刷部分において加熱時にインキ樹脂と共に飛散させにくくなるためである。また、粒子径が小さい方が融着温度が下がるため、好ましい粒子径は1nm〜50nmであり、より好ましくは1nm〜10nmである。また、導電性ナノ金属粉末はお互いが溶融して金属被膜化することで非常に低抵抗とすることができる。
【0018】
また、導電性ナノ金属粉末を融着してなく金属被膜の厚みは、1μm〜15μmが好ましい。1μmより薄いと断線が発生しやすく、また導電性も良くない。一方、15μmより厚くても導電性は十分満たしており材料コストがかかり無駄となる他、表面の平坦性が悪くなる。
【0019】
上記インキ樹脂として用いる熱可塑性樹脂の分解昇華温度は、上記導電性ナノ金属粉末同士の融着温度よりも低温としている。
これは、インキ樹脂の表面に塗布したナノ金属コロイド溶液中のナノ金属粉末同士が融着して金属膜を形成する前に、インキ樹脂を分解昇華して、該インキ樹脂の表面に塗布されたナノ金属粉末を除去するためである。
よって、インキ樹脂が分解昇華する低温状態から金属粉末同士が融着する温度へ徐々に加熱することが好ましい。
【0020】
上記インキ樹脂は、できる限り低い温度で分解する熱可塑性樹脂が好ましく、熱可塑性のアクリル樹脂、ブチラ−ル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂であることが好ましく、印刷適正に合わせて選択することができる。
【0021】
上記導電性ナノ金属粉末は、金、銀、銅、白金、パラジウムのいずれかまたはこれらの混合物からなることが好ましい。これらの金属は、ある程度の導電性を有する上に、ナノ粒子とすることができる。特にコスト面と導電性の面から銀が好ましい。金属粉末の形状は、球状、楕円球状、柱状、鱗片状、繊維状等の種々の形状とすることができる。
【0022】
上記加熱温度は200℃〜350℃としていることが好ましい。200℃より低いと金属粉末が溶融せず金属被膜を形成しにくい上にインキ樹脂が分解昇華しにくいためである。一方、350℃よりと高いと基板の熱劣化を生じる恐れがある。より好ましくは200℃〜250℃である。なお、金属被膜の形成とインキ樹脂の分解昇華を効率良く行えるように加熱温度、加熱時間を適宜設定することができる。加熱時間は5分〜120分、さらに10分〜60分が好ましい。
【0023】
コロイド溶液に媒体として含まれる液体は、水系あるいはトルエン、アルコール等の溶剤系であることが好ましく、揮発性が高く蒸発しやすい液体とするのが良い。
【0024】
導電性ナノ金属粉末はコロイド溶液の全体積の10%〜95%の体積割合でコロイド溶液中に均一に分散させていることが好ましい。これによりナノ金属粉末同士を効率良く均等に接触させることができる。
上記範囲としているのは、上記範囲より小さいと、金属粉末同士が十分に密着しにくく加熱時に金属被膜を形成しにくくなるためである。一方、上記範囲より大きいと、コロイドが安定せずに凝集する。このため、粒子径が大きくなり低温で溶融しにくくなるという問題があることに因る。なお、より好ましくは30%〜80%である。
【0025】
上記コロイド溶液は、バーコート、スピンコータ、スクリーン印刷、ロールコータから選択される方法等により塗布することができる。
また、上記コロイド溶液は、通常の方法で作成でき、例えば、塩化金酸の水溶液をアミン等の還元剤を用いると金が還元されて析出してくる。この際に、金の粒子表面に保護コロイドとして界面活性剤やポリマー等を吸着させ、コロイドを安定させる方法で作成できる。
【0026】
さらに、本発明は、基板上への上記インキ樹脂の印刷法として、凹版からブランケットへインキ樹脂を一旦転写させた後に、上記ブランケットから上記基板へ上記インキ樹脂を転写させる凹版オフセット印刷法を用いる回路の製造方法を提供している。
即ち、基板表面の非回路パターン領域に熱可塑性樹脂からなるインキ樹脂を、凹版からブランケットへ上記インキ樹脂を一旦転写させた後に、上記ブランケットから上記基板へ上記インキ樹脂を転写させる凹版オフセット印刷法を用いて印刷し、
ついで、上記基板の上記インキ樹脂印刷部分および回路パターン領域となる非印刷部分の全表面に、平均粒子径が0.1nm〜100nmの導電性ナノ金属粉末を分散させたコロイド溶液を塗布し、
ついで、上記基板を加熱し、上記インキ樹脂印刷部分では上記インキ樹脂を分解昇華させて、その表面の上記導電性ナノ金属粉末を除去すると共に、上記回路パターン領域の上記非印刷部分では上記コロイド溶液中の液体のみを蒸発させて導電性ナノ金属粉末同士を融着させ、導電性ナノ金属粉末のみからなる導電性金属層で回路を形成している回路の製造方法を提供している。
【0027】
版に凹版を用いる凹版オフセット印刷は凹版の深さを変えることで自由にインキ厚みを制御することが可能であり比較的厚みのある印刷が可能である。また、凹版の解像度は非常に高く10μm前後の非常に微細なパターンも忠実に印刷で再現することが可能である。
【0028】
上記ブランケットの表面ゴムはシリコンゴムからなり、上記凹版はガラスからなり、上記インキ樹脂には上記ブランケットに対する膨潤度が小さい溶剤が含まれていることが好ましい。
【0029】
凹版オフセット印刷において、特に、ブランケットの表面ゴムにシリコンゴムを用いると凹版からブランケットに移ったインキを100%基板に移転させることが可能であり、1回で十分にインキ厚みの厚い印刷を行うことも可能である。しかも、インキの分断が1回しか起こらないために印刷物形状が非常に良好であり、約10μmの非常に微細な形状も印刷で再現可能である。よって、非印刷部分が回路パターンになるように良好な印刷を行うことができる。
【0030】
また、凹版は金属やガラスをフォトリソ法でエッチングすると非常に形状に良好な凹版を形成することが可能であるので平滑で転移性の良好なブランケットを組み合わせれば非常に形状の良好な印刷を行うことが可能となる。ナノ金属粉末を用いた本発明において凹版オフセット印刷は非常に適した印刷方式であることが判明した。
【0031】
凹版について検討を行った結果、表面の平滑性が非常に重要であることが判明した。表面の平滑性が悪いとインキをドクターする際に凹版表面にインキのかき残りが起こり非画線部分の汚れ(地汚れ)が発生する。もっとも安価に表面平滑性の良好な凹版を作るにはガラスを用いエッチングすることである。ガラスはソーダガラスやノンアルカリガラス共に使用可能であるが、ノンアルカリガラスは非常に高価であるために高度な寸法精度を要求されない分野ではソーダガラスで十分である。また、金属材料をエッチングにより凹版を作成することも可能である。金属材料としては各種材料が使用可能であるが、特にエッチング性の良好なステンレスや42合金(Fe−Ni合金(Ni42%))、銅、真鍮、アンバー材等の材料が使用可能である。これらの金属を用いた凹版の場合には表面を鏡面加工にラッピング研磨を行うことで平滑性を上げる必要がある。また、金属表面の機械強度を向上させるために最表面に硬質クロムメッキ等の表面強化処理を行うことも考えられる。凹版の深さは目的のインキ膜厚みに応じて設計する必要があるが、通常は1〜50μm程度が良い。凹版の深さの約半分の量のインキがブランケットに転移し、シリコンゴムのブランケットを用いるとほぼ100%が被印刷体に印刷される。
【0032】
ブランケットの表面ゴム硬度が高いとゴムが変形せずに版のインキを十分に転移させることが難しい。また、硬度が低いとゴムの変形が大きくなり精度良く印刷を行うことが難しい。よって、上記の面からブランケットのゴム硬度はJIS−A硬度で70〜20、より好ましくは60〜30である。また、ブランケットの表面形状は特に印刷パターンが微細になるほど印刷形状に大きく影響を及ぼす。ライン幅20μm程度の微細なパターン形成には表面粗度として10点平均粗さで1.0μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下の平滑な表面が望ましい。材料としてシリコンゴムを用いるとインキの転移が良好である。
【0033】
インキに含まれる溶剤はオフセット印刷で印刷適正を支配する重要な因子である。特に印刷時にはインキ中の溶剤が常にブランケットに接触するためにブランケットの表面ゴムは溶剤にて膨潤し表面の濡れ特性は変化する。一般には膨潤の少ない溶剤を用いればブランケットの表面濡れ性は変化が少なく安定した印刷が可能であるがブランケットとの受理性を考慮すると若干膨潤する溶剤を選定する方が良好である。ただし、連続印刷すると膨潤のため表面の濡れ性の変化が大きく、安定した印刷ができなくなる。表面濡れ性が増加し印刷の線幅が広がる、版表面の微少な汚れを転写する、被印刷体への転写が悪くなる等の問題が発生してくる。表面ゴム中の溶剤は表面ゴムを加熱することで蒸発、乾燥し、元の表面状態に完全に戻すことが可能である。よって、蒸発乾燥のし易さは加熱温度、溶剤の沸点やゴム厚みが関係してくるが加熱温度40℃〜200℃であれば十分効果的に乾燥させることが可能である。加熱乾燥はブランケット胴を直接加温することが有効であるが、特に限定されたものではなく、ブランケット外部から熱風を吹きつけて乾燥させることも可能である。また、乾燥は常時加温させることも可能であるが不定期的に加温、冷却を繰り返すような使用も可能である。
【0034】
乾燥後はブランケットの表面温度が高いと版と接触するために版が熱により膨潤し印刷精度が悪くなるといった問題がある。そのため、版の表面温度を通常±1℃以内に保つ必要があり、もちろんクリーンルーム内の室温もそれ以内に保つことが前提であるが、ブランケット表面の温度は+5℃以内に収める必要がある。版の表面温度よりもばらつきが大きいのはブランケットが接触して転がる際に凹版に熱が逃げるためで+5℃以上であると凹版の温度を+1℃以上になり印刷精度への悪影響が出てくる。ブランケットの表面温度を+5℃以上にする手法としてブランケットの表面を冷風で強制的に冷却することが一番効果的であり、ブランケットシリンダーも金属で熱容量が大きいために効果的に冷却が可能である。また、金属定盤上を転がすことでブランケット表面温度を急激に冷却することも可能である。その他、特に限定されることはなく、各種手法が可能である。
【0035】
上記基板は透明性を有する樹脂とし、上記インキ樹脂は非印刷部分が回路パターンになるように印刷され、回路パターンは線幅5〜40μm、線間隔50〜500μmのメッシュ状等とすることができる。これにより、特に高密度なライン部分の多い回路の形成に適したものとなる。また、インキ樹脂の印刷は、基板の片面のみでも良いし、両面に印刷しても良い。
【0036】
透明性を有する樹脂としてはロール状に連続処理できるものが好ましい。透明性が高く、耐熱性が高いものが好ましいが、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン等のビニル類、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂等が挙げられる。この中でも非常に透過性が良好で安価なPETフィルムが一番望ましい。
【0037】
印刷パターンについて特に1〜1000MHzでの電磁波シールド性能を向上させるには、できるだけ細かいパターンを印刷し形成することが重要であることが判った。鋭意研究を進めた結果、線幅は5〜40μmであれば良好であることが判明した。線幅が40μmを超えると開口率を向上させることができず透過率が下がる。また、パターンの幾何学模様が肉眼で確認され視認性が劣る。また、線幅が5μmより小さいと電磁波シールド効果が衰えると共にパターンを形成する際に断線が発生しやすくなり、良品を安定して生産することは非常に難しい。またPDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)用途を考慮すると、電磁波シールド特性として1〜1000MHzでの電界成分を十分にカットする必要がある。また、線間隔は50〜500μmであれば透明性と電磁波シールド性の両立が可能である。線間隔が50μmより小さくなると透過率が急激に小さくなる。また、500μmより大きい場合には電磁波シールド性が悪くなる。
【0038】
他の印刷法としてはフォトリソ法と同等の高い印刷精度が得られる方が用途が広がり好ましい。スクリーン印刷ではライン幅が100μmより小さいと忠実に版の形状を再現しにくりことがある。また、原理上スクリーン紗はスクリーンの中央部分と周辺部分ではかかる力が異なり伸び量が異なる。このため中央部分と周辺部分でパターンの印刷精度が悪くなることがある。
【0039】
また、凸版印刷(またはフレキソ印刷)では1回のインキ膜厚み0.1μm〜1.0μmと薄くなり、版自身の解像度がやや低い。非印刷部分を明確にするには、ある程度のインキの膜厚みが必要である。また、凸版ではパターンの周辺にインキが広がるマージナルゾーンと呼ばれる現象があり、同じくパターンを忠実に再現しにくいことがある。
【0040】
平版を用いた平版オフセット印刷および最近では版として非画線部分にシリコンゴムを用いた水なし平版(東レ製の商品名TAN)が多く使用されるようになってきている。水ありのPS版を用いるよりも解像度が高い。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
まず、印刷法により、基板の表面上にインキ樹脂を印刷する。印刷法は、図1(A)(B)(C)(D)に示すように、平台型凹版オフセット印刷機10を使用し、凹版11からブランケット12へインキ樹脂13を一旦転写させた後に、ブランケット12から基板14へインキ樹脂13を転写させる凹版オフセット印刷としている。
【0042】
ブランケット12の表面12aはシリコーンゴム(ゴム硬度JIS−A 40、常温硬化型シリコーンゴム付加型、ゴム厚み300μm)とし、表面粗度は10点平均粗さで0.1μmとしている。凹版11はソーダライムガラスからなるガラス製凹版としている。
【0043】
基板14は厚み100μmのポリイミドフィルムとし、インキ樹脂13は熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂を、ブランケット12に対する膨潤度が小さい溶剤(酢酸ブチルカルビトール)にて粘度を50〜100Pに調整したものを用いている。
【0044】
平台型凹版オフセット印刷機10は、基板14へ10枚分の印刷を終えると、加熱装置15の送風口15aからブランケット12へ熱風を当てブランケット12を加熱している。ブランケット12の表面温度が80℃となるように調整して5分間行っている。なお、印刷機が設置されているクリーンルーム内の温度は23℃±1℃に制御されており凹版11の表面温度も23℃±1℃に調整している。このように10枚印刷毎に表面に熱風を当て乾燥を行っている。
乾燥後は、冷却装置16の送風口16aからブランケット12に冷風をあてて5分間冷却を行っている。冷却後のブランケット表面温度は面内で室温+3℃以内に調整している。
【0045】
上記した方法で、基板14の表面14aへ熱可塑性樹脂のアクリル樹脂からなるインキ樹脂13を回路とならない非回路パターン領域に印刷している。該インキ樹脂の印刷パターンは線幅W1が200μm、線間隔W2が20μm、未硬化状態(未焼成)での膜厚みが3μmのストライプパターンとしている。
ブランケット12上で転移したインキ樹脂13は100%完全に基板14へ転移し、パターン形状は非常に良好で膜厚みも安定したものを得ている。
基板14上で、インキ樹脂13の印刷部分14Aは非回路パターン領域となり、非印刷部分14Bが回路パターン領域となる。
【0046】
次に、図2に示すように、基板14の全表面、即ち、インキ樹脂13の印刷部分14A及び非印刷部分14Bの全表面に、略球形状で平均粒子径が10nmの銀からなる導電性ナノ金属粉末20を分散させたコロイド溶液Qを塗布している。具体的には、コロイド溶液Qはロールコータの塗布方法で、10μm厚みで均一に塗布している。
【0047】
その後、インキ樹脂13の印刷及びコロイド溶液Qが塗布された基板14を加熱して、コロイド溶液Q及びインキ樹脂13を250℃で1時間加熱する。
この加熱によりインキ樹脂13を熱分解し昇華させ、該インキ樹脂13の表面に塗布されているコロイド溶液Q中に存在する導電性金属粉末20を飛散除去する。かつ、加熱により、非印刷部分14Bの表面上のコロイド溶液Q中に存在する液体を蒸発させ、かつ、導電性ナノ金属粉末20同士を融着し、 基板14の非印刷部分14Bの表面にのみ導電性金属層21を形成する。この導電性金属層21により20μm線幅、3μm厚の非常に微細な回路パターンが形成され、基板14上に導電性ナノ金属粉末20のみからなる回路板30が形成される。
【0048】
上記のように、本発明の製造方法によれば、ナノ金属粉末の粒径を0.1nm〜100nmと非常に小さくしているため、ナノ金属粉末同士が融着して回路となる導電性金属層を形成でき、該回路はナノ金属粉末のみからなるため導電性に優れたものとなる。また、微細なナノ金属粉末を用いているが、該ナノ金属粉末を分散させたコロイド溶液として基板表面に塗布しているため、作業性がよく、簡単に精度の高い回路を形成することができる。
【0049】
本発明は上記実施形態に限定されず、導電性ナノ金属粉末として、金、銅、白金、パラジウムのいずれかまたはこれらの混合物等を用いることができ、コロイド溶液の液体としてはトルエン、アルコール等の溶剤を用いてもよい。インキ樹脂はブチラ−ル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いるてもよい。また、平版印刷等の他の印刷法により印刷してもよい。
【0050】
以下、本発明の回路の製造方法の実施例、比較例について詳述する。
【0051】
(実施例1)
基板である厚み100μmのポリイミドフィルム(Dupont社製、商品名カプトン)の表面上に、熱可塑性アクリル樹脂(共栄化学社製)を溶剤(酢酸ブチルカルビトール)にて粘度を50〜100Pに調整したインキ樹脂を、凹版オフセット印刷法にて印刷した。印刷にはガラス製凹版を用い、印刷パターンは線幅200μm、線間隔20μmのストライプパターンとした。
【0052】
シリコーンゴム(ゴム硬度JIS−A 40、常温硬化型シリコーンゴム付加型(信越化学工業(株)製:KE1600)、ゴム厚み300μm)を表面ゴムにもつブランケット(表面粗度 10点平均粗さ 0.1μm)を作成し、10枚印刷毎に表面に熱風を当て80℃×5分間乾燥を行った。クリーンルームは室温23℃±1℃に制御されており凹版の表面温度も23℃±1℃に調整した。乾燥後は強制的にブランケット表面に冷風をあてて5分間冷却を行った。冷却後のブランケット表面温度は面内で室温+3℃以内に調整した。
【0053】
その後、連続印刷を行ったが凹版の表面温度はほとんど変化なく、印刷精度への影響は見られなかった。ブランケット上で転移したインキは100%完全にガラス基板へ転移したのでパターン形状は非常に良好で膜厚みも安定したものが得られた。印刷されたパターンは線幅で200μm、膜厚み(未焼成)で3μmとした。インキ樹脂の印刷後に、導電性ナノ金属コロイドとして平均粒子径が10nmの銀粉末を分散させたコロイド溶液(日本ペイント社製)を基板上のインキ樹脂の印刷部分及び非印刷部分の全表面にスクリーン印刷法で塗布した。塗布量としては面平均厚みで約3μmになるようにし、銀粉末はコロイド溶液の全体積の60%の体積割合でコロイド溶液中に均一に分散させたものを用いた。
【0054】
その後、250℃×1時間焼成することにより、銀粉末同士は完全に融着し、非印刷部分に金属被膜が形成された、印刷部分はインキ樹脂が熱分解し昇華して、印刷部分の表面の銀粉末を含むコロイド溶液は飛散及び蒸発した。これにより非印刷部分のみに20μm線幅の非常に微細な1μm厚みの金属被膜からなる導電性回路パターンを形成することができ、体積抵抗で3×10-6Ω・cmと非常に良好な導電性を発現した。
【0055】
(比較例1)
厚み100μmのポリイミドフィルムに厚み16μmの銅箔を貼り付けたものに感光性のフォトレジストフィルム(ドライフィルム)を真空密着しフォトマスクを通じて露光、現像して30μmのレジストパターンを形成した。次に、エッチング液でエッチングを行い、最後にアルカリでレジストを剥離して線幅20μmの銅箔パターンを形成した。
【0056】
導電性は実施例1とほとんど同じ(1.8×10-6Ω・cm)で良好であったが、線幅が非常に細いために部分的に断線が生じる問題が発生した。また、エッチング時に非常に多量の廃液が発生するために廃液の処理費にコストがかかった。さらにフォトリソ工程(露光、現像、乾燥)では高額な製造設備を必要とするため設備償却費が加わるために製造コストは実施例1を1とすると5〜10のコストがかかった。
【0057】
(比較例2)
厚み100μmのポリイミドフィルムに導電性銀ペーストを用いスクリーン印刷にて線幅20μm、線間隔360μmの印刷を行った。印刷物は200℃×1時間硬化させ回路板を製造した。
【0058】
廃液や製造設備費用は実施例1と同様で非常に低コストで製造可能であったが20μmの線幅は安定してスクリーン印刷で形成することができず、断線等が多く、また印刷精度が非常に悪い。また、導電性は6×10-4Ω・cmと非常に悪く、実用化は難しいことが判明した。
【0059】
実施例1及び比較例1、2から、本発明により非常に良好な回路パターンを印刷のみで形成することができ、しかも廃液が全く発生せず、高価な製造設備も不要なために極めて安価で抵抗も安定した回路板を製造可能であることが確認できた。
【0060】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、導電性ナノ金属粉末の粒子径を0.1nm〜100nm程度に小さくしているため、該金属粉末の表面活性が非常に高くなり、金属の融着温度が著しく低下し、金属粉末同士を低温で融着させることができる。また、加熱により分解昇華可能な樹脂をインキ樹脂として用い、該インキ樹脂を非回路パターン領域を予め塗布しているため、加熱することで、インキ樹脂の熱分解昇華によりインキ樹脂の表面のナノ金属粉末を除去でき、非印刷部分の基板表面にのみナノ金属粉末が融着した金属層を形成することができ、導電性の極めて良好な回路を簡易な工程で容易に製造することができる。
【0061】
また、従来のフォトリソ法に比べ現像等の工程がないため廃液の流出がなく環境への影響を心配する必要もない。また、印刷法によりインキ樹脂を印刷しているため、フォトリソ法に比べ装置の構造が簡単で比較的安価である。
よって、本発明の製造方法により製造される回路を備えた回路板は、高密度のライン部分を持つ回路や、CRT(ブラウン管)、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)等の電子機器から照射される電磁波を遮蔽する電磁波シールド等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)(B)(C)(D)は、凹版オフセット印刷による印刷工程の説明図である。
【図2】 (A)コロイド溶液が基板に塗布された状態を示す図、(B)は回路の構成を示す図である。
【符号の説明】
11 凹版
12 ブランケット
13 インキ樹脂
14 基板
20 導電性ナノ金属粉末
21 導電性金属被膜
Q コロイド溶液
Claims (6)
- 基板表面の非回路パターン領域に熱可塑性樹脂からなるインキ樹脂を印刷し、
ついで、上記基板の上記インキ樹脂印刷部分および回路パターン領域となる非印刷部分の全表面に、平均粒子径が0.1nm〜100nmの導電性ナノ金属粉末を分散させたコロイド溶液を塗布し、
上記インキ樹脂として用いる熱可塑性樹脂の分解昇華温度は、上記導電性ナノ金属粉末同士の融着温度よりも低温としており、
ついで、上記基板を加熱し、上記インキ樹脂印刷部分では上記インキ樹脂を分解昇華させて、その表面の上記導電性ナノ金属粉末を除去すると共に、上記回路パターン領域の上記非印刷部分では上記コロイド溶液中の液体のみを蒸発させて導電性ナノ金属粉末同士を融着させ、導電性ナノ金属粉末のみからなる導電性金属層で回路を形成している回路の製造方法。 - 基板表面の非回路パターン領域に熱可塑性樹脂からなるインキ樹脂を、凹版からブランケットへ上記インキ樹脂を一旦転写させた後に、上記ブランケットから上記基板へ上記インキ樹脂を転写させる凹版オフセット印刷法を用いて印刷し、
ついで、上記基板の上記インキ樹脂印刷部分および回路パターン領域となる非印刷部分の全表面に、平均粒子径が0.1nm〜100nmの導電性ナノ金属粉末を分散させたコロイド溶液を塗布し、
ついで、上記基板を加熱し、上記インキ樹脂印刷部分では上記インキ樹脂を分解昇華させて、その表面の上記導電性ナノ金属粉末を除去すると共に、上記回路パターン領域の上記非印刷部分では上記コロイド溶液中の液体のみを蒸発させて導電性ナノ金属粉末同士を融着させ、導電性ナノ金属粉末のみからなる導電性金属層で回路を形成している回路の製造方法。 - 上記インキ樹脂は、熱可塑性のアクリル樹脂、ブチラ−ル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である請求項1または請求項2に記載の回路の製造方法。
- 上記導電性ナノ金属粉末は、金、銀、銅、白金、パラジウムのいずれか1つ、またはこれらの混合物からなる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の回路の製造方法。
- 上記加熱温度は200℃〜350℃としている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の回路の製造方法。
- 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された製造方法で製造され、基板上に導電性ナノ金属粉末のみからなるパターンの回路を備えた回路板。
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